(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-21
(45)【発行日】2025-03-04
(54)【発明の名称】基板液処理装置および基板液処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20250225BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20250225BHJP
【FI】
H01L21/306 K
H01L21/68 A
(21)【出願番号】P 2021063130
(22)【出願日】2021-04-01
【審査請求日】2024-01-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】丸本 洋
【審査官】小▲高▼ 孔頌
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-032830(JP,A)
【文献】特開平05-152423(JP,A)
【文献】特開2019-067995(JP,A)
【文献】米国特許第06636626(US,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0012079(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0054271(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板液処理装置であって、
基板搬出入用の上部開口を有し、処理液を貯留する処理槽と、
複数の基板を、鉛直姿勢で、水平方向に予め定められた間隔を空けて並べて支持する基板支持部材と、
前記基板支持部材を、前記上部開口を通して、前記処理槽内の処理位置と、前記処理槽の上方の退避位置との間で昇降させる昇降機構と、
前記処理槽に貯留された処理液内で
前記処理位置にある前記基板支持部材により支持された前記複数の基板を撮像しうる位置に設けられた撮像部と、
前記処理槽に貯留された処理液内で前記処理位置にある前記基板支持部材により支持された前記複数の基板を前記撮像部により撮像することにより得られた画像データに基づいて、
前記処理槽に貯留された処理液内で前記基板支持部材により支持されている前記複数の基板の実際位置と前記基板の存在すべき基準位置との偏差が許容範囲にあるか否かを判定する基板位置判定を行う基板位置判定部と、
前記基板液処理装置の動作を制御する制御部と、
を備えた基板液処理装置。
【請求項2】
前記基板支持部材は、前記各基板が上方向に変位可能なように、前記各基板の下半部の周縁部を下方から支持するように構成されており、
前記基板液処理装置は、
前記上部開口の少なくとも一部を閉鎖することができる第1蓋体と、
前記第1蓋体を開閉させる第1蓋体開閉機構と、
前記第1蓋体に設けられた基板押さえ部材であって、前記複数の基板を支持した基板支持部材を前記処理位置に位置させ、かつ、前記第1蓋体を閉鎖位置に位置させたときに、前記基板支持部材により支持されている前記各基板の上半部の周縁部と係合して、前記各基板の上方向の変位を防止するとともに前記水平方向の変位も防止する、前記基板押さえ部材と、
をさらに備えた、請求項1に記載の基板液処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記複数の基板を支持した基板支持部材を前記処理槽に貯留された処理液に沈めた後であって前記第1蓋体を閉じる前の第1のタイミング、および、
前記複数の基板を支持した基板支持部材を前記処理槽に貯留された処理液に沈めた後であって前記第1蓋体を閉じた後の第2のタイミング、
のうちの少なくとも一方のタイミングで撮像された基板の画像データに基づいて前記基板位置判定部に前記基板位置判定を行わせる、請求項2に記載の基板液処理装置。
【請求項4】
前記基板位置判定部は前記第1のタイミングで撮像された基板の画像データに基づいて前記基板位置判定を行い、前記偏差が前記許容範囲内にあると前記基板位置判定部が判定した場合に、前記制御部は前記第1蓋体開閉機構により前記第1蓋体を閉鎖位置に移動させる、請求項3に記載の基板液処理装置。
【請求項5】
前記基板位置判定部は前記第2のタイミングで撮像された基板の画像データに基づいて前記基板位置判定を行い、前記偏差が前記許容範囲内にないと前記基板位置判定部が判定した場合に、前記制御部は、前記第1蓋体を開いてその後再び前記第1蓋体を閉鎖位置に移動させる開閉操作を前記第1蓋体開閉機構に実行させる、請求項3または4に記載の基板液処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記基板位置判定の結果に応じて、前記第1蓋体開閉機構に、前記開閉操作を、前記第1蓋体を最後に閉鎖位置に移動させた後における前記偏差が前記許容範囲内に収まるようになるまで予め定められた回数を上限として繰り返し実行させる、請求項5に記載の基板液処理装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1蓋体が開かれてその後再び前記第1蓋体が閉鎖位置に移動させられるまでの間に、前記昇降機構により前記基板支持部材を昇降させて前記基板支持部材により支持された前記基板を揺する、請求項5または6に記載の基板液処理装置。
【請求項8】
前記処理位置にある前記基板支持部材の下方において前記処理槽内に設けられ、バブリング用のガスを吐出するガスノズルと、
前記ガスノズルにガスを供給するガス供給機構と、
をさらに備え、
前記制御部は、前記ガス供給機構を制御して、前記第1蓋体が開かれてその後再び前記第1蓋体が閉鎖位置に移動させられるまでの間に、前記ガスノズルからのバブリング用のガスの吐出を停止させる、請求項5または6に記載の基板液処理装置。
【請求項9】
前記上部開口は、第1の領域および第2の領域からなり、前記第1蓋体は前記第1の領域を閉鎖することができるように設けられ、
前記基板液処理装置は、
前記第2の領域を閉鎖することができるように設けられた第2蓋体と、
前記第2蓋体を開閉させる第2蓋体開閉機構と、
をさらに備え、
前記制御部は、前記第2のタイミングで基板の撮像を行うときに、前記第2蓋体開閉機構により前記第2蓋体を開いた状態とし、前記上部開口の前記第2の領域を介して前記基板の撮像が行われるようにする、請求項5に記載の基板液処理装置。
【請求項10】
前記処理位置にある前記基板支持部材の下方において前記処理槽内に設けられ、バブリング用のガスを吐出するガスノズルと、
前記ガスノズルにガスを供給するガス供給機構と、
をさらに備え、
前記制御部は、前記ガス供給機構を制御して、前記基板支持部材により支持された前記複数の基板が前記処理槽に貯留された処理液中に沈められた後、前記第1蓋体が閉鎖位置に移動させられるまでは前記ガスノズルからのバブリング用のガスの吐出を停止させ、前記第1蓋体が閉鎖位置に移動した後に前記ガスノズルからバブリング用のガスを吐出させる、請求項2に記載の基板液処理装置。
【請求項11】
前記基板位置判定部は、前記基板位置判定において、前記基板支持部材により支持されている前記複数の基板のうちの少なくとも隣接する2つの基板の間の距離が予め定められた閾値よりも小さいときに、前記偏差が許容範囲にないと判定する、偏差が許容範囲にないと判定する、請求項2に記載の基板液処理装置。
【請求項12】
前記基板位置判定部は、前記基板位置判定において、前記基板支持部材により支持されている各基板における前記基準位置と前記実際位置との偏差を個別に求め、各基板に対して個別に前記偏差が許容範囲にあるか否かを判定する、請求項2に記載の基板液処理装置。
【請求項13】
前記撮像部は、前記処理位置にある前記基板支持部材により保持された前記複数の基板の実質的にAPEXのみが画像上に現れるような方向から前記複数の基板を撮影するような位置に設けられている、請求項1から12のうちのいずれか一項に記載の基板液処理装置。
【請求項14】
前記撮像部が前記基板を撮像するために必要な照明光を照射する照明ユニットをさらに備え、前記照明ユニットは前記APEXが最も明るく写るように前記照明光を照射し得る位置に配置されている、請求項13に記載の基板液処理装置。
【請求項15】
