(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-20
(45)【発行日】2025-03-03
(54)【発明の名称】立軸ポンプ及び立軸ポンプの先行待機運転方法
(51)【国際特許分類】
F04D 13/00 20060101AFI20250221BHJP
F04D 29/046 20060101ALI20250221BHJP
F04D 29/60 20060101ALI20250221BHJP
【FI】
F04D13/00 D
F04D29/046 A
F04D29/60 D
(21)【出願番号】P 2021075065
(22)【出願日】2021-04-27
【審査請求日】2024-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100137039
【氏名又は名称】田上 靖子
(72)【発明者】
【氏名】清水 修
(72)【発明者】
【氏名】中塩 雄二
(72)【発明者】
【氏名】杉山 憲一
(72)【発明者】
【氏名】金 成夏
(72)【発明者】
【氏名】金子 浩之
(72)【発明者】
【氏名】小宮 真
(72)【発明者】
【氏名】千葉 真
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-166423(JP,A)
【文献】特開平04-347394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 13/00
F04D 29/046
F04D 29/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
立軸ポンプであって、
羽根車が取り付けられる回転軸を回転自在に支持する水中軸受部材と、
前記水中軸受部材のための潤滑液が貯留される貯液槽と、
前記貯液槽に接続される入口端部を有する第1の給液管路と、
前記水中軸受部材に潤滑液を供給する出口端部を有する第2の給液管路と、
前記第2の給液管路に入る潤滑液の流量を制限するように、前記第1の給液管路と前記第2の給液管路との間に設けられる流量制限部材と、
前記立軸ポンプの取り扱い液を受け入れるように吐出ケーシング又は前記吐出ケーシングの吐出口に接続された吐出管に接続される入口端部と、前記貯液槽に接続される出口端部と、を有する排出管路と、
を備え
、
前記排出管路の入口端部は、前記吐出ケーシングの軸封部に接続される、
立軸ポンプ。
【請求項2】
前記第1の給液管路に開閉弁が設けられている、請求項1に記載の立軸ポンプ。
【請求項3】
前記第1の給液管路に、流量調整弁が設けられている、請求項1又は2に記載の立軸ポンプ。
【請求項4】
前記第2の給液管路に、逆止弁が取り付けられている、請求項1~3のいずれかに記載の立軸ポンプ。
【請求項5】
前記立軸ポンプは、複数の前記水中軸受部材と、前記複数の水中軸受部材と同じ数の複数の前記第2の給液管路及び複数の前記流量制限部材と、を備えている、請求項1~4のいずれかに記載の立軸ポンプ。
【請求項6】
前記貯液槽に溢水管が接続されている、請求項
1~5のいずれかに記載の立軸ポンプ。
【請求項7】
前記立軸ポンプは、さらに、前記第1の給液管路と前記第2の給液管路の間に配置される給液受け部を備えており、前記第1の給液管路は、前記給液受け部に潤滑液を供給するように配置されており、前記第2の給液管路は、前記給液受け部に接続される入口端部を有し、前記流量制限部材は、前記第1の給液管路又は前記給液受け部に取り付けられている、請求項
1~6のいずれかに記載の立軸ポンプ。
【請求項8】
前記給液受け部に溢水管が接続されている、請求項
7に記載の立軸ポンプ。
【請求項9】
前記貯液槽又は前記第1の給液管路に、異物除去装置が配置されている、請求項
7又は8に記載の立軸ポンプ。
【請求項10】
前記第2の給液管路の管壁が、部分的に透明であるか、又は、前記第2の給液管路の管壁に、カメラ装置を挿入可能な弁部材が取り付けられている、請求項
1~6のいずれかに記載の立軸ポンプ。
【請求項11】
立軸ポンプであって、
羽根車が取り付けられる回転軸を回転自在に支持する水中軸受部材と、
前記水中軸受部材のための潤滑液が貯留される貯液槽と、
前記貯液槽に接続される入口端部を有する第1の給液管路と、
前記水中軸受部材に潤滑液を供給する出口端部を有する第2の給液管路と、
前記第2の給液管路に入る潤滑液の流量を制限するように、前記第1の給液管路と前記第2の給液管路との間に設けられる流量制限部材と、
前記立軸ポンプの取り扱い液を受け入れるように吐出ケーシング又は前記吐出ケーシングの吐出口に接続された吐出管に接続される入口端部と、前記貯液槽に接続される出口端部と、を有する排出管路と、
を備え、
前記排出管路の入口端部は、前記吐出ケーシングの吐出口に接続された吐出管に接続され、
前記立軸ポンプは、さらに、前記第1の給液管路と前記第2の給液管路の間に配置される給液受け部を備えており、前記第1の給液管路は、前記給液受け部に潤滑液を供給するように配置されており、前記第2の給液管路は、前記給液受け部に接続される入口端部を有し、前記流量制限部材は、前記第1の給液管路又は前記給液受け部に取り付けられている
、立軸ポンプ。
【請求項12】
前記給液受け部に溢水管が接続されている、請求項
11に記載の立軸ポンプ。
【請求項13】
前記貯液槽又は前記第1の給液管路に、異物除去装置が配置されている、請求項
11又は12に記載の立軸ポンプ。
【請求項14】
前記排出管路に開閉弁が設けられている、請求項
11~13のいずれかに記載の立軸ポンプ。
【請求項15】
前記排出管路に減圧弁が設けられている、請求項
11~14のいずれかに記載の立軸ポンプ。
【請求項16】
