(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】純水製造システムおよび純水製造方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20230101AFI20250226BHJP
B01D 61/02 20060101ALI20250226BHJP
B01D 61/44 20060101ALI20250226BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20250226BHJP
B01D 69/02 20060101ALI20250226BHJP
C02F 1/469 20230101ALI20250226BHJP
【FI】
C02F1/44 J
B01D61/02 510
B01D61/44 520
B01D61/58
B01D69/02
C02F1/469
(21)【出願番号】P 2023107337
(22)【出願日】2023-06-29
【審査請求日】2024-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】山川 晴義
(72)【発明者】
【氏名】阿部 幸也
(72)【発明者】
【氏名】港 康晴
(72)【発明者】
【氏名】田部井 麗奈
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-283710(JP,A)
【文献】国際公開第2021/131130(WO,A1)
【文献】特開2004-025078(JP,A)
【文献】特開平09-005690(JP,A)
【文献】国際公開第2021/235107(WO,A1)
【文献】国際公開第2024/048115(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
C02F 1/46- 1/48
G01N 27/00-27/10
G01N 27/14-27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水が供給される膜面有効圧が0.4~0.9MPaの第一の超低圧型逆浸透膜装置と、
前記第一の超低圧型逆浸透膜装置の透過水のpHを8~11に調整するpH調整装置と、
前記pH調整装置によってpH調整された調整水が供給される膜面有効圧が0.4~0.9MPaの第二の超低圧型逆浸透膜装置と、
前記第二の超
低圧型逆浸透膜装置からの透過水が供給される電気再生式イオン交換装置と
、
前記電気再生式イオン交換装置の脱塩室から吐出された後10秒以上経過した処理水の比抵抗値又は導電率を測定する比抵抗計又は導電率計と、
を有する、純水製造システム。
【請求項2】
前記電気再生式イオン交換装置の脱塩室の通水方向と向流となるように濃縮室を通水し、該濃縮室に電気再生式イオン交換装置の給水または処理水を通水する、請求項1に記載の純水製造システム。
【請求項3】
被処理水を膜面有効圧が0.4~0.9MPaの第一の超低圧型逆浸透膜装置で処理する第一の逆浸透膜処理工程と、
前記第一の超低圧型逆浸透膜装置の透過水のpHを8~11に調整するpH調整工程と、
このpH調整工程によってpH調整された調整水を膜面有効圧が0.4~0.9MPaの第二の超低圧型逆浸透膜装置で処理する第二の逆浸透膜処理工程と、
前記第二の超低圧型逆浸透膜装置の透過水を電気再生式イオン交換装置で処理
して処理水を得る脱イオン工程と
を有
し、
前記脱イオン工程で得られた処理水の比抵抗値を、該処理水が前記電気再生式イオン交換装置の脱塩室から吐出されて10秒以上経過した後測定し、この測定した比抵抗値が15MΩ・cm以上となるように前記電気再生式イオン交換装置の運転条件を制御する、純水製造方法。
【請求項4】
前記脱イオン工程において、前記電気再生式イオン交換装置の脱塩室の通水方向と向流となるように濃縮室を通水し、該濃縮室に電気再生式イオン交換装置の給水または処理水を通水する、請求項
