(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-13
(45)【発行日】2025-02-21
(54)【発明の名称】ハイパーブランチ構造を有するポリウレタン、その製造方法及び高分子触媒
(51)【国際特許分類】
C08G 18/38 20060101AFI20250214BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20250214BHJP
B01J 31/22 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
C08G18/38 042
C08G18/76 057
B01J31/22 Z
(21)【出願番号】P 2021079657
(22)【出願日】2021-05-10
【審査請求日】2024-03-05
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、国立研究開発法人科学技術振興機構「研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラム」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000230593
【氏名又は名称】日本化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 環
(72)【発明者】
【氏名】シュ ブントウ
(72)【発明者】
【氏名】板東 正佳
(72)【発明者】
【氏名】宋 志毅
(72)【発明者】
【氏名】古井 恵里
(72)【発明者】
【氏名】佐野 夏博
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-084601(JP,A)
【文献】特開昭64-065105(JP,A)
【文献】特開2014-193457(JP,A)
【文献】特開昭62-056588(JP,A)
【文献】特開昭56-118404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G18/00-18/87
B01J31/22
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される構造単位と、下記一般式(2)で表される構造単位とを含む、ハイパーブランチ構造を有するポリウレタン。
【化1】
(式中、m1は0~18の整数を示す。破線はポリマー中の結合手を示す。)
【化2】
(式中、nは0~5の整数を示す。破線はポリマー中の結合手を示す。)
【請求項2】
前記一般式(1)の式中のm1が1である、請求項1に記載のハイパーブランチ構造を有するポリウレタン。
【請求項3】
前記一般式(2)の式中のnが0又は1である、請求項1又は2に記載のハイパーブランチ構造を有するポリウレタン。
【請求項4】
下記一般式(3)で表されるビピリジン化合物と、下記一般式(4)で表されるトリイソシアネート化合物とを含む原料混合液を調製し、次いで付加重合反応を行う、ハイパーブランチ構造を有するポリウレタンの製造方法。
【化3】
(式中、m1は0~18の整数を示す。)
【化4】
(式中、nは0~5の整数を示す。)
【請求項5】
請求項1~3の何れか1項に記載のハイパーブランチ構造を有するポリウレタンを配位子とする遷移金属錯体。
【請求項6】
前記遷移金属錯体中の遷移金属が、イリジウム又はパラジウムである、請求項5に記載の遷移金属錯体。
【請求項7】
請求項6に記載の遷移金属錯体からなる高分子触媒。
【請求項8】
鈴木-宮浦カップリング反応の触媒である、請求項7記載の高分子触媒。
【請求項9】
請求項8に記載の高分子触媒を用いて鈴木-宮浦カップリング反応を行う工程を含む、有機化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なハイパーブランチ構造を有するポリウレタン、その製造方法及びそれを用いた高分子触媒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高分子触媒は、単分子触媒と比べて反応系から分離することが容易であり、再利用も可能であることから工業的なメリットがある。
【0003】
しかしながら、一般に低分子系で優れた特性を示す触媒系を高分子化すると、触媒活性が大きく低下することが知られている。これは、高分子化することにより触媒分子の運動性が低下し、かつ、高分子化することにより触媒サイト付近の立体障害が増加して基質との相互作用が難しくなることに起因するものと考えられる。
【0004】
先に本発明者らも、優れた触媒活性を有する下記一般式(A)で表される2,2’-ビピリジル基を主鎖中に有する高分子配位子を用いた高分子触媒を提案した(非特許文献1)。
【0005】
【0006】
デンドリティック(樹枝状)ポリマーとして分類されるハイパーブランチポリマーは、積極的に枝分かれを導入した特異な構造を有している。ハイパーブランチポリマーは、分子鎖が非常に多岐に分岐した構造のため、全体が網目構造を有している。そのため、分子の内部及び/又は表面に有効成分を担持することが可能になる。このため、分子カプセルとしての応用の面でも期待されているポリマーである(例えば、特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Polymer Chemistry,Vol.8,7406-7415p(2017)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ハイパーブランチポリマーは、他のデンドリマーに比べて、一般的に合成が容易であるという利点があり、特に工業生産において非常に有利である。しかしながら、合成されたハイパーブランチポリマーの種類はまだ少なく、ハイパーブランチポリマーの一層の応用や機能化に向けて、新規なハイパーブランチポリマーの開発が要望されている。
