(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】圧電装置
(51)【国際特許分類】
H10N 30/853 20230101AFI20250226BHJP
H10N 30/87 20230101ALI20250226BHJP
H10N 30/06 20230101ALI20250226BHJP
H04R 17/02 20060101ALI20250226BHJP
H03H 9/17 20060101ALI20250226BHJP
【FI】
H10N30/853
H10N30/87
H10N30/06
H04R17/02
H03H9/17 F
(21)【出願番号】P 2021214370
(22)【出願日】2021-12-28
【審査請求日】2024-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 悠也
(72)【発明者】
【氏名】山田 英雄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 愛美
(72)【発明者】
【氏名】榎本 哲也
(72)【発明者】
【氏名】勅使河原 明彦
(72)【発明者】
【氏名】臼井 孝英
(72)【発明者】
【氏名】池上 尚克
(72)【発明者】
【氏名】片上 崇治
【審査官】小山 満
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-252258(JP,A)
【文献】特開平08-256398(JP,A)
【文献】国際公開第2021/131311(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0210988(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第1571586(EP,A2)
【文献】米国特許出願公開第2022/0232328(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第4082961(EP,A1)
【文献】特開2010-118730(JP,A)
【文献】特開2003-092437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 30/853
H10N 30/87
H10N 30/06
H04R 17/02
H03H 9/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電装置であって、
下地材(4、16、14)と、
前記下地材の上面(4a、16a、14a)に接して前記下地材の上に配置され、導電材料で構成される第1導電膜(5、17、15)と、
前記第1導電膜の上面(5a、17a、15a)に接して前記第1導電膜の上に配置され、圧電材料で構成される圧電膜(6、18、16)と、
前記圧電膜の上に配置され、導電材料で構成される第2導電膜(7、19、17)と、
前記第2導電膜の上面から前記圧電膜および前記第1導電膜を貫通するトレンチ(9、25
、27)の内部に設けられ、前記圧電膜よりも電気抵抗率が高い絶縁部(8、21
、23)と、を備え
、
前記絶縁部は、前記トレンチの内部に埋め込まれた絶縁材料で構成され、前記トレンチの底部から前記第2導電膜の上面と同じ位置まで埋め込まれている、圧電装置。
【請求項2】
圧電装置であって、
下地材(14)と、
前記下地材の上面(14a)に接して前記下地材の上に配置され、導電材料で構成される第1導電膜(15)と、
前記第1導電膜の上面(15a)に接して前記第1導電膜の上に配置され、圧電材料で構成される第1圧電膜(16)と、
前記第1圧電膜の上に配置され、導電材料で構成される第2導電膜(17)と、
前記第2導電膜の上面(17a)に接して前記第2導電膜の上に配置され、圧電材料で構成される第2圧電膜(18)と、
前記第2圧電膜の上に配置され、導電材料で構成される第3導電膜(19)と、
前記第3導電膜の上面から前記第2圧電膜および前記第2導電膜を少なくとも貫通するトレンチ(25、2
7)の内部に設けられ、前記第2圧電膜よりも電気抵抗率が高い絶縁部(21、2
3)と、を備え
、
前記絶縁部は、前記トレンチの底部から前記第3導電膜の上面と同じ位置まで埋め込まれている、圧電装置。
【請求項3】
前記トレンチ(27)は、前記第2圧電膜、前記第2導電膜、前記第1圧電膜、前記第1導電膜を貫通する、請求項
2に記載の圧電装置。
【請求項4】
前記絶縁部は、前記トレンチとして、前記第2圧電膜および前記第2導電膜を貫通し、前記第1圧電膜を貫通しない第1トレンチ(25)に設けられた第1絶縁部(21)であり、
前記圧電装置は、前記第1圧電膜の上面(16a)に沿う方向で前記第1トレンチから離れた位置で、前記第1圧電膜および前記第1導電膜を貫通し、前記第2導電膜を貫通しない第2トレンチ(26)の内部に設けられた第2絶縁部(22)備える、請求項
2に記載の圧電装置。
【請求項5】
前記絶縁部は、前記トレンチとして、前記第2圧電膜および前記第2導電膜を貫通し、前記第1圧電膜を貫通しない第1トレンチ(25)に設けられた第1絶縁部(21)であり
前記圧電装置は、
前記第1圧電膜の上面(16a)に沿う方向で前記第1トレンチから離れた位置で、前記第1圧電膜および前記第1導電膜を貫通し、前記第2導電膜を貫通しない第2トレンチ(26)の内部に設けられた第2絶縁部(22)と、
前記第1圧電膜の上面に沿う方向で前記第1トレンチと前記第2トレンチとのそれぞれから離れた位置で、前記第2圧電膜、前記第2導電膜、前記第1圧電膜および前記第1導電膜を貫通する第3トレンチ(27)の内部に設けられた第3絶縁部(23)と、を備える、請求項
2に記載の圧電装置。
【請求項6】
前記圧電装置は、前記第2絶縁部と前記第1圧電膜の両方の真上の位置に連続して配置された絶縁性のアモルファス膜(31)を備え、
前記第2導電膜は、前記アモルファス膜の上面(31a)に接して、前記第2絶縁部と前記第1圧電膜の両方の真上の位置に連続して配置されている、請求項
