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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-21
(45)【発行日】2025-03-04
(54)【発明の名称】ハンドリング治具
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/673 20060101AFI20250225BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20250225BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20250225BHJP
【FI】
H01L21/68 V
H01L21/205
C23C16/44 F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021041775
(22)【出願日】2021-03-15
(65)【公開番号】P2022141459
(43)【公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】島田 光一
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 伸高
【審査官】小山 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-173943(JP,A)
【文献】特開平01-228125(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0091871(KR,A)
【文献】特開2008-227443(JP,A)
【文献】特表2012-506489(JP,A)
【文献】実開平07-028290(JP,U)
【文献】実開平01-065130(JP,U)
【文献】特開2004-071618(JP,A)
【文献】特開2010-016080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/673
H01L 21/205
C23C 16/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板と底板と前記天板と前記底板とに接続された複数の支柱とで構成され前記複数の支柱にて基板を保持する基板保持具を保持して取り扱いを容易にするハンドリング治具であって、
前記天板の外縁部を覆うようにして前記天板を保持する天板保持治具と、
前記底板の外縁部を覆うようにして前記底板を保持する底板保持治具と、を有し、
前記天板保持治具及び前記底板保持治具は、複数の円弧状の部材がヒンジ構造により開閉し、前記天板及び前記底板に装着したきに、円環形状をなして前記天板及び前記底板を保持するハンドリング治具。
【請求項2】
前記天板保持治具及び前記底板保持治具は、それぞれ前記天板及び前記底板の側面及び平面部の外縁部を保持する保持部を有する請求項1に記載のハンドリング治具。
【請求項3】
前記天板保持治具及び前記底板保持治具は、前記保持部よりも1段隆起し、前記天板及び前記底板と接触しないハンドリング部を有する請求項2に記載のハンドリング治具。
【請求項4】
前記複数の円弧状の部材の前記ヒンジ構造と反対側の先端には、前記複数の円弧状の部材同士の連結を固定する固定構造部が設けられている請求項1乃至3のいずれか1項に記載のハンドリング治具。
【請求項5】
前記固定構造部は、係合部を固定するロックピンと、
前記ロックピンの脱落を防止する付勢部材と、を有する請求項に記載のハンドリング治具。
【請求項6】
前記円弧状の部材同士が重なる係合部には、貫通穴が設けられ、
前記ロックピンは、前記貫通穴に挿入される請求項に記載のハンドリング治具。
【請求項7】
前記天板保持治具及び前記底板保持治具の側面部を覆う内面には、前記基板保持具の前記支柱が設けられた位置を保持する箇所に切り欠きが設けられている請求項1乃至のいずれか一項に記載のハンドリング治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドリング治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基板を積載して保持する基板保持具を一対の分割部材で側方から挟み込み、天井部に設けられた取っ手部を用いて基板保持具を運搬可能にした運搬治具が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-139424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板保持具の取り扱いを容易にするハンドリング治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本開示の一態様に係るハンドリング治具は、天板と底板と前記天板と前記底板とに接続された複数の支柱とで構成され前記複数の支柱にて基板を保持する基板保持具を保持して取り扱いを容易にするハンドリング治具であって、
