(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-26
(45)【発行日】2025-03-06
(54)【発明の名称】基板処理方法、基板処理装置及び基板処理システム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20250227BHJP
B23K 26/18 20060101ALI20250227BHJP
B23K 26/57 20140101ALI20250227BHJP
【FI】
H01L21/02 C
H01L21/02 B
B23K26/18
B23K26/57
(21)【出願番号】P 2024188786
(22)【出願日】2024-10-28
(62)【分割の表示】P 2023104005の分割
【原出願日】2020-12-09
【審査請求日】2024-10-28
(31)【優先権主張番号】P 2019236190
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020011824
(32)【優先日】2020-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【氏名又は名称】三根 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100233814
【氏名又は名称】矢田 充洋
(72)【発明者】
【氏名】山下 陽平
(72)【発明者】
【氏名】田之上 隼斗
(72)【発明者】
【氏名】溝本 康隆
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-125931(JP,A)
【文献】特開2015-144192(JP,A)
【文献】特表2007-534164(JP,A)
【文献】特開2007-220749(JP,A)
【文献】特開平10-125929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
B23K 26/18
B23K 26/57
B23K 26/082
H01L 21/683
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と第2の基板が接合された重合基板において、前記第2の基板に形成されたデバイス層を前記第1の基板に転写する方法であって、
前記第1の基板には、第1の表面膜が形成され、
前記第2の基板には、レーザ吸収層、第2のデバイス層及び第2の表面膜が表面側からこの順で形成され、
前記第1の基板と前記第2の基板は、前記第1の表面膜と前記第2の表面膜が接合され、
前記レーザ吸収層に対して、前記第2の基板の裏面側からレーザ光をパルス状に照射することと、
前記レーザ吸収層と前記第2のデバイス層との界面において、前記第2の基板を前記第1の基板から剥離して、前記第2のデバイス層と前記第2の表面膜を前記第1の基板に転写することと、を有する、基板処理方法。
【請求項2】
前記第1の基板の表面と前記第1の表面膜の間に第1のデバイス層が形成されている、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記第2のデバイス層はGeからなる、請求項1又は2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記レーザ吸収層と前記第2のデバイス層の間に反射膜が形成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記レーザ吸収層に対して径方向外側から内側に向けて前記レーザ光を照射し、
前記第2の基板の外周端と、前記重合基板における前記第1の基板と前記第2の基板の接合端である前記レーザ吸収層の外周端との間から、前記レーザ光の照射を開始する、請求項1~4のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記重合基板を回転させることと、前記重合基板を径方向に移動させることとを交互に行い、前記レーザ吸収層に対して円環状に前記レーザ光を照射する、請求項1~5のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記第2の基板が剥離された前記第1の基板を洗浄する、請求項1~6のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記第2の基板が剥離された前記第1の基板をエッチングする、請求項1~7のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記第2の基板が剥離された前記第1の基板をCMP処理する、請求項1~8のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記重合基板を回転させながら前記レーザ光を照射し、
前記重合基板の回転速度は、前記レーザ光が前記レーザ吸収層の径方向外側に照射される場合に比べて内側に照射される場合の方が速く、且つ、前記レーザ吸収層の径方向外側に照射される前記レーザ光の周波数は、内側に照射される前記レーザ光の周波数よりも大きい、請求項1~9のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記第1の表面膜は酸化膜であり、
前記第2の表面膜は酸化膜である、請求項1~10のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項12】
第1の基板と第2の基板が接合された重合基板において、前記第2の基板の表面に形成されたデバイス層を前記第1の基板に転写する基板処理システムであって、
前記第1の基板には、第1の表面膜が形成され、
前記第2の基板には、レーザ吸収層、第2のデバイス層及び第2の表面膜が表面側からこの順で形成され、
前記第1の基板と前記第2の基板は、前記第1の表面膜と前記第2の表面膜が接合され、
前記第1の基板の裏面を保持する保持部と、
前記保持部が前記第1の基板を保持した状態で、前記レーザ吸収層に対して、前記第2の基板の裏面側からレーザ光をパルス状に照射するレーザ照射部と、
前記レーザ吸収層と前記第2のデバイス層との界面において、前記第2の基板を前記第1の基板から剥離して、前記第2のデバイス層と前記第2の表面膜を前記第1の基板に転写する搬送部と、を有する、基板処理システム。
【請求項13】
前記第1の基板の表面と前記第1の表面膜の間に第1のデバイス層が形成されている、請求項
12に記載の基板処理システム。
【請求項14】
前記第2の基板が剥離された前記第1の基板を洗浄する洗浄装置を有する、請求項
12又は
13に記載の基板処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法、基板処理装置及び基板処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体装置の製造方法が開示されている。かかる半導体装置の製造方法は、半導体基板の裏面よりCO2レーザを照射して剥離酸化膜を局所的に加熱する加熱工程と、剥離酸化膜中、及び/又は剥離酸化膜と半導体基板との界面において剥離を生じさせて、半導体素子を転写先基板に転写させる転写工程と、を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、第1の基板と第2の基板が接合された重合基板において、第2の基板の表面に形成されたデバイス層を第1の基板に適切に転写する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、第1の基板と第2の基板が接合された重合基板において、前記第2の基板に形成されたデバイス層を前記第1の基板に転写する方法であって、前記第1の基板には、第1の表面膜が形成され、前記第2の基板には、レーザ吸収層、第2のデバイス層及び第2の表面膜が表面側からこの順で形成され、前記第1の基板と前記第2の基板は、前記第1の表面膜と前記第2の表面膜が接合され、前記レーザ吸収層に対して、前記第2の基板の裏面側からレーザ光をパルス状に照射することと、前記レーザ吸収層と前記第2のデバイス層との界面において、前記第2の基板を前記第1の基板から剥離して、前記第2のデバイス層と前記第2の表面膜を前記第1の基板に転写することと、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、第1の基板と第2の基板が接合された重合基板において、第2の基板の表面に形成されたデバイス層を第1の基板に適切に転写することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】パルス波と連続波を用いた場合のレーザ光のパワーを比較した説明図である。
