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特許7637705薄膜形成用プリカーサ、その製造方法、及びそれを含む薄膜製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-19
(45)【発行日】2025-02-28
(54)【発明の名称】薄膜形成用プリカーサ、その製造方法、及びそれを含む薄膜製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/30 20060101AFI20250220BHJP
   C07C 255/03 20060101ALI20250220BHJP
   C07F 9/00 20060101ALI20250220BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20250220BHJP
【FI】
C23C16/30
C07C255/03
C07F9/00 Z
C23C16/455
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022578741
(86)(22)【出願日】2021-06-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-14
(86)【国際出願番号】 KR2021007831
(87)【国際公開番号】W WO2021261890
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2022-12-19
(31)【優先権主張番号】10-2020-0077334
(32)【優先日】2020-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】321001986
【氏名又は名称】ソウルブレイン シーオー., エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】ヨン,チャン ボン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ジェ ソン
(72)【発明者】
【氏名】ビョン,ヘ ラン
(72)【発明者】
【氏名】オム,テ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ソク ジョン
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0251920(US,A1)
【文献】特開2003-064475(JP,A)
【文献】特表2014-518944(JP,A)
【文献】国際公開第2019/039103(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/30
C07C 255/03
C07F 9/00
C23C 16/455
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニオブ(Nb)、タングステン(W)及びモリブデン(Mo)から選択される金属のハロゲン化物と、アルキルの炭素数が1~15のアルキルシアナイドとから形成される配位化合物20~100重量%と、
アルキルの炭素数が1~15のアルキルシアナイド0~80重量%と
を含み、
20℃及び1barの条件下で液体であることを特徴とする、薄膜形成用プリカーサ。
【請求項2】
前記ハロゲン化物は、フッ素(fluorine)化物であることを特徴とする、
請求項1に記載の薄膜形成用プリカーサ。
【請求項3】
前記金属が5価であることを特徴とする、
請求項1に記載の薄膜形成用プリカーサ。
【請求項4】
前記薄膜形成用プリカーサは、熱重量分析器(TGA)による最終温度(Tf)が180℃以上であることを特徴とする、
請求項1に記載の薄膜形成用プリカーサ。
【請求項5】
前記薄膜形成用プリカーサは、熱重量分析器(TGA)による残留物(residue)が3重量%未満であることを特徴とする、
請求項1に記載の薄膜形成用プリカーサ。
【請求項6】
前記薄膜形成用プリカーサは、示差走査熱量計(DSC)による発熱温度(exothermic temperature)が150℃以上であることを特徴とする、
請求項1に記載の薄膜形成用プリカーサ。
【請求項7】
ニオブ(Nb)、タングステン(W)及びモリブデン(Mo)から選択される金属のハロゲン化物と、アルキルの炭素数が1~15のアルキルシアナイドとを、有機溶媒下で反応させて、配位化合物を合成する段階を含むことを特徴とする、
薄膜形成用プリカーサの製造方法。
【請求項8】
前記有機溶媒はハロゲン化炭化水素であることを特徴とする、
請求項7に記載の薄膜形成用プリカーサの製造方法。
【請求項9】
前記アルキルシアナイドまたは飽和炭化水素は、前記ハロゲン化物と、アルキルシアナイドまたは飽和炭化水素とのトータルである100重量%に対して、20~40重量%で含まれることを特徴とする、
請求項7に記載の薄膜形成用プリカーサの製造方法。
【請求項10】
前記合成は15~25℃で実施されることを特徴とする、
請求項7に記載の薄膜形成用プリカーサの製造方法。
【請求項11】
前記合成された溶液を濾過する段階と、
