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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-13
(45)【発行日】2025-02-21
(54)【発明の名称】分析装置、及び、分析システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/3504 20140101AFI20250214BHJP
【FI】
G01N21/3504
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021565475
(86)(22)【出願日】2020-12-04
(86)【国際出願番号】 JP2020045320
(87)【国際公開番号】W WO2021124937
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2023-11-14
(31)【優先権主張番号】P 2019227117
(32)【優先日】2019-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【弁理士】
【氏名又は名称】川分 康博
(74)【代理人】
【識別番号】100221372
【弁理士】
【氏名又は名称】岡崎 信治
(72)【発明者】
【氏名】山本 篤志
(72)【発明者】
【氏名】長澤 賢弥
(72)【発明者】
【氏名】大塚 岳
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-190824(JP,A)
【文献】特開2013-239696(JP,A)
【文献】特開2009-061422(JP,A)
【文献】特開2005-226519(JP,A)
【文献】米国特許第03696666(US,A)
【文献】特開2013-176765(JP,A)
【文献】国際公開第2016/002928(WO,A1)
【文献】特開2009-257808(JP,A)
【文献】特開平07-311154(JP,A)
【文献】特開2016-014658(JP,A)
【文献】特開2011-038877(JP,A)
【文献】国際公開第2015/037483(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/153062(WO,A1)
【文献】特開2016-191628(JP,A)
【文献】特開2009-244074(JP,A)
【文献】特表2003-513276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/01
G01N 21/17-21/61
G01N 15/06
B01D 61/00-71/82
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象ガスを分析する分析装置であって、
前記測定対象ガスを含む試料ガスが充填される充填部と、
前記充填部に向けて測定光を照射する照射部と、
前記充填部と前記照射部との間に設けられ、前記測定光が伝搬する伝搬空間を形成する伝搬部と、
空気供給ラインから供給された空気から前記測定対象ガスを除去して前記伝搬空間をパージするためのパージガスを生成する気体分離膜を有する測定対象除去部と、
前記充填部と、前記照射部と、前記伝搬部と、前記測定対象除去部と、を内部空間に格納して外部空間と隔離する筐体と、
を備え、
前記伝搬部は、前記伝搬空間に導入された前記パージガスを、前記筐体の内部空間に排出するパージガス排出口を有し、
前記空気供給ラインから供給された空気は、前記筐体の内部空間に供給される、
分析装置。
【請求項2】
前記パージガスによりパージされた前記伝搬空間を通過した前記測定光を検出する検出部と、
前記伝搬空間を通過することで前記測定対象ガス及び前記測定光に影響を及ぼすガスにより吸収された前記測定光の強度に基づいて、前記測定対象除去部の劣化を判定する第1判定部と、
をさらに備える、請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記測定対象除去部に供給する前記空気の圧力又は流量に基づいて、前記測定対象除去部の劣化を判定する第2判定部をさらに備える、請求項1又は2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記測定対象除去部に劣化があると判定されたことを通知する通知部をさらに備える、請求項2又は3に記載の分析装置。
【請求項5】
前記気体分離膜は、前記空気から分離した窒素ガスを前記パージガスとする、請求項1~4のいずれかに記載の分析装置。
【請求項6】
前記測定対象ガスは、二酸化炭素、一酸化炭素、メタン、二酸化硫黄、 アンモニア、窒素酸化物、塩化水素、水、エタン、アセチレン、プロパン、エチレン、ヘキサン、プロピレン、硫化水素、イソブテン、メタノール、ホスゲン、ブタン、クロロエチレン、亜硝酸メチル、シクロヘキサン、ブタジエン、イソブタン、イソペンタン、トルエン、水素、フッ化水素、トリフルオロプロペンである、請求項1~5のいずれかに記載の分析装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の分析装置と、前記分析装置から出力される情報を報知する報知装置、とを備える、分析システム。
【請求項8】
測定対象ガスを含む試料ガスを通過した測定光の強度と、前記測定対象ガスの分析の基準として用いられるリファレンスガスを通過した前記測定光の強度と、に基づいて前記測定対象ガスの分析をする分析装置であって、
前記試料ガス又は前記リファレンスガスを含むガスが充填される充填部と、
前記充填部に向けて前記測定光を照射する照射部と、
前記試料ガスとは異なる供給源から供給された空気から前記測定対象ガスを分離する気体分離膜を有する測定対象除去部と、
前記測定対象除去部から供給されるガスから前記測定対象ガスを除去して前記リファレンスガスを生成するスクラバーと、
を備える分析装置。
【請求項9】
前記試料ガスと前記リファレンスガスを前記充填部に交互に導入する導入部をさらに備える、請求項8に記載の分析装置。
【請求項10】
前記充填部を通過した前記測定光を検出する検出部と、
前記リファレンスガスが充填された前記充填部を通過した前記測定光の強度に基づいて、前記測定対象除去部の劣化を判定する判定部と、
をさらに備える、請求項9に記載の分析装置。
【請求項11】
前記測定対象除去部に劣化があると判定されたことを通知する通知部をさらに備える、請求項10に記載の分析装置。
【請求項12】
前記測定対象ガスは、二酸化炭素、一酸化炭素、メタン、二酸化硫黄、 アンモニア、窒素酸化物、塩化水素、水、エタン、アセチレン、プロパン、エチレン、ヘキサン、プロピレン、硫化水素、イソブテン、メタノール、ホスゲン、ブタン、クロロエチレン、亜硝酸メチル、シクロヘキサン、ブタジエン、イソブタン、イソペンタン、トルエン、水素、フッ化水素、トリフルオロプロペンである、請求項8~11のいずれかに記載の分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料ガスに含まれる測定対象ガスを分析する分析装置及び分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試料ガスに測定光を照射し、試料ガスに含まれる測定対象ガスにより吸収された測定光の強度に基づいて測定対象ガスを分析する分析装置が知られている。この分析装置では、試料ガスは所定のセルに充填され、当該セルを通過した測定光の強度に基づいて分析が行われる。この分析装置では、セル内部以外の周囲環境(特に、セル内部以外の測定光の伝搬経路)を、測定対象ガス及び測定光に影響を及ぼすガスを含まないガス(以下、「パージガス」という。)で満たすのが一般的である。
また、試料ガスを通過した測定光の強度と、測定対象ガスを含まないガス(リファレンスガスと呼ばれる)を通過した測定光の強度と、の比較に基づいて測定対象ガスを分析する分析装置も知られている。
【0003】
上記の分析装置において、測定対象ガスを含まないパージガスは、例えば、ボンベから供給される。一方で、リファレンスガスは、例えば、測定対象ガスを除去可能な物質に空気などを通過させることで生成される。後者の具体例として、大気に含まれる二酸化炭素を測定対象ガスとする測定装置において、ゼオライト等の二酸化炭素吸着剤と、シリカゲルなどの極性物質を吸着する物質と、に試料ガス(大気)を通過させてリファレンスガスを生成する方法がある(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-14658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パージガスにより分析装置をパージする際にパージガスをボンベから供給する方法を採用した場合には、ボンベを頻繁に交換する必要がある。なぜなら、一般的に、分析装置の周囲環境をパージして測定対象ガスが含まれない(あるいは、測定に影響を与えない程度に十分に濃度が低い)状態とするには、大量のパージガスを必要とするからである。ボンベの頻繁な交換は、ユーザの負担を増大させる。
【0006】
一方、リファレンスガスを用いた分析を行う際に吸着剤を用いて大気等から測定対象ガスを除去してリファレンスガスを生成する方法を採用した場合には、吸着剤を頻繁に交換する必要がある。この吸着剤の頻繁な交換はユーザの負担を増大させる。
また、特許文献1のように、複数のガスラインのそれぞれに吸着剤を配置しガスラインを切り替えてリファレンスガスを生成することで、吸着剤交換頻度を減少させる方法もあるが、この場合には装置構成及び装置制御が複雑となる。
【0007】
さらに、ゼオライト、シリカゲルを吸着剤として用いた場合には、ゼオライト、シリカゲルから吸着成分(二酸化炭素、水分)を除去するためにヒータなどの加熱装置を設ける必要があり、この場合も装置構成を複雑にする。
【0008】
本発明の目的は、測定対象ガスを分析する分析装置において、パージガス、リファレンスガスなどの測定対象ガスを含まないガスを、ユーザの負担を増大させることなく供給可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
本発明の一見地に係る分析装置は、測定対象ガスを分析する装置である。分析装置は、充填部と、照射部と、伝搬部と、測定対象除去部と、を備える。充填部には、測定対象ガスを含む試料ガスが充填される。照射部は、充填部に向けて測定光を照射する。伝搬部は、充填部と照射部との間に設けられ、測定光が伝搬する伝搬空間を形成する。測定対象除去部は、気体から測定対象ガスを除去して伝搬空間をパージするためのパージガスを生成する気体分離膜を有する。
上記の分析装置では、測定光が充填部まで到達するまでに伝搬する伝搬空間をパージするパージガスが、気体分離膜を有する測定対象除去部により生成されている。これにより、パージガス供給用のボンベの頻繁な交換などユーザの負担を増大させる作業が不要となる。すなわち、ユーザの負担を増大させることなくパージガスの生成と供給が可能となる。
