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特許7641906評価対象の評価方法、画像処理装置及び評価対象の評価システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-27
(45)【発行日】2025-03-07
(54)【発明の名称】評価対象の評価方法、画像処理装置及び評価対象の評価システム
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20250228BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20250228BHJP
   G06T 7/90 20170101ALI20250228BHJP
【FI】
C12M1/34 A
C12M1/34 B
G06T7/00 630
G06T7/90 A
G06T7/90 B
【請求項の数】 33
(21)【出願番号】P 2021555936
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(86)【国際出願番号】 JP2020037005
(87)【国際公開番号】W WO2021095381
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】P 2019205016
(32)【優先日】2019-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100176658
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 麻耶
(72)【発明者】
【氏名】井上 陽子
(72)【発明者】
【氏名】山田 幸子
(72)【発明者】
【氏名】松山 良子
(72)【発明者】
【氏名】加納 花穂
【審査官】天野 皓己
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-067605(JP,A)
【文献】特開2017-085966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00 - 3/10
G06T 7/00
G06T 7/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレートが備える複数のウェルに評価対象が保持された評価プレートの画像に対応するプレート画像内の複数の評価領域それぞれに対して、少なくとも1つの色特徴量に基づいた統計情報を取得する工程と、
前記統計情報を用いて前記複数の評価領域の色を判定する工程と、
を備え、
前記評価対象は、試験体を含み、
前記複数のウェルは、検体を更に含む前記評価対象を保持した検体用ウェルを有し、
前記プレート画像は、前記複数のウェルに対応する複数のウェル画像を含み、
前記複数の評価領域それぞれは、少なくとも1つのウェルに対応する少なくとも1つのウェル画像を有し、
前記少なくとも1つの色特徴量は、2以上の色特徴量であり、
前記統計情報は、前記2以上の色特徴量を変量とした度数分布である、
評価対象の評価方法。
【請求項2】
前記2以上の色特徴量は、色相及び彩度である、
請求項1に記載の評価対象の評価方法。
【請求項3】
前記複数の評価領域の色を判定する工程では、前記統計情報の類似度に基づいて、前記複数の評価領域の色を判定する、
請求項1または2に記載の評価対象の評価方法。
【請求項4】
前記複数の評価領域の色を判定する工程は、
前記統計情報の類似度に基づいて、複数の色候補の中から前記複数の評価領域の色を1次判定する工程と、
前記1次判定の結果に基づいて、前記複数の色候補に対して、前記少なくとも1つの色特徴量に対する第1基準統計情報を取得する工程と、
前記第1基準統計情報と前記統計情報の類似度を用いて前記複数の評価領域の色を最終判定する工程と、
を備え、
前記第1基準統計情報を取得する工程では、前記第1基準統計情報を、前記複数の評価領域に対する前記統計情報のうち、前記1次判定の結果において各色に判定された少なくとも1つの評価領域の統計情報に基づいて取得する、
請求項に記載の評価対象の評価方法。
【請求項5】
前記複数の評価領域は、前記複数のウェル画像であり、
前記複数の評価領域の色を判定する工程は、
前記統計情報の類似度に基づいて、複数の色候補の中から前記複数のウェル画像の色を1次判定する工程と、
前記1次判定の結果に基づいて、前記複数の色候補に対して、前記少なくとも1つの色特徴量に対する第1基準統計情報を取得する工程と、
前記統計情報と前記第1基準統計情報の類似度を用いて、前記複数の色候補の中から前記複数のウェル画像の色を2次判定する工程と、
前記2次判定の結果に基づいて、前記複数の色候補に対して、前記少なくとも1つの色特徴量に対する第2基準統計情報を取得する工程と、
前記第2基準統計情報を用いて前記複数のウェル画像の色を3次判定する工程と、
を有し、
前記プレートには、前記複数のウェルのうち少なくとも1つのウェルを有する第1~第N(Nは2以上の整数)の区画が設定されており、
前記第2基準統計情報を取得する工程では、前記プレート画像内の前記第1~第Nの区画に対応する第1~第Nの区画画像のうち第iの区画画像において、前記複数の色候補に対する前記第2基準統計情報を、前記複数のウェル画像に対する前記統計情報のうち、同じ色候補に判定された少なくとも1つのウェル画像の統計情報に基づいて取得し、
前記複数のウェル画像の色を3次判定する工程では、前記複数のウェル画像のうち前記第iの区画に属するウェル画像の色を、前記第iの区画画像に対して取得された前記第2基準統計情報と、前記複数のウェル画像に対する前記統計情報のうち前記第iの区画画像に属する少なくとも1つのウェルの統計情報との類似度に基づいて判定することによって、前記複数のウェル画像の色を最終判定する、
請求項に記載の評価対象の評価方法。
【請求項6】
前記複数の評価領域の色を判定する工程では、複数の色候補それぞれに対する基準統計情報であって前記少なくとも1つの色特徴量に基づいた前記基準統計情報と、前記統計情報との類似度に基づいて、前記複数の評価領域の色を判定する、
請求項1または2に記載の評価対象の評価方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの色特徴量に基づいた透明度変化検出用の基準統計情報と、前記統計情報との類似度に基づいて、前記複数の評価領域の透明度変化を検出する工程を更に備える、
請求項1~の何れか一項に記載の評価対象の評価方法。
【請求項8】
前記複数のウェルは、溶媒対照用の少なくとも1つの溶媒対照ウェルを更に含み、
前記複数の評価領域の一つは、前記少なくとも1つの溶媒対照ウェルに対応する少なくとも1つの溶媒対照ウェル画像を含む溶媒対照領域であり、
前記複数の評価領域の透明度変化を検出する工程では、
前記複数の評価領域に対する前記統計情報のうち前記溶媒対照領域の統計情報を透明度変化検出用の基準統計情報として、前記溶媒対照領域の統計情報と前記複数の評価領域に対する前記統計情報のうち残りの統計情報との類似度に基づいて、前記複数の評価領域の透明度変化を検出する、
請求項に記載の評価対象の評価方法。
【請求項9】
前記複数のウェル画像に基づいて、前記複数のウェルに保持された前記評価対象の試験体の形状変化の有無を検出する工程を更に備える、
請求項1~の何れか一項に記載の評価対象の評価方法。
【請求項10】
前記複数のウェル画像に基づいて、前記複数のウェル内の異物の有無を検出する工程を更に備える、
請求項1~の何れか一項に記載の評価対象の評価方法。
【請求項11】
前記複数のウェル内の異物の有無を検出する工程は、
前記複数のウェル画像それぞれに設定した第1輝度閾値に基づいて、前記異物の有無を検出する工程と、
前記複数のウェル画像それぞれにおいて、前記ウェルの深さ方向からみた場合における前記ウェルの底部の領域に対応する内部領域を囲う外部領域において設定された第2輝度閾値に基づいて、前記外部領域内の前記異物の有無を検出する工程と、
を有し、
前記第1輝度閾値と前記第2輝度閾値とは異なり、
前記複数のウェルそれぞれにおいて、前記底部の面積は、前記底部と反対側の開口の面積より小さい、
請求項10に記載の評価対象の評価方法。
【請求項12】
前記プレートは、評価すべきプレートが有する複数の評価ウェルに、前記異物が生じるように選択され且つ調整された前記試験体および前記検体を含む評価サンプルを前記複数の評価ウェルに注入してから一定時間経過した後、前記複数の評価ウェルのうち少なくとも一つの評価ウェルが前記異物を保持している場合に適正のプレートと判定するプレート判定方法によって、適正と判定されるプレートである、
請求項10または11に記載の評価対象の評価方法。
【請求項13】
前記プレートは、
表面コーティングが施されていないポリスチレン製プレート、
Poly-D-Lysineが表面コーティングされたポリスチレン製プレート、
表面に組織培養処理が施された環状オレフィンコポリマー製のプレート、または、
表面コーティングが施されていないシクロオレフィンポリマー製プレートである、
請求項12に記載の評価対象の評価方法。
【請求項14】
前記プレートは、
ガラス板と、
前記ガラス板の表面上に設けられた樹脂層と、
を有し、
前記樹脂層は、環状オレフィンコポリマーまたはポリスチレンによって形成されており、
前記樹脂層に前記複数のウェルに対応する複数の貫通孔が形成されており、
前記表面のうち前記複数の貫通孔で露出する領域には、コーティングが施されていないプレートである、
請求項12に記載の評価対象の評価方法。
【請求項15】
前記プレートは、
ガラス板と、
前記ガラス板の表面上に設けられた樹脂層と、
を有し、
前記樹脂層は、環状オレフィンコポリマーまたはポリスチレンによって形成されており、
前記樹脂層に前記複数のウェルに対応する複数の貫通孔が形成されており、
前記表面のうち前記複数の貫通孔で露出する領域には、コーティング層が形成されており、
前記コーティング層の材料は、フィブロネクチン、コラーゲンまたはラミニンである、
請求項12に記載の評価対象の評価方法。
【請求項16】
プレートが備える複数のウェルに評価対象が保持された評価プレートの画像に対応するプレート画像内の複数の評価領域それぞれに対して、少なくとも1つの色特徴量に基づいた統計情報を取得する工程と、
前記少なくとも1つの色特徴量に基づいた透明度変化検出用の基準統計情報と、前記統計情報との類似度に基づいて前記複数の評価領域の透明度変化を検出する工程と、
を備え、
前記評価対象は、試験体を含み、
前記複数のウェルは、検体を更に含む前記評価対象を保持した検体用ウェルを有し、
前記複数の評価領域それぞれは、少なくとも1つのウェルに対応する少なくとも1つのウェル画像を有し、
前記少なくとも1つの色特徴量は、2以上の色特徴量であり、
前記統計情報は、前記2以上の色特徴量を変量とした度数分布である、
評価対象の評価方法。
【請求項17】
プレートが備える複数のウェルに評価対象が保持された評価プレートの画像に対応するプレート画像内の複数の評価領域それぞれに対して、少なくとも1つの色特徴量に基づいた統計情報を取得する工程と、
前記統計情報を用いて前記複数の評価領域の色を判定する工程と、
を備え、
前記評価対象は、試験体を含み、
前記複数のウェルは、検体を更に含む前記評価対象を保持した検体用ウェルを有し、
前記プレート画像は、前記複数のウェルに対応する複数のウェル画像を含み、
前記複数の評価領域それぞれは、少なくとも1つのウェルに対応する少なくとも1つのウェル画像を有し、
前記複数の評価領域の色を判定する工程では、前記統計情報の類似度に基づいて、前記複数の評価領域の色を判定し、
前記複数の評価領域の色を判定する工程は、
前記統計情報の類似度に基づいて、複数の色候補の中から前記複数の評価領域の色を1次判定する工程と、
前記1次判定の結果に基づいて、前記複数の色候補に対して、前記少なくとも1つの色特徴量に対する第1基準統計情報を取得する工程と、
前記第1基準統計情報と前記統計情報の類似度を用いて前記複数の評価領域の色を最終判定する工程と、
を備え、
前記第1基準統計情報を取得する工程では、前記第1基準統計情報を、前記複数の評価領域に対する前記統計情報のうち、前記1次判定の結果において各色に判定された少なくとも1つの評価領域の統計情報に基づいて取得する、
評価対象の評価方法。
【請求項18】
プレートが備える複数のウェルに評価対象が保持された評価プレートの画像に対応するプレート画像内の複数の評価領域それぞれに対して、少なくとも1つの色特徴量に基づいた統計情報を取得する工程と、
前記統計情報を用いて前記複数の評価領域の色を判定する工程と、
を備え、
前記評価対象は、試験体を含み、
前記複数のウェルは、検体を更に含む前記評価対象を保持した検体用ウェルを有し、
前記プレート画像は、前記複数のウェルに対応する複数のウェル画像を含み、
前記複数の評価領域それぞれは、少なくとも1つのウェルに対応する少なくとも1つのウェル画像を有し、
前記複数の評価領域の色を判定する工程では、前記統計情報の類似度に基づいて、前記複数の評価領域の色を判定し、
前記複数の評価領域は、前記複数のウェル画像であり、
前記複数の評価領域の色を判定する工程は、
前記統計情報の類似度に基づいて、複数の色候補の中から前記複数のウェル画像の色を1次判定する工程と、
前記1次判定の結果に基づいて、前記複数の色候補に対して、前記少なくとも1つの色特徴量に対する第1基準統計情報を取得する工程と、
前記統計情報と前記第1基準統計情報の類似度を用いて、前記複数の色候補の中から前記複数のウェル画像の色を2次判定する工程と、
前記2次判定の結果に基づいて、前記複数の色候補に対して、前記少なくとも1つの色特徴量に対する第2基準統計情報を取得する工程と、
前記第2基準統計情報を用いて前記複数のウェル画像の色を3次判定する工程と、
を有し、
前記プレートには、前記複数のウェルのうち少なくとも1つのウェルを有する第1~第N(Nは2以上の整数)の区画が設定されており、
前記第2基準統計情報を取得する工程では、前記プレート画像内の前記第1~第Nの区画に対応する第1~第Nの区画画像のうち第iの区画画像において、前記複数の色候補に対する前記第2基準統計情報を、前記複数のウェル画像に対する前記統計情報のうち、同じ色候補に判定された少なくとも1つのウェル画像の統計情報に基づいて取得し、
前記複数のウェル画像の色を3次判定する工程では、前記複数のウェル画像のうち前記第iの区画に属するウェル画像の色を、前記第iの区画画像に対して取得された前記第2基準統計情報と、前記複数のウェル画像に対する前記統計情報のうち前記第iの区画画像に属する少なくとも1つのウェルの統計情報との類似度に基づいて判定することによって、前記複数のウェル画像の色を最終判定する、
評価対象の評価方法。