前記濾過後に得られた濾過液を減圧蒸発させて前記配位化合物を得る段階とを含むことを特徴とする、
請求項7に記載の薄膜形成用プリカーサの製造方法。
【請求項12】
前記得られた配位化合物を、アルキルの炭素数が1~15のアルキルシアナイドと混合して希釈する段階をさらに含むことを特徴とする、
請求項11に記載の薄膜形成用プリカーサの製造方法。
【請求項13】
請求項1~6のいずれかに記載の薄膜形成用プリカーサを、CVDチャンバまたはALDチャンバに注入して、ローディング(loading)された基板の表面に吸着させる段階と、
吸着されていない残留薄膜形成用プリカーサを、パージガスでパージする段階と、
反応ガスを供給して、基板の表面に吸着された薄膜形成用プリカーサと反応させて金属薄膜層を形成する段階と
反応副産物をパージガスでパージする段階と、を含むことを特徴とする、
膜の造方法。
【請求項14】
前記反応ガスは還元剤、窒化剤または酸化剤であることを特徴とする、
請求項13に記載の薄膜の製造方法。
【請求項15】
前記薄膜形成用プリカーサは、VFC方式、DLI方式またはLDS方式により基板表面に移送されることを特徴とする、
請求項13に記載の薄膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜形成用プリカーサ、その製造方法、及びそれを含む薄膜製造方法に関するものであり、より詳細には、常温にて液体状態であって揮発性が強く蒸着速度が非常に速く、薄膜蒸着チャンバへの注入時の取り扱いが容易であり、特に熱安定性に優れ、純度が高く段差被覆性(step coverage)に優れた薄膜を製造することができる薄膜形成用プリカーサ、その製造方法、及びそれを含む薄膜製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜蒸着技術である、化学気相蒸着技術(CVD; Chemical Vapor Deposition)、及び原子層蒸着技術(ALD; Atomic Layer Deposition)の使用により、半導体素子の大きさはさらに微細化され、素子の集積度は迅速に増加している。
【0003】
しかし、前記化学気相蒸着技術は、薄膜形成に必要な全ての原料物質が、同時に蒸着チャンバ内に供給され、所望の組成比や物性を有する膜を形成することが難しく、高温で蒸着が行われるため、半導体素子の劣化や蓄電容量の低下を招きうる。
【0004】
また、前記原子層蒸着技術は、薄膜形成に必要な原料物質を独立して供給して所望の組成比や物性を有する膜を形成することができるが、薄膜形成用プリカーサの種類に制限が多いのであり、特に、薄膜形成用プリカーサとして金属塩化物を用いる場合、誘電膜などが損傷して、リーク電流の劣化を招きうる。
【0005】
酸化ニオブ(Nb)の薄膜は、誘電率(dielectric constant)が大きく、強誘電体物質の構成成分であるだけでなく、高集積不揮発性メモリを構成する核心素材として使用されており、窒化ニオブ(NbN)薄膜は、半導体素子の微細化パターンにおいても高い仕事関数を提供することから、半導体分野で広く利用されている。
【0006】
前記ニオブ薄膜を製造するための薄膜形成用プリカーサとして一般的に使用されているのは、Nb(OR)(Rはアルキル)の形態の物質である。しかし、この薄膜形成用プリカーサは、粘度が高く耐加水分解性が低い欠点があり、アルコキシド配位子(alkoxide ligand)が容易に解離するので、熱によりオリゴマーやポリマーが作られる副反応が起こり、これにより揮発性が減少し、薄膜生成速度が遅くなり、薄膜の組成が変化するという欠点がある。
【0007】
また、Nb(NMeの形態の薄膜形成用プリカーサも開発されたが、この物質は、昇華性は比較的優れているが、固体の形態であって液体薄膜形成用プリカーサに比べて揮発性が低く、150℃以上では容易に分解されるなど、熱安定性が悪く、耐加水分解性が脆弱であるという問題がある。
【0008】
したがって、常温にて液体状態であって揮発性が強く熱安定性に優れ、薄膜生成速度及び薄膜の物性等がいずれも優れたニオブ薄膜等を製造できる薄膜形成用プリカーサ等の開発が必要な実状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】韓国公開特許第2001-0038063号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記のような従来技術の問題点を解決するために、本発明は、常温にて液体状態であって揮発性が強く蒸着速度が非常に速く、薄膜蒸着チャンバへの注入時の取り扱いが容易であり、特に、熱安定性に優れ、純度が高く段差被覆性(step coverage)に優れた薄膜を製造することができる薄膜形成用プリカーサ、その製造方法、及びそれを含む薄膜製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
本発明の前記目的及び他の目的は、以下に説明する本発明によってすべて達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明は20℃及び1barの条件下で液体であり、下記化学式1で表される配位化合物20~100重量%、及びアルキルの炭素数が1~15であるアルキルシアナイド0~80重量%を含む薄膜形成用プリカーサを提供する。
