(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-14
(45)【発行日】2025-02-25
(54)【発明の名称】化合物、重合性組成物及び硬化物
(51)【国際特許分類】
C08G 59/14 20060101AFI20250217BHJP
C08F 299/02 20060101ALI20250217BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20250217BHJP
【FI】
C08G59/14
C08F299/02
C08F290/06
(21)【出願番号】P 2020213588
(22)【出願日】2020-12-23
【審査請求日】2023-12-04
(31)【優先権主張番号】P 2019231661
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川原 友泰
(72)【発明者】
【氏名】後藤 雅治
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 陽輝
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/125949(WO,A1)
【文献】特開2017-125163(JP,A)
【文献】特開2012-241083(JP,A)
【文献】特開2018-189877(JP,A)
【文献】特開2015-069164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00-59/72
C08G 63/00-63/91
C08F 290/00-290/14
C08F 299/00-299/08
G03F 7/004-7/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるエポキシアクリレート化合物に下記一般式(IIa)、(IIb)及び(IIc)で表されるテトラカルボン酸二無水物から選ばれる少なくとも1種が付加した構造を有する化合物。
【化1】
(式中、R
1及びR
10は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、
R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8及びR
9は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基、又はハロゲン原子を表し、
X
1及びX
2は、それぞれ独立に、炭素原子数1~20の2価の炭化水素基を表し、
R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、X
1及びX
2は、炭化水素基中のメチレン基の1つ又は2つ以上が、酸素が隣り合わない条件で、-O-又は-S-で置換された炭素原子数1~20の基であってもよく、
M
1は下記式(a)
又は(b
)で表される基を表す。)
【化2】
(式中、R
21、R
22、R
23、R
24、R
25、R
26、R
27、R
28、R
29、R
30、R
31、R
32、R
33、R
34、R
35
及びR
36
は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基、炭素原子数2~20の複素環含有基又はハロゲン原子を表し、
R
21、R
22、R
23、R
24、R
25、R
26、R
27、R
28、R
29、R
30、R
31、R
32、R
33、R
34、R
35
及びR
36
は、炭化水素基中の水素原子の1つ又は2つ以上が、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、-OR
51、-COOR
51、-CO-R
51又は-SR
51で置換された炭素原子数1~20の基であってもよく、
R
51は、水素原子又は炭素原子数1~20の炭化水素基を表し、化合物中にR
51が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよく、
R
21、R
22、R
23、R
24、R
25、R
26、R
27、R
28、R
29、R
30、R
31、R
32、R
33、R
34、R
35
及びR
36
は、炭化水素基中のメチレン基の1つ又は2つ以上が、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NR
52-、-NR
52CO-又は-S-で置換された炭素原子数1~20の基であってもよく、
R
52は、水素原子又は炭素原子数1~20の炭化水素基を表し、化合物中にR
52が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよく、
R
21とR
22、R
22とR
23、R
23とR
24、R
29とR
30、R
30とR
31
及びR
31と
R
32
は、互いに結合して水素原子及び炭素原子からなる炭素原子数3~10の環を形成していてもよい。
式中の*は、(a)
及び(b
)で表される基が、*部分で、隣接する基と結合することを意味する。)
【化3】
(式中、R
61、R
62、R
63、R
64、R
65、R
66、R
67、R
68、R
69、R
70、R
71、R
72、R
73、R
74、R
75、R
76、R
77、R
78、R
79、R
80、R
81、R
82、R
83及びR
84は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基、炭素原子数2~20の複素環含有基又はハロゲン原子を表し、
R
61、R
62、R
63、R
64、R
65、R
66、R
67、R
68、R
69、R
70、R
71、R
72、R
73、R
74、R
75、R
76、R
77、R
78、R
79、R
80、R
81、R
82、R
83及びR
84は、炭化水素基中の水素原子の1つ又は2つ以上が、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、-OR
91、-COOR
91、-CO-R
91又は-SR
91で置換された炭素原子数1~20の基であってもよく、
R
91は、水素原子又は炭素原子数1~20の炭化水素基を表し、化合物中にR
91が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよく、
R
61、R
62、R
63、R
64、R
65、R
66、R
67、R
68、R
69、R
70、R
71、R
72、R
73、R
74、R
75、R
76、R
77、R
78、R
79、R
80、R
81、R
82、R
83及びR
84は、炭化水素基中のメチレン基の1つ又は2つ以上が、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NR
92-、-NR
92CO-又は-S-で置換された炭素原子数1~20の基であってもよく、
R
92は、水素原子又は炭素原子数1~20の炭化水素基を表し、化合物中にR
92が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよく、
R
61とR
62、R
62とR
63、R
63とR
64、R
65とR
66、R
66とR
67、R
67とR
68、R
69とR
70、R
70とR
71、R
71とR
72、R
74とR
75、R
77とR
78、R
78とR
79、R
79とR
80、R
81とR
82、R
82とR
83及びR
83とR
84は、互いに結合して水素原子及び炭素原子からなる炭素原子数3~10の環を形成していてもよく、
Y
1、Y
2、Y
3、Y
4、Y
5及びY
6は、それぞれ独立に、炭素原子数1~20の炭化水素基を表し、
Y
1とY
2は、直接、又はメチレン基、-O-若しくは-S-を介して互いに結合していてもよく、
L
1及びL
2は、それぞれ独立に、炭素原子数6~20のアリール基を表す。)
【請求項2】
上記式(IIa)におけるY
1及びY
2、上記式(IIb)におけるY
3及びY
4並びに上記式(IIc)におけるY
5及びY
6が、炭素原子数6~20のアリール基である請求項
1に記載の化合物。
【請求項3】
上記一般式(I)で表されるエポキシアクリレート化合物に上記一般式(IIa)で表されるテトラカルボン酸二無水物が付加した構造を有する請求項1
又は2に記載の化合物。
【請求項4】
上記一般式(I)で表されるエポキシアクリレート化合物に上記一般式(IIb)で表されるテトラカルボン酸二無水物が付加した構造を有する請求項1
又は2に記載の化合物。
【請求項5】
上記一般式(I)で表されるエポキシアクリレート化合物に上記一般式(IIc)で表されるテトラカルボン酸二無水物が付加した構造を有する請求項1
又は2に記載の化合物。
【請求項6】
更に、上記一般式(I)で表されるエポキシアクリレート化合物にジカルボン酸一無水物が付加した構造を有する請求項1~
5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか一項に記載の化合物(A)、及び重合開始剤(B)を含有する重合性組成物。
【請求項8】
更に化合物(A)以外の重合性化合物(C)を含有する請求項
7に記載の重合性組成物。
【請求項9】
更に着色剤(D)を含有する請求項
7又は
8に記載の重合性組成物。
【請求項10】
請求項
7~
9のいずれか一項に記載の重合性組成物の硬化物
【請求項11】
請求項
10に記載の硬化物を有する表示装置。
【請求項12】
上記一般式(I)で表されるエポキシアクリレート化合物と、上記一般式(IIa)、(IIb)又は(IIc)で表されるテトラカルボン酸二無水物とを反応させる工程を有する請求項1~
6のいずれか一項に記載の化合物の製造方法。
【請求項13】
請求項
7~
