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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-13
(45)【発行日】2025-02-21
(54)【発明の名称】MEMS素子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H04R 19/04 20060101AFI20250214BHJP
   H04R 31/00 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
H04R19/04
H04R31/00 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023508221
(86)(22)【出願日】2021-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2021012019
(87)【国際公開番号】W WO2022201316
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2024-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福留 隆雄
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 由光
【審査官】齊田 寛史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/141508(WO,A1)
【文献】特開2014-90514(JP,A)
【文献】特開2017-121028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 19/04
H04R 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を備えた基板と、
前記基板上に絶縁膜を介して形成されており、周縁部に端部に沿ってスリットが間欠的に形成された振動膜と、
前記基板の周縁部に形成されたスペーサーに固定して形成されており、中心部に複数個のアコースティックホールを有するバックプレートと
を備え、
前記バックプレートは前記複数個のアコースティックホールの外周部で、かつ、平面視で前記振動膜の前記スリットの最外周端よりも端部側の位置にエッチングホールを有しており、前記スリットは、前記基板の開口部の形成されていない部分の上に位置するように形成されており、前記振動膜の端部及び前記振動膜の下の前記絶縁膜は前記スペーサーの下端部から離間しており、かつ、前記振動膜の下層の前記絶縁膜の前記スペーサー側の端部は前記振動膜の前記端部より前記スリット側に配置され、前記振動膜の下層の前記絶縁膜の前記スリット側の端部は前記スリットより前記スペーサー側に配置されている、
MEMS素子。
【請求項2】
前記振動膜が、その中央部に前記振動膜と前記バックプレートとを繋ぐ柱を有する、請求項1記載のMEMS素子。
【請求項3】
前記絶縁膜は前記スリットの内周側が除去されることによってリング状に残存しており、平面視で前記スリットの部分における前記絶縁膜の幅は、前記スリット間における前記絶縁膜の幅よりも狭くなっており、前記絶縁膜の内周端に凹凸がある、請求項1または2記載のMEMS素子。
【請求項4】
前記振動膜が、前記スリットの内側かつ前記基板側の面にバンプを有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のMEMS素子。
【請求項5】
前記スリットが少なくとも2周に設けられ、該2周の内側の周のスリット間にエッチングホールが形成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のMEMS素子。
【請求項6】
基板上に絶縁膜を形成する工程と、
前記絶縁膜上に導電体膜を形成し、周端部のパターニングをすると共に、前記導電体膜の周縁部にスリットを形成することによって振動膜を形成する工程と、
前記振動膜上に犠牲層を形成する工程と、
前記犠牲層上に固定電極を含むバックプレート膜を形成する工程と、
前記バックプレート膜に複数個のアコースティックホール及び該複数個のアコースティックホールの外周にエッチングホールを備えたバックプレートを形成する工程と、
前記振動膜の中心部の下に位置する前記基板に開口部を形成する工程と、
前記基板をエッチング液に浸漬することによって、前記犠牲層の周縁部をスペーサーとして残存させると共に、前記振動膜の前記スリットの最外周側と前記振動膜の端部側から前記絶縁膜の一部を除去し、前記スリットの最外周と前記振動膜の端部との間に前記絶縁膜の一部のみを残すように前記振動膜の下の前記絶縁膜を除去する工程と
を備え、
前記エッチングホールを平面視で前記振動膜の前記スリットの最外周よりも前記バックプレートの周縁部側に形成し、かつ、前記エッチングホールの位置、前記エッチングホールの大きさ、エッチング時間、及びエッチング液の濃度の少なくとも一つを調整することによって、前記振動膜の下に残存する絶縁膜を、前記振動膜を保持するリング状に残存させることを特徴とする、MEMS素子の製造方法。
