(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-21
(45)【発行日】2025-03-04
(54)【発明の名称】基板処理方法及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20250225BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
H01L21/302 101C
H01L21/302 101B
(21)【出願番号】P 2020215422
(22)【出願日】2020-12-24
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】箕浦 佑也
(72)【発明者】
【氏名】榎本 隆
【審査官】小▲高▼ 孔頌
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-115498(JP,A)
【文献】特開2016-225436(JP,A)
【文献】国際公開第2011/052354(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0131140(US,A1)
【文献】特開平11-323394(JP,A)
【文献】特開2014-090022(JP,A)
【文献】国際公開第2002/101805(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0119646(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチング対象膜と、前記エッチング対象膜の下層に配置された下地層と、前記エッチング対象膜の上層に配置されたマスクとを少なくとも有する積層膜が形成された基板を準備する工程と、
プラズマによって前記マスクを通じて前記エッチング対象膜をエッチングする工程と、
前記エッチングする工程の後、
前記基板を所望の温度で熱処理する工程と、
前記熱処理する工程の後、前記基板をフッ酸洗浄する工程と、
を有し、
前記マスクと前記下地層の少なくとも一方は遷移金属を含有
し、
前記エッチングする工程で生成され、前記エッチング対象膜及び前記マスクの少なくともいずれかに堆積する、前記遷移金属を含む第1の反応生成物が酸素Oと反応して酸化金属を形成する温度より低い値を第1の温度としたとき、
前記熱処理する工程は、前記基板の所望の温度を、前記第1の温度より低く設定する、
基板処理方法。
【請求項2】
前記熱処理する工程における前記基板の所望の温度は、115℃より低い値である、
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記エッチングする工程で生成され、前記エッチング対象膜に堆積する、ケイ素Siと窒素Nとフッ素Fとを含む第2の反応生成物が加熱分解される温度以上の値を第2の温度としたとき、
前記熱処理する工程は、前記基板の所望の温度を、前記第2の温度以上に設定し、前記第2の反応生成物を除去する、
請求項1又は2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記エッチング対象膜に堆積する
前記第2の反応生成物は、ケイフッ化アンモニウムを含む、
請求項3に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記エッチングする工程は、
前記エッチング対象膜がケイ素Siを含有するときに、窒素N、水素H、及びフッ素Fを含有するガスのプラズマによって前記エッチング対象膜のエッチングを行う、
請求項1~4のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記エッチングする工程は、
前記エッチング対象膜が窒化ケイ素SiNを含有する場合、水素H、及びフッ素Fを含有するガスのプラズマによって前記エッチング対象膜のエッチングを行う、
請求項1~5のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記エッチングする工程で生成され、前記エッチング対象膜に堆積する、窒素Nと水素Hとハロゲンとが含まれる第2の反応生成物が加熱分解される温度以上の値を第2の温度としたとき、
前記熱処理する工程は、前記基板の所望の温度を、前記第2の温度以上に設定し、前記第2の反応生成物を除去する、
請求項1又は2に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記エッチング対象膜に堆積する前記第2の反応生成物は、ハロゲン化アンモニウムである、
請求項7に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記エッチング対象膜に堆積する前記第2の反応生成物は、
前記エッチングする工程で生成されるアンモニウム、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウムの少なくとも一つが含まれる、
請求項7又は8に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記エッチング対象膜は、シリコン酸素含有膜を有し、
前記酸素Oは、前記第1の反応生成物が堆積している前記エッチング対象膜のうち前記シリコン酸素含有膜から供給される、
請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記基板を準備する処理容器内に酸素含有ガスを供給する工程を有し、
前記酸素Oは前記酸素含有ガスから供給される、
請求項2又は10に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記熱処理する工程は、プラズマを用いながら前記基板をアッシングする工程を含む、
請求項1~11のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記アッシングする工程は、前記エッチングする工程において生成される炭素Cとフッ素Fとが含まれる第3の反応生成物を除去する、
請求項12に記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記アッシングする工程によって前記第3の反応生成物が除去可能となる温度以上の値を第3の温度としたとき、
前記アッシングする工程は、前記基板の所望の温度を、前記第3の温度以上に設定し、前記第3の反応生成物を除去する、
請求項13に記載の基板処理方法。
【請求項15】
前記第3の温度は、前記アッシングする工程によって有機膜が除去可能となる温度以上の値である、
請求項14に記載の基板処理方法。
【請求項16】
前記マスクが有機膜であるとき、前記アッシングする工程は、前記有機膜を除去する、
請求項12~15のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項17】
前記第1の温度は、更に、前記エッチング対象膜が熱により変形又は変質する温度より低い値である
請求項2、10、11のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項18】
前記エッチングする工程と前記熱処理する工程とは、
前記基板を大気に曝露することなく実行される、
請求項1~17のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項19】
前記エッチングする工程は、
前記基板の所望の温度を、前記遷移金属のハロゲン化物の蒸気圧曲線が示す温度より低い値に設定する、
請求項1~18のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項20】
前記遷移金属は、タングステン(W)である
請求項1~19のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項21】
