(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-26
(45)【発行日】2025-03-06
(54)【発明の名称】情報処理システム、目状態測定システム、情報処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 3/113 20060101AFI20250227BHJP
A61B 3/11 20060101ALI20250227BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20250227BHJP
A61B 5/16 20060101ALN20250227BHJP
【FI】
A61B3/113
A61B3/11
A61B5/11
A61B5/16 120
(21)【出願番号】P 2022556425
(86)(22)【出願日】2021-08-11
(86)【国際出願番号】 JP2021029657
(87)【国際公開番号】W WO2022085276
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-04-11
(31)【優先権主張番号】P 2020176066
(32)【優先日】2020-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】谷内田 尚司
(72)【発明者】
【氏名】井上 満晶
(72)【発明者】
【氏名】末石 智大
【審査官】渡戸 正義
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-088647(JP,A)
【文献】国際公開第2020/188629(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0121105(US,A1)
【文献】特開2016-220801(JP,A)
【文献】特開2018-103745(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0232507(US,A1)
【文献】特開平10-040386(JP,A)
【文献】特開2005-323905(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0326773(US,A1)
【文献】国際公開第2012/001755(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 - 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1撮像手段から、被験者の頭部を第1画角で撮像した第1画像にかかる画像データを取得する第1取得手段と、
第2撮像手段から、前記被験者の目領域を前記第1画角よりも狭い第2画角で撮像した第2画像にかかる画像データを取得する第2取得手段と、
前記第1画像に基づいて取得される前記被験者の前記頭部の位置情報に基づいて、前記第2撮像手段の視野範囲を移動させる移動制御手段と、
前記第2画像の時系列データに基づいて前記被験者の目の状態変化を評価する状態評価手段と
を備え、
前記第1取得手段は、前記第2取得手段が前記第2画像にかかる画像データを取得するフレームレート以上のフレームレートで前記第1画像にかかる画像データを取得し、
前記第1取得手段のフレームレートは、
480[fps]以上
1000[fps]以下であり、
前記第2取得手段のフレームレートは、120[fps]以上1000[fps]以下である、情報処理システム。
【請求項2】
前記移動制御手段は、前記第1画像の時系列データに基づいて前記被験者の前記頭部の位置の変化情報を生成し、前記変化情報に基づいて前記第2撮像手段の視野範囲を移動させる
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記第2画像中の前記被験者の瞳孔の重心の位置と、目尻および目頭の少なくとも一方の位置とをそれぞれ推定する要素位置推定手段を有し、
前記状態評価手段は、前記目尻および前記目頭の少なくとも一方の位置情報と前記瞳孔の重心の位置情報とに基づいて、前記被験者の瞳孔の振動状態を評価する
請求項1または2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記状態評価手段は、前記目尻の位置および前記目頭の位置を結ぶ直線に対する前記瞳孔の重心の相対位置を算出し、前記相対位置に基づいて前記被験者の瞳孔の振動状態を評価する
請求項3に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記状態評価手段は、前記第2画像の時系列データに基づいて前記被験者の瞳孔の収縮量を評価する
請求項1または2に記載の情報処理システム。
【請求項6】
被験者の頭部を第1画角で撮像する第1撮像手段と、
前記被験者の目領域を前記第1画角よりも狭い第2画角で撮像する第2撮像手段と、
情報処理装置と
を備える目状態測定システムであって、
前記情報処理装置は、
前記第1撮像手段から第1画像にかかる画像データを取得する第1取得手段と、
前記第2撮像手段から第2画像にかかる画像データを取得する第2取得手段と、
前記第1画像に基づいて取得される前記被験者の前記頭部の位置情報に基づいて、前記第2撮像手段の視野範囲を移動させる移動制御手段と、
前記第2画像の時系列データに基づいて前記被験者の目の状態変化を評価する状態評価手段と
を有し、
前記第1撮像手段は、前記第2撮像手段のフレームレート以上のフレームレートで被写体を撮像し、
前記第1撮像手段のフレームレートは、
480[fps]以上
1000[fps]以下であり、
前記第2撮像手段のフレームレートは、120[fps]以上1000[fps]以下である、目状態測定システム。
【請求項7】
前記第2撮像手段の光軸を移動させる可動ミラーと、
前記可動ミラーを回転させる駆動手段と
をさらに備え、
前記移動制御手段は、前記第1画像の時系列データに基づいて前記被験者の前記頭部の位置の変化情報を生成し、前記変化情報に基づいて前記可動ミラーの回転量を算出する
請求項6に記載の目状態測定システム。
【請求項8】
前記可動ミラーは、前記第1撮像手段および前記第2撮像手段の光軸を移動させる
請求項7に記載の目状態測定システム。
【請求項9】
第1撮像手段から、被験者の頭部を第1画角で撮像した第1画像にかかる画像データを取得し、
第2撮像手段から、前記被験者の目領域を前記第1画角よりも狭い第2画角で撮像した第2画像にかかる画像データを取得し、
前記第1画像に基づいて取得される前記被験者の前記頭部の位置情報に基づいて、前記第2撮像手段の視野範囲を移動させ、
前記第2画像の時系列データに基づいて前記被験者の目の状態変化を評価する情報処理方法であって、
前記第1撮像手段は、前記第2撮像手段のフレームレート以上のフレームレートで被写体を撮像し、
前記第1撮像手段のフレームレートは、
