(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】アンテナユニット及び窓ガラス
(51)【国際特許分類】
H01Q 19/02 20060101AFI20250218BHJP
【FI】
H01Q19/02
(21)【出願番号】P 2021546617
(86)(22)【出願日】2020-09-07
(86)【国際出願番号】 JP2020033784
(87)【国際公開番号】W WO2021054175
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2023-07-03
(31)【優先権主張番号】P 2019169601
(32)【優先日】2019-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510191919
【氏名又は名称】エージーシー グラス ユーロップ
【氏名又は名称原語表記】AGC GLASS EUROPE
【住所又は居所原語表記】Avenue Jean Monnet 4, 1348 Louvain-la-Neuve, Belgique
(73)【特許権者】
【識別番号】507090421
【氏名又は名称】エージーシー フラット グラス ノース アメリカ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AGC FLAT GLASS NORTH AMERICA,INC.
【住所又は居所原語表記】11175 Cicero Dr. Suite 400, Alpharetta, GA 30022, U.S.A.
(73)【特許権者】
【識別番号】516170945
【氏名又は名称】エージーシー ヴィドロ ド ブラジル リミターダ
【氏名又は名称原語表記】AGC Vidros do Brasil Ltda.
【住所又は居所原語表記】Estrada Municipal Doutor Jaime Eduardo Ribeiro Pereira, n 500, Jardim Vista Alegre, Guaratingueta, Sao Paulo, CEP 12523-671, Brasil
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】園田 龍太
(72)【発明者】
【氏名】堀江 昌輝
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-185243(JP,A)
【文献】特開平09-246852(JP,A)
【文献】特開2002-171122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物用の窓ガラスに向き合うように設置して使用されるアンテナユニットであって、
放射素子と、
前記放射素子に対して屋外側に位置し、前記放射素子から放射する電波の位相を制御する位相制御部材と、
前記放射素子に対して屋内側に位置する導体とを備え、
前記位相制御部材は、誘電体と複数の導体部とを有する部材であ
り、
前記複数の導体部は、前記放射素子の偏波方向における長さが相違する導体部を含み、
相違する前記長さをAとBとするとき、
A/Bは、1.1以上2.0以下である、アンテナユニット。
【請求項2】
前記複数の導体部は、同一平面上にある、請求項
1に記載のアンテナユニット。
【請求項3】
前記複数の導体部は、同一平面上にない、請求項
1に記載のアンテナユニット。
【請求項4】
建物用の窓ガラスに向き合うように設置して使用されるアンテナユニットであって、
放射素子と、
前記放射素子に対して屋外側に位置し、前記放射素子から放射する電波の位相を制御する位相制御部材と、
前記放射素子に対して屋内側に位置する導体とを備え、
前記位相制御部材は、誘電体と複数の導体部とを有する部材であ
り、
前記複数の導体部は、形状が相違する導体部を含み、同一平面上にない、アンテナユニット。
【請求項5】
メインローブとグレーティングローブの利得差が3dB以上である、請求項1から
4のいずれか一項に記載のアンテナユニット。
【請求項6】
建物用の窓ガラスに向き合うように設置して使用されるアンテナユニットであって、
放射素子と、
前記放射素子に対して屋外側に位置し、前記放射素子から放射する電波の位相を制御する位相制御部材と、
前記放射素子に対して屋内側に位置する導体とを備え、
前記位相制御部材は、誘電体と複数の導体部とを有する部材であ
り、
メインローブとグレーティングローブの利得差が3dB以上である、アンテナユニット。
【請求項7】
前記放射素子は、パッチ素子である、請求項1から
6のいずれか一項に記載のアンテナユニット。
【請求項8】
建物用の窓ガラスに向き合うように設置して使用されるアンテナユニットであって、
放射素子と、
前記放射素子に対して屋外側に位置し、前記放射素子から放射する電波の位相を制御する位相制御部材と、
前記放射素子に対して屋内側に位置する導体とを備え、
前記位相制御部材は、誘電体と複数の導体部とを有する部材であ
り、
前記放射素子は、パッチ素子であり、
前記複数の導体部は、平面視において、前記パッチ素子の外縁に沿って位置する、アンテナユニット。
【請求項9】
前記複数の導体部は、線状又は帯状の導体素子である、請求項1から
8のいずれか一項に記載のアンテナユニット。
【請求項10】
前記複数の導体部は、可視光を透過する、請求項1から
9のいずれか一項に記載のアンテナユニット。
【請求項11】
前記複数の導体部のうち少なくとも一つの導体部に近接する少なくとも一つの無給電素子を備える、請求項1から
10のいずれか一項に記載のアンテナユニット。
【請求項12】
前記放射素子は、複数のアンテナ素子を含み、
前記複数の導体部は、前記複数のアンテナ素子のそれぞれに対して設けられた、請求項1から
11のいずれか一項に記載のアンテナユニット。
【請求項13】
前記誘電体は、ガラス基板である、請求項1から12のいずれか一項に記載のアンテナユニット。
【請求項14】
前記放射素子と前記複数の導体部との間は前記誘電体からなり、前記誘電体の比誘電率をε
r
とするとき、前記放射素子と前記複数の導体部との間の距離は、(2.11×ε
r
-1.82)mm以上である、請求項1から13のいずれか一項に記載のアンテナユニット。
【請求項15】
請求項1から
14のいずれか一項に記載のアンテナユニットを備える窓ガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンテナユニット及び窓ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アンテナを被覆する3層構造より成る電波透過体を、建築仕上材に使用して、電波透過性能の改善を図る技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マイクロストリップアンテナ等の平面アンテナは、その正面方向に、電波を強く放射する。しかしながら、
図1に示されるように、比誘電率が比較的高い誘電体(例えば、窓ガラス200)が平面アンテナ100の前方(正面方向)にあると、誘電体(窓ガラス200)の界面で電波が反射してしまうので、平面アンテナ100のメインローブ以外の利得(例えばグレーティングローブ)が大きくなる。その結果、平面アンテナ100のメインローブが弱くなる場合がある。なお、メインローブは、平面アンテナ100又はアンテナユニットの正面方向に対して下方向(例えば、俯角方向)に放射された電波の利得を表し、グレーティングローブは、平面アンテナ100又はアンテナユニットの正面方向に対して上方向(例えば、仰角方向)に放射された電波の利得を表す。
【0005】
本開示は、グレーティングローブが小さく、メインローブが大きいことにより、メインローブとグレーティングローブとの利得差が大きいアンテナユニット及び窓ガラスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、
建物用の窓ガラスに向き合うように設置して使用されるアンテナユニットであって、
放射素子と、
