IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社キャタラーの特許一覧 ▶ 国立大学法人広島大学の特許一覧

特許7636757導電性金属酸化物粒子及び電気化学反応用触媒粒子
<>
  • 特許-導電性金属酸化物粒子及び電気化学反応用触媒粒子 図1
  • 特許-導電性金属酸化物粒子及び電気化学反応用触媒粒子 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-18
(45)【発行日】2025-02-27
(54)【発明の名称】導電性金属酸化物粒子及び電気化学反応用触媒粒子
(51)【国際特許分類】
   H01B 5/00 20060101AFI20250219BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20250219BHJP
   H01M 4/92 20060101ALI20250219BHJP
   H01M 4/90 20060101ALI20250219BHJP
   B01J 37/00 20060101ALI20250219BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20250219BHJP
   B01J 23/648 20060101ALI20250219BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20250219BHJP
【FI】
H01B5/00 F
H01M4/86 B
H01M4/92
H01M4/90 M
B01J37/00 F
B01J37/08
B01J23/648 M
H01M8/10 101
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023146287
(22)【出願日】2023-09-08
【審査請求日】2025-01-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(73)【特許権者】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100122404
【弁理士】
【氏名又は名称】勝又 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】高野 葵
(72)【発明者】
【氏名】片岡 幹裕
(72)【発明者】
【氏名】荻 崇
(72)【発明者】
【氏名】平野 知之
【審査官】小林 秀和
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104148079(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0070500(US,A1)
【文献】特開2017-162572(JP,A)
【文献】特開平04-292480(JP,A)
【文献】国際公開第2015/146454(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/080400(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 5/00
H01M 4/86
H01M 4/92
H01M 4/90
B01J 35/60
B01J 37/00
B01J 37/08
B01J 23/648
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
比表面積が35m/g以上であり、かつ孔径20nm以上100nm以下の細孔の細孔容積が0.25mL/g以上であ
電気化学反応用触媒の担体として用いられる、
導電性金属酸化物粒子。
【請求項2】
比表面積が35m /g以上であり、かつ孔径20nm以上100nm以下の細孔の細孔容積が0.25mL/g以上であり、
一次粒子径が10nm以上30nm以下である
導電性金属酸化物粒子。
【請求項3】
比表面積が35m /g以上であり、かつ孔径20nm以上100nm以下の細孔の細孔容積が0.25mL/g以上であり、
結晶子径が10.0nm以上15.0nm以下である
導電性金属酸化物粒子。
【請求項4】
水銀ポロシメータを用いて水銀圧入法によって求めた細孔分布において、細孔径20~100nmの範囲の細孔分布におけるピークトップに対応する細孔径22nm以上である、請求項1に記載の導電性金属酸化物粒子。
【請求項5】
二次粒子径が0.05μm以上5.0μm以下である、請求項1に記載の導電性金属酸化物粒子。
【請求項6】
比表面積が35m /g以上であり、かつ孔径20nm以上100nm以下の細孔の細孔容積が0.25mL/g以上である導電性金属酸化物粒子であって、
前記導電性金属酸化物粒子が、ニオブ、タンタル、タングステン、アンチモン、及びビスマスから選択される1種又は2種以上の元素がドープされている酸化スズの粒子である
導電性金属酸化物粒子。
【請求項7】
前記導電性金属酸化物粒子が、ニオブがドープされている酸化スズの粒子である、請求項6に記載の導電性金属酸化物粒子。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の導電性金属酸化物粒子上に、触媒貴金属粒子が担持されている、電気化学反応用触媒粒子。
【請求項9】
前記触媒貴金属粒子が白金粒子である、請求項8に記載の電気化学反応用触媒粒子。
【請求項10】
燃料電池の電極触媒である、請求項8に記載の電気化学反応用触媒粒子。
【請求項11】
カソード用の電極触媒である、請求項10に記載の電気化学反応用触媒粒子。
【請求項12】
請求項10に記載の電気化学反応用触媒粒子を含む、燃料電池。
【請求項13】
請求項1~7のいずれか一項に記載の導電性金属酸化物粒子の製造方法であって、以下の(A)及び(B):
(A)比表面積が35m/g以上であり、かつ孔径が20nm以上100nm以下の細孔の細孔容積が0.25mL/g未満の導電性金属酸化物粒子前駆体と、成る孔形成材とを含む水系分散体を霧化した状態で拡散火炎によって乾燥して、前記導電性金属酸化物粒子前駆体及び前記孔形成材の凝集体を得ること、並びに
(B)前記凝集体を加熱して、前記孔形成材を燃焼させること
を含む、
導電性金属酸化物粒子の製造方法。
【請求項14】
前記孔形成材が、有機高分子、炭酸カルシウム、及び酸化亜鉛から選択される1種又は2種以上である、請求項13に記載の導電性金属酸化物粒子の製造方法。
【請求項15】
前記(A)工程の前に、
(C)金属原子含有有機化合物を有機溶媒に溶解させた溶液を噴霧して燃焼させて、前記導電性金属酸化物粒子前駆体を得ること
を更に含む、
請求項13に記載の導電性金属酸化物粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性金属酸化物粒子、及びこれを用いる電気化学反応用触媒粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
