(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-12
(45)【発行日】2025-02-20
(54)【発明の名称】CMP温度制御用の装置及び方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20250213BHJP
【FI】
H01L21/304 621D
H01L21/304 622E
(21)【出願番号】P 2021547703
(86)(22)【出願日】2020-02-19
(86)【国際出願番号】 US2020018736
(87)【国際公開番号】W WO2020172215
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2022-12-01
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ショウ-サン
(72)【発明者】
【氏名】サウンダララジャン, ハリ
(72)【発明者】
【氏名】ウー, ハオション
(72)【発明者】
【氏名】タン, チエンショー
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-99828(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0024661(US,A1)
【文献】特開2013-258213(JP,A)
【文献】特開2018-195738(JP,A)
【文献】特開2007-168039(JP,A)
【文献】中国実用新案第207171777(CN,U)
【文献】特開2014-183221(JP,A)
【文献】特開2003-257914(JP,A)
【文献】特開2010-42487(JP,A)
【文献】特開2010-245239(JP,A)
【文献】特開2007-968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学機械研磨装置であって、
研磨パッドを保持するためのプラテン、
研磨工程中に前記研磨パッドの研磨面に対して基板を保持するためのキャリア、
前記研磨パッド上に研磨液を供給するために前記プラテンの上に延在する研磨液アームに配置されたスラリ分注ポートを有する研磨液分注器、
リンス液を前記研磨パッドに供給するリンスシステム、及び、
温度制御システムであって、
前記プラテン上に延在し、かつ加熱された
流体の供給源に接続された加熱制御アームと、前記スラリ分注ポート及び前記リンスシステムから分離した第1の複数の開口部とを含み、該第1の複数の開口部は、前記プラテンの上で前記加熱制御アームに配置されかつ前記研磨パッドから分離されており、前記加熱された流体が該第1の複数の開口部から前記研磨パッドの上に直接流れるように構成された、温度制御システムを備える、
化学機械研磨装置。
【請求項2】
前記加熱された流体が気体を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記気体がスチームを含む、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記温度制御システムはさらに、
前記プラテン上に延在し、かつ冷却流体の供給源に接続された冷却制御アームと、前記スラリ分注ポート及び前記リンスシステムから分離した第2の複数の開口部とを含み、該第2の複数の開口部は、前記プラテン上で前記冷却制御アームに配置されかつ前記研磨パッドから分離されており、前記冷却流体が該第2の複数の開口部から前記研磨パッドの上に直接流れるように構成された、請求項1又は3に記載の装置。
【請求項5】
前記加熱制御アームが、前記プラテンの側部から離れたベースによって支持される、請求項1又は3に記載の装置。
【請求項6】
前記開口部は、前記プラテンの半径方向軸に沿ってオーバーラップする複数のゾーン内に流体が分注されるように配置される、請求項1又は3に記載の装置。
【請求項7】
前記開口部が、前記プラテンの半径方向軸に沿って不均一な密度で配置される、請求項1又は3に記載の装置。
【請求項8】
前記スラリ分注ポートの半径方向位置に対応する半径方向ゾーンにおいて、前記開口部がより高い密度で配置される、請求項1又は3に記載の装置。
【請求項9】
前記開口部のうちの少なくとも1つは、該開口部からの噴霧の中心軸が、前記研磨面に対して斜角となるように構成される、請求項1又は3に記載の装置。
【請求項10】