前記放射素子に対して屋外側に位置し、前記放射素子から放射する電波の位相を制御する位相制御部材と、
前記放射素子に対して屋内側に位置する導体とを備え、
前記移相制御部材は、誘電体と複数の導体部とを有する部材である、アンテナユニットを提供する。また、本開示は、当該アンテナユニットを備える窓ガラスを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の技術によれば、放射素子から放射される電波の放射方向を変えられるので、メインローブとグレーティングローブとの利得差を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】平面アンテナの正面方向に窓ガラスが存在する場合を模式的に示す図である。
【
図2】第1の実施形態におけるアンテナユニット付き窓ガラスの積層構成の一例を模式的に示す断面図である。
【
図3】第2の実施形態におけるアンテナユニット付き窓ガラスの積層構成の一例を模式的に示す断面図である。
【
図4】第3の実施形態におけるアンテナユニット付き窓ガラスの積層構成の一例を模式的に示す断面図である。
【
図5】第4の実施形態におけるアンテナユニット付き窓ガラスの積層構成の一例を模式的に示す断面図である。
【
図6】第5の実施形態におけるアンテナユニット付き窓ガラスの積層構成の一例を模式的に示す断面図である。
【
図7】第6の実施形態におけるアンテナユニット付き窓ガラスの積層構成の一例を模式的に示す断面図である。
【
図8】本実施形態におけるアンテナユニットの構成の一具体例を示す斜視図である。
【
図9】本実施形態におけるアンテナユニットの一具体例を示す平面図である。
【
図10】
図9に示すアンテナユニットにおけるマイクロストリップアレイアンテナの構成を示す平面図である。
【
図11】
図9に示すアンテナユニットにおける位相制御部材の構成を示す平面図である。
【
図12】
図9に示すアンテナユニットにおいて、A/B=1.0のときに逆相給電で得られるメインローブとグレーティングローブとの利得差をシミュレーションした結果の一例を示す図である。
【
図13】
図9に示すアンテナユニットにおいて、逆相給電で得られるメインローブとグレーティングローブとの利得差とA/Bとの関係をシミュレーションした結果の一例を示す図である。
【
図14】
図9に示すアンテナユニットにおいて、A/B=1.0のときに位相差給電で得られるメインローブとグレーティングローブとの利得差をシミュレーションした結果の一例を示す図である。
【
図15】
図9に示すアンテナユニットにおいて、位相差給電で得られるメインローブとグレーティングローブとの利得差とA/Bとの関係をシミュレーションした結果の一例を示す図である。
【
図16】複層の窓ガラスに向き合うアンテナユニットを示す図である。
【
図17】
図16のアンテナユニットにおいて位相制御部材がある場合の、A/B=1.0のときに位相差給電で得られる利得をシミュレーションした結果の一例を示す図である。
【
図18】
図16のアンテナユニットにおいて位相制御部材がない場合の、A/B=1.0のときに得られる利得をシミュレーションした結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態を図面を参照して説明する。なお、理解の容易のため、図面における各部材の縮尺は実際とは異なる場合がある。本明細書では、3軸方向(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向)の3次元直交座標系を用い、ガラス板の幅方向をX軸方向とし、厚さ方向をY軸方向とし、高さ方向をZ軸方向とする。ガラス板の下から上に向かう方向を+Z軸方向とし、その反対方向を-Z軸方向とする。以下の説明において、+Z軸方向を上といい、-Z軸方向を下という場合がある。
【0010】
X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は、それぞれ、X軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向を表す。X軸方向とY軸方向とZ軸方向は、互いに直交する。XY平面、YZ平面、ZX平面は、それぞれ、X軸方向及びY軸方向に平行な仮想平面、Y軸方向及びZ軸方向に平行な仮想平面、Z軸方向及びX軸方向に平行な仮想平面を表す。
【0011】
図2は、第1の実施形態におけるアンテナユニット付き窓ガラスの積層構成の一例を模式的に示す断面図である。
図2に示すアンテナユニット付き窓ガラス301は、アンテナユニット101と、窓ガラス201とを備える。アンテナユニット101は、建物用の窓ガラス201の屋内側の表面に向き合うように設置して使用される。
【0012】
窓ガラス201は、建物などの窓に用いられるガラス板である。窓ガラス201は、例えば、Y軸方向での平面視において矩形に形成されており、第1ガラス面および第2ガラス面を有する。窓ガラス201の厚さは、建物などの要求仕様に応じて設定される。本実施形態では、窓ガラス201の第1ガラス面を屋外側の表面とし、第2ガラス面を屋内側の表面とする。なお、本実施形態では、第1ガラス面および第2ガラス面をまとめて、単に主面という場合がある。本実施形態では、矩形とは、長方形や正方形の他、長方形や正方形の角を面取りした形を含む。窓ガラス201の平面視での形状は、矩形に限定されず、円形などの他の形状でもよい。
【0013】
窓ガラス201は、単板に限定されず、合わせガラスであってもよく、複層ガラスであってもよく、Low-eガラスであってもよい。Low-eガラスは、低放射ガラスともいい、熱線反射機能を有するコーティング層(透明導電膜)が窓ガラスの室内側の表面にコーティングされたものでもよい。その場合、電波透過性能の低下を抑制するために、コーティング層に開口部を有してもよい。開口部は放射素子10及び導波部材20の少なくとも一部に対向する位置に有するのが好ましい。開口部はパターニングされていてもよい。パターニングとは、例えば格子状にコーティング層が残るようにしたものである。開口部のうち、一部分だけがパターニングされていてもよい。
【0014】
窓ガラス201の材質としては、例えば、ソーダライムシリカガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノシリケートガラス、または無アルカリガラスを挙げることができる。
【0015】
窓ガラス201の厚さは、1.0~20mmが好ましい。窓ガラス201の厚さが1.0mm以上であれば、アンテナユニットを取り付けるための充分な強度を有する。また、窓ガラス201の厚さが20mm以下であれば、電波透過性能がよい。窓ガラス201の厚さは、3.0~15mmがより好ましく、9.0~13mmがさらに好ましい。
【0016】
アンテナユニット101は、建物用の窓ガラス201の屋内側に取り付けて使用される機器であり、窓ガラス201を通して電磁波の送受信を行う。アンテナユニット101は、例えば、第5世代移動通信システム(いわゆる、5G)、ブルートゥース(登録商標)等の無線通信規格、IEEE802.11ac等の無線LAN(Local Area Network)規格に対応する電波を送受可能に形成されている。なお、アンテナユニット101は、これら以外の規格に対応する電磁波を送受可能に形成されてもよいし、複数の異なる周波数の電磁波を送受可能に形成されてもよい。アンテナユニット101は、例えば、窓ガラス201に対向させて使用される無線基地局として利用可能である。
【0017】
図2に示す実施形態では、アンテナユニット101は、放射素子10、位相制御部材80及び導体30を備える。
【0018】
放射素子10は、所望の周波数帯の電波を送受可能に形成されるアンテナ導体である。所望の周波数帯として、例えば、周波数が0.3~3GHzのUHF(Ultra High Frequency)帯、周波数が3~30GHzのSHF(Super High Frequency)帯、周波数が30~300GHzのEHF(Extremely High Frequency)などが挙げられる。放射素子10は、放射器(輻射器)として機能する。放射素子10は、単一のアンテナ素子でもよいし、給電点が互いに異なる複数のアンテナ素子を含んでもよい。
