(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-21
(45)【発行日】2025-03-04
(54)【発明の名称】必要在庫量算出システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/087 20230101AFI20250225BHJP
【FI】
G06Q10/087
(21)【出願番号】P 2021157074
(22)【出願日】2021-09-27
【審査請求日】2024-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】星川 裕俊
(72)【発明者】
【氏名】木原 智治
(72)【発明者】
【氏名】青木 繁彦
(72)【発明者】
【氏名】千坂 智博
(72)【発明者】
【氏名】善村 考博
(72)【発明者】
【氏名】島谷 晃広
(72)【発明者】
【氏名】新谷 聡一
(72)【発明者】
【氏名】井上 靖之
(72)【発明者】
【氏名】藤見 将太
(72)【発明者】
【氏名】西村 一陽
(72)【発明者】
【氏名】中原 崇志
【審査官】関 博文
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-063250(JP,A)
【文献】特開2008-040861(JP,A)
【文献】特開2013-257675(JP,A)
【文献】特開2018-073200(JP,A)
【文献】特開2017-211990(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0344920(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数のサプライヤから原材料及び半製品の少なくともいずれかを調達して製品を製造し、顧客又は卸売業者へ該製品を供給する製品供給者の商業活動のうち、該1又は複数のサプライヤから調達して該製品供給者の在庫に入れる該原材料又は該半製品の適正な必要在庫量を算出するための必要在庫量算出システムであって、
メモリ及びプロセッサを有し、
該メモリには、
該製品の名称と、
該製品で使用される該原材料又は該半製品の名称と、
該原材料又は該半製品を供給する該1又は複数のサプライヤの名称と、
所定の期間内において該顧客又は該卸売業者へ該製品を供給するために必要となる該原材料又は該半製品の必要量と、
が記憶され、
該顧客又は該卸売業者から必要とされる度合いに応じて設定され、該製品ごとの重要度を表す製品重要度係数を、該製品ごとに算出する製品重要度係数算出部と、
該1又は複数のサプライヤから該原材料又は該半製品を調達できなくなるリスクに応じて設定され、該原材料又は該半製品の調達リスクの度合いを表す調達リスク度係数を、該原材料又は該半製品ごとに算出する調達リスク度係数算出部と、
該原材料又は該半製品ごとに該製品重要度係数と該調達リスク度係数との乗算に基づいて、最大値が1となる様に正規化された総合係数を算出する総合係数算出部と、
該総合係数算出部で算出された各総合係数と、予め定められた最長在庫期間と、を乗算することで該原材料又は該半製品ごとに必要在庫期間を算出し、算出された該必要在庫期間が予め定められた最短在庫期間未満である場合は、算出された必要在庫期間を該最短在庫期間に対応する期間とする必要在庫期間算出部と、
該所定の期間における該原材料又は該半製品ごとの該必要量と、該必要在庫期間と、を乗算することで、該原材料又は該半製品の該必要在庫量を算出する必要在庫量算出部と、
を備えることを特徴とする必要在庫量算出システム。
【請求項2】
該製品重要度係数は、該所定の期間における該製品の販売数量が多いほど数値が高くなる様に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の必要在庫量算出システム。
【請求項3】
該製品重要度係数は、実勢価格係数を含み、
該実勢価格係数は、該所定の期間における製品の実勢価格の平均値が高いほど又は割引率が低いほど、高くなる様に設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の必要在庫量算出システム。
【請求項4】
該調達リスク度係数は、該サプライヤが該原材料又は該半製品を製造する製造場所又は保管する保管場所の所在地における自然災害のリスクに応じて算出されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の必要在庫量算出システム。
【請求項5】
該調達リスク度係数は、該サプライヤが該原材料又は該半製品を製造する製造場所又は保管する保管場所の所在国に関するワールドリスクレポートのワールドリスクインデックスと、該製造場所又は該保管場所の所在地における原子力発電の有無と、を含む該サプライヤの地理的要因を考慮して算出されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の必要在庫量算出システム。
【請求項6】
プログラムであって、1又は複数のサプライヤから原材料及び半製品の少なくともいずれかを調達して製品を製造し、顧客又は卸売業者へ該製品を供給する製品供給者の商業活動のうち、該1又は複数のサプライヤから調達して該製品供給者の在庫に入れる該原材料又は該半製品の適正な必要在庫量を算出するために、コンピュータに、
該顧客又は該卸売業者から必要とされる度合いに応じて設定され、該製品ごとの重要度を表す製品重要度係数を、該製品ごとに算出させ、
該1又は複数のサプライヤから該原材料又は該半製品を調達できなくなるリスクに応じて設定され、該原材料又は該半製品の調達リスクの度合いを表す調達リスク度係数を、該原材料又は該半製品ごとに算出させ、
該原材料又は該半製品ごとに該製品重要度係数と該調達リスク度係数との乗算に基づいて、最大値が1となる様に正規化された総合係数を算出させ、
各総合係数と、予め定められた最長在庫期間と、を乗算することで該原材料又は該半製品ごとに必要在庫期間を算出させ、算出された該必要在庫期間が予め定められた最短在庫期間未満である場合は、算出された必要在庫期間を該最短在庫期間に置き換えさせ、
所定の期間内において該顧客又は該卸売業者へ該製品を供給するために必要となる該原材料又は該半製品ごとの必要量と、該必要在庫期間と、を乗算することで、該原材料又は該半製品の該必要在庫量を算出させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1又は複数のサプライヤから原材料及び半製品の少なくともいずれか調達して製品を製造し、顧客又は卸売業者へ当該製品を供給する製品供給者の商業活動のうち、1又は複数のサプライヤから調達して製品供給者の在庫に入れる原材料又は半製品の適正な必要在庫量を算出するための必要在庫量算出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
