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特許7639540基板を処理する装置、及び処理ガスの温度、濃度を測定する方法
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  • 特許-基板を処理する装置、及び処理ガスの温度、濃度を測定する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】基板を処理する装置、及び処理ガスの温度、濃度を測定する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/39 20060101AFI20250226BHJP
   C23C 16/52 20060101ALI20250226BHJP
【FI】
G01N21/39
C23C16/52
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021081140
(22)【出願日】2021-05-12
(65)【公開番号】P2022175030
(43)【公開日】2022-11-25
【審査請求日】2024-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】弁理士法人弥生特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小畑 雄治
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/033386(WO,A1)
【文献】特開2019-102482(JP,A)
【文献】特開平9-203707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/958
G01K 1/00-19/00
G01J 5/00- 5/90
H01L 21/00-21/98
C23C 16/00-16/56
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する装置において、
前記基板を収容し、前記処理が行われる処理空間を形成する処理容器と、
前記処理空間に対して、前記基板の処理または処理容器内に配置された機器の処理を行うための処理ガスを供給する処理ガス供給部と、
前記処理ガスが供給された前記処理空間に対して、レーザー光を投光する投光部と、
予め設定された波長の範囲である第1の波長範囲内で波長が変化するレーザー光と、前記第1の波長範囲とは異なる第2の波長範囲内で波長が変化するレーザー光とを、光導波路を介して前記投光部に供給する光源部と、
前記処理空間を通過した前記レーザー光を受光する受光部と、
前記受光部にて受光された前記第1の波長範囲のレーザー光の吸収スペクトルと、前記第2の波長範囲のレーザー光の吸収スペクトルとに基づき、前記処理ガスの温度を算出する温度算出部と、
前記第1の波長範囲内または前記第2の波長範囲内の特定の波長のレーザー光の吸光度に基づき、前記処理ガスの濃度を算出する濃度算出部と、を備え
前記処理空間には、前記基板が載置される載置台と、前記載置台に対向する対向面を有し、当該処理空間に前記処理ガスを供給するためのガス供給口が前記対向面に形成されたガスシャワーヘッドと、が設けられ、
前記投光部及び受光部は、前記投光部から投光された前記レーザー光が、前記対向面にて反射してから、前記受光部にて受光されるように、前記載置台に配置されている、装置。
【請求項2】
前記載置台には、前記処理空間内の異なる領域に前記レーザー光が通過するように、互いに対応付けられた前記投光部と前記受光部とからなる投受光セットが複数組設けられ、前記温度算出部及び前記濃度算出部は、各々の前記投受光セットにて投受光される前記レーザー光が通過する領域の前記処理ガスの温度及び濃度を算出する、請求項に記載の装置。
【請求項3】
前記載置台には、前記対向面にて反射した前記レーザー光を、当該対向面に向けて反射させる反射部が設けられている、請求項またはに記載の装置。
【請求項4】
前記投光部及び受光部は、前記載置台にて前記基板が載置される領域の周囲に設けられている、請求項ないしのいずれか一つに記載の装置。
【請求項5】
前記投光部及び受光部は、前記載置台にて前記基板が載置される領域に設けられ、前記投光部は、前記載置台に前記基板が載置されていない期間中に前記レーザー光の投光を行う、請求項ないしのいずれか一つに記載の装置。
【請求項6】
