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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-18
(45)【発行日】2025-02-27
(54)【発明の名称】金属又は半金属含有フィルムの生成方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/455 20060101AFI20250219BHJP
   C23C 16/06 20060101ALI20250219BHJP
   H01L 21/285 20060101ALI20250219BHJP
【FI】
C23C16/455
C23C16/06
H01L21/285 C
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021572357
(86)(22)【出願日】2020-05-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-12
(86)【国際出願番号】 EP2020064679
(87)【国際公開番号】W WO2020244988
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-04-28
(31)【優先権主張番号】19178784.5
(32)【優先日】2019-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(73)【特許権者】
【識別番号】520222900
【氏名又は名称】ウェイン ステート ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】クレンク,ジンヤ フェレナ
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァインフルト,ダフィト ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】マイアー,ルーカス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイグニー,ザビーネ
(72)【発明者】
【氏名】ウィンター,チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】ウェーラトゥンガ シリッカトゥゲ,ニランカ
(72)【発明者】
【氏名】カルナラトン,ターリンドゥ
【審査官】今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0115383(US,A1)
【文献】Cameron Jones, et al.,Alane-and gallane-sulfer donor chemistry:synthesis of AlH3NMe(CH2CH2)2S,{AlH2(μ-N(CH2CH2)2S}2 and MH(SCH2CH2NEt2)2(M=Al or Ga),J. Chem. Soc., Dalton Trans.,,1996年,p.829-p0833
【文献】Kyle J. Blakeney et al.,Aluminium Dihydride Complexes and their Unexpected Application in Atomic Layer Deposition of Titanium Carbonitride Films,ChemRxiv.,Issue 32,2018年07月13日,doi.org/10.26434/chemaxiv.6213851.v1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/455
C23C 16/06
H01L 21/285
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)気体状態の金属又は半金属含有化合物を固体基材上に堆積する工程と、
(b)前記固体基材を気体状態の一般式(I)、(II)、又は(III)
【化1】
(式中、Aは、NR、NR、PR、PR、O又はRであり、
Eは、N、NR、P、PR又はOであり、
nは、1、2、又は3であり、
Rは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又はシリル基であり、
R’は、水素、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又はシリル基であり、
A、E、及びnは、一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物が電子的に中性であるように選択される)
の化合物と接触させる工程と
を含む、無機の金属又は半金属含有フィルムを調製する方法。
【請求項2】
Rが、メチル、エチル、イソ-プロピル、sec-ブチル、tert-ブチル、トリメチルシリルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Rが1位に水素原子を持たない、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