【請求項7】
前記絶縁膜のエッチングの調整を、前記振動膜の下に残存する前記絶縁膜の中心部側の形状に突出部を有するように調整する、請求項6記載のMEMS素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、MEMS素子に関し、特にマイクロフォン、各種センサ、スイッチ等として用いられる容量型のMEMS素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術のMEMS素子(マイクロフォン)200は、図7に示すように、シリコン基板10の上に絶縁膜20を介して導体からなる振動膜30が設けられ、スペーサー40を介して導体部分(固定電極50a)を有するバックプレート50が積層されている。バックプレート50は変形しないように形成されており、振動膜30と対向する部分に複数個のアコースティックホール50bが形成されている。例えば、このアコースティックホール50bを介して伝搬した音圧によって振動膜30が振動し、バックプレート50と振動膜30との間の容量が変化する。その容量の変化を電気信号として取り出し、図示しないスピーカ等に伝達する構成になっている。
【0003】
このようなMEMSマイクロフォン200では、非常に微弱な容量の変化を検出するため、振動膜30とバックプレート50との間の寄生容量が大きいとマイクロフォンとしての感度が低下する。そのため、例えば特許文献1には、振動板(振動膜30)の導体部分を振動板よりも小さい範囲にしたり、引用文献1の図7(b)に示されるように、振動板及びその下層のシリコン酸化膜をそれぞれ内側領域と外側領域とに分離したりすることによって、振動膜30とバックプレート50との間に余計な容量が形成されないようにする構造が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-208548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
MEMSマイクロフォンの感度を向上させるために、前述のような寄生容量の影響を少なくする工夫はなされている。しかし、寄生容量が抑制されていても、感度などのマイクロフォンの特性がばらつくという問題がある。
【0006】
本発明者らが、このMEMSマイクロフォンの特性のバラツキの原因について鋭意検討を重ねて調べた。その結果、スペーサーとなる犠牲層膜、バックプレート、絶縁膜などの各膜における内部応力の影響を受けて、振動膜にも応力がかかり、振動の大きさにバラツキが生じることを見出した。また、パッケージにMEMSマイクロフォンをハウジングする際には、MEMSマイクロフォンはプリント基板などに樹脂などを用いて固定されるため、それらの材料の内部応力による影響や接続による線膨張係数の差による影響も基板を介して受けることを見出した。
【0007】
したがって、本開示においては、より安定した性能を示し、かつ高感度を実現させることができるMEMS素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のMEMS素子の一実施形態は、開口部を備えた基板と、該基板上に絶縁膜を介して形成されており、周縁部に端部に沿ってスリットが間欠的に形成された振動膜と、上記基板の周縁部に形成されたスペーサーに固定して形成されており、中心部に複数個のアコースティックホールを有するバックプレートとを備え、該バックプレートは上記複数個のアコースティックホールの外周部で、かつ、平面視で上記振動膜の上記スリットの最外周端よりも端部側の位置にエッチングホールを有しており、上記スリットは、上記基板の開口部の形成されていない部分の上に位置するように形成されており、上記振動膜の端部及び上記振動膜の下の上記絶縁膜は上記スペーサーの下端部から離間しており、かつ、上記振動膜の下層の上記絶縁膜の上記スペーサー側の端部は上記振動膜の上記端部より上記スリット側に配置され、上記振動膜の下層の上記絶縁膜の上記スリット側の端部は上記スリットより上記スペーサー側に配置されている。
【0009】
本開示のMEMS素子の製造方法の一実施態様は、基板上に絶縁膜を形成する工程と、該絶縁膜上に導電体膜を形成し、周端部のパターニングをすると共に、該導電体膜の周縁部にスリットを形成することによって振動膜を形成する工程と、該振動膜上に犠牲層を形成する工程と、該犠牲層上に固定電極を含むバックプレート膜を形成する工程と、該バックプレート膜に複数個のアコースティックホール及び該複数個のアコースティックホールの外周にエッチングホールを備えたバックプレートを形成する工程と、上記振動膜の中心部の下に位置する上記基板に開口部を形成する工程と、上記基板をエッチング液に浸漬することによって、上記犠牲層の周縁部をスペーサーとして残存させると共に、上記振動膜の上記スリットの最外周側と上記振動膜の端部側から上記絶縁膜の一部を除去し、上記スリットの最外周と上記振動膜の端部との間に上記絶縁膜の一部のみを残すように上記振動膜の下の上記絶縁膜を除去する工程とを備え、上記エッチングホールを平面視で上記振動膜の上記スリットの最外周よりも上記バックプレートの周縁部側に形成し、かつ、上記エッチングホールの位置、上記エッチングホールの大きさ、エッチング時間、及びエッチング液の濃度の少なくとも一つを調整することによって、上記振動膜の下に残存する絶縁膜を、上記振動膜を保持するリング状に残存させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本開示のMEMS素子によれば、振動膜及び振動膜を保持する絶縁膜がスペーサー部と分離され、振動膜は基板とは最低限の幅の絶縁膜を介して保持されているので、振動膜の応力が、他の部材、例えばスペーサーやバックプレートの影響を受けず、さらにハウジングのため、樹脂などによって基板が固定されても、その基板に生じる応力の振動膜への影響も抑制される。