4または5に記載の圧電装置。
【請求項7】
前記第2絶縁部および前記アモルファス膜は、同じ種類の絶縁材料で構成されている、請求項
6に記載の圧電装置。
【請求項8】
前記下地材は、前記第1導電膜および前記第1圧電膜を構成する材料の結晶性を向上させる第1シード膜(14)であり、
前記圧電装置は、前記第2絶縁部と前記第1圧電膜の両方の真上の位置に連続して配置され、前記第1シード膜と同じ材料で構成された第2シード膜(32)を備え、
前記第2導電膜は、前記第2シード膜の上面(32)に接して、前記第2絶縁部と前記第1圧電膜の両方の真上の位置に連続して配置されている、請求項
4または5に記載の圧電装置。
【請求項9】
前記第2絶縁部は、前記第1シード膜と同じ材料で構成されている、請求項
8に記載の圧電装置。
【請求項10】
前記圧電装置は、前記トレンチの側壁部に設けられた酸化物層(41)を備える、請求項1ないし
9のいずれか1つに記載の圧電装置。
【請求項11】
前記圧電材料は、ScAlNである、請求項1ないし
10のいずれか1つに記載の圧電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、下地材と、下地材の上に配置される第1導電膜と、第1導電膜の上に配置される圧電膜と、圧電膜の上に配置される第2導電膜とを備える圧電装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、2つの第1導電膜が、下地材の上面に間をあけて配置される。圧電膜が、2つの第1導電膜の上面と、下地材のうち2つの第1導電膜の間に位置する部分の上面とに接して連続して配置される。2つの第2導電膜が、圧電膜の上に間をあけて配置される。このような構造を持つ圧電装置を製造するときでは、1つの連続する圧電膜が、異なる材料の上面にまたがって成膜される。
【0005】
この場合、異なる材料の継ぎ目部分や、各材料上に成長した圧電層同士が合わさる部位等で、圧電膜の成膜の乱れが発生する。このため、圧電膜のうち2つの第1導電膜の間に位置する部分では、圧電材料の結晶性が悪化したり、クラックが発生したりする。この結果、一方の第1導電膜、圧電膜および一方の第2導電膜が積層された一方の積層部と、他方の第1導電膜、圧電膜および他方の第2導電膜が積層された他方の積層部との少なくとも一方を、圧電素子として使用したときに、各積層部の第1導電膜と第2導電膜との間の電流リーク、または、2つの第1導電膜の間の電流リークが生じる。
【0006】
なお、この問題は、圧電装置が1層の圧電膜を備える場合に限らず、圧電装置が複数の圧電膜を備える場合においても生じる。すなわち、この問題は、2つの導電膜が間をあけて配置され、2つの導電膜のそれぞれの上に圧電膜が配置される圧電装置において、圧電膜が2つの導電膜の間の位置に配置される場合に生じる。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、上記の場合に生じる電流リークを回避することができる圧電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明によれば、
圧電装置は、
下地材(4、16、14)と、
下地材の上面(4a、16a、14a)に接して下地材の上に配置され、導電材料で構成される第1導電膜(5、17、15)と、
第1導電膜の上面(5a、17a、15a)に接して第1導電膜の上に配置され、圧電材料で構成される圧電膜(6、18、16)と、
圧電膜の上に配置され、導電材料で構成される第2導電膜(7、19、17)と、
第2導電膜の上面から圧電膜および第1導電膜を貫通するトレンチ(9、25、27)の内部に設けられ、圧電膜よりも電気抵抗率が高い絶縁部(8、21、23)と、を備え、
絶縁部は、トレンチの内部に埋め込まれた絶縁材料で構成され、トレンチの底部から第2導電膜の上面と同じ位置まで埋め込まれている。
【0009】
これによれば、絶縁部を挟んだ一方側に積層された第1導電膜および圧電膜と、絶縁部を挟んだ他方側に積層された第1導電膜および圧電膜との間の絶縁性が、絶縁部によって確保されている。すなわち、2つの第1導電膜の間に、圧電膜は配置されていない。これにより、本発明と異なり、圧電膜が2つの第1導電膜の間に配置されている場合に、圧電膜のうち2つの第1導電膜の間に位置する部分に生じる電流リークを回避することができる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明によれば、
圧電装置は、
下地材(14)と、
下地材の上面(14a)に接して下地材の上に配置され、導電材料で構成される第1導電膜(15)と、
第1導電膜の上面(15a)に接して第1導電膜の上に配置され、圧電材料で構成される第1圧電膜(16)と、
第1圧電膜の上に配置され、導電材料で構成される第2導電膜(17)と、
第2導電膜の上面(17a)に接して第2導電膜の上に配置され、圧電材料で構成される第2圧電膜(18)と、
第2圧電膜の上に配置され、導電材料で構成される第3導電膜(19)と、
第3導電膜の上面から第2圧電膜および第2導電膜を少なくとも貫通するトレンチ(25、27)の内部に設けられ、第2圧電膜よりも電気抵抗率が高い絶縁部(21、23)と、を備え、
絶縁部は、トレンチの底部から第3導電膜の上面と同じ位置まで埋め込まれている。
【0011】
これによれば、絶縁部を挟んだ一方側に積層された第2導電膜および第2圧電膜と、絶縁部を挟んだ他方側に積層された第2導電膜および第2圧電膜との間の絶縁性が、絶縁部によって確保されている。すなわち、2つの第2導電膜の間に、第2圧電膜は配置されていない。これにより、本発明と異なり、第2圧電膜が2つの第2導電膜の間に配置されている場合に、第2圧電膜のうち2つの第2導電膜の間に位置する部分に生じる電流リークを回避することができる。
【0012】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2A】第1実施形態の圧電装置の製造工程を示す断面図である。
【
図2B】
図2Aに続く圧電装置の製造工程を示す断面図である。