前記貯液槽に、空気抜弁が設けられている、請求項
11~15のいずれかに記載の立軸ポンプ。
【請求項17】
前記貯液槽に、前記貯液槽内の水位を検知する水位計が設けられている、請求項
11~16のいずれかに記載の立軸ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川水や排水などの液体を汲み上げる立軸ポンプ、特に先行待機運転型の立軸ポンプに関する。本発明は、さらに、立軸ポンプの先行待機運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の先行待機運転型立軸ポンプについて、背景技術の一例を説明する。近年、都市化の進展により、緑地の減少及び路面のコンクリート化又はアスファルト化の拡大が進んでいる。これにより、ヒートアイランド現象が発生し、いわゆるゲリラ豪雨と呼ばれる局所的な集中豪雨が都市部で頻発している。コンクリート化又はアスファルト化した路面では、局所的な大量の降雨は、地中に吸収されることなくそのまま水路に導かれる。その結果、大量の雨水が、短時間のうちに排水機場に流入する。
【0003】
頻発するこのような集中豪雨によってもたらされる大量の雨水は、速やかに排水される必要がある。従って、排水機場に設置する立軸ポンプでは、雨水が排水機場に到達する前に予め始動させておく先行待機運転が行われている。これにより、ポンプの始動遅れによる浸水被害が生じることを防止することができる。具体的には、先行待機運転では、吸込水槽の水位が、揚水運転ができるレベルの水位に到る前の、低水位の状況からポンプの運転が行われる。そこで、吸込水槽の水位が揚水レベルに達するまでは、ポンプは、揚水が行われないまま運転がなされる(以下、気中運転と称する)。その間、ポンプの回転軸(換言すれば、主軸)を支持する軸受、および回転軸の軸スリーブには、揚水が供給されない。すなわち、軸受および軸スリーブはドライ状態におかれる。
【0004】
立軸ポンプの気中運転の間、軸受と軸スリーブは、大気中で、高摩擦の状態で摺動することになる。特に、先行待機運転では、揚水が開始され軸受が水で潤滑される前に気中運転が行われる。軸受部がドライ状態のままでポンプの気中運転を可能にするには、例えば、水中軸受にセラミックまたは樹脂等を使用し、軸スリーブに超硬合金や溶射被膜を使用することが考えられる。しかしながら、ポンプの運転中、軸受および軸スリーブがドライ状態にあると、高い摩擦によって軸受の温度が上昇し、軸受自体、もしくは軸受周りの材料の限界温度を超える虞がある。また、摩擦の影響を抑えるように摩擦係数が低い特殊な樹脂またはセラミックを用いる必要がある。
【0005】
このような材料または設計上の制限を無くすように、例えば、以下に記すような技術が提案されている。
【0006】
具体的には、特開2000-2190号公報(特許文献1)には、軸受ケーシングに収容された軸受部材と、主軸に取り付けられるとともに軸受部材に摺接する軸スリーブとを備え、軸スリーブに、上部に揚水が出入り可能な開口部を設けた有底環状の貯水部を設け、有底環状の貯水部内に軸受部材を水没させるように構成した立軸ポンプのすべり軸受装置が記載されている。
【0007】
特開2000-266042号公報(特許文献2)には、環状の硬質軸受部材と、主軸に取り付けられるとともに軸受部材に摺接する軸スリーブと、環状の硬質軸受部材を嵌合して外周に配置される金属製環状のバックメタルと、バックメタルを嵌合して外周に配置される環状の緩衝部材と、緩衝部材を嵌合して外周に配置される金属製環状のシェルとを備え、バックメタルには、揚水の貯水可能な上端開口部を有する凹状断面の環状の貯水部が設けてある立軸ポンプのすべり軸受装置が記載されている。
【0008】
特開平5-44689号公報(特許文献3)には、潤滑油を含浸した多孔質SiCからなるセラミック軸受と、主軸に取り付けられるとともにセラミック軸受に摺接するスリーブと、セラミック軸受を、セラミック軸用バックメタルを介して支持するセラミック軸用緩衝材とを備え、セラミック軸受とセラミック軸用バックメタルが互いに当接する面に空隙を形成し、該空隙にパイプを介して油または水を供給するように構成した排水ポンプ軸受構造が記載されている。
【0009】
特開2017-166423号公報(特許文献4)には、ポンプの揚水の一部を濾過するサイクロンセパレータと、その浄水を水中軸受に確実に送るための流量計、差圧計を備えている。
【0010】
特許文献1に記載された技術では、主軸と一体に回転する軸スリーブに、上部に揚水が出入り可能な開口部を設けた有底環状の貯水部を設け、有底環状の貯水部内に軸受部材を水没させるように構成しているため、貯水部に軸受部材を水没させるために必要な水量を確保することが難しく、特にポンプ起動時には軸受部の摩擦熱によって水が蒸発するため、必要な水量を確保することが難しいという問題がある。また、揚水に含まれる砂や泥が貯水部に溜まり、軸受部材と軸スリーブの摺動部(換言すれば、摺接面)が損傷を受けるという問題がある。
【0011】
特許文献2に記載された技術では、バックメタルに、揚水の貯水可能な上端開口部を有する凹状断面の環状の貯水部を設けて貯水部に揚水を貯水し、この貯水の水冷作用および貯水が蒸発したときの気化熱による冷却作用によってバックメタルを冷却し、バックメタルを介して軸受部材を冷却しているため、軸受部材と軸スリーブとの摺動部を水で直接に冷却していないので、充分に冷却できないという問題がある。また、特許文献1と同様に、ポンプ起動時には軸受部の摩擦熱によって水が蒸発するため、必要な水量を確保することが難しいという問題がある。
【0012】
