(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】表示セット
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20250226BHJP
G09F 19/12 20060101ALI20250226BHJP
【FI】
G02B5/30
G09F19/12 D
(21)【出願番号】P 2021536861
(86)(22)【出願日】2020-07-02
(86)【国際出願番号】 JP2020026100
(87)【国際公開番号】W WO2021020024
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2019141797
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 顕
【審査官】森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-255200(JP,A)
【文献】特開2014-141057(JP,A)
【文献】特開2007-93675(JP,A)
【文献】特開2017-219760(JP,A)
【文献】特開2001-4829(JP,A)
【文献】特開2008-203801(JP,A)
【文献】特開2014-76583(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 15/02
B42D 25/00 - 25/485
G02B 5/30
G09F 19/12 - 19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示媒体と、表示物品と、を含む、表示セットであって、
前記表示媒体は、偏光分離層及び位相差層を備える複層基材と、前記複層基材の前記偏光分離層側の面の一部に設けられた第一反射層と、を備え、
前記第一反射層の全体が、厚み方向から見て、前記複層基材の偏光分離層の一部及び位相差層の一部に重なっており、
前記偏光分離層は、一方の回転方向D
Aの円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させることができ、
前記第一反射層は、一方の回転方向D
B1の円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させることができ、
前記偏光分離層が反射できる円偏光の回転方向D
Aと、前記第一反射層が反射できる円偏光の回転方向D
B1とが、同じであ
り、
前記位相差層は、測定波長590nmにおける前記位相差層の面内レターデーションが、「{(2n+1)/2}×590nm-30nm」以上、「{(2n+1)/2}×590nm+30nm」以下である(ただし、nは、0以上の整数を表す。)、表示媒体
であり、
前記表示物品は、下地物品と、前記下地物品に設けられた表示層とを備え、
前記表示層が、一方の回転方向D
D
の円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させることができる、表示物品である、表示セット。
【請求項2】
前記表示媒体は、前記複層基材の前記位相差層側の面に設けられた第二反射層を備え、
前記第二反射層は、一方の回転方向D
B2の円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させることができ、
前記偏光分離層が反射できる円偏光の回転方向D
Aと、前記第二反射層が反射できる円偏光の回転方向D
B2とが、逆である、請求項1に記載の
表示セット。
【請求項3】
前記表示媒体の前記第二反射層は、前記複層基材の前記位相差層側の面の一部に設けられ、
前記第二反射層の全体が、厚み方向から見て、前記複層基材の偏光分離層の一部及び位相差層の一部に重なっている、請求項2に記載の
表示セット。
【請求項4】
前記表示媒体は、前記第一反射層が、コレステリック規則性を有する樹脂のフレークを含有する、請求項1又は2に記載の
表示セット。
【請求項5】
前記表示媒体は、前記第二反射層が、コレステリック規則性を有する樹脂のフレークを含有する、請求項2又は3に記載の
表示セット。
【請求項6】
前記表示媒体の前記偏光分離層が円偏光を反射できる波長範囲の波長幅が、70nm以上である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の
表示セット。
【請求項7】
前記表示媒体の前記偏光分離層が、コレステリック規則性を有する樹脂の層である、請求項1~
6のいずれか一項に記載の
表示セット。
【請求項8】
前記表示物品の表示層として、
前記偏光分離層が反射できる円偏光の回転方向D
Aと同じ回転方向D
D1の円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させることができる第一表示層と、
前記偏光分離層が反射できる円偏光の回転方向D
Aと逆の回転方向D
D2の円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させることができる第二表示層と、の少なくとも一つを含む、請求項
1~7のいずれか一項に記載の
表示セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示媒体と、その表示媒体を通して観察されるための表示物品と、それらを組み合わせて含む表示セットとに関する。
【背景技術】
【0002】
円偏光板は、一般に、右回りの回転方向を有する円偏光(即ち、右円偏光)及び左回りの回転方向を有する円偏光(即ち、左円偏光)の一方を選択的に透過させる機能を有する。このような機能を活用して、従来から、円偏光板は、真正性の識別用途に用いられることがあった(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5828182号公報
【文献】特許第3652476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、前記の円偏光板の機能は、真正性の識別用途以外の用途においても活用しうると考え、新たな表示態様を創出することを試みた。
【0005】
本発明は、前記の課題に鑑みて創案されたもので、従来には無い新たな表示態様を実現できる表示セット、並びに、当該表示セットに適用できる表示媒体及び表示物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討した。その結果、本発明者は、円偏光分離機能を有する偏光分離層及び位相差層を備える複層基材と、その複層基材の表面に設けられた特定の円偏光分離機能を有する反射層と、を備える表示媒体と;下地物品と円偏光分離機能を有する表示層とを備える表示物品と;を組み合わせて備える表示セットが、前記の課題を解決できることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記のものを含む。
【0007】
〔1〕 偏光分離層及び位相差層を備える複層基材と、前記複層基材の前記偏光分離層側の面に設けられた第一反射層と、を備え、
前記偏光分離層は、一方の回転方向DAの円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させることができ、
前記第一反射層は、一方の回転方向DB1の円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させることができ、
前記偏光分離層が反射できる円偏光の回転方向DAと、前記第一反射層が反射できる円偏光の回転方向DB1とが、同じである、表示媒体。
〔2〕 前記複層基材の前記位相差層側の面に設けられた第二反射層を備え、
前記第二反射層は、一方の回転方向DB2の円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させることができ、
前記偏光分離層が反射できる円偏光の回転方向DAと、前記第二反射層が反射できる円偏光の回転方向DB2とが、逆である、〔1〕に記載の表示媒体。
〔3〕 偏光分離層及び位相差層を備える複層基材と、前記複層基材の前記位相差層側の面に設けられた第二反射層と、を備え、
前記偏光分離層は、一方の回転方向DAの円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させることができ、
前記第二反射層は、一方の回転方向DB2の円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させることができ、
前記偏光分離層が反射できる円偏光の回転方向DAと、前記第二反射層が反射できる円偏光の回転方向DB2とが、逆である、表示媒体。
〔4〕 前記第一反射層が、コレステリック規則性を有する樹脂のフレークを含有する、〔1〕又は〔2〕に記載の表示媒体。
〔5〕 前記第二反射層が、コレステリック規則性を有する樹脂のフレークを含有する、〔2〕又は〔3〕に記載の表示媒体。
〔6〕 測定波長590nmにおける前記位相差層の面内レターデーションが、「{(2n+1)/2}×590nm-30nm」以上、「{(2n+1)/2}×590nm+30nm」以下である(ただし、nは、0以上の整数を表す。)、〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の表示媒体。
〔7〕 前記偏光分離層が円偏光を反射できる波長範囲の波長幅が、70nm以上である、〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の表示媒体。
〔8〕 前記偏光分離層が、コレステリック規則性を有する樹脂の層である、〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載の表示媒体。
〔9〕 〔1〕~〔8〕のいずれか一項に記載の表示媒体を通して観察されるための表示物品であって、
前記表示物品が、下地物品と、前記下地物品に設けられた表示層とを備え、
前記表示層が、一方の回転方向DDの円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させることができる、表示物品。
〔10〕 表示層として、
前記偏光分離層が反射できる円偏光の回転方向DAと同じ回転方向DD1の円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させることができる第一表示層と、
前記偏光分離層が反射できる円偏光の回転方向DAと逆の回転方向DD2の円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させることができる第二表示層と、の少なくとも一つを含む、〔9〕に記載の表示物品。
〔11〕 〔1〕~〔8〕のいずれか一項に記載の表示媒体と、〔9〕又は〔10〕に記載の表示物品と、を含む、表示セット。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来には無い新たな表示態様を実現できる表示セット、並びに、当該表示セットに適用できる表示媒体及び表示物品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の第一実施形態に係る表示媒体を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第一実施形態に係る表示媒体を一側(第一反射層が設けられた側)から見た模式的な平面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第一実施形態に係る表示媒体を他側(第一反射層が設けられたのとは反対側)から見た模式的な平面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第一実施形態に係る表示媒体を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第一実施形態に係る表示媒体を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第二実施形態に係る表示媒体を模式的に示す断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第二実施形態に係る表示媒体を一側(第二反射層が設けられたのとは反対側)から見た模式的な平面図である。