3に記載の純水製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、純水製造システムおよびこれを用いた純水製造方法に関し、特に効率的な純水製造設備の運転性能と、安定した水質の純水製造性能とを兼ね備えた純水製造システムおよびこれを用いた純水製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体等の電子産業分野で用いられている超純水は、前処理システム、一次純水製造装置(純水製造システム)及び一次純水を処理するサブシステム(二次純水製造装置)で構成される超純水製造システムで原水を処理することにより製造されている。
【0003】
例えば、
図6に示すように超純水製造システム1は、前処理装置2と一次純水製造装置(純水製造システム)3とサブシステム4といった3段の装置で構成されている。このような超純水製造システム1の前処理装置2では、原水Wの濾過、凝集沈殿、精密濾過膜などによる前処理が施され、主に懸濁物質が除去される。
【0004】
一次純水製造装置3は、前処理水W1を処理する2段構成の逆浸透膜装置5,6と、電気再生式イオン交換装置7とを有し、これらの機器の間に中継槽、送水ポンプまたは昇圧ポンプを設けることができる。さらに電気再生式イオン交換装置7の後段に紫外線酸化装置8を有する。この紫外線酸化装置8は、電気再生式イオン交換装置7の前段としてもよい。この一次純水製造装置3で前処理水W1中の大半の電解質、微粒子、生菌等の除去を行うとともに有機物を分解して、一次純水(純水)W2を得る。
【0005】
そして、サブシステム4は、サブタンク10と供給ポンプ11と紫外線酸化装置12と非再生型混床式イオン交換装置13と限外ろ過膜(UF膜)14とを有し、限外ろ過膜(UF膜)14からユースポイント15を経由してサブタンク10に還流する構成となっている。このサブシステム4では、一次純水製造装置3で製造された一次純水W2中に含まれる微量の有機物(TOC成分)を酸化分解し、炭酸イオン、有機酸類、アニオン性物質、さらには金属イオンやカチオン性物質をイオン交換体を充填した機器で除去し、最後に限外濾過(UF)膜14で微粒子を除去して超純水W3とし、これをユースポイント15に供給して、未使用の超純水W3はサブタンク10に還流する。
【0006】
上述したような超純水製造システム1の一次純水製造装置3では、逆浸透膜装置6におけるホウ素の濃度低減などの処理性能向上を目的に、逆浸透膜装置6の給水にNaOH等のアルカリを注入してpH8以上とし、各種成分のイオン化を促進して処理することが行われている。
【0007】
また、この一次純水製造装置3に用いられる電気再生式イオン交換装置7は、一般に陰極(カソード)及び陽極(アノード)間にカチオン交換膜とアニオン交換膜とを交互に配置し、これらカチオン交換膜及びアニオン交換膜により区画を構成することで脱塩室及び濃縮室を形成し、この脱塩室及び前記濃縮室にイオン交換樹脂を充填したものである。カチオン交換膜やアニオン交換膜などのイオン交換膜としては、粉末状のイオン交換樹脂にポリスチレンなどの結合剤を加えて製膜した不均質膜や、スチレン-ジビニルベンゼン等の重合によって製膜した均質膜などのほか、各種アニオン交換機能あるいはカチオン交換機能を有する単量体をグラフト重合により製膜したものなどが用いられている。
【0008】
また、脱塩室には、イオン交換樹脂、イオン交換繊維もしくはグラフト交換体等からなるイオン交換体(アニオン交換体及びカチオン交換体)が混合もしくは複層状に充填されている。また、濃縮室と、陽極室及び陰極室にも、イオン交換体が充填されている。
【0009】
この純水製造システムを構成する電気再生式イオン交換装置では、逆浸透膜装置6の透過水を電気再生式イオン交換装置の給水とする、あるいは逆浸透膜装置の透過水を紫外線酸化装置で処理した後電気再生式イオン交換装置の給水とすることが行われている。
【0010】
さらに、逆浸透膜装置と電気再生式イオン交換装置とは、