9のいずれか一項に記載の重合性組成物に対して光照射又は加熱する工程を含む硬化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシアクリレート化合物にテトラカルボン酸二無水物が付加した構造を有する化合物、それを含有する重合性組成物、及び該化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルカリ現像性感光性樹脂組成物は、エチレン性不飽和結合を有する化合物を含有するアルカリ現像性樹脂及び光重合開始剤を含有するものである。このアルカリ現像性感光性樹脂組成物は、紫外線又は電子線を照射することによって重合硬化させることができるので、光硬化性インキ、感光性印刷版、プリント配線版、各種フォトレジスト等に用いられている。最近、電子機器の軽薄短小化や高機能化の進展に伴い、微細パターンを精度良く形成することができるアルカリ現像性感光性樹脂組成物が望まれている。
【0003】
特許文献1には、エポキシアクリレートをベースとしたカルボキシル基を有する光重合性不飽和化合物及びこれを用いた感光性樹脂組成物が開示されている。
特許文献2には、ビスフェノール類から誘導される芳香族エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応物を、更にa)飽和ジカルボン酸又はその酸無水物及びb)飽和テトラカルボン酸又はその酸二無水物とを反応させて得られた不飽和基含有化合物を含む感光性樹脂組成物が開示されている。
特許文献3には、置換基を有するベンゾ又はナフトシクロアルカン骨格を有する新規エポキシ化合物に不飽和一塩基酸を付加させたエポキシ付加物と、多塩基酸無水物とのエステル化反応生成物である光重合性不飽和化合物を含有するアルカリ現像性感光性樹脂組成物が開示されている。
特許文献4、5には、ビスフェノールフルオレン骨格を有するカルボキシル基含有樹脂を含有する感光性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平05-339356号公報
【文献】特開2006-003860号公報
【文献】特開2012-241083号公報
【文献】特開2017-090491号公報
【文献】特開2017-090493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、密着性及び耐熱性に優れ、適切なパターン形状や微細パターンが得られる重合性組成物の重合性成分として有用な化合物及び該化合物を用いた重合性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、フルオレン構造又はインダン構造を有するエポキシ化合物にアクリル酸又はメタクリル酸が付加した構造を有するエポキシアクリレート化合物に、フルオレン構造又はインダン構造を有するテトラカルボン酸二無水物が付加した構造を有する化合物が、上記目的を達成し得ることを知見し、本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明は、下記一般式(I)で表されるエポキシアクリレート化合物に下記一般式(IIa)、(IIb)及び(IIc)で表されるテトラカルボン酸二無水物から選ばれる少なくとも1種が付加した構造を有する化合物である。
【0008】
【化1】
(式中、R
1及びR
10は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、
R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8及びR
9は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基、又はハロゲン原子を表し、
X
1及びX
2は、それぞれ独立に、炭素原子数1~20の2価の炭化水素基を表し、
R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、X
1及びX
2は、炭化水素基中のメチレン基の1つ又は2つ以上が、酸素が隣り合わない条件で、-O-又は-S-で置換された炭素原子数1~20の基であってもよく、
M
1は下記式(a)、(b)又は(c)で表される基を表す。)
【0009】
【化2】
(式中、R
21、R
22、R
23、R
24、R
25、R
26、R
27、R
28、R
29、R
30、R
31、R
32、R
33、R
34、R
35、R
36、R
37、R
38、R
39、R
40、R
41、R
42、R
43及びR
44は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基、炭素原子数2~20の複素環含有基又はハロゲン原子を表し、
R
21、R
22、R
23、R
24、R
25、R
26、R
27、R
28、R
29、R
30、R
31、R
32、R
33、R
34、R
35、R
36、R
37、R
38、R
39、R
40、R
41、R
42、R
43及びR
44は、炭化水素基中の水素原子の1つ又は2つ以上が、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、-OR
51、-COOR
51、-CO-R
51又は-SR
51で置換された炭素原子数1~20の基であってもよく、
R
51は、水素原子又は炭素原子数1~20の炭化水素基を表し、化合物中にR
51が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよく、
R
21、R
22、R
23、R
24、R
25、R
26、R
27、R
28、R
29、R
30、R
31、R
32、R
33、R
34、R
35、R
36、R
37、R
38、R
39、R
40、R
41、R
42、R
43及びR
44は、炭化水素基中のメチレン基の1つ又は2つ以上が、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NR
52-、-NR
52CO-又は-S-で置換された炭素原子数1~20の基であってもよく、
R
52は、水素原子又は炭素原子数1~20の炭化水素基を表し、化合物中にR
52が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよく、
R
21とR
22、R
22とR
23、R
23とR
24、R
29とR
30、R
30とR
31、R
31とR
32、R
37とR
38、R
38とR
39、R
39とR
40、R
41とR
42、R
42とR
43及びR
43とR
44は、互いに結合して水素原子及び炭素原子からなる炭素原子数3~10の環を形成していてもよい。
式中の*は、(a)、(b)及び(c)で表される基が、*部分で、隣接する基と結合することを意味する。)
【0010】
【化3】
(式中、R
61、R
62、R
63、R
64、R
65、R
66、R
67、R
68、R
69、R
70、R
71、R
72、R
73、R
74、R
75、R
76、R
77、R
78、R
79、R
80、R
81、R
82、R
83及びR
84は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基、炭素原子数2~20の複素環含有基又はハロゲン原子を表し、
R
61、R
62、R
63、R
64、R
65、R
66、R
67、R
68、R
69、R
70、R
71、R
72、R
73、R
74、R
75、R
76、R
77、R
78、R
79、R
80、R
81、R
82、R
83及びR
84は、炭化水素基中の水素原子の1つ又は2つ以上が、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、-OR
91、-COOR
91、-CO-R
91又は-SR
91で置換された炭素原子数1~20の基であってもよく、
R
91は、水素原子又は炭素原子数1~20の炭化水素基を表し、化合物中にR
91が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよく、
R
61、R
62、R
63、R
64、R
65、R
66、R
67、R
68、R
69、R
70、R
71、R
72、R
73、R
74、R
75、R
76、R
77、R
78、R
79、R
80、R
81、R
82、R
83及びR
84は、炭化水素基中のメチレン基の1つ又は2つ以上が、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NR
92-、-NR
92CO-又は-S-で置換された炭素原子数1~20の基であってもよく、
R
92は、水素原子又は炭素原子数1~20の炭化水素基を表し、化合物中にR
82が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよく、
R
61とR
62、R
62とR
63、R
63とR
64、R
65とR
66、R
66とR
67、R
67とR
68、R
69とR
70、R
70とR
71、R
71とR
72、R
74とR
75、R
77とR
78、R
78とR
79、R
79とR
80、R
81とR
82、R
82とR
83及びR
83とR
84は、互いに結合して水素原子及び炭素原子からなる炭素原子数3~10の環を形成していてもよく、
Y
1、Y
2、Y
3、Y
4、Y
5及びY
6は、それぞれ独立に、炭素原子数1~20の炭化水素基を表し、
Y
1とY
2は、直接、又はメチレン基、-O-若しくは-S-を介して互いに結合していてもよく、
L
1及びL
2は、それぞれ独立に、炭素原子数6~20のアリール基を表す。)
【0011】
また、本発明は、上記化合物(A)及び重合開始剤(B)を含有する重合性組成物である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の化合物を含有する重合性組成物は、感度に優れ、密着性及び耐熱性に優れる硬化物が得られるため、適切なパターン形状や微細パターンの形成が容易である。そのため、特にソルダーレジストやブラックマトリクス用重合性組成物として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の化合物、重合性組成物及び該化合物の製造方法について、好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