nが1又は2である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物が、-80~125℃の融点を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記金属又は半金属含有化合物が、Ti、Ta、Mn、Mo、W、Ge、Ga、As、In、Sb、Te、Al又はSiを含有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記金属又は半金属含有化合物が金属又は半金属ハロゲン化物である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記無機の金属又は半金属含有フィルムが、金属、金属窒化物、金属炭化物、金属炭窒化物、金属合金、金属間化合物又はそれらの混合物を含有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程(a)及び(b)を含む一連の工程を少なくとも2回行う、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
原子層堆積法である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物が、600g/mol以下の分子量を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物が、200℃の温度で少なくとも1ミリバールの蒸気圧を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記無機の金属又は半金属含有フィルムが、5質量%未満の窒素を含有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物を、蒸着法における還元剤として使用する方法。
【請求項15】
前記蒸着法が原子層堆積法である、請求項14に記載の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に無機の金属又は半金属含有フィルムを生成するための方法、特に原子層堆積法の分野にある。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体産業では、小型化に伴い、基材上の無機薄フィルムの必要性が高まる一方で、そのようなフィルムの品質に対する要求は厳しくなっている。金属又は半金属の薄フィルムは、さまざまな目的、例えばバリア層、導電性機能、又はキャッピング層で使用されている。金属又は半金属フィルムを形成するためのいくつかの方法は知られている。その1つが、フィルム形成化合物を気体状態から基材上に堆積させることである。金属又は半金属の原子を適度な温度でガス状態にするためには、例えば、金属又は半金属を好適な配位子と錯化することにより、揮発性の前駆体を提供することが必要である。これらの前駆体は、蒸発に対して十分に安定している必要があるが、一方で、堆積物の表面と反応するのに十分な反応性を持っている必要がある。
【0003】
EP 3 121 309 A1は、トリス(ジアルキルアミノ)アルミニウム前駆体から窒化アルミニウムフィルムを堆積するための方法を開示している。しかしながら、この前駆体は、高品質のフィルムを必要とする用途には十分に安定していない。
【0004】
堆積された金属又は半金属の錯体を金属又は半金属のフィルムに変換するためには、通常、堆積された金属又は半金属の錯体を還元剤にさらすことが必要である。典型的には、堆積された金属又は半金属の錯体を金属又は半金属のフィルムに変換することに、水素ガスが使用される。水素は、銅又は銀などの比較的貴金属の還元剤としては十分な効果を発揮するが、チタン又はアルミニウムなどのより電気陽性の金属では満足のいく結果が得られない。
【0005】
WO 2013/070 702 A1には、ジアミンで配位された水素化アルミニウムを還元剤として用いて金属フィルムを堆積するための方法が開示されている。この還元剤は一般に良い結果をもたらすが、要求の厳しい用途では、より高い蒸気圧、安定性及び/又は還元電位が必要となる。
【0006】
D.Mukherjeeらは、Chemical Communications,第53巻(2017年),3593~3496頁に、キレート配位子を有するアラン錯体を開示している。しかしながら、この化合物は溶液中での有機合成にのみ使用されるため、無機の金属又は半金属含有フィルムを調製するためのそれらの適合性は、著者によって認識されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】EP 3 121 309 A1
【文献】WO 2013/070 702 A1
【非特許文献】
【0008】
【文献】D.Mukherjeeら,Chemical Communications,第53巻(2017年),3593~3496頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、フィルム中の不純物が少ない無機の金属又は半金属含有フィルムを調製する方法を提供することであった。加工材料は、取り扱いが容易であり;特に、分解をできるだけ少なくしてそれを蒸発させることが可能である。さらに、加工材料は、プロセス条件下で堆積表面で分解しないが、同時に、表面反応に関与するのに十分な反応性を有する。フィルムの汚染を避けるために、すべての反応副生成物は揮発性である。さらに、加工材料中の金属原子又は半金属原子が揮発性であるか、又はフィルムに組み込まれるように方法を調整することが可能である。さらに、この方法は、用途が広いので、電気陽性の金属又は半金属フィルムを含む幅広い種類の金属の製造に適用できる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これらの目的は、
(a)気体状態の金属又は半金属含有化合物を固体基材上に堆積する工程と、
(b)固体基材を気体状態の一般式(I)、(II)、又は(III)