図7に示すように被処理水W4を第一の逆浸透膜装置21で処理し、この透過水にアルカリ添加手段22からアルカリ性の薬品を添加してpHを8~11に調整した調整水W5を第二の逆浸透膜装置23で処理し、この透過水W6を電気再生式イオン交換装置(CEDI)24で処理して処理水W7を得る装置もある。このような装置では、第一の逆浸透膜装置21または第二の逆浸透膜装置23の少なくともいずれかに低圧逆浸透膜(LPRO)を用いている。また、電気再生式イオン交換装置24では、濃縮水として、脱塩室の給水または処理水を用い、脱塩室と濃縮室が、すべてまたは一部において同じ方向で通水されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、低圧逆浸透膜(低圧RO)は不純物の除去率が高い一方で、適切な透過流速を得るための膜面有効圧が1.0~2.0MPa必要であり、ポンプ動力を大きくする必要があり、運転に必要な電力量が大きくなる、という問題点があった。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、効率的な純水製造設備の運転性能と、安定した水質の純水製造性能とを兼ね備えた純水製造システムおよびこれを用いた純水製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的に鑑み本発明は第一に、被処理水が供給される膜面有効圧が0.4~0.9MPaの第一の超低圧型逆浸透膜装置と、前記第一の超低圧型逆浸透膜装置の透過水のpHを8~11に調整するpH調整装置と、前記pH調整装置によってpH調整された調整水が供給される膜面有効圧が0.4~0.9MPaの第二の超低圧型逆浸透膜装置と、前記第二の超低圧型逆浸透膜装置からの透過水が供給される電気再生式イオン交換装置とを有する純水製造システムを提供する(発明1)。
【0014】
かかる発明(発明1)によれば、2段目の逆浸透膜の被処理水をアルカリ性とする2段逆浸透膜装置を備えた純水製造システムにおいて、1段目の逆浸透膜装置として膜面有効圧が0.4~0.9MPaの超低圧型逆浸透膜装置を用いることで、被処理水(処理原水)を従来の低圧逆浸透膜よりも低い消費電力で適切なフラックス(Flux)で処理することができる。その後、pH調整装置からアルカリ性の薬品を添加して1段目の逆浸透膜装置の透過水のpHを8~11に調整して難除去成分のイオン化を促進した後、2段目の逆浸透膜装置として膜面有効圧が0.4~0.9MPaの超低圧型逆浸透膜装置を用いることで、被処理水(処理原水)を従来の低圧逆浸透膜よりも低い消費電力で適切なフラックス(Flux)で処理することができる。そして、この2段目の逆浸透膜装置の透過水を電気再生式イオン交換装置(CEDI)で処理することにより、安定した水質の純水を製造することができる。これらにより、効率的な純水製造設備の運転と、安定した水質の純水の製造とを兼ね備えた純水製造システムとすることができる。
【0015】
上記発明(発明1)においては、前記電気再生式イオン交換装置の脱塩室の通水方向と向流となるように濃縮室を通水し、該濃縮室に電気再生式イオン交換装置の給水または処理水を通水することが好ましい(発明2)。
【0016】
かかる発明(発明2)によれば、2段目の逆浸透膜装置の透過水を電気再生式イオン交換装置(CEDI)で処理する際に、該電気再生式イオン交換装置の濃縮水として脱塩室への給水または処理水(脱塩水)を用い、脱塩室と濃縮室を向流に通水することで、脱塩室と濃縮室の間の濃度差が緩和されるので、高純度の純水を安定して製造することができる。
【0017】
上記発明(発明1又は2)においては、前記電気再生式イオン交換装置の脱塩室から吐出された後10秒以上経過した処理水の比抵抗値又は導電率を測定する比抵抗計又は導電率計を有することが好ましい(発明3)。
【0018】
上記発明(発明3)によれば、電気再生式イオン交換装置の処理水(脱塩水)は、吐出直後は炭酸が水中で乖離した状態ではなく、時間の経過とともに炭酸が乖離してイオン化することで比抵抗値を低下させるので、電気脱イオン装置の処理水(脱塩水)の水質を比抵抗計や導電率計で測定する際に一定時間を経過させた後に測定すれば、脱塩水の水質を的確に計測することができるので、電気脱イオン装置の脱塩水の水質を好適に管理することが可能となる。
【0019】
