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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-21
(45)【発行日】2025-03-04
(54)【発明の名称】ウェハ搬送装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/673 20060101AFI20250225BHJP
【FI】
H01L21/68 V
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023559813
(86)(22)【出願日】2022-03-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-18
(86)【国際出願番号】 EP2022057571
(87)【国際公開番号】W WO2022207419
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-09-27
(31)【優先権主張番号】21166539.3
(32)【優先日】2021-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599119503
【氏名又は名称】ジルトロニック アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Siltronic AG
【住所又は居所原語表記】Einsteinstrasse 172,81677 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ランプレヒト,ルートビヒ
(72)【発明者】
【氏名】フォーゲル,トラルフ
【審査官】小山 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-343621(JP,A)
【文献】特開平05-198664(JP,A)
【文献】特開平10-284586(JP,A)
【文献】特開平04-269751(JP,A)
【文献】特表2001-500669(JP,A)
【文献】特表2018-526814(JP,A)
【文献】特表2018-512340(JP,A)
【文献】特開2006-056082(JP,A)
【文献】特開2015-171910(JP,A)
【文献】特開2017-213813(JP,A)
【文献】国際公開第1998/011598(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/673
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェハ(302)を搬送するための搬送容器(301)であって、
3D印刷によって基材(105)から、規定された形状に生成されており、
前記搬送容器(301)の内側の表面の少なくとも一領域は、前記半導体ウェハをエッチングすることができる化学物質から保護するためのコーティング材料(108)を含み、
前記コーティング材料(108)は、低温コーティングプロセス、より特定的には低温焼結プロセスによって、50°C未満の温度で塗布されたものであり、
前記コーティング材料(108)は、ポリテトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシポリマーまたはポリフッ化ビニリデンで構成され、
前記搬送容器の規定された形状は、液体媒体を除去するのに適した装置を基部に含み、
前記搬送容器の規定された形状は、搬送されるべき前記半導体ウェハ(302)を直立状態で搬入することができるように、半導体ウェハ(302)用の1つ以上の一体型ワークピースホルダ(303)および/または前記半導体ウェハ(302)用のキャリアを含み、
自動搬送システムにおける前記搬送容器(301)の指定された搬送方向は、前記半導体ウェハの表面側または裏面側に対して平行である、搬送容器(301)。
【請求項2】
前記液体媒体を除去するのに適した装置は、前記搬送容器(301)内の堆積によって自動的に開かれるように構成される、請求項1に記載の搬送容器(301)。
【請求項3】
電気エネルギのための能動エネルギ貯蔵部を含む、請求項1又は請求項2に記載の搬送容器(301)。
【請求項4】
電子データ処理のためのシステムを含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の搬送容器(301)。
【請求項5】
床対象の搬送システムおよび天井対象の搬送システムの両方に容器を固定することができる1つ以上の固定装置を含む、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の搬送容器(301)。
