(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】ゴム組成物、塗料および接着剤
(51)【国際特許分類】
C08L 9/00 20060101AFI20250226BHJP
C08K 5/098 20060101ALI20250226BHJP
C08K 5/56 20060101ALI20250226BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20250226BHJP
C09D 109/00 20060101ALI20250226BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20250226BHJP
C09J 109/00 20060101ALI20250226BHJP
【FI】
C08L9/00
C08K5/098
C08K5/56
C09D7/63
C09D109/00
C09J11/06
C09J109/00
(21)【出願番号】P 2024520030
(86)(22)【出願日】2023-05-18
(86)【国際出願番号】 JP2023018520
(87)【国際公開番号】W WO2024014114
(87)【国際公開日】2024-01-18
【審査請求日】2024-04-02
(31)【優先権主張番号】P 2022111665
(32)【優先日】2022-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】中野 宏明
(72)【発明者】
【氏名】宇治川 麻里
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-158008(JP,A)
【文献】国際公開第2014/084350(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/065931(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/123869(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/078997(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
C09D107/00-121/02
C09J107/00-121/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴムと、金属石鹸とを含有するゴム組成物であって、
前記金属石鹸が、炭素原子数1~22の脂肪酸の脂肪酸金属塩と窒素原子含有配位子化合物との金属錯体であり、
前記脂肪酸金属塩の金属が、コバルト、マンガン、鉄、ビスマス、ジルコニウム、バリウム、カルシウム、ストロンチウム、ニッケル、銅、亜鉛、レアアース又はバナジウムであるゴム組成物。
【請求項2】
前記脂肪酸金属塩の金属が、マンガン、鉄、ビスマス、ジルコニウム、バリウム、カルシウム、ストロンチウム、銅、亜鉛、レアアース又はバナジウムである請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記窒素原子含有配位子化合物が、下記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(2)で表される化合物、下記一般式(3)で表される化合物、および下記一般式(4)で表される化合物からなる群から選択される1種以上である請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【化1】
(前記一般式(1)、(2)、(3)および(4)において、
R
11は、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基であり、
R
12は、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基であり、
X
11は、炭素原子数1~6のアルキレン基であり、
X
12は、炭素原子数1~6のアルキレン基であり、
Yは、エーテル結合又は-N(R
13)-で表される連結基(R
13は水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基である)であり、
R
21は、水酸基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホ基、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭化水素基、置換基を有してもよい炭化水素オキシ基又は置換基を有してもよい炭化水素オキシカルボニル基であり、
pは、0~6の範囲の整数であり、
R
22は水素原子又は脂肪族炭化水素基であり、
X
21は、水素原子、-R
21で表される基又は-COO
R
22
で表される基であり
、
R
31は、水酸基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホ基、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭化水素基、置換基を有してもよい炭化水素オキシ基又は置換基を有してもよい炭化水素オキシカルボニル基であり、
R
32は、水素原子又は脂肪族炭化水素基であり、
qは、0~6の範囲の整数であり、
R