【0010】
従って、本発明の目的は、新規なハイパーブランチポリマーを提供することにある。また、本発明の目的は、工業的に有利な方法で、該ハイパーブランチポリマーを製造する方法を提供することにある。さらに、本発明の目的は、ハイパーブランチポリマーを用いた高分子触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、2,2’-ビピリジル基を主鎖中に有する高分子配位子を用いた高分子触媒の触媒性能の向上に向けて鋭意研究を重ねた結果、金属が配位可能な2,2’-ビピリジル基を有する構造単位と、特定のハイパーブランチ型(枝分かれ型)の構造単位とを有した、新規なハイパーブランチ構造を有するポリウレタンを見出した。また、該ハイパーブランチ構造を有するポリウレタンを配位子として用いた遷移金属錯体は、優れた触媒性能を有するものであることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0012】
本発明者らが提供する第1の発明は、下記一般式(1)で表される構造単位と、下記一般式(2)で表される構造単位とを含む、ハイパーブランチ構造を有するポリウレタンである。
【0013】
【化2】
(式中、m1は0~18の整数を示す。破線はポリマー中の結合手を示す。)
【0014】
【化3】
(式中、nは0~5の整数を示す。破線はポリマー中の結合手を示す。)
【0015】
本発明者らが提供する第2の発明は、下記一般式(3)で表されるビピリジン化合物と、下記一般式(4)で表されるトリイソシアネート化合物とを含む原料混合液を調製し、次いで付加重合反応を行う、ハイパーブランチ構造を有するポリウレタンの製造方法である。
【0016】
【0017】
【0018】
本発明者らが提供する第3の発明は、前記第1の発明のハイパーブランチ構造を有するポリウレタンを配位子とする遷移金属錯体である。
【0019】
本発明者らが提供する第4の発明は、前記第3の発明の遷移金属錯体からなる高分子触媒である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、2,2’-ビピリジル基を有する構造単位と、ハイパーブランチ型(枝分かれ型)の構造単位とを有する、新規なハイパーブランチ構造を有するポリウレタンを提供することができる。また、本発明の製造方法によれば、該ハイパーブランチ構造を有するポリウレタンを工業的に有利な方法で提供することができる。また、本発明のハイパーブランチ構造を有するポリウレタンを配位子とした遷移金属錯体は、触媒能に優れ、高分子触媒としても好適に用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施例1で得られたハイパーブランチ構造を有するポリウレタン試料のTHF可溶部の
1H NMRスペクトルチャート。
【
図2】実施例1で得られたハイパーブランチ構造を有するポリウレタン試料のTHF不溶部のIRスペクトルチャート。
【
図3】実施例2で得られたハイパーブランチ構造を有するポリウレタン試料のTHF可溶部の
1H NMRスペクトルチャート。
【
図4】実施例2で得られたハイパーブランチ構造を有するポリウレタン試料のTHF不溶部のIRスペクトルチャート。
【
図5】実施例7で得られた粗生成物の
1H NMRスペクトルチャート。
【
図6】4-ブロモトルエンから4-メチルビフェニルへの転換率と、反応時間との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を好ましい実施形態に基づいて説明する。
本発明のハイパーブランチ構造を有するポリウレタンは、下記一般式(1)で表される構造単位と、下記一般式(2)で表される構造単位とを含むことを特徴とする。
【0023】
【化6】
(式中、m1は0~18の整数を示す。破線はポリマー中の結合手を示す。)
【0024】
【化7】
(式中、nは0~5の整数を示す。破線はポリマー中の結合手を示す。)
【0025】
本発明のハイパーブランチ構造を有するポリウレタンにおいて、一般式(1)で表される構造単位は、金属に配位可能な部位を有する構造単位である。
【0026】
一般式(1)中のm1は、0~18の整数を示し、1~4であることが好ましく、1であることが、原料の入手性、金属錯体としたときの触媒活性の観点からより好ましい。
【0027】
本発明に係るハイパーブランチ構造を有するポリウレタンにおいて、一般式(2)の構造単位は、ハイパーブランチ型(枝分かれ型)の構造となる部位を有する構造単位である。
【0028】
一般式(2)中のnは、0~5の整数を示し、0~3であることが好ましく、0又は1であることが原料の入手性、金属錯体としたときの触媒活性の観点からより好ましい。
【0029】
本発明のハイパーブランチ構造を有するポリウレタンにおいて、前記一般式(2)で表される構造単位の含有量は、前記一般式(1)で表される構造単位に対する前記一般式(2)で表される構造単位のモル比(一般式(2)/一般式(1))で1/4~1/1であることが好ましく、2/3~3/4であることが、高分子量体の合成容易性、金属錯体としたときの触媒活性の観点からより好ましい。