【0013】
[化学式1]
MXnLmYz
【0014】
(Mはニオブ(Nb)、タングステン(W)またはモリブデン(Mo)であり、Xはハロゲン元素であり;nは1~6の整数であり;Lは、アルキルの炭素数が1~15のアルキルシアナイドであるか、または炭素数が3~15であって、1つ以上の窒素(N)、酸素(O)、リン(P)または硫黄(S)で置換された直鎖状または環状の飽和炭化水素であり、mは1~3の整数であり、結合したYはアミンであり、zは0~4の整数であり、n+zは3~6の整数である。)
【0015】
また、本発明は、下記化学式2で表される化合物と、アルキルの炭素数が1~15のアルキルシアナイド、または炭素数が3~15であって、1つ以上の窒素(N)、酸素(O)、リン(P)または硫黄(S)で置換された直鎖状または環状の飽和炭化水素とを、有機溶媒下で反応させて、前記化学式1で表される配位化合物を合成する段階を含む薄膜形成用プリカーサの製造方法を提供する。
【0016】
[化学式2]
MX(6-a)
【0017】
(Mはニオブ(Nb)、タングステン(W)またはモリブデン(Mo)であり、Xはハロゲン元素であり、Yはアミンであり、aは1~6の整数である。)
【0018】
また、本発明は、本発明による薄膜形成用プリカーサを、CVDチャンバまたはALDチャンバに注入して、ローディング(loading)された基板の表面に吸着させる段階;吸着されない残留薄膜形成用プリカーサをパージガスでパージする段階;反応ガスを供給して、基板の表面に吸着された薄膜形成用プリカーサと反応させることで金属薄膜層を形成する段階;反応副産物をパージガスでパージする段階、を含む薄膜製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、常温にて液体状態であって揮発性が強く蒸着速度が非常に速く、薄膜蒸着チャンバへの注入時の取り扱いが容易であり、特に、熱安定性に優れ、純度が高く段差被覆性に優れた薄膜を製造できる薄膜形成用プリカーサ、その製造方法及びそれを含む薄膜製造方法を提供するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態によるALD工程を説明するための工程図である。
図2】本発明の実施例1で製造された薄膜形成用プリカーサを乾燥の前後に撮影した写真である。
図3】本発明の実施例1で製造された薄膜形成用プリカーサをDSC分析して得られたグラフである。
図4】本発明の実施例1で製造された薄膜形成用プリカーサをTGA分析して得られたグラフである。
図5】本発明の実施例1で製造された薄膜形成用プリカーサを150℃での1時間放置の前後に測定したNMRスペクトラムである。
図6】本発明の実施例2で製造された薄膜形成用プリカーサをDSC分析して得られたグラフである。
図7】本発明の実施例2で製造された薄膜形成用プリカーサをTGA分析して得られたグラフである。
図8】本発明の実施例2で製造された薄膜形成用プリカーサを150℃での1時間の放置の前後に測定したNMRスペクトラムである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本記載の薄膜形成用プリカーサ、その製造方法及びそれを含む薄膜製造方法について詳細に説明する。
【0022】
本発明者らは、ニオブ金属等を所定の配位子(ligand)に配位させる場合、常温で液状であるか、或いは所定の溶媒による液状化が容易であるということを確認したのであり、さらには、このような配位金属化合物を薄膜形成プリカーサとして用いて金属薄膜を形成する場合、常温にて液体状態であって、揮発性が強く蒸着速度が非常に速く、薄膜蒸着チャンバへの注入時の取り扱いが容易であり、特に、熱安定性に優れ、純度が高く、段差被覆性に優れた薄膜が製造されるということを確認し、これに基づいて、さらに研究に邁進することで本発明を完成するに至った。
【0023】
本発明の薄膜形成用プリカーサは、20℃及び1barの条件下で液体であり、
【0024】
[化学式1]
MXnLmYz
【0025】
(Mはニオブ(Nb)、タングステン(W)またはモリブデン(Mo)であり、Xはハロゲン元素であり、nは1~6の整数であり、Lは、アルキルの炭素数が1~15のアルキルシアナイドであるか、または、炭素数が3~15であって、1以上の窒素(N)、酸素(O)、リン(P)または硫黄(S)で置換された直鎖状または環状の飽和炭化水素であり、mは1~3の整数であり、結合したYはアミンであり、zは0~4の整数であり、n+zは3~6の整数である)。
で表される配位化合物20~100重量%、及びアルキルの炭素数が1~15のアルキルシアナイド0~80重量%を含むことを特徴とする。このような薄膜形成用プリカーサを用いて金属薄膜を製造する場合に、常温にて液体状態であって揮発性が強く蒸着速度が非常に速く、粘度や蒸気圧を容易に調節できることから、薄膜蒸着チャンバへの注入時の取り扱いが容易であり、特に、熱安定性に優れ、容易に分解されず、純度が高く、段差被覆性に優れた薄膜が製造されるという利点がある。
【0026】
また別の例として、前記化学式1中、nは2~4の整数であり、mは1~3の整数であり、zは1~3の整数であり、n+m+zは6である。