その結果、安定した性能のマイクロフォンが得られる。
【0011】
さらに、本開示のMEMS素子の製造方法によれば、バックプレートのアコースティックホールの外側であって、平面視で振動膜に形成された最外周のスリットの外側の位置にエッチングホールを形成することにより、絶縁膜の除去工程において、エッチングホールの位置、エッチングホールの大きさ、エッチング時間、及びエッチング液の濃度の少なくとも一つを調整することによって、振動膜への応力の影響を抑制し、振動膜の保持と安定した性能とを最適化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の一実施形態であるMEMS素子の断面模式図である。
図2図1のMEMS素子の振動膜(可動電極)の基板側から見た平面模式図である。
図3図1のMEMS素子の絶縁膜の平面模式図である。
図4A図1のMEMS素子の製造工程の説明図である。
図4B図1のMEMS素子の製造工程の説明図である。
図4C図1のMEMS素子の製造工程の説明図である。
図4D図1のMEMS素子の製造工程の説明図である。
図4E図1のMEMS素子の製造工程の説明図である。
図4F図1のMEMS素子の製造工程の説明図である。
図4G図1のMEMS素子の製造工程の説明図である。
図4H図1のMEMS素子の製造工程の説明図である。
図5】本開示の別の実施形態であるMEMS素子の断面模式図である。
図6A】振動膜における応力の影響を示すシミュレーションの結果を説明する模式図である。
図6B】振動膜における応力の影響を示すシミュレーションの結果を説明する模式図である。
図7】関連技術のMEMS素子の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
つぎに、図面を参照しながら本開示のMEMS素子の実施形態及び本開示のMEMS素子の製造方法の実施態様を説明するが、本開示はこれらの実施形態及び実施態様に限定されるものではない。
【0014】
本開示のMEMS素子の一実施形態は、図1に示されるように、開口部1aを備えた基板1と、その基板1上に絶縁膜2を介して形成されており、周縁部に端部3dに沿ってスリット3a、3bが間欠的に形成された振動膜3と、基板1の周縁部に形成されたスペーサー4に固定して形成されており、中心部に複数個のアコースティックホール5bを有するバックプレート5とを備えている。そして、バックプレート5は複数個のアコースティックホール5bの外周部で、かつ、平面視で振動膜3の外側スリット3aの最外周端よりも端部側にエッチングホール5cを有しており、スリット3a、3bは、基板1の開口部1aの形成されていない部分の上に位置するように形成されており、振動膜3の端部3d及び振動膜3の下の絶縁膜2はスペーサー4の下端部から離間しており、かつ、振動膜3の下層の絶縁膜2は振動膜3の端部3d及び外側スリット3aから振動膜3の下までエッチングされ、それぞれ絶縁膜2の端部が内側に入り込んだ構造となっている。
【0015】
なお、図1~3は説明のために振動膜3の周縁部やスリット3a、3bの近傍、振動膜3の下層の絶縁膜2などの大きさがMEMS素子全体や他の部分に比べて大きく描かれており、実際のMEMS素子にける各部材の比率を忠実に示すものではない。
【0016】
前述のように、MEMSマイクロフォン100の感度などの特性にバラツキが生じる理由について、本発明者らは鋭意検討を重ねて調べた結果、振動膜3に残留応力があり、その応力が各素子においてばらつくことで同じ音圧力が印加された場合でも、振動膜3の振動に微妙な差が生じることに起因していることを見出した。この残留応力の違いは、製造工程の絶縁膜2、スペーサー4、バックプレート5の厚さのバラツキや、製造工程における環境など様々の要因に基づくこと、さらにはこの残留応力は、このMEMS素子100をパッケージなどに組み立てる際に用いる樹脂などの材料の内部応力などによっても影響されること、を見出した。
【0017】
