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特許7634389半導体ウエハ、半導体デバイス、及びガス濃度測定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-13
(45)【発行日】2025-02-21
(54)【発明の名称】半導体ウエハ、半導体デバイス、及びガス濃度測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/02 20060101AFI20250214BHJP
   G01J 1/04 20060101ALI20250214BHJP
   G01N 21/01 20060101ALI20250214BHJP
   G01N 21/61 20060101ALI20250214BHJP
   H10F 30/20 20250101ALI20250214BHJP
   H10F 30/00 20250101ALI20250214BHJP
【FI】
G01J1/02 B
G01J1/04 K
G01J1/04 B
G01N21/01 D
G01N21/61
H10F30/20
H10F30/00
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021039600
(22)【出願日】2021-03-11
(65)【公開番号】P2021144031
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-11-27
(31)【優先権主張番号】P 2020041973
(32)【優先日】2020-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【弁理士】
【氏名又は名称】神 紘一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180655
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】笹山 憲吾
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-175006(JP,A)
【文献】国際公開第2004/038061(WO,A1)
【文献】特開2003-177238(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00- 1/60
G01J 11/00
G01N 21/00-21/01
G01N 21/17-21/61
G02B 5/20- 5/28
H10F 30/00-30/298
H10H 20/00
H10H 29/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハ基板と、
前記ウエハ基板の第1面に形成され、2~10μmの赤外線を受光又は発光可能な半導体積層部と、
前記ウエハ基板の第1面に対向する前記ウエハ基板の第2面の上に直接形成される光学フィルタを備え、
前記ウエハ基板は化合物半導体であり、
前記半導体積層部はInSb、AlInSb、InAs及びInAsSbの少なくとも一つを含み、
前記光学フィルタはSi、Ge、SiO、SiO、TiO及びZnSの少なくとも一つを含み、
前記ウエハ基板の厚みTwafが、600μm以下であり、
前記ウエハ基板の厚みTwaf[μm]と前記光学フィルタの厚みTopt[μm]が、Topt≧4、かつTopt≦0.000053×Twaf2.0488の関係を満たす半導体ウエハ。
【請求項2】
前記ウエハ基板の厚みTwafが、150μm~350μmである、請求項1に記載の半導体ウエハ。
【請求項3】
前記光学フィルタの厚みToptが、4μm~26μmである、請求項1又は2に記載の半導体ウエハ。
【請求項4】
ウエハ基板と、
前記ウエハ基板の第1面に形成され、赤外線を受光又は発光可能な半導体積層部と、
前記第1面に対向する前記ウエハ基板の第2面の上に形成される光学フィルタと、を備え、
前記ウエハ基板は化合物半導体であり、
前記半導体積層部はInSb、AlInSb、InAs及びInAsSbの少なくとも一つを含み、
前記光学フィルタはSi、Ge、SiO、SiO、TiO及びZnSの少なくとも一つを含み、
前記ウエハ基板の厚みTwafが、600μm以下であり、
前記光学フィルタが、前記ウエハ基板との間に膜厚が50μm以上かつ300μm以下であるSiからなる中間層を有し、前記光学フィルタが、前記中間層の上に直接形成され、前記光学フィルタの膜厚が、前記ウエハ基板の厚みの10%以下である半導体ウエハ。
【請求項5】
前記光学フィルタの厚みToptが、1.5μm~60μmである、請求項4に記載の半導体ウエハ。
【請求項6】
前記半導体積層部の活性層が、AlIn1-xSb(0≦x≦0.20)又はInAsSb1-y(0.10≦y≦0.20)又はInAsSb1-y(0.75≦y≦1)である、請求項1から5のいずれか一項に記載の半導体ウエハ。
【請求項7】
前記光学フィルタが、2.4μm以上6μm以下の波長の赤外線に対する屈折率が1.2以上2.5以下の第1層と、2.4μm以上6μm以下の波長の赤外線に対する屈折率が2以上4.2以下の第2層と、を有する請求項1から6のいずれか一項に記載の半導体ウエハ。
【請求項8】
前記光学フィルタは、前記第1層と前記第2層とを交互に2回以上かつ25回以下の範囲で積層して形成される、請求項7に記載の半導体ウエハ。
【請求項9】
ウエハ中心部とウエハ再外周位置の高低差により定義されるウエハの反り量が、300μm以下である、請求項1から8のいずれか一項に記載の半導体ウエハ。
【請求項10】
前記ウエハ基板の直径が2インチ以上8インチ以下である、請求項1から9の何れか一項に記載の半導体ウエハ。
【請求項11】
平面視において、前記ウエハ基板の大きさと前記光学フィルタの大きさが略等しい請求項1から10のいずれか一項に記載の半導体ウエハ。
【請求項12】
基板と、
前記基板の第1面に形成され、2~10μmの赤外線を受光又は発光可能な半導体積層部と、
前記基板の第1面に対向する前記基板の第2面の上に直接形成される光学フィルタと、
前記光学フィルタの少なくとも一部を露出させるように、前記基板、前記半導体積層部及び前記光学フィルタを封止する封止部を備え、
前記基板は化合物半導体であり、
前記半導体積層部はInSb、AlInSb、InAs及びInAsSbの少なくとも一つを含み、
前記光学フィルタはSi、Ge、SiO、SiO、TiO及びZnSの少なくとも一つを含み、
前記基板の厚みTsubが、600μm以下であり、
前記基板の厚みTsub[μm]と前記光学フィルタの厚みTopt[μm]が、Topt≧4、かつTopt≦0.000053×Tsub2.0488の関係を満たす半導体デバイス。
【請求項13】
厚みがTsub[μm]の基板と、
前記基板の第1面に形成され、赤外線を受光又は発光可能な半導体積層部と、
前記第1面に対向する前記基板の第2面の上に形成される、厚みがTopt[μm]光学フィルタと、を備え、
前記基板は化合物半導体であり、
前記半導体積層部はInSb、AlInSb、InAs及びInAsSbの少なくとも一つを含み、
前記光学フィルタはSi、Ge、SiO、SiO、TiO及びZnSの少なくとも一つを含み、
