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特許7638688ガス分離回収装置、ガス分離回収方法及びガス分離回収システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-21
(45)【発行日】2025-03-04
(54)【発明の名称】ガス分離回収装置、ガス分離回収方法及びガス分離回収システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 5/00 20060101AFI20250225BHJP
   B01D 53/64 20060101ALI20250225BHJP
   B01D 53/68 20060101ALI20250225BHJP
   B01D 53/70 20060101ALI20250225BHJP
   B01D 53/75 20060101ALI20250225BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20250225BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20250225BHJP
【FI】
B01D5/00 Z ZAB
B01D53/64
B01D53/68 100
B01D53/68 200
B01D53/70
B01D53/75
C23C16/44 E
H01L21/31 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020204295
(22)【出願日】2020-12-09
(65)【公開番号】P2022091451
(43)【公開日】2022-06-21
【審査請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 秀治
(72)【発明者】
【氏名】向 庸佑
【審査官】田名部 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-159118(JP,A)
【文献】特開昭62-056572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 1/00 - 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス利用設備から排ガスとして排出される、沸点が異なる3種以上の成分を含む混合ガスから、目的の成分を分離する方法であって、
流路内の前記混合ガスを冷却して、前記成分のうち低沸点成分をガスとして分離し、それ以外の成分を前記流路内に凝縮する、第1分離工程と、
前記第1分離工程の後、冷却を停止し、前記流路内に凝縮した成分を気相と液相とに分離する、第2分離工程と、を含み、
前記第2分離工程が蒸留による分離工程であるガス分離回収方法。
【請求項2】
前記第2分離工程において、前記液相を加熱する、請求項1に記載のガス分離回収方法。
【請求項3】
前記混合ガスに含まれるいずれか1種の成分を回収して貯留する、請求項1又は2に記載のガス分離回収方法。
【請求項4】
回収した成分を前記ガス利用設備に供給する、請求項3に記載のガス分離回収方法。
【請求項5】
前記第2分離工程において、前記気相として分離される成分が、六フッ化タングステン、六フッ化モリブデン、二塩化二酸化モリブデン、五塩化モリブデン、ジシラン、トリシラン、三塩化ホウ素、四塩化ケイ素、トリクロロシラン、ジクロロシラン、及びメチルトリクロロシランのいずれかである、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のガス分離回収方法。
【請求項6】
前記混合ガスが、窒素、六フッ化タングステン、及びフッ化水素を含み、
前記六フッ化タングステンを分離する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のガス分離回収方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のガス分離回収方法に用いることを特徴とするガス分離回収装置であって、
冷却機構及び加熱機構を備えた熱交換部を備え、
前記熱交換部内の空間を前記冷却機構によって冷却することで前記第1分離工程を行い、
前記加熱機構によって前記熱交換部内の空間を加熱することで、前記熱交換部の液相を気化させて上昇させ、前記熱交換部の気相を再液化させて下降させて蒸留を行うことによって前記第2分離工程を行うガス分離回収装置。
【請求項8】
沸点が異なる3種以上の成分を含む混合ガスを排ガスとして排出する、1以上のガス利用設備と、
前記排ガスに含まれる成分を無害化する除害装置と、
前記ガス利用設備と前記除害装置との間に位置する、1以上の排ガス経路と、
請求項7に記載のガス分離回収装置と、を備え、
前記ガス分離回収装置が配設される前記排ガス経路を1以上有する、ガス分離回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス分離回収装置、ガス分離回収方法及びガス分離回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造プロセスには、成膜工程やエッチング工程といった様々な工程がある。これらの工程を実施する装置(以下、単に「処理装置」と称する)では、供給されるガスの大部分が未反応のままポンプを介して排出される。特に成膜工程では、処理装置に供給されるガスの1%程度しか薄膜形成に消費されず、残りの99%以上が排気ガスとして排出される。
【0003】
近年、半導体の微細化・三次元化が進展するに伴い、貴重なガスをより大量に利用する処理が増えつつあり、経済的また持続可能な社会的観点から、有用なガス成分の回収が広く求められている。特に、タングステン薄膜の形成に用いられる六フッ化タングステン(WF)は、近年著しく需要が伸びているが、利用効率がより低いため、この傾向が顕著である。
【0004】
ところで、半導体の製造プロセスでは、原料ガスを含む複数種のガスが処理装置の直前で混合された後に処理装置で利用され、処理装置内では、化学反応により所定の薄膜が形成されると同時に反応副生物が生成される。また、副生成物を含むガスを処理装置から排気ガスを排出するポンプには、バラストと呼ばれる窒素ガスが使用される場合がある。したがって、半導体の製造プロセスにおいて、処理装置からポンプを介して排出されるガス(以下、単に「排ガス」と称する)には、未反応の原料ガス、反応副生物のガス、及び窒素ガスといった、少なくとも3種以上の成分が含まれる。
【0005】
このような排ガス中に含まれる有用なガス成分を再利用するためには、3種以上の成分を含む混合ガスから、目的の成分を分離(単離)する必要がある。例えば、目的の成分がキセノンやヘリウムのような希ガスであれば、非常に揮発性が高く、不活性であるために分離が容易である。特許文献1には、吸着技術を活用した希ガスの分離技術が開示されている。
【0006】
一方、目的の成分が六フッ化タングステンのように反応性が高いガスについても、排ガス中から未反応ガスを回収して再利用する方法が検討されている。特許文献2には、半導体の製造プロセスにおいて、処理装置の二次側において未反応の六フッ化タングステンを回収して再利用する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第4652860号公報