【0019】
位相制御部材80は、放射素子10に対して屋外側に位置するように設けられており、図示の形態では、放射素子10に対して特定の方向(より具体的には、Y軸方向の負側)に位置するように設けられている。本実施形態における位相制御部材80は、窓ガラス201と放射素子10との間に位置するように設けられており、放射素子10から放射された電波を特定の方向(図示の場合、Y軸方向の負側)に導くため、当該電波の位相を制御する導波部材20を有する。位相制御部材80によってアンテナユニット101の指向性を任意に形成できる。
【0020】
位相制御部材80は、誘電体部材41と導波部材20とを有する。導波部材20は、複数の導体部を有する。
図8には4つの導体部21~24が例示されている(詳細については後述)。
【0021】
導体30は、放射素子10に対して屋内側に位置するように設けられており、
図2の形態では、放射素子10に対してY軸方向の正側に位置するように設けられている。
【0022】
このように、アンテナユニット101は、放射素子10から放射される電波の位相を制御する位相制御部材80を備える。位相制御部材80は、導波部材20に複数の導体部を有することにより、放射素子10から放射される電波の位相を制御できるので、当該電波の放射方向を変えられる。放射素子10から放射される電波の放射方向を変えられるので、アンテナユニット101のメインローブとグレーティングローブとの利得差(以下、単に利得差ともいう。)を大きくすることができる。
【0023】
また、放射素子10と導波部材20との間の距離をa、放射素子10と導波部材20との間の誘電体部材41からなる媒質の比誘電率をεrとするとき、aは、(2.11×εr-1.82)mm以上であることが、利得差を大きくする点で好ましい。本発明者は、距離aをこのように設定することによって、利得差が0dB以上となることを見出した。利得差が0dB以上ということは、メインローブの利得が、グレーティングローブの利得以上であることを表す。aの上限は特に限定されないが、aは100mm以下であってよく、50mm以下であってよく、30mm以下であってよく、20mm以下であってよく、10mm以下であってよい。また、放射素子10の動作周波数における波長をλgとすると、aは100×λg/85.7以下であってよく、50×λg/85.7以下であってよく、30×λg/85.7以下であってよく、20×λg/85.7以下であってよく、10×λg/85.7以下であってよい。
【0024】
放射素子10の動作周波数が0.7~30GHz(好ましくは1.5~6.0GHz、より好ましくは2.5~4.5GHz、さらに好ましくは3.3~3.7GHz、特に好ましくは3.5GHz)であるときに、aは、(2.11×εr-1.82)mm以上であることが、利得差を大きくする点で特に好ましい。
【0025】
また、複数の導体部(導波部材20)の総面積Sを窓ガラス201の面積で除した値は、0.00001~0.001が好ましい。導波部材20の総面積Sを窓ガラス201の面積で除した値が0.00001以上であれば、利得差が大きくなる。導波部材20の総面積Sを窓ガラス201の面積で除した値は、0.00005以上がより好ましく、0.0001以上がさらに好ましく、0.0005以上が特に好ましい。また、導波部材20の総面積Sを窓ガラス201の面積で除した値が0.001以下であれば、外観上、導波部材20が目立ちにくく意匠性がよい。導波部材20の総面積Sを窓ガラス201の面積で除した値は、0.0008以下がより好ましく、0.0007以下がさらに好ましい。
【0026】
また、利得差が3dB以上であると、アンテナユニットに向き合う窓ガラス等の障害物があっても、当該障害物による電波の反射が抑制される度合いが大きくなるので、好ましい。利得差は、4dB以上がより好ましく、5dB以上がさらに好ましい。
【0027】
次に、
図2に示す形態について、より詳細に説明する。
【0028】
アンテナユニット101は、放射素子10、基材50、導体30、位相制御部材80及び支持部60を備える。位相制御部材80は、導波部材20と誘電体部材41とを有する。
【0029】
放射素子10は、基材50の屋外側の第1主面に設けられる。基材50の第1主面上に設けたセラミックス層上に少なくとも一部重なるように金属材料を印刷することにより、放射素子10が形成されてもよい。これにより、放射素子10は、基材50の第1主面上に、セラミックス層が形成されている部分とそれ以外の部分とに跨って設けられる。
【0030】
放射素子10は、例えば、平面状に形成された導体である。放射素子10を形成する金属材料としては、金、銀、銅、アルミニウム、クロム、鉛、亜鉛、ニッケル又は白金などの導電性材料を用いることができる。導電性材料は、合金でもよく、例えば、銅と亜鉛の合金(黄銅)、銀と銅の合金、銀とアルミニウムの合金などがある。放射素子10は、薄膜であってもよい。放射素子10の形状は、矩形状でも円状でもよいが、これらの形状に限られない。放射素子10は、例えば、導波部材20と導体30との間に位置するように少なくとも一つ以上設けられており、図示の形態では、導波部材20と導体30との間に位置する基材50の導波部材20側の表面に形成されている。放射素子10は、例えば、導体30をグランド基準とする給電点により給電される。放射素子10として、例えば、パッチ素子(パッチアンテナ)やダイポール素子(ダイポールアンテナ)などを用いることができる。
【0031】
放射素子10を形成する別の材料としては、フッ素添加錫酸化物(FTO)やインジウム錫酸化物(ITO)等が挙げられる。
【0032】
上述のセラミックス層は、印刷などにより基材50の第1主面上に形成することができる。セラミックス層を設けることにより、放射素子10に取り付けられる配線(不図示)を覆い隠すことができ、意匠性がよい。なお、本実施形態では、セラミックス層は、第1主面上に設けなくてもよいし、基材50の屋内側の第2主面上に設けられてもよい。セラミックス層を基材50の第1主面上に設けられることが、放射素子10とセラミックス層を基材50に同一工程で印刷により設けられるため、好ましい。
【0033】
セラミックス層の材料は、ガラスフリットなどであり、その厚さは、1~20μmであることが好ましい。
【0034】
なお、本実施形態では、放射素子10は、基材50の第1主面に設けているが、基材50の内部に設けられてもよい。この場合、放射素子10は、例えば、コイル状にして基材50の内部に設けることができる。
【0035】
基材50が、一対のガラス板と、一対のガラス板同士の間に設けられる樹脂層とを含む合わせガラスの場合、放射素子10は、合わせガラスを構成するガラス板と樹脂層との間に設けられてもよい。
【0036】
また、放射素子10は、放射素子10自体を平板状に形成してもよい。この場合、基材50を用いず、平板状の放射素子10を支持部60に直接取り付けるようにしてもよい。
【0037】
放射素子10は、基材50に設ける以外に、収容容器の内部に設けられてもよい。この場合、放射素子10は、例えば、平板状の放射素子10を上記収容容器の内部に設けることができる。収容容器の形状は特に限定されず、矩形であってよい。基材50は、収容容器の一部位でもよい。
【0038】
放射素子10は、光透過性を有することが好ましい。放射素子10が光透過性を有すれば、意匠性がよく、また、平均日射吸収率を低下させることができる。放射素子10の可視光透過率は40%以上であることが好ましく、60%以上であることが、透明性の点で窓ガラスとしての機能を維持できる点で好ましい。なお、可視光透過率は、JIS R 3106(1998)により求めることができる。
【0039】
放射素子10は、光透過性を有するためにメッシュ状に形成することが好ましい。なお、メッシュとは、放射素子10の平面に網目状の透孔が空いた状態をいう。
【0040】
放射素子10がメッシュ状に形成される場合、メッシュの目は方形であってもよいし、菱形でもよい。メッシュの線幅は、5~30μmが好ましく、6~15μmがより好ましい。メッシュの線間隔は、50~500μmが好ましく、100~300μmがより好ましい。