【請求項19】
プレートが備える複数のウェルに評価対象が保持された評価プレートの画像に対応するプレート画像内の複数の評価領域それぞれに対して、少なくとも1つの色特徴量に基づいた統計情報を取得する工程と、
前記統計情報を用いて前記複数の評価領域の色を判定する工程と、
前記少なくとも1つの色特徴量に基づいた透明度変化検出用の基準統計情報と、前記統計情報との類似度に基づいて、前記複数の評価領域の透明度変化を検出する工程と、
を備え、
前記評価対象は、試験体を含み、
前記複数のウェルは、検体を更に含む前記評価対象を保持した検体用ウェルを有し、
前記プレート画像は、前記複数のウェルに対応する複数のウェル画像を含み、
前記複数の評価領域それぞれは、少なくとも1つのウェルに対応する少なくとも1つのウェル画像を有し、
前記複数のウェルは、溶媒対照用の少なくとも1つの溶媒対照ウェルを更に含み、
前記複数の評価領域の一つは、前記少なくとも1つの溶媒対照ウェルに対応する少なくとも1つの溶媒対照ウェル画像を含む溶媒対照領域であり、
前記少なくとも1つの色特徴量に基づいた統計情報は度数分布であり、
前記複数の評価領域の透明度変化を検出する工程では、
前記複数の評価領域に対する前記統計情報のうち前記溶媒対照領域の統計情報を透明度変化検出用の基準統計情報として、前記溶媒対照領域の統計情報と前記複数の評価領域に対する前記統計情報のうち残りの統計情報との類似度に基づいて、前記複数の評価領域の透明度変化を検出する、
評価対象の評価方法。
【請求項20】
プレートが備える複数のウェルに評価対象が保持された評価プレートの画像に対応するプレート画像内の複数の評価領域それぞれに対して、少なくとも1つの色特徴量に基づいた統計情報を取得する工程と、
前記統計情報を用いて前記複数の評価領域の色を判定する工程と、
を備え、
前記評価対象は、試験体を含み、
前記複数のウェルは、検体を更に含む前記評価対象を保持した検体用ウェルを有し、
前記プレート画像は、前記複数のウェルに対応する複数のウェル画像を含み、
前記複数の評価領域それぞれは、少なくとも1つのウェルに対応する少なくとも1つのウェル画像を有し、
前記複数のウェル画像に基づいて、前記複数のウェル内の異物の有無を検出する工程を更に備え、
前記少なくとも1つの色特徴量に基づいた統計情報は度数分布であり、
前記複数のウェル内の異物の有無を検出する工程は、
前記複数のウェル画像それぞれに設定した第1輝度閾値に基づいて、前記異物の有無を検出する工程と、
前記複数のウェル画像それぞれにおいて、前記ウェルの深さ方向からみた場合における前記ウェルの底部の領域に対応する内部領域を囲う外部領域において設定された第2輝度閾値に基づいて、前記外部領域内の前記異物の有無を検出する工程と、
を有し、
前記第1輝度閾値と前記第2輝度閾値とは異なり、
前記複数のウェルそれぞれにおいて、前記底部の面積は、前記底部と反対側の開口の面積より小さい、
評価対象の評価方法。
【請求項21】
前記プレートは、評価すべきプレートが有する複数の評価ウェルに、前記異物が生じるように選択され且つ調整された前記試験体および前記検体を含む評価サンプルを前記複数の評価ウェルに注入してから一定時間経過した後、前記複数の評価ウェルのうち少なくとも一つの評価ウェルが前記異物を保持している場合に適正のプレートと判定するプレート判定方法によって、適正と判定されるプレートである、
請求項20に記載の評価対象の評価方法。
【請求項22】
プレートが備える複数のウェルに評価対象が保持された評価プレートの画像に対応するプレート画像内の複数の評価領域それぞれに対して、少なくとも1つの色特徴量に基づいた統計情報を取得する工程と、
前記統計情報を用いて前記複数の評価領域の色を判定する工程と、
を備え、
前記評価対象は、試験体を含み、
前記複数のウェルは、検体を更に含む前記評価対象を保持した検体用ウェルを有し、
前記プレート画像は、前記複数のウェルに対応する複数のウェル画像を含み、
前記複数の評価領域それぞれは、少なくとも1つのウェルに対応する少なくとも1つのウェル画像を有し、
前記複数のウェル画像に基づいて、前記複数のウェル内の異物の有無を検出する工程を更に備え、
前記少なくとも1つの色特徴量に基づいた統計情報は度数分布であり、
前記プレートは、評価すべきプレートが有する複数の評価ウェルに、前記異物が生じるように選択され且つ調整された前記試験体および前記検体を含む評価サンプルを前記複数の評価ウェルに注入してから一定時間経過した後、前記複数の評価ウェルのうち少なくとも一つの評価ウェルが前記異物を保持している場合に適正のプレートと判定するプレート判定方法によって、適正と判定されるプレートである、
評価対象の評価方法。
【請求項23】
前記プレートは、
表面コーティングが施されていないポリスチレン製プレート、
Poly-D-Lysineが表面コーティングされたポリスチレン製プレート、
表面に組織培養処理が施された環状オレフィンコポリマー製のプレート、または、
表面コーティングが施されていないシクロオレフィンポリマー製プレートである、
請求項21または22に記載の評価対象の評価方法。
【請求項24】
前記プレートは、
ガラス板と、
前記ガラス板の表面上に設けられた樹脂層と、
を有し、
前記樹脂層は、環状オレフィンコポリマーまたはポリスチレンによって形成されており、
前記樹脂層に前記複数のウェルに対応する複数の貫通孔が形成されており、
前記表面のうち前記複数の貫通孔で露出する領域には、コーティングが施されていないプレートである、
請求項21または22に記載の評価対象の評価方法。
【請求項25】
前記プレートは、
ガラス板と、
前記ガラス板の表面上に設けられた樹脂層と、
を有し、
前記樹脂層は、環状オレフィンコポリマーまたはポリスチレンによって形成されており、
前記樹脂層に前記複数のウェルに対応する複数の貫通孔が形成されており、
前記表面のうち前記複数の貫通孔で露出する領域には、コーティング層が形成されており、
前記コーティング層の材料は、フィブロネクチン、コラーゲンまたはラミニンである、
請求項21または22に記載の評価対象の評価方法。
【請求項26】
前記評価プレートに光を照射する照射工程を更に備え、
前記照射工程では、波長範囲430nm~460nmおよび波長範囲520nm~620nmの少なくとも一方の波長範囲内の波長の光を前記評価プレートに照射する、
請求項1~25の何れか一項に記載の評価対象の評価方法。
【請求項27】
前記照射工程において前記評価プレートに照射される光は、波長範囲430nm~460nmから選択される第1波長と、波長範囲520nm~620nmから選択される第2波長の光である、
請求項26に記載の評価対象の評価方法。
【請求項28】
前記評価プレートを撮像する撮像工程を更に備える、
請求項1~27の何れか一項に記載の評価対象の評価方法。
【請求項29】
前記撮像工程では、波長範囲430nm~460nmおよび波長範囲520nm~620nmの少なくとも一方の波長範囲内の波長の光を選択的に受光する、
請求項28に記載の評価対象の評価方法。
【請求項30】
前記撮像工程では、前記複数のウェルの底部側から前記評価プレートを撮像する、
請求項28または29に記載の評価対象の評価方法。
【請求項31】
請求項1~30の何れか一項に記載の評価対象の評価方法を実行するように構成された画像処理装置。
【請求項32】
プレートが備える複数のウェルに評価対象が保持された評価プレートを保持するプレート保持部と、
前記評価プレートを撮像する撮像部と、
前記撮像部の撮像結果に基づいて得られる前記評価プレートに対応するプレート画像を評価する請求項31に記載の画像処理装置と、
を備える、
評価対象の評価システム。
【請求項33】
前記撮像部は、前記複数のウェルの底部側に配置されている、
請求項32に記載の評価対象の評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、評価対象の評価方法、画像処理装置及び評価対象の評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
生物学的な安全性評価では、試験体に検体を加えて、その変化(例えば、色の変化)を観察することが知られている。例えば、Ames試験では、試験体として、アミノ酸合成遺伝子に対して遺伝子操作が実施され、アミノ酸の合成ができないように改良された細胞が用いられる。そして、Ames試験では上記細胞に、検体を加えた後、一定の条件で培養する。検体によって細胞のアミノ酸合成遺伝子に突然変異が生じると、細胞がアミノ酸を再び合成できるようになるので、突然変異が生じたか否かを、細胞の増殖の有無を確認することによって、評価する。この際、例えば、細胞の増殖によって色が変化する指示薬を用いれば、細胞の増殖を色の変化で評価できる。
【0003】
従来、このような安全性評価では、試験体と検体とを保持するためにシャーレを用いることが多かった。この場合、例えば同じ試験体に対して検体の濃度を変化させて安全性を評価しようとすると、濃度毎にシャーレを用意していた。そのため、検体を多量に準備する必要があった。これに対して、近年、試験体及び検体の量などの低減などのために、例えば、非特許文献1、非特許文献2及び非特許文献3に開示されているような複数のウェルを有するプレートを用いるAmes試験が知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Fluckiger-Isler S., Kamber M., “Direct comparison of the Ames microplate format (MPF) test in liquid medium with the standard Ames pre-incubation assay on agar plates by use of equivocal to weakly positive test compounds.”, Mutation Research/Genetic Toxicology and Environmental Mutagenesis747, p36-45, 2012.
【文献】Sui H., Kawakami K., Sakurai N., Hara T., Nohmi T., “Improvement and evaluation of high throughput fluctuation Ames test using 384-well plate with Salmonella typhimurium TA100 and TA98.”, Genes and Environment 31(2), p47-55, 2009.
【文献】KamberM., Fluckiger-Isler S., Engelhardt G., Jaeckh R., Zeiger E., “Comparison of the Ames II and traditional Ames test responses with respect to mutagenicity,strain specificities, need for metabolism and correlation with rodent carcinogenicity”, Mutagenesis 24(4), p359-366, 2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
生物学的な安全性評価では、試験体に検体を加えたことによる変化(例えば試験体が細胞の場合、その増殖、指示薬を用いている場合の色の変化など)は、従来、評価員の目視で評価されていた。そのため、例えば、複数のウェルを有するプレートを用いて安全性評価を行う場合、評価員の負担が大きくなるため、評価の客観性及び精度の低下が懸念される。
【0006】
そこで、本発明は、生物学的な安全性評価においてより客観的で精度の高い評価が可能な評価対象の評価方法、画像処理装置及び評価対象の評価システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る評価対象の評価方法は、プレートが備える複数のウェルに評価対象が保持された評価プレートの画像に対応するプレート画像内の複数の評価領域それぞれに対して、少なくとも1つの色特徴量に基づいた統計情報を取得する工程と、上記統計情報を用いて上記複数の評価領域の色を判定する工程と、を備え、上記評価対象は、試験体を含み、上記複数のウェルは、検体を更に含む上記評価対象を保持した検体用ウェルを有し、上記プレート画像は、上記複数のウェルに対応する複数のウェル画像を含み、上記複数の評価領域それぞれは、少なくとも1つのウェルに対応する少なくとも1つのウェル画像を有する。
【0008】
上記評価方法では、上記プレート画像における複数の評価領域に対して、少なくとも1つの色特徴量に基づいた統計情報を取得する。複数の評価領域に対して取得された統計情報を用いて評価領域の色を判定する。そのため、客観的にかつ高い精度で評価領域の色を判定できる。その結果、評価領域の色に基づいて客観的にかつ高い精度で検体の安全性を評価可能である。
【0009】
上記少なくとも1つの色特徴量は、2以上の色特徴量であってもよい。2以上の色特徴量の例は、色相及び彩度でもよい。上記統計情報は、上記2以上の色特徴量を変量とした度数分布でもよい。
【0010】
上記少なくとも1つの色特徴量は1つの色特徴量であり、上記統計情報は、上記1つの色特徴量に対する少なくとも1種の統計量を含んでもよい。
【0011】
上記複数の評価領域の色を判定する工程では、上記統計情報の類似度に基づいて、上記複数の評価領域の色を判定してもよい。
【0012】
上記複数の評価領域の色を判定する工程は、上記統計情報の類似度に基づいて、複数の色候補の中から上記複数の評価領域の色を1次判定する工程と、上記1次判定の結果に基づいて、上記複数の色候補に対して、上記少なくとも1つの色特徴量に対する第1基準統計情報を取得する工程と、上記第1基準統計情報と上記統計情報の類似度を用いて上記複数の評価領域の色を最終判定する工程と、を備え、上記第1基準統計情報を取得する工程では、上記第1基準統計情報を、上記複数の評価領域に対する上記統計情報のうち、上記1次判定の結果において各色に判定された少なくとも1つの評価領域の統計情報に基づいて取得してもよい。この場合、2回判定を行うため、より正確に評価領域の色を判定できる。
【0013】