【化1】
(式中、Aは、NR、NR、PR、PR、O、OR、S、又はSRであり、
Eは、N、NR、P、PR、O又はSであり、
nは、1、2、又は3であり、
Rは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又はシリル基であり、
R’は、水素、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又はシリル基であり、
A、E、及びnは、一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物が電子的に中性であるように選択される)
の化合物と接触させる工程と
を含む、無機の金属又は半金属含有フィルムを調製する方法によって達成された。
【0011】
さらに本発明は、一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物の、蒸着法における還元剤としての使用方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の好ましい実施態様は、本明細書及び特許請求の範囲に見出すことができる。異なる実施態様の組み合わせは、本発明の範囲内にある。
【0013】
本発明による方法は、無機の金属又は半金属含有フィルムを調製するのに適している。本発明の文脈における無機とは、少なくとも5質量%、好ましくは少なくとも10質量%、より好ましくは少なくとも20質量%、特に少なくとも30質量%の少なくとも1種の金属又は半金属を含有する材料を指す。典型的には、無機フィルムは、混合炭化物相、例えば窒化物炭化物相を含む炭化物相の形態でのみ炭素を含有する。無機フィルム中の炭化物相の部分ではない炭素の炭素含有量は、好ましくは5質量%未満、より好ましくは1質量%未満、特に0.2質量%未満である。無機の金属又は半金属含有フィルムの好ましい例としては、金属又は半金属の窒化物フィルム、金属又は半金属の炭化物フィルム、金属又は半金属の炭窒化物フィルム、金属又は半金属の合金フィルム、金属間化合物フィルム、又はそれらの混合物を含有するフィルムが挙げられる。
【0014】
本発明による方法によって調製されたフィルムは、金属又は半金属を含有する。フィルムが1種の金属又は半金属、又は2種以上の金属及び/又は半金属を含有することが可能である。金属には、Li、Be、Na、Mg、Al、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Cs、Ba、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Biが含まれる。半金属には、B、Si、Ge、As、Sb、Se、Teが含まれる。好ましくは、金属又は半金属は、Cuよりも電気的に陽性であり、より好ましくは、Niよりも電気的に陽性である。特に、金属又は半金属は、Ti、Ta、Mn、Mo、W、Ge、Ga、As、In、Sb、Te、Al又はSiである。
【0015】
固体基材はあらゆる固体材料であり得る。これらには、例えば、金属、半金属、酸化物、窒化物、及びポリマーが含まれる。また、基材が異なる材料の混合物であることも可能である。金属の例としては、アルミニウム、スチール、亜鉛、及び銅が挙げられる。半金属の例としては、シリコン、ゲルマニウム、及びガリウムヒ素が挙げられる。酸化物の例としては、二酸化ケイ素、二酸化チタン、及び酸化亜鉛が挙げられる。窒化物の例としては、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、及び窒化ガリウムが挙げられる。ポリマーの例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレン-ジカルボン酸(PEN)、及びポリアミドが挙げられる。
【0016】
固体基材はあらゆる形状を有することができる。これらには、シートプレート、フィルム、繊維、さまざまな大きさの粒子、溝又は他のくぼみがある基材が含まれる。固体基材は、任意のサイズを有することができる。固体基材が粒子形状を有する場合、粒子のサイズは100nm未満から数センチメートル、好ましくは1μm~1mmの範囲であり得る。金属又は半金属含有化合物がそれらの上に堆積される間、粒子又は繊維が互いにくっつくことを避けるために、それらを動かし続けることが好ましい。これは、例えば、撹拌、回転ドラム、又は流動床技術によって達成することができる。
【0017】
本発明によれば、固体基材を、気相での一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物と接触させる。一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物におけるR’は、水素、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又はシリル基、好ましくは水素又はアルキル基、特に水素、メチル又はエチルである。R’は、互いに同一であっても異なっていてもよい。好ましくは、すべてのR’が同一である。
【0018】
アルキル基は直鎖又は分岐状であり得る。直鎖アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシルが挙げられる。分岐状アルキル基の例としては、イソ-プロピル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、2-メチル-ペンチル、ネオ-ペンチル、2-エチル-ヘキシル、シクロプロピル、シクロヘキシル、インダニル、ノルボルニルが挙げられる。好ましくは、アルキル基は、C~Cアルキル基、より好ましくはC~Cアルキル基、特にC~Cアルキル基、例えばメチル、エチル、イソ-プロピル又はtert-ブチルである。