【0041】
放射素子10の開口率は、80%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。放射素子10の開口率は、放射素子10に形成される開口部を含めた放射素子10の総面積当たりの当該開口部の面積の割合である。放射素子10の開口率を大きくするほど、放射素子10の可視光透過率を高くすることができる。
【0042】
放射素子10の厚さは、400nm以下が好ましく、300nm以下がより好ましい。放射素子10の厚さの下限は特に限定されないが、2nm以上であってよく、10nm以上であってよく、30nm以上であってよい。
【0043】
また、放射素子10がメッシュ状に形成される場合、放射素子10の厚さは、2~40μmであってよい。放射素子10がメッシュ状に形成されることにより、放射素子10が厚くても、可視光透過率を高くすることができる。
【0044】
基材50は、例えば、窓ガラス201に対して平行に設けられている基板である。基材50は、平面視において、例えば、矩形に形成されており、第1主面および第2主面を有する。基材50の第1主面は、屋外側を向くように設けられ、
図2に示す形態では、窓ガラス201の屋内側の第2ガラス面と対向するように設けられる。基材50の第2主面は、屋内側を向くように設けられ、
図2に示す形態では、窓ガラス201の屋内側の第2ガラス面と同じ方向に向くように設けられている。
【0045】
基材50は、窓ガラス201に対して、所定の角度を有するように設けられてもよい。アンテナユニット101は、放射素子10が設置される基材50(の法線方向)が窓ガラス201(の法線方向)に対して傾斜した状態で、電磁波を放射する場合がある。例えば、アンテナユニット101が、ビルの窓ガラス等の、地表面よりも上方の箇所に設置され、地表面にエリアを形成するために地表面に向けて電磁波を放射する場合などである。基材50と窓ガラス201との傾斜角度は、電波の伝達方向を良好にできる点で0度以上であってよく、5度以上であってよく、10度以上であってよい。また、電波を屋外へ伝達するために、基材50と窓ガラス201との傾斜角度は、50度以下であってよく、30度以下であってよく、20度以下であってよい。
【0046】
基材50を形成する材料は、放射素子10に求められるパワーや指向性などアンテナ性能に応じて設計され、例えば、ガラスや樹脂などの誘電体、金属、又はそれらの複合体などを用いることができる。基材50は、光透過性を有するように、樹脂などの誘電体から形成されてもよい。基材50を光透過性を有する材料で形成することで、窓ガラス201越しに見える視界を基材50が遮ることを低減することができる。
【0047】
基材50としてガラスを用いる場合、ガラスの材質としては、例えば、ソーダライムシリカガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノシリケートガラスまたは無アルカリガラスを挙げることができる。
【0048】
基材50として用いられるガラス板は、フロート法、フュージョン法、リドロー法、プレス成形法または引き上げ法など公知の製造方法を用いて製造することができる。ガラス板の製造方法としては、生産性およびコストに優れている点から、フロート法を用いることが好ましい。
【0049】
ガラス板は、平面視において、矩形に形成される。ガラス板の切断方法としては、例えば、ガラス板の表面にレーザ光を照射してガラス板の表面上で、レーザ光の照射領域を移動させることで切断する方法、またはカッターホイールなどの機械的に切断する方法を挙げることができる。
【0050】
本実施形態では、矩形とは、長方形や正方形の他、長方形や正方形の角に丸みを形成した形を含む。ガラス板の平面視での形状は、矩形に限定されず、円形などでもよい。また、ガラス板は、単板に限定されず、合わせガラスであってもよく、複層ガラスであってもよい。
【0051】
基材50として樹脂を用いる場合、樹脂は、透明な樹脂が好ましく、液晶ポリマー(LCP)、ポリイミド(PI)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリカーボネート、アクリル系樹脂またはフッ素樹脂等が挙げられる。低誘電率である点からフッ素樹脂が好ましい。
【0052】
フッ素樹脂としては、エチレン-テトラフルオロエチレン系共重合体(以下、「ETFE」ともいう。)、ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン系共重合体(以下、「FEP」ともいう。)、テトラフルオロエチレン-プロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-プロピレン共重合体、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)-テトラフルオロエチレン系共重合体(以下、「PFA」ともいう。)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-フッ化ビニリデン系共重合体(以下、「THV」ともいう。)、ポリフッ化ビニリデン(以下、「PVDF」ともいう。)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、ポリフッ化ビニル、クロロトリフルオロエチレン系重合体、エチレン-クロロトリフルオロエチレン系共重合体(以下、「ECTFE」ともいう。)またはポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。これらはいずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0053】
フッ素樹脂としては、ETFE、FEP、PFA、PVDF、ECTFEおよびTHVからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、透明性、加工性および耐候性に優れる点から、ETFEが特に好ましい。
【0054】
また、フッ素樹脂として、アフレックス(登録商標)を用いてもよい。
【0055】
基材50の厚さdは、25μm~10mmが好ましい。基材50の厚さdは、放射素子10の配置される場所に応じて、任意に設計することができる。基材50の厚さ(又は、放射素子10と導体30との距離)をd、放射素子10の動作周波数における波長をλgとするとき、dは、λg/4以下であると、利得差を大きくする点で好ましい。
【0056】
基材50が樹脂の場合、樹脂はフィルムまたはシート状に成形したものを使用することが好ましい。フィルムまたはシートの厚さは、アンテナ保持の強度に優れる点から、25~1000μmが好ましく、100~800μmより好ましく、100~500μmが特に好ましい。
【0057】
基材50がガラスの場合、基材50の厚さは、1.0~10mmがアンテナ保持の強度の面で好ましい。
【0058】
基材50の屋外側の第1主面の算術平均粗さRaは、1.2μm以下であることが好ましい。これは、第1主面の算術平均粗さRaが1.2μm以下であれば、基材50と窓ガラス201との間に形成される空間で空気が流動し易くなるためである。第1主面の算術平均粗さRaは、より好ましくは0.6μm以下であり、さらに好ましくは0.3μm以下である。算術平均粗さRaの下限は特に限定されないが、例えば、0.001μm以上である。
【0059】
なお、算術平均粗さRaは、日本工業規格 JIS B0601:2001に基づいて測定することができる。
【0060】
基材50の面積は、0.01~4m2が好ましい。基材50の面積が0.01m2以上であれば放射素子10、導体30などを形成しやすい。また、4m2以下であれば、外観上、アンテナユニットが目立ちにくく意匠性がよい。基材50の面積は、0.05~2m2がより好ましい。
【0061】
