(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-21
(45)【発行日】2025-03-04
(54)【発明の名称】成膜方法及び処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20250225BHJP
H01L 21/318 20060101ALI20250225BHJP
C23C 16/38 20060101ALI20250225BHJP
C23C 16/24 20060101ALI20250225BHJP
【FI】
H01L21/205
H01L21/318 B
C23C16/38
C23C16/24
(21)【出願番号】P 2021063969
(22)【出願日】2021-04-05
【審査請求日】2024-01-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 圭太
(72)【発明者】
【氏名】藤川 尋斗
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 諒
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0243740(US,A1)
【文献】特開2018-056345(JP,A)
【文献】特開2017-210640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
H01L 21/318
C23C 16/38
C23C 16/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホウ素含有ガスと窒素含有ガスと水素ガスとを含む第1処理ガスを基板に供給し、前記基板の上に窒化ホウ素膜を形成する工程と、
前記ホウ素含有ガスとシリコン含有ガスと水素ガスとを含む第2処理ガスを前記基板に供給し、前記窒化ホウ素膜の上にホウ素含有シリコン膜を形成する工程と、
を有する、成膜方法。
【請求項2】
前記窒化ホウ素膜を形成する工程及び前記ホウ素含有シリコン膜を形成する工程は、真空雰囲気下で連続して行われる、
請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
前記窒化ホウ素膜を形成する工程及び前記ホウ素含有シリコン膜を形成する工程は、同じ処理室で連続して行われる、
請求項1又は2に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記ホウ素含有ガスは、B
2
H
6
ガスであり、
前記窒素含有ガスは、NH
3
ガスである、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項5】
前記ホウ素含有ガスは、B
2
H
6
ガスであり、
前記シリコン含有ガスは、SiH
4
ガスである、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項6】
前記窒化ホウ素膜を形成する工程の前に、表面にSiN膜又はSiCN膜が形成された前記基板を準備する工程を有する、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項7】
前記窒化ホウ素膜は、前記基板を250℃~400℃に加熱した状態で成膜される、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項8】
基板を処理する処理室と、
前記処理室に処理ガスを供給する処理ガス供給部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
ホウ素含有ガスと窒素含有ガスと水素ガスとを含む第1処理ガスを前記処理室内に供給し、前記処理室に収容された
前記基板の上に窒化ホウ素膜を形成する工程と、
前記ホウ素含有ガスとシリコン含有ガスと水素ガスとを含む第2処理ガスを前記処理室内に供給し、前記窒化ホウ素膜の上にホウ素含有シリコン膜を形成する工程と、
を実行するように前記処理ガス供給部を制御するよう構成される、