メーカ等の製品供給者(即ち、製品製造業者)は、1又は複数のサプライヤから原材料及び半製品を調達した後、当該原材料及び半製品を用いて製品を製造し、物流業者を介して製造した製品を顧客や卸売業者に販売する。
【0003】
この過程では、サプライヤ、物流業者等の様々な企業とのつながりが形成される。原材料及び半製品の調達、製品の製造、原材料及び製品の在庫管理、並びに、製品の配送及び販売等の一連の流れは、サプライチェーンと呼ばれる。
【0004】
現在、サプライチェーンの効率化を図るために、コンピュータ上に設定されたサプライチェーンモデルを用いてサプライチェーンマネジメント(Supply Chain Management:SCM)を行うことが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかし、SCMにより、製品供給者が、製品の生産量及び納期や、原材料及び半製品の在庫量等を、平時において適切に管理できていたとしても、発生頻度の定量化が難しく計画的に制御することが困難な地震、水害等の有事においては、サプライヤと製品供給者との間でのサプライチェーンが途絶することがある。
【0006】
製品供給者は、平時のみではなく有事においても、顧客又は卸売業者へ安定的に製品を供給するために、例えば、原材料及び半製品の在庫を適切に管理する必要がある。しかし、製品供給者が供給する製品の種類が多岐に渡り、数多くの国内外のサプライヤと取引を行っている場合、どの製品のどの原材料及び半製品の在庫量を優先的に確保すべきかを決定することは容易ではない。
【0007】
具体的には、世界各国のサプライヤについて、有事の際における各国の法律、情勢、地理的リスク等を考慮した上で、どの製品のどの原材料及び半製品の在庫量を優先的に確保すべきか、在庫量をどれくらいに調整するかを、決定することは難しい。
【0008】
加えて、製品供給者の作業者が、製品の製造に必要となる各原材料及び半製品の在庫量を製品ごとに決定する場合、膨大な工数(即ち、作業時間と作業に当たる人数の積)がかかるので、コストがかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、安定的な製品供給のために製品供給者が必要とする原材料等の必要在庫量を、作業者が決定する場合に比べて少ない工数で低コストに算出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、1又は複数のサプライヤから原材料及び半製品の少なくともいずれかを調達して製品を製造し、顧客又は卸売業者へ該製品を供給する製品供給者の商業活動のうち、該1又は複数のサプライヤから調達して該製品供給者の在庫に入れる該原材料又は該半製品の適正な必要在庫量を算出するための必要在庫量算出システムであって、メモリ及びプロセッサを有し、該メモリには、該製品の名称と、該製品で使用される該原材料又は該半製品の名称と、該原材料又は該半製品を供給する該1又は複数のサプライヤの名称と、所定の期間内において該顧客又は該卸売業者へ該製品を供給するために必要となる該原材料又は該半製品の必要量と、が記憶され、該顧客又は該卸売業者から必要とされる度合いに応じて設定され、該製品ごとの重要度を表す製品重要度係数を、該製品ごとに算出する製品重要度係数算出部と、該1又は複数のサプライヤから該原材料又は該半製品を調達できなくなるリスクに応じて設定され、該原材料又は該半製品の調達リスクの度合いを表す調達リスク度係数を、該原材料又は該半製品ごとに算出する調達リスク度係数算出部と、該原材料又は該半製品ごとに該製品重要度係数と該調達リスク度係数との乗算に基づいて、最大値が1となる様に正規化された総合係数を算出する総合係数算出部と、該総合係数算出部で算出された各総合係数と、予め定められた最長在庫期間と、を乗算することで該原材料又は該半製品ごとに必要在庫期間を算出し、算出された該必要在庫期間が予め定められた最短在庫期間未満である場合は、算出された必要在庫期間を該最短在庫期間に対応する期間とする必要在庫期間算出部と、該所定の期間における該原材料又は該半製品ごとの該必要量と、該必要在庫期間と、を乗算することで、該原材料又は該半製品の該必要在庫量を算出する必要在庫量算出部と、を備える必要在庫量算出システムを提供する。
【0012】
好ましくは、該製品重要度係数は、該所定の期間における該製品の販売数量が多いほど数値が高くなる様に設定されている。
【0013】
また、好ましくは、該製品重要度係数は、実勢価格係数を含み、該実勢価格係数は、該所定の期間における製品の実勢価格の平均値が高いほど又は割引率が低いほど、高くなる様に設定されている。
【0014】
また、好ましくは、該調達リスク度係数は、該サプライヤが該原材料又は該半製品を製造する製造場所又は保管する保管場所の所在地における自然災害のリスクに応じて算出される。
【0015】
また、好ましくは、該調達リスク度係数は、該サプライヤが該原材料又は該半製品を製造する製造場所又は保管する保管場所の所在国に関するワールドリスクレポートのワールドリスクインデックスと、該製造場所又は該保管場所の所在地における原子力発電の有無と、を含む該サプライヤの地理的要因を考慮して算出される。
【0016】
本発明の他の態様によれば、プログラムであって、1又は複数のサプライヤから原材料及び半製品の少なくともいずれかを調達して製品を製造し、顧客又は卸売業者へ該製品を供給する製品供給者の商業活動のうち、該1又は複数のサプライヤから調達して該製品供給者の在庫に入れる該原材料又は該半製品の適正な必要在庫量を算出するために、コンピュータに、該顧客又は該卸売業者から必要とされる度合いに応じて設定され、該製品ごとの重要度を表す製品重要度係数を、該製品ごとに算出させ、該1又は複数のサプライヤから該原材料又は該半製品を調達できなくなるリスクに応じて設定され、該原材料又は該半製品の調達リスクの度合いを表す調達リスク度係数を、該原材料又は該半製品ごとに算出させ、該原材料又は該半製品ごとに該製品重要度係数と該調達リスク度係数との乗算に基づいて、最大値が1となる様に正規化された総合係数を算出させ、各総合係数と、予め定められた最長在庫期間と、を乗算することで該原材料又は該半製品ごとに必要在庫期間を算出させ、算出された該必要在庫期間が予め定められた最短在庫期間未満である場合は、算出された必要在庫期間を該最短在庫期間に置き換えさせ、所定の期間内において該顧客又は該卸売業者へ該製品を供給するために必要となる該原材料又は該半製品ごとの必要量と、該必要在庫期間と、を乗算することで、該原材料又は該半製品の該必要在庫量を算出させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様に係る必要在庫量算出システムは、所定の期間における原材料又は半製品の必要在庫量を自動的に算出するので、安定的な製品の供給のために製品供給者が所定の期間で必要とする必要在庫量を、作業者が決定する場合に比べて少ない工数で算出できる。それゆえ、作業者が決定する場合に比べて低コストで、原材料又は半製品の必要在庫量を算出できる。