【0027】
前記配位化合物は、Xが好ましくはフルオリンであり、nは好ましくは5であり、mは1でありうるのであり、この場合、常温にて液体状態であって、揮発性が強いながらも熱安定性に優れ、蒸着速度及び取り扱い易さが高く、薄膜の純度及び段差被覆性に優れた利点がある。
【0028】
前記配位化合物において、Lは、好ましくはアルキルの炭素数が1~5のアルキルシアナイドであり、より好ましくはアルキルの炭素数が3~5のアルキルシアナイドであり、この範囲内にて液状化が容易であるという利点がある。
【0029】
また別の例として、前記配位化合物中のLは、好ましくは炭素数が3~10であり、1つ以上の窒素(N)または酸素(O)で置換された直鎖状または環状の飽和炭化水素であり得るのであり、より好ましくは、炭素数が4~8であって、1つ以上の窒素(N)または酸素(O)で置換された直鎖状または環状の飽和炭化水素であり、具体的な例としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどでありえ、この範囲内にて薄膜形成用プリカーサの液状化が容易であるという利点がある。
【0030】
本記載において、飽和炭化水素が1つ以上の窒素(N)、酸素(O)、リン(P)または硫黄(S)で置換されるということの意味は、窒素(N)、酸素(O)、リン(P)または硫黄(S)が、飽和炭化水素の原子と原子との間に挿入結合されるか、飽和炭化水素中の水素原子、炭素原子、CH基またはCH基と置換されるものでありえる。
【0031】
前記Lは、好ましくは配位子として作用する。
【0032】
前記配位化合物において、Yは、好ましくは二級アミンであり、より好ましくはジアルキルアミンであり、具体的な例としてはジエチルアミン、ジメチルアミン、エチルメチルアミン、ジプロピルアミン等からなる群から選択される1種以上であり、この範囲内にて液状化が容易であるという利点がある。
【0033】
前記配位化合物は、好ましい例として下記化学式1a、より好ましくは1bであり得るのであり、この場合、薄膜形成用プリカーサを用いて金属薄膜を製造する場合に、常温にて液体状態であって揮発性が強く、蒸着速度が非常に速く、粘度や蒸気圧を容易に調整することができ、薄膜蒸着チャンバへの注入の際の取り扱いが容易であり、特に、熱安定性に優れ、容易に分解されないことから、純度が高く段差被覆性に優れた薄膜が製造されるという利点がある。
【0034】
[化学式1a]
MXnLmYz
【0035】
(Mはニオブ(Nb)、タングステン(W)またはモリブデン(Mo)であり、Xはハロゲン元素であり、nは1~6の整数であり、Lはアルキルの炭素数が1~15のアルキルシアナイドであり、mは1~3の整数であり、Yはアミンであり、zは0~4の整数であり、n+m+zは6である。)
【0036】
[化学式1b]
MXnLm
【0037】
(Mはニオブ(Nb)、タングステン(W)またはモリブデン(Mo)であり、Xはハロゲン元素であり、nは3~6の整数であり、Lはアルキルの炭素数が1~15のアルキルシアナイドであり、mは1~3の整数であり、n+mは6である。)
【0038】
また別の例では、nは3~5の整数であり得る。
【0039】
前記薄膜形成用プリカーサは、熱重量分析器(TGA)による最終温度(Tf)が好ましくは180℃以上であり、より好ましくは180~250℃であり、さらに好ましくは190~230℃であり、この範囲内にて、純度に優れ、段差被覆性に優れるという効果がある。
【0040】
前記薄膜形成用プリカーサは、熱重量分析器(TGA)による残留物(residue)が好ましくは3重量%未満であり、より好ましくは2重量%以下であり、さらに好ましくは2重量%未満であり、最も好ましくは1重量%以下であり、この範囲内で熱安定性に優れるという利点がある。
【0041】
前記薄膜形成用プリカーサは、示差走査熱量計(DSC)による発熱温度(exothermic temperature)が好ましくは150℃以上であり、より好ましくは150~230℃であり、さらに好ましくは160~210℃であり、この範囲内で熱安定性に優れるという効果がある。
【0042】
本発明の薄膜形成用プリカーサの製造方法は、下記化学式2で表される化合物と、アルキルの炭素数が1~15のアルキルシアナイド、または炭素数が3~15であって、1つ以上の窒素(N)、酸素(O)、リン(P)または硫黄(S)で置換された直鎖状または環状の飽和炭化水素とを、有機溶媒下で反応させることで、下記化学式1で表される配位化合物を合成する段階を含むことを特徴とするのであり、このような場合、常温にて液体状態であって揮発性が強いことから蒸着速度が非常に速く、薄膜蒸着チャンバへの注入の際の取り扱いが容易で、特に、熱安定性に優れ、純度が高く、段差被覆性に優れた薄膜を製造できる薄膜形成用プリカーサを製造するという利点がある。
【0043】
[化学式1]
MXnLmYz
【0044】
(Mはニオブ(Nb)、タングステン(W)またはモリブデン(Mo)であり、Xはハロゲン元素であり、nは1~6の整数であり、Lは、アルキルの炭素数が1~15のアルキルシアナイド、または、炭素数が3~15であって、1つ以上の窒素(N)、酸素(O)、リン(P)または硫黄(S)で置換された直鎖状または環状の飽和炭化水素であり、mは1~3の整数であり、結合したYはアミンであり、zは0~4の整数であり、n+zは3~6の整数である。)
