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特許7637759ペリクル保護薄膜形成用の成長抑制剤、これを用いたペリクル保護薄膜の形成方法、及びこれから製造されたマスク
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-19
(45)【発行日】2025-02-28
(54)【発明の名称】ペリクル保護薄膜形成用の成長抑制剤、これを用いたペリクル保護薄膜の形成方法、及びこれから製造されたマスク
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/455 20060101AFI20250220BHJP
   G03F 1/62 20120101ALI20250220BHJP
【FI】
C23C16/455
G03F1/62
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023500088
(86)(22)【出願日】2021-07-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-02
(86)【国際出願番号】 KR2021008539
(87)【国際公開番号】W WO2022010214
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-01-04
(31)【優先権主張番号】10-2020-0084230
(32)【優先日】2020-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】321001986
【氏名又は名称】ソウルブレイン シーオー., エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】ヨン,チャン ボン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ジェ ソン
(72)【発明者】
【氏名】ド,スン チョル
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ホ リム
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0259844(US,A1)
【文献】特開2021-107916(JP,A)
【文献】国際公開第2018/008594(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/455
G03F 1/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1
[化学式1]
AnBmXo
(前記Aは炭素であり、前記Bは水素または炭素数1~3のアルキルであり、前記Xはフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)及びヨウ素(I)のうちの1種以上であり、前記nは1~15の整数であり、前記oは1以上の整数であり、前記mは0~2n+1である。)で表される化合物であることを特徴とする、
ペリクル保護薄膜形成用成長抑制剤。
【請求項2】
前記ペリクルは、CNT、フラーレンまたはこれらの混合物からなることを特徴とする、
請求項1に記載のペリクル保護薄膜形成用成長抑制剤。
【請求項3】
前記化学式1において、前記oは1~5の整数であることを特徴とする、
請求項1に記載のペリクル保護薄膜形成用成長抑制剤。
【請求項4】
前記化学式1で表される化合物は、分枝状、環状または芳香族の化合物であることを特徴とする、
請求項1に記載のペリクル保護薄膜形成用成長抑制剤。
【請求項5】
前記化学式1で表される化合物は、原子層蒸着(ALD)工程に使用されることを特徴とする、
請求項1に記載のペリクル保護薄膜形成用成長抑制剤。
【請求項6】
前記化学式1で表される化合物は、常温(22℃)で液体であり、密度が0.8~1.5g/cmであり、蒸気圧(20℃)が1~300mmHgであり、水に対する溶解度(25℃)が200mg/L以下であることを特徴とする、
請求項1に記載のペリクル保護薄膜形成用成長抑制剤。
【請求項7】
下記化学式1
[化学式1]
AnBmXo
(前記Aは炭素であり、前記Bは水素または炭素数1~3のアルキルであり、前記Xはフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)及びヨウ素(I)のうちの1種以上であり、前記nは1~15の整数であり、前記oは1以上の整数であり、前記mは0~2n+1である。)で表されるペリクル保護薄膜形成用の成長抑制剤をALDチャンバ内に投入してローディング(loading)されたペリクル表面に吸着させる段階を含むことを特徴とする、
ペリクル保護薄膜形成方法。
【請求項8】
i) 前記ペリクル保護薄膜形成用の成長抑制剤を気化して、ALDチャンバ内におけるローディングされたペリクル表面に吸着させる段階と、
ii) 前記ALDチャンバの内部をパージガスでもって1次パージする段階と、
iii) ペリクル保護薄膜の前駆体化合物を気化して、ALDチャンバ内におけるローディングされたペリクル表面に吸着させる段階と、
iv) 前記ALDチャンバの内部をパージガスでもって2次パージする段階と、
v) 前記ALDチャンバの内部に反応ガスを供給する段階、及び
vi) 前記ALDチャンバの内部をパージガスでもって3次パージする段階と、を含むことを特徴とする、
請求項7に記載のペリクル保護薄膜形成方法。
【請求項9】
i) ペリクル保護薄膜の前駆体化合物を気化して、ALDチャンバ内におけるローディングされたペリクル表面に吸着させる段階と、
ii) 前記ALDチャンバの内部をパージガスでもって1次パージする段階と、
iii) 前記ペリクル保護薄膜形成用の成長抑制剤を気化して、ALDチャンバ内におけるローディングされたペリクル表面に吸着させる段階と、
iv) 前記ALDチャンバの内部をパージガスでもって2次パージする段階と、
v) 前記ALDチャンバの内部に反応ガスを供給する段階、及び
vi) 前記ALDチャンバの内部をパージガスでもって3次パージする段階と、を含むことを特徴とする、
請求項7に記載のペリクル保護薄膜形成方法。
【請求項10】
前記ペリクル保護薄膜形成用の成長抑制剤、及びペリクル保護薄膜の前駆体化合物はVFC方式、DLI方式またはLDS方式でもってALDチャンバ内に移送されることを特徴とする、
請求項8または9に記載のペリクル保護薄膜形成方法。
【請求項11】
前記ペリクル保護薄膜形成用の成長抑制剤と、前記ペリクル保護薄膜の前駆体化合物とについてのALDチャンバ内投入量(mg/cycle)の比は1:1.5~1:20であることを特徴とする、
請求項8または9に記載のペリクル保護薄膜形成方法。
【請求項12】
前記ペリクル保護薄膜形成方法は下記数式1で計算される、サイクルあたりの薄膜成長率(Å/Cycle)の減少率が-5%以下であることを特徴とする、
請求項8または9に記載のペリクル保護薄膜形成方法。
[数式1]
サイクルあたりの薄膜成長率の減少率(%)=[(ペリクル保護薄膜形成用の成長抑制剤を使用した場合のサイクルあたりの薄膜成長率-ペリクル保護薄膜形成用の成長抑制剤を使用しなかった場合のサイクルあたりの薄膜成長率)/ペリクル保護薄膜形成用の成長抑制剤を使用しなかった場合のサイクルあたりの薄膜成長率]×100
【請求項13】
前記ペリクル保護薄膜形成方法はSIMSによって測定された、200サイクル後に形成された薄膜内の残留ハロゲンの強さ(c/s)が10,000以下であることを特徴とする、
請求項8または9に記載のペリクル保護薄膜形成方法。
【請求項14】
前記反応ガスは還元剤、窒化剤または酸化剤であることを特徴とする、
請求項8または9に記載のペリクル保護薄膜形成方法。
【請求項15】
マスク及び前記マスク表面を覆うペリクルを含み、
前記ペリクルはCNT、フラーレンまたはこれらの混合からなり、
前記ペリクルの表面は保護薄膜でコーティングされ、
前記保護薄膜は、TiN保護薄膜、TiO2保護薄膜、NbN保護薄膜、またはHfO2保護薄膜であり、
前記保護薄膜のハロゲン含量は1ppm~9,000ppmであることを特徴とするマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペリクル保護薄膜形成用の成長抑制剤、これを用いたペリクル保護薄膜の形成方法、及び、これから製造されたマスクに関し、より詳細には、ペリクルの透過度を低下させずに腐食や劣化を防ぎ、これを採用したマスクの寿命を大きく改善させることができるペリクル保護薄膜形成用の成長抑制剤、これを用いたペリクル保護薄膜形成方法、及びこれから製造されたマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
メモリ及び非メモリ半導体素子の集積度は日々増加しており、その構造が次第に複雑になるのに伴い、多様な薄膜を基板に蒸着させるにあたっての段差被覆性(ステップ・カバレッジ;step coverage)の重要性が次第に増大している。
【0003】