前記基板の厚みTsubが、600μm以下であり、
前記光学フィルタが、前記基板との間に膜厚が50μm以上かつ300μm以下であるSiからなる中間層を有し、前記光学フィルタが、前記中間層の上に直接形成され、前記光学フィルタの膜厚が、前記基板の厚みの10%以下である半導体デバイス。
【請求項14】
前記基板の厚みTsubが、150μm~600μmである、請求項12又は13に記載の半導体デバイス。
【請求項15】
前記光学フィルタの厚みToptが、1.5μm~26μmである、請求項12から14のいずれか一項に記載の半導体デバイス。
【請求項16】
平面視において、前記基板の大きさと前記光学フィルタの大きさが略等しい請求項12から15のいずれか一項に記載の半導体デバイス。
【請求項17】
被検出ガスによって吸収される赤外線を出力する発光部と、
前記被検出ガスを導入するガスセルと、
前記発光部から出力されて前記ガスセルを通過した赤外線を受光し、受光した赤外線の光量に応じた信号を出力する受光部と、を備え、
前記発光部及び前記受光部の少なくとも一方は、請求項12から16のいずれか一項に記載の半導体デバイスである、ガス濃度測定装置。
【請求項18】
前記ウエハ基板はGaAsを含む、請求項1に記載の半導体ウエハ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体ウエハ、半導体デバイス、及びガス濃度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な電子機器において、さらなる小型化が求められている。これに伴い、電子機器に実装される半導体デバイスについても小型化が求められている。ここで、半導体デバイスは、例えば赤外線を受光する赤外線受光デバイス、及び、赤外線を発光する赤外線発光デバイス等を含む。また、半導体デバイスの小型化は、例えば実装面積を小さくすること、及び、厚さ方向を薄くすること(低背化)等を含む。
【0003】
例えば、先行文献1の技術は、基板を挟んでレンズと赤外線受光素子とを配置することによって、基板の一方にレンズ及び赤外線受光素子を配置する場合に比べて小型化を実現した赤外線受光デバイスを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-090377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、赤外線受光デバイス又は赤外線発光デバイスでは、特定の波長帯域での受光又は発光のために、光学フィルタ(以下、単に「フィルタ」とする)が用いられる。フィルタは一般に多層構造であり、反りが生じることがあり、一つの素子の大きさが小型化するほど反りの影響が顕在化する。反りの発生は素子を複数有するウエハの状態のときに特に顕著である。さらに、赤外領域のフィルタは、可視光領域のフィルタと比べて膜厚が厚くなることから応力が大きく、反りの影響が大きい。例えば、仮に特許文献1の技術でレンズの代わりに赤外領域のフィルタを配置しても、基板の孔を有する部分でフィルタの反りの影響を強く受け、その応力が赤外線受光素子に及ぶ。このように、赤外光領域のフィルタを備える半導体ウエハ、半導体デバイスの小型化は困難であった。
【0006】
本発明は、反りを抑えて小型化が可能な半導体ウエハ及び半導体デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施態様において、半導体ウエハは、
ウエハ基板と、
前記ウエハ基板の第1面に形成され、2~10μmの赤外線を受光又は発光可能な半導体積層部と、
前記ウエハ基板の第1面に対向する前記ウエハ基板の第2面の上に形成される光学フィルタを備え、
前記ウエハ基板の厚みTwaf[μm]と光学フィルタの厚みTopt[μm]が、Topt≧4、かつTopt≦0.000053×Twaf2.0488の関係を満たす。
【0008】
本発明の他の一実施態様において、半導体ウエハは、
ウエハ基板と、
前記ウエハ基板の第1面に形成され、赤外線を受光又は発光可能な半導体積層部と、
前記第1面に対向する前記ウエハ基板の第2面の上に形成される光学フィルタと、を備え、
前記光学フィルタが、前記ウエハ基板との間に膜厚が50μm以上かつ300μm以下であるSiからなる中間層を有し、前記光学フィルタの膜厚が、前記ウエハ基板の厚みの10%以下である。
【0009】
本発明の一実施態様において、半導体デバイスは、
基板と、
前記基板の第1面に形成され、2~10μmの赤外線を受光又は発光可能な半導体積層部と、
前記基板の第1面に対向する前記基板の第2面の上に形成される光学フィルタと、
前記光学フィルタの少なくとも一部を露出させるように、前記基板、前記半導体積層部及び前記光学フィルタを封止する封止部を備え、
前記基板の厚みTsub[μm]と光学フィルタの厚みTopt[μm]が、Topt≧4、かつTopt≦0.000053×Tsub2.0488の関係を満たす。
【0010】
本発明の他の一実施態様において、半導体デバイスは、
厚みがTsub[μm]の基板と、
前記基板の第1面に形成され、赤外線を受光又は発光可能な半導体積層部と、
前記第1面に対向する前記基板の第2面の上に形成される、厚みがTopt[μm]光学フィルタと、を備え、
前記光学フィルタが、前記基板との間に膜厚が50μm以上かつ300μm以下であるSiからなる中間層を有し、前記光学フィルタの膜厚が、前記基板の厚みの10%以下である。
【0011】
本発明の一実施態様において、ガス濃度測定装置は、
被検出ガスによって吸収される赤外線を出力する発光部と、
前記被検出ガスを導入するガスセルと、
前記発光部から出力されて前記ガスセルを通過した赤外線を受光し、受光した赤外線の光量に応じた信号を出力する受光部と、を備え、
前記発光部及び前記受光部の少なくとも一方は、上記に記載の半導体デバイスである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、反りを低減することによって、従来技術と比べてさらなる小型化が可能な半導体ウエハ、半導体デバイス、及びガス濃度測定装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る半導体デバイスの概略構成を示す外観斜視図である。
図2図2は、図1の半導体デバイスのA-A断面図である。
図3図3は、受発光素子の断面図である。
図4図4は、光学フィルタの断面図である。
図5図5は、本発明の一実施形態に係る半導体デバイスを備えるガス濃度測定装置の構成例を示す図である。
図6図6は、本発明の別の実施形態に係る半導体デバイスの断面図である。
図7図7は、従来例の半導体デバイスの断面図である。
図8図8は、本発明の一実施形態に係る半導体デバイスの製造方法例を示す図である。
図9図9は、本発明の別の実施形態に係る半導体デバイスの製造方法例を示す図である。
図10図10は、実施例1の光学フィルタの構造を示す図である。
図11図11は、実施例1の分光感度を示す図である。
図12図12は、実施例2の光学フィルタの構造を示す図である。
図13図13は、実施例2の発光強度を示す図である。
図14図14は、実施例3の光学フィルタの構造を示す図である。
図15図15は、実施例3の分光感度を示す図である。
図16図16は、実施例4の光学フィルタの構造を示す図である。