【0045】
[化学式2]
MX(6-a)
【0046】
(Mはニオブ(Nb)、タングステン(W)またはモリブデン(Mo)であり、Xはハロゲン元素であり、Yはアミンであり、aは1~6の整数である。)
【0047】
上述した本発明の薄膜形成用プリカーサの内容は、その製造方法にも同様に適用されるので、ここで、繰り返しの記載を省略する。
【0048】
前記有機溶媒は、好ましくはハロゲン化炭化水素でありうるのであり、より好ましくはアルキル基の炭素数が1~5のアルキルハライドであり、さらに好ましくはメチルハライドであり、この場合、薄膜形成用プリカーサの合成が安定的に行われるという効果がある。
【0049】
前記アルキルシアナイドまたは前記飽和炭化水素は、前記化学式2で表される化合物と、アルキルシアナイドまたは飽和炭化水素とのトータル(総)100重量%に対して、好ましくは20~40重量%で含まれうるのであり、より好ましくは25~40重量%で含まれ、さらに好ましくは25~33重量%で含まれるのであり、この範囲内で薄膜形成用プリカーサの液状化が容易な利点がある。
【0050】
また別の例として、前記アルキルシアナイドまたは前記飽和炭化水素は、前記化学式2で表される化合物を基準にして、1~1.5当量(eq.)で含まれうるのであり、より好ましくは1.0~1.2当量(eq.)で含まれ、より好ましくは1.0~1.1当量(eq.)で含まれるのであり、この範囲内で、薄膜形成用プリカーサの液状化が容易であるという利点がある。
【0051】
前記合成は、好ましくは15~25℃下で実施され、より好ましくは20~25℃下で実施され、さらに好ましくは20~23℃下で実施されるのであり、この範囲内で、薄膜形成用プリカーサの合成が安定して行われるという効果がある。
【0052】
前記合成は、一例として30分以上、好ましくは1時間以上でありうるのであり、また別の例として10時間以下、好ましくは5時間以下、より好ましくは2時間以下でありうるのであり、この範囲内で、薄膜形成用プリカーサの合成が安定して行われるという効果がある。
【0053】
前記薄膜形成用プリカーサの製造方法は、好ましくは、前記合成された溶液を濾過する段階;及び、前記濾過後に得られた濾液を減圧蒸発させて、前記化学式1で表される配位化合物を得る段階を含むことができるのであり、このような場合、薄膜形成用プリカーサの液状化が容易であるという利点がある。
【0054】
前記減圧蒸発は、好ましくは80~150℃、及び0.1~100torrで実施することができ、より好ましくは100~150℃、及び0.5~10torrで実施することができ、さらに好ましくは110~130℃、及び0.5~5torrで実施することができるのであり、この範囲内で、薄膜形成用プリカーサの液状化が容易であるという利点がある。
【0055】
前記薄膜形成用プリカーサの製造方法は、好ましくは、前記得られた配位化合物を、アルキルの炭素数が1~15のアルキルシアナイドと混合して希釈する段階を、さらに含みうるのであり、このような場合に、薄膜形成用プリカーサの液状化が容易な利点がある。
【0056】
本発明の薄膜製造方法は、本発明による薄膜形成用プリカーサを、CVDチャンバまたはALDチャンバ内に注入して、ローディング(loading)された基板表面に吸着させる段階;吸着されていない残留薄膜形成用プリカーサをパージガスでパージする段階;反応ガスを供給して、基板の表面に吸着された薄膜形成用プリカーサと反応させることで金属薄膜層を形成する段階;及び、反応副産物をパージガスでパージする段階を含むことを特徴とするのであり、このような場合、薄膜形成プリカーサの蒸着速度が非常に速く、その取り扱いが容易であり、さらには段差被覆性に優れた薄膜を製造できるという効果がある。
【0057】
本薄膜の薄膜製造方法は、具体的な例として、下記図1に記載の工程の順序に従うことができるが、これに限定されるものではない。
【0058】
前記薄膜形成用プリカーサは、一例として、粘度や蒸気圧を調整するために非極性溶媒と混合してチャンバ内に投入することができる。
【0059】
前記基板は、好ましくは誘電膜であり得るのであり、この場合、最終的に製造されるキャパシタの静電容量(Cs)に優れるという利点がある。
【0060】
前記誘電体膜は、一例として高誘電率物質でもって形成され得るのであって、好ましくはHfO2、Al、TiO、ZrO、TaまたはYなどで形成されるのであり、より好ましくはHfOで形成される。
【0061】
前記非極性溶媒は、好ましくはアルカン及びシクロアルカンからなる群から選択される1種以上であり得るのであり、この場合、反応性及び溶解度が低く水分管理が容易である有機溶媒を含有しながらも、薄膜形成時の蒸着温度が上昇しても段差被覆性(step coverage)が向上するという利点がある。
【0062】
より好ましい例として、前記非極性溶媒は、C1~C10のアルカン(alkane)、またはC3~C10のシクロアルカン(cycloalkane)を含むことができるのであり、好ましくはC3~C10のシクロアルカン(cycloalkane)であり、この場合、反応性及び溶解度が低く水分管理が容易であるという利点がある。
【0063】
本記載において、C1、C3などは炭素数を意味する。