アンテナユニット101は、基材50の窓ガラス201側とは反対側の第2主面に設けられた導体30を有してもよい。導体30は、放射素子10に対して屋内側に備えられるが、導体30自体は、なくてもよい。導体30は、放射素子10から放射された電磁波と室内の電子機器から生じる電磁波との電磁波干渉を低減可能な電磁遮蔽層として機能する部位でもよい。導体30は、単層でもよく、複数層でもよい。導体30としては、公知の材料を用いることができ、例えば、銅やタングステンなどの金属膜、または透明導電膜を用いた透明基板などを用いることができる。
【0062】
透明導電膜として、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、フッ素添加錫酸化物(FTO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、酸化珪素を添加したインジウム錫酸化物(ITSO)、酸化亜鉛(ZnO)、またはPやBを含むSi化合物などの透光性を有する導電性材料を用いることができる。
【0063】
導体30は、例えば、平面状に形成された導体プレーンである。導体30の形状は、矩形状でも円状でもよいが、これらの形状に限られない。導体30は、例えば、放射素子10に対して導波部材20が位置する側とは反対側に少なくとも一つ以上設けられており、図示の形態では、基材50の導波部材20側の表面とは反対側の表面に形成されている。
【0064】
導体30は、光透過性を有するように、メッシュ状に形成されることが好ましい。ここで、メッシュとは、導体30の平面に網目状の透孔が空いた状態をいう。導体30がメッシュ状に形成される場合、メッシュの目は方形であってもよく、菱形であってもよい。メッシュの線幅は、5~30μmが好ましく、6~15μmがより好ましい。メッシュの線間隔は、50~500μmが好ましく、100~300μmがより好ましい。
【0065】
導体30の形成方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、スパッタ法や蒸着法などを用いることができる。
【0066】
導体30の表面抵抗率は、20Ω/□以下であることが好ましく、より好ましくは10Ω/□以下であり、さらに好ましくは5Ω/□以下である。導体30の大きさは、基材50の大きさ以上であることが好ましい。基材50の屋内側の第2主面側に導体30を設けることで、屋内への電波の透過を抑制することができる。導体30の表面抵抗率は、導体30の厚さ、材質、開口率による。開口率は、導体30に形成される開口部を含めた導体30の総面積当たりの当該開口部の面積の割合である。
【0067】
導体30の可視光透過率は、意匠性の向上の点で、40%以上が好ましく、60%以上がより好ましい。また、導体30の可視光透過率は、屋内への電波の透過を抑制するために、90%以下が好ましく、80%以下がより好ましい。
【0068】
また、導体30の開口率が大きいほど可視光透過率が高くなる。導体30の開口率は、80%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。また、導体30の開口率は、屋内への電波の透過を抑制するために、95%以下が好ましい。
【0069】
導体30の厚さは、400nm以下が好ましく、300nm以下がより好ましい。導体30の厚さの下限は特に限定されないが、2nm以上であってよく、10nm以上であってよく、30nm以上であってよい。
【0070】
また、導体30がメッシュ状に形成される場合、導体30の厚さは、2~40μmであってよい。導体30がメッシュ状に形成されることにより、導体30が厚くても、可視光透過率を高くすることができる。
【0071】
本実施形態におけるアンテナユニット101は、平面アンテナの一種であるマイクロストリップアンテナが形成されるように、放射素子10と導体30との間に基材50が挟まれる構成を有してもよい。また、アレイアンテナが形成されるように、複数の放射素子10が基材50の導波部材20側の表面上に配列されていてもよい。
【0072】
導波部材20は、例えば、平面状に形成された導体である。導波部材20を形成する金属材料としては、金、銀、銅、アルミニウム、クロム、鉛、亜鉛、ニッケル又は白金などの導電性材料を用いることができる。導電性材料は、合金でもよく、例えば、銅と亜鉛の合金(黄銅)、銀と銅の合金、銀とアルミニウムの合金などがある。導電性材料は、合金でもよく、例えば、銅と亜鉛の合金(黄銅)、銀と銅の合金、銀とアルミニウムの合金などがある。導波部材20は、導電性材料を例えばガラス基板、樹脂基板に貼着して形成してもよい。導波部材20は、薄膜であってもよい。
【0073】
導波部材20に用いられる複数の導体部は、線状又は帯状の導体素子であってもよく、直線状でも曲がった形状でもよい。また、複数の導体部は、矩形状であってもよく、円状であってもよい。
【0074】
導波部材20に用いられる複数の導体部は、光透過性を有するためにメッシュ状に形成してもよい。ここで、メッシュとは、導体部の平面に網目状の透孔が空いた状態をいう。導波部材20に用いられる複数の導体部の可視光透過率は40%以上であることが好ましく、60%以上であることが、透明性の点で窓ガラスとしての機能を維持できる点で好ましい。
【0075】
導体部がメッシュ状に形成される場合、メッシュの目は方形であってもよく、菱形であってもよい。メッシュの目を方形に形成する場合、メッシュの目は正方形であることが好ましい。メッシュの目が正方形であれば、意匠性が良い。また、自己組織化法によるランダム形状でもよい。ランダム形状にすることでモアレを防ぐことができる。メッシュの線幅は、5~30μmが好ましく、6~15μmがより好ましい。メッシュの線間隔は、50~500μmが好ましく、100~300μmがより好ましい。また、メッシュの線間隔は、放射素子10の動作周波数における波長をλとしたとき、0.5λ以下であることが好ましく、0.1λ以下であることがより好ましく、0.01λ以下であることがさらに好ましい。メッシュの線間隔が0.5λ以下であればアンテナの性能が高い。また、メッシュの線間隔は、0.001λ以上であってもよい。
【0076】
誘電体部材41は、放射素子10と導波部材20との間の媒質である。本実施形態では、導波部材20は、誘電体部材41に設けられており、より具体的には、誘電体部材41の屋外側の表面に形成されている。誘電体部材41は、誘電体部材41の屋内側の表面が放射素子10に接触するように、基材50に対して支持されている。誘電体部材41は、例えば、比誘電率が1よりも大きく15以下(好ましくは7以下、より好ましくは5以下、特に好ましくは2.2以下)の誘電体を主成分とする誘電性の基材である。誘電体部材41としては、例えば、フッ素樹脂、COC(シクロオレフィンコポリマー)、COP(シクロオレフィンポリマー)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリイミド、セラミックス、サファイア、ガラス基板を用いることができる。誘電体部材41がガラス基板で形成される場合、ガラス基板の材質としては、例えば、無アルカリガラス、石英ガラス、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、アルカリホウケイ酸ガラス、またはアルミノシリケートガラスなどを挙げることができる。比誘電率は、例えば空洞共振器により測定される。
【0077】
誘電体部材41は、可視光が透過する光透過性を有することで、窓ガラス201越しに見える視界を誘電体部材41が遮ることを低減することができる。
【0078】
支持部60は、アンテナユニット101を窓ガラス201に対して支持する部位である。本実施形態では、支持部60は、窓ガラス201と導波部材20との間に空間が形成されるようにアンテナユニット101を支持する。支持部60は、窓ガラス201と基材50との間の空間を確保するスペーサでもよいし、アンテナユニット101の筐体でもよい。支持部60は、誘電性の基材によって形成される。支持部60の材料としては、例えば、シリコーン系樹脂、ポリサルファイド系樹脂又はアクリル系樹脂などの公知の樹脂を用いることができる。また、アルミニウムなどの金属を用いてもよい。
【0079】