図17図17は、実施例4の分光感度を示す図である。
図18図18は、GaAs基板の厚みTwafとウエハ反りの関係を示す図である。
図19図19は、GaAs基板の厚みTwaf又はTsubにたいして、一体型のうえで許容される光学フィルタの厚みToptを示す図である。
図20図20は、比較例8の光学フィルタの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0015】
<半導体ウエハ>
<第一の実施形態の半導体ウエハ>
本発明の第一の実施形態の半導体ウエハは、ウエハ基板と、ウエハ基板の第1面に形成され、2~10μmの赤外線を受光又は発光可能な半導体積層部と、ウエハ基板の第1面に対向するウエハ基板の第2面の上に形成される光学フィルタを備える。ウエハ基板の厚みTwaf[μm]と光学フィルタの厚みTopt[μm]が、Topt≧4、かつTopt≦0.000053×Twaf2.0488の関係を満たす。
【0016】
第一の実施形態の半導体ウエハは、ウエハ基板の厚みTwaf[μm]と光学フィルタの厚みTopt[μm]が、Topt≧4、かつTopt≦0.000053×Twaf2.0488の関係を満たすことにより、半導体ウエハの反りを十分に低減するという効果を奏する。
【0017】
半導体ウエハの反りを十分に低減させる観点から、第一の実施形態の半導体ウエハにおけるウエハ基板の厚みTwafは240μm~600μmであることが好ましい。
【0018】
半導体ウエハの反りを十分に低減させる観点から、第一の実施形態の半導体ウエハにおける光学フィルタの厚みToptは4μm~26μmであることが好ましい。
【0019】
<第二の実施形態の半導体ウエハ>
本発明の第二の実施形態の半導体ウエハは、ウエハ基板と、ウエハ基板の第1面に形成され、赤外線を受光又は発光可能な半導体積層部と、第1面に対向するウエハ基板の第2面の上に形成される光学フィルタと、を備える。光学フィルタが、ウエハ基板との間に膜厚が50μm以上かつ300μm以下であるSiからなる中間層を有し、光学フィルタの膜厚が、ウエハ基板の厚みの10%以下である。
【0020】
第二の実施形態の半導体ウエハは、光学フィルタが、ウエハ基板との間に膜厚が50μm以上かつ300μm以下であるSiからなる中間層を有し、光学フィルタの膜厚が、ウエハ基板の厚みの10%以下である事により、半導体ウエハの反りを十分に低減するという効果を奏する。
【0021】
半導体ウエハの反りを十分に低減させる観点から、第二の実施形態の半導体ウエハにおける光学フィルタの厚みToptは、1.5μm~60μmであることが好ましい。
【0022】
ダイシングにおけるチッピング抑制の観点から、第一及び第二の実施形態の半導体ウエハは、ウエハ中心部とウエハ再外周位置の高低差により定義されるウエハの反り量が、300μm以下であることが好ましい。
【0023】
第二の実施形態の半導体ウエハにおける中間層は、膜厚が50μm以上かつ300μm以下であり、好ましくは75μm以上250μm以下、より好ましくは100μm以上200μm以下である。材料についてはSiからなるものであれば特に制限されない。一例としては、両面をミラー研磨したSi基板などが挙げられる。
【0024】
<半導体デバイス>
<第一の実施形態の半導体デバイス>
本発明の第一の実施形態の半導体デバイスは、基板と、基板の第1面に形成され、2~10μmの赤外線を受光又は発光可能な半導体積層部と、基板の第1面に対向する基板の第2面の上に形成される光学フィルタと、光学フィルタの少なくとも一部を露出させるように、基板、半導体積層部及び光学フィルタを封止する封止部を備える。基板の厚みTsub[μm]と光学フィルタの厚みTopt[μm]が、Topt≧4、かつTopt≦0.000053×Tsub2.0488の関係を満たす。
【0025】
第一の実施形態の半導体デバイスは、基板の厚みTsub[μm]と光学フィルタの厚みTopt[μm]が、Topt≧4、かつTopt≦0.000053×Tsub2.0488の関係を満たすことにより、波長選択性の優れた受発光部品を実現したうえで、半導体デバイスの内部応力を十分に低減し、温度及び湿度などの外部環境の変化によるダイオードの特性変動、光学薄膜の剥離による故障を抑制するという効果を奏する。
【0026】
<第二の実施形態の半導体デバイス>
本発明の第二の実施形態の半導体デバイスは、基板と、基板の第1面に形成され、赤外線を受光又は発光可能な半導体積層部と、第1面に対向する基板の第2面の上に形成される光学フィルタと、を備え、光学フィルタが、基板との間に膜厚が50μm以上かつ300μm以下であるSiからなる中間層を有し、光学フィルタの膜厚が、基板の厚みの10%以下である。
【0027】
第二の実施形態の半導体デバイスは、基板との間に膜厚が50μm以上かつ300μm以下であるSiからなる中間層を有し、光学フィルタの膜厚が、基板の厚みの10%以下である事により、半導体デバイスの内部応力を十分に低減し、温度及び湿度などの外部環境の変化によるダイオードの特性変動、光学薄膜の剥離による故障を抑制するという効果を奏する。
【0028】
<ガス濃度測定装置>
本発明の第一の実施形態のガス濃度測定装置は、被検出ガスによって吸収される赤外線を出力する発光部と、被検出ガスを導入するガスセルと、発光部から出力されてガスセルを通過した赤外線を受光し、受光した赤外線の光量に応じた信号を出力する受光部と、を備える。発光部及び受光部の少なくとも一方は、第一又は第二の実施形態の半導体デバイスである。
【0029】
第一の実施形態のガス濃度測定装置は、発光部及び受光部の少なくとも一方が、第一又は第二の実施形態の半導体デバイスであることにより、モジュールサイズの小型化とガスセンサとしての高い検出性能を両立させるという効果を奏する。
【0030】
以下、上述の第一及び第二の実施形態の半導体ウエハ(以下、「本実施形態の半導体ウエハ」と称する)及び第一及び第二の実施形態の半導体デバイス(以下、「本実施形態の半導体デバイス」と称する)における各構成要件について、説明する。
【0031】
<<ウエハ基板>>
本実施形態の半導体ウエハにおけるウエハ基板は、その第一面上に赤外線を受光又は発光可能な半導体積層部を有するものであれば特に制限されない。半導体デバイスの高い生産性の観点から、ウエハ基板は2インチ以上8インチ以下であることが好ましい。ウエハ基板の材料の例としては、シリコン基板、ガリウム砒素基板などが挙げられる。
【0032】
<<基板>>
本実施形態の半導体デバイスにおける基板は、その第一面上に赤外線を受光又は発光可能な半導体積層部を有するものであれば特に制限されない。基板の材料の例としては、シリコン基板、ガリウム砒素基板などが挙げられる。モジュールサイズの小型化とガスセンサとしての高い検出性能を両立させるという効果を奏する観点から、第一の実施形態においては、基板の厚みは240μm以上600μm以下であることが好ましい。
【0033】
<<半導体積層部>>
本実施形態の半導体ウエハ及び本実施形態の半導体デバイスにおける半導体積層部は、赤外線を受光又は発光可能なものであれば特に制限されない。
【0034】
半導体積層部は活性層を有していることが好ましく、中赤外域の所望の波長に対して選択的な分光特性をもつセンサを実現する観点から、活性層がAlIn1-xSb(0≦x≦0.20)又はInAsSb1-y(0.10≦y≦0.20)又はInAsSb1-y(0.75≦y≦1)であることが好ましい。