大気汚染防止、温室効果ガスの発生抑制、石油代替エネルギーの要請等に応えるため、燃料電池の研究開発が進められている。燃料電池は、クリーンであり、エネルギー密度が高く、充電が不要である、等の利点がある。
【0003】
燃料電池は、例えば、イオン交換膜を介してアノード及びカソードが対向配置された構造を有し、アノード側に燃料(例えば水素)を供給し、カソード側に酸化剤(例えば空気)を供給すると、両極でそれぞれ所定の電気化学反応が起こり、発電が行われる。
【0004】
燃料電池には、例えば、導電性担体の表面に触媒貴金属粒子が担持された構造の電極触媒が使用されている。導電性担体としては、導電性に優れるカーボンブラックが使用され、触媒貴金属粒子としては、触媒活性に優れる白金(Pt)が使用されることが多い。
【0005】
しかし、カーボンブラック担体を含む電極触媒を用いている燃料電池を長期間使用すると、カーボンブラックの酸化劣化に起因して、担持している触媒貴金属粒子が脱落し、或いは凝集して、発電性能が低下するとの問題がある。この問題を解決しようとして、従来技術ではいくつかの試みが提案されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、ニオブ(Nb)をドープした酸化スズ(SnO)のナノ粒子を、電極触媒用担体として用いることが開示されている。特許文献2には、5~100nmサイズの金属酸化物の一次粒子が融着結合して、連鎖状又は房状のストラクチャ構造を有している、電極触媒用担体が開示されている。特許文献3には、10~30nmサイズの結晶子が鎖状に融着結合した鎖状部と、空隙とを備える、金属酸化物微粒子の集合体を、電極触媒用担体として用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2015/146454号
【文献】国際公開第2015/146454号
【文献】国際公開第2020/080400号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1~3の技術によると、燃料電池の長期間使用に伴う電極触媒の担体の酸化劣化は抑制されるが、燃料電池の出力が不十分であるとの問題がある。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、長期間使用に伴う酸化劣化が抑制されており、かつ、出力の高い燃料電池を与える、電極触媒の担体、及びこれを用いる電極触媒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の概要は、以下のとおりである。
【0011】
《態様1》比表面積が35m/g以上であり、かつ孔径20nm以上100nm以下の細孔の細孔容積が0.25mL/g以上である、導電性金属酸化物粒子。
《態様2》一次粒子径が10nm以上30nm以下である、態様1に記載の導電性金属酸化物粒子。
《態様3》結晶子径が10.0nm以上15.0nm以下である、態様1に記載の導電性金属酸化物粒子。
《態様4》水銀ポロシメータによって測定したマクロ孔のモード直径が15nm以上である、態様1に記載の導電性金属酸化物粒子。
《態様5》二次粒子径が0.05μm以上5.0μm以下である、態様1に記載の導電性金属酸化物粒子。
《態様6》前記導電性金属酸化物粒子が、ニオブ、タンタル、タングステン、アンチモン、及びビスマスから選択される1種又は2種以上の元素がドープされている酸化スズの粒子である、態様1に記載の導電性金属酸化物粒子。
《態様7》前記導電性金属酸化物粒子が、ニオブがドープされている酸化スズの粒子である、態様6に記載の導電性金属酸化物粒子。
《態様8》態様1~7のいずれか一項に記載の導電性金属酸化物粒子上に、触媒貴金属粒子が担持されている、電気化学反応用触媒粒子。
《態様9》前記触媒貴金属粒子が白金粒子である、態様8に記載の電気化学反応用触媒粒子。
《態様10》燃料電池の電極触媒である、態様8に記載の電気化学反応用触媒粒子。
《態様11》カソード用の電極触媒である、態様10に記載の電気化学反応用触媒粒子。
《態様12》態様10に記載の電気化学反応用触媒粒子を含む、燃料電池。
《態様13》態様1~7のいずれか一項に記載の導電性金属酸化物粒子の製造方法であって、以下の(A)及び(B):
(A)比表面積が35m/g以上であり、かつ孔径が20nm以上100nm以下の細孔の細孔容積が0.25mL/g未満の導電性金属酸化物粒子前駆体と、孔形成材とを含む水系分散体を霧化した状態で拡散火炎によって乾燥して、前記導電性金属酸化物粒子前駆体及び前記孔形成材の凝集体を得ること、並びに
(B)前記凝集体を加熱して、前記孔形成材を燃焼させること
を含む、
導電性金属酸化物粒子の製造方法。
《態様14》前記孔形成材が、有機高分子、炭酸カルシウム、及び酸化亜鉛から選択される1種又は2種以上である、態様13に記載の導電性金属酸化物粒子の製造方法。
《態様15》前記(A)工程の前に、
(C)金属原子含有有機化合物を有機溶媒に溶解させた溶液を噴霧して燃焼させて、前記導電性金属酸化物粒子前駆体を得ること
を更に含む、
態様13に記載の導電性金属酸化物粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、長期間使用に伴う酸化劣化が抑制されており、かつ、出力の高い燃料電池を与える、電極触媒の担体として好適な導電性金属酸化物粒子、及び電極触媒として好適な電気化学反応用触媒粒子が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、比較例1で得られたPt/NTO粒子のSEM像である。
図2図2(a)及び(b)は、それぞれ、実施例2で得られたPt/有孔NTO粒子のSEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
《導電性金属酸化物粒子》
本発明の導電性金属酸化物粒子は、比表面積が35m/g以上であり、かつ孔径20nm以上100nm以下の細孔の細孔容積が0.25mL/g以上の導電性金属酸化物粒子である。
【0015】
導電性金属酸化物粒子を構成する金属酸化物は、導電性若しくは半導体性を有する金属酸化物、又はこれらに特定の不純物元素をドープした金属酸化物から選択して使用してよい。
【0016】
導電性又は半導体性を有する金属酸化物は、例えば、TiO、VO、Ti、V、VO、NbO、CrO、MoO、WO、ReO、RuO、OsO、RhO、IrO、SnO、ReO、LaTiO、SrMoO、SrRuO、LaRhO等から選択される1種又は2種以上であってよい。
【0017】
ドープする不純物元素は、例えば、リチウム(Li)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)等から選択される1種又は2種以上であってよく、導電性又は半導体性を有する金属酸化物の種類に応じて適宜選択して使用してよい。不純物元素のドープ量は、金属酸化物中の金属元素と不純物元素の合計原子数を100原子%としたときに、0.5原子%以上、1.0原子%以上、2.0原子%以上、又は3.0原子%以上であってよく、10.0原子%以下、8.0原子%以下、6.0原子%以下、又は5.0原子%以下であってよい。