480[fps]以上
1000[fps]以下であり、
前記第2撮像手段のフレームレートは、120[fps]以上1000[fps]以下である、情報処理方法。
【請求項10】
第1撮像手段から、被験者の頭部を第1画角で撮像した第1画像にかかる画像データを取得する第1取得処理と、
第2撮像手段から、前記被験者の目領域を前記第1画角よりも狭い第2画角で撮像した第2画像にかかる画像データを取得する第2取得処理と、
前記第1画像に基づいて取得される前記被験者の前記頭部の位置情報に基づいて、前記第2撮像手段の視野範囲を移動させる移動制御処理と、
前記第2画像の時系列データに基づいて前記被験者の目の状態変化を評価する状態評価処理と
をコンピュータに実行させる、プログラムであって、
前記第1撮像手段は、前記第2撮像手段のフレームレート以上のフレームレートで被写体を撮像し、
前記第1撮像手段のフレームレートは、
480[fps]以上
1000[fps]以下であり、
前記第2撮像手段のフレームレートは、120[fps]以上1000[fps]以下である、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理システム、目状態測定システム、情報処理方法およびプログラムに関し、特に被験者の目の状態変化を評価する情報処理システム、目状態測定システム、情報処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
被験者の目の撮像画像に基づいて被験者の目の状態変化を評価する技術が提案されている。例えば特許文献1では、運転者の顔の撮像画像に基づいて検出した瞳孔位置の変化から、瞳孔運動を算出する方法が開示されている。しかし上述の特許文献1に記載の方法では、頭部が移動してカメラの視野範囲から眼球が外れてしまった場合には、瞳孔位置を検出できない。したがって被験者は、カメラの視野範囲から眼球が外れないように頭部を固定する必要がある。
【0003】
また特許文献2では、基準画像の白目領域の血管像の位置を示す基準位置と、検出用画像の白目領域の血管像の位置との間の差に基づいて眼球の移動量を検出する方法が開示されている。この方法では、目頭および目尻の位置を含む3点位置からAffine変換により検出用画像の眼球画像を基準画像の位置に戻すので、映像ブレを防止することができる。しかしこの方法においても、被験者は、カメラの視野範囲から眼球が外れないように頭部をある程度固定することが求められる。
【0004】
一方、画角の異なるカメラを用いて、指定された領域を拡大して撮影する方法が知られている。特許文献3には、広角の第1カメラで撮影した画像において指定されたターゲット領域を、狭角の第2カメラで撮影する情報処理システムが開示されている。しかし上述の特許文献3には、第2カメラは、人の顔などを撮影するにとどまり、微小領域である目領域を撮影することについては開示されていない。また上述の特許文献3には、微小な目の状態変化を測定し、評価するための技術についても開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-195377号公報
【文献】国際公開第2016/195066号
【文献】国際公開第2012/001755号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の目的は、上述した課題に鑑み、頭部を固定せずリラックスした状態で、好適に被験者の目の状態変化を評価する情報処理システム、目状態測定システム、情報処理方法および非一時的なコンピュータ可読媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様にかかる情報処理システムは、第1取得手段と、第2取得手段と、移動制御手段と、状態評価手段とを備える。前記第1取得手段は、第1撮像手段から、被験者の頭部を第1画角で撮像した第1画像にかかる画像データを取得する。前記第2取得手段は、第2撮像手段から、前記被験者の目領域を前記第1画角よりも狭い第2画角で撮像した第2画像にかかる画像データを取得する。前記移動制御手段は、前記第1画像に基づいて取得される前記被験者の前記頭部の位置情報に基づいて、前記第2撮像手段の視野範囲を移動させる。前記状態評価手段は、前記第2画像の時系列データに基づいて前記被験者の目の状態変化を評価する。
【0008】
本開示の一態様にかかる目状態測定システムは、第1撮像手段と、第2撮像手段と、情報処理装置とを備える。前記第1撮像手段は、被験者の頭部を第1画角で撮像する。前記第2撮像手段は、前記被験者の目領域を前記第1画角よりも狭い第2画角で撮像する。前記情報処理装置は、第1取得手段と、第2取得手段と、移動制御手段と、状態評価手段とを有する。前記第1取得手段は、第1撮像手段から、被験者の頭部を第1画角で撮像した第1画像にかかる画像データを取得する。前記第2取得手段は、第2撮像手段から、前記被験者の目領域を前記第1画角よりも狭い第2画角で撮像した第2画像にかかる画像データを取得する。前記移動制御手段は、前記第1画像に基づいて取得される前記被験者の前記頭部の位置情報に基づいて、前記第2撮像手段の視野範囲を移動させる。前記状態評価手段は、前記第2画像の時系列データに基づいて前記被験者の目の状態変化を評価する。
【0009】
本開示の一態様にかかる情報処理方法は、第1撮像手段から、被験者の頭部を第1画角で撮像した第1画像にかかる画像データを取得し、第2撮像手段から、前記被験者の目領域を前記第1画角よりも狭い第2画角で撮像した第2画像にかかる画像データを取得し、前記第1画像に基づいて取得される前記被験者の前記頭部の位置情報に基づいて、前記第2撮像手段の視野範囲を移動させ、前記第2画像の時系列データに基づいて前記被験者の目の状態変化を評価する。
【0010】
本開示の一態様にかかるプログラムは、第1取得処理と、第2取得処理と、移動制御処理と、状態評価処理とをコンピュータに実行させる。前記第1取得処理は、第1撮像手段から、被験者の頭部を第1画角で撮像した第1画像にかかる画像データを取得する処理である。前記第2取得処理は、第2撮像手段から、前記被験者の目領域を前記第1画角よりも狭い第2画角で撮像した第2画像にかかる画像データを取得する処理である。前記移動制御処理は、前記第1画像に基づいて取得される前記被験者の前記頭部の位置情報に基づいて、前記第2撮像手段の視野範囲を移動させる処理である。前記状態評価処理は、前記第2画像の時系列データに基づいて前記被験者の目の状態変化を評価する処理である。
【発明の効果】
【0011】
本開示により、頭部を固定せずリラックスした状態で、好適に被験者の目の状態変化を評価する情報処理システム、目状態測定システム、情報処理方法およびプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態1にかかる情報処理システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図2】実施形態1にかかる情報処理システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】実施形態2にかかる情報処理システムが適用されることができる目状態測定システムのシステム構成図である。