【0064】
前記シクロアルカンは、好ましくはC3~C10のモノシクロアルカンであり得るのであり、前記モノシクロアルカンのうち、シクロペンタン(cyclopentane)が、常温で液体であって、最も蒸気圧が高いことから、気相蒸着工程において好ましいが、これに限定されるものではない。
【0065】
前記非極性溶媒は、一例として、水における溶解度(25℃)が200mg/L以下、好ましくは50~200mg/L、より好ましくは135~175mg/Lであり、この範囲内で、薄膜形成用プリカーサに対する反応性が低く、水分管理が容易であるという利点がある。
【0066】
本記載における溶解度は、本発明が属する技術分野で通常用いられる測定方法や基準によれば特に制限されず、一例として飽和溶液をHPLC法で測定することができる。
【0067】
前記非極性溶媒は、好ましくは、薄膜形成用プリカーサ及びと非極性溶媒とを合わせた総重量に対して5~95重量%を含みうるのであって、より好ましくは10~90重量%を含みうるのであり、さらに好ましくは40~90重量%を含みうるのであり、最も好ましくは70~90重量%を含み得る。
【0068】
もし、前記非極性溶媒の含有量が前記上限値を超えて投入される場合、不純物を誘発して、抵抗と、薄膜内の不純物数値が増加し、前記有機溶媒の含有量が前記下限値未満で投入される場合、溶媒添加による段差被覆性の向上の効果、及び、塩素(Cl)イオンといった不純物の低減効果が少ないという欠点がある。
【0069】
前記薄膜製造方法は、一例として、数式1で算出されるサイクル当たりの薄膜成長率(Å/サイクル)の減少率が-5%以下であり、好ましくは-10%以下、より好ましくは-20%以下であり、より好ましくは-30%以下、更により好ましくは-40%以下、最も好ましくは-45%以下であり、この範囲内で、段差被覆性及び膜の厚さの均一性に優れる。
【0070】
[数式1]
サイクル当たりの薄膜成長率の減少率(%) = [(薄膜形成用成長抑制剤を用いた場合のサイクル当たりの薄膜成長率 - 薄膜形成用成長抑制剤を使用しなかった場合のサイクル当たりの薄膜成長率) / 薄膜形成用成長抑制剤を使用しなかった場合のサイクル当たりの薄膜成長率]X 100
【0071】
前記薄膜製造方法は、SIMSに基づいて測定された、200サイクル後に形成された薄膜内の残留ハロゲン強度(c/s)が、好ましくは10,000以下、より好ましくは8,000以下、さらに好ましくは7,000以下、さらにより好ましくは6,000以下であり得るのであり、このような範囲内で、腐食及び劣化を防止する効果に優れる。
【0072】
本記載におけるパージは、好ましくは1,000~10,000sccm、より好ましくは2,000~7,000sccm、さらに好ましくは2,500~6,000sccmであり、この範囲内で、サイクル当たりの薄膜成長率が好ましい範囲に低減され、工程副産物が低減されるという効果がある。
【0073】
前記ALD(原子層蒸着工程)は、高いアスペクト比が要求される集積回路(IC:Integrated Circuit)の製作において非常に有利であり、特に自己制限的な薄膜成長メカニズムにより、優れた段差塗布性(conformality)、均一な被覆性(uniformity)及び精密な厚さ制御などの利点がある。
【0074】
前記薄膜の製造方法は、一例として、50~900℃の範囲の蒸着温度で行うことができ、好ましくは300~700℃の範囲の蒸着温度で、より好ましくは350~600℃の範囲の蒸着温度で行うものであり、より好ましくは400~550℃の範囲の蒸着温度で行うものであり、より好ましくは400~500℃の範囲の蒸着温度で行うものであるが、この範囲内でALD工程の特性を具現することで、優れた膜質の薄膜に成長させる効果が大きい。
【0075】
前記薄膜の製造方法は、一例として、0.1~10Torrの範囲の蒸着圧力で行うことができ、好ましくは0.5~5Torrの範囲の蒸着圧力で、最も好ましくは1~3Torrの範囲の蒸着圧力で実施するものであるが、この範囲内で、均一な厚さの薄膜を得る効果がある。
【0076】
本記載において、蒸着温度及び蒸着圧力は、蒸着チャンバ内に形成される温度及び圧力として測定されるか、または、蒸着チャンバ内の基板に加えられる温度及び圧力として測定されうる。
【0077】
前記薄膜製造方法は、好ましくは、前記薄膜形成用プリカーサをチャンバ内に投入する前に、チャンバ内の温度を蒸着温度に昇温する段階;及び/または、前記薄膜形成用プリカーサをチャンバ内に投入する前に、チャンバ内に不活性ガスを注入してパージする段階を含むことができる。
【0078】
具体的な例として、前記薄膜の製造方法について説明すると、
【0079】
まず、上部に薄膜が形成されることとなる基板を、原子層蒸着が可能な蒸着チャンバ内に位置させる。
【0080】
前記基板は、シリコン基板、シリコンオキシドなどの半導体の基板を含むのでありうる。
【0081】
前記基板は、その上部に、導電層または絶縁層がさらに形成されているのでありうる。
【0082】
前記蒸着チャンバ内に配置された基板上に薄膜を蒸着するために、前記薄膜形成用プリカーサ、またはそれと非極性溶媒との混合物を準備する。
【0083】