【0018】
本発明の導電性金属酸化物粒子としては、Nb、Ta、W、Sb、及びBiから選択される1種又は2種以上の元素がドープされている酸化スズ(SnO)の粒子であってよく、特に、NbがドープされているSnOの粒子であってよい。
【0019】
本発明の導電性金属酸化物粒子は、一次粒子が、粒子間に孔径20nm以上100nm以下の細孔(マクロ孔)を形成するように集合して、多孔質かつ高比表面積の二次粒子の形態にあると考えられる。
【0020】
導電性金属酸化物粒子の比表面積は、35m/g以上である。この要件を満たすと、本発明の導電性金属酸化物粒子に触媒貴金属粒子を担持して、例えば電気化学反応用触媒粒子に適用する場合、導電性金属酸化物粒子表面に触媒貴金属粒子を強固に固着でき、触媒貴金属粒子のマイグレート及び凝集による活性の低下が抑制されると考えられる。
【0021】
導電性金属酸化物粒子の比表面積は、35m/g以上であり、40m/g以上、45m/g以上、50m/g以上、55m/g以上、60m/g以上、65m/g以上、又は70m/g以上であってよく、200m/g以下、180m/g以下、160m/g以下、140m/g以下、120m/g以下、100m/g以下、80m/g以下、又は70m/g以下であってよい。
【0022】
導電性金属酸化物粒子の比表面積は、窒素を吸着質とするBET法によって測定される。
【0023】
本発明の導電性金属酸化物粒子は、孔径20nm以上100nm以下の細孔(マクロ孔)の細孔容積が0.25mL/g以上である。この要件を満たすと、本発明の導電性金属酸化物粒子に触媒貴金属粒子を担持して、例えば電気化学反応用触媒粒子に適用する場合、反応物質が粒子内を流通して、触媒貴金属粒子に接触することが容易となるので、触媒作用を効率的に発現できる。
【0024】
導電性金属酸化物粒子のマクロ孔の細孔容積は、0.25mL/g以上であり、0.27mL/g以上、0.30mL/g以上、0.32mL/g以上であってよく、0.50mL/g以下、0.45mL/g以下、0.40mL/g以下、0.38mL/g以下、0.35mL/g以下、0.33mL/g以下、又は0.30mL/g以下であってよい。
【0025】
導電性金属酸化物粒子のマクロ孔の細孔容積は、水銀ポロシメータを用いて水銀圧入法によって求めた細孔分布において、細孔径20~100nmの範囲の累積細孔容積として、測定される。細孔径は、Washburnの式を用いて算出される。この計算において、水銀の表面張力は480dynes/cmとし、水銀と試料との接触角は140degrees(°)としてよい。試料は、前処理として120℃において4時間の恒温乾燥を行った後に、測定に供してよい。
【0026】
本発明の導電性金属酸化物粒子は、孔径20nm以上100nm以下の細孔(マクロ孔)のモード直径が15nm以上であってよい。マクロ孔のモード直径が15nm以上であると、本発明の導電性金属酸化物粒子に触媒貴金属粒子を担持して、例えば電気化学反応用触媒粒子に適用する場合、反応物質が粒子内を流通して、触媒貴金属粒子に接触することが容易となるので、触媒作用を効率的に発現できる。
【0027】
本発明の導電性金属酸化物粒子のマクロ孔のモード直径は、15nm以上、17nm以上、20nm以上、22nm以上、又は25nm以上であってよく、50nm以下、45nm以下、40nm以下、35nm以下、30nm以下、又は25nm以下、であってよい。
【0028】
導電性金属酸化物粒子のマクロ孔のモード直径は、水銀ポロシメータを用いて水銀圧入法によって求めた細孔分布において、細孔径20~100nmの範囲の細孔分布におけるピークトップに対応する細孔径として、測定される。
【0029】
本発明の導電性金属酸化物粒子の二次粒子径は、使用目的に応じて適宜に設定されてよい。しかしながら、適度のマクロ孔容積を確保するためには、導電性金属酸化物粒子の二次粒子径は過度に小さくない方がよい。一方で、触媒層の形成時等のハンドリング性を考慮すると、導電性金属酸化物粒子の二次粒子径は、過度に大きくない方がよい。これらの観点から、導電性金属酸化物粒子の二次粒子径は、0.05μm以上、0.07μm以上、0.1μm以上、0.2μm以上、0.3μm以上、又は0.5μm以上であってよく、5.0μm以下、4.0μm以下、3.0μm以下、2.0μm以下、1.5μm以下、1.0μm以下、0.8μm以下、又は0.5μm以下であってよい。
【0030】
導電性金属酸化物粒子の二次粒子径は、電子顕微鏡観察による数平均値として測定される。
【0031】
本発明の導電性金属酸化物粒子の一次粒子径は、二次粒子となったときに、粒子間に上記のようなマクロ孔を形成するために、10nm以上、12nm以上、15nm以上、17nm以上、又は20nm以上であってよく、30nm以下、25nm以下、23nm以下、20nm以下、18nm以下、又は15nm以下であってよい。
【0032】
導電性金属酸化物粒子の一次粒子径は、電子顕微鏡観察による数平均値として測定される。
【0033】
本発明の導電性金属酸化物粒子の結晶子径は、上記のような一次粒子を形成するために、10.0nm以上、11.0nm以上、12.0nm以上、又は13.0nm以上であってよく、20nm以下、18nm以下、15nm以下、13nm以下、又は12.0nm以下であってよい。
【0034】
導電性金属酸化物粒子の結晶子径は、導電性金属酸化物粒子のXRD分析の結果から、シェラーの式によって算出される。
【0035】
本発明の導電性金属酸化物粒子は、二次粒子同士が房状又は連鎖状に連結した構造を有していてよい。「房状」とは、例えばブドウの房に類似した形状であることをいう。「連鎖状」とは、二次粒子同士が連結して、例えば、鎖、梯子、網等の形状を形成していることをいう。
【0036】
本発明の導電性金属酸化物粒子は、微粒子が二次元に広がって連結する「タタミイワシ」状の形態、微粒子が三次元に無秩序に連結した塊状の形態等にはならなくてよい。
【0037】
《導電性金属酸化物粒子の製造方法》
本発明の導電性金属酸化物粒子は、上記の要件を備えている限り、どのような方法によって製造されてもよい。
【0038】
本発明の導電性金属酸化物粒子は、例えば、以下の(A)及び(B):
(A)比表面積が35m/g以上であり、かつ孔径が20nm以上100nm以下の細孔の細孔容積が0.25mL/g未満の導電性金属酸化物粒子前駆体と、孔形成材とを含む水系分散体を霧化した状態で拡散火炎によって乾燥して、前記導電性金属酸化物粒子前駆体及び前記孔形成材の凝集体を得ること(火炎援用噴霧乾燥工程)、並びに
(B)前記凝集体を加熱して、前記孔形成材を燃焼させること(加熱工程)
を含む方法によって、製造されてよい。
【0039】
本発明の導電性金属酸化物粒子の製造方法では、上記の(A)火炎援用噴霧乾燥工程の前に、
(C)金属原子含有有機化合物を有機溶媒に溶解させた溶液を噴霧して燃焼させて、前記導電性金属酸化物粒子前駆体を得ること(噴霧火炎燃焼工程)
を更に含んでもよい。
【0040】
以下、導電性金属酸化物粒子の製造方法の各工程について、順に説明する。
【0041】