【
図2】ウェハ処理システムにおいて処理される重合ウェハの構成の概略を示す側面図である。
【
図3】ウェハ処理システムの構成の概略を模式的に示す平面図である。
【
図4】本実施形態にかかるレーザ照射装置の構成の概略を示す側面図である。
【
図5】本実施形態にかかるレーザ照射装置の構成の概略を示す平面図である。
【
図6】本実施形態においてレーザ吸収層にレーザ光を照射する様子を示す説明図である。
【
図7】本実施形態においてレーザ吸収層にレーザ光を照射する様子を示す説明図である。
【
図8】本実施形態の変形例においてレーザ吸収層にレーザ光を照射する様子を示す説明図である。
【
図9】レーザ吸収層から第2のウェハを剥離する様子を示す説明図である。
【
図10】他の実施形態にかかるレーザ照射部の構成の概略を模式的に示す説明図である。
【
図11】他の実施形態において音響光学変調器でレーザ光の周波数を変更する様子を示す説明図である。
【
図12】他の実施形態において音響光学変調器でレーザ光の周波数を変更する様子を示す説明図である。
【
図13】他の実施形態にかかるレーザ照射部の構成の概略を模式的に示す説明図である。
【
図14】他の実施形態にかかるレーザ照射部の構成の概略を模式的に示す説明図である。
【
図15】他の実施形態にかかるレーザ照射装置の構成の概略を示す側面図である。
【
図16】他の実施形態にかかるレーザ照射装置の構成の概略を示す平面図である。
【
図17】他の実施形態においてレーザ吸収層にレーザ光を照射する様子を示す説明図である。
【
図18】他の実施形態においてレーザ吸収層にレーザ光を照射する様子を示す説明図である。
【
図19】他の実施形態においてレーザ吸収層にレーザ光を照射する様子を示す説明図である。
【
図20】他の実施形態にかかるレーザ照射装置の構成の概略を示す側面図である。
【
図21】ガイド部の構成の概略を示す側面図である。
【
図22】保持部材の構成の概略を示す側面図である。
【
図23】ガイド部と保持部材の構成の概略を示す平面図である。
【
図24】他の実施形態において第2のウェハの表面に形成されたデバイス層を第1のウェハに転写する様子を示す説明図である。
【
図25】他の実施形態において第2のウェハの表面に形成されたデバイス層を第1のウェハに転写する様子を示す説明図である。
【
図26】他の実施形態において第2のウェハの表面に形成されたデバイス層を第1のウェハに転写する様子を示す説明図である。
【
図27】他の実施形態において第2のウェハの表面に形成されたデバイス層を第1のウェハに転写する様子を示す説明図である。
【
図28】他の実施形態において第2のウェハの表面に形成されたデバイス層を第1のウェハに転写する様子を示す説明図である。
【
図29】他の実施形態における重合ウェハの構成の概略を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
近年、LEDの製造プロセスにおいては、レーザ光を用いてサファイア基板からGaN(窒化ガリウム)系化合物結晶層(材料層)を剥離する、いわゆるレーザリフトオフが行われている。このようにレーザリフトオフが行われる背景には、サファイア基板が短波長のレーザ光(例えばUV光)に対して透過性を有するため、吸収層に対して吸収率の高い短波長のレーザ光を使用することができ、レーザ光についても選択の幅が広いことが挙げられる。
【0009】
一方、半導体デバイスの製造プロセスにおいては、一の基板(半導体などのシリコン基板)の表面に形成されたデバイス層を他の基板に転写することが行われる。シリコン基板は、一般的にNIR(近赤外線)の領域のレーザ光に対しては透過性を有するが、吸収層もNIRのレーザ光に対して透過性を有するため、デバイス層が損傷を被るおそれがある。そこで、半導体デバイスの製造プロセスにおいてレーザリフトオフを行うためには、FIR(遠赤外線)の領域のレーザ光を使用する。
【0010】
一般的には、例えばCO2レーザにより、FIRの波長のレーザ光を使用することができる。上述した特許文献1に記載の方法では、剥離酸化膜にCO2レーザを照射することで、剥離酸化膜と基板の界面において剥離を生じさせている。
【0011】
ここで、発明者らが鋭意検討したところ、単にCO
2レーザを照射しただけでは、剥離が生じない場合があることが分かった。すなわち、剥離の発生要因が、CO
2レーザのエネルギー量ではなく、ピークパワー(レーザ光の最大強度)であることを見出した。例えば
図1に示すように、CO
2レーザを連続発振させた場合(連続波を用いた場合)、ピークパワーを高くすることは難しく、剥離を発生できない場合がある。一方、CO
2レーザをパルス状に発振させた場合(パルス波を用いた場合)、ピークパワーを高くすることができ、剥離を発生させることができる。なお、本開示においてCO
2レーザをパルス状に発振させたレーザ光は、いわゆるパルスレーザであり、そのパワーが0(ゼロ)と最大値を繰り返すものである。
【0012】
また、CO2レーザを連続発振させた場合、熱影響が大きいため、安定したレーザリフトオフを行うことができず、熱によりデバイス層がダメージを被るおそれもある。そこで、かかる観点からも、CO2レーザをパルス状に照射するのが良い。
【0013】
以上のように、基板と剥離酸化膜(デバイス層)を剥離するためには、当該剥離酸化膜にCO2レーザをパルス状に照射する必要がある。しかしながら、特許文献1の方法では、パルスレーザについては全く考慮されておらず、その示唆もない。したがって、従来のデバイス層の転写方法には改善の余地がある。
【0014】
本開示にかかる技術は、第1の基板と第2の基板が接合された重合基板において、第2の基板の表面に形成されたデバイス層を第1の基板に適切に転写する。以下、本実施形態にかかる基板処理装置としてのレーザ照射装置を備えたウェハ処理システム、及び基板処理方法としてのウェハ処理方法ついて、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
本実施形態にかかる後述のウェハ処理システム1では、
図2に示すように第1の基板としての第1のウェハW1と第2の基板としての第2のウェハW2とが接合された重合基板としての重合ウェハTに対して処理を行う。以下、第1のウェハW1において、第2のウェハW2に接合される側の面を表面W1aといい、表面W1aと反対側の面を裏面W1bという。同様に、第2のウェハW2において、第1のウェハW1に接合される側の面を表面W2aといい、表面W2aと反対側の面を裏面W2bという。
【0016】
第1のウェハW1は、例えばシリコン基板等の半導体ウェハである。第1のウェハW1の表面W1aには、デバイス層D1と表面膜F1が表面W1a側からこの順で積層されている。デバイス層D1は、複数のデバイスを含む。表面膜F1としては、例えば酸化膜(SiO2膜、TEOS膜)、SiC膜、SiCN膜又は接着剤などが挙げられる。なお、表面W1aには、デバイス層D1と表面膜F1が形成されていない場合もある。
【0017】
第2のウェハW2も、例えばシリコン基板等の半導体ウェハである。第2のウェハW2の表面W2aには、レーザ吸収層P、デバイス層D2、表面膜F2が表面W2a側からこの順で積層されている。レーザ吸収層Pは、後述するようにレーザ照射部110から照射されたレーザ光を吸収する。レーザ吸収層Pには、例えば酸化膜(SiO2膜)が用いられるが、レーザ光を吸収するものであれば特に限定されない。デバイス層D2と表面膜F2はそれぞれ、第1のウェハW1のデバイス層D1と表面膜F1と同様である。そして、第1のウェハW1の表面膜F1と第2のウェハW2の表面膜F2が接合される。なお、レーザ吸収層Pの位置は、上記実施形態に限定されず、例えばデバイス層D2と表面膜F2の間に形成されていてもよい。また、表面W2aには、デバイス層D2と表面膜F2が形成されていない場合もある。この場合、レーザ吸収層Pは第1のウェハW1側に形成され、第1のウェハW1側のデバイス層D1が第2のウェハW2側に転写される。