前記半導体用薄膜は、窒化金属、酸化金属、ケイ化金属などからなる。前記窒化金属薄膜としては、窒化チタン(TiN)、窒化タンタル(TaN)、窒化ジルコニウム(ZrN)などがあり、前記薄膜は、一般的に、ドーピングされた半導体のシリコン層と、層間配線材料として使用されるアルミニウム(Al)、銅(Cu)などとの間の拡散防止膜(diffusion barrier)として用いられる。但し、タングステン(W)薄膜を基板に蒸着する際には、接着層(adhesion layer)として用いられる。
【0004】
基板に蒸着された薄膜が、優れたものであって、均一な物性を得るためには、形成された薄膜の、高い段差被覆性が必須である。したがって、気相反応を主に活用するCVD(化学気相蒸着(化学気相成長);chemical vapor deposition)工程よりも、表面反応を活用するALD(原子層蒸着(原子層堆積);atomic layer deposition)工程が活用されているのであるが、100%の段差被覆性(ステップ・カバレッジ)を具現するためには、依然として問題が存在する。
【0005】
また、前記窒化金属のうちで代表的なものである、窒化チタン(TiN)を蒸着させるために用いられる四塩化チタン(TiCl4)の場合、製造された薄膜内に、塩化物といった工程副生成物が残留するようになり、アルミニウムなどといった金属の腐食を誘発するのであり、不揮発性の副生成物が生成されるという問題によって、膜質の劣化を招く。
【0006】
したがって、複雑な構造の薄膜形成が可能で、層間配線材料を腐食させない薄膜の形成方法、及びこれから製造された半導体基板などを開発することが必要であるのが実情である。
【0007】
また、半導体デバイスや液晶表示板などにおいて、ウェハや液晶用基材にパターニングをする場合にフォトリソグラフィが使用される。
【0008】
前記フォトリソグラフィは、パターニングの原板としてマスクが使用され、マスク上のパターンがウェハや液晶用基材に転写されるが、もしもマスクに、塵や異物といった不純物が付着すると、このような不純物によって、光が吸収されるか反射されて、転写したパターンが損傷し、結果として半導体デバイスや液晶表示板などの収率と性能が低下する。
【0009】
そこで、マスクの表面に不純物が付着することを防ぐために、マスクの表面にペリクル(pellicle)をコーティングする方法が提案されたが、従来のペリクルをマスクの表面にコーティングする場合に、透明度が劣るか、それ自体の劣化が発生するという問題が生じた。したがって、透過度が低下せずに腐食や劣化のない、マスクの寿命を大きく改善させることができるペリクルなどの開発が急務なのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】韓国公開特許第2006-0037241号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のような従来技術の問題点を解決するため、本発明は、ペリクルの透過度を低下させずに腐食や劣化を防ぎ、これを採用したマスクの寿命を大きく改善させることができるペリクル保護薄膜形成用の成長抑制剤、これを用いたペリクル保護薄膜の形成方法、及びこれから製造されたマスクを提供することを目的とする。
【0012】
本発明の上記目的及びその他の目的は、下記で説明された本発明によって、すべて達成されうる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明は、下記化学式1
【0014】
[化学式1]
AnBmXoYiZj
【0015】
(前記Aは炭素またはケイ素であり、前記Bは水素または炭素数1~3のアルキルであり、前記Xは、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)及びヨウ素(I)のうち1種以上であり、前記Y及びZは、独立して、酸素、窒素、硫黄及びフルオリンからなる群から選択された1種以上であって、互いに同一でなく、前記nは1~15の整数であり、前記oは1以上の整数であり、mは0~2n+1であり、前記iとjは0~3の整数である。)で表される化合物である、ペリクル保護薄膜形成用の成長抑制剤を提供する。
【0016】
また、本発明のペリクル保護薄膜形成用の成長抑制剤をペリクル保護膜質改善剤として提供してもよい。
【0017】
また、本発明は、前記ペリクル保護薄膜形成用の成長抑制剤をALDチャンバ内に注入して、ローディング(loading)されたペリクルの表面に吸着させる段階を含むペリクル保護薄膜の形成方法を提供する。
【0018】
また、本発明は、前記ペリクル保護薄膜の形成方法でもって製造されたマスクを提供する。
【0019】
また、本発明は、マスク、及び、前記マスクの表面を覆うペリクルを含み、前記ペリクルはCNT(カーボンナノチューブ)、フラーレンまたはこれらの混合からなり、前記ペリクルの表面は、保護薄膜でコーティングされたことを特徴とするマスクを提供してもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ペリクルの透過度を低下させずに腐食や劣化を防ぎ、これを採用したマスクの寿命を大きく改善させることができるペリクル保護薄膜形成用成長抑制剤、これを用いたペリクル保護薄膜形成方法、及びこれから製造されたマスクを提供するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】従来のALD工程を説明するための工程図である。
図2】本発明の一実施例に係るALD工程を説明するための工程図である。
図3】本発明の実施例1(SP-TiCl4)及び比較例1(TiCl4)についての蒸着温度に応じたCl元素などの減少率を示すSIMS(二次イオン質量分析; Secondary Ion Mass Spectrometry)分析グラフ(1)である。
図4】本発明の実施例1(SP-TiCl4)及び比較例1(TiCl4)についての蒸着温度に応じたCl元素などの減少率を示すSIMS(二次イオン質量分析; Secondary Ion Mass Spectrometry)分析グラフ(2)である。
図5】本発明の実施例1(SP-TiCl4)及び比較例1(TiCl4)で形成されたTIN薄膜についての、上面(Top)近傍及び下面(bottom)近傍の断面に対するTEM(透過型電子顕微鏡;Transmission Electron Microscope)写真である。
図6図5の上面(Top)と下面(bottom)の断面位置に対する説明図である。
図7】実施例5と比較例4で製造されたSiN薄膜についてのSIMS分析グラフである。
図8】比較例1と同様にペリクル保護薄膜形成用の成長抑制剤を投入しなかったもの(Ref TiN)、実施例4においてペリクル保護薄膜形成用の成長抑制剤を0.1g/minの量で投入したもの(tert-BuI (0.1g/min))、及び、実施例4においてペリクル保護薄膜形成用の成長抑制剤を0.1g/minの量で投入したもの(tert-BuI (0.1g/min))についてのXRD(X線回折;X-ray Diffraction)分析グラフである。
図9】本発明の実施例6(SP-NbF5)及び比較例5(NbF5)についての、蒸着時間(Sputter Time)に応じた、F(フッ素)、C(炭素)元素などの減少率を示すSIMS分析グラフである。ここで、右側のグラフは本発明のペリクル保護薄膜形成用の成長抑制剤が適用されたグラフであり、左側のグラフはペリクル保護薄膜形成用の成長抑制剤を使用していないリファレンス(参照基準)に該当する比較例5のグラフである。
図10】実施例9~11で製造した保護薄膜でもってコーティングされたペリクル膜と、リファレンスペリクル膜(CNT)とをH2プラズマ処理した後に、それぞれの表面をSEMで撮影したイメージである。
図11】実施例7~9及び比較例6~8にて製造した保護薄膜でもってコーティングされたペリクル(膜)を、入射レーザ波長531nmの励起レーザ電圧(Excitation laser power)0.3mWの測定条件にて、ラマン分光分析器で測定し、ペリクル(膜)の種類に応じてID/IG値を記録したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本記載のペリクル保護薄膜形成用の成長抑制剤、これを用いたペリクル保護薄膜の形成方法、及びこれから製造されたマスクを詳細に説明する。
【0023】
本発明者らは、ALDチャンバの内部にローディングされた基板の表面に対して、薄膜前駆体化合物を吸着させる前に、所定の構造を持つハロゲン置換化合物を薄膜成長抑制剤として先に吸着させる場合、蒸着後に形成される薄膜の成長率が大幅に低下することで段差被覆性が大きく向上し、工程副生成物として残留していたハロゲン化物が大幅に減少することを確認した。また、ALDチャンバの内部にローディングされた基板の表面に対して、薄膜前駆体化合物を先に吸着させ、所定の構造を持つハロゲン置換化合物を薄膜成長抑制剤として吸着させた場合、予想とは異なり膜質改善剤として挙動して、形成される薄膜の成長率が増加し、工程副生成物として残留していたハロゲン化物が大幅に減少し、薄膜の密度、比抵抗などが大きく改善されるという結果を確認した。また、前記薄膜前駆体化合物をペリクル保護薄膜形成に適用する場合、ペリクルの透過度を低下させずに腐食や劣化を防ぎ、これを採用したマスクの寿命を改善させるということを確認した。このような結果に基づいて、さらに研究に邁進することで本発明を完成するに至った。