処理容器と、基板を載置するステージと、制御部と、を有する基板処理装置であって、
前記制御部は、
エッチング対象膜と、前記エッチング対象膜の下層に配置された下地層と、前記エッチング対象膜の上層に配置されたマスクとを少なくとも有する積層膜が形成された基板を準備する工程と、
プラズマによって前記マスクを通じて前記エッチング対象膜をエッチングする工程と、
前記エッチングする工程の後、
前記基板を所望の温度で熱処理する工程と、
前記熱処理する工程の後、前記基板をフッ酸洗浄する工程と、
を制御し、
前記マスクと前記下地層の少なくとも一方は遷移金属を含有
し、
前記エッチングする工程で生成され、前記エッチング対象膜及び前記マスクの少なくともいずれかに堆積する、前記遷移金属を含む第1の反応生成物が酸素Oと反応して酸化金属を形成する温度より低い値を第1の温度としたとき、
前記熱処理する工程は、前記基板の所望の温度を、前記第1の温度より低く設定する、
基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化シリコン層と窒化シリコン層とが積層された半導体ウェハに高アスペクト比のホールを低温環境下でエッチングする方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。水素含有ガスを用いて窒化シリコンを含有するエッチング対象膜をエッチングする際、反応生成物が発生し、エッチング処理の後にエッチング対象膜の表面や側壁に堆積する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、エッチング工程により堆積した遷移金属を含む反応生成物を除去可能な基板処理方法及び基板処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一の態様によれば、エッチング対象膜と、前記エッチング対象膜の下層に配置された下地層と、前記エッチング対象膜の上層に配置されたマスクとを少なくとも有する積層膜が形成された基板を準備する工程と、プラズマによって前記マスクを通じて前記エッチング対象膜をエッチングする工程と、前記エッチングする工程の後、前記基板を所望の温度で熱処理する工程と、前記熱処理する工程の後、前記基板をフッ酸洗浄する工程と、を有し、前記マスクと前記下地層の少なくとも一方は遷移金属を含有し、前記エッチングする工程で生成され、前記エッチング対象膜及び前記マスクの少なくともいずれかに堆積する、前記遷移金属を含む第1の反応生成物が酸素Oと反応して酸化金属を形成する温度より低い値を第1の温度としたとき、前記熱処理する工程は、前記基板の所望の温度を、前記第1の温度より低く設定する、基板処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0006】
一の側面によれば、エッチング工程により堆積した遷移金属を含む反応生成物を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係る基板処理システムの一例を示す図。
【
図2】実施形態に係る基板処理装置(エッチング及びプラズマアッシング)の一例を示す図。
【
図3】実施形態に係る基板処理装置(ラジカルアッシング)の一例を示す図。
【
図4】実施形態に係る基板に形成された膜構造の一例を示す図。
【
図5】実施形態に係る基板処理方法の一例を示すフローチャート。
【
図6】実施形態に係る基板処理方法の他の例を示すフローチャート。
【
図7】実施形態に係る基板温度に対するエッチングレート及びマスク選択比の一例を示す図。
【
図8】タングステン含有ガスの温度に対する蒸気圧曲線を示す図。
【
図9】実施形態に係るタングステンの残渣の発生の一例を示す図。
【
図10】実施形態に係る有機レジスト塗布膜のアッシングレートと、基板温度との関係を示す図。
【
図11】実施形態に係る基板温度に対するタングステン含有物の残渣、ケイフッ化アンモニウムの残渣、CFポリマーの残渣を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0009】
[基板処理システム]
はじめに、実施形態に係る基板処理システム1の一例について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、実施形態に係る基板処理システム1の一例を示す図である。基板処理システム1では、実施形態に係るエッチング工程と熱処理工程を含む基板処理方法が実行される。ただし、これに限られず、基板処理システム1では、エッチング工程とアッシング工程が実行されてもよい。または、エッチング工程と熱処理工程とアッシング工程を含む基板処理方法が実行されてもよい。
【0010】
基板処理システム1は、処理室211~214と、真空搬送室220と、ロードロック室231,232と、大気搬送室240と、ロードポート251~253と、ゲートバルブ261~268と、制御部270とを有する。
【0011】
処理室211は、基板Wを載置するステージSTを有し、ゲートバルブ261を介して真空搬送室220と接続されている。同様に、処理室212は、基板を載置するステージSTを有し、ゲートバルブ262を介して真空搬送室220と接続されている。処理室213は、基板を載置するステージSTを有し、ゲートバルブ263を介して真空搬送室220と接続されている。処理室214は、基板を載置するステージSTを有し、ゲートバルブ264を介して真空搬送室220と接続されている。処理室211~214内は、所定の真空雰囲気に減圧され、その内部にて基板に所望の処理(エッチング処理、熱処理、アッシング処理等)を施す。なお、処理室211~214における処理のための各部の動作は、制御部270によって制御される。
【0012】
真空搬送室220内は、所定の真空雰囲気に減圧されている。また、真空搬送室220には、搬送機構221が設けられている。搬送機構221は、処理室211~214、ロードロック室231,232に対して、基板を搬送する。なお、搬送機構221の動作は、制御部270によって制御される。
【0013】
ロードロック室231は、基板を載置するステージ231aを有し、ゲートバルブ265を介して真空搬送室220と接続され、ゲートバルブ267を介して大気搬送室240と接続されている。同様に、ロードロック室232は、基板を載置するステージ232aを有し、ゲートバルブ266を介して真空搬送室220と接続され、ゲートバルブ268を介して大気搬送室240と接続されている。ロードロック室231,232内は、大気雰囲気と真空雰囲気とを切り替えることができるようになっている。なお、ロードロック室231,232内の真空雰囲気または大気雰囲気の切り替えは、制御部270によって制御される。
【0014】
大気搬送室240内は、大気雰囲気となっており、例えば清浄空気のダウンフローが形成されている。また、大気搬送室240には、搬送機構241が設けられている。搬送機構221は、ロードロック室231,232、後述するロードポート251~253のキャリアCに対して、基板を搬送する。なお、搬送機構241の動作は、制御部270によって制御される。
【0015】
ロードポート251~253は、大気搬送室240の長辺の壁面に設けられている。ロードポート251~253は、基板が収容されたキャリアC又は空のキャリアCが取り付けられる。キャリアCとしては、例えば、FOUP(Front Opening Unified Pod)等を用いることができる。
【0016】
ゲートバルブ261~268は、開閉可能に構成される。なお、ゲートバルブ261~268の開閉は、制御部270によって制御される。
【0017】
制御部270は、処理室211~214の動作、搬送機構221,241の動作、ゲートバルブ261~268の開閉、ロードロック室231,232内の真空雰囲気または大気雰囲気の切り替え等を行うことにより、基板処理システム1の全体を制御する。
【0018】