処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成膜方法及び処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウエハ表面にボロン系薄膜からなるシード層を形成した後にカーボン膜を形成する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、密着性が良好なホウ素含有シリコン膜を形成できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様による成膜方法は、ホウ素含有ガスと窒素含有ガスと水素ガスとを含む第1処理ガスを基板に供給し、前記基板の上に窒化ホウ素膜を形成する工程と、前記ホウ素含有ガスとシリコン含有ガスと水素ガスとを含む第2処理ガスを前記基板に供給し、前記窒化ホウ素膜の上にホウ素含有シリコン膜を形成する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、密着性が良好なホウ素含有シリコン膜を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】実施形態の成膜方法の一例を示すフローチャート
【
図4】基板表面における結合状態を説明するための図
【
図5】B-Si膜が用いられる半導体装置の製造工程の一部分を示す図
【
図6】B-Si膜の密着性の評価方法を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付の図面を参照しながら、本開示の限定的でない例示の実施形態について説明する。添付の全図面中、同一又は対応する部材又は部品については、同一又は対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0009】
〔処理装置〕
図1を参照し、実施形態の処理装置の一例について説明する。
【0010】
処理装置100は、縦型のバッチ式成膜装置として構成されている。処理装置100は、有天井の円筒状の外管101と、外管101の内側に設けられ、円筒状の内管102とを備えている。外管101及び内管102は、例えば石英製であり、内管102の内側領域が、処理対象である基板Wを複数枚一括して処理する処理室Sとなっている。基板Wは、例えば半導体ウエハであってよい。
【0011】
外管101と内管102とは環状空間104を隔てつつ水平方向に沿って互いに離れており、各々の下端部において、ベース材105に接合されている。内管102の上端は、外管101の天井部から離隔されており、処理室Sの上方が環状空間104に連通されるようになっている。処理室Sの上方に連通される環状空間104は排気路となる。処理室Sに供給され、拡散されたガスは、処理室Sの下方から処理室Sの上方へと流れて、環状空間104に吸引される。環状空間104の、例えば下端には排気配管106が接続されており、排気配管106は、排気装置107に接続されている。排気装置107は真空ポンプ等を含んで構成され、処理室Sを排気し、また、処理室Sの内部の圧力を処理に適切な圧力となるように調節する。
【0012】
外管101の外側には、加熱装置108が、処理室Sの周囲を取り囲むように設けられている。加熱装置108は、処理室Sの内部の温度を処理に適切な温度となるように調節し、複数枚の基板Wを一括して加熱する。
【0013】
処理室Sの下方はベース材105に設けられた開口109に連通している。開口109には、例えば、ステンレス鋼により円筒状に成形されたマニホールド110がOリング等のシール部材111を介して連結されている。マニホールド110の下端は開口となっており、この開口を介してボート112が処理室Sの内部に挿入される。ボート112は、例えば石英製であり、複数の支柱113を有している。支柱113には、溝(図示せず)が形成されており、この溝により、複数枚の被処理基板が一度に支持される。これにより、ボート112は、複数枚(例えば50~150枚)の基板Wを多段に載置することができる。複数の基板Wを載置したボート112が、処理室Sの内部に挿入されることで、処理室Sの内部には、複数の基板Wを収容することができる。
【0014】