前記天板の外縁部を覆うようにして前記天板を保持する天板保持治具と、
前記底板の外縁部を覆うようにして前記底板を保持する底板保持治具と、を有し、
前記天板保持治具及び前記底板保持治具は、複数の円弧状の部材がヒンジ構造により開閉し、前記天板及び前記底板に装着したきに、円環形状をなして前記天板及び前記底板を保持する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板保持具の取り扱いを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】縦型熱処理装置の構成例を示す縦断面図である。
図2】縦型熱処理装置の構成例を示す横断面図である。
図3】ウエハボート及び本実施形態に係るハンドリング治具を示した斜視図である。
図4】天板保持治具及び底板保持治具の詳細構成を示した分解斜視図である。
図5】天板保持治具のヒンジ構造部と反対側のロック構造の一例を示した図である。
図6】ハンドリング治具を装着したウエハボートの一例を示した斜視図である。
図7】ハンドリング治具を装着したウエハボートの一例を示した側面図である。
図8】ウエハボートを縦型熱処理装置の搬入位置まで運搬するための構成要素の一例を示した図である。
図9】ハンドリング治具を装着したウエハボート38をボートセット治具に移載する状態を示した図である。
図10】ハンドリング治具の取り外しを説明するための図である。
図11】ウエハボートがボートセット治具のアタッチメント上に載置された状態を示した図である。
図12】移動前のチューブカートの状態を示した図である。
図13】ウエハボートをチューブカートで保温台付近まで搬送した状態を示した図である。
図14】ウエハボートを保温台の前にセットした状態を示した図である。
図15】ボート用位置決め治具の一例を示した図である。
図16】ウエハボートを保温台の真上まで移動させた状態を示した図である。
図17】ウエハボートを取り外し、ボートセット治具を取り外す状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【0009】
[縦型熱処理装置]
最初に、一実施形態に係る搬送方法により搬送可能な反応管ユニットを有する縦型熱処理装置の構成例について説明する。以下では、二重管構造の縦型熱処理装置を説明するが、一重管構造の縦型熱処理装置であってもよい。図1及び図2は縦型熱処理装置の構成例を示す断面図であり、図1は縦断面を示し、図2は横断面を示す。
【0010】
図1に示されるように、縦型熱処理装置1は、基板である半導体ウエハ(以下「ウエハW」という。)を収容する反応管34と、反応管34の下端の開口を気密に塞ぐ蓋体36と、反応管34内に収容可能であり、多数枚のウエハWを所定の間隔で保持する基板保持具であるウエハボート38と、反応管34内へガスを導入するガス供給手段40と、反応管34内のガスを排気する排気手段41と、ウエハWを加熱する加熱手段42とを有する。
【0011】
反応管34は、下端が開放された有天井の円筒形状の内管44と、下端が開放されて内管44の外側を覆う有天井の円筒形状の外管46とを有する。内管44及び外管46は、石英等の耐熱性材料により形成されており、同軸状に配置されて二重管構造となっている。
【0012】
内管44の天井部44Aは、例えば平坦になっている。内管44の一側には、その長手方向(上下方向)に沿ってガス供給管を収容するノズル収容部48が形成されている。例えば図2に示されるように、内管44の側壁の一部を外側へ向けて突出させて凸部50を形成し、凸部50内をノズル収容部48として形成している。ノズル収容部48に対向させて内管44の反対側の側壁には、その長手方向(上下方向)に沿って幅L1の矩形状の開口52が形成されている。
【0013】
開口52は、内管44内のガスを排気できるように形成されたガス排気口である。開口52の長さは、ウエハボート38の長さと同じであるか、又は、ウエハボート38の長さよりも長く上下方向へそれぞれ延びるようにして形成されている。即ち、開口52の上端は、ウエハボート38の上端に対応する位置以上の高さに延びて位置され、開口52の下端は、ウエハボート38の下端に対応する位置以下の高さに延びて位置されている。具体的には、図1に示されるように、ウエハボート38の上端と開口52の上端との間の高さ方向の距離L2は0mm~5mm程度の範囲内である。また、ウエハボート38の下端と開口52の下端との間の高さ方向の距離L3は0mm~350mm程度の範囲内である。
【0014】