【
図8】
図8は、本発明の第二実施形態に係る表示媒体を他側(第二反射層が設けられた側)から見た模式的な平面図である。
【
図9】
図9は、本発明の第二実施形態に係る表示媒体を模式的に示す断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の第二実施形態に係る表示媒体を模式的に示す断面図である。
【
図11】
図11は、本発明の第三実施形態に係る表示媒体を模式的に示す断面図である。
【
図12】
図12は、本発明の第三実施形態に係る表示媒体を一側(第一反射層が設けられた側)から見た模式的な平面図である。
【
図13】
図13は、本発明の第三実施形態に係る表示媒体を他側(第二反射層が設けられた側)から見た模式的な平面図である。
【
図14】
図14は、本発明の第四実施形態に係る表示セットを模式的に示す断面図である。
【
図15】
図15は、本発明の第四実施形態に係る表示セットが含む表示物品を模式的に示す断面図である。
【
図16】
図16は、本発明の第四実施形態に係る表示セットが含む表示物品を模式的に示す平面図である。
【
図17】
図17は、
図14に示される表示セットを図中上方から観察した場合に視認される像を模式的に示す平面図である。
【
図18】
図18は、本発明の第四実施形態に係る表示セットを模式的に示す断面図である。
【
図19】
図19は、
図18に示される表示セットを図中上方から観察した場合に視認される像を模式的に示す平面図である。
【
図20】
図20は、実施例1で製造した表示セットを模式的に示す断面図である。
【
図21】
図21は、実施例2で製造した表示セットを模式的に示す断面図である。
【
図22】
図22は、比較例1で製造した表示セットを模式的に示す断面図である。
【
図23】
図23は、比較例2で製造した表示セットを模式的に示す断面図である。
【
図24】
図24は、比較例3で製造した表示セットを模式的に示す断面図である。
【
図25】
図25は、比較例4で製造した表示セットを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態及び例示物を示して本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態及び例示物に限定されるものでは無く、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において、任意に変更して実施できる。
【0011】
以下の説明において、層の面内レタデーションReは、別に断らない限り、Re=(nx-ny)×dで表される値である。ここで、nxは、層の厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表す。nzは厚み方向の屈折率を表す。dは、層の厚みを表す。測定波長は、別に断らない限り、590nmである。
【0012】
以下の説明において、「円偏光」には、本発明の効果を著しく損なわない範囲であれば、楕円偏光も包含される。
【0013】
[1.表示セットの概要]
本発明の一実施形態に係る表示セットは、表示媒体と表示物品とを含む。表示媒体は、偏光分離層及び位相差層を備える複層基材と、この複層基材の少なくとも一方の面に設けられた第一反射層及び第二反射層などの反射層とを備える。また、表示物品は、下地物品と、この下地物品に設けられた表示層とを備える。
【0014】
表示媒体が備える複層基材は、右円偏光及び左円偏光の両方を含む非偏光等の照射光の一部を透過させることができる。具体的には、複層基材が備える偏光分離層が、右回り及び左回りの一方の回転方向DAの円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させうる。したがって、複層基材は、照射光に対して透明又は半透明な部材でありうる。
【0015】
さらに、表示媒体が備える反射層は、右回り及び左回りの一方の回転方向DBの円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させうるように設けられている。
【0016】
具体的には、反射層のうち、複層基材の偏光分離層側の面に設けられる第一反射層が反射できる円偏光の回転方向DB1は、偏光分離層が反射できる円偏光の回転方向DAと同じに設定される。別に断らない限り、「複層基材の偏光分離層側の面」とは、複層基材のオモテ面及びウラ面のうち、偏光分離層までの距離が位相差層までの距離よりも短い方の面を表す。これにより、複層基材を透過して第一反射層に光が進入する場合でも、その光に含まれる少なくとも一部の円偏光の回転方向DCと、第一反射層が反射できる円偏光の回転方向DB1とは、逆となる。
【0017】
また、複層基材の位相差層側の面に設けられる第二反射層が反射できる円偏光の回転方向DB2は、偏光分離層が反射できる円偏光の回転方向DAとは逆に設定される。別に断らない限り、「複層基材の位相差層の面」とは、複層基材のオモテ面及びウラ面のうち、偏光分離層までの距離が位相差層までの距離よりも長い方の面を表す。これにより、複層基材を透過して第二反射層に光が進入する場合でも、その光に含まれる少なくとも一部の円偏光の回転方向DCと、第二反射層が反射できる円偏光の回転方向DB2とは、逆となる。
【0018】
そうすると、第一反射層及び第二反射層という両方の反射層において、複層基材を透過して反射層に光が進入する場合には、その光の一部又は全部は、当該反射層によって反射されない。
【0019】
よって、表示媒体を反射層側から観察すると、反射層で強い光の反射が生じるので、反射層は視認できるが、表示媒体を反射層とは反対側から観察すると、反射層で光の反射が生じないか反射が弱いので、反射層は視認できない。したがって、表示媒体を右円偏光及び左円偏光の両方を含む光の下で観察した場合、複層基材が透明又は半透明でありながら、オモテ面から観察して視認される表示媒体の像とウラ面から観察して視認される表示媒体の像とが異なりうる。
【0020】
また、右円偏光及び左円偏光の両方を含む照射光の下では、前記のように複層基材が透明又は半透明であるので、表示媒体の少なくとも一部も透明又は半透明でありうる。したがって、観察者は、表示媒体を通して表示物品を観察することができる。ここで、複層基材が備える位相差層が、当該位相差層を透過する光の偏光状態を変化させるので、複層基材で遮られる円偏光の回転方向は、その円偏光の進行方向により異なりうる。例えば、複層基材のオモテ面に照射される右円偏光が複層基材によって遮られる場合、その複層基材は、複層基材のウラ面に照射された左円偏光を遮ることができる。よって、表示媒体は、表裏の向きによって、遮る円偏光を右円偏光と左円偏光とで切り替えることができる。
【0021】
表示物品の表示層は、特定の回転方向の円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させることができるように設けられている。そのため、表示媒体の向きに応じて、表示層で反射した円偏光は、表示媒体で遮られたり遮られなかったりしうる。したがって、表示媒体を通して表示物品を観察した場合、オモテ面から観察して視認される表示物品の像とウラ面から観察して視認される表示物品の像とが異なりうる。
【0022】
このように、本実施形態に係る表示セットでは、表示媒体の向きに応じて、視認される表示媒体の像及び表示物品の像が、いずれも異なりうる。よって、このように異なる像の組み合わせにより、相補的なデザインが実現可能となり、従来には無かった新たな表示態様を達成でき、ひいては複雑且つ自由度の高い意匠を作成できる。
【0023】
[2.表示媒体に係る第一実施形態]
図1は、本発明の第一実施形態に係る表示媒体100を模式的に示す断面図である。また、
図2は、本発明の第一実施形態に係る表示媒体100を一側(第一反射層120が設けられた側)から見た模式的な平面図である。さらに、
図3は、本発明の第一実施形態に係る表示媒体100を他側(第一反射層120が設けられたのとは反対側)から見た模式的な平面図である。
【0024】
図1~
図3に示すように、本発明の第一実施形態に係る表示媒体100は、複層基材110と、この複層基材110の偏光分離層側の面110Uに設けられた反射層としての第一反射層120と、を備える。
【0025】
複層基材110は、偏光分離層111及び位相差層112を備える。
【0026】
偏光分離層111は、円偏光分離機能を有する。「円偏光分離機能」とは、右回り及び左回りのうちの一方の回転方向の円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させる機能を意味する。よって、偏光分離層111は、当該円偏光分離機能を発揮できる波長範囲において、一方の回転方向DAの円偏光を反射し、その回転方向DAとは逆の回転方向の円偏光を透過させることができる。以下の説明では、このように偏光分離層111が円偏光分離機能を発揮できる波長範囲を、適宜「偏光分離波長範囲」ということがある。偏光分離波長範囲における偏光分離層111の非偏光に対する反射率は、通常35%~50%、好ましくは40%~50%である。
【0027】
肉眼で視認できる表示態様を実現する観点から、偏光分離波長範囲は、可視波長領域にあることが好ましい。可視波長領域とは、通常、400nm以上780nm以下の波長域をいう。
【0028】
偏光分離波長範囲の波長幅は、広いことが好ましい。具体的な偏光分離波長範囲の波長幅は、好ましくは70nm以上、より好ましくは100nm以上、更に好ましくは200nm以上、特に好ましくは400nm以上である。偏光分離波長範囲の波長幅が広いことにより、偏光分離層111によって反射できる円偏光の色の範囲を広くできるので、第一反射層120等の反射層及び表示物品の表示層(
図1~
図3では図示せず。)の色の自由度を高めることができ、意匠性の高い表示態様が可能になる。偏光分離波長範囲の波長幅の上限は、特段の制限はないが、例えば、600nm以下でありうる。
【0029】
偏光分離層111としては、コレステリック規則性を有する樹脂の層が好ましい。コレステリック規則性を有する樹脂を、以下、適宜「コレステリック樹脂」ということがある。コレステリック規則性とは、ある平面上では分子軸が一定の方向に並んでいるが、それに重なる次の平面では分子軸の方向が少し角度をなしてずれ、さらに次の平面ではさらに角度がずれるというように、重なって配列している平面を順次透過して進むに従って当該平面中の分子軸の角度がずれて(ねじれて)いく構造である。即ち、ある層の内部の分子がコレステリック規則性を有する場合、分子は、層の内部のある第一の平面上では分子軸が一定の方向になるよう並ぶ。層の内部の、当該第一の平面に重なる次の第二の平面では、分子軸の方向が、第一の平面における分子軸の方向と、少し角度をなしてずれる。当該第二の平面にさらに重なる次の第三の平面では、分子軸の方向が、第二の平面における分子軸の方向から、さらに角度をなしてずれる。このように、重なって配列している平面において、当該平面中の分子軸の角度が順次ずれて(ねじれて)いく。このように分子軸の方向がねじれてゆく構造は、通常はらせん構造であり、光学的にカイラルな構造である。
【0030】
通常、コレステリック樹脂の層は、円偏光分離機能を発揮できる。コレステリック樹脂の層における反射は、円偏光を、そのキラリティを維持したまま反射する。
【0031】
コレステリック樹脂の層が円偏光分離機能を発揮する具体的な波長は、一般に、コレステリック樹脂の層におけるらせん構造のピッチに依存する。らせん構造のピッチとは、らせん構造において分子軸の方向が平面を進むに従って少しずつ角度がずれていき、そして再びもとの分子軸方向に戻るまでの平面法線方向の距離である。このらせん構造のピッチの大きさを変えることによって、円偏光分離機能を発揮する波長を変えることができる。ピッチを調整する方法としては、例えば、特開2009-300662号公報に記載の方法を用いうる。具体例を挙げると、コレステリック液晶組成物において、カイラル剤の種類を調整したり、カイラル剤の量を調整したりする方法が挙げられる。特に、層内において、らせん構造のピッチの大きさが連続的に変化していると、単一のコレステリック樹脂の層により広い波長範囲に亘る円偏光分離機能を得ることができる。
【0032】