そこで、本発明者らは、これらのバラツキを均一化することは不可能と考え、これらの応力を振動膜3に伝達しないようにすることによって、振動膜3の残留応力の影響を抑制することを考えた。そのためには、振動膜3に対する基板1及びその周囲の部材、例えば絶縁膜2、スペーサー4、及びバックプレート5の影響を断ち切ることが必要であり、振動膜3をスペーサー4及びその下部から分離させて独立させると共に、基板1とも最低限の範囲での接触とすることによって、MEMSマイクロフォンなどの特性のバラツキを抑制することに成功した。実際、振動膜3と基板1とを接合している絶縁膜2の面積によって、振動膜3の残留応力が変化し、振動膜3の振動の程度に影響を与えることがシミュレーションによっても明らかであった(図6A及び図6B)。図6A及び図6Bは振動膜3の受ける応力の影響の程度をドットの濃淡により示したものであり、濃度が濃いほど応力の影響が大きいことを示す。振動膜3と基板1との間のほぼ全面が絶縁膜2により接合されている図6Aと、振動膜3と基板1とが図1と同様に振動膜3の保持に必要な幅の絶縁膜2でのみ接合されている図6Bとを比較することにより、振動膜3と基板1とを接合する絶縁膜2の面積により、振動膜3の受ける応力の大きさや分布が異なっていることがわかる。
【0018】
具体的には、振動膜3は絶縁膜2を介して周縁部で基板1に接合されている。この振動膜3は、音響による圧力変化に応じで振動するため、基板1から脱離すると振動膜3としての機能を果たすことができなくなる。その観点からは、振動膜3は絶縁膜2を介して基板1に十分に固定されている必要がある。そのため、振動膜3の下に残存する絶縁膜2の幅はできるだけ広い範囲でもって振動膜3が基板1に接続されることが好ましい。しかし、前述のように本発明者らは、この接続部、すなわち残存する絶縁膜2の幅が広すぎると、基板1の応力が絶縁膜2を介して振動膜3に伝達し、振動膜3の振動特性に影響を及ぼすことを見出した。そこで、本実施形態では、この残存する絶縁膜2を、MEMS素子100の種類によって異なるが振動膜3を保持するための最低限の幅(図3のL1参照)、例えば小型のマイクロフォンでは5μm程度とし、その接合を補強するため、全周ではなく、部分的にそれよりも1~3μm程度幅広(図3のL2参照)の部分を有するものとして形成していることに特徴がある。
【0019】
換言すると、本実施形態では、振動膜3の下の絶縁膜を開口部(振動膜3の端部3d及び外側スリット3a)からエッチングすることによって、外側スリット3aのある部分は外側スリット3aからのエッチングによって絶縁膜2の幅(図3のL1)が狭くなり、間欠的に形成された外側スリット3aの間ではエッチングがあまり進まないため、残存する絶縁膜2の幅(図3のL2)が相対的に広くなり、振動膜3を保持する保持力を発揮しながら、その部分の絶縁膜2の円周方向の長さは短いため、基板1からの応力の伝達を抑制することができる。従って、犠牲層41及び絶縁膜2のエッチングの際にエッチング条件を調整しながら、振動膜3の下の絶縁膜2の幅を調整することに特徴がある。
【0020】
このように数μm以下の絶縁膜2の幅を制御するためのエッチング条件の調整としては、MEMS素子100の種類、サイズや各製造ロットに応じて、バラツキの生じやすいエッチング液の濃度、エッチングホール5cの位置及び大きさ、エッチング時間などのいずれかを調整することが挙げられる。
【0021】
本実施形態の基板1としては単結晶シリコンなど支持基板としての機械的特性を備えた材質等を使用できる。しかし、シリコン基板には限定されず、化合物半導体など他の半導体基板、SOI基板などを使用することもできる。形状については特に限定されるものではない。
【0022】
絶縁膜2は、シリコン基板上に形成される厚さ0.2~1μm程度の酸化膜(SiO2)であり、シリコン基板の酸化により、またはCVD法などによって堆積することで形成される。絶縁膜2は酸化膜に限定されるものではなく、窒化膜でもよいが、酸化膜はエッチングされやすいので好ましい。絶縁膜2が厚すぎると、その応力が振動膜3に影響するので、できるだけ薄い方が好ましい。
【0023】
絶縁膜2は、振動膜3の振動する部分の下側は除去されており、振動膜3の周縁部の一部のみで基板1と接続している。前述のように、基板1に生じている応力を振動膜3に伝達しないように、可能な限り狭い範囲で振動膜3と基板1との間に残存している。一例としては、図3に基板1と絶縁膜2との界面で切断して絶縁膜2側を見た平面図が示されるように、絶縁膜2は振動膜3の外側スリット3aの近傍よりも内周側が除去され、振動膜3の端部3dの近傍で周縁部と分離する分断溝2aが形成されることによってリング状に形成されている。このリング状の絶縁膜2は、後述されるように、エッチングの際に振動膜3の下側までエッチングされる。そのため、振動膜3の端部3d側及び外側スリット3aのスペーサー4側の端部もエッチングされている。しかし、間欠的に形成されている外側スリット3aのスリット間ではエッチングが進行しにくく、図3に示されるように、絶縁膜2は中心部側に突出して残存している。換言すると、リング状に残存する絶縁膜2の幅は均一ではなく、振動膜3の外側スリット3aの部分における絶縁膜2の幅L1は、外側スリット3aのスリット間における絶縁膜2の幅L2よりも狭くなっており、絶縁膜2の内周端に凹凸がある形状になっている。外側スリット3a近傍における絶縁膜2の幅L1と外側スリット3aのスリット間における絶縁膜2の幅L2との関係は、L1がL2のおおよそ5分の3~2分の1程度であることが好ましい。
【0024】