【
図2C】
図2Bに続く圧電装置の製造工程を示す断面図である。
【
図5A】第2実施形態の圧電装置の製造工程を示す断面図である。
【
図5B】
図5Aに続く圧電装置の製造工程を示す断面図である。
【
図5C】
図5Bに続く圧電装置の製造工程を示す断面図である。
【
図5D】
図5Cに続く圧電装置の製造工程を示す断面図である。
【
図5E】
図5Dに続く圧電装置の製造工程を示す断面図である。
【
図9A】第5実施形態の圧電装置の製造工程を示す断面図である。
【
図9B】
図9Aに続く圧電装置の製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0015】
(第1実施形態)
図1に示す本実施形態の圧電装置1は、センサ、アクチュエータ等に適用される。この圧電装置1は、基板2と、絶縁膜3と、シード膜4と、第1導電膜5と、圧電膜6と、第2導電膜7と、絶縁部8と、を備える。
【0016】
基板2は、シリコン(すなわち、Si)等で構成される。絶縁膜3は、基板2の上面2aに接して、基板2の上に配置されている。絶縁膜3は、絶縁材料で構成される膜である。絶縁膜3を構成する絶縁材料としては、酸化ケイ素(すなわち、SiO2)等が挙げられる。
【0017】
シード膜4は、絶縁膜3の上面3aに接して、絶縁膜3の上に配置されている。シード膜4は、シード膜4の上に形成される第1導電膜5および圧電膜6を構成する材料の配向性(すなわち、結晶性)の向上のために用いられる。
【0018】
第1導電膜5は、導電材料で構成される膜である。第1導電膜5は、シード膜4の上面4aに接して、シード膜4の上に配置されている。このため、本実施形態では、シード膜4は、第1導電膜5の下地である。
【0019】
圧電膜6は、第1導電膜5の上面5aに接して、第1導電膜5の上に配置されている。圧電膜6は、圧電材料で構成される膜である。本実施形態では、圧電材料として、窒化アルミニウムスカンジウム(すなわち、ScAlN)が用いられる。シード膜4を構成する材料として、窒化アルミニウム(すなわち、AlN)が用いられる。なお、圧電材料として、AlN、チタン酸ジルコン酸鉛(すなわち、PZT)等の他の圧電材料が用いられてもよい。圧電材料として、AlNが用いられる場合、シード膜4を構成する材料として、AlNが用いられる。
【0020】
第2導電膜7は、圧電膜6の上面6aに接して、圧電膜6の上に配置されている。第2導電膜7は、導電材料で構成される膜である。第1導電膜5と第2導電膜7のそれぞれを構成する導電材料としては、モリブデン、チタン、プラチナ、アルミニウム、ルテニウム等のいずれか1つを主成分とする金属材料が用いられる。導電材料として、金属材料以外の材料が用いられてもよい。第2導電膜7を構成する導電材料は、第1導電膜5を構成する導電材料と同じであるが、異なってもよい。
【0021】
絶縁部8は、第2導電膜7の上面7aから圧電膜6および第1導電膜5を貫通するトレンチ9の内部に設けられている。トレンチ9の底部9aは、シード膜4に位置する。絶縁部8は、圧電膜6と比較して、電気抵抗率が高い。電気抵抗率は、体積抵抗率である。絶縁部8の電気抵抗率は、108Ω・m以上である。絶縁部8は、トレンチ9の内部に埋め込まれた絶縁材料で構成される。絶縁材料は、トレンチ9の底部9aから第2導電膜7の上面7aと同じ位置まで埋め込まれている。絶縁部8を構成する絶縁材料としては、SiO2、窒化ケイ素(すなわち、SiN)等が挙げられる。
【0022】
本実施形態の圧電装置1では、第1導電膜5のうち絶縁部8の一方側の第1導電膜51、圧電膜6のうち絶縁部8の一方側の圧電膜61、第2導電膜7のうち絶縁部8の一方側の第2導電膜71が積層された一方側の積層部A1を、圧電素子として使用することが可能である。一方側の積層部A1を圧電素子として使用する場合、一方側の第1導電膜51が下部電極として用いられ、一方側の第2導電膜71が上部電極として用いられる。
【0023】
さらに、第1導電膜5のうち絶縁部8の他方側の第1導電膜52、圧電膜6のうち絶縁部8の他方側の圧電膜62、第2導電膜7のうち絶縁部8の他方側の第2導電膜72が積層された他方側の積層部A2を、圧電素子として使用することが可能である。絶縁部8の他方側は、絶縁部8の一方側の反対側である。他方側の積層部A2を圧電素子として使用する場合、他方側の第1導電膜52が下部電極として用いられ、他方側の第2導電膜72が上部電極として用いられる。
【0024】
一方側の第1導電膜51と、他方側の第1導電膜52とは、離れているとともに、それらの間の絶縁部8によって、絶縁分離されている。一方側の第2導電膜71と、他方側の第2導電膜72とは、離れているとともに、それらの間の絶縁部8によって、絶縁分離されている。
【0025】
なお、一方側の積層部A1と他方側の積層部A2の使用方法によっては、一方側の第2導電膜71と、他方側の第2導電膜72とが、図示しない配線部によって、電気的に接続されてもよい。また、一方側の積層部A1と他方側の積層部A2の一方が、圧電素子として使用され、一方側の積層部A1と他方側の積層部A2の他方が圧電素子として使用されなくてもよい。
【0026】
次に、本実施形態の圧電装置1の製造方法について説明する。
【0027】
まず、
図2Aに示すように、基板2と、絶縁膜3と、シード膜4と、第1導電膜5と、圧電膜6と、第2導電膜7とが積層された積層体10を形成することが行われる。この積層体10を形成することにおいては、基板2の上に、絶縁膜3と、シード膜4と、第1導電膜5とが、この記載順に成膜される。その後、第1導電膜5の上面5aに接して、第1導電膜5の上に圧電膜6が成膜される。その後、圧電膜6の上面6aに接して、圧電膜6の上に第2導電膜7が成膜される。
【0028】
続いて、
図2Bに示すように、第2導電膜7の上面7aから第2導電膜7、圧電膜6および第1導電膜5を貫通するトレンチ9を形成することが行われる。トレンチ9の底部9aは、シード膜4に位置する。トレンチ9は、フォトリソグラフィおよびエッチングによって形成される。エッチングの方法としては、第2導電膜7、圧電膜6および第1導電膜5のそれぞれを構成する材料に応じた方法が採用される。