【請求項6】
搬送動作中に液漏れを防止するための1つ以上のカバー装置(300)を備える、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の搬送容器(301)。
【請求項7】
液体および半導体ウェハ(302)で満たされた前記搬送容器(301)の重量は15kg超120kg未満である、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の搬送容器(301)。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の搬送容器を使用することを含む、半導体ウェハを搬送するためのプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーバーヘッドホイスト搬送システムでの使用に適した、半導体ウェハ用の搬送容器の形状をした装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術
シリコンまたは他の半導体材料から作製された半導体ウェハを製造および処理する際に、半導体ウェハを搬送することおよび/またはこれら半導体ウェハを規定された向きに維持することができるようにするために、個々の動作ステップ間において搬送容器が用いられる。
【0003】
搬送容器は、ここでは、概して、ウェハカセットがウェハと一緒に容器内に配置され得るとともに、手動でまたは無人搬送車(automated guided vehicle:AGV)で搬送され得るように構成されている。
【0004】
搬送容器からのウェハカセットの搬入および搬出には、自動化のレベルに応じて多くの時間がかかる。
【0005】
さらに、ウェハを搬送中に何回も移動させると、結果として、搬送されるウェハが破損するリスクが高まる。
【0006】
第一に、例えば、クリーンルームの床上において無人搬送車(AGV)または手押しカートで操作される、床対象の搬送システムがある。
【0007】
第二に、クリーンルームの天井に固定されたレールシステム上で作動させる天井対象の搬送システムがある。この場合、オーバーヘッドホイスト搬送システムを用いることが特に有利である。
【0008】
AGVまたは手押しカートを用いる床対象の搬送システムは、操作ユニット間に専用の搬送経路を必要とする。これにより、クリーンルーム内では、操作機器が真直ぐな経路を占有してしまうので、費用をかけてクリーンルーム区域を追加することとなり、場合によっては搬送経路が長くなってしまう。
【0009】
オーバーヘッドホイスト搬送(overhead hoist transport:OHT)システムを用いる場合、例えばウェハを天井下で搬送することができ、このため追加のクリーンルーム区域を取入れなくてよいので、上述の欠点が克服される。この一例が米国特許出願US2015104276AAに開示されている。
【0010】
半導体ウェハ用の搬送容器は、熱成形された容器、射出成形された容器、鋳造された容器または溶接された容器として製造されてもよい。しかしながら、上述したように、これらの製造プロセスの結果として得られる容器の実現可能な成形特徴および機能特徴には限界がある。
【0011】
文献US2004/206663A1には、容器のより効果的な洗浄および乾燥を促進するために超疎水性表面を備えた容器が開示されている。
【0012】
文献WO2004/005163A1は、難燃性材料から製造された部品で構成された、ウェハ用の搬送容器に関する。
【0013】
文献US2005/236110A1は、概して、半導体処理産業において使用可能な手持ち式器具、搬送機器、キャリア、トレイおよび同様の装置のための成形作業に例えばPEEK等の薄い保護用熱重合膜を投入するためのシステムおよび方法に関する。
【0014】
文献DE4223326A1は、半導体ウェハ用のキャリアに関し、当該キャリアはキャリアサブ構造を備え、ダイヤモンドコーティングがサブ構造の少なくとも一部分に施されている。
【0015】
「ロードポート(loadport)」とも称される半導体製造におけるキャリアシステムが、搬送容器と操作ユニットとの間に機械的インターフェイスおよび電気的インターフェイスの両方によって構成されている。搬送容器は、処理ユニットを搬入および搬出するために搬送システムによってこのシステム上に配置される。ここで、FOUP(Front Opening Unified Pod:正面開口式カセット一体型ポッド)、FOSB(Front Opening Shipping Box:正面開口式搬送ボックス)、OC(Open Cassette:オープンカセット)、SMIF(Standard Mechanical Interface:標準メカニカルインターフェイス)ポッド等の一般的な半導体搬送ボックスの装着を可能にするとともにSEMI規格を満たすロードポートが広く普及している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、特に半導体ウェハの湿式搬送およびそれらの製造を含めて、オーバーヘッドホイスト搬送(OHT)システムとの併用を可能にする、改善された半導体ウェハ搬送容器が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