上記複数の評価領域は、上記複数のウェル画像であり、上記複数の評価領域の色を判定する工程は、上記統計情報の類似度に基づいて、複数の色候補の中から上記複数のウェル画像の色を1次判定する工程と、上記1次判定の結果に基づいて、上記複数の色候補に対して、上記少なくとも1つの色特徴量に対する第1基準統計情報を取得する工程と、上記統計情報と上記第1基準統計情報の類似度を用いて、上記複数の色候補の中から上記複数のウェル画像の色を2次判定する工程と、上記2次判定の結果に基づいて、上記複数の色候補に対して、上記少なくとも1つの色特徴量に対する第2基準統計情報を取得する工程と、上記第2基準統計情報を用いて上記複数のウェル画像の色を3次判定する工程と、を有し、上記プレートには、上記複数のウェルのうち少なくとも1つのウェルを有する第1~第N(Nは2以上の整数)の区画が設定されており、上記第2基準統計情報を取得する工程では、上記プレート画像内の上記第1~第Nの区画に対応する第1~第Nの区画画像のうち第iの区画画像において、上記複数の色候補に対する上記第2基準統計情報を、上記複数のウェル画像に対する上記統計情報のうち、同じ色候補に判定された少なくとも1つのウェル画像の統計情報に基づいて取得し、上記複数のウェル画像の色を3次判定する工程では、上記複数のウェル画像のうち上記第iの区画に属するウェル画像の色を、上記第iの区画画像に対して取得された上記第2基準統計情報と、上記複数のウェル画像に対する上記統計情報のうち上記第iの区画画像に属する少なくとも1つのウェルの統計情報との類似度に基づいて判定することによって、上記複数のウェル画像の色を最終判定してもよい。この場合、色を3回判定するため、更に正確に評価領域の色を判定できる。
【0014】
上記複数の評価領域の色を判定する工程では、複数の色候補それぞれに対する基準統計情報であって上記少なくとも1つの色特徴量に基づいた上記基準統計情報と、上記統計情報との類似度に基づいて、上記複数の評価領域の色を判定してもよい。この場合、評価領域の色を簡易に判定可能である。
【0015】
一実施形態に係る評価対象の評価方法は、上記少なくとも1つの色特徴量に基づいた透明度変化検出用の基準統計情報と、上記統計情報との類似度に基づいて、上記複数の評価領域の透明度変化を検出する工程を更に備えもよい。例えば細胞が死滅する、あるいは検体が析出するといった変化があると、評価対象の透明度が変化する。そのため、上記方法では、例えば細胞が死滅しているか否か、あるいは検体が析出しているか否かを評価できる。
【0016】
上記複数のウェルは、溶媒対照用の少なくとも1つの溶媒対照ウェルを更に含み、上記複数の評価領域の一つは、上記少なくとも1つの溶媒対照ウェルに対応する少なくとも1つの溶媒対照ウェル画像を含む溶媒対照領域であり、上記複数の評価領域の透明度変化を検出する工程では、上記複数の評価領域に対する上記統計情報のうち上記溶媒対照領域の統計情報を透明度変化検出用の基準統計情報として、上記溶媒対照領域の統計情報と上記複数の評価領域に対する上記統計情報のうち残りの統計情報との類似度に基づいて、上記複数の評価領域の透明度変化を検出してもよい。この場合、同じプレート画像における溶媒対照領域の統計情報を基準に透明度変化を検出するため、試験条件(例えば培養温度条件)などの影響を低減でき、より正確に透明度変化を検出可能である。
【0017】
一実施形態に係る評価対象の評価方法は、上記複数のウェル画像に基づいて、上記複数のウェルに保持された上記評価対象の試験体の形状変化の有無を検出する工程を更に備えてもよい。これにより、例えば試験体として細胞を用いた場合に細胞が増殖して生じるコロニーなどを検出可能である。
【0018】
一実施形態に係る評価対象の評価方法は、上記複数のウェル画像に基づいて、上記複数のウェル内の異物の有無を検出する工程を更に備えてもよい。これにより、例えば、試験体として細胞を用いた場合、細胞が死滅して生じる異物などを検出可能である。本明細書において、異物は、試験体の形状変化により生じた構造物とは異なる。そのため、異物の内容物は、試験体の形状変化により生じた構造物の内容物とは異なる。
【0019】
上記複数のウェル内の異物の有無を検出する工程は、上記複数のウェル画像それぞれに設定した第1輝度閾値に基づいて、上記異物の有無を検出する工程と、上記複数のウェル画像それぞれにおいて、上記ウェルの深さ方向からみた場合における上記ウェルの底部の領域に対応する内部領域を囲う外部領域において設定された第2輝度閾値に基づいて、上記外部領域内の上記異物の有無を検出する工程と、を有し、上記第1輝度閾値と上記第2輝度閾値とは異なり、上記複数のウェルそれぞれにおいて、上記底部の面積は、上記底部と反対側の開口の面積より小さくてもよい。上記外部領域は、例えばウェルの内部領域より暗いため、異物を検出しにくい。しかしながら、上記構成では、外部領域に対して輝度閾値を設定して検出するため、外部領域に位置する異物も確実に検出可能である。
【0020】
上記プレートは、評価すべきプレートが有する複数の評価ウェルに、上記異物が生じるように選択され且つ調整された上記試験体および上記検体を含む評価サンプルを上記複数の評価ウェルに注入してから一定時間経過した後、上記複数の評価ウェルのうち少なくとも一つの評価ウェルが上記異物を保持している場合に適正のプレートと判定するプレート判定方法によって、適正と判定されるプレートであってもよい。「適正と判定されるプレート」は、プレート判定方法が実施され且つ判定されたプレートとともに、判定方法を適用した場合に判定されるべきプレートも含む意味である。
【0021】
この場合、上記プレート判定方法で適正と判定されるプレートは、異物を保持できるプレートである。したがって、評価対象をウェルに注入してから一定時間経過した後の評価プレート(具体的には評価対象)において、異物を適切に検出することができるので、評価対象をより正確に評価可能である。
【0022】
上記プレートは、表面コーティングが施されていないポリスチレン製プレート、Poly-D-Lysineが表面コーティングされたポリスチレン製プレート、表面に組織培養処理が施された環状オレフィンコポリマー製のプレート、または、表面コーティングが施されていないシクロオレフィンポリマー製プレートでもよい。
上記プレートは、ガラス板と、上記ガラス板の表面上に設けられた樹脂層と、を有するプレートであって、上記樹脂層は、環状オレフィンコポリマーまたはポリスチレンによって形成されており、上記樹脂層に上記複数のウェルに対応する複数の貫通孔が形成されており、上記表面のうち上記複数の貫通孔で露出する領域には、コーティングが施されていない、プレートでもよい。
或いは、上記プレートは、ガラス板と、上記ガラス板の表面上に設けられた樹脂層と、を有するプレートであって、上記樹脂層は、環状オレフィンコポリマーまたはポリスチレンによって形成されており、上記樹脂層に上記複数のウェルに対応する複数の貫通孔が形成されており、上記表面のうち上記複数の貫通孔で露出する領域には、コーティング層が形成されており、上記コーティング層の材料は、フィブロネクチン、コラーゲンまたはラミニンである、プレートでもよい。
このようなプレートでは、上記プレート判定工程で適正と判定され得る。
【0023】
本発明の他の側面に係る評価対象の評価方法は、プレートが備える複数のウェルに評価対象が保持された評価プレートの画像に対応するプレート画像内の複数の評価領域それぞれに対して、少なくとも1つの色特徴量に基づいた統計情報を取得する工程と、上記少なくとも1つの色特徴量に基づいた透明度変化検出用の基準統計情報と、上記統計情報との類似度に基づいて上記複数の評価領域の透明度変化を検出する工程と、を備え、上記評価対象は、試験体を含み、上記複数のウェルは、検体を更に含む上記評価対象を保持した検体用ウェルを有し、 上記複数の評価領域それぞれは、少なくとも1つのウェルに対応する少なくとも1つのウェル画像を有する。
【0024】
上記評価方法では、上記プレート画像における複数の評価領域に対して、少なくとも1つの色特徴量に基づいた統計情報を取得する。複数の評価領域に対して取得された統計情報を用いて評価領域の透明度変化を検出する。そのため、客観的にかつ高い精度で評価領域の透明度変化を検出できる。その結果、評価領域の透明度変化に基づいて客観的にかつ高い精度で検体の安全性を評価可能である。
【0025】
一実施形態に係る評価対象の評価方法は、上記評価プレートに光を照射する照射工程を更に備え、上記照射工程では、波長範囲430nm~460nmおよび波長範囲520nm~620nmの少なくとも一方の波長範囲内の波長の光を上記評価プレートに照射してもよい。
【0026】
この場合、評価対象の状態などの異なるウェル間の輝度差が大きくなることから、たとえば、色の違いがより明確になる。その結果、評価対象をより正確に評価可能である。
【0027】
上記照射工程において上記評価プレートに照射される光は、波長範囲430nm~460nmから選択される第1波長と、波長範囲520nm~620nmから選択される第2波長の光であってもよい。
【0028】
評価プレートでは、波長範囲430nm~460nm内の波長で表される色に近い色を有するウェル(具体的には評価対象)および波長範囲520nm~620nm内の波長で表される色に近い色を有するウェル(具体的には評価対象)のそれぞれが存在し得る。したがって、光Lが上記第1波長および第2波長を有する場合、波長範囲430nm~460nm側の色および波長範囲520nm~620nm側の色の両方に対してウェルの輝度を確保し易い。その結果、色の違いがより明確になるため、評価対象をより正確に評価可能である。
【0029】
上記評価プレートを撮像する撮像工程を更に備えてもよい。
【0030】
上記撮像工程では、波長範囲430nm~460nmおよび波長範囲520nm~620nmの少なくとも一方の波長範囲内の波長の光を選択的に受光してもよい。この場合、評価プレートを撮像して得られた画像において、評価対象の状態などの異なるウェル間の輝度差が大きくなることから、たとえば、色の違いがより明確になる。その結果、評価対象をより正確に評価可能である。
【0031】
上記撮像工程では、上記複数のウェルの底部側から上記評価プレートを撮像してもよい。例えば、試験体として細胞を用いた場合、細胞が増殖してコロニーが形成されたり、細胞が死滅して異物などが生じると、それらは、ウェルの底部に沈む傾向がある。そのため、上記複数のウェルの底部側から上記評価プレートを撮像することによって、より確実に、上記コロニー、異物などを検出可能である。
【0032】
本発明の更に他の側面に係る画像処理装置は、上記本発明に係る評価方法を実行するように構成されている。
【0033】
本発明の更に他の側面に係る評価対象の評価システムは、プレートが備える複数のウェルに評価対象が保持された評価プレートを保持するプレート保持部と、上記評価プレートを撮像する撮像部と、上記撮像部の撮像結果に基づいて得られる上記評価プレートに対応するプレート画像を評価する上記画像処理装置と、を備える。
【0034】
上記撮像部は、上記複数のウェルの底部側に配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、生物学的な安全性評価においてより客観的で精度の高い評価が可能な評価対象の評価方法、画像処理装置及び評価対象の評価システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、一実施形態に係る評価対象の評価方法で使用する評価プレートの平面図である。
図2図2は、ウェルの断面の模式図である。
図3図3は、一実施形態に係る評価対象の評価システムの模式図である。
図4図4は、色判定処理を実施する場合の演算部の機能ブロック図である。
図5図5は、プレート画像作成部で作成された評価プレートの画像(プレート画像)の一例を示す図面である。
図6図6は、HSV画像の一例を示す図面である。
図7図7は、ウェルに対して作成された度数分布の一例のヒストグラムを示す図面である。
図8図8は、1次判定のために作成された紫色及び黄色に対する類似度分布の一例を示すグラフである。
図9図9は、2次判定のために作成された類似度分布の一例を示すグラフである。
図10図10は、8個の区画毎の類似度分布の一例を示すグラフである。
図11図11は、色判定処理の一例を用いた評価方法のフローチャートの一例である。
図12図12は、色判定処理の他の例を実施する場合の演算部の機能ブロック図である。
図13図13は、色判定処理の他の例において色を判定するために作成された8個の区画毎の類似度分布の一例を示すグラフである。
図14図14は、色判定処理の他の例で使用する基準度数分布を作成する場合の演算部の機能ブロック図である。
図15図15は、色判定処理の他の例を用いた評価方法のフローチャートの一例である。
図16図16は、コロニー検出処理を実施する場合の演算部の機能ブロック図である。
図17図17は、図16に示した演算部によるコロニー検出処理を説明するための図面である。
図18図18は、コロニー検出処理を用いた評価方法のフローチャートの一例である。
図19図19は、透明度変化検出処理を実施する場合の演算部の機能ブロック図である。
図20図20は、8個の区画間の区画度数分布の類似度を示す図表である。
図21図21は、透明度変化検出処理を用いた評価方法のフローチャートの一例である。
図22図22は、異物検出処理を行う場合の演算部の機能ブロック図である。
図23図23は、図22に示した演算部による異物検出処理を説明するための図面である。
図24図24は、異物検出処理を用いた評価方法のフローチャートの一例である。
図25図25は、実験例1における試験条件を示す図表である。
図26図26は、実験例1における色判定結果を示す図表である。
図27図27は、実験例1における色判定結果を示す図表である。
図28図28は、実験例1における色判定結果を示す図表である。
図29図29は、実験例1における色判定結果を示す図表である。
図30図30は、実験例1におけるコロニー検出結果を示す図表である。
図31図31は、実験例1において、評価プレートをウェルの底部と反対側から撮像して得られた画像に基づいたコロニー検出結果を示す図表である。
図32図32は、実験例1における異物検出結果を示す図表である。
図33図33は、実験例1において、評価プレートをウェルの底部と反対側から撮像して得られた画像に基づいた異物検出結果を示す図表である。
図34図34は、実験例2における観察装置の模式図である。
図35図35は、実験例2におけるサンプルNo.1の評価プレートの撮像結果に基づく区画別スペクトル分布を示した図面である。
図36図36は、実験例2におけるサンプルNo.2の評価プレートの撮像結果に基づく区画別スペクトル分布を示した図面である。
図37図37は、実験例2におけるサンプルNo.3の評価プレートの撮像結果に基づく区画別スペクトル分布を示した図面である。
図38図38は、実験例2におけるサンプルNo.4の評価プレートの撮像結果に基づく区画別スペクトル分布を示した図面である。
図39図39は、実験例2におけるサンプルNo.5の評価プレートの撮像結果に基づく区画別スペクトル分布を示した図面である。
図40図40は、実験例2における波長毎の区画間の輝度差を示したグラフである。
図41図41は、プレートの他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0038】