【0018】
図3に示すようにウェハ処理システム1は、搬入出ブロック10、搬送ブロック20、及び処理ブロック30を一体に接続した構成を有している。搬入出ブロック10と処理ブロック30は、搬送ブロック20の周囲に設けられている。具体的に搬入出ブロック10は、搬送ブロック20のY軸負方向側に配置されている。処理ブロック30の後述するレーザ照射装置31は搬送ブロック20のX軸負方向側に配置され、後述する洗浄装置32は搬送ブロック20のX軸正方向側に配置されている。
【0019】
搬入出ブロック10は、例えば外部との間で複数の重合ウェハT、複数の第1のウェハW1、複数の第2のウェハW2をそれぞれ収容可能なカセットCt、Cw1、Cw2がそれぞれ搬入出される。搬入出ブロック10には、カセット載置台11が設けられている。図示の例では、カセット載置台11には、複数、例えば3つのカセットCt、Cw1、Cw2をX軸方向に一列に載置自在になっている。なお、カセット載置台11に載置されるカセットCt、Cw1、Cw2の個数は、本実施形態に限定されず、任意に決定することができる。
【0020】
搬送ブロック20には、X軸方向に延伸する搬送路21上を移動自在に構成されたウェハ搬送装置22が設けられている。ウェハ搬送装置22は、重合ウェハT、第1のウェハW1、第2のウェハW2を保持して搬送する、例えば2つの搬送アーム23、23を有している。各搬送アーム23は、水平方向、鉛直方向、水平軸回り及び鉛直軸周りに移動自在に構成されている。なお、搬送アーム23の構成は本実施形態に限定されず、任意の構成を取り得る。そして、ウェハ搬送装置22は、そして、ウェハ搬送装置22は、カセット載置台11のカセットCt、Cw1、Cw2、後述するレーザ照射装置31及び洗浄装置32に対して、重合ウェハT、第1のウェハW1、第2のウェハW2を搬送可能に構成されている。
【0021】
処理ブロック30は、レーザ照射装置31と洗浄装置32を有している。レーザ照射装置31は、第2のウェハW2のレーザ吸収層Pにレーザ光を照射する。なお、レーザ照射装置31の構成は後述する。
【0022】
洗浄装置32は、レーザ照射装置31で分離された第1のウェハW1の表面W1aに形成されたレーザ吸収層Pの表面を洗浄する。例えばレーザ吸収層Pの表面にブラシを当接させて、当該表面をスクラブ洗浄する。なお、表面の洗浄には、加圧された洗浄液を用いてもよい。また、洗浄装置32は、第1のウェハW1の表面W1a側と共に、裏面W1bを洗浄する構成を有していてもよい。
【0023】
以上のウェハ処理システム1には、制御部としての制御装置40が設けられている。制御装置40は、例えばコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、ウェハ処理システム1における重合ウェハTの処理を制御するプログラムが格納されている。また、プログラム格納部には、上述の各種処理装置や搬送装置などの駆動系の動作を制御して、ウェハ処理システム1における後述のウェハ処理を実現させるためのプログラムも格納されている。なお、上記プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体Hに記録されていたものであって、当該記憶媒体Hから制御装置40にインストールされたものであってもよい。
【0024】
次に、上述したレーザ照射装置31について説明する。
【0025】
図4及び
図5に示すようにレーザ照射装置31は、重合ウェハTを上面で保持する、保持部としてのチャック100を有している。チャック100は、第1のウェハW1の裏面W1bの全面を吸着保持する。なお、チャック100は裏面W1bの一部を吸着保持してもよい。チャック100には、重合ウェハTを下方から支持し昇降させるための昇降ピン(図示せず)が設けられている。昇降ピンは、チャック100を貫通して形成された貫通孔(図示せず)を挿通し、昇降自在に構成されている。
【0026】
チャック100は、エアベアリング101を介して、スライダテーブル102に支持されている。スライダテーブル102の下面側には、回転機構103が設けられている。回転機構103は、駆動源として例えばモータを内蔵している。チャック100は、回転機構103によってエアベアリング101を介して、θ軸(鉛直軸)回りに回転自在に構成されている。スライダテーブル102は、その下面側に設けられた移動機構104によって、基台106に設けられY軸方向に延伸するレール105に沿って移動可能に構成されている。なお、移動機構104の駆動源は特に限定されるものではないが、例えばリニアモータが用いられる。
【0027】
チャック100の上方には、レーザ照射部110が設けられている。レーザ照射部110は、レーザヘッド111、光学系112、及びレンズ113を有している。レーザヘッド111は、レーザ光をパルス状に発振する。光学系112は、レーザ光の強度や位置を制御し、あるいはレーザ光を減衰させて出力を調整する。レンズ113は、筒状の部材であり、チャック100に保持された重合ウェハTにレーザ光を照射する。本実施形態ではレーザ光はCO2レーザ光であり、レーザ照射部110から発せられたレーザ光は第2のウェハW2を透過し、レーザ吸収層Pに照射される。なお、CO2レーザ光の波長は、例えば8.9μm~11μmである。また、レンズ113は、昇降機構(図示せず)によって昇降自在に構成されている。
【0028】
また、チャック100の上方には、搬送部としての搬送パッド120が設けられている。搬送パッド120は、昇降機構(図示せず)によって昇降自在に構成されている。また、搬送パッド120は、第2のウェハW2の吸着面を有している。そして、搬送パッド120は、チャック100と搬送アーム23との間で第2のウェハW2を搬送する。具体的には、チャック100を搬送パッド120の下方(搬送アーム23との受渡位置)まで移動させた後、搬送パッド120は第2のウェハW2の裏面W2bを吸着保持し、第1のウェハW1から剥離する。続いて、剥離された第2のウェハW2を搬送パッド120から搬送アーム23に受け渡して、レーザ照射装置31から搬出する。なお、搬送パッド120は、反転機構(図示せず)により、ウェハ表裏面を反転させるように構成されていてもよい。
【0029】
図5に示したレーザ照射装置31においては、搬送アーム23は搬送パッド120に対してX軸正方向側からアクセスする。但し、
図5に示したレーザ照射装置31を反時計回りに90度回転させ、搬送アーム23は搬送パッド120に対してY軸負方向側からアクセスしてもよい。
【0030】
なお、重合ウェハTをレーザ照射装置31に搬入する際には、搬送アーム23から昇降ピンに重合ウェハTが受け渡され、昇降ピンを下降させることでチャック100に載置される。また、剥離された第1のウェハW1をレーザ照射装置31から搬出する際には、チャック100に載置された重合ウェハTが昇降ピンによって上昇し、昇降ピンから搬送アーム23に受け渡される。
【0031】
次に、以上のように構成されたウェハ処理システム1を用いて行われるウェハ処理について説明する。なお、本実施形態では、ウェハ処理システム1の外部の接合装置(図示せず)において、第1のウェハW1と第2のウェハW2が接合され、予め重合ウェハTが形成されている。
【0032】
先ず、重合ウェハTを複数収納したカセットCtが、搬入出ブロック10のカセット載置台11に載置される。
【0033】
次に、ウェハ搬送装置22によりカセットCt内の重合ウェハTが取り出され、レーザ照射装置31に搬送される。レーザ照射装置31において重合ウェハTは、搬送アーム23から昇降ピンに受け渡され、チャック100に吸着保持される。続いて、移動機構104によってチャック100を処理位置に移動させる。この処理位置は、レーザ照射部110から重合ウェハT(レーザ吸収層P)にレーザ光を照射できる位置である。
【0034】
次に、