窓ガラス201と放射素子10との距離Dは、放射素子10の共振周波数における波長をλとしたとき、0~3λが好ましい。窓ガラス201と放射素子10との距離Dが0~3λであれば、ガラス界面の電波の反射を軽減できる。窓ガラス201と放射素子10との距離Dは、0.1λ以上がより好ましく、0.2λ以上がさらに好ましい。また、窓ガラス201と放射素子10との距離Dは、2λ以下がより好ましく、λ以下がさらに好ましく、0.6λ以下が特に好ましい。
【0080】
また、複数の導体部(導波部材20)の総面積Sを基材50の面積で除した値は、0.0001~0.01が好ましい。導波部材20の総面積Sを基材50の面積で除した値が0.0001以上であれば、利得差が大きくなる。導波部材20の総面積Sを基材50の面積で除した値は、0.0005以上がより好ましく、0.001以上がさらに好ましく、0.0013以上が特に好ましい。また、導波部材20の総面積Sを基材50の面積で除した値が0.01以下であれば、外観上、導波部材20が目立ちにくく意匠性がよい。導波部材20の総面積Sを基材50の面積で除した値は、0.005以下がより好ましく、0.002以下がさらに好ましい。
【0081】
なお、導波部材20は、窓ガラス201の屋内側の表面に接した状態で設けられてもよい。この場合、誘電体部材41はあってもなくてもよく、放射素子10と導波部材20との間の媒質の比誘電率は、窓ガラス201の比誘電率よりも低いことが好ましい。窓ガラス201の比誘電率は、10以下であってもよく、9以下であってもよく、7以下であってもよく、5以下であってもよい。
【0082】
図3は、第2の実施形態におけるアンテナユニット付き窓ガラスの積層構成の一例を模式的に示す断面図である。上述の実施形態と同様の構成及び効果の説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。アンテナユニット付き窓ガラス302は、アンテナユニット102と、窓ガラス201とを備える。アンテナユニット102は、建物用の窓ガラス201の屋内側の表面に取り付けられている。
【0083】
上述の実施形態と同様に、アンテナユニット102は、窓ガラス201と放射素子10との間に位相制御部材80が配置されているので、利得差が大きくなる。
【0084】
アンテナユニット102では、誘電体部材41の屋内側の表面が放射素子10に接触しないように、誘電体部材41は基材50に対してスペーサ61により支持されている。つまり、誘電体部材41は、放射素子10との間に空間42が形成されるように位置し、放射素子10と導波部材20との間の媒質には、誘電体部材41と空間42との両方が含まれている。空間42には、空気が存在するが、空気以外の気体でもよい。空間42は、真空でもよい。放射素子10が誘電体部材41に接しないため、共振周波数が誘電体部材41の影響を受けにくく、利得差が大きくなる。
【0085】
アンテナユニット102は、誘電体部材41が放射素子10との間に空間42が形成されるように位置するため、aは、2.1mm以上であることが、利得差を大きくする点で好ましい。距離aは、誘電体部材41と空間42の実効比誘電率で決定される。本発明者は、誘電体部材41が放射素子10との間に空間42が形成されるように位置するとき、距離aをこのように設定することによって、利得差が0dB以上となることを見出した。
【0086】
図4は、第3の実施形態におけるアンテナユニット付き窓ガラスの積層構成の一例を模式的に示す断面図である。上述の実施形態と同様の構成及び効果の説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。アンテナユニット付き窓ガラス303は、アンテナユニット103と、窓ガラス201とを備える。アンテナユニット103は、建物用の窓ガラス201の屋内側の表面に取り付けられている。
【0087】
上述の実施形態と同様に、アンテナユニット103は、窓ガラス201と放射素子10との間に位相制御部材81が配置されているので、利得差が大きくなる。位相制御部材81は、複数の導体部を有する導波部材20と、導波部材20に対して窓ガラス201側に位置する誘電体部材41とを有し、上述の実施形態における位相制御部材80と同じ機能を備える。
【0088】
アンテナユニット103では、誘電体部材41の屋内側の表面に形成された導波部材20が放射素子10に接触しないように、誘電体部材41は基材50に対してスペーサ61により支持されている。つまり、アンテナユニット103は、導波部材20に対して放射素子10の側とは反対側に位置する誘電体の一例である誘電体部材41を備える。導波部材20は、誘電体部材41と放射素子10との間に位置する。誘電体部材41の屋内側の表面に設けられる導波部材20は、放射素子10との間に空間42が形成されるように位置し、放射素子10と導波部材20との間の媒質には、空間42のみが含まれている。空間42には、空気が存在するが、空気以外の気体でもよい。空間42は、真空でもよい。放射素子10が誘電体部材41に接さずに、放射素子10と導波部材20との間の媒質が空間42のみであるため、共振周波数が誘電体部材41の影響を受けにくく、利得差が大きくなる。
【0089】
アンテナユニット103は、放射素子10と導波部材20との間の媒質には、空間42のみが含まれているため、aは、2.3mm以上であることが、利得差を大きくする点で好ましい。本発明者は、放射素子10と導波部材20との間の媒質に空間42のみが含まれているとき、距離aをこのように設定することによって、利得差が0dB以上となることを見出した。
【0090】
なお、誘電体部材41は基材50に対してスペーサ61により支持されているが、誘電体部材41は支持部60により支持されてもよい。また、誘電体部材41は設けなくてもよく、導波部材20と窓ガラス201との間は、空間のみであってもよい。導波部材20と窓ガラス201との間が空間のみの場合、導波部材20は、例えば支持部60またはスペーサ61により支持される。
【0091】
図5は、第4の実施形態におけるアンテナユニット付き窓ガラスの積層構成の一例を模式的に示す断面図である。上述の実施形態と同様の構成及び効果の説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。アンテナユニット付き窓ガラス304は、アンテナユニット104と、窓ガラス201とを備える。アンテナユニット104は、建物用の窓ガラス201の屋内側の表面に取り付けられている。
【0092】
上述の実施形態と同様に、アンテナユニット104は、窓ガラス201と放射素子10との間に位相制御部材82が配置されているので、利得差が大きくなる。位相制御部材82は、複数の導体部を有する導波部材20と、導波部材20に対して窓ガラス201側に位置する誘電体である支持壁62とを有し、上述の実施形態における位相制御部材80と同じ機能を備える。
【0093】
アンテナユニット104では、導波部材20は、放射素子10に接触しないように、支持部60の窓ガラス201側の支持壁62に形成されており、支持壁62の屋内側に向く内壁面に形成されている。つまり、アンテナユニット104は、導波部材20に対して放射素子10の側とは反対側に位置する誘電体の一例である支持部60(の支持壁62)を備える。導波部材20は、支持壁62と放射素子10との間に位置する。支持部60の支持壁62に設けられる導波部材20は、放射素子10との間に空間42が形成されるように位置し、放射素子10と導波部材20との間の媒質には、空間42のみが含まれている。空間42には、空気が存在するが、空気以外の気体でもよい。空間42は、真空でもよい。放射素子10と導波部材20との間の媒質が空間42のみであるため、利得差が大きくなる。
【0094】
アンテナユニット104は、放射素子10と導波部材20との間の媒質には、空間42のみが含まれているため、aは、2.3mm以上であることが、利得差を大きくする点で好ましい。
【0095】
図6は、第5の実施形態におけるアンテナユニット付き窓ガラスの積層構成の一例を模式的に示す断面図である。上述の実施形態と同様の構成及び効果の説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。アンテナユニット付き窓ガラス305は、アンテナユニット105と、窓ガラス201とを備える。アンテナユニット105は、建物用の窓ガラス201の屋外側の表面に取り付けられている。