その後、準備された薄膜形成用プリカーサ、またはこれと非極性溶媒との混合物を、気化器内に注入した後、蒸気相に変化させて蒸着チャンバに伝達し基板上に吸着させるのであり、未吸着となった薄膜形成用組成物をパージ(purging)する。
【0084】
本記載において、薄膜形成用プリカーサ等を蒸着チャンバへと伝達する方式は、一例として、気体相(ガス相)流量制御(Mass Flow Controller;MFC)の方法を活用して、揮発した気体を移送する方式(Vapor Flow Control;VFC)、または、液体相流量制御(Liquid Mass Flow Controller; LMFC)の方法を活用して液体を移送する方式(Liquid Delivery System;LDS)を使用することができるのであり、好ましくはLDS方式を用いるものである。
【0085】
ここで、薄膜形成用プリカーサ等を基板上に移動させるための、輸送ガスまたは希釈ガスとしては、アルゴン(Ar)、窒素(N)、ヘリウム(He)から選択される1つ又は2つ以上の混合気体を用いることができるが、限定されるのではない。
【0086】
本記載におけるパージガスとしては、一例として不活性ガスを用いることができ、好ましくは前記の輸送ガスまたは希釈ガスを用いることができる。
【0087】
次に反応ガスを供給する。前記反応ガスとしては、本発明が属する技術分野で通常用いられる反応ガスであれば特に制限されず、好ましくは還元剤、窒化剤または酸化剤を含むことができる。前記還元剤と、基板に吸着された前記薄膜形成用プリカーサとが反応して金属薄膜が形成されるのであり、前記窒化剤によっては金属窒化物薄膜が形成されるのであり、前記酸化剤によっては金属酸化物薄膜が形成される。
【0088】
好ましくは、前記還元剤は、アンモニアガス(NH)または水素ガス(H)であり得るのであり、前記窒化剤は窒素ガス(N)であり得るのであり、前記酸化剤は、HO、H、O、O及びNOからなる群から選択された1種以上であり得る。
【0089】
次に、不活性ガスを用いて、未反応の残留反応ガスをパージする。これにより、過剰量の反応ガスだけでなく、生成した副産物も一緒に除去することができる。
【0090】
前記のように、前記薄膜形成用プリカーサを基板上に吸着させる段階、未吸着の薄膜形成用組成物をパージする段階、反応ガスを供給する段階、残留反応ガスをパージする段階を、単位サイクルとするのであり、所望の厚さの薄膜を形成するために、前記単位サイクルを繰り返すことができる。
【0091】
前記単位サイクルは、一例として100~1000回、好ましくは100~500回、より好ましくは150~300回であり得るのであり、この範囲内で、目的とする薄膜特性が良好に発現されるという効果がある。
【0092】
本発明の半導体基板は、本記載の薄膜製造方法で製造されることを特徴としており、このような場合に腐食や劣化が防止されるのであって、段差被覆性(step coverage)及び薄膜の厚さの均一性が大いに優れているという効果がある。
【0093】
前記半導体基板は、好ましくは、薄膜キャパシタ(thin film capacitor)、または半導体素子キャパシタであり得る。
【0094】
前記製造された薄膜は、好ましくは厚さが20nm以下であり、比抵抗値が0.1~400μΩ・cmであり、ハロゲン含量が10,000ppm以下であり、段差被覆率が90%以上であり、この範囲内で拡散防止膜として性能この優れ、金属配線材料の腐食が低減される効果があるが、これに限定するものではない。
【0095】
前記薄膜は、厚さが、一例で5~20nm、好ましくは10~20nm、より好ましくは15~18.5nm、さらに好ましくは17~18.5nmであり得るのであり、この範囲内で、薄膜特性に優れるという効果がある。
【0096】
前記薄膜は、比抵抗値が、一例で0.1~400μΩ・cm、好ましくは50~400μΩ・cm、より好ましくは200~400μΩ・cm、さらに好ましくは300~400μΩ・cm、よりさらに好ましく330~380μΩ・cm、最も好ましくは340~370μΩ・cmであり得るのであり、この範囲内で、薄膜特性に優れるという効果がある。
【0097】
前記薄膜は、ハロゲン含有量が、より好ましくは9,000ppm以下または1~9,000ppm、さらに好ましくは8,500ppm以下または100~8,500ppm、さらにより好ましくは8,200ppm以下または1,000~8,200ppmであり得るのであり、この範囲内で、薄膜特性に優れながらも金属配線材料の腐食が低減されるという効果がある。
【0098】
前記薄膜は、一例として、段差被覆率が80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上であり、この範囲内で、複雑な構造の薄膜でも容易に基板に蒸着させることができ、次世代半導体装置に適用可能であるという利点がある。
【0099】
前記製造された薄膜は、一例として、NbN薄膜であるかNbO薄膜であり得るのであり、好ましくはNbNである。
【0100】
以下、本発明の理解を助けるために、好ましい実施例及び図面を提示するが、以下の実施例及び図面は本発明を例示するのに過ぎず、本発明の範囲及び技術思想の範囲内で種々の変更及び修正が可能であることは、当業者にとって明らかなものであり、このような変形及び修正が、添付された特許請求の範囲に属することも当然である。