【0024】
本発明のペリクル保護薄膜形成用の成長抑制剤は、下記化学式1
【0025】
[化学式1]
AnBmXoYiZj
【0026】
(前記Aは炭素またはケイ素であり、前記Bは水素または炭素数1~3のアルキルであり、前記Xはフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)及びヨウ素(I)のうち1種以上であり、前記Y及びZは、独立して、酸素、窒素、硫黄及びフッ素(F;フルオリン)からなる群から選択された1種以上であって、互いに同一でなく、前記nは1~15の整数であり、前記oは1以上の整数であり、mは0~2n+1であり、前記iとjは0~3の整数である。)で表される化合物であることを特徴とし、このような場合、ペリクルの透過度を低下させずに腐食や劣化を防ぎ、これを採用したマスクの寿命を大きく改善させるという効果がある。
【0027】
本記載のペリクルは、本発明が属する技術分野にて通常指称するペリクルを含み、好ましくは、極紫外線(EUV; Extreme ultraviolet)リソグラフィ用のペリクル膜を含む。
【0028】
前記Bは好ましくは水素またはメチルであり、前記nは、好ましくは2~15の整数、より好ましくは2~10の整数、さらに好ましくは2~6の整数、より一層好ましくは4~6の整数であり、この範囲内で、工程副生成物の除去効果が高く、段差被覆性に優れている。
【0029】
前記化学式1において、前記oは、好ましくは1~5の整数であり、より好ましくは1~3の整数であり、さらに好ましくは1または2であり、この範囲内で、蒸着速度の減少効果が高く、段差被覆性の改善にさらに効果的であるという利点がある。
【0030】
前記mは、好ましくは1~2n+1であり、より好ましくは3~2n+1であり、この範囲内で、工程副生成物の除去効果が高く、段差被覆性に優れている。
【0031】
前記YとZは、好ましい例で、独立して酸素、窒素及びフッ素(F;フルオリン)からなる群から選択された1種以上であり、互いに同一でない。
【0032】
前記iとjは、好ましい例で、二つとも0ではなく、具体的な例で、1~3の整数である。
【0033】
前記化学式1で表される化合物は、好ましくは分枝状、環状または芳香族の化合物であり、具体的な例として、tert-ブチルブロマイド、1-メチル-1-ブロモシクロヘキサン、1-ヨードプロパン(1-iodopropane)、1-ヨードブタン(1-iodobutane)、1-ヨード-2-メチルプロパン(1-iodo-2-methyl propane)、1-ヨード-1-イソプロピルシクロヘキサン(1-iodo-1-isopropylcyclohexane)、1-ヨード-4-ニトロベンゼン(1-iodo-4-nitrobenzene)、1-ヨード-4-メトキシベンゼン(1-iodo-4-methoxybenzene)、1-ヨード-2-メチルペンタン(1-iodo-2-methylpentane)、1-ヨード-4-トリフルオロメチルベンゼン(1-iodo-4-trifuloromethylbenzene)、tert-ブチルヨージド(tert-butyl iodide)及び1-メチル-1-ヨードシクロヘキサン(1-methyl-1-iodocyclohexane)、1-ブロモ-4-クロロベンゼン(1-bromo-4-chlorobenzene)、1-ブロモプロパン(1-bromopropane)、1-ブロモブタン(1-bromobutane)、1-ブロモペンタン(1-bromopentane)、1-ブロモヘキサン(1-bromohexane)、1-ブロモ-2-メチルプロパン(1-bromo-2-methylpropane)、1-ブロモオクタン(1-bromooctance)、1-ブロモナフタレン(1-bromonaphthalene)、1-ブロモ-4-ヨードベンゼン(1-bromo-4-iodobenzene)及び1-ブロモ-4-ニトロベンゼン(1-bromo-4-nitrobenzene)からなる群から選択された1種以上であり、この場合、工程副生成物の除去効果が高く、段差被覆性の改善及び膜質の改善効果が優れている。
【0034】
前記化学式1で表される化合物は、好ましくは原子層堆積(ALD)工程に用いられるものであり、この場合、保護薄膜の前駆体化合物の吸着を阻害せずに、成長抑制剤としてペリクルの表面を効果的に保護(protection)し、工程副生成物を効果的に除去するという利点がある。
【0035】
前記化学式1で表される化合物は、好ましくは常温(22℃)で液体であり、密度が0.8~2.5g/cm3または0.8~1.5g/cm3であり、蒸気圧(20℃)が0.1~300mmHgまたは1~300mmHgであり、水に対する溶解度(25℃)が200mg/L以下でありうるのであり、この範囲内で、段差被覆性、薄膜の厚さの均一性及び膜質改善に優れるという効果がある。
【0036】
より好ましくは、前記化学式1で表される化合物は、密度が0.85~2.0g/cm3または0.85~1.3g/cm3であり、蒸気圧(20℃)が1~260mmHgであり、水に対する溶解度(25℃)が160mg/L以下であり、この範囲内で、段差被覆性、薄膜の厚さの均一性及び膜質改善に優れるという効果がある。
【0037】
本発明のペリクル薄膜の形成方法は、下記化学式1
【0038】
[化学式1]
AnBmXoYiZj
【0039】
(前記Aは炭素またはケイ素であり、前記Bは水素または炭素数1~3のアルキルであり、前記Xはフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)及びヨウ素(I)のうちの1種以上であり、前記Y及びZは、独立して、酸素、窒素、硫黄及びフッ素(フルオリン)からなる群から選択された1種以上であって、互いに同一でなく、前記nは1~15の整数であり、前記oは1以上の整数であり、mは0~2n+1であり、前記iとjは0~3の整数である。)で表されるペリクル保護薄膜形成用成長抑制剤をALDチャンバ内に投入してローディング(loading)されたペリクルの表面に吸着させる段階を含むことを特徴としており、このような場合に、ペリクルの透過度を低下させずに腐食や劣化を防ぎ、これを採用したマスクの寿命を大きく改善させるという効果がある。
【0040】
前記ペリクル保護薄膜形成用の成長抑制剤をペリクルの表面に吸着させる段階は、ペリクルの表面に、ペリクル保護薄膜形成用の成長抑制剤の供給時間(Feeding Time)が、サイクルあたり好ましくは1~10秒、より好ましくは1~5秒、さらに好ましくは2~5秒、より一層好ましくは2~4秒であり、この範囲内で、薄膜成長率が低く、段差被覆性及び経済性に優れるという利点がある。
【0041】
本記載において、ペリクル保護薄膜形成用の成長抑制剤の供給時間(Feeding Time)は、チャンバの体積15~20L及び流量0.5~5mg/sを基準とし、より具体的にはチャンバの体積18L及び流量1~2mg/sを基準とする。
【0042】
前記ペリクル保護薄膜の形成方法は、好ましい一実施例で、i)前記ペリクル保護薄膜形成用の成長抑制剤を気化して、ALDチャンバ内におけるローディングされたペリクルの表面に吸着させる段階;ii)前記ALDチャンバの内部をパージガスで1次パージングする段階;iii)ペリクル保護薄膜の前駆体化合物を気化して、ALDチャンバ内におけるローディングされたペリクルの表面に吸着させる段階;iv)前記ALDチャンバの内部をパージガスで2次パージングする段階;v)前記ALDチャンバの内部に反応ガスを供給する段階;及びvi)前記ALDチャンバの内部をパージガスで3次パージングする段階、を含みうるのであり、このような場合、保護薄膜成長率が適切に低くなり、保護薄膜の形成時に蒸着温度が高くなっても、生成される工程副生成物が効果的に除去されて保護薄膜の比抵抗が減少し、段差被覆性(step coverage)が大きく向上するという利点がある。
【0043】
好ましいまた別の実施例として、前記ペリクル保護薄膜形成方法は、i)保護薄膜前駆体化合物を気化して、ALDチャンバ内にローディングされたペリクルの表面に吸着させる段階;ii)前記ALDチャンバの内部をパージガスで1次パージする段階;iii)前記ペリクル保護薄膜形成用の成長抑制剤を気化して、ALDチャンバ内におけるローディングされたペリクル表面に吸着させる段階;iv)前記ALDチャンバの内部をパージガスで2次パージする段階;v)前記ALDチャンバ内部に反応ガスを供給する段階;及びvi)前記ALDチャンバの内部をパージガスで3次パージする段階と、を含み、このような場合、薄膜成長率が高くなり、薄膜形成時に蒸着温度が高くなっても、生成される工程副生成物が効果的に除去されることから、薄膜の比抵抗が減少し、薄膜の密度や結晶性が大幅に向上するという利点がある。
【0044】
前記ペリクル保護薄膜形成用の成長抑制剤及び保護薄膜前駆体化合物は、好ましくはVFC(Vapor Flow Control)方式、DLI(Direct Liquid Injection)方式、またはLDS(liquid delivery system)方式でALDチャンバ内に移送されうるのであり、より好ましくはLDS方式でALDチャンバ内に移送されるのである。
【0045】
