(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-12
(45)【発行日】2025-02-20
(54)【発明の名称】半導体洗浄用薬液および半導体洗浄用薬液の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20250213BHJP
C07C 31/10 20060101ALI20250213BHJP
C07C 29/04 20060101ALI20250213BHJP
C11D 7/26 20060101ALI20250213BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20250213BHJP
【FI】
H01L21/304 647A
C07C31/10
C07C29/04
C11D7/26
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2024551616
(86)(22)【出願日】2024-05-07
(86)【国際出願番号】 JP2024016925
【審査請求日】2024-08-29
(31)【優先権主張番号】P 2023096884
(32)【優先日】2023-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100136939
【氏名又は名称】岸武 弘樹
(74)【代理人】
【識別番号】100087893
【氏名又は名称】中馬 典嗣
(72)【発明者】
【氏名】保坂 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】徳永 貴史
(72)【発明者】
【氏名】山下 義晶
【審査官】庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-121160(JP,A)
【文献】国際公開第2017/217279(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/200936(WO,A1)
【文献】国際公開第2023/176192(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
C07C 31/10
C07C 29/04
C11D 7/26
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的にイソプロピルアルコールからなる半導体
洗浄用薬液であって、
t-ブチルアルコールの含有率が1000質量ppb以下であり、
エチルアルコールの含有率が1000質量ppb以下であり、
炭素数が6であるアルコールの含有率が1質量ppb以下である、半導体
洗浄用薬液。
【請求項2】
実質的にイソプロピルアルコールからなる半導体
洗浄用薬液を製造する方法であって、
プロピレンを含み、イソブテンの含有率が1体積ppm以下であり、エチレンの含有率が1体積ppm以下である原料ガスおよび原料水を連続反応器に供給して、反応させる工程を含み、
前記反応させる際に、前記連続反応器は、気相部および液相部が存在し、前記気相部からガス成分を排出し、
前記連続反応器に供給される、原料水に対する原料ガスの質量比が0.01以上0.20以下であり、
前記連続反応器に供給される原料水の供給速度[L/分]に対する前記液相部の容積[L]の比である、前記連続反応器内の前記原料水の滞在時間が10分以上25分以下であり、
前記連続反応器から排出されるガス成分の排出速度[L/分]に対する前記気相部の容積[L]の比である、前記連続反応器内の前記ガス成分の滞在時間が10分以上150分以下であり、
前記連続反応器に供給される原料ガスの供給量に対する前記連続反応器から排出されるガス成分の排出量の体積比が0.03以上0.30以下である、半導体
洗浄用薬液の製造方法。
【請求項3】
前記液相部から粗イソプロピルアルコール水溶液を回収する工程と、
前記粗イソプロピルアルコール水溶液を高沸蒸留塔で蒸留する工程と、をさらに含む、請求項2に記載の半導体
洗浄用薬液の製造方法。
【請求項4】
前記原料ガスは、プロピレンの含有率が99体積%以上である、請求項2または3に記載の半導体
洗浄用薬液の製造方法。
【請求項5】
前記連続反応器内の温度が200℃以上300℃以下であり、
前記連続反応器内の圧力が150atm以上280atm以下である、請求項2または3に記載の半導体
洗浄用薬液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体薬液および半導体薬液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造プロセスにおいては、半導体基板、ガラス基板等の基板を半導体薬液で洗浄した後、乾燥させる。半導体薬液としては、例えば、イソプロピルアルコールが用いられている。
【0003】