特許文献3に記載された技術では、セラミック軸受とセラミック軸用バックメタルが互いに当接する面に空隙を形成し、該空隙に油または水を供給することにより、空隙内の油または水を多孔質SiCの細孔を通して軸受の摺動面に滲出させ、摺動面の潤滑をしているため、軸受とスリーブとの摺動部を水で直接に冷却していないので、充分に冷却できないという問題がある。
【0013】
特許文献4に記載された技術においては、サイクロンセパレータでは微小な異物が取り切れず、給水先の水中軸受が早期摩耗するので、ポンプの運転ができなくなる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開2000-2190号公報
【文献】特開2000-266042号公報
【文献】特開平5-44689号公報
【文献】特開2017-166423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の一実施形態は、上記の事情に鑑みなされたもので、初期運転時に軸受と軸スリーブとの間に液体を供給することにより、軸受および軸スリーブがドライ状態で動作することを防止できる、立軸ポンプを提供することを目的とする。また、本発明の一実施形態は、初期運転時に軸受と軸スリーブとの間に液体を供給することにより、軸受および軸ス
リーブがドライ状態で動作することを防止できる、立軸ポンプの先行待機運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一実施形態によれば、立軸ポンプであって、羽根車が取り付けられる回転軸を回転自在に支持する水中軸受部材と、水中軸受部材のための潤滑液が貯留される貯液槽と、貯液槽に接続される入口端部を有する第1の給液管路と、水中軸受部材に潤滑液を供給する出口端部を有する第2の給液管路と、第2の給液管路に入る潤滑液の流量を制限するように、第1の給液管路と第2の給液管路との間に設けられる流量制限部材と、を備える、立軸ポンプを提供することができる。
【0017】
また、本発明の一実施形態によれば、立軸ポンプの先行待機運転を行う方法であって、潤滑液が貯留される貯液槽と、貯液槽と水中軸受部材との間に配置される管路に設けられた第1の弁を開くと共にタイマーを設定する工程と、貯液槽内の潤滑液を、管路に設けられた流量制限部材によって低減された流量で、水中軸受部材に供給する工程と、タイマーで設定された時間後に立軸ポンプのポンプモータを始動する工程と、ポンプモータの停止後に第1の弁を閉じる工程と、を含む、方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態による立軸ポンプの全体概要を示す模式図である。
【
図1A】本発明の第2実施形態による立軸ポンプの全体概要を示す模式図である。
【
図1B】本発明の第3実施形態による立軸ポンプの全体概要を示す模式図である。
【
図5】立軸ポンプの始動工程を示すフロー図である。
【
図6】立軸ポンプの停止工程を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明はあくまでも一例を示すものであって、本願発明の技術的範囲を以下の実施形態に限定する趣旨ではない。また、図面では、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。尚、以下の説明において、「上」、「下」等の方向を示す用語は、
図1等に示す立軸ポンプの設置状態における方向を意味する。
[第1実施形態]
【0020】
図1は、本発明の第1実施形態による立軸ポンプ100の全体概要を示す模式図である。立軸ポンプ100は、鉛直方向に延びる回転軸101と、回転軸101の下端部に取り付けられた羽根車102と、回転軸101の上端に設けられ回転軸101を回転駆動する図示していないポンプモータ等の駆動機と、を備える。立軸ポンプ100は、羽根車102を回転させることによってポンプケーシング108を通じて下方から上方に揚水するポンプである。
【0021】
また、立軸ポンプ100は、先行待機運転型のポンプである。先行待機運転では、まず、吸込水位に関係なく降雨情報等に基づいて、羽根車102が水没する前の気中状態で羽根車102を回転させ始める(気中運転)。羽根車102の位置まで水位が上昇すると、立軸ポンプ100の運転状態は、羽根車102で取り扱い液を撹拌する運転(気水撹拌運転)から、吸気口から供給される空気を取り扱い液と共に吸い込ませつつ液量を徐々に増やす運転(気水混合運転)を経て、定格流量での取り扱い液の排出を行う通常運転(定常運転)へと移行する。
【0022】
立軸ポンプ100は、回転軸101、羽根車102、及び案内羽根103を囲む実質的に円筒状のポンプケーシング108を備える。案内羽根103は、ポンプケーシング108の内周面に固定されている。また、ボウルブッシュ110が、案内羽根103を介してポンプケーシング108に固定されている。また、案内羽根103は、羽根車102により揚水された水流の旋回成分を鉛直上方成分に変換する。
【0023】
ポンプケーシング108は、ポンプ吸込口である吸込ベル104と、案内羽根103及び軸受部材120Aを収容する吐出しボウル105と、を含むことができる。吸込ベル104は、ベルマウス形状に形成される。吐出しボウル105は、案内羽根103を取り囲む実質的に円筒形に形成され、筒径が回転軸101の伸長方向に沿って、上方に拡径した後、縮径するように形成されている。
【0024】
