(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-20
(45)【発行日】2025-03-03
(54)【発明の名称】表面処理剤、表面処理方法及び基板表面の領域選択的製膜方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20250221BHJP
H01L 21/318 20060101ALI20250221BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20250221BHJP
C23C 16/04 20060101ALI20250221BHJP
C23C 28/00 20060101ALI20250221BHJP
【FI】
H01L21/205
H01L21/318 B
H01L21/316 X
C23C16/04
C23C28/00 E
(21)【出願番号】P 2020120730
(22)【出願日】2020-07-14
【審査請求日】2023-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】大川 夏実
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一生
(72)【発明者】
【氏名】飯岡 淳
【審査官】小▲高▼ 孔頌
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0322812(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0364574(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0004068(US,A1)
【文献】特開2014-093407(JP,A)
【文献】国際公開第2017/119350(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
H01L 21/318
H01L 21/316
C23C 16/04
C23C 28/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに材質が異なる2以上の領域を含む表面を有する基板であり、
前記2以上の領域のうち少なくとも1つの領域は
、コバルト(Co)、窒化チタン(TiN
)及びルテニウム(Ru)からなる群から選択される少なくとも1種を含む
第2の領域であり、
前記第2の領域に隣接する第1の領域は、ケイ素、窒化ケイ素、シリコン酸化膜、ゲルマニウム及びシリコンゲルマニウムからなる群から選択される少なくとも1種を含む領域である、
前記基板を処理するために用いられる表面処理剤であって、
下記一般式(H-1)で表される化合物(H)を含有し、
前記化合物(H)の含有量は、表面処理剤の全量に対し、1ppm~20質量%である表面処理剤。
【化1】
[式中、R
1は置換基を有してもよい炭素数1~30の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1~30の直鎖状若しくは分岐鎖状のフッ素化アルキル基、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基又は炭素数3~12の置換基を有していてもよいシクロアルキル基である。R
2は水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~8の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は置換基を有してもよい炭素数3~12のシクロアルキル基である。]
【請求項2】
互いに材質が異なる2以上の領域を含む表面を有する基板に対する表面処理方法であって、
前記2以上の領域のうち少なくとも1つの領域は、コバルト(Co)、窒化チタン(TiN)及びルテニウム(Ru)からなる群から選択される少なくとも1種を含む第2の領域であり、
前記第2の領域に隣接する第1の領域は、SiN、Ox、TaN、Ge及びSiGeからなる群から選択される少なくとも1種を含む領域である、
前記表面を、請求項1に記載の表面処理剤に曝露することを含む、
表面処理方法。
【請求項3】
請求項
2に記載の表面処理方法により前記基板の前記表面を処理することと、
表面処理された前記基板の表面に、原子層成長法により膜を形成することとを含み、
前記膜の材料の堆積量を領域選択的に異ならせる、前記基板表面の領域選択的製膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理剤、表面処理方法、及び基板表面の領域選択的製膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの高集積化、微小化の傾向が高まり、マスクとなる有機パターンやエッチング処理により作製された無機パターンの微細化が進んでおり、原子層レベルの膜厚制御が求められている。
基板上に原子層レベルで薄膜を形成する方法として原子層成長法(ALD (Atomic Layer Deposition)法;以下、単に「ALD法」ともいう。)が知られている。ALD法は、一般的なCVD(Chemical Vapor Deposition)法と比較して高い段差被覆性(ステップカバレッジ)と膜厚制御性を併せ持つことが知られている。
【0003】
ALD法は、形成しようとする膜を構成する元素を主成分とする2種類のガスを基板上に交互に供給し、基板上に原子層単位で薄膜を形成することを複数回繰り返して所望の厚さの膜を形成する薄膜形成技術である。