【0010】
分析装置は、検出部と、第1判定部と、をさらに備える。検出部は、パージガスによりパージされた伝搬空間を通過した測定光を検出する。第1判定部は、伝搬空間を通過することで測定対象ガス及び測定光に影響を及ぼすガスにより吸収された測定光の強度に基づいて、測定対象除去部の劣化を判定する。
これにより、測定対象ガスの分析と類似の方法により、簡便に測定対象除去部の劣化状態を判定できる。
【0011】
分析装置は、第2判定部をさらに備える。第2判定部は、測定対象除去部に供給する気体の圧力又は流量に基づいて、測定対象除去部の劣化を判定する。
これにより、測定対象除去部に供給する気体の圧力又は流量に影響を及ぼす「目詰まり」などを原因とした劣化(異常)が発生したか否かを判定できる。
【0012】
分析装置は、通知部をさらに備える。通知部は、測定対象除去部に劣化があると判定されたことを通知する。これにより、測定対象除去部が劣化したことをユーザに通知できる。
【0013】
分析装置は、筐体をさらに備える。筐体は、充填部と、照射部と、伝搬部と、を格納して外部空間と隔離する。これにより、測定対象ガスを分析するための構成要素を外部空間と隔離する構造を実現できる。
【0014】
気体分離膜は、気体から分離した窒素ガスをパージガスとする。これにより、パージガスとしての窒素ガスを、ユーザの負担を増加させることなく生成できる。
【0015】
測定対象ガスは、二酸化炭素(CO)、一酸化炭素(CO)、メタン(CH)、二酸化硫黄(SO)、 アンモニア(NH)、窒素酸化物(NOx)、塩化水素(HCl)、水(HO)、エタン(C)、アセチレン(C)、プロパン(C)、エチレン(C)、ヘキサン(n-C14)、プロピレン(C)、硫化水素(HS)、イソブテン(i-C)、メタノール(CHOH)、ホスゲン(COCl)、ブタン(n-C10)、クロロエチレン(CCl)、亜硝酸メチル(CHONO)、シクロヘキサン(C12)、ブタジエン(C)、イソブタン(i-C10)、イソペンタン(i-C12)、トルエン(CCH)、水素(H)、フッ化水素(HF)、トリフルオロプロペン(C)である。これにより、上記を測定対象とする分析装置において、ユーザの負担を増大させることなくパージガスを生成できる。
【0016】
本発明の他の見地に係る分析システムは、上記の分析装置と、分析装置から出力される情報を報知する報知装置と、を備える。これにより、分析装置と、分析装置に関する情報を報知する報知装置と、を分離したシステムを実現できる。
【0017】
本発明のさらに他の見地に係る分析装置は、測定対象ガスを含む試料ガスを通過した測定光の強度と、測定対象ガスの分析の基準として用いられるリファレンスガスを通過した測定光の強度と、に基づいて測定対象ガスを分析する装置である。分析装置は、充填部と、照射部と、測定対象除去部と、を備える。
充填部には、試料ガス又はリファレンスガスを含むガスが充填される。照射部は、充填部に向けて測定光を照射する。測定対象除去部は、リファレンスガス生成用ガスから測定対象ガスを分離してリファレンスガスを生成する気体分離膜を有する。
上記の分析装置では、測定対象除去部は、リファレンスガス生成用ガスから測定対象ガスを分離してリファレンスガスを生成する気体分離膜を有する。この気体分離膜は長期間にわたり使用可能であるので、測定対象除去部の頻繁な交換が不要となる。その結果、測定対象ガスの分析におけるユーザの負担の増大を防止できる。
【0018】
また、測定対象除去部が長寿命であることにより、分析装置を、複数のガスラインを切り替えてリファレンスガスを生成するといった複雑な構成とする必要がなくなるとともに、分析装置の制御を簡便にできる。
【0019】
分析装置は、導入部をさらに備える。導入部は、試料ガスとリファレンスガスを充填部に交互に導入する。これにより、クロスフローモジュレーション方式の測定対象ガスの分析装置を実現できる。
【0020】
リファレンスガス生成用ガスは試料ガスである。これにより、測定対象となる試料ガスからより適切なリファレンスガスを生成できる。
【0021】
リファレンスガス生成用ガスは、試料ガスとは異なる供給源から供給される空気である。これにより、測定対象除去部に供給されるリファレンスガス生成用ガスの条件を、容易に測定対象除去部の性能を十分に発揮できる適切な条件とできる。
【0022】
分析装置は、検出部と、判定部と、をさらに備える。検出部は、充填部を通過した測定光を検出する。判定部は、リファレンスガスが充填された充填部を通過した測定光の強度に基づいて、測定対象除去部の劣化を判定する。
これにより、充填部に充填したガスを通過した測定光の強度に基づいて測定対象ガスを行うのと類似の方法により、簡便に測定対象除去部の劣化状態を判定できる。
【0023】
分析装置は、通知部をさらに備える。通知部は、測定対象除去部に劣化があると判定されたことを通知する。これにより、測定対象除去部が劣化したことをユーザに通知できる。
【0024】
分析装置は、測定対象除去部を通過したガスから測定対象ガスを除去するスクラバーをさらに備える。これにより、スクラバーの寿命を延ばすことができる。
【0025】
測定対象ガスは、二酸化炭素(CO)、一酸化炭素(CO)、メタン(CH)、二酸化硫黄(SO)、 アンモニア(NH)、窒素酸化物(NOx)、塩化水素(HCl)、水(HO)、エタン(C)、アセチレン(C)、プロパン(C)、エチレン(C)、ヘキサン(n-C14)、プロピレン(C)、硫化水素(HS)、イソブテン(i-C)、メタノール(CHOH)、ホスゲン(COCl)、ブタン(n-C10)、クロロエチレン(CCl)、亜硝酸メチル(CHONO)、シクロヘキサン(C12)、ブタジエン(C)、イソブタン(i-C10)、イソペンタン(i-C12)、トルエン(CCH)、水素(H)、フッ化水素(HF)、トリフルオロプロペン(C)である。これにより、上記を測定対象とする分析装置において、ユーザの負担を増大させることなくパージガス、ゼロガスを生成できる。
【発明の効果】
【0026】
測定対象ガスを分析する分析装置において、パージガス、リファレンスガスなどの測定対象ガスを含まないガスを、ユーザの負担を増大させることなく供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1実施形態に係る分析装置の構成を示す図。
図2】第1実施形態に係る制御部の具体的構成を示す図。
図3】第1実施形態に係る分析装置の分析動作を示すフローチャート。
図4】第1実施形態に係る分析装置の校正動作を示すフローチャート。
図5】第1実施形態に係る分析装置の変形例を示す図。
図6】第2実施形態に係る分析装置の構成を示す図。
図7】第2実施形態に係る分析装置の分析動作を示すフローチャート。
図8】第2実施形態に係る分析装置の変形例1の構成を示す図。
図9】第2実施形態の変形例1に係る制御部の具体的構成を示す図。
図10】第2実施形態の変形例1に係る分析装置における測定対象除去部の劣化の判定動作を示すフローチャート。
図11】第2実施形態に係る分析装置の変形例2の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
1.第1実施形態
(1)分析装置の全体構成
以下、図1を用いて、第1実施形態に係る分析装置100を説明する。図1は、第1実施形態に係る分析装置の構成を示す図である。分析装置100は、例えば、煙道から発生する排ガスなどの試料ガスSGに含まれる測定対象ガスを分析する装置である。
分析装置100にて測定可能な測定対象ガスは、例えば、二酸化炭素(CO)、一酸化炭素(CO)、硫黄酸化物(SOx)(例えば、二酸化硫黄(SO))アンモニア(NH)、窒素酸化物(NOx)(例えば、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO)、亜酸化窒素(NO)など)、塩化水素(HCl)、水(HO)、各種炭化水素(例えば、メタン(CH)、エタン(C)、アセチレン(C)、プロパン(C)、エチレン(C)、ヘキサン(n-C14)、プロピレン(C)、イソブテン(i-C)、ブタン(n-C10、シクロヘキサン(C12)、ブタジエン(C)、イソブタン(i-C10)、イソペンタン(i-C12)、トルエン(CCH)など)、硫化水素(HS)、メタノール(CHOH)、ホスゲン(COCl)、クロロエチレン(CCl)、亜硝酸メチル(CHONO)、水素(H)、フッ化水素(HF)、トリフルオロプロペン(C)などである。測定対象ガスは1種類に限られず、上記のガスが複数含まれた混合ガスであってもよい。
【0029】
また、後述するように、分析装置100は、測定対象ガスを分析するための構成要素を外部空間と隔離可能な構造を有しており、分析装置100の周囲環境に可燃性ガスが含まれている場合であっても、精度よく測定対象ガスを測定可能となっている。
図1に示すように、分析装置100は、筐体1と、充填部3と、照射部5と、伝搬部7と、測定対象除去部9と、制御部20と、を備える。
【0030】
(2)筐体
筐体1は、分析装置100の本体を構成し、その内部空間ISに充填部3と、照射部5と、伝搬部7と、を収納する。また、筐体1の内部空間ISには空気供給ライン11が設けられる。すなわち、本実施形態では、測定対象除去部9は、空気供給ライン11から供給される空気からパージガスを生成する。
空気供給ライン11は、空気供給部12に接続され、空気供給部12から供給される空気ARを、筐体1の内部空間ISに導入する。空気供給部12は、例えば、分析装置100の設置場所等に設けられ、当該設置場所において使用する計装用空気を供給する装置である。具体的には、空気供給部12は、空気ARを圧縮するコンプレッサと、空気ARに含まれるダスト、オイル等を除去する各種フィルタを備えるシステムである。
また、筐体1には、排出口13が設けられる。排出口13は、空気供給ライン11から供給された空気ARを外部に排出する。
【0031】
なお、測定対象除去部9の出口(パージガス供給ライン77(後述))には、圧力計PR1が設けられていてもよい。圧力計PR1が測定するパージガスPG(すなわち、空気AR)の圧力は、例えば測定対象除去部9の「目詰まり」を監視するために使用できる。また、圧力計PR1に代えて、測定対象除去部9の出口にパージガスPG(すなわち、空気AR)の流量を測定する流量計を設けてもよい。さらに、圧力計PR1および上記の流量計の両方を、測定対象除去部9の出口に設けてもよい。圧力計PR1および流量計の少なくとも1つは、伝搬空間TS内に設けられてもよい。また、圧力計PR1および流量計の少なくとも1つは、空気供給部12と測定対象除去部9との間の空気供給ライン11に設けられてもよい。
【0032】
筐体1が上記構成を有することにより、第1実施形態に係る分析装置100では、空気供給ライン11から筐体1の内部空間ISに空気ARを供給しつつ、内部空間ISの空気ARを排出口13から排出させて、内部空間ISを空気ARでパージできる。その結果、内部空間ISを可燃性ガスなどの危険なガスを含まない空気雰囲気とするとともに、これらのガスが内部空間ISに進入しない構造を形成できる。
【0033】
(3)充填部