発明の開示
本発明は、独立請求項の特徴を有する半導体ウェハ用搬送容器を提案する。有利な構成が従属請求項の主題および以下の記載の主題に記載されている。
【0018】
本発明は、例えばシリコンウェハ等の半導体ウェハ用の搬送容器に関する。本発明は、付加的な構造または製造プロセスによって基材から規定された形状を有する容器を生成することを含み、これは、より特定的には3D印刷を伴い得る。従って、例えば、最終的に所望の規定された形状が製造されるまで、基材が層ごとに追加される。その後、(このように構成された)容器の表面のうち少なくとも予め定められた領域に、化学物質から保護するためのコーティング材料が塗布され、すなわち、容器は、(保護コートとしての役割を果たす)コーティングにより、化学物質に対して耐性を持つようになる。
【0019】
コーティングされた容器は搬送容器と称されることもある。コーティング材料が塗布される表面の関連領域は、より特定的には、その後の使用中に対応する媒体または化学物質と接触することが意図されるので保護されるべきである領域である。これは、特に、典型的には上部が開口している容器の内側に関係している。しかしながら、搬送容器が蓋を有し、より特定的には当該蓋がその内面を濡らす液体を通さない場合、特に有利である。
【0020】
例えば、AGVおよびオーバーヘッドホイスト搬送システムを用いた乾式搬送または湿式搬送のために最適化され、従来の製造プロセスに対して複数の点で最適化された搬送容器を、積層造形プロセスまたは3D印刷によって製造することができる。これは、特に、このようにして製造された容器の一部として一体化された機械的構造要素を含め、従来から製造されている容器に遡及的に接続されなければならない構成要素を追加することなく、自由設計成形によって可能である。加えて、耐化学性、表面性質、一体型の充電可能な電源、機械的連結要素、センサ、外部エネルギおよび媒体供給のための継ぎ手、半導体ウェハ用の一体型ホルダ、ならびにそれぞれの用途のための流体機能特徴は、以下により詳細に説明するように、従来の製造プロセスと比べて、より変動可能に、かつより適合的に選択され得る。
【0021】
改善された、または実際には最適化された耐化学性は、表面封止としての役割を果たすかまたは表面封止をもたらすコーティング材料を塗布することによって達成される。この点に関して好ましいコーティング材料として、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene:PTFE)、ペルフルオロアルコキシポリマー(perfluoroalkoxy polymer:PFA)、およびポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride:PVDF)が挙げられる。
【0022】
本発明者らは、3D印刷等の積層造形プロセスによって基材のみから製造される容器は、表面の粗さがあまりにも顕著であるため、半導体ウェハ用の搬送容器として使用できないことを認識した。これらの表面は、所望の用途に用いるには粗過ぎるため、結果として、有機汚染物質および無機汚染物質が表面上および表面内に堆積し、このため、搬送中の半導体ウェハの品質に悪影響を及ぼしてしまう。
【0023】
しかしながら、積層造形プロセス(3D印刷)によって製造された容器の関連する表面上が例えばPTFEでコーティングされているので、この場合、従来から製造されている搬送容器の有益な特性(すなわち、特に耐化学性)を、積層造形プロセス(すなわち、特に自由成形)によって製造された半導体ウェハ(典型的にはシリコンウェハ)用の容器の有益な特性と組合わせることができる。
【0024】
積層造形プロセスによって製造された容器が従来のコーティングプロセスにおいて過酷な熱負荷を受けるため変形する可能性があることを想定して、低温コーティングプロセスが積層造形プロセスと組合わせて開発されてきた。
【0025】
半導体ウェハの場合の動作に必要な高純度コーティングは、従来より、高温で表面に塗布されている。
【0026】
低温コーティングプロセスを好ましくは150°C未満の温度で制御しながら用いると、結果として、例えば3D印刷された容器のうちより温度安定性の低い表面に高純度のコーティングを塗布することもでき、結果として、自由成形、搬送容器内への化学物質の供給および搬送容器からの化学物質の除去を制御しながら行なうこと、ならびに化学的特性および物理的特性、等の利点をもたらすことが可能となる。
