IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電信電話株式会社の特許一覧 ▶ NTTエレクトロニクス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-DMLドライバ 図1
  • 特許-DMLドライバ 図2
  • 特許-DMLドライバ 図3
  • 特許-DMLドライバ 図4A
  • 特許-DMLドライバ 図4B
  • 特許-DMLドライバ 図4C
  • 特許-DMLドライバ 図5
  • 特許-DMLドライバ 図6
  • 特許-DMLドライバ 図7
  • 特許-DMLドライバ 図8
  • 特許-DMLドライバ 図9
  • 特許-DMLドライバ 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-13
(45)【発行日】2025-02-21
(54)【発明の名称】DMLドライバ
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/042 20060101AFI20250214BHJP
【FI】
H01S5/042 630
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023544928
(86)(22)【出願日】2021-09-03
(86)【国際出願番号】 JP2021032398
(87)【国際公開番号】W WO2023032144
(87)【国際公開日】2023-03-09
【審査請求日】2024-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591230295
【氏名又は名称】NTTイノベーティブデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121669
【弁理士】
【氏名又は名称】本山 泰
(72)【発明者】
【氏名】岸 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】美濃谷 直志
(72)【発明者】
【氏名】豊田 修弘
(72)【発明者】
【氏名】卜部 義和
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/181362(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/074410(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/195886(WO,A1)
【文献】特開2012-109940(JP,A)
【文献】特開2011-222850(JP,A)
【文献】特開2016-158237(JP,A)
【文献】特開2002-333476(JP,A)
【文献】特開平7-302943(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0059385(US,A1)
【文献】中国実用新案第209150484(CN,U)
【文献】米国特許第4945542(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲートまたはベースが第1のバイアス電圧に接続され、ソースまたはエミッタが第1の電源電圧に接続され、ドレインまたはコレクタがレーザダイオードのアノードに接続された第1のトランジスタと、
ドレインまたはコレクタが前記レーザダイオードのアノードに接続され、ソースまたはエミッタが第2の電源電圧に接続された第2のトランジスタと、
一端に変調信号が入力され、他端が前記第2のトランジスタのゲートまたはベースに接続されたインダクタと、
一端が第2のバイアス電圧に接続され、他端が前記インダクタの一端に接続された第1の抵抗とを備えることを特徴とするDMLドライバ。
【請求項2】
請求項1記載のDMLドライバにおいて、
ゲートまたはベースが第3のバイアス電圧に接続され、前記レーザダイオードのアノードと前記第2のトランジスタのドレインまたはコレクタとの間にカスコード接続された第3のトランジスタをさらに備えることを特徴とするDMLドライバ。
【請求項3】
ゲートまたはベースが第1のバイアス電圧に接続され、ソースまたはエミッタが第1の電源電圧に接続され、ドレインまたはコレクタがレーザダイオードのアノードに接続された第1のトランジスタと、