図3に示されるように、リング状の絶縁膜2の内周に突起状の突出部2bが形成されることによって、この突出部2bでも振動膜3と接合している。しかし、この突出部2bの周方向の長さ、すなわち突出部2bの幅は非常に小さい。そのため、基板1に応力がかかっていても、その応力を振動膜3へと伝達する力は非常に小さい。一方で、リング状の絶縁膜2の幅L1は可能な限り小さくなるように形成されている。そのため、絶縁膜2の幅が全周にわたってL1となるような場合には振動膜3の保持が十分でない場合が起こり得る。しかし、本実施形態においては、このような場合であっても、この突出部2bにも振動膜3が接合していることによって、振動膜3の保持を確実にする。換言すると、この突出部2bは基板1の応力の伝達を抑制しながら、振動膜3の保持に寄与し、リング状の絶縁膜2の突出部2bでない場所の幅L1を可能な限り小さくし得る。
【0025】
振動膜3は、導電性のポリシリコン膜などを用いた導電体膜をパターニングして形成された可動電極膜であり、例えば、音圧による空気振動が固定電極5a及びバックプレート5に形成されたアコースティックホール5bを通って振動膜3に伝わり振動膜3が振動し、これにより生じる振動膜3と固定電極5aとの間の静電容量の変化が電気信号に変換され、引き出し電極(図示せず)より外部に伝達される。図1に示される例では、振動膜3がスペーサー4の下部とは分断されていることに特徴があり、導電体膜の一部がスペーサー4の下部に存在する構成としても、分断溝を形成し、その分断溝より中心部側に露出した部分を振動膜3の端部とすればよい。換言すると、分断溝によって分断された導電体膜がスペーサー4の下にも残存している場合であっても、スペーサー4の下に残存する導電体膜は何ら機能を有するものではないため、特に必要はなく、本明細書においては、「振動膜」との用語は、固定電極5aに相対する位置に配置されている部分を本質的には意味し、この部分の端部を振動膜3の端部3dという。
【0026】
振動膜3にはその周縁部に端部3dに沿って外側スリット3aと内側スリット3bがそれぞれ間欠的に形成されている。スリットは1周でもよいし、3周以上形成されていてもよい。スリット3a、3bの形状、大きさ、間欠的に形成されるスリット3a、3bの間隔は、MEMS素子の感度、振動膜の安定性、振動膜の強度、マイクロフォンの感度、電気信号の歪など様々な因子を考慮して決定することができる。このスリット3a、3bが形成されることによって、僅かな音響圧力でも振動しやすくなり、感度が向上する。
【0027】
スリット3a、3bは基板1の開口部1aが形成されていない部分の上に位置するように形成されている。スリット3a、3bを基板1の開口部1aに露出する位置に形成すると、音響抵抗が著しく低下して、開口部1aが小さい構成のMEMS素子では、低周波数領域での感度が著しく低下する。図1に示されるように、スリット3aを基板1の開口部1aのない部分の上に位置するように形成することにより、振動膜3と基板1との間の空間を利用して音響抵抗を増大させることができる。この空間は、MEMS素子製造時において、犠牲層41(図4H参照)をエッチングする際にスリット3a、3bからエッチング液が浸透することにより、絶縁膜2がエッチングされて形成され得る。図2においては、スリット3a、3bが2周に設けられているが、このような構造の場合、内側スリット3bのスリット間にはエッチング液が浸透し難い場合が生じ、エッチング残りが発生する場合がある。これを防止するために、図2に示されるように内側スリット3bのスリット間にエッチングホール3cを形成する態様とすることができる。
【0028】
すなわち、内側スリット3bも基板1の上に形成されているので、基板1の開口1aからのエッチング液は絶縁膜2が除去されないと浸透せず、内側スリット3bからのエッチング液も内側スリット3bのスリット間には浸透しにくいからである。エッチングホール3cの大きさは、内側スリット3bの間隔に応じて、エッチング残りが生じないように決定される。
【0029】
また、絶縁膜2の除去によって形成される振動膜3と基板1との間の空間は非常に狭いため、エッチング時に振動膜3と基板1が吸着するスティッキングと呼ばれる現象が起こる可能性があり、このような現象が起こると、MEMS素子100として動作しない恐れがある。このスティッキングを防止するために、振動膜3にはバンプ3eを設けることができる。バンプ3eは、アライメントずれを考慮し、開口部1aの外側に位置する箇所のみならず、開口部1aの内側にも設けてもよい。バンプ3eの形状は連続したリング状に凸部を設ける必要はなく、図3に示されるように、円周上に突起を点在させればよい。
【0030】
スペーサー4は、犠牲層として、酸化珪素などを積層して、バックプレート5が形成された後に中心部をエッチング除去することにより形成され、バックプレート5と基板1との間に、固定電極5aと可動電極となる振動膜3との間の空間部を形成するため配置される。
【0031】
固定電極5aは、導電性のポリシリコン膜などを用いた導電体膜をパターニングして形成され、可動電極となる振動膜3に対応する位置に配置される。固定電極5aの面積は、振動膜3の振れ方により最適化される。
【0032】