【
図4】実施形態2にかかる情報処理装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図5】実施形態2にかかる移動制御部による移動制御処理を説明するための図である。
【
図6】実施形態2にかかる移動制御部による焦点位置制御処理を説明するための図である。
【
図7】実施形態2にかかる状態評価部による状態評価処理を説明するための図である。
【
図8】実施形態2にかかる情報処理装置の情報処理の手順を示すフローチャートである。
【
図9】実施形態3にかかる目状態測定システムのシステム構成図である。
【
図10】実施形態4にかかる目状態測定システムのシステム構成図である。
【
図11】実施形態4にかかる情報処理装置の機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態を通じて本開示を説明するが、請求の範囲にかかる発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。説明の明確化のため、以下の記載および図面は、適宜、省略、および簡略化がなされている。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されている。
【0014】
<実施形態1>
まず
図1~2を用いて、本開示の実施形態1について説明する。
図1は、実施形態1にかかる情報処理システム10の機能構成を示すブロック図である。情報処理システム10は、被験者の目の状態変化を評価するコンピュータ装置である。情報処理システム10は、第1取得部11と、第2取得部12と、移動制御部13と、状態評価部15とを備える。
【0015】
第1取得部11は、第1取得手段とも呼ばれる。第1取得部11は、第1撮像部30に通信可能に接続され、第1撮像部30から、被験者の頭部を第1画角で撮像した第1画像にかかる画像データ(第1画像データ)を取得する。ここで第1撮像部30は、被験者の頭部を第1画角で撮像するカメラである。第1撮像部30は、第1撮像手段とも呼ばれる。
【0016】
第2取得部12は、第2取得手段とも呼ばれる。第2取得部12は、第2撮像部40に通信可能に接続され、第2撮像部40から、被験者の目領域を第2画角で撮像した第2画像にかかる画像データ(第2画像データ)を取得する。ここで第2撮像部40は、被験者の目領域を第2画角で撮像するカメラである。第2撮像部40は、第2撮像手段とも呼ばれる。第2画角は、第1画角よりも狭い。また目領域は、眼球、または眼球を含む周辺領域であってよい。
【0017】
移動制御部13は、移動制御手段とも呼ばれる。移動制御部13は、第1画像に基づいて取得される被験者の頭部の位置情報に基づいて、第2撮像部40の視野範囲を移動させる。第2撮像部40の視野範囲は、第2撮像部40が撮像する範囲であり、キャプチャボリュームとも呼ばれる。視野範囲は、画角とカメラ光軸とに基づいて画定され、画角が大きいほど広い。
【0018】
状態評価部15は、状態評価手段とも呼ばれる。状態評価部15は、第2画像の時系列データに基づいて被験者の目の状態変化を評価する。
【0019】
図2は、実施形態1にかかる情報処理システム10のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0020】
情報処理システム10は、主要なハードウェア構成として、プロセッサ100と、ROM101(Read Only Memory)と、RAM102(Random Access Memory)と、インターフェース部103(IF;Interface)とを有する。プロセッサ100、ROM101、RAM102およびインターフェース部103は、データバスなどを介して相互に接続されている。
【0021】
プロセッサ100は、制御処理および演算処理等を行う演算装置としての機能を有する。プロセッサ100は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(field-programmable gate array)、DSP(digital signal processor)またはASIC(application specific integrated circuit)並びにこれらの組み合わせであってよい。ROM101は、プロセッサ100によって実行される制御プログラムおよび演算プログラム等を記憶するための機能を有する。RAM102は、処理データ等を一時的に記憶するための機能を有する。インターフェース部103は、有線または無線を介して外部と信号の入出力を行う。また、インターフェース部103は、ユーザによるデータの入力の操作を受け付け、ユーザに対して情報を表示する。例えば、インターフェース部103は、第1撮像部30および第2撮像部40と通信を行う。
【0022】
このように実施形態1の情報処理システム10によれば、広角の第1画像に基づいて取得した被験者の頭部の位置情報に基づいて狭角のカメラの視野範囲を移動させることで、目領域を拡大撮像し、目の状態変化を評価する。したがって被験者の頭部が固定されていなくても、狭角のカメラの視野範囲から目領域が外れることを回避できる。これにより、情報処理システム10は、頭部を固定せずリラックスした状態で、好適に被験者の目の状態変化を評価できる。
【0023】
<実施形態2>
図3は、実施形態2にかかる情報処理システム(以下、情報処理装置と呼ぶ)が適用されることができる目状態測定システム1aのシステム構成図である。なお本図では、被験者Pの左右方向をX軸方向とし、被験者Pの前後方向をY軸方向とし、被験者Pの上下方向をZ軸方向とする。
【0024】
ここで目状態測定システム1aは、被験者の目の状態変化を測定し、評価するコンピュータシステムである。本実施形態2では、目状態測定システム1aは、サッカード現象に由来する瞳孔の振動状態を測定し、評価する。目状態測定システム1aは、情報処理装置10aと、第1撮像部30aと、第2撮像部40と、可動ミラー50と、駆動部51と、光源61とを備える。なおY軸方向における第1撮像部30aと被験者Pとの距離は、Dである。Dは、例えば2±0.5[m]である。
【0025】
情報処理装置10aは、
図1の情報処理システム10に対応する。情報処理装置10aは、第1撮像部30a、第2撮像部40および駆動部51に接続される。情報処理装置10aは、第1撮像部30aから第1画像データを受信したことに応じて、被験者Pの目領域が第2撮像部40の視野範囲に収まるために必要な制御信号と、被験者Pの目領域で第2撮像部40を合焦させるために必要な制御信号とを生成する。そして情報処理装置10aは、X軸およびZ軸方向の視野範囲の制御信号については駆動部51に、焦点位置の制御信号については第2撮像部40に送信する。