〈(A)火炎援用噴霧乾燥工程〉
(A)火炎援用噴霧乾燥工程では、導電性金属酸化物粒子前駆体及び孔形成材を含む水系分散体を、霧化した状態で拡散火炎によって乾燥して、導電性金属酸化物粒子前駆体及び孔形成材から構成される凝集体を得る。
【0042】
(導電性金属酸化物粒子前駆体)
導電性金属酸化物粒子前駆体は、比表面積が35m/g以上であり、孔径が20nm以上100nm以下の細孔(マクロ孔)の細孔容積が0.25mL/g未満の粒子であってよい。
【0043】
導電性金属酸化物粒子前駆体の比表面積は、所望の導電性金属酸化物粒子の比表面積と同じであってよい。したがって、導電性金属酸化物粒子前駆体の比表面積は、35m/g以上、40m/g以上、45m/g以上、50m/g以上、55m/g以上、60m/g以上、65m/g以上、又は70m/g以上であってよく、200m/g以下、180m/g以下、160m/g以下、140m/g以下、120m/g以下、100m/g以下、80m/g以下、又は70m/g以下であってよい。
【0044】
本発明の導電性金属酸化物粒子の製造方法によると、孔形成材の燃焼によって、導電性金属酸化物粒子に孔径が20nm以上100nm以下の細孔(マクロ孔)が形成され、その細孔容積が0.25mL/g以上となる。したがって、導電性金属酸化物粒子前駆体のマクロ孔の細孔容積は、所望の導電性金属酸化物粒子のマクロ孔の細孔容積よりも小さくてよい。したがって、導電性金属酸化物粒子前駆体のマクロ孔の細孔容積は、0.25mL/g未満、0.24mL/g以下、0.20mL/g以下、0.15mL/g以下、0.10mL/g以下、若しくは0.05mL/g以下であってよく、又は、導電性金属酸化物粒子前駆体は、マクロ孔を持たなくてもよい。
【0045】
上記のとおり、本発明の導電性金属酸化物粒子の製造方法によると、孔形成材の燃焼によって、導電性金属酸化物粒子にマクロ孔が形成される。したがって、導電性金属酸化物粒子前駆体がマクロ孔を有している場合、そのモード直径は、所望の導電性金属酸化物粒子におけるマクロ孔のモード直径とは無関係に、適宜の値であってよい。導電性金属酸化物粒子前駆体がマクロ孔のモード直径は、1.0nm以上20.0nm以下であってよい。
【0046】
本発明の導電性金属酸化物粒子の製造方法によると、得られる導電性金属酸化物粒子の一次粒径は、導電性金属酸化物粒子前駆体の一次粒径と同等であるか、これよりも少し大きくなる。したがって、導電性金属酸化物粒子前駆体の一次粒径は、所望の導電性金属酸化物粒子の一次粒径と同等か、これよりも少し小さくてよい。導電性金属酸化物粒子前駆体の一次粒径は、5nm以上、8nm以上、10nm以上、13nm以上、又は15nm以上であってよく、25nm以下、23nm以下、20nm以下、18nm以下、15nm以下、又は10nm以下であってよい。
【0047】
本発明の導電性金属酸化物粒子の製造方法によると、得られる導電性金属酸化物粒子の結晶子径は、導電性金属酸化物粒子前駆体の結晶子径と同等であるか、これよりも少し大きくなる。したがって、導電性金属酸化物粒子前駆体の結晶子径は、所望の導電性金属酸化物粒子の結晶子径と同等か、これよりも少し小さくてよい。導電性金属酸化物粒子前駆体の結晶子径は、8.0nm以上、10.0nm以上、又は12.0nm以上以上であってよく、18nm以下、15nm以下、13nm以下、12.0nm以下、又は10.0nm以下であってよい。
【0048】
導電性金属酸化物粒子前駆体は、上記の一次粒径を有する一次粒子が凝集した二次粒子の形態にあってよい。この場合、導電性金属酸化物粒子前駆体の二次粒径は、所望の導電性金属酸化物粒子の二次粒径と同じであってよい。
【0049】
このような導電性金属酸化物粒子前駆体は、例えば、後述の(C)噴霧火炎燃焼工程によって製造することができる。また、導電性金属酸化物粒子前駆体としては、上記の要件を満たす市販品を使用してもよい。
【0050】
(孔形成材)
孔形成材は、有機高分子、炭酸カルシウム、酸化亜鉛等から選択される1種又は2種以上であってよい。
【0051】
孔形成材を構成する有機高分子としては、例えば、アクリル系高分子、芳香族系高分子、アクリル・芳香族系高分子等が挙げられ、これらのうちから選択される1種又は2種以上を使用してよい。
【0052】
アクリル系高分子としては、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等が;
芳香族系高分子としては、例えば、ポリスチレン等が;
アクリル・芳香族系高分子としては、例えば、スチレン・アクリル共重合体等が;
それぞれ挙げられる。
【0053】
孔形成材である有機高分子は、架橋されていても、架橋されていなくてもよい。
【0054】
孔形成材は、粒子状であってよい。粒子状の孔形成材の粒径は、50nm以上、100nm以上、150nm以上、200nm以上、又は300nm以上であってよく、1,000nm以下、800nm以下、600nm以下、500nm以下、400nm以下、300nm以下、又は200nm以下であってよい。本発明の導電性金属酸化物粒子の製造方法によると、粒径が上記範囲内の孔形成材を使用すると、マクロ孔の細孔容積が0.25mL/g以上の導電性金属酸化物粒子が得られる。
【0055】
(水系分散体)
(A)火炎援用噴霧乾燥工程で用いられる水系分散体は、上述の導電性金属酸化物粒子前駆体及び孔形成材を含む。
【0056】
水系分散体の溶媒は、水、又は水と水溶性有機溶媒との混合溶媒であってよく、典型的には水であってよい。
【0057】
水系分散体中の導電性金属酸化物粒子前駆体の量は、水系分散体の全量に対して、0.1質量%以上、0.2質量%以上、又は0.5質量%以上であってよく、10.0質量%以下、8.0質量%以下、5.0質量%以下、3.0質量%以下、2.0質量%以下、1.5質量%以下、又は1.0質量%以下であってよい。
【0058】
水系分散体中の孔形成材の量は、導電性金属酸化物粒子前駆体100質量部に対して、50質量部以上、100質量部以上、150質量部以上、200質量部以上、250質量部以上、又は300質量部以上であってよく、1,000質量部以下、800質量部以下、600質量部以下、500質量部以下、400質量部以下、又は300質量部以下であってよい。
【0059】
(火炎援用噴霧乾燥)
火炎援用噴霧乾燥工程では、上記の水系分散体を、霧化した状態で拡散火炎によって乾燥して、導電性金属酸化物粒子前駆体及び孔形成材から構成される凝集体を得る。
【0060】
水系分散体の霧を構成する水滴の粒径は、1nm以上6nm以下程度であってよい。水系分散体の霧の濃度は、単位時間当たりの水滴の体積として、1mL/分以上10mL/分以下程度であってよい。
【0061】
水系分散体の霧化には、市販の超音波霧化器、加熱式霧化器等を使用してよい。
【0062】
水系分散体の霧は、適当なキャリアガスによって拡散火炎中に運ばれる。キャリアガスは、不活性ガスであってよい。キャリアガスとして不活性ガスを使用することにより、拡散火炎の熱による水系分散体の乾燥がマイルドに進み、導電性金属酸化物粒子前駆体と孔形成材との自己組織化が促進される。この観点から、キャリアガスは、例えば、窒素(N)、アルゴン(Ar)等であってよい。キャリアガスの流量は、製造のスケールに応じて、当業者によって適宜に定められてよい。