次に、基板処理システム1の動作の一例について説明する。例えば、制御部270は、ゲートバルブ267を開けるとともに、搬送機構241を制御して、例えばロードポート251のキャリアCに収容された基板をロードロック室231のステージ231aに搬送させる。制御部270は、ゲートバルブ267を閉じ、ロードロック室231内を真空雰囲気とする。
【0019】
制御部270は、ゲートバルブ261,265を開けるとともに、搬送機構221を制御して、ロードロック室231の基板を処理室211のステージSTに搬送させる。制御部270は、ゲートバルブ261,265を閉じ、処理室211を動作させる。これにより、処理室211で基板に所定の処理(例えば、エッチング処理等)を施す。
【0020】
次に、制御部270は、ゲートバルブ261,263を開けるとともに、搬送機構221を制御して、処理室211にて処理された基板を処理室213のステージSTに搬送させる。制御部270は、ゲートバルブ261,263を閉じ、処理室213を動作させる。これにより、処理室213で基板に所定の処理(例えば、後述される熱処理等)を施す。
【0021】
制御部270は、処理室211、212で処理された基板を処理室213、214のステージSTに搬送してもよい。本実施形態では、処理室213及び処理室214の動作状態に応じて処理室211、212で処理された基板を処理室213又は処理室214に搬送し、アッシング処理を行ってもよい。制御部270は、処理室213と処理室214とを使用して複数の基板に対して並行して所定の処理(例えば、エッチング処理、熱処理等)を行うことができる。これにより、生産性を高めることができる。
【0022】
制御部270は、エッチング処理後に熱処理された基板(又はアッシング処理された基板)を、搬送機構221を制御してロードロック室231のステージ231a又はロードロック室232のステージ232aに搬送させる。制御部270は、ロードロック室231又はロードロック室232内を大気雰囲気とする。制御部270は、ゲートバルブ267又はゲートバルブ268を開けるとともに、搬送機構241を制御して、ロードロック室232の基板を例えばロードポート253のキャリアCに搬送して収容させる。
【0023】
このように、
図1に示す基板処理システム1によれば、各処理室によって基板に処理が施される間、基板を大気に曝露することなく、つまり、真空を破らずに基板にエッチング処理、熱処理、アッシング処理等を施すことができる。
【0024】
[基板処理装置]
次に、処理室211~214の少なくともいずれかの処理室を実現するための基板処理装置について、
図2及び
図3を参照しながら説明する。
図2及び
図3は、実施形態に係る基板処理装置の一例を示す図である。
図2の基板処理装置2では、基板Wにプラズマによるエッチング工程及び/又はプラズマによるアッシング工程を行う。
図3の基板処理装置3では、基板Wにベーキング工程もしくはラジカルによるアッシング工程を行う。
【0025】
ベーキング工程では、基板Wを加熱する熱エネルギーによって、ケイ素Siと窒素Nとフッ素Fとを含む反応生成物を昇華させ、除去する。ケイ素Siと窒素Nとフッ素Fとを含む反応生成物は、エッチング工程において生成され、エッチング対象膜に堆積する、ケイ素Siと窒素Nとフッ素Fとを含む反応生成物の一例としては、ケイフッ化アンモニウムが挙げられる。ケイ素Siと窒素Nとフッ素Fとを含む反応生成物は、第2の反応生成物の一例である。ベーキング工程は、基板Wを熱処理する工程の一例である。
【0026】
第2の反応生成物は、エッチング工程で生成され、エッチング対象膜に堆積する、窒素Nと水素Hとハロゲンとが含まれる反応生成物を含む。窒素Nと水素Hとハロゲンとが含まれる反応生成物の一例としては、ハロゲン化アンモニウムが挙げられる。第2の反応生成物は、アンモニウム、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウムの少なくとも一つを含んでもよい。
【0027】
プラズマによるアッシング(以下、「プラズマアッシング」ともいう。)工程では、プラズマ中のラジカルの供給及びプラズマからのイオン照射エネルギーを用いて有機膜のマスクを除去する。プラズマアッシング工程では、エッチング工程において生成される炭素Cとフッ素Fとが含まれる反応生成物も除去する。エッチング工程において生成されるCFポリマー等の炭素Cとフッ素Fとが含まれる反応生成物は、第3の反応生成物の一例である。
【0028】
ラジカルによるアッシング(以下、「ラジカルアッシング」ともいう。)工程では、プラズマからのイオンを用いず、ラジカルの供給と基板Wを加熱する熱エネルギーによって有機膜のマスクを除去する。ラジカルアッシング工程では、エッチング工程において生成される炭素Cとフッ素Fとが含まれる反応生成物も除去する。
【0029】
なお、プラズマアッシング工程と、ラジカルアッシング工程とでは、アッシングレートが異なる。プラズマアッシング工程では、ラジカルとイオンを使ってアッシングを行うため、ラジカルを使ってアッシングを行うラジカルエッチング工程よりもアッシングレートが高くなる。また、プラズマアッシング工程とラジカルアッシング工程とでは制御する温度帯が異なる。ラジカルアッシング工程とプラズマアッシング工程は、いずれも基板Wに対して温度制御をおこなうため、基板Wを熱処理する工程の一例でもある。
【0030】
(基板処理装置2)
以下、まず、プラズマアッシング工程を実行可能な基板処理装置2について、
図2を参照しながら説明する。基板処理装置2は、エッチング(プラズマエッチング)工程を行い、その後、プラズマアッシング工程を行ってもよい。
【0031】
基板処理装置2は、処理容器10を有する。処理容器10は、その中に処理室10sを提供している。処理容器10は、本体12を含んでいる。本体12は、略円筒形状を有している。本体12は、例えばアルミニウムから形成されている。本体12の内壁面上には、耐食性を有する膜が設けられている。耐食性を有する膜は、アルミナ(酸化アルミニウム)、酸化イットリウムといったセラミックスから形成され、陽極酸化処理された酸化膜であり得る。
【0032】
本体12の側壁には、通路12pが形成されている。基板Wは、処理室10sと処理容器10の外部との間で搬送されるときに、通路12pを通過する。通路12pは、ゲートバルブ12gにより開閉可能となっている。ゲートバルブ12gは、本体12の側壁に沿って設けられている。
【0033】
本体12の底部上には、支持部13が設けられている。支持部13は、絶縁材料から形成されている。支持部13は、略円筒形状を有している。支持部13は、処理室10s内で、本体12の底部から上方に延在している。支持部13上には、基板の周囲を囲むエッジリング25(フォーカスリングとも呼ばれる)が設けられている。エッジリング25は、略円筒形状を有し、シリコン等で形成されてもよい。
【0034】
基板処理装置2は、ステージSTを更に備えている。ステージSTは、支持部13によって支持されている。ステージSTは、処理室10s内に設けられ、基板Wを支持するように構成されている。
【0035】
ステージSTは、下部電極18及び一つの例示的実施形態に係る静電チャック20を有している。ステージSTは、電極プレート16を更に有し得る。電極プレート16は、例えばアルミニウムといった導体から形成されており、略円盤形状を有している。下部電極18は、電極プレート16上に設けられている。下部電極18は、例えばアルミニウムといった導体から形成されており、略円盤形状を有している。下部電極18は、電極プレート16に電気的に接続されている。下部電極18の外周面及び電極プレート16の外周面は、支持部13によって囲まれている。
【0036】
静電チャック20は、下部電極18上に設けられている。静電チャック20の電極は、スイッチ20sを介して直流電源20pに接続されている。直流電源20pからの電圧が電極に印加されると、静電引力により基板Wが静電チャック20に保持される。静電チャック20は、基板W及びエッジリング25を支持する。電極プレート16及び下部電極18は、静電チャック20を支持する基台の一例である。
【0037】