また、ポンプケーシング108は、吐出しボウル105の上方に配置され所望の高さまで延びる吊り下げ管106を含むことができる。吊り下げ管106は、回転軸101を囲む円筒状に形成される。吊り下げ管106を通して、立軸ポンプ100の取り扱い液(換言すれば、立軸ポンプ100によって移送される液体)が揚水される。また、ポンプケーシング108は、吊り下げ管106に接続される吐出しエルボ(換言すれば、吐出ケーシング)107を含むことができる。吐出しエルボ107は、回転軸101に沿って鉛直方向に伸長した後、実質的に水平方向へと向きを変えるように形成される。従って、揚水した取り扱い液は、吐出しエルボ107によって、実質的に水平方向に流れの向きを変えられる。吸込ベル104、吐出しボウル105、吊り下げ管106、及び、吐出しエルボ107は、適宜フランジで接続されてポンプケーシング108を構成している。
【0025】
また、立軸ポンプ100は、回転軸101を回転自在に支持する水中軸受部材120を備える。本実施形態では、2つの水中軸受部材(以下、軸受部材)120A、120Bが設けられている。しかし、立軸ポンプ100において、軸受部材120の数は特に限定されない。
【0026】
軸受部材120A,120Bは、回転軸101に沿って互いに離間して設けられたすべり軸受である。
図1では図示されない軸スリーブが、軸受部材120A,120Bの軸受面と摺接するように回転軸101に取り付けられる。軸受部材120Aは、支持部材130を介してボウルブッシュ110に固定されている。軸受部材120Bは、軸受部材120Aより高い位置に配置されることができる。軸受部材120Bは、ポンプケーシング108に固定される支持部材132によって支持されることができる。
【0027】
据付床1100の開口穴1101に吊り下げ管106が挿入される。こうして、立軸ポンプ100は、吐出しエルボ107の下部で据付床1100に固定され設置されることができる。
【0028】
図1に示すように、立軸ポンプ100は、軸受部材120A、120Bに潤滑液を供給するための給液管路1102A、1102B(第2の給液管路)を備える。第2の給液管路の本数は、軸受部材の個数と同数となるのが望ましい。給液管路1102A、1102Bは、それぞれ、給液受け部1104内に開口する入口端部(符号省略)を有する。それら入口端部からカメラを入れることによって、第2の給液管路内に異物の閉塞等がないかを確認でき、また、入口端部から清水を給水することによって、第2の給液管路の内部を清掃することができる。給液受け部1104は、軸受部材120A、120Bより上方の位置でポンプケーシング108の外部に設置される。また、給液管路1102A、1102Bは、軸受部材120A、120Bで、またはその近傍で、開口する出口端部(符号省略)を有することができる。本実施形態において、給液受け部1104は、上方に向けて
開口する上部開口1106を形成する容器又は槽の形状を有することができる。給液受け部1104の底壁に給液管路1102A、1102Bの入口端部が開口している。給液受け部1104の容積は、適宜決定することができる。給液受け部1104又は給液受け部1104の下流側の給液管路1102A、1102Bに、逆止弁1105を設けることができる。また、給液受け部1104に溢流管1108を設けることができる。
【0029】
給液受け部1104には、給液管路1126(第1の給液管路)を通して、ポンプケーシング108の外部で据付床1100に設置された貯液槽1110からの潤滑液が供給される。給液受け部1104は軸受部材120の個数(本実施形態では2個)に応じた複数の部屋1104a、1104bに分かれ、各部屋の上方に給液管路1126からの分岐管1126a、1126bが設置される。これにより、それぞれの分岐管1126a、1126bから潤滑液が流れ出ているか目視することができる。図示の例では、単一の給液受け部1104が、2つの軸受部材120A、120Bのそれぞれに対応する2つの部屋1104a、1104bに、仕切板1103により分けられている。しかし、部屋1104a、1104bは、互いに独立した別個の容器又は槽の形態を有していてもよい。また、貯液槽1110は、排出管路1112に接続されている。排出管路1112は、一端(出口端部と称する)が貯液槽1110に接続され、他端(入口端部と称する)が立軸ポンプ100の吐出しエルボ107の軸封部107aに接続される。これにより、本実施形態では、立軸ポンプ100から吐出する取り扱い液が、貯液槽1110に貯留され、潤滑液として使用される。従って、以下の説明では、貯液槽1110内の取り扱い液を、潤滑液と称する場合がある。後述するように、排出管路1112は、吐出しエルボ107に、軸封部107a以外の部分で接続されていてもよい。また、排出管路1112は、吐出しエルボ107の吐出口107bに接続される吐出管に接続されてもよい。
【0030】
図1において、貯液槽1110には、取り扱い液から異物を除去するための単一または複数の透液性のマットまたはシート等の異物除去装置1116が設けられてよい。また、排出管路1112は、貯液槽1110の高さ方向中央より上部、具体的には、貯液槽1110の側壁上部または上壁に接続されることが好ましい。排出管路1112からの取り扱い液が異物除去装置1116を通過することにより、取り扱い液から異物を除去することができる。透液性マット等の異物除去装置1116の清掃及び/又は交換を行うことができるように、貯液槽1110の上壁には、開閉可能な蓋部1118が設けられてよい。貯液槽1110の容積は、特に限定されない。貯液槽1110には、溢流管1120が設けられてよい。
図1では特に示されないが、溢流管1120を流れる余剰の潤滑液は、適宜、据付床1100の下方で、立軸ポンプ100に吸い込まれる取り扱い液と合流させてもよい。また、溢流管1120は、貯液槽1110に戻る戻り管1122を含んでいてもよい。戻り管1122には、開閉弁1124を設けることができる。
【0031】