ボート112は、石英製の保温筒114を介してテーブル115の上に載置される。テーブル115は、例えばステンレス鋼により形成された蓋部116を貫通する回転軸117上に支持される。蓋部116は、マニホールド110の下端の開口を開閉する。蓋部116の貫通部には、例えば、磁性流体シール118が設けられ、回転軸117を気密にシールしつつ回転可能に支持している。また、蓋部116の周辺部とマニホールド110の下端との間には、例えばOリングよりなるシール部材119が介設され、処理室Sの内部の気密性を保持している。回転軸117は、例えばボートエレベータ等の昇降機構(図示せず)に支持されたアーム120の先端に取り付けられている。これにより、ボート112及び蓋部116等は、一体的に鉛直方向に昇降されて処理室Sに対して挿脱される。
【0015】
処理装置100は、処理室Sの内部に、処理ガスを供給する処理ガス供給部130を有している。本実施形態において、処理ガス供給部130は、ホウ素含有ガス供給源131a、窒素含有ガス供給源131b、シリコン含有ガス供給源131c及び不活性ガス供給源131dを含む。
【0016】
ホウ素含有ガス供給源131aは、流量制御器(MFC)132a及び開閉弁133aを介してガス供給口134aに接続されている。窒素含有ガス供給源131bは、流量制御器(MFC)132b及び開閉弁133bを介してガス供給口134bに接続されている。シリコン含有ガス供給源131cは、流量制御器(MFC)132c及び開閉弁133cを介してガス供給口134cに接続されている。不活性ガス供給源131dは、流量制御器(MFC)132d及び開閉弁133dを介してガス供給口134dに接続されている。ガス供給口134a~134dはそれぞれ、マニホールド110の側壁を水平方向に沿って貫通するように設けられ、供給されたガスを、マニホールド110の上方にある処理室Sの内部に向けて拡散させる。
【0017】
ホウ素含有ガス供給源131aから供給されるホウ素含有ガスは、例えば熱CVDによりホウ素含有シリコン膜(B-Si膜)を形成するために用いられる。また、ホウ素含有ガス供給源131aから供給されるホウ素含有ガスは、下地上に、下地とB-Si膜との密着性を改善するために、熱CVDにより窒化ホウ素膜(BN膜)を形成するために用いられる。ホウ素含有ガスとしては、例えばジボラン(B2H6)等のボラン系ガス、三塩化ボロン(BCl3)や、これらのガスを水素(H2)、窒素(N2)等で希釈したガスを利用できる。
【0018】
窒素含有ガス供給源131bから供給される窒素含有ガスは、例えばホウ素含有ガスと共にBN膜を形成するために用いられる。窒素含有ガスとしては、例えばアンモニア(NH3)、ジアゼン(N2H2)、ヒドラジン(N2H4)及びモノメチルヒドラジン(CH3(NH)NH2)等の有機ヒドラジン化合物からなる群から選択される1又は2以上のガスを利用できる。
【0019】
シリコン含有ガス供給源131cから供給されるシリコン含有ガスは、例えばホウ素含有ガスと共にB-Si膜を形成するために用いられる。シリコン含有ガスとしては、例えばモノシラン(SiH4)、ジシラン(Si2H6)、ヘキサクロロジシラン(HCD)、ジクロロシラン(DCS)、ヘキサエチルアミノジシラン、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、テトラクロロシラン(TCS)、ジシリルアニン(DSA)、トリシリルアミン(TSA)及びビスターシャルブチルアミノシラン(BTBAS)からなる群から選択される1又は2以上のガスを利用できる。
【0020】
不活性ガス供給源131dから供給される不活性ガスは、例えば処理室S内をパージするために用いられる。不活性ガスとしては、例えばN2ガスや、Arガス等の希ガスを利用できる。
【0021】
処理装置100は、制御部150を有している。制御部150は、例えば、マイクロプロセッサ(コンピュータ)からなるプロセスコントローラ151を備えており、処理装置100の各構成部の制御は、プロセスコントローラ151が行う。プロセスコントローラ151には、ユーザーインターフェース152及び記憶部153が接続されている。
【0022】
ユーザーインターフェース152は、入力部及び表示部を備える。入力部は、オペレータが処理装置100を管理するためにコマンドの入力操作等を行うためのタッチパネルディスプレイやキーボード等を含む。表示部は、処理装置100の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等を含む。
【0023】