図6及び
図7に示すようにレーザ照射部110からレーザ吸収層P、より詳細にはレーザ吸収層Pと第2のウェハW2の界面にレーザ光L(CO
2レーザ光)をパルス状に照射する。この際、レーザ光Lは、第2のウェハW2の裏面W2b側から当該第2のウェハW2を透過し、レーザ吸収層Pにおいて吸収される。そして、このレーザ光Lによって、レーザ吸収層Pと第2のウェハW2との界面において剥離が生じる。なお、レーザ光Lはレーザ吸収層Pにほぼすべて吸収され、デバイス層D2に到達することがない。このため、デバイス層D2がダメージを被るのを抑制することができる。
【0035】
レーザ吸収層Pにレーザ光Lを照射する際、回転機構103によってチャック100(重合ウェハT)を回転させると共に、移動機構104によってチャック100をY軸方向に移動させる。そうすると、レーザ光Lは、レーザ吸収層Pに対して径方向外側から内側に向けて照射され、その結果、外側から内側に螺旋状に照射される。なお、
図7に示す黒塗り矢印はチャック100の回転方向を示している。
【0036】
レーザ光Lの照射開始位置は、第2のウェハW2の外周端Eaと、重合ウェハTにおける第1のウェハW1と第2のウェハW2の接合端Ebとの間であるのが好ましい。かかる場合、例えば重合ウェハTにおいて、第1のウェハW1の中心と第2のウェハW2の中心がずれて偏心している場合でも、その偏心分を吸収して、レーザ吸収層Pにレーザ光Lを適切に照射することができる。
【0037】
なお、
図8に示すようにレーザ吸収層Pにおいて、レーザ光Lは同心円状に環状に照射してもよい。但し、この場合、チャック100の回転とチャック100のY方向が交互に行われるため、上述したようにレーザ光Lを螺旋状に照射した方が、照射時間を短時間にしてスループットを向上させることができる。
【0038】
また、レーザ吸収層Pにおいて、レーザ光Lは径方向内側から外側に向けて照射されてもよい。但し、この場合、レーザ吸収層Pの内側が先に剥離するため、剥離に伴う応力が径方向外側に向かい、その外側においてレーザ光Lが照射されていない部分も剥離する場合がある。この点、上述したようにレーザ光Lを径方向外側から内側に向けて照射する場合、剥離に伴う応力を外側に逃がすことができるので、剥離の制御がより容易になる。また、剥離を適切に制御することで、剥離面の荒れを抑制することも可能となる。
【0039】
また、本実施形態ではレーザ吸収層Pにレーザ光Lを照射するにあたり、チャック100を回転させたが、レンズ113を移動させて、チャック100に対してレンズ113を相対的に回転させてもよい。また、チャック100をY軸方向に移動させたが、レンズ113をY軸方向に移動させてもよい。
【0040】
こうしてレーザ照射装置31では、レーザ吸収層Pにレーザ光Lが照射される。そして、レーザ光Lはパルス状に照射されるため、当該レーザ光Lのピークパワーを高くすることができる。したがって、上記
図1を用いて説明したように、レーザ吸収層Pと第2のウェハW2との界面において剥離を生じさせることができ、レーザ吸収層Pから第2のウェハW2を適切に剥離させることができる。
【0041】
次に、移動機構104によってチャック100を受渡位置に移動させる。そして、
図9(a)に示すように搬送パッド120で第2のウェハW2の裏面W2bを吸着保持する。その後、
図9(b)に示すように搬送パッド120が第2のウェハW2を吸着保持した状態で、当該搬送パッド120を上昇させて、レーザ吸収層Pから第2のウェハW2を剥離する。この際、上述したようにレーザ光Lの照射によってレーザ吸収層Pと第2のウェハW2の界面には剥離が生じているので、大きな荷重をかけることなく、レーザ吸収層Pから第2のウェハW2を剥離することができる。
【0042】
剥離された第2のウェハW2は、搬送パッド120からウェハ搬送装置22の搬送アーム23に受け渡され、カセット載置台11のカセットCw2に搬送される。なお、レーザ照射装置31から搬出された第2のウェハW2は、カセットCw2に搬送される前に洗浄装置32に搬送され、その剥離面である表面W2aが洗浄されてもよい。この場合、搬送パッド120によって第2のウェハW2の表裏面を反転させて、搬送アーム23に受け渡してもよい。
【0043】
一方、チャック100に保持されている第1のウェハW1については、昇降ピンによってチャック100から上昇し、搬送アーム23に受け渡され、洗浄装置32に搬送される。洗浄装置32では、剥離面であるレーザ吸収層Pの表面がスクラブ洗浄される。なお、洗浄装置32では、レーザ吸収層Pの表面と共に、第1のウェハW1の裏面W1bが洗浄されてもよい。また、レーザ吸収層Pの表面と第1のウェハW1の裏面W1bをそれぞれ洗浄する洗浄部を別々に設けてもよい。
【0044】
その後、すべての処理が施された第1のウェハW1は、ウェハ搬送装置22によりカセット載置台11のカセットCw1に搬送される。こうして、ウェハ処理システム1における一連のウェハ処理が終了する。
【0045】
以上の実施形態によれば、レーザ照射装置31において、レーザ吸収層Pにレーザ光Lがパルス状に照射されるので、当該レーザ光Lのピークパワーを高くすることができ、その結果、レーザ吸収層Pと第2のウェハW2との界面において剥離を生じさせることができる。また、レーザ光Lをパルス状に照射した場合、連続波を用いた場合に比べて、熱影響が小さく、安定したレーザリフトオフを行うことができる。したがって、レーザ吸収層Pから第2のウェハW2を適切に剥離させることができ、デバイス層D2を第1のウェハW1に転写することができる。
【0046】
ここで、第1のウェハW1と第2のウェハW2の剥離をウェハ面内で均一にするためには、レーザ光Lを照射する間隔、すなわちパルスの間隔を一定にするのが好ましい。しかしながら、パルスの間隔を一定にするために、チャック100(重合ウェハT)を回転させる場合、レーザ光Lが径方向外側から内側に移動するにしたがって、チャック100の回転速度が速くなる。かかる場合、チャック100の回転速度が上限に達すると、レーザ光Lの照射位置が径方向内側に移動するにつれ、レーザ光Lの間隔は小さくなっていき、中心部ではレーザ光Lが重なる場合もあり得る。そこで、レーザ光Lの照射間隔を調整する必要があるが、例えば下記の2つの方法がある。
【0047】
1つ目の方法は、チャック100の回転速度を制御する方法である。すなわち、レーザ光Lの照射位置がレーザ吸収層Pの径方向外側にある場合には回転速度を遅くし、レーザ光Lの照射位置が内側にある場合に回転速度を速くする。なお、この回転速度の具体的な調整は、レーザ光Lの周波数に応じて任意に設定する。かかる場合、チャック100の回転速度を一定にして、レーザ光Lを照射する間隔を一定にすることができる。
【0048】
2つ目の方法は、レーザ光Lの周波数を制御する方法である。すなわち、レーザ光Lの照射位置がレーザ吸収層Pの径方向外側にある場合には周波数を大きくし、レーザ光Lの照射位置が内側にある場合に周波数を小さくする。なお、この周波数の具体的な調整は、チャック100の回転速度に応じて任意に設定する。かかる場合でも、チャック100の回転速度を一定にして、レーザ光Lを照射する間隔を一定にすることができる。
【0049】
なお、レーザ照射の処理時間(タクト)を短くしてスループットを向上させるためには、1つ目の方法において、高い周波数のレーザ光Lを用いて、チャック100の回転速度を維持するのが好ましい。
【0050】
また、上記の1つ目の方法と2つ目の方法を併用してもよい。かかる場合、径方向外側においてはチャック100の回転速度を遅くしつつ、レーザ光Lの周波数を大きくする。一方、径方向内側においてはチャック100の回転速度を速くしつつ、レーザ光Lの周波数を小さくする。
【0051】
ここで、2つ目の方法においてレーザ光Lの周波数を制御する際、例えばレーザヘッド111のレーザ発振器においてレーザ光Lの周波数を制御する場合、レーザ光Lの出力やパルス波形を考慮してパラメータを調整する必要がある。例えば、レーザ吸収層Pの径方向外側と内側で剥離させるために必要なレーザ光Lのエネルギーが同じである場合、外側におけるレーザ光Lの周波数を大きくすると出力を大きくし、内側におけるレーザ光Lの周波数を小さくすると出力を小さくする必要がある。さらに、レーザ発振器においてレーザ光Lの周波数を変更すると、当該レーザ光Lのパルス波形も変わる。したがって、レーザ光Lの出力やパルス波形を考慮した複雑な調整が必要となり、レーザ処理のプロセス制御が難しい。