前記開口部の少なくとも1つは、前記加熱された流体が、前記研磨面上での該加熱された流体の衝突の領域内で前記研磨パッドの移動の方向とは反対側の方向の水平成分を有するように、前記開口部から前記研磨面上へ方向付けられるように構成された、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
化学機械研磨の方法であって、
基板を研磨パッドに接触させることと、
研磨液を前記研磨パッドの第1の半径方向ゾーン上に供給することと、
前記研磨パッドと前記基板との間で相対運動を生じさせることと、
前記研磨パッドの、前記第1の半径方向ゾーンと異なる第2の半径方向ゾーンをリンス液でリンスすることと、
前記研磨液及び前記リンス液と異なる熱制御媒体を、前記基板に対する前記研磨パッドの移動の方向に沿った位置で、前記研磨パッドの前記第1の半径方向ゾーン及び前記第2の半径方向ゾーンとは異なる第3の半径方向ゾーンに供給することにより、該第3の半径方向ゾーンの温度を上
昇させることであって、前記位置は、前記研磨液及び前記リンス液が供給される前記研磨パッドの位置とは異なる位置である、第3の半径方向ゾーンの温度を上
昇させることと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、化学機械研磨(CMP)に関し、特に、化学機械研磨中の温度制御に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路は、典型的には、半導体ウエハ上に導電層、半導電層、又は絶縁層を順次堆積させることによって、基板上に形成される。様々な製造工程で、基板上の層の平坦化が必要とされる。例えば、1つの製造ステップは、非平面的な表面の上に充填層を堆積させ、充填層を平坦化することを伴う。特定の用途では、充填層は、パターニングされた層の頂面が露出するまで平坦化される。例えば、パターニングされた絶縁層上に金属層を堆積させて、絶縁層内のトレンチ及び孔を充填することができる。平坦化後、パターニングされた層のトレンチ及び孔の中に残っている金属の部分によって、基板上の薄膜回路間の導電経路を提供するビア、プラグ、及びラインが形成される。別の一例として、誘電体層が、パターニングされた導電層の上に堆積され、次いで、平坦化されて、その後のフォトリソグラフィステップを可能にし得る。
【0003】
化学機械研磨(CMP)は、平坦化の1つの受け入れられている方法である。この平坦化方法は、典型的には、基板がキャリアヘッドに取り付けられることを必要とする。典型的には、基板の露出面が、回転している研磨パッドに当接するように置かれる。キャリアヘッドは、基板に制御可能な荷重をかけて、基板を研磨パッドに押し付ける。典型的には、研磨粒子を含む研磨スラリが、研磨パッドの表面に供給される。
【発明の概要】
【0004】
一態様では、化学機械研磨装置が、研磨パッドを保持するためのプラテン、研磨工程中に研磨パッドの研磨面に対して基板を保持するためのキャリア、及び、加熱された流体の供給源と、プラテンの上方に配置され、研磨パッドから分離され、加熱された流体が研磨パッド上に流れるように構成された複数の開口部と、を含む温度制御システムを含む。
【0005】
上記の態様のうちのいずれかの実施態様は、以下の特徴のうちの1以上を含んでよい。
【0006】
加熱された流体は、気体、例えばスチームを含んでよい。
【0007】
本体が、プラテンの上方に延在してよく、複数の開口部は、本体の表面内に形成されてよい。開口部は、プラテンの半径方向軸に沿って不均一な密度で本体上に配置されてよい。
【0008】
装置は、スラリ分注ポートを有し得る。開口部は、スラリ分注ポートの半径方向位置に対応する半径方向ゾーンにおいて、より高い密度で配置されてよい。
【0009】
別の一態様では、化学機械研磨装置が、研磨パッドを保持するためのプラテン、研磨工程中に研磨パッドの研磨面に対して基板を保持するためのキャリア、及び、冷却流体の供給源と、プラテンの上方に配置され、研磨パッドから分離され、冷却流体が研磨パッド上に流れるように構成された複数の開口部と、を含む温度制御システムを含む。
【0010】
上記の態様のうちのいずれかの実施態様は、以下の特徴のうちの1以上を含んでよい。
【0011】
複数の開口部は、冷却流体を研磨パッドの第1の領域に供給することができる。研磨液分注システムが、研磨パッドの別の第2の領域に研磨液を供給するためのポートを有してよく、リンスシステムが、研磨パッドの別の第3の領域にリンス液を供給するためのポートを有してよい。
【0012】