【0029】
続いて、
図2Cに示すように、トレンチ9の内部に絶縁材料を埋め込むことで、絶縁部8を形成することが行われる。このようにして、本実施形態の圧電装置1が製造される。
【0030】
本実施形態の効果について、
図3に示す比較例1の圧電装置1Aと対比して説明する。比較例1の圧電装置1Aは、本実施形態の絶縁部8を備えていない。比較例1の圧電装置1Aでは、2つの第1導電膜51、52は、シード膜4の上に、互いに間をあけて配置されている。圧電膜6は、2つの第1導電膜51、52の上と、それらの2つの第1導電膜51、52の間の位置とに、連続して配置されている。
【0031】
この比較例1の圧電装置1Aの製造方法では、シード膜4の上に2つの第1導電膜51、52が間をあけて形成される。その後、2つの第1導電膜51、52の上面5aと、シード膜4のうち2つの第1導電膜51、52の間に位置する部分の上面4aとにわたって、1つの連続する圧電膜6が成膜される。このように、異なる材料の上面にまたがって1つの連続する圧電膜6が成膜される。
【0032】
この場合、異なる材料の継ぎ目部分や、各材料上に成長した圧電層同士が合わさる部位等で、圧電膜6の成膜の乱れが発生する。このため、圧電膜6のうち2つの第1導電膜51、52の間に位置する部分では、圧電材料の結晶性が悪化したり、クラックB1、B2、B3、B4が発生したりする。この結果、一方の第1導電膜51、圧電膜6、一方の第2導電膜71が積層された一方の積層部A1と、他方の第1導電膜52、圧電膜6、他方の第2導電膜72が積層された他方の積層部A2とのそれぞれを、圧電素子として使用したときに、第1導電膜51、52から第2導電膜71、72への電流リークC1が生じる。または、2つの第1導電膜51、52の間の電流リークC2が生じる。
【0033】
これに対して、本実施形態の圧電装置1は、シード膜4と、第1導電膜5と、圧電膜6と、第2導電膜7と、絶縁部8とを備える。圧電膜6は、第1導電膜5の上面5aに接して第1導電膜5の上に配置される。絶縁部8は、圧電膜6および第1導電膜5を貫通するトレンチ9の内部に設けられ、圧電膜6よりも電気抵抗率が高い。
【0034】
この圧電装置1では、絶縁部8を挟んだ一方側に位置する、第1導電膜5、圧電膜6および第2導電膜7が、導電膜と圧電膜が積層された一方側の積層部A1を構成する。絶縁部8を挟んだ他方側に位置する、第1導電膜5、圧電膜6および第2導電膜7が、導電膜と圧電膜が積層された他方側の積層部A2を構成する。絶縁部8によって、一方側の積層部A1の第1導電膜5および圧電膜6と、他方側の積層部A2の第1導電膜5および圧電膜6との間の絶縁性が、確保されている。すなわち、2つの第1導電膜5の間に、圧電膜6は配置されていない。このため、比較例1の圧電装置1Aで生じる電流リークを回避することができる。
【0035】
さらに、圧電膜6は、シード膜4の上面4aと第1導電膜5の上面5aとのうち第1導電膜5の上面5aのみに接して形成されている。圧電膜6を形成するとき、圧電膜6は、一種類の材料の上面のみに接して形成される。このため、圧電膜6を構成する圧電材料の良好な結晶性を確保することができる。
【0036】
なお、本実施形態の圧電装置1の製造方法は、次のように変更可能である。積層体10を用意することにおいて、第2導電膜7を有していない積層体10を用意する。トレンチ9を形成することにおいて、圧電膜6の上面6aから圧電膜6および第1導電膜5を貫通するトレンチ9を形成する。そして、トレンチ9の内部に絶縁材料を埋め込むことで、絶縁部8を形成する。その後、圧電膜6および絶縁部8のそれぞれの上面にわたって第2導電膜7を成膜する。第2導電膜7をパターニングする。
【0037】
また、本実施形態の圧電装置1の製造方法は、次のように変更可能である。トレンチ9を形成することにおいて、第2導電膜7、圧電膜6、第1導電膜5およびシード膜4を貫通し、トレンチ9の底部9aが絶縁膜3に位置するトレンチ9を形成してもよい。その後、トレンチ9の内部に絶縁材料が埋め込まれることで、絶縁部8が形成される。これによって、シード膜4は、絶縁部8を挟んだ一方側に位置する一方側のシード膜4と、絶縁部8を挟んだ他方側に位置する他方側のシード膜4とに分断される。
【0038】
また、本実施形態の圧電装置1では、絶縁部8は、トレンチ9の内部に埋め込まれた絶縁材料で構成される。しかしながら、絶縁部8は、トレンチ9の内部に存在する空気、すなわち、空間部で構成されてもよい。空気の電気抵抗率は、20℃のとき1.3×1016~3.3×1016Ω・m以上である。
【0039】
また、本実施形態の圧電装置1は、シード膜4を備えている。しかしながら、圧電装置1は、シード膜4を備えていなくてもよい。この場合、第1導電膜5は、絶縁膜3の上面3aに接して、絶縁膜3の上に配置される。絶縁膜3が、第1導電膜5の下地材である。
【0040】
(第2実施形態)
図4に示す本実施形態の圧電装置11は、バイモルフ型のセンサへ適用される。このようなセンサとしては、圧電型のマイク等の高感度なセンサが挙げられる。圧電装置11は、基板12と、絶縁膜13と、積層構造部D1とを備える。
【0041】
基板12は、空間部121を有する。基板12は、第1実施形態の基板2と同じ材料で構成される。絶縁膜13は、基板12の上面12aに接して、基板12の上に配置されている。絶縁膜13は、第1実施形態の絶縁膜3と同じ材料で構成される。
【0042】
積層構造部D1は、絶縁膜13と空間部121とのそれぞれの上にまたがって配置されている。積層構造部D1のうち空間部121の上に位置する部分は、浮遊しており、振動可能である。この部分がセンシング部である。積層構造部D1のうち絶縁膜13および基板12の上に位置する部分は、絶縁膜13および基板12に支持されている。このように、積層構造部D1は、片持ち支持された状態となっている。
【0043】
積層構造部D1は、圧電膜と導電膜とが積層されている。具体的には、積層構造部D1は、下から上に、シード膜14と、第1導電膜15と、第1圧電膜16と、第2導電膜17と、第2圧電膜18と、第3導電膜19とが、この記載順に積層されている。