【0018】
本発明の他の態様に係るプログラムも、同様に、コンピュータに必要在庫量を自動的に算出させるので、作業者が決定する場合に比べて少ない工数及び低いコストでの必要在庫量の算出を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図3】製品、原材料及び半製品の対応関係の一例を示す図である。
【
図6】内的要因を考慮した調達リスクの合計点数を示す図である。
【
図7】地理的要因を考慮した調達リスクの合計点数を示す図である。
【
図8】地理的要因を示す調達リスクの合計点数におけるWRRのWRI、原子力発電所及び自治体の構成割合を示す図である。
【
図10】調達リスク度係数を算出するフロー図である。
【
図13】第2の実施形態に係る必要在庫量算出システムの概要図である。
【
図14】
図14(A)は第3の実施形態に係る必要在庫量算出システムの概要図であり、
図14(B)は第4の実施形態に係る必要在庫量算出システムの概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る必要在庫量算出システム2の概要図である。本実施形態の必要在庫量算出システム2は、ネットワークを介して他のコンピュータに接続されていないスタンドアローン状態のコンピュータ4内に構成されている。
【0021】
必要在庫量算出システム2を有するコンピュータ4は、例えば、デスクトップ型又はラップトップ型のコンピュータ(即ち、パーソナルコンピュータ)や、サーバである。但し、後述する様に、必要在庫量算出システム2は、インターネットを介してサーバからSaaS(Software as a Service)の形態で、コンピュータ4に提供されてもよい。
【0022】
コンピュータ4は、例えば、CPU(Central Processing Unit)に代表される不図示のプロセッサ(処理装置)と、メモリ(記憶装置)6とを含む。メモリ6は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等の主記憶装置と、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等の補助記憶装置と、を含む。
【0023】
補助記憶装置には、所定のプログラムを含むソフトウェアが記憶されている。このソフトウェアに従い処理装置等を動作させることによって、必要在庫量算出システム2の機能が実現される。
【0024】
図1に示す様に、コンピュータ4には、製品供給者14の作業者がコンピュータに情報を入力する際のインターフェースとなる入力装置8が接続されている。入力装置8は、例えば、キーボード、マウス、記録媒体の読取装置であるが、この例示に限定されるものではない。
【0025】
記録媒体としては、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリや、DVD(Digital Versatile Disc)を挙げることができるが、記録媒体は、この例示に限定されず、他の記録媒体であってもよい。
【0026】
コンピュータ4には、入力装置8及び表示装置10が接続されている。入力装置8は、コンピュータ4への情報の入力に利用され、表示装置10は、コンピュータ4での演算の結果の表示に利用される。
【0027】
なお、表示装置10は、入力装置8の機能を有するタッチパネルであってもよい。表示装置10がタッチパネルである場合、入力装置8を省略してもよい。
【0028】
メモリ6の一部(例えば、補助記憶装置の一部)は、製品12(
図2参照)の名称(即ち、製品の名称16a)を記憶する第1の領域16を有する。ここで、
図2を参照し、製品12等について説明する。
【0029】
図2は、製品供給者14の商業活動を示す概要図である。製品供給者14は、製品12を製造し、顧客18a又は卸売業者18bへ製品12を販売する(供給する)主体であり、メーカ又は製品製造業者とも呼ばれる。
【0030】
本実施形態の製品供給者14は、法人である。また、本明細書では、製品供給者14の法人における使用者、従業者等の自然人を、製品供給者14の作業者と呼ぶ。製品供給者14は、1又は複数のサプライヤ20から原材料22及び半製品24の少なくともいずれかを調達して製品12を製造する。
【0031】
例えば、製品供給者14は、サプライヤ20aから原材料22aを、サプライヤ20bから原材料22bを、サプライヤ20cから半製品24aを、サプライヤ20dから半製品24bをそれぞれ調達し、製品12aを製造する。
【0032】
但し、製品供給者14は、サプライヤ20aから原材料22aを調達して他の製品12bを製造したり、サプライヤ20cから半製品24aを調達して他の製品12cを製造したりすることもある。
【0033】
また、
図2では、便宜的に、簡単な例を示しているが、製品供給者14は、サプライヤ20aから複数の原材料22a、22bを調達してもよく、サプライヤ20aから複数の半製品24a、24bを調達してもよい。製品供給者14は、サプライヤ20aから原材料22a及び半製品24aを調達してもよい。
【0034】
製品12の1つは、例えば、ハブブレードである(
図3参照)。ハブブレードは、アルミニウム合金で形成された円環状の基台(即ち、ハブ)を有し、基台の一面の外周部には、円環状の切り刃が固定されている。
【0035】
図3は、製品12、原材料22及び半製品24の対応関係の一例を示す図である。ハブブレードは、例えば、切り刃を形成するための第1の砥粒及び第1のボンド材と、第1の基台と、を用いて製造されるが、製造に際して、他の原材料22又は半製品24を追加的に用いてもよい。
【0036】