【0027】
例えば、材料PA3200GFは、ISO75-1/-2に従って最大157°Cの(0.45MPaの圧力でX方向に)寸法保全温度を有する。同等な数字が、特に充填剤と共にポリアミドを含む好ましい基材に適用される。この温度を上回ると、プラスチックの外形は典型的には自重崩壊する。PTFEコーティングは、例えば、一般に噴霧によって塗布され、約220°C~420°Cの温度でオーブン内で焼結される。典型的には100°Cで長時間にわたって低温焼結プロセスを行なった結果、例えば、3D印刷されたシリコンウェハ容器に化学物質および汚染に対する耐性を持たせることが可能であった。
【0028】
積層造形プロセス(3D印刷)によって製造された容器の表面粗さは、低温コーティングによって緩和することができ、典型的には、(粗さを規定する)Rz値およびRa値は、低温コーティングなしで容器の対応する値に対して約70%低減させることができる。従って、これにより、搬送容器内の(容器)表面に液体の粒子または他の有機成分もしくは無機成分が付着することも有意に削減されることとなり、液体の交換時に、これら粒子または成分をはるかに容易にかつ制御された方法で除去することも可能となる。
【0029】
提案された積層造形プロセス(3D印刷)は、最適化された容器設計、言い換えれば、オーバーヘッドホイスト搬送システムと組合わせて使用するために形状および適合性の点で最適化された搬送容器、を可能にする。例えば、搬送容器の液体体積を重量最適化することは、当該容器内に収容して搬送される半導体ウェハに容器の形状を適合させる容易な製造可能性によって可能であり、このため、搬送容器の使用時に必要とされる媒体または化学物質の量が不必要に多くなることはない(例えば、液体が収容される体積が可能な限り低く維持されることを意味する)。
【0030】
特に好ましくは、規定された形状の容器は、媒体または化学物質を除去する手段を含み、特に好ましくは、複数の供給手段および/または除去手段も備える。
【0031】
特に好ましくは、1つ以上の半導体ウェハまたはそれらのキャリア用の1つ以上の一体型ワークピースホルダも存在する。ワークピースホルダは、例えば、1つ以上の半導体ウェハをその中に挿入して直接保持することができるように設計され得る。
【0032】
同様に、好ましくは、ワークピースホルダはまた、キャリア、カセットまたは別のホルダがその中に挿入可能となるように、さらに、1つまたは好ましくは2つ以上の半導体ウェハが挿入されて保持され得るように、設計されてもよい。5枚、10枚、15枚または25枚のシリコンウェハ用のウェハホルダ(カセット)が好ましくはワークピースホルダに挿入され、これにより、複数のシリコンウェハをウェハラックと一緒に挿入したり引出したりする必要なしに、これらのシリコンウェハを一緒に挿入することおよび/または引出すことが可能となる。
【0033】
この文脈において、「バッチ処理」という用語は半導体製造において常套的なものである。これは、3D印刷された搬送容器内およびその中に配置されたウェハホルダ内におけるウェハの全量を同時にまたは個別に挿入するかまたは引出すことを含む。結果として、ウェハカセットを搬入および搬出する時間の掛かる操作が省かれる。加えて、カセットの搬入および搬出を省くことにより、カセットとの境界面にあるウェハが振動により破損するリスクも低減される。
【0034】
好ましくは、さらに、1つ以上のフレームおよび/または1つ以上の固定手段が、様々な操作ユニットへの取付けおよび自動連結のために設けられる。容器形状に一体化された補強要素が特に好ましい。
【0035】
搬送容器を操作ユニットに自動的に連結することは、操作ユニット内でその目的のために一体化された機械的、電気的、データ処理用および/または流体による連結要素上に容器を配置することによって、好ましくは、オーバーヘッドホイスト搬送システムと共に達成される。
【0036】
この点に関して、3つ以上の機械的構成要素を採用することが好ましい。搬送容器と接触する領域では、これら3つ以上の機械的構成要素は、面取りされた形状、丸みを帯びた形状、円錐形状もしくは円錐台形状であるヘッドピースを備えたピンの形態で、またはローラの形態で構成され得る。キャリアシステム上のこれらの構成は、その区域にわたって回転対称、軸対称または非対称な分布を含み得る。キャリアシステムは、配置すべき搬送容器を水平なX-Y方向に予め位置決めすることを可能にする追加の形状要素を備えてもよい。さらに、搬送容器が横方向に傾斜するのを防止する安定化要素をキャリアシステム上に配置してもよい。
【0037】
ここで、一杯に詰め込まれた搬送容器の重量は、好ましくは25kg超120kg未満である。
【0038】