給液管路1126は、貯液槽1110内の潤滑液を、貯液槽1110の外部に移送するように構成されている。給液管路1126には、流量調整弁1114が設けられてよく、また、必要に応じてストレーナまたは複式ストレーナ等の異物除去装置(図示せず)が設けられてよい。また、給液管路1126には、開閉弁1130を設けることができる。本実施形態では、開閉弁1130は、電動弁として構成され、例えば、立軸ポンプ100の運転を制御する図示されない制御装置によって動作することができる。給液管路1126の入口端部が貯液槽1110に接続され、出口端部が、給液受け部1104内に開口する。給液管路1126の出口端部に、流量制限部材1132を取り付けることができる。図示の例では、給液管路1126の分岐管1126a、1126bのそれぞれの出口端部に、流量制限部材1132a、1132bが取り付けられている。流量制限部材1132は、例えば低圧用ノズル、スプレー式ノズル、ボール弁又はフラップ弁等の弁部材、メッシュ状部材等、給液受け部1104に流入する潤滑液の流量を低減することができるものであれば、特に限られない。従って、流量制限部材1132は、給液受け部1104に取り
付けられてもよい。こうして、貯液槽1110から移送された潤滑液は、流量制限部材1132によって低減された流量で、給液受け部1104に供給される。給液受け部1104はポンプケーシング108の外部に設置されるので、微小流量の潤滑液の流れを目視で容易に確認することができる。また、流量制限部材1132のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0032】
本実施形態では、潤滑液は、給液管路1126の入口端部と出口端部との高低差によって、貯液槽1110から給液受け部1104に自然流下することができる。しかし、貯液槽1110からの潤滑液の移送は、適宜、ポンプを用いて行われてもよい。潤滑液は、給液受け部1104から、給液管路1102A、1102Bを通って、軸受部材120A、120Bに自然流下する。
【0033】
なお、図示の例では、給液受け部1104が、上方に向けて開口する上部開口1106を有しているが、他の実施形態では、給液受け部1104は、側壁に開口部を有してもよく、その場合、給液管路1126は、側壁の開口部に接続されてよい。
[第2実施形態]
【0034】
上記したように、排出管路1112は、吐出しエルボ107に、軸封部107a以外の部分で接続されることができ、または、吐出しエルボ107の吐出口107bに接続される吐出管に接続されることができる。
図1Aに示される第2の実施形態では、排出管路1112は、吐出しエルボ107の吐出口107bに接続される吐出管109に接続されている。なお、
図1Aにおいて、
図1と共通する部分については、
図1と同じ参照符号を付している。また、第2実施形態では、第1実施形態と共通する部分については詳しい説明を省略する。
【0035】
図1Aでは、貯液槽1110は実質的に密閉状態にされ、上壁に空気抜弁1206が設けられている。なお、空気抜弁1206は、弁箱の内部にフロートが配置される既知の構成を有する空気抜弁であってよい。弁箱内に空気が溜まると水面と共にフロートが下降することにより、弁座が開放されて空気が排出される。これにより、取り扱い液と共に貯液槽1110に流入し、貯液槽1110内に溜まった空気を空気抜弁1206によって逃がすことができる。
【0036】
排出管路1112には、開閉弁1202及び/又は減圧弁1204を設けることができる。開閉弁1202は、電動弁であってよい。開閉弁1202を常閉型とし、立軸ポンプ100の始動と共に開閉弁1202を開けることにより、貯液槽1110に取り扱い液を流入させることができる。吐出管109から排出される取り扱い液は、高い圧力で、貯液槽1110に流入する。第2実施形態では、排出管路1112に減圧弁1204を設けることにより、吐出管109からの取り扱い液の水圧を減じることができる。
【0037】
また、貯液槽1110には、貯液槽1110の水位を検知するように水位計1208が設けられてよい。これにより、貯液槽1110内が満水となったら開閉弁1202を閉じる制御を行うことができる。
【0038】
図1Aの例では、比較的多量の異物を含む液体が、貯液槽1110から給液管路1126に流入する。従って、給液管路1126にストレーナまたは複式ストレーナ等の異物除去装置1128を設けることが望ましい。
【0039】
潤滑液は、貯液槽1110から給液受け部1104に自然流下することができる。しかし、貯液槽1110からの潤滑液の移送は、適宜、ポンプを用いて行われてもよい。潤滑液は、給液受け部1104から、給液管路1102A、1102Bを通って、軸受部材1
20A、120Bに自然流下する。
[第3実施形態]
【0040】
さらに、本発明の第3実施形態が、
図1Bに示される。
図1Bにおいて、
図1と共通する部分については、
図1と同じ参照符号を付し、第1実施形態と共通する部分については詳しい説明を省略する。
【0041】
第1実施形態と同様に、第3実施形態では、排出管路1112は、軸封部107aで吐出しエルボ107に接続されている。軸封部107aから漏れ出る取り扱い液の量は、軸封部107aのシール方法によって異なる。例えば、メカニカルシールが採用される場合には、取り扱い液は、シール部の微小な隙間から漏れ出るので、軸封部107aから排出管路1112に流れ出る液体の流量は比較的小さい。その場合、排出管路1112内の液体に異物が混入している可能性が低いので、流量制限部材1132での異物の詰まりは生じにくい。従って、必ずしも、流量制限部材1132からの潤滑液の流れを目視で確認する必要がない。この場合、
図1Bに示すように、給液受け部1104を省略することができる。