広い波長範囲で円偏光分離機能を発揮できるコレステリック樹脂の層としては、例えば、(i)らせん構造のピッチの大きさを段階的に変化させたコレステリック樹脂の層、及び、(ii)らせん構造のピッチの大きさを連続的に変化させたコレステリック樹脂の層、等が挙げられる。
【0033】
(i)らせん構造のピッチを段階的に変化させたコレステリック樹脂の層は、例えば、らせん構造のピッチが異なる複数のコレステリック樹脂の層を積層することによって得ることができる。積層は、予めらせん構造のピッチが異なる複数のコレステリック樹脂の層を作製した後に、各層を粘着剤又は接着剤を介して固着することによって行なうことができる。または、積層は、あるコレステリック樹脂の層を形成した上に、別のコレステリック樹脂の層を順次形成していくことによって行なうこともできる。
【0034】
(ii)らせん構造のピッチの大きさを連続的に変化させたコレステリック樹脂の層は、例えば、液晶組成物の層に、1回以上の活性エネルギー線の照射処理及び/又は加温処理を含む広帯域化処理を施した後で、その液晶組成物の層を硬化させて得ることができる。前記の広帯域化処理によれば、らせん構造のピッチを厚み方向において連続的に変化させることができるので、コレステリック樹脂の層が円偏光分離機能を発揮できる波長範囲(反射帯域)を拡張することができ、そのため、広帯域化処理と呼ばれる。
【0035】
コレステリック樹脂の層は、1層のみからなる単層構造の層でもよく、2層以上の層を含む複層構造の層であってもよい。コレステリック樹脂の層に含まれる層の数は、製造のし易さの観点から、1~100であることが好ましく、1~20であることがより好ましい。
【0036】
コレステリック樹脂の層の製造方法に制限はないが、通常は、コレステリック液晶組成物を用いて製造しうる。コレステリック液晶組成物とは、当該液晶組成物に含まれる液晶化合物を配向させた場合に、液晶化合物がコレステリック規則性を有した液晶相(コレステリック液晶相)を呈することができる組成物をいう。ここで便宜上「液晶組成物」と称する材料は、2以上の物質の混合物のみならず、単一の物質からなる材料をも包含する。具体的なコレステリック樹脂の層の製造方法としては、例えば、特開2014-174471号公報、特開2015-27743号公報に記載の方法が挙げられる。このようなコレステリック液晶組成物を用いる製造方法では、コレステリック規則性におけるねじれ方向は、液晶組成物が含むカイラル剤の構造により適宜選択できる。例えば、ねじれを右回りとする場合には、右旋性を付与するカイラル剤を含むコレステリック液晶組成物を用い、ねじれ方向を左回りとする場合には、左旋性を付与するカイラル剤を含むコレステリック液晶組成物を用いうる。
【0037】
偏光分離層111の厚みは、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上であり、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下である。偏光分離層111の厚みが前記範囲の下限値以上である場合、第一反射層120等の反射層が設けられたのとは反対側から表示媒体100を観察したときにその反射層を視認しにくくするできる。他方、偏光分離層111の厚みが前記範囲の上限値以下である場合、透明性を高めることができる。
【0038】
位相差層112は、偏光分離層111の片側に設けられた特定の範囲の面内レターデーションReを有する層である。厚み方向から見て、位相差層112の一部又は全体は、偏光分離層111の一部又は全体に重なる。すなわち、表示媒体100の厚み方向に対して垂直な面内方向での位置が、位相差層112の一部又は全体と、偏光分離層111の一部又は全体とで、同じである。本実施形態では、厚み方向から見て、位相差層112の全体と偏光分離層111の全体とが重なった例を示して説明する。
【0039】
位相差層112の面内レターデーションReの範囲は、表示媒体100の一側を観察して視認される像と、表示媒体100の他側を観察して視認される像とが、所望の意匠性が得られる程度に相違する範囲で設定しうる。通常は、位相差層112の面内レターデーションReは、偏光分離層を透過した円偏光の回転方向を反転させられるように設定される。
【0040】
位相差層112の面内レターデーションReの具体的な範囲を挙げると、測定波長590nmにおいて、好ましくは「{(2n+1)/2}×590nm-30nm」以上、より好ましくは「{(2n+1)/2}×590nm-20nm」以上、特に好ましくは「{(2n+1)/2}×590nm-10nm」以上であり、好ましくは「{(2n+1)/2}×590nm+30nm」以下、より好ましくは「{(2n+1)/2}×590nm+20nm」以下、特に好ましくは「{(2n+1)/2}×590nm+10nm」以下である。ここで、nは、0以上の整数を表す。測定波長590nmにおいて前記範囲の面内レターデーションReを有する位相差層112は、通常、可視波長領域の広い範囲で1/2波長板として機能できるので、位相差層112によって広範な色の円偏光の偏光状態を適切に調整できる。よって、第一反射層120等の反射層及び表示物品の表示層(
図1~
図3では図示せず。)の色の自由度を高めることができるので、意匠性の高い表示態様が可能になる。
【0041】
位相差層112は、逆波長分散性を有することが好ましい。逆波長分散性とは、測定波長450nm及び550nmにおける面内レターデーションRe(450)及びRe(550)が、下記式(R1)を満たすことをいう。
Re(450)<Re(550) (R1)
逆波長分散性を有する位相差層112は、広い波長範囲においてその光学的機能を発揮できる。よって、逆波長分散性を有する位相差層112を用いることにより、可視波長領域の広い範囲で1/2波長板として機能できるので、位相差層112によって広範な色の円偏光の偏光状態を適切に調整できる。よって、第一反射層120等の反射層及び表示物品の表示層(
図1~
図3では図示せず。)の色の自由度を高めることができるので、意匠性の高い表示態様が可能になる。
【0042】
位相差層112としては、例えば、延伸フィルムを用いることができる。延伸フィルムは、樹脂フィルムを延伸して得られるフィルムであり、樹脂の種類、延伸条件、厚み等の要素を適切に調整することで、任意の面内レターデーションを得ることができる。樹脂としては、通常、熱可塑性樹脂を用いる。この熱可塑性樹脂は、重合体と、必要に応じて任意の成分を含みうる。重合体としては、例えば、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエチレン、ポリフェニレンエーテル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、及び脂環式構造含有重合体などが挙げられる。また、重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、透明性、低吸湿性、寸法安定性及び加工性の観点から、脂環式構造含有重合体が好適である。脂環式構造含有重合体は、主鎖及び/又は側鎖に脂環式構造を有する重合体であり、例えば、特開2007-057971号公報に記載のものを用いうる。
【0043】
位相差層112としての延伸フィルムは、前記の樹脂から樹脂フィルムを製造した後で、その樹脂フィルムに延伸処理を施して、製造できる。延伸フィルムとしての位相差層112の製造方法の具体例としては、例えば、国際公開第2019/059067号に記載の方法が挙げられる。
【0044】
延伸フィルムの厚みは、特段の制限は無いが、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、特に好ましくは20μm以上であり、好ましくは1mm以下、より好ましくは500μm以下、特に好ましくは200μm以下である。
【0045】
位相差層112としては、例えば、液晶硬化層を用いてもよい。液晶硬化層とは、液晶性化合物を含む液晶組成物の硬化物で形成された層である。通常、液晶組成物の層を形成し、その液晶組成物の層に含まれる液晶性化合物の分子を配向させた後に、液晶組成物の層を硬化させることにより、液晶硬化層が得られる。この液晶硬化層は、液晶性化合物の種類、液晶性化合物の配向状態、厚み等の要素を適切に調整することで、任意の面内レターデーションを得ることができる。
【0046】
液晶性化合物の種類は任意であるが、逆波長分散性を有する位相差層112を得たい場合には、逆波長分散性液晶性化合物を用いることが好ましい。逆波長分散性液晶性化合物とは、ホモジニアス配向した場合に、逆波長分散性を示す液晶性化合物をいう。また、液晶性化合物をホモジニアス配向させる、とは、当該液晶性化合物を含む層を形成し、その層における液晶性化合物の分子の屈折率楕円体において最大の屈折率の方向を、前記層の面に平行なある一の方向に配向させることをいう。逆波長分散性液晶性化合物の具体例としては、例えば、国際公開第2014/069515号、国際公開第2015/064581号などに記載された化合物が挙げられる。
【0047】
液晶硬化層の厚みは、特段の制限は無いが、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.0μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは7μm以下、特に好ましくは5μm以下である。
【0048】
複層基材110は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、任意の層(図示せず。)を備えていてもよい。任意の層としては、偏光分離層111及び位相差層112を支持する支持層、偏光分離層111及び位相差層112を接着する接着層、などが挙げられる。これら任意の層は、面内レターデーションが小さいことが好ましい。任意の層の具体的な面内レターデーションは、好ましくは20nm以下、より好ましくは10nm以下、特に好ましくは5nm以下であり、理想的には0nmである。このように面内レターデーションが小さい層は、光学等方性の層であるので、当該任意の層による偏光状態の変化を抑制できる。
【0049】
反射層としての第一反射層120は、複層基材110の偏光分離層側の面110Uに設けられている。第一反射層120は、複層基材110の面110Uに、直接に設けられていてもよく、間接的に設けられていてもよい。ある面に層が「直接に」設けられるとは、その面と層との間に他の層が無いことをいう。また、ある面に層が「間接的に」設けられるとは、その面と層との間に他の層(接着層等)があることをいう。
【0050】
第一反射層120は、複層基材110の面110Uの一部に設けられていてもよく、面110Uの全体に設けられていてもよい。通常、厚み方向から見て、第一反射層120は、複層基材110の偏光分離層111及び位相差層112の両方に重なるように設けられる。すなわち、表示媒体100の厚み方向に対して垂直な面内方向での位置が、第一反射層120の全体と、位相差層112の一部又は全体並びに偏光分離層111の一部又は全体とで、通常、同じになっている。さらに、第一反射層120は、表示媒体100の意匠に応じた平面形状を有しうる。本実施形態においては、文字「B」の平面形状を有する第一反射層120を例を示して説明する。この例においては、第一反射層120の全体が、厚み方向から見て、複層基材110の偏光分離層111の一部及び位相差層112の一部に重なっている。
【0051】
第一反射層120は、円偏光分離機能を有する。よって、第一反射層120は、当該円偏光分離機能を発揮できる波長範囲において、一方の回転方向DB1の円偏光を反射し、その回転方向DB1とは逆の回転方向の円偏光を透過させることができる。以下の説明では、このように第一反射層120が円偏光分離機能を発揮できる波長範囲を、適宜「第一反射波長範囲」ということがある。第一反射波長範囲における第一反射層120の非偏光に対する反射率の範囲は、偏光分離波長範囲における偏光分離層111の非偏光に対する反射率の範囲と同じでありうる。
【0052】