本実施形態では、検体の安全性を評価する実施形態を説明する。具体的には、Ames試験を用いて検体の安全性を評価する場合を説明する。
【0039】
まず、本実施形態で用いるAmes試験の概要を説明する。Ames試験では、アミノ酸合成遺伝子に対して遺伝子操作が実施され、アミノ酸の合成ができないように改良された細胞を試験体として用いる。Ames試験では上記細胞に、検体を加える。その後、一定の条件で培養する。検体によって細胞のアミノ酸合成遺伝子に突然変異が生じると、細胞がアミノ酸を再び合成できるようになる。そのため、突然変異が生じたか否かを、細胞の増殖の有無を確認することによって、遺伝毒性を評価する。
【0040】
更に、通常、Ames試験では、検体が細胞に対して毒性を有するか否かを確認する細胞毒性評価が行われる。
【0041】
本実施形態では、Ames試験による遺伝毒性評価、細胞毒性評価に適用可能な評価システム、画像処理装置及び評価方法を説明する。以下のAmes試験に基づいた実施形態の説明では、断らない限り、試験体は細胞である。
【0042】
図1は、一実施形態に係る評価方法で使用する評価プレート10の平面図である。評価プレート10は、プレート(plate)11を有する。プレート11は、複数のウェル13を有する。本実施形態では、プレート11は、2次元(16×24)に配列された384個のウェル13を有する。
【0043】
プレート11には、第1~第Nの区画(Nは2以上の整数)が仮想的に設定されている。本実施形態では、図1に示したように、Nが8の場合、すなわち、8個の区画が仮想的に設定されている場合を説明する。8個の区画を、以下、区画Se1~Se8と称す。区画Se1~Se8は、4×12個(48個)のウェル13(ウェル群)を含む領域である。区画Se1は、溶媒対照区画であり、区画Se8は、陽性対照区画である。溶媒対照区画は、陰性対照区画として機能する。
【0044】
ウェル(well)13は、プレート11に形成された凹部(窪み)である。ウェル13は、評価対象14を保持する。区画Se1~Se8のそれぞれに属するウェル13に保持される評価対象14を区別して説明する場合、評価対象14a~14hと称す。
【0045】
評価対象14a~14hは、細胞が分散された(或いは懸濁された)培養液を有する。384個の全てのウェル13には、同じ量の培養液が保持されている。ウェル13で保持される培養液内の細胞の量もウェル13間で同じである。細胞の例は、アミノ酸要求性変異を有する微生物、生物由来の細胞等である。アミノ酸要求性変異を有する微生物は、ヒスチジン要求性のネズミチフス菌(たとえば、TA1535、TA1537、TA97、TA97a、TA98、TA100、TA92、TA94、TA102、TA104、TA1538、TA7001、TA7002、TA7003、TA7004、TA7005,TA7006、各種YG株など)、トリプトファン要求性の大腸菌(たとえば、WP2、 WP2uvrA、WP2/pKM101、WP2uvrA/pKM101など)、その他の微生物などである。生物由来の細胞は、たとえば、哺乳動物由来の培養細胞、その他脊椎動物由来の細胞、昆虫由来の細胞などである。評価対象14a~14hに含まれる細胞は、複数の種類の細胞が混合された細胞でもよい。培養液の例は、アミノ酸をわずかに含むリン酸緩衝液である。
【0046】
評価対象14a~14hは、指示薬を更に含む。指示薬の量は、評価対象14a~14hで同じ(すなわち全てのウェル13で同じ)である。本実施形態において、指示薬は、pH指示薬である。pH指示薬の例は、ブロモクレゾールパープルである。本実施形態では、pH指示薬の色は、陰性結果の場合(細胞に突然変異が生じなかった場合)、紫色であり、陽性結果の場合(細胞に突然変異が生じた場合)は、黄色である。したがって、本実施形態における色候補は、紫色及び黄色である。本明細書において、色候補は、指示薬(例えばph指示薬)を使用した場合のように、例えば所定の反応の前後によって評価対象が示すことが想定される色である。
【0047】
評価対象14b~14gは、上記細胞が分散された培養液と指示薬の他、検体が溶媒に溶解または均一に分散された液(検体溶液)を更に含む。よって、評価対象14b~14gを保持する区画Se2~Se7のウェル13は検体を保持するウェル(検体用ウェル)である。検体は、安全性(本実施形態では遺伝毒性)が評価されるべき物質(例えば化学物質)である。溶媒としては、水、ジメチルスルフォキシド(DMSO)等が挙げられる。評価対象14b~14gは、検体の濃度が異なる点以外は、同じである。区画Se2に属する全てのウェル13の評価対象14b内の検体溶液の量は同じである。区画Se3~区画Se7においても同様である。
【0048】
評価対象14aは、上記細胞を含む培養液及び指示薬の他、溶媒対照液を含む。よって、評価対象14aを保持する区画Se1のウェル13は溶媒対照ウェルである。溶媒対照液は、検体溶液に使用した溶媒である。ただし、溶媒対照液は、細胞に影響を与えない液体であればよい。溶媒対照液としては、例えば、水、DMSOである。区画Se1に属する全てのウェル13において評価対象14a内の溶媒対照液の量は同じである。
【0049】
評価対象14hは、上記細胞を含む培養液及び指示薬の他、陽性対照液を含む。よって、評価対象14hを保持する区画Se8のウェル13は陽性対照ウェルである。陽性対照液は、陽性対照化合物と溶媒とを含む溶液である。陽性対照化合物は、細胞に対して陽性として知られる化合物であればよい。陽性対照化合物の例は、9AA(9-Aminoacridine)、4-NQO(4-Nitroquinoline-N-oxide)、2-AA(2-Aminoanthracene)及び2-NF(2-Nitrofluorene)を含む。溶媒は、検体溶液に使用した溶媒と同じでなくてもよい。溶媒としては、水、DMSO等が挙げられる。陽性区画である区画Se8に属する全てのウェル13で保持される陽性対照液の量は同じである。
【0050】
検体の代謝活性化の有無による影響を調べる場合、評価対象14a~14hは、更に、S9mixを含む。S9mixは、動物の肝臓の抽出物に補酵素を加えた液体である。S9mixは、肝臓ホモジネートの9,000×g上清(S9)に、NADPHなどの電子伝達系に関わる補助因子が加えられ調整された液体とし得る。
【0051】
図1及び図2を参照して、ウェル13の構成を更に説明する。図2は、ウェルの断面の模式図である。図2では、評価対象14を模式的に図示している。本実施形態において、ウェル13の平面視形状(ウェル13の深さ方向からみた形状)は、正方形である。ウェル13の開口部の一辺の長さの例は、3.0mm~4.0mmである。ウェル13の深さの例は、9.0mm~15.0mmである。このようなサイズのウェルを有するプレート11は、マイクロプレートとして知られている。図2に示したように、ウェル13は、底部13aに向けて先細りしている。よって、底部13aの面積は、ウェル13の開口13bの面積より小さい。
【0052】
評価プレート10は、プレート11の各ウェル13に対応する評価対象14が注入され、一定の培養処理が施された後において、評価対象14の安全性評価が可能な状態となったプレートである。
【0053】
次に、評価プレート10に保持されている検体の安全性の評価方法に使用する評価システム20を説明する。図3は、一実施形態に係る評価システム20の模式図である。評価システム20は、観察装置30と、画像処理装置40とを備える。
【0054】
[観察装置]
観察装置30は、ステージ(プレート保持部)31と、照明装置32と、撮像部33とを有する。ステージ31は、評価プレート10を支持する。評価プレート10は、評価プレート10の底部(ウェル13の底部13a側)がステージ31側に位置するようにステージ31に配置される。ステージ31は、照明装置32から出力される光Lを撮像部33に向けて通すように構成されている。例えば、ステージ31の材料が光透過性を有してもよいし、評価プレート10における384個のウェル13が形成されている領域と対応する領域に開口又は光Lを透過する窓部が形成されていてもよい。本実施形態では、ステージ31は、図3の白抜き矢印の方向に搬送可能に構成されている。
【0055】
照明装置32は、評価プレート10上(評価プレート10からみてステージ31と反対側)に配置されている。照明装置32は、光Lを評価プレート10に照射する。照明装置32の例はLED照明であり、光Lの例は、波長400nm~780nmの光である。
【0056】
撮像部33は、評価プレート10を透過した光Lを受けて、評価プレート10を撮像する。撮像部33は、評価プレート10を目視した場合と実質的に同様のカラー画像(RGB画像)を取得する。撮像部33は、撮像器33aと、集光部33bとを有する。
【0057】
撮像器33aの例は、2次元センサ(又はカメラ)及びラインセンサを含む。2次元センサの例は、CCDカメラ、CMOSカメラである。
【0058】
集光部33bは、光Lを、集光して撮像器33aに入射する。集光部33bは、少なくとも1つのレンズを含む。撮像器33a自体が、集光光学機能を有する場合は、撮像部33は、集光部33bを有しなくてもよい。
【0059】
本実施形態では、撮像部33の撮像領域は、評価プレート10の大きさより小さい。この場合、撮像部33は、複数回に分けて評価プレート10を撮像する。ただし、撮像部33は、複数の撮像部33を備えてもよいし、撮像部33の撮像領域は、評価プレート10全体を一度に撮像可能な大きさでもよい。
【0060】
撮像部33は、画像処理装置40に有線通信又は無線通信で接続されており、取得した画像(具体的には画像データ)を画像処理装置40に出力する。撮像部33から画像処理装置40への画像の入力は、例えば、DVD等の記憶媒体などを介して行われてもよい。
【0061】
観察装置30において、評価プレート10に対する照明装置32及び撮像部33の位置は、反転していてもよい。すなわち、図3において、撮像部33を評価プレート10上に配置し、照明装置32をステージ31の下側に配置した状態で、評価プレート10を撮像してもよい。
【0062】
上記観察装置30を利用して評価プレート10を撮像する方法を説明する。評価プレート10を撮像する場合、ステージ31に評価プレート10を配置する。ステージ31を一方向に移動させながら、評価プレート10に照明装置32から光Lを照射する(照射工程)。このように光Lを評価プレート10に照射した状態で撮像部33で評価プレート10を撮像する(撮像工程)。
【0063】
本実施形態では、撮像部33の撮像領域が評価プレート10の大きさより小さいため、1度の撮像では、評価プレート10の部分画像が得られる。よって、撮像工程では、撮像部33を用いて、上記部分画像を合成して評価プレート10の全体の画像が形成されるように、評価プレート10を複数回撮像する。
【0064】
撮像部33は、取得した画像を画像処理装置40に入力する。
【0065】
[画像処理装置]
画像処理装置40は、入力部41と、演算部42(実行部)と、出力部43とを有する。画像処理装置40は、コンピュータである。画像処理装置40は、通常、コンピュータが有する記憶部(メモリ)などを更に有し得る。画像処理装置40は、各種プログラムを実施することで、画像処理装置40として機能するパーソナルコンピュータでもよいし、評価のための専用装置でもよい。画像処理装置40は、評価プレート10を評価する評価装置または評価支援装置として機能する。
【0066】
入力部41は、撮像部33で取得した画像のデータが入力される(又は受け付ける)入力手段である。
【0067】
演算部42は、入力部41に入力された画像に基づくプレート画像P1(図5参照)を作成する。図5はプレート画像P1の一例を示す図面である。プレート画像P1は、評価プレート10に対応する画像である。プレート画像P1において、ウェル13、区画S1~Se8に対応する部分を、それぞれウェル画像13p、区画画像Se1p~Se8pと称す。演算部42は、プレート画像P1を処理することによって、ウェル13の色判定処理を実施する。演算部42は、ウェル13内のコロニー検出処理、ウェル13の透明度変化検出処理及びウェル13内の異物検出処理の少なくとも1つを更に実施してもよい。本実施形態では、演算部42が、コロニー検出処理、透明度変化検出処理及び異物検出処理も実施可能である場合を説明する。
【0068】
本実施形態において「ウェルの色」とは、ウェル13内に保持された評価対象14の色である。演算部42は、ウェル画像13pの色を判定することによって、ウェル13の色を判定する。本実施形態において「ウェル内のコロニー(colony)」とは、ウェル13内に保持された評価対象14である細胞に生じた形状変化としてのコロニーである。コロニーは、細胞(試験体)の形状変化であるため、輪郭と内部の境が明確ではない構造物である。本実施形態において「ウェルの透明度変化」は、ウェル13内に保持された評価対象14の透明度変化であり、演算部42は、ウェル画像13pの透明度変化を判定することによって、ウェル13の透明度変化を判定する。本実施形態において「ウェル内の異物」とは、ウェル13内に保持された評価対象14に生じた異物であり、コロニーのように細胞(試験体)の形状変化とは異なり、異物の周囲と屈折率が異なる界面で区切られた物質(又は構造物)である。そのため、異物における輪郭と内部の境は明確(少なくともコロニーの場合より明確)である。
【0069】
入力部41が、例えばプレート画像P1を記憶部に出力する場合には、演算部42は、記憶部にアクセスして処理すべきデータを取得すればよい。演算部42については後述する。
【0070】
出力部43は、演算部42の結果を評価者が参照するために表示出力を行う。出力部43は、例えば、外部の表示装置に演算部42の結果を出力してもよいし、出力部43自体が表示機能を有してもよい。出力部43は、演算部42に処理過程中のデータの出力表示を行ってもよい。
【0071】
前述したように、本実施形態では、演算部42は、色判定処理、コロニー検出処理、透明度変化検出処理及び異物検出処理を実施可能である。
【0072】
各処理を実施する場合の演算部42を説明する。ここでは、撮像部33の撮像領域が、評価プレート10の大きさより小さく、評価プレート10全体の画像を得るために、撮像部33が評価プレート10の異なる領域を複数回撮像した場合を説明する。
【0073】
[色判定処理]
色判定処理について、第1の色判定処理と、第2の色判定処理を説明する。色判定には、少なくとも1つの色特徴量に基づいた統計情報を使用する。統計情報は、少なくとも1種の統計量を含む。本実施形態では、2以上の色特徴量として色相及び彩度を用いるとともに、統計情報として度数分布(統計量)を用いる場合を説明する。
【0074】
[第1の色判定処理]