前記基板位置判定部は、前記撮像部により取得された画像中において輝度のピークを呈する位置に各基板のAPEXが存在すると見なし、各ピークの位置を各基板の前記実際位置と見なして前記基板位置判定を行うように構成されている、請求項13または14に記載の基板液処理装置。
【請求項16】
前記撮像部は、1つ以上のカメラを含み、前記1つ以上のカメラは、前記処理槽の上方の位置、前記処理槽の側方の位置および前記処理槽の下方の位置の1つ以上の位置に設けられている、請求項1から15うちのいずれか一項に記載の基板液処理装置。
【請求項17】
前記撮像部は、前記基板支持部材により支持された前記複数の基板の配列方向に沿って配置された撮像素子を有するリニアイメージセンサを含む、請求項1から15のうちのいずれか一項に記載の基板液処理装置。
【請求項18】
前記基板位置判定部により、隣接する2つの基板が接触したと判断された場合には、前記制御部は、当該2つの基板の各々を、他の基板と接触歴のある基板として記憶する、請求項1から17のうちのいずれか一項に記載の基板液処理装置。
【請求項19】
基板搬出入用の上部開口を有し、処理液を貯留する処理槽と、複数の基板を、鉛直姿勢で、水平方向に予め定められた間隔を空けて並べて支持する基板支持部材と、前記基板支持部材を、前記上部開口を通して、前記処理槽内の処理位置と、前記処理槽の上方の退避位置との間で昇降させる昇降機構と、を備えた基板液処理装置を用いて行われる基板液処理方法において、
撮像部により、前記処理槽に貯留された処理液内で前記基板支持部材により支持された前記複数の基板を撮像することと、
前記撮像部が撮像した画像データに基づいて、前記基板支持部材により支持されている前記複数の基板の実際位置と前記基板の存在すべき基準位置との偏差が許容範囲にあるか否かを判定する基板位置判定を、基板位置判定部により行うことと、
前記基板位置判定の結果に応じて、制御部により、前記基板液処理装置の動作を制御することと、
を備えた基板液処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板液処理装置および基板液処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程には、処理槽に貯留したリン酸水溶液中に半導体ウエハ等の基板を浸漬し、基板の表面に形成したシリコン窒化膜をウエットエッチングするシリコン窒化膜エッチング工程が含まれる。基板は、鉛直姿勢で水平方向に等間隔で並べられた状態で基板支持部材により支持された状態でリン酸水溶液中に浸漬される。
【0003】
基板の処理中には、処理槽内に底部から液面に向かう処理液の流れが形成され、また、処理の均一性を向上させるため窒素ガスバブリングが行われる。このため、基板は基板ホルダから浮き上がる方向の力を受ける。特許文献1の基板液処理装置では、基板が処理液から受ける力により基板が基板支持部材から脱落することあるいは位置ずれすることを防止するために、基板の上方への変位を防止する基板押さえ部材を処理槽の蓋に設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、処理槽に貯留された処理液に浸漬された状態で基板が基板支持部材に適切に保持されていることを確認する技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態によれば、基板液処理装置であって、基板搬出入用の上部開口を有し、処理液を貯留する処理槽と、複数の基板を、鉛直姿勢で、水平方向に予め定められた間隔を空けて並べて支持する基板支持部材と、前記基板支持部材を、前記上部開口を通して、前記処理槽内の処理位置と、前記処理槽の上方の退避位置との間で昇降させる昇降機構と、前記処理槽に貯留された処理液内で前記基板支持部材により支持された前記複数の基板を撮像しうる位置に設けられた撮像部と、前記撮像部が撮像した画像データに基づいて、前記基板支持部材により支持されている前記複数の基板の実際位置と前記基板の存在すべき基準位置との偏差が許容範囲にあるか否かを判定する基板位置判定を行う基板位置判定部と、前記基板液処理装置の動作を制御する制御部と、を備えた基板液処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
上記実施形態によれば、処理槽に貯留された処理液に浸漬された状態で基板が基板保持部材に適切に保持されていることを確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】基板液処理システムの全体構成を示す概略平面図である。
【
図2】基板液処理システムに組み込まれたエッチング装置の構成を示す系統図である。
【
図3】エッチング装置の処理槽の概略横断方向縦断面図である。
【
図6】閉鎖位置にある蓋体及びその周辺の部材のみを取り出して詳細に示した処理槽の横断方向縦断面図である。
【
図8】
図6に示した閉鎖位置から開放位置に移動した蓋体を示した横断方向縦断面図である。
【
図9】処理槽の上方に配置されたカメラおよび照明を示す概略図である。
【
図10】基板支持部材と基板押さえとの間に基板が適切に配置されている状態を示す概略図である。
【
図11】カメラにより撮像された画像を示す概略図である。
【
図13】基板支持部材と基板押さえとの間に基板が不適切に配置されている状態(ブリッジが生じている状態)を示す概略図である。
【
図14】ブリッジが生じているときのグレイ値の分布を示す概略図である。
【
図15】処理槽に基板を沈めた直後の基板の揺れ動きについて説明するグラフである。
【
図16】カメラおよび照明の他の配置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず本発明の一実施形態に係る基板液処理装置1が組込まれた基板液処理システム1A全体について述べる。
【0010】
図1に示すように、基板液処理システム1Aは、キャリア搬入出部2と、ロット形成部3と、ロット載置部4と、ロット搬送部5と、ロット処理部6と、制御部7とを有する。
【0011】
このうちキャリア搬入出部2は、複数枚(たとえば、25枚)の基板(シリコンウエハ)8を水平姿勢で上下に並べて収容したキャリア9の搬入及び搬出を行う。
【0012】
このキャリア搬入出部2には、複数個のキャリア9を載置するキャリアステージ10と、キャリア9の搬送を行うキャリア搬送機構11と、キャリア9を一時的に保管するキャリアストック12,13と、キャリア9を載置するキャリア載置台14とが設けられている。ここで、キャリアストック12は、製品となる基板8をロット処理部6で処理する前に一時的に保管する。また、キャリアストック13は、製品となる基板8をロット処理部6で処理した後に一時的に保管する。
【0013】
そして、キャリア搬入出部2は、外部からキャリアステージ10に搬入されたキャリア9を、キャリア搬送機構11を用いてキャリアストック12やキャリア載置台14に搬送する。また、キャリア搬入出部2は、キャリア載置台14に載置されたキャリア9を、キャリア搬送機構11を用いてキャリアストック13やキャリアステージ10に搬送する。キャリアステージ10に搬送されたキャリア9は、外部へ搬出される。
【0014】
ロット形成部3は、1又は複数のキャリア9に収容された基板8を組合せて同時に処理される複数枚(たとえば、50枚)の基板8からなるロットを形成する。なお、ロットを形成するときは、隣接する各2枚の基板8のパターンが形成されている表面が互いに対向するようにロットを形成してもよく、また、パターンが形成されている基板8の表面がすべて同じ方向を向くようにロットを形成してもよい。
【0015】
このロット形成部3には、複数枚の基板8を搬送する基板搬送機構15が設けられている。なお、基板搬送機構15は、基板8の搬送途中で基板8の姿勢を水平姿勢から垂直姿勢及び垂直姿勢から水平姿勢に変更させることができる。
【0016】
そして、ロット形成部3は、キャリア載置台14に載置されたキャリア9から基板搬送機構15を用いて基板8をロット載置部4に搬送し、ロットを形成する基板8をロット載置部4に載置する。また、ロット形成部3は、ロット載置部4に載置されたロットを基板搬送機構15でキャリア載置台14に載置されたキャリア9へ搬送する。なお、基板搬送機構15は、複数枚の基板8を支持するための基板支持部として、処理前(ロット搬送部5で搬送される前)の基板8を支持する処理前基板支持部と、処理後(ロット搬送部5で搬送された後)の基板8を支持する処理後基板支持部の2種類を有している。これにより、処理前の基板8等に付着したパーティクル等が処理後の基板8等に転着するのを防止する。