ゲートまたはベースが第2のバイアス電圧に接続され、ソースまたはエミッタが第2の電源電圧に接続された第2のトランジスタと、
前記レーザダイオードのアノードと前記第2のトランジスタのドレインまたはコレクタとの間にカスコード接続された第3のトランジスタと、
一端に変調信号が入力され、他端が前記第3のトランジスタのゲートまたはベースに接続されたインダクタと、
一端が第3のバイアス電圧に接続され、他端が前記インダクタの一端に接続された第1の抵抗とを備えることを特徴とするDMLドライバ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のDMLドライバにおいて、
一端が前記第1の電源電圧に接続された第1のキャパシタと、
一端が前記第1のキャパシタの他端に接続され、他端が前記第1のトランジスタのドレインまたはコレクタに接続された第2の抵抗とをさらに備えることを特徴とするDMLドライバ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のDMLドライバにおいて、
ゲートまたはベースが第4のバイアス電圧に接続され、前記第1のトランジスタのドレインまたはコレクタと前記レーザダイオードのアノードとの間にカスコード接続された第4のトランジスタをさらに備えることを特徴とするDMLドライバ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のDMLドライバにおいて、
前記第2のトランジスタのソースまたはエミッタと前記第2の電源電圧との間に挿入された第3の抵抗をさらに備えることを特徴とするDMLドライバ。
【請求項7】
請求項6記載のDMLドライバにおいて、
前記第3の抵抗と並列に接続された第2のキャパシタをさらに備えることを特徴とするDMLドライバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直接変調レーザ(DML:Directly Modulated Laser)を駆動する技術に係り、特にピーキング機能および光波形に対する整形機能を有するDMLドライバに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、SNS(Social Networking Service)の著しい発達により、世界中の通信のトラフィック量が年々増加している。今後、IoT(Internet of Things)およびクラウドコンピューティング技術の発展により更なるトラフィック量の増加が見込まれており、膨大なトラフィック量を支えるために、データセンタ内外の通信容量の大容量化が求められている。
【0003】
大容量化に伴って、ネットワークの主要な規格要素であるEthernet(登録商標)の標準規格は現在、100GbEの標準化が完了しており、さらなる大容量化を目指した400GbEの標準化が議論されている。400GbEへの適用を目的として、低消費電力化の観点からDMLを用いたドライバが注目されている(非特許文献1参照)。
【0004】
図10は従来のDMLドライバの構成を示す回路図である。DMLドライバは、ゲートがバイアス電圧V2に接続され、ソースが電源電圧V1に接続され、ドレインがレーザダイオード(LD:Laser Diode)1のアノードに接続されたPMOSトランジスタM1pと、ゲートに変調信号Vinが入力され、ソースがグラウンドに接続されたNMOSトランジスタM1nと、ゲートがバイアス電圧V3に接続され、ドレインがPMOSトランジスタM1pのドレインおよびLD1のアノードに接続され、ソースがNMOSトランジスタM1nのドレインに接続されたNMOSトランジスタM2nと、一端がバイアス電圧V4に接続され、他端がNMOSトランジスタM1nのゲートに接続された抵抗Rinとから構成される。
【0005】
NMOSトランジスタM1nとM2nはカスコード接続されており、カスコード接続されることで、NMOSトランジスタM1n単体の時よりも、周波数特性が向上する。また、LD1の動作電圧がNMOSトランジスタ単体の耐圧を超えている場合でも、カスコード接続によって分圧されるので、NMOSトランジスタM1n,M2nの耐圧破壊を防ぐことができる。抵抗Rinはインピーダンスマッチング用の抵抗である。
【0006】