前記ペリクル保護薄膜形成用の成長抑制剤と、前記保護薄膜の前駆体化合物とについての、ALDチャンバ内への投入量(mg/cycle)の比は、好ましくは1:1.5~1:20でありうるのであり、より好ましくは1:2~1:15であり、さらに好ましくは1:2~1:12であり、より一層好ましくは1:2.5~1:10であり、この範囲内で、サイクルあたりの薄膜成長率(GPC)の減少率が高く、工程副生成物の低減の効果が大きい。
【0046】
前記ペリクル保護薄膜の前駆体化合物は、通常ALD(原子層蒸着法(原子層堆積法))に使用される薄膜前駆体化合物であれば特に制限されないが、好ましくは、金属膜前駆体化合物、金属酸化膜前駆体化合物、金属窒化膜前駆体化合物またはシリコン窒化膜前駆体化合物であり、前記金属は、好ましくは、タングステン、コバルト、クロム、アルミニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ(niobium)、ゲルマニウム、ランタン族元素、アクチニウム族元素、ガリウム、タンタル、ジルコニウム、ルテニウム、銅、チタン、ニッケル、イリジウム、及びモリブデンからなる群から選択された1種以上を含むことができる。
【0047】
一例として、前記金属としてニオブを含む保護薄膜前駆体化合物は、好ましくはNbF5であり得、この場合、本発明が目的とする効果が良好に発現されるという利点がある。
【0048】
前記金属膜前駆体、金属酸化膜前駆体及び金属窒化膜前駆体は、それぞれ、一例で、金属ハライド、金属アルコキシド、アルキル金属化合物、金属アミノ化合物、金属カルボニル化合物、及び置換または非置換シクロペンタジエニル金属化合物などからなる群から選択された1種以上でありうるが、これに制限されるのではない。
【0049】
具体的な例として、前記金属膜前駆体、金属酸化膜前駆体及び金属窒化膜前駆体は、それぞれテトラクロロチタン(tetrachloro titanium)、テトラクロロゲルマニウム(tetrachloro germanium)、テトラクロロスズ(tetrachloro tin)、トリス(イソプロピル)エチルメチルアミノゲルマニウム(tris(isopropyl)ethylmethyl amino germanium)、テトラエトキシゲルマニウム(tetraethoxyl germanium)、テトラメチルスズ(tetramethyl tin)、テトラエチルスズ(tetraethyl tin)、ビスアセチルアセトネートスズ(bisacetylacetonate tin)、トリメチルアルミニウム(trimethyl aluminum)、テトラキス(ジメチルアミノ)ゲルマニウム(tetrakis(dimethylamino) germanium)、ビス(n-ブチルアミノ)ゲルマニウム(bis(n-butylamino) germanium)、テトラキス(エチルメチルアミノ)スズ(tetrakis(ethylmethylamino) tin)、テトラキス(ジメチルアミノ)スズ(tetrakis(dimethylamino) tin)、Co2(CO)8(ジコバルトオクタカルボニル; dicobalt octacarbonyl)、Cp2Co(ビスシクロペンタジエニルコバルト; biscyclopentadienylcobalt)、Co(CO)3(NO)(トリカルボニルニトロシルコバルト; cobalt tricarbonyl nitrosyl)、及びCpCo(CO)2(シクロペンタジエニルコバルトジカルボニル; cobalt dicarbonyl cyclopentadienyl)などからなる群より選択された1種以上でありうるが、これに制限されるのでない。
【0050】
前記シリコン窒化膜前駆体は、一例として、SiH4、SiCl4、SiF4、SiCl22、Si2Cl6、TEOS、DIPAS、BTBAS、(NH2)Si(NHMe)3、(NH2)Si(NHEt)3、(NH2)Si(NHnPr)3、(NH2)Si(NHiPr)3、(NH2)Si(NHnBu)3、(NH2)Si(NHiBu)3、(NH2)Si(NHtBu)3、(NMe2)Si(NHMe)3、(NMe2)Si(NHEt)3、(NMe2)Si(NHnPr)3、(NMe2)Si(NHiPr)3、(NMe2)Si(NHnBu)3、(NMe2)Si(NHiBu)3、(NMe2)Si(NHtBu)3、(NEt2)Si(NHMe)3、(NEt2)Si(NHEt)3、(NEt2)Si(NHnPr)3、(NEt2)Si(NHiPr)3、(NEt2)Si(NHnBu)3、(NEt2)Si(NHiBu)3、(NEt2)Si(NHtBu)3、(NnPr2)Si(NHMe)3、(NnPr2)Si(NHEt)3、(NnPr2)Si(NHnPr)3、(NnPr2)Si(NHiPr)3、(NnPr2)Si(NHnBu)3、(NnPr2)Si(NHiBu)3、(NnPr2)Si(NHtBu)3、(NiPr2)Si(NHMe)3、(NiPr2)Si(NHEt)3、(NiPr2)Si(NHnPr)3、(NiPr2)Si(NHiPr)3、(NiPr2)Si(NHnBu)3、(NiPr2)Si(NHiBu)3、(NiPr2)Si(NHtBu)3、(NnBu2)Si(NHMe)3、(NnBu2)Si(NHEt)3、(NnBu2)Si(NHnPr)3、(NnBu2)Si(NHiPr)3、(NnBu2)Si(NHnBu)3、(NnBu2)Si(NHiBu)3、(NnBu2)Si(NHtBu)3、(NiBu2)Si(NHMe)3、(NiBu2)Si(NHEt)3、(NiBu2)Si(NHnPr)3、(NiBu2)Si(NHiPr)3、(NiBu2)Si(NHnBu)3、(NiBu2)Si(NHiBu)3、(NiBu2)Si(NHtBu)3、(NtBu2)Si(NHMe)3、(NtBu2)Si(NHEt)3、(NtBu2)Si(NHnPr)3、(NtBu2)Si(NHiPr)3、(NtBu2)Si(NHnBu)3、(NtBu2)Si(NHiBu)3、(NtBu2)Si(NHtBu)3、(NH22Si(NHMe)2、(NH22Si(NHEt)2、(NH22Si(NHnPr)2、(NH22Si(NHiPr)2、(NH22Si(NHnBu)2、(NH22Si(NHiBu)2、(NH22Si(NHtBu)2、(NMe22Si(NHMe)2、(NMe22Si(NHEt)2、(NMe22Si(NHnPr)2、(NMe22Si(NHiPr)2、(NMe22Si(NHnBu)2、(NMe22Si(NHiBu)2、(NMe22Si(NHtBu)2、(NEt22Si(NHMe)2、(NEt22Si(NHEt)2、(NEt22Si(NHnPr)2、(NEt22Si(NHiPr)2、(NEt22Si(NHnBu)2、(NEt22Si(NHiBu)、(NEt22Si(NHtBu)2、(NnPr22Si(NHMe)2、(NnPr22Si(NHEt)2、(NnPr22Si(NHnPr)2、(NnPr22Si(NHiPr)2、(NnPr22Si(NHnBu)2、(NnPr22Si(NHiBu)2、(NnPr22Si(NHtBu)2、(NiPr22Si(NHMe)2、(NiPr22Si(NHEt)2、(NiPr22Si(NHnPr)2、(NiPr22Si(NHiPr)2、(NiPr22Si(NHnBu)2、(NiPr22Si(NHiBu)2、(NiPr22Si(NHtBu)2、(NnBu22Si(NHMe)2、(NnBu22Si(NHEt)2、(NnBu22Si(NHnPr)2、(NnBu22Si(NHiPr)2、(NnBu22Si(NHnBu)2、(NnBu22Si(NHiBu)2、(NnBu22Si(NHtBu)2、(NiBu22Si(NHMe)2、(NiBu22Si(NHEt)2、(NiBu22Si(NHnPr)、(NiBu22Si(NHiPr)2、(NiBu22Si(NHnBu)2、(NiBu22Si(NHiBu)2、(NiBu22Si(NHtBu)2、(NtBu22Si(NHMe)2、(NtBu22Si(NHEt)2、(NtBu22Si(NHnPr)2、(NtBu22Si(NHiPr)2、(NtBu22Si(NHnBu)2、(NtBu22Si(NHiBu)2、(NtBu22Si(NHtBu)2、Si(HNCH2CH2NH)2、Si(MeNCH2CH2NMe)2、Si(EtNCH2CH2NEt)2、Si(nPrNCH2CH2nPr)2、Si(iPrNCH2CH2iPr)2、Si(nBuNCH2CH2nBu)2、Si(iBuNCH2CH2iBu)2、Si(tBuNCH2CH2tBu)2、Si(HNCHCHNH)2、Si(MeNCHCHNMe)2、Si(EtNCHCHNEt)2、Si(nPrNCHCHNnPr)2、Si(iPrNCHCHNiPr)2、Si(nBuNCHCHNnBu)2、Si(iBuNCHCHNiBu)2、Si(tBuNCHCHNtBu)2、(HNCHCHNH)Si(HNCH2CH2NH)、(MeNCHCHNMe)Si(MeNCH2CHNMe)、(EtNCHCHNEt)Si(EtNCH2CH2NEt)、(nPrNCHCHNnPr)Si(nPrNCH2CH2nPr)、(iPrNCHCHNiPr)Si(iPrNCH2CH2iPr)、(nBuNCHCHNnBu)Si(nBuNCH2CH2nBu)、
iBuNCHCHNiBu)Si(iBuNCH2CH2