冷却流体は、液体、例えば水を含んでよい。例えば、冷却流体は、水又はエアロゾル化された水から構成され得る。
【0013】
冷却流体は、液体及び気体を含んでよい。複数の開口部は、エアロゾル化された霧を生成するように構成されてもよい。
【0014】
開口部は、プラテンの半径方向軸に沿って不均一な密度で本体上に配置されてよい。
【0015】
1以上のバルブ及び/又はポンプが、研磨パッドに供給される冷却流体内の液体と気体との混合比を制御し得る。
【0016】
別の一態様では、化学機械研磨の方法が、基板を研磨パッドに接触させること、研磨パッドと基板との間で相対運動を生じさせること、及び、熱制御媒体を研磨パッド上に供給することによって、研磨パッドの温度を上昇又は下降させることを含む。
【0017】
別の一態様では、化学機械研磨装置が、研磨パッドを保持するためのプラテン、研磨工程中に研磨パッドの研磨面に対して基板を保持するためのキャリア、及び、流体媒体の供給源と、プラテンの上方に配置され、研磨パッドから分離され、研磨パッドを加熱又は冷却するために、流体媒体が研磨パッド上に流れるように構成された1以上の開口部と、を含む温度制御システムを含む。
【0018】
以下の可能な利点のうちの1以上が実現され得る。研磨パッドの温度は、迅速且つ効率的に上昇又は下降させることができる。研磨パッドの温度は、研磨パッドを、固体本体(例えば熱交換プレート)と接触させることなしに制御することができ、したがって、パッドの汚染及び故障の危険性を低減させる。ある研磨動作にわたる温度のばらつきを低減させることができる。これにより、研磨工程の研磨の予測可能性を改善することができる。ある研磨動作から別の研磨動作への温度のばらつきを低減させることができる。これにより、ウエハ間の均一性が改善され、研磨工程の再現性が改善され得る。基板全体にわたる温度のばらつきを低減させることができる。これにより、ウエハ内の均一性が改善され得る。
【0019】
1以上の実施態様の詳細が、添付図面及び以下の記述において説明される。その他の態様、特徴、及び利点は、これらの説明及び図面から並びに特許請求の範囲から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】例示的な化学機械研磨装置の概略上面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
化学機械研磨は、基板と、研磨液と、研磨パッドとの間の界面における機械的磨耗と化学的エッチングとの組み合わせによって動作する。研磨工程中、基板の表面と研磨パッドとの間の摩擦により、かなりの量の熱が生成される。加えて、幾つかの工程は、インシトゥ(in-situ)パッド調整ステップも含み、調整ディスク、例えば研磨ダイヤモンド粒子で被覆されたディスクが、回転する研磨パッドに押し付けられて、研磨パッドの表面を調整及び触感調節(texture)する。調整工程の摩耗によっても熱が生成され得る。例えば、2psiの公称ダウンフォース圧力及び8000Å/分の除去速度を有する典型的な1分間の銅CMP工程では、ポリウレタン研磨パッドの表面温度が、摂氏約30度上昇し得る。
【0022】
CMP工程における化学関連変数(例えば、関与する反応の開始及び速度)と機械関連変数(例えば、研磨パッドの表面摩擦係数及び粘弾性)とのうちの両方が、強く温度に依存する。その結果、研磨パッドの表面温度の変動が、除去速度、研磨均一性、浸食、ディッシング、及び残留物の変化をもたらし得る。研磨中に研磨パッドの表面の温度をより厳密に制御することによって、温度の変動を低減させることができ、例えば、ウエハ内の不均一性又はウエハ間の不均一性として測定されるような研磨性能を改善することができる。
【0023】
温度制御のための幾つかの技法が提案されている。一例として、プラテンを通してクーラント(coolant)を流すことができる。別の一例として、研磨パッドに供給される研磨液の温度を制御することができる。しかし、これらの技法は不十分であり得る。例えば、プラテンは、研磨面の温度を制御するために、研磨パッド自体の本体を通して熱を供給するか、引き込む必要がある。研磨パッドは、典型的には、プラスチック材料であり、熱伝導が乏しいので、プラテンからの熱制御は困難であり得る。他方、研磨液は顕著な熱質量を有さない場合がある。
【0024】
これらの問題に対処できる技法は、温度制御された媒体(例えば、液体、蒸気、又は霧)を研磨パッドの研磨面(又は研磨パッド上の研磨液)上に供給する専用の温度制御システム(研磨液の供給とは別の)を有することである。
【0025】