41は、水酸基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホ基、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭化水素基、置換基を有してもよい炭化水素オキシ基又は置換基を有してもよい炭化水素オキシカルボニル基であり、
rは、0~6の範囲の整数である。)
【請求項4】
前記炭素原子数1~22の脂肪酸が、オクチル酸、イソノナン酸、ネオデカン酸およびナフテン酸から選択される1種以上である請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記ジエン系ゴムが、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、スチレン-イソプレン共重合体ゴム、ブタジエン-イソプレン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体ゴムから選択される1種以上である請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記ジエン系ゴム100質量部に対して、前記金属石鹸を0.01~10質量部の範囲で含有する請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のゴム組成物と、顔料とを含有する塗料。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のゴム組成物である接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物、塗料および接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの製造過程において、タイヤ本体に取り付けられる前の未加硫状態のトレッドは、その仕様等が表面にマーキングされている。作業者はそのマーキングを確認して、当該未加硫状態のトレッドをタイヤ本体に巻き付け、成形金型に入れた後、加熱して加硫反応によりトレッドをタイヤ本体と一体化してタイヤを製造する。
【0003】
上記マーキングには、例えばラテックスに顔料を添加した塗料が使用される。ラテックスはゴムが水又は水溶液に微粒子状に分散したエマルジョンであって、当該ラテックスを含有する塗料は、得られる塗膜がゴムの伸縮に追従できる柔軟性を備えた塗料である(特許文献1)。また、上記ラテックスはその柔軟性から接着剤としても使用される(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-231713号公報
【文献】特開2022-12608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ラテックスを含有する塗料および接着剤はいずれも乾燥性が十分ではないという問題がある。例えば上記タイヤの製造過程のマーキングに利用される塗料の場合、製造過程におけるタイヤ同士の接触によってマーキングが色移りしてしまう問題があった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、乾燥性に優れる塗料および接着剤が製造可能なゴム組成物を提供することである。
本発明が解決しようとする課題は、乾燥性に優れる塗料および接着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、特定の金属石鹸を添加することでゴム組成物の乾燥性能が向上ずることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、ジエン系ゴムと、金属石鹸とを含有するゴム組成物であって、前記金属石鹸が、炭素原子数1~22の脂肪酸の脂肪酸金属塩、炭素原子数1~22の脂肪酸の脂肪酸金属塩と窒素原子含有配位子化合物との金属錯体、およびアルミニウムキレート化合物からなる群から選択される1以上であり、前記脂肪酸金属塩の金属が、コバルト、マンガン、鉄、ビスマス、ジルコニウム、バリウム、カルシウム、ストロンチウム、ニッケル、銅、亜鉛、レアアース又はバナジウムであるゴム組成物に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、乾燥性に優れる塗料および接着剤が製造可能なゴム組成物が提供できる。
本発明により、乾燥性に優れる塗料および接着剤が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を損なわない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。
【0011】
[ゴム組成物]
本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴムと、金属石鹸とを含有し、当該金属石鹸を含有することで乾燥性を高めることができる。
以下、各成分について説明する。
【0012】
(金属石鹸)
本発明のゴム組成物が含有する金属石鹸は、炭素原子数1~22の脂肪酸の脂肪酸金属塩、炭素原子数1~22の脂肪酸の脂肪酸金属塩と窒素原子含有配位子化合物との金属錯体、およびアルミニウムキレート化合物からなる群から選択される1以上である。
【0013】
(脂肪酸金属塩)
炭素原子数1~22の脂肪酸の脂肪酸金属塩において、当該脂肪酸金属塩の金属は、コバルト、マンガン、鉄、ビスマス、ジルコニウム、バリウム、カルシウム、ストロンチウム、ニッケル、銅、亜鉛、レアアース又はバナジウムであり、毒性等の懸念が無い観点から、好ましくはマンガン、鉄、ビスマス、ジルコニウム、バリウム、カルシウム、ストロンチウム、銅、亜鉛、レアアース又はバナジウムである。
【0014】