本発明の化合物は、上記一般式(I)で表される、フルオレン構造又はインダン構造を有するエポキシ化合物にアクリル酸又はメタクリル酸化合物が付加した構造を有するエポキシアクリレート化合物(以下、「化合物(I)」という。)に、更に上記一般式(IIa)、(IIb)及び(IIc)で表される、フルオレン構造又はインダン構造を有するテトラカルボン酸二無水物(以下、「化合物(IIa)」、「化合物(IIb)」及び「化合物(IIc)」という。)から選ばれる少なくとも1種が付加した構造を有する化合物である。
【0014】
上記一般式(I)中、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9(以下、「R2等」という。)で表される炭素原子数1~20の炭化水素基は、炭素原子及び水素原子からなる炭素原子数1~20の基であればよく、特に限定されるものではないが、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数2~20のアルケニル基、炭素原子数3~20のシクロアルキル基、炭素原子数4~20のシクロアルキルアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基又は炭素原子数7~20のアリールアルキル基であることが、本発明の重合性組成物の感度が優れることから好ましく、原子数1~10のアルキル基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、炭素原子数4~10のシクロアルキルアルキル基、炭素原子数6~10のアリール基又は炭素原子数7~10のアリールアルキル基であることが特に好ましい。
【0015】
上記炭素原子数1~20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、t-アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、t-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、t-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ドデシル基、n-オクタデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等の直鎖、分岐及び環状のアルキル基等が挙げられる。
【0016】
上記炭素原子数2~20のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、2-プロペニル基、3-ブテニル基、2-ブテニル基、4-ペンテニル基、3-ペンテニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、2-ヘプテニル基、3-ヘプテニル基、4-ヘプテニル基、3-オクテニル基、3-ノネニル基、4-デセニル基、3-ウンデセニル基、4-ドデセニル基、3-シクロヘキセニル基、2,5-シクロヘキサジエニル-1-メチル基、及び4,8,12-テトラデカトリエニルアリル基等の直鎖及び環状のアルケニル基等が挙げられる。
【0017】
上記炭素原子数3~20のシクロアルキル基とは、3~20の炭素原子を有する、飽和単環式又は飽和多環式アルキル基を意味する。例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、アダマンチル基、デカハイドロナフチル基、オクタヒドロペンタレン基、ビシクロ[1.1.1]ペンタニル基及びテトラデカヒドロアントラセニル基等が挙げられる。
【0018】
上記炭素原子数4~20のシクロアルキルアルキル基とは、アルキル基の水素原子が、シクロアルキル基で置換された4~20の炭素原子を有する基を意味する。例えば、シクロプロピルメチル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘプチルメチル基、シクロオクチルメチル基、シクロノニルメチル基、シクロデシルメチル基、2-シクロブチルエチル基、2-シクロペンチルエチル基、2-シクロヘキシルエチル基、2-シクロヘプチルエチル基、2-シクロオクチルエチル基、2-シクロノニルエチル基、2-シクロデシルエチル基、3-シクロブチルプロピル基、3-シクロペンチルプロピル基、3-シクロヘキシルプロピル基、3-シクロヘプチルプロピル基、3-シクロオクチルプロピル基、3-シクロノニルプロピル基、3-シクロデシルプロピル基、4-シクロブチルブチル基、4-シクロペンチルブチル基、4-シクロヘキシルブチル基、4-シクロヘプチルブチル基、4-シクロオクチルブチル基、4-シクロノニルブチル基、4-シクロデシルブチル基、3-3-アダマンチルプロピル基及びデカハイドロナフチルプロピル基等が挙げられる。
【0019】
上記炭素原子数6~20のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナントレニル基等、及びこれらの基が上記アルキル基、上記アルケニル基、カルボキシル基又はハロゲン原子等で1つ以上置換された基、例えば、4-クロロフェニル、4-カルボキシルフェニル、4-ビニルフェニル、4-メチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル等が挙げられる。
【0020】
上記炭素原子数7~20のアリールアルキル基とは、アルキル基の水素原子がアリール基で置き換えられた、7~20個の炭素原子を有する基を意味する。例えば、ベンジル、α-メチルベンジル、α、α-ジメチルベンジル、フェニルエチル及びナフチルプロピル等が挙げられる。上記炭素原子数7~10のアリールアルキル基としては、アルキル基の水素原子がアリール基で置き換えられた、7~10個の炭素原子を有する基を意味し、例えば、ベンジル、α-メチルベンジル、α、α-ジメチルベンジル及びフェニルエチル等が挙げられる。
【0021】
上記一般式(I)中、R2等で表される、炭化水素基中のメチレン基が、酸素原子が隣り合わない条件で、-O-又は-S-で置換された炭素原子数1~20の基としては、上記R2等で表される炭素原子数1~20の炭化水素基として例示した基中のメチレン基が、酸素原子が隣り合わない条件で、-O-又は-S-で置換された基が挙げられる。
【0022】
上記一般式(I)中、R2等で表される、炭素原子数1~20の炭化水素基中のメチレン基が、酸素原子が隣り合わない条件で-O-で置換された基としては、例えば、メトキシ基、メトキシエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、t-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、t-ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基等が挙げられる。
【0023】
上記一般式(I)中、R2等で表される、炭素原子数1~20の炭化水素基中のメチレン基が、-S-で置換された基としては、例えば、上記炭化水素基中のメチレン基が、酸素原子が隣り合わない条件で-O-で置換された基における酸素原子を硫黄原子に置き換えた基等が挙げられる。
【0024】
上記一般式(I)中、R2等で表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0025】
上記一般式(I)中、X1及びX2で表される炭素原子数1~20の2価の炭化水素基としては、上記R2等で表される炭素原子数1~20の炭化水素基として例示した基から水素原子を1つ除いた2価の基が挙げられる。
【0026】
上記一般式(I)中、X1及びX2で表される、炭化水素基中のメチレン基が、酸素原子が隣り合わない条件で、-O-又は-S-で置換された炭素原子数1~20の基としては、上記X1及びX2で表される炭素原子数1~20の炭化水素基として例示した基中のメチレン基が、酸素原子が隣り合わない条件で、-O-又は-S-で置換された基が挙げられ、例えば、上記「R2等で表される、炭素原子数1~20の炭化水素基中のメチレン基が、酸素原子が隣り合わない条件で-O-で置換された基」及び上記「R2等で表される、炭素原子数1~20の炭化水素基中のメチレン基が、-S-で置換された基」として例示した基から水素原子を1つ除いた2価の基が挙げられる。
【0027】
上記一般式(I)中のR2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9が、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~10の炭化水素基である化合物は、安定性に優れ、該化合物を含有する重合性組成物の感度が優れ、製造が容易であることから好ましい。特に、上記一般式(I)中のR2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9が水素原子又はメチル基である化合物が好ましい。
【0028】
また、上記一般式(I)中のX1及びX2がメチレン基である化合物は、安定性に優れ、製造が容易であることから好ましい。
【0029】
上記式(a)、(b)及び(c)中、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、R30、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38、R39、R40、R41、R42、R43及びR44(以下、「R21等」という。)で表される、炭素原子数1~20の炭化水素基及びハロゲン原子は、上記R2等で表される炭素原子数1~20の炭化水素基及びハロゲン原子と同じである。
【0030】