【0017】
ロット載置部4は、ロット搬送部5によってロット形成部3とロット処理部6との間で搬送されるロットをロット載置台16で一時的に載置(待機)する。
【0018】
このロット載置部4には、処理前(ロット搬送部5で搬送される前)のロットを載置する搬入側ロット載置台17と、処理後(ロット搬送部5で搬送された後)のロットを載置する搬出側ロット載置台18とが設けられている。搬入側ロット載置台17及び搬出側ロット載置台18には、1ロット分の複数枚の基板8が垂直姿勢で前後に並べて載置される。
【0019】
そして、ロット載置部4では、ロット形成部3で形成したロットが搬入側ロット載置台17に載置され、そのロットがロット搬送部5を介してロット処理部6に搬入される。また、ロット載置部4では、ロット処理部6からロット搬送部5を介して搬出されたロットが搬出側ロット載置台18に載置され、そのロットがロット形成部3に搬送される。
【0020】
ロット搬送部5は、ロット載置部4とロット処理部6との間やロット処理部6の内部間でロットの搬送を行う。
【0021】
このロット搬送部5には、ロットの搬送を行うロット搬送機構19が設けられている。ロット搬送機構19は、ロット載置部4とロット処理部6に沿わせて配置したレール20と、複数枚の基板8を保持しながらレール20に沿って移動する移動体21とで構成する。移動体21には、垂直姿勢で前後に並んだ複数枚の基板8を保持する基板保持体22が進退自在に設けられている。
【0022】
そして、ロット搬送部5は、搬入側ロット載置台17に載置されたロットをロット搬送機構19の基板保持体22で受取り、そのロットをロット処理部6に受け渡す。また、ロット搬送部5は、ロット処理部6で処理されたロットをロット搬送機構19の基板保持体22で受取り、そのロットを搬出側ロット載置台18に受け渡す。さらに、ロット搬送部5は、ロット搬送機構19を用いてロット処理部6の内部においてロットの搬送を行う。
【0023】
ロット処理部6は、垂直姿勢で前後に並んだ複数枚の基板8を1ロットとしてエッチングや洗浄や乾燥などの処理を行う。
【0024】
このロット処理部6には、基板8の乾燥処理を行う乾燥処理装置23と、基板保持体22の洗浄処理を行う基板保持体洗浄処理装置24と、基板8の洗浄処理を行う洗浄処理装置25と、基板8のエッチング処理を行う2台の本発明によるエッチング処理装置(基板液処理装置)1とが並べて設けられている。
【0025】
乾燥処理装置23は、処理槽27と、処理槽27に昇降自在に設けられた基板昇降機構28とを有する。処理槽27には、乾燥用の処理ガス(IPA(イソプロピルアルコール)等)が供給される。基板昇降機構28には、1ロット分の複数枚の基板8が垂直姿勢で前後に並べて保持される。乾燥処理装置23は、ロット搬送機構19の基板保持体22からロットを基板昇降機構28で受取り、基板昇降機構28でそのロットを昇降させることで、処理槽27に供給した乾燥用の処理ガスで基板8の乾燥処理を行う。また、乾燥処理装置23は、基板昇降機構28からロット搬送機構19の基板保持体22にロットを受け渡す。
【0026】
基板保持体洗浄処理装置24は、処理槽29を有し、この処理槽29に洗浄用の処理液及び乾燥ガスを供給できるようになっており、ロット搬送機構19の基板保持体22に洗浄用の処理液を供給した後、乾燥ガスを供給することで基板保持体22の洗浄処理を行う。
【0027】
洗浄処理装置25は、洗浄用の処理槽30とリンス用の処理槽31とを有し、各処理槽30,31に基板昇降機構32,33を昇降自在に設けている。洗浄用の処理槽30には、洗浄用の処理液(SC-1等)が貯留される。リンス用の処理槽31には、リンス用の処理液(純水等)が貯留される。
【0028】
エッチング処理装置1は、エッチング用の処理槽34とリンス用の処理槽35とを有し、各処理槽34,35に基板昇降機構36,37が昇降自在に設けられている。エッチング用の処理槽34には、エッチング用の処理液(リン酸水溶液)が貯留される。リンス用の処理槽35には、リンス用の処理液(純水等)が貯留される。上述のように、エッチング処理装置1は本発明による基板液処理装置となっている。
【0029】
これら洗浄処理装置25とエッチング処理装置1は、同様の構成となっている。エッチング処理装置(基板液処理装置)1について説明すると、基板昇降機構36には、1ロット分の複数枚の基板8が垂直姿勢で前後に並べて保持される。エッチング処理装置1において、ロット搬送機構19の基板保持体22からロットを基板昇降機構36で受取り、基板昇降機構36でそのロットを昇降させることでロットを処理槽34のエッチング用の処理液に浸漬させて基板8のエッチング処理を行う。その後、エッチング処理装置1は、基板昇降機構36からロット搬送機構19の基板保持体22にロットを受け渡す。また、ロット搬送機構19の基板保持体22からロットを基板昇降機構37で受取り、基板昇降機構37でそのロットを昇降させることでロットを処理槽35のリンス用の処理液に浸漬させて基板8のリンス処理を行う。その後、基板昇降機構37からロット搬送機構19の基板保持体22にロットを受け渡す。
【0030】
制御部7は、基板液処理システム1Aの各部(キャリア搬入出部2、ロット形成部3、ロット載置部4、ロット搬送部5、ロット処理部6、エッチング処理装置1)の動作を制御する。
【0031】
この制御部7は、たとえばコンピュータからなり、コンピュータで読み取り可能なMを備える。記憶媒体38には、基板液処理装置1において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部7は、記憶媒体38に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって基板液処理装置1の動作を制御する。なお、プログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体38に記憶されていたものであって、他の記憶媒体から制御部7の記憶媒体38にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体38としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
【0032】
上述のようにエッチング処理装置1の処理槽34では、所定濃度の薬剤(リン酸)の水溶液(リン酸水溶液)を処理液(エッチング液)として用いて基板8に液処理(エッチング処理)が施される。
【0033】
次に、エッチング処理装置(基板液処理装置)1の概略構成及び配管系統について
図2を参照して説明する。
【0034】
エッチング処理装置1は、処理液として所定濃度のリン酸水溶液を貯留する前述した処理槽34を有している。処理槽34は、内槽34Aと、外槽34Bとを有する。外槽34Bには、内槽34Aからオーバーフローしたリン酸水溶液が流入する。外槽34Bの液位は、内槽34Aの液位よりも低く維持される。
【0035】
外槽34Bの底部には、循環ライン50の上流端が接続されている。循環ライン50の下流端は、内槽34A内に設置された処理液供給ノズル49に接続されている。循環ライン50には、上流側から順に、ポンプ51、ヒータ52及びフィルタ53が介設されている。ポンプ51を駆動させることにより、外槽34Bから循環ライン50及び処理液供給ノズル49を経て内槽34A内に送られ、その後再び内槽34Aから外槽34Bへと流出する、リン酸水溶液の循環流が形成される。
【0036】
処理槽34、循環ライン50及び循環ライン50内の機器(51,52,53等)により液処理部39が形成される。また、処理槽34及び循環ライン50により循環系が構成される。
【0037】
内槽34A内の処理液供給ノズル49の下方に、内槽34A内にあるリン酸水溶液中に不活性ガス例えば窒素ガスの気泡を吐出するための(バブリングを行うための)ガスノズル60が設けられている。ガスノズル60には、ガス供給源60Bから、開閉弁、流量制御弁、流量計などから構成される流量調節器60Cを介して、不活性ガス例えば窒素ガスが供給される。
【0038】
処理槽34には、前述した基板昇降機構36が付設されている。基板昇降機構36は、複数の基板8を垂直に起立した姿勢で水平方向に間隔をあけて配列させた状態で保持することができ、また、この状態で昇降することができる。