【0019】
アルケニル基は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含有する。この二重結合は、R’が分子の残りの部分に結合している炭素原子を含むことができるか、又はR’が分子の残りの部分に結合している場所からさらに離れた場所に配置することができる。アルケニル基は直鎖又は分岐状であり得る。R’が分子の残りの部分に結合している炭素原子を含む二重結合を含有する直鎖アルケニル基の例には、1-エテニル、1-プロペニル、1-n-ブテニル、1-n-ペンテニル、1-n-ヘキセニル、1-n-ヘプテニル、1-n-オクテニルが含まれる。R’が分子の残りの部分に結合している場所からさらに離れた場所に配置されている二重結合を含有する直鎖アルケニル基の例には、1-n-プロペン-3-イル、2-ブテン-1-イル、1-ブテン-3-イル、1-ブテン-4-イル、1-ヘキセン-6-イルが含まれる。R’が分子の残りの部分に結合している炭素原子を含む二重結合を含有する分岐状アルケニル基の例には、1-プロペン-2-イル、1-n-ブテン-2-イル、2-ブテン-2-イル、シクロペンテン-1-イル、シクロヘキセン-1-イルが含まれる。R’が分子の残りの部分に結合している場所からさらに離れて配置されている二重結合を含有する分岐状アルケニル基の例には、2-メチル-1-ブテン-4-イル、シクロペンテン-3-イル、シクロヘキセン-3-イルが含まれる。2つ以上の二重結合を有するアルケニル基の例には、1,3-ブタジエン-1-イル、1,3-ブタジエン-2-イル、シクロペンタジエン-5-イルが含まれる。
【0020】
アリール基には、芳香族炭化水素、例えばフェニル基、ナフタリル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、及びヘテロ芳香族基、例えばピリル、フラニル、チエニル、ピリジニル、キノイル、ベンゾフリル、ベンゾチオフェニル、チエノチエニルが含まれる。また、複数のこれらの基又はこれらの基の組み合わせ、例えばビフェニル、チエノフェニル又はフラニルチエニルも使用可能である。アリール基は、例えば、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物などのハロゲン;シアン化物、シアネート、チオシアネートなどの擬ハロゲン;アルコール;アルキル鎖又はアルコキシ鎖に置換することができる。芳香族炭化水素が好ましく、フェニルがより好ましい。
【0021】
シリル基は、典型的には3つの置換基を有するケイ素原子である。好ましくは、シリル基は式SiX(式中、Xは、互いに独立して、水素、アルキル基、アリール基又はシリル基である)を有する。3つのXがすべて同一であること、又は2つのXが同一で残りのXが異なること、又は3つのXがすべて互いに異なることが可能であり、好ましくはすべてのXが同一である。アルキル基及びアリール基は上述の通りである。シリル基の例には、SiH、メチルシリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリ-n-プロピルシリル、トリ-イソ-プロピルシリル、トリシクロヘキシルシリル、ジメチル-tert-ブチルシリル、ジメチルシクロヘキシルシリル、メチル-ジ-イソ-プロピルシリル、トリフェニルシリル、フェニルシリル、ジメチルフェニルシリル、ペンタメチルジシリルが含まれる。
【0022】
一般式(I)又は(II)の化合物におけるAは、NR、NR、PR、PR、O、OR、S、又はSR、すなわち、1個又は2個の置換基Rを有する窒素原子、1個又は2個の置換基Rを有するリン原子、酸素原子、置換基Rを有する酸素原子、硫黄原子、又は置換基Rを有する硫黄原子である。Rは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又はシリル基である。上述のR’と同じ定義が適用される。好ましくは、Rは、アルキル基又はシリル基、より好ましくはメチル、エチル、イソ-プロピル、sec-ブチル、tert-ブチル又はトリメチルシリル、特にメチル又はエチルである。一般式(I)又は(II)の化合物におけるすべてのAは、同一又は互いに異なることができる。
【0023】
一般式(II)又は(III)の化合物におけるEは、N、NR、P、PR、O又はS、すなわち、窒素原子、置換基Rを有する窒素原子、リン原子、置換基Rを有するリン原子、酸素原子、又は硫黄原子である。上述のRの定義が適用される。一般式(II)又は(III)の化合物におけるEは、同一又は互いに異なることができる。
【0024】
すべてのR及びR’が別々の置換基であることが可能である。あるいは、2つのR又は2つのR’、又はR及びR’が一緒に、環、好ましくは4~8員環、特に5又は6員環を形成していることも可能である。
【0025】
本発明によれば、一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物における、アルミニウム原子に結合している水素原子の数であるnは、1、2、又は3、好ましくは1又は2、特に1である。
【0026】