【0052】
そこで本実施形態では、光学素子としての音響光学変調器を用いてレーザ光Lの周波数を制御する。上述したようにレーザ照射部110は、レーザヘッド111、光学系112、及びレンズ113を有している。
【0053】
図10に示すようにレーザヘッド111は、レーザ光をパルス状に発振するレーザ発振器130を有している。レーザ発振器130から発振されるレーザ光の周波数は、後述する音響光学変調器131が制御できる最高周波数である。なお、レーザヘッド111は、レーザ発振器130の他の機器、例えば増幅器などを有していてもよい。
【0054】
光学系112は、レーザ発振器130からのレーザ光を異なる方向に変向させる音響光学変調器(AOM)131と、レーザ発振器130からのレーザ光を減衰させ、レーザ光の出力を調整する減衰器としてのアッテネータ132とを有している。音響光学変調器131とアッテネータ132は、レーザ発振器130側からこの順で設けられている。
【0055】
音響光学変調器131は、レーザ光の強度や位置を電気的に高速で制御する光学変調器である。
図11に示すように音響光学変調器131は、レーザ発振器130からのレーザ光L1が入射した際、電圧を印加してレーザ光L1の屈折率を変化させることで、当該レーザ光L1を異なる方向に変向させる。具体的には電圧を調整することで、レーザ光L1の変更角度を制御することができる。本実施形態では、例えばレーザ光L1を2つの異なる方向に変向させ、一方向のレーザ光L2はレーザ吸収層Pに照射され、他方向のレーザ光L3はレーザ吸収層Pに照射されない。このレーザ光L2、L3の変向を制御することで、レーザ吸収層Pに照射されるレーザ光L2の周波数を調整することができる。
【0056】
かかる場合、音響光学変調器131を用いてレーザ光L1のパルスを間引くことによって、レーザ吸収層Pに照射されるレーザ光L2の周波数を調整することができる。例えば、あるタイミングにおいて、レーザ光L1に対するレーザ光L2とレーザ光L3の変向率を100:0にすれば、レーザ光L1がそのままレーザ光L2となってレーザ吸収層Pに照射される。一方、別のタイミングにおいて、レーザ光L1に対するレーザ光L2とレーザ光L3の変向率を0:100にすれば、レーザ光L2は0(ゼロ)となり、レーザ吸収層Pにレーザ光L2は照射されない。かかる場合、
図12(a)に示すレーザ発振器130からのレーザ光L1の周波数に対して、
図12(b)に示す音響光学変調器131で変向したレーザ光L2の周波数を調整することができる。また、上述したようにレーザ光L1の周波数は、音響光学変調器131が制御できる最高周波数であるため、レーザ光L2の周波数を任意に調整することができる。なお、
図12の横軸は時間を示し、縦軸はレーザ光L2の強度を示す。すなわち、
図12のグラフ中の密度がレーザ光L2の周波数を示す。
【0057】
しかもこの場合、レーザ発振器130から発振されるレーザ光L1の周波数を変更しないので、レーザ光L1のパルス波形は変わらず、レーザ光L2のパルス波形もレーザ光L1のパルス波形と同じにできる。したがって、レーザ光L2の周波数を容易に調整することができ、上述したような従来の複雑な調整は不要となり、レーザ処理のプロセス制御が容易となる。
【0058】
なお、本実施形態では光学素子として音響光学変調器131を用いたが、これに限定されない。例えば光学素子として、電気光学変調器(EOM)を用いてもよい。また、音響光学偏向器(AOD)や電気光学偏向器(EOD)などの光学偏向器を用いてもよい。
【0059】
次に、レーザ照射部110からレーザ吸収層Pにレーザ光L2を照射する際の、当該レーザ光L2の制御方法について説明する。上述したように、レーザ光L2の照射位置がレーザ吸収層Pの径方向外側にある場合には周波数を大きくし、レーザ光L2の照射位置が内側にある場合に周波数を小さくする。
【0060】
以下、具体例を用いて説明する。なお、この具体例における数値は一例であって、本開示がこの数値に限定されるものではない。例えば、レーザ吸収層Pの径方向外側と内側のそれぞれにおいて、剥離に必要なエネルギーを400μJとする。レーザ吸収層Pの径方向外側におけるレーザ光L2の必要周波数を100kHzとし、内側におけるレーザ光の必要周波数を50kHzとする。レーザ発振器130からのレーザ光L1の周波数は100kHz、出力は40Wとする。
【0061】
かかる場合、レーザ吸収層Pの径方向外側に対しては、音響光学変調器131においてレーザ発振器130からのレーザ光L1のパルスを間引かない。そうすると、レーザ吸収層Pに照射されるレーザ光L2の周波数は、レーザ光L1の周波数と同じ100kHzにすることができる。また、レーザ光L2の出力もレーザ光L1の出力と同じ40Wになる。そして、レーザ光L2のエネルギーは400μJ(=40W/100kHz)となり、剥離を適切に行うことができる。
【0062】
一方、レーザ吸収層Pの径方向内側に対しては、音響光学変調器131においてレーザ発振器130からのレーザ光L1のパルスを半分間引く。そうすると、レーザ吸収層Pに照射されるレーザ光L2の周波数は、レーザ光L1の周波数の半分である50kHzにすることができる。また、このレーザ光L1の間引きにより、レーザ光L2の出力もレーザ光L1の出力の半分である20Wになる。そして、レーザ光L2のエネルギーは400μJ(=20W/50kHz)となり、剥離を適切に行うことができる。
【0063】
このようにレーザ光L2の周波数と照射位置に応じて、パルスの間隔が一定になるように、チャック100の回転速度を制御する。そして、レーザ吸収層Pの中心部では、チャック100の最高回転速度を維持し、音響光学変調器131が当該最高回転速度にかわせて、レーザ光L2の周波数を調整する。これにより、チャック100の高回転速度、レーザ光L2の高周波数を最大限維持したレーザ処理を行うことができ、高スループットのレーザ処理を実現することができる。
【0064】
しかもこの場合、レーザ発振器130からのレーザ光L1の周波数を変更しないので、レーザ光L1のパルス波形は変わらず、レーザ光L2のパルス波形もレーザ光L1のパルス波形と同じにできる。したがって、レーザ光L2の周波数を容易に調整することができ、連続したシームレスな加工が可能となる。その結果、レーザ処理のプロセス制御が容易となり、安定したプロセスを実現することができる。
【0065】
なお、本実施形態では、レーザ発振器130からのレーザ光L1の出力が40Wであったため、剥離に必要なエネルギー400μJに対して出力の調整は不要であった。この点、例えばレーザ光L1の出力が50Wであった場合には、アッテネータ132においてレーザ光L1の出力を20%減衰させて出力を調整すればよい。
【0066】
以上の実施形態のレーザ照射部110では、音響光学変調器131は光学系112の内部においてアッテネータ132の上流側に設けられていたが、設置場所はこれに限定されない。例えば、
図13に示すように音響光学変調器131は光学系112の内部においてアッテネータ132の下流側に設けられていてもよい。あるいは例えば、
図14に示すように音響光学変調器131はレーザヘッド111の内部においてレーザ発振器130の下流側に設けられていてもよい。さらに、音響光学変調器131は上記設置位置に2箇所以上に設けられていてもよい。
【0067】
なお、レーザ照射部110では、音響光学変調器131でレーザ光L2の周波数と出力を調整した後、アッテネータ132で出力を微調整することが可能である。ここで、レーザ発振器130から発振されるレーザ光L1の出力は、レーザ発振器130の個体差によってばらつく場合がある。アッテネータ132では、このような出力のばらつきを調整することができる。また、レーザ発振器130からのレーザ光L1の出力を経時的にモニターする場合、アッテネータ132をフィードバック制御して出力を調整することができる。そして、このようにアッテネータ132でレーザ光L2の出力を微調整するという観点からは、音響光学変調器131は、