好ましくは搬送容器に一体化される必須の対応部品は、当該容器が配置されると、結果として、特に好ましくは形状がぴったりと嵌合する接続部を介して操作ユニットと搬送容器との間に機械的、電気的および/または流体的な接続をもたらす。
【0039】
供給手段および除去手段は、好ましくは一体化された形状であってもよく、その場合、任意の所望の設計を有し得る。
【0040】
従来から製造されてきた搬送容器の場合、供給および除去設備、供給ラインおよびアダプタは、典型的には、追加の導管、電気ライン、および容器上のアタッチメントを含む機械的アダプタによって実現される。
【0041】
逆に、積層造形プロセスまたは3D印刷は、このような要素を、例えば容器形状、側壁または基部に一体化することを可能にするとともに、媒体、電力およびデータの接続を高速で物理的に近接して提供するために理想的であるポイントや、操作ユニットまたは搬送システム、例えばオーバーヘッドホイスト搬送システムに容器を機械的に連結するために理想的であるポイントに、的を絞った方法で入口ポートおよび出口ポートを配置することを可能にする。好ましくは、この場合でも、これは、主として用いられるAGVまたはオーバーヘッドホイスト搬送システム等の様々な搬送システムのために、搬送容器の所望の用途に従って的を絞った方法で設計されてもよい。
【0042】
具体的には、オーバーヘッドホイスト搬送システム用の湿式搬送容器として適用する場合、例えば3D印刷等の積層造形プロセスは、好ましくは容器用の下降可能な保持装置を備えたいわゆるシャトル(OHT搬送車)によって容器を収容するために、上方の容器端縁を非常に正確かつ簡潔に設計および製造することを可能にする。正確に製造されると、結果として確実に、当該容器が市販のオーバーヘッドホイスト搬送システムと併用できるようになる。
【0043】
本発明者らは、多数の全く同じように構成された搬送容器のために、一体化された機械的連結要素同士を積層造形プロセスによって高い位置精度で一体化することが可能であることを認識した。積層造形プロセスによって一体化された機械的連結要素をウェハホルダと共に位置決めする絶対的精度は、ウェハ搬入/搬出ロボット等の搬入/搬出装置を各搬送容器ごとに別々に備える必要なしに、別々のプロセス機器上で実行される同一の搬入/搬出動作を実行するための必要条件である。従って、プロセスシーケンスの高い再現性を確実にすることができる。
【0044】
本発明者らはさらに、特にオーバーヘッドホイスト搬送システムと共に適用することが、ウェハを連続処理する場合における操作ユニット間の直接的な経路設定の必要条件であることを認識した。
【0045】
先行する動作ステップを制御する目的で下流の動作ステップから得られるフィードバック時間は、多くの場合、特定された製品要件に従って実質的な役割を果たす。
【0046】
本発明者らはまた、湿式搬送の場合に床対象の搬送手段によってこれまで行なわれてきた従来のウェハカセット搬送と比べて、オーバーヘッドホイスト搬送を用いる際にフィードバック時間を更に削減することができ、これにより、先行する動作をより有効に制御することができることも認識した。
【0047】
オーバーヘッドホイスト搬送システムを用いた湿式搬送の必要条件は、このようなシステムに特に適した本発明の搬送容器を使用することである。
【0048】
半導体ウェハを搬送するための1つの好ましい搬送容器は、規定された形状に3D印刷することによって基材から製造されてきた。
【0049】
この場合、搬送容器の表面のうち少なくとも一領域は、化学物質から保護するためのコーティング材料を含む。
【0050】
半導体ウェハの製造に用いられる化学物質は場合によっては酸性またはアルカリ性であり、意図的に供給される化学物質残留物または化学物質も搬送容器内に位置している。これらの化学物質の共通の特徴は、それらが搬送容器の表面を汚染するかまたはエッチングすることもできることである。上述のコーティングの結果、表面がエッチングから保護され、化学物質および不純物の付着が抑制され、容器の洗浄が改善される。
【0051】
コーティングは、この場合、低温コーティングプロセスによって塗布されている。この文脈において特に好ましいのは低温焼結プロセスである。この動作は好ましくは150°C未満の温度で実行される。
【0052】
コーティングは、ここでは、好ましくは、ポリテトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシポリマーまたはポリフッ化ビニリデンといった材料のうちの1つで構成されている。
【0053】
搬送容器の規定された形状は、好ましくは、液体媒体を除去するのに適した装置を基部に備える。特に好ましくは、この装置は、搬送容器内に収容された液体を急速に空にするためのバルブとして設計される。
【0054】
バルブは、この場合、より好ましくは、容器内の堆積によって自動的に開かれるように設計されている。この堆積は適切な箇所で起こる。