【0030】
また、本発明のハイパーブランチ構造を有するポリウレタンにおいて、溶媒親和性を付与することを目的として、更に下記一般式(5)及び/又は下記一般式(6)で表される構造単位を必要により含有させることができる。
【0031】
【化8】
(式中、Bは炭素数1~18のアルキレン基を示す。破線はポリマー中の結合手を示す。)
【0032】
【化9】
(式中、Arはアリーレン基を示し、A
2は炭素数0~18のアルキレン基を示し、m2は0又は1の整数を示す。破線はポリマー中の結合手を示す。)
【0033】
一般式(5)中のBで示されるアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基等が挙げられ、これらの中でも炭素数2~8、特に炭素数4~6のアルキレン基が、高分子量体の合成容易性、金属錯体としたときの触媒活性の観点から好ましい。
【0034】
本発明のハイパーブランチ構造を有するポリウレタンにおいて、前記一般式(5)で表される構造単位の含有量は、前記一般式(1)で表される構造単位に対する前記一般式(5)の構造単位のモル比(一般式(5)/一般式(1))で1/4~1/1であることが好ましく、2/3~3/4であることが、高分子量体の合成容易性、金属錯体としたときの触媒活性の観点からより好ましい。
【0035】
一般式(6)中のArで示されるアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、ビナフチレン基、アントリレン基、フェナントリレン基等が挙げられ、これらの中でもビナフチレン基が、高分子量体の合成容易性、金属錯体としたときの触媒活性の観点から好ましい。
【0036】
一般式(6)中のA2で示される炭素数0~10のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基等が挙げられる。
【0037】
本発明においては、一般式(6)中のm2が0であることが、原料の入手性、金属錯体としたときの触媒活性の観点から特に好ましい。
【0038】
本発明のハイパーブランチ構造を有するポリウレタンにおいて、前記一般式(6)で表される構造単位の含有量は、前記一般式(1)で表される構造単位に対する前記一般式(6)で表される構造単位のモル比(一般式(6)/一般式(1))で1/4~1/1であることが好ましく、2/3~3/4とすることが、高分子量体の合成容易性、金属錯体としたときの触媒活性の観点からより好ましい。
【0039】
本発明のハイパーブランチ構造を有するポリウレタンは、メタノール及びTHF等の有機溶媒に溶解する成分と不溶な成分とを含むことができる。以下、THFに溶解する成分を「可溶部」、THFに不溶な成分を「不溶部」という。
【0040】
本発明のハイパーブランチ構造を有するポリウレタンの可溶部は、数平均分子量(Mn)が400~4,000,000であることが好ましく、1,000~100,000であることがより好ましい。また、重量平均分子量(Mw)は600~600,000であることが好ましく、1,200~120,000であることがより好ましい。これらの分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定された、標準ポリスチレン換算分子量である。
【0041】
本発明のハイパーブランチ構造を有するポリウレタンは、下記一般式(3)で表されるビピリジン化合物と、下記一般式(4)で表されるトリイソシアネート化合物とを含む原料混合液を調製し、次いで付加重合反応を行うことにより、工業的に有利に製造することができる。
【0042】
【化10】
(式中、m1は0~18の整数を示す。)
【0043】
【0044】
一般式(3)中のm1は、本発明のハイパーブランチ構造を有するポリウレタンにおける、一般式(1)中のm1に相当する。一般式(3)中のm1は、0~18の整数を示し、1~4であることが好ましく、1であることがより好ましい。本発明においては、一般式(3)中のm1が1の化合物である4,4’-ビス(ヒドロキシメチル)-2,2’-ビピリジンが特に好ましく用いられる。
【0045】
一般式(3)で表されるビピリジン化合物は公知の方法で製造することができる(例えば、特開昭62-129270号公報、特開2019-194188号公報の0030~0035段落等参照)。また、4,4’-ビス(ヒドロキシメチル)-2,2’-ビピリジンは、東京化成工業株式会社や富士フィルム和光純薬工業株式会社等から販売されている。
【0046】
一般式(4)中のnは、本発明のハイパーブランチ構造を有するポリウレタンにおける、一般式(2)中のnに相当する。一般式(4)中のnは0~5の整数を示し、0~3であることが好ましく、0又は1であることがより好ましい。
【0047】
一般式(4)で表されるトリイソシアネート化合物は、下記反応スキーム(1)に従って、容易に製造することができる。
【0048】
【0049】
原料混合液における前記一般式(4)のトリイソシアネート化合物の配合量は、前記一般式(3)のビピリジン化合物に対する前記一般式(4)のトリイソシアネート化合物のモル比(一般式(4)/一般式(3))で1/1~1/4とすることが好ましく、3/4~2/3とすることが副反応抑制の観点からより好ましい。
【0050】