【0035】
<<光学フィルタ>>
干渉フィルタの設計を簡素化して、ウエハ反りを低減する観点から、本実施形態の半導体ウエハ及び本実施形態の半導体デバイスにおける光学フィルタは、2.4μm以上6μm以下の波長の赤外線に対する屈折率が1.2以上2.5以下の第1層と、2.4μm以上6μm以下の波長の赤外線に対する屈折率が2以上4.2以下の第2層と、を有することが好ましく、第1層と第2層とを交互に2回以上かつ25回以下の範囲で積層して形成されるものであることがより好ましい。
【0036】
中赤外域に吸収が少なく、所望の波長の赤外線を効率よく透過させる観点から、本実施形態の半導体ウエハ及び本実施形態の半導体デバイスにおける光学フィルタは、SiO、SiO、TiO及びZnSの少なくとも一つを含むことが好ましい。
【0037】
中赤外域に吸収が少なく、所望の波長の赤外線を効率よく透過させる観点から、本実施形態の半導体ウエハ及び本実施形態の半導体デバイスにおける光学フィルタは、Si及びGeの少なくとも一つを含むことが好ましい。
また、量産性の観点から、平面視において、ウエハ基板又は基板の大きさと光学フィルタの大きさが略等しいことが好ましい場合がある。略等しいとは、目的を逸脱しない範囲であることを意味するが、具体的には相対的な面積割合の差が10%以下であることを意味してよい。
【0038】
以下に図面を参照しながら、本発明の実施形態が説明される。ここで、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明が省略される。
【0039】
(半導体デバイス)
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体デバイス1の概略構成を示す外観斜視図である。図1に示されるように、半導体デバイス1は、外部から視認される光学フィルタ10と、封止部20と、電極30と、を備える。
【0040】
図2は、図1の半導体デバイス1のA-A断面図である。図2に示されるように、半導体デバイス1は、封止部20及び光学フィルタ10によって覆われる受発光素子40を備える。図1及び図2に示されるように、半導体デバイス1は、光学フィルタ10と、封止部20と、電極30と、受発光素子40と、を備える。
【0041】
(受発光素子)
受発光素子40は、基板41と、半導体積層部42と、を備える。受発光素子40は、赤外線を受光する受光素子、又は、赤外線を発光する発光素子である。
【0042】
(基板)
図2に示されるように、受発光素子40の基板41は、半導体積層部42側の主面である第1面411と、第1面411に対向する光学フィルタ10側の主面である第2面412と、を備える。基板41は、例えばGaAs基板(図3参照)であるが、これに限定されるものではない。基板41は、例えばSi基板等の他の基板であってよい。
【0043】
(半導体積層部)
図3は、受発光素子40の断面図である。受発光素子40の半導体積層部42は、化合物半導体の活性層424を含み、赤外線を基板41の側へ発光又は基板41の側から受光する。活性層424は、受発光素子40が受光素子である場合には光吸収層であり、受発光素子40が発光素子である場合には発光層である。半導体積層部42は、基板41の第1面411の上に形成される。
【0044】
ここで、「半導体積層部42は、基板41の第1面411の上に形成される」という表現における「上に」という文言は、基板41の第1面411に接して半導体積層部42が形成される場合に加えて、基板41の第1面411と半導体積層部42との間に別の層がさらに存在する場合も含む。その他の層同士の関係を表現する場合において「上の」という文言を使用する場合にも、意味は同様であるとする。例えば、後述する図3の半導体積層部42の層構造において、第2のn型化合物半導体層422、n型バリア層423、活性層424、p型バリア層425及びp型化合物半導体層426は、いずれも第1のn型化合物半導体層421の上に形成されている。
【0045】
半導体積層部42は、第1のn型化合物半導体層421と、第2のn型化合物半導体層422と、n型バリア層423と、活性層424と、p型バリア層425と、p型化合物半導体層426と、を備える。第1のn型化合物半導体層421は、格子緩和のためのバッファ層としての機能、及び所望の中赤外域の赤外線を透過させる機能を有する。第1のn型化合物半導体層421は、例えばn型にドーピングされたInSbを含む。第2のn型化合物半導体層422は、PINダイオードのn層としての機能、及び所望の中赤外域の赤外線を透過させる機能を有する。第2のn型化合物半導体層422は、例えばn型にドーピングされたAlInSbを含む。n型バリア層423は、p型バリア層425とともに発光素子におけるキャリア閉じ込め機能、及び熱励起キャリアによるリークを防止する機能を有する。n型バリア層423は、例えばn型にドーピングされたAlIn1-ySb(0.15≦y≦0.40)を含む。活性層424は、受光素子における光電変換層、発光素子における発光層としての機能を有する。活性層424は、p型あるいはノンドープのAlIn1-xSb(0.02≦x≦0.20)を含む。p型バリア層425は、n型バリア層423とともに発光素子におけるキャリア閉じ込め機能、及び熱励起キャリアによるリークを防止する機能を有する。p型バリア層425は、例えばp型にドーピングされたAlIn1-zSb(0.15≦z≦0.40)を含む。p型化合物半導体層426は、PINダイオードのp層としての機能を有する。p型化合物半導体層426は、例えばp型にドーピングされたAlInSbを含む。
【0046】
ここで、上記の各層の組成は一例である。例えば活性層424は、化合物半導体としてAlIn1-xSb(0≦x≦0.20)又はInAsSb1-y(0.10≦y≦0.20)又はInAsSb1-y(0.75≦y≦1)を含んでよい。例えば第2のn型化合物半導体層422は、n型にドーピングされたAlInSb又はInSbを含んでよい。例えばp型化合物半導体層426は、p型にドーピングされたAlInSb又はInSbを含んでよい。
【0047】
ここで、「第1のn型化合物半導体層421は、…InSbを含む」という表現における「含む」という文言は、InSbを主に第1のn型化合物半導体層421に含むことを意味するが、その他の元素を含む場合もこの表現に含まれる。具体的には、他の元素を少量(例えばAs、Al、Ga、Si、Sn、Zn、Nなどの元素を数%以下)加えるなどしてこの層の組成に軽微な変更を加える場合についてもこの表現に含まれる。その他の層の組成を表現する場合に使用される「含む」という文言は、同様の意味を有する。
【0048】
(光学フィルタ)
図4は、光学フィルタ10の断面図である。光学フィルタ10は、2.4μm以上6μm以下の波長域の赤外線に対する屈折率が1.2以上かつ2.5以下である第1層101と、2.4μm以上6μm以下の波長域の赤外線に対する屈折率が2以上かつ4.2以下である第2層102と、を含む。光学フィルタ10は、基板41の第2面412の上に形成される。
【0049】