前記投光部及び受光部は、前記載置台にて前記基板が載置される領域に設けられ、前記光源部は、前記基板を透過する波長のレーザー光を前記投光部に供給する、請求項ないしのいずれか一つに記載の装置。
【請求項7】
基板を処理する処理ガスの温度、濃度を測定する方法において、
前記処理が行われる処理空間に対して、前記基板の処理または処理容器内に配置された機器の処理を行うための処理ガスを供給する工程と、
予め設定された波長の範囲である第1の波長範囲内で波長が変化するレーザー光と、前記第1の波長範囲とは波長の範囲が異なる第2の波長範囲内で波長が変化するレーザー光とを、前記処理ガスが供給された前記処理空間に対して投光する工程と、
前記処理空間を通過した前記レーザー光を受光する工程と、
前記受光された前記第1の波長範囲のレーザー光の吸収スペクトルと、前記第2の波長範囲のレーザー光の吸収スペクトルとに基づき、前記処理ガスの温度を算出する工程と、
前記第1の波長範囲内または前記第2の波長範囲内の特定の波長のレーザー光の吸光度に基づき、前記処理ガスの濃度を算出する工程と、を含み、
前記処理空間には、前記基板が載置される載置台と、前記載置台に対向する対向面を有し、当該処理空間に前記処理ガスを供給するためのガス供給口が前記対向面に形成されたガスシャワーヘッドと、が設けられ、
投光された前記レーザー光が、前記対向面にて反射してから、前記レーザー光の受光が行われるように、前記レーザー光を投光する工程と、前記レーザー光を受光する工程とは、前記載置台にて実施される、方法。
【請求項8】
前記処理空間に対して前記レーザー光を投光する工程、及び前記レーザー光を受光する工程では、前記処理空間内の異なる領域に前記レーザー光が通過するように、複数の前記レーザー光の投受光が行われ、
前記処理ガスの温度を算出する工程と、前記処理ガスの濃度を算出する工程とでは、各々の前記レーザー光が通過する領域の前記処理ガスの温度及び濃度の算出が行われる、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板を処理する装置、及び処理ガスの温度、濃度を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、基板である半導体ウエハ(以下、「ウエハ」ともいう)に対する処理を行う装置には、ウエハが配置された処理空間に対して処理ガスを供給することにより、処理を実行するものがある。処理空間に供給された処理ガスの温度及び濃度は、ウエハに対する処理の制御や設計を行ううえで重要な測定項目である。
【0003】
例えば特許文献1には、ガス流路を流れるガスに対して波長の異なる2種類の光を照射した結果に基づいて、半導体製造装置に供給されるガスの濃度を測定する技術が記載されている。また、特許文献2には、光学的検知装置を用いて成膜装置の基板保持室に供給された材料ガスの濃度を測定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開2016/080532号
【文献】特開2012-122101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、レーザー光を用いて、基板の処理が行われる処理空間に供給された処理ガスの温度と濃度とを測定する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、基板を処理する装置において、
前記基板を収容し、前記処理が行われる処理空間を形成する処理容器と、
前記処理空間に対して、前記基板の処理または処理容器内に配置された機器の処理を行うための処理ガスを供給する処理ガス供給部と、
前記処理ガスが供給された前記処理空間に対して、レーザー光を投光する投光部と、
予め設定された波長の範囲である第1の波長範囲内で波長が変化するレーザー光と、前記第1の波長範囲とは異なる第2の波長範囲内で波長が変化するレーザー光とを、光導波路を介して前記投光部に供給する光源部と、
前記処理空間を通過した前記レーザー光を受光する受光部と、
前記受光部にて受光された前記第1の波長範囲のレーザー光の吸収スペクトルと、前記第2の波長範囲のレーザー光の吸収スペクトルとに基づき、前記処理ガスの温度を算出する温度算出部と、
前記第1の波長範囲内または前記第2の波長範囲内の特定の波長のレーザー光の吸光度に基づき、前記処理ガスの濃度を算出する濃度算出部と、を備え
前記処理空間には、前記基板が載置される載置台と、前記載置台に対向する対向面を有し、当該処理空間に前記処理ガスを供給するためのガス供給口が前記対向面に形成されたガスシャワーヘッドと、が設けられ、