【0026】
第1撮像部30aは、
図1の第1撮像部30と同様の機能を有するカメラである。本実施形態2では、第1撮像部30aは、広角カメラ31を有する。広角カメラ31は、被験者Pの少なくとも顔を第1画角で撮像し、第1画像データを生成する。広角カメラ31の焦点距離は、D[m]だけ離れた被験者Pの顔が撮像できるように予め設定される。例えば広角カメラ31の焦点距離は、200[mm]未満であってよく、好ましくは70[mm]未満であってよく、本実施形態2では28[mm]である。なお広角カメラ31の焦点距離は、12[mm]であってもよい。
【0027】
広角カメラ31のフレームレートは、被験者Pの頭部の揺れに伴う目領域の揺れを追跡でき、かつデータ量の過度の増大を抑制するために予め設定される。例えば広角カメラ31のフレームレートは、120[fps]以上1200[fps]以下であってよく、好ましくは240[fps]以上1000[fps]以下であってよく、さらに好ましくは480[fps]以上1000[fps]以下であってよく、本実施形態2では500[fps]である。ここで広角カメラ31は、後述する第2撮像部40のフレームレート以上のフレームレートで被写体を撮像してよい。これにより目領域の揺れに応じて第2撮像部40の視野範囲を好適に制御することが容易となる。
広角カメラ31は、第1画像データを生成したことに応じて、情報処理装置10aに第1画像データを送信する。
【0028】
第2撮像部40は、被験者の目領域を、第1画角よりも狭い第2画角で撮像し、第2画像データを生成するカメラである。後述する瞳孔検出を容易にするために、第2撮像部40は、近赤外線カメラであってよい。第2撮像部40の受光素子の検出波長を瞳孔検出用波長と呼ぶと、瞳孔検出用波長は、一例として940[nm]の波長である。また第2撮像部40は、望遠レンズと、液体レンズとを有する。液体レンズは、焦点位置(フォーカスポイント)を決定するレンズであり、情報処理装置10aによる焦点位置の制御信号に基づいて制御されてよい。第2撮像部40の焦点距離は、可動ミラー50からD[m]だけ離れた被験者Pの目領域が撮像できるように設定され、広角カメラ31の焦点距離よりも長い。例えば第2撮像部40の焦点距離は、100[mm]以上であってよく、好ましくは150[mm]以上であり、本実施形態2では200±50[mm]である。ここで第2撮像部40は、その焦点距離が長いため、被写界深度が非常に狭くなる。したがって第2撮像部40は、目領域に焦点(フォーカス)を合わせるために、その距離情報に基づき焦点位置の制御をおこなう。また第2撮像部40のフレームレートは、目の状態変化、本例ではサッカード現象、が観察でき、かつデータ量の過度の増大を抑制するために予め設定される。例えば第2撮像部40のフレームレートは、120[fps]以上1000[fps]以下であってよく、好ましくは240[fps]以上1000[fps]以下、さらに好ましくは500[fps]以上1000[fps]以下であり、本実施形態2では500[fps]である。第2撮像部40は、第2画像データを生成したことに応じて、情報処理装置10aに第2画像データを送信する。
【0029】
可動ミラー50は、第2撮像部40の光軸を移動させる一対のミラーである。可動ミラー50は、第1の可動ミラー50-1と、第2の可動ミラー50-2とを有する。以下では、第1の可動ミラー50-1と第2の可動ミラー50-2とを区別しない場合、単に可動ミラー50と呼ぶ。各可動ミラー50は、支持部(不図示)を介して駆動部51に予め定められた傾斜角度を有するように固定的に接続され、支持部が回転することによりその傾斜角度を変更できるように構成される。例えば第1の可動ミラー50-1は、接続先の支持部がZ軸周りに回転するように構成され、第2の可動ミラー50-2は、接続先の支持部がX軸周りに回転するように構成される。これにより可動ミラー50は、第2撮像部40の光軸をX軸方向およびZ軸方向に移動させ、すなわち第2撮像部40の視野範囲をX軸およびZ軸方向に移動させることができる。
【0030】
なお本実施形態1では、可動ミラー50は、質量が比較的小さく、応答性の高いガルバノミラーである。これにより目状態測定システム1aは、第2撮像部40の視野範囲を被験者Pの頭部の微小で高速な移動に連動させて目領域を撮像することが容易となる。
【0031】
駆動部51は、駆動手段とも呼ばれる。駆動部51は、支持部を介して各可動ミラー50を回転させる駆動モータである。駆動部51は、第1の可動ミラー50-1に対応する第1の駆動部51-1と、第2の可動ミラー50-2に対応する第2の駆動部51-2とを有する。なお第1の駆動部51-1および第2の駆動部51-2についても、単に駆動部51と呼ぶことがある。ここで駆動部51は、情報処理装置10aのX軸およびZ軸方向に関する視野範囲の制御信号に従って、可動ミラー50を回転させる。
【0032】
光源61は、被験者Pの顔を照射する光源である。光源61は、瞳孔検出用波長に対応する波長領域を有する光源であり、本実施形態2では940[nm]の近赤外光源である。
【0033】
つまり第2撮像部40は、被験者Pの目領域→第1の可動ミラー50-1→第2の可動ミラー50-2→第2撮像部40という経路の光が入射することで、被験者Pの目領域を撮像する。
【0034】
図4は、実施形態2にかかる情報処理装置10aの機能構成を示すブロック図である。
図4の情報処理装置10aは、
図1の情報処理装置10の構成要素に加えて、要素位置推定部14および出力部16を有する。
【0035】
第1取得部11は、第1撮像部30a(広角カメラ31)に接続され、第1撮像部30aから第1画像データを受信し、取得する。第1取得部11は、第2取得部12が第2画像データを取得するフレームレート以上のフレームレートで第1画像データを取得してよい。第1取得部11は、取得した第1画像データを移動制御部13に供給する。
【0036】
第2取得部12は、第2撮像部40に接続され、第2撮像部40から第2画像データを受信し、取得する。第2取得部12は、取得した第2画像データを要素位置推定部14に供給する。また第2取得部12は、取得した第2画像データを移動制御部13に供給してよい。
【0037】
移動制御部13は、第1画像の時系列データに基づいて、X軸およびZ軸方向における被験者Pの顔の位置の変化情報を生成する。移動制御部13は、該変化情報に基づいて第1の可動ミラー50-1および第2の可動ミラー50-2それぞれの回転量を算出する。移動制御部13は、当該回転量の算出に、変化情報に加えて第2画像データを用いてもよい。そして移動制御部13は、各回転量に基づいてX軸およびZ軸方向に関する視野範囲の制御信号を生成し、Z軸方向に関する視野範囲の制御信号を第1の駆動部51-1に、X軸方向に関する視野範囲の制御信号を第2の駆動部51-2に送信する。また移動制御部13は、第1画像および第2画像の時系列データに基づいて焦点位置制御処理を行い、Y軸方向における被験者Pの顔の位置の変化情報を生成し、焦点位置の制御信号を生成する。そして移動制御部13は、第2撮像部40に対して当該制御信号を送信することで、液体レンズを制御する。このように第2撮像部40は、顔の位置の変化情報に基づいてその視野範囲および焦点位置(フォーカスポイント)を移動させる。