第一反射層120の第一反射波長範囲は、通常、複層基材110に含まれる偏光分離層111の偏光分離波長範囲と重複する。第一反射波長範囲の一部と偏光分離波長範囲の一部とが重複していてもよく、第一反射波長範囲の全部と偏光分離波長範囲の一部とが重複していてもよく、第一反射波長範囲の一部と偏光分離波長範囲の全部とが重複していてもよく、第一反射波長範囲の全部と偏光分離波長範囲の全部とが重複していてもよい。中でも、第一反射波長範囲の全部が偏光分離波長範囲の一部又は全部と重複していることにより、第一反射波長範囲が偏光分離波長範囲内にあることが好ましい。よって、好ましくは、第一反射波長範囲の下限が、偏光分離波長範囲の下限以上であり、また、第一反射波長範囲の上限が、偏光分離波長範囲の上限以下である。この場合、第一反射層120とは反対側から表示媒体100を観察した場合に、第一反射層120の視認性を効果的に低くできる。
【0053】
第一反射層120が反射できる円偏光の回転方向DB1は、偏光分離層111が反射できる円偏光の回転方向DAと同じに設定されている。よって、複層基材110を透過して第一反射層120に光が進入する場合に、その光に含まれる少なくとも一部の円偏光(具体的には、偏光分離波長範囲の円偏光)の回転方向DCと、第一反射層120が反射できる円偏光の回転方向DB1とは、逆になる。したがって、第一反射層120は、複層基材110を透過して第一反射層120に進入する光を反射しないか、又はほとんど反射しないことができる。
【0054】
このような第一反射層120は、コレステリック樹脂の層であってもよいが、コレステリック樹脂のフレークを含有する層であることが好ましい。コレステリック樹脂のフレークは、コレステリック樹脂の微小な層を含む顔料として用いることができる。よって、コレステリック樹脂のフレークを含む層は、コレステリック樹脂の層自体と同じく、円偏光分離機能を発揮できる。通常、コレステリック樹脂のフレークを含む層を形成する際に与えられるせん断力によって、フレークの主面と、そのフレークを含有する層の層平面とは、平行に又は平行に近くなるように配向される。しかし、そのフレークの配向方向にはバラツキが生じうるので、コレステリック樹脂のフレークを含有する層の全体としては、フレークによって反射される円偏光が散乱を生じうる。この散乱が生じると、そのコレステリック樹脂のフレークを含有する層は、周囲とは異なる像として視認されうる。よって、偏光分離層111の偏光分離波長範囲と第一反射層120の第一反射波長範囲とが一致して偏光分離層111の色と第一反射層120の色とが同じになる場合であっても、前記の散乱により、第一反射層120は視認されることができる。
【0055】
コレステリック樹脂のフレークの粒径は、装飾性を得る上で、1μm以上が好ましい。中でも、フレークの粒径は、当該フレークを含む層の厚み以上であることが望ましい。この場合、各フレークを、フレークの主面と当該フレークを含有する層の層平面とが平行又は鋭角をなすように配向させやすい。そのため、フレークが効果的に受光できるようになるので当該フレークを含有する層の円偏光分離機能を高めることができる。フレークの粒径の上限は、成形性及び印刷適性を得る観点から、500μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましい。ここで、フレークの粒径とは、当該フレークの同面積の円の直径をいう。
【0056】
コレステリック樹脂のフレークとしては、例えば、上述したコレステリック樹脂の層の破砕物を用いうる。このようなフレークは、例えば、特許第6142714号公報に記載の製造方法により製造できる。
【0057】
コレステリック樹脂のフレークを含有する層は、前記フレークに組み合わせて任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分としては、フレークを結着させるバインダーが挙げられる。バインダーとしては、例えば、ポリエステル系ポリマー、アクリル系ポリマー、ポリスチレン系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリビニル系ポリマー等の重合体が挙げられる。バインダーの量は、フレーク100重量部に対して、好ましくは20重量部以上、より好ましくは40重量部以上、特に好ましくは60重量部以上であり、好ましくは1000重量部以下、より好ましくは800重量部以下、特に好ましくは600重量部以下である。
【0058】
コレステリック樹脂のフレークを含有する層は、例えば、フレーク、溶媒、及び、必要に応じて任意の成分を含むインキを塗布し、乾燥させることにより、製造しうる。溶媒としては、水等の無機溶媒を用いてもよく、ケトン溶媒、アルキルハライド溶媒、アミド溶媒、スルホキシド溶媒、ヘテロ環化合物、炭化水素溶媒、エステル溶媒、およびエーテル溶媒などの有機溶媒を用いてもよい。溶媒の量は、フレーク100重量部に対して、好ましくは40重量部以上、より好ましくは60重量部以上、特に好ましくは80重量部以上であり、好ましくは1000重量部以下、より好ましくは800重量部以下、特に好ましくは600重量部以下である。
【0059】
前記のインキは、バインダーとしての重合体の代わりに、又は重合体と組み合わせて、その重合体の単量体を含みうる。この場合、インキを塗布し、乾燥させた後で単量体を重合させることにより、コレステリック樹脂のフレークを含有する層を形成できる。単量体を含む場合は、インキは、重合開始剤を含むことが好ましい。
【0060】
図4及び
図5は、本発明の第一実施形態に係る表示媒体100を模式的に示す断面図である。この
図4及び
図5では、偏光分離層111及び第一反射層120において反射する光の経路を概略的に示す。実際の表示媒体100では、下記に説明する以外にも、様々な光の吸収及び反射が発生しうるが、以下の説明では、作用の説明の便宜上、主な光の経路を概略的に説明する。
【0061】
図4では、表示媒体100の第一反射層120側に、右円偏光及び左円偏光の両方を含む非偏光等の照射光L
I1が照射された場合を示す。この
図4に示すように、第一反射層120が設けられていないエリアでは、偏光分離層111及び位相差層112がこの順に並んでいるので、照射光L
I1は、偏光分離層111に進入する。照射光L
I1の一部は、回転方向D
Aの円偏光L
R1として偏光分離層111で反射される。反射された円偏光L
R1以外の光L
T1は、偏光分離層111を透過し、更に位相差層112を透過して、表示媒体100の外部に出ていく。偏光分離層111により円偏光L
R1が反射されるので、偏光分離層111を透過した直後の時点では、偏光分離層111を透過する光L
T1の一部又は全部は、回転方向D
Aと逆の回転方向の円偏光となっている。しかし、位相差層112を透過することによってその回転方向が反転させられるので、位相差層112を透過した後の光L
T1に含まれる一部又は全部の円偏光は、回転方向D
Aと同じ回転方向の円偏光となっている。
【0062】
また、
図4に示すように、第一反射層120が設けられたエリアでは、第一反射層120、偏光分離層111及び位相差層112がこの順に並んでいるので、照射光L
I1は、第一反射層120に進入する。照射光L
I1に含まれる円偏光の一部は、回転方向D
B1の円偏光L
R2として第一反射層120で反射される。反射された円偏光L
R2以外の光L
T2は、偏光分離層111に進入する。進入した光L
T2には、偏光分離層111が反射しうる回転方向D
Aの円偏光L
R3が含まれうる。そのため、光L
T2の一部は、回転方向D
Aの円偏光L
R3として偏光分離層111で反射されうる。これら反射された円偏光L
R2及びL
R3以外の光L
T3は、偏光分離層111を透過し、更に位相差層112を透過して、表示媒体100の外部に出ていく。第一反射層120が設けられていないエリアと同じく、位相差層112を透過して表示媒体100から出る光L
T3に含まれる一部又は全部の円偏光は、回転方向D
Aと同じ回転方向の円偏光となっている。
【0063】
このように、表示媒体100の第一反射層120側を右円偏光及び左円偏光の両方を含む照射光L
I1で照らして観察すると、第一反射層120で強い光の反射が生じるので、観察者は、第一反射層120で反射される円偏光L
R2を視認できる。よって、表示媒体100の第一反射層120側から観察する観察者は、
図2に示すように、第一反射層120の像を視認できる。
【0064】
他方、
図5では、表示媒体100の第一反射層120とは反対側に、右円偏光及び左円偏光の両方を含む非偏光等の照射光L
I2が照射された場合を示す。この
図5に示すように、第一反射層120が設けられていないエリアでは、照射光L
I2は、複層基材110の位相差層112を透過した後、偏光分離層111に進入する。照射光L
I2の一部は、回転方向D
Aの円偏光L
R4として偏光分離層111で反射され、位相差層112を透過することによってその回転方向が反転させられる。反射された円偏光L
R4以外の光L
T4は、偏光分離層111を透過して、表示媒体100の外部に出ていく。偏光分離層111により円偏光L
R4が反射されるので、偏光分離層111を透過して表示媒体100から出る光L
T4の一部又は全部は、回転方向D
Aと逆の回転方向の円偏光となっている。
【0065】
また、
図5に示すように、第一反射層120が設けられたエリアでは、第一反射層120が設けられていないエリアと同じく、照射光L
I2の一部が、回転方向D
Aの円偏光L
R4として偏光分離層111で反射され、反射された円偏光L
R4以外の光L
T4が偏光分離層111を透過する。偏光分離層111を透過した光L
T4は、その後、第一反射層120に進入する。しかし、偏光分離層111により円偏光L
R4が反射されるので、偏光分離層111を透過した光L
T4に含まれる一部又は全部の円偏光の回転方向は、偏光分離層111で反射された円偏光L
R4の回転方向D
Aと逆になる。ここで、本実施形態に係る反射層としての第一反射層120が反射できる円偏光の回転方向D
B1は、偏光分離層111で反射された円偏光L
R4の回転方向D
Aと同じである。よって、第一反射層120に進入する光L
T4は、第一反射層120が反射できる回転方向D
B1の円偏光を含まないか、少量しか含まない。したがって、光L
T4の全て又は大部分は、第一反射層120では反射されない。よって、その光L
T4の全て又は大部分の光L
T5は、第一反射層120を透過して表示媒体100から出ていく。第一反射層120が反射できる円偏光の回転方向D
B1と偏光分離層111が反射できる円偏光の回転方向D
Aとが同じであるから、第一反射層120が設けられていないエリアと同じく、光L
T5の一部又は全部は、回転方向D
Aと逆の回転方向の円偏光となっている。
【0066】
このように、表示媒体100の第一反射層120とは反対側を右円偏光及び左円偏光の両方を含む照射光L
I2で照らして観察すると、第一反射層120で光の反射が生じないか反射が弱いので、観察者は、第一反射層120で反射される光を視認できない。よって、表示媒体100の第一反射層120とは反対側から観察する観察者は、
図3に示すように、第一反射層120の像を視認できない。
【0067】
したがって、本実施形態に係る表示媒体100は、複層基材110が透明又は半透明でありながら、第一反射層側から観察すると第一反射層120を視認できるが、第一反射層120とは反対側から観察すると第一反射層120を視認できない。よって、表示媒体100によれば、複層基材110が透明又は半透明でありながら、オモテ面から観察して視認される表示媒体の像とウラ面から観察して視認される表示媒体の像とを相違させられるという、特異的な表示態様が可能である。
さらに、後述するように表示セット(本実施形態では図示せず。)として用いた場合に、表示媒体100の表裏の向きに応じて、視認される表示媒体100の像及び表示物品(本実施形態では図示せず。)の像をいずれも相違させることができる。
【0068】
[3.表示媒体に係る第二実施形態]
第一実施形態では、反射層としての第一反射層120を、複層基材110の偏光分離層側の面110Uに設けた例を示したが、反射層は、複層基材110の位相差層側の面に形成してもよい。以下、このように複層基材110の位相差層側の面に反射層としての第二反射層を設けた実施形態について、説明する。
【0069】
図6は、本発明の第二実施形態に係る表示媒体200を模式的に示す断面図である。また、
図7は、本発明の第二実施形態に係る表示媒体200を一側(第二反射層220が設けられたのとは反対側)から見た模式的な平面図である。さらに、
図8は、本発明の第二実施形態に係る表示媒体200を他側(第二反射層220が設けられた側)から見た模式的な平面図である。