反応管34の下端は、例えばステンレス鋼により形成される円筒形状のマニホールド54によって支持されている。マニホールド54の上端にはフランジ部56が形成されており、フランジ部56上に外管46の下端を設置して支持するようになっている。フランジ部56と外管46との下端との間にはOリング等のシール部材58を介在させて外管46内を気密状態にしている。
【0015】
マニホールド54の上部の内壁には、円環状の支持部60が設けられており、支持部60上に内管44の下端を設置してこれを支持するようになっている。マニホールド54の下端の開口には、蓋体36がOリング等のシール部材62を介して気密に取り付けられており、反応管34の下端の開口、即ち、マニホールド54の開口を気密に塞ぐようになっている。蓋体36は、例えばステンレス鋼により形成される。
【0016】
蓋体36の中央部には、磁性流体シール部64を介して回転軸66が貫通させて設けられている。回転軸66の下部は、ボートエレベータよりなる昇降手段68のアーム68Aに回転自在に支持されている。
【0017】
回転軸66の上端には回転プレート70が設けられており、回転プレート70上に石英製の保温台72を介してウエハWを保持するウエハボート38が載置されるようになっている。従って、昇降手段68を昇降させることによって蓋体36とウエハボート38とは一体として上下動し、ウエハボート38を反応管34内に対して挿脱できるようになっている。
【0018】
ガス供給手段40は、マニホールド54に設けられており、内管44内へ成膜ガス、エッチングガス、パージガス等のガスを導入する。ガス供給手段40は、複数(例えば3本)の石英製のガス供給管76、78、80を有している。各ガス供給管76、78、80は、内管44内にその長手方向に沿って設けられると共に、その基端がL字状に屈曲されてマニホールド54を貫通するようにして支持されている。
【0019】
ガス供給管76、78、80は、図2に示されるように、内管44のノズル収容部48内に周方向に沿って一列になるように設置されている。各ガス供給管76、78、80には、その長手方向に沿って所定の間隔で複数のガス孔76A、78A、80Aが形成されており、各ガス孔76A、78A、80Aより水平方向に向けて各ガスを放出できるようになっている。所定の間隔は、例えばウエハボート38に支持されるウエハWの間隔と同じになるように設定される。また、高さ方向の位置は、各ガス孔76A、78A、80Aが上下方向に隣り合うウエハW間の中間に位置するように設定されており、各ガスをウエハW間の空間部に効率的に供給できるようになっている。ガスの種類としては、成膜ガス、エッチングガス、及びパージガスが用いられ、各ガスを流量制御しながら必要に応じて各ガス供給管76、78、80を介して供給できるようになっている。
【0020】
マニホールド54の上部の側壁であって、支持部60の上方には、ガス出口82が形成されており、内管44と外管46との間の空間部84を介して開口52より排出される内管44内のガスを排気できるようになっている。ガス出口82には、排気手段41が設けられる。排気手段41は、ガス出口82に接続された排気通路86を有しており、排気通路86には、圧力調整弁88及び真空ポンプ90が順次介設されて、反応管34内を真空引きできるようになっている。
【0021】
外管46の外周側には、外管46を覆うように円筒形状の加熱手段42が設けられている。加熱手段42は、反応管34内に収容されるウエハWを加熱する。
【0022】
縦型熱処理装置1の全体の動作は、例えばコンピュータ等の制御手段95により制御される。また、縦型熱処理装置1の全体の動作を行うコンピュータのプログラムは、記憶媒体96に記憶されている。記憶媒体96は、例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、フラッシュメモリ、DVD等であってよい。
【0023】
[ハンドリング治具]
図3は、ウエハボート及び本実施形態に係るハンドリング治具を示した斜視図である。図3(a)は、ウエハボート及び本実施形態に係るハンドリング治具全体を示した斜視図である。
【0024】
図3(a)に示される通り、ウエハボート38は、天板381と、底板382と、支柱383と、リング部材384とを備える。リング部材384は、ウエハWを載置するためのリング状(円環状)の板状部材であり、天板381及び底板382と平行に、天板381と底板382との間に間隔を有して配列され、外周部が支柱383により支持されている。ウエハボート38は、基板を保持するので、基板保持具とも呼ばれる。また、ウエハボート38のうち、図3に示すような、リング部材384を有するウエハボート38は、リングボートと呼ばれる場合もある。
【0025】
ウエハボート38は、任意の枚数のウエハWを積載可能に構成できるが、例えば、50~200枚のウエハWを載置可能に構成されてもよい。一般的には、100枚、150枚程度のウエハWを積載する場合が多い。
【0026】