ALD法では、原料ガスを供給している間に1層あるいは数層の原料ガスの成分だけが基板表面に吸着され、余分な原料ガスは成長に寄与しない、成長の自己制御機能(セルフリミット機能)を利用する。
例えば、基板上にA12O3膜を形成する場合、TMA(TriMethy1 A1uminum)からなる原料ガスとOを含む酸化ガスが用いられる。また、基板上に窒化膜を形成する場合、酸化ガスの代わりに窒化ガスが用いられる。
【0004】
近年、ALD法を利用して基板表面に領域選択的に製膜する方法が試みられてきている(非特許文献1及び2参照)。
これに伴い、ALD法による基板上の領域選択的な製膜方法に好適に適用し得るように基板表面が領域選択的に改質された基板が求められてきている。
製膜方法において、ALD法を利用することにより、パターニングの原子層レベルの膜厚制御、ステップカバレッジ及び微細化が期待される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】J.Phys.Chem. C 2014,118,10957-10962
【文献】ACS NANO Vol.9,No.9,8710-8717(2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1及び2に記載された方法では、ALD法による基板上の領域選択的な製膜方法に適用する自己組織化単分子膜(self-assembled monolayer)を形成する材料(以下、「SAM剤」という。)として、ホスホン酸が用いられている。ホスホン酸は耐熱性が高いが、基板からの脱離性が低く、基板表面にリン元素が残留するため、ALD法ではその後の原子堆積が阻害されうるという問題があった。また、SAM剤としてホスホン酸を用いた場合、特定の基板への選択性を示すため、ALD法を適用できる基板の種類が限定されうるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、互いに材質が異なる2以上の領域を含む表面を有する基板を処理する方法において、基板選択性、脱離性等の特性が良好な表面処理剤、該表面処理剤を用いた表面処理方法、及び該表面処理方法を適用した基板表面の領域選択的製膜方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
【0009】
本発明の第1の態様は、互いに材質が異なる2以上の領域を含む表面を有する基板を処理するために用いられる表面処理剤であって、下記一般式(H-1)で表される化合物(H)を含有する表面処理剤である。
【0010】
【化1】
[式中、R
1は置換基を有してもよい炭素数1~30の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1~30の直鎖状若しくは分岐鎖状のフッ素化アルキル基、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基又は炭素数3~12の置換基を有していてもよいシクロアルキル基である。R
2は水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~8の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は置換基を有してもよい炭素数3~12のシクロアルキル基である。]
【0011】
本発明の第2の態様は、互いに材質が異なる2以上の領域を含む表面を有する基板に対する表面処理方法であって、前記表面を、前記第1の態様の表面処理剤に曝露することを含む、表面処理方法である。
【0012】
本発明の第3の態様は、前記第2の態様の表面処理方法により前記基板の前記表面を処理することと、表面処理された前記基板の表面に、原子層成長法により膜を形成することとを含み、前記膜の材料の堆積量を領域選択的に異ならせる、前記基板表面の領域選択的製膜方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、互いに材質が異なる2以上の領域を含む表面を有する基板を処理する方法において、基板選択性、脱離性等の特性が良好な表面処理剤、該表面処理剤を用いた表面処理方法、及び該表面処理方法を適用した基板表面の領域選択的製膜方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1の態様:表面処理剤>
本発明の第1の態様に係る表面処理剤は、互いに材質が異なる2以上の領域を含む表面を有する基板(以下、単に「被処理表面」という場合がある)を処理するために用いられる表面処理剤である。
【0015】
本実施形態において、基板表面に領域選択的に製膜する方法への適用しやすさの観点から、被処理表面は、2以上の前記領域のうち少なくとも1つの領域は金属表面を含有することが好ましい。
【0016】
本実施形態において、被処理表面が2つの領域を含む場合、該被処理表面は、第1の領域と、第1の領域とは材質が異なり、第1の領域に隣接する第2の領域とを含む。かかる場合、「近接する領域」とは、第1の領域及び第2の領域となる。
ここで、第1の領域及び第2の領域は、それぞれ複数の領域に分割されていてもされていなくてもよい。
【0017】
本実施形態において、被処理表面が3つ以上の領域を含む場合、該被処理表面は、第1の領域と、第1の領域とは材質が異なり、第1の領域に隣接する第2の領域と、第2の領域とは材質が異なり、第2の領域に隣接する第3の領域とを含む。かかる場合、「近接する領域」とは、第1の領域及び第2の領域(すなわち隣接する領域)であってもよいし、第1の領域及び第3の領域(すなわち先隣の領域)であってもよい。