【0038】
要素位置推定部14は、要素位置推定手段とも呼ばれる。要素位置推定部14は、第2画像中の目の要素の位置を推定する。本実施形態2では、要素位置推定部14が推定する目の要素の位置は、被験者Pの瞳孔の重心位置と、目尻および目頭の位置とを含む。なお目尻および目頭の位置については、いずれか一方であってもよく、これに代えて他の任意の不動点の位置であってもよい。要素位置推定部14は、目の要素の位置情報を状態評価部15に供給する。
【0039】
状態評価部15は、第2画像中の目の要素の位置の差分情報を生成し、差分情報に基づいて被験者Pの瞳孔の振動状態を評価する。瞳孔の振動状態は、瞳孔の振動量、振動方向、振動周波数および振動持続時間のうち少なくとも1つであってよい。状態評価部15は、瞳孔の振動状態に関する情報を出力部16に供給する。
【0040】
出力部16は、出力手段とも呼ばれる。出力部16は、瞳孔の振動状態に関する情報を評価結果として出力する。出力部16は、評価結果を表示する表示部(不図示)を有してよい。また出力部16は、評価結果を外部装置(不図示)に送信する送信部(不図示)を有してもよい。
【0041】
ここで
図5を用いて、移動制御処理の詳細を説明する。
図5は、実施形態2にかかる移動制御部13による移動制御処理を説明するための図である。本図には、第2画像IMG_bが示されている。第2画像IMG_bには被験者Pの目頭Ibおよび目尻Obを含む目領域が撮像されている。
【0042】
まず移動制御部13は、第1画像中の目領域の位置座標(目位置座標と呼ぶ)を算出する。本実施形態2では、目位置座標は、第1画像中の目領域を略楕円形の領域と近似した場合の目領域の重心の位置座標であるが、これに限らず、第1画像中の目領域の位置座標範囲であってもよい。次に移動制御部13は、第1画像中の目領域を第2画像IMG_bに仮想的に投影した場合の、第1画像中の目位置座標に対応する第2画像中の画像領域(投影領域)VAの重心VCの位置座標を算出する。このとき移動制御部13は、前回と現在の撮影タイミングとの間の第1画像の目位置座標の差分情報と、前回の撮影タイミングでの第2画像とに基づいて、投影領域VAの重心VCの位置座標を算出してよい。なお目位置座標の差分情報は、前述した顔の位置の変化情報の一例である。そして移動制御部13は、投影領域VAの重心VCが第2画像の中心Cに配置されるように第1の可動ミラー50-1および第2の可動ミラー50-2の回転量を算出する。これにより移動制御部13は、常に第2画像IMG_bの中央に目領域Aが配置されるように、第2撮像部40の視野範囲をX軸およびZ軸方向に移動させることができる。なお本図では、投影領域VAおよび目領域Aは、長軸および短軸に対して対称な略楕円形の領域であり、投影領域VAおよび目領域Aの各々について両端に位置する目尻Obと目頭Ibとの間の中点がその重心と一致している。
【0043】
なお第2画像IMG_bに含まれる目領域の幅方向の画素数は、第2画像IMG_bの幅方向の画素数に対して所定範囲内になるように設定されている。第2画像IMG_bの幅方向の画素数は、xbであり、高さ方向の画素数は、zbである。一例としてxb×zb=640×480である。また第2画像IMG_bに撮像される被験者Pの目頭Ibから目尻Obまでの画素数は、x1である。つまりx1/xbは、予め定められた範囲内に維持される。例えばx1/xbは、0.5以上1未満であってよく、好ましくは0.8以上1未満である。これにより情報処理装置10aは、第2画像IMG_bから精度よく瞳孔を検出することができる。
【0044】
ここで、第2画像IMG_bの中央に目領域Aが配置されるように、移動制御部13が第1および第2の可動ミラー50-1,50-2を移動制御する際、Y軸方向におけるカメラと被験者Pとの間の距離Dによってその回転量が異なってくる。したがって移動制御部13は、第2画像IMG_bの焦点を調整することが必要となる。
【0045】
ここで
図6は、実施形態2にかかる移動制御部13による焦点位置制御処理を説明するための図である。本図は、上側に被験者P、第1撮像部30aおよび第2撮像部40の上面模式図を示し、下側に第1撮像部30aの第1画像IMG_aおよび第2撮像部40の第2画像IMG_bを示している。
【0046】
まず移動制御部13は、第1画像中IMG_a中の被験者Pの目頭Iaの位置座標(xai,zai)を算出する。そして移動制御部13は、可動ミラー50の回転制御を行うことで、第2画像IMG_bを取得する。このときの可動ミラー50の角度をG(xg,zg)と表す。移動制御部13は、第2画像IMG_bの目頭Ibの位置座標(xbi,zbi)を算出する。移動制御部13は、第1画像中IMG_aの目頭Iaの位置座標(xai,zai)、第2画像IMG_bの目頭Ibの位置座標(xbi,zbi)および可動ミラー50の角度G(xg,zg)を用いて、ステレオ画像法により距離Dを算出する。そして移動制御部13は、距離Dに基づいて第2撮像部40の焦点位置を決定し、当該焦点位置に焦点を移動させるための制御情報を生成する。つまり移動制御部13は、第1撮像部30aと第2撮像部40とをステレオカメラのように扱い、被写界深度が狭い第2撮像部40の焦点が、被験者Pの目位置で合焦するように調整する。
なお上述の例では、移動制御部13は、目頭Ia、Ibの位置座標を用いたが、これらに代えて目尻Oa,Obの位置座標を用いてもよい。
【0047】
次に
図7を用いて、状態評価処理の詳細を説明する。
図7は、実施形態2にかかる状態評価部15による状態評価処理を説明するための図である。本図にも、第2画像IMG_bが示されている。
【0048】
まず状態評価部15は、各撮影タイミングにおける第2画像IMG_bについて、動点である瞳孔の重心Gの、基準点からの相対位置を算出する。基準点は、瞼の開き度合または視線の移動によってはその位置がほぼ変化しない不動点であることが好ましい。ここで状態評価部15は、基準点として、角膜反射像の位置を用いることもできるが、本実施形態2では、目尻Obおよび目頭Ibの少なくとも一方の位置に基づく点を用いる。つまり、状態評価部15は、目尻Obおよび目頭Ibの少なくとも一方の位置情報と瞳孔の重心Gの位置情報とに基づいて、相対位置を算出する。例えば状態評価部15は、目尻Obの位置および目頭Ibの位置を結ぶ直線Lと瞳孔の重心Gとの間の相対位置を算出する。状態評価部15は、瞳孔の重心Gの相対位置として、目尻Obと目頭Ibの中点(第2画像IMG_bの中心Cと一致してよい)から重心GまでのX軸およびZ軸方向の距離Δx,Δzを算出する。状態評価部15は、X軸およびZ軸方向の距離Δx,Δzを距離x1で規格化した値を、その第2画像IMG_bにおける瞳孔の重心Gの相対位置として算出してもよい。なお状態評価部15は、目尻Obおよび目頭Ibのいずれか一方の位置のみを基準点として用いてもよい。そして状態評価部15は、瞳孔の重心Gの相対位置の、隣接する撮影タイミング間の差分情報に基づいて、瞳孔の振動状態を評価する。