前記投光部及び受光部は、前記投光部から投光された前記レーザー光が、前記対向面にて反射してから、前記受光部にて受光されるように、前記載置台に配置されている、装置である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、レーザー光を用いて、基板の処理が行われる処理空間に供給された処理ガスの温度と濃度とを測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示に係るウエハ処理装置の縦断側面図である。
図2】前記ウエハ処理装置に設けられている載置台及びガスシャワーヘッドの模式図である。
図3A】投受光セットの第1のレイアウト例を示す平面図である。
図3B】投受光セットの第2のレイアウト例を示す平面図である。
図4】反射部が設けられた載置台の拡大模式図である。
図5】他の構成例に係るウエハ処理装置の縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1図4を参照しながら本開示の実施の形態に係る基板を処理する装置(ウエハ処理装置1)の構成例を説明する。
本例のウエハ処理装置1は、基板であるウエハWの上面に対してプラズマ化された処理ガスを供給して、成膜処理を実行する装置として構成されている。
【0010】
図1の縦断側面図に示すように、ウエハ処理装置1は、導電性材料、例えば、内壁面がアルマイト処理されたアルミニウムからなる円筒形状の容器本体11を備え、この容器本体11は電気的に接地されている。容器本体11の上面には開口が形成され、この開口は、天板部12によって気密に塞がれる。これら容器本体11及び天板部12は、ウエハWを収容するための処理容器10を構成する。処理容器10の内部の空間はウエハWの処理空間100となる。
また処理容器10の側壁には、ウエハWを搬入出するための搬入出口101および搬入出口101を開閉するゲートバルブ102が設けられている。
【0011】
処理空間100内の下部側には、前述の天板部12と対向するように、ウエハWを載置するための載置台2が設けられている。載置台2は、導電性の金属材料、例えば表面がアルマイト処理されたアルミニウムで構成された載置台本体21を備えている。載置台2の内部には、抵抗発熱体などによって構成される、不図示の加熱部が設けられている。
【0012】
載置台本体21の上面は、セラミクス層内に不図示のチャック電極を配置してなる静電チャック22が設けられている。静電チャック22は、直流電源(不図示)からの電力の給断によりウエハWの吸着保持、解除を切り替えることができる。載置台本体21は絶縁体製のカバー部24内に収納され、このカバー部24を介して容器本体11の底面に設置されている。
【0013】
また載置台2は、搬入出口101を介して処理空間100内に進入した外部の基板搬送機構(不図示)との間でウエハWの受け渡しを行うための3本以上の昇降ピン23を備えている。これらの昇降ピン23は、静電チャック22上の吸着保持位置と、この吸着保持位置の上方側の受け渡し位置との間でウエハWの昇降搬送を行う役割を果たす。各昇降ピン23は、載置台本体21及び容器本体11の底板を上下方向に貫通するように設けられ、これら昇降ピン23の下端部は容器本体11の外部に設けられた共通の昇降板211に接続されている。
【0014】
昇降板211はさらに駆動部212に接続され、この駆動部212を用いて昇降板211を昇降させ、静電チャック22から昇降ピン23の上端を突没させる。この動作により、吸着保持位置と受け渡し位置との間でのウエハWの昇降搬送が実行される。なお、各昇降ピン23が貫通する容器本体11の底板と昇降板211との間にはベローズ213が設けられ、容器本体11(処理空間100)内の気密が保たれている。
【0015】
各載置台2には、整合器231を介して第1の高周波電源232が接続されている。載置台2には、第1の高周波電源232から整合器231を介して高周波電力が供給される。これにより、後述するシャワーヘッド31との容量結合により、処理空間100内に供給された処理ガスがプラズマ化し、所望の成膜処理を行うことができる。
【0016】
なお、処理ガスをプラズマ化する手段は、容量結合を利用した平行平板型のものを採用する場合に限定されない。例えば誘導結合アンテナを用いてプラズマを発生させてもよいし、マイクロ波アンテナから処理ガスにマイクロ波を供給してプラズマを発生させてもよい。
【0017】