上記式(a)、(b)及び(c)中、R21等で表される炭素原子数2~20の複素環含有基としては、特に限定されるものではないが、例えば、ピロリル、ピリジル、ピリジルエチル、ピリミジル、ピリダジル、ピペラジル、ピペリジル、ピラニル、ピラニルエチル、ピラゾリル、トリアジル、トリアジルメチル、ピロリジル、キノリル、イソキノリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、トリアゾリル、フリル、フラニル、ベンゾフラニル、チエニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、チアジアゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、オキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、インドリル、モルフォリニル、チオモルフォリニル、2-ピロリジノン-1-イル、2-ピペリドン-1-イル、2,4-ジオキシイミダゾリジン-3-イル及び2,4-ジオキシオキサゾリジン-3-イル等が挙げられ、置換基等を含めて具体的に記載すると下記の構造を有する基等が挙げられる。
【0031】
【化4】
(上記式中、Rはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表し、Zは直接結合又は炭素原子数1~6のアルキレン基を表す。式中の*は、これらの式で表される基が、*部分で、隣接する基と結合することを意味する。)
【0032】
上記炭素原子数2~20の複素環含有基は、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、-OR’、-COOR’、-CO-R’又は-SR’等の置換基を有していてもよく、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NR”-、-NR”CO-又は-S-等の結合を有していてもよい。
ここで、R’1及びR”は、水素原子又は炭素原子数1~20の炭化水素基を表し、化合物中にR51及びR52が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。上記炭素原子数1~20の炭化水素基は、上記R2等で表される炭素原子数1~20の炭化水素基と同じである。
【0033】
上記式(a)、(b)及び(c)中、R21等で表される、炭化水素基中の水素原子の1つ又は2つ以上が、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、-OR51、-COOR51、-CO-R51又は-SR51で置換された炭素原子数1~20の基としては、上記R2等で表される炭素原子数1~20の炭化水素基として例示した基中の水素原子の1つ又は2つ以上が、上記基で置換された基が挙げられる。
ここで、R51は、水素原子又は炭素原子数1~20の炭化水素基を表し、化合物中にR51が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。上記炭素原子数1~20の炭化水素基は、上記R2等で表される炭素原子数1~20の炭化水素基と同じである。
上記置換基を有する基における炭素原子数は、基全体の炭素原子数を規定するものである。
【0034】
上記式(a)、(b)及び(c)中、R21等で表される、炭化水素基中のメチレン基の1つ又は2つ以上が、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NR52-、-NR52CO-又は-S-で置換された炭素原子数1~20の基としては、上記R2等で表される炭素原子数1~20の炭化水素基として例示した基中のメチレン基の1つ又は2つ以上が、上記基で置換された基が挙げられる。
ここで、R52は、水素原子又は炭素原子数1~20の炭化水素基を表し、化合物中にR52が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。上記炭素原子数1~20の炭化水素基は、上記R2等で表される炭素原子数1~20の炭化水素基と同じである。
上記炭化水素基中のメチレン基が置換された基における炭素原子数は、基全体の炭素原子数を規定するものである。
【0035】
上記式(a)、(b)及び(c)中、R21とR22、R22とR23、R23とR24、R29とR30、R30とR31、R31とR32、R37とR38、R38とR39、R39とR40、R41とR42、R42とR43及びR43とR44(以下、「R21とR22等」という。)が、互いに結合して形成する水素原子及び炭素原子からなる炭素原子数3~10の環としては、例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロペンテン環、ベンゼン環、ピペリジン環、モルホリン環、ラクトン環、ラクタム環等の5~7員環の脂肪族環、芳香族環及び複素環、並びにナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、アセナフテン環、インダン環、テトラリン環等の縮合環が挙げられる。
【0036】
上記一般式(I)中のM1が式(a)又は式(b)で表される基である化合物は、密着性及び耐熱性に優れる硬化物が得られることから好ましく、式(a)で表される基である化合物は、安定性に優れ、製造が容易であるため、より好ましい。特に、式(a)中のR21~R24が水素原子である化合物が好ましい。
【0037】
また、式(a)中のR25又はR26が炭素原子数6~20のアリール基である化合物は、耐熱性に優れる硬化物が得られるため好ましい。式(a)中のR25又はR26がフェニル基である化合物は、上記効果に加えて、安定性に優れ、製造が容易であることから特に好ましい。
【0038】
すなわち、上記一般式(I)中のM1が式(a)であり、式(a)中のR21~R24が水素原子であり、R25又はR26が炭素原子数6~20のアリール基である化合物が好ましい。特に、上記一般式(I)中のM1が式(a)であり、式(a)中のR21~R24が水素原子であり、R25又はR26がフェニル基である化合物が、密着性及び耐熱性に優れる硬化物が得られることから好ましい。
【0039】
上記一般式(I)中のM1が式(c)で表される基である化合物は、密着性及び耐熱性に優れる硬化物が得られることから好ましい。式(c)中のR37~R44が水素原子である化合物は、安定性に優れ、製造が容易であることから特に好ましい。
【0040】
上記化合物(I)としては、例えば、下記の化合物(I-1)~(I-53)が挙げられるが、これらの化合物に限定されるものではない。
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
本発明においては、上記化合物(I-1)及び(I-44)が、安定性に優れ、製造が容易であり、耐熱性に優れる硬化物が得られることから特に好ましい。
【0047】
上記一般式(IIa)、(IIb)及び(IIc)中、R61、R62、R63、R64、R65、R66、R67、R68、R69、R70、R71、R72、R73、R74、R75、R76、R77、R78、R79、R80、R81、R82、R83及びR84(以下、「R61等」という。)で表される炭素原子数1~20の炭化水素基、炭素原子数2~20の複素環含有基及びハロゲン原子は、上記R21等で表される炭素原子数1~20の炭化水素基、炭素原子数2~20の複素環含有基及びハロゲン原子と同じである。
【0048】
上記一般式(IIa)、(IIb)及び(IIc)中、炭化水素基中の水素原子の1つ又は2つ以上が、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、-OR91、-COOR91、-CO-R91又は-SR91で置換された炭素原子数1~20の基としては、上記R2等で表される炭素原子数1~20の炭化水素基として例示した基中の水素原子の1つ又は2つ以上が、上記基で置換された基が挙げられる。
ここで、R91は、水素原子又は炭素原子数1~20の炭化水素基を表し、化合物中にR91が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。上記炭素原子数1~20の炭化水素基は、上記R2等で表される炭素原子数1~20の炭化水素基と同じである。
【0049】
上記一般式(IIa)、(IIb)及び(IIc)中、炭化水素基中のメチレン基の1つ又は2つ以上が、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NR92-、-NR92CO-又は-S-で置換された炭素原子数1~20の基としては、上記R2等で表される炭素原子数1~20の炭化水素基として例示した基中のメチレン基の1つ又は2つ以上が、上記基で置換された基が挙げられる。
ここで、R92は、水素原子又は炭素原子数1~20の炭化水素基を表し、化合物中にR92が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。上記炭素原子数1~20の炭化水素基は、上記R2等で表される炭素原子数1~20の炭化水素基と同じである。
【0050】
上記一般式(IIa)、(IIb)及び(IIc)中、R61とR62、R62とR63、R63とR64、R65とR66、R66とR67、R67とR68、R69とR70、R70とR71、R71とR72、R74とR75、R77とR78、R78とR79、R79とR80、R81とR82、R82とR83及びR83とR84が、互いに結合して形成する水素原子及び炭素原子からなる炭素原子数3~10の環としては、上記R21とR22等が、互いに結合して形成する水素原子及び炭素原子からなる炭素原子数3~10の環と同様の環が挙げられる。
【0051】
上記一般式(IIa)、(IIb)及び(IIc)中、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5及びY6で表される炭素原子数1~20の炭化水素基としては、上記R2等で表される炭素原子数1~20の炭化水素基として例示した基から水素原子を2つ除いた基が挙げられる。