本発明によれば、A、E、及びnは、一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物が電子的に中性であるように選択される。AがNR、PR、O、又はSの場合、Aは配位子にアニオン性ドナー原子を提供するが、AがNR、PR、OR、又はSRの場合、Aは中性ドナー原子を提供する。EがN又はPの場合、Eはアニオン性ドナー原子を提供するが、EがNR、PR、O又はSの場合、それは中性ドナー原子を提供する。一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物を電子的に中性にするために、アニオン性ドナー原子の数とアルミニウム原子に結合する水素原子の数との合計は、Al3+原子の電荷を補償するために、3である必要がある。
【0027】
好ましくは、一般式(I)の化合物は、以下の一般式のうちの1つである。
【0028】
【化2】



【0029】
これらの一般式を参照した一般式(I)の化合物の好ましい例を以下の表に示す。
【0030】
【表1】


【0031】
Etはエチルを表す。
【0032】
一般式(I)の化合物の一部についての合成は、例えば、C.Jonesによるthe Journal of the Chemical Society,Dalton Transactions,volume 1996,829~833頁に記載されている。
【0033】
好ましくは、一般式(II)の化合物は、以下の一般式のうちの1つである。
【0034】
【化3】




【0035】
これらの一般式を参照した一般式(II)の化合物の好ましい例を以下の表に示す。
【0036】
【表2】



【0037】
Etはエチルを表し、Phはフェニルを表す。
【0038】
好ましくは、一般式(III)の化合物は、以下の一般式のうちの1つである。
【0039】
【化4】





【0040】
これらの一般式を参照した一般式(III)の化合物の好ましい例を以下の表に示す。
【0041】
【表3】




【0042】
Etはエチルを表し、Phはフェニルを表す。
【0043】
好ましくは、Rは、1位に水素原子を持たない、すなわち、Rは、窒素原子又は酸素原子に結合し、したがってアルミニウム原子に対してベータ位にある原子に結合する水素原子を持たない。また、好ましくは、R’’は、1位に水素原子を持たない。より好ましくは、R及びR’’の両方が1位に水素を持たない。例としては、1位に2つのアルキル側基を有するアルキル基、すなわち1,1-ジアルキルアルキル、例えばtert-ブチル、1,1-ジメチルプロピル;1位に2つのハロゲンを有するアルキル基、例えばトリフルオロメチル、トリクロロメチル、1,1-ジフルオロエチル;トリアルキルシリル基、例えばトリメチルシリル、トリエチルシリル、ジメチル-tert-ブチルシリル;アリール基、特にフェニル、又はアルキル置換フェニル、例えば2,6-ジイソプロピルフェニル、2,4,6-トリイソプロピルフェニルが挙げられる。1位に水素原子を持たないアルキル基が特に好ましい。
【0044】
一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物は、好ましくは1000g/mol以下、より好ましくは800g/mol以下、さらにより好ましくは600g/mol以下、特に500g/mol以下の分子量を有する。
【0045】
好ましくは、一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物は、-80~125℃、好ましくは-60~80℃、さらにより好ましくは-40~50℃、特に-20~20℃の範囲の融点を有する。一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物を溶融して、分解温度まで変化しない透明な液体が得られる場合が有利である。
【0046】
一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物は、好ましくは少なくとも80℃、より好ましくは少なくとも100℃、特に少なくとも120℃、例えば少なくとも150℃の分解温度を有する。多くの場合、分解温度は250℃以下である。一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物は、高い蒸気圧を有する。蒸気圧は、好ましくは200℃、より好ましくは150℃で、特に120℃で少なくとも1ミリバールである。通常、蒸気圧が1ミリバールである温度は、少なくとも50℃である。
【0047】
最良の結果を得るために、本発明による方法で使用される一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物は高純度で使用される。高純度とは、使用される物質が、一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物又は金属又は半金属含有化合物を少なくとも90質量%、好ましくは少なくとも95質量%、より好ましくは少なくとも98質量%、特に少なくとも99質量%含有することを意味する。純度は、DIN 51721(Pruefung fester Brennstoffe - Bestimmung des Gehaltes an Kohlenstoff und Wasserstoff - Verfahren nach Radmacher-Hoverath,2001年8月)による元素分析によって決定することができる。
【0048】
一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物は、気体状態から固体基材と接触させる。それは、例えばそれらを高温に加熱することによって気体状態にすることができる。いずれの場合でも、一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物の分解温度未満の温度を選択しなければならない。分解温度とは、一般式(I)、(II)、又は(III)の原始的な化合物がその化学構造及び組成を変化させ始める温度である。加熱温度は、好ましくは0℃~300℃、より好ましくは10℃~250℃、さらにより好ましくは20℃~200℃、特に30℃~150℃の範囲である。