充填部3は、測定光L(後述)の吸収がほとんどない石英、フッ化カルシウム、フッ化バリウムなどの透明材質で構成され、試料ガスSGをその内部に充填できる。充填部3の試料ガスSGが充填される空間を、「サンプリング空間SS」と呼ぶ。試料ガスSGをサンプリング空間SSに充填するために、充填部3には、試料ガスSGをサンプリング空間SSに導入する入口31と、サンプリング空間SS内の試料ガスSGを排出するための出口32が設けられている。試料ガスSGに含まれる測定対象ガスの分析中、試料ガスSGは入口31からサンプリング空間SSに充填され、その後出口32から排出されるとのフローを継続する。
【0034】
また、サンプリング空間SSには、第1反射部材33aと第2反射部材33bが設けられる。第1反射部材33a及び第2反射部材33bは、サンプリング空間SSに入射した測定光Lを多重反射させた後、伝搬部7の伝搬空間TS(後述)に向けて伝搬させる。これにより、サンプリング空間SSに充填された試料ガスSGを通過する測定光Lの光路長を大きくできる。
【0035】
第1反射部材33aは、サンプリング空間SSにおいて伝搬部7に近い位置に設けられる。第1反射部材33aは、測定光Lを反射させるとともに、測定光Lを第2反射部材33bに向けて伝搬させる。また、多重反射した測定光Lを伝搬部7に向けて伝搬させる。従って、第1反射部材33aは、例えば、ハーフミラーなどの光を反射可能であるとともに、光の一部を透過可能である部材である。
【0036】
第2反射部材33bは、サンプリング空間SSにおいて伝搬部7から離れた位置に設けられる。第2反射部材33bは、測定光Lを第1反射部材33aに向けて反射させる。第2反射部材33bは第1反射部材33aと異なり光を透過可能でなくてもよいので、第2反射部材33bとしては、例えば、ミラーを使用できる。
【0037】
(4)照射部
照射部5は、測定光Lを発生させる。照射部5から発生した測定光Lは、伝搬部7によって充填部3に導かれる。本実施形態に係る照射部5は、複数の光源51a~51dにより構成される。複数の光源51a~51dは、それぞれ、波長領域が異なる複数の要素光L1~L4を出力する。複数の光源51a~51dは、例えば、半導体レーザ装置などのレーザ発振器である。
【0038】
後述するように、複数の光源51a~51dから発生した要素光L1~L4は、伝搬部7の伝搬空間TS内で多重化されて、測定光Lとして充填部3に向けて伝搬する。すなわち、測定光Lは、波長領域が異なる複数の要素光L1~L4により構成される。測定光Lが複数の要素光L1~L4のより構成されることにより、例えば、各要素光L1~L4の波長領域に対して吸収ピークを有する測定対象ガスを複数種類測定できる。
【0039】
測定光Lが複数の要素光L1~L4のより構成されることにより、例えば、1つの測定対象ガスに対する干渉ガス成分の影響を測定することもできる。干渉ガス成分は、測定対象ガスの吸収ピークの一部と同一か又は類似の位置に吸収ピークを有する結果、測定対象ガスの分析結果に影響を与える成分をいう。干渉ガス成分の影響を測定できれば、検出部75(後述)にて受光した測定光Lの測定結果から干渉ガス成分の影響を除去して、精度よく測定対象ガスを分析できる。なお、「除去」の意味は、干渉ガス成分の影響を全く受けないようにする以外にも、影響の程度を除去前と比べて低減させることも含む意味である。
【0040】
(5)伝搬部
伝搬部7は、充填部3と照射部5との間に設けられる。具体的には、図1に示すように、伝搬部7はL字形状を有しており、L字の一辺に対応する部分に複数の光源51a~51dが一部挿入された状態で固定される。一方、伝搬部7のL字の他の一辺の端部に、光学窓Wを介して、充填部3が固定される。なお、充填部3と伝搬部7との固定は、例えば、フランジFを用いて実現できる。
【0041】
また、伝搬部7の内部空間には複数のミラーが配置されている。照射部5から出力された要素光L1~L4は、これらミラーにより伝搬経路を変えられて、充填部3まで伝搬する。すなわち、測定光Lは、伝搬部7の内部空間を、少なくとも1つのミラーに反射しつつ伝搬する。以後、測定光Lが伝搬する伝搬部7の内部空間を「伝搬空間TS」と呼ぶ。
【0042】
伝搬空間TSには、具体的には、第1ミラー71aと、第2ミラー71bと、第3ミラー71cと、第4ミラー71dと、第5ミラー71eと、が配置されている。また、伝搬空間TSには、第1光学素子73aと、第2光学素子73bと、第3光学素子73cと、が配置されている。
第1ミラー71aは、要素光L1を、第1光学素子73aに向けて反射させる。第1光学素子73aは、要素光L1を反射するとともに、要素光L2を透過させる。すなわち、第1光学素子73aは、要素光L1と要素光L2とを多重化する。第1光学素子73aにより多重化された要素光L1と要素光L2とは、同じ光路上を通って第2ミラー71bに向かう。
【0043】
第2ミラー71bは、第1光学素子73aにて多重化された要素光L1と要素光L2とを、第2光学素子73bに向けて反射させる。第2光学素子73bは、多重化された要素光L1と要素光L2とを反射するとともに、要素光L3を透過させる。すなわち、第2光学素子73bは、要素光L1と要素光L2と要素光L3とを多重化する。第2光学素子73bにより多重化された要素光L1~L3は、同じ光路上を通って第3ミラー71cに向かう。
【0044】
第3ミラー71cは、第2光学素子73bにて多重化された要素光L1~L3を、第3光学素子73cに向けて反射させる。第3光学素子73cは、多重化された要素光L1~L3を反射するとともに、要素光L4を透過させる。すなわち、第3光学素子73cは、要素光L1と要素光L2と要素光L3と要素光L4とを多重化する。第3光学素子73cにより多重化された要素光L1~L4は、同じ光路上を通って第4ミラー71dに向かう。
【0045】
第4ミラー71dは、第3光学素子73cにて多重化された要素光L1~L4を、第5ミラー71eに向けて反射する。上記のようにして多重化された要素光L1~L4が、測定光Lとなる。
【0046】
第5ミラー71eは、要素光L1~L4が多重化された測定光Lの伝搬経路を、充填部3の配置方向に変更する。第5ミラー71eにより伝搬経路が変更された測定光Lは、光学窓Wを通過して、充填部3のサンプリング空間SS内に伝搬する。これらのミラーは、伝搬空間TS内に設けられているため、外部からの不要なガスの流入を防いで、ミラーの状態を清浄な状態とできる。
【0047】
また、伝搬部7の伝搬空間TSには、検出部75が配置される。検出部75は、サンプリング空間SSに入射し多重反射された測定光Lを検出する。検出部75としては、例えば、サーモパイルなどの熱型の光検出素子、半導体検出素子、量子型光電素子などを用いることができる。また、伝搬空間TS内をパージガスPGを用いてパージすることで、伝搬空間TS内でパージガスが流通し、伝搬空間内に設けられた検出部75の状態を清浄な状態とできる。
なお、図1に示すように、伝搬空間TSには、サンプリング空間SSで多重反射して伝搬部7に戻ってきた測定光Lの伝搬経路を、検出部75の配置方向に変更する第6ミラー71fが設けられる。
【0048】
また、伝搬部7は、パージガス供給ライン77と、パージガス排出口79と、を有する。パージガス供給ライン77は、測定対象除去部9に接続され、測定対象除去部9により生成されたパージガスPGを伝搬空間TSに導入する。パージガス排出口79は、伝搬空間TSに導入されたパージガスPGを、筐体1の内部空間ISに排出する。
伝搬部7にパージガス供給ライン77とパージガス排出口79とを設けることで、第1実施形態に係る分析装置100では、パージガス供給ライン77から伝搬部7の伝搬空間TSにパージガスPGを導入しつつ、伝搬空間TSのパージガスPGをパージガス排出口79から排出させて、伝搬空間TSをパージガスPGでパージできる。
【0049】
後述するように、パージガスPGは空気ARから測定対象ガスが除去されたガスであるので、伝搬空間TSをパージガスPGでパージすることにより、照射部5から充填部3まで伝搬する間に測定光Lが測定対象ガスにより吸収されることを抑制できる。また、伝搬空間TS内をパージガスPGを用いてパージすることで、伝搬空間TS内でパージガスPGが流通し、伝搬空間TS内に設けられた複数のミラーの状態を清浄な状態とできる。
【0050】
(6)測定対象除去部
測定対象除去部9は、パージガス供給ライン77に設けられ、空気供給部12から供給される空気ARから測定対象ガスを除去して、パージガスPGを生成する。
測定対象除去部9は、例えば、ポリイミドの中空糸膜、気体分離膜を中空部材に充填した「Nセパレータ」と呼ばれる部材である。Nセパレータは、中空糸膜、気体分離膜に圧縮空気を導入することで、導入した空気を、窒素リッチなガス(すなわち、窒素ガス以外の成分をほとんど含まないガス)と酸素リッチなガス(すなわち、空気ARから窒素を除いた残りのガス)に分離する。Nセパレータである測定対象除去部9は、窒素リッチなガスをパージガスPGとしてパージガス供給ライン77に排出する一方、酸素リッチなガスを外部(筐体1の内部空間IS)に排出する。
【0051】
上記中空糸膜は、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリスルホン、酢酸セルロースとその誘導体、ポリフェニレンオキシド、ポリシロキサン、それ自体でミクロ多孔性のポリマー、混合マトリックス膜、促進輸送膜、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、炭素膜、ゼオライト、又はこれらの混合物にて構成されている。
【0052】
セパレータの中空糸膜、気体分離膜により分離される窒素リッチなガスには、測定対象ガスもほとんど含まれない。すなわち、Nセパレータは、空気から測定対象ガスを分離して、測定対象ガスを含まない窒素リッチなガスをパージガスPGとして生成できる。
さらに、Nセパレータは、水分も分離可能であるので、分析結果が水分の影響を受ける測定対象ガスを分析する装置に対しても適用できる。
【0053】
セパレータにおいては、導入する圧縮空気が汚染されていない限り、空気から窒素リッチなガスと酸素リッチなガスを分離する機能が長時間劣化しない。そのため、測定対象除去部9としてNセパレータを用いることにより、測定対象除去部9の交換はほぼ必要なくなる。
【0054】
図1に示すように、本実施形態において、測定対象除去部9は、筐体1の内部空間ISに配置されている。これにより、例えば、空気供給部12から供給された空気ARを導入して内部空間ISを空気ARでパージする代わりに、 セパレータである測定対象除去部9から排出される酸素リッチなガスと、パージガス排出口79から排出される窒素リッチなガスと、を内部空間ISに導入して、実質的に空気ARで内部空間ISをパージすることもできる。
【0055】
しかし、上記に限られず、例えば、筐体1の外部に酸素リッチなガスを排出しても安全上問題とならない場合、筐体1の外部に配置しても測定対象除去部9の本体(中空糸膜、気体分離膜、薬剤などを充填する中空部材)が損傷を受けない場合などには、測定対象除去部9を筐体1の外部に配置してもよい。
【0056】
(7)制御部