また、製品12の他の1つは、例えば、ハブレスブレード(ワッシャーブレードとも称される)である。ハブレスブレードは、基台を有さず、円環状の切り刃で構成されている。ハブレスブレードは、例えば、第2の砥粒及び第2のボンド材を用いて製造されるが、製造に際して、他の原材料22又は半製品24を追加的に用いてもよい。
【0037】
また、製品12の他の1つは、例えば、研削ホイールである。研削ホイールは、例えば、金属製の円環状の第3の基台と、第3の基台の一面側において第3の基台の周方向で略等間隔に配置された複数の研削砥石と、を有する。
【0038】
各研削砥石は、第3のボンド材に、第3の砥粒を混合した後、成型、焼成等を経て製造される。但し、研削ホイールの製造に際して、他の原材料22又は半製品24を追加的に用いてもよい。
【0039】
また、他の製品12の1つは、例えば、研磨パッドである。研磨パッドは、例えば、金属製の円環状の第4の基台と、第4の基台の一面側に設けられた円環状の研磨パッドと、を有する。但し、研磨パッドの製造に際して、他の原材料22又は半製品24を追加的に用いてもよい。
【0040】
また、製品12の他の1つは、ドレスボード(ドレッシングボードとも呼ばれる)である。ドレスボードは、例えば、第5のボンド材に第5の砥粒を混合した後、成型、焼成等を経て製造されるが、製造に際して、他の原材料22又は半製品24を追加的に用いてもよい。
【0041】
ハブブレード、ハブレスブレード、研削ホイール、研磨パッド等の加工工具や、ドレスボードは、切削装置、研削装置、研磨装置等の半導体製造装置において使用される消耗品である。
【0042】
半導体製造装置の消耗品を、製品供給者14から顧客18a又は卸売業者18bへ供給するサプライチェーンが途絶すると、半導体チップの製造に影響が及び、携帯電話、パーソナルコンピュータ、自動車等の様々な商品の製造及び流通が世界的に滞ることになる。
【0043】
そこで、本実施形態では、調達から販売までの製品供給者14の商業活動(サプライチェーン)において、必要在庫量算出システム2を利用して製品12の供給を管理する。具体的には、必要在庫量算出システム2を利用して、製品供給者14における原材料22又は半製品24の適正な必要在庫量58a(
図11参照)を算出する。
【0044】
ここで、
図1に戻る。メモリ6は、第2の領域26を有する。第2の領域26には、製品12で使用される原材料22又は半製品24の名称(即ち、原材料又は半製品の名称26a)が記憶される。
【0045】
メモリ6は、第3の領域28を更に有する。第3の領域28には、原材料22又は半製品24を供給する1又は複数のサプライヤ20の名称(即ち、1又は複数のサプライヤの名称28a)が記憶される。
【0046】
また、メモリ6は、第4の領域30を更に有する。第4の領域30には、所定の期間(本実施形態では、1ヶ月)内において顧客18a又は卸売業者18bへ製品12を供給するために必要となる原材料22又は半製品24の必要量30a(
図11参照)が記憶される。
【0047】
製品12の製造に要する原材料22及び半製品24の少なくともいずれかの必要量30aは、必要在庫量58aを算出する時点の直近の6ヶ月から12ヶ月の間における製品12ごとの販売数量の1ヶ月当たりの平均値に基づいて算出される。
【0048】
6ヶ月から12ヶ月の間における1ヶ月当たりの販売数量の平均値を利用することで、閑散期及び繁忙期における販売数量の大小を均すことができるので、平均値を利用しない場合に比べて、より適切な必要量30a及び必要在庫量58aを算出できる。
【0049】
また、メモリ6は、第5の領域32を更に有する。第5の領域32には、製品重要度係数32aが記憶される。製品重要度係数32aは、顧客18a又は卸売業者18bから必要とされる度合いに応じて設定され、製品12ごとの重要度を表す。製品重要度係数32aは、製品重要度係数算出部50により算出される。
【0050】
ここで、
図4を参照し、製品重要度係数32aについて説明する。
図4は、製品重要度係数32aを示す図である。
【0051】
図4に示す表の最上欄には、左から順に、「製品の名称」、「原材料の名称」、「サプライヤの名称」、「所定の期間での販売数量」、「販売数量順位」、「販売数量係数」、「割引率」、「割引率順位」、「実勢価格係数」、「状況・都合係数」、「係数乗算値」及び「製品重要度係数」が記載されている。
【0052】
図4に示す表の最も左側の欄には、製品の名称16aが列挙されている。なお、
図4では、製品の名称16aを便宜的に、A、B、C、D及びEと記載する。製品の名称16aの欄の右隣には、原材料又は半製品の名称26aにおける原材料22の名称が列挙されている。
【0053】
Aの製品12では、4種類の原材料22(即ち、A-1-1、A-1-2、A-2-1、A-3-1)を示すが、使用される他の原材料22及び半製品24を便宜的に省略している。
【0054】
また、B、C、D及びEの各製品12では、便宜的に、各1種類の原材料22(即ち、B-1-1、C-1-1、D-1-1、E-1-1)のみを示し、使用される他の原材料22及び半製品24を省略している。
【0055】
アルファベット以降の数字群は、原材料22の識別符号である。例えば、A-1-1、B-1-1、C-1-1、D-1-1及びE-1-1における「1-1」は、同一の原材料22を示す。「1-1」は、例えば、所定の粒度の砥粒である。
【0056】
原材料の名称26aの欄の右隣には、複数のサプライヤ20が列挙されている。
図4では、サプライヤ20として、α、β、γ及びδの異なる4社を示す。
図4では、識別符号「1-1」で示す原材料22を、一社単独ではなくα、β及びδの三社から、製品供給者14が調達することを示している。
【0057】
販売数量順位は、6ヶ月から12ヶ月の間における製品12ごとの販売数量の1ヶ月当たりの平均値の順位である。販売数量が最も多いAの製品12は、順位1であり、販売数量が最も少ないEの製品12は、順位5である。
【0058】
販売数量が多い製品12ほど、顧客18a及び卸売業者18bに必要とされており、重要度が高いと考えられる。販売数量係数36aを、最終的に製品重要度係数32aに反映することで、顧客18a及び卸売業者18bによる製品12の需要の程度を製品重要度係数32aに反映できる。
【0059】
販売数量係数36aは、所定の期間における製品12の販売数量が多いほど、数値が高くなる様に設定されている。
図4の例では、5種類の製品12を示すので、販売数量係数36aを5段階で規定している。
【0060】
但し、販売数量係数36aは、製品供給者14が供給する製品12の種類に応じて、適宜決定してもよい。例えば、製品供給者14が、50種類や100種類の製品12を供給する場合、50段階や100段階で販売数量係数36aを規定してもよい。