図10に示したようにアッテネータ132の上流側に設けられるのが好ましい。
【0068】
以上の実施形態のレーザ照射部110において、アッテネータ132を省略してもよい。例えばレーザ光L2の出力調整は、アッテネータ132に代えて、音響光学変調器131で調整することができる。例えばレーザ光L1の出力が50Wであって、剥離に必要なレーザ光L2の出力が40Wである場合、音響光学変調器131において、レーザ光L1に対するレーザ光L2とレーザ光L3の変向率を80:20にすれば、レーザ光L2の出力を40Wにすることができる。
【0069】
以上の実施形態では、レーザ吸収層Pにレーザ光Lを螺旋状や同心円状に照射したが、レーザ光Lの照射パターンはこれに限定されない。また、このような種々の照射パターンに対応する装置の構成も、上記実施形態のレーザ照射装置31に限定されない。上記レーザ照射装置31では、チャック100はθ軸回りに回転自在で、一軸(Y軸)方向に移動自在であったが、二軸(X軸及びY軸)に移動させてもよい。
【0070】
図15及び
図16に示すレーザ照射装置200は、チャック100を二軸(X軸及びY軸)に移動させる装置である。レーザ照射装置200は、重合ウェハTを上面で保持する保持部としてのチャック210を有している。チャック210は、第1のウェハW1の裏面W1bを吸着保持する。チャック210には、重合ウェハTを下方から支持し昇降させるための昇降ピン(図示せず)が設けられている。昇降ピンは、チャック210を貫通して形成された貫通孔(図示せず)を挿通し、昇降自在に構成されている。
【0071】
チャック210は、エアベアリング211を介して、スライダテーブル212に支持されている。スライダテーブル212の下面側には、回転機構213が設けられている。回転機構213は、駆動源として例えばモータを内蔵している。チャック210は、回転機構213によってエアベアリング211を介して、θ軸(鉛直軸)回りに回転自在に構成されている。スライダテーブル212は、その下面側に設けられた移動機構214によって、移動ステージ216に設けられY軸方向に延伸するレール215に沿って移動可能に構成されている。なお、移動機構214の駆動源は特に限定されるものではないが、例えばリニアモータが用いられる。
【0072】
移動ステージ216は、その下面側に設けられた移動機構(図示せず)によって、基台218に設けられX軸に延伸するレール217に沿って移動可能に構成されている。なお、移動機構の駆動源は特に限定されるものではないが、例えばリニアモータが用いられる。かかる構成により、チャック210は、θ軸回りに回転自在であり、且つX軸及びY軸に移動自在になっている。
【0073】
チャック210の上方には、レーザ照射部220が設けられている。レーザ照射部220は、レーザヘッド221、光学系222、及びレンズ223を有している。レーザヘッド221は、レーザ光Lをパルス状に発振する。光学系222は、レーザ光Lの強度や位置を制御し、あるいはレーザ光Lを減衰させて出力を調整する。レンズ223は、筒状の部材であり、チャック210に保持された重合ウェハTに、例えばCO2レーザ光であるレーザ光Lを照射する。なお、レンズ223は、昇降機構(図示せず)によって昇降自在に構成されている。
【0074】
レーザヘッド221には、例えばガルバノが用いられる。レーザヘッド221の内部には、ガルバノミラー(図示せず)が複数配置されている。また、レンズ223にはf-θレンズが用いられる。かかる構成により、レーザヘッド221に入力されたレーザ光Lは、ガルバノミラーで反射され、光学系222を介してレンズ223へと伝播され、第2のウェハW2を透過してレーザ吸収層Pに照射される。そして、ガルバノミラーの角度を調整することで、レーザ吸収層Pに対してレーザ光Lを走査させることができる。
【0075】
また、チャック210の上方には、搬送部としての搬送パッド230が設けられている。搬送パッド230は、昇降機構(図示せず)によって昇降自在に構成されている。なお、搬送パッド230の構成は、上記実施形態の搬送パッド120の構成と同様である。
【0076】
かかるレーザ照射装置200において重合ウェハTは、搬送アーム23から昇降ピンに受け渡され、チャック210に吸着保持される。続いて、移動機構214及び移動ステージ216によってチャック210を処理位置に移動させる。この処理位置は、レーザ照射部220から重合ウェハT(レーザ吸収層P)にレーザ光Lを照射できる位置である。
【0077】
次に、
図17に示すようにレーザ照射部220からレーザ吸収層Pにレーザ光Lをパルス状に照射する。この際、レーザ光Lは、第2のウェハW2の裏面W2b側から当該第2のウェハW2を透過し、レーザ吸収層Pにおいて吸収される。
【0078】
レーザ吸収層Pにレーザ光Lを照射する際、予め定められたスキャン範囲A(
図17中の四角領域)においてレーザ光Lを走査させる。次に、レーザ光Lの照射を停止した状態でチャック210をX軸方向に移動させる。このようにレーザ光Lの照射及び走査と、チャック210の移動とを繰り返し行って、X軸方向に一列にレーザ光Lを照射する。次に、チャック210をY軸方向にずらすように移動させ、上述と同様にレーザ光Lの照射及び走査と、チャック210の移動とを繰り返し行って、X軸方向に一列にレーザ光Lを照射する。そうすると、レーザ光Lがレーザ吸収層Pに照射される。
【0079】
なお、本実施形態ではレーザ吸収層Pにレーザ光Lを照射するにあたり、チャック210をX軸方向及びY軸方向に移動させたが、レンズ223を移動させて、チャック210に対してレンズ223を相対的に移動させてもよい。
【0080】
次に、移動機構214及び移動ステージ216によってチャック210を受渡位置に移動させる。そして、搬送パッド230で第2のウェハW2の裏面W2bを吸着保持し、当該搬送パッド230を上昇させて、レーザ吸収層Pから第2のウェハW2を剥離する。
【0081】
本実施形態においても上記実施形態と同様の効果を享受することができる。すなわち、レーザ吸収層Pにレーザ光Lがパルス状に照射されるので、当該レーザ光Lのピークパワーを高くすることができ、その結果、レーザ吸収層Pと第2のウェハW2との界面において適切に剥離を生じさせることができる。しかも、スキャン範囲Aにおいて同じ密度でレーザ光Lを照射することができるので、レーザ吸収層Pに均一にレーザ光Lを照射することができる。
【0082】
なお、本実施形態において、レーザ照射部220は複数あってもよい。かかる場合、レーザ吸収層Pに対して複数のレーザ光Lを照射することができ、処理時間を短縮して、スループットをさらに向上させることができる。
【0083】
以上の実施形態では、レーザ光Lの照射及び走査と、チャック210の移動とを繰り返し行ったが、
図18に示すようにX軸方向一列において、チャック210を移動させながら、レーザ光Lの照射及び走査を行ってもよい。そして、X軸方向一列にレーザ光Lを照射した後、チャック210をY軸方向にずらすように移動させ、レーザ光Lをレーザ吸収層Pに照射する。
【0084】
本実施形態においても上記実施形態と同様の効果を享受することができる。すなわち、レーザ吸収層Pにレーザ光Lがパルス状に照射されるので、レーザ吸収層Pと第2のウェハW2との界面において適切に剥離を生じさせることができる。しかも、X軸方向一列において、レーザ光Lの照射及び走査を停止させないので、レーザ照射の処理時間を短くしてスループットをさらに向上させることができる。
【0085】
以上の実施形態の、螺旋状(又は同心円状)のレーザ光Lの照射と、レーザ光Lの照射及び走査とを組み合わせてもよい。
【0086】
上述したようにチャック210(重合ウェハT)を回転させる場合、パルスの間隔を一定にするためには、レーザ光Lが径方向外側から内側に移動するにしたがって、チャック210の回転速度が大きくなる。そこで、上記実施形態においては、チャック210の少なくとも回転速度又は周波数を制御して、レーザ光Lの照射間隔を調整した。
【0087】
これに対して、