また、本発明は第二に、被処理水を膜面有効圧が0.4~0.9MPaの第一の超低圧型逆浸透膜装置で処理する第一の逆浸透膜処理工程と、前記第一の超低圧型逆浸透膜装置の透過水のpHを8~11に調整するpH調整工程と、このpH調整工程によってpH調整された調整水を膜面有効圧が0.4~0.9MPaの第二の超低圧型逆浸透膜装置で処理する第二の逆浸透膜処理工程と、前記第二の超低圧型逆浸透膜装置の透過水を電気再生式イオン交換装置で処理する処理水を得る脱イオン工程とを有する純水製造方法を提供する(発明4)。
【0020】
かかる発明(発明4)によれば、膜面有効圧が0.4~0.9MPaの超低圧型逆浸透膜装置を用いることで、被処理水(処理原水)を従来の低圧逆浸透膜よりも低い消費電力で適切なフラックス(Flux)で処理し、次に、pH調整装置からアルカリ性の薬品を添加して1段目の逆浸透膜装置の透過水のpHを8~11に調整して難除去成分のイオン化を促進した後、膜面有効圧が0.4~0.9MPaの超低圧型逆浸透膜装置を用いることで、被処理水(処理原水)を従来の低圧逆浸透膜よりも低い消費電力で適切なフラックス(Flux)で処理する。そして、この2段目の逆浸透膜装置の透過水を電気再生式イオン交換装置(CEDI)で処理することにより、純水を安定して製造することができる。これらにより、効率的な純水製造設備の運転と、安定した水質とを両立させて純水を製造することができる。
【0021】
上記発明(発明4)においては、前記脱イオン工程において、前記電気再生式イオン交換装置の脱塩室の通水方向と向流となるように濃縮室を通水し、該濃縮室に電気再生式イオン交換装置の給水または処理水を通水することが好ましい(発明5)。
【0022】
かかる発明(発明5)によれば、2段目の逆浸透膜装置の透過水を電気再生式イオン交換装置(CEDI)で処理する際に、該電気再生式イオン交換装置の濃縮水として脱塩室への給水または処理水(脱塩水)を用い、脱塩室と濃縮室を向流に通水することで、脱塩室と濃縮室の間の濃度差が緩和されるので、高純度の純水を安定して製造することができる。
高純度の純水を安定して製造することができる。
【0023】
上記発明(発明4又は5)においては、前記脱イオン工程で得られた処理水の比抵抗値を、該処理水が前記電気再生式イオン交換装置の脱塩室から吐出されて10秒以上経過した後測定し、この測定した比抵抗値が15MΩ・cm以上となるように前記電気再生式イオン交換装置の運転条件を制御することが好ましい(発明6)。
【0024】
上記発明(発明6)によれば、電気再生式イオン交換装置の処理水(脱塩水)は、吐出直後は炭酸が水中で乖離した状態ではなく、時間の経過とともに炭酸が乖離してイオン化することで比抵抗値を低下させるので、電気脱イオン装置の処理水(脱塩水)の水質を比抵抗計や導電率計で測定する際に一定時間を経過させた後に測定すれば、脱塩水の水質を的確に計測することができるので、電気脱イオン装置の脱塩水の水質を好適に管理することが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の純水製造システムによれば、2段目の逆浸透膜の被処理水をアルカリ性とする2段逆浸透膜装置を備えた純水製造システムにおいて、1段目の逆浸透膜装置及び2段目の逆浸透膜装置として、膜面有効圧が0.4~0.9MPaの超低圧型逆浸透膜装置を用いているので、この2段目の逆浸透膜装置の透過水を電気再生式イオン交換装置(CEDI)で処理することにより、効率的な純水製造設備の運転と、安定した水質の純水の製造とをバランスを良く兼ね備えたものとなっている。これにより、例えば、電気再生式イオン交換装置の処理水において、17MΩ・cm以上の比抵抗値の高い純度の純水をより少ない電力で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態に係る純水製造システムにおける2段逆浸透膜処理装置と電気再生式イオン交換装置の構成を示すフロー図である。
【
図2】前記実施形態における電気再生式イオン交換装置の通水方式の一例を示す概略図である。
【
図3】前記実施形態における電気再生式イオン交換装置の処理水の比抵抗の計測方法を示す概略図である。