下部電極18の内部には、流路18fが設けられている。流路18fには、処理容器10の外部に設けられているチラーユニットから配管22aを介して熱交換媒体(例えば冷媒)が供給される。流路18fに供給された熱交換媒体は、配管22bを介してチラーユニットに戻される。基板処理装置2では、静電チャック20上に載置された基板Wの温度が、熱交換媒体と下部電極18との熱交換により、調整される。
【0038】
基板処理装置2には、ガス供給ライン24が設けられている。ガス供給ライン24は、伝熱ガス供給機構からの伝熱ガス(例えばHeガス)を、静電チャック20の上面と基板Wの下面との間に供給する。
【0039】
基板処理装置2は、上部電極30を更に備えている。上部電極30は、ステージSTの上方に設けられている。上部電極30は、部材32を介して、本体12の上部に支持されている。部材32は、絶縁性を有する材料から形成されている。上部電極30と部材32は、本体12の上部開口を閉じている。
【0040】
上部電極30は、天板34及び支持体36を含み得る。天板34の下面は、処理室10sの側の下面であり、処理室10sを画成している。天板34は、ジュール熱の少ない低抵抗の導電体又は半導体から形成され得る。天板34には、複数のガス吐出孔34aが形成されている。複数のガス吐出孔34aは、天板34をその板厚方向に貫通している。
【0041】
支持体36は、天板34を着脱自在に支持する。支持体36は、アルミニウムといった導電性材料から形成される。支持体36の内部には、ガス拡散室36aが設けられている。支持体36には、複数のガス孔36bが形成されている。複数のガス孔36bは、ガス拡散室36aから下方に延びている。複数のガス孔36bは、複数のガス吐出孔34aにそれぞれ連通している。支持体36には、ガス導入口36cが形成されている。ガス導入口36cは、ガス拡散室36aに接続している。ガス導入口36cには、ガス供給管38が接続されている。
【0042】
ガス供給管38には、ガスソース群40、流量制御器群44及びバルブ群42を含むガス供給部GSが接続されている。ガスソース群40は、流量制御器群44及びバルブ群42を介して、ガス供給管38に接続されている。ガスソース群40は、複数のガスソースを含んでいる。バルブ群42は、複数の開閉バルブを含んでいる。流量制御器群44は、複数の流量制御器を含んでいる。流量制御器群44の複数の流量制御器の各々は、マスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器である。ガスソース群40の複数のガスソースの各々は、流量制御器群44の対応の流量制御器及びバルブ群42の対応の開閉バルブを介して、ガス供給管38に接続されている。電源70は、上部電極30に接続されている。電源70は処理室10s内に存在する正イオンを天板34に引き込むための電圧を、上部電極30に印加する。
【0043】
基板処理装置2では、本体12の内壁面に沿って、シールド46が着脱自在に設けられている。シールド46は、支持部13の外周にも設けられている。シールド46は、本体12にエッチング副生物等の反応生成物が付着することを防止する。シールド46は、例えば、アルミニウムから形成された部材の表面に耐食性を有する膜を形成することにより構成される。耐食性を有する膜は、アルミナ又は酸化イットリウムといった酸化膜であり得る。
【0044】
支持部13と本体12の側壁との間には、バッフルプレート48が設けられている。バッフルプレート48は、例えば、アルミニウムから形成された部材の表面に耐食性を有する膜を形成することにより構成される。耐食性を有する膜は、アルミナ又は酸化イットリウムといった酸化膜であり得る。バッフルプレート48には、複数の貫通孔が形成されている。バッフルプレート48の下方、且つ、本体12の底部には、排気口12eが設けられている。排気口12eには、排気管52を介して排気装置50が接続されている。排気装置50は、圧力調整弁及びターボ分子ポンプといった真空ポンプを有している。
【0045】
基板処理装置2は、プラズマ生成用の高周波HFの電力を印加する第1高周波電源62を備えている。第1高周波電源62は、処理容器10内でガスからプラズマを生成するために、高周波HFの電力を発生するように構成されている。高周波HFの周波数は、例えば27MHz~100MHzの範囲内の周波数である。
【0046】
第1高周波電源62は、整合器66を介して下部電極18に電気的に接続されている。整合器66は、整合回路を有している。整合器66の整合回路は、第1高周波電源62の負荷側(下部電極側)のインピーダンスを、第1高周波電源62の出力インピーダンスに整合させるよう構成されている。別の実施形態では、第1高周波電源62は、整合器66を介して上部電極30に電気的に接続されていてもよい。
【0047】
基板処理装置2は、イオン引き込み用の高周波LFの電力を印加する第2高周波電源64を更に備え得る。第2高周波電源64は、高周波LFの電力を発生するように構成されている。高周波LFは、主としてイオンを基板Wに引き込むことに適した周波数を有し、例えば400kHz~13.56MHzの範囲内の周波数である。或いは、高周波LFは、矩形の波形を有するパルス状の電圧であってもよい。
【0048】
第2高周波電源64は、整合器68を介して下部電極18に電気的に接続されている。整合器68は、整合回路を有している。整合器68の整合回路は、第2高周波電源64の負荷側(下部電極側)のインピーダンスを、第2高周波電源64の出力インピーダンスに整合させるよう構成されている。
【0049】
基板処理装置2は、第2制御部80を更に備え得る。第2制御部80は、プロセッサ、メモリといった記憶部、入力装置、表示装置、信号の入出力インターフェイス等を備えるコンピュータであり得る。第2制御部80は、基板処理装置2の各部を制御する。第2制御部80では、入力装置を用いて、オペレータが基板処理装置2を管理するためにコマンドの入力操作等を行うことができる。また、第2制御部80では、表示装置により、基板処理装置2の稼働状況を可視化して表示することができる。さらに、第2制御部80の記憶部には、制御プログラム及びレシピデータが格納されている。制御プログラムは、基板処理装置2で各種処理を実行するために、第2制御部80のプロセッサによって実行される。第2制御部80のプロセッサが、制御プログラムを実行し、レシピデータに従って基板処理装置2の各部を制御することにより、種々のプロセス、例えばプラズマ処理方法が基板処理装置2で実行される。
【0050】
(基板処理装置3)
次に、ラジカルアッシング工程を実行可能な基板処理装置3について、
図3を参照しながら説明する。
図3は、基板処理装置3の一例を示す図である。基板処理装置3は、処理容器101および制御部130を有する。本実施形態における基板処理装置3は、基板W上に形成された有機膜を、ICP(Inductively Coupled Plasma)を用いてラジカルアッシング処理を行う。
【0051】
基板処理装置3は、例えば内壁面が陽極酸化処理されたアルミニウムによって形成された略円筒形状の気密な処理容器101を有する。処理容器101は接地されている。処理容器101は、上部天板102により上下に区画されており、上部天板102の上面側が、アンテナ113が収容されるアンテナ室103となっており、上部天板102の下面側が、プラズマが生成される処理室104となっている。本実施形態において、上部天板102は石英で形成されており、処理室104の天井壁を構成する。なお、上部天板102は、Al2O3等のセラミックスで構成されてもよい。
【0052】
上部天板102の下方には、石英で板状に形成されたイオントラップ111が設けられている。イオントラップ111は、処理室104内の空間を、空間S1および空間S2に上下に分割する。イオントラップ111は、空間S1内で生成されたプラズマに含まれるイオンの空間S2への侵入を抑制する。イオントラップ111には、イオントラップ111の厚さ方向に貫通する多数の貫通孔112が形成されており、空間S1内で生成されたプラズマに含まれる電子やラジカルは、それぞれの貫通孔112を介して空間S2に侵入することができる。