図19に示すようにレーザ吸収層Pの外周部においては、チャック210を回転させながら、当該チャック210を径方向外側から内側に移動させて、レーザ光Lを螺旋状に照射する。そして、チャック210の回転速度が上限に達すると、レーザ吸収層Pの中央部においてチャック210の回転を停止し、スキャン範囲Aにおいてレーザ光Lを照射しながら走査させる。なお、スキャン範囲Aは四角形状で図示されているが、スキャン範囲Aの形状はこれに限定されない。例えばスキャン範囲Aは、丸形状であってもよい。
【0088】
このようにレーザ吸収層Pの外周部と中央部でレーザ光Lの照射パターンを変えることで、レーザ光Lが重ならないようにして、レーザ光Lを照射する間隔、すなわちパルスの間隔を一定にすることができる。その結果、第1のウェハW1と第2のウェハW2の剥離をウェハ面内で均一に行うことができる。
【0089】
なお、レーザ照射部220のレーザ光Lの照射範囲が広い場合、例えば照射範囲がレーザ吸収層Pの径以上である場合には、レーザ吸収層Pの全面に対して一括にレーザ光Lを照射してもよい。
【0090】
以上の実施形態のレーザ照射装置31において、
図20に示すようにチャック100の上面には、ガイド部240と保持部材250が設けられていてもよい。
【0091】
図21に示すようにガイド部240は、重合ウェハTをチャック100に対して案内する。ガイド部240は、チャック100から鉛直上方に延伸して設けられた垂直部241と、垂直部241から上方に向けて径が広がるように設けられた傾斜部242と、を有している。垂直部241の内径は、重合ウェハTの径と若干大きい。そして、チャック100の上方に配置された重合ウェハTは、傾斜部242でセンタリングされ、さらに垂直部241に案内されて、チャック100に保持される。
【0092】
図22及び
図23に示すように保持部材250は、チャック100の上面から鉛直上方に延伸し、第2のウェハW2の側面を保持する。保持部材250は、チャック100の同心円上に複数箇所、例えば3箇所に配置されている。保持部材250は、移動機構251によって、第2のウェハW2に対して接触又は離間するように進退自在に構成されている。また、保持部材250は、チャック100と一体に回転自在に構成されている。そして、保持部材250が第2のウェハW2を保持することで、当該第2のウェハW2の位置ずれや滑落を防止することができる。なお、ガイド部240における保持部材250の対応する位置には切り欠き部233が形成され、保持部材250は切り欠き部233を移動することで、ガイド部240に干渉しないようになっている。
【0093】
なお、本実施形態では、ガイド部240と保持部材250が両方設けられているが、ガイド部240だけ設けてもよいし、保持部材250だけ設けてもよい。ガイド部240だけを設けた場合は、垂直部241によって第2のウェハW2の位置ずれや滑落を抑制することができる。特に、垂直部241と第2のウェハW2の間の隙間が位置ずれの許容範囲である場合、ガイド部240は有用となる。但し、ガイド部240と保持部材250の両方を設けた方が、重合ウェハTのセンタリングと、第2のウェハW2の位置ずれおよび滑落防止の効果が高まる。
【0094】
かかる場合、受渡位置において、重合ウェハTがチャック100に保持される際、3つの保持部材250は、第2のウェハW2に接触しない位置に退避している。その後、重合ウェハTを保持したチャック100を処理位置に移動させた後、3つの保持部材250を第2のウェハW2の側面に接触する位置に移動させ、これら保持部材250で第2のウェハW2を保持する。
【0095】
ここで、ガイド部240や保持部材250が無い場合、レーザ光Lをレーザ吸収層Pの径方向外側から内側に螺旋状に照射する場合、剥離が進んでいくと、チャック100が回転しているため、第2のウェハW2に遠心力が作用し、レーザ吸収層Pから第2のウェハW2がずれ、レーザ処理中に、処理対象位置以外の場所にレーザ光Lが照射されるおそれがある。また、剥離された第2のウェハW2が滑落する可能性もある。この点、本実施形態では、保持部材250で第2のウェハW2を保持しているので、かかる第2のウェハW2のずれや滑落を防止することができる。
【0096】
次に、レーザ光Lの照射を行った後、チャック100を受渡位置に移動させる際にも、保持部材250で第2のウェハW2を保持する。ここで、チャック100の移動中、第2のウェハW2に慣性力が作用し、レーザ吸収層Pから第2のウェハW2がずれるおそれがある。かかる場合、その後に搬送パッド120で第2のウェハW2の裏面W2bを吸着保持する際、適切な位置を吸着保持できない。そこで、本実施形態では、このチャック100の移動中も、保持部材250で第2のウェハW2を保持し、当該第2のウェハW2のずれを防止する。
【0097】
なお、第2のウェハW2を保持する保持部材の構成は、上記保持部材250の構成に限定されない。例えば、保持部材は、第2のウェハW2の側方から、当該第2のウェハW2の上面と側面を挟持するように保持してもよい。また、保持部材は、レーザ処理の途中から、第2のウェハW2を保持するようにしてもよい。また、保持部材がレーザ光Lを透過させる材料、例えばシリコンから構成される場合、第2のウェハW2の上面を保持してもよい。
【0098】
以上の実施形態のウェハ処理システム1は洗浄装置32を有していたが、さらにウェハ処理システム1は、エッチング装置(図示せず)を有していてもよい。エッチング装置は、剥離後の第1のウェハW1の表面W1a、具体的にはレーザ吸収層Pの表面をエッチング処理する。例えば、洗浄装置32でレーザ吸収層Pの表面をスクラブ洗浄後、レーザ吸収層Pの表面に対して薬液(エッチング液)を供給し、当該表面をウェットエッチングする。また、ウェハ処理システム1は、洗浄装置32又はエッチング装置のいずれか一方を有していてもよい。
【0099】
また、以上の実施形態のウェハ処理システム1は、CMP装置(図示せず)を有していてもよい。CMP装置では、剥離後の第1のウェハW1の表面W1a、具体的にはレーザ吸収層Pの表面をCMP(Chemical Mechanical Polishing:化学機械研磨)処理する。例えば、洗浄装置32でレーザ吸収層Pの表面をスクラブ洗浄後、レーザ吸収層Pの表面に対してCMP処理を行い、レーザ吸収層Pの表面を平坦化する。なお、CMP装置は、ウェハ処理システム1の外部に設けられていてもよい。
【0100】
以上の実施形態では、レーザ吸収層Pと第2のウェハW2との界面にレーザ光Lを照射し、レーザ吸収層Pから第2のウェハW2を剥離したが、例えば
図24に示すように、第2のウェハW2にレーザ吸収層Pが残るように剥離してもよい。
【0101】
かかる場合、レーザ照射装置31において、
図24(a)に示すようにレーザ照射部110からレーザ吸収層Pとデバイス層D2の界面に、レーザ光Lをパルス状に照射する。そうすると、このレーザ光Lによって、レーザ吸収層Pとデバイス層D2との界面において剥離が生じる。
【0102】
なお、レーザ光Lの吸光位置の調整、すなわちレーザ吸収層Pの剥離位置の調整は、レーザ吸収層Pの膜種に応じて、当該レーザ吸収層Pの剥離に必要なレーザ光Lのエネルギー密度を制御することで行われる。例えば、レーザ照射部110のフォーカス開口数(NA)を調整する、あるいはレーザ光Lのフォーカス位置を変更する、レーザ光Lの元出力を変更する等を行えば、レーザ光Lのエネルギー密度を調整することができる。
【0103】
次に、搬送パッド120で第2のウェハW2の裏面W2bを吸着保持した状態で、
図24(b)に示すように搬送パッド120を上昇させて、デバイス層D2からレーザ吸収層Pを剥離する。
【0104】
本実施形態においても上記実施形態と同様の効果を享受することができる。すなわち、レーザ吸収層Pにレーザ光Lがパルス状に照射されるので、当該レーザ光Lのピークパワーを高くすることができ、その結果、レーザ吸収層Pとデバイス層D2との界面において適切に剥離を生じさせることができる。しかも、第2のウェハW2に残存するレーザ吸収層Pは酸化膜(SiO2膜)であり、このレーザ吸収層Pを、例えばその後の半導体製造プロセスにおいて、第2のウェハW2にTSV(Through-Silicon Via)を製作する際の酸化膜(絶縁膜)として利用することができる。
【0105】
また、本実施形態では、剥離後の第2のウェハW2上のレーザ吸収層Pの表面をスクラブ洗浄し、さらに上述したCMP装置でCMP処理を行ってもよい。かかる場合、レーザ吸収層Pの表面を平坦化することができる。そして、上述したようにTSVを製作する際の酸化膜(絶縁膜)として適切に利用することができる。