【
図4】前記実施形態における電気再生式イオン交換装置の通水方式の他例を示す概略図である。
【
図5】実施例1で用いた純水製造システムにおける2段逆浸透膜処理装置と電気再生式イオン交換装置の構成を示すフロー図である。
【
図6】本発明の純水製造システムを適用可能な超純水製造装置を示すフロー図である。
【
図7】従来の純水製造システムにおける2段逆浸透膜処理装置と電気再生式イオン交換装置の構成を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の純水製造システムについて添付図面を参照して説明する。
【0028】
〔純水製造システム〕
本実施形態の純水製造システムは、2段目の逆浸透膜の被処理水をアルカリ性とする2段逆浸透膜装置の後段に電気再生式イオン交換装置を有するものであればよく、例えば前述した
図5に示す超純水製造システム1における一次純水製造装置3に好適適用することができる。
【0029】
具体的には、2段逆浸透膜装置は、
図1に示すように被処理水W4を第一の逆浸透膜装置(ULP-RO1)31と、この第一の逆浸透膜装置31の処理水(透過水)にアルカリ性の薬品を添加するpH調整装置としてのアルカリ添加手段32と、アルカリ性の薬品の添加によりpHを8~11に調整した調整水W5を処理する第二の逆浸透膜装置(ULP-RO2)33と、この第二の逆浸透膜装置33の処理水(透過水)W6を処理して処理水W7を製造する電気再生式イオン交換装置(CEDI)34とを有する。
【0030】
(逆浸透膜)
第一の逆浸透膜装置31及び第二の逆浸透膜装置33としては、それぞれ超低圧型逆浸透膜を用いる。本実施形態において、超低圧型逆浸透膜は、膜面有効圧(水温25℃、純水(RO透過水))が0.4~0.9MPaにおける透過流束(フラックス)0.4~0.9m3/(m2・日)、NaCl除去率90%以上、ホウ素除去率30%以上の性能を有する逆浸透膜である。
【0031】
膜面有効圧が0.9MPaを超える低圧逆浸透膜では、得られる純水の純度は向上するものの、消費電力が増加する。一方、膜面有効圧が0.4MPa未満の逆浸透膜では、得られる純水の水質が低下する。
【0032】
なお。低圧型逆浸透膜は、膜面有効圧が1.0~2.0MPaにおける透過流束(フラックス)0.3~1.0m3/(m2・日)、NaCl除去率99%以上、ホウ素除去率50%以上の性能を有する逆浸透膜である。
【0033】
(電気再生式イオン交換装置)
本実施形態において、電気再生式イオン交換装置としては、陰極(カソード)及び陽極(アノード)間にカチオン交換膜とアニオン交換膜とを交互に配置し、これらカチオン交換膜及びアニオン交換膜により区画を構成することで、
図2に示すように脱塩室(D室)及び濃縮室(C室)を形成するとともに両端部に陽極室及び陰極室を形成したものであり、脱塩室の給水(第二の逆浸透膜装置33の透過水W6)を濃縮室(C室)、陽極室及び陰極室に供給する。そして、濃縮室(C室)には脱塩室(D室)と反対方向(向流式)で透過水W6を供給する構造となっている。
【0034】
〔純水製造方法〕
上述したような純水製造システムの運転方法について以下説明する。
【0035】
(第一の逆浸透膜処理工程)
まず、図示しない給水ポンプを駆動して被処理水W4を第一の逆浸透膜装置31に供給する。この第一の逆浸透膜装置31は、膜面有効圧が0.4~0.9MPaで超低圧型逆浸透膜装置に通水すると、従来の低圧逆浸透膜よりも低い消費電力で適切なフラックス(Flux)で処理することができる。
【0036】
(pH調整工程)
次に、第一の逆浸透膜装置31の透過水にアルカリ添加手段32からNaOH溶液を添加して、第一の逆浸透膜装置31の透過水のpHを8~11に調整し、シリカ、炭酸などの難イオン化成分をイオン化する。
【0037】
(第二の逆浸透膜処理工程)
続いて、このpHを8~11に調整した調整水W5を第二の逆浸透膜装置33で処理する。この第二の逆浸透膜装置33は、膜面有効圧が0.4~0.9MPaで超低圧型逆浸透膜装置に通水すると、従来の低圧逆浸透膜よりも低い消費電力で適切なフラックス(Flux)で処理することができる。