【0070】
図6~
図8に示すように、本発明の第二実施形態に係る表示媒体200は、偏光分離層111及び位相差層112を備える複層基材110と、この複層基材110の位相差層側の面110Dに設けられた反射層としての第二反射層220と、を備える。
【0071】
第二実施形態に係る表示媒体200が備える複層基材110は、第一実施形態に係る表示媒体100が備えるものと同じでありうる。第二実施形態に係る表示媒体200において、複層基材110として第一実施形態で説明したのと同じものを用いる場合、第一実施形態で説明したのと同じ効果を得ることができる。
【0072】
反射層としての第二反射層220は、複層基材110の位相差層側の面110Dに設けられている。第二反射層220は、第一実施形態で説明した第一反射層120と同じく、複層基材110の面110Dに、直接に設けられていてもよく、間接的に設けられていてもよい。
【0073】
第二反射層220は、複層基材110の面110Dの一部に設けられていてもよく、面110Dの全体に設けられていてもよい。通常、厚み方向から見て、第二反射層220は、第一実施形態で説明した第一反射層120と同じく、複層基材110の偏光分離層111及び位相差層112の両方に重なるように設けられる。本実施形態においては、文字「E」の平面形状を有する第二反射層220を例を示して説明する。この例においては、第二反射層220の全体が、厚み方向から見て、複層基材110の偏光分離層111の一部及び位相差層112の一部に重なっている。
【0074】
第二反射層220は、円偏光分離機能を有する。よって、第二反射層220は、当該円偏光分離機能を発揮できる波長範囲において、一方の回転方向DB2の円偏光を反射し、その回転方向DB2とは逆の回転方向の円偏光を透過させることができる。以下の説明では、このように第二反射層220が円偏光分離機能を発揮できる波長範囲を、適宜「第二反射波長範囲」ということがある。第二反射波長範囲における第二反射層220の非偏光に対する反射率の範囲は、第一実施形態で説明した第一反射波長範囲における第一反射層120の非偏光に対する反射率の範囲と同じでありうる。
【0075】
第二反射層220の第二反射波長範囲は、通常、複層基材110に含まれる偏光分離層111の偏光分離波長範囲と重複する。第二反射波長範囲の一部と偏光分離波長範囲の一部とが重複していてもよく、第二反射波長範囲の全部と偏光分離波長範囲の一部とが重複していてもよく、第二反射波長範囲の一部と偏光分離波長範囲の全部とが重複していてもよく、第二反射波長範囲の全部と偏光分離波長範囲の全部とが重複していてもよい。中でも、第二反射波長範囲の全部が偏光分離波長範囲の一部又は全部と重複していることにより、第二反射波長範囲が偏光分離波長範囲内にあることが好ましい。よって、好ましくは、第二反射波長範囲の下限が、偏光分離波長範囲の下限以上であり、また、第二反射波長範囲の上限が、偏光分離波長範囲の上限以下である。この場合、第二反射層220とは反対側から表示媒体200を観察した場合に、第二反射層220の視認性を効果的に低くできる。
【0076】
第二反射層220が反射できる円偏光の回転方向DB2は、偏光分離層111が反射できる円偏光の回転方向DAと逆に設定されている。よって、複層基材110を透過して第二反射層220に光が進入する場合に、その光に含まれる少なくとも一部の円偏光(具体的には、偏光分離波長範囲の円偏光)の回転方向DCと、第二反射層220が反射できる円偏光の回転方向DB2とは、逆になる。したがって、第二反射層220は、複層基材110を透過して第二反射層220に進入する光を反射しないか、又はほとんど反射しないことができる。
【0077】
このような第二反射層220は、第一実施形態で説明した第一反射層120と同じく、コレステリック樹脂の層であってもよいが、コレステリック樹脂のフレークを含有する層であることが好ましい。第二反射層220としてコレステリック樹脂のフレークを含有する層を用いる場合、第一実施形態で説明したのと同じ効果を得ることができる。
【0078】
図9及び
図10は、本発明の第二実施形態に係る表示媒体200を模式的に示す断面図である。この
図9及び
図10では、偏光分離層111及び第二反射層220において反射する光の経路を概略的に示す。実際の表示媒体200では、下記に説明する以外にも、様々な光の吸収及び反射が発生しうるが、以下の説明では、作用の説明の便宜上、主な光の経路を概略的に説明する。
【0079】
図9では、表示媒体200の第二反射層220とは反対側に、右円偏光及び左円偏光の両方を含む非偏光等の照射光L
I3が照射された場合を示す。この
図9に示すように、第二反射層220が設けられていないエリアでは、偏光分離層111及び位相差層112がこの順に並んでいるので、照射光L
I3は、偏光分離層111に進入する。照射光L
I3の一部は、回転方向D
Aの円偏光L
R5として偏光分離層111で反射される。反射された円偏光L
R5以外の光L
T6は、偏光分離層111を透過し、更に位相差層112を透過して、表示媒体200の外部に出ていく。偏光分離層111により円偏光L
R5が反射されるので、偏光分離層111を透過した直後の時点では、偏光分離層111を透過する光L
T6の一部又は全部は、回転方向D
Aと逆の回転方向の円偏光となっている。しかし、位相差層112を透過することによってその回転方向が反転させられるので、位相差層112を透過した後の光L
T6に含まれる一部又は全部の円偏光は、回転方向D
Aと同じ回転方向の円偏光となっている。
【0080】
また、
図9に示すように、第二反射層220が設けられたエリアでは、偏光分離層111、位相差層112及び第二反射層220がこの順に並んでいるので、第二反射層220が設けられていないエリアと同じく、照射光L
I3の一部が、回転方向D
Aの円偏光L
R5として偏光分離層111で反射され、反射された円偏光L
R5以外の光L
T6が偏光分離層111及び位相差層112を透過する。位相差層112を透過した光L
T6は、その後、第二反射層220に進入する。しかし、位相差層112を透過した後の光L
T6に含まれる一部又は全部の円偏光の回転方向は、偏光分離層111で反射された円偏光L
R5の回転方向D
Aと同じである。ここで、本実施形態に係る反射層としての第二反射層220が反射できる円偏光の回転方向D
B2は、偏光分離層111で反射される円偏光L
R5の回転方向D
Aと逆である。よって、第二反射層220に進入する光L
T6は、第二反射層220が反射できる回転方向D
B2の円偏光を含まないか、少量しか含まない。したがって、光L
T6の全て又は大部分は、第二反射層220では反射されない。第二反射層220が反射できる円偏光の回転方向D
B2と偏光分離層111が反射できる円偏光の回転方向D
Aとが逆であるから、第二反射層220が設けられていないエリアと同じく、第二反射層220が設けられたエリアでも、第二反射層220を透過して表示媒体200から出る光L
T7の一部又は全部は、回転方向D
Aと同じ回転方向の円偏光となっている。
【0081】
このように、表示媒体200の第二反射層220とは反対側を右円偏光及び左円偏光の両方を含む照射光L
I3で照らして観察すると、第二反射層220で光の反射が生じないか反射が弱いので、観察者は、第二反射層220で反射される光を視認できない。よって、表示媒体200の第二反射層220とは反対側から観察する観察者は、
図7に示すように、第二反射層220の像を視認できない。
【0082】
他方、
図10では、表示媒体200の第二反射層220側に、右円偏光及び左円偏光の両方を含む非偏光等の照射光L
I4が照射された場合を示す。この
図10に示すように、第二反射層220が設けられていないエリアでは、照射光L
I4は、複層基材110の位相差層112を透過した後、偏光分離層111に進入する。照射光L
I4の一部は、回転方向D
Aの円偏光L
R6として偏光分離層111で反射され、位相差層112を透過することによってその回転方向が反転させられる。反射された円偏光L
R6以外の光L
T8は、偏光分離層111を透過して、表示媒体200の外部に出ていく。偏光分離層111により円偏光L
R6が反射されるので、偏光分離層111を透過して表示媒体200から出る光L
T8の一部又は全部は、回転方向D
Aと逆の回転方向の円偏光となっている。
【0083】
また、
図10に示すように、第二反射層220が設けられたエリアでは、照射光L
I4は、第二反射層220に進入する。照射光L
I4に含まれる円偏光の一部は、回転方向D
B2の円偏光L
R7として第二反射層220で反射される。反射された円偏光L
R7以外の光L
T9は、位相差層112を透過して、偏光分離層111に進入する。進入した光L
T9には、偏光分離層111が反射しうる回転方向D
Aの円偏光L
R8が含まれうる。そのため、光L
T9の一部は、回転方向D
Aの円偏光L
R8として偏光分離層111で反射されうる。これら反射された円偏光L
R7及びL
R8以外の光L
T10は、偏光分離層111を透過し、表示媒体200の外部に出ていく。第二反射層220が設けられていないエリアと同じく、偏光分離層111を透過してから表示媒体200から光L
T10が出るので、その偏光分離層111を透過して表示媒体200から出る光L
T10の一部又は全部は、回転方向D
Aと逆の回転方向の円偏光となっている。
【0084】
このように、表示媒体200の第二反射層220側を右円偏光及び左円偏光の両方を含む照射光L
I4で照らして観察すると、第二反射層220で強い光の反射が生じるので、観察者は、第二反射層220で反射される円偏光L
R7を視認できる。よって、表示媒体200の第二反射層220側から観察する観察者は、
図8に示すように、第二反射層220の像を視認できる。
【0085】
したがって、本実施形態に係る表示媒体200は、複層基材110が透明又は半透明でありながら、第二反射層220側から観察すると第二反射層220を視認できるが、第二反射層220とは反対側から観察すると第二反射層220を視認できない。よって、表示媒体200によれば、複層基材110が透明又は半透明でありながら、オモテ面から観察して視認される表示媒体の像とウラ面から観察して視認される表示媒体の像とを相違させられるという、特異的な表示態様が可能である。また、本実施形態に係る表示媒体200によれば、第一実施形態で説明した表示媒体100と同じ利点を得ることができる。
【0086】
[4.表示媒体に係る第三実施形態]
第一実施形態及び第二実施形態では、複層基材110の一方の面110U又は110Dに反射層としての第一反射層120又は第二反射層220を設けた例を示したが、表示媒体は、その両面に反射層を備えていてもよい。以下、このように複層基材110の両面に反射層としての第一反射層及び第二反射層を設けた実施形態について、説明する。
【0087】
図11は、本発明の第三実施形態に係る表示媒体300を模式的に示す断面図である。また、
図12は、本発明の第三実施形態に係る表示媒体300を一側(第一反射層120が設けられた側)から見た模式的な平面図である。さらに、
図13は、本発明の第三実施形態に係る表示媒体300を他側(第二反射層220が設けられた側)から見た模式的な平面図である。
【0088】
図11~
図13に示すように、本発明の第三実施形態に係る表示媒体300は、偏光分離層111及び位相差層112を備える複層基材110と、この複層基材110の偏光分離層側の面110Uに設けられた反射層としての第一反射層120と、この複層基材110の位相差層側の面110Dに設けられた反射層としての第二反射層220と、を備える。
【0089】
第三実施形態に係る表示媒体300が備える複層基材110は、第一実施形態に係る表示媒体100が備えるものと同じでありうる。第三実施形態に係る表示媒体300において、複層基材110として第一実施形態で説明したのと同じものを用いる場合、第一実施形態で説明したのと同じ効果を得ることができる。
【0090】
第三実施形態に係る表示媒体300が備える第一反射層120は、第一実施形態に係る表示媒体100が備えるものと同じでありうる。第三実施形態に係る表示媒体300において、第一反射層120として第一実施形態で説明したのと同じものを用いる場合、第一実施形態で説明したのと同じ効果を得ることができる。
【0091】