【0049】
一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物を気体状態にする別の方法として、例えばUS 2009/0 226 612 A1に記載されている直接液体注入(DLI)がある。この方法では、一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物は、通常、溶媒中に溶解され、担体ガス又は真空中で噴霧される。一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物の蒸気圧及び温度が十分に高く、圧力が十分に低い場合、一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物は気体状態になる。一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物が、少なくとも1g/l,好ましくは少なくとも10g/l、より好ましくは少なくとも100g/lのようなその溶媒に十分な溶解度を示すならば、さまざまな溶媒を使用することができる。これらの溶媒の例としては、配位性溶媒、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエトキシエタン、ピリジン、又は非配位性溶媒、例えばヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン又はキシレンが挙げられる。溶媒の混合物も適している。
【0050】
あるいは、一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物は、例えばJ.Yangら(Journal of Materials Chemistry,2015年)によって記載されているように、直接液体蒸発(DLE)によって気体状態にすることができる。この方法では、一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物を、溶媒、例えばテトラデカンなどの炭化水素と混合し、溶媒の沸点未満に加熱する。溶媒を蒸発させることにより、一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物を気体状態にする。この方法は、表面に粒子状の汚染物質が形成されないという利点がある。
【0051】
一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物を減圧下で気体状態にすることが好ましい。このようにして、本発明の方法は、通常、一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物の分解を低減することをもたらす低い加熱温度で行うことができる。また、高圧を使用して、気体状態の一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物を固体基材に向かって押し出すことも可能である。この目的のために、多くの場合、窒素又はアルゴンなどの不活性ガスが担体ガスとして使用される。圧力は、好ましくは10バール~10-7ミリバール、より好ましくは1バール~10-3ミリバール、特に1~0.01ミリバール、例えば0.1ミリバールである。
【0052】
典型的には、一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物は、本発明の方法において還元剤として作用する。本発明によれば、金属又は半金属含有化合物は、一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物と接触させる前に、気体状態から固体基材上に堆積される。金属又は半金属含有化合物は、通常、金属、金属窒化物、金属炭化物、金属炭窒化物、金属合金、金属間化合物又はそれらの混合物に還元される。本発明の文脈における金属フィルムは、一般に少なくとも10S/m、好ましくは少なくとも10S/m、特に少なくとも10S/mの高い電気伝導性を有する金属又は半金属含有フィルムである。
【0053】
一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物は、金属又は半金属含有化合物が堆積された固体基材の表面と永久結合を形成する傾向が低い。その結果、金属又は半金属含有フィルムは、一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物の反応副生成物で汚染されにくい。好ましくは、金属又は半金属含有フィルムは、合計で、5質量%未満、より好ましくは1質量%未満、特に0.5質量%未満、例えば0.2質量%未満の窒素を含有する。
【0054】
金属又は半金属含有化合物は、少なくとも1種の金属又は半金属の原子を含有する。金属には、Li、Be、Na、Mg、Al、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Cs、Ba、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Biが含まれる。半金属には、B、Si、Ge、As、Sb、Se、Teが含まれる。好ましくは、金属又は半金属含有化合物は、Cuよりも電気的に陽性であり、より好ましくはNiよりも電気的に陽性である金属又は半金属を含有する。特に、金属又は半金属含有化合物は、Ti、Ta、Mn、Mo、W、Ge、Ga、As、In、Sb、Te、Al又はSiを含有する。2種以上の金属又は半金属含有化合物が、同時に又は連続的に表面に堆積されることも可能である。2種以上の金属又は半金属含有化合物が固体基材上に堆積された場合、すべての金属又は半金属含有化合物が同一の金属又は半金属、又は異なる金属又は半金属を含有することが可能であり、好ましくは、それらは異なる金属又は半金属を含有する。