ここで、ウエハボート38は、そのリング部材384が非常に狭い間隔で設けられており、指を差し込むスペースも無いため、支柱383、天板381、底板382等を掴むことができず、非常に運搬し難い形状であり、そのままではハンドリングが困難である。また、材質も石英である場合が多く、落下させると破損するため、取り扱い及び運搬には物理的及び精神的な負担が伴う。
【0027】
そこで、本実施形態に係るハンドリング治具30を天板381及び底板382に装着することにより、ウエハボート38の取り扱いを容易にする。
【0028】
ハンドリング治具30は、種々の材料で構成することができるが、例えば、樹脂で構成してもよい。上述のように、ウエハボート38は一般的には石英で構成され、硬いとともに割れ易いという性質を有する。ハンドリング治具30を樹脂とすることにより、柔らかく、かつ割れる不安が無くなるので、材質という点でも、取り扱いが非常に容易になる。なお、樹脂としては、例えば、フッ素系の樹脂を用いてもよく、一例として、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)を用いてもよい。
【0029】
ハンドリング治具30は、天板保持治具10と、底板保持治具20とを有する。つまり、ハンドリング治具30は、天板保持治具10と底板保持治具20とをペアとして備える。
【0030】
天板保持治具10は、第1保持部材11と、第2保持部材12と、ヒンジ構造部13と、ロックピン14とを有する。第1保持部材11及び第2保持部材12は、円弧形状の部材であり、天板381の外周部を外側から覆うのに好適な形状を有する。円弧状の部材は、2つに限られる訳ではなく、3つ以上で構成することもできるが、機構が複雑になり、強度も弱くなるので、2つの部材、即ち、図3に示されるように、第1保持部材11と第2保持部材12とで構成されることが好ましい。
【0031】
第1保持部材11と第2保持部材12とは、一方の端部同士がヒンジ構造部13で連結され、第1保持部材11及び第2保持部材12が回動可能となる。これにより、図3に示されるように、ヒンジ構造部13の反対側の端部同士は自由に開閉できる構造とすることができる。
【0032】
ヒンジ構造部13と反対側の第1保持部材11及び第2保持部材12の端部同士は、ロックピン14で連結固定可能に構成されている。なお、その構造の詳細は後述する。
【0033】
また、第1保持部材11は、切り欠き112を有し、第2保持部材12は、切り欠き124、125を有する。切り欠き112、124、125は、支柱383が設けられた位置に対応して設けられる。つまり、天板保持治具10が天板381に装着されたときに、支柱383が切り欠き部112、124、125と一致し、支柱383と第1保持部材11及び第2保持部材12とが緩衝しないように設けられる。
【0034】
底部保持治具20は、第1保持部材21と、第2保持部材22と、ヒンジ構造部23と、ロックピン24とを備える。底部保持治具20は、底板382を保持するのに適した形状を有するが、構造及び機能は天板保持治具10とほぼ同様である。
【0035】
底部保持治具20の第1保持部材21において、切り欠き213、214が示されている。図3(a)に示される通り、支柱383の外側に突出する部分を切り欠き213、214で包含するような構成となり、支柱383の外面と第1保持部材21の内面とが緩衝(接触)して底部保持治具20が閉まらなくなる、といった事態を防止することができる。
【0036】
図3(b)は、ウエハボート及び本実施形態に係るハンドリング治具の下部を示した図である。図3(b)に示される通り、切り欠き213、214が支柱383と接触しない状態とすることができる。
【0037】
図4は、天板保持治具及び底板保持治具の詳細構成を示した分解斜視図である。図4(a)は、天板保持治具10の詳細構成を示した分解図である。
【0038】
図4(a)に示される通り、天板保持治具10は、第1保持部材11と、第2保持部材12と、ヒンジ構造部13と、ロックピン14と、板バネ15とを有する。第1保持部材10は、係合穴111を有する。また、第2保持部材12は、係合穴121、122と、切り欠き125と、連結穴123とを有する。ヒンジ構造部13は、ヒンジ支点131と、ネジ132と、圧入部材133とを有する。
【0039】
第1保持部材11は、ヒンジ支点131により第2保持部材12の係合穴121、122と係合される係合穴111を有し、係合穴111と係合穴121、122とが係合して係合穴111、121、122同士が重なって貫通穴となり、その貫通穴にヒンジ支点131を貫通させてネジ132と螺合させることにより、ヒンジ構造を構成する。つまり、ヒンジ支点131を中心として、第1保持部材11及び第2保持部材12が回動して開閉する構造とすることができる。
【0040】