【0063】
拡散火炎とは、可燃性気体及び酸化性気体が別々に存在している両者の界面に火炎が存在し、燃焼によって消費された可燃性気体及び酸化性気体のそれぞれが、拡散によって火炎に向かって連続的に供給されて、燃焼が維持されるときの火炎をいう。
【0064】
拡散火炎を構成する可燃性気体は、例えば、メタン、エタン、プロパン等であってよい。酸化性気体は、例えば、酸素、空気等であってよい。可燃性気体及び酸化性気体の供給量及び両者の比は、可燃性気体及び酸化性気体の種類及び製造のスケールに応じて、当業者によって適宜に定められてよい。
【0065】
霧化した水系分散体を拡散火炎で乾燥する「火炎援用噴霧乾燥」によって、導電性金属酸化物粒子前駆体及び孔形成材の凝集体が得られる。得られた凝集体は、例えば適当なバグフィルター等で捕集して、次の(B)加熱工程に供してよい。
【0066】
〈(B)加熱工程〉
(B)加熱工程では、(A)火炎援用噴霧乾燥工程で得られた金属酸化物粒子前駆体及び孔形成材の凝集体を加熱する。これにより、孔形成材が燃焼して焼失し、所定のマクロ孔を有する導電性金属酸化物粒子が形成される。
【0067】
(B)加熱工程における加熱温度は、孔形成材が有機高分子の場合は燃焼し、炭酸カルシウムの場合は熱分解し、又は酸化亜鉛の場合は揮発する温度としてよく、例えば、400℃以上、450℃以上、又は500℃以上としてよい。一方、加熱温度が過度に高いと、粒子のシンタリングが起こり、形成されたマクロ孔が「潰れる」懸念がある。この観点から、加熱温度は、1,000℃以下、900℃以下、800℃以下、700℃以下、600℃以下、又は550℃以下としてよい。孔形成材として有機高分子を用いる場合、(B)加熱工程における加熱温度は、例えば、400℃以上800℃以下としてよい。
【0068】
加熱時間は、10分以上、20分以上、30分以上、40分以上、45分以上、又は1時間以上としてよく、6時間以下、4時間以下、3時間以下、2時間以下、1.5時間以下、又は1時間以下としてよい。
【0069】
(B)加熱工程を実施する際の周囲雰囲気は、不活性雰囲気又は酸化性雰囲気としてよく、実際上は空気中で十分である。
【0070】
以上のようにして、本発明の導電性金属酸化物粒子が得られる。得られた導電性金属酸化物粒子は、そのまま、又は必要に応じて解砕及び分級を行ったうえで、使用に供してよい。
【0071】
〈(C)噴霧火炎燃焼工程〉
(C)噴霧火炎燃焼工程は、(A)火炎援用噴霧乾燥工程で使用する導電性金属酸化物粒子前駆体を製造するための任意的な工程である。したがって、この(C)噴霧火炎燃焼工程は、(A)火炎援用噴霧乾燥工程の前に行われてよい。
【0072】
(C)噴霧火炎燃焼工程では、
金属原子含有有機化合物を有機溶媒に溶解させて、金属原子含有有機化合物含有溶液を得ること、
前記金属原子含有有機化合物含有溶液を噴霧して燃焼させること
を含む方法により、導電性金属酸化物粒子前駆体を得る。
【0073】
(金属原子含有有機化合物含有溶液)
「金属原子含有有機化合物」とは、金属原子、炭素原子、及び水素原子を含み、任意的に、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子から選択される1種以上の原子を更に含んでもよい、化合物、塩、又は錯化合物を意味する。本発明における金属原子含有有機化合物は、ハロゲン原子及びケイ素原子は含まなくてよい。
【0074】
1つの金属原子含有有機化合物における金属原子の個数は、1個でも2個以上であってもよい。しかし、本発明における典型的な金属原子含有有機化合物は、1個の金属原子を含んでいてよい。
【0075】
金属原子含有有機化合物は、常温(25℃)及び常圧(1atm)のもとで、液体状の金属原子含有有機化合物であってよい。常温及び常圧で液体状の金属原子含有有機化合物を用いることにより、金属原子含有有機化合物の分解が促進され、金属原子含有有機化合物の析出(固体化)が抑制されて、均質かつナノサイズの導電性金属酸化物粒子前駆体の粒子が得られる。
【0076】
常温及び常圧で液体状の金属原子含有有機化合物は、例えば、金属のアルコキシド、金属の有機酸塩、金属の錯化合物等から選択される1種以上であってよい。
【0077】
金属原子含有有機化合物に含まれる金属が2種以上である場合、1分子内に2種以上の金属を含む金属原子含有有機化合物を用いてもよく、1分子内に1種の金属を含む金属原子含有有機化合物を2種以上用いてもよい、
【0078】
金属原子含有有機化合物に含まれる金属は、所望の導電性金属酸化物粒子における金属を同じ種類のものであってよい。本発明の導電性金属酸化物粒子は、好ましくはNb、Ta、W、Sb、及びBiから選択される1種又は2種以上の元素がドープされている酸化スズ(SnO)の粒子であってよく、特に、NbがドープされているSnOの粒子であってよい。したがって、(C)噴霧火炎燃焼工程における金属原子含有有機化合物に含まれる金属は、Nb、Ta、W、Sb、及びBiから選択される1種又は2種以上と、Snと、を含んでいてよい。
【0079】
酸化スズ(SnO)の前駆体である金属原子含有有機化合物は、特に、スズのカルボン酸塩であってよい。スズのカルボン酸塩において、スズは、II価であってもIV価であってもよい。スズのカルボン酸塩におけるアルキルカルボニルオキシ基の炭素数は、カルボニル炭素を含めて、2個以上、4個以上、6個以上、又は8個以上であってよく、20個以下、18個以下、16個以下、14個以下、12個以下、又は10個以下であってよい。アルキルカルボニルオキシ基の炭素数が4個以上であるとき、当該アルキルカルボニルオキシ基は直鎖状であっても分岐状であってもよい。
【0080】
ドープ元素の前駆体である金属原子含有有機化合物は、例えば、所定の金属のアルコキシドであってよい。所定の金属が複数の安定酸化数をとり得るとき、この金属アルコキシドにおける金属の酸化数は、安定酸化数のうちの何れであってもよい。また、このアルコキシドにおけるアルコキシル基の炭素数は、1個以上、2個以上、3個以上、又は4個以上であってよく、10個以下、8個以下、6個以下、4個以下、又は3個以下であってよい。アルコキシル基の炭素数が3個以上であるとき、当該アルコキシル基は直鎖状であっても分岐状であってもよい。
【0081】
本発明の導電電性酸化物粒子は、特に、ニオブがドープされている酸化スズの粒子であってよい。この場合、ドープ元素の前駆体である金属原子含有有機化合物は、例えば、ニオブのアルコキシド及びスズのカルボン酸塩であってよく、特に、ニオブ(V)エトキシド及びスズ(II)2-エチルヘキサノエートであってよい。
【0082】
金属原子含有有機化合物含有溶液における、酸化スズ粒子の前駆体とドープ元素の前駆体との混合比は、所望の導電電性酸化物粒子におけるスズ:ドープ元素の比と同じであってよい。スズ及びドープ元素の合計のモル数に対するドープ元素のモル数として、例えば、0.5モル%以上、1モル%以上、2モル%以上、3モル%以上、4モル%以上、又は5モル%以上であってよく、10モル%以下、8モル%以下、6モル%以下、又は5モル%以下であってよい。