【0055】
しばしば、半導体ウェハの湿式搬送用の搬送容器への媒体の送り込みおよび当該搬送容器からの媒体の取出しが制御されたやり方で行なわれ、これにより、搬送後の不純物が制御されたやり方で迅速に除去されることとなる。本発明の搬送容器においては、極めて広範で迅速な排出は、典型的には、その目的のために特に想定されるとともに典型的にはいわゆるクイックダンプバルブとして構成される一体型急速排出システムによって実現することができ、従って、表面から除去された後の粒子が繰返し付着するのを防止するためにより有効に適合させることができる。
【0056】
搬送容器が半導体ウェハ用の1つ以上の一体型ワークピースホルダおよび/または半導体ウェハ用のキャリアを含む場合、搬送用の半導体ウェハを直立状態で搬入することができれば特に有利であることが判明した。
【0057】
市販されている容器の通常の特徴は、搬送方向の軸が搬送容器の同じ軸と常に一致するようにこれらの容器が搬送システムにぴったりと嵌め合わされることである。従って、容器を例えば90°回転させた状態で搭載することはできない。従って、容器のための指定の搬送軸がある。
【0058】
本発明者らは、半導体ウェハの表面側または裏面側が指定された搬送方向と平行になるように半導体ウェハが搬送容器に搭載されることを認識した。
【0059】
この効果として、搬送中に移動する液体が半導体ウェハに対して如何なる力または如何なる実質的な力も及ぼすことができない点が挙げられる。例えば、半導体ウェハを90°回転させた状態で搬送する場合、破損(割れ)が大きくなるだろう。
【0060】
従って、3D印刷された搬送容器内で搬送されるべき半導体ウェハ用のホルダは、好ましくは、その中に収容された液体が搬送中に半導体ウェハ間でウェハ表面と平行に移動することを可能にするように配置される。結果として、ウェハ表面における液体のスロッシングに起因して力が発生するのが抑制され、ウェハホルダにおけるウェハの相対移動が最小限に抑えられ、ウェハ表面が破損する事象が回避される。
【0061】
用いられる搬送容器が、電気構成要素を操作するために使用可能な電気エネルギのためのエネルギ貯蔵部を備える場合、特に有利であることが判明した。
【0062】
加えて、例えばミニPC等の電子データ処理のための要素が搬送容器に組込まれている場合、特に好ましい。
【0063】
これは、用途の可能性を大幅に高め、例えば、設置された適切なセンサが、故障の発生時に追跡するのに役立つ移動プロフィールを記録することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1】好ましい実施形態における一連の好ましいプロセスを概略的に示す図である。
図2】好ましい実施形態における本発明の搬送容器を概略的に示す図である。
図3】本発明の搬送容器を同様に示す詳細な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
図1は、好ましい実施形態における一連のプロセスを概略的に示す。まず第一に、この目的のために、図(a)に、基材105が供給される印刷ヘッド104を有する積層造形プロセス用装置106、例えば3Dプリンタ、が大まかに概略的に示されている。印刷ヘッド104は、最初に、製造中の容器の第1の層101を支持部107上に塗布する。
【0066】
この後、具体的には、新しい層をそれぞれの先行する層に塗布することによって、さらなる層が塗布される。図(b)には、層101に塗布されるさらなる層102が例示的に示され、図(c)には、層102に塗布されるさらなる層103が例示的に示されている。
【0067】
このようにして、容器100は、図(d)に大まかに概略的に示されるように、所望の形状または規定された形状で積層造形プロセスによって基材から製造される。同様に図(d)に示すように、コーティング材料108が、例えば、上部が開口している容器100の内面に塗布される。この塗布は、例えば、タンク109からコーティング材料108の供給を受ける塗布ツール111によって行なわれる。
【0068】
この方法に含まれる容器100は、次いで、図(e)に示されるように、例えば、基材105の寸法保全温度(例えば150°C)を下回る予め定められた温度範囲内で予め定められた時間にわたりオーブン112内で乾燥され、より具体的には焼結される。このようにして、化学物質に対しても耐性を持つ完全な搬送容器110が形成される。
【0069】
図2には、例えば図1に示されるとともに図1を参照して説明されるプロセスによって製造され得るような、好ましい実施形態における本発明の搬送容器202が概略的に示される。この場合、特に、搬送容器202の形状またはその成形が示されており、図1に関連付けて既に説明されたコーティング材料によるコーティングは、明確にするためにここでは明示されていない。
【0070】