制御部20は、CPU、記憶装置(例えば、RAM、ROMなどの記憶装置)、各種インタフェースにより構成されるコンピュータシステムである。制御部20は、上記各装置を個別に備えたシステムであってもよいし、上記各装置を1つのチップに集積したSoC(System on Chip)であってもよい。制御部20は、分析装置100の構成要素を制御する。また、検出部75にて検出された測定光Lの強度に基づいて、分析装置100の校正、測定対象ガスの分析を行う。
以下、図2を用いて、制御部20の具体的構成を説明する。図2は、第1実施形態に係る制御部の具体的構成を示す図である。制御部20は、分析部201と、第1判定部203と、通知部205と、を主に有する。なお、制御部20の上記各部の機能の一部又は全部は、制御部20を構成するコンピュータシステムの記憶装置に記憶されたプログラムを実行することで実現される。また、上記各部の機能の一部は、ハードウェア的に実現されてもよい。
【0057】
分析部201は、充填部3に充填した試料ガスSGに含まれる測定対象ガスの分析を実行する。具体的には、分析部201は、照射部5(光源51a~51d)を制御して測定光Lを充填部3のサンプリング空間SSに向けて照射させ、検出部75が測定光Lを検出することにより出力する信号を受信する。
分析部201は、測定対象ガスを含まない基準のガス(基準ガスと呼ぶ)が充填されたサンプリング空間SSを通過後の測定光Lの各波長領域における強度と、試料ガスSGが充填されたサンプリング空間SSを通過後の測定光Lの各波長領域における強度と、に基づいて測定対象ガスを分析する。例えば、分析部201は、試料ガスSGに含まれる測定対象ガスの濃度を算出する。
【0058】
なお、基準ガスが充填されたサンプリング空間SSを通過後の測定光Lの強度は、分析の基準となる測定光Lの強度(基準強度と呼ぶ)として、分析装置100の校正時に取得され、上記記憶装置に記憶される。あるいは、基準強度を分析装置100の出荷時、据付時等に取得して記憶装置に記憶してもよい。また、基準ガスは、例えば、ボンベ等から供給された窒素ガスである。
【0059】
第1判定部203は、伝搬空間TSを通過することで測定対象ガス及び測定光Lに影響を及ぼすガスにより吸収された測定光Lの強度に基づいて、測定対象除去部9の劣化を判定する。具体的には、第1判定部203は、基準ガスを充填部3に充填しつつ検出部75にて測定光Lを検出する校正動作時に取得した基準強度と、分析装置100の出荷時、据付時等、又は、測定対象除去部9の交換時に取得した基準強度と、の比較に基づいて、測定対象除去部9が劣化しているか否かを判定する。
【0060】
測定対象除去部9が劣化していない状態であれば、パージガスPGには測定対象ガスはほとんど含まれない。従って、基準ガスを充填部3のサンプリング空間SS’に充填して取得した測定光Lの強度は、現在と過去でほぼ同じとなる。
その一方、測定対象除去部9が劣化している場合には、空気ARから測定対象ガスを除去する能力が低下するので、パージガスPGに測定対象ガスが含まれるようになる。その結果、伝搬空間TSを伝搬する間に測定光LがパージガスPGに含まれる測定対象ガスによって吸収され、基準ガスを充填部3のサンプリング空間SS’に充填して取得した測定光Lの強度が、現在と過去で異なる。具体的には、現在の強度が過去の強度よりも小さくなる。
【0061】
上記の原理を利用して、第1判定部203は、基準ガスを充填部3のサンプリング空間SSに充填したときに取得した測定光Lの強度が、過去に基準ガスを充填部3のサンプリング空間SSに充填して取得した測定光Lの強度よりも所定の強度以上低下したら、測定対象除去部9が劣化したと判定できる。
【0062】
第1判定部203は、測定対象除去部9が劣化していると判定した場合、当該判定結果を通知部205に通知する。
【0063】
通知部205は、第1判定部203において測定対象除去部9が劣化しているとの判定結果を受信したときに、測定対象除去部9が劣化していることを通知する。具体的には、通知部205は、測定対象除去部9が劣化していると判定された場合に、報知装置30を動作させる信号を出力する。報知装置30は、例えば、音を発する装置(スピーカー)、警告灯、画面(ディスプレイ)に画像を表示する装置などである。このように、報知装置30は、分析装置100から出力される情報を報知する装置である。
【0064】
なお、報知装置30を分析装置100とは個別の装置として、分析システムとすることもできる。報知装置30と分析装置100とを個別の装置とすることで、例えば、分析装置100の設置場所とは異なる場所に報知装置30を設置することができる。
【0065】
圧力計PR1が設けられる場合、制御部20は第2判定部207を有してもよい。第2判定部207は、圧力計PR1により測定された圧力を監視し、測定された圧力が通常の圧力(例えば、測定対象除去部9が、目詰まり等なく正常に動作している場合の圧力)よりも所定の値以上増加した場合に、測定対象除去部9が目詰まりなどで劣化していると判定する。これにより、少なくとも伝搬空間TSを通過した測定光Lの強度を測定することなく、測定対象除去部9の劣化を検出できる。
第2判定部207は、測定対象除去部9が劣化していると判定した場合、当該判定結果を通知部205に通知する。
【0066】
(8)第1実施形態に係る分析装置の動作
(8-1)分析動作
以下、第1実施形態に係る分析装置100の動作を説明する。まず、図3を用いて、分析装置100における分析動作を説明する。図3は、第1実施形態に係る分析装置の分析動作を示すフローチャートである。なお、以下に示す動作は、制御部20が分析装置100を制御することで実行される。
試料ガスSGに含まれる測定対象ガスの分析を行う前に、ステップS1において、筐体1の内部空間ISを空気ARでパージする。具体的には、空気供給ライン11に空気供給部12から空気ARを供給しつつ、排出口13から内部空間IS内のガス(空気AR)を排出することを所定の時間継続する。
【0067】
内部空間ISを空気ARでパージする間、ステップS2において、伝搬部7の伝搬空間TSをパージガスPGでパージする。具体的には、ステップS1において空気供給ライン11に空気供給部12から空気ARを所定の時間継続して供給することで、当該空気ARが測定対象除去部9に供給され、測定対象除去部9が供給された空気ARから測定対象ガスを除去してパージガスPGを生成し、パージガス供給ライン77に排出する。
空気供給ライン11に空気ARを所定の時間継続して供給することに伴って、パージガス供給ライン77から伝搬空間TSにパージガスPGを供給しつつ、パージガス排出口79から伝搬空間TS内のガス(パージガスPG)を排出することが所定の時間継続されることで、伝搬空間TSをパージガスPGでパージできる。
【0068】
空気供給ライン11に空気ARを供給する所定の時間は、例えば、筐体1の内部空間ISを空気供給ライン11により供給される空気ARにより置換できる時間、又は、伝搬部7の伝搬空間TSをパージガスPGにより置換できる時間のいずれか長い方とできる。
内部空間ISを空気ARにより置換できる時間は、例えば、内部空間ISの容量と空気ARの流量に基づいて決定できる。また、伝搬空間TSをパージガスPGにより置換できる時間は、例えば、伝搬空間TSの容量とパージガスPGの流量に基づいて決定できる。
【0069】
分析装置100の空気供給ライン11に測定対象除去部9を設けることにより、上記のように、空気供給ライン11から供給されている空気ARを用いてパージガスPGを生成できる。その結果、伝搬空間TSのパージ用のガスボンベを用意し、分析装置100に設置する必要がなくなるので、ユーザの負担を軽減できる。
【0070】
内部空間IS及び伝搬空間TSをパージした後、ステップS3において、分析装置100の校正が必要であるか否かを判定する。例えば、前回の校正から所定の期間(例えば、1週間)が経過している場合、前回の校正から測定対象ガスの分析が所定の回数だけ実行されている場合などに、分析装置100の校正が必要と判定できる。
【0071】
分析装置100の校正を実行すると判定された場合(ステップS3で「Yes」)、ステップS4において、分析装置100の校正が実行される。ステップS4における具体的な校正動作は、後ほど詳しく説明する。
一方、分析装置100の校正を実行しないと判定された場合(ステップS3で「No」)、分析動作は、ステップS5に進み、測定対象ガスの分析が実行される。
【0072】
分析装置100の校正を実行後、又は、校正が不要と判定された後、ステップS5において、分析部201が、測定対象ガスの分析を開始する。具体的には、以下のようにして分析が実行される。
まず、充填部3のサンプリング空間SSに試料ガスSGを供給してサンプリング空間SSを試料ガスSGにより充填させる。試料ガスSGをサンプリング空間SSに供給しつつ、分析部201が、照射部5の光源51a~51dを制御して、充填部3のサンプリング空間SSに向けて測定光Lを出力する。分析部201は、サンプリング空間SSを通過した測定光Lの検出信号を検出部75から受信し、当該検出信号に基づいて、検出された測定光Lの各要素光L1~L4が有する波長領域における強度を算出する。
【0073】
その後、分析部201は、試料ガスSGを充填したサンプリング空間SSを通過前の測定光Lの上記波長領域における強度(すなわち、基準強度)と、試料ガスSGを充填したサンプリング空間SSを通過後の測定光Lの上記波長領域における強度との比などに基づいて、試料ガスSGに含まれる測定対象ガスの濃度を算出する。
例えば、測定対象ガスが要素光L1~L4の全てを吸収できる場合には、分析部201は、各要素光L1~L4の波長領域における強度に基づいて、測定対象ガスの分析結果と干渉する干渉ガスの濃度を算出し、この干渉ガスの影響を考慮して測定対象ガスの濃度を精度よく算出できる。
【0074】
その他、測定対象ガスが複数ある場合には、分析部201は、例えば、要素光L1~L4のうち測定対象ガスが吸収できる要素光L1~L4のいずれかの波長領域の強度に基づいて、当該測定対象ガスの濃度を算出できる。
【0075】
1回の分析を終了後にさらに測定対象ガスの分析を継続したい場合には、上記のステップS5を繰り返し実行する。一方、測定対象ガスの分析を終了したい場合には、照射部5からの測定光Lの発生を停止して、上記分析動作を終了する。
【0076】
(8-2)分析装置の校正動作
次に、図4を用いて、上記のステップS4において実行される第1実施形態に係る分析装置100の校正動作を説明する。図4は、第1実施形態に係る分析装置の校正動作を示すフローチャートである。なお、以下に示す動作は、制御部20が分析装置100を制御することで実行される。
第1実施形態に係る分析装置100においては、分析装置100の校正時に、測定対象ガスを含まない基準ガスを通過した測定光Lの強度(すなわち、基準強度)を取得した後に、さらに、測定対象除去部9の劣化が判定される。具体的には、以下のステップS41~S45が、校正動作として実行される。
【0077】
まず、ステップS41において、充填部3のサンプリング空間SSに、基準ガス(測定対象ガスを含まないガス)を充填する。本実施形態において、基準ガスは窒素ガスである。