【0083】
金属原子含有有機化合物含有溶液の溶媒は、有機溶媒である。この有機溶媒は、上記の金属原子含有有機化合物を溶解し得るものであってよい。
【0084】
有機溶媒として、具体的には、例えば、芳香族化合物、脂肪族炭化水素、アルコール、極性有機溶媒等が挙げられ、これらのうちから選択される1種又は2種以上を用いてよい。芳香族化合物としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、クメン、デュレン等が;脂肪族炭化水素としては、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等が;アルコールとしては、メタノール、エタノール、2-プロパノール、n-ブタノール、ベンジルアルコール等が;極性有機溶媒としては、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジエチルヘキサン酸等が;それぞれ挙げられる。
【0085】
有機溶媒は、燃焼エンタルピーが大きいものを含んでいてよい。溶媒の燃焼エンタルピーが大きいと、前駆体溶液の噴霧燃焼の際、導電性酸化物粒子前駆体及び触媒貴金属粒子前駆体が瞬時に目的物に転換され、前駆体の析出、凝集等の不都合が抑制される点で、望ましい。
【0086】
このような観点から、有機溶媒は、燃焼エンタルピー3,000kJ/mol以上の高燃焼エンタルピー溶媒を含んでいてよい。本発明の方法に用いられる有機溶媒は、高燃焼エンタルピー溶媒を、有機溶媒の全量に対して、30質量%以上、50質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、若しくは95質量%以上含んでいてよく、又は全部の有機溶媒が高燃焼エンタルピー溶媒であってもよい。
【0087】
高燃焼エンタルピー溶媒の燃焼エンタルピーは、3,500kJ/mol以上、4,000kJ/mol以上、又は4,500kJ/mol以上であってよく、6,000kJ/mol以下、5,500kJ/mol以下、又は5,000kJ/mol以下であってよい。このような燃焼エンタルピーを有する高燃焼エンタルピー溶媒としては、芳香族化合物、脂肪族炭化水素等が挙げられる。
【0088】
金属原子含有有機化合物含有溶液の有機溶媒は、芳香族化合物であってよく、特に、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等であってよい。
【0089】
なお、本明細書における燃焼エンタルピーは、25℃における液体の燃焼エンタルピーを意味する。
【0090】
金属原子含有有機化合物含有溶液のおける有機溶媒の使用量は、金属原子含有有機化合物含有溶液中の金属原子含有有機化合物の濃度が、0.05mol/L以上0.5mol/L以下となる量であってよい。
【0091】
(噴霧火炎燃焼工程)
次いで、上記のような金属原子含有有機化合物含有溶液を噴霧して燃焼させること
により、所定の導電性金属酸化物粒子前駆体が得られる。
【0092】
(C)噴霧火炎燃焼工程における燃焼は、噴霧火炎法(FSP法)によって行われてよい。噴霧火炎法では、分散ガスの気流によって霧状にされた金属原子含有有機化合物含有溶液を、口火によって着火させて、火炎を形成する。このとき形成される火炎は、霧状に噴霧された金属原子含有有機化合物含有溶液が燃焼している噴霧火炎である。この噴霧火炎を用いる噴霧燃焼法は、既に形成されている火炎中に、液滴化した原料を供給して燃焼させる、拡散火炎を用いる粒子の合成法とは異なる。
【0093】
分散ガスは、酸化性の気体であってよく、例えば、空気、酸素等であってよい。口火は、霧状にされた金属原子含有有機化合物含有溶液に着火し得る限り、特に限定されず、例えば、メタンと、空気又は酸素とによって形成されたものであってよい。
【0094】
上記のような(C)噴霧火炎燃焼工程によって、導電性金属酸化物粒子前駆体が得られる。得られた導電性金属酸化物粒子前駆体は、例えば適当なバグフィルター等で捕集して、そのまま、又は必要に応じて解砕及び分級を行ったうえで、(A)火炎援用噴霧乾燥工程に供してよい。
【0095】
《電気化学反応用触媒粒子》
本発明の別の観点によると、電気化学反応用触媒粒子が提供される。
【0096】
本発明の電気化学反応用触媒粒子は、本発明の導電性金属酸化物粒子と上に、触媒貴金属粒子が担持された構成を有する。
【0097】
触媒貴金属粒子は、例えば白金族金属の粒子であってよく、特に、白金粒子、又は白金と他の金属との合金の粒子であってよい。ここで使用される他の金属は、例えば、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、ルテニウム(Ru)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、スズ(Sn)、イットリウム(Y)等から選択されてよい。
【0098】
触媒貴金属粒子は粒子状であり、その粒径は、導電性金属酸化物粒子の粒径よりも小さくてよく、1nm以上、2nm以上、3nm以上、4nm以上、又は5nm以上であってよく、20nm以下、15nm以下、10nm以下、8nm以下、7nm以下、又は6nm以下であってよい。
【0099】
電気化学反応用触媒粒子における触媒貴金属粒子の担持量は、電気化学反応用触媒粒子の全質量に対する触媒貴金属粒子の質量割合として、5質量%以上、10質量%以上、12質量%以上、15質量%以上、17質量%以上、又は20質量%以上であってよく、30質量%以下、28質量%以下、25質量%以下、23質量%以下、又は20質量%以下であってよい。
【0100】
本発明の電気化学反応用触媒粒子は、燃料電池の電極触媒として好適であり、燃料電池のカソード(空気極)用の電極触媒として、特に好適である。
【0101】
《電気化学反応用触媒粒子の製造方法》
本発明の電気化学反応用触媒粒子は、上記の構成を有しているものである限り、どのような方法によって製造されてもよい。
【0102】
本発明の電気化学反応用触媒粒子は、例えば、
本発明の導電性金属酸化物粒子と触媒金属前駆体とを接触させること、
触媒金属前駆体を還元して、導電性金属酸化物粒子上に触媒金属粒子を担持して、電気化学反応用触媒粒子を得ること
を含む方法により、製造されてよい。
【0103】
触媒金属前駆体は、所望の触媒金属粒子を構成する金属のハロゲン化物、硫化物、シアン化物、錯体等から適宜選択して使用してよい。触媒金属粒子が白金粒子である場合、触媒金属前駆体は、例えば、PtCl、PtCl、PtBr、PtS、Pt(CN)、PtCl(NH(ジニトロジアンミン白金)、ヘキサヒドロキソ白金等であってよい。
【0104】
導電性金属酸化物粒子と触媒金属前駆体との接触は、例えば、適当な溶媒中で行われてよい。溶媒は、触媒金属前駆体を溶解可能なものから選択して使用してよい。例えば、触媒金属粒子が白金粒子であり、触媒金属前駆体が、PtClであるときには塩酸を使用してよく、PtBrであるときには臭化水素酸水溶液を使用してよく、PtCl(NHであるときには硝酸水溶液を使用してよく、PtCl、PtS、又はPt(CN)であるときには水を使用してよく、ヘキサヒドロキソ白金であるときには、アミンを含む溶媒使用してよい。