特許文献1には、プロピレンの直接水和法により、イソプロピルアルコールを製造する方法が記載されている。このとき、反応器内において、プロピレンと水とを反応させるが、反応器内におけるプロピレンおよび水の割合が、プロピレン100質量部に対して水が1300~2100質量部であり、反応器内における水の滞在時間が、20分を超え、50分以下である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されているイソプロピルアルコールの製造方法において、プロピレンの純度が高い原料ガスを使用すると、t-ブチルアルコール(2-メチル-2-プロピルアルコール)およびエチルアルコールが副生する。このため、半導体薬液中のt-ブチルアルコールおよびエチルアルコールの含有率を低減することが望まれている。
【0006】
しかしながら、t-ブチルアルコールおよびエチルアルコールは、イソプロピルアルコールとの沸点の差が小さい上に、イソプロピルアルコールと共沸するため、蒸留により、半導体薬液中のt-ブチルアルコールおよびエチルアルコールの含有率を低減することは非常に困難である。
【0007】
なお、不純物として、t-ブチルアルコールが含まれる半導体薬液を使用すると、t-ブチルアルコールの残渣が半導体デバイスに悪影響を及ぼすことが懸念される。t-ブチルアルコールは、融点が26℃であり、常温で固体であるため、残渣となりやすいと推測される。
【0008】
本発明は、t-ブチルアルコールおよびエチルアルコールの含有率が低減した半導体薬液ならびにt-ブチルアルコールおよびエチルアルコールの含有率を低減させることが可能な半導体薬液の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)実質的にイソプロピルアルコールからなる半導体薬液であって、t-ブチルアルコールの含有率が1000質量ppb以下であり、エチルアルコールの含有率が1000質量ppb以下である、半導体薬液。
【0010】
(2)さらに、炭素数が6であるアルコールの含有率が1質量ppb以下である、半導体薬液。
【0011】
(3)実質的にイソプロピルアルコールからなる半導体薬液を製造する方法であって、プロピレンを含み、イソブテンの含有率が1体積ppm以下であり、エチレンの含有率が1体積ppm以下である原料ガスおよび原料水を連続反応器に供給して、反応させる工程を含み、前記反応させる際に、前記連続反応器は、気相部および液相部が存在し、前記気相部からガス成分を排出し、前記連続反応器に供給される、原料水に対する原料ガスの質量比が0.01以上0.20以下であり、前記連続反応器に供給される原料水の供給速度[L/分]に対する前記液相部の容積[L]の比である、前記連続反応器内の前記原料水の滞在時間が10分以上25分以下であり、前記連続反応器から排出されるガス成分の排出速度[L/分]に対する前記気相部の容積[L]の比である、前記連続反応器内の前記ガス成分の滞在時間が10分以上150分以下であり、前記連続反応器に供給される原料ガスの供給量に対する前記連続反応器から排出されるガス成分の排出量の体積比が0.03以上0.30以下である、半導体薬液の製造方法。
【0012】
(4)前記液相部から粗イソプロピルアルコール水溶液を回収する工程と、前記粗イソプロピルアルコール水溶液を高沸蒸留塔で蒸留する工程と、をさらに含む、(3)に記載の半導体薬液の製造方法。
【0013】
(5)前記原料ガスは、プロピレンの含有率が99体積%以上である、(3)または(4)に記載の半導体薬液の製造方法。
【0014】
(6)前記連続反応器内の温度が200℃以上300℃以下であり、前記連続反応器内の圧力が150atm以上280atm以下である、(3)から(5)のいずれか一項に記載の半導体薬液の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、t-ブチルアルコールおよびエチルアルコールの含有率が減少した半導体薬液ならびにt-ブチルアルコールおよびエチルアルコールの含有率を減少させることが可能な半導体薬液の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態の半導体薬液の製造方法における反応工程の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
[半導体薬液の製造方法]
本実施形態の半導体薬液の製造方法は、実質的にイソプロピルアルコールからなる半導体薬液を製造する方法であり、連続反応器に原料ガスおよび原料水を供給して、反応させる工程(以下、反応工程という)を含む。本実施形態の半導体薬液の製造方法は、回収工程、精製工程等の工程をさらに含んでいてもよい。
【0019】
(原料ガス)
原料ガスは、プロピレンを含み、プロピレンの含有率は、99体積%以上であることが好ましく、99.9体積%以上であることがさらに好ましい。
【0020】