【0053】
処理室104の側壁104aには、一端が空間S1に連通し、他端がガス供給機構120に連通するガス供給管124が設けられている。ガス供給機構120から供給されたガスは、ガス供給管124を介して、空間S1内に供給される。ガス供給機構120は、ガスソース群121、流量制御器群122、及びバルブ群123を有する。
【0054】
バルブ群123は、複数の開閉バルブを含んでいる。流量制御器群122は、複数の流量制御器を含んでいる。流量制御器群122の複数の流量制御器の各々は、マスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器である。ガスソース群121は酸素含有ガスや不活性などの複数のガスを供給する。酸素含有ガスは例えばO2ガスであり、不活性ガスは例えばArやN2ガスである。ガスソース群121の複数のガスソースの各々は、流量制御器群122の対応の流量制御器及びバルブ群123の対応の開閉バルブを介して、ガス供給管124に接続されている。ガス供給機構120は、ガス供給部の一例である。
【0055】
アンテナ室103内には、アンテナ113が配設されている。アンテナ113は、銅やアルミニウム等の導電性の高い金属により形成されたアンテナ線113aを有する。アンテナ線113aは、環状や渦巻状等の任意の形状に形成される。アンテナ113は絶縁性部材で構成されたスペーサ117により上部天板102から離間している。
【0056】
アンテナ線113aの端子118には、アンテナ室103の上方へ延びる給電部材116の一端が接続されている。給電部材116の他端には、給電線119の一端が接続されており、給電線119の他端には、整合器114を介して高周波電源115が接続されている。高周波電源115は、整合器114、給電線119、給電部材116、および端子118を介して、アンテナ113に、例えば13.56MHzの周波数の高周波電力を供給する。これにより、アンテナ113の下方にある処理室104内の空間S1に誘導電界が形成され、この誘導電界により、ガス供給管124から供給されたガスがプラズマ化され、空間S1内に誘導結合プラズマが生成される。アンテナ113は、プラズマ生成部の一例である。
【0057】
処理室104の底壁には、絶縁性部材により形成されたスペーサ126を介して、基板Wが載置されるステージSTが設けられている。ステージSTは、スペーサ126の上に設けられた基材131と、基材131の上に設けられた静電チャック132と、絶縁性部材で形成され、基材131および静電チャック132の側壁を覆う保護部材133とを有する。基材131および静電チャック132は基板Wの形状に対応した円形状をなし、ステージSTの全体が円筒状に形成されている。スペーサ126および保護部材133は、アルミナ等の絶縁性セラミックスで構成されている。
【0058】
静電チャック132は、基材131の上面に設けられている。静電チャック132は、セラミックス溶射膜からなる誘電体層145と、誘電体層145の内部に埋め込まれた電極146とを有する。電極146は、例えば板状、膜状、格子状、網状等種々の形態をとることができる。電極146には、給電線147を介して直流電源148が接続されており、直流電源148から供給された直流電圧が印加される。直流電源148から給電線147を介して電極146に印加される直流電圧は、スイッチ(図示せず)により制御される。直流電源148から印加される直流電圧により、電極146にクーロン力やジョンセン・ラーベック力等の静電吸着力が発生し、静電チャック132上に載置された基板Wが静電チャック132の上面に吸着保持される。静電チャック132の誘電体層145としては、Al2O3やY2O3等を用いることができる。
【0059】
なお、ステージSTの基材131内には、基板Wの温度を制御するための温度調節機構および温度センサ(いずれも図示せず)が設けられている。また、処理室104の側壁104a内にも、処理室104内のガスの温度を制御するための温度調節機構および温度センサ(いずれも図示せず)が設けられている。また、処理容器101には、ステージSTに基板Wが載置された状態で、基板WとステージSTとの間の熱伝達量を調節するための伝熱ガス、例えばHeガスを、基板WとステージSTとの間に供給する伝熱ガス供給機構(図示せず)が設けられている。さらに、ステージSTには、基板Wの受け渡しを行うための複数の昇降ピン(図示せず)が静電チャック132の上面に対して突没可能に設けられている。
【0060】
処理室104の側壁104aには、基板Wを処理室104内へ搬入し、基板Wを処理室104内から搬出するための搬入出口155が設けられており、搬入出口155はゲートバルブGによって開閉可能となっている。ゲートバルブGが開状態に制御されることにより、搬入出口155を介して基板Wの搬入および搬出が可能となる。
【0061】
処理室104の底壁には排気口159が形成されており、排気口159には排気機構160が設けられている。排気機構160は、APC(Auto Pressure Controller)バルブ162と、排気管161を介して処理室104内を排気する真空ポンプ163とを有する。APCバルブ162は、排気口159に接続された排気管161の開度を調整し、処理室104内の圧力を制御する。真空ポンプ163により処理室104内が排気され、プラズマによるエッチング処理中において、APCバルブ162の開度が調整されることにより、処理室104内が所定の真空度に維持される。
【0062】
制御部130は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリおよびCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを有する。制御部130内のプロセッサは、制御部130内のメモリに格納されたプログラムを読み出して実行することにより、処理容器101の各部を制御する。
【0063】
[膜構造]
次に、実施形態に係る基板Wに形成された膜構造について、
図4を参照しながら説明する。
図4は、実施形態に係る基板Wに形成された膜構造の一例を示す図である。
図4(a)に示すように、基板Wには、エッチング対象膜の一例として酸化シリコン(SiO
2)層300aと窒化シリコン(SiN)層300bを交互に積層したエッチング対象膜300が形成されている。エッチング対象膜300の下層には下地層の一例としてタングステン層303が配置されている。エッチング対象膜300の上層にはマスク301が配置されている。なお、この膜構造は一例であり、基板Wには、エッチング対象膜と、エッチング対象膜の下層に配置された下地層と、エッチング対象膜の上層に配置されたマスクとを少なくとも有する積層膜が形成されていればよい。タングステン層303は、タングステン含有膜であってもよい。
【0064】
例えば、下地層は、タングステン層303以外の遷移金属であってもよい。また、これに限られず、マスク301と下地層の少なくとも一方が遷移金属を含有していればよい。本実施形態では、マスク301に形成されたホールHの下方のホールHに対応する位置に、タングステン層303が配置されている。
【0065】
エッチング工程では、遷移金属を下地層としてエッチング対象膜300をエッチングする。本実施形態では、下地層としてタングステン層303を用いてエッチング対象膜300をエッチングする。基板温度を0℃以下に制御して行うエッチング(以下、「低温エッチング」という。)では、遷移金属を含む反応生成物が生成される。
図4(b)には、低温エッチングにてタングステン層303が露出するまでエッチングが進んだときの状態の一例を示す。タングステン層303上及びエッチング対象膜300の側壁に、タングステンを含有する反応生成物304が堆積している。
【0066】