【0039】
エッチング処理装置1は、液処理部39にリン酸水溶液を供給するリン酸水溶液供給部40と、液処理部39に純水を供給する純水供給部41と、液処理部39にシリコン溶液を供給するシリコン供給部42と、液処理部39からリン酸水溶液を排出するリン酸水溶液排出部43とを有する。
【0040】
リン酸水溶液供給部40は、処理槽34及び循環ライン50からなる循環系内、すなわち液処理部39内のいずれかの部位、好ましくは図示したように外槽34Bに所定濃度のリン酸水溶液を供給する。リン酸水溶液供給部40は、リン酸水溶液を貯留するタンクからなるリン酸水溶液供給源40Aと、リン酸水溶液供給源40Aと外槽34Bとを接続するリン酸水溶液供給ライン40Bと、リン酸水溶液供給ライン40Bに上流側から順に介設された流量計40C、流量制御弁40D及び開閉弁40Eとを有している。リン酸水溶液供給部40は、流量計40C及び流量制御弁40Dを介して、制御された流量で、リン酸水溶液を外槽34Bに供給することができる。
【0041】
純水供給部41は、リン酸水溶液を加熱することにより蒸発した水分を補給するために純水を供給する。この純水供給部41は、所定温度の純水を供給する純水供給源41Aを含み、この純水供給源41Aは外槽34Bに流量調節器41Bを介して接続されている。流量調節器41Bは、開閉弁、流量制御弁、流量計などから構成することができる。
【0042】
シリコン供給部42は、シリコン含有化合物溶液例えばコロイダルシリコンを分散させた液を貯留するタンクからなるシリコン供給源42Aと、流量調節器42Bとを有している。流量調節器42Bは、開閉弁、流量制御弁、流量計などから構成することができる。
【0043】
リン酸水溶液排出部43は、液処理部39及び循環ライン50からなる循環系内、すなわち液処理部39内にあるリン酸水溶液を排出するために設けられる。リン酸水溶液排出部43は、循環ライン50から分岐する排出ライン43Aと、排出ライン43Aに上流側から順次設けられた流量計43B、流量制御弁43C、開閉弁43D及び冷却タンク43Eとを有する。リン酸水溶液排出部43は、流量計43B及び流量制御弁43Cを介して、制御された流量で、リン酸水溶液を排出することができる。
【0044】
冷却タンク43Eは、排出ライン43Aを流れてきたリン酸水溶液を一時的に貯留するとともに冷却する。冷却タンク43Eから流出したリン酸水溶液(符号43Fを参照)は、工場廃液系(図示せず)に廃棄してもよいし、当該リン酸水溶液中に含まれるシリコンを再生装置(図示せず)により除去した後に、リン酸水溶液供給源40Aに送り再利用してもよい。
【0045】
図示例では、排出ライン43Aは、循環ライン50(図ではフィルタドレンの位置)に接続されているが、これには限定されず、循環系内の他の部位、例えば内槽34Aの底部に接続されていてもよい。
【0046】
排出ライン43Aには、リン酸水溶液中のシリコン濃度を測定するシリコン濃度計43Gが設けられている。また、循環ライン50から分岐して外槽34Bに接続された分岐ライン55Aに、リン酸水溶液中のリン酸濃度を測定するリン酸濃度計55Bが介設されている。外槽34Bには、外槽34B内の液位を検出する液位計44が設けられている。
【0047】
次に、
図3~
図7を参照してエッチング処理装置1の処理槽34の構成について詳細に説明する。説明の便宜のため、XYZ直交座標系を設定し、必要に応じて参照する。なお、X負方向を「前側」または「前方」、X正方向を「後側」または「後方」、Y負方向を「右側」または「右方」、Y正方向を「左側」または「左方」と呼ぶこともある。
【0048】
前述したように、処理槽34は、上部を開放させた内槽34Aと、上部を開放させた外槽34Bとを有する。内槽34Aは、外槽34Bの内部に収容されている。外槽34Bには、内槽34Aからオーバーフローしたリン酸水溶液が流入する。液処理が実行されている間、内槽34Aの底部を含む大部分は、外槽34B内のリン酸水溶液中に浸漬される。
【0049】
外槽34Bは液受け容器(シンク)80の内部に収容されており、外槽34Bと液受け容器80との間にドレン空間81が形成されている。ドレン空間81の底部にはドレンライン82が接続されている。
【0050】
処理液供給ノズル49は、内槽34A内をX方向(水平方向)に延びる筒状体からなる。処理液供給ノズル49は、その周面に穿設された複数の吐出口49D(
図3及び
図4を参照)から、基板昇降機構36に保持された基板8に向かって処理液を吐出する。図では2本の処理液供給ノズル49が設けられているが、3本以上の処理液供給ノズル49を設けてもよい。処理液供給ノズル49には、鉛直方向に延びる配管49Aから処理液(リン酸水溶液)が供給される。
【0051】
ガスノズル60は、内槽34A内の処理液供給ノズル49よりも低い高さ位置をX方向(水平方向)に延びる筒状体からなる。ガスノズル60は、その周面に穿設された複数の吐出口60D(
図3及び
図4を参照)から、不活性ガス(例えば窒素ガス)の気泡を吐出する。不活性ガスのバブリングにより、内槽34A内におけるリン酸水溶液の沸騰状態を安定化させることができる。ガスノズル60には、鉛直方向に延びる配管60Aから処理液(リン酸水溶液)が供給される。
【0052】
基板昇降機構36は、図示しない昇降機構により昇降する鉛直方向(Z方向)に延びる支持板36Aと、支持板36Aにより一端が支持される水平方向(X方向)に延びる一対の基板支持部材36Bとを有している(
図9も参照)。各基板支持部材36Bは、水平方向(X方向)に間隔を開けて配列された複数(例えば50~52個)の基板保持溝(図示せず)を有している。基板保持溝には、基板8の周縁部が挿入される。基板昇降機構36は、複数(例えば50~52枚)の基板8を、鉛直姿勢で、水平方向(X方向)に間隔を開けた状態で保持することができる。このような基板昇降機構36は当該技術分野において周知であり、詳細な構造の図示及び説明は省略する。
【0053】
処理槽34には、内槽34Aの上部開口を開閉するための第1蓋体71及び第2蓋体72が設けられている。第1蓋体71及び第2蓋体72は、それぞれ、水平方向(X方向)に延びる回転軸71S、72Sに結合されている。回転軸71S、72Sは、液受け容器80に固定された軸受け83及び回転アクチュエータ84(
図4、
図5を参照)に連結されている。回転アクチュエータ84を動作させることにより、第1蓋体71及び第2蓋体72は、水平方向(X方向)に延びる各々の回転軸線を中心として、内槽34Aの上部開口の第1領域(左半部)及び第2領域(右半部)をそれぞれ覆う閉鎖位置(
図3及び
図6に示す位置)と、概ね直立状態となって内槽34Aの上部開口の第1領域及び第2領域を開放する開放位置(
図8に示す位置)との間で回転(旋回)することができる(
図3中の矢印SW1,SW2を参照)。
【0054】
第1蓋体71及び第2蓋体72は内槽34Aの上部開口のうち、支持板36A、配管49A,60Aが設けられている領域を覆っていない。
【0055】
エッチング処理装置1の通常運転中、第1蓋体71及び第2蓋体72は、基板昇降機構36により保持された基板8の内槽34Aへの搬入/搬出が行われるとき以外は、閉鎖位置に位置し、内槽34A内にあるリン酸水溶液の温度低下を防止するとともに沸騰するリン酸水溶液から生じた水蒸気が処理槽34の外部に逃げることを抑制する。
【0056】
第1蓋体71は、真上から見て概ね矩形の本体部71Aと、X方向に延びる第1飛沫遮蔽部71B、第2飛沫遮蔽部71C及び閉鎖部71Dと、Y方向に延びる第3飛沫遮蔽部71Eとを有する。同様に、第2蓋体72は、概ね矩形の本体部72Aと、X方向に延びる第1飛沫遮蔽部72B、第2飛沫遮蔽部72C及び閉鎖部72Dと、Y方向に延びる第3飛沫遮蔽部72Eとを有する。
【0057】
本体部71Aの上面には大きな矩形の凹所71Rが形成されている。凹所71Rは、底壁711R及び4つの側壁712R、713R,714R,715Rにより画定されている。
【0058】
第1蓋体71が閉鎖位置にあるときに、内槽34Aから外槽34Bへのリン酸水溶液のオーバーフロー(
図6の矢印OFを参照)を妨げないように、内槽34Aの側壁と、これに近接して対面する側壁712R、713Rとの間には隙間が設けられている。なお、図示はしていないが、内槽34Aの4つの側壁の上端には、オーバーフローが円滑に行われるように、間隔を空けて複数のV字形の切り欠きが形成されている。
【0059】