【文献】特開2014-159630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に開示された技術は、半導体の製造プロセスにおいて、処理装置の二次側で未反応の六フッ化タングステンを回収するものの、排ガス中に含まれる副生成物については考慮されていない。すなわち、特許文献2に開示された技術では、六フッ化タングステンの純度が低いため、処理装置に供給して再利用することは困難であった。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、沸点が異なる3種以上の成分を含む混合ガスから、目的の成分の分離が可能なガス分離回収装置、ガス分離回収方法及びガス分離回収システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用する。
[1] ガス利用設備から排ガスとして排出される、沸点が異なる3種以上の成分を含む混合ガスから、目的の成分を分離する方法であって、
流路内の前記混合ガスを冷却して、前記成分のうち低沸点成分をガスとして分離し、それ以外の成分を前記流路内に凝縮する、第1分離工程と、
前記第1分離工程の後、冷却を停止し、前記流路内に凝縮した成分を気相と液相とに分離する、第2分離工程と、を含み、
前記第2分離工程が蒸留による分離工程であるガス分離回収方法。
[2] 前記第2分離工程において、前記液相を加熱する、[1]に記載のガス分離回収方法。
[3] 前記混合ガスに含まれるいずれか1種の成分を回収して貯留する、[1]又は[2]に記載のガス分離回収方法。
[4] 回収した成分を前記ガス利用設備に供給する、[3]に記載のガス分離回収方法。
[5] 前記第2分離工程において、前記気相として分離される成分が、六フッ化タングステン、六フッ化モリブデン、二塩化二酸化モリブデン、五塩化モリブデン、ジシラン、トリシラン、三塩化ホウ素、四塩化ケイ素、トリクロロシラン、ジクロロシラン、及びメチルトリクロロシランのいずれかである、[1]乃至[4]のいずれかに記載のガス分離回収方法。
[6] 前記混合ガスが、窒素、六フッ化タングステン、及びフッ化水素を含み、
前記六フッ化タングステンを分離する、[1]乃至[5]のいずれかに記載のガス分離回収方法。
[7] [1]乃至[6]のいずれかに記載のガス分離回収方法に用いることを特徴とするガス分離回収装置であって、
冷却機構及び加熱機構を備えた熱交換部を備え、
前記熱交換部内の空間を前記冷却機構によって冷却することで前記第1分離工程を行い、
前記加熱機構によって前記熱交換部内の空間を加熱することで、前記熱交換部の液相を気化させて上昇させ、前記熱交換部の気相を再液化させて下降させて蒸留を行うことによって前記第2分離工程を行うガス分離回収装置。
[8] 沸点が異なる3種以上の成分を含む混合ガスを排ガスとして排出する、1以上のガス利用設備と、
前記排ガスに含まれる成分を無害化する除害装置と、
前記ガス利用設備と前記除害装置との間に位置する、1以上の排ガス経路と、
[7]に記載のガス分離回収装置と、を備え、
前記ガス分離回収装置が配設される前記排ガス経路を1以上有する、ガス分離回収システム。
【発明の効果】
【0011】
本発明のガス分離回収装置、及びガス分離回収方法は、沸点が異なる3種以上の成分を含む混合ガスから、目的の成分を分離できる。
本発明のガス分離回収システムは、沸点が異なる3種以上の成分を含む混合ガスから、目的の成分を分離し、再利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係るガス分離回収装置を示す系統図である。
図2】本発明の実施形態に係るガス分離回収装置の主要部を示す系統図である。
図3】熱交換部として用いるプレート型熱交換器の周辺部の構成を示す模式図である。
図4】熱交換部として用いるプレート型熱交換器の構成を示す模式図である。
図5】本実施形態のガス分離回収方法において、分離、回収、再供給を連続して行う運転をする際のガス分離回収装置の状態を示す系統図である。
図6】本実施形態のガス分離回収方法において、分離、回収、再供給を連続して行う運転をする際のガス分離回収装置の状態を示す系統図である。
図7】本実施形態のガス分離回収方法において、分離、回収、再供給を連続して行う運転をする際のガス分離回収装置の状態を示す系統図である。
図8】本発明の実施形態に係るガス分離回収システムを示す系統図である。
図9】熱交換部として用いるシェルアンドチューブ式熱交換器の周辺部の構成を示す模式図である。
図10】熱交換部として用いるシェルアンドチューブ式熱交換器の他の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について、添付の図面を参照し、実施形態を示して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0014】
<ガス分離回収装置>
先ず、本発明を適用した一実施形態であるガス分離回収装置の構成について、説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るガス分離回収装置を示す系統図である。図2は、本発明の実施形態に係るガス分離回収装置の主要部を示す系統図である。
図1に示すように、本実施形態のガス分離回収装置1は、沸点が異なる3種以上の成分を含む混合ガスを排ガスとして排出するガス利用設備200と、除害装置300との間の排ガス経路L100に位置する。すなわち、ガス分離回収装置1は、排ガス経路L100において、ガス利用設備200の二次側(後段)に位置する。
ガス分離回収装置1は、ガス利用設備200の排ガス中から未使用(未反応)の成分を分離(単離)してガス利用設備200に供給し、不要な成分を除害装置300へ送る。
【0015】
ガス利用設備200は、沸点が異なる3種以上の成分を含む混合ガスを排ガスとして排出するものであれば、特に限定されるものではなく、半導体の製造プロセスにおいて成膜工程やエッチング工程等を実施する装置(処理装置)が挙げられる。処理装置としては、Novellus製「CONCEPT3」、Lam Research社製「ALTUS」、Appplied Materials社製「Centura」等が挙げられる。
【0016】
除害装置300は、排ガスに含まれる有害成分を無害化するものであれば、特に限定されない。除害装置としては、特開2004-33132号公報、特開2005-334755号公報、特許4212746号公報等に記載の除害装置が挙げられる。
【0017】
図2に示すように、本実施形態のガス分離回収装置1は、熱交換部2と、冷却機構3と、加熱機構4と、貯留部5と、減圧装置6と、熱交換部2に接続される経路L1~L4と、貯留部5に接続される経路L5,L6とを備えて概略構成される。
【0018】
図1及び図2に示すように、ガス供給経路L1は、ガス利用設備200とガス分離回収装置1との間に位置するガス配管であり、排ガス経路L100の一部を構成する。すなわち、ガス供給経路L1は、沸点が異なる3種以上の成分を含む混合ガスを熱交換部2に供給する。
【0019】
ガス供給経路L1は分岐経路L1A,L1Bに分岐する。分岐経路L1A,L1Bには、それぞれ開閉弁が設けられており、開閉弁の開放状態及び閉塞状態を選択することで流路の切り替えができるように構成されている。
【0020】
分岐経路L1A,L1Bには、開閉弁の二次側に、圧力計8(8A,8B)及び温度計9(9A,9B)がそれぞれ設けられている。
圧力計8(8A,8B)は、熱交換部2(2A,2B)の内側の空間の圧力を示す。
温度計9(9A,9B)は、熱交換部2(2A,2B)の内側の空間の温度を示す。
【0021】
熱交換部2(2A,2B)は、内側に1つ以上の空間を有する。熱交換部2の内側の空間は、ガス供給経路L1と連通する。具体的には、熱交換部2Aは分岐経路L1Aと、熱交換部2Bは分岐経路L1Bと、それぞれ接続される。
【0022】