iBu)、(tBuNCHCHNtBu)Si(tBuNCH2CH2tBu)、(NHtBu)2Si(HNCH2CH2NH)、(NHtBu)2Si(MeNCH2CH2NMe)、
(NHtBu)2Si(EtNCH2CH2NEt)、(NHtBu)2Si(nPrNCH2CH2nPr)、(NHtBu)2Si(iPrNCH2CH2iPr)、(NHtBu)2Si(nBuNCH2CH2nBu)、(NHtBu)2Si(iBuNCH2CH2iBu)、(NHtBu)2Si(tBuNCH2CH2tBu)、(NHtBu)2Si(HNCHCHNH)、(NHtBu)2Si(MeNCHCHNMe)、(NHtBu)2Si(EtNCHCHNEt)、(NHtBu)2Si(nPrNCHCHNnPr)、(NHtBu)2Si(iPrNCHCHNiPr)、(NHtBu)2Si(nBuNCHCHNnBu)、(NHtBu)2Si(iBuNCHCHNiBu)、(NHtBu)2Si(tBuNCHCHNtBu)、(iPrNCH2CH2iPr)Si(NHMe)2、(iPrNCH2CH2iPr)Si(NHEt)、(iPrNCH2CH2iPr)Si(NHnPr)2、(iPrNCH2CH2iPr)Si(NHiPr)2、(iPrNCH2CH2iPr)Si(NHnBu)2、(iPrNCH2CH2iPr)Si(NHiBu)2、(iPrNCH2CH2iPr)Si(NHtBu)2、(iPrNCHCHNiPr)Si(NHMe)2、(iPrNCHCHNiPr)Si(NHEt)2、(iPrNCHCHNiPr)Si(NHnPr)2、(iPrNCHCHNiPr)Si(NHiPr)2、(iPrNCHCHNiPr)Si(NHnBu)2、(iPrNCHCHNiPr)Si(NHiBu)2及び(iPrNCHCHNiPr)Si(NHtBu)2からなる群より選択された1種以上でありうるが、これに制限されない。
【0051】
前記nPrはn-プロピルを意味し、iPrはiso-プロピルを意味し、nBuはn-ブチルを、iBuはiso-ブチルを、tBuはtert-ブチルを意味する。
【0052】
前記保護薄膜前駆体化合物は、好ましい一実施例で、テトラハロゲン化チタンでありうる。
【0053】
前記テトラハロゲン化チタンは、薄膜形成用組成物の金属前駆体として使用されうる。前記テトラハロゲン化チタンは、一例として、TiF4、TiCl4、TiBr4及びTiI4からなる群から選択される少なくともいずれか一つでありうるのであり、例えば、TiCl4であることが経済性の側面で好ましいが、これに限定されるのでない。
【0054】
前記テトラハロゲン化チタンは、熱的安定性に優れ、常温で分解されずに液体状態で存在するため、ALD(原子層蒸着法(原子層堆積法))の前駆体として用いて、薄膜を蒸着させるのに、有用なものとして用いることができる。
【0055】
前記保護薄膜の前駆体化合物は、一例として、非極性溶媒と混合してチャンバ内に投入されうるのであり、この場合、保護薄膜前駆体化合物の粘度や蒸気圧を容易に調節可能であるという利点がある。
【0056】
前記非極性溶媒は、好ましくはアルカン及びシクロアルカンからなる群から選択された1種以上でありうるのであり、このような場合、反応性及び溶解度が低く、水分管理が容易な有機溶媒を含有しつつも、薄膜形成時に、蒸着温度が増加しても段差被覆性(step coverage)が向上するという利点がある。
【0057】
より好ましい例として、前記非極性溶媒は、C1~C10のアルカン(alkane)またはC3~C10のシクロアルカン(cycloalkane)を含みうるのであり、好ましくはC3~C10のシクロアルカン(cycloalkane)であり、この場合、反応性及び溶解度が低く、水分管理が容易であるという利点がある。
【0058】
本記載において、C1、C3などは炭素数を意味する。
【0059】
前記シクロアルカンは、好ましくはC3~C10のモノシクロアルカンでありうるのであり、前記モノシクロアルカンのうち、シクロペンタン(cyclopentane)が、常温にて液体であって最も蒸気圧が高いことから、気相蒸着工程にて好ましいが、これに限定されない。
【0060】
前記非極性溶媒は、一例で、水に対する溶解度(25℃)が200mg/L以下、好ましくは50~200mg/L、より好ましくは135~175mg/Lであり、この範囲内で、保護薄膜前駆体化合物に対する反応性が低く、水分管理が容易であるという利点がある。
【0061】
本記載において、溶解度は、本発明が属する技術分野にて通常使用する測定方法や基準によるのであれば、特に制限されず、一例として、飽和溶液をHPLC(high-performance liquid chromatography)法でもって測定することができる。
【0062】
前記非極性溶媒であると、好ましくはペリクル保護薄膜の前駆体化合物と非極性溶媒とを合わせたトータルの重量に対して5~95重量%含むことができ、より好ましくは10~90重量%含むことができ、さらに好ましくは40~90重量%含むことができ、最も好ましくは70~90重量%含むことができる。
【0063】
もしも、前記非極性溶媒の含量が前記上限値を超過して投入されると、不純物を誘発して、抵抗と保護薄膜内の不純物の数値とが増加するのであり、前記有機溶媒の含量が前記下限値未満で投入される場合、溶媒添加による段差被覆性の向上の効果、及び塩素(Cl)イオンといった不純物を低減する効果が少ないという短所がある。
【0064】
前記ペリクル保護薄膜形成方法であると、一例で、下記数式1で計算される、サイクルあたりの薄膜成長率(Å/Cycle)の減少率が-5%以下であり、好ましくは-10%以下、より好ましくは-20%以下であり、さらに好ましくは-30%以下、より一層好ましくは-40%以下、最も好ましくは-45%以下であり、この範囲内で、段差被覆性及び膜の厚さの均一性に優れている。
【0065】
[数式1]
サイクルあたりの薄膜成長率の減少率(%)=[(ペリクル保護薄膜形成用の成長抑制剤を使用した場合のサイクルあたりの薄膜成長率-ペリクル保護薄膜形成用の成長抑制剤を使用しなかった場合のサイクルあたりの薄膜成長率)/ペリクル保護薄膜形成用の成長抑制剤を使用しなかった場合のサイクルあたりの薄膜成長率]×100
【0066】
前記ペリクル保護薄膜の形成方法であると、SIMSによって測定された、200サイクル後に形成された薄膜内の残留ハロゲンの強さ(c/s)が、好ましくは10,000以下、より好ましくは8,000以下、さらに好ましくは7,000以下、より一層好ましくは6,000以下でありうるのであって、このような範囲内で、腐食及び劣化が防止される効果が優れる。
【0067】
本記載において、パージ(purging)は、好ましくは1,000~10,000sccm、より好ましくは2,000~7,000sccm、さらに好ましくは2,500~6,000sccmであり、この範囲内で、サイクルあたりの薄膜成長率が好ましい範囲に低減少され、工程副生成物が低減されるという効果がある。
【0068】
前記ALD(原子層堆積工程)は、高いアスペクト比が要求される集積回路(IC:Integrated Circuit)の製作において非常に有利であり、特には自己制限的な薄膜成長メカニズムによる、優れた段差塗布性(conformality)、均一な被覆性(uniformity)、及び精密な厚さ制御などといった利点がある。
【0069】
前記ペリクル保護薄膜形成方法は、一例として、50~900℃の範囲の蒸着温度で実施することができ、好ましくは300~700℃の範囲の蒸着温度で、より好ましくは350~600℃範囲の蒸着温度で実施するのであり、さらに好ましくは400~550℃範囲の蒸着温度で実施し、より一層好ましくは400~500℃の範囲の蒸着温度で実施するのであるが、この範囲内で、ALD工程の特性を具現しつつ優れた膜質の薄膜に成長させるという効果がある。
【0070】
前記ペリクル保護薄膜形成方法は、一例として、0.1~10Torrの範囲の蒸着圧力にて実施することができ、好ましくは0.5~5Torrの範囲の蒸着圧力にて、最も好ましくは1~3Torrの範囲の蒸着圧力にて実施するのであるが、この範囲内で、均一な厚さの薄膜を得る効果がある。
【0071】
本記載において、蒸着温度及び蒸着圧力は、蒸着チャンバ内にて形成される温度及び圧力として測定されるか、または、蒸着チャンバ内の基板に加えられる温度及び圧力にとして測定されうる。
【0072】
前記ペリクル保護薄膜形成方法は、好ましくは、前記ペリクル保護薄膜形成用の成長抑制剤をチャンバ内に投入する前に、チャンバ内の温度を蒸着温度に昇温する段階;及び/または、前記ペリクル保護薄膜形成用の成長抑制剤をチャンバ内に投入する前に、チャンバ内に不活性気体を投入してパージする段階を含む。
【0073】
また、本発明は、前記ペリクル保護薄膜の製造方法を具現することができる薄膜製造装置として、ALDチャンバ、ペリクル保護薄膜形成用の成長抑制剤を気化する第1気化器、気化されたペリクル保護薄膜形成用成長抑制剤をALDチャンバ内へと移送する第1移送手段、Ti系保護薄膜の前駆体を気化する第2気化器、及び、気化されたTi系保護薄膜の前駆体をALDチャンバ内へと移送する第2移送手段、を含む薄膜製造装置を含む。ここで、気化器及び移送手段は、本発明が属する技術分野にて通常使用される気化器及び移送手段であるならば、特に制限されない。
【0074】
具体的な例として、前記ペリクル保護薄膜形成方法について説明すると、