第1の色判定処理を実施する場合の演算部42を、演算部42Aと称す。図4は、演算部42Aの機能ブロック図である。演算部42Aは、プレート画像作成部42aと、HSV画像作成部42b、度数分布作成部(統計情報取得部)42c、第1判定部42d、第1基準作成部(第1基準取得部)42e、第2判定部42f、第2基準作成部(第2基準取得部)42g及び第3判定部42hを有する。
【0075】
プレート画像作成部42aは、入力部41に入力された複数の画像(各画像は、評価プレート10の部分画像)を合成して、図5に示したように、評価プレート10に対応するプレート画像P1を作成する。プレート画像P1は、カラー画像(RGB画像)である。
【0076】
HSV画像作成部42bは、プレート画像作成部42aで作成されたプレート画像P1を、HSV画像P2に変換する。図6は、HSV画像P2の一例を示す図面である。図6に示したHSV画像P2は、図5に示したプレート画像P1をHSV変換した画像である。RGB画像からHSV画像への変換は、公知の変換式(又はそれに基づいた公知のプログラム)に基づいて行えばよい。HSV画像P2はプレート画像P1をHSV変換した画像であることから、HSV画像P2におけるウェル13、区画Se1~Se8に対応する部分画像も、ウェル画像13p、区画画像Se1p~Se8pと称す。
【0077】
度数分布作成部42cは、HSV画像作成部42bで作成されたHSV画像P2を用いて、ウェル画像13p(換言すれば、ウェル13)毎に、色相及び彩度を変量とする度数分布を作成(すなわち、色相及び彩度を変量とする度数分布としての統計情報を取得)する。そのため、度数分布作成部42cは、評価プレート10が有する全てのウェル13に対応する複数の度数分布(本実施形態では、384個の度数分布)を作成する。度数分布作成部42cによる度数分布の具体的方法の一例を説明する。
【0078】
度数分布作成部42cは、HSV画像P2における各ウェル画像13pの領域を特定する。例えば、図6の破線で示したように、ウェル画像13pにROI(Region of interest)を設定すればよい。図6では、例示のために一つのウェル画像13pにROIを設定した状態を示している。ROIは、評価者によって指定された領域として設定してもよいし、例えば、予め入力されているプレート11のデータ(形状、サイズ等)、ウェル13に何も入っていない状態のプレート11の画像、HSV画像の輝度情報等に基づいて度数分布作成部42cが自動で設定してもよい。
【0079】
度数分布作成部42cは、特定したウェル画像13pに含まれる複数の画素が有する画像情報(色相、彩度等)を用いて、上記度数分布を作成する。本実施形態では、色相及び彩度をそれぞれ36に分けて、36×36=1296個の特徴量(本実施形態では画素数)を抽出することによって、度数分布を作成する。
【0080】
図7は、作成した度数分布の一例のヒストグラムを示す図面である。図7の横軸は、色相及び彩度を示しており、縦軸は、画素数を示している。図7は、一つのウェル画像13pに対するヒストグラムである。
【0081】
第1判定部42dは、まず、度数分布作成部42cで作成された複数の度数分布間の類似度を算出する。類似度は、例えば、ユークリッド距離を用いて算出されてもよいし、或いは、相関係数を用いて算出されてもよい。類似度は、たとえば、パターンマッチングを利用して算出されてもよい。類似度の算出には、深層学習を利用してもよい。
【0082】
複数の度数分布間の類似度を算出する場合の一例を説明する。本実施形態では、ウェル画像13pの色(すなわち、ウェル13の色)を紫色又は黄色に判定するため、各度数数分布における紫色領域(色候補領域)の類似度及び各度数数分布における黄色領域(色候補領域)の類似度を算出する。紫色領域及び黄色領域は、ウェル画像13pの色判定のために、色相及び彩度に基づいて例えば評価者によって設定され得る。図7の例では、例えば、色相が20~35であり且つ彩度が0~15を紫色領域と設定し、色相が0~15であり且つ彩度が0~25を黄色領域と設定できる。
【0083】
複数のウェル画像13pのうち任意の一つを着目ウェル画像と称す。この場合、着目ウェル画像に対応する度数分布のうち紫色領域の度数分布と、紫色領域の度数の総和が一定値以上の全てのウェル画像13pの紫色領域の平均度数分布との類似度を、その着目ウェル画像の紫色領域の類似度とする。同様に、着目ウェル画像における黄色領域の度数分布と、黄色領域の度数の総和が一定値以上の全てのウェル画像13pの黄色領域の平均度数分布との類似度を、その着目ウェル画像の黄色領域の類似度とする。これにより、ウェル画像13p毎に紫色領域及び黄色領域の類似度の組が得られるので、紫色及び黄色に対する類似度分布が取得される。
【0084】
或いは、着目ウェル画像に対応する度数分布と、紫色領域の度数の総和が一定値以上の全てのウェル画像13pの平均度数分布との類似度を、その着目ウェル画像の紫色に対する類似度としてもよい。同様に、着目ウェル画像に対応する度数分布と、黄色領域の度数の総和が一定値以上の全てのウェル画像13pの平均度数分布との類似度を、その着目ウェル画像の紫色に対する類似度としてもよい。この場合でも、紫色及び黄色に対する類似度分布が取得される。
【0085】
図8は、紫色及び黄色に対する類似度分布の一例のグラフである。具体的には、各ウェル画像13pに対して算出された紫色の類似度及び黄色の類似度の組を、紫色の類似度及び黄色の類似度に対してマッピングすることで得られたグラフである。図8の横軸は、紫色の類似度を示しており、数字が大きくなるにつれて紫色に類似していることを示している。縦軸は、黄色の類似度を示しており、数字が大きくなるにつれて黄色に類似していることを示している。
【0086】
第1判定部42dは、取得した類似度分布に基づいて各ウェル画像13pの色を紫色又は黄色に1次判定する。例えば、紫色と黄色とを分けるための閾値を用いて、ウェル画像13pを紫色又は黄色と判定すればよい。閾値は、例えば図8に示したグラフを評価者に提示して評価者が設定してもよいし、クラスター解析におけるWard法などの階層的クラスタリング手法やK-meansなどの非階層的クラスタリング手法、線形判別法などによって第1判定部42dが自動で設定してもよい。
【0087】
第1基準作成部42eは、評価プレート10が有する全てのウェル画像13pのうち、第1判定部42dにおいて紫色及び黄色それぞれに判定された複数のウェル画像13pの度数分布(度数分布作成部42cで作成された度数分布)に基づいて、紫色及び黄色毎の第1基準度数分布を作成する。
【0088】
本実施形態では、紫色に判定された複数のウェル画像13pの度数分布を平均して得られる平均度数分布に基づいて、紫色の第1基準度数分布を作成する。同様に、黄色に判定された複数のウェル画像13pの度数分布を平均して得られる平均度数分布に基づいて、黄色の第1基準度数分布を作成する。
【0089】
第2判定部42fは、第1基準作成部42eで作成された紫色及び黄色毎の第1基準度数分布と、評価プレート10が有する全てのウェル画像13pの度数分布とに基づいて、全てのウェル画像13pを紫色又は黄色に2次判定する。
【0090】
具体的には、第2判定部42fは、紫色及び黄色毎の第1基準度数分布それぞれと、全てのウェル画像13pの度数分布との類似度を算出する。色毎の第1基準度数分布を用いるため、上記度数分布作成部42cにおける度数分布の作成方法の一例のように、紫色領域及び黄色領域に分けずに全領域を対象として類似度を算出すればよい。ウェル画像13p毎に紫色及び黄色に対する類似度の組が得られるので、紫色及び黄色に対する類似度分布が取得される。
【0091】
図9は、第2判定部42fで取得される類似度分布のグラフである。図9の横軸及び縦軸は、図8の横軸及び縦軸と同様である。
【0092】
第2判定部42fは、取得した類似度分布に基づいて各ウェル画像13pを紫色又は黄色に判定する。例えば、紫色と黄色とを分けるための閾値を用いて、ウェル画像13pを紫色及び黄色と判定すればよい。閾値は、例えば図9に示したグラフを評価者に提示して評価者が設定してもよいし、クラスター解析におけるWard法などの階層的クラスタリング手法やK-meansなどの非階層的クラスタリング手法、線形判別法などによって第2判定部42fが自動で設定してもよい。
【0093】
第2基準作成部42gは、評価プレート10の区画Se1~Se8それぞれに対応する画像である区画画像Se1p~Se8p毎に、第2判定部42fにおいて紫色及び黄色それぞれに判定された複数のウェル画像13pの度数分布(度数分布作成部42cで作成された度数分布)に基づいて、紫色及び黄色毎の第2基準度数分布を作成する。
【0094】
具体的には、区画画像Se1p~Se8pのうち任意の一つを着目区画画像と称した場合、着目区画画像に属する複数のウェル画像13p(本実施形態では、48個のウェル画像13p)のうち、紫色に判定された複数のウェル画像13pの度数分布を平均して得られる平均度数分布に基づいて、紫色の第2基準度数分布を作成する。同様に、着目区画画像内の黄色に判定された複数のウェル画像13pの度数分布を平均して得られる平均度数分布に基づいて、黄色の第2基準度数分布を作成する。上記着目区画画像は、プレート11に設定されている複数の区画を、前述したように、第1~第Nの区画と表した場合において、第1~第Nの区画に対応する画像である第1~第Nの区画画像のうち、第iの区画(iは、2以上N以下の整数)に対応する第iの区画画像に相当する。
【0095】
第3判定部42hは、区画画像Se1p~Se8p毎に、第2基準作成部42gで作成された紫色及び黄色毎の第2基準度数分布と、区画画像Se1p~Se8pそれぞれに属する複数のウェル画像13pの度数分布とに基づいて、区画画像Se1p~Se8pにそれぞれ属する複数のウェル画像13pの色を3次判定する。これにより、評価プレート10の全てのウェル13の色が3次判定される。本実施形態では、第3判定部42hによる色の判定結果が最終判定結果である。
【0096】
前述したように、区画画像Se1p~Se8pのうち任意の一つを着目区画画像と称し、第3判定部42hによる判定方法を具体的に説明する。
【0097】
まず、第2判定部42fにおける全てのウェル画像13pの度数分布の代わりに、着目区画画像の全てのウェル画像13pの度数分布を用いるとともに、第1基準度数分布の代わりに第2度数分布を用いる点以外は、第2判定部42fの場合と同様にして、ウェル画像13pにおける類似度分布を取得する。図10は、区画画像Se1p~Se8p毎の類似度分布のグラフである。図10内のSe1p~Se8pは、それぞれ区画画像Se1p~Se8pを示す。図10の横軸及び縦軸は、図8の横軸及び縦軸と同様である。図10中の白丸は、黄色に判定されるウェル画像13pに対応し、黒丸は、紫色に判定されるウェル画像13pに対応する。
【0098】
第3判定部42hは、取得した類似度分布に基づいて、区画画像Se1p~Se8p内の全てのウェル画像13pの色を判定する。例えば、紫色及び黄色を分けるための閾値を用いて、ウェル画像13pの色を判定すればよい。閾値は、例えば図10に示した各グラフを評価者に提示して評価者が設定してもよいし、クラスター解析におけるWard法などの階層的クラスタリング手法やK-meansなどの非階層的クラスタリング手法、線形判別法などによって第3判定部42hが自動で設定してもよい。前述したように、第3判定部42hの判定結果が、本実施形態における最終判定結果である。そのため、第3判定部42hの判定においては、例えば、上記閾値を用いる場合、閾値上又は閾値近傍の領域に位置するウェル画像13p(又はウェル13)の色は、紫色及び黄色の中間色と判定してもよい。
【0099】
着目区画画像内の全てのウェル画像13pの色が判定されることから、評価プレート10内の全てのウェル13の色が判定される。
【0100】
第3判定部42hは、判定結果を示すデータを作成してもよい。具体的には、各ウェル画像13p(又はウェル13)が、判定された色(紫色または黄色)に応じた色で表された出力用画像データを作成してもよい。この場合、上記中間色は、例えば、緑色として表示し得る。
【0101】
上記第1の色判定処理を用いた評価プレート10の評価方法(検体の評価方法)の一例を説明する。図11は、第1の色判定処理を用いた評価方法のフローチャートの一例である。第1の色判定処理を用いた評価方法を実施する場合、演算部42は、演算部42Aとして機能する。ここでは、観察装置30の撮像部33で取得された画像が 入力部41によって受け付けられた工程(入力工程)後の、工程を説明する。
【0102】
入力部41によって撮像部33からの画像が受け付けられると、画像処理装置40は、プレート画像作成部42aによって、入力部41によって受け付けられた撮像部33からの複数の画像を合成してプレート画像P1を生成する(プレート画像作成工程S11)。
【0103】
プレート画像作成工程S11の後、画像処理装置40は、HSV画像作成部42bによって、上記プレート画像P1をHSV画像P2に変換する(HSV画像作成工程S12)。
【0104】
HSV画像作成工程S12の後、画像処理装置40は、度数分布作成部42cによって、ウェル画像13p毎に、度数分布を作成する(度数分布作成工程S13)。度数分布作成工程(統計情報取得工程)S13では、プレート画像P1内の全てのウェル画像13pに対応する複数の度数分布が作成される。
【0105】
度数分布作成工程S13の後、画像処理装置40は、第1判定部42dによって、度数分布作成工程S13で作成された複数の度数分布間の類似度を算出し、上記全てのウェル画像13pの色が紫色か黄色かを1次判定する(第1判定工程S14)。類似度の算出方法は、前述したとおりである。複数の度数分布間の類似度を算出することにより、前述のように、紫色及び黄色に対する類似度分布が取得される。取得された類似度分布において、紫色及び黄色を分ける閾値を用いて上記全てのウェル画像13pの色を紫色又は黄色に判定する。
【0106】
第1判定工程S14の後、画像処理装置40は、第1基準作成部42eによって、紫色及び黄色それぞれの第1基準度数分布(第1基準統計情報)を作成する(第1基準作成工程S15)。第1基準度数分布の作成方法は、第1基準作成部42eに関して説明した場合と同様である。
【0107】
第1基準作成工程(第1基準統計情報取得工程)S15の後、画像処理装置40は、第2判定部42fによって、上記第1基準度数分布を用いて、複数のウェル画像13pの色を2次判定する(第2判定工程S16)。本実施形態では、紫色及び黄色毎の第1基準度数分布それぞれと、全てのウェル画像13pの度数分布との類似度を算出する。第2判定工程S16は、第1基準度数分布における色相及び彩度の全領域を対象として類似度を算出すればよい。これにより、ウェル画像13p毎に紫色及び黄色に対する類似度の組が得られるので、紫色及び黄色に対する類似度分布が取得される。このようにして取得した類似度分布において、紫色及び黄色を分ける閾値を用いて上記全てのウェル画像13pの色を紫色又は黄色に2次判定する。第2判定工程S16で使用する閾値は、前述したように、評価者が設定してもよいし、第2判定部42fが自動で設定してもよい。