記憶部153は、処理装置100で実行される各種の処理をプロセスコントローラ151の制御にて実現するための制御プログラムや、処理装置100の各構成部に処理条件に応じた処理を実行させるためのプログラムを含んだ、所謂プロセスレシピを格納する。プロセスレシピは、記憶部153の中の記憶媒体に記憶される。記憶媒体は、ハードディスクや半導体メモリであってもよいし、CD-ROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性のものであってもよい。また、プロセスレシピは、他の装置から、例えば専用回線を介して適宜伝送させるようにしてもよい。
【0024】
プロセスレシピは、必要に応じてユーザーインターフェース152からのオペレータの指示等にて記憶部153から読み出され、プロセスコントローラ151は、読み出されたプロセスレシピに従った処理を処理装置100に実行させる。
【0025】
〔成膜方法〕
図2~
図4を参照し、実施形態の成膜方法について、前述の処理装置100により実施される場合を例に挙げて説明する。ただし、実施形態の成膜方法は、前述の処理装置100とは異なる装置によっても実施可能である。
【0026】
実施形態の成膜方法は、
図2に示されるように、基板を準備する工程S1、基板の上にBN膜を形成する工程S2及びBN膜の上にB-Si膜を形成する工程S3を有する。
【0027】
基板を準備する工程S1では、
図3(a)に示されるように、基体11の上に下地12が形成された基板Wを準備する。本実施形態において、基体11の上に下地12が形成された複数枚(例えば50枚~150枚)の基板Wをボート112に搭載し、ボート112を処理装置100の処理室S内に下方から挿入することにより、複数枚の基板Wを処理室Sに搬入する。続いて、蓋部116でマニホールド110の下端開口部を閉じることにより処理室S内を密閉空間とする。この状態で処理室S内を真空引きして所定の減圧雰囲気に維持すると共に、加熱装置108への供給電力を制御して、基板温度を上昇させてプロセス温度に維持し、ボート112を回転させた状態とする。なお、下地12は、例えばSiN膜、SiCN膜であってよい。
【0028】
BN膜を形成する工程S2では、
図3(b)に示されるように、例えば熱CVDにより下地12の上にBN膜13を形成する。本実施形態において、ホウ素含有ガス供給源131aから処理室S内にホウ素含有ガスを供給すると共に窒素含有ガス供給源131bから処理室S内に窒素含有ガスを供給することにより、下地12の上にBN膜13を形成する。ホウ素含有ガスとしては、例えばB
2H
6等のボラン系ガス、BCl
3や、これらのガスをH
2、N
2等で希釈したガスを利用できる。窒素含有ガスとしては、例えばNH
3、N
2H
2、N
2H
4及びCH
3(NH)NH
2等の有機ヒドラジン化合物からなる群から選択される1又は2以上のガスを利用できる。BN膜13を形成する際の基板Wの温度は、例えば250℃~400℃であってよい。
【0029】
B-Si膜を形成する工程S3では、
図3(c)に示されるように、例えば熱CVDによりBN膜13の上にB-Si膜14を形成する。本実施形態において、ホウ素含有ガス供給源131aから処理室S内にホウ素含有ガスを供給すると共にシリコン含有ガス供給源131cから処理室S内にシリコン含有ガスを供給することにより、BN膜13の上にB-Si膜14を形成する。ホウ素含有ガスとしては、例えばBN膜を形成する工程S2において利用されるホウ素含有ガスと同じ種類のガスを利用できる。ただし、ホウ素含有ガスとしては、例えばBN膜を形成する工程S2において利用されるホウ素含有ガスと異なる種類のガスを利用してもよい。シリコン含有ガスとしては、例えばSiH
4、Si
2H
6、HCD、DCS、ヘキサエチルアミノジシラン、HMDS、TCS、DSA、TSA及びBTBASからなる群から選択される1又は2以上のガスを利用できる。B-Si膜を形成する際の基板Wの温度は、例えば250℃~400℃であってよい。
【0030】
所望の膜厚のB-Si膜を形成した後、処理室Sを排気装置107により排気すると共に、不活性ガス供給源131dから処理室Sに不活性ガスを供給して処理室S内のパージを行う。不活性ガスとしては、例えばN2ガスや、Arガス等の希ガスを利用できる。続いて、処理室Sを大気圧に戻した後、ボート112を下降させて基板Wを搬出する。
【0031】