【0052】
上記一般式(IIc)中、L1及びL2で表される炭素原子数6~20のアリール基としては、上記R2等で表される炭素原子数6~20のアリール基として例示した基から水素原子を1つ除いた基が挙げられる。
【0053】
上記一般式(IIa)中のR61~R68が水素原子である化合物、上記一般式(IIb)中のR69~R72が水素原子である化合物、及び上記一般式(IIc)中のR77~R84が水素原子である化合物は、安定性に優れ、製造が容易であるため好ましい。
【0054】
上記一般式(IIb)中のR73及びR74の何れか又は両方が炭素原子数6~20のアリール基である化合物は、耐熱性に優れる硬化物が得られるため好ましい。R73又はR74がフェニル基である化合物は、安定性に優れ、製造が容易であることから特に好ましい。
【0055】
上記一般式(IIa)中のY1及びY2、上記一般式(IIb)中のY3及びY4、並びに上記一般式(IIc)中のY5及びY6が炭素原子数6~20のアリール基である化合物は、耐熱性に優れる硬化物が得られるため好ましく、Y1及びY2、Y3及びY4、並びにY5及びY6がベンゼン環である化合物がより好ましく、無置換のベンゼン環である化合物が、安定性に優れ、製造が容易であることから特に好ましい。
【0056】
上記一般式(IIa)中のY1とY2が、直接、又はメチレン基、-O-若しくは-S-を介して互いに結合している化合物は、耐熱性に優れる硬化物が得られるため好ましく、Y1とY2が、-O-を介して互いに結合している化合物が、安定性に優れ、製造が容易であることからより好ましい。
【0057】
上記一般式(IIc)中のL1及びL2が、フェニレン基である化合物は、安定性に優れ、製造が容易であり、耐熱性に優れる硬化物が得られるため好ましい。
【0058】
上記化合物(IIa)としては、例えば、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)1,2-ベンゾフルオレン二無水物、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)2,3-ベンゾフルオレン二無水物、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)3,4-ベンゾフルオレン二無水物、及びスピロ[11H-ジフロ[3,4-b:3’,4’-i]キサンテン-11,9’-[9H]フルオレン]-1,3,7,9-テトロン等が挙げられる。
【0059】
本発明においては、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物及びスピロ[11H-ジフロ[3,4-b:3’,4’-i]キサンテン-11,9’-[9H]フルオレン]-1,3,7,9-テトロンが、安定性に優れ、製造が容易であり、耐熱性に優れる硬化物が得られることから特に好ましい。
【0060】
上記化合物(IIb)としては、例えば、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)インダン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-3-フェニルインダン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-3,3’―ジフェニルインダン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-3,3’―ジメチルインダン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-3,3’―メチルフェニルインダン二無水物等が挙げられる。
【0061】
本発明においては、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-3-フェニルインダン二無水物が、安定性に優れ、製造が容易であり、耐熱性に優れる硬化物が得られることから特に好ましい。
【0062】
上記化合物(IIc)としては、9,9-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン二無水物、9,9-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]1,2-ベンゾフルオレン二無水物、9,9-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]2,3-ベンゾフルオレン二無水物、及び9,9-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]3,4-ベンゾフルオレン二無水物等が挙げられる。
【0063】
本発明においては、9,9-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン二無水物が、安定性に優れ、製造が容易であり、耐熱性に優れる硬化物が得られることから特に好ましい。
【0064】
本発明の化合物は、上記化合物(I)に上記化合物(IIa)、上記化合物(IIb)及び上記化合物(IIc)から選ばれる少なくとも1種が付加した構造を有する化合物であり、このような構造であることで、密着性及び耐熱性に優れる硬化物が得られる。
【0065】
上記化合物(I)は、公知の製造方法、例えば、国際公開第2008/139924号に記載の製造方法で製造することができる。具体的には、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルインダン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンなどのビスフェノール化合物にエピクロロヒドリンを反応させて得られるエポキシ化合物に、アクリル酸又はメタクリル酸を付加させることにより製造することができる。
【0066】
本発明の化合物は、上記化合物(I)に上記化合物(IIa)、上記化合物(IIb)又は上記化合物(IIc)を付加させる反応を行うことによって製造できる。反応は公知の方法で行えばよく、例えば、特開2007-183495号公報に記載の方法で行うことができる。具体的は、上記化合物(I)と、上記化合物(IIa)、上記化合物(IIb)又は上記化合物(IIc)とを、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの溶媒中で加熱して反応させることにより製造することができる。
上記反応は、上記化合物(I)中の水酸基と、上記化合物(IIa)、上記化合物(IIb)又は上記化合物(IIc)中の酸無水物基によるエステル結合の生成反応が主体であると考えられるが、その他の反応形態を含んでいてもよく、上記化合物(I)に上記化合物(IIa)、上記化合物(IIb)及び上記化合物(IIc)から選ばれる少なくとも1種が付加した構造を有する化合物とは、反応生成物の総称を意味する。
【0067】
本発明においては、上記化合物(I)1モルに対して、上記化合物(IIa)、上記化合物(IIb)及び上記化合物(IIc)が合計で0.1~1.0モル付加した構造であることが、密着性及び耐熱性に優れる硬化物が得られることから好ましく、0.3~0.8モル付加した構造であることが特に好ましい。換言すれば、上記化合物(I)中の水酸基1モルに対して、上記化合物(IIa)、上記化合物(IIb)及び上記化合物(IIc)が合計で0.05~0.5モル付加した構造であることが、密着性及び耐熱性に優れる硬化物が得られることから好ましく、0.15~0.4モル付加した構造であることが特に好ましい。
【0068】
本発明の化合物は、更に、上記化合物(I)にジカルボン酸一無水物が付加した構造を有していてもよい。このような化合物は、酸価を調整することによって、所望のアルカリ現像性を有する化合物とすることができるため好ましい。
【0069】
上記ジカルボン酸一無水物とは、2つのカルボキシル基が脱水縮合した構造を分子内に1つ有する化合物を意味し、上記化合物(I)にジカルボン酸一無水物が付加した構造を有する本発明の化合物は、耐熱性とアルカリ現像性に優れることから、モル比率で、ジカルボン酸一無水物1に対して上記化合物(IIa)、上記化合物(IIb)及び上記化合物(IIc)の合計が1~3となる量を付加させたものであることが好ましく、ジカルボン酸一無水物1に対して上記化合物(IIa)、上記化合物(IIb)及び上記化合物(IIc)の合計が1.5~2.5となる量を付加させたものであることが特に好ましい。
【0070】
上記ジカルボン酸一無水物としては、例えば、コハク酸無水物、マレイン酸無水物、トリメリット酸無水物、フタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物、ナジック酸無水物、メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、トリアルキルテトラヒドロフタル酸無水物-マレイン酸無水物付加物、ドデセニルコハク酸無水物、メチルハイミック酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物等が挙げられる。
本発明においては、アルカリ現像性に優れることから、コハク酸無水物、1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物及びヘキサヒドロフタル酸無水物から選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましい。
【0071】
上記ジカルボン酸一無水物を上記化合物(I)に付加させる反応は、上述の、上記化合物(I)に上記化合物(IIa)、上記化合物(IIb)又は上記化合物(IIc)を付加させる反応と同様にして行うことができる。また、上記化合物(I)に上記化合物(I)に上記化合物(IIa)、上記化合物(IIb)又は上記化合物(IIc)を付加させる反応と、上記化合物(I)に上記ジカルボン酸一無水物を付加させる反応を同時に行ってもよい。