本発明のハイパーブランチ構造を有するポリウレタンは、前記一般式(3)で表されるビピリジン化合物と、前記一般式(4)で表されるトリイソシアネート化合物とを、触媒の存在下に溶媒中で付加重合反応させることで製造できる。
【0051】
用いることができる溶媒としては、例えば、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン等の芳香族炭化水素、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、4-フルオロエチレンカーボネート等の炭酸エステル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、γ-ラクトン等のエステル、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)等のアミド、N,N,N’,N’-テトラメチルウレア(TMU)、N,N’-ジメチルプロピレンウレア(DMPU)等のウレア又はジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、オクタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、2,2,2-トリフルオロエタノール等のアルコール等が挙げられ、これらを任意の比で混合して用いてもよい。
【0052】
また、用いることができる触媒としては、イソシアネート基(NCO)とヒドロキシル基(OH)との反応で通常用いられる公知の触媒が挙げられ、例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N-メチルモルフォリン、N-エチルモルフォリン、ジメチルベンジルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン、ビス-(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、トリエチレンジアミン、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン-5、1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、1,2-ジメチルイミダゾール、1-ブチル-2-メチルイミダゾール、1,4-ジメチルピペラジン等の三級アミン及びこれらの有機酸塩、ジメチルエタノールアミン、N-トリオキシエチレン-N,N-ジメチルアミン、N,N-ジメチル-N-ヘキサノールアミン等のアミノアルコール類、及びこれらの有機酸塩が挙げられる。
【0053】
触媒の添加量は、前記一般式(3)で表されるビピリジン化合物100質量部に対して10~100質量部であることが好ましい。
【0054】
また、原料混合液には、必要に応じて下記一般式(9)で表されるジイソシアネート化合物及び/又は下記一般式(10)で表されるジヒドロキシ化合物を含有させることができる。
【0055】
【化13】
(式中、Bは炭素数1~18のアルキレン基を示す。)
【0056】
【化14】
(式中、Arはアリーレン基を示し、A
2は炭素数0~18のアルキレン基を示し、m2は0又は1の整数を示す。)
【0057】
一般式(9)中のBは、本発明のハイパーブランチ構造を有するポリウレタンにおける、必要に応じて含有させる一般式(5)で表される構造単位の式中のBに相当する。一般式(9)中のBで示されるアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基等が挙げられ、これらの中でも炭素数2~8、特に炭素数4~6のアルキレン基が好ましい。
【0058】
前記一般式(9)で表されるジイソシアネート化合物の配合量は、前記一般式(3)で表されるジピリジン化合物に対する前記一般式(9)で表されるジイソシアネート化合物のモル比(一般式(9)/一般式(3))で1/4~1/1であることが好ましく、2/3~3/4であることが副反応抑制の観点から好ましい。
【0059】
一般式(10)中のArは、本発明のハイパーブランチ構造を有するポリウレタンにおける、必要に応じて含有させる一般式(6)で表される構造単位の式中のArに相当する。一般式(10)中のArで示されるアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、ビナフチレン基、アントリレン基、フェナントリレン基等が挙げられ、これらの中でもビナフチレン基が好ましい。
【0060】
一般式(10)中のA2は、本発明のハイパーブランチ構造を有するポリウレタンにおける、必要に応じて含有させる一般式(6)で表される構造単位の式中のA2に相当する。一般式(10)中のA2で示される炭素数0~10のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基等が挙げられる。
【0061】
一般式(10)中のm2は、本発明のハイパーブランチ構造を有するポリウレタンにおける、必要に応じて含有させる一般式(6)で表される構造単位の式中のm2に相当する。一般式(6)中のm2は、0であることが好ましい。
【0062】
前記一般式(10)で表されるジヒドロキシ化合物の配合量は、前記一般式(3)で表されるジピリジン化合物に対する前記一般式(10)で表されるジヒドロキシ化合物のモル比(一般式(10)/一般式(3))で1/4~1/1、好ましくは2/3~3/4であることが副反応抑制の観点から好ましい。