なお、第1の領域と第3の領域とで材質が相違しない場合、「近接する領域」は、第1の領域及び第2の領域、又は第2の領域及び第3の領域(すなわち隣接する領域)となる。
ここで、第1の領域、第2の領域及び第3の領域は、それぞれ複数の領域に分割されていてもされていなくてもよい。
本実施形態において、被処理表面が第4以上の領域を含む場合についても同様の考え方が適用し得る。
材質が相違する領域数の上限値としては本発明の効果が損なわれない限り特に制限はないが、例えば、7以下又は6以下であり、典型的には5以下である。
【0018】
本実施形態の表面処理剤は、下記一般式(H-1)で表される化合物(H)を含有する
【0019】
【化2】
[式中、R
1は置換基を有してもよい炭素数1~30の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1~30の直鎖状若しくは分岐鎖状のフッ素化アルキル基、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基又は炭素数3~12の置換基を有していてもよいシクロアルキル基である。R
2は水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~8の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は置換基を有してもよい炭素数3~12のシクロアルキル基である。]
【0020】
前記式(H-1)中、R1における炭素数1~30の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基は、炭素数が5~25であることが好ましく、6~22がより好ましく、7~20が更に好ましい。
R1における炭素数1~30の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、上記アルキル基の各異性体等が挙げられる。
【0021】
前記式(H-1)中、R1における炭素数1~30の直鎖状若しくは分岐鎖状のフッ素化アルキル基としては、前記炭素数1~30の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基の水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された基が挙げられる。
【0022】
R1における炭素数1~30の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数1~30の直鎖状若しくは分岐鎖状のフッ素化アルキル基は、置換基を有してもよい。該置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等)、アルキルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0023】
R1における芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、p-メチルフェニル基、p-tert-ブチルフェニル基、p-アダマンチルフェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、2,6-ジエチルフェニル基、2-メチル-6-エチルフェニル基等が挙げられる。なかでも、Rにおける置換基を有してもよい芳香族炭化水素基としては、フェニル基又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
【0024】
R1における芳香族炭化水素基は、置換基を有してもよい。該置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボニル基、ニトロ基等が挙げられる。
【0025】
前記式(H-1)中、R1における炭素数3~12のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基等が挙げられる。
【0026】
R1における炭素数3~12のシクロアルキル基は、置換基を有してもよい。該置換基としては、例えば、アルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等)、アルキルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0027】
上記のなかでも、R1としては、置換基を有してもよい炭素数1~30の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は置換基を有してもよい芳香族炭化水素基が好ましく、互いに材質が異なる2以上の領域を含む表面を有する基板を処理する方法への適用する観点から、炭素数5~25の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基がより好ましい。
【0028】
前記式(H-1)中、R2における炭素数1~8の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、上記アルキル基の各異性体等が挙げられる。
【0029】