さらに載置台2には、整合器221を介して第2の高周波電源222が接続されている。第2の高周波電源222は、バイアス用の高周波電力を載置台2に印加する。このバイアス用の高周波電力により生成されたセルフバイアスによって、処理空間100内に生成されたプラズマ中のイオンをウエハWに引き込むことができる。
【0018】
また図1に示すように、容器本体11の底面には、排気口103が形成され、この排気口103には真空ポンプなどを含む真空排気部13が接続されている。処理空間100の内部は、この真空排気部13によって処理時に必要な圧力となるまで真空排気される。さらに処理空間100内に供給されたガスが載置台2の周方向に向けて均一に流れるようにするため、載置台2(カバー部24)の側周面と容器本体11の内壁面との間に、多数の小孔が穿設された整流板104を配置してもよい。
【0019】
図1に示すように、天板部12の下面側には、処理空間100内に処理ガスを供給するためのシャワーヘッド31が設けられている。シャワーヘッド31内には、静電チャック22に吸着保持されたウエハWの全面に向けて処理ガスなどを供給可能な扁平な拡散空間311が形成されている。シャワーヘッド31の下面側には多数のガス供給口312が形成され、拡散空間311内に拡散したガスは、これらのガス供給口312を介して処理空間100へ向けて分散供給される。
【0020】
またシャワーヘッド31の上面側には、拡散空間311に連通するガス供給ライン32が接続されている。ガス供給ライン32の上流側には、処理ガスの給断や流量調節を行うための開閉バルブや流量調節機構(いずれも不図示)を備えた調節部321、及び原料ガスを貯留した処理ガス源322が設けられている。これらシャワーヘッド31、ガス供給ライン32、調節部321及び処理ガス源322は、本例の処理ガス供給部に相当する。
【0021】
ウエハ処理装置1にて実施される成膜処理は、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)であってもよい。プラズマCVDでは、処理空間100に対して、成膜処理用の処理ガスである原料ガスや反応ガスなどを連続的に供給し、これらのガスをプラズマにより活性化させてウエハWへの成膜が行われる。
また、プラズマALD(Atomic Layer Deposition)による成膜を行ってもよい。プラズマALDでは、処理空間100に対して、ウエハWへの原料ガスの吸着と、吸着した原料ガスと、例えばプラズマにより活性化した反応ガスとの反応を交互に繰り返し実施して、ウエハWに形成される膜物質の層を積層する。ALDの場合には、シャワーヘッド31に対しては、原料ガス及び反応ガス、パージガスの供給に係る複数系統の調節部321や処理ガス源322が接続される。
【0022】
さらに図1に示すように、このウエハ処理装置1には制御部6が設けられている。制御部6は不図示のCPU(Central Processing Unit)と記憶部とを備えたコンピュータからなり、この記憶部にはウエハWが配置された処理空間100内を真空排気し、載置台2に高周波電力を印加して処理ガスをプラズマ化してウエハWを処理する制御信号を出力するためのステップ(命令)群が組まれたプログラムが記録されている。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリカードなどの記憶媒体に格納され、そこから記憶部にインストールされる。
【0023】
さらに本実施の形態に係るウエハ処理装置1は、処理ガス供給部から処理空間100に供給された処理ガスの温度及び濃度を測定する機構を備える。
濃度の測定法としては、公知の吸光光度分析を行う。吸光光度分析は、処理ガスが供給された処理空間100に対し、当該処理ガスによって吸収される波長の光を照射し、入射光の強度と、処理空間100を通過した後の光の強度との比に基づき、処理ガスの濃度を特定する。
【0024】
また、本例のウエハ処理装置1においては、濃度の測定と同様に、温度測定においても処理ガスに照射した光の吸光度を利用する。気体には、複数の吸収波長を有するものがある。また、実際の気体は、吸収波長にて最も吸光度が大きくなり、その前後の波長領域にて吸収波長から離れるに従い、次第に吸光度が小さくなる吸収スペクトルを呈する。
2つの吸収スペクトルの面積比やピーク強度比と、気体の温度との間には対応関係があることが知られており、この関係を利用した気体の温度測定技術も提案されている(例えば特開2000―74830、特開2020―6724)。
【0025】
本例のウエハ処理装置1は、処理ガスが供給された処理空間100に対して所定の波長範囲のレーザー光を照射して得られた吸収スペクトルに基づき、処理ガスの温度及び濃度を算出する。