【0101】
[実施例]
<薄膜形成用プリカーサの合成>
[実施例1](2-メチルブチロニトリルが配位したニオブ配位化合物の製造)
3Lフラスコに、グローブボックス(glove box)にて、出発物質であるフッ化ニオブ(Niobium fluoride)(V)を137g(0.73モル、1当量)秤量した。前記出発物質を溶媒であるジクロロメタン(Dichloromethane)0.5M(1.5L)で希釈した。ここに、配位させようとする配位子である2-メチルブチロニトリル(2-methylbutylronitrile)を、74mL(0.73mol、1当量)注入してから、常温で1時間撹拌した後に濾過した。得られた濾液について、減圧蒸留で溶媒を除去した後、精製過程(70℃@1.0Torr(1.0Torrにて70℃))を経ることで、得ようとする前駆体を無色液体(colorless liquid)(158g)状態にて80%の収率で得た。
【0102】
[実施例2](2,2-ジメチルバレロニトリル(2,2-dimethylvaleronitrile)が配位したニオブ配位化合物の製造)
3Lフラスコに、グローブボックス(glove box)にて、出発物質であるフッ化ニオブ(Niobium fluoride)(V)を126g(0.67モル、1当量)秤量した。前記出発物質を溶媒であるジクロロメタン(Dichloromethane)で0.5M(1.4L)に希釈した。ここに、配位させようとする配位子(2,2-ジメチルバレロニトリル;2,2-dimethylvaleronitrile)を92mL(0.67mol、1当量)注入してから、常温で1時間撹拌した後に濾過した。得られた濾液について、減圧蒸留で溶媒を除去した後、精製過程(70℃@1.0Torr)を経ることで、得ようとする前駆体を無色液体(colorless liquid)(160g)の形態にて80%の収率で得た。
【0103】
[実験例]
実施例1~2で製造された薄膜形成用プリカーサについての、乾燥状態、DSC分析、TGA分析及びNMR分析を行い、その結果を下記の図2~8に示す。
【0104】
下記図2は、実施例1で製造された薄膜形成用プリカーサを、乾燥の前後に撮影した写真であり、乾燥後(Dry)にも、すなわち溶媒であるアルキルシアナイドを全く含まない場合でも、乾燥前(solution)のように、依然として液体状態であることを確認することができた。
【0105】
下記図3は、実施例1で製造された薄膜形成用プリカーサについてDSC分析して得られたグラフであるが、発熱温度(Exotermic temperature)が150℃であり、常温にて液体であって、揮発性が強く蒸着速度が非常に速く、薄膜蒸着チャンバへ注入する際の取り扱いが容易であり、特に、熱安定性に優れ、純度が高く、段差被覆性に優れた薄膜を製造することができることにつき容易に予想できる。
【0106】
下記図4は、実施例1で製造された薄膜形成用プリカーサについてTGA分析して得たグラフであるが、最終温度(To)が200℃であり、残留物が3重量%未満であって、熱安定性が高いながらも純度に優れていることを確認することができた。ここで特徴的な部分は、次のとおりである。もしも製造された薄膜形成用プリカーサの熱安定性が低下して配位された配位子がニオブ(Niobium)金属から分離されたのならば、2つのパターン(2-pattern)が出たであろうが、実施例1で製造された、本発明による薄膜形成用プリカーサでは、1つのパターン(1-pattern)の階段状のグラフが得られたことから、全く熱分解がされなかったことにつき確認することができた。
【0107】
下記図5は、実施例1で製造された薄膜形成用プリカーサのNMRスペクトルであって、この結果から、所望の2-メチルブチロニトリルが配位したニオブ配位化合物が製造されたことを確認することができた。
【0108】
下記図6は、実施例2で製造された薄膜形成用プリカーサをDSC分析して得られたグラフであるが、発熱温度(Exothermic temperature)が150℃で、常温にて液体であって、揮発性が強く蒸着速度が非常に速く、薄膜蒸着チャンバへ注入する際の取り扱いが容易で、特に熱安定性に優れ、純度が高く段差被覆性に優れた薄膜を製造可能であることにつき容易に予想できる。
【0109】
下記図7は、実施例2で製造された薄膜形成用プリカーサをTGA分析して得たグラフであるが、最終温度(To)が200℃であり、残渣が3重量%未満で熱安定性が高くながらも純度に優れ、高品質の薄膜製造に適していることが確認できる。
【0110】
下記図8は、実施例2で製造された薄膜形成用プリカーサのNMRスペクトルであって、この結果から、所望の2,2-ジメチルバレロニトリル(2,2-dimethylvaleronitrile)が配位したニオブ配位化合物が製造されたことにつき確認することができた。
【0111】
結論として、本発明に係る薄膜形成用プリカーサは、常温にて液体状態であって揮発性が強く、蒸着速度が非常に速く、薄膜蒸着チャンバへの注入の際の取り扱いが容易であり、特に、熱安定性に優れ、純度が高く、段差被覆性に優れた薄膜を製造可能であることにつき確認することができた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8