バックプレート5は、固定電極5aの上に積層された窒化珪素や窒化珪素と酸化珪素の多層膜などを積層して形成されており、固定電極5aと共に中心部に複数個のアコースティックホール5bを有する。アコースティックホール5bは音圧を振動膜3に伝えるためのものであり、振動膜3に対向する位置に形成される。バックプレート5は、複数個のアコースティックホール5bの外周部にエッチングホール5cを有しており、これらを介して犠牲層41(図4H参照)及び絶縁膜2がエッチングされる際、振動膜3の端部3dに露出する絶縁膜2もエッチングされる。この際、絶縁膜2は振動膜3の下層の絶縁膜2と、スペーサー4の下端部の絶縁膜とに分断される。また、振動膜3の端部3d及び外側スリット3a近傍の振動膜3の下層の絶縁膜2がエッチングされる。振動膜3の下側の絶縁膜2の下のエッチングの程度やバランスは、エッチングホール5cの振動膜3の端部3d及び外側スリット3aに対する位置関係やエッチングホール5cの大きさなどにより調整することができる。
【0033】
エッチングホール5cは、犠牲層41及び絶縁膜2をエッチングするために形成されており、アコースティックホール5bとは機能が異なっている。そのため、その形成場所も、外側スリット3aよりもさらに基板1の端縁側で、かつ、振動膜3が絶縁膜2を介して基板1と接合している位置であり、振動膜3の振動に寄与するホールではない。むしろ、犠牲層41のエッチング及び振動膜3の下のエッチングの最適化を図るように形成位置が決められている。すなわち、この位置関係において外側スリット3a及び振動膜3の端部3dとエッチングホール5cとの距離を調節することで、振動膜3の下層の絶縁膜2は、振動膜3の端部3d側及び外側スリット3aの内周側がスリット3aから等方的に除去されることによってスリット3a間の内周端に突出部2bを有するリング状に残存した構成となる。
【0034】
アコースティックホール5bの形状は、円形、矩形、楕円形など特には限定されるものではない。個々のアコースティックホール5bの大きさやアコースティックホール5b間の間隔は、特に限定されるものではなく、感度、ノイズ特性を考慮し決定される。また、複数個のアコースティックホール5bの配置は、例えば円形の振動膜3に対向するように、円形のアコースティックホール5bを中心部から同心円を描くように複数周配置することができる。この際、中心部にはアコースティックホール5bを形成してもしなくてもよい。
【0035】
エッチングホール5cは、上述したように振動膜3の端部3d近傍の絶縁膜2のエッチングに重要な機能を果たすものであり、その形状はアコースティックホール5bと同様に円形、矩形、楕円形など特に限定されるものではない。具体的には、エッチングホール5cは、アコースティックホール5bと同様に、円形に形成され、複数個形成されたアコースティックホール5bの外周部分に複数個のアコースティックホール5b全体を取り囲むように等間隔に複数個配置される。この際、複数個のアコースティックホール5bは、複数個それぞれほぼ同じ大きさに形成されるが、エッチングホール5cはアコースティックホール5bとは異なる大きさおよび異なる間隔で配置され得る。
【0036】
以下、図4A図4Hを用いて本開示のMEMS素子の製造方法の一実施態様として、本実施形態のMEMS素子の製造方法を説明する。
【0037】
本実施形態のMEMS素子の製造方法は、図4A図4Hにその製造工程図が示されるように、基板1上に絶縁膜2を形成する工程(図4A参照)と、絶縁膜2上に導電体膜31を形成し(図4C参照)、周端部のパターニングをすると共に、導電体膜31の周縁部にスリット3a、3b(図2参照)及び必要な場合にはエッチングホール3cを形成することによって振動膜3とする工程(図4D参照)と、振動膜3上に犠牲層41を形成する工程(図4E参照)と、犠牲層41上に固定電極5aを含むバックプレート膜51を形成する工程(図4F参照)と、バックプレート膜51に複数個のアコースティックホール5b及び該複数個のアコースティックホール5bの外周にエッチングホール5cを備えたバックプレート5を形成する工程(図4G参照)と、振動膜3の中心部の下に位置する基板1に開口部1aを形成する工程(図4H参照)と、基板1をエッチング液に浸漬することによって、犠牲層41の周縁部をスペーサー4として残存させると共に、振動膜3の外側スリット3aの最外周と振動膜3の端部3dとの間の一部のみを残して振動膜3の下の絶縁膜2を除去する工程(図1参照)と、を備えている。そして、エッチングホール3を平面視で振動膜3の外側スリット3aの最外周よりもバックプレート5の周縁部側に形成し、かつ、エッチングホール5cの位置、エッチングホール5cの大きさ、エッチング時間、及びエッチング液の濃度の少なくとも一つを調整することによって、振動膜3の下に残存する絶縁膜2を、基板1からの応力の影響が最低限になる幅で、かつ、振動膜3を保持するリング状に残存させることを特徴としている。
【0038】
まず、基板1上に絶縁膜2を形成する(図4A)。例えば、基板1の表面に、酸化珪素からなる絶縁膜2を形成する。絶縁膜2は、本技術分野における通常の方法により形成することができ、例えば基板1がシリコン基板である場合には、熱酸化などにより形成し、あるいはCVD法などによって堆積してもよい。振動膜3にバンプ3eを設ける場合には、振動膜3を積層する前にバンプ3eを設ける位置に対応する位置で絶縁膜2をエッチングするなどしてバンプ3e形成用の凹部2cが形成される(図4B)。