【0096】
アンテナユニット105は、アンテナユニット101(
図2参照)と同じ積層構成を有する。しかし、アンテナユニット105は、放射素子10が窓ガラス201と導波部材20との間に位置するように設けられている点で、アンテナユニット101と相違する。
【0097】
このように、アンテナユニット105は、導波部材20が、放射素子10に対して屋内側に位置する窓ガラス201に対して反対側(つまり、屋外側)に配置されている。このような配置なので、放射素子10から屋外側に向かって放射される電波の位相を位相制御部材80により制御でき、放射素子10に対して屋内側に位置する窓ガラス201の界面での電波の反射を抑制できるので、利得差が大きくなる。その結果、窓ガラス201の表面に対して法線方向に入射する電波の利得が増大し、放射素子10の後方(屋内側)への反射が減少するので、利得差が大きくなる。また、aは、(2.11×εr-1.82)mm以上であることが、利得差を大きくする点で好ましい。
【0098】
なお、窓ガラス201の屋外側に取り付けられるアンテナユニットは、
図6のアンテナユニット105に限られない。例えば、
図3のアンテナユニット102、
図4のアンテナユニット103又は
図5のアンテナユニット104と同じ積層構成を有するアンテナユニットが、窓ガラス201の屋外側に取り付けられてもよい。
【0099】
図7は、第6の実施形態におけるアンテナユニット付き窓ガラスの積層構成の一例を模式的に示す断面図である。上述の実施形態と同様の構成及び効果の説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。アンテナユニット付き窓ガラス403は、アンテナユニット503と、窓ガラス201とを備える。アンテナユニット503は、建物用の窓ガラス201の屋内側の表面に取り付けられている。
【0100】
アンテナユニット503は、アンテナユニット103(
図4参照)と同じ積層構成を有する。アンテナユニット503は、窓ガラス201と導波部材20との間に整合部材70を挟むように窓ガラス201に取り付けて使用される。
【0101】
整合部材70は、放射素子10と窓ガラス201との間に存在する媒質と、窓ガラス201との間で、インピーダンスのずれを整合する整合体の一例である。インピーダンスのずれが整合されることにより、放射素子10から窓ガラス201に向けて放射された電波は、窓ガラス201の界面で反射することを抑えることができるので、利得差が大きくなる。
【0102】
また、窓ガラス201の比誘電率をεr1、整合部材70の比誘電率をεr2、整合部材70と放射素子10との間の媒質の比誘電率をεr3とするとき、εr1は、εr2よりも大きく、εr2は、εr3よりも大きいことが、好ましい。これにより、放射素子10から放射される電波が、整合部材70と放射素子10との間の媒質、整合部材70、窓ガラス201の順に反射ロスを抑えて透過するので、利得差が大きくなる。
【0103】
整合部材70は、窓ガラス201に設けられる。本実施形態では、整合部材70は、窓ガラス201の屋内側の表面に設けられている。アンテナユニット503は、窓ガラス201の屋内側の表面に整合部材70を介して取り付けられている。
【0104】
誘電体部材41は、整合部材70と放射素子10との間の媒質の一例である。アンテナユニット付き窓ガラス403では、整合部材70と誘電体部材41とが接触していないが、接触してもよい。
【0105】
上述の実施形態と同様に、aは、(2.11×εr-1.82)mm以上であることが、利得差を大きくする点で好ましい。
【0106】
なお、窓ガラス201の屋内側に整合部材70を介して取り付けられるアンテナユニットは、
図7のアンテナユニット503に限られない。例えば、
図2のアンテナユニット101、
図3のアンテナユニット102又は
図5のアンテナユニット104と同じ積層構成を有するアンテナユニットが、窓ガラス201の屋内側に整合部材70を介して取り付けられてもよい。
【0107】
また、
図7に示されるアンテナユニット付き窓ガラスは、整合部材70と窓ガラス201との間に導体が設けられてもよい。整合部材70と窓ガラス201との間に導体が設けられることによって、整合部材70の厚さを薄くすることができる。整合部材70と窓ガラス201との間に設けられる導体は、例えば、所定帯域の周波数の電波を透過できるように、メッシュ状又はスリット状のパターン等が形成される周波数選択表面(FSS: Frequency Selective Surface)を有する導体パターンである。整合部材70と窓ガラス201との間に設けられる導体は、メタサーフェイスでもよい。整合部材70と窓ガラス201との間の導体は、無くてもよい。
【0108】
図8は、本実施形態におけるアンテナユニットの構成の一具体例を示す斜視図である。放射素子10は、給電点11によって給電される。
図8に示す形態では、導波部材20は、互いに平行に配置された複数の導体部21~24を有する。導体部の個数は、4つに限られない。複数の導体部は、線状又は帯状の導体素子であり、直線状でも曲がった形状でもよい。
【0109】
利得差を大きくするためには、各々の導体部の形状を変えたり、放射素子10と各々の導体部との位置関係を変えたりすればよい。複数の導体部は、
図8のように互いに同じ形状でもよい。複数の導体部のうち、第1グループの導体部(
図8の場合、導体部21,22)と、第2グループの導体部(
図8の場合、導体部23,24)とは、
図8のように放射素子10に対して対称に配置されてもよい。
図8に示す形態では、複数の導体部21~24は、同一平面上(ZX平面上)にあり、放射素子10の偏波方向(Z軸方向)における長さが互いに等しい。
【0110】
複数の導体部は、同一平面上になくてもよい。配置される平面が相違する導体部のそれぞれに誘起される電流の位相が異なるので、利得差が大きくなる。
【0111】
図9は、本実施形態におけるアンテナユニットの一具体例を示す平面図である。
図10は、
図9に示すアンテナユニットにおけるマイクロストリップアレイアンテナの構成を示す平面図である。
図11は、
図9に示すアンテナユニットにおける位相制御部材の構成を示す平面図である。
図9に示すアンテナユニット1は、放射素子10が複数のパッチ素子10A~10Dによって構成されたマイクロストリップアレイアンテナ14(
図10)と、誘電体部材41に設けられた複数の導体部21~23を有する位相制御部材80(
図11)とが積層する。積層構造は、
図3と同様である。基材50上にアレイ状に配置された複数のパッチ素子10A~10Dは、伝送線路12によって給電される。
【0112】
複数の導体部は、
図9のように形状が相違する導体部を含んでもよい。形状の相違する導体部のそれぞれに誘起される電流の位相が異なるので、利得差が大きくなる。
図9の場合、導体部22,23は、互いに同じ形状であるが、導体部21は、形状が導体部22,23と相違する。複数の導体部のうち、第1グループの導体部(
図9の場合、導体部21)と、第2グループの導体部(
図9の場合、導体部22,23)とは、
図9のように放射素子10に対して非対称に配置されてもよい。非対称配置の導体部のそれぞれに誘起される電流の位相が異なるので、利得差が大きくなる。
【0113】
複数の導体部は、
図9のように放射素子10の偏波方向(Z軸方向)における長さが相違する導体部を含んでもよい。放射素子10の偏波方向における長さの相違により、当該長さの相違する導体部のそれぞれに誘起される電流の位相が異なるので、利得差が大きくなる。
図9の場合、導体部22,23は、互いに同じ長さBであるが、導体部21の長さAは、導体部22,23の長さBと相違する。
【0114】
放射素子10の偏波方向における長さがAとBで異なると、導体部21に誘起される電流の位相と導体部22,23に誘起される電流の位相とが相違するので、利得差が大きくなる。利得差を大きくする点で、A/Bは、1.1以上2.0以下であることが好ましい。