【0038】
(脱イオン工程)
そして、第二の逆浸透膜装置33の透過水W6を電気再生式イオン交換装置(CEDI)34で処理することにより、透過水W6に含まれる微量のイオン性不純物を除去することにより、処理水W7を得ることができる。
【0039】
このとき、本実施形態においては、電気再生式イオン交換装置34の脱塩室の通水方向と濃縮室の通水方向とが逆方向(向流)となるように通水しているので、脱塩室と濃縮室の間の不純物の濃度差が緩和されるので、高純度の純水を安定して製造することができる。例えば、電気再生式イオン交換装置の処理水W7の比抵抗値が17MΩ・cm以上の高い純度の純水をより少ない電力で製造することができる。
【0040】
この電気再生式イオン交換装置34の脱塩水(処理水)W7の比抵抗値は、例えば、
図3に示すような方法で計測することが好ましい。
図3おいて、複数系列(4系列)の電気再生式イオン交換装置34A,34B,34C,34Dには、給水管41から分岐した電気再生式イオン交換装置34A~34Dの脱塩室に第二の逆浸透膜装置33の透過水W6を供給する分岐菅41A~41Dが接続しているとともに、脱塩室の出口に処理水(脱塩水)W7の流出管42A~42Dが連通している。これら流出管42A~42Dは、合流管42において合流し、後段のシステムに処理水W7を供給する。そして、流出管42A~42Dには、比抵抗計43A~43Dがそれぞれ設けられており、これら比抵抗計43A~43Dにより電気再生式イオン交換装置34A~34Dの脱塩室から吐出された直後の処理水(脱塩水)W7の比抵抗を測定することで処理水の水質を監視している。また、合流官42にも比抵抗計43が設けられている。
【0041】
このような電気脱イオン装置によるシステムにおいて、流出管42A~42D及び合流管42は、少なくとも比抵抗計43A~43Dの接続箇所まで、このましくは全部がポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVD)などのガスバリア性の硬質樹脂材料からなる管材、または金属製の管材により構成されていることが好ましい。これらの材料は、ガスバリア性に優れているので、このような材料により流出管42A~42D及び合流管42を構成することにより、脱塩室出口から吐出した処理水が比抵抗値の測定箇所である比抵抗計43A~43Dに到達するまでに外部的な要因で気体が溶解し水質が低下するのを防止することができる。
【0042】
また、比抵抗計43A~43Dの採水チューブ44A~44Dは、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ナイロンなどのガスバリア性の材料製のチューブであり、その長さは、電気再生式イオン交換装置34A~34Dの脱塩室の出口から吐出された脱塩水(処理水)W7が、比抵抗計43A~43Dの計測部に到達するまで10秒以上、特に30秒以上の滞留時間を要する長さとすることが好ましい。計測部に到達するまで10秒未満の長さでは、脱塩水(処理水)中の炭酸がほとんど解離していない状態で比抵抗を計測することになるため好ましくない。この採水チューブ44A~44Dの長さは、採水チューブのチューブ径と通水流量とに応じて、所望とする滞留時間となるように設定すればよい。
【0043】
このような構成とするする理由は以下のとおりである。すなわち、第二の逆浸透膜装置33の透過水W6を電気再生式イオン交換装置34A~34Dの脱塩室に供給すると、イオン性の不純物が除去され、処理水(脱塩水)W7が吐出される。このとき、被処理水(給水)W7中の乖離していない炭酸は、脱塩室から出た直後にはイオン化していないので比抵抗値には影響しないが、時間の経過とともに炭酸が乖離してイオン化することで処理水(脱塩水)W7の比抵抗値が低下する。そこで、採水チューブ34A~34Dの長さを、脱塩水(処理水)が脱塩室の出口から比抵抗計43A~43Dの計測部に到達するまで10秒以上、好ましくは30秒以上の滞留時間となる長さとすることで、脱塩水(処理水)の炭酸イオン濃度を精度よく計測することができる。計測部に到達するまで10秒未満の長さでは、脱塩水(処理水)の炭酸イオン濃度を精度よく計測することができないため好ましくない。また、合流官42において合流した処理水W7の比抵抗を比抵抗計43で計測することで、比抵抗値を確認することができる。