熱交換部2(2A,2B)の内側の空間は、混合ガス中に含まれる低沸点成分(大気圧における沸点が0℃未満のものをいう)以外の成分を凝縮するために用いる。したがって、当該空間は、少なくともガス供給経路L1(L1A,L1B)よりも径が大きく、適切な容量を有することが好ましい。
【0023】
また、熱交換部2(2A,2B)の内側の空間は、凝縮した成分を蒸留(精留)によって分離(単離)するために用いる。したがって、熱交換部2内の空間は、上方寄りに気相が位置し、下方寄りに液相が位置するように、鉛直方向に適切な長さを有する形状とすることが好ましく、当該空間の長辺が鉛直方向となるように熱交換部2を配置することが好ましい。
【0024】
さらに、熱交換部2(2A,2B)の内側の空間には、蒸留(精留)する際に気液接触を増進する機構が設けられることが好ましい。このような機構としては、熱交換部2(2A,2B)の内壁の表面に設けられる凹凸や、空間内に設置する充填材などが挙げられる。
【0025】
熱交換部2(2A,2B)には、市販の熱交換器を適用できる。熱交換器としては、プレート式熱交換器、シェルアンドチューブ式熱交換器、ジャケット式熱交換器等が挙げられる。
【0026】
ガス排出経路L2は、ガス分離回収装置1と除害装置300との間に位置するガス配管であり、排ガス経路L100の一部を構成する。すなわち、ガス排出経路L2は、ガス分離回収装置1から排出される不要な成分(排ガス)を除害装置300に送る。
【0027】
ガス排出経路L2は、熱交換部2(2A,2B)の空間と連通する。ガス排出経路L2は分岐経路L2A,L2Bに分岐する。具体的には、熱交換部2Aは分岐経路L2Aと、熱交換部2Bは分岐経路L2Bと、それぞれ接続される。
分岐経路L2A,L2Bには、それぞれ開閉弁が設けられており、開閉弁の開放状態及び閉塞状態を選択することで流路の切り替えができるように構成されている。
【0028】
冷却機構3は、熱交換部2(2A,2B)の内側の空間を冷却する。具体的には、ガス供給経路L1から熱交換部2(2A,2B)の内側の空間に混合ガスが供給されている場合、冷却機構3によって空間内の混合ガスが冷却される。
また、冷却機構3は、貯留部5(5A,5B)の内側の空間を冷却する。具体的には、貯留部5(5A,5B)の内側の空間に混合ガスから単離された成分が供給されている場合、冷却機構3によって空間内の成分が冷却される。
【0029】
冷却機構3は、冷却源30、冷媒供給経路L31~L34、冷却部(図示略)及び冷媒排出経路(図示略)を備える。
【0030】
冷却源30は、冷媒の供給源である。冷媒は、混合ガスに含まれる成分であって低沸点成分以外の成分を凝縮する温度まで冷却できるもの(すなわち、大気圧、-120℃において凝固しない流体)であれば特に限定されない。このような冷媒としては、-120℃から20℃の温度に制御された窒素や、Julabo社製「ThermalC2」等が挙げられる。
【0031】
冷媒供給経路L31~L34は、冷却源30からの冷媒を冷却部に供給するための配管であり、熱交換部2A,2B、及び貯留部5A,5Bに位置する冷却部とそれぞれ接続されている。また、冷媒供給経路L31~L34には、それぞれ開閉弁が設けられており、開閉弁の開放状態及び閉塞状態を選択することで流路の切り替えができるように構成されている。
【0032】
冷却部(図示略)は、熱交換部2(2A,2B)および貯留部5(5A,5B)の近傍にそれぞれ位置し、熱交換部2(2A,2B)および貯留部5(5A,5B)の内側の空間をそれぞれ冷却する。
冷却部は、熱交換部2(2A,2B)および貯留部5(5A,5B)の内側の空間を冷却可能であれば、熱交換部2および貯留部5の外側(周囲)に位置してもよいし、熱交換部2および貯留部5の内側の空間内に位置してもよい。
【0033】
冷媒排出経路(図示略)は、使用済み(熱交換済み)の冷媒を冷却部から排出する配管である。使用済みの冷媒は、回収して再度利用してもよい。
【0034】
加熱機構4は、熱交換部2(2A,2B)の内側の空間を加熱する。具体的には、熱交換部2(2A,2B)の内側の空間に低沸点成分以外の成分が凝縮している場合、加熱機構4によって空間内の凝縮成分が加熱される。
また、加熱機構4は、貯留部5(5A,5B)の内側の空間を加熱する。具体的には、貯留部5(5A,5B)の内側の空間に混合ガスから単離された成分が供給されている場合、加熱機構4によって空間内の成分が加熱される。
【0035】
加熱機構4は、加熱源40、熱媒供給経路L41~L44、加熱部(図示略)及び熱媒排出経路(図示略)を備える。
【0036】
加熱源40は、熱媒の供給源である。熱媒は、熱交換部2の空間内に凝固した成分が気液分離する温度まで加熱できるものであれば特に限定されない。このような熱媒としては、25℃から200℃の温度に制御された窒素などの気体や、水、エチレングリコール、Julabo社製「ThermalHL90」などの液体が挙げられる。
【0037】
熱媒供給経路L41~L44は、加熱源40から熱媒を加熱部に供給するための配管であり、熱交換部2A,2B、及び貯留部5A,5Bに位置する加熱部とそれぞれ接続されている。また、熱媒供給経路L41~L44には、それぞれ開閉弁が設けられており、開閉弁の開放状態及び閉塞状態を選択することで流路の切り替えができるように構成されている。
【0038】
加熱部(図示略)は、熱交換部2(2A,2B)および貯留部5(5A,5B)の近傍にそれぞれ位置し、熱交換部2(2A,2B)および貯留部5(5A,5B)の内側の空間をそれぞれ加熱する。
加熱部は、熱交換部2(2A,2B)および貯留部5(5A,5B)の内側の空間を加熱可能であれば、熱交換部2および貯留部5の外側(周囲)に位置してもよいし、熱交換部2および貯留部5の内側の空間内に位置してもよい。
【0039】
ところで、熱交換部2(2A,2B)の内側の空間で固化させた成分は、液化した際に重力にしたがって熱交換部2内の下部に集まる。したがって、加熱部は熱交換部2(2A,2B)の下方寄りに位置することが好ましい。これにより、熱交換部2内の液相部分を加熱して、気化させることができる。気化した成分は、熱交換部2内の上部で再液化するため、熱交換部2内で気液接触が促進され、精留と同様の効果が得られる。なお、熱交換部2が気液接触を増進する機構を有する場合、熱交換部2内で気液接触がさらに促進される。
【0040】
熱媒排出経路(図示略)は、使用済み(熱交換済み)の熱媒を加熱部から排出する配管である。使用済みの熱媒は、回収して再度利用してもよい。
【0041】
加熱機構4は、熱交換部2(2A,2B)内の空間において、凝縮した成分の蒸留(精留)による分離を効果的に行う観点から、熱交換部2(2A,2B)の近傍に追加のヒータを備える構成であってもよい。
【0042】
追加のヒータは、熱交換部2(2A,2B)の下方寄りに配設することが好ましい。これにより、熱交換部2内の液相部分を加熱して、凝縮した成分の蒸留(精留)による分離を促進することができる。
追加のヒータとしては、特に限定されないが、電熱ヒータ、IH(電磁誘導加熱)、ランプヒータ(輻射加熱)等が挙げられる。
【0043】
本実施形態のガス分離回収装置1は、冷却機構3及び加熱機構4のうち、冷却源30及び加熱源40を除いた構成のうち、一部または全部を共有する構成としてもよい。これにより、装置全体を小型化できる。
【0044】
移送経路L3は、熱交換部2A内の空間で単離した成分を貯留部5(5A,5B)に移送するための配管である。
また、移送経路L4は、熱交換部2B内の空間で単離した成分を貯留部5(5A,5B)に移送するための配管である。
【0045】
移送経路L3の基端は、熱交換部2Aと接続されている。移送経路L3の先端は、分岐経路L3A,L3Bに分岐しており、分岐経路L3Aが貯留部5Aに、分岐経路L3Bが貯留部5Bにそれぞれ接続されている。分岐経路L3A,L3Bには、それぞれ開閉弁が設けられており、開閉弁の開放状態及び閉塞状態を選択することで流路の切り替えができるように構成されている。