【0049】
このように状態評価部15は、基準点として目尻Obおよび目頭Ibの少なくとも一方の位置を用いる。したがって目状態測定システム1aは、角膜反射像を用いる場合に比べて、角膜反射像形成用の赤外光源を備える必要がなく、システム構成が簡易となる。また状態評価部15は、相対位置算出のための計算が簡易であり計算量が低減されるため、高速な処理や装置の小型化が可能となる。したがって、本実施形態2では情報処理装置10aを独立のコンピュータ装置として説明したが、情報処理装置10aは、第1撮像部30a内または第2撮像部40内に実装されることも可能である。
【0050】
図8は、実施形態2にかかる情報処理装置10aの情報処理の手順を示すフローチャートである。
【0051】
まず第1取得部11は、第1撮像部30aからt=tiにおける第1画像データを所定のフレームレートで取得する(ステップS10)。
【0052】
次に移動制御部13は、第1画像から被験者Pの顔を検出する(ステップS11)。例えば移動制御部13は、第1画像を入力とする学習済の畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いて、被験者Pの顔を検出してよい。そして移動制御部13は、被験者Pの顔に対応する画像領域を切り出した正規化画像を生成してよい。
【0053】
次に移動制御部13は、第1画像における目位置座標を算出する(ステップS12)。例えば移動制御部13は、生成した正規化画像からテンプレートマッチングにより被験者Pの目領域を検出し、第1画像における目領域の重心の位置座標を目位置座標として算出してよい。
【0054】
そして移動制御部13は、t=t
iにおける第1画像の目位置座標がt=t
i-1における第1画像の目位置座標と比較して変更したか否かを判定する(ステップS13)。移動制御部13は、目位置座標が変更していない場合(ステップS13でNo)、一連の撮影を終了するか否かを判定し(ステップS16)、終了しない場合(ステップS16でNo)は処理をステップS10に戻す。一方、移動制御部13は、目位置座標が変更した場合(ステップS13でYes)、前述の
図5に示した方法により次の撮影タイミング(例えばt=t
i+1)における可動ミラー50の回転量を算出する(ステップS14)。このとき移動制御部13は、第2撮像部40から現在または以前の撮影タイミングの第2画像データ(例えばt=t
i-1の第2画像データ)を取得してよく、目位置座標および該第2画像に基づいて可動ミラー50の回転量を算出してよい。そして移動制御部13は、算出した回転量に基づいてX軸およびZ軸方向に関する視野範囲の制御信号を生成する。なお移動制御部13は、これに加えて
図6に示した方法により第2撮像部40の焦点位置の移動量を算出し、移動量に基づいて焦点位置の制御信号を生成する。
【0055】
次に移動制御部13は、第2撮像部40の視野範囲および焦点位置の移動を制御する(ステップS15)。具体的には、移動制御部13は、X軸およびZ軸方向に関する視野範囲の制御信号を駆動部51に対して送信する。また移動制御部13は、焦点位置の制御信号を液体レンズに対して送信する。
【0056】
次に移動制御部13は、一連の撮影を終了するか否かを判定する(ステップS16)。移動制御部13は、終了しない場合(ステップS16でNo)は、処理をステップS10に戻し、終了する場合は(ステップS16でYes)、処理をステップS17に進める。
【0057】
ステップS17において、第2取得部12は、第2撮像部40から第2画像データを取得する。
【0058】
ここで情報処理装置10aは、ステップS18~19の処理を、取得した第2画像のフレーム数だけ繰り返す。
【0059】
ステップS18において、要素位置推定部14は、第2画像から、例えばテンプレートマッチングにより目領域を検出し、目の要素(目尻、目頭、瞳孔の重心)の位置座標を推定する。瞳孔の重心の位置座標については、要素位置推定部14は、例えば二値化、エッジ検出およびハフ変換により瞳孔の画像領域を検出し、画像領域の重心の位置座標を算出することで推定してよい。
【0060】
そしてステップS19において、状態評価部15は、前述の
図7に示した方法によって瞳孔の重心の相対位置を算出し、相対位置の差分情報を生成することで、振動状態を評価する。
【0061】
次にステップS20において、出力部16は、評価した振動状態の情報を出力する。
【0062】
なおステップS17~19の処理は、ステップS10~16の処理と並行して実行されてもよい。また各ステップの具体的処理については、上述の説明に限定されない。
【0063】
このように実施形態2の情報処理装置10aは、実施形態1と同様の効果を奏することができる。特に眼球の微振動を測定するためには、頭部の振動を厳格に抑制する必要があるため、頭部をしっかりと固定させる必要がある。したがって被験者が脳疾患により頭部の手術を行った直後では頭部を固定することが困難であるため、サッカード現象等の目状態の検査を行うことができなかった。また現状の技術では、頭部の固定により緊張状態にある脳の反応についてしか検査することができなかった。このことは、脳疾患の回復状況の検査においてのみならず、被験者が映像を見た場合の映像に対する興味度を判定する場合等においても同様である。
【0064】
しかし実施形態2の情報処理システム10aによれば、このような課題を解決することができる。これにより例えば情報処理システム10aにより評価された評価値を脳疾患のリハビリテーションの移行段階の判断材料として活用することが可能となり、医療従事者が患者である被験者の負担を軽減しつつ、病状の回復の程度を容易に診断できる。また情報処理システム10aにより評価された評価値を、消費者である被験者の広告画像に対する興味度として収集することで、企業がその広告の効果を定量的に測ることが可能となる。
【0065】
<実施形態3>
次に
図9を用いて、本開示の実施形態3について説明する。実施形態3は、被験者の頭部の移動に応じて第1撮像部の視野範囲が移動し、第2撮像部の視野範囲もそれに伴って移動することに特徴を有する。
【0066】
図9は、実施形態3にかかる目状態測定システム1bのシステム構成図である。
実施形態3にかかる目状態測定システム1bは、実施形態2にかかる目状態測定システム1aと基本的に同様の構成および機能を有する。ただし目状態測定システム1bは、第1撮像部30a、情報処理装置10aに代えて第1撮像部30b、情報処理装置10bを有し、さらに光源63、ロングパスフィルタ70およびハーフミラー71を有する点で目状態測定システム1aと相違する。
【0067】