ここで、光学フィルタ10は、第1層101と第2層102とを交互に2回以上かつ25回以下の範囲で積層して形成されることが好ましい。2回以上かつ25回以下の範囲で積層することによって、低応力で組み立て加工が行いやすい受発光部品の実現が可能である。また、選択的かつ高精度なガス検出機能を実現するために、多層膜の膜厚は一定の厚み以上積層する必要があり、Topt≧4の関係を満たすことが好ましい。また、低背化、低コスト化の観点から、光学フィルタの厚みTopt[μm]は、基板の厚みTsub[μm]に対して、Topt≦0.000053×Tsub2.0488の関係を満たす。あるいは26μm以下であることが好ましい。あるいは、基板と光学フィルタの間に、Siからなる膜厚が50μm以上かつ300μm以下の中間層を備える場合には、基板の厚みの10%以下、あるいは60μm以下であることが好ましい。
【0050】
上記の膜厚範囲を満たしていれば、SiO、SiO、TiO、ZnSなどを一例とする光学薄膜を光学フィルタの材料として用いた場合に、特に応力による基板の反りを抑えることができる。
【0051】
第1層101は、例えばSiO、SiO、TiO及びZnSの少なくとも一つを含む。また、第2層102は、Si及びGeの少なくとも一つを含む。
【0052】
また、光学フィルタ10は、受発光素子40が受光又は発光する赤外線の波長域に合わせて、第1層101及び第2層102の特性を変更してよい。例えば、受発光素子40が受光又は発光する赤外線の波長域が2.4μm以上かつ10μm以下である場合に、光学フィルタ10は、波長が2.4μm以上かつ6μm以下である赤外線に対して屈折率が1.2以上かつ2.5以下である第1層101と、屈折率が2以上かつ4.2以下である第2層102と、を含んでよい。
【0053】
(封止部)
図1及び図2に示されるように、半導体デバイス1は、光学フィルタ10の一部を露出させるように、基板41、半導体積層部42及び光学フィルタ10を封止する封止部20を備える。封止部20は、モールド樹脂、又はポッティング樹脂といった樹脂であってよい。図2に示されるように、基板41、半導体積層部42及び光学フィルタ10の側面(z軸に平行な面)は封止部20によって覆われており、振動に対する耐性が優れているといった効果がある。
【0054】
(電極)
電極30は、受発光素子40に対して電力を供給、あるいは電流を取り出すための導電体である。電極30は、例えばCu及びその合金などがあげられる。
【0055】
(ガス濃度測定装置)
図5は、半導体デバイス1を備えるガス濃度測定装置100の構成例を示す図である。ガス濃度測定装置100は、発光部2と、受光部3と、ガスセル4と、ガス導入部5と、ガス排出部6と、を備える。
【0056】
ガス濃度測定装置100において、発光部2から出力された赤外線は、ガスセル4において被検出ガスにより吸収される。受光部3は、ガスセル4を通過した赤外線、すなわち、被検出ガスにより吸収された後の赤外線を受光する。受光部3は、受光した赤外線の光量に応じた信号を出力する。ここで、赤外線は被検出ガスの濃度に応じて吸収される量が変化する。そのため、ガス濃度測定装置100は、受光部3の出力信号に基づいて、被検出ガスの濃度を測定することができる。被検出ガスの濃度は、受光部3の出力信号に基づいて、ガス濃度測定装置100が備える、又は、ガス濃度測定装置100の外部に設けられたプロセッサ等の演算部によって算出されてよい。被検出ガスは、例えばCO、CO、CH、HO、COH、CHO、C、NH、NO等であって、ガス導入部5からガスセル4内に導入されて、ガス排出部6から排出される。
【0057】
半導体デバイス1は、ガス濃度測定装置100の発光部2及び受光部3の少なくとも1つとして使用され得る。例えば、半導体デバイス1は、受発光素子40が発光素子であって、ガス濃度測定装置100の発光部2として用いられてよい。このとき、半導体デバイス1は、光学フィルタ10の露出部分が受光部3の方を向くように、ガス濃度測定装置100に設けられる。また、例えば、半導体デバイス1は、受発光素子40が受光素子であって、ガス濃度測定装置100の受光部3として用いられてよい。このとき、半導体デバイス1は、光学フィルタ10の露出部分が発光部2の方を向くように、ガス濃度測定装置100に設けられる。また、受発光素子40が発光素子である半導体デバイス1と、受発光素子40が受光素子である別の半導体デバイス1とが、それぞれ、ガス濃度測定装置100の発光部2及び受光部3として使用されてよい。
【0058】
以上のように、半導体デバイス1は、基板41と、化合物半導体の活性層を含み、赤外線を基板41の側へ発光又は基板41の側から受光する、基板41の第1面411に形成される半導体積層部42と、第1層101と、第2層102と、を含み、基板41の第2面412の上に形成される光学フィルタ10と、を備える。ここで、図7は、従来例の半導体デバイス1001の断面図である。半導体デバイス1001は、光学フィルタ10を支持する封止部22を、受発光素子40を封止する封止部21と接続することで構成される。半導体デバイス1001は、独立した部品である光学フィルタ10を、封止部22の一部に接着剤等でマウントする構造である。半導体デバイス1001では必然的に基板41と光学フィルタ10との間に空気の層が生じるが、空気の層での光の干渉を避けるため、光学フィルタ10が基板41から一定距離以上離れている必要がある。しかし、半導体デバイス1は、上記の構成によって、光学フィルタ10が基板41の第1面411に接して設けられるため、従来技術と比べてさらなる小型化が可能である。
【0059】
(別の実施形態)
図6は、本発明の別の実施形態に係る半導体デバイス1の断面図である。図6は、上記の実施形態の図2に対応する。ここで、別の実施形態に係る半導体デバイス1の外観斜視図、光学フィルタ10の構成、受発光素子40の構成は、上記の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0060】
別の実施形態に係る半導体デバイス1は、光学フィルタ10と、中間層11と、封止部20と、電極30と、受発光素子40と、を備える。上記の実施形態と異なり、別の実施形態に係る半導体デバイス1は、基板41と光学フィルタ10の間に中間層11を備える。中間層11は、例えばSiである。Siの中間層11によって、別の実施形態に係る半導体デバイス1は、上記の実施形態の半導体デバイス1の効果に加えて、堅牢性が向上して、組立工程での安定性を高めることが可能である。ここで、中間層11の膜厚を薄くしすぎると、半導体デバイス1の堅牢性の効果が生じにくく、半導体デバイス1に対する中間層11の反りの影響が大きくなるおそれがある。また、中間層11の膜厚を厚くしすぎると小型化(低背化)を妨げるおそれがある。上記の観点から、中間層11の膜厚は、例えば50μm以上かつ300μm以下であることが好ましい。中間層11の膜厚は、例えば100μm以上かつ250μm以下であることがより好ましい。中間層11の膜厚は、例えば150μm以上かつ200μm以下であることがさらに好ましい。
【0061】
(実施例)
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は、下記実施例に限定されるものではなく、その発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変更可能である。
【0062】
[実施例1]