【0055】
気体状態にすることができる金属又は半金属含有化合物が好適である。これらの化合物には、金属又は半金属アルキル、例えばジメチル亜鉛、トリメチルアルミニウム;金属アルコキシレート、例えばテトラメトキシシリコン、テトラ-イソプロポキシジルコニウム又はテトラ-イソ-プロポキシチタン;金属又は半金属シクロペンタジエニル錯体、例えばペンタメチルシクロペンジエニル-トリメトキシチタン又はジ(エチルシクロペンタジエニル)マンガン;金属又は半金属カルベン、例えばトリス(ネオペンチル)ネオペンチリデンタンタル又はビスイミダゾリジニリデンルテニウムクロリド;金属又は半金属ハロゲン化物、例えば三塩化アルミニウム、五塩化タンタル、四塩化チタン、五塩化モリブデン、四塩化ゲルマニウム、三塩化ガリウム、三塩化ヒ素又は六塩化タングステン;一酸化炭素錯体、例えばヘキサカルボニルクロム又はテトラカルボニルニッケル;アミン錯体、例えばビス(tert-ブチルイミノ)ビス(ジメチルアミノ)モリブデン、ビス(tert-ブチルイミノ)ビス(ジメチルアミノ)タングステン又はテトラキス(ジメチルアミノ)チタン;ジケトネート錯体、例えばトリス(アセチルアセトナト)アルミニウム又はビス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナト)マンガンが含まれる。金属又は半金属ハロゲン化物、特に塩化アルミニウム、臭化アルミニウム及びヨウ化アルミニウムが好ましい。金属又は半金属含有化合物の分子量は、好ましくは1000g/mol以下、より好ましくは800g/mol以下、特に600g/mol以下、例えば500g/mol以下である。
【0056】
好ましくは、本発明の方法は、以下の一連の工程、
(a)気体状態の金属又は半金属含有化合物を固体基材上に堆積する工程と、
(b)堆積された金属又は半金属含有化合物を有する固体基材を、一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物と接触させる工程と
を含む、原子層堆積(ALD)法として行われる。好ましくは、(a)及び(b)を含む一連の工程は、少なくとも2回、より好ましくは少なくとも5回、さらにより好ましくは少なくとも10回、特に少なくとも50回行われる。多くの場合、(a)及び(b)を含む一連の工程は、1000回以下行われる。
【0057】
一般的には、固体基材を気体状態の金属又は半金属含有化合物、又は一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物に接触させるたびに、基材及びその周囲の装置を不活性ガスでパージすることが好ましい。不活性ガスの好ましい例は、窒素及びアルゴンである。パージは、1秒~1分、好ましくは5~30秒、より好ましくは10~25秒、特に15~20秒行うことができる。
【0058】
好ましくは、基材の温度は、金属又は半金属含有化合物を気体状態にする場所よりも5℃~40℃、例えば20℃高い。基材の温度は、好ましくは室温から400℃、より好ましくは100~300℃、例えば150~220℃である。
【0059】
好ましくは、固体基材上に金属又は半金属含有化合物を堆積した後、かつ、堆積した金属又は半金属含有化合物を有する固体基材を一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物と接触させる前に、堆積した金属又は半金属含有化合物を有する固体基材を気相中の酸と接触させる。理論に縛られることなく、金属又は半金属含有化合物の配位子のプロトン化は、その分解及び還元を促進すると考えられている。好適な酸には、塩酸及びカルボン酸、好ましくはカルボン酸、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、又はトリフルオロ酢酸、特にギ酸が含まれる。
【0060】
あるいは、一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物からアルミニウムを堆積させることも可能である。この場合、例えば、固体基材の表面にOH基などの反応性基があるか、又は固体基材の温度が十分に高いため、一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物は、固体基材の表面に吸着する。好ましくは、吸着した一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物は分解される。
【0061】
分解は様々な方法で行うことができる。固体基材の温度を分解温度よりも高くすることができる。この場合、本発明の方法は、化学蒸着(CVD)法である。典型的には、固体基材は、300~1000℃の範囲、好ましくは350~600℃の範囲の温度に加熱される。
【0062】