R2における炭素数1~8の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基は、置換基を有してもよい。該置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等)、アルキルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0030】
前記式(H-1)中、R2における炭素数3~12のシクロアルキル基としては、R1における炭素数3~12のシクロアルキル基と同様のものが挙げられる。
【0031】
上記のなかでも、R2としては、水素原子が好ましい。
【0032】
本実施形態において、化合物(H)は1種単独で用いてもよく、2種以上のを用いてもよい。
本実施形態に係る表面処理剤において、化合物(H)の含有量は、表面処理剤の全質量に対し、1ppm~20質量%が好ましく、10ppm~15質量%がより好ましく、100ppm~10質量%が更に好ましい。
化合物(H)の含有量が上記の好ましい範囲内であることにより、互いに材質が異なる2以上の領域を含む表面を有する基板を処理する方法において要求される種々の特性(耐熱性、脱離性等)が良好になりやすい。
【0033】
・水
本実施形態にかかる表面処理剤は、撥水性をより向上させるために、水を含んでもよい。水は、不可避的に混入する微量成分を含んでいてもよい。本実施形態の表面処理剤に用いられる水は、蒸留水、イオン交換水、及び超純水などの浄化処理を施された水が好ましく、半導体製造に一般的に使用される超純水を用いることがより好ましい。
本実施形態に係る表面処理剤において、水を含む場合の含有量は、0.01~25質量%が好ましく、0.03~20質量%がより好ましく、0.05~15質量%が更に好ましい。
水の含有量が上記の好ましい範囲内であることにより、互いに材質が異なる2以上の領域を含む表面を有する基板を処理する方法において、少なくとも1つの領域が金属表面を含有する場合に、化合物(H)が金属表面を含有する領域に吸着しやすくなり、金属表面を含有する領域に対する表面処理剤の選択性を向上しやすい。また、表面処理剤の撥水性がより向上しやすい。
【0034】
・溶剤
本実施形態に表面処理剤は、各成分を溶剤に溶解することが好ましい。表面処理剤が溶剤を含有することにより、浸漬法、スピンコート法等による基板の表面処理が容易になりやすい。
【0035】
溶剤の具体例としては、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ビス(2-ヒドロキシエチル)スルホン、テトラメチレンスルホン等のスルホン類;N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド等のアミド類;N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-プロピル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシメチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン等のラクタム類;1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジイソプロピル-2-イミダゾリジノン等のイミダゾリジノン類;ジメチルグリコール、ジメチルジグリコール、ジメチルトリグリコール、メチルエチルジグリコール、ジエチルグリコール、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル等のジアルキルグリコールエーテル類;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-ぺンタノール、イソペンタノール、2-メチルブタノール、sec-ぺンタノール、tert-ぺンタノール、3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、n-ヘキサノール、2-メチルペンタノール、sec-ヘキサノール、2-エチルブタノール、sec-へプタノール、3-へプタノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、sec-オクタノール、n-ノニルアルコール、2,6-ジメチル-4-へプタノール、n-デカノールsec-ヴンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec-テトラデシルアルコール、sec-へプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フェニルメチルカルビノール、ジアセトンアルコール、クレゾール等のモノアルコール系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2-へプタノン、3-へプタノン等のケトン類;2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシ-1-ブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸i-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸i-ブチル、酢酸n-ペンチル、酢酸n-ヘキシル、酢酸n-へプチル、酢酸n-オクチル、ギ酸n-ぺンチル、酢酸i-ペンチル、プロピオン酸n-ブチル、酪酸エチル、酪酸n-プロピル、酪酸i-プロピル、酪酸n-ブチル、n-オクタン酸メチル、デカン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