【0063】
付加重合反応の反応条件は、反応温度が0~60℃であることが好ましく、反応時間が1~100時間であることが好ましい。例えば、室温(25℃)で12時間~48時間反応させる条件が挙げられる。
【0064】
反応終了後、必要により、抽出、再結晶、遠心分離、再沈殿等の精製を行うことにより、本発明のハイパーブランチ構造を有するポリウレタンを得ることができる。
【0065】
特に、本発明のハイパーブランチ構造を有するポリウレタンは、メタノール不溶部及びTHF不溶部として得られるものが、触媒として用いた場合の回収容易性の観点から好ましい。
【0066】
本発明のハイパーブランチ構造を有するポリウレタンは、分離材料、ガス・低分子分離材料、ポーラス材料、構造材料等の用途で使用することが期待できる。
【0067】
本発明のハイパーブランチ構造を有するポリウレタンは、配位子として、遷移金属と共に錯体を形成することができる。この遷移金属錯体は、特に高分子触媒として有用なものである。
【0068】
本発明のハイパーブランチ構造を有するポリウレタンと錯体を形成することができる遷移金属としては、例えば、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、パラジウム、ニッケル、鉄及び銅等が挙げられる、これらの中でもイリジウム及びパラジウムが高い触媒活性を有する高分子触媒となる観点から好ましい。
【0069】
遷移金属錯体は、本発明のハイパーブランチ構造を有するポリウレタンと、所望の遷移金属化合物とを溶媒中で混合処理することにより、容易に得ることができる。
【0070】
遷移金属化合物としてパラジウム化合物及びイリジウム化合物を用いることが、高い触媒活性を有する高分子触媒とする観点から特に好ましい。
【0071】
パラジウム化合物としては、例えば、PdCl2、PdBr2、Pd(OAc)2、Pd(acac)2、PdCl2(NCMe)、PdCl2(NCPh)、PdCl2(PPh3)2、PdCl2(NH3)4、PdCl2(cod)、Pd(OTf)2、[PdCl(π-アリル)]2等が挙げられる。
【0072】
イリジウム化合物としては、例えば、[Ir(cod)(CH3CN)2]BF4、[Ir(cod)Cl]2、[Ir(cod)2]BF4、[Ir(cod)2]ClO4、[Ir(cod)2]PF6、[Ir(cod)2]BPh4、[Ir(nbd)2]BF4、[Ir(nbd)2]ClO4、[Ir(nbd)2]PF6、[Ir(nbd)2]BPh4で等が挙げられる。
【0073】
本発明の遷移金属錯体において、前記ハイパーブランチ構造を有するポリウレタン中のビピリジン基と遷移金属化合物とのモル比は、ビピリジン基:遷移金属化合物=1:1~1:0.5であることが好ましくビピリジン基:遷移金属化合物=1:1~1:0.8であることがより好ましい。
【0074】
本発明の遷移金属錯体を調製する際に使用する溶媒としては、例えば、水、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、1,4-ジオキサン、メチル-tert-ブチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。また、使用する溶媒はこれらの混合溶媒であってもよい。
【0075】
本発明の遷移金属錯体は、上記のように調製した後、単離することなく、そのまま触媒として反応に用いることができる。また、溶媒を除去して、必要により精製を行って単離してもよい。
【0076】
本発明の高分子触媒は、前記ハイパーブランチ構造を有するポリウレタンを配位子として、遷移金属と共に錯体を形成した前記遷移金属錯体からなるものである。
【0077】
本発明の高分子触媒は、鈴木-宮浦カップリング反応、芳香族化合物のホウ素化反応、ベンジルアルコール酸化反応等の触媒として有用であり、特に鈴木-宮浦カップリング反応の触媒として好適に用いることができる。
【0078】
本発明の有機化合物の製造方法は、公知の鈴木-宮浦カップリング反応を行う工程を含む有機化合物の製造において、触媒として本発明の高分子触媒を用いるものである。
【0079】
鈴木-宮浦カップリング反応は、一般的には、塩基の存在下に、触媒を用いて、有機ホウ素化合物と、ハロゲン化アリールとをクロスカップリング反応させることにより、ビアリール化合物を製造する方法である。
例えば、一般式R1B(OR2)で表されるアリールボロン酸化合物と、一般式R3Xで表されるハロゲン化アリールとを反応させ、一般式R1-R3で表されるビアリール化合物を製造することができる。ここで、R1はアリール基を示し、R2は水素原子又はアルキル基を示し、R3はアリール基をし、Xはハロゲン原子を示す。
【0080】
前記一般式中のR1及びR3のアリール基は、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、ピリジル基、ピリミジル基、インドリル基、ベンズイミダゾリル基、キノリル基、ベンゾフラニル基、インダニル基、インデニル基、ジベンゾフラニル基、メチレンジオキシフェニル基が挙げられる。また、該アリール基は置換基があってもよい。該置換基としては、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアルコキシ基、ベンジル基、アセチル基等のアシル基、ニトロ基、アルデヒド基、アセトアミド等のアミド基、カルボキシル基、アミノ基、アルキルアミノ基、チオール基、アルキルチオール基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基が挙げられる。