後述するように、イソブテンおよびエチレンは、水和すると、それぞれt-ブチルアルコールおよびエチルアルコールが生成するため、原料ガス中のイソブテンおよびエチレンの含有量が少ない方がよい。原料ガス中のイソブテンの含有率は、1体積ppm以下であり、0.5体積ppm以下であることが好ましく、0.1体積ppm以下であることがさらに好ましい。また、原料ガス中のエチレンの含有率は、1体積ppm以下であり、0.5体積ppm以下であることが好ましく、0.1体積ppm以下であることがさらに好ましい。なお、原料ガスは、必要に応じて、窒素ガス等の不活性ガスを含んでいてもよい。
【0021】
後述するように、炭素数が6であるアルケンは、不均化すると、イソブテンおよびエチレンが生成する可能性があるため、原料ガス中の炭素数が6であるアルケンの含有量が少ない方がよい。原料ガス中の炭素数が6であるアルケンの含有率は、1体積ppm以下であることが好ましく、0.5体積ppm以下であることがより好ましく、0.1体積ppm以下であることがさらに好ましい。
【0022】
(原料水)
原料水は、水を含むが、酸触媒をさらに含むことが好ましい。酸触媒としては、例えば、リンタングステン酸、ケイタングステン酸、ケイモリブデン酸が挙げられ、二種以上を併用してもよい。原料水が酸触媒を含む場合、原料水の25℃におけるpHは、2.5以上4.5以下であることが好ましい。原料水の25℃におけるpHが2.5以上4.5以下であると、プロピレンの転化率およびイソプロピルアルコールの選択率が向上する。
【0023】
(反応工程)
図1を用いて、反応工程の一例について説明する。連続反応器1に原料ガスおよび原料水を供給すると、連続反応器1の上部に、原料ガスを含む気相部Gが存在し、連続反応器1の下部に、原料水を含む液相部Lが存在する。ここで、反応工程で生成したイソプロピルアルコールは、液相部Lに含まれる。また、連続反応器1に原料ガスおよび原料水を供給する際に、制御弁2の開閉を繰り返すことにより、気相部Gからガス成分を排出する。このため、プロピレンの純度が高い原料ガスを使用しても、気相部Gに原料ガスが滞在する時間が短くなるため、プロピレンの二量化が抑制され、その結果、半導体薬液中のt-ブチルアルコール、エチルアルコールおよび炭素数が6であるアルコールの含有率が低減する。
【0024】
その理由は明らかではないが、以下のような理由が推測される。プロピレンの純度が高い原料ガスを使用した場合に、連続反応器1の上部からガス成分を排出しないと、プロピレンが二量化して、4-メチル-1-ペンテン等の炭素数が6であるアルケンが生成しやすくなる。その結果、炭素数が6であるアルケンが不均化して、イソブテンおよびエチレンが生成した後、イソブテンおよびエチレンが水和して、t-ブチルアルコールおよびエチルアルコールが生成する(下記反応機構参照)。なお、不均化しなかった炭素数が6であるアルケンが水和すると、4-メチル-2-ペンチルアルコール等の炭素数が6であるアルコールが生成する。
【0025】
【0026】
連続反応器1に供給される、原料水に対する原料ガスの質量比は、0.01以上0.20以下であり、0.02以上0.07以下であることが好ましく、0.03以上0.05以下であることがさらに好ましい。連続反応器1に供給される、原料水に対する原料ガスの質量比が0.01未満であると、半導体薬液の生産性が低下し、0.20を超えると、半導体薬液中のt-ブチルアルコール、エチルアルコールおよび炭素数が6であるアルコールの含有率が増大する。
【0027】
連続反応器1に供給される原料ガスの供給量に対する連続反応器1から排出されるガス成分の排出量の体積比は、0.03以上0.30以下であり、0.11以上0.16以下であることが好ましい。連続反応器1に供給される原料ガスの供給量に対する連続反応器1から排出されるガス成分の排出量の比が0.03未満であると、半導体薬液中のt-ブチルアルコール、エチルアルコールおよび炭素数が6であるアルコールの含有率が増大し、0.30を超えると、プロピレンの転化率が低下する。
【0028】
ここで、連続反応器1から排出されるガス成分には、原料水に含まれる水、原料ガスに含まれるプロピレン、原料ガスに含まれる不純物(例えば、プロパン)、主生成物(イソプロピルアルコール)、副生成物(例えば、ヘキセン、イソブテン、エチレン)等が含まれる。ヘキセンには、不均化してイソブテン、エチレンとなる可能性のある4-メチル-1-ペンテン等が含まれる。連続反応器1から排出されるガス成分中のイソブテンおよびエチレンの含有率が増大すると、半導体薬液中のt-ブチルアルコールおよびエチルアルコールの含有率が増大する。このため、連続反応器1から排出されるガス成分中のイソブテンの含有率は、0.1体積ppm以上20体積ppm以下であることが好ましく、1体積ppm以上8体積ppm以下であることがさらに好ましい。また、連続反応器1から排出されるガス成分中のエチレンの含有率は、0.1体積ppm以上20体積ppm以下であることが好ましく、1体積ppm以上5体積ppm以下であることがさらに好ましい。
【0029】