赤外線発光素子の裏面に光学フィルタを備えたIR-センサの製造例に基づいて本実施形態の半導体ウエハ及び半導体デバイスについて説明する。まず、直径が4インチのGaAs基板上にMBE法によりPINダイオード構造を作製した。活性層はAl0.04In0.96Sbとし、n型半導体層は、Snを1.0×1019原子/cmドーピングすることで、エネルギーバンドを縮退させ、2000nmより長波長の赤外線光に対して透明化している。さらに、活性層を挟むように、n型Al0.22In0.78Sbとp型Al0.22In0.78Sbがバリア層として設けられた。図3は、実施例1に係る赤外線発光素子の各層の積層構造を示す。このようにして準備した半導体ウエハの表面にi線用ポジ型フォトレジストを塗布し、縮小投影型露光機によりi線を使用し露光が行われた。次に現像を行い、半導体積層部の表面にレジストパターンが規則的に複数形成された。次に、ドライエッチング処理により、複数のメサが形成された。メサ形状を有する素子上に、ハードマスクとしてSiOを成膜後、ドライエッチングで素子分離が行われ、その後、保護膜としてSiNが成膜され、フォトリソグラフィーとドライエッチングによりコンタクトホールが形成された。その後、フォトリソグラフィーとスパッタリングにより、複数のメサが直列接続された。その後、ポリイミド樹脂が保護膜として、素子表面を覆うように形成された。
【0063】
このようにして加工した化合物半導体ウエハの裏面を研磨により350μmに薄くし、さらに蒸着装置を用いて図10の光学フィルタを化合物半導体ウエハの裏面に形成すれば、本実施形態に係る半導体ウエハが作製できる。
【0064】
光学フィルタの設計は、シミュレーションで実施した。シミュレーションの手法については、フレネル係数を利用した公知の計算手法を用いた。また、シミュレーションにおける光学薄膜の材料(GeとSiO)の複素屈折率の波長分散データについては、文献値を用いた。
【0065】
実施例1で得られた半導体ウエハは、ウエハ基板の厚みTwaf(350μm)と光学フィルタの厚みTopt(7.8μm)が、Topt≧4、かつTopt≦0.000053×Twaf2.0488の関係を満たす。
【0066】
上述した半導体ウエハの反り量を、公知のバイメタルの公式を使って見積もった結果、およそ275μmになるという結果が得られた。ここで半導体ウエハの反り量とは、ウエハ中心部とウエハ再外周位置の高低差により定義されるウエハの反り量である。ウエハ反り量は、ダイシング時のチッピングを抑制する観点から300μm以下であることが望まれ、本実施形態ではこれを満たす。
【0067】
上述した前工程プロセスにより作製したフィルタ一体型のセンサウエハをダイシングして個片化し、Auワイヤーをボンディングしリードフレームと結線して、エポキシ系モールド樹脂で発光面が露出するように封止すれば、本実施形態に係る半導体デバイスが作製できる。実施例1のように、中間層を含まない半導体デバイスは、例えば図8の製造方法に従って作製される。
【0068】
このように作製した赤外線受光素子の分光感度スペクトルを計算した結果、図11の結果が得られた。図11は、実施例1に係る赤外線発光素子の分光感度スペクトルを示す。この結果が示す通り、従来では構造的に独立していたIR-センサと光学フィルタを一体化させることによって、同等の分光感度スペクトルは維持したまま、PKG(パッケージ)サイズを、3.0mm×3.0mm×0.52mm(縦×横×厚み、以下同じ)にまで小型化することができる。図7に示した従来例のIR-センサは3.0mm×3.0mm×1.1mmであったことから、約半分の薄型化が実現している。
【0069】
また、この構造であれば、図7に示した従来の光学フィルタ付きIR-センサに必要であった光学フィルタのPKG化工程が不要になるので、プロセス容易性の面からも優れている。
【0070】
[実施例2]
赤外線発光素子の裏面にSi基板の中間層及び光学フィルタを備えたIR-LEDについて説明する。直径が4インチのGaAs基板上にMBE法によりPINダイオード構造を作製した。活性層はAl0.04In0.96Sbとし、n型半導体層は、Snを1.0×1019原子/cmドーピングすることで、エネルギーバンドを縮退させ、2000nmより長波長の赤外線光に対して透明化している。さらに、活性層を挟むように、n型Al0.22In0.78Sbとp型Al0.22In0.78Sbがバリア層として設けられた。図3は、実施例2に係る赤外線発光素子の各層の積層構造を示す。
【0071】
このようにして準備した半導体ウエハの表面にi線用ポジ型フォトレジストを塗布し、縮小投影型露光機によりi線を使用し露光が行われた。次に現像を行い、半導体積層部の表面にレジストパターンが規則的に複数形成された。次に、ドライエッチング処理により、複数のメサが形成された。メサ形状を有する素子上に、ハードマスクとしてSiOを成膜後、ドライエッチングで素子分離が行われ、その後、保護膜としてSiNが成膜され、フォトリソグラフィーとドライエッチングによりコンタクトホールが形成された。その後、フォトリソグラフィーとスパッタリングにより、複数のメサが直列接続された。その後、ポリイミド樹脂が保護膜として、素子表面を覆うように形成された。
【0072】
このようにして加工した化合物半導体ウエハの裏面を研磨により200μmに薄くし、150μmのSi基板の中間層を介して、図12の光学フィルタを備えれば、本実施形態に係る半導体ウエハとなる。製法としては、Si基板上に光学フィルタを形成し、Si基板の裏面を150μmに研磨したのちに、化合物半導体ウエハの裏面とフィルタウエハの裏面をプラズマで活性化させて共有結合させればよい。光学フィルタの設計は、シミュレーションで実施した。シミュレーションの手法については、実施例1と同様の方法を採用した。
【0073】
実施例2で得られた半導体ウエハは、ウエハ基板の厚みTwaf(200μm)にたいして、光学フィルタの厚みTopt(6.8μm)が3.4%であり、本発明で規定する10%以下の関係を満たす。
【0074】
上述した製法であれば、ウエハの剛性が高く且つバイメタル効果の影響を受けにくいため、フィルタ一体化によるウエハ反りの変化が小さくなり、アセンブリ工程の際にチッピングの発生を抑制したダイシングが可能である。
【0075】
上述の製法により作製したフィルタ一体型のウエハをダイシングして個片化し、Auワイヤーをボンディングしリードフレームと結線して、エポキシ系モールド樹脂で発光面が露出するように封止すれば、本実施形態に係る半導体デバイスが作製できる。実施例2のように、中間層を含む半導体デバイスは、例えば図9の製造方法に従って作製される。
【0076】
このように作製した赤外線発光素子の発光強度スペクトルを計算した結果、図13の結果が得られた。図13は、実施例2に係る赤外線発光素子の発光強度スペクトルを示す。この結果が示す通り、従来では構造的に独立していたIR-LEDと光学フィルタを一体化させることによって、同等の分光感度スペクトルは維持したまま、PKGサイズを、3.0mm×3.0mm×1.1mmから3.0mm×3.0mm×0.52mmにまで小型化することができる。また、この構造であれば、光学フィルタをPKG化する工程は省略できる。さらに、COの吸収帯域のみに発光強度を有するIR-LEDが設計できたことにより、ガスセンサモジュールにおける光路設計の自由度が広がる。これは、光学フィルタの入射角度依存性が大きいために、IR-センサの前に光学フィルタを設置する従来の構成では、センサとLEDの相対位置、及び光路設計に制約があったためである。