【0081】
前記一般式中のR2で表されるアルキル基としては、炭素数1~18のアルキル基が挙げられる。
【0082】
鈴木-宮浦カップリング反応における本発明の高分子触媒の使用量は、ハロゲン化アリールに対して0.01~10mol%、好ましくは0.1~5mol%である。反応溶媒としては水と有機溶媒の混合溶媒を用いることができ、有機溶媒としてはトルエンなどの炭化水素が好ましく、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタンなどのエーテル類、アセトン等のケトン類、アセトニトリル等のニトリル類も好ましく用いることができる。必要に応じてエタノールのようなアルコールなどを添加することもできる。
【0083】
鈴木-宮浦カップリング反応において添加する塩基としては、アルカリ金属の炭酸塩、リン酸塩、酢酸塩等の無機塩、トリエチルアミン、ピリジン、モルホリン、キノリン、ピペリジン、DBU、アニリン類、テトラn-ブチルアンモニウムアセテート等の有機塩などが好適に用いられる。反応温度は70℃~150℃、好ましくは70~100℃であり、反応時間は、基質にもよるが、1時間~24時間であり、通常は3~20時間で反応が終了する。
【0084】
反応後、濾過又は遠心分離等により本発明の高分子触媒を除去・回収し、濾液を抽出、濃縮、及び精製操作により目的物を得ることができる。一方、回収した高分子触媒は洗浄・乾燥することにより再使用が可能である。
【実施例】
【0085】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0086】
(合成例1)
50mL二又フラスコに1,3,5-ベンゼントリカルボン酸(1)(5.00g,23.8mmol)とスターラーチップを入れ、還流管と三方コックを取り付けた。窒素置換を3回行った。反応中に発生するHClとSO2ガスを捕捉するため、還流管の先にチューブをつけてKOH水溶液のバスにつなぎ、窒素をフローの状態にした。SOCl2(15.0mL,206mmol)を加えて化合物1を溶解させた後、DMFをパスツールピペットで5滴加えた。反応溶液を昇温し、還流条件下で5時間反応させた。減圧下で未反応のSOCl2を留去し、続いて減圧蒸留により1,3,5-ベンゼントリカルボン酸トリクロリド(2)の白色固体を得た。
収率82%(5.15g,19.4mmol)
IR (KBr, cm-1) 3089, 1755, 1592, 1432, 1154, 1025, 1006, 709, 701, 680; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 9.09 (s, 3H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 166.3, 138.4, 135.7.
【0087】
100mLナスフラスコにスターラーチップとアジ化ナトリウム(858mg,13.2mmol)を入れ、水(7.0mL)を加えて溶解させた。フラスコを氷浴につけて冷却し、そこに1,3,5-ベンゼントリカルボン酸トリクロリド(2)(1.06g,4.00mmol)のジクロロエタン溶液(15.0mL)を滴下した。室温まで昇温し3時間撹拌した。1,3,5-ベンゼントリカルボン酸トリアジド(3)が生成したことはNMRにより確認した(1H NMR(400MHz,CDCl3) δ 8.84(s,3H).)。有機層を集めてMgSO4で乾燥し、ろ過して100mL二又フラスコに集めた。二又フラスコにスターラーチップを入れ、三方コックと還流管を取り付けた。3回窒素で置換し、還流条件下3時間撹拌した。減圧下溶媒を留去し、1,3,5-ベンゼントリイソシアネート(4)の白色固体を得た。
収率96%(774mg,3.85mmol)
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 6.68 (s, 3H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 135.8, 125.6, 118.8.
【0088】
【0089】
(合成例2)
2L二又フラスコにスターラーチップ、1,3,5-トリブロモベンゼン(5)(9.44g,30.0mmol)、4-カルボキシフェニルボロン酸(6)(17.9g,108mmol)、Pd(OAc)2(673mg,3.00mmol)を入れ、還流管と三方コックを取り付けた。窒素置換を3回行った。EtOH(500mL)、Na2CO3(47.7g,450mmol)の水溶液(500mL)を加え、85℃で20時間撹拌した。反応溶液を室温まで冷却した後、ろ過し、溶媒を留去した。2N HCl水溶液(300mL)を加え、析出した白色固体を遠心分離により集めた。水とメタノールで洗い、49時間真空乾燥すると1,3,5-トリス(4-カルボキシフェニル)ベンゼン(7)の白色固体が得られた。
収率99%(13.0g,29.7mmol)
1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ 8.10 (s, 3H), 8.07 (s, 12H); 13C NMR (150 MHz, DMSO-d6) δ 167.3, 143.9, 140.9, 130.1, 130.0, 127.5, 125.7.