第1蓋体71の底壁711Rは、Y方向に第2蓋体72から離れるに従って(Y方向に内槽34Aの側壁に近づくに従って)高くなるように傾斜している。この傾斜により、上記のオーバーフローがスムーズに行われる。
【0060】
内槽34A内のリン酸水溶液は沸騰状態にあるか、あるいはバブリングが施されているため、内槽34Aから外槽34Bにオーバーフローするリン酸水溶液と一緒にリン酸水溶液の飛沫も内槽34Aから飛び出す。この飛び出した飛沫は、閉鎖位置にある第1蓋体71の第1飛沫遮蔽部71Bに衝突し、内槽34Aの側壁と外槽34Bの側壁との間の空間に落ち、外槽34Bの外側には飛散しない。閉鎖位置にある第1蓋体71の第1飛沫遮蔽部71Bの下端は、近接する内槽34Aの側壁の上端よりも少なくとも低い位置にあることが好ましい。
【0061】
第2飛沫遮蔽部71Cは、第1蓋体71が開放位置にあるときに、第1蓋体71が閉鎖位置にあるときの第1飛沫遮蔽部71Bと同様の役割を果たす。開放位置にある第1蓋体71の第1飛沫遮蔽部71Bの下端は、近接する内槽34Aの側壁の上端よりも少なくとも低い位置にあることが好ましい。
【0062】
閉鎖部71Dは、第1蓋体71が開放位置にあるときに(
図8を参照)、内槽34Aの側壁の上端と外槽34Bの側壁の上端との間の隙間のうちの、回転軸71Sから外槽34Bの側壁までの領域の上方を覆う。閉鎖部71Dは、第1蓋体71が閉鎖位置にあるときに本体部71Aの上面に付着した液(例えば、処理槽34の上方を濡れた基板が通過したときに当該基板から落下した液)を、第1蓋体71が開放位置に位置したときに外槽34Bと液受け容器80との間のドレン空間81に案内し、当該液が外槽34B内に流入することを防止する。ドレン空間81に入った液は、ドレンライン82から廃棄される。
【0063】
第3飛沫遮蔽部71Eは、基板昇降機構36から遠い側において、内槽34Aの側壁と外槽34Bの側壁との間の空間の上方で延びるように設けられている。第3飛沫遮蔽部71Eは、第1蓋体71の端縁に沿って、当該端縁の全長に亘って、回転軸71SからY方向に延びている。第3飛沫遮蔽部71Eは、第1蓋体71が閉鎖位置にあるときに、第1飛沫遮蔽部71Bと同様の役割を果たす。開放位置にある第1蓋体71の第3飛沫遮蔽部71Eの下端は、近接する内槽34Aの側壁の上端よりも少なくとも低い位置にあることが好ましい。
【0064】
基板昇降機構36に近い側には第1蓋体71のY方向に延びる端縁に沿って延びる飛沫遮蔽部を設けなくてもよい。X正方向に飛散するリン酸水溶液は、基板昇降機構36の支持板36A、配管49A,60A等に衝突するため、外槽34Bまでは殆ど到達しないからである。
【0065】
第2蓋体72は第1蓋体71に対して概ね鏡面対称に形成されており、第1蓋体71及び第2蓋体72の構造は互いに概ね同じである。両者の相違点は、後述する付属部品(板状体73P、基板押さえ74)の有無にある。従って、第1蓋体71の構成及び作用に関する説明は、第2蓋体72の構成及び作用に関する説明に援用することができる。第1蓋体71及び第2蓋体72の互いに対応する部材(対称位置にある部材、同じ機能を有する部材)の参照符号の末尾には同じアルファベットが付けられており、参照符号の頭二桁が「71」であるか「72」であるかの相違しかない。
【0066】
図6に示すように、第1蓋体71及び第2蓋体72が閉鎖位置にあるとき、第1蓋体71の底壁711Rから上方に延びる側壁712Rと第2蓋体72の底壁721Rから上方に延びる側壁722Rとが互いに対面し、両側壁の間に高さHの隙間Gが形成される。凹所71R、72Rを設けることにより、高さHの隙間を設けることに起因する第1蓋体71及び第2蓋体72の重量の増大を抑制することができる。
【0067】
図6に示すように閉鎖位置にある第1蓋体71の本体部71Aの下面(底壁711Rの下面)及び第2蓋体72の本体部72Aの下面(底壁721Rの下面)が内槽34A内の処理液の液面に接している場合、第1蓋体71と第2蓋体との間の隙間から、沸騰しているかあるいはバブリングされているリン酸水溶液が上方に飛び出し、周囲に飛散することがある。しかしながら、上述したように高さHの隙間Gを設けることにより、隙間Gから処理液が外方に飛び出し難くなる。この効果を実現するために、高さHは、例えば約5cm以上とすることができる。
【0068】
内槽34A内の処理液がリン酸水溶液である場合、第1蓋体71及び第2蓋体72のうち少なくとも本体部71A,72Aは処理液により侵されない、例えば石英などの材料により形成される。本体部71A、72Aが石英により形成された場合、石英同士が衝突して割れや欠けが生じるおそれがあるが、これを防止するため、第1蓋体71及び第2蓋体72が閉鎖位置にあるときに本体部71A,72A同士が接触しないように両者の間に隙間を設けることが望ましい。本体部71A,72A同士の間に隙間を設けた場合には、その隙間を通って処理槽34内特に内槽34A内のリン酸水溶液が外方に飛散するおそれがある。しかしながら、上記のような高さHの隙間Gを設けることにより、隙間Gからのリン酸水溶液の飛散を少なくとも大幅に抑制することが可能となる。
【0069】
また、オーバーフローを円滑にするために、前述したように底壁711R(721R)に傾斜を付け、かつ、底壁711R(721R)を内槽34A内のリン酸水溶液に接液させる場合には、底壁711R(721R)から上方に延びる側壁712R(722R)が無い場合には、底壁711R(721R)の先端がリン酸水溶液中に没してしまう。しかしながら、上記のように底壁711R(721R)から上方に延びる側壁712R(722R)を設けることにより、リン酸水溶液の液面の高さ位置を側壁712R(722R)の上端より低くすることが可能となる。
【0070】
図6に示すように、第1蓋体71の本体部71A及び第2蓋体72の本体部72Aのいずれか一方(ここでは本体部71A)に、他方(ここでは本体部72A)の先端の上方まであるいは上方を越えて延び、隙間Gを上方から覆う覆い73を設けることが好ましい。覆い73を設けることにより、隙間Gから処理液が上方に飛び出すことを防止することができる。なお、
図3~
図5では、図面の煩雑化を防止するため、覆い73(及び板状体73P)が記載されていないことに注意されたい。
【0071】
なお、隙間Gが高さHを有しているため、内槽34A内のリン酸水溶液の液面から飛散した処理液の液滴の勢いが、覆い73に衝突するまでに弱まる。このため、覆い73に衝突した処理液が側方に飛び出すことはない。
【0072】
覆い73は、例えば
図6に示すように、第1蓋体71の凹所71Rの輪廓に合わせた略矩形の切除部73Qを有する板状体73Pを、第1蓋体71の本体部71Aの上面に装着することにより設けることができる。この場合、板状体73Pの端縁部により覆い73が構成される。
【0073】
図6に示すように、第1蓋体71及び第2蓋体72が閉鎖位置にあるときに、覆い73と第2蓋体72との間に隙間が設けられていてもよい。これに代えて、第1蓋体71及び第2蓋体72が閉鎖位置にあるときに、覆い73と第2蓋体72とが接触していてもよい。この場合、覆い73は、隙間Gの上端部を塞ぐシールとしての役割を果たす。
【0074】
覆い73を第2蓋体72に接触させる場合には、石英と衝突しても損傷が生じるおそれがなくかつ石英を損傷させることもない程度の柔軟性があり、かつ、比較的高い耐食性を有する樹脂材料、例えばPTFE、PFA等のフッ素系樹脂材料から覆い73を形成することが好ましい。
【0075】
覆い73を第1蓋体71と一体に形成してもよい。また、覆い73は設けなくてもよい。覆い73を設けない場合には、設ける場合よりも上記高さHをより高くすることが好ましい。
【0076】
また、第1蓋体71の本体部71A及び第2蓋体72の本体部72Aのいずれか一方(図示例では第2蓋体72の本体部72Aの先端部)に基板押さえ74が設けられている。基板押さえ74の下面には、基板8の配列方向(X方向)に沿って、基板支持部材36Bの基板保持溝36BG(
図10を参照)と同じピッチで同じX方向位置に配置された複数の基板保持溝74Gが形成されている(
図7および
図10を参照)。基板保持溝74Gの各々には1枚の基板8の周縁部が収容される。なお、
図7の斜視図では基板押さえ74の下端部(基板保持溝74Gが形成されている部分が見えているが、実際には、凹所72Rの底壁721Rに隠れて見えないことに注意されたい。
【0077】