【0061】
割引率38aは、製品供給者14の希望小売価格と、顧客18a又は卸売業者18bが実際に購入するときの製品12の価格(即ち、実勢価格)と、の差分に対する、当該希望小売価格の割合を示す数値である。
図4では、割引率38aを百分率で表している。
【0062】
例えば、所定の期間、希望小売価格が一定である場合には、希望小売価格と実勢価格との差分を、所定の期間における製品12の実勢価格の平均値で除した後、100を乗算することで、割引率38aが得られる。勿論、所定の期間内で希望小売価格を変えた場合には、この変動を割引率38aに適宜反映してよい。
【0063】
割引率38aは、最終的に製品重要度係数32aに反映される。割引率38aが低い製品12ほど、顧客18a及び卸売業者18bに必要とされており、重要度が高いと考えられる。割引率38aを、製品重要度係数32aに反映することで、顧客18a及び卸売業者18bによる製品12の需要の程度を製品重要度係数32aに反映できる。
【0064】
本実施形態では、割引率38aの順位の逆の順位を実勢価格係数40aと定める。それゆえ、実勢価格係数40aは、割引率38aが低いほど高くなる様に設定されている。言い換えると、実勢価格係数40aは、実勢価格が高いほど高くなる。
【0065】
図4の例では、5種類の製品12を示すので、割引率38aの順位を5段階で規定しており、それゆえに、実勢価格係数40aも5段階で規定している。
【0066】
具体的には、割引率38aの順位で1位のDの製品12は、その逆の順位である5位の「5」を実勢価格係数40aとし、同様に、割引率38aの順位で5位のBの製品12は、その逆の順位である1位の「1」を実勢価格係数40aとしている。
【0067】
但し、実勢価格係数40aは、製品供給者14が供給する製品12の種類に応じて、適宜決定してもよい。例えば、製品供給者14が50種類や100種類の製品12を供給する場合、50段階や100段階で実勢価格係数40aを規定してもよい。
【0068】
状況・都合係数42aは、原材料22、半製品24の調達事情に応じて製品供給者14の作業者により設定される1以下の数値である。例えば、ある原材料22が複数のサプライヤ20から調達される場合、この原材料22を調達できなくなるリスクは比較的低いと考えられるので、状況・都合係数42aは比較的小さい値に設定される。
【0069】
これに対して、ある原材料22が1つのサプライヤ20のみから調達される場合、この原材料22を調達できなくなるリスクは比較的高いと考えられるので、状況・都合係数42aは1.0(最大値)に設定される。
【0070】
なお、
図4に示すB及びEの製品12では、状況・都合係数42aがそれぞれ1.0になっているが、これは、識別符号「1-1」で特定される原材料22ではない他の原材料22及び半製品24(不図示)の影響である。
【0071】
但し、状況・都合係数42aは、製品重要度係数32aを算出するうえで選択的に設定される係数であり、状況・都合係数42a自体を省略してもよい。
【0072】
本実施形態では、販売数量係数36a、実勢価格係数40a及び状況・都合係数42aの積を、係数乗算値44aとする(
図5のS10)。
図5は、製品重要度係数32aを算出するフロー図である。
【0073】
Aの製品12の係数乗算値44aは、8(=5×2×0.8)であり、Bの製品12の係数乗算値44aは、3(=3×1×1.0)である。また、Cの製品12の係数乗算値44aは、6(=4×3×0.5)であり、Dの製品12の係数乗算値44aは、7(=2×5×0.7)であり、Eの製品12の係数乗算値44aは、4(=1×4×1.0)である。
【0074】
本実施形態では、各係数乗算値44aを複数の係数乗算値44aのうちの最大値で除した値により、製品重要度係数32aを表す(
図5のS12)。
図4の例では、係数乗算値44aの最大値は、Aの製品12の「8」であるので、各係数乗算値44aを「8」で除することで、製品重要度係数32aが算出される。
【0075】
AからEの製品12の各製品重要度係数32aは、
図4に示す様に、AからEの順で、1.000(=8/8)、0.375(=3/8)、0.750(=6/8)、0.875(=7/8)、0.500(=4/8)となる。この様にして、最大値が1となる様に正規化された製品重要度係数32aが製品12ごとに算出される。
【0076】
図1に示す様に、プロセッサによって実行される所定のプログラムは、必要在庫量算出システム2として機能する。必要在庫量算出システム2は、製品重要度係数算出部50を有する。製品重要度係数算出部50は、例えば、メモリ6から読み出される第1のプログラムによって実行される。
【0077】
コンピュータ4にそれぞれ入力された販売数量、希望小売価格及び実勢価格(又は割引率38a)、状況・都合係数42aに基づいて、製品重要度係数算出部50は、上述の要領で、製品重要度係数32aを算出する。算出された製品12ごとの製品重要度係数32aは、メモリ6の第5の領域32に記憶される。
【0078】
次に、
図6から
図10を参照し、調達リスク度係数34aについて説明する。調達リスク度係数34aは、
図1に示す調達リスク度係数算出部52により算出される。
【0079】
調達リスク度係数34aは、製品供給者14がサプライヤ20から原材料22又は半製品24を調達しようとするときに、調達できなくなるリスク(即ち、調達リスク)の度合いを表す。
【0080】
調達リスク度係数34aは、1又は複数のサプライヤ20から原材料22又は半製品24を調達できなくなるリスクに応じて設定されており、サプライヤ20の内的要因(
図6参照)と、サプライヤ20の地理的要因(
図7参照)とを含む。
【0081】
図6は、サプライヤ20の内的要因を考慮した調達リスクの合計点数52aを示す図である。
図6では、
図4と同様に、製品の名称16aが最左欄に列挙されている。なお、半製品24については、便宜上、省略している。
【0082】
製品の名称16a、原材料の名称、サプライヤの名称28aは、
図4と同様である。サプライヤの名称28aの右欄には、No.が記載されている。No.の右欄には、No.1~38の各々の具体的な内容が記載されている。
【0083】
但し、
図6では、No.4からNo.8のみについて具体的な内容を記載し、その他のNo.1から3及びNo.9から38における具体的な内容を省略している。なお、省略箇所には、「略」の文字を付している。
【0084】