マスクに遷移金属を使用した場合にも、低温エッチングにより遷移金属を含有する反応生成物が生成される。低温エッチングによりエッチング対象膜300及びマスク301の少なくともいずれかに堆積する、タングステン等の遷移金属を含む反応生成物は、第1の反応生成物の一例である。第1の反応生成物は、遷移金属のハロゲン化物であってもよい。例えば下地層としてタングステン層303が用いられる場合、第1の反応生成物は、タングステンのハロゲン化物であってもよい。
【0067】
エッチング対象膜300のエッチングにはCF系ガスを含むガスが使用される。CF系ガスのプラズマを用いてマスク301を通してエッチング対象膜300をエッチングすることにより、エッチング対象膜300にホールHやスリット形状の溝を形成する。CF系ガスやCHF系ガスのプラズマを用いて酸化シリコン層300aと窒化シリコン層300bをエッチングすると、エッチング工程中にケイフッ化アンモニウム(AFS)の反応生成物が発生し、エッチング対象膜300上に堆積する。ケイフッ化アンモニウムの反応生成物は、窒素Nと水素Hとハロゲンとが含まれる第2の反応生成物の一例である。
【0068】
エッチング対象膜に堆積する第2の反応生成物は、ハロゲン化アンモニウムであってもよい。第2の反応生成物は、アンモニウム、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウムの少なくとも一つが含まれてもよい。
【0069】
[基板処理方法]
以上の膜構造を有する基板Wを処理するための本実施形態に係る基板処理方法の一例について、
図5及び
図6を参照しながら説明する。
図5は、実施形態に係る基板処理方法の一例を示すフローチャートである。
図6は、実施形態に係る基板処理方法の他の例を示すフローチャートである。
【0070】
図5の基板処理方法では、エッチング対象膜300と、エッチング対象膜300の下層に配置されたタングステン層303と、エッチング対象膜300の上層に配置されたマスク301とを少なくとも有する積層膜が形成された基板Wを準備する(ステップS1)。次に、例えばラジカルによりマスク301を通じてエッチング対象膜300をエッチングする(ステップS2:メインエッチング)。エッチングの後、基板Wを所望の温度に制御しながら熱処理し(ステップS3)、本処理を終了する。熱処理では、主にケイフッ化アンモニウムの反応生成物を除去する。熱処理は、ラジカルアッシング、ベーキングを含む。
【0071】
ケイフッ化アンモニウムの反応生成物が堆積した状態で基板Wを大気暴露すると、反応生成物が大気中の水分と反応する。大気暴露した時間が長くなるほど窒化シリコン層300bの側面に凹み(サイドエッチ)が生じたり、水分と反応して膨潤した膨潤異物が窒化シリコン層300bの側壁に発生したりする。これにより、積層膜へのダメージやホールHの閉塞が生じて後工程へ悪影響を及ぼし、歩留まりの低下の原因となる。また、これらの歩留まり低下を最小限に留めるために、エッチングを終了し、次の基板処理工程までの間、基板Wが大気暴露される時間が短くなるように管理する必要がある。
【0072】
従って、基板Wを大気に曝露する前にケイフッ化アンモニウムを除去することが重要である。ケイフッ化アンモニウムを除去するために純水や薬液を用いたウェット洗浄を使用することも可能である。しかし、この場合、ウェット洗浄を行うためには、基板Wを大気暴露しなければならない。つまり、ウェット洗浄では基板にサイドエッチや膨潤異物が生じ、窒化シリコン層300bにダメージを与える可能性がある。また、ウェット洗浄という追加の工程が発生するため、スループットが低下する懸念がある。
【0073】
これに対して、本実施形態に係る基板処理システム1では、エッチング工程の後に、基板Wを大気暴露することなく熱処理することができる。これにより、ケイフッ化アンモニウムを除去し、積層膜にダメージが生じることを防止できる。
【0074】
図6に示す基板処理方法では、
図5のステップS1と同様に積層膜が形成された基板Wを準備する(ステップS1)。次に、プラズマによりマスク301を通じてエッチング対象膜300をエッチングする(ステップS2)。エッチングの後、基板Wを所望の温度に制御しながらアッシング処理し(ステップS4)、本処理を終了する。アッシング処理では、マスク301を除去する。ケイフッ化アンモニウム、CFポリマーが含まれる反応生成物を除去することもできる。ステップS4のアッシング処理も熱処理の一例に含まれる。なお、CFポリマーが含まれる反応生成物は、炭素Cとフッ素Fとが含まれる第3の反応生成物の一例である。第3の反応生成物は、エッチング工程に生成され、エッチング対象膜300に堆積する。
【0075】
エッチング工程と熱処理工程(アッシング工程)とは、基板Wを大気に曝露することなく実行される。つまり、
図5のステップS2及びS3の処理、及び
図6のステップS2及びS4の処理は、基板Wを大気に曝露しない基板処理システム1の処理室211~214のうちの同一の処理室で行ってもよいし、別の処理室で行ってもよい。
【0076】
以下、各工程の条件を以下に示す。
【0077】
(エッチング工程)
ガス条件 H2ガス/C4F8ガス
処理室の圧力 30mTorr(4.0Pa)
処理中のウェハ温度 0℃(基板温度)
第1の高周波 40M~100MHz、3kW、連続波
第2の高周波 400k~3MHz、6kW、連続波
(熱処理工程:ベーキング)
ガス条件 O2ガス/N2ガス、又はN2ガス
処理室の圧力 1.3Torr(173Pa)
処理中のウェハ温度 250℃(ステージ温度)
(熱処理工程:ラジカルアッシング工程)
ガス条件 O2ガス/N2ガス
処理室の圧力 1.3Torr
処理中のウェハ温度 50~300℃(ステージ温度)
プラズマ源 ICP
(熱処理工程:プラズマアッシング工程)
ガス条件 O2ガス
処理室の圧力 400mTorr(53.3Pa)
処理中のウェハ温度 -30~50℃(ステージ温度)
第1の高周波 40M~100MHz、1.5kW、連続波
【0078】
[低温エッチング]
低温エッチングの特徴について、
図7を参照して説明する。
図7は、横軸の基板温度に対して、縦軸に、エッチング対象膜300(酸化シリコン層300aと窒化シリコン層300bの積層膜)のエッチングレート(
図7(a))、及びマスク選択比(
図7(b))を示す図である。マスク選択比は、マスク301のエッチングレートに対するエッチング対象膜300のエッチングレートの比である。
【0079】
図7(a)及び(b)に示すように、エッチング対象膜300のエッチングレート及びマスク選択比は、基板温度を低温領域(例えば0℃以下)に制御する低温エッチングにより向上させることができる。エッチングレートについては、酸化シリコン層300aと窒化シリコン層300bのそれぞれのエッチングレートが増加する。
【0080】
しかし、低温エッチングでは、基板温度を0℃以下の低温に制御するため、次の熱処理工程(アッシング工程)においてエッチング工程時との温度差が大きく、処理室内を高温にするまでに時間がかかりスループットが低下する課題がある。
【0081】
また、エッチング工程においてエッチング対象膜300の下地層にシリコン層302を使用している場合(
図4(a)参照)のラジカルの輸送に関する課題がある。例えば、設定条件(処理室内の圧力=30mT(4.0Pa)、基板温度≦0℃)で下地層がシリコン層302の場合、エッチング時に発生するSi-F系ガスは気化し、ホールHの底部までCF系のプリカーサを供給できない。その結果、ホールHの底部にCを含む保護膜が堆積せず、シリコン層302が削られてしまい、下地選択比が確保できない。下地選択比は、下地層(例えばシリコン層302)のエッチングレートに対するエッチング対象膜300のエッチングレートの比である。
【0082】
下地選択比を確保するために、
図5又は
図6のステップS2のメインエッチング工程の後にオーバーエッチング工程を実行し、基板温度を上げて、ホールHの底部までカーボンのラジカルを到達させる手法が用いられる場合がある。しかし、オーバーエッチング工程では基板温度を0℃以上に制御するため、低温エッチングで得られるエッチングレートよりも低いエッチングレートになり、スループットが低下し、生産性が下がる。