尚、本発明においてレアアースとは、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)及びルテチウム(Lu)から選択される1種以上を意味する。
【0015】
金属石鹸である脂肪酸金属塩は、好ましくは下記一般式(A)で表される金属塩である。
【0016】
【化1】
(前記一般式(A)中、
R
1は、水素原子または炭素原子数1~21のアルキル基であり、
nは、1~4の範囲の整数であり、
Mは、マンガン、鉄、ビスマス、ジルコニウム、バリウム、カルシウム、ストロンチウム、銅、亜鉛、レアアース又はバナジウムである。)
【0017】
前記一般式(A)において、nが2以上の整数である場合、複数のR1は互いに同じでもよく、異なってもよい。
【0018】
R1の炭素原子数1~21のアルキル基は、直鎖のアルキル基でもよく、分岐のアルキル基でもよく、脂環構造を含んでもよい。
【0019】
R1の炭素原子数1~21のアルキル基は、脂肪酸金属塩の製造に用いるR1COOHで表される炭素原子数1~22のカルボン酸からカルボキシル基(COOH)を除いたカルボン酸残基に対応する。当該カルボン酸残基としては、酢酸残基、プロピオン酸残基、ブタン酸残基、ペンタン酸残基、アクリル酸残基、メタクリル酸残基、オクチル酸残基(2-エチルヘキサン酸残基)、ネオデカン酸残基、ナフテン酸残基、イソノナン酸残基、桐油酸残基、トール油脂肪酸残基、ヤシ油脂肪酸残基、大豆油脂肪酸残基、アマニ油脂肪酸残基、サフラワー油脂肪酸残基、脱水ヒマシ油脂肪酸残基、キリ油脂肪酸残基、ラウリン酸残基、ミリスチン酸残基、パルミチン酸残基、ステアリン酸残基、イソステアリン酸残基、オレイン酸残基等が挙げられる。
【0020】
R1の炭素原子数1~21のアルキル基は、好ましくは炭素原子数1~15のアルキル基であり、より好ましくは炭素原子数1~11のアルキル基であり、さらに好ましくは酢酸残基、プロピオン酸残基、ブタン酸残基、ペンタン酸残基、2-エチルヘキサン酸残基、イソノナン酸残基、ネオデカン酸残基又はナフテン酸残基である。
【0021】
nはMの金属原子のイオン価数に対応する数値である。例えばMがコバルトであれば、nは2となる。
【0022】
金属石鹸として脂肪酸金属塩を使用する場合、使用する脂肪酸金属塩は1種単独でもよく、互いに構造が異なる2種以上の脂肪酸金属塩を使用してもよい。
【0023】
金属石鹸である脂肪酸金属塩は公知の方法で製造することができ、市販品を用いてもよい。
金属石鹸である脂肪酸金属塩の市販品としては、例えばOCTOATEシリーズがある(DIC株式会社製)。
【0024】
(金属錯体)
金属石鹸である炭素原子数1~22の脂肪酸の脂肪酸金属塩と窒素原子含有配位子化合物との金属錯体は、上述の脂肪酸金属塩に窒素原子含有配位子化合物が配位した化合物である。
脂肪酸金属塩に窒素原子含有配位子化合物をさらに配位させることで、金属石鹸の安定性を向上させ、ゴム組成物調製時における塊の発生など抑制することができる。
【0025】
上記窒素原子含有配位子化合物は、好ましくは下記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(2)で表される化合物、下記一般式(3)で表される化合物、および下記一般式(4)で表される化合物からなる群から選択される1種以上である。
【化2】
(前記一般式(1)、(2)、(3)および(4)において、
R
11は、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基であり、
R
12は、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基であり、
X
11は、炭素原子数1~6のアルキレン基であり、
X
12は、炭素原子数1~6のアルキレン基であり、
Yは、エーテル結合又は-N(R
13)-で表される連結基(R
13は水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基である)であり、
R
21は、水酸基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホ基、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭化水素基、置換基を有してもよい炭化水素オキシ基又は置換基を有してもよい炭化水素オキシカルボニル基であり、
pは、0~6の範囲の整数であり、
R
22は水素原子又は脂肪族炭化水素基であり、
X
21は、水素原子、-R
21で表される基又は-COOR
21で表される基であり。、
R
31は、水酸基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホ基、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭化水素基、置換基を有してもよい炭化水素オキシ基又は置換基を有してもよい炭化水素オキシカルボニル基であり、
R
32は、水素原子又は脂肪族炭化水素基であり、
qは、0~6の範囲の整数であり、
R
41は、水酸基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホ基、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭化水素基、置換基を有してもよい炭化水素オキシ基又は置換基を有してもよい炭化水素オキシカルボニル基であり、
rは、0~6の範囲の整数である。)
【0026】
R11、R12およびR13の炭素原子数1~6のアルキル基は、直鎖のアルキル基でもよく、分岐のアルキル基でもよく、脂環構造を含んでもよい。