【0046】
移送経路L4の基端は、熱交換部2Bと接続されている。移送経路L4の先端は、分岐経路L4A,L4Bに分岐しており、分岐経路L4Aが貯留部5Aに、分岐経路L4Bが貯留部5Bにそれぞれ接続されている。分岐経路L4A,L4Bには、それぞれ開閉弁が設けられており、開閉弁の開放状態及び閉塞状態を選択することで流路の切り替えができるように構成されている。
【0047】
なお、本実施形態では、移送経路L3,L4の基端が熱交換部2(2A,2B)と直接接続されている態様を一例として説明したが、これに限定されない。移送経路L3、L4は、それぞれの先端が貯留部5(5A,5B)と接続されていればよく、基端は熱交換部2(2A,2B)に接続されるガス経路と接続されていてもよい。すなわち、移送経路L3,L4は、ガス供給経路L1又はガス排出経路L2から分岐していてもよい。この場合であっても、移送経路L3,L4は、ガス供給経路L1又はガス排出経路L2を介して、熱交換部2(2A,2B)内の空間で単離した成分を貯留部5(5A,5B)に移送できる。
【0048】
貯留部5(5A,5B)は、熱交換部2(2A,2B)内の空間で単離した、混合ガスに含まれるいずれか1種の成分を貯留する。貯留部5A,5Bの内側の空間は、移送経路L3,L4を介して、熱交換部2A,2B内の空間とそれぞれ連通している。
【0049】
排気経路L5は、熱交換部2(2A,2B)内の空間で単離した成分を貯留部5(5A,5B)に移送する前に、熱交換部2(2A,2B)内の空間から吸引した気相部分を、ガス排出経路L2を介して排出するための配管である。
【0050】
排気経路L5の基端は、分岐経路L5A,L5Bに分岐しており、分岐経路L5Aが貯留部5Aに、分岐経路L5Bが貯留部5Bにそれぞれ接続されている。排気経路L5の先端は、ガス排出経路L2と接続されている。分岐経路L5A,L5Bには、それぞれ開閉弁が設けられており、開閉弁の開放状態及び閉塞状態を選択することで流路の切り替えができるように構成されている。
【0051】
減圧装置6は、排気経路L5に位置する。減圧装置6を運転することにより、排気経路L5(L5A,L5B)、貯留部5(5A,5B)、移送経路L3,L4を介して、熱交換部2(2A,2B)内の空間から気相部分を吸引して、ガス排出経路L2に排出できる。
減圧装置6は、特に限定されるものではなく、真空ポンプ、ベンチュリ管等を用いることができる。
【0052】
返送経路L6は、貯留部5(5A,5B)内に貯留する成分をガス利用設備200に供給(返送)するための配管である。
返送経路L6の基端は、分岐経路L6A,L6Bに分岐しており、分岐経路L6Aが貯留部5Aに、分岐経路L6Bが貯留部5Bにそれぞれ接続されている。返送経路L6の先端は、ガス利用設備200と接続されている。分岐経路L6A,L6Bには、それぞれ開閉弁が設けられており、開閉弁の開放状態及び閉塞状態を選択することで流路の切り替えができるように構成されている。
【0053】
分岐経路L6A,L6Bには、開閉弁の一次側に、圧力計10(10A,10B)及び温度計11(11A,11B)がそれぞれ設けられている。
圧力計10(10A,10B)は、貯留部5(5A,5B)の内側の空間の圧力を示す。
温度計11(11A,11B)は、貯留部5(5A,5B)の内側の空間の温度を示す。
【0054】
本実施形態のガス分離回収装置1では、2つの熱交換部2A,2B、2つの貯留部5A,5B、及び分岐した各経路L1~L6を備えており、これらを適切なタイミングで切り替えることによって連続運転が可能となるように構成されている。
【0055】
(熱交換部)
次に、本実施形態のガス分離回収装置1を構成する熱交換部2として、プレート型熱交換器を適用する場合について、説明する。
図3は、本実施形態のガス分離回収装置1を構成するプレート型熱交換器20の周辺部の構成を示す模式図である。また、図4は、プレート型熱交換器20の構成を示す模式図である。
【0056】
図3に示すように、プレート型熱交換器20には、端子2a~2dが設けられており、上方寄りの端子2aにはガス供給経路L1が、下方寄りの端子2bにはガス排出経路L2が、それぞれ接続されている。
同様に、下方寄りの端子2cには冷却源30と連通する供給経路L30が、上方寄りの端子2dには加熱源40と連通する供給経路L40が、それぞれ接続されている。なお、供給経路L30及び供給経路L40は、いずれも冷媒と熱媒の供給経路として共有されている。
移送経路L3は、ガス供給経路L1から分岐し、移送経路L3には背圧弁13が位置する。
貯留部5には、移送経路L3と返送経路L6とが接続されている。
排気経路L5は、返送経路L6から分岐し、排気経路L5には減圧装置6として真空ポンプが配置されている。
プレート型熱交換器20の下方寄りには、加熱ヒータ7が配設されている。
【0057】
プレート型熱交換器20は、図4(a)に示すように、2以上の熱交換プレート21と2以上の熱交換プレート22とを有し、熱交換プレート21と熱交換プレート22とが交互に重なった積層構造となっている。また、プレート型熱交換器20は、熱交換プレート21,22の長軸が鉛直方向となるように配置されており、熱交換プレート21と熱交換プレート22との重なり方向が水平方向となっている。
【0058】
熱交換プレート21は、それぞれ内側に空間を有する。熱交換プレート21の内側の空間には、混合ガスが供給される。すなわち、プレート型熱交換器20は、混合ガスが供給される2以上の空間を有する。
熱交換プレート21は、端子2a,2bとそれぞれ連通する。これにより、プレート型熱交換器20では、端子2aから供給された混合ガスが分岐して複数の熱交換プレート21に供給された後、複数の熱交換プレート21から再び合流して端子2bから排出される。
【0059】
熱交換プレート22は、それぞれ内側に空間を有する。熱交換プレート22の内側の空間には、冷却源30からの冷媒または加熱源40からの熱媒が供給される。すなわち、熱交換プレート22は、冷却機構3の冷却部、及び加熱機構4の加熱部を構成する。
熱交換プレート22は、それぞれ熱交換プレート21の間に配置される。
熱交換プレート22は、端子2c,2dとそれぞれ連通する。
【0060】
なお、本発明の技術範囲は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記プレート型熱交換器20では、熱交換プレート21,22の2種類を有し、熱交換プレート22が冷却機構3の冷却部、及び加熱機構4の加熱部を兼ねる構成を一例として説明したが、これに限定されない。3種類の熱交換プレートを有し、冷却機構3の冷却部、及び加熱機構4の加熱部が独立した熱交換プレートを使用する構成であってもよい。
【0061】
また、プレート型熱交換器20では、混合ガス中に含まれる成分に応じて、各熱交換プレート21,22の枚数、サイズを適宜選択してもよい。これにより、混合ガス中に含まれる任意成分を適切に単離して回収できる(高い回収率が得られる)。
【0062】
<ガス分離回収方法>
次に、本発明のガス分離回収方法について、図面を参照しながら説明する。
本発明のガス分離回収方法は、図1に示すように、ガス利用設備200から排ガスとして排出される、沸点が異なる3種以上の成分を含む混合ガスから、目的の成分を分離(単離)する方法である。
また、本発明のガス分離回収方法は、混合ガスに含まれるいずれか1種の成分を回収して貯留部5(5A,5B)に貯留する。
さらに、本発明のガス分離回収方法は、回収した成分をガス利用設備200に供給する。
【0063】
混合ガスは、沸点が異なる3種以上の成分を含む。
混合ガスは、低沸点成分を1種以上、低沸点成分以外の成分(凝縮成分)を2種以上含み、低沸点成分を1種、沸点が異なる凝縮成分を2種の、計3種の成分を含むものが好ましい。