【0044】
シード膜14は、第1導電膜15および第1圧電膜16を構成する材料の結晶性を向上させるために用いられる。シード膜14は、第1実施形態のシード膜4と同じ材料で構成される。シード膜14は、第1導電膜15の下地である。第1導電膜15は、シード膜14の上面14aに接して、シード膜14の上に配置されている。第1導電膜15は、導電材料で構成される膜である。第1圧電膜16は、第1導電膜15の上面15aに接して、第1導電膜15の上に配置されている。第1圧電膜16は、圧電材料で構成される膜である。
【0045】
第2導電膜17は、第1圧電膜16の上面16aに接して、第1圧電膜16の上に配置されている。第2導電膜17は、導電材料で構成される膜である。第2圧電膜18は、第2導電膜17の上面17aに接して、第2導電膜17の上に配置されている。第2圧電膜18は、圧電材料で構成される膜である。第3導電膜19は、第2圧電膜18の上面18aに接して、第2圧電膜18の上に配置されている。第3導電膜19は、導電材料で構成される膜である。
【0046】
積層構造部D1のうち第1導電膜15、第1圧電膜16、第2導電膜17、第2圧電膜18、第3導電膜19が積層されている部分は、圧電素子としての使用が可能である。この部分が圧電素子として使用される場合、第1導電膜15は下部電極として用いられ、第2導電膜17は中間電極として用いられ、第3導電膜19は上部電極として用いられる。
【0047】
第1導電膜15、第2導電膜17および第3導電膜19のそれぞれを構成する導電材料は、第1実施形態の第1導電膜5および第2導電膜7のそれぞれを構成する導電材料と同じである。第1導電膜15を構成する材料と、第2導電膜17を構成する材料と、第3導電膜19を構成する材料とは、同じであるが、異なってもよい。
【0048】
第1圧電膜16および第2圧電膜18のそれぞれを構成する圧電材料は、第1実施形態の圧電膜6を構成する圧電材料と同じである。なお、第1圧電膜16を構成する材料と、第2圧電膜18を構成する材料とは、同じであるが、異なってもよい。
【0049】
積層構造部D1は、第1絶縁部21と、第2絶縁部22と、第3絶縁部23と、第4絶縁部24とを有する。
【0050】
第1絶縁部21は、第1トレンチ25の内部に設けられている。第1トレンチ25は、第1圧電膜16の上面16aから第1圧電膜16および第1導電膜15を貫通する。第1トレンチ25の底部25aは、第1圧電膜16に位置する。第1絶縁部21は、第2圧電膜18よりも電気抵抗率が高い。第1絶縁部21は、第1トレンチ25の内部に埋め込まれた絶縁材料で構成される。絶縁材料は、トレンチ25の底部25aから第3導電膜19の上面19aと同じ位置まで埋め込まれている。
【0051】
第2絶縁部22は、第2トレンチ26の内部に設けられている。第2トレンチ26は、積層構造部D1の平面方向DR1で、第1トレンチ25から離れた位置で、第1圧電膜16の上面16aから第1圧電膜16および第1導電膜15を貫通する。平面方向DR1は、第1圧電膜16の上面16aに沿う方向である。第2トレンチ26の底部26aは、シード膜14に位置する。第2トレンチ26は、第3導電膜19、第2圧電膜18および第2導電膜17を貫通しない。第2絶縁部22は、第1圧電膜16よりも電気抵抗率が高い。第2絶縁部22は、第2トレンチ26の内部に埋め込まれた絶縁材料で構成される。絶縁材料は、第2トレンチ26の底部26aから第1圧電膜16の上面16aと同じ位置まで埋め込まれている。
【0052】
第3絶縁部23は、第3トレンチ27の内部に設けられている。第3トレンチ27は、平面方向DR1で第1トレンチ25と第2トレンチ26とのそれぞれから離れた位置で、第3導電膜19の上面19aから第3導電膜19、第2圧電膜18、第2導電膜17、第1圧電膜16および第1導電膜15を貫通する。第3トレンチ27の底部27aは、シード膜14に位置する。第3絶縁部23は、第2圧電膜18および第1圧電膜16よりも電気抵抗率が高い。第3絶縁部23は、第3トレンチ27の内部に埋め込まれた絶縁材料で構成される。絶縁材料は、第3トレンチ27の底部27aから第3導電膜19の上面19aと同じ位置まで埋め込まれている。
【0053】
第1絶縁部21、第2絶縁部22および第3絶縁部23のそれぞれを構成する絶縁材料は、SiO2、SiN等である。第1絶縁部21、第2絶縁部22および第3絶縁部23のそれぞれを構成する絶縁材料は、同じ材料が用いられているが、異なる材料であってもよい。
【0054】
第4絶縁部24は、第4トレンチ28の内部に設けられている。第4トレンチ28は、平面方向DR1で、第1トレンチ25、第2トレンチ26および第3トレンチ27のそれぞれから離れた位置で、第3導電膜19の上面19aから第3導電膜19、第2圧電膜18および第2導電膜17を貫通し、第1圧電膜16を貫通しない。第4トレンチ28の底部28aは、第1圧電膜16に位置する。第4絶縁部24は、第2圧電膜18よりも電気抵抗率が高い。第4絶縁部24は、第4トレンチ28の内部に存在する空気で構成される。
【0055】
次に、本実施形態の圧電装置11の製造方法について説明する。まず、
図5Aに示すように、基板12と、絶縁膜13と、シード膜14と、第1導電膜15と、第1圧電膜16とが積層された積層体を形成することが行われる。この積層体を形成することにおいては、基板12の上に、絶縁膜13と、シード膜14と、第1導電膜15とが、この記載順に成膜される。この基板12には、空間部121が形成されていない。その後、第1導電膜15の上面15aに接して、第1導電膜15の上に第1圧電膜16が成膜される。
【0056】
続いて、
図5Bに示すように、第2トレンチ26を形成することが行われる。第2トレンチ26は、第1圧電膜16の上面16aから第1圧電膜16および第1導電膜15を貫通する。第2トレンチ26の底部26aは、シード膜14に位置する。第2トレンチ26は、フォトリソグラフィおよびエッチングによって形成される。エッチングの方法としては、第1圧電膜16および第1導電膜15のそれぞれを構成する材料に応じた方法が採用される。