【0083】
そこで、本実施形態に係る膜構造では、
図4(a)に示すように、マスク301に形成されたホールHの下方に下地層としてタングステン層303を配置する。これにより、エッチング工程において低温エッチングを行い、エッチング対象膜300を高いエッチングレートでエッチングする。そして、エッチング対象膜300のホールHの底部に下地層が露出したときに、シリコン層302ではなく、
図4(b)に示すように、タングステン層303が露出することで、ホールHの底部でシリコン層302が削られてしまうことを回避できる。
【0084】
エッチング対象膜300のホールHの底部にタングステン層303が露出すると、タングステン層303が削られる。
図8は、WF
5、WF
6、WOF
4の温度に対する蒸気圧曲線を示す図である。
【0085】
蒸気圧曲線に示すように、例えば40℃以下のある温度におけるWF
5、WF
6、WOF
4の曲線により定義される蒸気圧よりも低い蒸気圧にあるとき、WF
5、WF
6、WOF
4は気化しない。下地層としてタングステン等の下地選択比の高い材料を選ぶと、ホールHの底部にカーボンのラジカルを供給しなくても、タングステンの反応生成物304(
図4(b)参照)が気化し難いため、反応生成物304により下地選択比を確保できる。
【0086】
例えば、上記設定条件(処理室内の圧力=30mT(4.0Pa)、基板温度≦40℃)では、WF
5及びWOF
4は気化せず、タングステン層303等のタングステン含有層上に堆積する。
図4(b)の例では、タングステン層303の上部及びエッチング対象膜300の側壁に、タングステンを含む反応生成物304が堆積している。
【0087】
この状態で、熱処理(ラジカルアッシング及びプラズマアッシングを含む)を行った。
図9(b)は、低温エッチング後に熱処理を行った後、フッ酸洗浄を行った。この場合、エッチング対象膜300の側壁等にタングステンの反応生成物が酸化したタングステン含有の酸化膜306が発生した。タングステン含有の酸化膜306は、フッ酸洗浄の前に熱処理を行うことで、フッ酸洗浄では除去できない物質に変化したものであることがわかった。
【0088】
これと比較して、
図9(a)は、低温エッチング後に熱処理を行わずにフッ酸洗浄(HF洗浄)を行った場合の結果である。この場合、エッチング対象膜300の側壁等にタングステンを含む反応生成物304は存在しない。なお、いずれの場合も、フッ酸洗浄は、基板Wを大気に暴露した後に行った。
【0089】
以上から、タングステンを含む反応生成物304は、熱処理工程において安定したタングステン含有の酸化膜(WOx)となり、フッ酸洗浄によっても除去できない膜となったことがわかった。なお、エッチング工程中に生成されたケイフッ化アンモニウムの反応生成物305は、フッ酸洗浄により除去された。
【0090】
また、
図9(b)に示すように、フッ酸洗浄後、タングステン含有の酸化膜306は、酸化シリコン層300aの側壁に残っており、窒化シリコン層300bの側壁には残っていなかった。
【0091】
窒化シリコン層300bの側壁にタングステン含有の酸化膜306がない理由としては、窒化シリコン層300b上のタングステンの酸化膜は、窒化シリコン層300b上に形成されたケイフッ化アンモニウム上に付着する。よって、フッ酸洗浄時にケイフッ化アンモニウムがフッ酸で剥がれる際、タングステン含有の酸化膜306も一緒に剥がれて除去されたと考えられる。また、熱処理に酸素ガスを使用しない場合、窒化シリコン層300bに付着するタングステンを含む反応生成物304は酸化されていない。よって、熱処理に酸素ガスを使用しない場合、窒化シリコン層300b上にタングステン含有の酸化膜306は形成されない。
【0092】
一方、酸化シリコン層300aの側壁に付着したタングステン含有の酸化膜306は、酸化シリコン層300aとタングステンを含む反応生成物304とが熱処理中に反応したものと考えられる。
【0093】
タングステンの反応生成物304が酸化し、タングステン含有の酸化膜306が形成される際に使用される酸素の供給源としては2つが考えられる。1つ目は、酸化シリコン層300aであり、2つ目は酸素ガスである。すなわち、エッチング対象膜300は、酸化シリコン層300aを一例とするシリコン酸素含有膜を有するため、タングステンの反応生成物を酸化させる酸素Oは、タングステン含有の酸化膜306が堆積しているシリコン酸素含有膜から供給してもよい。また、酸素含有ガスを処理容器内に供給することで、タングステンの反応生成物を酸化させる酸素Oを酸素含有ガスから供給してもよい。
【0094】
以上に説明した、低温エッチング時に発生するタングステン含有の反応生成物からタングステン含有の酸化膜306を形成させずに、タングステン含有の反応生成物を除去する基板処理及び基板の温度制御について、
図10および
図11を参照しながら説明する。
図10は、実施形態に係る有機膜のマスク301の代用として、有機レジスト塗布膜にアッシング処理を行った時のアッシングレートと、基板Wの温度との関係を示す図である。
図11は、実施形態に係る基板Wに熱処理を行った後、基板W上の残渣の有無を示す図である。
【0095】
図10は、上述したエッチング工程の条件、ラジカルアッシング工程の条件、プラズマアッシング工程の条件に基づき、エッチング工程の後にラジカルアッシング工程及びプラズマアッシング工程を行ったときの基板温度に対するアッシングレートを示す。ラジカルアッシング工程及びプラズマアッシング工程を行ったときの基板の制御温度は異なることがわかる。
【0096】
ラジカルアッシングの場合、イオンのエネルギーを有しないため、温度が高い、すなわち熱エネルギーが高いと酸素と有機膜のマスクが反応し、気化する。よって、アッシングレートは温度依存性が高く、温度が高いほどアッシングレートが高くなる。
【0097】
一方、温度を低くするとアッシングレートは低下し、約90℃でアッシングレートが0に近づく。このため、基板温度が、約90℃より低い温度では有機膜のマスクを完全に除去できない。よって、ラジカルアッシングでは、有機膜のマスクを完全に除去可能な約90℃よりも高い温度に基板温度を制御する。
【0098】
図11は、上述したエッチング工程の条件、ラジカルアッシング工程の条件、プラズマアッシング工程の条件に基づき、基板Wに対してエッチング工程の後にラジカルアッシング工程及びプラズマアッシング工程を行ったのち、基板Wのウェハ温度(基板温度)に対する基板W上のタングステン含有物の残渣の有無、ケイフッ化アンモニウムの残渣の有無、およびCFポリマーの残渣の有無を示す。
【0099】
ラジカルアッシングの場合、ウェハ温度が115℃より高い場合、基板W上にタングステン含有物の残渣(W残渣)が見られる。これより、約115℃以上では、安定したタングステンの酸化膜ができると考えられる。よって、ラジカルアッシング時の基板温度は、約115℃よりも低く制御する。したがって、ラジカルアッシングの場合、タングステンの酸化膜を形成せず、有機膜のマスクを完全に除去するために、基板温度を約90℃~約115℃の範囲に制御することが好ましい。
【0100】
つまり、タングステンを一例とする遷移金属を含む第1の反応生成物は、エッチング工程で生成される。第1の反応生成物が酸素Oと反応して、タングステンの酸化膜を一例とする酸化金属を形成する温度より低い値を第1の温度としたとき、熱処理工程は、基板Wの所望の温度(基板温度)を、第1の温度より低く設定する。第1の温度の一例は、安定したタングステンの酸化膜ができる約115℃温度である。加えて、第1の温度は、更に、エッチング対象膜300が熱により変形又は変質する温度より低い値であることが好ましい。
【0101】
プラズマアッシングの場合、ラジカルに加えてイオンのエネルギーによりアッシングが実行されるため、ラジカルアッシング時の基板温度よりも低い基板温度でもアッシングレートが確保できる。しかしながら、ウェハ温度が60℃より低い場合、ケイフッ化アンモニウム(AFS)に起因する残渣が見られる。ケイフッ化アンモニウム(AFS)の分解温度が約60℃である。よって、プラズマアッシングの場合、タングステンの酸化膜を形成せず、ケイフッ化アンモニウムを除去するために、基板温度を約60℃~約115℃の範囲に制御することが好ましい。