第三実施形態に係る表示媒体300が備える第二反射層220は、第二実施形態に係る表示媒体200が備えるものと同じでありうる。第三実施形態に係る表示媒体300において、第二反射層220として第二実施形態で説明したのと同じものを用いる場合、第二実施形態で説明したのと同じ効果を得ることができる。
【0092】
この表示媒体300の第一反射層120は、第一実施形態で説明したのと同じ仕組みにより、右円偏光及び左円偏光の両方を含む照射光の下において、当該表示媒体300の第一反射層120側から観察する観察者に視認されることができるが(
図12)、当該表示媒体300の第一反射層120とは反対側としての第二反射層220側から観察する観察者に視認されることができない(
図13)。他方、この表示媒体300の第二反射層220は、第二実施形態で説明したのと同じ仕組みにより、右円偏光及び左円偏光の両方を含む照射光の下において、当該表示媒体300の第二反射層220側から観察する観察者に視認されることができるが(
図13)、当該表示媒体300の第二反射層220とは反対側としての第一反射層120側から観察する観察者に視認されることができない(
図12)。したがって、本実施形態に係る表示媒体300によれば、複層基材110が透明又は半透明でありながら、オモテ面から観察して視認される表示媒体の像とウラ面から観察して視認される表示媒体の像とを相違させられるという、特異的な表示態様が可能である。また、本実施形態に係る表示媒体300によれば、第一実施形態及び第二実施形態で説明した表示媒体100及び200と同じ利点を得ることができる。
【0093】
本実施形態のように表示媒体300に複数の反射層120及び220が設けられている場合、それら反射層の形状、寸法、材料、並びに、当該反射層が反射する円偏光の波長及び反射率は、同一でもよく、異なっていてもよい。
【0094】
[5.表示媒体に係る変形例]
表示媒体は、上述した第一実施形態~第三実施形態で説明したものに限定されない。例えば、表示媒体は、上述した複層基材110、第一反射層120及び第二反射層220等の反射層に組み合わせて、更に任意の要素を備えていてもよい。
【0095】
例えば、表示媒体は、第一反射層120及び第二反射層220以外に、円偏光分離機能を有する任意の層を複層基材110の面110U及び110Dに備えていてもよい。具体例としては、複層基材110の偏光分離層側の面110Uに、偏光分離層111が反射できる円偏光の回転方向DAと逆の回転方向DE1の円偏光を反射し、その回転方向DE1とは逆の回転方向の円偏光を透過させることができる第一の任意の層を備えていてもよい。また、別の具体例としては、複層基材110の位相差層側の面110Dに、偏光分離層111が反射できる円偏光の回転方向DAと同じ回転方向DE2の円偏光を反射し、その回転方向DE2とは逆の回転方向の円偏光を透過させることができる第二の任意の層を備えていてもよい。これらの任意の層は、例えば、コレステリック樹脂の層、コレステリック樹脂のフレークを含有する層などとして、形成しうる。これらの任意の層は、通常、オモテ面から観察した場合も、ウラ面から観察した場合も、視認されうる。
【0096】
また、例えば、表示媒体は、円偏光分離機能を有さない顔料及び染料等の着色剤を含む任意の非キラル層を備えていてもよい。この非キラル層は、複層基材110の偏光分離層側の面110Uに設けられていてもよく、位相差層側の面110Dに設けられていてもよい。この非キラル層は、通常、オモテ面から観察した場合も、ウラ面から観察した場合も、視認されうる。
【0097】
さらに、例えば、表示媒体は、上述した層同士を貼り合わせるための接着層を備えていてもよい。具体例を挙げると、表示媒体は、複層基材110と第一反射層120との間に接着層を備えていてもよく、複層基材110と第二反射層220との間に接着層を備えていてもよい。この接着層は、複層基材110が備えうる任意の層と同じく、面内レターデーションが小さいことが好ましい。
【0098】
また、例えば、表示媒体は、上述した各層を保護するカバー層を備えていてもよい。これらのカバー層は、上述した層の外側に設けられることが好ましい。具体例を挙げると、表示媒体は、カバー層、第二反射層、複層基材、第一反射層及びカバー層を、厚み方向でこの順に備えうる。このようなカバー層は、透明の材料によって形成でき、例えば樹脂によって形成できる。
【0099】
さらに、例えば、表示媒体は、本発明の効果を著しく阻害しない限りにおいて、上述した各層の間、及び、表示媒体の最外層として、面内レターデーションが小さい任意の層を備えていてもよい。このように面内レターデーションが小さい任意の層を、以下「低Re層」ということがある。この低Re層の具体的な面内レターデーションは、通常0nm以上5nm以下である。低Re層が設けられる位置は、例えば、第一反射層の複層基材とは反対側の位置、第一反射層と複層基材との間の位置、偏光分離層と位相差層との間の位置、複層基材と第二反射層との間の位置、第二反射層の複層基材とは反対側の位置、などが挙げられるが、これに限定されない。低Re層は、光透過性が高いことが好ましく、当該低Re層の全光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上である。このような低Re層の材料としては、例えば、硬質ポリ塩化ビニル、軟質ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ガラス、ポリカーボネート(PC)、及びポリエチレンテレフタレート(PET)等が挙げられる。具体的な材料は、表示媒体の用途、求められる質感、耐久性、機械的強度に応じて、適切に選択しうる。
【0100】
[6.表示セットに係る第四実施形態]
上述した表示媒体は、当該表示媒体を通して観察されるための表示物品と組み合わせた表示セットとして使用しうる。表示媒体と組み合わせられる表示物品は、下地物品と、この下地物品に設けられた表示層とを備える。表示層は、円偏光分離機能を有する層であり、一方の回転方向DDの円偏光を反射し、その回転方向DDとは逆の回転方向の円偏光を透過させることができる。そのため、表示層から反射される回転方向DDの円偏光の一部又は全部は、表示媒体の複層基材を、下記(i)及び(ii)の一方の順で透過でき、他方の順では透過できない。
(i)偏光分離層及び位相差層の順。
(ii)位相差層及び偏光分離層の順。
【0101】
よって、表示セットによれば、表示媒体の表裏の向きにより、その表示媒体を通して視認される表示物品の像を相違させることができる。また、上述したように、表示媒体それ自体も、表示媒体の表裏の向きによって視認される当該表示媒体の像を相違させることができる。以下、この表示セットの実施形態について、図面を示して詳細に説明する。
【0102】
図14は、本発明の第四実施形態に係る表示セット400を模式的に示す断面図である。
図14に示すように、本発明の第四実施形態に係る表示セット400は、表示媒体300と、表示物品500とを含む。本実施形態では、第三実施形態で説明した表示媒体300を備える表示セット400を例に示して説明する。
【0103】
図15は、本発明の第四実施形態に係る表示セット400が含む表示物品500を模式的に示す断面図である。また、
図16は、本発明の第四実施形態に係る表示セット400が含む表示物品500を模式的に示す平面図である。
図15及び
図16に示すように、表示物品500は、下地物品510と、当該下地物品510に設けられた表示層としての第一表示層520及び第二表示層530とを備える。
【0104】
下地物品510は、第一表示層520及び第二表示層530といった表示層が設けられる物品であり、その範囲に制限は無い。下地物品510の例としては、衣類等の布製品;カバン、靴等の皮革製品;ネジ等の金属製品;値札等の紙製品;カード、プラスチック紙幣類のプラスチック製品;タイヤ等のゴム製品;が挙げられるが、これらの例に限定されない。
【0105】
表示層としての第一表示層520及び第二表示層530は、いずれも、円偏光分離機能を有する。本実施形態では、第一表示層520が反射できる円偏光の回転方向DD1と、第二表示層530が反射できる円偏光の回転方向DD2とが、逆である例を示す。具体的には、第一表示層520は、当該円偏光分離機能を発揮できる波長範囲において、表示媒体300が備える偏光分離層111が反射できる円偏光の回転方向DAと同じ回転方向DD1の円偏光を反射し、その回転方向DD1とは逆の回転方向の円偏光を透過させることができる。他方、第二表示層530は、当該円偏光分離機能を発揮できる波長範囲において、偏光分離層111が反射できる円偏光の回転方向DAと逆の回転方向DD2の円偏光を反射し、その回転方向DD2とは逆の回転方向の円偏光を透過させることができる。
【0106】
以下の説明では、第一表示層520が円偏光分離機能を発揮できる波長範囲を、適宜「第一表示波長範囲」ということがある。また、第二表示層530が円偏光分離機能を発揮できる波長範囲を、適宜「第二表示波長範囲」ということがある。さらに、第一表示波長範囲及び第二表示波長範囲を包括して、単に「表示波長範囲」ということがある。表示波長範囲における第一表示層520及び第二表示層530の非偏光に対する反射率の範囲は、偏光分離波長範囲における偏光分離層111の非偏光に対する反射率の範囲と同じでありうる。このとき、第一表示層520の反射率と第二表示層530の反射率とは、同一でもよく、異なっていてもよい。
【0107】
第一表示層520及び第二表示層530の表示波長範囲は、通常、表示媒体300が備える偏光分離層111の偏光分離波長範囲と重複する。表示波長範囲の一部と偏光分離波長範囲の一部とが重複していてもよく、表示波長範囲の全部と偏光分離波長範囲の一部とが重複していてもよく、表示波長範囲の一部と偏光分離波長範囲の全部とが重複していてもよく、表示波長範囲の全部と偏光分離波長範囲の全部とが重複していてもよい。中でも、表示波長範囲の全部が偏光分離波長範囲の一部又は全部と重複していることにより、表示波長範囲が偏光分離波長範囲内にあることが好ましい。よって、好ましくは、表示波長範囲の下限が、偏光分離波長範囲の下限以上であり、また、表示波長範囲の上限が、偏光分離波長範囲の上限以下である。この場合、表示媒体300の表裏の向きが適切である場合に、複層基材110が第一表示層520又は第二表示層530で反射した円偏光を効果的に遮ることができる。
【0108】
このような第一表示層520及び第二表示層530は、第一実施形態で説明した第一反射層120と同じく、コレステリック樹脂の層であってもよいが、コレステリック樹脂のフレークを含有する層であることが好ましい。
【0109】
本実施形態では、文字「I」の平面形状を有する第一表示層520と、文字「S」の平面形状を有する第二表示層530とが、シート状の下地物品510上に設けられた表示物品500を例に示して説明する。
【0110】
また、表示物品500は、必要に応じて、円偏光分離機能を有さない顔料及び染料等の着色剤を含む任意の非キラル層540を備えていてもよい。本実施形態では、文字「M」の平面形状を有する非キラル層540を例に示して説明する。
【0111】
表示セット400は上述した構成を有する表示媒体300及び表示物品500の組み合わせを有する。よって、観察者は、下記に説明する像を視認できる。
【0112】
図14に示すように、複層基材110の位相差層112側の面110Dが表示物品500に対向する向きで、表示媒体300と表示物品500とを重ねた場合を説明する。この場合、通常、観察者は、図中上方から表示セット400を観察する。よって、観察者は、表示媒体300を第一反射層120側から観察すると同時に、その表示媒体300を通して表示物品500を観察する。
【0113】
図17は、
図14に示される表示セット400を図中上方から観察した場合に視認される像を模式的に示す平面図である。
図17に示すように、表示セット400を前記のように観察した観察者が視認する像には、表示媒体300の第一反射層120、並びに、表示物品500の第一表示層520及び非キラル層540が現れるが、表示媒体300の第二反射層220、並びに、表示物品500の第二表示層530は現れない。このような像が視認される仕組みは、下記の通りである。
【0114】
図14に示す向きで表示媒体300を設置した場合、表示媒体300の厚み方向においては、偏光分離層111、位相差層112及び表示物品500がこの順に並ぶ。よって、表示媒体300に照射された照射光は、偏光分離層111で一部の円偏光が反射され、反射された円偏光以外の光が位相差層112を透過した後に、表示物品500へ進入する。このように表示物品500へ進入する光の一部又は全部は、偏光分離層111で反射される円偏光の回転方向D