図示された実施形態では、基板押さえ74は、第2蓋体72と別々に形成された細長い板状体からなり、ネジ止めにより第2蓋体72の本体部72Aに固定されている。これに代えて、基板押さえ74を第2蓋体72と一体に形成してもよい。いずれの場合も、基板押さえ74は、第2蓋体72の本体部72Aの側壁722Rの一部を構成することになる。
【0078】
基板8が処理されているときには、閉鎖位置に位置している第2蓋体72に設けられた基板押さえ74が、基板支持部材36Bにより支持された基板8と係合して、当該基板8の上方への変位を防止または抑制する。このため、処理液供給ノズル49から大流量で処理液を吐出したとしても、あるいは内槽34A内の処理液の沸騰レベルが高くなったとしても、あるいは窒素ガスバブリングを激しく行ったとしても、基板8が基板支持部材36Bから脱落するおそれがなくなる。
【0079】
図9に概略的に示すように、処理槽34の上方にはカメラ90および照明92が設けられている。後述する画像処理に必要な画像を取得できるのであれば、カメラ90専用の照明92を省略することも可能である。カメラ90から画像信号が有線または無線通信により、画像処理機能を有する基板位置判定部94に出力されるようになっている。基板位置判定部94は、制御部7の一部であってもよいし、別の演算処理ユニットであってもよい。
【0080】
カメラ90は、内槽34Aの上部開口の真上であって、かつ、基板支持部材36Bにより支持された基板8の上限位置(基板昇降機構36の基板支持部材36Bとロット搬送機構19の基板保持体22との間で基板8の受け渡しが行われる高さ位置)よりも上方に配置することができる。これに代えて、カメラ90を低い位置(内槽34Aの上部開口に近い高さ位置)に設けるとともに、内槽34Aの真上の位置と、内槽34Aの真上から外れた位置との間でカメラ90を移動させる移動機構を設けてもよい。後述する基板位置判定に必要な画像を取得できるのであれば、カメラ90を上記とは別の位置に設けてもよい。
【0081】
カメラ90のさらに上方にはファンフィルタユニット(FFU)100が配置されている。ファンフィルタユニット100からは清浄空気が下向きに吹き出される。この清浄空気のダウンフローにより、例えばカメラ90のレンズを曇らせるかあるいはカメラ90を腐食させる可能性のある処理液(薬液)由来のガスまたはミストが処理槽34から立ち上ったとしても、そのようなガスまたはミストがカメラ90に到達することはない。
【0082】
カメラ90を包囲するカバー(図示せず)を設け、カバー内に適当なシールドガス(清浄空気または不活性ガス)を流すことにより、カメラ90を処理液由来のガスまたはミストから保護してもよい。
【0083】
なお、処理槽34内に貯留される処理液がリン酸の場合には、処理槽34の上方に立ち上るガスは実質的に水蒸気であり、カメラ90への影響は小さい。
【0084】
次に上記エッチング処理装置1の作用について説明する。まず、リン酸水溶液供給部40がリン酸水溶液を液処理部39の外槽34Bに供給する。リン酸水溶液の供給開始後に所定時間が経過すると、循環ライン50のポンプ51が作動し、上述した循環系内を循環する循環流が形成される。
【0085】
さらに、循環ライン50のヒータ52が作動して、内槽34A内のリン酸水溶液が所定温度(例えば160℃)となるようにリン酸水溶液を加熱する。遅くともヒータ52による加熱開始時点までに、第1蓋体71及び第2蓋体72を閉鎖位置に位置させる。160℃のリン酸水溶液は沸騰状態(好ましくは微沸騰状態)となる。沸騰による水分の蒸発によりリン酸濃度が予め定められた管理上限値を超えたことがリン酸濃度計55Bにより検出された場合には、純水供給部41から純水が供給される。
【0086】
1つのロットの基板8を内槽34A内のリン酸水溶液中に投入する前に、循環系(内槽34A、外槽34B及び循環ライン50を含む)内に存在するリン酸水溶液中のシリコン濃度(これはシリコン酸化膜に対するシリコン窒化膜のエッチング選択比に影響を及ぼす)の調整が行われる。シリコン濃度の調節は、ダミー基板を内槽34A内のリン酸水溶液中に浸漬すること、あるいはシリコン供給部42から外槽34Bにシリコン含有化合物溶液を供給することにより行うことができる。循環系内に存在するリン酸水溶液中のシリコン濃度が予め定められた範囲内にあることを確認するために、排出ライン43Aにリン酸水溶液を流し、シリコン濃度計43Gによりシリコン濃度を測定してもよい。
【0087】
シリコン濃度調整の終了後、第1蓋体71及び第2蓋体72を開放位置に移動させる。このとき、処理槽34の上方では、ロット搬送機構19の移動体21の基板保持体22から基板8を受け取った基板昇降機構36の基板支持部材36Bが待機している。基板支持部材36Bは、複数枚、すなわち1つのロット(処理ロットまたはバッチとも呼ばれる)を形成する複数例えば50枚の基板8を適切に支持している。「適切に支持」とは、模式図である
図10の下半分に示されるように、基板8の下側周縁部が基板支持部材36Bの各基板保持溝36BGに1枚ずつ嵌まり、かつ、基板8が鉛直姿勢で水平方向に所定の配列ピッチ(例えば5mm程度)で並んでいることを意味する。次いで基板支持部材36Bは下降し、これにより基板支持部材36Bにより支持された基板8が内槽34A内のリン酸水溶液中に沈められる。このとき、基板支持部材36Bから基板8が浮き上がることを防止するため、バブリングを停止していることが好ましい。
【0088】
基板8が内槽34A内のリン酸水溶液中に沈められて所定時間(例えば5秒程度)が経過したら、第2蓋体72が閉鎖位置に移動させられる。第2蓋体72に設けられた基板押さえ74が基板8の上側周縁部と係合し、基板8を拘束する。次いで、カメラ90により基板8が撮像される。この撮像結果に基づいて、全ての基板8が適切な位置にあるか否か(特に基板押さえ74が基板8と適切に係合しているか否か)が判定される(以下「基板位置判定」と呼ぶ)。この判定の方法については後述する。全ての基板8が適切な位置にあると判断されたら、第1蓋体71が閉鎖位置に移動させられる。
【0089】
次に、ガスノズル60から窒素ガスを吐出するバブリングが開始される。基板8を所定時間リン酸水溶液に浸漬することにより、基板8にウエットエッチング処理(液処理)が施される。
【0090】
基板8のエッチング処理中に第1蓋体71及び第2蓋体72を閉鎖位置に位置させておくことにより、内槽34A内のリン酸水溶液の液面付近の温度低下が抑制され、これにより、内槽34A内のリン酸水溶液の温度分布を小さく抑えることができる。また、内槽34Aが外槽34B内のリン酸水溶液中に浸漬されているため、内槽34Aの壁体からの放熱による内槽34A内のリン酸水溶液の温度低下が抑制され、また、内槽34A内のリン酸水溶液の温度分布を小さく抑えることができる。従って、基板8のエッチング量の面内均一性及び面間均一性を高く維持することができる。
【0091】
1つのロットの基板8の処理中に、基板8からシリコンが溶出するため、循環系内に存在するリン酸水溶液中のシリコン濃度が上昇する。1つのロットの基板8の処理中に、循環系内に存在するリン酸水溶液中のシリコン濃度を維持するために、あるいは意図的に変化させるために、リン酸水溶液排出部43により循環系内にあるリン酸水溶液を排出しながら、リン酸水溶液供給部40によりリン酸水溶液を供給することができる。
【0092】
上記のようにして一つのロットの基板8の処理が終了したら、第1蓋体71及び第2蓋体72を開放位置に移動させる。そして、基板支持部材36Bを上昇させて基板8を内槽34Aから搬出する。
【0093】
基板8の処理が終了した後であってかつ基板8を内槽34Aから搬出する前に、第2蓋体72を閉鎖位置に位置させたまま第1蓋体71を開放位置に移動し、この状態で、基板位置判定を行ってもよい。そうすることにより、処理中に生じる可能性のある基板8の位置ずれ(発生確率は非常に低いが)を検出することができる。
【0094】
その後、再び第1蓋体71及び第2蓋体72を閉鎖位置に移動し、循環系内にあるリン酸水溶液の温度、リン酸濃度、シリコン濃度の調節を行った後に、上記と同様にして別のロットの基板8の処理を行う。
【0095】
次に、基板位置判定の一実施形態について説明する。基板位置判定に先立ち、基板支持部材36Bにより支持された複数例えば50枚の基板8が内槽34Aに貯留された処理液中に沈められる。このとき、各基板8の全体が処理液の液面より下に位置する。その後所定時間(例えば5秒)が経過した後に、第1蓋体71を開放位置に位置させ(