連続反応器1内の原料水の滞在時間は、10分以上25分以下であり、12分以上18分以下であることが好ましい。連続反応器1内の原料水の滞在時間が10分未満であると、プロピレンの転化率が低下し、25分を超えると、半導体薬液中のt-ブチルアルコール、エチルアルコールおよび炭素数が6であるアルコールの含有率が増大する。
【0030】
なお、連続反応器1内の原料水の滞在時間は、式
(連続反応器1の液相部Lの容積[L])/(原料水の供給速度[L/min])
により求められる。
【0031】
連続反応器1内のガス成分の滞在時間は、10分以上150分以下であり、30分以上100分以下であることが好ましい。連続反応器1内のガス成分の滞在時間が10分未満であると、プロピレンの転化率が低下し、150分を超えると、半導体薬液中のt-ブチルアルコール、エチルアルコールおよび炭素数が6であるアルコールの含有率が増大する。
【0032】
なお、連続反応器1内のガス成分の滞在時間は、式
(連続反応器1の気相部Gの容積[L])/(ガス成分の排出速度[L/min])
により求められる。連続反応器1内は、高温高圧であるが、連続反応器1内から排出されたガス成分の温度、圧力を、それぞれ25℃、101kPa(絶対圧)にした後に、液相、気相を分析することで、連続反応器1の温度・圧力状態におけるガス成分の排出速度を求めることができる。
【0033】
連続反応器1内の温度は、200℃以上300℃以下であることが好ましく、250℃以上280℃以下であることがさらに好ましい。連続反応器1内の温度が200℃以上であると、プロピレンの転化率が向上し、300℃以下であると、半導体薬液中のt-ブチルアルコール、エチルアルコールおよび炭素数が6であるアルコールの含有率が低減する。
【0034】
連続反応器1内の圧力は、150atm以上280atm以下であることが好ましく、200atm以上255atm以下であることがさらに好ましい。連続反応器1内の圧力が150atm以上であると、プロピレンの転化率が向上し、280atm以下であると、半導体薬液中のt-ブチルアルコール、エチルアルコールおよび炭素数が6であるアルコールの含有率が低減する。
【0035】
プロピレンの転化率は、85%以上97%以下であることが好ましく、92%以上95%以下であることがさらに好ましい。また、イソプロピルアルコールの選択率は、99%以上99.9%以下であることが好ましく、99.5%以上99.8%以下であることがさらに好ましい。
【0036】
なお、プロピレンの転化率は、連続反応器1に供給されたプロピレンの供給量と系外に排出されたプロピレンの排出量から求められる。系外に排出されるプロピレンとしては、例えば、制御弁2(
図1参照)を経由して、連続反応器1の気相部Gから排出されるプロピレン、後述する回収工程、精製工程から反応工程に戻さずに系外に排出されるプロピレンが挙げられる。
【0037】
(回収工程)
連続反応器1の液相部Lから、反応工程で生成したイソプロピルアルコールおよび原料水を含む液体成分が排出され、回収塔に輸送される。このとき、回収塔内の温度および圧力を、それぞれ所定の範囲とすることで、液体成分に含まれる水に溶解しているプロピレンが分離され、粗イソプロピルアルコール水溶液が回収される。ここで、回収塔の温度は、80℃以上200℃以下であることが好ましく、100℃以上150℃以下であることがより好ましい。また、回収塔の圧力は、100kPa以上5000kPa以下(絶対圧)であることが好ましく、500kPa以上2000kPa以下(絶対圧)であることがより好ましい。
【0038】
分離されたプロピレンは、ドラムに回収され、原料ガスとして再利用される。粗イソプロピルアルコール水溶液中のイソプロピルアルコールの含有率は、1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、3質量%以上8質量%以下であることがより好ましい。
【0039】
前述したように、従来のイソプロピルアルコールの製造方法において、プロピレンの純度が高い原料ガスを使用すると、t-ブチルアルコールおよびエチルアルコールが副生する。t-ブチルアルコールおよびエチルアルコールは、イソプロピルアルコールとの沸点の差が小さい上に、イソプロピルアルコールと共沸するため、後述する精製工程における蒸留により分離することは非常に困難である。しかしながら、本実施形態によれば、連続反応器1内の原料水の滞在時間および連続反応器1内のガス成分の滞在時間を制御することで、t-ブチルアルコールおよびエチルアルコールが副生量を減少させることができる。このため、粗イソプロピルアルコール水溶液中のイソプロピルアルコールに対するt-ブチルアルコールおよびエチルアルコールの質量比を、それぞれ、1000ppb以下とすることが可能であり、500ppb以下とすることも可能である。また、粗イソプロピルアルコール水溶液中のイソプロピルアルコールに対するt-ブチルアルコールおよびエチルアルコールの質量比は、反応工程および精製工程における費用ならびに収率を考慮すると、それぞれ、10ppb以上であることが好ましく、100ppb以上であることがより好ましく、200ppb以上であることがさらに好ましい。