【0064】
低沸点成分は、大気圧における沸点が0℃未満のものであればよく、-40℃未満が好ましく、-120℃未満がより好ましい。
このような低沸点成分としては、キャリアガスとして一般的に用いられる成分が挙げられ、具体的には、窒素、水素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素が挙げられる。
【0065】
低沸点成分以外の成分(凝縮成分)は、大気圧における沸点が-70~200℃の範囲であればよく、-20~90℃の範囲が好ましく、0~80℃の範囲がより好ましい。
また、2種の凝縮成分の沸点の差は、60℃以上あればよく、100℃以上が好ましく、190℃以上がより好ましい。
【0066】
このような凝縮成分としては、半導体の製造プロセスにおいて薄膜形成等に用いる原料ガスが挙げられ、具体的には、六フッ化タングステン、六フッ化モリブデン、二塩化二酸化モリブデン、五塩化モリブデン、ジシラン、トリシラン、三塩化ホウ素、四塩化ケイ素、トリクロロシラン、ジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、が挙げられる。
また、凝縮成分としては、半導体の製造プロセスにおいて薄膜形成の際に生成する副生成物が挙げられ、具体的には、フッ化水素、塩化水素、四フッ化ケイ素が挙げられる。
【0067】
本発明のガス分離回収方法は、流路内の混合ガスを冷却して、混合ガス中に含まれる成分のうち低沸点成分をガスとして分離し、それ以外の成分を流路内に凝縮する、第1分離工程と、第1分離工程の後、冷却を停止し、流路内に凝縮した成分を気相と液相とに分離する、第2分離工程と、を含む。
【0068】
(第1分離工程)
第1分離工程では、流路内の混合ガスを冷却して、混合ガス中に含まれる成分のうち低沸点成分をガスとして分離し、それ以外の成分を流路内に凝縮する。
具体的には、図1に示すように、先ず、ガス供給経路L1から熱交換部2への混合ガスの供給を開始する。この際、冷却機構3を用いて、熱交換部2の内側の空間を混合ガス中に含まれる低沸点成分の沸点よりも高く、低沸点成分以外の成分の沸点よりも低い温度に冷却する。
これにより、熱交換部2の内側の空間に低沸点成分以外の成分が凝縮し、低沸点成分が熱交換部2から排出される。
【0069】
ここで、低沸点成分が目的の成分である場合、ガス排出経路L2の開閉弁を閉塞状態とし、移送経路L3(あるいはL4)の開閉弁を開放状態とする。これにより、熱交換部2から排出された低沸点成分は、移送経路L3(あるいはL4)を介して貯留部5へ移送され、貯留部5に回収される。
【0070】
一方、低沸点成分が目的の成分でない場合、ガス排出経路L2の開閉弁を開放状態とし、移送経路L3(あるいはL4)の開閉弁を閉塞状態とする。これにより、熱交換部2から排出された低沸点成分は、ガス排出経路L2を介して除害装置300へ移送される。
【0071】
(第2分離工程)
第2分離工程では、第1分離工程の後、冷却を停止し、流路内に凝縮した成分を気相と液相とに分離する。
具体的には、先ず、ガス供給経路L1から熱交換部2への混合ガスの供給を停止する。次いで、冷却機構3による熱交換部2の冷却を停止する。
これにより、熱交換部2の内側の空間に凝縮した成分(凝縮成分)の一部が蒸発し、気相と液相とに分離する。
【0072】
ここで、熱交換部2内の下方寄りに位置する液相は、その一部が気化して熱交換部2内を上昇する上昇ガスとなる。一方、熱交換部2内の上方寄りに位置する気相は、その一部が再液化して熱交換部2内を下降する下降液となる。すなわち、熱交換部2内における気液接触により、凝縮成分中に含まれる成分のうち、より低沸点の成分が気相側に濃縮され、より高沸点の成分が液相側に濃縮される。
【0073】
第2分離工程では、加熱機構4を用いて、熱交換部2の内側の空間を加熱することが好ましく、熱交換部2の下方寄りの部分(すなわち、液相部分)を加熱することが好ましい。これにより、熱交換部2内における気液接触を促進し、気相側及び液相側に各成分を高濃度に濃縮できる。
【0074】
ここで、気相側に濃縮された成分が目的の成分である場合、先ず、ガス排出経路L2の開閉弁を閉塞状態とし、移送経路L3(あるいはL4)及び排気経路L5の開閉弁を開放状態として減圧装置6を運転する。これにより、熱交換部2内の気相成分に残留する低沸点成分がガス排出経路L2を介して除害装置300へ移送される。
次に、排気経路L5及び返送経路L6の開閉弁を閉塞状態とする。これにより、熱交換部2内の気相成分は、移送経路L3(あるいはL4)を介して貯留部5へ移送され、貯留部5に回収される。
また、冷却機構3を用いて貯留部5を冷却することで、分離(単離)した成分を貯留部5内で液体状態又は固体状態で保管できる。
【0075】
一方、気相側に濃縮された成分が目的の成分でない場合、ガス排出経路L2の開閉弁を開放状態とし、移送経路L3(あるいはL4)の開閉弁を閉塞状態とする。これにより、熱交換部2から排出された成分は、ガス排出経路L2を介して除害装置300へ移送される。
【0076】
液相側に濃縮された成分が目的の成分である場合、先ず、ガス排出経路L2の開閉弁を開放状態とし、移送経路L3(あるいはL4)の開閉弁を閉塞状態として、熱交換部2内の気相成分を排出し、ガス排出経路L2を介して除害装置300へ移送する。次いで、ガス排出経路L2の開閉弁を閉塞状態とし、移送経路L3(あるいはL4)の開閉弁を開放状態とした後、加熱機構4を用いて液相を蒸発させる。これにより、熱交換部2内の液相成分は、移送経路L3(あるいはL4)を介して貯留部5へ移送され、貯留部5に回収される。
また、冷却機構3を用いて貯留部5を冷却することで、分離(単離)した成分を貯留部5内で液体状態又は固体状態で保管できる。
なお、熱交換部2の下方寄りに液相の抜き出し用の経路を有する場合、液体として貯留部5に移送してもよい。
【0077】
一方、液相側に濃縮された成分が目的の成分でない場合、ガス排出経路L2の開閉弁を開放状態とし、移送経路L3(あるいはL4)の開閉弁を閉塞状態とした後、加熱機構4を用いて液相を蒸発させ、ガス排出経路L2を介して除害装置300へ移送してもよい。
また、熱交換部2の下方寄りに液相の抜き出し用の経路を有する場合、液体のまま熱交換部2から排出してもよい。
【0078】
(再供給工程)
再供給工程では、混合ガスから分離(単離)して貯留部5に貯留する成分を、ガス利用設備200に返送する。
具体的には、先ず、移送経路L3(あるいはL4)の開閉弁を閉塞状態とし、返送経路L6の開閉弁を開放状態とする。これにより、貯留部5に回収した成分は、返送経路L6を介してガス利用設備200に供給される。
なお、回収した成分が貯留部5内で液体状態又は固体状態で保管されている場合、加熱機構4を用いて貯留部5を加熱することで、回収した成分を気体(ガス)としてガス利用設備200に供給できる。
【0079】
なお、本実施形態のガス分離回収方法では、第2分離工程において、気相として分離される成分が、六フッ化タングステン、六フッ化モリブデン、二塩化二酸化モリブデン、五塩化モリブデン、ジシラン、トリシラン、三塩化ホウ素、四塩化ケイ素、トリクロロシラン、ジクロロシラン、及びメチルトリクロロシランのいずれかであることが好ましい。これらは、薄膜形成装置等のガス利用設備200において原料として用いられる成分であり、混合ガス中から単離、精製が容易な気相側に濃縮することで、高濃度のガスとして回収して返送することができる。
【0080】
(熱交換器を用いた方法)
次に、熱交換部2としてプレート型熱交換器20を用いた際のガス分離回収方法について、図3及び図4を参照しながら説明する。
【0081】
「第1分離工程」
図4(a)に示すように、熱交換プレート22を冷却機構3の冷却部として用いる。