【0108】
第2判定工程S16の後、画像処理装置40は、第2基準作成部42gによって、区画画像Se1p~Se8p毎に、紫色及び黄色それぞれの第2基準度数分布を作成する(第2基準作成工程S17)。本実施形態では、区画画像Se1p~Se8pそれぞれにおいて、区画画像Se1p~Se8pそれぞれに属する複数のウェル画像13p(本実施形態では、48個のウェル画像13p)のうち、第2判定工程において紫色に判定された複数のウェル画像13pの度数分布を平均して得られる平均度数分布に基づいて、紫色の第2基準度数分布(第2基準統計情報)を作成する。同様にして、黄色の第2基準度数分布(第2基準統計情報)を作成する。
【0109】
第2基準作成工程(第2基準統計情報取得工程)S17の後、画像処理装置40は、第3判定部42hによって、区画画像Se1p~Se8p毎に、ウェル画像13pの色を3次判定(最終判定)する(第3判定工程S18)。本実施形態における第3判定工程S18を、具体的に説明する。
【0110】
まず、区画画像Se1p~Se8pそれぞれにおいて、区画画像Se1p~Se8pそれぞれに属する複数のウェル画像13pに対して、第2判定工程S16と同様にして、類似度分布を取得する。取得した類似度分布に基づいて、紫色と黄色に分ける閾値を用いて区画画像Se1p~Se8pそれぞれに属する全てのウェル画像13pの色を3次判定する。閾値は、評価者が設定してもよいし、第3判定部42hが自動で設定してもよい。上記閾値を用いる場合、閾値上又は閾値近傍の領域に位置するウェル画像13pの色は、紫色及び黄色の中間色と判定する。
【0111】
区画画像Se1p~Se8p毎に複数のウェル画像13pの色が判定されるので、評価プレート10における全てのウェル13の色が判定される。
【0112】
第3判定工程S18の後、画像処理装置40は、出力部43によって、第3判定工程S18の結果を、評価者に提示されるように出力すればよい(出力工程)。
【0113】
[第2の色判定処理]
第2の色判定処理を行う場合の演算部42を、演算部42Bと称す。図12は、演算部42Bの機能ブロック図である。演算部42は、プレート画像作成部42a、HSV画像作成部42b、度数分布作成部42c及び判定部42iを有する。プレート画像作成部42a、HSV画像作成部42b及び度数分布作成部42cは、演算部42Aの場合と同様であるため、説明を省略する。
【0114】
判定部42iは、予め画像処理装置40に記憶されている紫色及び黄色それぞれに対する第3基準度数分布(色候補の基準統計情報)を用いて、ウェル画像13pの色を判定する。本実施形態では、判定部42iで使用される第3基準度数分布は、第2基準度数分布と同様に区画画像Se1p~Se8p毎に取得されている。上記第3基準度数分布の作成方法については後述する。本実施形態では、判定部42iは、第2基準度数分布の代わりに、上記第3基準度数分布を用いる点以外は、演算部42における第3判定部42hの場合と同様にして、区画画像Se1p~Se8p毎にウェル画像13pの色を判定する。これによって、評価プレート10の全てのウェル13の色が判定される。
【0115】
図13は、判定部42iで取得した区画画像Se1p~Se8p毎の類似度分布のグラフである。図13の横軸及び縦軸は、図10の横軸及び縦軸と同様である。図13は、図10の場合と同じプレート画像P1を用いた場合の結果を示している。図13内のSe1p~Se8pは、それぞれ区画画像Se1p~Se8pを示す。
【0116】
上記第3基準度数分布の作成方法を説明する。第3基準度数分布を作成する場合の演算部42を演算部42Cと称す。図14は、演算部42Cの機能ブロック図である。演算部42Cは、プレート画像作成部42a、HSV画像作成部42b、度数分布作成部42c及び基準作成部(基準統計情報取得部)42jを有する。
【0117】
ここでは、第3基準度数分布作成のために、同一条件で準備された3枚の評価プレート10の画像が観察装置30によって取得されており、入力部41を介して画像処理装置40に入力されているとともに、上記3枚の評価プレート10の評価者による目視判定結果が画像処理装置40に入力されている場合を説明する。上記同一条件のプレートにおける少なくとも細胞、指示薬、培養液及びS9mixは、検体の実際の評価に使用するものと同じものであることが好ましい。
【0118】
プレート画像作成部42aは、演算部42Aにおけるプレート画像作成部42aの場合と同様にして、3枚の評価プレート10のプレート画像P1を作成する。
【0119】
HSV画像作成部42bは、演算部42AにおけるHSV画像作成部42bの場合と同様にして、3枚のプレート画像P1をそれぞれHSV画像P2に変換する。
【0120】
度数分布作成部42cは、HSV画像作成部42bで作成された3枚のHSV画像P2それぞれに対して、演算部42Aにおける度数分布作成部42cと同様して、ウェル画像13p毎の度数分布を作成する。
【0121】
基準作成部42jは、度数分布作成部42cで作成された度数分布と、評価者の目視判定結果とに基づいて、紫色及び黄色に対する第3基準度数分布を区画画像Se1p~Se8p毎に作成する。前述したように、区画画像Se1p~Se8pにおける任意の一つを着目区画画像と称して説明する。
【0122】
3枚の評価プレート10における着目区画に属する全てのウェル13を、目視判定結果に基づいて紫色又は黄色に分ける。基準作成部42jは、紫色に分けられた全てのウェル画像13pの度数分布の平均度数分布を作成することによって、紫色の第3基準度数分布を作成する。同様に、黄色に分けられた全てのウェル画像13pの度数分布の平均度数分布を作成することによって、黄色の第3基準度数分布を作成する。
【0123】
ここでは、3枚の同一条件の評価プレート10を用いる場合を説明したが、評価プレート10の数は限定されない。評価プレート10の数は、多い方がより正確に判定可能である。第3基準度数分布は、一度作成されていればよい。或いは、例えば、第1の色判定方法において過去に作成された第2基準度数分布を、第2の色判定処理における第3基準度数分布として使用してもよい。
【0124】
第3基準度数分布は、第1基準度数分布の場合と同様に、評価プレート10全体に対して作成されてもよい。
【0125】
次に、第2の色判定処理を用いた評価プレート10の評価方法(検体の評価方法)の一例を説明する。図15は、第2の色判定処理を用いた評価方法のフローチャートの一例である。第2の色判定処理を用いた評価方法を実施する場合、演算部42は、演算部42Bとして機能する。
【0126】
ここでは、観察装置30の撮像部33で取得された画像が 入力部41によって受け付けられた工程(入力工程)後の工程を説明する。図14に示した基準作成部42jによって、予め紫色及び黄色のそれぞれの第3基準度数分布が作成され、画像処理装置40に保存されている場合を説明する。
【0127】
図11に示した場合と同様に、プレート画像作成工程S11、HSV画像作成工程S12及び度数分布作成工程S13を実施する。
【0128】
度数分布作成工程S13の後、画像処理装置40は、判定部42iによって、全てのウェル画像13pの色を判定する(判定工程S21)。本実施形態では、予め画像処理装置40に記憶されている紫色及び黄色それぞれに対する第3基準度数分布を用いて、ウェル画像13pの色を判定する。本実施形態では、第3基準度数分布は、図11に示した第2基準作成工程S17で説明した第2基準度数分布と同様に区画画像Se1p~Se8p毎に取得されている。本実施形態では、判定工程S21では、第2基準度数分布の代わりに、第3基準度数分布を用いる点以外は、図11の第3判定工程S18の場合と同様にして、区画画像Se1p~Se8p毎にウェル画像13pの色を判定することによって、評価プレート10の全てのウェル13の色を判定する。
【0129】
判定工程S21の後、画像処理装置40は、出力部43によって、判定工程S21の結果を、評価者に提示されるように出力すればよい(出力工程)。
【0130】
[コロニー検出処理]
コロニー検出処理を実施する場合の演算部42を演算部42Dと称し、演算部42Dを図16及び図17を利用して説明する。図16は、演算部42Dの機能ブロック図である。図17は、演算部42Dによるコロニー検出処理を説明するための図面である。演算部42は、プレート画像作成部42aと、ウェル画像特定部42kと、平滑化部42lと、内部領域設定部42mと、第1コロニー検出部42nと、外部領域設定部42oと、第2コロニー検出部42pと、検出結果作成部42qとを有する。
【0131】
プレート画像作成部42aは、演算部42Aにおけるプレート画像作成部42aと同様にして、画像処理装置40に入力された評価プレート10の画像に基づいて、プレート画像P1を作成する。
【0132】
ウェル画像特定部42kは、プレート画像P1において、ウェル13に対応する領域であるウェル画像(評価領域)13pを特定する。具体的には、ウェル画像13pにROI(Region of interest)を設定すればよい。図17の(a)では、例示のためROIを設定した一つのウェル画像13pを示している。
【0133】
平滑化部42lは、ウェル画像13pを平滑化処理する。平滑化処理は、画像処理における公知の方法で実施されればよい。図17の(b)は、図17の(a)のウェル画像13pを平滑化処理した結果を示している。
【0134】
内部領域設定部42mは、ウェル画像13pの内部領域IAを特定する。例えば、図17の(c)の一点鎖線で示したように、内部領域IAにROIを設定すればよい。図17の(c)は、図17の(b)の画像に対して、内部領域IAにROIを設定した状態を示す図面である。ROIの設定領域は、評価者が指定してもよいし、評価プレート10に用いられるプレート11の情報(寸法、ウェル13の配置状態など)やウェル画像13pの輝度情報に基づいて内部領域設定部42mが自動で設定してもよい。ウェル画像13pの内部領域IAとは、評価プレート10をその厚さ方向から見た場合に、ウェル13の底部13aに対応する領域である。換言すれば、ウェル13において底部13aの直上の領域(図2参照)である。
【0135】
第1コロニー検出部42nは、内部領域IA内における評価対象14の形状変化(コロニーによる形状変化)を特定することによって、内部領域IA内のコロニーの有無を検出する。本実施形態では、コロニーが形成されている場合、コロニーは周囲よりも暗いことを利用してコロニーを検出する。
【0136】
具体的には、特定した内部領域IAを、輝度閾値に基づいて2値化処理し、設定された輝度閾値より輝度値が小さい(暗い)領域をコロニー候補として検出する。輝度閾値は、内部領域IAの明るさ(輝度値)に応じて評価者が指定してもよいし、過去データなどに基づいて予め設定されていてもよい。本実施形態では、上記コロニー候補において、コロニーとして想定される形状(円形度)及びサイズを更に満たす候補をコロニーとして検出する。コロニー候補から上記形状及びサイズに基づいたコロニーの検出は、例えば、コロニー候補を提示した画像をみて評価者が実施してもよいし、予め設定されている形状(円形度)及びサイズに基づいて第1コロニー検出部42nが判断してもよい。
【0137】
溶媒対照区画である区画Se1では、色判定によって紫色と判定されたウェル13については、コロニーは現実的には検出されない。よって、サイズは、例えば、色判定処理が事前に実施されており、区画Se1に対応する区画画像Se1p(溶媒対照領域)の色判定によって紫色と判定されたウェル画像13pにおいてコロニー候補が特定されている場合、区画画像Se2p~Se8pにおいては、区画画像Se1p内のコロニー候補のうち最大のコロニー候補のサイズを基準としても良い。すなわち、区画画像Se2p~Se8pにおいては、区画画像Se1p内の最大のコロニー候補より大きく且つ上記コロニーとして想定される形状を満たすコロニー候補をコロニーとして検出してもよい。
【0138】
図17の(d)は、内部領域IAのコロニーの検出結果の一例を示す図面である。
【0139】
外部領域設定部42oは、ウェル画像13pの外部領域OAを特定する。例えば、図17の(e)の一点鎖線で示したように、外部領域OAにROIを設定すればよい。図17の(e)は、外部領域OAにROIを設定した状態を示す図面である。ROIの設定領域は、評価者が指定してもよいし、プレート11のデータなどに基づいて外部領域設定部42oが自動で設定してもよい。ウェル画像13pの外部領域OAとは、ウェル13の壁部の領域(図2参照)である。
【0140】
第2コロニー検出部42pは、外部領域OA内における評価対象14の形状変化(コロニーによる変化)を特定することによって、外部領域OA内のコロニーの有無を検出する。本実施形態では、第1コロニー検出部42nの場合と同様に、コロニーが形成されている場合、コロニーは内側が暗く、その周囲は明るいことを利用してコロニーを検出する。
【0141】
具体的には、特定した外部領域OAを、輝度閾値に基づいて2値化処理し、設定された輝度閾値より輝度値が小さい(暗い)領域をコロニー候補として検出する。輝度閾値は、外部領域OAの明るさ(輝度値)に応じて評価者が指定してもよいし、過去データなどに基づいて予め設定されていてもよい。外部領域OAは、内部領域IAより暗いため、外部領域OAにおいて、コロニーを検出するための輝度閾値は、内部領域IAの場合と異なる。本実施形態では、上記コロニー候補において、第1コロニー検出部42nの場合と同様に、コロニーとして想定される形状(円形度)及びサイズを更に満たす候補をコロニーとして検出する。形状及びサイズなどの条件は、内部領域IAの場合と異なっていてもよい。更に、サイズについては、第1コロニー検出部42nの場合と同様に、溶媒対照区画である区画Se1に対応する区画画像Se1pの結果を利用してもよい。
【0142】
図17の(f)は、外部領域OAのコロニーの検出結果の一例を示す図面である。
【0143】
検出結果作成部42qは、第1コロニー検出部42n及び第2コロニー検出部42pの結果を統合して、コロニー検出の結果を示すデータを作成する。検出結果作成部42qは、例えば、第1コロニー検出部42n及び第2コロニー検出部42pで検出されたコロニーの領域が強調処理(例えば着色処理)されたデータを作成し得る。
【0144】
演算部42Dは、検出結果作成部42qで作成した検出結果を、コロニーの最終検出結果として出力部43に出力する。図17の(g)は、演算部42による最終検出結果の一例を示す図面である。
【0145】
次に、コロニー検出処理を用いた評価プレート10の評価方法(検体の評価方法)の一例を説明する。図18は、コロニー検出処理を用いた評価プレート10の評価方法のフローチャートの一例である。コロニー検出処理を用いた評価プレート10の評価方法を実施する場合、演算部42は、演算部42Dとして機能する。ここでは、観察装置30の撮像部33で取得された画像が 入力部41によって受け付けられた工程(入力工程)後の工程を説明する。