図10に示すように従来のドライバ回路の構成では、ドライバ部にLDの帯域を補償する機能がなかったため、DMLドライバとLDで構成される送信フロントエンドの帯域がLDの帯域に律速されてしまうという課題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】T.Kishi et al.,“A 137-mW,4 ch x 25-Gbps low-power compact transmitter flip-chip-bonded 1.3-μm LD-array-on-Si”,In Proceedings of the Optical Fiber Communication Conference and Exhibition,2018,Paper M2D.2.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、LDの帯域を補償することが可能なDMLドライバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のDMLドライバは、ゲートまたはベースが第1のバイアス電圧に接続され、ソースまたはエミッタが第1の電源電圧に接続され、ドレインまたはコレクタがレーザダイオードのアノードに接続された第1のトランジスタと、ドレインまたはコレクタが前記レーザダイオードのアノードに接続され、ソースまたはエミッタが第2の電源電圧に接続された第2のトランジスタと、一端に変調信号が入力され、他端が前記第2のトランジスタのゲートまたはベースに接続されたインダクタと、一端が第2のバイアス電圧に接続され、他端が前記インダクタの一端に接続された第1の抵抗とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明のDMLドライバの1構成例は、ゲートまたはベースが第3のバイアス電圧に接続され、前記レーザダイオードのアノードと前記第2のトランジスタのドレインまたはコレクタとの間にカスコード接続された第3のトランジスタをさらに備えることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明のDMLドライバは、ゲートまたはベースが第1のバイアス電圧に接続され、ソースまたはエミッタが第1の電源電圧に接続され、ドレインまたはコレクタがレーザダイオードのアノードに接続された第1のトランジスタと、ゲートまたはベースが第2のバイアス電圧に接続され、ソースまたはエミッタが第2の電源電圧に接続された第2のトランジスタと、前記レーザダイオードのアノードと前記第2のトランジスタのドレインまたはコレクタとの間にカスコード接続された第3のトランジスタと、一端に変調信号が入力され、他端が前記第3のトランジスタのゲートまたはベースに接続されたインダクタと、一端が第3のバイアス電圧に接続され、他端が前記インダクタの一端に接続された第1の抵抗とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明のDMLドライバの1構成例は、一端が前記第1の電源電圧に接続された第1のキャパシタと、一端が前記第1のキャパシタの他端に接続され、他端が前記第1のトランジスタのドレインまたはコレクタに接続された第2の抵抗とをさらに備えることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明のDMLドライバの1構成例は、ゲートまたはベースが第4のバイアス電圧に接続され、前記第1のトランジスタのドレインまたはコレクタと前記レーザダイオードのアノードとの間にカスコード接続された第4のトランジスタをさらに備えることを特徴とするものである。
また、本発明のDMLドライバの1構成例は、前記第2のトランジスタのソースまたはエミッタと前記第2の電源電圧との間に挿入された第3の抵抗をさらに備えることを特徴とするものである。
また、本発明のDMLドライバの1構成例は、前記第3の抵抗と並列に接続された第2のキャパシタをさらに備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、インダクタによる周波数ピーキング効果によりLDの帯域を補償することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の第1の実施例に係るDMLドライバの構成を示す回路図である。
図2図2は、本発明の第1の実施例に係るDMLドライバのNMOSトランジスタのゲート-ソース間の抵抗成分および容量成分を示す図である。
図3図3は、従来の構成と本発明の第1の実施例についてDMLドライバとLDのEO応答特性をシミュレーションによって求めた結果を示す図である。
図4A-4C】図4A図4Cは、従来の構成と本実施例についてLDの光出力波形をシミュレーションによって求めた結果を示す図である。