具体的には、端子2cを介して熱交換プレート22に冷媒を供給する。供給された冷媒は、複数の熱交換プレート22に分岐して供給された後、複数の熱交換プレート22から再び合流して端子2dから排出される。
このとき、プレート型熱交換器20では、混合ガスと冷媒との向流による熱交換が促進され、混合ガス中に含まれる低沸点成分が熱交換プレート21から端子2bを介してガス排出経路L2に排出され、低沸点成分以外の成分が熱交換プレート21内にそれぞれ凝縮する。
【0082】
「第2分離工程」
先ず、熱交換プレート22への冷媒の供給を停止する。これにより、熱交換プレート21内に凝縮した低沸点成分以外の成分(凝縮成分)は、その一部が蒸発する。図4(b)に示すように、熱交換プレート21の内側の空間には、上方寄りに気相21Aが、下方寄りに液相21Bがそれぞれ位置する。
【0083】
次に、熱交換プレート21内に気相21Aと液相21Bとが存在する状態で、熱交換プレート22を加熱機構4の加熱部として用いる。
具体的には、端子2dを介して熱交換プレート22に熱媒を供給する。供給された熱媒は、複数の熱交換プレート22に分岐して供給された後、複数の熱交換プレート22から再び合流して端子2cから排出される。
このとき、プレート型熱交換器20では、熱交換プレート21内が熱媒によって加熱され、液相21Bが気化して熱交換プレート21内を上昇し、気相21Aが再液化して熱交換プレート21内を下降する。これにより、凝縮成分中に含まれる成分のうち、低沸点成分が気相21A側に濃縮され、高沸点成分が液相21B側に濃縮される。
【0084】
第2分離工程では、さらに加熱ヒータ7を用いてもよい。図3に示すように、加熱ヒータ7は、プレート型熱交換器20の下方寄りに配設されているため、熱交換プレート21内の液相21Bをより効果的に加熱できる。これにより、熱交換プレート21内の凝縮成分の分離を促進できる。
【0085】
次に、図3に示すように、熱交換プレート21内の気相21Aは、端子2aから抜き出された後、ガス供給経路L1及び移送経路L3を介して貯留部5に貯留される。
一方、熱交換プレート21内の液相21Bは、端子2bから抜き出すことができる。
【0086】
(連続供給方法)
次に、本発明を適用した一実施形態であるガス分離回収方法について、分離(単離)・回収した成分をガス利用設備へ連続して供給する場合を説明する。
図5図7は、本実施形態のガス分離回収方法において、分離、回収、再供給を連続して行う運転する際のガス分離回収装置の状態を示す系統図である。なお、図5図7中、白抜きの開閉弁は開放状態を示し、黒塗りの開閉弁は閉塞状態を示す。
以下、図1及び図5図7に示すように、2つの熱交換部2A,2B、及び2つの貯留部5A,5Bを有するガス分離回収装置1を用い、窒素、六フッ化タングステン、及びフッ化水素を含む混合ガスから六フッ化タングステンを分離する場合を一例として説明する。
【0087】
ガス分離回収装置1を用いて、混合ガス中から六フッ化タングステンを分離(単離)して、ガス利用設備200へ連続して供給するには、経路L1~L6、冷媒供給経路L31~L34、及び熱媒供給経路L41~L44に位置する開閉弁の開閉状態を制御し、各経路を選択することで、2つの熱交換部2A,2B、及び2つの貯留部5A,5Bを切り替えながら運転する。
なお、冷媒として-120℃の窒素ガスを、熱媒として35℃の窒素ガスをそれぞれ用いる。
これにより、混合ガスに含まれる窒素は、低沸点成分として第1分離工程において熱交換部2から排出経路L2を介して除害装置300へ送られる。
また、混合ガスに含まれる六フッ化タングステンは、第2分離工程において熱交換部2の気相側に濃縮され、移送経路L3(L4)を介して貯留部5に貯留される。
一方、混合ガスに含まれるフッ化水素は、第2分離工程において熱交換部2の液相側に濃縮され、いずれかの手段によって熱交換部2から排出される。
【0088】
「運転状態A」
任意の時間におけるガス分離回収装置1の運転状態Aでは、図5に示すように、ガス供給経路L1A、ガス排出経路L2A、移送経路L4A、排気経路L5A、移送経路L6Bに位置する開閉弁が開放状態であり、これらの経路が選択されている。また、冷媒供給経路L31,L33、及び熱媒供給経路L42,L43に位置する開閉弁が開放状態であり、これらの経路が選択されている。
これにより、ガス分離回収装置1の運転状態Aでは、熱交換部2Aにおいて第1分離工程が実施され、熱交換部2Bにおいて第2分離工程が実施されており、熱交換部2Bから貯留部5Aへ六フッ化タングステンが移送されている間、貯留部5Bからガス利用設備200へ六フッ化タングステンが供給されている(再供給工程)。
【0089】
運転状態Aの開始から所要の時間が経過した際、熱交換部2Aにおける第1分離工程、及び熱交換部2Bにおける第2分離工程の一方又は両方が終了する。これにより、ガス分離回収装置1において、運転状態Aから運転状態Bへの移行(すなわち、熱交換部2A,2Bの切り替え)を行う。
【0090】
ここで、熱交換部2Aにおける第1分離工程の終点は、ガス供給経路L1Aに位置する圧力計8Aによって検知できる。具体的には、圧力計8Aによって熱交換部2A内の圧力値を計測し、熱交換部2A内が凝縮成分によって閉塞することで圧力値が大きく上昇した地点を第1分離工程の終点とする。
【0091】
一方、熱交換部2Bにおける第2分離工程の終点は、返送経路L6Aに位置する圧力計10A又は温度計11Aによって検知できる。具体的には、圧力計10Aによって貯留部5A内の圧力値を計測し、圧力値の下降が終了した地点を第2分離工程の終点とする。また、温度計11Aによって貯留部5A内の温度を計測し、温度の低下が終了した地点を第2分離工程の終点とする。
【0092】
「運転状況B」
次に、ガス分離回収装置1の運転状態Bでは、図6に示すように、ガス供給経路L1B、ガス排出経路L2B、移送経路L3A、排気経路L5A、移送経路L6Bに位置する開閉弁が開放状態であり、これらの経路が選択されている。また、冷媒供給経路L32,L33、及び熱媒供給経路L41,L43に位置する開閉弁が開放状態であり、これらの経路が選択されている。
これにより、ガス分離回収装置1の運転状態Bでは、熱交換部2Aにおいて第2分離工程が実施され、熱交換部2Bにおいて第1分離工程が実施されており、熱交換部2Aから貯留部5Aへ六フッ化タングステンが移送されている間、貯留部5Bからガス利用設備200へ六フッ化タングステンが供給されている(再供給工程)。
【0093】
運転状態Bの開始から所要の時間が経過した際、貯留部5Aへの六フッ化タングステンの移送、及び貯留部5Bから六フッ化タングステンの供給(再供給工程)の一方又は両方が終了する。これにより、ガス分離回収装置1において、運転状態Bから運転状態Cへの移行(すなわち、貯留部5A,5Bの切り替え)を行う。
【0094】
ここで、貯留部5Aへの六フッ化タングステンの移送の終点は、返送経路L6Aに位置する圧力計10A又は温度計11Aによって検知できる。具体的には、圧力計10Aによって貯留部5A内の圧力値を計測し、圧力値が所定の圧力以上に到達した地点を終点とする。また、温度計11Aによって貯留部5A内の温度を計測し、所定の速度異常で温度上昇が観測された地点を終点とする。
【0095】
一方、貯留部5Bにおける再供給工程の終点は、返送経路L6Bに位置する圧力計10B又は温度計11Bによって検知できる。具体的には、圧力計10Bによって貯留部5B内の圧力値を計測し、圧力値が所定の圧力以下に到達した地点を再供給工程の終点とする。また、温度計11Bによって貯留部5B内の温度を計測し、所定の速度以上で温度低下が観測された地点を再供給工程の終点とする。
【0096】
「運転状況C」