【0040】
また、本実施形態によれば、炭素数が6であるアルコールの副生量を減少させることもできる。このため、粗イソプロピルアルコール水溶液中のイソプロピルアルコールに対する炭素数が6であるアルコールの質量比を200ppb以上10000ppb以下とすることが可能であり、2000ppb以上5000ppb以下とすることも可能である。特に、4-メチル-1-ペンテンの水和により生成する4-メチル-2-ペンタノールの副生量が減少すると、t-ブチルアルコールおよびエチルアルコールの副生量が減少することに繋がる。このため、粗イソプロピルアルコール水溶液中のイソプロピルアルコールに対する4-メチル-2-ペンタノールの質量比は、1000ppb以上5000ppb以下であることが好ましく、1000ppb以上3000ppb以下であることがより好ましい。本実施形態の半導体薬液中の炭素数が6であるアルコールの含有量は、後述する精製工程において、粗イソプロピルアルコール水溶液を高沸蒸留塔で蒸留することで、さらに低減させることができる。
【0041】
(精製工程)
回収塔で回収された粗イソプロピルアルコール水溶液が排出され、精製される。例えば、低沸蒸留塔における蒸留工程、共沸蒸留塔における蒸留工程、脱水工程および高沸蒸留塔における蒸留工程により、粗イソプロピルアルコール水溶液が精製される。
【0042】
低沸蒸留塔では、イソプロピルアルコールよりも沸点が低い化合物が除去される。イソプロピルアルコールよりも沸点が低い化合物としては、例えば、エチレン、プロピレン、アセトン、ジイソプロピルエーテル、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等が挙げられる。共沸蒸留塔では、水と水より沸点の高い化合物が除去され、イソプロピルアルコールと水との共沸混合物が形成される。脱水工程が脱水蒸留塔で実施される場合、水との共沸混合物を形成することが可能な第3成分を脱水蒸留塔内に加え、水と第3成分との共沸混合物を形成することで、水が除去される。分離された水は、タンクに回収され、原料水として再利用される。高沸蒸留塔では、イソプロピルアルコールよりも沸点が高い化合物が除去される。これにより、本実施形態の半導体薬液中の炭素数が6であるアルコールの含有率を1質量ppb以下に減少させることができ、0.1質量ppb以下に減少させることもできる。高沸蒸留塔から取り出された缶出液をフィルターに通すことで粒子を除去することができる。
【0043】
各蒸留塔における段塔の段数および段塔に換算した蒸留塔の相当段数は、特に制限されないが、5以上320以下であることが好ましく、10以上300以下であることがより好ましい。特に、高沸蒸留塔における段塔の段数および段塔に換算した蒸留塔の相当段数は、5以上20以下であることが好ましい。これにより、本実施形態の半導体薬液中の炭素数が6であるアルコールの含有率を減少させることができる。また、常圧蒸留における環流比は、特に制限されないが、0.5以上50以下であることが好ましく、1以上10以下であることがより好ましい。ここで、常圧とは、90kPa以上120kPa以下(絶対圧)の範囲である。
【0044】
[半導体薬液]
本実施形態の半導体薬液は、実質的にイソプロピルアルコールからなる。本実施形態の半導体薬液中のイソプロピルアルコールの含有率は、99.99質量%以上であることが好ましく、99.999質量%以上であることがさらに好ましい。
【0045】
本実施形態の半導体薬液中のt-ブチルアルコールの含有率は、1000質量ppb以下であり、500質量ppb以下であることがより好ましい。本実施形態の半導体薬液中のt-ブチルアルコールの含有率が1000質量ppb以下であるため、本実施形態の半導体薬液を使用して、基板を洗浄しても、t-ブチルアルコールの残渣が半導体デバイスに及ぼす影響が低減される。本実施形態の半導体薬液中のt-ブチルアルコールの含有率は、反応工程および精製工程の費用および収率を考慮すると、10質量ppb以上であることが好ましく、100質量ppb以上であることがより好ましく、200質量ppb以上であることがさらに好ましい。
【0046】
本実施形態の半導体薬液中のエチルアルコールの含有率は、1000質量ppb以下であり、500質量ppb以下であることがより好ましい。本実施形態の半導体薬液中のエチルアルコールの含有率は、反応工程および精製工程の費用および収率を考慮すると、10質量ppb以上であることが好ましく、100質量ppb以上であることがより好ましく、200質量ppb以上であることがさらに好ましい。
【0047】
本実施形態の半導体薬液に含まれるイソプロピルアルコールは、本実施形態の半導体薬液の製造方法により製造することができる。
【0048】
本実施形態の半導体薬液中の炭素数が6であるアルコールの含有率は、1質量ppb以下であることが好ましく、0.1質量ppb以下であることがより好ましい。
【0049】