容器201の蓋は、このようにしてOHT搬送車200にしっかりと組付けられ、次いで、OHT搬送車200は、当該搬送車を垂直に移動させるのに適したアタッチメント204上に懸架される。
【0071】
図3は、好ましい搬送容器の2つの断面を示す。封止システム304によって容器301上に配置することができる蓋300は、容器の搬送中に液体が漏れるのを防ぐ。ワークピースホルダ303に搭載された複数の半導体ウェハ302は、容器内に固定された状態で搬送することができる。搬送容器の意図される好ましい搬送方向は、保管された半導体ウェハ302の表面側または裏面側に沿っている。
【0072】
特に好ましい駆動ユニット305は、確実に、半導体ウェハを搬送中に回転させることができ、結果として、半導体ウェハの端縁に汚染堆積部位が形成される可能性をなくすことができる。
【0073】
何度も上述したように、提案された積層造形プロセスは、例えば、ウェハ搬送容器の自由な、従って最適化された設計を可能にする。容器内の動作に影響を及ぼす構成要素の取付けおよび設置は不要であり、むしろ、容器は、溶接なしで、かつ余分な材料なしで構築することもできる。化学物質排出ポートはプロセスに関連する位置に配置することができ、このため、ウェハおよび容器表面にある反応性化学物質を当該ウェハおよび容器表面から完全に除去することが確実にされる。
【0074】
構築形状は、3D印刷プロセスによって、必要な液体体積になるまで非常に精密に形成され得る。典型的には、一定数のウェハは、液体中に完全に浸漬される湿式搬送中に搬送することができる。図3から分かるように、搬送容器の形状は特定数のウェハに適合されており、従って、容器に投入される液体の体積も、例えば、必要最小限にまで低減される。
【0075】
構築形状は、典型的にはウェハ搬送のために流体的に最適化され、これにより、表面上に粒子をさらに蓄積させることなく、粒子および化学残留物がウェハおよび容器の表面から遠ざかるように除去ポートに向かって搬送されることとなる。この目的のために、搬送容器内を急速に空にするためのバルブを収容するために、好ましくは、容器基部に配置された中央ポートが装着される。
【0076】
好ましくは、上記容器の製造中に適切に成形することによって搬送容器に一体化されるワークピースホルダ304が付加的に設けられる。キャリアまたはウェハキャリアは、好ましくは、このワークピースホルダ304にしっかりと面一に挿入することができる。
【0077】
特に好ましくは、1つ以上の半導体ウェハは、ウェハキャリアを用いることなくワークピースホルダに直接挿入することができる。ワークピースホルダの向きは、好ましくは、容器が一杯に満たされた状態で、湿式搬送中に、ウェハ表面に対する液体のスロッシングにより力を発生させず、これにより、ウェハホルダ内におけるウェハ同士の相対移動を引起こさないように、設計されている。ウェハホルダのスロットは容器の搬送方向に並んでいる。
【0078】
加えて、搬送システム(例えばオーバーヘッドホイスト搬送システム)の収容装置に簡単に適合させるための(機械的連結要素を含む)一体型フレームおよびアタッチメントが実現可能である。特に好ましくは、様々な機械的連結要素が搬送容器の下側に同時に設けられる。連結要素は、例えば、容器位置を捕捉するための特殊な測定技術なしでロボットシステムを用いてウェハを搬入するために、動作ライン上で正確で整合性のある位置決めを行なう役割を果たす。
【0079】
さらに、適切な成形によりセンサホルダが形成され、このセンサホルダには、例示的にはセンサを挿入することができ、このセンサは、場合によっては、例えば定義された充填レベルを監視する役割を果たし得る。
【0080】
この点について、搬送容器の形状に一体化された機能または構成要素が単なる例示に過ぎないことが言及され得る。さらなる構成要素および/または機能が提供されてもよい。搬送容器の所望の用途に応じて、特定の構成要素および/または機能のみを設けることもできる。
【符号の説明】
【0081】
略号
100:コーティングされた容器
101:製造中の容器の第1の層
102:製造中の容器の第2の層
103:製造中の容器のさらなる層
104:印刷ヘッド
105:基材
106:3Dプリンタ
107:支持部
108:コーティング材料
109:タンク
110:搬送容器
111:塗布ツール
112:オーブン
200:OHT搬送車
201:OHT搬送車に固定して装着された搬送容器の蓋
202:搬送容器
203:搬送容器用のキャリアシステム
204:搬送車の垂直搬送用アタッチメント
300:容器の蓋
301:容器
302:半導体ウェハ
303:半導体ウェハ用のワークピースホルダ
304:容器と蓋との間の封止システム
305:液体下で容器内に収容された半導体ウェハを回転させることができる駆動ユニット
図1(a)】
図1(b)】
図1(c)】
図1(d)】
図1(e)】
図2
図3