【0027】
X11およびX12の炭素原子数1~6のアルキレン基は、好ましくは炭素原子数2~3のアルキレン基である。
【0028】
R21、R31およびR41のハロゲン原子は、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である。
【0029】
R21、R31およびR41の炭化水素基、炭化水素オキシ基および炭化水素オキシカルボニル基の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、脂環構造含有炭化水素基、芳香環含有炭化水素基のいずれでもよい。また、前記脂肪族炭化水素基は直鎖型でも分岐構造を有してもよく、構造中に不飽和基を有するものであってもよい。
【0030】
R21、R31およびR41の炭化水素基、炭化水素オキシ基および炭化水素オキシカルボニル基が置換基を有する場合の当該置換基としては、水酸基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホ基、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基等が挙げられる。
【0031】
前記一般式(2)、(3)および(4)における脂肪族炭化水素基は、例えば炭素原子数1~6のアルキル基である。
【0032】
窒素原子含有配位子化合物の具体例としては、ピコリン酸、N-メチルモルフォリン、ピリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、4-ジメチルアミノアミン(DMAP)、ジシアンジアミド(DICY)、トリ-n-ブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、ブチルアミン、1,2-プロパンジアミン、1,2-シクロヘキサンジアミン、オクチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2-[[(2-ジメチルアミノ)エチル]メチルアミノ]エタノール、2,2’-[プロパン-1,2-ジイルビス(アザニリリデンメタニリリデン)]ジフェノール、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、1,4-ジエチルイミダゾール、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(N-フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、8-キノリノール、5-クロロ-8-キノリノール、2,2’-ビピリジル及びその誘導体、2,2’-[プロパン-1,2-ジイルビス(アザニリリデンメタニリリデン)]ジフェノール及びその誘導体、2,2’-メチレンビス〔6-(2h-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール〕等が挙げられる。
これら窒素原子含有配位子化合物は1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
上記窒素原子含有配位子化合物は、好ましくはピコリン酸、2-[[(2-ジメチルアミノ)エチル]メチルアミノ]エタノール、1,2-プロパンジアミン、1,2-シクロヘキサンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、1,4-ジエチルイミダゾール、8-キノリノール、5-クロロ-8-キノリノール、2,2’-ビピリジルおよびその誘導体、並びに2,2’-[プロパン-1,2-ジイルビス(アザニリリデンメタニリリデン)]ジフェノールおよびその誘導体から選択される1種以上である。
【0034】
窒素原子含有配位子化合物の量は、脂肪酸金属塩の金属原子1モルに対し、例えば0.1~20モルの範囲であり、好ましくは0.2~15モルの範囲であり、より好ましくは0.5~12モルの範囲であり、さらに好ましくは0.5~10モルの範囲である。
【0035】
窒素原子含有配位子化合物は、公知の方法で製造することができ、市販品を用いてもよい。アミン配位子金属錯体化合物の市販品としては、例えばDICNATEシリーズ(DIC株式会社製)がある。
【0036】
(アルミニウムキレート化合物)
金属石鹸であるアルミニウムキレート化合物は、好ましくは下記一般式(5-1)で表される化合物および下記一般式(5-2)で表される化合物から選択される1種以上である。
【0037】
【化3】
(前記一般式(5-1)および(5-2)中、
R
511~R
516およびはR
521~R
526は、それぞれ独立に、炭素原子数1~22のアルキル基又は炭素原子数1~22のアルコキシ基である。)
【0038】
R511~R516およびはR521~R526の炭素原子数1~22のアルキル基および炭素原子数1~22のアルコキシ基のアルキレン基部分は、直鎖でもよく、分岐でもよく、脂環構造を含んでもよい。R511~R516およびはR521~R526のアルキル基およびアルコキシ基のアルキレン基部分の炭素原子数は、好ましくは1~9である。
【0039】
R511~R516およびはR521~R526の炭素原子数1~22のアルキル基は、好ましくはメチル基又はエチル基である。
【0040】
R511~R516およびはR521~R526の炭素原子数1~22のアルコキシ基は、好ましくはメトキシ基、エトキシ基又はオレイルオキシ基である。
【0041】