第1保持部材11及び第2保持部材12は、円弧形状を有し、天板381の外縁部を覆う形状を有する。また、第1保持部材11及び第2保持部材12は、ともに高さ方向に2段構成となっており、1段目の保持部11a、12aと、2段目のハンドリング部11b、12bをそれぞれ有する。保持部11a、12aは、天板381を保持する部分であり、内周面がレールのような3面からなる窪み形状を有する。つまり、天板381を保持できるように、天板381の側面、上面、下面の3面を覆うことができるレール形状を有する。
【0041】
2段目のハンドリング部11b、12bは、ウエハボート38を運搬する際に取っ手となる部分である。つまり、ハンドリング部11b、12bの中央の開口から指を入れてハンドリング部11b、12bを掴むことによりウエハボート38を容易に運搬することができる。
【0042】
ヒンジ構造部13の反対側の第1保持部材11及び第2保持部材12の先端部には、先端同士が連結固定できる構造が設けられている。第2保持部材12の先端には、連結穴123が設けられている。第1保持部材11の先端は、連結穴は隠れていて見えないが、連結穴123と重なって1つの貫通穴を構成できる連結穴が形成されており、それらの連結穴が重なった状態でロックピン14を挿入することにより、第1保持部材11と第2保持部材12の先端を連結固定することができる。
【0043】
また、板バネ15が第2保持部材にネジ151を用いて固定されている。板バネ15は、ロックピン14の脱落を防止すべく、ロックピン14に付勢力を付与するように設けられる。つまり、板バネ15は、第1保持部材11と第2保持部材12との連結部分をまたぐとともにロックピン14に接触するように設けられ、ロックピン14に中心側に向かうような付勢力を付与し、ロックピン14が脱落しないように力を与えている。
【0044】
なお、本実施形態では、付勢手段として板バネ15を用いる例を挙げて説明したが、付勢力を第1保持部材11と第2保持部材12とが閉となる方向に向けて与えることができればよく、板バネ15以外の付勢手段を用いてもよい。
【0045】
また、図3で説明したように、第1保持部材11は切り欠き112有し、支柱383と緩衝しない構成となっている。また、第2保持部材12も、同様に切り欠き124,125を有している。
【0046】
図4(b)は、底部保持治具20の詳細構成を示した分解斜視図である。
【0047】
図4(b)に示される通り、底部保持治具20は、第1保持部材21と、第2保持部材22と、ヒンジ構造部23と、ロックピン24と、板バネ25とを有する。
【0048】
第1保持部材21は、ヒンジ構造部23側の端部に係合穴211を有し、ヒンジ構造部23と反対側の先端に連結穴212を有する。第2保持部材22は、ヒンジ構造部23側の端部に係合穴221、222を有し、ヒンジ構造部23と反対側の先端に連結穴223、224を有する。
【0049】
第1保持部材21は、ヒンジ支点231により第2保持部材22の係合穴221、222と係合される係合穴211を有し、係合穴211と係合穴221、222とが係合して係合穴211、221、222同士が重なって貫通穴となり、その貫通穴にヒンジ支点231を貫通させてネジ232と螺合させることにより、ヒンジ構造を構成する。つまり、ヒンジ支点231を中心として、第1保持部材21及び第2保持部材22が回動して開閉する構造とすることができる。
【0050】
第1保持部材21及び第2保持部材22は、円弧形状を有し、底板382の外縁部を覆う形状を有する。また、第1保持部材21及び第2保持部材22は、ともに深さ方向に2段構成となっており、1段目の保持部21a、22aと、2段目のハンドリング部21b、22bをそれぞれ有する。保持部21a、22aは、底板382を保持する部分であり、内周面がレールのような3面からなる窪み形状を有する。つまり、底板382を保持できるように、底板382の側面、上面、下面の3面を覆うことができるレール形状を有する。
【0051】
2段目のハンドリング部21b、22bは、ウエハボート38を運搬する際に取っ手となる部分である。つまり、ハンドリング部21b、22bの中央の開口から指を入れてハンドリング部21b、22bを掴むことによりウエハボート38を容易に運搬することができる。
【0052】
ヒンジ構造部23の反対側の第1保持部材21及び第2保持部材22の先端部には、先端同士が連結固定できる構造が設けられている。第2保持部材22の先端には、連結穴223、224が設けられている。第1保持部材21の先端には、先端が突出した部分に連結穴212が形成されており、それらの連結穴212、223、224が重なった状態でロックピン24を挿入することにより、第1保持部材21と第2保持部材22の先端を連結固定することができる。
【0053】
また、板バネ25が第2保持部材にネジ251を用いて固定されている。板バネ25は、ロックピン24に付勢力を付与するように設けられる。つまり、板バネ25は、第1保持部材21と第2保持部材22との連結部分をまたぐとともにロックピン24に接触するように設けられ、ロックピン24に中心側に向かうような付勢力を付与し、ロックピン24が脱落しないように力を与えている。