【0044】
上述したように電気再生式イオン交換装置の脱塩水の水質を測定し、この測定した比抵抗値が15MΩ・cm以上となるように電気再生式イオン交換装置の運転条件を制御することで、処理水W7の水質を好適に維持することができる。さらに電気再生式イオン交換装置の性能を正確に把握し、電気再生式イオン交換装置の運転条件の適否のみならず、劣化・寿命を判断することもできる。また、後段設備への負荷も的確に把握して設計に反映させることも可能となる。
【0045】
以上、本発明の純水製造システムおよび純水製造方法について添付図面を参照して説明してきたが、本発明は前記実施形態に限定されず、種々の変更実施が可能である。例えば、電気再生式イオン交換装置34は、
図4に示すように処理水W7を脱塩室の通水方向と濃縮室の通水方向とを逆方向(向流)となるように通水してもよい。このような構成を採用することにより、さらに高純度の純水を安定して製造することができる。また、前記実施形態においては、比抵抗計の採水チューブの長さを調節したり、比抵抗計の設置位置を調節したりしているが、これに限らず、流出管42A~42Dに脱塩水の滞留部を設けて、10秒以上、好ましくは30秒以上滞留させた後、比抵抗計により脱塩水の比抵抗を計測するようにしてもよい。また、比抵抗計の代わりに導電率計を設けて、比抵抗値でなく導電率により同様に、電気再生式イオン交換装置の脱塩水の水質を管理してもよい。
【実施例】
【0046】
以下、具体的実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0047】
〔試験用純水製造装置〕
試験用の純水製造装置システムとして、
図5に示すものを用意した。
図5において、純水製造システム1は、原水槽52と、第一の給水ポンプ(RO1給水ポンプ)53と、第一の逆浸透膜(RO1)54と、第一の逆浸透膜54の透過水のタンク55と、NaOH溶液を用いたアルカリ添加手段56と、第二の給水ポンプ(RO2給水ポンプ)57と、第二の逆浸透膜(RO2)58と、電気再生式イオン交換装置(CEDI)59と、電気再生式イオン交換装置59の脱塩水(処理水)W7の処理水槽60とを順次設けた構造を有する。
【0048】
〔逆浸透膜装置〕
逆浸透膜(RO膜)としては、超低圧逆浸透膜低圧と逆浸透膜とを用いた。これらの性能と運転条件を以下に示す。
【0049】
・超低圧逆浸透膜:膜面有効圧力0.5~0.8MPa、透過水量0.5~0.8m3/(m2・日)及び水回収率83~87%
・低圧逆浸透膜:膜面有効圧力1.2~1.5MPa、透過水量0.5~0.8m3/(m2・日)及び水回収率83~87%
【0050】
[実施例1~3、比較例1~5]
Naイオン、炭酸イオンなどと、ホウ素(B)10~20μg/Lを含む電気伝導率約20mS/mの原水(被処理水)W4を用意した。この原水W4を
図5に示す試験用装置において原水槽52から第一の給水ポンプ(RO1給水ポンプ)53で被処理水W4を第一の逆浸透膜(RO1)54に供給し、第一の逆浸透膜54の処理水(透過水)をタンク55で受けた。次に第二の給水ポンプ(RO2給水ポンプ)57で第一の逆浸透膜54の透過水を第二の逆浸透膜(RO2)58に給水し、この際第一の逆浸透膜54の透過水にアルカリ添加手段56から必要に応じNaOH溶液を添加して調整水W5とした。この調整水W5を第二の逆浸透膜(RO2)58で処理して第二の逆浸透膜の透過水W6を得た。この透過水W6を電気再生式イオン交換装置(CEDI)59で処理して、処理水W7を得た。
【0051】
上述したような処理において、第一の給水ポンプ53の送水量は約14m3/hであり、第一の逆浸透膜54の水回収率は83~87%であり、第二の給水ポンプ57の送水量は約12m3/hであり、第二の逆浸透膜58の水回収率は88~92%とした。また、第二の逆浸透膜58の透過水W6をそのまま電気再生式イオン交換装置59に給水し、電気再生式イオン交換装置59では水回収率93~97%で10Aの定電流運転とし、電圧は100~150Vで推移した。このとき、電気再生式イオン交換装置59の処理水W7の量はいずれも約10m3/hとなった。