サンプリング空間SSに基準ガスを充填後、ステップS42において、基準ガスを充填したサンプリング空間SSを通過した測定光Lの強度を測定する。具体的には、制御部20が、照射部5の光源51a~51dを制御して、基準ガスを充填したサンプリング空間SSに向けて測定光Lを出力する。制御部20は、サンプリング空間SSを通過した測定光Lの検出信号を検出部75から受信し、当該検出信号に基づいて、検出された測定光Lの強度を算出する。
【0078】
その後、ステップS43において、制御部20は、ステップS42で算出した測定光Lの強度を、試料ガスSGを充填したサンプリング空間SSを通過前の測定光Lの強度(すなわち、基準強度)と決定し、制御部20の記憶装置に記憶する。基準強度の取得と記憶とを実行することで、分析装置100の校正を実行できる。
【0079】
基準強度の取得と記憶とを実行して分析装置100を校正後、ステップS44において、測定対象除去部9が劣化しているか否かを判定する。
具体的には、第1判定部203が、今回の校正により取得した基準強度と、過去(例えば、分析装置100の出荷時、据付時、前回の測定対象除去部9の交換時など)において取得した基準強度と、を比較し、今回取得した基準強度が過去に取得した基準強度よりも所定の値以上小さい場合に、測定対象除去部9が劣化していると判定する。
【0080】
上記のように、基準強度は、サンプリング空間SSに基準ガスを充填した状態、すなわち、測定光Lがサンプリング空間SSを通過中に吸収されない状態で測定される。従って、今回取得した基準強度が過去に取得した基準強度よりも小さいことは、今回の校正時において測定光Lが伝搬空間TSを通過中に吸収された光の量が、過去において測定光Lが伝搬空間TSを通過中に吸収された光の量よりも大きいことを意味する。
【0081】
また、今回の校正時において測定光Lが伝搬空間TSを通過中に吸収された光の量が、過去において測定光Lが伝搬空間TSを通過中に吸収された光の量よりも大きいことは、今回の校正時のパージガスPGに含まれる測定対象ガスの量(濃度)が、過去のパージガスPGに含まれる測定対象ガスの量(濃度)よりも大きくなっていることを意味し、測定対象除去部9による測定対象ガスの除去能力が低下していることを意味している。
【0082】
このように、上記のステップS44においては、第1判定部203は、現在と過去の基準強度を比較することにより、伝搬空間TSを通過した測定光Lの強度に基づいて、測定対象除去部9の劣化を判定できる。すなわち、第1実施形態に係る分析装置100では、測定対象ガスの分析と類似の方法により、簡便に測定対象除去部9の劣化状態を判定できる。
【0083】
その他、圧力計PR1を設けた場合には、第2判定部207が、今回の校正時に圧力計PR1にて測定された圧力と、過去(例えば、分析装置100の出荷時、据付時、前回の測定対象除去部9の交換時など)に圧力計PR1により測定された圧力と、を比較し、今回測定された圧力が過去に測定された圧力よりも所定の値以上大きい場合に、測定対象除去部9が劣化していると判定する。
【0084】
今回測定された圧力が過去に測定された圧力よりも大きいことは、今回の校正時までに測定対象除去部9の目詰まりなどが発生して測定対象除去部9内のガス流通が悪くなった結果、測定対象除去部9が劣化していることを意味している。一方、圧力計PR1に代えて流量計を設けた場合には、今回測定した流量が過去に測定した流量よりも小さいことが、測定対象除去部9が劣化していることを意味する。
このように、第2判定部207は、測定対象除去部9に供給する空気の圧力又は流量に基づいて、測定対象除去部9内のガス流通が悪くなったか否かを判定し、ガス流通が悪くなっている場合に測定対象除去部9が劣化したと判定できる。すなわち、第2判定部207は、測定対象除去部9に供給する空気ARの圧力及び流量に影響を及ぼす「目詰まり」などを原因とした劣化(異常)が発生したか否かを判定できる。
【0085】
第1判定部203及び/又は第2判定部207により測定対象除去部9が劣化していると判定された場合(ステップS44で「Yes」)、ステップS45において、第1判定部203及び/又は第2判定部207は、測定対象除去部9が劣化しているとの判定結果を、通知部205に通知する。
測定対象除去部9が劣化しているとの判定結果を受信した通知部205は、報知装置30に通知信号を出力して報知装置30を動作させる。これにより、例えば、音を発生させるか、及び/又は、警告灯を点灯させて、ユーザが視覚的及び/又は聴覚的に認識できる形態で測定対象除去部9が劣化していることを通知できる。
【0086】
測定対象除去部9が劣化していることを認識したユーザは、例えば、測定対象除去部9を交換するなどの対策を実行できる。
その他、測定対象除去部9の劣化が、空気供給部12において測定対象除去部9を劣化させる原因物質(例えば、オイルミスト、ダストなど)が十分に除去されていないことにより発生していると考えられる場合には、ユーザは、空気供給部12に備わるオイルミスト、ダストなどの原因物質を除去するフィルタを交換することもできる。
【0087】
一方、第1判定部203及び/又は第2判定部207により測定対象除去部9が劣化していると判定されない場合(ステップS44で「No」)、分析装置100の校正動作は終了する。
【0088】
(9)第1実施形態に係る分析装置の変形例
上記にて説明した第1実施形態においては、筐体1の内部空間ISをパージする空気ARの供給ラインと、測定対象除去部9に供給する空気ARの供給ラインは、空気供給ライン11として共通化していた。
しかし、これに限られず、図5に示すように、第1実施形態に係る分析装置の変形例(分析装置100’)においては、筐体1の内部空間ISをパージする空気ARの供給ラインを第1空気供給ライン11aとし、測定対象除去部9に供給する空気ARの供給ラインを第2空気供給ライン11bとして、空気の供給ラインを個別に設けてもよい。図5は、第1実施形態に係る分析装置の変形例を示す図である。
【0089】
また、分析装置100’においては、パージガス供給ライン77、第1空気供給ライン11a、測定対象除去部9からのラインと、の合流部分に三方弁11cを設ける。筐体1の内部空間ISを空気ARでパージしたい場合には、三方弁11cは、第1空気供給ライン11aとパージガス供給ライン77とをガス流通可能とする。これにより、筐体1の内部空間ISと伝搬空間TSが空気ARでパージされる。
一方、伝搬部7の伝搬空間TSをパージガスPGでパージしたい場合には、三方弁11cは、測定対象除去部9からのラインとパージガス供給ライン77とをガス流通可能とする。これにより、伝搬空間TSがパージガスPGでパージされる。
【0090】
このように、空気ARの供給ラインを個別に設けることで、必要なときだけに測定対象除去部9に空気ARを供給してパージガスPGを発生させて、測定対象除去部9の交換頻度を減少できる。
【0091】
(10)第1実施形態のまとめ
上記に説明した第1実施形態は下記のようにまとめることができる。
第1実施形態に係る分析装置100、100’では、測定光Lが充填部3まで到達するまでに少なくとも1つのミラーに反射して伝搬する伝搬空間TSをパージするパージガスPGが、気体分離膜を有する測定対象除去部9により生成されている。これにより、パージガス供給用のボンベの頻繁な交換などユーザの負担を増大させる作業が不要となる。すなわち、ユーザの負担を増大させることなくパージガスPGの生成と供給が可能となる。
【0092】
分析装置100、100’は、伝搬空間TSを通過した測定光Lの強度に基づいて測定対象除去部9の劣化を判定する第1判定部203を備えている。これにより、測定対象ガスの分析と類似の方法により、簡便に測定対象除去部9の劣化状態を判定できる。
【0093】
分析装置100、100’は、測定対象除去部9に供給する空気ARの圧力又は流量に基づいて、測定対象除去部の劣化を判定する第2判定部207を備えてもよい。これにより、測定対象除去部9に供給する空気ARの圧力又は流量に影響を及ぼす「目詰まり」などを原因とした劣化(異常)が発生したか否かを判定できる。
【0094】
分析装置100、100’は、測定対象除去部9に劣化があると判定されたことを通知する通知部205をさらに備えている。これにより、測定対象除去部9が劣化したことをユーザに通知できる。
【0095】
分析装置100、100’は、充填部3と、照射部5と、伝搬部7と、を格納して外部空間と隔離する筐体1をさらに備えている。これにより、測定対象ガスを分析するための構成要素を外部空間と隔離する構造を実現できる。
【0096】
第1実施形態において、測定対象除去部9は、空気から窒素ガスを分離する気体分離膜を有し、気体分離膜により分離された窒素ガスをパージガスPGとしている。気体分離膜の空気から窒素ガスと酸素ガスとを分離する能力は長い期間持続するので、測定対象除去部9の交換をほぼ不要とできる。その結果、ユーザの負担を軽減できる。
【0097】
2.第2実施形態
(1)第2実施形態に係る分析装置の概略
上記の第1実施形態にて説明したNセパレータである測定対象除去部は、測定対象ガスを分析する他の分析装置にも適用できる。例えば、以下に説明する第2実施形態に係る分析装置200において、測定対象除去部を使用できる。
以下、第2実施形態に係る分析装置200を具体的に説明する。第2実施形態に係る分析装置200は、クロスフローモジュレーション方式の分析装置である。クロスフローモジュレーション方式とは、測定対象ガスを含まないリファレンスガスRGと測定対象ガスを含む試料ガスSGとを交互に充填部301に導入し、リファレンスガスRGを充填した充填部301を通過した測定光L’の強度と、試料ガスSGを充填した充填部301を通過した測定光L’の強度と、に基づいて試料ガスSGに含まれる測定対象ガスを分析する方式である。第2実施形態においては、リファレンスガスRGの生成に第1実施形態にて説明したNセパレータである測定対象除去部302を使用する。
なお、第2実施形態において、試料ガスSGは、例えば、大気である。測定対象ガスは、例えば、試料ガスSGに含まれる二酸化炭素(CO)である。その他、測定対象ガスを、例えば、一酸化炭素(CO)、硫黄酸化物(SOx)(例えば、二酸化硫黄(SO))アンモニア(NH)、窒素酸化物(NOx)(例えば、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO)、亜酸化窒素(NO)など)、塩化水素(HCl)、水(HO)、各種炭化水素(例えば、メタン(CH)、エタン(C)、アセチレン(C)、プロパン(C)、エチレン(C)、ヘキサン(n-C14)、プロピレン(C)、イソブテン(i-C)、ブタン(n-C10)、シクロヘキサン(C12)、ブタジエン(C)、イソブタン(i-C10)、イソペンタン(i-C12)、トルエン(CCH)など)、硫化水素(HS)、メタノール(CHOH)、ホスゲン(COCl)、クロロエチレン(CCl)、亜硝酸メチル(CHONO)、水素(H)、フッ化水素(HF)、トリフルオロプロペン(C)などとすることもできる。測定対象ガスは、1種類に限られず、上記ガスが複数含まれた混合ガスであってもよい。
【0098】