まず、上部に薄膜が形成され得るペリクルを、原子層堆積が可能な蒸着チャンバ内に位置させる。
【0075】
前記ペリクルは、一例として、基板上に位置され、このような基板は、一例として、シリコン基板、シリコンオキサイドなどの基板を含む。
【0076】
前記基板は、その上部に導電層または絶縁層がさらに形成されているのでありうる。
【0077】
前記蒸着チャンバ内に位置させた基板上に薄膜を蒸着するために、上述したペリクル保護薄膜形成用の成長抑制剤と、ペリクル保護薄膜の前駆体化合物、またはこれと非極性溶媒との混合物とを、それぞれ準備する。
【0078】
その後、準備したペリクル保護薄膜形成用の抑制剤を気化器内に投入した後、蒸気相に変化させて蒸着チャンバに伝達しペリクル表面に吸着させ、非吸着のペリクル保護薄膜形成用の抑制剤をパージ(purging)する。
【0079】
次に、準備されたペリクル保護薄膜の前駆体化合物、またはこれと非極性溶媒との混合物を気化器内に投入した後、気相に変化させて蒸着チャンバに伝達しペリクル上に吸着させてから、未吸着のペリクル保護薄膜形成用組成物をパージ(purging)する。
【0080】
本記載において、ペリクル保護薄膜形成用の抑制剤、及びペリクル保護薄膜の前駆体化合物などを蒸着チャンバへと伝達する方式には、一例として、気体流量制御(Mass Flow Controller;MFC)法を活用して、揮発した気体を移送する方式(Vapor Flow Control;VFC)を使用するか、または液体流量制御(Liquid Mass Flow Controller;LMFC)法を活用して液体を移送する方式(Liquid Delivery System;LDS)を使用しうるのであり、好ましくはLDS方式を用いるのである。
【0081】
ここで、ペリクル保護薄膜形成用の抑制剤、及びペリクル保護薄膜の前駆体化合物などを、ペリクル上に移動させるためのキャリアガスまたは希釈ガスとしては、アルゴン(Ar)、窒素(N2)、ヘリウム(He)から選択される一つまたは二つ以上の混合気体を用いうるが、制限されるのではない。
【0082】
本記載において、パージガスとしては、一例として、不活性ガスが用いられうるのであり、好ましくは前記のキャリアガスまたは希釈ガスを使用する。
【0083】
次に、反応ガスを供給する。前記反応ガスとしては、本発明が属する技術分野にて通常使用される反応ガスであれば特に制限されず、好ましくは還元剤、窒化剤または酸化剤を含むことができる。前記還元剤と、ペリクルに吸着した保護薄膜の前駆体化合物とが反応して金属薄膜が形成されるのであり、前記窒化剤による場合は金属窒化物薄膜が形成され、前記酸化剤による場合は金属酸化物薄膜が形成される。
【0084】
好ましくは、前記還元剤は、アンモニアガス(NH3)または水素ガス(H2)でありうるのであり、前記窒化剤は窒素ガス(N2)でありうるのであり、前記酸化剤はH2O、H22、O2、O3及びN2Oからなる群から選択された1種以上でありうる。
【0085】
次に、不活性ガスを用いて、反応していない残留反応ガスをパージする。これにより、過剰量の反応ガスだけでなく、生成された副生成物も一緒に除去することができる。
【0086】
上記のように、ペリクル保護薄膜形成用の抑制剤をペリクル上に吸着させる段階、未吸着のペリクル保護薄膜形成用の抑制剤をパージする段階、ペリクル保護薄膜の前駆体化合物を基板上に吸着させる段階、未吸着の、ペリクル保護薄膜の前駆体化合物をパージする段階、反応ガスを供給する段階、及び、残留反応ガスをパージする段階を、単位サイクルとして、所望の厚さの薄膜を形成するために、前記単位サイクルを繰り返すことができる。
【0087】
前記単位サイクルは、一例として、100~1000回、好ましくは100~500回、より好ましくは150~300回であり、この範囲内で、目的とする薄膜特性が良好に発現するという効果がある。
【0088】
下記の図1は従来のALD工程を説明するための工程図であり、下記の図2は本発明の一実施例によるALD工程を説明するための工程図である。図1を参照すると、従来のALD工程と同様に行う場合、即ち、本発明によるペリクル保護薄膜形成用の成長抑制剤(Inhibitor)について、ペリクル保護薄膜の前駆体化合物(例えば、TiCl4)を吸着させる前に、先に吸着させてペリクル表面を保護(protection)することをしない場合には、反応ガス(例えば、NH3)と反応して形成された保護薄膜(例えば、TiN)に、HClといった工程副生成物が残るようになり、腐食や劣化によって基板の性能を低下させる。しかし、図2のように、本発明によるペリクル保護薄膜形成用の成長抑制剤(Inhibitor;TSI)について、保護薄膜前駆体化合物(例えば、TiCl4)を吸着させる前に、先に吸着させてペリクル表面を保護(Surface Protection;SP)する場合には、保護薄膜(例えば、TiN)を形成する際に、反応ガス(例えば、NH3)と反応して発生した、HClといった工程副生成物が、ペリクル保護薄膜形成用の成長抑制剤とともに除去されることで、ペリクルの腐食や劣化を防止し、さらには、サイクルあたりの薄膜成長率を適切に下げて、段差被覆性及び薄膜厚さの均一性をも改善させる。
【0089】
本発明のマスクは、本記載のペリクル保護薄膜形成方法で製造されることを特徴としており、このような場合、ペリクルの透過度を低下させずに腐食や劣化を防ぐことで、これを採用したマスクの寿命を大きく改善させるという利点がある。
【0090】
また、本発明のマスクは、好ましくは、マスク、及び前記マスクの表面を覆うペリクルを含み、前記ペリクルはCNT、フラーレンまたはこれらの混合からなり、前記ペリクルの表面は保護薄膜でコーティングされたことを特徴とし、このような場合、ペリクルの透過度を低下させずに腐食や劣化を防ぎ、これを採用したマスクの寿命を大きく改善させるという利点がある。
【0091】
前記保護薄膜でコーティングされたペリクルは、好ましくは透過度が80%以上、より好ましくは85%以上である。
【0092】
本記載のマスクは、本明細書で別途説明しなかった構成であっても、本発明と抵触せず、本発明が属する技術分野で通常マスクに含まれる構成であるならば、すべて含むことができる。
【0093】
前記製造された保護薄膜は、好ましくは、厚さが20nm以下であり、比抵抗値が0.1~400μΩ・cmであり、ハロゲン含量が10,000ppm以下であり、段差被覆率が90%以上である。
【0094】
前記保護薄膜は、厚さが、一例として、5~20nm、好ましくは10~20nm、より好ましくは15~18.5nm、さらに好ましくは17~18.5nmである。この範囲内で保護薄膜特性に優れるという効果がある。
【0095】
前記保護薄膜は、比抵抗値が、一例として、0.1~400μΩ・cm、好ましくは50~400μΩ・cm、より好ましくは100~300μΩ・cmであり、この範囲内で保護薄膜特性に優れるという効果がある。
【0096】
前記保護薄膜は、ハロゲン含量が、より好ましくは9,000ppm以下または1~9,000ppm、さらに好ましくは8,500ppm以下または100~8,500ppm、より一層好ましくは8,200ppm以下または1,000~8,200ppmでありうるのであって、この範囲内で、保護薄膜特性に優れ、且つ腐食が低減するという効果がある。
【0097】
前記保護薄膜は、一例で、段差被覆率が、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上であり、この範囲内で、複雑な構造の保護薄膜でも容易にペリクル上に蒸着させることができ、次世代の半導体装置に適用可能であるという利点がある。
【0098】
前記保護薄膜は、一例で、TiN保護薄膜、TiO2保護薄膜、NbN保護薄膜、HfO2保護薄膜またはSiO2保護薄膜でありうる。
【0099】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例及び図面を提示するが、下記実施例及び図面は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で多様な変更及び修正が可能であることは、当業者にとって明白であり、このような変形及び修正が、添付の特許請求の範囲に属するということも当然である。
【0100】
[実施例]
<実施例1~3>
下記表1に記載された薄膜形成用の成長抑制剤と、薄膜前駆体化合物としてのTiCl4とをそれぞれ準備した。準備した薄膜形成用の成長抑制剤を、キャニスターに入れて、常温でLMFC(Liquid Mass Flow Controller)を用いて、0.05g/minの流速で、150℃に加熱された気化器に供給した。気化器にて蒸気相へと気化された薄膜形成用の成長抑制剤を、1秒間、基板がローディングされた蒸着チャンバに投入した。この後、アルゴンガスを5000sccmで2秒間供給して、アルゴンパージを実施した。この際、反応チャンバ内の圧力は2.5Torrに制御した。次に、準備されたTiCl4を別途のキャニスターに入れ、常温にてLMFC(Liquid Mass Flow Controller)を用いて0.05g/minの流速で、150℃に加熱された別途の気化器に供給した。気化器にて蒸気相へと気化されたTiCl4を、1秒間、蒸着チャンバに投入した。この後、アルゴンガスを5000sccmで2秒間供給することでアルゴンパージを実施した。この際、反応チャンバ内の圧力は2.5Torrに制御した。次に、反応性ガスとしてアンモニア1000sccmを3秒間、前記反応チャンバに投入した後、3秒間、アルゴンパージを実施した。この際、金属薄膜が形成される基板を、460℃に加熱した。このような工程を200回繰り返して、自己制限原子層であるTiN薄膜を形成した。