アルミニウムキレート化合物の具体例としては、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビスオレイルアセトアセテート、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。
【0042】
金属石鹸としてアルミニウムキレート化合物を使用する場合、使用するアルミニウムキレート化合物は1種単独でもよく、互いに構造が異なる2種以上のアルミニウムキレート化合物を使用してもよい。
【0043】
金属石鹸であるアルミニウムキレート化合物は公知の方法で製造することができ、市販品を用いてもよい。当該市販品としては、例えばDICNATE AL-500(DIC株式会社製)が挙げられる。
【0044】
本発明のゴム組成物に含まれる金属石鹸は、メインの金属石鹸(メインドライヤー)と補助の金属石鹸(補助ドライヤー)の2つに分けることができる。
金属石鹸として2種以上を用いる場合、好ましくはメインドライヤーをマンガン石鹸および/又は鉄石鹸とし、補助ドライヤーをマンガン石鹸および鉄石鹸以外の金属石鹸とする。
【0045】
補助ドライヤー用いる場合、補助ドライヤーの量は、メインドライヤー100質量部に対して、例えば100~2,000質量部である。
また、補助ドライヤーの量は、メインドライヤーの金属原子1モルに対し、例えば1~60モルの範囲であり、好ましくは5~50モルの範囲である。
【0046】
本発明のゴム組成物における金属石鹸の含有割合は、ジエン系ゴム100質量部に対して例えば0.01~15質量部であり、好ましくは0.01~10質量部であり、より好ましくは0.05~5質量部であり、さらに好ましくは0.05質量部以上1質量部未満である。
【0047】
本発明のゴム組成物に含まれる金属石鹸は、1種単独でもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
(ジエン系ゴム)
ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレン-イソプレン共重合体ゴム、ブタジエン-イソプレン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体ゴム、またはこれらの末端や主鎖の一部を変性した変性ゴムなどが挙げられる。
【0049】
本発明のゴム組成物に含まれるジエン系ゴムは、1種単独でもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
ジエン系ゴムは、公知の方法で製造することができ、市販品を用いてもよい。
ジエン系ゴムの市販品としてはHPR350(JSR株式会社製)などが挙げられる。
【0051】
[塗料]
本発明のゴム組成物はさらに顔料を含むことで塗料とすることができ、例えばゴム材料のマーキングに使用するゴム用塗料として好適に用いることができる。
上記ゴム材料は未加硫ゴムおよび加硫ゴムのいずれでもよく、本発明のゴム用塗料の塗膜はゴム材料の伸縮追随することができ、乾燥性に優れるため塗料移り(色移り)が生じることを防ぐこともできる。
【0052】
本発明の塗料に含まれる顔料は有機顔料および無機顔料のいずれでもよい。
【0053】
有機顔料としては、例えば「有機顔料ハンドブック(著者:橋本勲、発行所:カラーオフィス、2006年初版)」に掲載される印刷インキ用有機顔料等が挙げられ、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、金属フタロシアニン顔料、無金属フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、アンスラキノン系顔料、キノフタロン顔料、金属錯体顔料、ジケトピロロピロール顔料、カーボンブラック顔料、その他多環式顔料等が使用可能である。
【0054】
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、グラファイト、亜鉛華、硫酸バリウム等の無機着色顔料の他、炭酸石灰粉、沈降性炭酸カルシウム、石膏、クレー(ChinaClay)、シリカ粉、珪藻土、タルク、カオリン、アルミナホワイト、硫酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、炭酸マグネシウム、バライト粉、砥の粉等の無機体質顔料や、シリコーン、ガラスビーズなどがあげられる。
【0055】
本発明の塗料をゴム用塗料に用いる場合、顔料は好ましくは酸化チタン、亜鉛華、硫酸バリウムなどの無機着色顔料である。
【0056】
使用する顔料は1種単独でもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
本発明の塗料における顔料の含有割合は、例えばジエン系ゴム100質量部に対して50~900質量部の範囲であり、好ましくは100~500質量部の範囲であり、より好ましくは100~300質量部の範囲である。
【0058】
本発明の塗料は、通常、ジエン系ゴム、金属石鹸および顔料が希釈剤で希釈した状態で用いるられる。
上記希釈剤は公知のものが使用でき、例えば、トルエン、キシレン、ヘプタン、ヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘプタン、ミネラルスピリット等の炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、シクロヘキサノール、1-メトキシ-2-プロパノール、プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、2-メチル-1,3-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;プロピルエーテル、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキソラン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;カプロン酸メチルエステル、カプリン酸メチルエステル、ラウリン酸メチルエステル等の脂肪酸エステル;大豆油、亜麻仁油、菜種油、サフラワー油等の植物油脂等が挙げられる。