n-プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸エチル、アジピン酸ジメチル、プロピレングリコールジアセテート等の他のエステル類;プロピロラクトン、γ-ブチロラクトン、6-ペンチロラクトン等のラクトン類;n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、メチルオクタン、n-デカン、n-ヴンデカン、n-ドデカン、2,2,4,6,6-ぺンタメチルヘプタン、2,2,4,4,6,8,8-ヘプタメチルノナン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の直鎖状、分岐鎖状、又は環状の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、1,3,5-トリメチルベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素類;p-メンタン、ジフェニルメンタン、リモネン、テルピネン、ボルナン、ノルボルナン、ピナン等のテルペン類;等が挙げられる。
【0036】
なかでも、溶剤としては、3-メチル-3-メトキシ-1-ブチルアセテート、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、イソプロパノール又はメチルエチルケトンが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルがより好ましい。
【0037】
また、本実施形態にかかる表面処理剤は、特に金属表面を含む領域に対する選択性が高いので、特に、ALD法を用いた基板表面の領域選択的な製膜に好適に適用できる。
【0038】
<第2の態様:表面処理方法>
互いに材質が異なる2以上の領域を含む表面を有する基板に対する表面処理方法であって、前記表面を、前記第1の態様の表面処理剤に曝露することを含む。
本実施形態にかかる表面処理方法において、前記表面は、2以上の領域を含み、2以上の前記領域のうちの隣接する領域に関して、互いに材質が異なり、前記化合物(H)と2以上の前記領域との反応によって、2以上の前記領域のうちの隣接する領域に関して、接触角を互いに異ならせる。
本実施形態において、基板表面に領域選択的に製膜する方法への適用しやすさの観点から、2以上の前記領域のうち少なくとも1つの領域は金属表面を含有することが好ましい。
【0039】
本実施形態において、表面処理の対象となる「基板」としては、半導体デバイス作製のために使用される基板が例示され、例えば、ケイ素(Si)基板、窒化ケイ素(SiN)基板、シリコン酸化膜(Ox)基板、タングステン(W)基板、コバルト(Co)基板、窒化チタン(TiN)基板、窒化タンタル(TaN)基板、ゲルマニウム(Ge)基板、シリコンゲルマニウム(SiGe)基板、アルミニウム(Al)基板、ニッケル(Ni)基板、ルテニウム(Ru)基板、銅(Cu)基板等が挙げられる。
「基板の表面」とは、基板自体の表面のほか、基板上に設けられた無機パターン及び有機パターンの表面、並びにパターン化されていない無機層又は有機層の表面が挙げられる。
【0040】
基板上に設けられた無機パターンとしては、フォトレジスト法により基板に存在する無機層の表面にエッチング、マスクを作製し、その後、エッチング処理することにより形成されたパターンが例示される。無機層としては、基板自体の他、基板を構成する元素の酸化膜、基板の表面に形成したSiN、Ox、W、Co、TiN、TaN、Ge、SiGe、Al、Al2O3、Ni、Ru、Cu等の無機物の膜ないし層等が例示される。
このような膜や層としては、特に限定されないが、半導体デバイスの作製過程において形成される無機物の膜や層等が例示される。
【0041】
基板上に設けられた有機パターンとしては、フォトレジスト等を用いてフォトリソグラフィ一法により基板上に形成された樹脂パターン等が例示される。このような有機パターンは、例えば、基板上にフォトレジストの膜である有機層を形成し、この有機層に対してフォトマスクを通して露光し、現像することによって形成することができる。有機層としては、基板自体の表面の他、基板の表面に設けられた積層膜の表面等に設けられた有機層であってもよい。このような有機層としては、特に限定されないが、半導体デバイスの作成過程において、エッチング、マスクを形成するために設けられた有機物の膜を例示することができる。
【0042】
(基板表面が2つの領域を含む態様)
第2の態様に係る表面処理方法は、基板表面が2以上の領域を含み、上記2以上の領域のうちの近接する領域が、互いに材質が相違する。
【0043】
上記2以上の領域間において、他方の領域よりも水の接触角が高くなる(好ましくは、表面自由エネルギーが小さくなる)傾向にある領域としては、W、Co、Al、Al2O3、Ni、Ru、Cu、TiN及びTaNよりなる群から選択される少なくとも1種を含む領域が挙げられる。
上記2以上の領域間において、他方の領域よりも水の接触角が小さくなる(好ましくは、表面自由エネルギーが高くなる)傾向にある領域としては、Si、Al2O3、SiN、Ox、TiN、TaN、Ge及びSiGeよりなる群から選択される少なくとも1種を含む領域が挙げられる。
【0044】
本実施形態において、基板表面が2つの領域を含む場合、該基板表面は、第1の領域と、第1の領域とは材質が異なり、第1の領域に隣接する第2の領域とを含む。かかる場合、「近接する領域」とは、第1の領域及び第2の領域となる。