これらの温度測定、濃度測定を行うため、図2に示すように、ウエハ処理装置1は、処理空間100にレーザー光を投光する投光部41と、投光部41に対してレーザー光を供給する光源部43と、処理空間100を通過したレーザー光を受光する受光部42とを備えている。
【0026】
投光部41は、レーザー光が射出される投光レンズ411と、当該投光レンズ411にレーザー光を供給する光導波路である光ファイバー400とを備える。図1図2に示すように、本例のウエハ処理装置1において、投光レンズ411は、処理容器10内の載置台2に設けられている。また、載置台2には、複数の投光レンズ411が設けられている。
【0027】
各投光レンズ411は、載置台2の上面側から、当該面と対向するように配置されたシャワーヘッド31の対向面310へ向けてレーザー光の投光を行う向きに配置されている。なお、処理ガスにより投光レンズ411汚れることを避けるため、投光レンズ411の上面側に、レーザー光を透過させる部材からなるカバーを設けてもよい。複数の投光レンズ411の平面配置については後述する。
【0028】
各投光レンズ411は、光ファイバー400を介して共通の切り替えスイッチ412に接続されている。切り替えスイッチ412は、光源部43から供給されたレーザー光の供給先となる投光レンズ411を切り替える役割を果たす。
【0029】
光源部43は、第1の半導体レーザー装置431と、第2の半導体レーザー装置432と、カプラー433とを備える。
第1、第2の半導体レーザー装置431、432は、半導体ダイオードを用いて所望の波長のレーザー光を発生させる。第1の半導体レーザー装置431は、処理ガスの吸収波長λ1を中心波長として、その前後の予め設定された波長範囲(第1の波長範囲)内でレーザー光の波長を変化させることができる。また、第2の半導体レーザー装置432についても同様に、既述の吸収波長λ1とは異なる吸収波長λ2を中心波長として、その前後の予め設定された波長範囲(第2の波長範囲)内でレーザー光の波長を変化させることができる。
【0030】
吸収波長λ1、λ2の設定例に特段の限定はない。赤外光や紫外光などの非可視光の範囲の波長を有するレーザー光を用いてもよいし、可視光の範囲の波長を有するレーザー光を用いてもよい。
【0031】
第1の波長範囲及び第2の波長範囲は、各吸収スペクトルの両側の裾部の吸光度が十分に小さくなり、当該処理ガスにおける吸光度のベースラインに達した領域が含まれるように設定される。
なお、第1、第2の半導体レーザー装置431、432は、吸収スペクトルを求めるにあたって、吸光度がゼロのレーザー光の強度を示す参照光や、フィルター用のエタロン信号として用いられるレーザー光を後述する光度測定装置の本体部426へ向けて出力するように構成してもよい。
【0032】
第1、第2の半導体レーザー装置431、432から供給されたレーザー光は、カプラー433にて結合された後、光ファイバー400を介して切り替えスイッチ412に入力され、選択された投光レンズ411へ供給される。
【0033】
次いで受光部42は、レーザー光が入射する受光レンズ421と、当該受光レンズ421を介して受光したレーザー光を導波する光ファイバー400とを備える。図1図2に示すように、本例のウエハ処理装置1において、投光レンズ411と同様に、受光レンズ421についても載置台2に設けられている。また、この載置台2には、投光レンズ411と同数の受光レンズ421が設けられている。
【0034】
各受光レンズ421は、シャワーヘッド31の対向面310にて反射されたレーザー光の受光を行う向きに配置されている。なお、投光レンズ411の場合と同様に、受光レンズ421の上面側に、レーザー光を透過させる部材からなるカバーを設けてもよい。複数の受光レンズ421の平面配置については後述する。なお、図1図3A図3Bにおいて、受光レンズ421には、灰色のトーンを付してある。
【0035】
各受光レンズ421は、光ファイバー400を介して共通の切り替えスイッチ422に接続されている。切り替えスイッチ422は、レーザー光を取り出す対象となる受光レンズ421を切り替える役割を果たす。
【0036】
載置台2に対して同数ずつ設けられた投光レンズ411と受光レンズ421とは、各々レーザー光の光路Lを介して互いに対応付けられ、投受光セット40を構成している。即ち、共通の投受光セット40を構成する投光レンズ411、受光レンズ421は、レーザー光の光路Lの一端部と、他端部とに位置するように配置される。この構成により、選択された投光レンズ411から投光されたレーザー光を、シャワーヘッド31の対向面310にて反射させた後、前記投光レンズ411に対応付けられた受光レンズ421にて受光させることができる。