【0146】
図11に示した場合と同様に、プレート画像作成工程S11を実施する。
【0147】
プレート画像作成工程S11の後、画像処理装置40は、ウェル画像特定部42kによって、プレート画像P1における各ウェル画像13pを特定する(ウェル画像特定工程S31)。本実施形態では、プレート画像における各ウェル画像13pにROIを設定する。ROIは、評価者が指定してもよいし、ウェル画像特定部42kが自動で設定してもよい。
【0148】
ウェル画像特定工程S31の後、画像処理装置40は、平滑化部42lによって、ウェル画像13pを平滑化する(平滑化工程S32)。
【0149】
平滑化工程S32の後、画像処理装置40は、内部領域設定部42mによって、各ウェル画像13pの内部領域IAを設定する(内部領域設定工程S33)。本実施形態では、各ウェル画像13pの内部領域IAにROIを設定する。ROIは、評価者が指定してもよいし、内部領域設定部42mが自動で設定してもよい。
【0150】
内部領域設定工程S33の後、画像処理装置40は、第1コロニー検出部42nによって、各ウェル画像13pの内部領域IAにおけるコロニーの有無を検出する(第1コロニー検出工程S34)。本実施形態では、第1コロニー検出部42nに関して説明したように、輝度値とともに、形状(円形度)及びサイズを利用してコロニーの有無を検出する。
【0151】
第1コロニー検出工程S34の後、画像処理装置40は、外部領域設定部42oによって、各ウェル画像13pの外部領域OAを設定する(外部領域設定工程S35)。本実施形態では、各ウェル画像13pの外部領域OAにROIを設定する。ROIは、評価者が指定してもよいし、外部領域設定部42oが自動で設定してもよい。
【0152】
外部領域設定工程S35の後、画像処理装置40は、第2コロニー検出部42pによって、各ウェル画像13pの外部領域OAにおけるコロニーの有無を検出する(第2コロニー検出工程S36)。本実施形態では、第2コロニー検出部42pに関して説明したように、輝度値とともに、形状(円形度)及びサイズを用いてコロニーの有無を検出する。
【0153】
第2コロニー検出工程S36の後、画像処理装置40は、検出結果作成部42qによって、第1コロニー検出工程S34及び第2コロニー検出工程S36それぞれの検出結果を統合して、コロニー検出の最終検出結果を作成する(検出結果作成工程S37)。
【0154】
検出結果作成工程S37の後、画像処理装置40は、出力部43によって、検出結果作成工程S37で作成した検出結果を、評価者に提示するように出力すればよい(出力工程)。
【0155】
[透明度変化検出処理]
透明度変化検出処理を実施する場合の演算部42を演算部42Eと称し、演算部42Eを説明する。図19は、演算部42Eの機能ブロック図である。演算部42Eは、プレート画像作成部42aと、HSV画像作成部42bと、度数分布作成部42cと、区画度数分布作成部42rと、透明度変化検出部42sとを有する。プレート画像作成部42a、HSV画像作成部42b及び度数分布作成部42cは、演算部42Aの場合と同様であるため、説明を省略する。
【0156】
区画度数分布作成部42rは、区画画像Se1p~Se8p毎に、色相及び彩度を変量とする度数分布(以下、「区画度数分布」と称す)を作成する。区画画像Se1p~Se8pのうちの任意の一つを前述したように、着目区画画像と称した場合、区画度数分布作成部42rは、着目区画画像に属する全てのウェル画像13pの度数分布の平均度数分布に基づいて、着目区画画像の区画度数分布を作成する。また、色判定処理が既に実施されている場合、着目区画画像に属する全てのウェル画像13pのうち、例えば紫色と判定されたウェル画像13pのみ(例えば、第1の色判定処理の第3判定工程S18(図11参照)で紫色と判定されたウェル画像13pのみ)の度数分布の平均度数分布に基づいて、着目区画画像の区画度数分布を作成してもよい。
【0157】
透明度変化検出部42sは、区画画像Se1p~Se8pに対応する区画度数分布間の類似度を算出する。透明度変化検出部42sは、溶媒対照区画である区画Se1に対応する区画画像Se1pの透明度を透明度変化検出用の基準度数分布(透明度変化検出用の基準統計情報)として、他の区画画像Se2p~Se8pの透明度の変化を検出する。具体的には、区画画像Se1pの区画度数分布と、他の区画画像Se2p~Se8pの区画度数分布との類似度を算出する。この類似度が、区画Se1の透明度に対する他の区画Se2~Se8の透明度の変化に対応する。図20は、区画画像Se1p~Se8p間の区画度数分布の類似度を示す図表であり、(a)及び(b)に異なる例を示している。図20の(a)は透明度変化が大きい場合の例を示しており、図20の(b)は、透明度変化が実質的に認めなない程度に小さい場合の例を示している。図表のSe1p~Se8pは、それぞれ区画画像Se1p~Se8pを示す。図20では、Se1pの行及び列が、区画画像Se1pの透明度に対する他の区画画像Se2p~S8p及び区画画像Se1p自体との類似度(透明度変化)である。
【0158】
次に、透明度変化検出処理を用いた評価プレート10の評価方法(検体の評価方法)の一例を説明する。図21は、透明度変化検出処理を用いた評価方法のフローチャートの一例である。透明度変化検出処理を用いた評価方法を実施する場合、演算部42は、演算部42Eとして機能する。ここでは、観察装置30の撮像部33で取得された画像が 入力部41によって受け付けられた工程(入力工程)後の工程を説明する。
【0159】
図11に示した場合と同様に、プレート画像作成工程S11、HSV画像作成工程S12及び度数分布作成工程S13を実施する。
【0160】
度数分布作成工程S13の後、画像処理装置40は、区画度数分布作成部42rによって、区画画像Se1p~Se8p毎に、区画度数分布を作成する(区画度数分布作成工程S41)。本実施形態では、区画画像Se1p~Se8pのうちの任意の一つを前述したように、着目区画画像と称した場合、区画度数分布工程S41では、着目区画画像に属する全てのウェル13の度数分布の平均度数分布に基づいて、着目区画画像の区画度数分布を作成する。前述したように、色判定処理が既に実施されている場合には、着目区画画像に属する全てのウェル画像13pのうち例えば紫色と判定されたウェル画像13pのみの度数分布の平均度数分布に基づいて、着目区画画像の区画度数分布を作成してもよい。
【0161】
区画度数分布作成工程S41の後、画像処理装置40は、透明度変化検出部42sによって、区画画像Se1p(溶媒対照領域)に対する、他の区画画像Se2p~Se8pの透明度変化を検出する(透明度変化検出工程S42)。本実施形態では、区画画像Se1pの区画度数分布と、他の区画画像Se2p~Se8pの区画度数分布との類似度を算出する。この類似度が、区画Se1の透明度に対する他の区画Se2~Se8の透明度の変化に対応する。
【0162】
透明度変化検出工程S42の後、画像処理装置40は、出力部43によって、透明度変化検出工程S42の検出結果を、評価者に提示されるように出力すればよい(出力工程)。
【0163】
[異物検出処理]
異物検出処理を行う場合の演算部42を演算部42Fと称し、演算部42Fを説明する。図22は、演算部42Fの機能ブロック図である。図23は、演算部42Fによる異物検出処理を説明するための図面である。演算部42Fは、プレート画像作成部42aと、ウェル画像特定部42kと、平滑化部42lと、第1異物検出部42tと、外部領域設定部42oと、第2異物検出部42uと、検出結果作成部42vとを有する。プレート画像作成部42a、ウェル画像特定部42k及び平滑化部42lは、演算部42Dの場合と同様であるため、説明を省略する。ウェル画像特定部42kで特定されたウェル画像13pの一例を、図23の(a)に示す。図23の(b)は、図23の(a)のウェル画像13pを、平滑化部42lで平滑化処理した後の図面である。
【0164】
第1異物検出部42tは、平滑化部42lで平滑化処理されたウェル画像13pに対して第1輝度値を用いて異物を検出する。通常、異物の領域は、異物の内側が明るく(輝度が大きい)、異物の周囲は暗い(輝度が小さい)。よって、内側が明るく周囲が暗い領域が異物候補となる。そのため、異物検出用の第1輝度閾値を設定し、ウェル画像13pを二値化処理する。二値化処理された画像で、第1輝度閾値より小さい輝度値で囲まれており、その内側が第1輝度値以上である領域を異物候補として検出する。第1輝度閾値は、ウェル画像13pの内部領域(図2参照)の輝度値とすればよい。その内部領域の輝度値(第1輝度値)としては、評価者がウェル画像13pに基づいて指定すればよい。内部領域は、例えば、事前に内部領域設定部42mで設定してもよい。第1輝度値は、第1異物検出部42tが自動で設定してもよい。第1異物検出部42tが第1輝度値を自動で設定する場合、例えばウェル画像13pの中心に対して一定の範囲内の平均輝度値に基づいて自動で設定するようにすればよい。通常、異物は円形であり、一定のサイズを有する。よって、本実施形態では、異物候補のうち、異物として想定される形状(円形度)及びサイズを更に満たす候補を異物として検出する。異物候補から上記形状及びサイズに基づいた異物の検出は、例えば、異物候補を提示した画像をみて評価者が実施してもよいし、予め設定されている形状(円形度)及びサイズに基づいて第1異物検出部42tが判断してもよい。図23の(c)は、第1異物検出部42tによる異物検出結果の一例を示す図面である。
【0165】
外部領域設定部42oは、演算部42D(図16参照)における外部領域設定部42oと同様にして、ウェル画像13pにおける外部領域OAを設定する。外部領域設定部42oは、例えば、図23の(d)の一点鎖線で示したように、外部領域OAにROIを設定すればよい。
【0166】
第2異物検出部42uは、第2輝度値を用いて異物を検出する。第2輝度値は、外部領域OAの明るさに応じて異物を検出可能なように設定する。第2輝度値としては、評価者が外部領域OAの明るさ(輝度)に基づいて指定すればよい。第2輝度値は、第2異物検出部42uが自動で設定してもよい。第2異物検出部42uが第2輝度値を自動で設定する場合、例えば外部領域OAの平均輝度に対して一定値を乗算した値を設定するようにすればよい。外部領域OAは、ウェル画像13pの中央部近傍よりも暗い(輝度が低い)ため、通常、第1輝度閾値と第2輝度閾値とは異なる。
【0167】
第2異物検出部42uは、外部領域OAを、上記第2輝度閾値を用いて二値化処理し、二値化処理された画像で、第2輝度値より輝度値の大きいまたは小さい領域を異物候補として検出する。本実施形態では、更に、第2異物検出部42uは、検出された異物候補のうち、異物として想定される形状(円形度)及びサイズを更に満たす候補を異物として検出する。異物候補から上記形状及びサイズに基づいた異物の検出は、例えば、異物候補を提示した画像をみて評価者が実施してもよいし、予め設定されている形状(円形度)及びサイズに基づいて第2異物検出部42uが判断してもよい。形状及びサイズは、第1異物検出部42tにおける形状及びサイズと同じでもよいし、異なっていてもよい。図23の(e)は、第2異物検出部42uによる異物検出結果の一例を示す図面である。
【0168】
検出結果作成部42vは、第1異物検出部42t及び第2異物検出部42uの結果を統合して、異物検出の結果を示すデータを作成する。検出結果作成部42vは、例えば、第1異物検出部42t及び第2異物検出部42uで検出された異物の領域が強調処理(例えば着色処理)されたデータを作成し得る。
【0169】
演算部42は、異物検出結果作成部42vで作成した検出結果を、異物の最終検出結果として出力部43に出力する。図23の(f)は、演算部42による最終検出結果の一例を示す図面である。
【0170】
次に、異物検出処理を用いた評価プレート10の評価方法(検体の評価方法)の一例を説明する。図24は、異物検出処理を用いた評価方法のフローチャートの一例である。異物検出処理を用いた評価方法を実施する場合、演算部42は、演算部42Fとして機能する。こでは、観察装置30の撮像部33で取得された画像が 入力部41によって受け付けられた工程(入力工程)後の工程を説明する。
【0171】
図18に示した場合(コロニー検出処理の場合)と同様に、プレート画像作成工程S11、ウェル画像特定工程S31及び平滑化工程S32を実施する。
【0172】
平滑化工程S32の後、画像処理装置40は、第1異物検出部42tによって、ウェル画像13p内の異物の有無を、検出する(第1異物検出工程S51)。本実施形態では、第1異物検出部42tに関して説明したように、第1輝度閾値、形状(円形度)及びサイズに基づいて、異物を検出する。
【0173】
第1異物検出工程S51の後、画像処理装置40は、図18に示した外部領域設定工程S35の場合と同様に、外部領域設定部42oによって、ウェル画像13pの外部領域OAを設定する(外部領域設定工程S52)。本実施形態では、外部領域OAにROIを設定する。ROIの設定領域は、評価者が指定してもよいし、プレート11のデータに基づいて外部領域設定部42oが自動で設定してもよい。
【0174】
外部領域設定工程S52の後、画像処理装置40は、第2異物検出部42uによって、ウェル画像13p内の異物の有無を、検出する(第2異物検出工程S53)。本実施形態では、第2異物検出部42uに関して説明したように、第2輝度閾値、形状(円形度)及びサイズに基づいて、異物を検出する。
【0175】
第2異物検出工程S53の後、画像処理装置40は、検出結果作成部42vによって、第1異物検出工程S51及び第2異物検出工程S53における結果を統合して、異物検出の最終結果を作成する(検出結果作成工程S54)。本実施形態では、第1異物検出工程S51及び第2異物検出工程S53で検出された異物の領域に着色する等の異物の領域を強調する処理を行う。
【0176】
検出結果作成工程S54の後、画像処理装置40は、出力部43によって、検出結果作成工程S54で作成した検出結果を、評価者に提示するように出力すればよい(出力工程)。
【0177】
次に、プレート11を用いたAmes試験の一例の手順を具体的に説明する。
【0178】
(第1A工程)
使用する試験体(アミノ酸要求性変異を有する細菌、例えば、ネズミチフス菌:TA100株、TA98株、TA1535株、TA1537株、大腸菌:WP2uvrA株など)を、60mLのニュートリエントブロス培地に植菌し37℃で9~10時間振とう培養して増殖させる。
【0179】
(第2A工程)
検体(例えば毒性を評価したい化合物)を必要量はかりとる。
【0180】
(第3A工程)
第2A工程で準備した検体を適当な媒体に溶解または懸濁し、これを、媒体を用いて段階希釈し、検体液の濃度系列を調製する。例えば、同一検体を異なる6濃度で評価する場合、濃度の異なる6つの検体液を調製する。