【0059】
使用する希釈剤は1種単独でもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の塗料をゴム用塗料として用いる場合、希釈剤は炭化水素系溶媒とエーテル系溶媒の混合溶媒であると好ましい。
【0060】
本発明の塗料をゴム用塗料に用いる場合、希釈後のジエン系ゴムの含有割合が1~5質量%の範囲、希釈後の顔料の含有割合が3~10質量%の範囲となるように、希釈剤の量を調整すると好ましい。
【0061】
本発明の塗料をゴム用塗料に用いる場合、当該ゴム用塗料はさらに粘着付与剤、表面調整剤(界面活性剤)などの添加剤をさらに含有してもよい。
粘着付与剤としては、石油樹脂、水添石油樹脂、ロジンエステル、水添ロジンエステル等が挙げられ、表面調整剤としてはシリコーンオイル等が挙げられる。
【0062】
本発明のゴム用塗料は、ジエン系ゴム、金属石鹸、顔料、任意の希釈剤、任意の粘着付与剤および任意の表面調整剤をを含有すればよく、これら成分から実質的になってもよい。ここで「実質的になる」とは、本発明のゴム用塗料の金属石鹸、顔料、任意の希釈剤、任意の粘着付与剤および任意の表面調整剤の合計割合が例えば80質量%以上、90質量%以上又は95質量%以上であることを意味する。
ジエン系ゴム、金属石鹸、顔料、任意の希釈剤、任意の粘着付与剤および任意の表面調整剤の合計質量の上限は特に限定されないが例えば100質量%である。
本発明のゴム用塗料は、本発明の効果を損なわない範囲でその他の成分を含有してもよい
【0063】
[接着剤]
本発明のゴム組成物は、接着剤(以下、本発明のゴム組成物の接着剤を「本発明の接着剤」という場合がある)としても好適に用いることができる。
【0064】
本発明の接着剤において、ジエン系ゴムの含有量の上限は、例えば接着剤の固形分の90質量%以下であり、好ましくは80質量%以下である。また、ジエン系ゴムの含有量の下限は、例えば接着剤の固形分の20質量%以上であり、好ましくは30質量%以上である。
ジエン系ゴムの固形分濃度は、JIS K6387-2に記載の方法に準拠して求められる。
【0065】
本発明の接着剤は加硫促進剤を含有してもよい。当該加硫促進剤としてはスルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤、モルホリン系加硫促進剤、アルデヒド-アミン系加硫促進剤、アルデヒド-アンモニア系加硫促進剤、イミダゾリン系加硫促進剤、キサンテート系加硫促進剤等が挙げられる。
【0066】
本発明の接着剤が加硫促進剤を含有する場合、当該加硫促進剤の含有量は、例えば接着剤の固形分の0.01~5.0質量%の範囲である。
【0067】
本発明の接着剤は無機充填剤を含有してもよい。当該無機充填剤としては、シリカ、カーボンブラック、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、タルク、マイカ、ケイソウ土、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ビスマス、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、アルミナ等が挙げられる。
【0068】
本発明の接着剤が無機充填剤を含有する場合、当該無機充填剤の含有量は、例えば接着剤の固形分の0.1~40質量%の範囲である。
【0069】
本発明の接着剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、増粘剤、粘着性付与剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、軟化剤、加工助剤、着色剤等の各種添加剤を含有してもよい。
【実施例】
【0070】
以下、実施例と比較例とにより、本発明を具体的に説明する。
尚、本発明は下記実施例に限定されない。
【0071】
(実施例1-15および比較例1-4:ゴム組成物の調製と評価)
市販のラテックス液(天然ゴム98質量%水分散体)に蒸留水を加えて、天然ゴム60質量%ラテックス液を調製した。調製したラテックス液に表1に示す金属石鹸を添加してゴム組成物を調製した。
調製したゴム組成物について、乾燥性能を下記方法で評価した。結果を表1および2に示す。また、実施例で使用した金属石鹸を表3に示す。
【0072】
(乾燥性能試験)
調製したゴム組成物をガラス基板上にWet膜厚152μmの塗膜を塗工した。ゴム組成物を塗工したガラス基板を温度30℃×湿度60%の保管庫に保存し、塗膜を指先で触って乾燥状態を確認した。指先に評価用塗料がつかなくなった時間を乾燥時間として評価した。この試験は合計3回行った。
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
尚、マンガン石鹸2、マンガン石鹸3、マンガン石鹸4を用いた際は、ゴム組成物の調製直後であっても組成物中に塊が生じず、スムーズな塗工が可能であった。
【0077】
表1および表2の結果から、ラテックス液に金属石鹸を加えることでより早い乾燥性能が得られることが分かる。