【0101】
【表1】
【0102】
<実施例4>
前記表1に記載された薄膜形成用成長抑制剤と、薄膜前駆体化合物としてのTiCl4とを、それぞれ準備した。準備した薄膜形成用成長抑制剤を、キャニスターに入れ、常温でLMFC(Liquid Mass Flow Controller)を用いて、0.05g/minの流速で、150℃に加熱された気化器に供給した。準備されたTiCl4を、別途のキャニスターに入れ、常温でLMFC(Liquid Mass Flow Controller)を用いて、0.05g/minの流速で、150℃に加熱された別途の気化器に供給した。
【0103】
気化器にて蒸気相へと気化されたTiCl4を、1秒間、蒸着チャンバに投入した。この後、アルゴンガスを5000sccmで2秒間供給して、アルゴンパージを実施した。この際、反応チャンバ内の圧力は2.5Torrに制御した。次に、気化器にて気相へと気化された薄膜形成用成長抑制剤を、1秒間、基板がローディングされた蒸着チャンバに投入した。この後、アルゴンガスを5000sccmで2秒間供給することでアルゴンパージを実施した。この際、反応チャンバ内の圧力は2.5Torrに制御した。次に、反応性ガスとしてアンモニア1000sccmを3秒間、前記反応チャンバに投入した後、3秒間、アルゴンパージを実施した。この際、金属薄膜が形成される基板を、440~500℃に加熱した。このような工程を200回繰り返して、自己制限原子層であるTiN薄膜を形成した。
【0104】
<実施例5>
前記表1に記載された薄膜形成用成長抑制剤と、薄膜前駆体化合物としてのSi2Cl6とを、それぞれ準備した。準備した薄膜形成用成長抑制剤を、キャニスターに入れて、常温でLMFC(Liquid Mass Flow Controller)を用いて、0.05g/minの流速で、150℃に加熱された気化器に供給した。準備されたSi2Cl6を別途のキャニスターに入れ、常温でLMFC(Liquid Mass Flow Controller)を用いて、0.05g/minの流速で、150℃に加熱された別途の気化器に供給した。
【0105】
気化器にて蒸気相へと気化された薄膜形成用成長抑制剤を、1秒間、基板がローディングされた蒸着チャンバに投入した後、アルゴンガスを5000sccmで2秒間供給することでアルゴンパージを実施した。この際、反応チャンバ内の圧力は2.5Torrに制御した。次に、気化器にて蒸気相へと気化されたSi2Cl6を1秒間、蒸着チャンバに投入した。この後、アルゴンガスを5000sccmで2秒間供給することでアルゴンパージを実施した。この際、反応チャンバ内の圧力は2.5Torrに制御した。次に、反応性ガスとしてアンモニア1000sccmを3秒間、前記反応チャンバに投入した後、200Wのプラズマ処理を行った。次に、3秒間、アルゴンパージを実施した。この際、金属薄膜が形成される基板を、460℃に加熱した。このような工程を300回繰り返して、自己制限原子層であるSiN薄膜を形成した。
【0106】
<実施例6>
実施例1において、薄膜形成用成長抑制剤としてtert-ブチルクロリド(tert-butyl chloride)を用い、薄膜前駆体化合物としてNbF5を用いて、LDS方式でなくVFC方式で気化させたことを除いては、実施例1と同一の方法で、自己制限原子層であるNbN薄膜を形成した。
【0107】
<実施例7~9>
実施例1において、ペリクル保護薄膜形成用の成長抑制剤としてtert-ブチルクロリド(tert-butyl chloride)を用い、TiCl4をペリクル保護薄膜の前駆体化合物として使用し、基板をCNTペリクルに変更し、ペリクル保護薄膜の厚さをそれぞれ1nm、2nm及び3nmに設定したことを除いては、実施例1と同一の方法で、TiNペリクル保護薄膜を形成した。
【0108】
<実施例10~12>
実施例9において、ペリクル保護薄膜前駆体化合物として、それぞれ、CpHf、,1,3,3-テトラメチルジシロキサン(1,1,3,3-Tetramethyldisiloxane)及びNbF5を使用し、反応ガスとしてそれぞれオゾン及びアンモニアを使用したことを除いては、実施例9と同一の方法で、HfO2、SiO2及びNbNペリクル保護薄膜を形成した。
【0109】
<比較例1>
実施例1において、薄膜形成用成長抑制剤を使用しなかったことと、これに伴い非吸着の薄膜形成用成長抑制剤をパージングする段階を省略したことを除いては、実施例1と同一の方法で、基板上にTIN薄膜を形成した。
【0110】
<比較例2及び3>
実施例1において、前記表1に記載された薄膜形成用成長抑制剤でなくペンタン(Pentane)またはシクロペンタン(Cyclopentane)を使用したことを除き、実施例1と同一の方法で、基板上にTIN薄膜を形成した。
【0111】
<比較例4>
実施例5において、薄膜形成用成長抑制剤を使用しなかったことと、これに伴い未吸着の薄膜形成用成長抑制剤をパージする段階を省略したことを除いては、実施例6と同一の方法で、基板上にSiN薄膜を形成した。
【0112】
<比較例5>
実施例6で薄膜形成用成長抑制剤を投入しなかったことを除いては、実施例6と同一の方法で、自己制限原子層であるNbN薄膜を形成した。
【0113】
<比較例6~8>
実施例7~9において、ペリクル保護薄膜形成用成長抑制剤を投入しなかったことを除き、実施例7~9と同一の方法で、TiNペリクル保護薄膜を形成した。
【0114】
[実験例]
1)蒸着(堆積)の評価
下記表2に示したように、tert-ブチルブロミド(tert-butyl bromide)を薄膜形成用成長抑制剤として用いた実施例1と、これを含んでいない比較例1とを比較した。その結果、蒸着速度は0.19Å/cycleであり、比較例1と比較した場合に40%以上、蒸着速度が減少した。残りの実施例2及び3、及び実施例5も、実施例1と類似する値の蒸着速度であることを確認することができた。また、本発明による薄膜形成用の成長抑制剤の代わりにペンタンまたはシクロペンタンを使用した比較例2及び3も、比較例1と同一の値の蒸着速度であることを確認することができた。ここで、蒸着速度の減少は、CVD蒸着特性をALD蒸着特性に変化させることを意味するので、段差被覆特性の改善の指標として活用することができる。
【0115】
また、SiN薄膜にて同一の効果が具現されるかどうかを確認するために、下記表2を参照して実施例5と比較例4とを比較するならば、その結果として、実施例5が比較例4に比べて、蒸着速度は0.29Å/cycleから0.32Å/cycleと、10%以上減少することが分かる。
【0116】
下記図7は、実施例5と比較例4で製造されたSiN薄膜についてのSIMS分析グラフである。右側のグラフに該当する実施例5が、左側のグラフに該当する比較例4に比べて、Clが大幅に低減することを確認することができた。
【0117】
また、下記表2を参照すると、tert-ブチルヨージド(tert-butyl iodide)を薄膜形成用の成長抑制剤として用いてソース前駆体、即ち、薄膜前駆体を先に吸着させた後、アルゴンガスパージの後に、薄膜形成用の成長抑制剤を供給した実施例4の場合、薄膜形成用の成長抑制剤を用いなかった比較例1と比較して、蒸着速度は0.32Å/cycleから0.35Å/cycleへと10%近く増加し、蒸着温度を500℃に上げた場合、0.37Å/cycleまで16%近く増加するということを確認することができた。
【0118】
実施例4は、比較例1と比べてむしろ蒸着速度が増加するが、これは従来技術とは異なり、蒸着速度が増加すると、不純物が増加するのではなく、むしろ不純物が低減するという予測できない現象が起き、生産能力(through-put)の側面に結びつけられた場合に、また別の大きな利点を提供することを確認することができた。
【0119】
【表2】
【0120】
2)不純物低減特性
実施例1~5及び比較例1~2に基づいて、蒸着されたTiN薄膜についての不純物についての低減特性、即ち、工程の副生成物の低減特性を比較するために、SIMS分析を行い、その結果を下の表4及び図3、4に示した。ここで、Clの低減率(%)は下記数式2で計算した。
【0121】
[数式2]
【0122】
【表3】
【0123】
*試料薄膜の基準厚さ(Thickness):10nm
【0124】
前記表3に示したように、本発明に係る薄膜形成用の成長抑制剤を使用した実施例1~5は、これを用いなかった比較例1~比較例2に比べてClの強さ(intensity)が大幅に減少して、不純物の低減特性に優れていることを確認することができた。
【0125】
また、実施例3と実施例4とを比較してみると、実施例4の工程の方式が、不純物低減特性に非常に有利であることを確認することができた。
【0126】