図5図5は、本発明の第2の実施例に係るDMLドライバの構成を示す回路図である。
図6図6は、本発明の第3の実施例に係るDMLドライバの構成を示す回路図である。
図7図7は、本発明の第4の実施例に係るDMLドライバの構成を示す回路図である。
図8図8は、本発明の第5の実施例に係るDMLドライバの構成を示す回路図である。
図9図9は、本発明の第6の実施例に係るDMLドライバの構成を示す回路図である。
図10図10は、従来のDMLドライバの構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[発明の原理]
本発明では、変調信号Vinが入力されるトランジスタ(M1n)のゲートにインダクタを直列に接続することで周波数ピーキング機能が働き、LDの帯域を補償することが可能である。さらに、LDに電流を供給するトランジスタ(M1p)に並列にキャパシタと抵抗の直列接続素子を接続することで、光波形のオーバーシュートおよびアンダーシュートを抑制し、光波形を整形することが可能である。
【0015】
[第1の実施例]
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施例に係るDMLドライバの構成を示す回路図である。本実施例のDMLドライバ10は、ゲートがバイアス電圧V2(第1のバイアス電圧)に接続され、ソースが電源電圧V1(第1の電源電圧)に接続され、ドレインがLD1のアノードに接続されたPMOSトランジスタM1pと、ソースがグラウンド(第2の電源電圧)に接続されたNMOSトランジスタM1nと、ゲートがバイアス電圧V3(第3のバイアス電圧)に接続され、ドレインがPMOSトランジスタM1pのドレインおよびLD1のアノードに接続され、ソースがNMOSトランジスタM1nのドレインに接続されたNMOSトランジスタM2nと、一端に変調信号Vinが入力され、他端がNMOSトランジスタM1nのゲートに接続されたインダクタL1と、一端がバイアス電圧V4(第2のバイアス電圧)に接続され、他端がインダクタL1の一端に接続された抵抗Rinと、一端が電源電圧V1に接続されたキャパシタCfと、一端がキャパシタCfの他端に接続され、他端がPMOSトランジスタM1pのドレインおよびLD1のアノードに接続された抵抗Rfとから構成される。
【0016】
各電圧の大小関係は、V1>V2>V3>V4>GND(グラウンド)となる。本実施例では、図10の回路構成に対して、変調信号VinとNMOSトランジスタM1nのゲート間にインダクタL1を挿入し、PMOSトランジスタM1pに並列にキャパシタCfと抵抗Rfの直列接続素子を接続した。
【0017】
図2にNMOSトランジスタM1nのゲート-ソース間の抵抗成分および容量成分を含む本実施例の回路構成を示す。NMOSトランジスタM1nのゲート-ソース間抵抗をR1、ゲート-ソース間容量をC1、ゲート電圧をVGとすると、|VG/Vin|は下記の式(1)で表すことができる。
【0018】
【数1】
【0019】
式(1)におけるωは角周波数である。1-ω211=0となる時に|VG/Vin|>1を満たせば、周波数ピーキング効果が得られるので、下記の式(2)を満たすようにL1のインダクタンス値を設定する必要がある。
【0020】
【数2】
【0021】
従来の構成と本実施例についてDMLドライバとLD1のEO(Electrical-to-Optical)応答特性をシミュレーションによって求めた結果を図3に示す。図3の100は図10に示した従来の構成のEO応答特性を示し、101は本実施例のEO応答特性を示し、102は本実施例の構成からキャパシタCfと抵抗Rfを除去した状態のEO応答特性を示している。図3から分かるように、インダクタL1を付加した回路構成の結果は、従来の回路構成に比べてEO応答特性の帯域が増加していることが分かる。
【0022】
次に、従来の構成と本実施例についてLD1の光出力波形をシミュレーションによって求めた結果を図4A図4Cに示す。縦軸の振幅のスケールは500μW/div、横軸の時間のスケールは20ps/divである。図4Aは従来の構成を用いた場合の光出力波形を示し、図4Bは本実施例の構成を用いた場合の光出力波形を示し、図4Cは本実施例の構成からキャパシタCfと抵抗Rfを除去した状態の光出力波形を示している。
【0023】
図4A図4B図4Cとを比較すると、本実施例では、インダクタL1を付加したことにより、アイ開口の横軸(時間)方向、縦軸(振幅)方向共に改善されていることが分かる。また、図4B図4Cを比較すると、本実施例では、キャパシタCfと抵抗Rfを付加したことにより、光出力波形のオーバーシュートおよびアンダーシュートが抑制され、アイ開口の横軸方向、縦軸方向共に改善されていることが分かる。