【0054】
なお、本実施形態では、付勢手段として板バネ25を用いる例を挙げて説明したが、付勢力を第1保持部材21と第2保持部材22とが閉となる方向に向けて与えることができればよく、板バネ25以外の付勢手段を用いてもよい。
【0055】
また、図3で説明したように、第1保持部材21は切り欠き213、214を有し、支柱383と緩衝しない構成となっている。第2保持部材22も、同様に切り欠き225、226を有しており、支柱383と緩衝しない構造となっている。
【0056】
図5は、天板保持治具のヒンジ構造部と反対側のロック構造の一例を示した図である。図5に示されるように、ロックピン14は着脱式であるが、板バネ15がロックピン14の外面に形成された溝14aに挿入されて付勢力を付与し、ロックピン14の脱落を防止して第1保持部材11と第2保持部材12との確実な固定連結を行っている。
【0057】
なお、この点は、底板保持治具でも同様の構成を有しており、ロックピン24が脱落しない構造となっている。
【0058】
図6は、ハンドリング治具30を装着したウエハボート38の一例を示した斜視図である。図6に示されるように、ハンドリング治具30をウエハボート38に装着することにより、中央から手を入れて、ハンドリング部10bを把持することが可能な状態となる。これにより、ウエハボート38のハンドリング性を向上させることができる。
【0059】
図7は、ハンドリング治具30を装着したウエハボート38の一例を示した側面図である。図7に示されるように、ハンドリング治具30、即ち、天板保持治具10及び底板保持治具20を天板381及び底板382にそれぞれ装着することにより、ハンドリング部10b、20bが底板381及び底板382とスペースを有して設けられ、運搬容易な形状となっていることが示されている。
【0060】
また、図7において、底板保持治具20と係合する支持台100が設けられており、底板保持治具20の段差と係合して安定した状態でウエハボート38を支持していることが示されている。このように、底板保持治具20を装着することにより、ウエハボート38の安定載置も可能となる。
【0061】
このように、本実施形態に係るハンドリング治具によれば、天板保持治具10と底板保持治具20のペアで確実にウエハボート38を保持するとともに、掴むのが容易なスペースを天板381上と底板382下に形成し、運搬を含むウエハボート38のハンドリング性を向上させることができる。また、材料としても、石英よりも柔らかくて壊れにくい材料、例えば樹脂を用いることにより、より一層ウエハボート38のハンドリング性を高めることができる。
【0062】
[ボートセット方法]
次に、本実施形態に係るハンドリング治具を用いて、ウエハボートを縦型熱処理装置に搬入する位置、つまり保温台72の上方にセットする方法について説明する。
【0063】
図8は、ウエハボート38を縦型熱処理装置の搬入位置まで運搬するための構成要素の一例を示した図である。図8に示されるように、ハンドリング治具30と、ボートセット治具160と、チューブカート170を用いてウエハボート38を搬送する。
【0064】
なお、ボートセット治具160は、受け渡し治具161と、アッパープレート162とを有する。
【0065】
図9は、ハンドリング治具30を装着したウエハボート38をボートセット治具160に移載する状態を示した図である。まず、ボートセット治具160の受け渡し治具161の上にハンドリング治具30を装着したウエハボート38を載置する。
【0066】
この作業は、人間が行う。つまり、ハンドリング治具30を装着したウエハボート38を人間が運び、受け渡し治具161上に載置する。
【0067】
受け渡し治具161上にウエハボート38が載置されたら、ハンドル166を回転させてアッパープレート162を上昇させ、U字状のアタッチメント163の上にウエハボート38を載せるようにする。アタッチメント163は、ウエハボート38を載置可能な段差構造があり、段差の下の段でウエハボート38を受ける構造になっている。
【0068】
なお、ボートセット治具160は、側板164とガイド165を備える。
【0069】
図10は、ハンドリング治具30の取り外しを説明するための図である。アタッチメント163にウエハボート38を載置する前に、ハンドリング治具30をウエハボート38から外す。ハンドリング治具30の取り外しは、例えば、底板保持治具20であれば、ロックピン24を外すことにより、底板保持治具20を開き、外すことができる。
【0070】
同様に、天板保持治具10についても、ロックピン14を外すことにより、ウエハボート38から天板保持治具10を容易に取り外すことができる。
【0071】