ところで、基板と膜の密着性は、その膜の水素(H)濃度に依存する。例えば
図4に示されるように、基板Wの上に形成される膜のH濃度が高い場合、基板と膜の間では共有結合(
図4中、破線で示す。)に加えて、分子間力による結合(
図4中、一点鎖線で示す。)が生じるため、基板Wと膜Fの密着性が弱くなると考えられる。なお、
図4において、Xは基板Wの表面の元素(例えばSi)を表す。例えば、前述のB-Si膜を形成する工程S3において形成されるB-Si膜14のH濃度は比較的高い(10%~20%程度である)ため、下地12の上にB-Si膜14を形成すると、下地12とB-Si膜14の密着性が弱くなりやすい。
【0032】
これに対し、実施形態の成膜方法によれば、下地12の上にBN膜13を形成した後に該BN膜13の上にB-Si膜14を形成する。BN膜13は、元素分析によりB:50%、N:50%である結果が得られており、膜中に水素(H)を含まない又はほとんど含まない膜である。すなわち、実施形態の成膜方法によれば、下地12の上にB-Si膜14を形成するにあたり、下地12とB-Si膜14との間に、膜中にHを含まない又はほとんど含まないBN膜13を挿入する。これにより、密着性が良好なB-Si膜14を形成できる。
【0033】
また、実施形態の成膜方法によれば、BN膜を形成する工程S2における成膜温度と、B-Si膜を形成する工程S3における成膜温度との間の温度差がない又は小さい。これにより、同じ処理室SでBN膜を形成する工程S2及びB-Si膜を形成する工程S3を行う場合、温度変更に伴う時間を短縮できるので生産性が向上する。また、ダミー基板に累積しているB-Si膜の剥がれを抑制できる。
【0034】
〔B-Si膜の適用例〕
図5を参照し、実施形態の成膜方法によって形成されるB-Si膜が適用例について説明する。
図5は、B-Si膜が用いられる半導体装置の製造工程の一部を示す図であり、DRAM(Dynamic Random Access Memory)の製造工程の一部を示す。
【0035】
図5に示されるように、実施形態の成膜方法により形成されるB-Si膜は、例えばDRAMの製造工程において、層間絶縁膜21をエッチングしてキャパシタホール22を形成する際のハードマスク23として用いられる。キャパシタホール22の形成では、アスペクト比(深さ/孔径)が非常に大きいホールをエッチングする技術が求められる。なお、
図5の例では、層間絶縁膜21は、SiO
2膜21aとSiN膜21bとの積層膜である。
【0036】
従来、ハードマスク23としてはアモルファスシリコン(a-Si)膜が用いられているが、層間絶縁膜21をエッチングする際にはa-Si膜も僅かにエッチングされ得る。そして、キャパシタホール22のアスペクト比が大きくなると、a-Si膜がエッチングガスに晒される時間が長くなり、エッチングされる量が増加する。そのため、a-Si膜の膜厚を厚くすることにより、ハードマスク23としての機能を維持している。
【0037】
これに対し、実施形態の成膜方法によって形成されるB-Si膜はa-Si膜よりも層間絶縁膜21に対する選択比が高いので、ハードマスク23の薄膜化を実現できる。また、実施形態の成膜方法では、下地(層間絶縁膜21)の上にBN膜を形成した後に該BN膜の上にハードマスク23としてのB-Si膜を形成するので、密着性が良好なB-Si膜を形成できる。このように実施形態の成膜方法によれば、DRAMの製造工程において用いられるハードマスク23として、膜厚が薄くかつ下地との密着性が良好なB-Si膜を提供できる。
【0038】
〔実施例〕
まず、実施形態の成膜方法により形成したB-Si膜の密着性を評価した実施例について説明する。実施例では、表面にSiN膜が形成されたシリコンウエハ及び表面にSiCN膜が形成されたシリコンウエハを準備した。次いで、前述の処理装置100により、SiN膜、SiCN膜の上にBN膜及びB-Si膜を真空雰囲気下で連続して形成した。次いで、B-Si膜が形成されたシリコンウエハを550℃で30分間、熱処理した。
【0039】
BN膜の成膜条件は以下である。
【0040】
10%B2H6/H2ガス流量:700sccm
NH3ガス流量:100sccm
成膜温度:300℃
処理室内圧力:0.5Torr(66.7Pa)
膜厚:20nm
【0041】
B-Si膜の成膜条件は以下である。
【0042】
10%B2H6/H2ガス流量:800sccm