炭素数が6であるアルコールとしては、例えば、1-ヘキシルアルコール、2-ヘキシルアルコール、3-ヘキシルアルコール、2-メチル-1-ペンチルアルコール、2-メチル-2-ペンチルアルコール、2-メチル-3-ペンチルアルコール、4-メチル-1-ペンチルアルコール、4-メチル-2-ペンチルアルコール、3-メチル-1-ペンチルアルコール、3-メチル-3-ペンチルアルコール、2、3-ジメチル-1-ブチルアルコール、2-エチル-1-ブチルアルコール等の飽和脂肪族アルコールが挙げられる。
【0050】
従来のイソプロピルアルコールの製造方法において、プロピレンの純度が高い原料ガスを使用すると、炭素数が6であるアルコールとイソプロピルアルコールを分離するために、イソプロピルアルコールを、例えば、水の含有率が100質量ppm以下になるまで脱水した後、高段数の蒸留塔を用いて、高還流比で蒸留しなければならかった。一方、本実施形態の半導体薬液の製造方法では、炭素数が6であるアルコールの副生量を減少させることができるため、本実施形態の半導体薬液中の炭素数が6であるアルコールの含有率を低コストで減少させることができる。
【0051】
本実施形態の半導体薬液中の水の含有率は、0.1質量ppm以上100質量ppm以下であることが好ましく、1質量ppm以上20質量ppm以下であることがさらに好ましい。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されず、本発明の趣旨の範囲内で、上記の実施形態を適宜変更してもよい。
【実施例】
【0053】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【0054】
[測定方法]
(水の含有率)
微量水分測定装置CA-200(三菱ケミカルアナリティック製)を用いて、試料中の水の含有率を測定した。このとき、必要に応じて、イソプロピルアルコールで希釈した後、試料中の水の含有率を測定した。なお、希釈するイソプロピルアルコールは、水の含有率が100質量ppm以下である。また、試料中の水の含有率が100質量ppm以下である場合、露点が-60℃以下であるグローブボックス中において、試料5g以上をテルモシリンジで採取して、試料中の水の含有率を測定した。なお、試料中の水の含有率の定量下限は、1質量ppmである。
【0055】
(試料中の水の含有率が10質量%以上である場合のアルコールの含有率)
GC-MSを用いて、ヘッドスペース法により試料をサンプリングして、以下に示す測定条件で、試料中のアルコールの含有率を測定した。なお、水(95質量%)およびイソプロピルアルコール(5質量%)からなる標準試料中のt-ブチルアルコールおよびエチルアルコールの含有率の定量下限は、それぞれ5質量ppbであった。また、標準試料中の炭素数が6であるアルコールの含有率の定量下限は、100質量ppbであった。
【0056】
-粗イソプロピルアルコール水溶液の測定条件-
装置:7890A/5975C(アジレント・テクノロジー製)
分析カラム:J&W DB-1(60m×0.32mm、5μm)
カラム温度:35℃(2分間保持)→10℃/分で昇温→250℃(6分間保持)
キャリアガス:ヘリウム
注入時圧力:20psi
線速度:31cm/秒
注入口温度:200℃
試料注入法:スプリット法
スプリット比:1対5
注入量:1ml
ヘッドスペース加熱温度:60℃
ヘッドスペース加熱時間:20分
トランスファーライン温度:240℃
イオン源、四重極の温度:230℃、150℃
スキャンイオン:m/z=25~250
SIMモニターイオン:31、59
【0057】
(試料中の水の含有率が10質量%以下である場合のアルコールの含有率)
GC-MSを用いて、以下に示す測定条件で、試料中のアルコールの含有率を測定した。なお、イソプロピルアルコールからなる標準試料中のt-ブチルアルコールおよびエチルアルコールの含有率の定量下限は、それぞれ10質量ppbであった。また、標準試料中の炭素数が6であるアルコールの含有率の定量下限は、10質量ppbであった。
【0058】
-半導体薬液の測定条件-
装置:7890A/5975C(アジレント・テクノロジー製)
分析カラム:J&W DB-1(60m×0.32mm、5μm)
カラム温度:35℃(2分間保持)→10℃/分で昇温→250℃(6分間保持)
キャリアガス:ヘリウム
注入時圧力:20psi
線速度:31cm/秒
注入口温度:200℃
試料注入法:スプリットレス法
注入量:2μl
ヘッドスペース加熱温度:60℃
ヘッドスペース加熱時間:20分
トランスファーライン温度:240℃
イオン源、四重極の温度:230℃、150℃
スキャンイオン:m/z=25~250
SIMモニターイオン:31、59
【0059】
-原料ガスおよびガス成分の測定条件-
装置:7890A/5975C(アジレント・テクノロジー製)
分析カラム:TC-BOND Alumina/Na2SO4(30m×0.25mm、4μm)
カラム温度:35℃(2分間保持)→10℃/分で昇温→200℃(6分間保持)
キャリアガス:ヘリウム
注入時圧力:18psi
線速度:52cm/秒
注入口温度:150℃
試料注入法:スプリット法