更なる課題は、温度上昇が、CMP工程中に回転する研磨パッドの半径に沿ってしばしば均一ではないことである。いかなる特定の理論にも限定されないが、研磨ヘッドとパッド調整器との異なる掃引プロファイルは、時には研磨パッドの各半径方向ゾーンにおいて異なる滞留時間を有することがある。更に、研磨パッドと研磨ヘッド及び/又はパッド調整器との間の相対線形速度も、研磨パッドの半径に沿って変化する。更に、研磨液は、ヒートシンクとして作用することができ、研磨液が分注される領域内の研磨パッドを冷却する。これらの効果は、研磨パッド表面上の不均一な熱生成に寄与する可能性があり、その結果、ウエハ内の除去速度のばらつきをもたらし得る。
【0026】
これらの課題に対処し得る技法は、研磨パッドの半径に沿って間隔を空けて配置された、複数の独立に制御される分注器を有することである。これにより、媒体の温度をパッドの長さに沿って変化させることができ、したがって、研磨パッドの温度を半径方向において制御することができる。これらの課題に対処し得る別の技法は、研磨パッドの半径に沿って不均一に間隔を空けて配置された分注器を有することである。
【0027】
図1及び
図2は、化学機械研磨システムの研磨ステーション20の一実施例を示している。研磨ステーション20は、回転可能な円盤形状のプラテン24を含み、研磨パッド30はプラテン24上にある。プラテン24は、軸25の周りを回転するように動作可能である(
図2の矢印A参照)。例えば、モータ22が、駆動シャフト28を回して、プラテン24を回転させることができる。研磨パッド30は、外側研磨層34とより軟性のバッキング層32とを有する、二層研磨パッドであってよい。
【0028】
研磨ステーション20は、研磨パッド30上に研磨液38(研磨スラリなど)を分注するために、例えば、スラリ供給アーム39の端部に供給ポートを含むことができる。研磨ステーション20は、研磨パッド30の表面粗さを維持するために、調整ディスク92(
図2参照)を有するパッド調整器装置90を含むことができる。調整ディスク92は、研磨パッド30を半径方向に横断してディスク92を掃引するように揺動できるアーム92の端部に配置することができる。
【0029】
キャリアヘッド70は、研磨パッド30に対して基板10を保持するように動作可能である。キャリアヘッド70が軸71の周りで回転し得るように、キャリアヘッド70は、支持構造物72(例えば、カルーセル又はトラック)から吊り下げられ、駆動シャフト74によってキャリアヘッド回転モータ76に連結される。任意選択的に、キャリアヘッド70は、側方に、例えば、カルーセル上のスライダ上で、トラックに沿った移動によって、又はカルーセル自体の回転振動によって、振動することができる。
【0030】
キャリアヘッド70は、基板を保持するための保持リング84を含むことができる。幾つかの実施態様では、保持リング84が、研磨パッドに接触する下側プラスチック部分86と、より硬い材料の上側部分88とを含むことができる。
【0031】
動作中、プラテンは、その中心軸25の周りで回転し、キャリアヘッドは、その中心軸71の周りで回転し、研磨パッド30の上面にわたり側方に平行移動する。
【0032】
キャリアヘッド70は、基板10の裏側に接触する基板装着面を有する可撓性膜80と、基板10上の種々のゾーン(例えば、種々の半径方向ゾーン)に異なる圧力を加えるための複数の加圧可能チャンバ82とを含み得る。キャリアヘッドは、基板を保持するための保持リング84も含み得る。
【0033】
幾つかの実施態様では、研磨ステーション20が、研磨ステーション内の温度又は研磨ステーションの/研磨ステーション内の構成要素の温度(例えば、研磨パッド及び/若しくは研磨パッド上のスラリの温度)をモニタするためのセンサ64を含む。例えば、温度センサ64は、研磨パッド30の上方に配置され、研磨パッド30及び/又は研磨パッド上のスラリ38の温度を測定するように構成された赤外線(IR)センサ(例えば、IRカメラ)であってよい。特に、温度センサ64は、半径方向温度プロファイルを生成するために、研磨パッド30の半径に沿った複数のポイントで温度を測定するように構成され得る。例えば、IRカメラは、研磨パッド30の半径に及ぶ視野を有することができる。
【0034】
幾つかの実施態様では、温度センサが、非接触センサではなく接触センサである。例えば、温度センサ64は、プラテン24上又はプラテン24内に配置された熱電対又はIR温度計であってよい。更に、温度センサ64は、研磨パッドと直接接触してもよい。
【0035】