【0039】
この絶縁膜2上に、例えばCVD法により厚さ0.2~1μm程度の導電性ポリシリコン膜を導電体膜31として積層形成する(図4C)。導電体膜31は、周端部、外側スリット3a、内側スリット3b(図2参照)及び必要な場合にはエッチングホール3cがフォトリソグラフ法などによりパターニングにより除去され、振動膜3とされる(図4D)。この際、終端部をすべて除去しないで、スペーサー4の下部となる部分にも導電体膜31を残存させてもよいが、分断溝で振動膜3の部分とは分断される。
【0040】
次に、通常のMEMS素子100の製造工程に従い、酸化珪素からなる犠牲層41が、例えば3μm程度の厚さに積層形成され(図4E)、犠牲層41上に導電性ポリシリコン膜が積層形成される。次いで、通常のフォトリソグラフ法によりパターニングし、例えばポリシリコン膜からなる固定電極5aを形成し、その上に窒化珪素からなるバックプレート膜51が積層形成される(図4F)。
【0041】
その後、バックプレート膜51及び固定電極5aに、通常のフォトリソグラフ法にて音圧を振動膜3に伝えるためのアコースティックホール5bと、犠牲層41及び絶縁膜2をエッチングするためのエッチングホール5cを形成し、犠牲層41を部分的に露出させる(図4G)。この際、エッチングホール5cは、アコースティックホール5bの外側(バックプレート膜51の端縁側)、かつ、固定電極5aの外側であって、平面視で、振動膜3に形成された外側スリット3aの外側(振動膜3の端部3d側)、かつ、平面視で振動膜3と重なる位置になるように形成する。
【0042】
その後、基板1の中心部を絶縁膜2が形成された面と反対面である裏面側からエッチング除去して絶縁膜2を露出させることによって、開口部1aを形成する(図4H)。この開口部1aは、振動膜3に形成された外側及び内側スリット3a、3bの下部が開口部1a内に位置しないように形成される。
【0043】
最後に、アコースティックホール5b、エッチングホール5c及び開口部1aから同時にエッチングを開始して、犠牲層41及び絶縁膜2を除去し、これにより振動膜3とバックプレート5との間にギャップが形成される。また、絶縁膜2の開口部1aに露出した部分及び犠牲層41が除去されて露出する振動膜3のスリット3a、3b及び端部3dにつながる部分が振動膜3の下側まで含めてエッチングされ、図1に示される構造になる。
【0044】
すなわち、絶縁膜2は、開口部1aに露出した部分のみならず、開口部1a、スリット3a、3b、及び端部3dにつながる振動膜3の下側もエッチングされる。換言すると、振動膜3の下面に存在する絶縁膜2は、外側スリット3aよりも中心側は、開口部1a及びスリット3a、3bからのエッチング液によって全てエッチング除去され、外側スリット3aより端部3d側は、外側スリット3aの外周端及び振動膜3の端部3dの近傍がエッチングされるだけで、その間に絶縁膜2が前述の図3に示されるように残存する。
【0045】
この絶縁膜2の残存範囲は、前述のように、振動膜3への応力の伝達の抑制、及び振動膜3を信頼性良く保持する保持力という観点で非常に重要になる。しかし、製造ロットなどによって変動しやすい。従って、絶縁膜2の除去工程においては、エッチングホール5cの位置、エッチングホール5cの大きさ、エッチング時間、及びエッチング液の濃度の少なくとも一つを調整することによって、振動膜3の下に残存する絶縁膜2の幅が振動膜3を保持する最低限の幅で、かつ、基板1からの応力の影響を最低限にする幅となるように行われ、振動膜3の端部3dのエッチングの幅と最外周の外側スリット3a近傍のエッチングの幅とがほぼ同程度になるように行うことが好ましい。
【0046】
本開示の別の実施形態のMEMS素子101が図5に示されている。このMEMS素子101では、その中央部に振動膜3とバックプレート5とを繋ぐ柱6が設けられている。このような柱6は、犠牲層41がエッチングされる際、エッチングされずに残る材料の絶縁体で形成され、振動膜3の中心部とバックプレート5とを固定し、これにより、音声と雑音とを区別できなくなる音圧レベル(アコースティックオーバーロードポイント(AOP))や過大な圧力に対する強度が向上し、優れた音響信号や信頼性耐性を得ることができる。
【0047】
このような柱6を形成するには、前述の図4Eで犠牲層41を形成した後で、その中心部に穴を開け、その穴の中に柱6とするバックプレート5と同一材料の窒化珪素などを埋め込むことで選択エッチングにより柱6を形成することができる。あるいは、中心部にアコースティックホール5bを開口せず犠牲層41の一部を残すことでも形成することができる。
【0048】
図5においては、振動膜3にエッチングホール3cやバンプ3eは図示されていないが、これらは必須の構成ではなく、本実施形態においても必要に応じて採用される。なお、図5において図1と同じ部分には図1と同じ符号を付しており、その説明は省略する。
【0049】
(まとめ)