図1Bに示す第3実施形態では、給液管路1126の分岐管1126a、1126bと給液管路1102A、1102Bとが、ポンプケーシング108の外部に配置された流量制限部材1132を介して接続されている。こうして、貯液槽1110から移送された潤滑液は、流量制限部材1132によって低減された流量で、給液管路1102A、1102Bを通る。
【0042】
第3実施形態においても、潤滑液は、貯液槽1110から流量制限部材1132に自然流下することができる。しかし、貯液槽1110からの潤滑液の移送は、適宜、ポンプを用いて行われてもよい。流量制限部材1132を通過した潤滑液は、給液管路1102A、1102Bを通って、軸受部材120A、120Bに自然流下する。
【0043】
第3実施形態では、念のため、流量制限部材1132からの潤滑液の流れを確認できるように、給液管路1102A、1102Bは、部分的に透明であるように構成されてもよい。また、例えば、検査用カメラを給液管路1102A、1102B内に挿入するための弁部材1210を給液管路1102A、1102Bの管壁に取り付け、給液管路1102A、1102Bの内部を点検できるように構成してもよい。
【0044】
図2は、第1~第3実施形態による立軸ポンプ100の部分断面図であり、給液管路1102Bの出口側の構成例を示す。なお、ここでは、軸受部材120として、軸受部材120Bを例として説明するが、軸受部材120Aについても実質的に同様の構成が適用されてよい。
図2に示すように、軸受部材120Bは、回転軸101の軸スリーブ101Bと摺接する軸受面(換言すれば、摺接面)を含む軸受2120と、軸受2120が取り付けられる軸受ケース2122とを備えることができる。また、軸受部材120Bは、軸受2120と軸受ケース2122との間に配置される緩衝材2124を備えることができる。しかし、軸受部材120Bの具体的形状は、図示のものに限られない。
【0045】
図2の例では、給液管路1102Bは、その出口端部が軸受面の上方で開口するように、下方に曲げられている。これにより、微小な流量の潤滑液を、軸受面に近い位置から供給することができる。また、
図2の例では、軸受面の上端2120aに、テーパが付けられている。微小量の潤滑液は、
図2に示すように水滴状に滴下される場合もある。軸受面の上端2120aの傾斜に沿って、潤滑液の滴を、スムーズに軸受面に案内することができる。しかし、上記のようなテーパ面は、必ずしも設けられなくてもよく、軸受面は、全体に平坦であってもよい。
【0046】
また、
図2に示すように、回転軸101に羽根200を取り付けることができる。羽根
200は、軸受部材120Bより低い位置に設けることができる。回転軸101と共に回転する羽根200によって風圧を発生させることができる。この風圧によって、軸受部材120Bを通過した潤滑液を上方に押し戻し、押し戻された潤滑液によって潤滑を行うことができる。また、風圧によって軸受面を冷却することができるので、軸受面の寿命を長くすることができる。
【0047】
図3は、給液管路1102Bの出口側の他の構成例を示す、立軸ポンプ100の部分断面図である。
図3の例では、給液管路1102Bは、軸受ケース2122の内部空間2126に接続されており、内部空間2126が、潤滑液で満たされるように構成されている。軸受面2120bで開口する出口端部を有する管状部材2128が、上下方向に異なる位置に配置され、軸受2120及び緩衝材2124を貫通する。管状部材2128の入口端部は、内部空間2126で開口する。
図3の構成により、微小流量の潤滑液を、軸受面2120bに直接供給することができる。
【0048】
図4は、
図3に示す軸受部材120Bの軸受2120の横方向断面を示し、管状部材2128の配置を示す。
図4では、管状部材2128が、軸受2120の周方向に配列されていることが分かる。周方向の複数位置から潤滑液を供給することにより、軸受面2120bを効率よく冷却することができ、軸受2120の寿命を長くすることができる。また、
図4に示すように、管状部材2128は、軸受面2120bの軸方向溝(いわゆる油溝)2120Cで開口するように配置されることが望ましい。
【0049】
再び
図1を参照すると、第1実施形態の立軸ポンプ100の運転中、排出管路1112から貯液槽1110及び給液管路1126、給液受け部1104及び給液管路1102A、1102Bを介して、潤滑液が軸受部材120A、120Bに連続的に供給される。立軸ポンプ100の始動及び停止時に、給液管路1126に設けられた開閉弁1130を動作することができる。開閉弁1130が電動弁である場合、開閉弁1130の動作は、例えば、回転軸101の駆動を制御する制御装置によって自動的に制御され得る。上記したように、立軸ポンプ100は、先行待機運転型のポンプである。このような立軸ポンプ100において、予め設定された先行待機運転の始動条件が成立すると、開閉弁1130が開かれ、制御装置のタイマーがオン状態にされる。所定時間が経過し、タイマーがオフ状態になると、ポンプモータが始動され、立軸ポンプ100が気中運転を開始する。タイマーの所定時間は、例えば、弁1130が開いてから、潤滑液が十分に軸受部材120A、120Bに供給され始めるまでの時間であることができ、これは、ポンプごとに予め設定される時間であってよい。ポンプモータが停止すると、開閉弁1130が閉じられ、軸受部材120A、120Bへの潤滑液の供給が停止される。
図5は、立軸ポンプ100の始動時の開閉弁1130の動作を示すフロー図であり、
図6は、立軸ポンプ100の停止時の開閉弁1130の動作を示すフロー図である。
【0050】