また、下記の図3~4は、実施例1及び比較例1を通じた蒸着温度に伴う工程副生成物の低減特性、即ち、Clの減少率を示すグラフであり、本発明による薄膜形成用の成長抑制剤が使用された場合、すべての蒸着温度で、特に480~520℃の区間で本発明による薄膜形成用の抑制剤が使用されなかった場合に比べて、Clの強さ(intensity)が大幅に低下するということを確認することができた。
【0127】
また、下記図9から分かるように、本発明による薄膜形成用成長抑制剤(tert-butyl chloride)を用いつつ薄膜前駆体をNb薄膜前駆体に変更した実施例6は、薄膜形成用の成長抑制剤を用いていない比較例5(Ref NbF5)に比べて膜内の汚染物質であるF及びCの強さ(c/s)が大幅に減少して不純物の低減特性が非常に優れていることを確認することができた。より具体的に考察すると、薄膜前駆体としてNbF5を用いた実施例6(F(c/s)=75,197、C(c/s)=656)は、リファレンス(参照基準)である比較例5(F(c/s)=116,925.65、C(c/s)=1,466)に比べて、膜内の汚染物質であるFとCの強さがそれぞれ35%、55%減少し、本発明によるNb薄膜は、不純物低減特性が大いに優れているということを再度確認することができた。
【0128】
3)薄膜成長率の減少率
実施例1~5及び比較例1~2で蒸着されたTiN薄膜の薄膜成長率は、Ellipsometery法で厚さを測定した後、これに対する結果をもって下記の数式1を用いて薄膜成長率減少率を計算し、その結果を下記表4に示した。
【0129】
[数式1]
サイクルあたりの薄膜成長率の減少率(%)=[(薄膜形成用の成長抑制剤を使用した場合のサイクルあたりの薄膜成長率-薄膜形成用の成長抑制剤を使用しなかった場合のサイクルあたりの薄膜成長率)/薄膜形成用の成長抑制剤を使用しなかった場合のサイクルあたりの薄膜成長率]×100
【0130】
【表4】
【0131】
前記表4に示したように、本発明による薄膜形成用の成長抑制剤を使用した実施例1~3は、これを用いなかった比較例1に比べて、サイクルあたりの薄膜成長率の減少率が10~40%のレベルで優れていることを確認することができた。また、実施例5と比較例2とを比較すると、実施例5が比較例2に比べてサイクルあたりの薄膜成長率減少率が17%のレベルで優れていることを確認することができた。追加で、工程の方式を異ならせた場合、実施例4を比較例1と比較すると、実施例4が、比較例1に比べてむしろ蒸着速度が増加するが、従来技術とは異なり蒸着速度が増加しても不純物低減特性に優れ、むしろ生産能力(through-put)の側面に結びつけられた場合、また別の有利さを提供することができる。
【0132】
4)段差被覆特性
実施例1及び比較例1で蒸着されたTiN薄膜について、TEMを用いて段差被覆性を確認し、その結果を下記表5及び下記図5に示した。
【0133】
【表5】
【0134】
前記表5に示したように、本発明による薄膜形成用の成長抑制剤を使用した実施例1は、これを使用していない比較例1に比べて段差被覆率が顕著に高いことを確認することができた。また、下記図5のTEM写真を参酌すると、実施例1(SP-TiCl4)で蒸着されたTIN薄膜の上面(Top)と下面(bottom)の厚さ均一度は、比較例1(TiCl4)で蒸着されたTIN薄膜に比べて段差塗布性(conformality)が、より優れていることを確認することができた。ここで、上面(Top)と下面(bottom)の断面は、下記図6で説明することができ、前記上面(top)の断面はtopから200nm下の地点、前記下面(bottom)の断面は下面(bottom)から100nm上の地点で形成されたものである。
【0135】
<参照例1>
前記実施例1において、薄膜形成用成長抑制剤としてtert-ブチルブロミド(tert-butyl bromide)の代わりにtert-ブチルクロリド(Tert-butyl chloride)を使用したことを除き、前記実施例1と同一の方法で工程を行い、自己制限原子層であるTiN薄膜を形成したのであり、実施例1に基づいて蒸着されたTiN薄膜についての不純物低減特性、即ち、工程副生成物の低減特性と比較するためにSIMS分析を行い、その結果を下記表6に示した。
【0136】
【表6】
【0137】
*厚み(Thickness):10nm
【0138】
前記表6に示したように、本発明による臭素化物の薄膜形成用成長抑制剤を用いた実施例1は、塩化物の薄膜形成用成長抑制剤を用いた参考例1に比べて、Clの低減率が、より高く、不純物低減特性がより優れていることを確認することができた。
【0139】
5)薄膜結晶性
下記図8、は比較例1のように薄膜形成用の成長抑制剤を投入しなかったもの(Ref TiN)、実施例4において薄膜形成用の成長抑制剤を0.1/minの量で投入したもの(tert-BuI (0.1g/min))及び実施例4において薄膜形成用成長抑制剤を0.1/minの量で投入したもの(tert-BuI(0.1g/min))についてのXRD分析グラフである。実施例4と同様に薄膜前駆体化合物を先に吸着させてアルゴンパージした後に、tert-BuIの薄膜形成用成長抑制剤を吸着させる場合、薄膜の結晶粒がより大きくなること、即ち、結晶性が増大することを確認することができた。ここで、結晶粒の大きさはTiN薄膜の(200)位置のピークで確認可能であり(200の位置のピークが大きくシャープであるほど結晶性が高い)、このように結晶性が増加すると、比抵抗が大幅に改善されるという利点がある。
【0140】
6)薄膜密度
比較例1のように薄膜形成用成長抑制剤を投入していないもの(Ref TiN)、実施例4において薄膜形成用成長抑制剤を0.1/minの量で投入したもの(tert-BuI(0.1g/min))、及び、実施例4において薄膜形成用成長抑制剤を0.1/minの量で投入したもの(tert-BuI (0.1g/min))についての、X線反射測定(XRR)分析によって測定されたところ、次のとおりであった。前記比較例1にて製造されたTiN薄膜の密度は4.85g/cm3であったが、実施例4においてtert-BuIを0.01g/minの量を使用して製造されたTiN薄膜の密度は5.00g/cm3、実施例4においてtert-BuIを0.1g/minの量を使用して製造されたTiN薄膜の密度は5.23g/cm3であり、実施例4のように薄膜前駆体化合物を先に吸着させ、アルゴンパージした後に、tert-BuIの薄膜形成用成長抑制剤を吸着させる場合、薄膜密度が大幅に増加することを確認することができた。したがって、本発明による薄膜は、DRAMのキャパシタンス(capacitance)のように高アスペクト比(high aspect ratio)を持つ集積化された構造体の撓み特性を改善し、また、バリアメタル(barrier metal)特性が、より優れるという利点を有する。
【0141】
したがって、本発明は、薄膜密度が、4.95g/cm3以上、好ましくは5.00g/cm3以上、具体的な例として、4.95~5.50g/cm3、好ましい例として、5.0~5.3g/cm3である薄膜を提供することができる。
【0142】
7)ペリクル膜の透過度
前記実施例7、9~10及び比較例6で製造したペリクル(膜)における13.5nmの波長のEUV透過度について、透過度分析器を用いて測定し、その結果を下記表7に示した。ここで、透過度分析器は、市販の透過度分析器であれば特に制限されず、一例として、株式会社エフエスティのEUVOTM40が挙げられる。
【0143】
【表7】
【0144】
前記表7に示したように、本発明に係る保護薄膜でコーティングされたペリクルは、保護薄膜の利点を有しつつ、透過度が、リファレンスである比較例6のペリクルに比べて大幅に低下せず、同等の水準であることを確認することができた。
【0145】
8)ペリクル膜の水素プラズマ抵抗性
前記実施例9~11で製造した保護薄膜でコーティングされたペリクル(膜)について、H2プラズマによる抵抗性を確認するために、下記表8のH2プラズマ条件で処理し、その結果を下記図10に示した。
【0146】
【表8】
【0147】
下記図10に示したように、保護薄膜でコーティングされていないペリクル(CNT)は、H2プラズマ処理時に容易に劣化したが、本発明に係る保護薄膜でコーティングされたペリクルは、H2プラズマ処理にも全く劣化せず、H2プラズマによる抵抗性、即ち、化学的エッチング防止効果が優れるということを確認することができた。下記図10において、TiN-CNTは実施例9にて、HfO2-CNTは実施例10にて、SiO2-CNTは実施例11にて製造した保護薄膜でもってコーティングされたペリクル膜に対するH2プラズマ処理後の表面SEMイメージを示す。
【0148】
9)ペリクル膜の欠陥の程度
前記実施例7~9及び比較例6~8で製造した保護薄膜でコーティングされたペリクル(膜)の欠陥の程度について、入射レーザ波長531nmのラマン分光分析器(モデル名:NOST(Korea)、製造会社:FEX)を用いて測定し、その結果を下記図11に示した。ここで、ID/IGが低いほど欠陥(defect)の程度が低いことを意味する。
【0149】
下記図11を参照すると、実施例7~9のいずれも、これらのそれぞれにリファレンスとして対応する比較例6~8に比べて、ID/IGの値が大幅に低下し、ペリクル(膜)の欠陥の程度が非常に低くなったことを確認することができた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11