(1)本開示のMEMS素子の一実施形態は、開口部を備えた基板と、該基板上に絶縁膜を介して形成されており、周縁部に端部に沿ってスリットが間欠的に形成された振動膜と、上記基板の周縁部に形成されたスペーサーに固定して形成されており、中心部に複数個のアコースティックホールを有するバックプレートとを備え、該バックプレートは上記複数個のアコースティックホールの外周部で、かつ、平面視で上記振動膜の上記スリットの最外周端よりも端部側の位置にエッチングホールを有しており、上記スリットは、上記基板の開口部の形成されていない部分の上に位置するように形成されており、上記振動膜の端部及び上記振動膜の下層の上記絶縁膜は上記スペーサーの下端部から離間しており、かつ、上記振動膜の下層の上記絶縁膜の上記スペーサー側の端部は上記振動膜の上記端部より上記スリット側に配置され、上記振動膜の下層の上記絶縁膜の上記スリット側の端部は上記スリットより上記スペーサー側に配置されている。
【0050】
本実施形態のMEMS素子によれば、振動膜の応力が、他の部材、例えばスペーサーやバックプレートの影響を受けず、さらに振動膜と基板との間に位置する絶縁膜の影響も抑えることができ、安定したマイクロフォンなどのMEMS素子を作製することができる。また、振動膜にスリット構造を備えていることにより、高感度なマイクロフォンを作製することができると共に、振動膜の下に残存させる絶縁膜の最適化を達成しやすい。さらに、スリットを基板の開口部が形成されていない場所に形成することによって、音響抵抗を上げることができ、周波数特性がフラットで、所望の周波数特性が得られるマイクロフォンを実現することができる。
【0051】
(2)上記振動膜は、その中央部に上記振動膜と上記バックプレートとを繋ぐ柱を有する構成とすることにより、アコースティックオーバーロードポイント(AOP)が向上し、優れた音響信号を得ることができる。
【0052】
(3)上記絶縁膜は上記スリットの内周側が除去されることによってリング状に残存しており、平面視で上記スリットの部分における上記絶縁膜の幅は、上記スリット間における上記絶縁膜の幅よりも狭くなっており、上記絶縁膜の内周端に凹凸がある構成とすることにより、振動膜の下層にある絶縁膜の面積を抑えたものとし、絶縁膜による応力の影響をさらに低減することができる。
【0053】
(4)上記振動膜は、上記スリットの内側かつ上記基板側の面にバンプを有する構成とすることにより、エッチング時に振動膜と基板が吸着するスティッキングと呼ばれる現象が発生する可能性を排除することができる。
【0054】
(5)上記スリットが少なくとも2周に設けられ、該2周の内側の周のスリット間にエッチングホールが形成されている構成とすることにより、スリット間にエッチング残りが生じないようにすることができる。
【0055】
(6)本開示のMEMS素子の製造方法の一実施態様は、基板上に絶縁膜を形成する工程と、該絶縁膜上に導電体膜を形成し、周端部のパターニングをすると共に、該導電体膜の周縁部にスリットを形成することによって振動膜を形成する工程と、該振動膜上に犠牲層を形成する工程と、該犠牲層上に固定電極を含むバックプレート膜を形成する工程と、該バックプレート膜に複数個のアコースティックホール及び該複数個のアコースティックホールの外周にエッチングホールを備えたバックプレートを形成する工程と、上記振動膜の中心部の下に位置する上記基板に開口部を形成する工程と、上記基板をエッチング液に浸漬することによって、上記犠牲層の周縁部をスペーサーとして残存させると共に、上記振動膜の上記スリットの最外周側と上記振動膜の端部側から上記絶縁膜の一部を除去し、上記スリットの最外周と上記振動膜の端部との間に上記絶縁膜の一部のみを残すように上記振動膜の下の上記絶縁膜を除去する工程とを備え、上記エッチングホールを平面視で上記振動膜の上記スリットの最外周よりも上記バックプレートの周縁部側に形成し、かつ、上記エッチングホールの位置、上記エッチングホールの大きさ、エッチング時間、及びエッチング液の濃度の少なくとも一つを調整することによって、上記振動膜の下に残存する絶縁膜を、前記振動膜を保持するリング状に残存させることを特徴としている。
【0056】
本実施態様の製造方法によれば、MEMS素子の種類や製造ロットによって製造条件が変わっても、エッチングホールの位置や大きさ、エッチング条件のいずれかを調整することによって、常に最適な量の絶縁膜を残存させることができるので、均一で高感度なMEMSマイクロフォンなどのMEMS素子が得られる。
【0057】
(7)上記絶縁膜のエッチングの調整を、上記振動膜の下に残存する上記絶縁膜の中心部側の形状に突出部を有するように調整することが好ましい。
【符号の説明】
【0058】
100、101 MEMS素子
1 基板
2 絶縁膜
2a 分断溝
2c バンプ形成用の凹部
3 振動膜
3a 外側スリット
3b 内側スリット
3c エッチングホール
3d 振動膜の端部
3e バンプ
31 導電体膜
4 スペーサー
41 犠牲層
5 バックプレート
5a 固定電極
5b アコースティックホール
5c エッチングホール
51 バックプレート膜
6 柱
200 関連技術のMEMS素子(マイクロフォン)
10 基板
20 絶縁膜
30 振動膜
40 スペーサー
50 バックプレート
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図5
図6A
図6B
図7