上記のリファレンスガスRGとは、測定対象ガスの分析の基準として用いるガスであり、測定対象ガスを全く含まないか、又は、分析において影響を及ぼさない程度しか含まないガスである。従って、リファレンスガスRGを充填した充填部301を通過した測定光L’の強度は、試料ガスSGを充填した充填部301を通過した測定光L’の強度に含まれるバックグラウンドとしての測定光L’の強度である。
【0099】
(2)第2実施形態に係る分析装置の具体的構成
次に、図6を用いて、第2実施形態に係る分析装置200の具体的構成を説明する。図6は、第2実施形態に係る分析装置の構成を示す図である。分析装置200は、充填部301と、測定対象除去部302と、導入部303と、を主に備える。
充填部301は、ガスを充填できるサンプリング空間SS’を有し、サンプリング空間SS’の一端が導入部303のガス出口303cに接続され、他端が排出流路304に接続される。サンプリング空間SS’の一端が導入部303のガス出口303cに接続されることで、サンプリング空間SS’には試料ガスSG又はリファレンスガスRGを充填できる。
【0100】
一方、充填部301のサンプリング空間SS’の他端が接続される排出流路304には、オリフィス304aと、第1ポンプ304bと、が設けられる。サンプリング空間SS’に導入される試料ガスSG又はリファレンスガスRGの流量は、オリフィス304aの寸法と第1ポンプ304bの流量によって定まる。
【0101】
また、充填部301は、サンプリング空間SS’に測定光L’を照射する照射部301aと、サンプリング空間SS’を通過した測定光L’を検出する検出部301bと、を有する。照射部301aは、例えば、測定対象ガスが吸収できる波長(例えば、赤外光)を有する測定光L’を発生するレーザなどの光発生装置である。検出部301bは、例えば、測定光L’を検出できる光検出素子である。
【0102】
測定対象除去部302は、リファレンスガス生成用ガスから、充填部301のサンプリング空間SS’に充填するリファレンスガスRGを生成する。具体的には、測定対象除去部302は、排出流路304から分岐された分岐ライン305から試料ガスSGの供給を受け、供給された試料ガスSGから測定対象ガスを除去する。すなわち、図6に示す分析装置200において、リファレンスガス生成用ガスは、試料ガスSGである。これにより、測定対象となる試料ガスSGからより適切なリファレンスガスRGを生成できる。
【0103】
本実施形態において、測定対象除去部302は、中空糸膜、気体分離膜を中空部材に充填した「Nセパレータ」と呼ばれる部材である。中空糸膜は、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリスルホン、酢酸セルロースとその誘導体、ポリフェニレンオキシド、ポリシロキサン、それ自体でミクロ多孔性のポリマー、混合マトリックス膜、促進輸送膜、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、炭素膜、ゼオライト、又はこれらの混合物にて構成されている。
【0104】
セパレータは、中空糸膜、気体分離膜に圧縮した試料ガスSGを導入することで、導入した試料ガスSGを、窒素リッチなガス(すなわち、窒素ガス以外の成分をほとんど含まないガス)と酸素リッチなガス(すなわち、試料ガスSGから窒素ガスを除いた残りのガス)に分離する。Nセパレータである測定対象除去部302は、窒素リッチなガスをリファレンスガスRGとしてリファレンスガス供給ライン306に供給する。
【0105】
セパレータである測定対象除去部302の中空糸膜、気体分離膜により分離される窒素リッチなガスには、測定対象ガスもほとんど含まれない。すなわち、Nセパレータである測定対象除去部302は、試料ガスSGから測定対象ガスを分離して、測定対象ガスを含まない窒素リッチなガスをリファレンスガスRGとして生成できる。
【0106】
なお、上記のように、Nセパレータである測定対象除去部302に対しては、圧縮した試料ガスSGを導入する必要がある。従って、測定対象除去部302に試料ガスSGを供給する分岐ライン305には、試料ガスSGを昇圧して測定対象除去部302に供給する昇圧用ポンプ305aが設けられる。
また、昇圧用ポンプ305aと測定対象除去部302との間には、レギュレータ305bが設けられる。レギュレータ305bは、昇圧用ポンプ305aから測定対象除去部302に供給する試料ガスSGの圧力を一定とする。これにより、測定対象除去部302の寿命を長くできる。
【0107】
導入部303は、試料ガスSG又はリファレンスガスRGを充填部301のサンプリング空間SS’に導入する。具体的には、導入部303は、第1入口303aと、第2入口303bと、ガス出口303cと、を有し、第1入口303aとガス出口303cとをガス流通可能とするか、又は、第2入口303bとガス出口303cとをガス流通可能とするかを切り替え可能な三方弁である。
【0108】
図6に示すように、導入部303の第1入口303aには、試料ガスSGが供給される。一方、第2入口303bは、リファレンスガス供給ライン306に接続される。すなわち、第2入口303bには、測定対象除去部302にて生成されたリファレンスガスRGが供給される。
【0109】
測定対象ガスの分析中に、導入部303は、第1入口303aとガス出口303cとをガス流通可能とする(すなわち、試料ガスSGをガス出口303cから排出する)ことと、第2入口303bとガス出口303cとをガス流通可能とする(すなわち、リファレンスガスRGをガス出口303cから排出する)ことと、を交互に切り替えて、試料ガスSGとリファレンスガスRGとを交互に充填部301のサンプリング空間SS’に充填する。導入部303を備えることにより、試料ガスSGとリファレンスガスRGとを交互に充填部301のサンプリング空間SS’に充填するクロスフローモジュレーション方式の分析装置200を実現できる。
【0110】
分析装置200は、制御部307をさらに備える。制御部307は、CPU、記憶装置(例えば、RAM、ROMなどの記憶装置)、各種インタフェースにより構成されるコンピュータシステムである。制御部307は、上記各装置を個別に備えたシステムであってもよいし、上記各装置を1つのチップに集積したSoC(System on Chip)であってもよい。
制御部307は、分析装置200の照射部301a、導入部303を制御する。その他、制御部307は、第1ポンプ304b、昇圧用ポンプ305aの動作と停止、及び/又は、流量を制御可能となっていてもよい。
【0111】
また、制御部307は、照射部301aを制御して充填部301のサンプリング空間SS’に測定光L’を照射し、サンプリング空間SS’を通過して検出部301bにて検出された測定光L’の強度に基づいて、測定対象ガスの分析を行う。
【0112】
(3)第2実施形態に係る分析装置の動作
(3-1)分析動作
以下、第2実施形態に係る分析装置200の動作を説明する。具体的には、図7を用いて、分析装置200における分析動作を説明する。図7は、第2実施形態に係る分析装置の分析動作を示すフローチャートである。本実施形態において、分析装置200は、クロスフローモジュレーション方式にて測定対象ガスの分析を実行する。なお、以下に示す動作は、制御部307が分析装置200を制御することで実行される。また、以下の分析動作の前に、所定の期間(例えば、1週間)毎に分析装置200の校正(例えば、ゼロ校正、スパン校正)を実行する。
【0113】
測定対象ガスの分析動作が開始されると、まず、ステップS201において、制御部307が、導入部303に対して、第2入口303bとガス出口303cとをガス流通可能とする制御を行う。これにより、リファレンスガス供給ライン306から導入部303にリファレンスガスRGが供給され、ガス出口303cから充填部3のサンプリング空間SS’にリファレンスガスRGが導入される。すなわち、充填部3のサンプリング空間SS’にリファレンスガスRGが充填される。
【0114】
リファレンスガスRGを充填部3のサンプリング空間SS’に充填後、ステップS202において、制御部307が、照射部301aから測定光L’を出力させ、リファレンスガスRGが充填された充填部3のサンプリング空間SS’を通過した測定光L’を検出部301bにて検出する。制御部307は、検出部301bから入力した信号に基づいて、リファレンスガスRGが充填された充填部3のサンプリング空間SS’を通過した測定光L’の強度(分析基準強度と呼ぶ)を算出する。
【0115】
次に、ステップS203において、制御部307が、導入部303に対して、第1入口303aとガス出口303cとをガス流通可能とする制御を行う。これにより、ガス出口303cから充填部3のサンプリング空間SS’に試料ガスSGが導入される。すなわち、充填部3のサンプリング空間SS’に試料ガスSGが充填される。
【0116】
試料ガスSGを充填部3のサンプリング空間SS’に充填後、ステップS204において、制御部307が、照射部301aから測定光L’を出力させ、試料ガスSGが充填された充填部3のサンプリング空間SS’を通過した測定光L’を検出部301bにて検出する。制御部307は、検出部301bから入力した信号に基づいて、試料ガスSGが充填された充填部3のサンプリング空間SS’を通過した測定光L’の強度(分析強度と呼ぶ)を算出する。
【0117】
さらに、ステップS205において、制御部307が、ステップS204にて算出した分析強度と、ステップS202にて算出した分析基準強度との差分に基づいて、試料ガスSGに含まれる測定対象ガスを分析する。具体的には、分析強度と分析基準強度との差分から、測定対象ガスの濃度を算出する。
【0118】
上記の図6に示す分析装置200では、リファレンスガスRGが、測定対象除去部302を用いて試料ガスSGから生成されている。これにより、リファレンスガスRG用のガスボンベを設ける必要がなくなる。その結果、ガスボンベの交換等によるユーザの負担を軽減できる。
【0119】
また、上記の気体分離膜(中空糸膜)を有する測定対象除去部302において、空気から窒素ガスと酸素ガスとを分離する能力は長い期間持続するので、測定対象除去部302の交換をほぼ不要とできる。その結果、ユーザの負担を軽減できる。
【0120】
さらに、図6に示す分析装置200においては、例えば、測定対象ガスを除去する複数の除去部を切り替えて使用する必要がないので、複数の除去部を切り替えて使用するための複雑なガス経路を形成する必要がない。このように分析装置200のガス経路をより単純なものとできることにより、分析装置200に使用する部品点数を減らすことができる。
【0121】
(4)第2実施形態に係る分析装置の変形例1
(4-1)変形例1の概要
上記にて説明した分析装置200では、測定対象除去部302は、排出流路304から分岐した分岐ライン305に接続され、試料ガスSGから測定対象ガスを除去してリファレンスガスRGを生成していた。すなわち、リファレンスガスRGを生成するためのリファレンスガス生成用ガスが試料ガスSGであった。