幾つかの実施態様では、研磨パッド30の半径に沿った複数のポイントで温度を提供するために、研磨パッド30を横断する種々の半径方向位置に複数の温度センサを間隔を空けて配置することができる。この技法は、IRカメラと代替的に又は追加的に使用することができる。
【0036】
研磨パッド30の及び/又はパッド30上のスラリ38の温度をモニタするために配置されるように
図1では示されているが、温度センサ64は、基板10の温度を測定するために、キャリアヘッド70の内側に配置されてもよい。温度センサ64は、基板10の半導体ウエハと直接接触(すなわち、接触するセンサ)することができる。幾つかの実施態様では、例えば、研磨ステーションの/研磨ステーション内の種々の構成要素の温度を測定するために、複数の温度センサが、研磨ステーション22内に含まれる。
【0037】
研磨システム20はまた、研磨パッド30及び/又は研磨パッド上のスラリ38の温度を制御するための温度制御システム100も含む。温度制御システム100は、冷却システム102及び/又は加熱システム104を含んでよい。冷却システム102及び加熱システム104のうちの少なくとも1つ、並びに幾つかの実施態様では両方ともが、研磨パッド30の研磨面36上に(又は研磨パッド上に既に存在する研磨液上に)、温度制御媒体(例えば、液体、蒸気、又は霧)を供給することによって動作する。
【0038】
冷却システム102では、冷却媒体が、気体(例えば空気)又は液体(例えば水)であってよい。媒体は、室温であってよく、又は室温未満(例えば、摂氏5~15度)に冷やされ得る。幾つかの実施態様では、冷却システム102が、空気と液体との霧(例えば、水などの液体のエアロゾル化された霧)を使用する。特に、冷却システムは、室温未満に冷やされる水のエアロゾル化された霧を生成するノズルを有することができる。幾つかの実施態様では、固体材料を気体及び/又は液体と混合することができる。固体材料は、冷やされた材料(例えば氷)、又は水内で溶解されたときに(例えば化学反応によって)熱を吸収する材料であってよい。
【0039】
冷却媒体は、クーラント供給アーム内の1以上の開孔(例えば、任意選択的にノズル内に形成された孔又はスロット)を貫通して流れることによって供給され得る。開孔は、クーラントの供給源に連結されたマニホールドによって設けられ得る。
【0040】
図1及び
図2で示されているように、例示的な冷却システム102は、研磨パッドの縁部から研磨パッド30の中心に又はその中心の近くに(例えば、研磨パッドの全半径の5%以内に)、プラテン24及び研磨パッド30の上で延在するアーム110を含む。アーム110は、ベース112によって支持されてよく、ベース112は、プラテン24と同じフレーム40上に支持されてよい。ベース112は、1以上のアクチュエータ、例えば、アーム110を上昇させ若しくは下降させるリニアアクチュエータ、及び/又は、プラテン24の上でアーム110を側方に揺動させる回転アクチュエータを含んでよい。アーム110は、研磨ヘッド70、パッド調整ディスク92、及びスラリ分注アーム39などの他のハードウェア構成要素との衝突を回避するように配置される。
【0041】
例示的な冷却システム102は、アーム110から吊り下げられた複数のノズル120を含む。各ノズル120は、液体冷却媒体(例えば水)を研磨パッド30上に噴霧するように構成される。アーム110は、ノズル120が間隙126によって研磨パッド30から分離されるように、ベース112によって支持され得る。
【0042】
各ノズル120は、霧122内のエアロゾル化された水を研磨パッド30に向けるように構成され得る。冷却システム102は、液体冷却媒体の供給源130と、ガス源132(
図2参照)とを含み得る。供給源130からの液体及び供給源132からの気体は、霧122を生成するためにノズル120を通して導かれる前に、例えばアーム110内又はアーム110上の混合チャンバ134(
図1参照)内で混合され得る。
【0043】
幾つかの実施態様では、プロセスパラメータ、例えば、流量、圧力、温度、及び/又は液体と気体との混合比を、各ノズルについて独立して制御することができる。例えば、各ノズル120用のクーラントは、独立して制御可能な冷却器を通って流れて、霧の温度を独立して制御することができる。別の一実施例として、気体用と液体用の別々のポンプの組を各ノズルに連結して、流量、圧力、及び気体と液体との混合比を、各ノズルについて独立して制御することができる。
【0044】