スプリット比:1対5
注入量:1ml
ヘッドスペース加熱温度:60℃
ヘッドスペース加熱時間:20分
トランスファーライン温度:240℃
イオン源、四重極の温度:230℃、150℃
スキャンイオン:m/z=25~150
【0060】
(濃縮方法)
本実施例の試料は、不純物の含有率が低減されているため、必要に応じて、測定対象となる試料を濃縮し、イソプロピルアルコールよりも沸点が高い化合物の分析精度を向上させた。以下に濃縮方法を示すが、必要に応じて、下記の操作を繰り返し、濃縮の倍率を変更した。精密蒸留装置で、蒸留塔の塔頂温度を約82℃とし、10時間蒸留した。精密蒸留装置の理論段数は3~30段であり、この範囲であれば、試料を濃縮することができる。また、試料の酸化を防ぐため、精密蒸留装置内に予め窒素を流通させ、不活性ガス雰囲気とした。さらに、蒸留中は、留出液を貯蔵する液だまり部にも窒素を流通させて、不活性ガス雰囲気下で蒸留した。本実施例では、イソプロプロピルアルコールからなる標準試料を1000倍に濃縮した結果、標準試料中の炭素数が6であるアルコールの含有率の定量下限は、0.01質量ppbであった。
【0061】
[実施例1]
(原料ガス)
原料ガスの組成を分析した。このとき、既知の濃度の標準ガスを作製し、定量した。
プロピレンの含有率:99体積%以上
プロパンの含有率:1000体積ppm
メタンの含有率:0.1体積ppm未満
エタンの含有率:0.1体積ppm未満
エチレンの含有率:0.1体積ppm未満
シクロプロパンの含有率:1体積ppm
1-ブテンの含有率:0.1体積ppm未満
イソブテンの含有率:0.1体積ppm未満
炭素数が5であるアルケン(ペンテン)の含有率:0.1体積ppm未満
炭素数が6であるアルケン(ヘキセン)の含有率:0.1体積ppm未満
原料ガスは、標準状態(101.3kPa、0℃)における密度が1.87×10-3kg/Lであった。
【0062】
(原料水)
25℃におけるpHが3.0になるように、水にリンタングステン酸を添加して、原料水を得た。
【0063】
(反応工程)
内容積22.0Lの連続反応器を、連続反応器の下部に存在する液相部の容積が20.0L、連続反応器の上部に存在する気相部の容積が2.0Lになるように調節した。また、110℃に加温した原料水を45kg/hの供給速度で連続反応器に供給するとともに、原料ガスを3kg/h、すなわち、1.87×103L/h(標準状態換算)の供給速度で連続反応器に供給する一方で、連続反応器の気相部から、200L/h(標準状態換算)の排出速度でガス成分を排出した。このとき、連続反応器内の温度および圧力を、それぞれ280℃および250atmにして、プロピレンと水とを反応させて、イソプロピルアルコールを生成させた。ここで、280℃、250atmにおける原料水の密度が0.75kg/Lであるため、連続反応器内の原料水の滞在時間は20分である。また、280℃、250atmにおけるガス成分の排出速度が1.6L/hであるため、連続反応器内のガス成分の滞在時間は74分である。
【0064】
表1に、反応工程における反応条件を示す。また、表2に、ガス成分の組成(体積基準)を示す。ここで、へキセン類は、4-メチル-1-ペンテン以外のヘキセンを意味する。
【0065】
【0066】
【0067】
(回収工程)
連続反応器の液相部から液体成分を排出し、回収塔に輸送した。このとき、回収塔内の温度および圧力を、それぞれ140℃および18atmとすることで、液体成分に含まれる水に溶解しているプロピレンを分離し、粗イソプロピルアルコール水溶液を得た。このとき、プロピレンの転化率が95%であり、イソプロピルアルコールの選択率が99.5%であった。一方、分離したプロピレンは、原料ガスとして再利用するために、ドラムに回収した。
【0068】
表3に、粗イソプロピルアルコール水溶液の組成(質量基準)を示す。ここで、ヘキサノール類は、4-メチル-2-ペンタノール、2-メチル-2-ペンタノール、2-メチル-3-ペンタノール、3-メチル-3-ペンタノール、3-メチル-1-ペンタノール、2,3-ジメチル-2-ブタノール、4-メチル-1-ペンタノール以外のヘキサノールを意味する。
【0069】
【0070】
(精製工程)
粗イソプロピルアルコール水溶液を低沸蒸留塔に供給して、低沸点不純物を除去し、塔底から缶出液を得た。次に、缶出液を共沸蒸留塔に供給して、高沸点不純物を除去し、塔頂からイソプロピルアルコールと水との共沸混合物(質量比87.5:12.5)を得た。次に、共沸混合物を脱水蒸留塔に供給して、脱水し、塔底から缶出液を得た。次に、缶出液を高沸蒸留塔に供給して、高沸点不純物を除去し、塔頂からの留出液を得た。ここで、高沸蒸留塔の段数は15段であった。次に、孔径10nmのフッ素樹脂製のフィルターに留出液を通して、半導体薬液を得た。
【0071】
表4に、半導体薬液の組成(質量基準)を示す。ここで、ヘキサノールは、炭素数が6であるアルコールを意味する。
【0072】
【0073】
[実施例2]