【0057】
続いて、
図5Cに示すように、第2トレンチ26の内部に絶縁材料を埋め込むことで、第2絶縁部22を形成することが行われる。第2絶縁部22の上面22aをCMP等によって平坦化した後、第1圧電膜16の上面16aおよび第2絶縁部22の上面22aにまたがって第2導電膜17を形成することが行われる。その後、第2導電膜17の上面17aに接して、第2導電膜17の上に第2圧電膜18を形成することが行われる。その後、第2圧電膜18の上面18aに接して、第2圧電膜18の上に第3導電膜19を形成することが行われる。その後、基板12および絶縁膜13に対するフォトリソグラフィおよびエッチングにより、基板12の空間部121を形成することが行われる。
【0058】
続いて、
図5Dに示すように、平面方向DR1で、第2トレンチ26から離れた位置に、第1トレンチ25と第4トレンチ28とを形成することが行われる。第1トレンチ25および第4トレンチ28は、平面方向DR1で互いに離れている。第1トレンチ25および第4トレンチ28は、第3導電膜19の上面19aから第3導電膜19、第2圧電膜18および第2導電膜17を貫通する。第1トレンチ25と第4トレンチ28のそれぞれの底部25a、28aは、第1圧電膜16に位置する。第1トレンチ25および第4トレンチ28は、フォトリソグラフィおよびエッチングによって形成される。エッチングの方法としては、第3導電膜19、第2圧電膜18および第2導電膜17のそれぞれを構成する材料に応じた方法が採用される。
【0059】
また、平面方向DR1で、第1、第2、第4トレンチ25、26、28のそれぞれから離れた位置に、第3トレンチ27を形成することが行われる。第3トレンチ27は、第3導電膜19の上面19aから第3導電膜19、第2圧電膜18、第2導電膜17、第1圧電膜16、第1導電膜15を貫通する。第3トレンチ27の底部27aは、シード膜14に位置する。第3トレンチ27は、フォトリソグラフィおよびエッチングによって形成される。エッチングの方法としては、第3導電膜19、第2圧電膜18、第2導電膜17、第1圧電膜16、第1導電膜15のそれぞれを構成する材料に応じた方法が採用される。
【0060】
続いて、
図5Eに示すように、第1トレンチ25の内部に絶縁材料を埋め込むことで、第1絶縁部21を形成することが行われる。第3トレンチ27の内部に絶縁材料を埋め込むことで、第3絶縁部23を形成することが行われる。第4トレンチ28の内部には絶縁材料は埋め込まれない。第4トレンチ28の内部の空気によって第4絶縁部24が構成される。このようにして、本実施形態の圧電装置11が製造される。
【0061】
なお、基板12の空間部121を形成する時期は、変更可能である。空間部121を形成する時期は、例えば、
図5Aに示すように、積層体を形成した後であって、第2トレンチ26を形成する前であってもよい。また、空間部121を形成する時期は、第1~第4トレンチ25~28を形成した後であってもよい。
【0062】
本実施形態の圧電装置11では、音圧等のセンシング対象によって、積層構造部D1のうち浮遊している部分が振動する。これにより、第1圧電膜16と第2圧電膜18との一方に引っ張り応力が加わり、第1圧電膜16と第2圧電膜18との他方に圧縮応力が加わる。このとき、第1圧電膜16と第2圧電膜18とのそれぞれから、第1導電膜15、第2導電膜17、第3導電膜19を介して、電荷を取り出すことで、センシング対象が検出される。
【0063】
本実施形態の圧電装置11では、第2導電膜17は、下地材としての第1圧電膜16の上面16aに接して第1圧電膜16の上に配置されている。第2圧電膜18は、第2導電膜17の上面17aに接して第2導電膜17の上に配置されている。第3導電膜19は、第2圧電膜18の上に配置されている。
【0064】
そして、第1絶縁部21は、第2圧電膜18および第2導電膜17を貫通する第1トレンチ25の内部に設けられている。これによれば、第1絶縁部21を挟んだ一方側の第2導電膜17および第2圧電膜18と、第1絶縁部21を挟んだ他方側の第2導電膜17および第2圧電膜18との間の絶縁性が、第1絶縁部21によって確保されている。第1絶縁部21の一方側の第2導電膜17および第2圧電膜18が、第1実施形態の絶縁部8の一方側の第1導電膜5および圧電膜6に対応する。第1絶縁部21の他方側の第2導電膜17および第2圧電膜18が、第1実施形態の絶縁部8の他方側の第1導電膜5および圧電膜6に対応する。第3導電膜19が、第1実施形態の第2導電膜7に対応する。このため、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0065】
また、第4絶縁部24は、第2圧電膜18および第2導電膜17を貫通する第4トレンチ28の内部に設けられている。これによれば、第4絶縁部24によって、第4絶縁部24を挟んだ一方側の第2導電膜17および第2圧電膜18と、第4絶縁部24を挟んだ他方側の第2導電膜17および第2圧電膜18との間の絶縁性が、確保されている。第4絶縁部24の一方側の第2導電膜17および第2圧電膜18が、第1実施形態の絶縁部8の一方側の第1導電膜5および圧電膜6に対応する。第4絶縁部24の他方側の第2導電膜17および第2圧電膜18が、第1実施形態の絶縁部8の他方側の第1導電膜5および圧電膜6に対応する。このため、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0066】
また、第3絶縁部23は、第2圧電膜18および第2導電膜17を貫通する第3トレンチ27の内部に設けられている。これによれば、第3絶縁部23を挟んだ一方側の第2導電膜17および第2圧電膜18と、第3絶縁部23を挟んだ他方側の第2導電膜17および第2圧電膜18との間の絶縁性が、第3絶縁部23によって確保されている。第3絶縁部23の一方側の第2導電膜17および第2圧電膜18が、第1実施形態の絶縁部8の一方側の第1導電膜5および圧電膜6に対応する。第3絶縁部23の他方側の第2導電膜17および第2圧電膜18が、第1実施形態の絶縁部8の他方側の第1導電膜5および圧電膜6に対応する。このため、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0067】