ここでシャワーヘッド31は、対向面310にてレーザー光を反射させることができるように、金属で構成したり、セラミック製のシャワーヘッド31の表面をシリコンコーティングしたりするとよい。
【0037】
これら複数の投受光セット40を載置台2の異なる位置に設けることにより、処理空間100内の異なる領域にレーザー光が通過させ、これらの領域の処理ガスの温度及び濃度を測定することができる。互いに異なる複数の領域の処理ガスの温度や濃度を測定することにより、処理空間100内における処理ガスの温度分布や濃度分布を特定することができる。
【0038】
図3A図3Bは、載置台2における複数の投受光セット40の配置のバリエーションを示している。
処理ガスによる処理が行われている期間中、載置台2の上面には、ウエハWが載置される。このため、ウエハWの載置される載置領域に投受光セット40を配置すると、当該処理の期間中、投光レンズ411や受光レンズ421は、ウエハWによって覆われた状態となる。
【0039】
図3Aは、投光レンズ411や受光レンズ421が、ウエハWによって覆われてしまうことを避けるため、ウエハWの載置領域の周囲に投受光セット40を配置した例を示している。図3Aに示す例では、平面視したとき円形の載置台2の周方向に沿って、複数の投受光セット40が等間隔で配置されている。
【0040】
一方、図3Bに示すように、ウエハWが載置される領域内に投受光セット40を配置してもよい。この例は、円形であるウエハWの載置領域の径方向に沿って放射状に並ぶように、複数の投受光セット40が配置されている。
ウエハWの載置領域に投受光セット40が設けられている場合には、例えば当該載置台2にウエハWが載置されていない期間中に投光レンズ411からのレーザー光の投光を行い、処理ガスの温度、濃度を測定してもよい。
【0041】
また、例えば0~270℃の加熱温度において、シリコン製のウエハWは1.8~6.0μmの範囲の波長の光を透過させる。この波長の範囲内に処理ガスの吸収波長が含まれている場合には、ウエハWを透過する波長のレーザー光を投光することにより、載置台2にウエハWを載置したまま処理ガスの温度、濃度の測定を行うことができる。
【0042】
図2の説明に戻ると、切り替えスイッチ422を介して受光部42から出力されたレーザー光は、光学フィルターを備えた分波器423にて第1の波長範囲のレーザー光と、第2の波長範囲のレーザー光とに分波される。しかる後、各波長範囲のレーザー光がフォトダイオード425a、425bにて電気信号に変換された後、光度測定装置の本体部426に入力される。
【0043】
本体部426では、第1、第2の半導体レーザー装置431、432から供給された参照光の強度との比較を行うことにより、レーザー光の波長に対する吸光度の変化を示す吸収スペクトルを求めることができる。
本体部426は、吸収スペクトルを特定する情報を既述の制御部6へと出力する。
【0044】
本例の制御部6は、温度算出部61及び濃度算出部62の機能を備える。
温度算出部61は、処理ガスの温度に対する、第1の波長範囲の吸収スペクトルと第2の波長範囲の吸収スペクトルとの面積比やピーク強度比の対応関係に基づき、処理ガスの温度を算出する。処理ガスの温度と、上述の面積比、ピーク強度比との対応関係は、実験などにより予め取得し、制御部6の記憶部にテーブルや関数として記憶されている。
【0045】
濃度算出部62は、第1、第2の波長範囲に含まれる特定の波長、例えば吸収スペクトルの最大ピーク波長におけるレーザー光の吸光度に基づいて処理ガスの濃度を算出する。濃度の算出に当たっては、公知のランバート・ベールの法則を利用する場合を例示できる。
【0046】
以上に説明した構成を備えるウエハ処理装置1の作用について説明する。
まず、ゲートバルブ102を開き、外部の搬送装置(不図示)を用いて処理対象のウエハWを処理容器10内に搬入する。しかる後、昇降ピン23によりウエハWを下面側から突き上げて受け取り、搬送機構を装置の外部に退避させると共にゲートバルブ102を閉じる。次いで昇降ピン23を降下させることにより、載置台2にウエハWが載置される。
【0047】
載置台2は、その内部に設けられた不図示の加熱部によって予め設定された温度まで加熱されており、ウエハWは載置台2からの伝熱によって処理温度まで加熱される。ここで、投光レンズ411、受光レンズ421や光ファイバー400が配置されている領域を断熱材によって囲むことにより、これらの機器に対する加熱部による加熱の影響を避ける構成としてもよい。