第1撮像部30bは、その視野範囲が被験者Pの頭部の移動に応じて移動するトラッキングカメラ32を有する。本実施形態3では、トラッキングカメラ32の視野範囲は、被験者Pの目領域が第1画像の中央に撮像されるように、被験者Pの目領域の移動に応じて移動される。具体的にはトラッキングカメラ32の視野範囲は、第2撮像部40と同様に、情報処理装置10bの視野範囲の制御信号に従った駆動部51による可動ミラー50の回転により移動する。つまり可動ミラー50は、第2撮像部40の光軸に加えて、第1撮像部30bの光軸を移動させる。その結果、第2撮像部40の視野範囲は、トラッキングカメラ32の視野範囲の移動に連動して移動する。ここでトラッキングカメラ32の受光素子の検出波長をトラッキング用波長と呼ぶと、トラッキング用波長は、第2撮像部40の受光素子の検出波長である瞳孔検出用波長よりも小さい。一例としてトラッキング用波長は、850[nm]である。なおトラッキングカメラ32の画角、焦点距離およびフレームレートは、実施形態2の広角カメラ31と同様である。
【0068】
光源63は、被験者Pの目領域を照射する光源である。光源63は、トラッキング用波長に対応する波長領域を有する光源であり、本実施形態3では850[nm]の近赤外光源である。
【0069】
ハーフミラー71は、光源63から入射した850[nm]の光の一部をロングパスフィルタ70に向かって反射させるハーフミラーである。またハーフミラー71は、ロングパスフィルタ70から入射した850[nm]の光の一部をトラッキングカメラ32に向かって透過させる。なおハーフミラー71は、ハーフミラーに代えて透過および反射の比率が任意のビームスプリッタであってもよい。
【0070】
ロングパスフィルタ70は、瞳孔検出用波長の光を透過させ、トラッキング用波長を反射させる光学フィルタである。ロングパスフィルタ70は、第2撮像部40と可動ミラー50との間に配設され、可動ミラー50から入射した瞳孔検出用波長の光を第2撮像部40に向かって透過させる。またロングパスフィルタ70は、可動ミラー50から入射したトラッキング用波長の光をハーフミラー71に向かって反射させる。
【0071】
つまり光源63の光の一部は、ハーフミラー71→ロングパスフィルタ70→第2の可動ミラー50-2→第1の可動ミラー50-1という経路を通って被験者Pの目領域に到達する。
そして第1撮像部30bのトラッキングカメラ32は、被験者Pの目領域(または顔)→第1の可動ミラー50-1→第2の可動ミラー50-2→ロングパスフィルタ70→ハーフミラー71→トラッキングカメラ32という経路の光が入射することで、被験者Pの目領域(または顔)を第1画角で撮像する。
【0072】
また第2撮像部40は、被験者Pの目領域→第1の可動ミラー50-1→第2の可動ミラー50-2→ロングパスフィルタ70→第2撮像部40という経路の光が入射することで、被験者Pの目領域を第2画角で撮像する。
【0073】
情報処理装置10bは、情報処理装置10aと基本的に同様の構成および機能を有するが、移動制御部13によるX軸およびZ軸方向の移動制御処理が、実施形態2(
図5および
図8のステップS14に示す処理)と異なる。
【0074】
実施形態3では移動制御部13は、まず第1画像中の目位置座標を算出する。そして移動制御部13は、次の撮影タイミングにおいて第1画像中の目領域の重心が第1画像の中心に配置されるように、第1の可動ミラー50-1および第2の可動ミラー50-2の回転量を算出する。ここで第1撮像部30bのトラッキングカメラ32は、第2撮像部40のフレームレート以上のフレームレートを有するため、第2撮像部40が撮像する第2画像においても被験者Pの目領域が画像中央に写ることとなる。
【0075】
このように実施形態3によれば、情報処理装置10bは、より精度良く被験者Pの頭部の移動に追随して、第2撮像部40の視野範囲を移動させることができる。これにより、情報処理装置10bは、頭部を固定せずリラックスした状態で、好適に被験者Pの目の状態変化を評価できる。
【0076】
<実施形態4>
次に
図10~11を用いて、本開示の実施形態4について説明する。実施形態4は、最も広角の画像により最も狭角のカメラの視野範囲の位置を粗調整し、中間の大きさの画角の画像により該視野範囲の位置を微調整することに特徴を有する。
【0077】
図10は、実施形態4にかかる目状態測定システム1cのシステム構成図である。実施形態4にかかる目状態測定システム1cは、実施形態3にかかる目状態測定システム1bと基本的に同様の構成および機能を有する。ただし目状態測定システム1cは、第3撮像部33と、情報処理装置10bに代えて情報処理装置10cとを有する点で目状態測定システム1bと相違する。
【0078】
第3撮像部33は、被験者Pの少なくとも顔を第3画角で撮像し、第3画像にかかる第3画像データを生成するカメラである。第3画角は、トラッキングカメラ32の第1画角よりも大きく、かつ第2撮像部40の第2画角よりも大きい。第3撮像部33は、第3画像データを生成したことに応じて、情報処理装置10cに第3画像データを送信する。
【0079】
情報処理装置10cは、情報処理装置10bと基本的に同様の機能を有するが、第3画像データに基づいてトラッキングカメラ32および第2撮像部40の視野範囲の移動制御を粗調整をする点で情報処理装置10bと相違する。
【0080】
図11は、実施形態4にかかる情報処理装置10cの機能構成を示すブロック図である。情報処理装置10cは、情報処理装置10bの構成に加えて、第3取得部17を有する。第3取得部17は、第3撮像部33から第3画像データを受信、取得し、第3画像データを移動制御部13に供給する。
【0081】
移動制御部13は、第3画像から被験者Pの顔を検出し、第3画像における目位置座標を算出し、該目位置座標に基づいて第1画像中に目領域が収まるような可動ミラー50の回転量を算出する。そして移動制御部13は、該回転量に基づく視野範囲の制御信号を駆動部51に送信し、可動ミラー50の傾斜角度を粗調整する。
【0082】
このような粗調整処理は、
図8のステップS10の前に実行されてよい。また粗調整処理は、処理時間の増大を抑制するため、例えば
図8のステップS11で第1画像中に被験者Pの顔が検出されなかった場合やステップS12で第1画像中に被験者Pの目領域が検出されなかった場合にのみ実行されてもよい。
【0083】
なお第3画像よりも狭い第1画角の第1画像を用いた移動制御処理は、
図8のステップS10~15に対応する処理であるが、微調整処理と呼ぶこともできる。本実施形態4の第1画角は、被験者Pの少なくとも目領域を撮像するために必要な画角であればよく、実施形態2~3の第1画角よりも狭くてよい。この場合、微調整処理において、
図8のステップS11に対応する顔検出処理は省略されてよい。これにより粗調整処理が追加されたことによる一連の処理時間の増大を抑制できる。
【0084】
このように実施形態4の情報処理装置10cは、被験者Pの頭部が大きく移動したとしても、被験者Pの目領域が第2撮像部40の視野範囲から外れないように第2撮像部40の視野範囲を移動させることができる。これにより被験者Pは撮影中も自由に動くことができるため、情報処理装置10cは、よりリラックスした状態での目の状態変化を評価できる。