次に、ガス分離回収装置1の運転状態Cでは、図7に示すように、ガス供給経路L1B、ガス排出経路L2B、移送経路L3B、排気経路L5B、移送経路L6Aに位置する開閉弁が開放状態であり、これらの経路が選択されている。また、冷媒供給経路L32,L34、及び熱媒供給経路L41,L44に位置する開閉弁が開放状態であり、これらの経路が選択されている。
これにより、ガス分離回収装置1の運転状態Cでは、熱交換部2Aにおいて第2分離工程が実施され、熱交換部2Bにおいて第1分離工程が実施されており、熱交換部2Aから貯留部5Bへ六フッ化タングステンが移送されている間、貯留部5Aからガス利用設備200へ六フッ化タングステンが供給されている(再供給工程)。
【0097】
運転状態Cの開始から所要の時間が経過した際、熱交換部2Aにおける第2分離工程、及び熱交換部2Bにおける第1分離工程の一方又は両方が終了する。これにより、ガス分離回収装置1において、運転状態Cから運転状態A’への移行(すなわち、熱交換部2A,2Bの切り替え)を行う。
【0098】
以上説明したように、本実施形態のガス分離回収方法では、経路L1~L6、冷媒供給経路L31~L34、及び熱媒供給経路L41~L44に位置する開閉弁の開閉状態を選択し、2つの熱交換部2A,2B、及び2つの貯留部5A,5Bを切り替えながら運転することで、混合ガス中から六フッ化タングステンを分離(単離)して、ガス利用設備200へ連続して供給できる。
【0099】
<ガス分離回収システム>
次に、本発明を適用した一実施形態であるガス分離回収システムの構成について、説明する。図8は、本発明の実施形態に係るガス分離回収システムを示す系統図である。
図8に示すように、本実施形態のガス分離回収システム100は、沸点が異なる3種以上の成分を含む混合ガスを排ガスとして排出する、1以上のガス利用設備200A,200B・・・200Nと、排ガスに含まれる成分を無害化する除害装置300と、ガス利用設備200A,200B・・・200Nと除害装置300との間に位置する、1以上の排ガス経路L100A,L100B・・・L100Nと、ガス分離回収装置1A,1B・・・1Nとを備えて概略構成される。
【0100】
本実施形態のガス分離回収システムによれば、ガス利用設備200と除害装置300との間に位置し、ガス利用設備200の二次側にガス分離回収装置1が配設された排ガス経路L100を1系統以上備える構成であり、ガス分離回収装置1によってガス利用設備200から排出された混合ガスから任意の成分を分離・回収してガス利用設備200へ再供給することができるため、ガス利用設備200でのガス使用量を低減できるとともに、除害装置300での処理量を低減できる。
【0101】
以上説明したように、本実施形態のガス分離回収装置1及びガス分離回収方法によれば、沸点が異なる3種以上の成分を含む混合ガスから、目的の成分を分離できる。
【0102】
また、本実施形態のガス分離回収装置1及びガス分離回収方法によれば、内側に空間を有する熱交換部2と、冷却機構3とを備え、冷却機構3によって熱交換部2A内の空間を冷却することで、混合ガス中に含まれる低沸点成分とそれ以外の成分(凝縮成分)とを分離できる。さらに、加熱機構4を備え、加熱機構4によって熱交換部2A内の凝縮成分を加熱することで、熱交換部2A内の空間を蒸留塔として機能させることができるため、目的の成分を高い純度に濃縮できる。これにより、熱交換部2A内の凝縮成分を精製する設備が不要となり、装置を小型化できる。
【0103】
さらに、本実施形態のガス分離回収装置1及びガス分離回収方法によれば、キャリアガス(窒素)、反応性の高い原料ガス(六フッ化タングステン)、及び副生成物等の高沸点不純物(フッ化水素)を含む混合ガスから反応性の高い原料ガス(六フッ化タングステン)を簡便に単離して回収し、ガス利用設備200へ連続して再供給できる。
【0104】
本実施形態のガス分離回収システム100によれば、沸点が異なる3種以上の成分を含む混合ガスから、目的の成分を分離し、再利用できる。
また、本実施形態のガス分離回収システム100によれば、ガス分離回収装置1が小型であり、ガス利用設備200の直後(二次側)に設置できるため、混合ガス中に含まれる反応性の高いガスであっても連続して回収し、ガス利用設備200へ再供給できる。
さらに、本実施形態のガス分離回収システム100によれば、ガス利用設備200でのガスの使用量を低減できるため、除害装置300の負荷を低減できる。
【0105】
以上、実施形態を示して本発明のガス分離回収装置1及びガス分離回収方法を説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。上記実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
【0106】
上述した実施形態のガス分離回収装置1では、熱交換部2として市販のプレート型熱交換器20を適用する場合について説明したが、これに限定されない。
熱交換部2として、市販のシェルアンドチューブ式熱交換器を適用してもよい。
図9は、熱交換部2として用いるシェルアンドチューブ式熱交換器20’の周辺部の構成を示す模式図である。
【0107】
図9に示すように、シェルアンドチューブ式熱交換器20’は、混合ガスが供給される縦型容器の内側に、冷媒及び熱媒が供給されるらせん状の配管が配設される構成となっている。
縦型容器には、側壁の上方寄りにガス供給経路L1が、対向する側壁の上方寄りにガス排出経路L2が、それぞれ接続されている。また、縦型容器の内側の空間には、気液接触を増進する機構として充填材12が配設されている。さらに、縦型容器の下方には、縦型容器内の下方に貯留される液相を排出するための排液経路L7が接続されている。
らせん状の配管には、一方の端部が冷却源30及び加熱源40接続されており、他方の端部が冷媒及び熱媒の排出口となっている。なお、らせん状の配管は、冷媒と熱媒の供給経路として共有されている。
移送経路L3は、ガス排出経路L2から分岐し、移送経路L3には背圧弁13が位置する。
貯留部5には、移送経路L3と返送経路L6とが接続されている。
排気経路L5は、返送経路L6から分岐し、排気経路L5には減圧装置6として真空ポンプが配置されている。
縦型容器の側壁の下方寄りには、加熱ヒータ7が配設されている。
【0108】
なお、図9には、熱交換部2として用いるシェルアンドチューブ式熱交換器20’において、縦型容器の内側に混合ガスが供給され、らせん状の配管に冷媒及び熱媒が供給される構成を一例として説明したが、これに限定されない。図10に示すように、シェルアンドチューブ式熱交換器20’において、縦型容器の内側に冷媒及び熱媒が供給され、らせん状の配管に混合ガスが供給される構成であってもよい。
【0109】
図10に示すシェルアンドチューブ式熱交換器20’において、第1分離工程では、縦型容器の内側に冷媒が供給されており、ガス供給経路L1かららせん状の配管に混合ガスを供給する。これにより、らせん状の配管内に低沸点成分以外の成分が凝縮し、らせん状の配管からガス排出経路L2へ低沸点成分が排出される(図10(a)を参照)。
また、第2分離工程では、ガス供給経路L1かららせん状の配管への混合ガスの供給を停止し、縦型容器の内側への冷媒の供給を停止する。これにより、らせん状の配管内に凝縮した成分(凝縮成分)の一部が蒸発し、気相成分(図中は、六フッ化タングステン)が移送経路L3に排出される。この際、縦型容器の内側に熱媒を供給することで、らせん状の配管内における気液接触が促進され、気相側及び液相側に各成分が高濃度に濃縮される(図10(b)を参照)。
【0110】
また、上述した実施形態のガス分離回収装置1では、熱交換部2及び貯留部5をいずれも2つずつ備える構成を一例として説明したが、これに限定されない。熱交換部2及び貯留部5は、いずれか一方又は両方が1つである構成であってもよいし、いずれか一方又は両方が3つ以上含む構成であってもよい。
【0111】