【0048】
ウエハWを載置台2に載置したら、真空排気部13によって処理容器10内(処理空間100)の真空排気を行う。次いで、処理空間100に処理ガスを供給して成膜処理を行う。即ち、プラズマCVDによる成膜を行う場合は、原料ガスや反応ガスを連続的に供給すると共に、高周波電源222、高周波電源232から載置台2に高周波電力を印加し、これらのガスをプラズマ化して、膜物質を形成する反応を進行させる。この結果、ウエハWの表面に膜物質が堆積し、所望の膜が形成される。
【0049】
またプラズマALDによる成膜を行う場合は、原料ガス、反応ガスの供給と、これらのガスの排気(パージガスを供給しながら排気を行う場合を含む)とを順番に繰り返す。また、プラズマ化する処理ガスの供給期間中には、載置台2に高周波電力を印加することにより、当該処理ガスをプラズマ化して反応を進行させる。この結果、ウエハWの表面に形成された膜物質の層が積層されて所望の膜が形成される。
【0050】
このとき、レーザー光を用いた処理ガスの温度、濃度の測定をin-situで行う場合は、上記成膜処理の実行中に、処理ガスの温度、濃度の計測動作を実行する。この場合には、載置台2にはウエハWが載置された状態となっている。そこで図3Aに示す、ウエハWの載置領域の周囲に配置された投受光セット40を用いて測定を行ってもよい。また、図3Bに示す、ウエハWの載置領域に配置された投受光セット40を用い、ウエハWを透過する波長のレーザー光を利用して測定を行ってもよい。
【0051】
また、プラズマ化したガスについては、レーザー光の吸収スペクトルを利用した処理ガスの温度、濃度測定が困難となる場合もある。このような場合には、処理ガスの供給後、当該処理ガスをプラズマ化せず、温度、濃度測定を行う期間を設けてもよい。
【0052】
処理ガスの温度、濃度の測定に当たっては、温度、濃度の測定を行いたい領域をレーザー光が通過する位置に配置された、1つ、または複数(全てでもよい)の投受光セット40を選択する。そして、切り替えスイッチ412、422を用いて選択された投受光セット40と光源部43及び本体部426との接続を行う。しかる後、第1、第2の半導体レーザー装置431、432から、第1、第2の波長範囲内で波長を次第に変化させながらのレーザー光の供給を行う(掃引操作)。
【0053】
各レーザー光はカプラー433にて結合されてから、切り替えスイッチ412により選択された投光レンズ411へと供給され、処理空間100へと投光される。レーザー光は、処理ガスが供給されている処理空間100内を通ってシャワーヘッド31の対向面310にて反射された後、切り替えスイッチ422によって選択された受光レンズ421へと到達する。この光路を通過する期間中に、レーザー光が処理ガスに吸収されて、強度が低下する。
【0054】
受光レンズ421にて受光されたレーザー光は、分波器423にて各波長範囲のレーザー光に分離された後、フォトダイオード425a、425bにてレーザー光の強度に対応する電圧を有する電気信号に変換され、本体部426に入力される。
本体部426では、例えば参照光の強度との比較を行うことにより、第1、第2の波長範囲の各吸収スペクトルを作成する。
【0055】
作成された吸収スペクトルを示すデータは、制御部6に出力され、既述の算出法に基づき、温度算出部61により処理ガスの温度が算出され、また濃度算出部62により処理ガスの濃度が算出される。
複数の投受光セット40を用いて測定を行う場合には、選択する投受光セット40を順次、切り替え、上述の測定動作を繰り返し実行する。
【0056】
こうした測定した処理ガスの温度、濃度に基づいて、処理ガスの供給量や真空排気部13による真空排気量、例えば処理ガス源322に設けられている温度調節機構による処理ガスの温度調節を行ってもよい。この場合には、当該調節を行った後、ウエハWに対する成膜処理を実行してもよい。
所定の時間が経過し、成膜処理が完了したら、処理ガスの供給、高周波電力の印加、ウエハWの加熱を停止する。しかる後、処理容器10内の圧力調節を行った後、搬入時とは反対の手順で、成膜後のウエハWを処理容器10から搬出する。
【0057】
また、ウエハWの処理を実行している期間中に処理ガスの温度、濃度の測定を行うことが困難な場合もある。そこで、ウエハWの処理を行っていない期間中に、処理空間100に処理ガスを供給する期間を設定し、温度、濃度の測定を行ってもよい。この場合には、図3Bに示すように、ウエハWの載置領域に配置された投受光セット40を用いる場合であっても、利用するレーザー光がウエハWを透過する波長を有していることは必須ではない。なお、この場合にも図3Aに示す領域に配置された投受光セット40を用いて処理ガスの温度、濃度の測定を行ってもよいことは勿論である。