図9に破線で示す)たままで、基板押さえ74付きの第2蓋体72を閉鎖位置に移動させる。次いで、基板位置判定が実行される。
【0096】
基板位置判定が行われるとき、照明92が点灯され、その状態でカメラ90(撮像部)により基板8の画像が撮影される。このとき、内槽34Aの上部開口のうち第1蓋体71により閉じられていない領域を通って、基板8に照明光が到達し、また、基板8からの反射光(物体光)がカメラ90に到達する。これにより、下記の基板位置判定を支障無く実行できる程度の鮮明度を有する画像がカメラ90により取得される。この画像内には、実質的に、各基板8の全表面のうちのAPEX(基板の最外周縁)およびその近傍のみが現れており、基板の表面(デバイス形成面)および裏面は現れていない(
図11の模式図を参照)。照明92は、各基板8のAPEXが最も明るく写るような位置から照明光を照射することが好ましい。
【0097】
基板位置判定部94は、各基板8の液面に近い部分が含まれるように画像の一部の領域ARを切り取る(
図11の模式図を参照)。領域ARは、例えば、基板8の配列方向を長手方向とする短冊状の領域とすることができる。領域ARの画像では、
図11において見えている各基板8のAPEX(特に照明光の光軸と垂直な部分)が、照明光を良く反射するため、画像内における輝度が最も高くなる。
【0098】
基板位置判定部94は、領域AR内における基板8の配列方向(これは
図11中のX軸と平行な矢印XSに沿った方向である)に沿ったグレイ値(画像の輝度に対応する値)の分布を求める。
【0099】
グレイ値の分布として、基板8の配列方向(X方向)に沿って延びる複数画素分の幅(例えば領域ARの幅に相当する画素数分のY方向幅)を有するラインに沿った分布を用いることができる。この場合、同じX方向位置にあるY方向に並んだ複数の画素からの信号に基づき算出されたグレイ値の平均値を、あるX方向位置におけるグレイ値として扱ってもよい。こうすることにより検出精度を高めることができる。
【0100】
上記に代えて、グレイ値の分布として、矢印XSの方向に沿って延びる1画素分の幅(Y方向の幅)を有するラインに沿った分布を用いてもよい。この場合、撮像部として、カメラ90に代えて、ラインセンサを用いることができる。ラインセンサは、例えば、第1蓋体71または第2蓋体72に設けることができる。第1蓋体71または第2蓋体72が透明ならば、ラインセンサを例えば凹所71R,72Rの内部に設けてもよく、この場合、ラインセンサは第1蓋体71または第2蓋体72を透過した物体光を受光する。
【0101】
図11中の矢印XSに沿ったグレイ値の分布の一例が
図12に示されている。各基板8のAPEXに相当する画像部分の輝度が最も高く、グレイ値がピークを呈している。隣接する基板8の隙間に相当する画像部分のグレイ値がボトムを呈している。全ての基板8において、各基板8の実際位置(X座標)と当該基板8の存在すべき基準位置との偏差が許容範囲にあるならば、ピークは基板8の所定の配列間隔(例えば5mm±許容範囲内のずれ量)で並び、隣接するピークの間にボトムがある。このとき、
図10に概略的に示すように、基板支持部材36Bの各基板保持溝36BGに1つずつ基板8の下部周縁部が嵌まっており、かつ、基板押さえ74の各基板保持溝74Gに1つずつ基板8の上側周縁部が嵌まっている。これを「適切な基板保持状態」とも呼ぶ。
【0102】
図13には、不適切な基板保持状態が生じる原因が示されている。
図13の左側に示すように、ある1つの基板8の上側周縁部が隣接する基板8の上側周縁部に近づいた状態で第2蓋体72を閉じて基板押さえ74を基板8に近づけてゆくと、隣接する基板8の上側周縁部が互いに接触した状態で同じ基板保持溝74Gに嵌まりこむ現象が生じる。これは「ブリッジ(ウエハブリッジ)」と呼ばれる。ブリッジが生じている2つの基板8の間では処理液の流れが悪くなるため、意図した通りの基板処理結果が得られない(例えば面内均一性の悪化)可能性がある。
【0103】
図12は、50枚の基板8に対して得られたグレイ値分布の一例を示している。
図12では、基板配列の端の方において、隣接するグレイ値ピーク同士の間隔が広くなっている。これは上記のブリッジが生じているためである。つまり、
図13の右側に示すようなブリッジが生じると、
図14において破線で示されるように、隣接する2つの基板8のAPEXの画像のグレイ値のピークが、分離不可能な1つのピークとして検出される。また、隣接するピーク間の距離も大きくなる。このことを利用して、ブリッジの発生を検出することができる。なお、
図14において、実線は、適切な基板保持状態のときに得られるカーブである。
【0104】
なお、ブリッジが生じているか否かの判定は、少なくとも1つの基板8の実際位置と基準位置との偏差が許容範囲にあるか否かの判定に含まれる。
【0105】
基板押さえ74付きの第2蓋体72を閉じた直後に基板位置判定を行い、ブリッジが発生していないこと(つまり全ての基板8が適切な保持状態にあること)が確認された場合には、窒素ガスのバブリングを開始するとともに第1蓋体71を閉じてそのまま液処理(例えばウエットエッチング処理)を進めることができる。
【0106】
ブリッジが発生していた場合には、第2蓋体72が開かれ、その後再び閉じられる(リトライ)。このとき、第2蓋体72を全開状態まで開く(つまり開放位置まで移動させる)必要はなく、基板押さえ74が一旦基板8から離れれば十分である。基板押さえ74が基板8から離れている間に、基板支持部材36Bを上下に微少量往復させて、基板8を揺すってもよい。第2蓋体72が閉じられた後、再び基板位置判定が行われる。基板8が適切な位置に納まっている(つまりブリッジが発生していない)ことが確認されたら、ガスノズル60(
図2~
図4を参照)から窒素ガスを吐出してバブリングを開始するとともに、第1蓋体71を閉じて処理を継続する。
【0107】
上記の操作にもかかわらずブリッジが解消されない場合には、ブリッジが解消されるまで第2蓋体72の開閉および基板位置判定を繰り返し行ってもよい。これに代えて、第2蓋体72の開閉および基板位置判定を予め定められた回数行ったら、ブリッジが解消されたか否かに関わらず、バブリングを開始するとともに第1蓋体71を閉じて液処理を継続してもよい。あるいはこれに代えて、最初に第2蓋体72を閉じたときにブリッジが発生していたとしても、バブリングを開始するとともに第1蓋体71を閉じて液処理を継続してもよい。
【0108】
窒素ガスのバブリングは、基板8の処理の面内均一性および面間均一性を高める等の目的で行われている。このため、バブリングを行わずに基板8を処理液中に浸漬させ続けることはあまり好ましくない。この観点からは、第2蓋体72の開閉および基板位置判定の試行回数に制限を設けた方が好ましい。但し、処理の種類によっては上記のような問題は発生しないこともあるので、再試行回数に制限を設けなくてもよい。
【0109】
なお、基板押さえ74により基板8が押さえ付けられていないとバブリングにより基板支持部材36Bから基板8が浮き上がり、基板8の下側周縁部が基板支持部材36Bの基板保持溝から外れる可能性がある。このため、どのような手順で処理を行うにしても、バブリングは、第2蓋体72を閉鎖位置に位置させた状態で行うことが好ましい。
【0110】
ブリッジが発生した基板8にソフトウエアマーキングを施してもよい。ソフトウエアマーキングとは、例えば、制御部7の記憶媒体38に、例えば「処理槽34でロットM(MはロットのID)の基板8に対してウエットエッチングを行った際に、N番目の基板8とN+1番目の基板8にブリッジが発生した」といったことを記憶することを意味する。ソフトウエアマーキングに基づいて、後工程において、ブリッジが発生した基板8あるいは当該基板8から得られた半導体装置に念入りな検査を行ってもよい。一度でもブリッジが発生した基板8の全てをソフトウエアマーキングの対象としてもよい。これに代えて、ブリッジが予め定められた回数以上発生した基板8だけをソフトウエアマーキングの対象としてもよい。これに代えて、ブリッジが発生した状態のまま液処理が行われた基板8だけをソフトウエアマーキングの対象としてもよい。
【0111】