また、第1導電膜15は、下地材としてのシード膜14の上面14aに接して、シード膜14の上に配置されている。第1圧電膜16は、第1導電膜15の上面15aに接して、第1導電膜15の上に配置されている。第2導電膜17は、第1圧電膜16の上に配置されている。
【0068】
そして、第2絶縁部22は、第1圧電膜16および第1導電膜15を貫通する第2トレンチ26の内部に設けられている。これによれば、第2絶縁部22を挟んだ一方側の第1導電膜15および第1圧電膜16と、第2絶縁部22を挟んだ他方側の第1導電膜15および第1圧電膜16との間の絶縁性が、第2絶縁部22によって確保されている。第2絶縁部22の一方側の第1導電膜15および第1圧電膜16が、第1実施形態の絶縁部8の一方側の第1導電膜5および圧電膜6に対応する。第2絶縁部22の他方側の第1導電膜15および第1圧電膜16が、第1実施形態の絶縁部8の他方側の第1導電膜5および圧電膜6に対応する。このため、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0069】
また、第3絶縁部23は、第1圧電膜16および第1導電膜15を貫通する第3トレンチ27の内部に設けられている。これによれば、第3絶縁部23を挟んだ一方側の第1導電膜15および第1圧電膜16と、第3絶縁部23を挟んだ他方側の第1導電膜15および第1圧電膜16との間の絶縁性が、第3絶縁部23によって確保されている。第3絶縁部23の一方側の第1導電膜15および第1圧電膜16が、第1実施形態の絶縁部8の一方側の第1導電膜5および圧電膜6に対応する。第3絶縁部23の他方側の第1導電膜15および第1圧電膜16が、第1実施形態の絶縁部8の他方側の第1導電膜5および圧電膜6に対応する。このため、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0070】
また、本実施形態の圧電装置11によれば、以下の効果を奏する。高感度なセンサは、微小な変化を検知するために用いられる。このため、高感度なセンサに適用される圧電装置において、圧電膜中に、わずかでもクラックが発生していることは、致命的なセンサ特性悪化につながる。一般的に、第1圧電膜と第2圧電膜とが積層されたバイモルフ型の圧電装置の製造においては、上層である第2圧電膜の形成時には、下層である第1圧電膜の形成時よりも、第2圧電膜が形成される表面の均一性が失われている。このため、第2圧電膜では、第1圧電膜よりもクラックが発生しやすい。よって、バイモルフ型の圧電装置を高感度なセンサに適用するためには、第2圧電膜のクラックの抑制が特に必要となる。
【0071】
そこで、本実施形態の圧電装置11は、第1、第3、第4絶縁部21、23、24を備える。第1、第3、第4絶縁部21、23、24のそれぞれの位置に第2圧電膜18が形成されている場合、それらの位置の第2圧電膜18にクラックが発生しやすい。本実施形態の圧電装置11によれば、これらのクラックが発生しやすい部分に、第1、第3、第4絶縁部21、23、24が配置されている。このため、第2圧電膜18のクラックの発生を抑制することができる。よって、第2圧電膜18が2つの第2導電膜17の間に配置されている場合に、第2圧電膜18のうち2つの第2導電膜17の間に位置する部分に生じる電流リークを回避することができる。
【0072】
また、本実施形態の圧電装置11によれば、第3絶縁部23は、第1圧電膜16と第2圧電膜18とを貫通する第3トレンチ27の内部に位置する。これによれば、本実施形態と異なり、第3絶縁部23の形成において、第1圧電膜16を貫通するトレンチと、第2圧電膜18を貫通するトレンチとが別々に形成される場合と比較して、製造工程を少なくすることができる。さらに、これによれば、本実施形態と異なり、第3絶縁部23の形成において、第1圧電膜16を貫通するトレンチと、第2圧電膜18を貫通するトレンチとが別々に形成される場合に生じる、2つのトレンチの位置ずれの問題を回避することができる。
【0073】
また、本実施形態の圧電装置11によれば、第1絶縁部21と第2絶縁部22とは、平面方向DR1で異なる位置に配置されている。ここで、積層構造部D1のうち空間部121の上に位置するセンシング部では、強度の確保のために、第1導電膜15の位置と、第2導電膜17の位置とを、平面方向DR1で異ならせることが考えられる。第1絶縁部21と第2絶縁部22とを平面方向DR1で異なる位置に配置することで、第1導電膜15の位置と、第2導電膜17の位置とを、平面方向DR1で異ならせる場合に対応することができる。
【0074】
なお、本実施形態の圧電装置11は、第1絶縁部21と第2絶縁部22の両方を備えているが、第1絶縁部21と第2絶縁部22のうち第1絶縁部21のみを備えていてもよい。この場合であっても、第1絶縁部21を備えることで、第2圧電膜18のクラックの発生を抑制することができる。
【0075】
また、本実施形態の圧電装置11の製造方法では、第3導電膜19を形成した後に、第1トレンチ25、第3トレンチ27を形成することが行われる。しかしながら、第1トレンチ25、第3トレンチ27を形成した後、第1絶縁部21、第3絶縁部23を形成することが行われる。その後、第3導電膜19を形成し、第3導電膜19をパターニングすることが行われてもよい。
【0076】
(第3実施形態)
図6に示すように、本実施形態の圧電装置11Aは、絶縁性のアモルファス膜31を備える。アモルファス膜31は、第2絶縁部22と第1圧電膜16の両方の真上の位置に連続して配置されている。アモルファス膜31は、第2絶縁部22の上面22aと第1圧電膜16の上面16aに接している。アモルファス膜31は、第2絶縁部22と同じ材料(例えば、SiO
2)で構成される。第2導電膜17は、アモルファス膜31の上面31aに接して、第2絶縁部22と第1圧電膜16の両方の真上の位置に連続して配置されている。第1トレンチ25の底部25aは、アモルファス膜31に位置する。圧電装置11Aの他の構成は、第2実施形態の圧電装置11と同じである。