【0105】
触媒金属前駆体の還元は、適当な還元剤を使用して行ってよい。還元剤は、例えば、エタノール、ギ酸、酢酸、アセトアルデヒド、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン等であってよい。還元は、10℃以上100℃以下の温度にて、0.5時間以上8時間以下の時間で行われてよい。還元温度は、還元剤として水素化ホウ素ナトリウムを用いる場合には、10℃以上50℃以下とすることが好ましく、還元剤としてエタノール、ギ酸、酢酸、アセトアルデヒド、又はヒドラジンを用いる場合には、60℃以上100℃以下とすることが好ましい。
【0106】
このようにして、導電性金属酸化物粒子上に触媒金属粒子が担持された、電気化学反応用触媒粒子が得られる。得られた電気化学反応用触媒粒子は、必要に応じて洗浄及び乾燥し、更に必要に応じて解砕及び分級したうえで、使用に供してよい。
【0107】
《燃料電池》
本発明の更に別の観点によると、燃料電池が提供される。本発明の燃料電池は、本発明の電気化学反応用触媒粒子を含む電極を有する。
【0108】
本発明の電気化学反応用触媒粒子を含む電極は、カソード(空気極)であってよい。このカソードは、適当な基材層と、該基材層上の触媒層(カソード側触媒層)とを有していてよく、カソード側触媒層は、本発明の電気化学反応用触媒粒子を含む。
【0109】
基材層は、電気化学反応用触媒粒子及び溶媒、並びに電極形成時に好ましく行われる加熱処理、加圧処理等に耐え得る、化学的及び機械的な安定性を有するものから適宜選択して使用してよい。具体的には、例えば、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン等のシートを使用してよい。
【0110】
カソード側触媒層は、本発明の電気化学反応用触媒粒子を含むが、これ以外に、アイオノマーを含んでいてよく、例えばバインダー等の任意成分を、更に含んでいてよい。アイオノマーは、例えば、ナフィオン(テトラフルオロエチレン系(共)重合体のスルホン化物)であってよい。
【0111】
上記のようなカソードは、当該カソード上に固体高分子電解質膜及びアノード(水素極)をこの順に積層されて成る、燃料電池電極接合体の形態に構成される。この燃料電池電極接合体における、固体高分子電解質膜及びアノードは、それぞれ、公知の固体高分子電解質膜及びアノードであってよい。この燃料電池電極接合体は、カソードとして本発明の電気化学反応用触媒粒子を含む電極を用いる他は、公知の方法により、製造されてよい。
【0112】
本発明の燃料電池は、上記の燃料電池電極接合体を含み、これ以外に、例えば、カソード側に、空気チャネル又は酸素チャネルを有していてよく、アノード側に、燃料チャネルを有していてよい。本発明の燃料電池は、カソードとして、本発明の電気化学反応用触媒粒子を含む電極を用いる他は、公知の方法により、製造されてよい。
【実施例1】
【0113】
《比較例1》
(1)NTO粒子の調製
Sn及びNbの合計濃度が0.1mol/L、両者の原子比がSn:Nb=96:4となるように、キシレン中にスズ(II)2-エチルヘキサノエート(Sn(C15)及びニオブエトキシド(Nb(OC)を溶解させて、NTO粒子の前駆体溶液を調製した。
【0114】
シリンジポンプを用いて、(株)アトマックス製の二流体ノズル「AM6型ノズル」に、得られた前駆体溶液を流速3mL/分にて供給した。流速1.5L/分の酸素気流により前駆体溶液を霧状にし、メタン1L/分及び空気10L/分のメタン/空気混合口火によって点火し、前駆体溶液の噴霧火炎を形成して、比較例1のNbドープ酸化スズ(NTO)粒子を合成した。
【0115】
生成したNTO粒子は、ホーコス(株)製のバグフィルターにより捕集した。
【0116】
(2)Ptの担持(Pt/NTO粒子の調製)
純水90mL中に、担体粒子として上記で得られたNTO粒子3.2gを投入し、攪拌羽根を用いて250rpmにて30分間撹拌して、懸濁液を得た。撹拌後の懸濁液を撹拌しつつ、金属換算0.8g相当の白金を含むヘキサヒドロキソ白金酸のアミン溶液をゆっくりと滴下し、滴下終了後30分間撹拌を継続した。次いで、撹拌を更に継続しつつ液を加熱し、液温を95℃まで昇温して、この温度を維持した。ここに、濃度1mol/Lのギ酸水溶液を40mLをゆっくりと滴下し、95℃の液温を更に5分間維持することにより、白金を還元してNTO粒子上に担持した。
【0117】
反応混合物からろ取により粒子を回収し、純水によって洗浄した後、80℃において12時間乾燥することにより、比較例1のPt/NTO粒子を得た。図1に、比較例1のPt/有孔NTO粒子のSEM像を示す。図1を参照すると、比較例1のPt/NTO粒子は、明確なマクロ孔を有さず、また、明確な粒子形状を形成せずに「タタミイワシ」状に連結して広がっていることが分かる。
【0118】
《比較例2》
比較例1と同様にして得られたNTO粒子を、空気中、1,200℃において、1時間焼成し、これを担体粒子として用いた他は、比較例1と同様にしてPtを担持することにより、比較例2のPt/NTO粒子を得た。
【0119】
《比較例3》
(1)NTO粒子の調製
Sn及びNbの合計濃度が0.1mol/L、両者の原子比がSn:Nb=96:4となるように、エタノール中に塩化スズ(II)(SnCl)及び塩化ニオブ(NbCl)を溶解させて、NTO粒子の前駆体溶液を調製した。
【0120】
得られた前駆体溶液を、超音波ネブライザーによって液滴化した。得られた液滴をNキャリアーガスによって搬送し、メタン/酸素による拡散火炎により燃焼及び熱分解することにより、比較例3のNTO粒子を合成した。
【0121】
(2)Ptの担持(Pt/NTO粒子の調製)
担体粒子として上記で得られたNTO粒子を用いた他は、比較例1と同様にしてPtを担持することにより、比較例3のPt/NTO粒子を得た。
【0122】
《実施例1》
(1)有孔NTO粒子の調製
超純水中に、比較例1と同様にして調製したNTO粒子(導電性酸化物粒子前駆体)及び粒径100nmのポリメタクリル酸メチル(PMMA)の球形粒子を分散させて、有孔NTO粒子製造用の水系分散体を調製した。この水系分散体において、NTO粒子の濃度は水系分散体の全量に対して1質量%とし、PMMA球形粒子の添加量は、NTO粒子の質量の3倍相当量とした。
【0123】
超音波霧化器中に水系分散体を導入して霧化し、流量3L/分のNキャリアーガスによりバーナーに供給した。バーナーには、メタン0.5L/分及び酸素1.3L/分のメタン/酸素拡散火炎が形成されており、霧化した水系分散体は、この拡散火炎によって乾燥され、更にPMMA粒子の一部が燃焼して、凝集体となった(火炎援用噴霧乾燥法)。得られた凝集体をバグフィルターで捕集し、空気中、500℃において1時間加熱してPMMA粒子を完全に燃焼させることにより、実施例1の有孔NTO粒子(導電性金属酸化物粒子)を得た。
【0124】
(2)Ptの担持(Pt/有孔NTO粒子の調製)