【0072】
本発明の化合物の酸価は、70~150mg・KOH/gの範囲であることが、得られる重合性組成物のアルカリ現像性に優れることから好ましく、80~110mg・KOH/gの範囲であることが特に好ましい。
【0073】
本発明の化合物の重量平均分子量Mwは、2,000~15,000の範囲であることが、耐熱性に優れた硬化物が得られるため好ましく、3,000~10,000の範囲であることが特に好ましい。
【0074】
本発明の化合物の分子量分布(Mw/Mn)は、1.0~3.0の範囲であることが、解像度が高くなるため好ましく、1.5~2.5の範囲が特に好ましい。
【0075】
上記重量平均分子量及び分子量分布は、例えば、日本分光(株)製のGPC装置(LC-2000plusシリーズ)を用いて重合体のGPC測定を行い、ポリスチレンスタンダード(例えば、東ソー(株)社製 TSKgel標準ポリスチレン)により作成した校正曲線から算出することができる。例えば、下記の条件で好適に測定できる。
溶媒:THF
溶媒の流速:1.0 ml/min
カラム:KF-803、KF-802(有機溶媒系GPC用カラム、標準分析用、Shodex社)
カラム温度:40℃
【0076】
本発明の化合物のアクリル基当量は、300~700g/eqの範囲内である場合、該化合物を含有する重合性組成物の感度が優れることから好ましく、400~600であることが特に好ましい。
【0077】
本発明の重合性組成物は、上記化合物(I)に上記化合物(IIa)、上記化合物(IIb)及び上記化合物(IIc)から選ばれる少なくとも1種が付加した構造を有する化合物(A)及び重合開始剤(B)を含有するものである。
【0078】
上記化合物(A)の含有量は、密着性及び耐熱性に優れる硬化物が得られることから、上記重合性組成物の固形分100質量部に対して10~70質量部であることが好ましく、30~60質量部であることがより好ましい。
上記重合性組成物の固形分とは、重合性組成物から後述する溶剤を除いた成分の総量である。
【0079】
上記化合物(A)はエチレン性不飽和結合を有する重合性の化合物であるため、上記重合開始剤(B)は、エチレン性不飽和結合を有する化合物の重合に用いられるラジカル開始剤であればよく、従来既知の化合物を用いることが可能である。具体的には、例えば、過酸化ベンゾイル、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾフェノン、フェニルビフェニルケトン、1-ヒドロキシ-1-ベンゾイルシクロヘキサン、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、1-ベンジル-1-ジメチルアミノ-1-(4’-モルホリノベンゾイル)プロパン、2-モルホリル-2-(4’-メチルメルカプト)ベンゾイルプロパン、チオキサントン、1-クロル-4-プロポキシチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、エチルアントラキノン、4-ベンゾイル-4'-メチルジフェニルスルフィド、ベンゾインブチルエーテル、2-ヒドロキシ-2-ベンゾイルプロパン、2-ヒドロキシ-2-(4’-イソプロピル)ベンゾイルプロパン、4-ブチルベンゾイルトリクロロメタン、4-フェノキシベンゾイルジクロロメタン、ベンゾイル蟻酸メチル、1,7-ビス(9’-アクリジニル)ヘプタン、9-n-ブチル-3,6-ビス(2’-モルホリノイソブチロイル)カルバゾール、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、p-メトキシフェニル-2,4-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-ナフチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-ブトキシスチリル)-s-トリアジン、2-(p-ブトキシスチリル)-5-トリクロロメチル-1,3,4-オキサジアゾール、9-フェニルアクリジン、9,10-ジメチルベンズフェナジン、ベンゾフェノン/ミヒラーズケトン、ヘキサアリールビイミダゾール/メルカプトベンズイミダゾール、チオキサントン/アミン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド、並びに特開2000-80068号公報、特開2001-233842号公報、特開2005-97141号公報、特表2006-516246号公報、特許第3860170号公報、特許第3798008号公報、WO2006/018973号公報に記載の化合物等が挙げられる。
【0080】
上記重合性組成物は、更に上記化合物(A)以外の重合性化合物(C)を含有していてもよい。上記重合性化合物としては、例えば、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸-N-オクチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ターシャリーブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート等が挙げられる。
【0081】
上記重合性化合物(C)の含有量は、上記重合性組成物の感度を高め、耐薬品性に優れる硬化物が得られることから、上記化合物(A)100質量部に対して5~80質量部であることが好ましく、10~70質量部であることがより好ましい。
【0082】
上記重合開始剤(B)の含有量は、上記化合物(A)と上記重合性化合物(C)との合計100質量部に対して0.1~10質量部であることが、本発明の重合性組成物の感度が優れることから好ましく、1~5質量部であることがより好ましい。
【0083】
上記重合性組成物は、更に着色剤(D)を含有していてもよい。着色剤(D)としては、顔料や染料が挙げられる。顔料及び染料としては、それぞれ、無機色材又は有機色材を用いることができる。これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。ここで、顔料とは、一般的な溶剤に不溶の着色剤を意味し、無機又は有機色材の中でも溶剤に不溶であるもの、及び無機又は有機染料をレーキ化したものも含まれる。
【0084】
上記顔料としては、ファーネス法、チャンネル法又はサーマル法によって得られるカーボンブラック、或いはアセチレンブラック、ケッチェンブラック又はランプブラック等のカーボンブラック、上記カーボンブラックをエポキシ樹脂で調整又は被覆したもの、上記カーボンブラックを予め溶剤中で樹脂に分散処理し、20~200mg/gの樹脂で被覆したもの、上記カーボンブラックを酸性又はアルカリ性表面処理したもの、平均粒径が8nm以上でDBP吸油量が90ml/100g以下のカーボンブラック、950℃における揮発分中のCO及びCO2から算出した全酸素量が、表面積100m2当たり9mg以上であるカーボンブラック、黒鉛化カーボンブラック、黒鉛、活性炭、炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンマイクロコイル、カーボンナノホーン、カーボンエアロゲル、フラーレン、アニリンブラック、ピグメントブラック7、チタンブラック、ラクタムブラック及びペリレンブラック等に代表される黒色顔料、酸化クロム緑、ミロリブルー、コバルト緑、コバルト青、マンガン系、フェロシアン化物、リン酸塩群青、紺青、ウルトラマリン、セルリアンブルー、ピリジアン、エメラルドグリーン、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、合成鉄黒、アンバー、レーキ顔料等の有機又は無機顔料が挙げられる。
上記顔料の中でも、遮光性が高いことから黒色顔料を用いることが好ましい。
【0085】
上記顔料としては、市販品を用いることもでき、例えば、ピグメントレッド1、2、3、9、10、14、17、22、23、31、38、41、48、49、88、90、97、112、119、122、123、144、149、166、168、169、170、171、177、179、180、184、185、192、200、202、209、215、216、217、220、223、224、226、227、254、228、240及び254;ピグメントオレンジ13、31、34、36、38、43、46、48、49、51、52、55、59、60、61、62、64、65及び71;ピグメントイエロー1、3、12、13、14、16、17、20、24、55、60、73、81、83、86、93、95、97、98、100、109、110、113、114、117、120、125、126、127、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、166、168、175、180及び185;ピグメントグリ-ン7、10、36及び58;ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:5、15:6、22、24、56、60、61、62及び64;ピグメントバイオレット1、19、23、27、29、30、32、37、40及び50等が挙げられる。
【0086】
上記染料としては、例えば、ニトロソ化合物、ニトロ化合物、アゾ化合物、ジアゾ化合物、キサンテン化合物、キノリン化合物、アントラキノン化合物、クマリン化合物、シアニン化合物、フタロシアニン化合物、イソインドリノン化合物、イソインドリン化合物、キナクリドン化合物、アンタンスロン化合物、ペリノン化合物、ペリレン化合物、ジケトピロロピロール化合物、チオインジゴ化合物、ジオキサジン化合物、トリフェニルメタン化合物、キノフタロン化合物、ナフタレンテトラカルボン酸、アゾ染料、シアニン染料の金属錯体化合物等が挙げられる。
【0087】