【0077】
第2実施形態の圧電装置11のように、第2絶縁部22の上面22aと第1圧電膜16の上面16aとの両方に接して、第2導電膜17が形成される場合、第2導電膜17のうち第2絶縁部22の真上に位置する部分と、第2導電膜17のうち第1圧電膜16の真上に位置する部分とでは、結晶性に差が生じる。
【0078】
これに対して、本実施形態の圧電装置11Aによれば、圧電装置11Aの製造において、アモルファス膜31の上面31aに接して、第2絶縁部22と第1圧電膜16の両方の真上の位置に連続して第2導電膜17が形成される。このため、第2導電膜17のうち第2絶縁部22の真上に位置する部分171と、第2導電膜17のうち第1圧電膜16の真上に位置する部分172とのそれぞれの結晶性の差を低減することができる。この結果、第2導電膜17の上面17aに接して形成される第2圧電膜18の結晶性を均一に近づけることができる。
【0079】
また、本実施形態の圧電装置11Aによれば、アモルファス膜31は第2絶縁部22と同じ材料で構成される。これにより、圧電装置11Aの製造において、第2絶縁部22の形成とアモルファス膜31の形成とを連続して行うことができる。すなわち、一つの工程で、第2絶縁部22とアモルファス膜31の両方を形成することができる。
【0080】
なお、アモルファス膜31は第2絶縁部22と異なる材料で構成されてもよい。この場合、例えば、第2絶縁部22は、SiO2で構成される。アモルファス膜31は、SiNで構成される。また、第2絶縁部22と第1圧電膜16とのそれぞれと、アモルファス膜31との間に、他の膜が配置されてもよい。
【0081】
(第4実施形態)
図7に示すように、本実施形態の圧電装置11Bは、第2シード膜32を備える。第2シード膜32は、第2絶縁部22と第1圧電膜16の両方の真上の位置に連続して配置されている。第2シード膜32は、第2絶縁部22の上面22aと第1圧電膜16の上面16aに接している。第2実施形態で説明したシード膜14は、本実施形態では第1シード膜14である。第2シード膜32は、第1シード膜14と同じ材料で構成される。本実施形態では、第1圧電膜16および第2圧電膜18を構成する圧電材料は、ScAlNである。第1シード膜14および第2シード膜32を構成する材料は、AlNである。
【0082】
第2導電膜17は、第2シード膜32の上面32aに接して、第2絶縁部22と第1圧電膜16の両方の真上の位置に連続して配置されている。圧電装置11Bの他の構成は、第2実施形態の圧電装置11と同じである。本実施形態の圧電装置11Bによれば、第3実施形態と同じ効果が得られる。
【0083】
さらに、本実施形態の圧電装置11Bでは、第1、第2、第3絶縁部21、22、23を構成する絶縁材料は、第1シード膜14を構成する材料と同じ材料である。これによれば、圧電装置11Bの製造において、第1シード膜14の形成と、第2絶縁部22の形成と、第2シード膜32の形成とを連続して行うことができる。
【0084】
なお、第2絶縁部22を構成する絶縁材料は、第1シード膜14を構成する材料と同じであり、第1、第3絶縁部21、23を構成する絶縁材料は、第1シード膜14を構成する材料と異なってもよい。また、第1、第2、第3絶縁部21、22、23を構成する絶縁材料は、第1シード膜14を構成する材料と異なってもよい。また、第2絶縁部22と第1圧電膜16とのそれぞれと、第2シード膜32との間に、他の膜が配置されてもよい。
【0085】
(第5実施形態)
図8に示すように、本実施形態の圧電装置11Cは、第3トレンチ27の側壁部27bに設けられた酸化物層41を備える。すなわち、酸化物層41は、側壁部27bを構成している。酸化物層41は、第3絶縁部23と接している。また、酸化物層41は、第1導電膜15、第1圧電膜16、第2導電膜17、第2圧電膜18および第3導電膜19のそれぞれに接している。酸化物層41は、第1導電膜15、第1圧電膜16、第2導電膜17、第2圧電膜18および第3導電膜19のそれぞれを構成する元素と同じ元素を含む。
【0086】
酸化物層41および第3絶縁部23の形成方法は、次の通りである。
図9Aに示すように、第2実施形態と同様に、第3トレンチ27が形成される。このとき、フォトリソグラフィで形成されたレジストパターン42をマスクとしたエッチングが行われる。この段階では、第3トレンチ27の側壁部27bは、第1導電膜15、第1圧電膜16、第2導電膜17、第2圧電膜18および第3導電膜19によって構成される。
【0087】
その後、
図9Bに示すように、第3トレンチ27の側壁に対して酸化処理がされる。酸化処理は、例えば、第3トレンチ27の内部に酸素が存在する状態での加熱処理である。これにより、側壁部27bに酸化物層41が形成される。すなわち、側壁部27bは、酸化物層41によって構成される。その後、第3トレンチ27の内部に絶縁材料が埋め込まれることで、
図8に示す第3絶縁部23が形成される。
【0088】
圧電装置11Cの他の構成は、第2実施形態の圧電装置11と同じである。よって、第2実施形態と同じ効果が得られる。さらに、本実施形態の圧電装置11Cによれば、下記の効果が得られる。
【0089】
本実施形態の圧電装置11Cによれば、側壁部27bに酸化物層41が設けられているので、側壁部27bの電気的な絶縁性が向上するという効果が得られる。また、第3絶縁部23は酸化物層41と接するので、第3絶縁部23と側壁部27bとの密着性が向上するという効果が得られる。
【0090】
なお、酸化物層41は、第3トレンチ27に限らず、第1トレンチ25、第2トレンチ26のそれぞれの側壁部に設けられてもよい。
【0091】
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能であり、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0092】
4 シード層
5 第1導電膜
6 圧電膜
7 第2導電膜
8 絶縁部
9 トレンチ