Aと同じ回転方向の円偏光となっている(
図4の光L
T1及びL
T3、並びに、
図9の光L
T6及びL
T7を参照)。
【0115】
よって、回転方向DAと同じ回転方向DD1の円偏光を反射できる第一表示層520では、表示媒体300を透過して表示物品500に進入する光は、大きな反射を生じる。そして、この反射した光は、回転方向DD1の円偏光であるので、位相差層112を透過することによってその回転方向が反転されて、偏光分離層111を透過できるようになる。したがって、第一表示層520で反射した強い光が表示媒体300を透過できるから、観察者は、第一表示層520の像を視認できる。
【0116】
また、回転方向DAと逆の回転方向DD2の円偏光を反射できる第二表示層530では、表示媒体300を透過して表示物品500に進入する光は、反射を生じないか反射が弱い。また、仮に第二表示層530で光の反射が生じても、その反射した光は、回転方向DD2の円偏光であるので、位相差層112を透過することによってその回転方向が反転されて、偏光分離層111で一部又は全部が反射される。したがって、第二表示層530で反射して表示媒体300を透過できる光が無いか弱いから、観察者は、第二表示層530の像を視認できない。
【0117】
さらに、非キラル層540では、表示物品500へ進入する光の偏光状態に依存することなく光の反射が生じる。したがって、反射した光の一部又は全体が表示媒体300を透過できるから、観察者は、非キラル層540の像を視認できる。
【0118】
また、第一実施形態~第三実施形態で説明したように、観察者は、複層基材110を通さずに観察される第一反射層120の像を視認できるが、複層基材110を通して観察される第二反射層220の像を視認できない。
【0119】
よって、観察者は、
図17に示すように、第一反射層120で示される像(文字「B」)、第一表示層520で示される像(文字「I」)、及び、非キラル層540で示される層(文字「M」)を視認できるが、第二反射層220の像及び第二表示層530の像を視認できない。
【0120】
次に、表示媒体300を裏返した場合について説明する。
図18は、本発明の第四実施形態に係る表示セット400を模式的に示す断面図である。この場合、
図18に示すように、複層基材110の偏光分離層111側の面110Uが表示物品500に対向する向きで、表示媒体300と表示物品500とが重ねられる。この場合、通常、観察者は、図中上方から表示セット400を観察する。よって、観察者は、表示媒体300を第二反射層220側から観察すると同時に、その表示媒体300を通して表示物品500を観察する。
【0121】
図19は、
図18に示される表示セット400を図中上方から観察した場合に視認される像を模式的に示す平面図である。
図19に示すように、表示セット400を前記のように観察した観察者が視認する像には、表示媒体300の第二反射層220、並びに、表示物品500の第二表示層530及び非キラル層540が現れるが、表示媒体300の第一反射層120、並びに、表示物品500の第一表示層520は現れない。このような像が視認される仕組みは、下記の通りである。
【0122】
図18に示す向きで表示媒体300を設置した場合、表示媒体300の厚み方向においては、位相差層112、偏光分離層111及び表示物品500がこの順に並ぶ。よって、表示媒体300に照射された照射光は、位相差層112を透過し、偏光分離層111で一部の円偏光が反射された後に、表示物品500へ進入する。このように表示物品500へ進入する光の一部又は全部は、偏光分離層111で反射される円偏光の回転方向D
Aと逆の回転方向の円偏光となっている(
図5の光L
T4及びL
T5、並びに、
図10の光L
T8及びL
T10を参照)。
【0123】
よって、回転方向DAと同じ回転方向DD1の円偏光を反射できる第一表示層520では、表示媒体300を透過して表示物品500に進入する光は、反射を生じないか反射が弱い。また、仮に第一表示層520で光の反射が生じても、その反射した光は、回転方向DD1の円偏光であるので、偏光分離層111で一部又は全部が反射される。したがって、第一表示層520で反射して表示媒体300を透過できる光が無いか弱いから、観察者は、第一表示層520の像を視認できない。
【0124】
また、回転方向DAと逆の回転方向DD2の円偏光を反射できる第二表示層530では、表示媒体300を透過して表示物品500に進入する光は、大きな反射を生じる。そして、この反射した光は、回転方向DD2の円偏光であるので、偏光分離層111を透過できる。したがって、第二表示層530で反射した強い光が表示媒体300を透過できるから、観察者は、第二表示層530の像を視認できる。
【0125】
さらに、非キラル層540では、表示物品500へ進入する光の偏光状態に依存することなく光の反射が生じる。したがって、反射した光の一部又は全体が表示媒体300を透過できるから、観察者は、非キラル層540の像を視認できる。
【0126】
また、第一実施形態~第三実施形態で説明したように、観察者は、複層基材110を通さずに観察される第二反射層220の像を視認できるが、複層基材110を通して観察される第一反射層120の像を視認できない。
【0127】
よって、観察者は、
図19に示すように、第二反射層220で示される像(文字「E」)、第二表示層530で示される像(文字「S」)、及び、非キラル層540で示される層(文字「M」)を視認できるが、第一反射層120の像及び第一表示層520の像を視認できない。
【0128】
以上のように、本実施形態に係る表示セットでは、表示媒体300の向きに応じて視認される像を相違させることができる。よって、このように異なる像の組み合わせにより、従来には無かった新たな表示態様を実現でき、複雑且つ自由度の高い意匠を作成することができる。特に、右円偏光及び左円偏光の両方を含む照射光下の環境において、表示媒体300の複層基材110が透明又は半透明でありながら、表示媒体300の向きに応じて前記のように像の相違が生じることは、一般の観察者には意外性のある表示となりうるので、その観察者に大きなインパクトを与えることが期待できる。
【0129】
前記の第四実施形態では、第一表示層520及び第二表示層530の両方を備える表示物品500を例に挙げて説明したが、第一表示層520及び第二表示層530の少なくとも一つを含む表示物品を用いてもよい。例えば、1つ又は2つ以上の第一表示層520を備え、且つ、第二表示層530を備えない表示物品を用いてもよい。また、例えば、1つ又は2つ以上の第二表示層530を備え、且つ、第一表示層520を備えない表示物品を用いてもよい。
【実施例】
【0130】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。また、以下の操作は、別に断らない限り、常温常圧大気中にて行った。
以下の説明において、粘着剤としては、別に断らない限り、日東電工社製の透明延着テープ「LUCIACS CS9621T」(厚み25μm、可視光透過率90%以上、面内レターデーション3nm以下)を用いた。
【0131】
[コレステリック樹脂の層の反射率の測定方法]
複層フィルムから基材フィルムを剥離して、コレステリック樹脂の層を得た。このコレステリック樹脂の層に、非偏光(波長400nm~800nm)を入射したときの反射率を、紫外可視分光光度計(日本分光社製「UV-Vis 550」)を用いて測定した。
【0132】
[面内レターデーションの測定方法]
面内レターデーションは、測定波長590nmにおいて、位相差計(Axometrics社製「Axoscan」)を用いて測定した。
【0133】
[製造例1:右円偏光を反射できるコレステリック樹脂の層の製造]
下記式(X1)で表される光重合性の液晶性化合物100部と、下記式(X2)で表される光重合性の非液晶性化合物25部と、カイラル剤(BASF社製「LC756」)8部と、光重合開始剤(チバ・ジャパン社製「イルガキュア907」)5部と、界面活性剤(AGCセイミケミカル社製「S-420」)0.15部と、溶媒としてのシクロペンタノン320部とを混合して、液晶組成物を調製した。
【0134】
【0135】
【0136】
基材フィルムとして、長尺のポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製「A4100」;厚み100μm)を用意した。この基材フィルムをフィルム搬送装置の繰り出し部に取り付け、当該基材フィルムを長尺方向に搬送しながら以下の操作を行った。
【0137】
基材フィルムの表面に、搬送方向と平行な長尺方向へラビング処理を施した。次に、ラビング処理を施した基材フィルムの面に、ダイコーターを用いて液晶組成物を塗工して、液晶組成物の層を形成した。この液晶組成物の層に、120℃で4分間加熱する配向処理を施した。その後、液晶組成物の層に、広帯域化処理を施した。この広帯域化処理では、5mJ/cm2~30mJ/cm2の弱い紫外線照射と100℃~120℃の加温処理とを交互に複数回繰り返すことで、反射帯域を所望の帯域幅に制御した。その後、800mJ/cm2の紫外線を液晶組成物の層に照射して、液晶組成物の層を硬化させた。これにより、基材フィルム及びコレステリック樹脂の層を備える複層フィルムを得た。この複層フィルムのコレステリック樹脂の層の反射率を、上述した測定方法で測定した。測定の結果、コレステリック樹脂の層は、450nmから700nmまでの波長範囲に、非偏光に対する反射率が40%以上となる波長範囲を有していた。
【0138】
[製造例2:右円偏光を反射できるコレステリック樹脂のフレークを含むインキの製造]
製造例1で製造した複層フィルムから、コレステリック樹脂の層を剥がした。剥がしたコレステリック樹脂の層を粉砕して、フレークを得た。このフレーク10部を、スクリーンインキ(十条ケミカル社製「No.2500メジウム」)85部及び当該スクリーンインキの専用希釈剤(テトロン標準溶剤)5部と混合して、インキを得た。
【0139】
[製造例3:左円偏光を反射できるコレステリック樹脂のフレークを含むインキの製造]
カイラル剤の種類を、下記式(X3)に示すD-マンニトール,1,4:3,6-ジヒドロ-,2,5-ビス[4-[[[6-[[[4-[(1-オキソ-2-プロペン-1-イル)オキシ]ブトキシ]カルボニル]オキシ]-2-ナフタレニル]カルボニル]オキシ]ベンゾエート]20部に変更したこと以外は、製造例1と同じ操作を行って、基材フィルム及びコレステリック樹脂の層を備える複層フィルムを得た。この複層フィルムのコレステリック樹脂の層の反射率を、上述した測定方法で測定した。測定の結果、コレステリック樹脂の層は、450nmから700nmまでの波長範囲に、非偏光に対する反射率が40%以上となる波長範囲を有していた。
【0140】
【0141】
こうして得た複層フィルムからコレステリック樹脂の層を剥がし、粉砕して、フレークを得た。このフレーク10部を、スクリーンインキ(十条ケミカル社製「No.2500メジウム」)85部及び当該スクリーンインキの専用希釈剤(テトロン標準溶剤)5部と混合して、インキを得た。
【0142】
[製造例4:位相差フィルムの製造]
環式構造含有重合体としてのノルボルネン系重合体を含む基材フィルム(日本ゼオン社製「ZEONORフィルム」;押出成形によって製造されたフィルム。未延伸品)を用意した。この基材フィルムを、延伸温度130℃で3.9倍に一方向に延伸して、位相差フィルムを得た。この位相差フィルムの厚みは38μm、面内レターデーションは280nmであった。
【0143】
[実施例1]
(表示セットの概要説明)
図20は、実施例1で製造した表示セット1を模式的に示す断面図である。
図20に示すように、実施例1で製造した表示セット1は、表示媒体10及び表示物品20を含む。表示媒体10は、偏光分離層11及び位相差層12を備える複層基材13;複層基材13の偏光分離層側の面に設けられた第一反射層としての文字層B
R;並びに、複層基材13の位相差層側の面に設けられた第二反射層としての文字層E
Lを備える。実施例1で製造した表示媒体10は、支持層及び粘着剤を含んでいたが、
図20ではそれらの図示を省略する。また、表示物品20は、下地物品21;並びに、この下地物品21に設けられた第一表示層としての文字層I