しかし、リファレンスガス生成用ガスは、試料ガスSGに限られない。第2実施形態に係る分析装置の変形例1(分析装置200’)は、図8に示すように、昇圧された空気AR’を供給する空気供給部309をさらに備え、当該空気供給部309を空気供給ライン309aにより測定対象除去部302に接続する。すなわち、分析装置200’においては、リファレンスガス生成用ガスが、試料ガスSGとは異なる供給源(空気供給部309)から供給される空気AR’である。図8は、第2実施形態に係る分析装置の変形例1の構成を示す図である。
【0122】
このように、測定対象除去部302に供給するリファレンスガス生成用ガスを、試料ガスSGとは異なる供給源である空気供給部309から供給することで、昇圧用ポンプ305aを設けることなく、十分に昇圧された空気AR’をリファレンスガス生成用ガスとして測定対象除去部302に供給できる。すなわち、測定対象除去部302に供給されるリファレンスガス生成用ガスの条件を、測定対象除去部302の性能を十分に発揮できる適切な条件とできる。
【0123】
なお、上記の第2実施形態と同様、空気供給部309と測定対象除去部302との間には、レギュレータ309bが設けられる。レギュレータ309bは、空気供給部309から測定対象除去部302に供給する試料ガスSGの圧力を一定とする。
【0124】
変形例1に係る分析装置200’においては、測定対象除去部302から供給されたリファレンスガスRGを充填部3に充填したときの測定光L’の強度と、例えばゼロ校正に用いるガス(例えば、ガスボンベから供給された窒素ガス)を充填部3に充填したときの測定光L’の強度と、の比較に基づいて、測定対象除去部302による測定対象ガスの除去能力の状態、すなわち、測定対象除去部302の劣化の状態を確認できる。
なお、変形例1に係る分析装置200’において、測定対象除去部302の劣化の状態は、分析装置200’の制御部307’により判定される。分析装置200’のその他の構成及び機能は、第2実施形態に係る分析装置200と同じであるので、ここでは説明を省略する。
【0125】
(4-2)変形例1に係る制御部の構成
以下、図9を用いて、測定対象除去部302の劣化の状態を判定可能な変形例1に係る制御部307’の具体的構成を説明する。図9は、変形例1に係る制御部の具体的構成を示す図である。制御部307’は、分析部307aと、判定部307bと、通知部307cと、を主に有する。なお、制御部307’の上記各部の機能の一部又は全部は、制御部307を構成するコンピュータシステムの記憶装置に記憶されたプログラムを実行することで実現される。また、上記各部の機能の一部は、ハードウェア的に実現されてもよい。
【0126】
分析部307aは、試料ガスSGに含まれる測定対象ガスの分析を実行する。分析部307aにて実行される測定対象ガスの分析動作は、上記の第2実施形態における制御部307の動作と同じであるので、ここでは説明を省略する。
【0127】
判定部307bは、測定対象除去部302の劣化を判定する。判定部307bは、例えば、リファレンスガスRGを充填部3のサンプリング空間SS’に充填したときに取得した測定光L’の強度と、測定対象ガスをほとんど含まず分析装置のゼロ校正に用いられるゼロガス(例えば、ガスボンベから供給される窒素ガス)をサンプリング空間SS’に充填したときに取得した測定光L’の強度と、の比較に基づいて、測定対象除去部302が劣化したか否かを判定する。
【0128】
測定対象除去部302が劣化していない状態であれば、リファレンスガスRGに含まれる測定対象ガスの含有量は、上記のゼロガスにおける測定対象ガスの含有量に近い。従って、リファレンスガスRGを充填部3のサンプリング空間SS’に充填したときに取得した測定光L’の強度と、ゼロガスを充填部3のサンプリング空間SS’に充填して取得した測定光L’の強度とは、ほぼ同じとなる。
【0129】
その一方、測定対象除去部302が劣化している場合には、リファレンスガス生成用ガス(本実施形態では空気AR)から測定対象ガスを除去する能力が低下するので、リファレンスガスRGに測定対象ガスが含まれるようになる。その結果、リファレンスガスRGを充填したサンプリング空間SS’を通過した測定光L’がリファレンスガスRGに含まれる測定対象ガスにより吸収され、リファレンスガスRGを充填したときに取得した測定光L’の強度が、ゼロガスを充填して取得した測定光L’の強度よりも小さくなる。
【0130】
上記の原理を利用して、判定部307bは、リファレンスガスRGを充填部3のサンプリング空間SS’に充填したときに取得した測定光L’の強度が、ゼロガスを充填部3のサンプリング空間SS’に充填して取得した測定光L’の強度よりも所定の強度以上低下したら、測定対象除去部302が劣化したと判定できる。
判定部307bは、測定対象除去部302が劣化していると判定した場合、当該判定結果を通知部307cに通知する。
【0131】
通知部307cは、判定部307bにおいて測定対象除去部302が劣化しているとの判定結果を受信したときに、測定対象除去部302が劣化していることを通知する。具体的には、通知部307cは、測定対象除去部302が劣化していると判定された場合に、報知装置308を動作させる信号を出力する。報知装置308は、例えば、音を発する装置(スピーカー)、警告灯、画面(ディスプレイ)に画像を表示する装置、などである。このように、報知装置308は、分析装置200から出力される情報を報知する装置である。
【0132】
なお、報知装置308を分析装置200とは個別の装置として、分析システムとすることもできる。報知装置308と分析装置200とを個別の装置とすることで、例えば、分析装置200の設置場所とは異なる場所に報知装置308を設置することができる。
【0133】
(4-3)測定対象除去部の劣化の判定動作
次に、図10を用いて、変形例1に係る分析装置200’における測定対象除去部302の劣化の判定動作を説明する。図10は、第2実施形態の変形例1に係る分析装置における測定対象除去部の劣化の判定動作を示すフローチャートである。なお、以下に示す動作は、判定部307bが分析装置200を制御することで実行される。
まず、ステップS301において、例えば、ゼロガス(例えば、窒素ガス)のガスボンベ等を用いて、充填部3のサンプリング空間SS’にゼロガスを充填する。
その後、ステップS302において、照射部301aから測定光L’が出力され、ゼロガスが充填された充填部3のサンプリング空間SS’を通過した測定光L’が検出部301bにて検出される。検出部301bから入力した信号に基づいて、ゼロガスが充填された充填部3のサンプリング空間SS’を通過した測定光L’の強度が算出される。
【0134】
次に、ステップS303において、測定対象除去部302により測定対象ガスが除去されたリファレンスガスRGを、充填部3のサンプリング空間SS’に充填する。具体的には、導入部303に対して、第2入口303bとガス出口303cとをガス流通可能とする制御を行い、リファレンスガスRGをサンプリング空間SS’に充填する。
その後、ステップS304において、照射部301aから測定光L’が出力され、リファレンスガスRGが充填された充填部3のサンプリング空間SS’を通過した測定光L’が検出部301bにて検出される。検出部301bから入力した信号に基づいて、リファレンスガスRGが充填された充填部3のサンプリング空間SS’を通過した測定光L’の強度が算出される。
【0135】
上記のステップS304を実行後、ステップS305において、判定部307bが、ステップS302で取得したゼロガスを通過した測定光L’の強度と、ステップS304で取得したリファレンスガスRGを通過した測定光L’の強度と、の比較に基づいて、測定対象除去部302が劣化しているか否かを判定する。
例えば、ステップS304において取得したリファレンスガスRGを通過した測定光L’の強度と、ステップS302において取得したゼロガスを通過した測定光L’の強度と、の差の絶対値が所定値以上となった場合に、リファレンスガスRGに所定量以上の測定対象ガスが含まれており、測定対象除去部302が劣化したと判定する。
【0136】
判定部307bにより測定対象除去部302が劣化していると判定された場合(ステップS305で「Yes」)、ステップS306において、判定部307bは、測定対象除去部302が劣化しているとの判定結果を、通知部307cに通知する。
測定対象除去部302が劣化しているとの判定結果を受信した通知部307cは、報知装置308に通知信号を出力して報知装置308を動作させる。これにより、例えば、音を発生させるか、及び/又は、警告灯を点灯させて、ユーザが視覚的及び/又は聴覚的に認識できる形態で測定対象除去部302が劣化していることを通知できる。
測定対象除去部302が劣化していることを認識したユーザは、例えば、測定対象除去部302を交換するなどの対策を実行できる。
【0137】
一方、判定部307bにより測定対象除去部302が劣化していると判定されない場合(ステップS305で「No」)、測定対象除去部302の劣化の判定動作は終了する。
【0138】
(5)第2実施形態に係る分析装置の変形例2
(5-1)変形例2に係る分析装置の概要
上記にて説明した分析装置200、200’では、試料ガスSG又は空気AR’から測定対象ガスを除去してリファレンスガスRGを生成する部材として、測定対象除去部302のみが設けられていた。
しかし、これに限られず、第2実施形態に係る分析装置の変形例2(分析装置200’’)は、図11に示すように、Nセパレータである測定対象除去部302から供給されたガスから測定対象ガスを除去するスクラバー310a、310bをさらに備え、当該スクラバー310a、310bにて測定対象ガスを除去したガスをリファレンスガスRGとしてもよい。図11は、第2実施形態に係る分析装置の変形例2の構成を示す図である。なお、分析装置200’’は、スクラバー310a、310bを備えること以外、その構成及び機能は変形例1に係る分析装置200’と同じであるので、ここでは説明を省略する。
【0139】
(5-2)スクラバー
以下、図11を用いて、変形例2に係る分析装置200’’におけるスクラバーの構成を説明する。
スクラバー310a、310bは、図11に示すように、水分吸着剤Sと測定対象ガス吸着剤Zとが精製器本体311の内部に封入された部材である。水分吸着剤Sは、測定対象除去部302から供給されたガスから水分を除去する。水分吸着剤Sは、所定の再生温度まで加熱することにより、吸着成分が離脱する性質を有する。 水分吸着剤Sとしては、例えば、物理的に吸着した水分を、所定温度まで加熱することによって放出する、吸着能再生可能なシリカゲルを用いている。
【0140】
測定対象ガス吸着剤Zは、測定対象除去部302から供給されたガスから測定対象ガスをさらに除去する。測定対象ガス吸着剤Zは、例えば、物理的に吸着した測定対象ガスをシリカゲルよりも高い所定温度まで加熱することによって放出する吸着能再生可能なゼオライトを使用できる。
その他、測定対象ガス吸着剤Zとして、例えば、モレキュラーシーブなどを用いることができる。このような吸着材は、例えば多数の微細孔を有し、該微細孔に入りうる程度の大きさの分子のみを選択的に吸着する分子篩作用を利用したものである。化学的結合によって分子を吸着するソーダライム等とは異なり、加熱などによって容易に再生できるという特性を有する。
【0141】