SiH4ガス流量:666sccm
成膜温度:250℃
処理室内圧力:0.5Torr(66.7Pa)
膜厚:580nm
【0043】
続いて、シリコンウエハを熱処理する前後において、テープテストにより、それぞれのB-Si膜の密着性を評価した。テープテストでは、まず、カッターナイフ603でB-Si膜602を貫通してシリコンウエハ601に達する切り傷を碁盤目状に付けた(
図6(a)及び
図6(b)を参照)。なお、隣接する切り傷の間隔Lは2mmとし、切り傷を付ける際のカッターナイフ603の角度はB-Si膜602に対して35度~45度とした。次いで、
図6(c)に示されるように、切り傷を付けたB-Si膜602にセロハン粘着テープ604を付着させた後、セロハン粘着テープ604の端を持って矢印Aの方向に引きはがし、B-Si膜602の膜剥がれの有無を観察した。
【0044】
また、比較のために実施した比較例1について説明する。比較例1では、表面にSiN膜が形成されたシリコンウエハ及び表面にSiCN膜が形成されたシリコンウエハを準備した。次いで、SiN膜、SiCN膜の上にBN膜を形成することなく、前述の処理装置100により、実施例と同じ条件でB-Si膜を形成した。次いで、B-Si膜が形成されたシリコンウエハを550℃で30分間、熱処理した。また、シリコンウエハを熱処理する前後において、実施例と同じテープテストにより、それぞれのB-Si膜の密着性を評価した。
【0045】
また、比較のために実施した比較例2について説明する。比較例2では、表面にSiN膜が形成されたシリコンウエハ及び表面にSiCN膜が形成されたシリコンウエハを準備した。次いで、前述の処理装置100により、SiN膜、SiCN膜の上にa-Si膜及びB-Si膜を真空雰囲気下で連続して形成した。次いで、B-Si膜が形成されたシリコンウエハを550℃で30分間、熱処理した。また、シリコンウエハを熱処理する前後において、実施例と同じテープテストにより、それぞれのB-Si膜の密着性を評価した。なお、a-Si膜は、シリコンウエハを470℃に加熱した状態でSiH4ガスを供給することにより、20nmの厚さで形成した。また、B-Si膜の成膜条件は、実施例と同じである。
【0046】
図7~
図9は、B-Si膜の密着性の評価結果を示す図であり、それぞれ実施例、比較例1及び比較例2の結果を示す。
【0047】
図7に示されるように、下地の上にBN膜及びB-Si膜を真空雰囲気下で連続して形成した実施例では、下地がSiN膜とSiCN膜のいずれの場合でも、熱処理の前と後の両方においてB-Si膜の膜剥がれがないことが確認された。
【0048】
これに対し、
図8に示されるように、下地の上にBN膜を形成することなくB-Si膜を形成した比較例1では、下地がSiN膜とSiCN膜のいずれの場合でも、熱処理の前と後の両方においてB-Si膜の膜剥がれがあることが確認された。
【0049】
また、
図9に示されるように、下地の上にs-Si膜及びB-Si膜を真空雰囲気下で連続して形成した比較例2では、下地がSiN膜の場合、熱処理の前にはB-Si膜の膜剥がれはなく、熱処理の後にベベル部でB-Si膜の膜剥がれがあることが確認された。また、比較例2では、下地がSiCN膜の場合、熱処理の前と後の両方においてB-Si膜の膜剥がれがないことが確認された。
【0050】
以上の結果から、下地の上にBN膜及びB-Si膜を真空雰囲気下で連続して形成することにより、下地の種類によらずに、下地の上に密着性が良好なB-Si膜を形成できることが示された。
【0051】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0052】
上記の実施形態では、処理装置が複数の基板に対して一度に処理を行うバッチ式の装置である場合を説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、処理装置は基板を1枚ずつ処理する枚葉式の装置であってもよい。また、例えば処理装置は処理容器内の回転テーブルの上に配置した複数の基板を回転テーブルにより公転させ、第1のガスが供給される領域と第2のガスが供給される領域とを順番に通過させて基板に対して処理を行うセミバッチ式の装置であってもよい。
【符号の説明】
【0053】
100 処理装置
130 処理ガス供給部
150 制御部
S 処理室