第1実施形態において、給液管路1126を出た潤滑液は、流量制限部材1132によって低減された微小な流量で、軸受部材120A、120Bに供給される。貯液槽1110には、吐出しエルボ107からの取り扱い液(換言すれば、揚水後の液体)の一部が流入するので、立軸ポンプ100の運転中に、貯液槽1110内に十分な量の潤滑液を貯留しておくことができる。従って、立軸ポンプ100の運転が停止された後、再度の始動(すなわち気中運転の開始)に備えることができる。すなわち、始動条件が成立すると、始動に先立って開閉弁1130を開き、潤滑液の供給を開始することができる。
【0051】
潤滑液は、立軸ポンプ100の始動後も供給することができる。潤滑液は、貯液槽1110の異物除去装置1116及び/又は給液管路1126の異物除去装置等で、異物が除去された状態で、軸受部材120A、120Bに供給される。従って、ポンプケーシング108内の取り扱い液と比べて異物の少ない液体を、潤滑液として供給することができる
。
【0052】
また、第1実施形態によれば、貯液槽1110と軸受部材120A、120Bとの間に、給液受け部1104が設けられる。貯液槽1110から流下した潤滑液は、流量制限部材1132によって流量が低減され、給液受け部1104に流入する。こうして、仮に貯液槽1110の容積が小さい場合でも、微小量の潤滑液を比較的長い時間にわたって軸受面に供給することができる。軸受面に対する供給流量は、毎分数ml程度にすることができる。
【0053】
このように、本発明の第1実施形態によれば、立軸ポンプ100の取り扱い液の一部を、潤滑液として、各軸受部材120に供給することができる。液体は、排出管路1112、貯液槽1110、第1の給液管路1126、給液受け部1104及び第2の給液管路1102A、1102Bを通して供給される。液体を、潤滑液として貯液槽1110に溜めておくことができるので、ポンプモータ始動前の気中運転の間、貯液槽1110の潤滑液を軸受部材120に供給することができる。貯液槽1110及び/又は給液管路1126に異物除去装置1116等を配置することにより、ポンプケーシング108内の取り扱い液よりも異物の少ない液体を、潤滑液として使用することができる。
【0054】
また、潤滑液は、貯液槽1110と軸受部材120との間に設置された給液受け部1104に、流量制限部材1132によって低減された流量で供給される。これにより、貯液槽1110の容積が比較的小さい場合でも、気中運転時の長い時間、潤滑液の供給を行うことができる。微小流量の潤滑液でも、十分に軸受温度の上昇を抑制することができる。
【0055】
給液受け部1104をポンプケーシング108の外部に設置することにより、微小流量の潤滑液の流れを、目視で容易に確認することができ、また、流量制限部材1132のメンテナンスを容易に行うことができる。また、微小流量の潤滑液は、給液管路1102A、1102Bの出口端部を軸受面の近傍に配置するまたは軸受面で直接開口させること等により、軸受面に確実に供給することができる。また、給液受け部1104の上流側の第1の給液管路1126に、電動弁として開閉弁1130を設けることにより、先行待機運転時の潤滑液の供給を自動制御により行うことが可能である。
【0056】
図1Aに示す第2実施形態もまた、軸受部材120のための潤滑液を、流量制限部材1132によって低減された流量で供給することができる。これにより、貯液槽1110の容積が比較的小さい場合でも、気中運転時の長い時間、潤滑液の供給を行うことができる。微小流量の潤滑液でも、十分に軸受温度の上昇を抑制することができる。
【0057】
第2実施形態は、排出管路1112が吐出管109に接続される等、立軸ポンプ100から大流量の取り扱い液が取り出される場合に、好適に実施することができる。第2実施形態による立軸ポンプ100の先行待機運転では、予め設定された先行待機運転の始動条件が成立すると、開閉弁1130が開かれ、制御装置のタイマーがオン状態にされる。所定時間が経過し、タイマーがオフ状態になると、ポンプモータが始動され、立軸ポンプ100が気中運転を開始する。ポンプモータの始動と共に、開閉弁1202が開かれ、吐出管109からの取り扱い液が、貯液槽1110に流入する。水位計1208が、貯液槽1110の満水状態を検知すると、開閉弁1202が閉じられる。タイマーの所定時間は、例えば、開閉弁1130が開いてから、潤滑液が十分に軸受部材120A、120Bに供給され始めるまでの時間であることができ、これは、ポンプごとに予め設定される時間であってよい。ポンプモータが停止すると、開閉弁1130が閉じられ、軸受部材120A、120Bへの潤滑液の供給が停止される。
【0058】
図1Bに示す第3実施形態もまた、軸受部材120のための潤滑液を、流量制限部材1
132によって低減された流量で供給することができる点で、第1実施形態と実質的に同様の効果を奏する。また、第3実施形態は、軸封部107aにメカニカルシールが採用される等、立軸ポンプ100から比較的小流量の取り扱い液が取り出される場合に好適に実施することができる。取り扱い液中の異物の量が少ないので、給液受け部1104を必要とすることなく、第1の給液管路1126(図示の例では、分岐管1126a、1126b)と第2の給液管路1102A、1102Bを、流量制限部材1132を介して接続することができる。また、異物除去装置1116、1128等も省略することができる。従って、立軸ポンプ100の設備を簡素化することができる。
【0059】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または省略が可能である。
【0060】
本発明は、以下の態様を含む。
1.立軸ポンプであって、
羽根車が取り付けられる回転軸を回転自在に支持する水中軸受部材と、
水中軸受部材のための潤滑液が貯留される貯液槽と、
貯液槽に接続される入口端部を有する第1の給液管路と、
水中軸受部材に潤滑液を供給する出口端部を有する第2の給液管路と、