【0085】
以上、実施形態を参照して本開示を説明したが、本願発明は上記によって限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。例えば評価対象である目の状態は、瞳孔の収縮量であり、状態評価部15は、第2画像の時系列データに基づいて被験者Pの瞳孔の収縮量を評価してもよい。そして状態評価部15は、瞳孔の収縮量に基づいて広告画像等の画像を見た場合の興味度を評価してよい。
【0086】
上述の実施形態では、本開示をハードウェアの構成として説明したが、本開示は、これに限定されるものではない。本開示は、状態評価方法にかかる各種処理を、プロセッサにコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。
【0087】
上述の例において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0088】
上述の実施形態ではコンピュータは、パーソナルコンピュータやワードプロセッサ等を含むコンピュータシステムで構成される。しかしこれに限らず、コンピュータは、LAN(ローカル・エリア・ネットワーク)のサーバ、コンピュータ(パソコン)通信のホスト、インターネット上に接続されたコンピュータシステム等によって構成されることも可能である。また、ネットワーク上の各機器に機能分散させ、ネットワーク全体でコンピュータを構成することも可能である。
【0089】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
第1撮像部から、被験者の頭部を第1画角で撮像した第1画像にかかる画像データを取得する第1取得部と、
第2撮像部から、前記被験者の目領域を前記第1画角よりも狭い第2画角で撮像した第2画像にかかる画像データを取得する第2取得部と、
前記第1画像に基づいて取得される前記被験者の前記頭部の位置情報に基づいて、前記第2撮像部の視野範囲を移動させる移動制御部と、
前記第2画像の時系列データに基づいて前記被験者の目の状態変化を評価する状態評価部と
を備える情報処理システム。
(付記2)
前記移動制御部は、前記第1画像の時系列データに基づいて前記被験者の前記頭部の位置の変化情報を生成し、前記変化情報に基づいて前記第2撮像部の視野範囲を移動させる
付記1に記載の情報処理システム。
(付記3)
前記第1取得部は、前記第2取得部が前記第2画像にかかる画像データを取得するフレームレート以上のフレームレートで前記第1画像にかかる画像データを取得する
付記2に記載の情報処理システム。
(付記4)
前記第2画像中の前記被験者の瞳孔の重心位置と、目尻および目頭の少なくとも一方の位置とをそれぞれ推定する要素位置推定部を有し、
前記状態評価部は、前記目尻および前記目頭の少なくとも一方の位置情報と前記瞳孔の重心位置情報とに基づいて、前記被験者の瞳孔の振動状態を評価する
付記1から3のいずれか一項に記載の情報処理システム。
(付記5)
前記状態評価部は、前記目尻の位置および前記目頭の位置を結ぶ直線に対する前記瞳孔の重心の相対位置を算出し、前記相対位置に基づいて前記被験者の瞳孔の振動状態を評価する
付記4に記載の情報処理システム。
(付記6)
前記状態評価部は、前記第2画像の時系列データに基づいて前記被験者の瞳孔の収縮量を評価する
付記1から3のいずれか一項に記載の情報処理システム。
(付記7)
被験者の頭部を第1画角で撮像する第1撮像部と、
前記被験者の目領域を前記第1画角よりも狭い第2画角で撮像する第2撮像部と、
情報処理装置と
を備える目状態測定システムであって、
前記情報処理装置は、
前記第1撮像部から第1画像にかかる画像データを取得する第1取得部と、
前記第2撮像部から第2画像にかかる画像データを取得する第2取得部と、
前記第1画像に基づいて取得される前記被験者の前記頭部の位置情報に基づいて、前記第2撮像部の視野範囲を移動させる移動制御部と、
前記第2画像の時系列データに基づいて前記被験者の目の状態変化を評価する状態評価部と
を有する目状態測定システム。
(付記8)
前記第2撮像部の光軸を移動させる可動ミラーと、
前記可動ミラーを回転させる駆動部と
をさらに備え、
前記移動制御部は、前記第1画像の時系列データに基づいて前記被験者の前記頭部の位置の変化情報を生成し、前記変化情報に基づいて前記可動ミラーの回転量を算出する
付記7に記載の目状態測定システム。
(付記9)
前記可動ミラーは、前記第1撮像部および前記第2撮像部の光軸を移動させる
付記8に記載の目状態測定システム。
(付記10)
前記第1撮像部は、前記第2撮像部のフレームレート以上のフレームレートで被写体を撮像する
付記7から9のいずれか一項に記載の目状態測定システム。
(付記11)
第1撮像部から、被験者の頭部を第1画角で撮像した第1画像にかかる画像データを取得する第1取得段階と、
第2撮像部から、前記被験者の目領域を前記第1画角よりも狭い第2画角で撮像した第2画像にかかる画像データを取得する第2取得段階と、
前記第1画像に基づいて取得される前記被験者の前記頭部の位置情報に基づいて、前記第2撮像部の視野範囲を移動させる移動制御段階と、
前記第2画像の時系列データに基づいて前記被験者の目の状態変化を評価する状態評価段階と
を備える情報処理方法。
(付記12)
第1撮像部から、被験者の頭部を第1画角で撮像した第1画像にかかる画像データを取得する第1取得処理と、
第2撮像部から、前記被験者の目領域を前記第1画角よりも狭い第2画角で撮像した第2画像にかかる画像データを取得する第2取得処理と、
前記第1画像に基づいて取得される前記被験者の前記頭部の位置情報に基づいて、前記第2撮像部の視野範囲を移動させる移動制御処理と、
前記第2画像の時系列データに基づいて前記被験者の目の状態変化を評価する状態評価処理と
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【0090】
この出願は、2020年10月20日に出願された日本出願特願2020-176066を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本開示にかかる情報処理システムは、被験者の目の状態変化を評価するために利用可能である。
【符号の説明】
【0092】
1a,1b,1c 目状態測定システム
10,10a,10b,10c 情報処理システム(情報処理装置)
11 第1取得部
12 第2取得部
13 移動制御部
14 要素位置推定部
15 状態評価部
16 出力部
17 第3取得部
30,30a,30b 第1撮像部
31 広角カメラ
32 トラッキングカメラ
33 第3撮像部
40 第2撮像部
50 可動ミラー
51 駆動部
61 光源
63 光源
70 ロングパスフィルタ
71 ハーフミラー
100 プロセッサ
101 ROM
102 RAM
103 インターフェース部(IF)
P 被験者
IMG_a 第1画像
IMG_b 第2画像