さらに、堆積した一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物を、プラズマ、例えば酸素プラズマ、水素プラズマ、アンモニアプラズマ、又は窒素プラズマに;酸化剤、例えば酸素、酸素ラジカル、オゾン、亜酸化窒素(NO)、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO)、又は過酸化水素に;アンモニア又はアンモニア誘導体、例えばtert-ブチルアミン、イソ-プロピルアミン、ジメチルアミン、メチルエチルアミン、又はジエチルアミンに;ヒドラジン又はヒドラジン誘導体、例えばN,N-ジメチルヒドラジンに;溶媒、例えば水、アルカン、又はテトラクロロカーボンに;又はホウ素化合物、例えばボランに曝すことが可能である。その選択は、所望の層の化学構造に依存する。酸化アルミニウムの場合は、酸化剤、プラズマ又は水、特に酸素、水、酸素プラズマ又はオゾンを使用することが好ましい。窒化アルミニウムの場合は、アンモニア、ヒドラジン、ヒドラジン誘導体、窒素プラズマ又はアンモニアプラズマが好ましい。ホウ化アルミニウムの場合は、ホウ素化合物が好ましい。炭化アルミニウムの場合は、アルカン又はテトラクロロカーボンが好ましい。炭窒化アルミニウムの場合は、アルカン、テトラクロロカーボン、アンモニア及び/又はヒドラジンを含む混合物が好ましい。
【0063】
好ましくは、本発明の方法は、以下の一連の工程、
(c)固体基材を一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物と接触させる工程と
(d)吸着した一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物を分解する工程と、
を含む、原子層堆積(ALD)法として行われる。好ましくは、(c)及び(d)を含む一連の工程を、少なくとも2回、より好ましくは少なくとも5回、さらにより好ましくは少なくとも10回、特に少なくとも50回行う。多くの場合、(c)及び(d)を含む一連の工程は、1000回以下行われる。
【0064】
この場合、基材の温度は、好ましくは、金属又は半金属含有化合物を気体状態にする場所よりも5℃~40℃、例えば20℃高い。好ましくは、基材の温度は、室温から400℃、より好ましくは100~300℃、例えば150~220℃である。
【0065】
本発明による方法で基材の温度を金属又は半金属含有化合物の分解温度未満に維持する場合、典型的には、単層が固体基材上に堆積される。金属又は半金属含有化合物の分子が固体基材上に堆積されると、通常、その上にさらに堆積する可能性は低くなる。したがって、固体基材上への金属又は半金属含有化合物の堆積は、好ましくは自己制限的なプロセス工程を表す。自己制限的な堆積プロセス工程の典型的な層厚は、0.01~1nm、好ましくは0.02~0.5nm、より好ましくは0.03~0.4nm、特に0.05~0.2nmである。層厚は典型的に、PAS 1022 DE(Referenzverfahren zur Bestimmung von optischen und dielektrischen Materialeigenschaften sowie der Schichtdicke duenner Schichten mittels Ellipsometrie;2004年2月)に記載されているように、偏光解析法によって測定される。
【0066】
一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物、又は金属又は半金属含有化合物への基材の曝露は、ミリ秒から数分、好ましくは0.1秒~1分、特に1秒~10秒行うことができる。一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物、又は金属又は半金属含有化合物の分解温度未満の温度で固体基材を一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物、又は金属又は半金属含有化合物に曝す時間が長いほど、欠陥の少ないより規則的なフィルムが形成される。
【0067】
本発明による方法の具体的な利点は、一般式(I)、(II)、又は(III)の化合物は非常に汎用性が高いことであり、そのため、本発明の方法のパラメータを広い範囲で変化させることができる。したがって、本発明による方法は、CVD法とALD法との両方を含む。
【0068】
本発明による方法は、無機の金属又は半金属含有フィルムをもたらす。フィルムは、金属の単層のみであること、又は0.1nm~1μm、好ましくは0.5~50nmのように厚くすることができる。フィルムには、穴などの欠陥を含有することがある。しかしながら、これらの欠陥は、一般的に、フィルムで覆われた表面積の半分未満を占めている。好ましくは、フィルムは非常に均一な膜厚を有し、これは、基材上の異なる場所での膜厚の変化がほとんどなく、通常は10%未満、好ましくは5%未満であることを意味する。さらに、好ましくは、フィルムは、基材の表面上の共形フィルムである。膜厚及び均一性を決定するための好適な方法は、XPS又は偏光解析法である。
【0069】
本発明による方法によって得られるフィルムは、電子素子に使用することができる。電子素子は、例えば1nm~100μm、例えば10nm、14nm又は22nmなど、様々なサイズの構造的特徴を有することができる。電子素子のためのフィルムを形成する方法は、非常に微細な構造に特に適している。したがって、1μm未満のサイズの電子素子が好ましい。電子素子の例としては、電界効果トランジスタ(FET)、太陽電池、発光ダイオード、センサー、又はコンデンサーが挙げられる。発光ダイオード又は光センサーなどの光学素子では、本発明による方法によって得られるフィルムは、光を反射する層の屈折率を高めることに役立つ。
【0070】
好ましい電子素子はトランジスタである。好ましくは、フィルムは、トランジスタの化学的バリア金属として機能する。化学的バリア金属は、電気接続性を維持しつつ、隣接する層の拡散を低減する材料である。