第2の給液管路に入る潤滑液の流量を制限するように、第1の給液管路と第2の給液管路との間に設けられる流量制限部材と、を備える、
立軸ポンプ。
2.第1の給液管路に開閉弁が設けられている、上記1.に記載の立軸ポンプ。
3.第1の給液管路に、流量調整弁が設けられている、上記1.又は2.に記載の立軸ポンプ。
4.第2の給液管路に、逆止弁が取り付けられている、上記1.~3.のいずれかに記載の立軸ポンプ。
5.立軸ポンプは、複数の水中軸受部材と、複数の水中軸受部材と同じ数の複数の第2の給液管路及び複数の流量制限部材と、を備えている、1.~4.のいずれかに記載の立軸ポンプ。
6.立軸ポンプの取り扱い液を受け入れるように吐出ケーシング又は吐出ケーシングの吐出口に接続された吐出管に接続される入口端部と、貯液槽に接続される出口端部と、を有する排出管路を備える、上記1.~5.のいずれかに記載の立軸ポンプ。
7.排出管路の入口端部は、吐出ケーシングの軸封部に接続される、上記6.に記載の立軸ポンプ。
8.貯液槽に溢水管が接続されている、上記7.に記載の立軸ポンプ。
9.立軸ポンプは、さらに、第1の給液管路と第2の給液管路の間に配置される給液受け部を備えており、第1の給液管路は、給液受け部に潤滑液を供給するように配置されており、第2の給液管路は、給液受け部に接続される入口端部を有し、流量制限部材は、第1の給液管路又は給液受け部に取り付けられている、7.又は8.に記載の立軸ポンプ。
10.給液受け部に溢水管が接続されている、上記9.に記載の立軸ポンプ。
11.貯液槽又は第1の給液管路に、異物除去装置が配置されている、上記9.又は10.に記載の立軸ポンプ。
12.第2の給液管路の管壁が、部分的に透明であるか、又は、第2の給液管路の管壁に、カメラ装置を挿入可能な弁部材が取り付けられている、上記7.又は8.に記載の立軸ポンプ。
13.排出管路の入口端部は、吐出ケーシングの吐出口に接続された吐出管に接続される
、上記6.に記載の立軸ポンプ。
14.立軸ポンプは、さらに、第1の給液管路と第2の給液管路の間に配置される給液受け部を備えており、第1の給液管路は、給液受け部に潤滑液を供給するように配置されており、第2の給液管路は、給液受け部に接続される入口端部を有し、流量制限部材は、第1の給液管路又は給液受け部に取り付けられている、上記13.に記載の立軸ポンプ。
15.給液受け部に溢水管が接続されている、上記14.に記載の立軸ポンプ。
16.貯液槽又は第1の給液管路に、異物除去装置が配置されている、上記13.~15.のいずれかに記載の立軸ポンプ。
17.排出管路に開閉弁が設けられている、上記13.~16.のいずれかに記載の立軸ポンプ。
18.排出管路に減圧弁が設けられている、上記13.~17.のいずれかに記載の立軸ポンプ。
19.貯液槽に、空気抜弁が設けられている、上記13.~18.のいずれかに記載の立軸ポンプ。
20.貯液槽に、貯液槽内の水位を検知する水位計が設けられている、上記13.~19.のいずれかに記載の立軸ポンプ。
21.立軸ポンプの先行待機運転を行う方法であって、
潤滑液が貯留される貯液槽と、貯液槽と水中軸受部材との間に配置される管路に設けられた第1の弁を開くと共にタイマーを設定する工程と、
貯液槽内の潤滑液を、管路に設けられた流量制限部材によって低減された流量で、水中軸受部材に供給する工程と、
タイマーで設定された時間後に立軸ポンプのポンプモータを始動する工程と、
ポンプモータの停止後に第1の弁を閉じる工程と、を含む、方法。
22.水中軸受部材に供給する工程は、貯液槽内の潤滑液を、管路に設けられた給液受け部に流すことと、給液受け部内の潤滑液を、給液受け部又は管路に設けられた流量制限部材によって低減された流量で、水中軸受部材に供給することと、を含む、上記21.に記載の方法。
23.ポンプモータを始動する工程は、立軸ポンプの取り扱い液を、ポンプケーシングから貯液槽に流す工程を含み、
貯液槽に流す工程は、ポンプケーシングと貯液槽とを接続する管路に設けられた第2の弁を開くことを含む、上記21.又は22.に記載の方法。
24.さらに、貯液槽が満水状態になったときに第2の弁を閉じる工程を含む、上記23.に記載の方法。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、先行待機運転型の立軸ポンプに広く適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
100 立軸ポンプ
101 回転軸
101B 軸スリーブ
102 羽根車
103 案内羽根
104 吸込ベル
105 吐出しボウル
106 吊り下げ管
107 吐出しエルボ
107a 軸封部
107b 吐出口
108 ケーシング
109 吐出管
110 ボウルブッシュ
130、132 支持部材
120、120A,120B 水中軸受部材
200 羽根
1100 据付床
1101 開口穴
1102A、1102B 給液管路(第2の給液管路)
1103 仕切板
1104 給液受け部
1104a、1104b 部屋
1105 逆止弁
1106 上部開口
1108 溢流管
1110 貯液槽
1112 排出管路
1114 流量調整弁
1116 異物除去装置
1118 開閉蓋部
1120 溢流管
1122 戻り管
1124 切替弁
1126 給液管路(第1の給液管路)
1126a、1126b 分岐管
1128 異物除去装置
1130 開閉弁
1132、1132a、1132b 流量制限部材
1202 開閉弁
1204 減圧弁
1206 空気抜弁
1208 水位計
1210 弁部材
2120 軸受
2120a 上端
2120b 軸受面(摺接面)
2120c 軸方向溝
2122 軸受ケース
2124 緩衝材
2126 内部空間
2128 管状部材