No.4の具体的な内容は、製品供給者14の自主調達基準に該当しているか否かである。本実施形態の自主調達基準とは、製品供給者14がサプライヤ20から調達する原材料22が、環境負荷の少ないものであるか否かを示す基準である。この様な方針に沿う原材料22等の調達は、グリーン調達とも呼ばれる。
【0085】
No.5の具体的な内容は、原材料22が紛争対象の鉱物を含むか否かである。No.6の具体的な内容は、原材料22に特許等の知的財産権の抵触が無いかを否かである。
【0086】
No.7の具体的な内容は、原材料22が継続的に販売される懸念があるか否かである。No.8の具体的な内容は、原材料22の生産が、サプライヤ20の自然人(例えば、自然人の技能、技量等)に依存しているか否かである。
【0087】
内容の右欄には、重みが1から10の自然数で設定されている。この重みは、各No.の内容に該当した場合に、製品供給者14がサプライヤ20から原材料22を調達できなくなる可能性が高くなるほど、大きい数字が予め付与されている。
【0088】
例えば、No.4及び5に該当した場合、原材料22は一切調達できなくなるので、重みを10とする。これに対して、No.6に該当したとしても、和解契約等により調達できる可能性があるので、重みを10よりも低い9とする。
【0089】
更に、No.7及び8に該当したとしても、他のサプライヤ20から調達することができるので、重みを9よりも低い8とする。なお、重みを示す点数は、時間の経過に応じて、製品供給者14の作業者が見直し、適宜更新する。
【0090】
重みの右欄には、リスク度が記載されている。リスク度は、サプライヤ20がNo.1から38の各内容に該当する可能性の高さを示しており、三段階(本実施形態では0、1及び2のいずれか数字)で設定されている。このリスク度は、例えば、調達リスク度係数34aの算出時に設定される。
【0091】
本実施形態では、製品供給者14からサプライヤ20への質問調査に対するサプライヤ20からの回答等のサプライヤ20から提供される情報に基づいて、サプライヤ20がNo.1から38の各内容に該当する可能性を、製品供給者14の作業者が判断する又は評価する。
【0092】
具体的には、可能性が高い場合(例えば、50%超)は2、可能性が高くは無いが可能性がゼロではない場合(例えば、0%より大きく50%以下)は1、可能性が無い場合(つまり、0%)は0、とする。
【0093】
そして、重みと、リスク度と、の積をリスク評価点数とする(
図10のS20)。No.1~38の各々について同様に計算し、原材料の名称ごとにリスク評価点数の合計を算出する。本実施形態において合計点数の最大値は、336となる様に予め設定されている。これに対して、A-1-1の合計は、67である。
【0094】
本実施形態では、原材料の名称ごとに、合計点数を336で除した後、100をかけることで、100点満点に換算した合計点数52aを算出する(
図10のS22)。
図6の例では、A-1-1、A-3-1及びC-1-1(サプライヤの名称28aがα)は、19.940である。
【0095】
これに対して、A-1-2及びE-1-1(サプライヤの名称28aがβ)は、8.929であり、A-2-1(サプライヤの名称28aがγ)は、59.524であり、B-1-1及びD-1-1(サプライヤの名称28aがδ)は、44.643である。
【0096】
図7は、サプライヤ20の地理的要因を考慮した調達リスクの合計点数52bを示す図である。
図7では、
図4と同様に、最左欄には、製品の名称16aが列挙されている。製品の名称16a、原材料の名称、サプライヤの名称28aは、
図4と同様である。なお、半製品24については、便宜上、省略している。
【0097】
サプライヤの名称28aの右欄には、サプライヤ20が原材料22又は半製品24を製造する製造場所、又は、サプライヤ20が製造した原材料22又は半製品24を保管する保管場所の、所在国及び所在地がそれぞれ記載されている。なお、日本以外の外国については、所在国の欄では単に海外と示し、所在地の欄に国名を記載している。
【0098】
所在国及び所在地の右欄には、製造場所又は保管場所の所在国に関するワールドリスクレポート(WorldRiskReport:WRR)のワールドリスクインデックス(WorldRiskIndex:WRI)が記載されている。
【0099】
WRRは、2011年以降毎年発行されている。WRRの2020年度版については、括弧内に示すリンクを参照されたい(https://reliefweb.int/sites/reliefweb.int/files/resources/WorldRiskReport-2020.pdf)。
【0100】
WRRでは、自然災害のリスク等を評価した指標が、国ごとにWRIとして付与されている。なお、WRIは、100点を上限とする点数である。本実施形態では、合計点数52bの算出時点における最新のWRIを使用する。
【0101】
WRRの右欄には、原子力発電所の有無に関する点数が記載されている。例えば、製造場所又は保管場所の所在地が、原子力発電所を中心とする半径20kmの円内にある場合には20点とする。
【0102】
また、同所在地が、原子力発電所を中心とする半径20kmの円内には無いが半径30kmの円内にある場合には10点とし、原子力発電所を中心とする半径30kmの円外にある場合は0点とする。
【0103】
原子力発電所の有無に関する点数は、100点を満点とする点数に換算され、その右欄に記載されている。この換算点数の右欄には、地震、洪水、土砂災害及び津波(即ち、自然災害)が発生するリスクに応じて付与される点数が記載されている。
【0104】
日本を除く国では同じ物差しでの評価が難しいので、地震、洪水、土砂災害及び津波については、日本に製造場所又は保管場所(所在地)があるサプライヤ20のみを評価対象としている。地震、洪水、土砂災害及び津波は、それぞれ10点満点で記載されている。
【0105】
地震の項目は、例えば、J-SHIS(Japan Seismic Hazard Information Station)においてJ-SHIS Map(https://www.j-shis.bosai.go.jp/map/)の形態で提供される「揺れに見舞われる確率」を利用して算出する。
【0106】
本実施形態では、製造場所又は保管場所の所在地において今後30年で震度6弱以上の揺れに見舞われる確率を、10点満点に換算する。例えば、確率0%以上0.1%未満を1点、確率0.1%以上3%未満を2点とする。
【0107】
加えて、確率3%以上6%未満を3点、確率6%以上26%未満を5点、確率26%以上を10点とする。但し、震度6弱以上での確率に代えて、震度6強以上での確率を使用してもよい。いずれにしても所在地の地震発生確率を10点満点に換算する。