【0077】
[実施例3]
赤外線発光素子の裏面に光学フィルタを備えたIR-センサについて説明する。まず、直径が4インチのGaAs基板上にMBE法によりPINダイオード構造を作製した。活性層はAl0.09In0.91Sbとし、n型半導体層は、Snを1.0×1019原子/cmドーピングすることで、エネルギーバンドを縮退させ、2000nmより長波長の赤外線光に対して透明化している。さらに、活性層を挟むように、n型Al0.30In0.70Sbとp型Al0.30In0.70Sbがバリア層として設けられた。図3は、実施例3に係る赤外線発光素子の各層の積層構造を示す。
【0078】
このようにして準備した半導体ウエハの表面にi線用ポジ型フォトレジストを塗布し、縮小投影型露光機によりi線を使用し露光が行われた。次に現像を行い、半導体積層部の表面にレジストパターンが規則的に複数形成された。次に、ドライエッチング処理により、複数のメサが形成された。メサ形状を有する素子上に、ハードマスクとしてSiOを成膜後、ドライエッチングで素子分離が行われ、その後、保護膜としてSiNが成膜され、フォトリソグラフィーとドライエッチングによりコンタクトホールが形成された。その後、フォトリソグラフィーとスパッタリングにより、複数のメサが直列接続された。その後、ポリイミド樹脂が保護膜として、素子表面を覆うように形成された。
【0079】
このようにして加工した化合物半導体ウエハの裏面を研磨により300μmに薄くし、さらに蒸着装置を用いて図14の光学フィルタを化合物半導体ウエハの裏面に形成すれば、本実施形態に係る半導体ウエハが作製できる。光学フィルタの設計は、シミュレーションで実施した。シミュレーションの手法については、実施例1と同様の方法を採用した。
【0080】
実施例3で得られた半導体ウエハは、ウエハ基板の厚みTwaf(300μm)と光学フィルタの厚みTopt(5.7μm)が、Topt≧4、かつTopt≦0.000053×Twaf2.0488の関係を満たす。
【0081】
上述した半導体ウエハの反り量を、公知のバイメタルの公式を使って見積もった結果、およそ275μmになるという結果が得られた。ここで半導体ウエハの反り量とは、ウエハ中心部とウエハ再外周位置の高低差により定義されるウエハの反り量である。ウエハ反り量は、ダイシング時のチッピングを抑制する観点から300μm以下であることが望まれ、本実施形態ではこれを満たす。
【0082】
上述した前工程プロセスにより作製したフィルタ一体型のセンサウエハをダイシングして個片化し、Auワイヤーをボンディングしリードフレームと結線して、エポキシ系モールド樹脂で発光面が露出するように封止すれば、本実施形態に係る半導体デバイスが作製できる。
【0083】
このように作製した赤外線受光素子の分光感度スペクトルを計算した結果、図15の結果が得られた。図15は、実施例3に係る赤外線発光素子の分光感度スペクトルを示す。この結果が示す通り、従来では構造的に独立していたIR-センサと光学フィルタを一体化させることによって、同等の分光感度スペクトルは維持したまま、PKGサイズを、3.0mm×3.0mm×1.1mmから3.0mm×3.0mm×0.52mmにまで小型化することができる。また、この構造であれば、光学フィルタをPKG化する工程は省略できる。
【0084】
[実施例4]
赤外線発光素子の裏面にSi基板の中間層及び光学フィルタを備えたIR-センサについて説明する。まず、直径が4インチのGaAs基板上にMBE法によりPINダイオード構造を作製した。活性層はIn0.14As0.86Sbとし、n型半導体層は、Snを1.0×1019原子/cmドーピングすることで、エネルギーバンドを縮退させ、2000nmより長波長の赤外線光に対して透明化している。さらに、活性層とp型半導体層の間に、p型Al0.22In0.78Sbがバリア層として設けられた。図3は、実施例4に係る赤外線発光素子の各層の積層構造を示す。
【0085】
このようにして準備した半導体ウエハの表面にi線用ポジ型フォトレジストを塗布し、縮小投影型露光機によりi線を使用し露光が行われた。次に現像を行い、半導体積層部の表面にレジストパターンが規則的に複数形成された。次に、ドライエッチング処理により、複数のメサが形成された。メサ形状を有する素子上に、ハードマスクとしてSiOを成膜後、ドライエッチングで素子分離が行われ、その後、保護膜としてSiNが成膜され、フォトリソグラフィーとドライエッチングによりコンタクトホールが形成された。その後、フォトリソグラフィーとスパッタリングにより、複数のメサが直列接続された。その後、ポリイミド樹脂が保護膜として、素子表面を覆うように形成された。
【0086】
このようにして加工した化合物半導体ウエハの裏面を研磨により200μmに薄くし、150μmのSi基板の中間層を介して、図16の光学フィルタを備えれば、本実施形態に係る半導体ウエハとなる。製法としては、Si基板上に光学フィルタを形成し、Si基板の裏面を150μmに研磨したのちに、化合物半導体ウエハの裏面とフィルタウエハの裏面をプラズマで活性化させて共有結合させればよい。光学フィルタの設計は、シミュレーションで実施した。シミュレーションの手法については、光学薄膜の材料GeとZnSの複素屈折率の波長分散データの文献値を用いた以外は、実施例1と同様の方法を採用した。
【0087】
実施例4で得られた半導体ウエハは、ウエハ基板の厚みTwaf(200μm)にたいして、光学フィルタの厚みTopt(16.0μm)が8.0%であり、本発明で規定する10%以下の関係を満たす。
【0088】
上述した製法であれば、ウエハの剛性が高く且つバイメタル効果の影響を受けにくいため、フィルタ一体化によるウエハ反りの変化が小さくなり、アセンブリ工程の際にチッピングの発生を抑制したダイシングが可能である。
【0089】
上述の製法により作製したフィルタ一体型のセンサウエハをダイシングして個片化し、Auワイヤーをボンディングしリードフレームと結線して、エポキシ系モールド樹脂で発光面が露出するように封止すれば、本実施形態に係る半導体デバイスが作製できる。
【0090】
このように作製した赤外線受光素子の分光感度スペクトルを計算した結果、図17の結果が得られた。図17は、実施例4に係る赤外線発光素子の分光感度スペクトルを示す。この結果が示す通り、フィルタとセンサを一体型にすることで、アルコールの吸収帯域に選択的に感度を有するセンサを実現できる。
【0091】
[比較例1]
光学フィルタを形成しなかったこと以外は、実施例1と同様に半導体ウエハ及び赤外線受光素子を得た。
【0092】
得られた赤外線受光素子の分光感度スペクトルを計算した結果を図11に記載した。実施例1で得られた赤外線受光素子と比較して、2~5.5μmに広範囲の感度帯域を有しているため、COの吸収を選択的に検出する用途には適さない。
【0093】
[比較例2]
光学フィルタ及び中間層を形成しなかったこと以外は、実施例2と同様に半導体ウエハ及び赤外線発光素子を得た。
【0094】
得られた赤外線発光素子の発光強度スペクトルを計算した結果を図13に記載した。実施例2で得られた赤外線発光素子と比較して、3~5.5μmに広範囲の感度帯域を有しているため、COの吸収を選択的に検出する用途には適さない。
【0095】