【0090】
500mL二又フラスコにスターラーチップと1,3,5-トリス(4-カルボキシフェニル)ベンゼン(7)(4.38g,10.0mmol)を入れ、還流管と三方コックを取り付けた。窒素置換を3回行った。反応中に発生するHClとSO2ガスを捕捉するため、還流管の先にチューブをつけてKOH水溶液のバスにつなぎ、窒素をフローの状態にした。脱水したTHF(300mL)に懸濁し、DMFをパスツールピペットで10滴加えた。反応溶液を昇温し、還流条件下5時間反応させた。減圧下未反応のSOCl2を留去して、1,3,5-トリス[(4-クロロカルボニル)フェニル]ベンゼン(8)の白色固体を得た。化合物8が生成したことはFTIRにより確認した(IR(KBr,cm-1)1774,1735,1601,1394,1213,1179,902,895,836,818,738,672,651.)。窒素下、化合物8を脱水したTHF(300mL)に懸濁し、そこにNaN3(13.1g,200mmol)の水溶液(100mL)を加えた。室温で16時間撹拌した後、水とクロロホルムを加えて分液した。有機層は水とブラインで洗浄した後、ろ過した。ろ取した白色固体は、FTIRとNMRより目的の化合物9であることが分かった。ろ液はエバポレーターでゆっくり溶媒を留去し、析出した白色固体をろ取した。得られた固体を真空下3時間乾燥し、1,3,5-トリス[(4-アジドカルボニル)フェニル]ベンゼン(9)の白色固体を得た。
収率51%(2.63g,5.12mmol)
IR (KBr, cm-1) 2926, 2136, 1692, 1604, 1262, 1240, 1205, 1185, 988, 840, 822, 751, 686; 1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ 8.16 (d, J = 8.4 Hz, 6H), 7.87 (s, 3H), 7.78 (d, J = 8.4 Hz, 6H); 13C NMR (150 MHz, CDCl3) δ 172.3, 146.3, 141.6, 130.4, 130.2, 127.7, 126.5.
【0091】
100mLナスフラスコにスターラーチップと1,3,5-トリス[(4-アジドカルボニル)フェニル]ベンゼン(9)(503mg,0.98mmol)を入れ、三方コックを取り付けた。3回窒素で置換し、脱水したトルエン(40mL)を加えて懸濁した。90℃で3時間撹拌した。減圧下溶媒を留去し、1,3,5-トリス(4-イソシアナートフェニル)ベンゼン(10)の白色固体を得た。
収率98%(415mg,0.97mmol)
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.69 (s, 3H), 7.63 (d, J = 8.4 Hz, 6H), 7.21 (d, J = 8.4 Hz, 6H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 141.6, 138.5, 133.2, 128.5, 125.4, 125.1, 125.0.
【0092】
【0093】
[実施例1]
1,3,5-トリイソシアネートベンゼン(TIB)(623mg,1mmol)を4,4’-ビス(ヒドロキシメチル)-2,2’-ビピリジン(BHMB)(1003mg,3.1mmol)のTHF(4.4mL)溶液に加えた。反応系を撹拌により完全に均質化した後、Et
3N(0.12mL)を添加して付加重合反応を開始し、室温(25℃)で24時間撹拌を行った。その後、メタノール(2.0mL)を加えることにより反応をクエンチした。次いで、粗生成物をメタノール中で再沈殿させ、メタノール不溶性部分を遠心分離機で収集してPoly(BHMB-TIB)を得た(収量1514mg,93%)。さらにTHFを用いて、遠心分離機でTHF可溶部と不溶部に分離した(THF不溶部の収量1367mg,84%)。
THF可溶部について
1H NMRで分析し、THF不溶部についてIRで分析した。
1H NMRスペクトルチャートを
図1に、IRスペクトルチャートを
図2に示す。
【0094】
【0095】
[実施例2]
1,3,5-トリス(4-イソシアナートフェニル)ベンゼン(TIPB)(34.5mg,0.08mmol)を4,4’-ビス(ヒドロキシメチル)-2,2’-ビピリジン(BHMB)(26mg,0.12mmol)のTHF(1.2mL)溶液に加えた。反応系を撹拌により完全に均質化した後、Et
3N(0.02mL)を添加して重付加反応を開始し、室温(25℃)で24時間撹拌を行った。その後、メタノール(2.0mL)を加えることにより反応をクエンチした。次いで、粗生成物をメタノール中で再沈殿させ、メタノール不溶性部分を遠心分離機で収集してメタノール不溶性部分を遠心分離機で収集してPoly(BHMB-TIPB)を得た(収量49mg,81%)、さらにTHFを用いて、遠心分離機でTHF可溶部と不溶部に分離した(THF不溶部の収量36mg,60%)。
THF可溶部について
1H NMRで分析し、THF不溶部についてIRで分析した。
1H NMRスペクトルチャートを
図3に、IRスペクトルチャートを
図4に示す。
【0096】