本発明の重合性組成物において、上記着色剤(D)の含有量は、特に限定されるものではないが、上記化合物(A)100質量部に対して、好ましくは10~500質量部、より好ましくは10~300質量部、更に好ましくは10~200質量部である。着色剤(D)の含有量が上記の範囲内である場合、重合性組成物が着色剤の凝集を伴わない保存安定性に優れたものとなり、重合性組成物の硬化物の遮光性が高くなることから好ましい。
例えば厚さ1~3μmの硬化物を形成する場合には、上記着色剤(D)の含有量は、特に限定されるものではないが、上記化合物(A)100質量部に対して、好ましくは、10~500質量部、より好ましくは10~300質量部、更に好ましくは10~200質量部である。
【0088】
本発明の重合性組成物には、更に溶剤を加えることができる。該溶剤とは、1気圧25℃において液状であり、化合物(A)、重合開始剤(B)重合性化合物(C)及び着色剤(D)に分類されない成分である。上記溶剤としては、通常、必要に応じて上記の各成分(化合物(A)、重合開始剤(B)重合性化合物(C)及び着色剤(D)等)を溶解又は分散し得る溶剤を用いることができる。例えば、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、ジエチルケトン、アセトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン及び2-ヘプタノン等のケトン系溶剤;エチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン及びジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、3-メトキシブチルアセテート、酢酸シクロヘキシル、乳酸エチル、コハク酸ジメチル及びテキサノール等のエステル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル及びエチレングリコールモノエチルエーテル等のセロソルブ系溶剤;メタノール、エタノール、イソ-又はn-プロパノール、イソ-又はn-ブタノール及びアミルアルコール等のアルコール系溶剤;エチレングリコールモノメチルアセテート、エチレングリコールモノエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート及びエトキシエチルプロピオネート等のエーテルエステル系溶剤;ベンゼン、トルエン及びキシレン等のBTX系溶剤;ヘキサン、ヘプタン、オクタン及びシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;テレピン油、D-リモネン及びピネン等のテルペン系炭化水素油;ミネラルスピリット、スワゾール#310(以上、コスモ松山石油製);及びソルベッソ#100(以上、エクソン化学製);等のパラフィン系溶剤;四塩化炭素、クロロホルム、トリクロロエチレン、塩化メチレン及び1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素系溶剤;クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素系溶剤;カルビトール系溶剤、アニリン、トリエチルアミン、ピリジン、酢酸、アセトニトリル、二硫化炭素、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド及び水等が挙げられ、これらの溶剤は1種又は2種以上の混合溶剤として使用することができる。
【0089】
これらの中でもケトン系溶剤、エステル系溶剤及びエーテルエステル系溶剤等、特にシクロヘキサノン、3-メトキシブチルアセテート、コハク酸ジメチル及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が、化合物(A)及び重合開始剤(B)の溶解性が良好であるため好ましい。
【0090】
本発明の重合性組成物における上記溶剤の含有量は、特に限定されるものではないが、重合性組成物中20~98質量%が好ましく、60~95質量%がより好ましい。溶剤の含有量が上記の範囲内である場合、重合性組成物が着色剤の凝集を伴わない保存安定性に優れたものとなり、硬化物の膜厚制御が容易となることから好ましい。
【0091】
本発明の重合性組成物は、スピンコーター、ロールコーター、バーコーター、ダイコーター、カーテンコーター、各種の印刷、浸漬等の公知の手段で、ソーダガラス、石英ガラス、半導体基板、金属、紙、プラスチック等の支持基体上に適用することができる。また、一旦フィルム等の支持基体上に施した後、他の支持基体上に転写することもでき、その適用方法に制限はない。
【0092】
本発明の硬化物とは、上記重合性組成物を重合させることによって得られるものを意味する。重合方法は特に限定されないが、硬化性が高いことから、光照射又は加熱のいずれかによって重合させることが好ましい。
【0093】
本発明の重合性組成物を硬化させる際に用いられる光源としては、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、水銀蒸気アーク灯、キセノンアーク灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、蛍光灯、タングステンランプ、エキシマーランプ、殺菌灯、発光ダイオード、CRT光源等から得られる2000オングストロームから7000オングストロームの波長を有する電磁波エネルギーや電子線、X線、放射線等の高エネルギー線を利用することができるが、好ましくは、波長300~450nmの光を発光する超高圧水銀ランプ、水銀蒸気アーク灯、カーボンアーク灯、キセノンアーク灯等が挙げられる。
【0094】
加熱により硬化する場合、70~100℃において100秒間プリベークを行い、溶剤を除去した後、150℃~250℃にて30分~1時間加熱し硬化する方法が挙げられる。硬化温度が150℃より低いと、十分な硬化が起きない場合があり、250℃以上では、硬化膜の着色や分解が起きる可能性がある。
【0095】
本発明の重合性組成物及び硬化物は、硬化性塗料、ワニス、硬化性接着剤、プリント基板、表示装置(カラーテレビ、PCモニタ、携帯情報端末及びデジタルカメラ等のカラー表示の液晶表示パネルにおけるカラーフィルタ、種々の表示用途用のカラーフィルタ、CCDイメージセンサのカラーフィルタ、タッチパネル、電気発光表示装置、プラズマ表示パネル、有機ELの黒色隔壁)、粉末コーティング、印刷インク、印刷版、接着剤、ゲルコート、電子工学用のフォトレジスト、電気メッキレジスト、エッチングレジスト、はんだレジスト、絶縁膜、ブラックマトリクス、及びLCDの製造工程において構造を形成するためのレジスト、電気及び電子部品を封入するための組成物、ソルダーレジスト、磁気記録材料、微小機械部品、導波路、光スイッチ、めっき用マスク、エッチングマスク、カラー試験系、ガラス繊維ケーブルコーティング、スクリーン印刷用ステンシル、ステレオリトグラフィによって三次元物体を製造するための材料、ホログラフィ記録用材料、画像記録材料、微細電子回路、脱色材料、画像記録材料のための脱色材料、マイクロカプセルを使用する画像記録材料用の脱色材料、印刷配線板用フォトレジスト材料、UV及び可視レーザー直接画像系用のフォトレジスト材料、プリント回路基板の逐次積層における誘電体層形成に使用するフォトレジスト材料及び保護膜等の各種の用途に使用することができ、その用途に特に制限はないが、上記用途の中でも表示装置には、特に好適に用いることができる。
【実施例】
【0096】
以下、実施例等を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等に
より限定されるものではない。
【0097】
[合成例1]
反応容器に3-フェニル-1-インダノン(0.10mol)、フタル酸(0.60mol)、3-メルカプトプロピオン酸(0.010mol)、硫酸(0.020mol)、トルエン(1.1mol)を仕込み、80℃で5時間加熱攪拌した。反応液を水洗後、溶媒を減圧留去することで粗生成物を得た。得られた粗生成物を酢酸エチル/ヘキサン系溶媒を用いてシリカゲルカラムで精製し、更にトルエンで再結晶することにより結晶を得た。得られた結晶を170℃、減圧下で6時間乾燥し、目的生成物である1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-3-フェニルインダン二無水物を得た。
【0098】
[実施例1]
下記エポキシ化合物1(1.00mol)、アクリル酸(2.04mol)、ジブチルヒドロキシトルエン(0.0105mol)、テトラブチルアンモニウムクロライド(0.0100mol)、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAc)3.26molを反応容器に仕込み、120℃で15時間撹拌した後、室温まで冷却してエポキシアクリレート化合物1をPGMAc溶液として得た。
得られたエポキシアクリレート化合物1溶液に、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物(0.592mol)、及び1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸(0.340mol)、ジブチルヒドロキシトルエン(0.0105mol)、テトラブチルアンモニウムクロライド(0.0100mol)及びPGMAc(2.74mol)を加えて、110℃で5時間撹拌した。室温まで冷却し、PGMAc(3.53mol)を加えて、目的物である化合物1をPGMAc溶液(含有量:43.3質量%)として得た。化合物1の分子量は、Mw=5800、Mn=2600であり、酸価(固形分)は89.6mg・KOH/gであった。
化合物1は、エポキシアクリレート化合物1の水酸基1個に対し、テトラカルボン酸二無水物が0.296個、ジカルボン酸一無水物が0.170個の比率で付加した構造を有するものである。また、化合物1は、モル比率で、ジカルボン酸一無水物1に対してテトラカルボン酸二無水物1.74となる量を付加させたものである。
【0099】