様々なノズルは、研磨パッド30上の種々の半径方向ゾーン124上に噴霧することができる。隣接する半径方向ゾーン124は、オーバーラップしてよい。幾つかの実施態様では、ノズル120が、細長い領域128に沿って研磨パッド30に衝突する霧を生成する。例えば、ノズルは、概して平面的な三角形の空間内に霧を生成するように構成され得る。
【0045】
細長い領域128のうちの1以上、例えば細長い領域128の全ては、領域128を通って延びる半径に平行な長手軸を有し得る(領域128a参照)。代替的に、ノズル120は、円錐状の霧を生成する。
【0046】
図1は、霧自体がオーバーラップしている状態を示しているが、ノズル120は、細長い領域がオーバーラップしないように配向されてよい。例えば、少なくとも一部のノズル120、例えば全てのノズル120は、細長い領域128が、細長い領域を通過する半径に対して斜角となるように配向されてよい(128b参照)。
【0047】
少なくとも一部のノズル120は、そのノズルからの噴霧(矢印A参照)の中心軸が、研磨面36に対して斜角となるように配向されてよい。特に、霧122は、プラテン24の回転によって生じる衝突の領域内で、研磨パッド30の移動の方向とは反対側の方向の水平成分を有するように(矢印A参照)、ノズル120から向けられ得る。
【0048】
図1及び
図2は、ノズル120が均一な間隔を空けて配置されるように示しているが、これは必ずしも必要ではない。ノズル120は、半径方向に若しくは角度的にのいずれかで又はそれらの両方で不均一に分散されてよい。例えば、ノズル120は、研磨パッド30の縁部に向けて半径方向に沿って、より密にクラスタ化することができる。
図1及び
図2は、9つのノズルを示しているが、より多い又は少ない数のノズル(例えば、3から20個のノズル)が存在してよい。
【0049】
加熱システム104では、加熱媒体が、気体(例えば、スチーム若しくは加熱された空気)若しくは液体(例えば、加熱された水)又は気体と液体との組み合わせであってよい。媒体は、室温よりも上(例えば、摂氏40~120度、例えば、摂氏90~110度)である。媒体は、水(実質的に純粋な脱イオン水、又は添加物若しくは化学物質を含む水)であってよい。幾つかの実施態様では、加熱システム104が、スチームの噴霧を使用する。スチームは、添加物又は化学物質を含み得る。
【0050】
加熱媒体は、加熱供給アーム上の開孔(例えば、1以上のノズルによって設けられる例えば孔又はスロット)を通って流れることによって供給され得る。開孔は、加熱媒体の供給源に連結されたマニホールドによって設けられ得る。
【0051】
例示的な加熱システム104は、研磨パッドの縁部から研磨パッド30の中心に又はその中心の近くに(例えば、研磨パッドの全半径の5%以内に)、プラテン24及び研磨パッド30の上で延在するアーム140を含む。アーム140は、ベース142によって支持されてよく、ベース142は、プラテン24と同じフレーム40上に支持されてよい。ベース142は、1以上のアクチュエータ、例えば、アーム140を上昇させ若しくは下降させるリニアアクチュエータ、及び/又は、プラテン24の上でアーム140を側方に揺動させる回転アクチュエータを含んでよい。アーム140は、研磨ヘッド70、パッド調整ディスク92、及びスラリ分注アーム39などの他のハードウェア構成要素との衝突を回避するように配置される。
【0052】
プラテン24の回転方向に沿って、加熱システム104のアーム140を、冷却システム102のアーム110とキャリアヘッド70との間に配置することができる。プラテン24の回転方向に沿って、加熱システム104のアーム140は、冷却システム102のアーム110とスラリ供給アーム39との間に配置することができる。例えば、冷却システム102のアーム110、加熱システム104のアーム140、スラリ供給アーム39、及びキャリアヘッド70は、この順序でプラテン24の回転方向に沿って配置することができる。
【0053】
アーム140の下面内には複数の開口部144が形成される。各開口部144は、気体又は蒸気(vapor)、例えばスチーム(steam)を研磨パッド30上に向けるように構成される。アーム140は、開口部144が間隙によって研磨パッド30から分離されるように、ベース142によって支持されてよい。間隙は、0.5~5mmであってよい。特に、間隙は、流体が研磨パッドに到達する前に、加熱流体の熱が著しく消散しないように選択されてよい。例えば、開口部から放出されたスチームが研磨パッドに到達する前に凝縮しないように、間隙を選択することができる。
【0054】