担体粒子として上記で得られた有孔NTO粒子を使用した他は、比較例1と同様にしてPtの担持を行うことにより、実施例1のPt/有孔NTO粒子を得た。
【0125】
《実施例2》
PMMA球形粒子の粒径を300nmとし、その添加量をNTO粒子の質量の2倍相当量とした他は、実施例1と同様にして、実施例2のPt/有孔NTO粒子を得た。
【0126】
図2に、実施例2のPt/有孔NTO粒子のSEM像を示す。図2を参照すると、実施例1のPt/有孔NTO粒子は、明確なマクロ孔を有する二次粒子が、ブドウの房状に連結していることが確認できる。
【0127】
《実施例3》
乾燥凝集物の焼成条件を、空気中、1,000℃、1時間とした他は、実施例2と同様にして、実施例3のPt/有孔NTO粒子を得た。
【0128】
《分析》
各実施例及び比較例で得られた粒子(NTO粒子及びPt/NTO粒子)の分析は、以下の手法によって行った。
【0129】
〈Pt粒子径〉
Pt/NTO粒子中の担持Pt粒子の粒径は、Pt/NTO粒子のXRDからシェラーの式によって算出した。
【0130】
〈Pt粒子担持量〉
Pt/NTO粒子中のPt粒子の担持量は、原料の仕込み量から計算により求めた。なお、Pt担持工程で得られた反応混合物の上澄み液について、高周波誘導結合プラズマ(ICP)分析を行ったところ、全部の実施例及び比較例において、液中にPtイオンは検出されなかった。
【0131】
〈粒子の比表面積〉
NTO粒子の比表面積は、窒素を吸着質とするBET法により求めた。
【0132】
〈NTO粒子の一次粒子径〉
NTO粒子の一次粒子径は、透過型顕微鏡像から平均値として求めた。
【0133】
〈NTO粒子の結晶子径〉
NTO粒子の結晶子径は、XRDからシェラーの式によって算出した。
【0134】
〈NTO粒子のマクロ孔の分析〉
NTO粒子のマクロ孔の分析は、Micrometrics Instruments社製の細孔分布測定装置「AutoPore V(model 9620)」を用いて水銀圧入法によって行った。
【0135】
NTO粒子試料を、120℃において4時間恒温乾燥した後、上記の細孔分布測定装置を用いて水銀圧入法によって細孔分布を求めた。細孔径は、Washburnの式を用いて算出した。得られた細孔分布から細孔径20~100nmの範囲の累積細孔容積を算出し、これをマクロ孔容積とした。ここで、水銀の表面張力は480dyne/cmとし、水銀と試料との接触角は140°とした。
【0136】
また、上記で得られた細孔径20~100nmの範囲の細孔分布におけるピークトップに対応する細孔径を、マクロ孔のモード直径とした。
【0137】
《電気化学測定(最大電流密度及び効率点電圧)》
各実施例及び比較例で得られたPt/NTO粒子を用いて膜電極接合体(MEA)を作製し、電気化学測定に供した。各Pt/NTO粒子は、乳鉢により粉砕した後、MEAの作製に供した。
【0138】
(1)MEA(Membrane Electrode Assembly:膜電極接合体)の作製
純水1.25g及び無水エタノール1.0gから成る混合溶媒中にPt/NTO粒子800mgを分散し、更に、Nafion(登録商標)分散液(含量10質量%)を加えて、混合物を得た。ここで、Nafion(登録商標)分散液の添加量は、NTO粒子の質量に対して0.175倍相当量とした。得られた混合物を、水浴中で10時間超音波分散した。
【0139】
テフロン(登録商標)シート上に、超音波分散後の混合物を塗布し、溶媒を蒸散させて、シート上にPt/NTO粒子を含む触媒層(カソード側触媒層)を形成した。この触媒層の単位面積当たりのPt密度は、0.1mg/cmとした。
【0140】
Pt/NTO粒子の代わりに、ケッツェンブラック上に20質量%のPtを担持した触媒粉末を用いた他は、上記と同様にして、シート上に水素局側触媒層を形成した。この触媒層の単位面積当たりのPt密度は、カソード側触媒層と同じく0.1mg/cmとした。
【0141】
高分子電解質膜の両面に、上記で得られたカソード側触媒層及びアノード側触媒層を有するテフロン(登録商標)シートを、触媒層形成面を対向させて積層し、ホットプレスによって転写した。その後、テフロン(登録商標)シートを剥離し、更に、各触媒層の表面上に拡散層を設置することにより、空気拡散層、カソード側触媒層、高分子電解質膜、アノード側触媒層、及び水素拡散層が、この順に積層されたMEAを得た。
【0142】
(2)電気化学測定
次いで、上記で得られたMEAを電気化学測定用の単セルにセットし、市販の燃料電池評価装置に連結した。そして、セル温度80℃、相対湿度100%の環境下で、カソード側に空気を1.0L/分にて供給し、アノード側に水素を0.5L/分にて供給しつつ、掃引速度10mV/秒に電圧1.0Vから0Vまで卑な方向に電圧を掃引して、IV曲線を取得した。
【0143】
得られたIV曲線のうちの、最大電流値を最大電流密度とし、電流密度が0.5A/cmのときの電圧を効率点電圧とした。なお、比較例3のPt/NTO粒子を用いて作製したMEAは、触媒性能が低すぎて効率点電圧の値が測定できなかった。
【0144】
上記の結果を、表1及び表2にまとめて示す。
【0145】
【表1】
【0146】
【表2】
【0147】
表1及び表2を参照すると、以下のことが理解される。
【0148】
Pt/NTO粒子を燃料電池のカソード側の電極触媒として用いる場合、NTO粒子担体のマクロ孔容積の小さい比較例1及び3のPt/NTO粒子でdは、最大電流密度及び効率点電圧の双方が不十分であった。また、NTO粒子担体のマクロ孔容積は大きいが、比表面積が小さい比較例2のPt/NTO粒子では、最大電流密度は高い値を示したが、効率点電圧は不十分であった。
【0149】
これらに対して、NTO粒子担体のマクロ孔容積が大きく、かつ、比表面積も大きい本発明の所定範囲内である実施例1~3のPt/NTO粒子を用いると、最大電流密度及び効率点電圧双方とも高い値を示した。
【0150】
これは、NTO粒子担体のマクロ孔容積が大きいこと、及び比表面積が大きいことに起因すると考えられる。すなわち、NTO粒子担体のマクロ孔容積が大きいことにより、燃料電池の発電によって発生するHOを容易に触媒層から排出できる。そのため、触媒層中のガスの拡散性が高く保持される結果、最大電流密度が高い値を示すと考えられる。また、NTO粒子担体の比表面積が大きいことにより、担持されるPt粒子の凝集が抑制される。そのため、触媒貴金属粒子のECSA(電気化学的表面積)が大きく保持される結果、効率点電圧が高い値を示すと考えられる。
【0151】
本発明の電極触媒は、これらの両者が相まって、効率的な電極触媒作用と示すと考えられる。
【要約】
【課題】長期間使用に伴う酸化劣化が抑制されており、かつ、出力の高い燃料電池を与える、電極触媒の担体、及びこれを用いる電極触媒を提供すること。
【解決手段】電極触媒の担体は、比表面積が35m/g以上であり、かつ孔径20nm以上100nm以下の細孔の細孔容積が0.25mL/g以上である、導電性金属酸化物粒子であり、電極触媒は、前記導電性金属酸化物粒子上に触媒貴金属粒子が担持されている、電気化学反応用触媒粒子である。
【選択図】図2
図1
図2