【0106】
以上の実施形態では、
図2に示した重合ウェハTを処理する場合について説明したが、処理対象はこれに限定されない。以下、
図25~
図28を用いて、異なる種類の重合ウェハTを処理する場合について説明する。
【0107】
図25に示す重合ウェハTを処理する場合について説明する。
図25(a)に示すように、第2のウェハW2とデバイス層D2の間に形成されたレーザ吸収層P1は、第2のウェハW2の内部に形成されている。第2のウェハW2は例えばSOI基板であり、レーザ吸収層P1は例えば酸化膜(SiO
2膜)である。すなわち、第2のウェハW2であるSi、レーザ吸収層P1であるSiO
2膜、Si膜SであるSiが順に積層されて形成されている。なお、レーザ吸収層P1には、Si膜Sとの界面で剥離するものであれば、酸化膜(SiO
2膜)以外の膜、例えばシリコンゲルマニウム(SiGe)やゲルマニウム(Ge)を用いてもよい。
【0108】
次に、
図25(b)に示すようにレーザ吸収層P1の表面に、デバイス層D2と表面膜F2を形成する。デバイス層D2と表面膜F2は、通常の基板工程(FEOL)や配線工程(BEOL)で形成される。
【0109】
次に、
図25(c)に示すように第1のウェハW1と第2のウェハW2を接合する。第1のウェハW1の表面W1aには表面膜F1が形成されており、この表面膜F1と表面膜F2が接合される。
【0110】
次に、ウェハ処理システム1のレーザ照射装置31において、
図25(d)に示すようにレーザ照射部110からレーザ吸収層P1とSi膜Sとの界面に、レーザ光Lをパルス状に照射する。そうすると、このレーザ光Lによって、レーザ吸収層P1とSi膜Sとの界面において剥離が生じる。
【0111】
次に、搬送パッド120で第2のウェハW2の裏面W2bを吸着保持した状態で、
図25(e)に示すように搬送パッド120を上昇させて、Si膜Sからレーザ吸収層P1を剥離する。
【0112】
なお、本実施形態においても、レーザ吸収層P1の剥離位置を
図24に示した場合と同様に、レーザ光Lの吸光位置、すなわちレーザ吸収層P1の剥離位置を調整して、第2のウェハW2とレーザ吸収層P1との界面で剥離を生じさせてもよい。
【0113】
図26に示す重合ウェハTを処理する場合について説明する。
図26(a)及び(b)に示すように、第2のウェハW2とデバイス層D2の間には、シリコンゲルマニウム(SiGe)からなるレーザ吸収層P2と、SiからなるSi膜Sとが、第2のウェハW2側から順に積層されて形成されている。
【0114】
次に、
図26(b)に示すようにSi膜Sの表面に、デバイス層D2と表面膜F2を形成する。
【0115】
次に、
図26(c)に示すように第1のウェハW1と第2のウェハW2を接合する。第1のウェハW1の表面W1aにはデバイス層D1と表面膜F1が形成されており、この表面膜F1と表面膜F2が接合される。
【0116】
次に、ウェハ処理システム1のレーザ照射装置31において、
図26(d)に示すようにレーザ照射部110からレーザ吸収層P2とSi膜Sとの界面に、レーザ光Lをパルス状に照射する。そうすると、このレーザ光Lによって、レーザ吸収層P2とSi膜Sとの界面において剥離が生じる。
【0117】
次に、搬送パッド120で第2のウェハW2の裏面W2bを吸着保持した状態で、
図26(e)に示すように搬送パッド120を上昇させて、Si膜Sからレーザ吸収層P2を剥離する。なお、本実施形態においても、レーザ吸収層P1の剥離位置を
図24に示した場合と同様に、レーザ光Lの吸光位置、すなわちレーザ吸収層P1の剥離位置を調整して、第2のウェハW2とレーザ吸収層P2との界面で剥離を生じさせてもよい。
【0118】
図27に示す重合ウェハTを処理する場合について説明する。
図27(a)及び(b)に示すように、第2のウェハW2とデバイス層D2の間には、酸化膜(SiO
2膜)からなるレーザ吸収層P3と、SiGeからなるSiGe膜S1と、SiからなるSi膜S2とが、第2のウェハW2側から順に積層されて形成されている。
【0119】
次に、
図27(b)に示すようにSiからなるSi膜S2の表面に、デバイス層D2と表面膜F2を形成する。
【0120】
次に、
図27(e)に示すように第1のウェハW1と第2のウェハW2を接合する。第1のウェハW1の表面W1aにはデバイス層D1と表面膜F1が形成されており、この表面膜F1と表面膜F2が接合される。
【0121】
次に、ウェハ処理システム1のレーザ照射装置31において、
図27(d)に示すようにレーザ照射部110からレーザ吸収層P3と第2のウェハW2との界面に、レーザ光Lをパルス状に照射する。そうすると、このレーザ光Lによって、レーザ吸収層P3と第2のウェハW2との界面において剥離が生じる。
【0122】
次に、搬送パッド120で第2のウェハW2の裏面W2bを吸着保持した状態で、
図27(e)に示すように搬送パッド120を上昇させて、レーザ吸収層P3から第2のウェハW2を剥離する。
【0123】
図28に示す重合ウェハTを処理する場合について説明する。重合ウェハTは、Si-nMOSにGe-pMOSを積層させた構造である。
図28(a)に示すように、第1のウェハW1の表面W1aに、デバイス層D1と表面膜F1を形成する。すなわち、第1のウェハW1はSi-nMOSである。
【0124】
次に、
図28(b)に示すように、第1のウェハW1と、Ge-pMOSである第2のウェハW2を接合する。第2のウェハW2の表面W2aには、酸化膜(SiO
2膜)からなるレーザ吸収層P4と、Geからなるデバイス層D2と、表面膜F2とが、第2のウェハW2側から順に積層されて形成されている。
【0125】
次に、
図28(c)に示すように第1のウェハW1と第2のウェハW2を接合する。具体的には、この表面膜F1と表面膜F2が接合される。
【0126】
次に、ウェハ処理システム1のレーザ照射装置31において、
図28(d)に示すようにレーザ照射部110からレーザ吸収層P4とデバイス層D2との界面に、レーザ光Lをパルス状に照射する。そうすると、このレーザ光Lによって、レーザ吸収層P4とデバイス層D2との界面において剥離が生じる。
【0127】
次に、搬送パッド120で第2のウェハW2の裏面W2bを吸着保持した状態で、
図28(e)に示すように搬送パッド120を上昇させて、デバイス層D2からレーザ吸収層P4を剥離する。なお、本実施形態においても、レーザ吸収層P1の剥離位置を
図24に示した場合と同様に、レーザ光Lの吸光位置、すなわちレーザ吸収層P1の剥離位置を調整して、第2のウェハW2とレーザ吸収層P4との界面で剥離を生じさせてもよい。
【0128】
以上の
図25~
図28に示したいずれの処理対象であっても、上記実施形態と同様の効果を享受することができる。
【0129】
以上の実施形態で処理される重合ウェハTにおいて、
図29に示すようにレーザ吸収層Pとデバイス層D2の間には、反射膜Rが設けられていてもよい。すなわち反射膜Rは、レーザ吸収層Pにおいて、レーザ光Lの入射面と反対側の面に形成されている。反射膜Rには、レーザ光Lに対する反射率が高く、融点が高い材料、例えば金属膜が用いられる。なお、デバイス層D2は機能を有する層であり、反射膜Rとは異なるものである。
【0130】
かかる場合、レーザ照射部110から発せられたレーザ光Lは、第2のウェハW2を透過し、レーザ吸収層Pにおいてほぼすべて吸収されるが、吸収しきれなかったレーザ光Lが存在したとしても、反射膜Rで反射される。その結果、レーザ光Lがデバイス層D2に到達することがなく、デバイス層D2がダメージを被るのを確実に抑制することができる。
【0131】
また、反射膜Rで反射したレーザ光Lは、レーザ吸収層Pに吸収される。したがって、第2のウェハW2の剥離効率を向上させることができる。
【0132】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0133】
31 レーザ照射装置
100 チャック
110 レーザ照射部
D1、D2 デバイス層
P レーザ吸収層
T 重合ウェハ
W1 第1のウェハ
W2 第2のウェハ