【0102】
つまり、ケイフッ化アンモニウムを一例とするケイ素Siと窒素Nとフッ素Fとを含む第2の反応生成物は、エッチング工程で生成される。第2の反応生成物が加熱分解される温度以上の値を第2の温度としたとき、熱処理工程は、基板Wの所望の温度(基板温度)を、第2の温度以上に設定し、第2の反応生成物を除去してもよい。第2の温度の一例は、ケイフッ化アンモニウム(AFS)の分解温度である約60℃である。エッチング対象膜に堆積する第2の反応生成物は、ケイフッ化アンモニウムを含む。
【0103】
ラジカルアッシングの場合、ウェハ温度が90℃より低い場合、CFポリマーの残渣が見られる。プラズマアッシングの場合、ウェハ温度による傾向はなく、CFポリマーの残渣は見られない。これは、アッシングレートの傾向と一致する。すなわち、有機膜のマスクを除去可能な温度に設定することによって、CFポリマーも除去可能となる。ただし、エッチング工程のプロセス条件が変わればアッシング工程においてCFポリマーを除去できる温度も変化するため、CFポリマーを除去可能な温度と有機膜のマスクを除去可能な温度が一致することに限定されるものではない。
【0104】
以上に説明したように、アッシング時にはアッシングレートを高くしたいため、できるだけ高い温度に基板温度を制御したいが、タングステンの酸化膜が形成されると、フッ酸洗浄によっても除去できない。このため、基板Wの温度の上限値は、約115℃に制御する必要がある。
【0105】
次に、低温エッチングではケイフッ化アンモニウムが残り易いため、ケイフッ化アンモニウムを完全に除去するために、プラズマアッシング時には基板温度の下限値は、約60℃に制御することが好ましい。
【0106】
更に、ラジカルアッシングの場合、有機膜のマスクを完全に除去するために、ラジカルアッシング時には基板W温度の下限値は、約90℃に制御することが好ましい。
【0107】
[変形例]
なお、エッチング工程で生成され、エッチング対象膜300に堆積する、窒素Nと水素Hとハロゲンとが含まれる第2の反応生成物が加熱分解される温度以上の値を第2の温度としたとき、熱処理工程は、基板W温度を、第2の温度以上に設定してもよい。これにより、第2の反応生成物を除去することができる。
【0108】
また、エッチング工程で発生する反応生成物であるCFポリマーが除去できる温度は、マスク除去温度と同じ約90℃であると考えてよい。よって、基板温度を約90℃以上に制御することで、CFポリマーを一例とする炭素Cとフッ素Fとが含まれる第3の反応生成物を除去できる。ただし、エッチング工程のプロセス条件が変わればアッシング工程においてCFポリマーを除去できる温度も変化するため、基板温度をCFポリマーを除去できる温度に設定することが好ましい。
【0109】
つまり、アッシング工程によってCFポリマー等の第3の反応生成物が除去可能となる温度以上の値を第3の温度としたとき、アッシング工程は、基板温度を、第3の温度以上に設定し、第3の反応生成物を除去してもよい。
【0110】
マスクが有機膜であるとき、アッシング工程は、有機膜を除去してもよい。第3の温度は、アッシングする工程によって有機膜が除去可能となる温度以上の値であってもよい。
【0111】
エッチング工程は、基板温度を、遷移金属のハロゲン化物の蒸気圧曲線が示す温度より低い値に設定してもよい。
【0112】
さらに、下地層にタングステンを使用した場合に限られず、マスクにタングステンを使用する場合にも、基板温度を
図10に示すラジカルアッシング又はプラズマアッシングに応じて設定することで、上記に説明した効果と同様の効果を得ることができる。
【0113】
エッチング工程は、エッチング対象膜300がケイ素Siを含有する場合、窒素N、水素H、及びフッ素Fを含有するガスのプラズマによってエッチング対象膜300のエッチングを行ってもよい。
【0114】
エッチング工程は、エッチング対象膜300が窒化ケイ素SiNを含有する場合、水素H、及びフッ素Fを含有するガスのプラズマによってエッチング対象膜300のエッチングを行ってもよい。
【0115】
エッチング工程と熱処理工程とは、基板Wを大気に曝露することなく実行する。熱処理工程においてケイフッ化アンモニウムを除去した後は、基板Wが大気に暴露されてもよい。つまり熱処理工程の後に行うアッシング工程やフッ酸洗浄では、基板Wが大気に暴露されてもよい。
【0116】
ラジカルアッシング工程を行う基板処理装置とプラズマアッシング工程を行う基板処理装置とが別の装置の場合、ラジカルアッシング工程を行う基板処理装置では、基板W温度の上限値を約115℃に制御すれば下限値は問わない。これにより、タングステン含有の酸化膜が形成されず、タングステンの反応生成物を除去できる。また、プラズマアッシング工程を行う基板処理装置では、ケイフッ化アンモニウムを残さないために、基板W温度の下限値を約60℃に制御すれば上限値は問わない。
【0117】
ラジカルアッシング工程を行う基板処理装置とプラズマアッシング工程を行う基板処理装置とが同一の装置の場合、基板温度を約60℃~約115℃の範囲の温度に制御する。
【0118】
なお、メインエッチング工程で形成されるホールH等のエッチング形状に対して、酸素ラジカルアッシング又は酸素プラズマアッシングを行うと、エッチング対象膜300上のマスク301を除去できる。マスク301の除去後に測定した、エッチング対象膜300のホールHの最も広がった位置のCD(Bow CD)とホールHの底部のCD(BTM CD)は、アッシング前後でほぼ変わらなかった。よって、酸素ラジカルアッシング又は酸素プラズマアッシングによりエッチング形状に影響は生じない。
【0119】
なお、基板処理システム1において同一システム上(In-System)でエッチング処理及び熱処理を行うことに限られず、同一処理室(In-situ)でエッチング処理及び熱処理を行ってもよい。なお、熱処理を行う処理室は、ステージにヒーターを有し、ステージを高温にして基板を熱処理する。熱処理は、ヒーターを有するステージを持つ処理室又はロードロック室の少なくともいずれかにて行われてもよい。熱処理は、搬送機構21の基板を保持するアームにヒーターを搭載した真空搬送室220にて行われてもよい。また、ランプ等の輻射熱や赤外線加熱などによって基板Wを熱処理してもよい。
【0120】
以上に説明したように、本実施形態の基板処理方法及び基板処理装置によれば、エッチング工程により堆積した遷移金属を含む反応生成物を除去することができる。
【0121】
今回開示された実施形態に係る基板処理方法及び基板処理装置は、すべての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【0122】
本開示の基板処理装置は、Atomic Layer Deposition(ALD)装置、Capacitively Coupled Plasma(CCP)、Inductively Coupled Plasma(ICP)、Radial Line Slot Antenna(RLSA)、Electron Cyclotron Resonance Plasma(ECR)、Helicon Wave Plasma(HWP)のいずれのタイプの装置でも適用可能である。
【符号の説明】
【0123】
1 基板処理システム
2,3 基板処理装置
10 処理容器
101 処理容器
102 上部天板
103 アンテナ室
104 処理室
111 イオントラップ
130 制御部
211~214 処理室
220 真空搬送室
231,232 ロードロック室
240 大気搬送室
251~253 ロードポート
261~268 ゲートバルブ
270 制御部
300 エッチング対象膜
300a 酸化シリコン層
300b 窒化シリコン層
301 マスク
303 タングステン層
305 ケイフッ化アンモニウムの反応生成物
306 タングステンの酸化膜
ST ステージ