加熱システム104は、配管によってアーム140に連結することができる、スチームの供給源146を含んでよい。各開口部144は、スチームを研磨パッド30に向けるように構成されてよい。
【0055】
幾つかの実施態様では、プロセスパラメータ、例えば、流量、圧力、温度、及び/又は液体と気体と混合比を、各ノズルについて独立して制御することができる。例えば、各開口部144用の流体は、独立して制御可能なヒータを通って流れて、加熱流体の温度、例えばスチームの温度を独立して制御することができる。
【0056】
様々な開口部144は、研磨パッド30上の異なる半径方向ゾーン上にスチームを向けることができる。隣接する半径方向ゾーンは、オーバーラップし得る。任意選択的に、開口部144の一部は、その開口部からの噴霧の中心軸が、研磨面36に対して斜角となるように配向されてよい。スチームは、プラテン24の回転によって生じる衝突の領域内で、研磨パッド30の移動の方向とは反対側の方向の水平成分を有するように、開口部144のうちの1以上から向けられ得る。
【0057】
図2は、開口部144が均一な間隔を空けて配置されるように示しているが、これは必ずしも必要ではない。ノズル120は、半径方向に若しくは角度的にのいずれかで又はそれらの両方で不均一に分散されてよい。例えば、開口部144は、研磨パッド30の中心に向けて、より密にクラスタ化することができる。別の一実施例として、開口部144は、研磨液38がスラリ供給アーム39によって研磨パッド30に供給される半径に対応する半径において、より密にクラスタ化することができる。更に、
図2は、9つの開口部を示しているが、より多くの又はより少ない数の開口部が存在してもよい。
【0058】
研磨システム20はまた、高圧リンスシステム106も含み得る。高圧リンスシステム106は、パッド30を洗浄し、使用済みスラリや研磨屑などを除去するために、洗浄流体、例えば水を研磨パッド30上に高強度で向ける複数のノズル154(例えば、3から20個のノズル)を含む。
【0059】
図2で示されているように、例示的なリンスシステム106は、研磨パッドの縁部から研磨パッド30の中心に又はその中心の近くに(例えば、研磨パッドの全半径の5%以内に)、プラテン24及び研磨パッド30の上で延在するアーム150を含む。アーム150は、ベース152によって支持されてよく、ベース152は、プラテン24と同じフレーム40上に支持されてよい。ベース152は、1以上のアクチュエータ、例えば、アーム150を上昇させ若しくは下降させるリニアアクチュエータ、及び/又は、プラテン24の上でアーム150を側方に揺動させる回転アクチュエータを含んでよい。アーム150は、研磨ヘッド70、パッド調整ディスク92、及びスラリ分注アーム39などの他のハードウェア構成要素との衝突を回避するように配置される。
【0060】
プラテン24の回転方向に沿って、リンスシステム106のアーム150は、冷却システム102のアーム110と加熱システム104のアーム140との間にあってよい。例えば、冷却システム102のアーム110、リンスシステム106のアーム150、加熱システム104のアーム140、スラリ供給アーム39、及びキャリアヘッド70は、この順序でプラテン24の回転方向に沿って配置することができる。代替的に、プラテン24の回転方向に沿って、冷却システム102のアーム110は、リンスシステム106のアーム150と加熱システム104のアーム140との間にあってよい。例えば、リンスシステム106のアーム150、冷却システム102のアーム110、加熱システム104のアーム140、スラリ供給アーム39、及びキャリアヘッド70は、この順序でプラテン24の回転方向に沿って配置することができる。
【0061】
複数のノズル154が、アーム150から吊り下げられる。各ノズル154は、研磨パッド30に高圧で洗浄液を噴霧するように構成される。アーム150は、ノズル120が間隙によって研磨パッド30から分離されるように、ベース152によって支持することができる。リンスシステム106は、配管によってアーム150に連結することができる、洗浄流体の供給源156を含み得る。
【0062】
様々なノズル154は、研磨パッド30上の種々の半径方向ゾーン上に噴霧することができる。隣接する半径方向ゾーンは、オーバーラップし得る。幾つかの実施態様では、ノズル154は、研磨パッド上の洗浄液の衝突領域がオーバーラップしないように配向される。例えば、少なくとも一部のノズル154は、衝突領域が角度的に分離されるように、配置され且つ方向付けられてよい。
【0063】