【0097】
[実施例3]
1,3,5-トリス(4-イソシアナートフェニル)ベンゼン(TIPB)(20.78mg,0.1mmol)及び1,6-ジイソシアナートヘキサン(DIH)(16.90mg,0.1mmol)を4,4’-ビス(ヒドロキシメチル)-2,2’-ビピリジン(BHMB)(32.5mg,0.15mmol)のTHF(2.0mL)溶液に加えた。反応系を撹拌により完全に均質化した後、Et
3N(0.11mL)を添加して重付加反応を開始し、室温(25℃)で24時間撹拌を行った。その後、メタノール(2.0mL)を加えることにより反応をクエンチした。次いで、粗生成物をメタノール中で再沈殿させ、メタノール不溶性部分を遠心分離機で収集してPoly(BHMB-DIH-TIB)を得た。さらにTHFを用いて、遠心分離機でTHF可溶部と不溶部に分離した(THF不溶部の収量77mg,82%)。
THF可溶部について
1H NMRで分析し、THF不溶部についてIRで分析した。
1H NMRスペクトルチャートを
図3に、IRスペクトルチャートを
図4に示す。
【0098】
【0099】
(分子量の測定)
実施例で得られたハイパーブランチ構造を有するポリウレタン試料の可溶部について、ゲル浸透クロマトグラフィーにより、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)の測定を行った。その結果を表1に示す。Mn及びMwは、標準ポリスチレン換算分子量である。
【0100】
【0101】
[実施例4]
実施例1で得られたPoly(BHMB-TIB)(34.8mg,0.1mmol)及びPd(OAc)2(11.2mg,0.05mmol)をメタノール(1mL)に加えて室温(25℃)で24時間撹拌を行った。遠心分離機で不溶部を分離し、Poly(BHMB-TIB)にパラジウムが配位した高分子触媒を暗褐色固体として得た(収量34.4mg,85.1%)。
以下、得られた高分子触媒をPoly(BHMB-TIB)/Pd(OAc)2と記す。
【0102】
[実施例5]
実施例2で得られたPoly(BHMB-TIPB)(25.0mg,0.05mmol)及びPd(OAc)2(11.2mg,0.05mmol)をメタノール(1mL)に加えて室温(25℃)で24時間撹拌を行った。遠心分離機で不溶部を分離し、Poly(BHMB-TIPB)にパラジウムが配位した高分子触媒を暗褐色固体として得た(収量32.2mg,88.9%)。
以下、得られた高分子触媒をPoly(BHMB-TIPB)/Pd(OAc)2と記す。
【0103】
[実施例6]
コンデンサーを備えた30mLフラスコに、4-ブロモトルエン(0.12mL、1.0mmol)、フェニルボロン酸(183mg、1.5mmol)、K2CO3(276mg、2mmol)、Poly(BHMB-TIB)/Pd(OAc)2(5.48mg,1.0mol%)、1,2-ジメトキシエタン(DME)(2.0mL)及びH2O(3.0mL)を投入した。次いで、80℃で17時間撹拌しながら加熱して反応を行った。粗生成物を酢酸エチル(20mL)で抽出して有機層をブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥させた後、真空下で濃縮して粗生成物を得た。
【0104】
[実施例7]
Poly(BHMB-TIB)/Pd(OAc)2に代えてPoly(BHMB-TIPB)/Pd(OAc)2(7.48mg,1.0mol%)を用いた以外は実施例6と同様にして反応を行った。
【0105】
[参考例1]
2,2’-ビピリジン(bpy)(156.2mg,1mmol)及びPd(OAc)2(224.5mg,1mmol)をメタノール(1mL)に加えて室温(25℃)で24時間撹拌を行い、2,2’-ビピリジン(bpy)にパラジウムが配位した触媒(bpy/Pd(OAc)2)を調製した。
Poly(BHMB-TIB)/Pd(OAc)2に代えてbpy/Pd(OAc)2(3.8mg,1.0mol%)を用いた以外は実施例6と同様にして反応を行った。
【0106】
【0107】
<触媒の評価>
実施例6~7、参考例1における、4-ブロモトルエンから4-メチルビフェニルへの転換率と反応時間との関係を
図6に示す。また、4-メチルビフェニルの収率を表2に示す。
4-ブロモトルエンから4-メチルビフェニルへの転換率は、得られた粗生成物の
1H NMRスペクトル分析から以下の式により算出した。結果を
図6に示す。また、
1H NMRスペクトルチャートを
図5に示す。
転換率(%)=(4-メチルビフェニルのメチル基のスペクトル強度/4-ブロモトルエンのメチル基のスペクトル強度)×100
【0108】
また、触媒回転数(TON)は、前記転換率(%)、4-ブロモトルエンの使用量[4-ブロモトルエン]0(mol)及びパラジウム触媒の使用量[Pd]0(mol)から以下の式により算出した。結果を表2に示した。
TON=転換率(%)/([4-ブロモトルエン]0/[Pd]0)
【0109】
【0110】
これらの結果から、本発明のハイパーブランチ構造を有するポリウレタンを配位子とする遷移金属錯体は、低分子化合物を配位子とする遷移金属錯体と同等の触媒回転数を有しており、高分子触媒として好適であることが判る。