【0058】
以上に説明した実施の形態によれば、処理ガスが供給された処理空間100にて、2つの異なる波長範囲のレーザー光の吸収プロファイルを取得することにより、処理ガスの温度、濃度を同時に測定することができる。
特に、複数の異なる位置に配置された投受光セット40を利用することにより、処理空間100内の処理ガスの温度、濃度の分布を特定することができる。
【0059】
図4は、図1図2を用いて説明した、載置台2に投受光セット40を設ける構成の変形例を示している。この例においては、載置台2の上面には、シャワーヘッド31の対向面310にて反射したレーザー光を、当該対向面310に向けて反射させる反射部25が設けられている。
【0060】
この構成によれば、図4に示すように、投光レンズ411から投光されたレーザー光は、シャワーヘッド31側の対向面310と載置台2側の反射部25との間で多数回反射させることができる。レーザー光を多数回反射させることにより、光路Lの距離が長くなるため、処理ガスの温度、濃度測定の感度を向上させることができる。
【0061】
次いで、図5を参照しながら第2の実施形態に係るウエハ処理装置1aの構成例について説明する。図5において、図1図4を用いて説明した構成と共通の構成要素に対しては、これらの図にて用いたものと共通の符号を付してある。
【0062】
図5に示すウエハ処理装置1aにおいては、投光部41を構成する投光レンズ411、及び受光部42を構成する受光レンズ421が処理容器10(処理空間100)の外部に設けられている。処理容器10の側壁面には、既述の搬入出口101が形成されている領域とは異なる位置に、レーザー光を透過させるための窓部14が設けられている。
【0063】
窓部14に臨む位置には、コリメーター401に保持された状態で投光レンズ411、受光レンズ421が配置されている。一方、窓部14を挟んで投光レンズ411、受光レンズ421と対向する処理容器10の内壁面には反射部15が設けられている。また本例では、2心ケーブル402を用いて投光部41と光源部43との間の接続、受光部42と本体部426側の機器との間の接続が行われている。
上述の配置により、投光レンズ411から投光されたレーザー光は窓部14を介して処理空間100に進入した後、反射部15にて反射し、次いで処理空間100及び窓部14を通過してから受光レンズ421にて受光される。
【0064】
本例のウエハ処理装置1a構成においても、処理ガスが供給された処理空間100にて、2つの異なる波長範囲のレーザー光の吸収プロファイルを取得することにより、処理ガスの温度、濃度を同時に測定することができる。
なお、図5に示す窓部14は、投光レンズ411から投光されたレーザー光を処理空間100に進入させる投光窓部と、処理空間100を通過したレーザー光を受光レンズ421に受光させる受光窓部とが共通化された構成であると言える。
【0065】
また、図5に示す例とは異なり、例えば処理容器10を挟んで互いに対向する位置に投光レンズ411と受光レンズ421とを別々に配置してもよい。この場合は、投光レンズ411に臨む処理容器10の壁面にレーザー光を処理空間100に進入させる投光窓部を設け、受光レンズ421に臨む壁面に処理空間100を通過したレーザー光を受光させるための受光窓部を設ける構成を例示することができる。
【0066】
以上に説明した手法において、温度、濃度の測定対象となる処理ガスは、成膜処理の際に用いられる原料ガスや反応ガスに限定されない。基板のエッチング処理に用いるエッチグガスや、基板に塗布されたレジスト膜のアッシング除去処理に用いるアッシングガス、処理空間100に配置された機器のクリーニングを行うクリーニングガスであってもよい。
また、処理ガスを用いた処理が行われる基板は、半導体ウエハの例に限定されるものではない。例えば、FPD(Flat Panel Display)のガラス基板であってもよい。
【0067】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0068】
L 光路
W ウエハ
1、1a ウエハ処理装置
100 処理空間
10 処理容器
31 シャワーヘッド
411 投光レンズ
421 受光レンズ
6 制御部
61 温度算出部
62 濃度算出部
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5