最初の基板位置判定においてブリッジが発生したら、その後に第2蓋体72の開閉操作(リトライ)を行うことなく、そのまま処理を進めてもよい。この場合、ブリッジが発生した基板8にソフトウエアマーキングが施される。最初の基板位置判定においてブリッジが発生した後に第2蓋体72の開閉操作を行うか否かを、基板液処理システム1Aの図示しないユーザーインターフェース(キーボード、タッチパネル等)を介してオペレータが設定できるようにしてもよい。
【0112】
ブリッジの発生が検出されたら、基板液処理システム1Aの図示しないユーザーインターフェース(ディスプレイ、警報ランプ、警報ブザー等)を介してオペレータにアラーム通知をしてもよい。
【0113】
上記の基板位置判定を用いて基板押さえ74付きの第2蓋体72を閉じるタイミングを決定することもできる。基板8を基板支持部材36Bにより鉛直姿勢で水平方向に等間隔に保持した状態で内槽34Aに貯留した処理液内に沈めてゆく過程で、ラプラス圧の影響により、基板8が揺れ動き、隣接する基板8の上部周縁部間の距離が変動する。
図15には、基板8を処理液内に沈めた瞬間を基準(0秒)とし、数組の隣接する基板8間の距離の時間経過に伴う変化が示されている。
図15のグラフより、基板8を処理液内に沈めた後ある程度の時間(例えば5秒程度)が経過すると基板の揺れ動きは収束することがわかる。基板8の揺れ動きが問題無いレベルまで低下したら基板押さえ74付きの第2蓋体72を閉じてよい。
【0114】
基板8を内槽34A内の処理液中に沈めてから基板8の揺れ動きが十分に小さくなるまでの時間(例えば5秒程度)は、ほぼ一定であることが実験により確認されている。このため、基板8を内槽34Aに投入してから所定時間(例えば多少の安全マージンをみて6秒程度)が経過したら、基板位置判定を行うことなく、第2蓋体72を閉じてもよい。このようにしても、ブリッジの問題は殆ど生じない。仮にブリッジが発生したしても、第2蓋体72を閉じた後の基板位置判定によりブリッジの発生を把握し、必要に応じた対処をすることができる。
【0115】
上記に代えて、基板8を処理液中に沈めてから、例えば5秒経過後、6秒経過後、7秒経過後に取得した画像に基づいて基板位置判定を行い、基板8の基準位置に対する基板8の実際位置のずれ(位置偏差)が安定して所定範囲内に収まっていることが確認できたら第2蓋体72を閉じるようにしてもよい。この場合、より確実にブリッジの発生を防止することができる。
【0116】
上記実施形態によれば、基板支持部材36Bおよび基板押さえ74により基板8を適切な位置(基準位置)でしっかりと拘束した状態でバッチ処理を行うことができる。ブリッジが発生すると、基板8の処理結果(例えばエッチング量)の面内均一性および面間均一性が低下するおそれがあるが、本実施形態によればそのようなことはない。
【0117】
上記実施形態では、基板位置判定においてブリッジの有無のみを考慮したが、これには限定されない。基板位置判定において、各基板8の基準X座標と実際X座標との偏差を個別に判定してもよい。各基板8の基準X座標は、当該基板8が係合すべき基板支持部材36Bの基板保持溝36BGのX座標(あるいは基板押さえ74の基板保持溝74GのX座標)に等しい。各基板8についてそれぞれ、基準X座標と実際X座標との偏差を求め、1つ以上の基板8において偏差が予め定められた閾値を超えた場合に、不適切な基板保持状態が生じているものと判定してもよい。
【0118】
上記実施形態では、全ての基板8を撮像して全ての基板8に対して位置判定を行っていたが、一部の基板のみを撮像して一部の基板8のみに対して位置判定を行ってもよい。内槽34Aおよびノズル類の配置により、特定の場所にある基板8にのみ位置ずれが発生する場合もあるが、そのような場合には、一部の基板のみを対象とした撮像および基板位置判定を行ってもよい。このために、過去の基板位置判定に基づいてカメラ90の撮像範囲を自動調整する機能を設けてもよい。このようにすることにより、演算処理の負担を軽減することができ、基板位置判定の精度を向上させることもできる。
【0119】
上記実施形態においては、カメラが内槽34Aの上部開口の上方に配置され、第1蓋体71を開放位置に位置させた状態で基板8の撮影が行われている。つまり、物体から出射された物体光(照明92からの照明光が基板8で反射した後にカメラ90へ向かう光)は、処理槽34の構成部材または蓋体71,72を通過することなくカメラ90に入射する。つまり、物体光は、実質的に処理液中を通過するときと、処理液の液面(気液界面)を通過するときに乱されるだけである。上記実施形態の図示された構成より明らかなように、基板8の基板位置判定に関与する部分(上部周縁部)から処理液の液面までの距離は比較的小さい。このため、基板位置判定を支障無く実行できる程度の鮮明度を有する画像をカメラ90により撮像することができる。
【0120】
なお、
図3に示すように第1蓋体71が閉鎖位置に位置しているときに第1蓋体71が処理液の液面に密接し、かつ第1蓋体71が石英等の透明材料で形成されているなら、第1蓋体71を閉鎖位置に位置させても基板位置判定を支障無く実行できる程度の鮮明度を有する画像をカメラ90により撮像することができる場合もある。このような場合、第1蓋体71が閉鎖位置に位置させた状態で得られた画像に基づいて基板位置判定を行ってもよい。
【0121】
また、処理槽34が透明ならば、処理槽34の下方から基板8を撮像してもよい。この場合、基板支持部材36Bにおけるジャンプスロットの有無を判定することができる。ここで言うジャンプスロットとは、例えば、基板を勢いよく処理液中に沈めたときに、基板8に上向きの力がかかり、基板8の下側周縁部が基板支持部材36Bの基板保持溝36BGから外れて、基板8が不適切な位置に移動することを意味している。なお、通常、処理槽34の下方の空間には、液供給ライン、排液ラインおよびこれらラインに付設された各種機器類が設けられるが、これらラインおよび機器類は撮像の邪魔にならないように配置することが好ましい。
【0122】
また、処理槽34が透明ならば(例えば処理槽が石英製の場合)、カメラ90が内槽34Aの側方から基板8を撮像してもよい。この場合、より鮮明な画像を得るという観点から、
図16に示すように、外槽(34B)が内槽(34A)の上部のみを取り囲むタイプの処理槽を用いることができる。この場合、カメラ90を、カメラレンズが内槽34Aの側面に密着するように設けても良い。なお、基板位置判定を支障無く実行できる程度の鮮明度を有する画像を得ることができるのであれば、外槽(34B)および内槽(34A)を介して基板8の画像を撮像してもよい。
【0123】
基板8の保持のための基板押さえ(74)を用いないで基板支持部材(36B)により基板を下方から支持しただけの状態で基板の処理が行われるタイプの基板液処理装置も存在する。この場合、処理液を勢いよく沸騰させた場合、あるいはバブリングのために勢いよくガスを吐出させた場合に、基板が基板支持部材から浮き上がり、ジャンプスロットが生じることがある。このようなジャンプスロットの発生も、処理槽34の側方または下方に設けたカメラにより撮像した映像に基づいて上記と同様の基板位置判定を行うことにより検出することができる。
【0124】
また、液中から引き上げられた基板支持部材36Bに保持された基板8の位置を確認するためのカメラを追加で設けてもよい。これにより、基板の処理中に生じた基板の位置ずれ、あるいは基板を処理液から引き上げるときに生じた基板の位置ずれを検出することができる。
【0125】
上記実施形態では処理液がリン酸水溶液であったが、これに限定されるものではなく、例えば、SC1やリン酸水溶液に酢酸等の添加物を混合した処理液を用いてもよい。また、上記実施形態では、エッチングされる膜をシリコン窒化膜としていたが、これに限らず、その他のエッチング対象となる膜であってもよい。また、処理槽内で基板に施される処理は、エッチング工程を含んでいなくてもよく、洗浄工程のみを含むものであってもよい。すなわち、処理槽において、処理液の液面から飛沫が生じるような条件で処理を行う場合に、本発明は適用される。基板は、半導体ウエハに限定されるものではなく、ガラス、セラミック等の他の材料からなる基板であってもよい。
【0126】
なお、明細書中において部材の前に付けられた「第1(の)」、「第2(の)」といった序数と、特許請求の範囲に記載された構成要素の前に付けられた序数とが必ずしも一致していないことに注意されたい(例えば「蓋体」について)。
【符号の説明】
【0127】
34、34A 処理槽
36B 基板支持部材
36 昇降機構
90 撮像部
94 基板位置判定部
7 制御部