[比較例3]
光学フィルタを形成しなかったこと以外は、実施例3と同様に半導体ウエハ及び赤外線受光素子を得た。
【0096】
得られた赤外線受光素子の分光感度スペクトルを計算した結果を図15に記載した。実施例3で得られた赤外線受光素子と比較して、2~4μmに広範囲の感度帯域を有しているため、CH4の吸収を選択的に検出する用途には適さない。
【0097】
[比較例4]
光学フィルタを形成しなかったこと以外は、実施例4と同様に半導体ウエハ及び赤外線受光素子を得た。
【0098】
得られた赤外線受光素子の分光感度スペクトルを計算した結果を図17に記載した。実施例4で得られた赤外線受光素子と比較して、2~13μmに広範囲の感度帯域を有しているため、アルコールの吸収を選択的に検出する用途には適さない。
【0099】
[比較例5]
センサPKGは比較例1と同じとして、別途製作したフィルタPKGをセンサPKGにマウントすることで、赤外線受光素子を得た。フィルタPKGに搭載される光学フィルタは、赤外線受光素子の波長選択性を考慮せずに設計されたバンドパスフィルタであり、COの吸収波長帯域を除く、少なくとも1~9μmの波長帯域の赤外線を遮断する。光学フィルタ部の厚みは20μm以上である。光学フィルタウエハをダイシングして個片化し、エポキシ系モールド樹脂でフィルタチップの両面が露出するように封止すれば、本実施形態に係る半導体デバイスが作製できる。
【0100】
得られた赤外線受光素子の分光感度スペクトルを計算した結果を図11に記載した。実施例1で得られた赤外線受光素子と同等の結果が得られた。一方、比較例5ではセンサPKGとフィルタPKGを組み合わせた構造であるため小型化が困難である。比較例5のIR-センサは3.0mm×3.0mm×1.1mmであることから、実施例1にたいしてデバイス高さが約2倍となっている。
【0101】
[比較例6]
LED PKGは比較例2と同じとして、別途製作したフィルタPKGをセンサPKGにマウントすることで、赤外線発光素子を得た。フィルタPKGに搭載される光学フィルタは、赤外線発光素子の波長選択性を考慮せずに設計されたバンドパスフィルタであり、COの吸収波長帯域を除く、少なくとも1~9μmの波長帯域の赤外線を遮断する。光学フィルタ部の厚みは20μm以上である。光学フィルタウエハをダイシングして個片化し、エポキシ系モールド樹脂でフィルタチップの両面が露出するように封止すれば、本実施形態に係る半導体デバイスが作製できる。
【0102】
得られた赤外線発光素子の発光強度スペクトルを計算した結果を図13に記載した。実施例2で得られた赤外線受光素子と同等の結果が得られた。
【0103】
一方、比較例6ではLED PKGとフィルタPKGを組み合わせた構造であるため小型化が困難である。比較例6のIR-LEDは3.0mm×3.0mm×1.1mmであることから、実施例2にたいしてデバイス高さが約2倍となっている。
【0104】
[比較例7]
センサPKGは比較例3と同じとして、別途製作したフィルタPKGをセンサPKGにマウントすることで、赤外線受光素子を得た。フィルタPKGに搭載される光学フィルタは、赤外線受光素子の波長選択性を考慮せずに設計されたバンドパスフィルタであり、CH4の吸収波長帯域を除く、少なくとも1~9μmの波長帯域の赤外線を遮断する。光学フィルタ部の厚みは20μm以上である。光学フィルタウエハをダイシングして個片化し、エポキシ系モールド樹脂でフィルタチップの両面が露出するように封止すれば、本実施形態に係る半導体デバイスが作製できる。
【0105】
得られた赤外線受光素子の分光感度スペクトルを計算した結果を図15に記載した。実施例3で得られた赤外線受光素子と同等の結果が得られた。
【0106】
一方、比較例7ではセンサPKGとフィルタPKGを組み合わせた構造であるため小型化が困難である。比較例7のIRセンサは3.0mm×3.0mm×1.1mmであることから、実施例3にたいしてデバイス高さが約2倍となっている。
【0107】
[比較例8]
化合物半導体ウエハの裏面に形成する光学フィルタの厚みを、図20に示す3.9μmにしたこと以外は、実施例1と同様に半導体ウエハ及び赤外線受光素子を得た。
【0108】
得られた赤外線受光素子の分光感度スペクトルを計算した結果を図11に記載した。実施例1で得られた赤外線受光素子と比較して、ピーク感度が約20%低く、さらに半値幅に関しては50%以上狭いため、CO吸収帯域における感度は40%以下にまで低下してしまう。
【0109】
図18は、光学フィルタをセンサウエハと一体化させた際の、GaAs基板厚みとウエハ反りの関係を示す図である。
【0110】
実測値としてプロットされる点は、4インチのGaAs基板の厚みを400μm~580μmの範囲で変化させ、かつ光学フィルタ(材料SiO)の厚みを14.3μmとした場合の、ウエハ中心部とウエハ再外周位置の高低差により定義されるウエハの反り量を実測した結果である。
【0111】
一方、計算値としてプロットされる値は、公知のバイメタルの理論をベースとして、実測値と一致するようにフィッティングした結果である。フィッティングにあたって、材料のヤング率と線膨張係数は文献値を用いた。
【0112】
次に、この計算モデルを使って、ウエハ反りが300μm以下になるGaAs基板厚み[μm]とフィルタ厚み[μm]の関係を計算して図示したものが図19である。図19のプロットを最小二乗法により近似したところ、Topt≦0.000053×Twaf2.0488の関係を満たすときに、ウエハ反りが300μm以下になるという結果を得た。図18及び図19に基づく結果は半導体デバイスについても同様である。すなわち、基板の厚みTsub[μm]と光学フィルタの厚みTopt[μm]が、Topt≦0.000053×Tsub2.0488の関係を満たすときに、反りが抑えられ、半導体デバイスの内部応力が十分に低減される。
【0113】
実施例の詳細を表1に示す。また、実施例と対比した比較例の詳細を表2に示す。
【0114】
【表1】
【0115】
【表2】
【0116】
本発明は、以上に記載した実施形態に限定されるものではない。当業者の知識に基づいて各実施形態に設計の変更等を加えることが可能であり、そのような変更等を加えた態様は本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0117】
1 半導体デバイス
2 発光部
3 受光部
4 ガスセル
5 ガス導入部
6 ガス排出部
10 光学フィルタ
11 中間層
20 封止部
21 封止部
22 封止部
30 電極
40 受発光素子
41 基板
42 半導体積層部
100 ガス濃度測定装置
101 第1層
102 第2層
411 第1面
412 第2面
421 第1のn型化合物半導体層
422 第2のn型化合物半導体層
423 n型バリア層
424 活性層
425 p型バリア層
426 p型化合物半導体層
1001 半導体デバイス
図1
図2
図3
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図5
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図10
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図15
図16
図17
図18
図19
図20