【0115】
図9に示すように、複数の導体部21~23は、平面視において、パッチ素子10Aの外縁に沿って位置していると、マイクロストリップアレイアンテナ14の利得が向上する。同様に、平面視において、パッチ素子10B~10Dのそれぞれの外縁に沿って複数の導体部が位置していると、マイクロストリップアレイアンテナ14の利得が向上する。複数の導体部を、放射素子(パッチ素子)の偏波方向に延びる外縁に沿って位置させることが、マイクロストリップアレイアンテナ14の利得が向上する点で、より好ましい。
【0116】
図9において、放射素子10は、一の伝送線路12に接続される複数のアンテナ素子(この例では、4つのパッチ素子10A~10D)を含む。複数の導体部21~23は、複数のアンテナ素子のそれぞれに対して設けられている。
図9に示す例では、3つの導体部21~23が1つのパッチ素子10Aに対して設けられ、3つの導体部21~23が1つのパッチ素子10Bに対して設けられ、3つの導体部21~23が1つのパッチ素子10Cに対して設けられ、3つの導体部21~23が1つのパッチ素子10Dに対して設けられている。1つのアンテナ素子に対して設けられる導体部の数は、一つでも複数でもよいが、複数の方が、放射素子10から放射される電波の位相を大きく調整できる。複数のアンテナ素子のそれぞれに対して設けられる導体部の数は、複数のアンテナ素子間で、同じでも異なってもよい。1つのアンテナ素子に対して設けられる1つ又は複数の導体部は、当該アンテナ素子に近接して配置されている。
【0117】
図9,10に示すように、アンテナユニットは、複数の導体部のうち少なくとも一つの導体部に近接する少なくとも一つの無給電素子13を備えてもよい。無給電素子13によって、メインローブの方向が変わり、利得差を大きくすることができる。
図9,10に示す無給電素子13は、放射素子10(パッチ素子10A)と同一平面上に設けられ、パッチ素子10A及び導体部22,23と結合可能な距離で、パッチ素子10Aの外縁に沿って配置される。無給電素子13は、他のパッチ素子10B等にも、同様の形態で、近接して配置されてよい。無給電素子13の配置形態は、平面視で、複数の導体部の少なくとも一部に重複してもよいし、
図9に示すように重複していなくてもよい。放射素子10に対する無給電素子13の位置を調整することにより、利得差を調整することができる。
【0118】
図12は、
図9に示すアンテナユニットにおいて、A/B=1.0のときに逆相給電で得られる利得差をシミュレーションした結果の一例を示す図である。
図13は、
図9に示すアンテナユニットにおいて、逆相給電で得られる利得差とA/Bとの関係をシミュレーションした結果の一例を示す図である。
【0119】
図12,13は、パッチ素子10A,10Cが鉛直方向の上側になり、パッチ素子10B,10Dが鉛直方向の下側になるように、アンテナユニット1を設置し、パッチ素子10A,10Cとパッチ素子10B,10Dとを逆相で給電した場合を想定している。
図12の横軸は、水平面に対するメインローブ(グレーティングローブ)の傾斜角度θを表す。メインローブは、水平面に対して下方向に放射された利得を表し、グレーティングローブは、水平面に対して上方向に放射された利得を表す。
【0120】
図12,13のシミュレーション時、
図9,10に示す各部の寸法等のシミュレーション条件は、
A:可変
B:22.5mm(固定)
L1:212mm
L2:850mm
L3:24.5mm
L4:55.5mm
L5:18.2mm
L6:60.0mm
基材50の厚さ:3.3mm
基材50の比誘電率:4.4
誘電体部材41の厚さ:1.1mm
誘電体部材41の比誘電率:4.4
放射素子10と位相制御部材80との間の距離:7.5mm
放射素子10と窓ガラス201との間の距離:15mm
とした。
【0121】
図13に示されるように、A/Bを大きくするほど、利得差が向上し、A/Bが0.9以上であると、利得差の向上度合いが高くなる結果が得られた。
【0122】
図14は、
図9に示すアンテナユニットにおいて、A/B=1.0のときに位相差給電で得られる利得差をシミュレーションした結果の一例を示す図である。
図15は、
図9に示すアンテナユニットにおいて、位相差給電で得られる利得差とA/Bとの関係をシミュレーションした結果の一例を示す図である。
【0123】
図14,15は、パッチ素子10A,10Cが鉛直方向の上側になり、パッチ素子10B,10Dが鉛直方向の下側になるように、アンテナユニット1を設置し、メインローブの傾斜角度θが20度になるように(20度の利得が最大になるように)位相を設定した場合を想定している。
図14,15のシミュレーション時の条件は、
図12,13のシミュレーション時の上記の条件と同一である。
【0124】
図15に示されるように、A/Bを大きくするほど、利得差が向上し、A/Bが1.1以上であると、その利得差が大きくなる結果が得られた。
【0125】
図16は、ガラス板211,211が積層する窓ガラス201に向き合うアンテナユニット1を示す図である。
図17は、
図16のアンテナユニット1において位相制御部材80がある場合の、A/B=1.0のときに位相差給電で得られる利得をシミュレーションした結果の一例を示す図である。
図18は、
図16のアンテナユニット1において位相制御部材80がない場合の、A/B=1.0のときに位相差給電で得られる利得をシミュレーションした結果の一例を示す図である。
【0126】
図17,18は、パッチ素子10A,10Cが鉛直方向の上側になり、パッチ素子10B,10Dが鉛直方向の下側になるように、アンテナユニット1を
図16のように設置し、メインローブの傾斜角度θが20度になるように(20度の利得が最大になるように)位相を設定した場合を想定している。
【0127】
図17,18のシミュレーション時の条件は、
放射素子10と窓ガラス201との間の距離:15mm
ガラス板211,212の各々の厚さ:4.7mm
ガラス板211とガラス板212との間の空気層213の厚さ:6.0mm
とした。残りの条件は、
図12,13のシミュレーション時の上記の条件と同一である。
【0128】
位相制御部材80がある場合(
図17)、傾斜角度θが20度のときの利得は11.5dBiになり、位相制御部材80がない場合(
図18)、傾斜角度θが20度のときの利得は8.1dBiになるという結果が得られた。このように、位相制御部材80を設けることによって、窓ガラス201による反射が抑制されるという結果が得られた。
【0129】
以上、アンテナユニット及び窓ガラスを実施形態により説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が、本発明の範囲内で可能である。
【0130】
例えば、アンテナユニットは、窓ガラスに固定されなくてもよい。窓ガラスに向き合うように設置して使用されるように、アンテナユニットを天井から吊り下げたり、窓ガラスの周辺に存在する突起物(例えば、窓ガラスの外縁を保持する窓フレームや窓サッシ等)に固定させたりすることも可能である。アンテナユニットは、窓ガラスに接触した状態で設置されてもよいし、窓ガラスに接触せずに近接した状態で設置されてもよい。
【0131】
また、位相制御部材が有する導体部の個数は、複数に限られず、一つでもよい。
【0132】
本国際出願は、2019年9月18日に出願した日本国特許出願第2019-169601号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願第2019-169601号の全内容を本国際出願に援用する。
【符号の説明】
【0133】
1 アンテナユニット
10 放射素子
11 給電点
13 無給電素子
14 マイクロストリップアレイアンテナ
20 導波部材
21~24 導体部
30 導体
41 誘電体部材
42 空間
50 基材
60 支持部
62 支持壁
70 整合部材
80,81,82 位相制御部材
100 平面アンテナ
101~105,503 アンテナユニット
200,201 窓ガラス
301~305,403 アンテナ付き窓ガラス