【0100】
[実施例2]
9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物に代えて1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-3-フェニルインダン二無水物を使用した以外は実施例1と同様にして、化合物2をPGMAc溶液(含有量:44.2質量%)として得た。化合物2の分子量は、Mw=5900、Mn=2500であり、酸価(固形分)は88.5mg・KOH/gであった。
【0101】
[実施例3]
エポキシ化合物1に代えて下記エポキシ化合物2を使用した以外は実施例1と同様にして、化合物3をPGMAc溶液(含有量:44.1質量%)として得た。化合物3の分子量は、Mw=6000、Mn=2600であり、酸価(固形分)は90.8mg・KOH/gであった。
【0102】
【0103】
[実施例4]
エポキシ化合物1に代えてエポキシ化合物2を使用した以外は実施例2と同様にして、化合物4をPGMAc溶液(含有量:44.5質量%)として得た。化合物4の分子量は、Mw=5800、Mn=2500であり、酸価(固形分)は91.2mg・KOH/gであった。
【0104】
[実施例5]
1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸に代えてコハク酸無水物を使用した以外は実施例1と同様にして、化合物5をPGMAc溶液(含有量:44.7質量%)として得た。化合物5の分子量は、Mw=5600、Mn=2300であり、酸価(固形分)は91.3mg・KOH/gであった。
【0105】
[実施例6]
9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物に代えて1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-3-フェニルインダン二無水物を使用し、1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸に代えてコハク酸無水物を使用した以外は実施例1と同様にして、化合物6をPGMAc溶液(含有量:44.6質量%)として得た。化合物6の分子量は、Mw=5600、Mn=2400であり、酸価(固形分)は90.8mg・KOH/gであった。
【0106】
[実施例7]
1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸に代えてコハク酸無水物を使用した以外は実施例3と同様にして、化合物7をPGMAc溶液(含有量:44.6質量%)として得た。化合物7の分子量は、Mw=5600、Mn=2400であり、酸価(固形分)は90.8mg・KOH/gであった。
【0107】
[実施例8]
9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物に代えて1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-3-フェニルインダン二無水物を使用し、1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸に代えてコハク酸無水物を使用した以外は実施例3と同様にして、化合物8をPGMAc溶液(含有量:44.6質量%)として得た。化合物8の分子量は、Mw=5600、Mn=2400であり、酸価(固形分)は90.6mg・KOH/gであった。
【0108】
[実施例9]
1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸に代えてヘキサヒドロフタル酸無水物を使用した以外は実施例1と同様にして、化合物9をPGMAc溶液(含有量:44.1質量%)として得た。化合物9の分子量は、Mw=5900、Mn=2500であり、酸価(固形分)は88.2mg・KOH/gであった。
【0109】
[実施例10]
9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物に代えて1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-3-フェニルインダン二無水物を使用し、1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸に代えてヘキサヒドロフタル酸無水物を使用した以外は実施例1と同様にして、化合物10をPGMAc溶液(含有量:44.1質量%)として得た。化合物10の分子量は、Mw=5700、Mn=2500であり、酸価(固形分)は89.8mg・KOH/gであった。
【0110】
[実施例11]
1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸に代えてヘキサヒドロフタル酸無水物を使用した以外は実施例3と同様にして、化合物11をPGMAc溶液(含有量:44.5質量%)として得た。化合物11の分子量は、Mw=5600、Mn=2400であり、酸価(固形分)は90.5mg・KOH/gであった。
【0111】
[実施例12]
9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物に代えて1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-3-フェニルインダン二無水物を使用し、1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸に代えてヘキサヒドロフタル酸無水物を使用した以外は実施例3と同様にして、化合物12をPGMAc溶液(含有量:44.1質量%)として得た。化合物12の分子量は、Mw=5900、Mn=2600であり、酸価(固形分)は90.3mg・KOH/gであった。
【0112】
[実施例13]
9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物に代えて9,9-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン二酸無物を使用した以外は実施例1と同様にして、化合物13をPGMAc溶液(含有量:44.0質量%)として得た。化合物13の分子量は、Mw=5900、Mn=2500であり、酸価(固形分)は81.2mg・KOH/gであった。
【0113】
[実施例14]
9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物に代えて下記スピロフルオレン酸二無水物(スピロ[11H-ジフロ[3,4-b:3’,4’-i]キサンテン-11,9’-[9H]フルオレン]-1,3,7,9-テトロン)を使用した以外は実施例1と同様にして、化合物14をPGMAc溶液(含有量:44.3質量%)として得た。化合物14の分子量は、Mw=5500、Mn=2300であり、酸価(固形分)は89.0mg・KOH/gであった。
【0114】
【0115】
[比較例1]
9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物に代えて3,3’4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を使用した以外は実施例1と同様にして、比較化合物1をPGMAc溶液(含有量:44.1質量%)として得た。比較化合物1の分子量は、Mw=5900、Mn=2500であり、酸価(固形分)は90.3mg・KOH/gであった。
【0116】
[比較例2]
上記エポキシ化合物1に代えて上記エポキシ化合物2を使用した以外は比較例1と同様にして、比較化合物2をPGMAc溶液(含有量:44.2質量%)として得た。比較化合物2の分子量は、Mw=5800、Mn=2600であり、酸価(固形分)は92.8mg・KOH/gであった。
【0117】
[評価例]
上記実施例及び比較例で得られた各化合物20.3部に対し、トリメチロールプロパントリアクリレート4.61部、光重合開始剤としてNCI-831(ADEKA社)0.790部、色材としてMA100(カーボンブラック、三菱ケミカル社製)16.9部、及びPGMAc57.4部を加えてよく攪拌し、重合性組成物を得た。
上記重合性組成物をそれぞれガラス基板上に塗布して90℃90秒間プリベークすることで約2μmの厚さとした後、所定のフォトマスクを用いて高圧水銀ランプで40mJ/cm2の光を照射した。次いで、2.4%TMAH水溶液(水酸化テトラアンモニウム水溶液)で30秒間現像し、水洗した。その後、230℃で30分間加熱することでパターンを定着させ、評価用サンプルを作製した。
【0118】
上記評価用サンプルについて、以下の評価を行った。評価結果を表1に記載した。
<密着性>
現像後のパターンを観察し、線幅5μmでもパターン剥がれが無かったものをA、線幅10μmであればパターン剥がれが無かったものをB、線幅10μmでもパターン剥がれがあったものをCとした。小さい線幅でもパターンが剥がれなかったものは、密着性に優れることを意味し、好ましい。
<耐熱性>
230℃30分間の加熱前後のパターン形状を観察し、加熱前後で形状変化が小さく矩形を保っているものをA、形状変化があり台形に近いものをB、形状変化が大きくおわん形状に近いものをCとした。形状がA又はBであるものは、加熱によりパターン形状が溶融していないことを意味し、耐熱性に優れることを意味し、Aであるものが特に耐熱性が高い。
<感度>
露光量40mJ/cm2、60mJ/cm2及び80mJ/cm2で現像を行い、パターンが得られた最低露光量が40mJ/cm2のものをA、最低露光量が60mJ/cm2のものをB、最低露光量80mJ/cm2のものをCとした。少ない露光量でパターンが形成できるものほど、感度が良好であることを意味する。
【0119】
【0120】
表1に示す結果より、本発明の化合物を用いた重合性組成物は、感度が良好であり、密着性及び耐熱性に特に優れるため、適切なパターン形状や微細パターンの形成が可能であることが確認された。