【0108】
また、洪水、土砂災害及び津波の各項目は、例えば、国土交通省が運営するハザードマップポータルサイト(https://disaportal.gsi.go.jp/)で提供される「重ねるハザードマップ~自由にリスク情報を調べる~」を利用して算出する。
【0109】
例えば、洪水の項目では、製造場所又は保管場所の所在地が、河川が氾濫した際に浸水が想定される洪水浸水想定区域(想定最大規模)に対応する場合に、該当区域の水深に応じて点数を付ける。
【0110】
例えば、洪水が無い(即ち、水深が0.0mである)場合を0点、該当区域の水深が、0.0mより大きく0.3m未満の場合1点、0.3m以上0.5m未満の場合を2点、0.5m以上の場合を10点とする。
【0111】
0.5m以上の場合を比較的高い点数にしているのは、半導体製造装置が一般的に大型で重量が有り、建物の一階に据え置かれることが比較的多いという事情を考慮した結果である。
【0112】
土砂災害の項目では、製造場所又は保管場所の所在地が、(1)急傾斜地の崩壊警戒区域にある、(2)土石流の警戒区域にある、又は、(3)地すべりの警戒区域にある、場合には、5点とする。
【0113】
また、上述の所在地が、(4)急傾斜地の崩壊特別警戒区域にある、(5)土石流の特別警戒区域にある、(6)地すべりの特別警戒区域にある、(7)土石流危険渓流が近くにある、(8)急傾斜地崩壊危険箇所に該当する、(9)地すべり危険箇所に該当する、又は、(10)雪崩危険箇所に該当する場合には、10点とする。
【0114】
これに対して、製造場所又は保管場所の所在地が、上記の(1)から(10)のいずれにも該当しない場合には、土砂災害の項目は0点とする。
【0115】
津波の項目では、津波浸水想定(想定最大規模)に対応する場合に、該当区域の水深に応じて点数を付ける。なお、洪水の場合と同様に、0.5m以上の場合を比較的高い点数にする。
【0116】
例えば、津波が無い(即ち、水深が0.0mである)場合を0点、該当区域の水深が、0.01m以上0.5m未満の場合を2点、0.5m以上1.0m未満の場合を5点、1.0m以上の場合を10点とする。
【0117】
地震、洪水、土砂災害及び津波に関する合計の点数(40点満点)は、自治体合計の欄に記載されており、40点満点に対する自治体合計の点数は、100点満点に換算され、自治体合計の右欄に記載されている。
【0118】
製造場所又は保管場所の所在地が日本国内にある場合には、
図8に示す様に、WRRのWRIの40%と、原子力発電所(100点満点換算点数)の10%と、自治体合計(100点満点換算点数)の50%との合計を、(国内)合計点数52bとする(
図10のS24)。
【0119】
図8は、地理的要因を示す調達リスクの合計点数52bにおけるWRRのWRI、原子力発電所(100点満点換算点数)及び自治体(100点満点換算点数)の構成割合を示す図である。
【0120】
所在地が日本国内にある場合に、自治体合計の割合を50%と比較的大きくしているのは、国内の情報の方が海外の情報に比べて詳細であるので、より正確な実態を反映していると考えられるからである。
【0121】
これに対して、製造場所又は保管場所の所在地が日本国内になく海外にある場合には、
図8に示す様に、WRRのWRIの90%と、原子力発電所(100点満点換算点数)の10%との合計を、(海外)合計点数52bとする(
図10のS24)。
【0122】
海外については、国内の地震、洪水、土砂災害及び津波のリスクの様に、所在地ごとの細かな予測値を入手し難いので、これらのリスクの評価をWRRで代替している。そのため、WRIの割合を比較的大きくしている。
【0123】
そして、
図6に示す合計点数52aと、
図7に示す合計点数52bとの和を算出することで、調達リスク合計点数(200点満点)を算出する(
図9、
図10のS26参照)。
【0124】
次いで、各調達リスク合計点数を、最大の調達リスク合計点数(
図9の例では、A-2-1の74.780)で除することで、調達リスク度係数34aを算出する(
図10のS28)。
【0125】
この様にして、最大値が1となる様に正規化された調達リスク度係数34aを原材料22又は半製品24ごとに算出する。
図9は、調達リスク度係数34aを示す図であり、
図10は、調達リスク度係数34aを算出するフロー図である。
【0126】
図1に示す様に、必要在庫量算出システム2は、調達リスク度係数算出部52を有する。調達リスク度係数算出部52は、例えば、メモリ6から読み出されて実行される第2のプログラムによって実行される。
【0127】
調達リスク度係数算出部52は、コンピュータ4にそれぞれ入力された、重み、リスク度(
図6参照)、WRI、原子力発電所の有無、地震等の自然災害のリスク(
図7参照)等に基づいて、上述の要領で、調達リスク度係数34aを算出する。
【0128】
メモリ6は、第6の領域34を更に有する。第6の領域34には、調達リスク度係数算出部52で算出された調達リスク度係数34aが記憶される。次に、製品重要度係数32a及び調達リスク度係数34aに基づいて、原材料22又は半製品24ごとに必要在庫量58a(
図11参照)を算出する。
【0129】
図11は、必要在庫量58aを示す図であり、
図12は、必要在庫量58aを算出するフロー図である。まず、必要在庫量算出システム2の総合係数算出部54が(
図1参照)、製品重要度係数32aと調達リスク度係数34aとの乗算に基づいて、原材料22又は半製品24ごとの総合係数54aを算出する(
図12のS30)。
【0130】
総合係数算出部54は、例えば、メモリ6から読み出されて実行される第3のプログラムによって実行される。本実施形態の製品重要度係数32a及び調達リスク度係数34aは、最大値が1となる様に既に正規化されているので、製品重要度係数32aと調達リスク度係数34aとを乗算することで、最大値が1となる様に正規化された総合係数54aを得る。
【0131】
しかし、製品重要度係数32aとして正規化される前の係数乗算値44a(
図4参照)と、調達リスク度係数34aとして正規化される前の調達リスク合計点数(
図9参照)と、を乗算した後に、得られた値を正規化することで総合係数54aを算出してもよい。
【0132】
総合係数54aは、製品重要度係数32aが高く、且つ、調達リスク度係数34aが高いほど高くなる。つまり、顧客18a又は卸売業者18bから必要とされる度合いが高く、且つ、調達できなくなるリスクが高いほど、総合係数54aは高くなる。
【0133】
次に、必要在庫量算出システム2の必要在庫期間算出部56が(