精製器本体311は、例えば、円筒状の金属部材で形成してあり、その一端面にガスが流入する入力ポート311aが、他端面にガスが導出される出力ポート311bが設けられている。そして、この精製器本体311の入力ポート311a側の半部に水分吸着剤Sが、出力ポート311b側の半部に測定対象ガス吸着剤Zが充填されている。水分吸着剤Sと測定対象ガス吸着剤Zと境界には、例えば、フィルタメッシュMが仕切りとして配設してある。
【0142】
スクラバー310a、310bは、加熱機構312をさらに有する。加熱機構312は、例えば外部からの操作でON/OFF可能な巻線ヒータを具備したものであり、精製器本体311における出力ポート311b側の半部に巻き回すことによって、測定対象ガス吸着剤Zを直接的に加熱する。水分吸着剤Sは、精製器本体311からの熱伝熱等によって、間接的に加熱される。この加熱機構312による加熱温度は、測定対象ガス吸着剤Zの再生可能最低温度以上であって、かつ、水分吸着剤Sの再生可能温度以上分解温度以下に設定してある。本実施形態において、加熱機構312による加熱温度は、例えば130°C~180°Cである。
【0143】
図11に示すように、変形例2に係る分析装置200’’は、2つのスクラバー310a、310bを並列して備えている。この2つのスクラバー310a、310bは、いずれかを切り替えて使用可能となっている。
具体的には、測定対象除去部302の出口に接続されるガスラインGL1は、途中で二分岐し2つのガスラインGL2、GL3を形成する。この2つのガスラインGL2、GL3のうち、ガスラインGL2がスクラバー310aの入力ポート311aに接続され、ガスラインGL3が310bの入力ポート311aに接続される。また、上記ガスラインの分岐点には切換弁V1(例えば、三方弁)が設けてある。切換弁V1は、ガスラインGL1とガスラインGL2を接続するか、ガスラインGL1とガスラインGL3を接続するかを切り替えることで、2つのスクラバー310a、310bのうちいずれか一方を、測定対象除去部302に接続する。
【0144】
また、二分岐したガスラインGL2、GL3のうち、ガスラインGL1(測定対象除去部302)に接続されていないガスラインは、切換弁V2(例えば、三方弁)によってパージガス排出ラインGL4に接続される。
【0145】
上記の構成を有する分析装置200’’においては、例えば、切換弁V1がガスラインGL1とガスラインGL3とを接続し、切換弁V2がガスラインGL2とパージガス排出ラインGL4とを接続した状態で分析動作がなされた場合には、ガスラインGL3に接続されたスクラバー310bにより測定対象ガスが除去される。
例えば、スクラバー310bの測定対象ガスの除去能力が低下した場合には、切換弁V1がガスラインGL1とガスラインGL2とを接続し、切換弁V2がガスラインGL3とパージガス排出ラインGL4とを接続することで、未使用あるいは再生後のスクラバー310aにより測定対象ガスが除去される。
【0146】
なお、上記の例においてスクラバー310aが使用される間、除去能力が低下したスクラバー310bにおいては、加熱機構312による加熱により、水分吸着剤S及び測定対象ガス吸着剤Zの再生が実行される。これにより、一方のスクラバーの使用中に、他方のスクラバーの再生を実行できる。
【0147】
上記の分析装置200’’が、測定対象除去部302を通過したガスから測定対象ガスを除去するスクラバー310a、310bをさらに備えることにより、測定対象ガスの含有量がより低いリファレンスガスRGを生成できるとともに、スクラバー310a、310bの寿命を延ばすことができる。
【0148】
(6)第2実施形態のまとめ
上記に説明した第2実施形態は下記のようにまとめることができる。
第2実施形態に係る分析装置200、200’、200‘’では、 測定対象除去部302は、リファレンスガス生成用ガス(試料ガスSG又は空気AR’)から測定対象ガスを分離してリファレンスガスRGを生成する気体分離膜を有する。この気体分離膜は長期間にわたり使用可能であるので、測定対象除去部302の頻繁な交換が不要となる。その結果、測定対象ガスの分析におけるユーザの負担の増大を防止できる。
【0149】
また、測定対象除去部302が長寿命であることにより、分析装置200、200’、200’’を、複数のガスラインを切り替えてリファレンスガスRGを生成するといった複雑な構成とする必要がなくなるとともに、分析装置200、200’、200’’の制御を簡便にできる。
【0150】
分析装置200’、200’’が、リファレンスガスRGが充填された充填部301のサンプリング空間SS’を通過した測定光L’の強度に基づいて、測定対象除去部302の劣化を判定する判定部307bを備えることにより、充填部3に充填したガスを通過した測定光L’の強度に基づいて測定対象ガスの分析を行うのと類似の方法により、簡便に測定対象除去部302の劣化状態を判定できる。
【0151】
分析装置200、200’、200’’が、測定対象除去部302に劣化があると判定されたことを通知する通知部307cを備えることにより、測定対象除去部302が劣化したことをユーザに通知できる。
【0152】
分析装置200、200’、200’’が、試料ガスSGとリファレンスガスRGを充填部3のサンプリング空間SS’に交互に導入する導入部303を備えることにより、クロスフローモジュレーション方式の測定対象ガスの分析装置を実現できる。
【0153】
分析装置200において、リファレンスガス生成用ガスを試料ガスSGとすることで、測定対象となる試料ガスSGからより適切なリファレンスガスRGを生成できる。
分析装置200’、200’’において、リファレンスガス生成用ガスを試料ガスとは異なる供給源(空気供給部309)から供給される空気AR’とすることにより、測定対象除去部302に供給されるリファレンスガス生成用ガスの条件を、容易に測定対象除去部302の性能を十分に発揮できる適切な条件とできる。
【0154】
分析装置200’’が、測定対象除去部302を通過したガスから測定対象ガスを除去するスクラバー310a、310bをさらに備えることにより、測定対象ガスの含有量がより低いリファレンスガスRGを生成できるとともに、スクラバー310a、310bの寿命を延ばすことができる。
【0155】
3.他の実施形態
以上、本発明の複数の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
(A)第1の実施の形態に係る分析装置100、100’においては、伝搬空間TSには、第1ミラー71aと、第2ミラー71bと、第3ミラー71cと、第4ミラー71dと、第5ミラー71eと、第6ミラー71fとが配置されていると説明した。これらのミラーの配置は、筐体1内部における光源51a~51dと充填部3との位置関係に応じて変更されてもよい。
例えば、光源51a~51dと充填部3との距離が近づくことで、伝搬空間TS内における測定光Lが伝搬する光源51a~51dから充填部3までの距離が短くなる場合は、伝搬空間TS内のミラーの数を減少するか、又は、伝搬空間TS内にミラーを設けないようにしてもよい。
【0156】
(B)第1実施形態に係る分析装置100、100’において測定対象除去部9の劣化を判定する際に、測定対象除去部9より発生したパージガスPGを充填部3のサンプリング空間SSに充填し、サンプリング空間SS内のパージガスPGを通過した測定光Lの強度に基づいて、測定対象除去部9の劣化を判定してもよい。
第1実施形態において説明したとおり、サンプリング空間SSにおいて測定光Lは多重反射により光路長が長くなっているので、サンプリング空間SS内のパージガスPGを通過した測定光Lの強度に基づけば、パージガスPGに含まれる低濃度の測定対象ガスを精度よく測定できる。
【0157】
また、サンプリング空間SS内にパージガスPGを充填することにより、サンプリング空間SSが使用により汚染されていても、その影響を含んだ状態の測定光Lの強度を測定できる。その結果、より精度よくパージガスPGに含まれる測定対象ガスの含有量を精度よく測定できる。
【0158】
(C)第1実施形態に係る分析装置100、100’において、充填部3と同様の構成を有し窒素ガスなどの測定対象ガスを含まないガス充填したセルを個別に設け、測定対象除去部9の劣化を判定する際には、このセル内に測定光Lを通過させてもよい。これにより、充填部3の汚染に影響を受けることなく、伝搬空間TS内のパージガスPGに含まれる測定対象ガスによる測定光Lの吸収量のみを精度よく測定できる。
【0159】
(D)また、第1実施形態に係る分析装置100、100’と、第2実施形態に係る分析装置200、200’とにおいて、ガスに含まれる測定対象ガスを除去するために、多孔質水酸化カルシウムに呈色剤、硝酸銀を用いた、使い捨て可能な除去剤を用いても良い。これにより、低コストで安定的な測定が実現可能となる。
【0160】
(E)第1実施形態に係る分析装置100、100’においては、測定対象除去部9は、空気供給ライン11から供給された空気からパージガスを生成していた。しかし、これに限られず、空気供給ライン11の代わりに、例えば、酸素と窒素とを含む気体が充填されたボンベを測定対象除去部9に接続し、測定対象除去部9が当該ボンベから供給された気体から窒素を抽出してパージガスを生成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本発明は、試料ガスに含まれる測定対象ガスを分析する分析装置に広く適用できる。
【符号の説明】
【0162】
100、100’ 分析装置
1 筐体
11 空気供給ライン
11a 第1空気供給ライン
11b 第2空気供給ライン
11c 三方弁
12 空気供給部
13 排出口
IS 内部空間
3 充填部
31 入口
32 出口
33a 第1反射部材
33b 第2反射部材
SS サンプリング空間
5 照射部
51a~51d 光源
L1~L4 要素光
7 伝搬部
71a 第1ミラー
71b 第2ミラー
71c 第3ミラー
71d 第4ミラー
71e 第5ミラー
71f 第6ミラー
75 検出部
77 パージガス供給ライン
79 パージガス排出口
TS 伝搬空間
9 測定対象除去部
20 制御部
201 分析部
203 第1判定部
205 通知部
207 第2判定部
30 報知装置
F フランジ
W 光学窓
PG パージガス
PR1 圧力計
AR 空気
L 測定光
200、200’、200’’分析装置
301 充填部
301a 照射部
301b 検出部
SS’ サンプリング空間
302 測定対象除去部
303 導入部
303a 第1入口
303b 第2入口
303c ガス出口
304 排出流路
304a オリフィス
304b 第1ポンプ
305 分岐ライン
305a 昇圧用ポンプ
305b レギュレータ
306 リファレンスガス供給ライン
307 制御部
307a 分析部
307b 判定部
307c 通知部
308 報知装置
309 空気供給部
309a 空気供給ライン
309b レギュレータ
310a、310b スクラバー
AR’ 空気
L’ 測定光
RG リファレンスガス
SG 試料ガス
図1
図2
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