【0024】
図3のEO応答特性で示したように、本実施例の構成からキャパシタCfと抵抗Rfを除去した場合、周波数ピーキングが強く働き過ぎてしまい、キャパシタCfと抵抗Rfを付加した場合に比べて帯域は広がるが、DMLドライバとLD1の群遅延特性が悪化してしまう。図3図4B図4Cの結果から、キャパシタCfと抵抗Rfを付加した方が光出力波形のオーバーシュートおよびアンダーシュートを抑制できることが分かる。
【0025】
以上のように、本実施例では、インダクタL1による周波数ピーキング効果によりLD1の帯域を補償することが可能である。また、本実施例では、キャパシタCfと抵抗Rfの直列接続素子によりLD1の光出力波形のオーバーシュートおよびアンダーシュートを抑制し、光出力波形を整形することが可能である。
【0026】
[第2の実施例]
次に、本発明の第2の実施例について説明する。図5は本発明の第2の実施例に係るDMLドライバの構成を示す回路図である。本実施例のDMLドライバ10aは、第1の実施例のDMLドライバ10からキャパシタCfと抵抗Rfを除去したものである。
【0027】
市販のLDの特性にはバラツキが存在し、帯域が狭いものが存在する。このように帯域が狭いものをLD1として用いる場合には、第1の実施例からキャパシタCfと抵抗Rfを除去して周波数ピーキングを強く働かせた回路構成の方が群遅延特性を悪化させずに、LD1の帯域を補償することができる。したがって、第1の実施例からキャパシタCfと抵抗Rfを除去した本実施例は、LD1の帯域が狭い場合に有効な回路構成となり得る。
【0028】
[第3の実施例]
次に、本発明の第3の実施例について説明する。図6は本発明の第3の実施例に係るDMLドライバの構成を示す回路図である。本実施例のDMLドライバ10bは、PMOSトランジスタM1pと、NMOSトランジスタM1nと、ゲートがバイアス電圧V5-1~V5-x(第4のバイアス電圧)に接続され、PMOSトランジスタM1pのドレインとLD1のアノードとの間にカスコード接続された1乃至複数のPMOSトランジスタM2p-1~M2p-xと、ゲートがバイアス電圧V3-1~V3-y(第3のバイアス電圧)に接続され、LD1のアノードとNMOSトランジスタM1nのドレインとの間にカスコード接続された1乃至複数のNMOSトランジスタM2n-1~M2n-yと、インダクタL1と、抵抗Rinと、キャパシタCfと、抵抗Rfとから構成される。
【0029】
各電圧の大小関係は、V1>V2>V5-1>・・・>V5-x>V3-y>・・・>V3-1>V4>GND(グラウンド)となる。PMOSトランジスタのカスコード接続は、ソースを上段のPMOSトランジスタのドレインに接続し、ドレインを下段のPMOSトランジスタのソースまたはLD1のアノードに接続すればよい。NMOSトランジスタのカスコード接続は、ソースを下段のNMOSトランジスタのドレインに接続し、ドレインを上段のNMOSトランジスタのソースまたはLD1のアノードに接続すればよい。
【0030】
このように、PMOS、NMOSトランジスタともに耐圧破壊を防ぐために多段の回路構成を取ることができる。最先端のノードになると、トランジスタ単体あたりの耐圧が減少するため、効果的である。ここでは、PMOSトランジスタM1pにカスコード接続するPMOSトランジスタM2p-1~M2p-xをx段、NMOSトランジスタM1nにカスコード接続するNMOSトランジスタM2n-1~M2n-yをy段とした。x,yともに1以上とする。
【0031】
[第4の実施例]
次に、本発明の第4の実施例について説明する。図7は本発明の第4の実施例に係るDMLドライバの構成を示す回路図である。本実施例のDMLドライバ10cは、ゲートがバイアス電圧V2に接続され、ソースが電源電圧V1に接続され、ドレインがLD1のアノードに接続されたPMOSトランジスタM1pと、ゲートがバイアス電圧V4に接続され、ソースがグラウンドに接続されたNMOSトランジスタM1nと、ドレインがPMOSトランジスタM1pのドレインおよびLD1のアノードに接続され、ソースがNMOSトランジスタM1nのドレインに接続されたNMOSトランジスタM2nと、一端に変調信号Vinが入力され、他端がNMOSトランジスタM2nのゲートに接続されたインダクタL1と、一端がバイアス電圧V3に接続され、他端がインダクタL1の一端に接続された抵抗Rinと、キャパシタCfと、抵抗Rfとから構成される。