ここで、第1の領域及び第2の領域は、それぞれ複数の領域に分割されていてもされていなくてもよい。
【0045】
第1の領域及び第2の領域の例としては、例えば、基板自体の表面を第1の領域とし、基板の表面に形成した無機層の表面を第2の領域とする態様、基板の表面に形成した第1の無機層の表面を第1の領域とし、基板の表面に形成した第2の無機層の表面を第2の領域する態様等が挙げられる。なお、これらの無機層の形成に代えて有機層を形成した態様等も同様に挙げられ得る。
【0046】
基板自体の表面を第1の領域とし、基板の表面に形成した無機層の表面を第2の領域とする態様としては、基板表面における材質が異なる2以上の隣接する領域間において選択的に疎水性向上して水の接触角の差を向上する観点から、Si基板、SiN基板、Ox基板、TiN基板、TaN基板、Ge基板及びSiGe基板よりなる群から選択される少なくとも1種の基板の表面を第1の領域とし、上記基板の表面に形成した、W、Co、A1、Ni、Ru、Cu、TiN及びTaNよりなる群から選択される少なくとも1種を含む無機層の表面を第2の領域とする態様が好ましい。
【0047】
また、基板の表面に形成した第1の無機層の表面を第1の領域とし、基板の表面に形成した第2の無機層の表面を第2の領域する態様としては、基板表面における材質が異なる2以上の隣接する領域間において選択的に疎水性向上して水の接触角の差を向上する観点から、任意の基板(例えば、Si基板)の表面に形成した、SiN、Ox、TiN、TaN、Ge及びSiGeよりなる群から選択される少なくとも1種を含む第1の無機層の表面を第1の領域とし、上記基板の表面に形成した、W、Co、Al、Ni、Ru、Cu、TiN及びTaNよりなる群から選択される少なくとも1種を含む第2の無機層の表面を第2の領域とする態様が好ましい。
【0048】
(基板表面が3以上の領域を含む態様)
本実施形態において、基板表面が3つ以上の領域を含む場合、該基板表面は、第1の領域と、第1の領域とは材質が異なり、第1の領域に隣接する第2の領域と、第2の領域とは材質が異なり、第2の領域に隣接する第3の領域とを含む。かかる場合、「近接する領域」とは、第1の領域及び第2の領域(すなわち隣接する領域)であってもよいし、第1の領域及び第3の領域(すなわち先隣の領域)であってもよい。
なお、第1の領域と第3の領域とで材質が相違しない場合、「近接する領域」は、第1の領域及び第2の領域、又は第2の領域及び第3の領域(すなわち隣接する領域)となる。
ここで、第1の領域、第2の領域及び第3の領域は、それぞれ複数の領域に分割されていてもされていなくてもよい。
第1の領域、第2の領域及び第3の領域の例としては、例えば、基板自体の表面を第1の領域とし、基板の表面に形成した第1の無機層の表面を第2の領域とし、基板の表面に形成した第2の無機層の表面を第3の領域とする態様等が挙げられる。なお、これらの無機層の形成に代えて有機層を形成した態様等も同様に挙げられ得る。また第2の無機層と第3の無機層のいずれか一方のみを有機層に変えて形成したような無機層及び有機層の双方を含むような態様等も同様に挙げられ得る。
基板表面における材質が異なる2以上の隣接する領域間において選択的に疎水性向上して水の接触角の差を向上する観点から、任意の基板(例えば、Si基板)自体の表面を第1の領域とし、上記基板の表面に形成した、SiN、Ox、TiN、TaN、Ge及びSiGeよりなる群から選択される少なくとも1種を含む第1の無機層の表面を第2の領域とし、上記基板の表面に形成した、W、Co、Al、Ni、Ru、Cu、TiN及びTaNよりなる群から選択される少なくとも1種を含む第2の無機層の表面を第3の領域とする態様が好ましい。
本実施形態において、基板表面が第4以上の領域を含む場合についても同様の考え方が適用し得る。
材質が相違する領域数の上限値としては本発明の効果が損なわれない限り特に制限はないが、例えば、7以下又は6以下であり、典型的には5以下である。
【0049】
(曝露)
基板の表面を表面処理剤に曝露させる方法としては、溶剤を含んでいてもよい表面処理剤(典型的には液状の表面処理剤)を、例えば浸漬法、又はスピンコート法、ロールコート法及びドクターブレード法などの塗布法等の手段によって基板の表面に適用(例えば、塗布)して曝露する方法が挙げられる。
曝露温度としては、例えば、10℃以上90℃以下、好ましくは20℃以上80℃以下、より好ましくは20℃以上70℃以下、更に好ましくは20℃以上65℃以下である。
上記曝露時間としては、基板表面における材質が異なる2以上の隣接する領域間における選択的な疎水性向上の観点から、20秒以上が好ましく、30秒以上がより好ましく、45秒以上が更に好ましい。
上記曝露時間の上限値としては特に制限はないが、例えば、2時間以下が好ましく、1.5時間以下がより好ましく、1.2時間以下が更に好ましい。
上記曝露後に必要に応じ洗浄(例えば、水、活性剤リンス等による洗浄)及び/又は乾燥(窒素ブロ一等による洗浄)を行ってもよい。
例えば、無機パターン又は有機パターンを備える基板表面の洗浄液による洗浄処理としては、従来、無機パターン又は有機パターンの洗浄処理に使用されてきた洗浄液をそのまま採用することができ、無機パターンについてはSPM(硫酸・過酸化水素水)、APM(アンモニア・過酸化水素水)等が挙げられ、有機パターンについては水、活性剤リンス等が挙げられる。
また、乾燥後の処理基板に対して、必要に応じて、100℃以上300℃以下の加熱処理を追加で行ってもよい。
【0050】
上記曝露により基板表面の各領域の材質に応じて領域選択的に化合物(H)を吸着させることができる。