図1参照)、各総合係数54aと、予め定められた最長在庫期間と、を乗算することで、原材料22又は半製品24ごとに必要在庫期間56aを算出する(
図12のS32)。必要在庫期間算出部56は、例えば、メモリ6から読み出されて実行される第4のプログラムによって実行される。
【0134】
算出された必要在庫期間56aが予め定められた最短在庫期間未満である場合(
図12のS34でYES)は、算出された必要在庫期間56aを最短在庫期間に対応する期間とする(
図12のS36)。即ち、必要在庫期間56aを最短在庫期間に置き換える。
【0135】
これに対して、算出された必要在庫期間56aが予め定められた最短在庫期間以上である場合(
図12のS34でNO)は、算出された必要在庫期間56aを次工程でそのまま使用する。
【0136】
本実施形態において、予め定められた最長在庫期間は24ヶ月である。24ヶ月というこの最長在庫期間は、例えば、製品供給者14の在庫が増えることで発生するコスト等の負担を考慮して定められる。
【0137】
また、本実施形態において、予め定められた最短在庫期間は6ヶ月である。最短在庫期間は、例えば、製品供給者14が顧客18a又は卸売業者18bに対して一定の供給量で製品12を供給可能な期間として、顧客18a又は卸売業者18bに向けて公表している期間が反映される。
【0138】
次に、必要在庫量算出システム2の必要在庫量算出部58が(
図1参照)、所定の期間(本実施形態では、1ヶ月)における原材料22又は半製品24ごとの必要量30aと、必要在庫期間56aと、を乗算することで、必要在庫量58aを算出する(
図12のS38)。
【0139】
必要在庫量算出部58は、例えば、メモリ6から読み出されて実行される第5のプログラムによって実行される。本実施形態において、算出された必要在庫量58aは、製品供給者14の在庫に入れる原材料22又は半製品24の適正な必要在庫量58aと見なされて、必要在庫量算出システム2に記憶され、製品供給者14の商業活動に反映される。
【0140】
本実施形態では、必要在庫量算出システム2が所定の期間における原材料22又は半製品24の必要在庫量58aを自動的に算出するので、必要在庫量58aを、製品供給者14の作業者が決定する場合に比べて少ない工数で算出できる。それゆえ、原材料22又は半製品24の必要在庫量58aを、製品供給者14の作業者が決定する場合に比べて、低コストに算出できる。
【0141】
次に、第2の実施形態について説明する。
図13は、第2の実施形態に係る必要在庫量算出システム2の概要図である。第2の実施形態では、コンピュータ60が、インターネット62又はネットワークを介して、サーバ(コンピュータ)64に接続されている。
【0142】
コンピュータ60及びサーバ64の各々は、プロセッサ及びメモリを有している。コンピュータ60は、上述の製品の名称16a、原材料又は半製品の名称26a、サプライヤの名称28a、必要量30a等を記憶しており、インターネット62を介して、これらの情報をサーバ64へ送信する。
【0143】
サーバ64のメモリに記憶されている所定のプログラムを、サーバ64のプロセッサで実行する。これにより、サーバ64は、上述の製品重要度係数算出部50、調達リスク度係数算出部52、総合係数算出部54、必要在庫期間算出部56及び必要在庫量算出部58を有する必要在庫量算出システム2として機能する。
【0144】
つまり、各項目の算出は、コンピュータ60ではなくサーバ64によって実行される。サーバ64は、コンピュータ60からの情報に基づいて、製品重要度係数32a及び調達リスク度係数34aを算出すると共に、総合係数54a、必要在庫期間56a及び必要在庫量58aを算出する。
【0145】
必要在庫量58aを含む情報は、製品供給者14のコンピュータ60のメモリ(不図示)に保存されると共に、表示装置10に表示される。第2の実施形態においても、原材料22又は半製品24の必要在庫量58aを、製品供給者14の作業者が決定する場合に比べて、低コストに算出できる。
【0146】
次に、第3の実施形態について説明する。
図14(A)は、第3の実施形態に係る必要在庫量算出システム2の概要図である。第3の実施形態では、製品重要度係数32a、調達リスク度係数34a、総合係数54a、必要在庫期間56a、及び、必要在庫量58aをそれぞれコンピュータ60に算出させる所定のプログラム66が、サーバ64に記憶されている。
【0147】
所定のプログラム66は、サーバ64からインターネット62を介してコンピュータ60へ提供される。コンピュータ60は、所定のプログラム66を読み込むことで必要在庫量算出システム2として機能する。
【0148】
第3の実施形態では、コンピュータ60が、製品重要度係数32a及び調達リスク度係数34a、並びに、総合係数54a、必要在庫期間56a及び必要在庫量58aを算出する、必要在庫量算出システム2として機能する。
【0149】
次に、第4の実施形態について説明する。
図14(B)は、第4の実施形態に係る必要在庫量算出システム2の概要図である。第4の実施形態では、所定のプログラム66がUSB(Universal Serial Bus)メモリ68等の非一時的コンピュータ可読媒体に記憶されている。
【0150】
コンピュータ60は、USBメモリ68から所定のプログラム66を読み込むことで、必要在庫量算出システム2として機能する。その他、上述の実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0151】
2:必要在庫量算出システム、4:コンピュータ、6:メモリ
8:入力装置、10:表示装置
12,12a,12b,12c:製品、14:製品供給者
16:第1の領域、16a:製品の名称
18a:顧客、18b:卸売業者
20,20a,20b,20c,20d:サプライヤ
22,22a,22b:原材料
24,24a,24b:半製品
26:第2の領域、26a:原材料又は製品の名称
28:第3の領域、28a:1又は複数のサプライヤの名称
30:第4の領域、30a:必要量
32:第5の領域、32a:製品重要度係数
34:第6の領域、34a:調達リスク度係数
36a:販売数量係数、38a:割引率、40a:実勢価格係数
42a:状況・都合係数、44a:係数乗算値
50:製品重要度係数算出部、52:調達リスク度係数算出部
52a,52b:合計点数
54:総合係数算出部、54a:総合係数
56:必要在庫期間算出部、56a:必要在庫期間
58:必要在庫量算出部、58a:必要在庫量
60:コンピュータ、62:インターネット、64:サーバ(コンピュータ)
66:所定のプログラム、68:USBメモリ