【0032】
第1の実施例では、インダクタL1を介してNMOSトランジスタM1nのゲートに変調信号Vinを入力していた。本実施例では、インダクタL1を介してNMOSトランジスタM2nのゲートに変調信号Vinを入力する。これにより、本実施例では、NMOSトランジスタM1nのゲートに印加するバイアス電圧V4を調節することによって、PMOSトランジスタM1pからNMOSトランジスタM2n,M1n側に流れる電流を調節することができる。
【0033】
なお、本実施例では、NMOSトランジスタM1nにカスコード接続するNMOSトランジスタM2nを1段(y=1)としたが、第3の実施例で説明したとおり複数段のNMOSトランジスタM2n-1~M2n-yを接続してもよい(y≧2)。この場合、複数段のNMOSトランジスタM2n-1~M2n-yのうちいずれか1つのNMOSトランジスタM2n-k(kは1~yのいずれか)のゲートと変調信号Vinとの間にインダクタL1を接続し、NMOSトランジスタM2n-kに印加するためのバイアス電圧V3-kとインダクタL1との間に抵抗Rinを接続すればよい。
【0034】
本実施例において、インダクタL1を接続するNMOSトランジスタM2n,M2n-kのゲート-ソース間抵抗をR1、ゲート-ソース間容量をC1とすれば、上記のとおり式(2)を満たすようにL1のインダクタンス値を設定する必要がある。
【0035】
[第5の実施例]
次に、本発明の第5の実施例について説明する。図8は本発明の第5の実施例に係るDMLドライバの構成を示す回路図である。本実施例のDMLドライバ10dは、第1の実施例のDMLドライバ10に対して、NMOSトランジスタM1nのソースとグラウンドとの間に抵抗Rsを挿入したものである。これにより、本実施例では、変調信号Vinに対してDMLドライバをより線形に動作させることができる。
図8では、第1の実施例に抵抗Rsを適用しているが、第2~第4の実施例に抵抗Rsを適用してもよい。
【0036】
[第6の実施例]
次に、本発明の第6の実施例について説明する。図9は本発明の第6の実施例に係るDMLドライバの構成を示す回路図である。本実施例のDMLドライバ10eは、第5の実施例のDMLドライバ10dに対して、抵抗Rsと並列にキャパシタCsを接続したものである。これにより、本実施例では、第5の実施例に比べて、DMLドライバ10eとLD1で構成される送信フロントエンドの高周波での帯域を改善することができる。
図9では、第1の実施例に抵抗RsとキャパシタCsを適用しているが、第2~第4の実施例に抵抗RsとキャパシタCsを適用してもよい。
【0037】
なお、NMOSトランジスタの耐圧に問題がない場合には、第1~第6の実施例においてNMOSトランジスタM2n,M2n-1~M2n-yを省き、NMOSトランジスタM1nのドレインとLD1のアノードを接続してもよい。この場合は、バイアス電圧V3,V3-1~V3-yが不要となる。
【0038】
また、第3の実施例において、PMOSトランジスタの耐圧に問題がない場合には、PMOSトランジスタM2p-1~M2p-xを省き、第1、第2、第4~第6の実施例と同様に、PMOSトランジスタをM1pのみとしてもよい。この場合は、バイアス電圧V5-1~V5-xが不要となる。
【0039】
第1~第6の実施例では、トランジスタM1p,M2p-1~M2p-x,M1n,M2n-1~M2n-yとしてMOSトランジスタを使用した例を示しているが、トランジスタM1p,M2p-1~M2p-xとしてPNPバイポーラトランジスタを使用し、トランジスタM1n,M2n-1~M2n-yとしてNPNバイポーラトランジスタを使用してもよい。バイポーラトランジスタを使用する場合には、第1~第6の実施例の説明において、ゲートをベースに置き換え、ドレインをコレクタに置き換え、ソースをエミッタに置き換えるようにすればよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、LDの光出力を直接変調する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1…LD、10,10a~10e…DMLドライバ、 M1p,M2p-1~M2p-x…PMOSトランジスタ、M1n,M2n-1~M2n-y…NMOSトランジスタ、L1…インダクタ、Rin,Rf,Rs…抵抗、Cf,Cs…キャパシタ。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10