表面処理剤に曝露した後の基板表面の水に対する接触角は、例えば、40°以上140°以下とすることができる。
上記接触角の上限値としては特に制限はないが、例えば、140°以下、典型的には130°以下である。
【0051】
本実施形態に係る表面処理方法は、基板表面における2以上の近接する領域間において材質が異なることにより、上記曝露により、上記2以上の近接する領域間において選択的な疎水性向上が可能であり、水の接触角を互いに異ならせることができる。
上記2以上の近接する領域間における水の接触角の差としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限はなく、例えば、10°以上が挙げられ、上記2以上の近接する領域間における選択的な疎水性向上の観点から、上記水の接触角差は20°以上が好ましく、30°以上がより好ましく、40°以上が更に好ましい。
上記接触角差の上限値としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限はなく、例えば、80°以下又は70°以下であり、典型的には60°以下である。
【0052】
<第3の態様:基板上への領域選択的製膜方法>
次に、第2の態様に係る表面処理方法を用いた基板上への領域選択的製膜方法について説明する。
本態様において、基板上への領域選択的製膜方法は、上記第2の態様に係る表面処理方法により上記基板の上記表面を処理することと、表面処理された上記基板の表面に、原子層成長法(ALD法)により膜を形成することとを含み、上記膜の材料の堆積量を領域選択的に異ならせる。
【0053】
上記第2の態様に係る方法による表面処理の結果、上記2以上の領域間における水の接触角(好ましくは、表面自由エネルギー)が相違することになり、本態様においては、上記2以上の領域間において上記膜を形成する材料の堆積量を基板表面の領域選択的に相違させることができる。
具体的には、上記2以上の領域間における水の接触角が、他方の領域よりも大きくなった(好ましくは、表面自由エネルギーが小さくなった)領域には、ALD法による膜形成材料が、基板表面上の上記領域に吸着(好ましくは化学吸着)し難くなり、上記2以上の領域間において膜形成材料の堆積量に差異が生じる結果、基板上の領域選択的に膜形成材料の堆積量が相違することが好ましい。
上記化学吸着としては、水酸基との化学吸着等が挙げられる。
【0054】
上記2以上の領域間において、他方の領域よりも水の接触角が大きくなる(好ましくは、表面自由エネルギーが小さくなる)傾向にある領域としては、W、Co、Al、Al2O3、Ni、Ru、Cu、TiN及びTaNよりなる群から選択される少なくとも1種を含む領域が挙げられる。
上記2以上の領域間において、他方の領域よりも水の接触角が小さくなる(好ましくは、表面自由エネルギーが高くなる)傾向にある領域としては、Si、Al2O3、SiN、Ox、TiN、TaN、Ge及びSiGeよりなる群から選択される少なくとも1種を含む領域が挙げられる。
【0055】
(ALD法による膜形成)
ALD法による膜形成方法としては特に制限はないが、少なくとも2つの気相反応物質(以下単に「前駆体ガス」という。)を用いた吸着(好ましくは化学吸着)による薄膜形成方法であることが好ましい。
具体的には、下記工程(a)及び(b)を含み、所望の膜厚が得られるまで下記工程(a)及び(b)を少なくとも1回(1サイクル)繰り返す方法等が挙げられる。
(a)上記第2の態様に係る方法による表面処理された基板を、第1前駆体ガスのパルスに曝露する工程、及び
(b)上記工程(a)に次いで、基板を第2前駆体ガスのパルスに曝露する工程。
【0056】
上記工程(a)の後上記工程(b)の前に、プラズマ処理工程、第1前駆体ガス及びその反応物をキャリアガス、第2前駆体ガス等により除去ないし排気(パージ)する工程等を含んでいてもいなくてもよい。
上記工程(b)の後、プラズマ処理工程、第2前駆体ガス及びその反応物をキャリアガス等により除去ないしパージする工程等を含んでいてもいなくてもよい。
キャリアガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスが挙げられる。
【0057】
各サイクル毎の各パルス及び形成される各層は自己制御的であることが好ましく、形成される各層が単原子層であることがより好ましい。
上記単原子層の膜厚としては、例えば、5nm以下とすることができ、好ましくは3nm以下とすることができ、より好ましくは1nm以下とすることができ、更に好ましくは0.5nm以下とすることができる。
【0058】
第1前駆体ガスとしては、有機金属、金属ハロゲン化物、金属酸化ハロゲン化物等が挙げられ、具体的には、タンタルペンタエトキシド、テトラキス(ジメチルアミノ)チタン、ぺンタキス(ジメチルアミノ)タンタル、テトラキス(ジメチルアミノ)ジルコニウム、テトラキス(ジメチルアミノ)ハフニウム、テトラキス(ジメチルアミノ)シラン、コッパーヘキサフルオロアセチルアセトネートビニルトリメチルシラン、Zn(C2H5)2、Zn(CH3)2、TMA(トリメチルアルミニウム)、TaCl5、WF6、WOCl4、CuCl、ZrCl4、AlCl3、TiCl4、SiCl4、HfCl4等が挙げられる。
【0059】
第2前駆体ガスとしては、第1前駆体を分解させることができる前駆体ガス又は第1前駆体の配位子を除去できる前駆体ガスが挙げられ、具体的には、H2O、H2O2、O2O3、NH3、H2S、H2Se、PH3、AsH3、C2H4、又はSi2H6等が挙げられる。
【0060】