少なくとも一部のノズル154は、そのノズルからの噴霧の中心軸が、研磨面36に対して斜角となるように配向されてよい。特に、洗浄流体は、各ノズル154から、半径方向外向き(研磨パッドの縁部に向けて)の水平成分を有するように噴霧することができる。これにより、洗浄流体がパッド30からより迅速に剥がれ落ち、研磨パッド30上に流体のより薄い領域を残すことができる。これは、加熱及び/又は冷却媒体と研磨パッド30との間の熱的結合を可能にする。
【0064】
図2は、開口部154が均一な間隔で配置されるように示しているが、これは必ずしも必要ではない。更に、
図1及び
図2は、9つのノズルを示しているが、より多い又は少ない数のノズル(例えば、3から20個のノズル)が存在してもよい。
【0065】
研磨システム20はまた、様々な構成要素、例えば温度制御システム100の動作を制御するためのコントローラ90も含んでよい。コントローラ90は、研磨パッドの各半径方向ゾーンについて温度センサ64から温度測定値を受け取るように構成される。コントローラ90は、測定された温度プロファイルを所望の温度プロファイルと比較し、各ノズル又は開口部についての制御機構(例えば、アクチュエータ、電源、ポンプ、バルブなど)へのフィードバック信号を生成することができる。フィードバック信号は、例えば、内部フィードバックアルゴリズムに基づいて、コントローラ90によって計算されて、研磨パッド及び/又はスラリが所望の温度プロファイルに達する(又は少なくともそれに近づく)ように、制御機構に冷却又は加熱の量を調整させる。
【0066】
図2は、各サブシステム、例えば、加熱システム104、冷却システム102、及びリンスシステム106のための別個のアームを示しており、様々なサブシステムを、共通のアームによって支持された単一のアセンブリ内に含めることができる。例えば、アセンブリは、冷却モジュール、リンスモジュール、加熱モジュール、スラリ供給モジュール、及び任意選択的なワイパーモジュールを含んでよい。各モジュールは、共通の取り付けプレートに固定することができる本体、例えば弓形の本体を含むことができ、共通の取り付けプレートをアームの端部に固定して、アセンブリが研磨パッド30の上方に配置されるようにすることができる。様々な流体供給構成要素、例えば管類や通路などは、各本体の内側で延在してよい。幾つかの実施形態では、モジュールが、取り付けプレートから個別に取り外し可能である。各モジュールは、上述した関連するシステムのアームの機能を実行するための同様の構成要素を有することができる。
【0067】
上記の研磨装置及び方法は、様々な研磨システムに対して適用することができる。研磨パッド若しくはキャリアヘッドの何れか、又はこれらの両方が移動して、研磨面と基板との間の相対運動を起こすことができる。例えば、プラテンは、回転するのではなく軌道を回ることができる。研磨パッドは、プラテンに固定された円形状(又は何らかの他の形状)のパッドとすることができる。研磨層は、標準的な(例えば、充填剤を含むか若しくは含まないポリウレタン)研磨材料、軟質材料、又は固定研磨材料とすることができる。
【0068】
相対的な配置の用語は、システム又は基板内の相対的な配置を指すために使用され、研磨面及び基板は、研磨動作中、垂直方向又は他の何らかの方向に保持され得ることを理解されたい。
【0069】
コントローラ90の機能動作は、データ処理装置、例えば、プログラマブルプロセッサ、コンピュータ、又は複数のプロセッサやコンピュータの動作を実行若しくは制御するために、1以上のコンピュータプログラム製品、すなわち、非一過性のコンピュータ可読記憶媒体内に有形に具体化された1以上のコンピュータプログラムを使用して実現することができる。
【0070】
本発明の数多くの実施形態について説明した。しかし、本発明の本質及び範囲から逸脱しない限り、様々な修正が行われ得ることを理解されたい。
【0071】
例えば、上記の説明は、加熱媒体及び/又は冷却媒体を研磨パッド上に供給することに焦点を当てているが、加熱媒体及び/又は冷却媒体を他の構成要素上に供給して、これらの構成要素の温度を制御することができる。例えば、基板が移送ステーション、例えばロードカップ内に配置されている間に、加熱媒体及び/又は冷却媒体を基板上に噴霧することができる。別の一例として、ロードカップ自体に、加熱媒体及び/又は冷却媒体を噴霧することができる。更に別の一例として、調整ディスクに加熱媒体及び/又は冷却媒体を噴霧することができる。
【0072】
したがって、その他の実施形態も下記の特許請求の範囲内にある。