また、上述した実施形態のガス分離回収装置1では、熱交換部2及び貯留部5の圧力計及び温度計は、熱交換部2及び貯留部5の一次側に接続された経路に設ける構成を一例として説明が、これに限定されない。圧力計及び温度計は、熱交換部2及び貯留部5の二次側に接続された経路に設ける構成であってもよいし、一次側及び二次側の両方に設ける構成であってもよい。
【実施例
【0112】
以下、検証試験によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0113】
<検証試験1>
熱交換部として図3及び図4に示すプレート型熱交換器20を用いて、混合ガス中に含まれる成分の単離を行った。
(熱交換器)
試験用に用いたプレート型熱交換器は、熱交換プレート10枚からなり、各プレート(チャネル)の流路は、幅42mm、高さ平均2mm、長さ172mmとした。また、混合ガスが流れる熱交換プレートと冷媒が流れる熱交換プレートとが交互に重なっている構造とした。
(混合ガス)
混合ガスの組成は、六フッ化タングステン(WF)が1体積%であり、窒素が99体積%とした。
また、プレート型熱交換器20への混合ガスの供給量は、16slpmの流量とした。
(冷媒)
冷媒は、冷窒素を-80~-115℃に冷却したものを用いた。
(試験方法)
熱交換部に供給する冷媒の温度を変えて、混合ガス中から六フッ化タングステンを単離して回収した。各冷媒温度における、熱交換部内に捕集された1回あたりの六フッ化タングステン量(捕集量)、および供給した六フッ化タングステンの総量に対する捕集された六フッ化タングステン量の比率(捕集率)を、以下の表1に示す。
【0114】
【表1】
【0115】
表1に示すように、熱交換部としてプレート型熱交換器を用いた場合、より低温の冷媒を用いることで、1回あたりの捕集量が増加し、捕集率も向上することを確認した。
【0116】
<検証試験2>
熱交換部として図10に示すシェルアンドチューブ式熱交換器20’を用いて、混合ガス中に含まれる成分の単離を行った。
(熱交換器)
試験用に用いたシェルアンドチューブ式熱交換器は、冷媒が流れる流路の内側に混合ガスが流れる配管を設ける構造とした。混合ガスが流れる配管は、内径3.15mm、長さ3mのチューブ状の構造とした。
(混合ガス)
混合ガスの組成は、六フッ化タングステン(WF)が1体積%であり、窒素が99体積%とした。
また、シェルアンドチューブ式熱交換器20’への混合ガスの供給量は、16slpmの流量とした。
(冷媒)
冷媒は、エチレングリコールを-60~-100℃に冷却したものを用いた。
(試験方法)
熱交換部に供給する冷媒の温度を変えて、混合ガス中から六フッ化タングステンを単離して回収した。各冷媒温度における、熱交換部内に捕集された1回あたりの六フッ化タングステン量(捕集量)、および供給した六フッ化タングステンの総量に対する捕集された六フッ化タングステン量の比率(捕集率)を、以下の表2に示す。
【0117】
【表2】
【0118】
表2に示すように、熱交換部としてシェルアンドチューブ式熱交換器を用いた場合、より低温の冷媒を用いることで、1回あたりの捕集量が減少し、捕集率も向上することを確認した。
【0119】
<検証試験3>
熱交換部として図3及び図4に示すプレート型熱交換器20、および図9に示すシェルアンドチューブ式熱交換器20’を用いて、混合ガス中に含まれる成分の単離を行ない、熱交換部における気液接触の促進の効果について検証した。
【0120】
(プレート型熱交換器)
試験用に用いたプレート型熱交換器は、検証試験1と同じものとした。
熱交換プレートの内側に凹凸を設けない場合(気液接触促進:なし)と、凹凸を設ける場合(気液接触促進:有り)とで、以下の試験を実施した。
(シェルアンドチューブ式熱交換器)
試験用に用いたシェルアンドチューブ式熱交換器は、直径100mm、高さ430mmの円筒管の中に、直径6.2mm、長さ4000mmの配管を巻いて、直径70mm、高さ200mmのコイル状にしたものを内部に有する構造とした。
シェルアンドチューブ式熱交換器は、コイル管の内側に冷媒が流れ、円筒管の内側(コイル管の外側)を混合ガスが流れる構造とした。
シェルアンドチューブ式熱交換器の円筒管の下部を単なる空洞とした場合(気液接触促進:なし)と、円筒管の下部に充填剤を導入した場合(気液接触促進:有り)で、以下の試験を実施した。
(混合ガス)
混合ガスの組成は、六フッ化タングステン(WF)が1体積%であり、フッ化水素が1体積%であり、窒素が98体積%とした。
また、プレート型熱交換器20およびシェルアンドチューブ式熱交換器20’への混合ガスの供給量は、16slpmの流量とした。
(冷媒)
冷媒は、冷窒素を-100℃に冷却したものを用いた。
(加熱方法)
加熱方法は、電熱または35℃に加熱した窒素を用いた。
電熱線を用いた加熱では、熱交換器の全体を加熱した場合(全体加熱)と、熱交換器の下部のみを加熱した場合(一部加熱)で、以下の試験を実施した。
【0121】
(試験方法)
以下の表3に示すように、熱交換器、気液接触促進の有無、及び加熱方法を組み合わせた熱交換部を用い、混合ガス中から六フッ化タングステンを単離して回収した。回収した六フッ化タングステンの純度を、以下の表3に示す。
【0122】
【表3】
【0123】
表3に示すように、熱交換部における気液接触を促進することで、高純度の六フッ化タングステン(WF)ガスが得られることを確認できた。
【0124】
<検証試験4>
熱交換部として図9に示すシェルアンドチューブ式熱交換器20’を用いて、種々の混合ガス中に含まれる任意の成分の単離を行った。
【0125】
(熱交換器)
試験用に用いたシェルアンドチューブ式熱交換器は、検証試験3において、円筒管の下部に充填剤を導入したものを用いた。
(混合ガス)
混合ガスの組成は、以下の表4に示すように、回収対象ガスが1体積%であり、それ以外の成分(他の成分)が99体積%とした。
また、熱交換器20’への混合ガスの供給量は、16slpmの流量とした。
(冷媒)
冷媒は、冷窒素を-100~-30℃に冷却したもの、または常温(25℃)の窒素を用いた。
(加熱方法)
電熱を用い、熱交換器の下部のみを表4に記載の温度(加熱温度)にそれぞれ加熱した。
【0126】
(試験方法)
以下の表4に示すように、冷媒温度および加熱温度を組み合わせた熱交換部を用い、混合ガス中から回収対象ガスを単離して回収した。熱交換部に供給した混合ガスの供給量に対する回収対象ガスの回収率、及び回収対象ガスの純度を、以下の表4に示す。
【0127】
【表4】
【0128】
表4に示すように、種々の混合ガス中に含まれる任意の成分を単離して回収する場合であっても、本発明のガス分離回収装置、及びガス分離回収方法が有用であることを確認できた。
【符号の説明】
【0129】
1・・・ガス分離回収装置
2,2A,2B・・・熱交換部
3・・・冷却機構
4・・・加熱機構
5,5A,5B・・・貯留部
6・・・減圧装置
7・・・加熱ヒータ
8,8A,8B・・・圧力計
9,9A,9B・・・温度計
10,10A,10B・・・圧力計
11,11A,11B・・・温度計
12・・・充填材
13・・・背圧弁
20・・・プレート型熱交換器
20’・・・シェルアンドチューブ式熱交換器
21,22・・・熱交換プレート
21A・・・気相
21B・・・液相
100・・・ガス分離回収システム
200・・・ガス利用設備
300・・・除害装置
L1,L1A,L1B・・・ガス供給経路
L2,L2A,L2B・・・ガス排出経路
L3,L3A,L3B・・・移送経路
L4,L4A,L4B・・・移送経路
L5,L5A,L5B・・・排気経路
L6,L6A,L6B・・・返送経路
L7・・・排液経路
L100・・・排ガス経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10