図11は、ウエハボート38がボートセット治具160のアタッチメント163上に載置された状態を示した図である。
【0072】
図11に示されるように、ハンドリング治具30が取り外されたウエハボート38は、アタッチメント163上に載置される。その際、ホルダー167でウエハボート38の底板382が固定される。この状態で、アッパープレート162の高さを調整する。その際、適切な高さは、位置決めピン173をピン穴173aに挿入することにより明確化されている構成としてもよい。
【0073】
また、アタッチメント163上にウエハボート38が載置されるときには、アタッチメント163のマーキングの位置とウエハボート38の柱の周方向位置を合わせるようにする。
【0074】
なお、アッパープレート162の高さは、縦型熱処理装置の機種に応じて定められた適切な高さがあるので、その高さに合わせてアッパープレート162の高さを調整する。
【0075】
ボートセット治具160ごと、チューブカート170上に載置される。
【0076】
図12は、移動前のチューブカートの状態を示した図である。ウエハボート38がチューブカート170上に所定の高さで載置された状態で、チューブカート170を前進させることによりウエハボート38を搬送する。
【0077】
図13は、ウエハボートをチューブカートで保温台72付近まで搬送した状態を示した図である。図13に示されるように、反応管34の下方に保温台72が配置されている。保温台72は、蓋体36上に載置されている。保温台72の上にウエハボート38が載置され、蓋体36が上昇することにより、反応管34の内部に配置される。
【0078】
よって、ウエハボート38を反応管34内に搬入するために、ウエハボート38をチューブカート170により保温台72の近くに搬送する。
【0079】
図14は、ウエハボート38を保温台72の前にセットした状態を示した図である。このように、チューブカート170で、保温台72の隣まで搬送することができる。なお、保温台72の上面には、ボート用位置決め治具180が載置されている。
【0080】
図15は、ボート用位置決め治具の一例を示した図である。図15に示されるように、ボート用位置決め治具180は、保温台72上に載置され、表面に複数(例えば、3個)の突起181を有する。突起181とウエハボート38の底面にある窪み(図示せず)とを係合させることにより、ウエハボート38の位置決めをすることができる。例えば、このようなボート用位置決め治具180を用いてウエハボート38を位置決めしてもよい。
【0081】
図16は、ウエハボート38を保温台72の真上まで移動させた状態を示した図である。図14の状態から、更にチューブカート170を前進させると、ウエハボート38を保温台72の真上に配置することができる。この状態で、ボート用位置決め治具180を用いて、ウエハボート38の位置決めを行う。
【0082】
図17は、ウエハボートを持ち上げて、ボートセット治具160を後退させる状態を示した図である。ボートセット治具160を後退させた後、ボート用位置決め治具180を取り外し、ウエハボート38を保温台72の真上まで再び移動させる。その後、ハンドル166を回してアタッチメント162を下降させる。ウエハボート38が保温台72上に位置決めして載置されたら、ボートセット治具160をチューブカート200の位置まで後退させ、チューブカート200を後退させる。これにより、保温台72上にウエハボート38を位置決めして載置できる。
【0083】
この後は、蓋体36を上昇させてウエハボート38を反応管34内に搬入し、成膜処理を行うことができる。
【0084】
このように、ハンドリグ治具30、ボートセット治具160及びチューブカート170を用いることにより、掴みにくいウエハボート38を容易に取り扱うことができ、保温台72までの搬送、保温台72上への載置を容易に行うことができる。
【0085】
以上説明したように、本実施形態に係るハンドリング治具によれば、ウエハボート38、特に円環状の板が複数枚所定間隔でウエハ載置用のプレートとして設けられているリングボートと呼ばれるタイプのウエハボート38であっても容易に掴み、運搬することが可能となり、ハンドリング性を著しく向上させることができる。
【0086】
以上、本開示の好ましい実施形態について詳説したが、本開示は、上述した実施形態に制限されることはなく、本開示の範囲を逸脱することなく、上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0087】
10 天板保持治具
11、21 第1保持部材
12、22 第2保持部材
13、23 ヒンジ構造部
14、24 ロックピン
15、25 板バネ
20 底板保持治具
30 ハンドリング治具
34 反応管
38 ウエハボート
44 内管
46 外管
76,78,80 ガス供給管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17