R、第二表示層としての文字層S
L、及び、非キラル層としての文字層Mxを備える。以下、この表示セット1の製造方法を説明する。
【0144】
(表示媒体の製造)
製造例1で製造した複層フィルムのコレステリック樹脂の層と、光学等方性の支持フィルム(ポリ塩化ビニル製フィルム)とを、粘着剤を介して貼合し、複層フィルムの基材フィルムを剥離した。基材フィルムを剥がすことで現れたコレステリック樹脂の層の面と、製造例4で製造した位相差フィルムとを、粘着剤を介して貼合した。これにより、
図20に示すように、支持フィルムとしての支持層(図示せず。)、粘着剤(図示せず。)、コレステリック樹脂の層としての偏光分離層11、粘着剤(図示せず。)、及び、位相差フィルムとしての位相差層12とを、この順で備える複層基材13を得た。
【0145】
複層基材13の偏光分離層側の面に、製造例2で製造したインキで文字「B」を印刷し、乾燥して、第一反射層としての文字層BRを形成した。また、複層基材13の位相差層側の面に、製造例3で製造したインキで文字「E」を印刷し、乾燥して、第二反射層としての文字層ELを形成した。これにより、文字層BR、偏光分離層11、位相差層12、及び文字層ELを厚み方向でこの順で備える表示媒体10を得た。
【0146】
(表示物品の製造)
樹脂製の黒色シートの片面に、製造例2で製造したインキで文字「I」を印刷し、乾燥して、第一表示層としての文字層IRを形成した。また、黒色シートの片面に、製造例3で製造したインキで文字「S」を印刷し、乾燥して、第二表示層としての文字層SLを形成した。さらに、黒色シートの片面に、市販の銀色のインキで文字「M」を印刷し、乾燥して、非キラル層としての文字層MXを形成した。これにより、黒色シートとしての下地物品21の片面に、文字層IR、文字層SL及び文字層MXを備える表示物品20を得た。
【0147】
(観察)
図20に示すように、文字層I
R、文字層S
L及び文字層M
Xが上向きとなるように、表示物品20をテーブル(図示せず。)上に置いた。この表示物品20上に、文字層B
R側を上にして、表示媒体10を置いた。非偏光の照明下において、これら表示媒体10及び表示物品20からなる表示セット1を上方から観察した。観察の結果、文字層I
R、文字層B
R及び文字層M
Xは視認できたが、文字層S
L及び文字層E
Lは視認できなかった。
【0148】
その後、表示媒体10を裏返して表示物品20上に置き直し、表示セット1を再び観察した。観察の結果、文字層SL、文字層EL及び文字層MXは視認できたが、文字層IR及び文字層BRは視認できなかった。
【0149】
実施例1の結果をまとめると、下記の表1の通りである。表1の「反射できる円偏光の向き」の欄において、略号「正」、「逆」及び「非」の意味は、下記の通りである。
「正」:文字層が反射できる円偏光の回転方向と、偏光分離層が反射できる円偏光の回転方向とが、同じ。
「逆」:文字層が反射できる円偏光の回転方向と、偏光分離層が反射できる円偏光の回転方向とが、逆。
「非」:文字層が、円偏光分離機能を有さない。
【0150】
【0151】
[実施例2]
(表示セットの説明)
図21は、実施例2で製造した表示セット2を模式的に示す断面図である。
図21に示すように、実施例2で製造した表示セット2は、表示媒体30及び表示物品20を含む。表示物品20は、実施例1と同じである。また、表示媒体30は、文字層E
Lの代わりに文字層E
Rが形成されていること以外は、実施例1の表示媒体10と同じである。
【0152】
文字層ERは、製造例3で製造したインキの代わりに、製造例2で製造したインキを用いたこと以外は、実施例1で形成された文字層ELと同じ方法で形成した。この文字層ERは、偏光分離層11が反射できる円偏光の回転方向と同じ回転方向の円偏光を反射できるフレークを有する第二の任意の層に相当する。
【0153】
(観察)
図21に示すように、文字層I
R、文字層S
L及び文字層M
Xが上向きとなるように、表示物品20をテーブル(図示せず。)上に置いた。この表示物品20上に、文字層B
R側を上にして、表示媒体30を置いた。非偏光の照明下において、これら表示媒体30及び表示物品20からなる表示セット2を上方から観察した。観察の結果、文字層I
R、文字層B
R、文字層E
R及び文字層M
Xは視認できたが、文字層S
Lは視認できなかった。
【0154】
その後、表示媒体30を裏返して表示物品20上に置き直し、表示セット2を再び観察した。観察の結果、文字層SL、文字層ER及び文字層MXは視認できたが、文字層IR及び文字層BRは視認できなかった。
【0155】
実施例2の結果をまとめると、下記の表2の通りである。表2の「反射できる円偏光の向き」の欄において、略号「正」、「逆」及び「非」の意味は、表1と同じである。
【0156】
【0157】
[比較例1]
(表示セットの説明)
図22は、比較例1で製造した表示セット3を模式的に示す断面図である。
図22に示すように、比較例1で製造した表示セット3は、表示媒体40及び表示物品20を含む。表示物品20は、実施例1と同じである。また、表示媒体40は、位相差層12が無いこと、並びに、文字層E
Lの代わりに文字層E
Rが形成されていること以外は、実施例1の表示媒体10と同じである。
【0158】
表示媒体40は、具体的には、下記の手順で製造した。製造例1で製造した複層フィルムのコレステリック樹脂の層と、光学等方性の支持フィルム(ポリ塩化ビニル製フィルム)とを、粘着剤を介して貼合し、複層フィルムの基材フィルムを剥離した。コレステリック樹脂の層上に、製造例2で製造したインキで文字「B」を印刷し、乾燥して、文字層BRを形成した。また、支持フィルム上に、製造例2で製造したインキで文字「E」を印刷し、乾燥して、文字層ERを形成した。これにより、文字層BR、コレステリック樹脂の層としての偏光分離層11、及び文字層ERを厚み方向でこの順で備える表示媒体40を得た。
【0159】
(観察)
図22に示すように、文字層I
R、文字層S
L及び文字層M
Xが上向きとなるように、表示物品20をテーブル(図示せず。)上に置いた。この表示物品20上に、文字層B
R側を上にして、表示媒体40を置いた。非偏光の照明下において、これら表示媒体40及び表示物品20からなる表示セット3を上方から観察した。観察の結果、文字層S
L、文字層B
R及び文字層M
Xは視認できたが、文字層I
R及び文字層E
Rは視認できなかった。
【0160】
その後、表示媒体40を裏返して表示物品20上に置き直し、表示セット3を再び観察した。観察の結果、文字層SL、文字層ER及び文字層MXは視認できたが、文字層IR及び文字層BRは視認できなかった。
【0161】
比較例1の結果をまとめると、下記の表3の通りである。表3の「反射できる円偏光の向き」の欄において、略号「正」、「逆」及び「非」の意味は、表1と同じである。
【0162】
【0163】
[比較例2]
(表示セットの説明)
図23は、比較例2で製造した表示セット4を模式的に示す断面図である。
図23に示すように、比較例2で製造した表示セット4は、表示媒体50及び表示物品20を含む。表示物品20は、実施例1と同じである。また、表示媒体50は、文字層E
Rの代わりに文字層E
Lが形成されていること以外は、比較例1の表示媒体40と同じである。
【0164】
文字層ELは、製造例2で製造したインキの代わりに、製造例3で製造したインキを用いたこと以外は、比較例1で形成された文字層ERと同じ方法で形成した。
【0165】
(観察)
図23に示すように、文字層I
R、文字層S
L及び文字層M
Xが上向きとなるように、表示物品20をテーブル(図示せず。)上に置いた。この表示物品20上に、文字層B
R側を上にして、表示媒体50を置いた。非偏光の照明下において、これら表示媒体50及び表示物品20からなる表示セット4を上方から観察した。観察の結果、文字層S
L、文字層B
R、文字層E
L及び文字層M
Xは視認できたが、文字層I
Rは視認できなかった。
【0166】
その後、表示媒体50を裏返して表示物品20上に置き直し、表示セット4を再び観察した。観察の結果、文字層SL、文字層EL及び文字層MXは視認できたが、文字層IR及び文字層BRは視認できなかった。
【0167】
比較例2の結果をまとめると、下記の表4の通りである。表4の「反射できる円偏光の向き」の欄において、略号「正」、「逆」及び「非」の意味は、表1と同じである。
【0168】
【0169】
[比較例3]
(表示セットの説明)
図24は、比較例3で製造した表示セット5を模式的に示す断面図である。
図24に示すように、比較例3で製造した表示セット5は、表示媒体60及び表示物品20を含む。表示物品20は、実施例1と同じである。また、表示媒体60は、直線偏光子61と1/4波長板62とを組み合わせて備える円偏光フィルター63を複層基材13の代わりに備えること以外は、実施例1の表示媒体10と同じである。
【0170】
表示媒体60は、具体的には、下記の手順で製造した。特許第5828182号公報の実施例1に記載の、わずかに黒味を帯びた円偏光フィルター63を用意した。この円偏光フィルター63は、右円偏光を透過し、左円偏光を吸収できるものであった。この円偏光フィルター63の直線偏光子61上に、製造例2で製造したインキで文字「B」を印刷し、乾燥して、文字層BRを形成した。また、1/4波長板62上に、製造例3で製造したインキで文字「E」を印刷し、乾燥して、文字層ELを形成した。これにより、文字層BR、円偏光フィルター63及び文字層ELを厚み方向でこの順で備える表示媒体60を得た。
【0171】
(観察)
図24に示すように、文字層I
R、文字層S
L及び文字層M
Xが上向きとなるように、表示物品20をテーブル(図示せず。)上に置いた。この表示物品20上に、文字層B
R側を上にして、表示媒体60を置いた。非偏光の照明下において、これら表示媒体60及び表示物品20からなる表示セット5を上方から観察した。観察の結果、文字層I
R、文字層B
R及び文字層M
Xは視認できたが、文字層S
L及び文字層E
Lは視認できなかった。
【0172】
その後、表示媒体60を裏返して表示物品20上に置き直し、表示セット5を再び観察した。観察の結果、文字層IR、文字層SL、文字層BR、文字層EL及び文字層MXをいずれも視認できた。
【0173】
比較例3の結果をまとめると、下記の表5の通りである。表5の「反射できる円偏光の向き」の欄において、略号「正」、「逆」及び「非」の意味は、表1と同じである。
【0174】
【0175】
[比較例4]
(表示セットの説明)
図25は、比較例4で製造した表示セット6を模式的に示す断面図である。
図25に示すように、比較例4で製造した表示セット6は、表示媒体70及び表示物品20を含む。表示物品20は、実施例1と同じである。また、表示媒体70は、文字層E
Lの代わりに文字層E
Rが形成されていること以外は、比較例3の表示媒体60と同じである。
【0176】
文字層ERは、製造例3で製造したインキの代わりに、製造例2で製造したインキを用いたこと以外は、比較例3で形成された文字層ELと同じ方法で形成した。
【0177】
(観察)
図25に示すように、文字層I
R、文字層S
L及び文字層M
Xが上向きとなるように、表示物品20をテーブル(図示せず。)上に置いた。この表示物品20上に、文字層B
R側を上にして、表示媒体70を置いた。非偏光の照明下において、これら表示媒体70及び表示物品20からなる表示セット6を上方から観察した。観察の結果、文字層I
R、文字層B
R、文字層E
R及び文字層M
Xは視認できたが、文字層S
Lは視認できなかった。
【0178】
その後、表示媒体70を裏返して表示物品20上に置き直し、表示セット6を再び観察した。観察の結果、文字層IR、文字層SL、文字層BR、文字層ER及び文字層MXをいずれも視認できた。
【0179】
比較例4の結果をまとめると、下記の表6の通りである。表6の「反射できる円偏光の向き」の欄において、略号「正」、「逆」及び「非」の意味は、表1と同じである。
【0180】
【符号の説明】
【0181】
100 表示媒体
110 複層基材
110U 複層基材の偏光分離層側の面
110D 複層基材の位相差層側の面
111 偏光分離層
112 位相差層
120 第一反射層
200 表示媒体
220 第二反射層
300 表示媒体
400 表示セット
500 表示物品
510 下地物品
520 第一表示層
530 第二表示層
540 非キラル層