【0052】
第二の逆浸透膜58の給水のpHをアルカリにする場合には、第一の逆浸透膜54の透過水に必要に応じて1%NaOH溶液をアルカリ添加手段56から所定のpHとなるように薬注し、調整水W5とした。
【0053】
電気再生式イオン交換装置59では、通水方法として、脱塩室への通水方向と濃縮室の通水方向が同じ向きとなる並流フローと、逆方向になる向流フローを条件によって切り替えた。また、濃縮室への給水は、電気再生式イオン交換装置59の脱塩室の給水と同じ第二の逆浸透膜58の透過水W6を通水する場合と、電気再生式イオン交換装置59の処理水W7を通水する場合とを条件によって切り替えた。
【0054】
処理水W7の製造工程におけるRO1給水ポンプ53の消費電力、RO2給水ポンプの消費電力、電気再生式イオン交換装置59の消費電力をそれぞれ測定し、これらの合計を算出した。また、処理水W7のホウ素濃度、脱塩室から吐出直後の比抵抗値及び吐出後30秒経過した後の比抵抗値を測定した。この結果を第一の逆浸透膜54の給水pH及び膜種、第二の逆浸透膜58の給水pH及び膜種、並びに電気再生式イオン交換装置59の脱塩室と濃縮室の通水方式、濃縮室の給水種及び回収率とともに表1~表3に示す。
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
表1~表3から明らかなように、第一の逆浸透膜54及び第二の逆浸透膜58として超低圧逆浸透膜を使用し、第二の逆浸透膜58の給水(調整水)W5のpHを9~10とし、かつ電気再生式イオン交換装置59の通水方式を向流式とした実施例1~3では、より低消費電力で高純度な水質の処理水が得られることがわかる。
【0059】
これに対し、第一の逆浸透膜54及び第二の逆浸透膜58として超低圧逆浸透膜を使用し、第二の逆浸透膜58の給水のpHを調整しない比較例1、2、4では、電気再生式イオン交換装置59の通水方式に関わらず、処理水W7の水質が実施例1,2に比べて悪かった。また、第一の逆浸透膜54として低圧逆浸透膜を使用し、第二の逆浸透膜58として超低圧逆浸透膜を使用した比較例3,5では、純度の高い処理水が得られるものの、消費電力が実施例1~3に比べて約40%増大した。さらに、電気再生式イオン交換装置59の通水方式を並流式とした比較例1,3では、電気再生式イオン交換装置59の脱塩室出口から30秒経過後の比抵抗値がさらに低下した。これは電気再生式イオン交換装置59の処理水W7中に存在する分子状CO2が時間の経過とともに解離して比抵抗値を低下させたためであると考えられる。
【符号の説明】
【0060】
1 超純水製造システム
2 前処理装置
3 一次純水製造装置(純水製造システム)
4 サブシステム
5,6 逆浸透膜装置
7 電気再生式イオン交換装置
8 紫外線酸化装置
10 サブタンク
11 供給ポンプ
12 紫外線酸化装置
13 非再生型混床式イオン交換装置
14 限外ろ過膜(UF膜)
15 ユースポイント
21 第一の逆浸透膜装置
22 アルカリ添加手段(pH調整装置)
23 第二の逆浸透膜装置
24 電気再生式イオン交換装置
31 第一の逆浸透膜装置
32 アルカリ添加手段
33 第二の逆浸透膜装置
34,34A~34D 電気再生式イオン交換装置
41 給水管
41A~41D 分岐菅
42 合流管
42A~42D 流出管
43,43A~43D 比抵抗計
44A~44D 採水チューブ
51 純水製造装置(純水製造システム)
52 原水槽
53 第一の給水ポンプ
54 第一の逆浸透膜
55 透過水タンク
56 アルカリ添加手段
57 第二の給水ポンプ
58 第二の逆浸透膜
59 電気再生式イオン交換装置(CEDI)
60 処理水槽
W 原水
W1 前処理水
W2 一次純水(純水)
W3 超純水
W4 被処理水
W5 調整水
W6 第二の逆浸透膜装置の透過水
W7 電気再生式イオン交換装置の処理水