工程(a)における曝露温度としては特に制限はないが、例えば、100℃以上800℃以下であり、好ましくは150℃以上650℃以下であり、より好ましくは180℃以上500℃以下であり、更に好ましくは200℃以上375℃以下である。
【0061】
工程(b)における曝露温度としては特に制限はないが、工程(a)における曝露温度と実質的に等しいか又はそれ以上の温度が挙げられる。
ALD法により形成される膜としては特に制限はないが、純元素を含む膜(例えば、Si、Cu、Ta、W)、酸化物を含む膜(例えば、SiO2、GeO2、HfO2、ZrO2、Ta2O5、TiO2、Al2O3、ZnO、SnO2、Sb2O5、B2O3、In2O3、WO3)、窒化物を含む膜(例えば、Si3N4、TiN、AlN、BN、GaN、NbN)、炭化物を含む膜(例えば、SiC)、硫化物を含む膜(例えば、CdS、ZnS、MnS、WS2、PbS)、セレン化物を含む膜(例えば、CdSe、ZnSe)、リン化物を含む膜(GaP、InP)、砒化物を含む膜(例えば、GaAs、InAs)、又はそれらの混合物等が挙げられる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0063】
<合成例1:オクタデカノヒドロキサム酸の合成>
500mL三口フラスコにヒドロキシルアミン塩酸塩(1.40g、20.1mmol)と炭酸カリウム(4.80g、34.7mmol)を入れ、氷浴下で酢酸エチル(100.7g)と水(66.0g)を加えた。溶解後、ステアロイルクロリド(5.04g、16.6mmol)の酢酸エチル(32.0g)溶液を滴下漏斗を用いて加え、室温で18時間反応させた。有機層を取り出し、1wt%HCl水溶液(108.1g)を加えて室温で25分攪拌した。この水層に対して酢酸エチルで2回抽出を行った。有機層を合わせ、水180gで4回洗浄した。有機層をロータリーエバポレーターを用いて乾固させ、粗生成物を得た(4.48g)。粗生成物2.48gをメタノール247.76gに加え、還流下で溶解後、ろ過し、ろ液を室温で1時間放冷し、ろ過した。ろ物を再度メタノールで再結晶することによりオクタデカノヒドロキサム酸の白色針状結晶を得た(0.98g)。
得られた化合物についてNMR測定を行い、以下の結果よりその構造を同定した。
【0064】
【0065】
1H-NMR(DMSO, 400MHz):δ(ppm)=0.85(t,CH3,3H),1.10-1.35(m,CH2,28H),1.45(t,CH2,2H),1.92,2.23(t,CH2,2H),8.65,8.97(s,NH,1H),9.72,10.35,(s,OH,1H)
【0066】
<表面処理剤の調製>
表1に示す各成分を混合し、各例の表面処理剤を調製した。
【0067】
【0068】
ベンゾヒドロキサム酸及びオクタノヒドロキサム酸は、東京化成製のものを用いた。溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)を用いた。
【0069】
[実施例1~3、比較例1]
<表面処理>
上記で調整した表面処理剤A~Dを用いて、以下の方法にしたがって、W基板、Cu基板、Co基板、Al2O3基板、SiO2基板、TiN基板及びRu基板の表面処理を行った。
具体的には、各基板を濃度0.5質量%のHF水溶液に25℃で1分間浸漬させて前処理を行った。上記前処理後、基板をイオン交換蒸留水で1分間洗浄した。水洗後の基板を窒素気流により乾燥させた。
乾燥後の各基板を60℃、60分間の表面処理条件にて各例の表面処理剤に浸漬させて、基板の表面処理を行った。表面処理後の基板を、イソプロパノールで1分間洗浄した後、イオン交換蒸留水による洗浄を1分間行った。洗浄された基板を、窒素気流により乾燥させて、表面処理された基板を得た。
【0070】
<水の接触角の測定>
上記表面処理後の各基板について水の接触角を測定した。
水の接触角の測定は、Dropmaster700(協和界面科学株式会社製)を用い、表面処理された基板の表面に純水液滴(2.0μL)を滴下して、滴下2秒後における接触角として測定した。結果を下記表2に示す。
【0071】
【0072】
表2に示す結果から、表面処理剤A~Cを用いた実施例1~3では、表面処理剤Dを用いた比較例1に比べて、SiO2以外の各種基板の接触角が向上していることが確認された。
【0073】
[実施例4~9]
<加熱処理>
上記<表面処理>で表面処理された各基板について、表3に示す加熱条件にて、窒素雰囲気下で加熱処理を行った。
【0074】
<水の接触角の測定>
上記加熱処理後の各基板について水の接触角を測定した。
水の接触角の測定は、Dropmaster700(協和界面科学株式会社製)を用い、表面処理された基板の表面に純水液滴(2.0μL)を滴下して、滴下2秒後における接触角として測定した。結果を下記表3に示す。
【0075】
【0076】
表3に示す結果から、表面処理剤Aを用いた実施例4~5では、Cu基板、Co基板、TiN基板及びRu基板への接触角が200℃、20分の加熱処理により低下しており、高温加熱処理により表面処理剤が基板から脱離できることが確認された。
表面処理剤Bを用いた実施例6~7では、Cu基板、Co基板、TiN基板及びRu基板への接触角が200℃、20分の加熱処理により低下しており、高温加熱処理により表面処理剤が基板から脱離できることが確認された。
表面処理剤Cを用いた実施例8~9では、W基板、Cu基板、Co基板、TiN基板及びRu基板への接触角が200℃、20分の加熱処理により低下しており、高温加熱処理により表面処理剤が基板から脱離できることが確認された。