反応工程における原料水の供給速度を60kg/hに変更し、連続反応器内の原料水の滞在時間を15分に変更した以外は、実施例1と同様にして、半導体薬液を得た(表1参照)。このとき、プロピレンの転化率が95%であり、イソプロピルアルコールの選択率が99.5%であった。ガス成分、粗イソプロピルアルコール水溶液および半導体薬液の組成を、表2~4に示した。
【0074】
[実施例3]
反応工程におけるガス成分の排出速度を250L/h(標準状態換算)に変更し、連続反応器内のガス成分の滞在時間を59分に変更した以外は、実施例1と同様にして、半導体薬液を得た(表1参照)。このとき、プロピレンの転化率が94%であり、イソプロピルアルコールの選択率が99.5%であった。ガス成分、粗イソプロピルアルコール水溶液および半導体薬液の組成を、表2~4に示した。
【0075】
[実施例4]
反応工程における原料水の供給速度を75kg/hに変更し、連続反応器内の原料水の滞在時間を12分に変更し、反応工程におけるガス成分の排出速度を120L/h(標準状態換算)に変更し、連続反応器内のガス成分の滞在時間を123分に変更した以外は、実施例1と同様にして、半導体薬液を得た(表1参照)。このとき、プロピレンの転化率が97%であり、イソプロピルアルコールの選択率が99.5%であった。ガス成分、粗イソプロピルアルコール水溶液および半導体薬液の組成を、表2~4に示した。
【0076】
[実施例5]
反応工程における原料水の供給速度を75kg/hに変更し、連続反応器内の原料水の滞在時間を12分に変更し、反応工程におけるガス成分の排出速度を250L/h(標準状態換算)に変更し、連続反応器内のガス成分の滞在時間を59分に変更した以外は、実施例1と同様にして、半導体薬液を得た(表1参照)。このとき、プロピレンの転化率が94%であり、イソプロピルアルコールの選択率が99.5%であった。ガス成分、粗イソプロピルアルコール水溶液および半導体薬液の組成を、表2~4に示した。
【0077】
[実施例6]
反応工程における原料水の供給速度を80kg/hに変更し、連続反応器内の原料水の滞在時間を11分に変更し、反応工程におけるガス成分の排出速度を500L/h(標準状態換算)に変更し、連続反応器内のガス成分の滞在時間を30分に変更した以外は、実施例1と同様にして、半導体薬液を得た(表1参照)。このとき、プロピレンの転化率が88%であり、イソプロピルアルコールの選択率が99.5%であった。ガス成分、粗イソプロピルアルコール水溶液および半導体薬液の組成を、表2~4に示した。
【0078】
[比較例1]
反応工程における原料水の供給速度およびガス成分の排出速度を、それぞれ30kg/hおよび標準状態換算80L/h(反応器内の体積0.65L/h)に変更し、連続反応器内の原料水およびガス成分の滞在時間を、それぞれ30分および185分に変更した以外は、実施例1と同様にして、半導体薬液を得た(表1参照)。このとき、プロピレンの転化率が98%であり、イソプロピルアルコールの選択率が99.5%であった。ガス成分、粗イソプロピルアルコール水溶液および半導体薬液の組成を、表2~4に示した。
【0079】
[比較例2]
反応工程におけるガス成分の排出速度を30L/h(標準状態換算)に変更し、連続反応器内のガス成分の滞在時間を494分に変更した以外は、実施例1と同様にして、半導体薬液を得た(表1参照)。このとき、プロピレンの転化率が99%であり、イソプロピルアルコールの選択率が99.5%であった。ガス成分、粗イソプロピルアルコール水溶液および半導体薬液の組成を、表2~4に示した。
【0080】
[比較例3]
反応工程における原料水の供給速度を30kg/hに変更し、連続反応器内の原料水の滞在時間を30分に変更した以外は、実施例1と同様にして、半導体薬液を得た(表1参照)。このとき、プロピレンの転化率が95%であり、イソプロピルアルコールの選択率が99.5%であった。ガス成分、粗イソプロピルアルコール水溶液および半導体薬液の組成は、表2~4に示した。
【0081】
表4から、実施例1~6の半導体薬液は、t-ブチルアルコール、エチルアルコールおよびヘキサノールの含有率が低いことがわかる。これに対して、比較例1の半導体薬液は、連続反応器内の原料水およびガス成分の滞在時間が、それぞれ30分および185分であるため、t-ブチルアルコール、エチルアルコールおよびヘキサノールの含有率が高い。比較例2の半導体薬液は、連続反応器内のガス成分の滞在時間が494分であるとともに、C/Bが0.02であるため、t-ブチルアルコール、エチルアルコールおよびヘキサノールの含有率が高い。比較例3の半導体薬液は、連続反応器内の原料水の滞在時間が30分であるため、t-ブチルアルコール、エチルアルコールおよびヘキサノールの含有率が高い。
【符号の説明】
【0082】
1 連続反応器
2 制御弁
G 気相部
L 液相部
【要約】
実質的にイソプロピルアルコールからなる半導体薬液であって、t-ブチルアルコールの含有率が1000質量ppb以下であり、エチルアルコールの含有率が1000質量ppb以下である、半導体薬液を提供する。