【0181】
(第4A工程)
所定の毒性を示すことがわかっている陽性対照化合物の溶液を調製する。
【0182】
(第5A工程)
検体液の調製に使用した媒体、検体液の濃度系列、陽性対照化合物の溶液(以上をまとめて検体液等と呼ぶ)を10μLずつ、24ウェルプレート(24個のウェルを有するプレート)の別々のウェルに入れる。
【0183】
(第6A工程)
0.175~0.7mLの試験体の培養液(通常1×10細胞/mLを超える濃度)と、6.83~6.3mLの培地(炭素源が添加され且つアミノ酸が不足した最小培地)を混合する。混合したものを代謝活性化非存在下条件の調製菌液と呼ぶ。
【0184】
(第7A工程)
検体液等10μLを入れた24ウェルプレートに、第6A工程で準備した代謝活性化非存在下条件の調製菌液240μLを添加する。
【0185】
(第8A工程)
第7A工程の混合液の入った24ウェルプレートを、37℃、250rpmで90分間振とうする(プレインキュベーション)。
【0186】
(第9A工程)
プレインキュベーション終了後の24ウェルプレートの各ウェル(250μL)に指示培地(pH指示薬と炭素源を含み、アミノ酸が不足した最小培地)を2.6mL添加する。
【0187】
(第10A工程)
第9A工程の混合液を50μLずつ384ウェルプレートであるプレート11の8個の区画Se1~Se8それぞれが有する48ウェル(1区画分)に区画Se1~Se8に対応するように移す。同様にして計3枚以上の384ウェルプレート(プレート11)に播種する。
【0188】
(第11A工程)
384ウェルプレート(プレート11)を37℃で48時間培養する。これによって、評価プレート10が得られる。
【0189】
Ames試験では、第11A工程の後に、以下の第12A工程から第14A工程を実施する。本実施形態では、第12A工程以降を、上記評価システム20を利用して説明した評価方法で実施する。
【0190】
(第12A工程)
培養終了したプレート11である評価プレート10の各ウェル13の色変化、コロニーの有無、異物の有無、透明度変化を観察し、色変化、コロニー、異物のあったウェル数を計数するとともに、透明度変化のあった区画を記録する。
【0191】
(第13A工程)
異物の有無と透明度変化の結果を組み合わせて、細胞毒性の有無を判定する。
【0192】
(第14A工程)
色変化とコロニーの有無の結果を組み合わせて、遺伝毒性の有無を判定する。
第13A工程および第14A工程の順番は限定されない。
【0193】
生体内の種々の酵素によって代謝を受けた後に毒性を示す検体を検出する場合は、第6A工程において、動物の肝臓の抽出物に補酵素を加えたもの(S9混液)を調製し、0.175~0.7mLの試験体の培養液と、5.78~5.25mLの培地と、1.05mLのS9混液を混合する。混合したものを代謝活性化存在下条件の調製菌液と呼ぶ。その後、第7A工程以降の工程を、代謝活性化非存在下条件の調製菌液の代わりに、代謝活性化存在下条件の調製菌液を用いて実施する。
【0194】
次に、本実施形態で説明した評価システム20、画像処理装置40及び評価方法の作用効果を説明する。
【0195】
評価プレート10を評価する場合、評価プレート10を、観察装置30を用いて、評価プレート10を撮像する(撮像工程)。撮像工程で得られた評価プレート10の画像に基づいて画像処理装置40が、プレート画像P1を形成する。
【0196】
画像処理装置40は、プレート画像P1を用いて色判定処理を行うことによって、ウェル画像13pの色を判定する。これにより、ウェル画像13pに対応するウェル13の色が判定される。本実施形態では、評価対象14に含まれる細胞に対して検体が遺伝毒性を有する場合、陽性結果として、指示薬の色が紫色から黄色に変化する。そのため、上記色判定処理によって、検体の遺伝毒性を評価可能である。
【0197】
本実施形態で説明した色判定処理では、ウェル画像13p毎に作成した色相及び彩度を変量とする度数分布を用いて色を判定する。そのため、例えば目視観察では、色の違いを判定しにくい場合でも、色を確実に判定できる。そのため、客観的に且つ高い精度で色を判定できる。
【0198】
第1の色判定処理では、図11に示した第1の色判定処理のフローチャートに従って、3回判定を行う。この場合、図8図10に示したように、判定を繰り返すにつれて、ウェル画像13pの色(すなわち、ウェル13の色)を紫色又は黄色に、より明確に判定し得る。
【0199】
図10図13は、前述したように同じプレート画像P1に対して、第1及び第2の色判定処理を行った結果である。図10図13より、第1の色判定処理の方が、ウェル画像13pの色(すなわち、ウェル13の色)を紫色又は黄色に、より明確に判定し得る。
【0200】
画像処理装置40は、プレート画像P1を用いてコロニー検出処理を行うことによって、ウェル13内のコロニーの有無を判定する。本実施形態では、評価対象14に含まれる細胞に対して検体が遺伝毒性を有する場合、コロニーが発生する可能性がある。すなわち、コロニーが検出された場合が陽性結果に相当する。そのため、上記コロニー検出処理によって、検体の遺伝毒性を評価可能である。
【0201】
本実施形態では、ウェル画像13pを内部領域IA及び外部領域OAに分けてそれぞれの領域でコロニーを検出する。内部領域IA及び外部領域OAでは明るさが異なるため、内部領域IA及び外部領域OAそれぞれの領域でコロニーを検出することによって、より確実にコロニーを検出可能である。
【0202】
画像処理装置40では、色判定処理とともに、コロニー検出処理を行うことが可能である。この場合、色判定処理もしくはコロニー検出処理のいずれかで陽性である場合に、陽性ウェルであると評価することで、より確実に検体の遺伝毒性を評価可能である。コロニー検出の際に、溶媒対照区画である区画Se1に対応する区画画像Se1pにおいて検出されたコロニー(又はコロニー候補)を用いて、区画画像Se2p~Se8pにおけるコロニーを検出する形態では、より正確にコロニーを検出可能である。色判定処理を既に実施している場合、区画画像Se1pでは、色判定によって紫色と判定されたウェル画像13pについては、コロニーは現実的には検出されないため、区画画像Se1pの色判定によって紫色と判定されたウェル画像13pで検出されたコロニーは、検出誤差とみなせる。そのため、区画画像Se1pで検出されたコロニーより大きいコロニーを検出することで、検出すべき実際のコロニーを正確に検出し易い。
【0203】
画像処理装置40を用いて同じ評価プレート10に対して色判定処理とともに、コロニー検出処理を行う場合、先に行う処理で使用したデータを、後で行う処理で適宜使用すればよい。例えば、コロニー検出処理の前に色判定処理を行う場合、色判定処理において作成したプレート画像P1を、コロニー検出処理で使用してもよい。この場合、図16に示した演算部42Dにおいて、プレート画像作成部42aは不要である。同様に、図18に示したコロニー検出処理を用いた評価方法では、プレート画像作成工程S11を省略できる。色判定処理より先にコロニー検出処理を実施する場合についても同様である。色判定処理及びコロニー検出処理の順番は限定されない。
【0204】
画像処理装置40は、プレート画像P1を用いて透明度検出処理を行うことによって、区画画像Se1p~Se8pの透明度変化を検出する。これにより、区画Se1~Se8の透明度変化が検出される。本実施形態では、評価対象14に含まれる細胞に対して検体が細胞毒性を有する場合、細胞が死滅したこと等によりウェル13の透明度(具体的には、評価対象14の透明度)が変化する。そのため、上記透明度変化検出処理によって、検体の細胞毒性を評価可能である。
【0205】
培養中に検体が析出した場合も、ウェル13の透明度(具体的には、評価対象14の透明度)が変化する。そのため、上記透明度変化検出処理によって、検体の析出の有無も評価可能である。
【0206】
本実施形態で説明した透明度変化検出処理では、ウェル画像13p毎に作成した色相及び彩度を変量とする度数分布を用いて透明度変化を判定する。そのため、例えば目視観察では、透明度の違いを判定しにくい場合でも、透明度の変化を確実に判定できる。そのため、客観的に且つ高い精度で透明度変化を検出できる。
【0207】
本実施形態では、同じプレート画像P1における区画画像Se1p(溶媒対照領域)に対する区画度数分布と、他の区画画像Se2p~Se8pの区画度数分布の類似度とに基づいて透明度変化を算出する。そのため、試験条件などの影響を低減できるため、より正確に透明度を検出可能である。
【0208】
画像処理装置40は、プレート画像P1を用いて異物検出処理を行うことによって、ウェル13内の異物の有無を判定する。本実施形態では、評価対象14に含まれる細胞に対して検体が細胞毒性を有する場合、細胞が死滅したことにより異物が発生する。そのため、上記異物検出処理によって、検体の細胞毒性を評価可能である。
【0209】
本実施形態では、ウェル画像13pに対して異物検出を一度行った後、外部領域OAを設定して外部領域OAの異物を、外部領域OAに応じた輝度閾値(第2輝度閾値)を用いて再度検出する。外部領域OAは、通常、暗いため、異物が検出されにくい。そのため、外部領域OAに応じた輝度閾値(第2輝度閾値)を用いることで、より確実に異物を検出可能である。
【0210】
画像処理装置40では、透明度変化検出処理とともに、異物検出処理を行うことが可能である。この場合、透明度変化検出処理で透明度変化が検出された場合もしくは異物検出処理により異物が検出された場合のいずれかの場合に、細胞毒性があると評価することで、より確実に検体の細胞毒性を評価可能である。
【0211】
細胞毒性評価としての透明度検出処理及び異物検出処理は、例えば、遺伝毒性評価を正確に行うための検体の濃度の設定に利用される。例えば、透明度検出処理によって、区画Se1~Se8のうち陽性の結果の区画の検体の濃度は、遺伝毒性評価には不適切である。そのため、少なくとも一度、透明度検出処理又は異物検出処理を実施し、細胞毒性評価の結果が陰性である濃度範囲を確定した後に、遺伝毒性評価を行えばよい。
【0212】
上記のように、透明度検出処理又は異物検出処理は、例えば、遺伝毒性評価の前に検体の細胞毒性を評価するために行われる。そのため、透明度検出処理又は異物検出処理を実施する場合の評価プレート10と、遺伝毒性評価のための色判定処理及びコロニー検出処理の少なくとも一方を行う場合の評価プレート10の条件は異なる(例えば、検体の濃度設定が異なる)場合もある。
【0213】
しかしながら、例えば、透明度検出処理又は異物検出処理を行う場合の評価プレート10と、色判定処理及びコロニー検出処理の少なくとも一方を行う場合の評価プレート10の条件が同じ場合、透明度検出処理又は異物検出処理の際に作成したデータなどは、適宜色判定処理及びコロニー検出処理で使用してもよい。
【0214】
例えば、透明度検出処理の後に、色判定処理を行う場合、度数分布作成工程S13までの工程は共通であるため、色判定処理では、透明度検出処理において、度数分布作成部42c(度数分布作成工程S13)で作成したウェル画像13p毎の度数分布を使用して、色判定処理を行えばよい。或いは、異物検出処理の後に、コロニー検出処理を行う場合、ウェル画像特定工程S31までは共通であるため、コロニー検出処理では、異物検出処理において、ウェル画像特定部42k(ウェル画像特定工程S31)で特定したウェル画像13pを使用して、コロニー検出処理を行えばよい。演算部42Dがコロニー検出処理を行う場合の処理フロー又は演算部42Fが異物検出処理を行う場合の処理フローにおいて、上記のように省略された工程に対応する機能を演算部42D及び演算部42Fが有しなくてもよい。
【0215】
例えば、図1に示したように、384個のウェル13の色を判定する場合、評価者の負担も大きく評価者の判断力の低下も生じやすいため、客観性及び精度が低下する傾向にある。これに対して、画像処理装置40を用いた評価方法では、画像処理装置40によって、色判定をするため、例えば評価者が目視で行う場合に比べて、より客観的に且つ精度良く色を判定できる。コロニーの有無の検出、透明度変化の検出及び異物の検出においても同様である。
【0216】
次に、本実施形態で説明した評価システム20及び評価方法をAmes試験に適用した実験例1を説明する。以下、断らない限り、これまで説明した要素と同様の要素には、同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0217】
実験例1では、プレート11として、Perkinelmer社製のView-Plate-384を用いた。View-Plate-384は、図1に示したように、384個のウェル13を有していた。本実験例1でも、図1と同様に、区画Se1~Se8を仮想的に設定した。
【0218】
本実験例1では、指示薬、培養液などを含むXenometrix社性のAmes試験キット(「Ames MPFTM Penta I Microplate Format Mutagenicity Assay」)を用いた。
【0219】
試験条件の異なる9種類の評価プレート10を準備した。本実験例1で使用した評価プレート10は、ウェル13内への細胞、検体等の投与、培養等を上記Ames試験キットのマニュアルに沿って行い、毒性検査が可能な状態の評価プレート10である。試験条件の異なる9種類の評価プレート10を、本実験例1では、評価プレート10_1~10_9と称す。
【0220】
評価プレート10_1~10_9の試験条件は図25に示した図表のとおりであった。図において、条件No.1~No.9は、評価プレート10_1~10_9を示している。「代謝活性化有無」の欄において、「無」は、評価対象14がS9mixを含まない場合を意味しており、「有」は、評価対象14がS9mixを含む場合を示している。「濃度(ng/ml)」の欄は、区画Se2~Se7内のウェル13が保持する評価対象14(具体的には、評価対象14b~14g)内の検体の濃度を示している。No.1~No.9(評価プレート10_1~10_9)に対して「濃度(ng/mL)」の欄に示された6つの濃度は、評価対象14b~14gに含まれる検体の濃度である。評価対象14b~14gの検体の濃度は、評価対象14bから評価対象14gに向けて濃度が高くなっている。「陽性対照化合物/溶媒(濃度(ng/mL))」における「濃度」は、区画Se8(陽性対照区画)における陽性対照化合物の濃度を示している。検体溶液及び陽性対照液の溶媒には、図に示したように、DMSOを使用した。溶媒対照液もDMSOであった。
【0221】
本実験例1では、評価プレート10_1~10_9をそれぞれN枚準備した。Nは、評価プレート10_1,10_3,10_4,10_7~10_9に対して3であり、残りについては1である。
【0222】
本実験例1では、まず、観察装置30を利用して評価プレート10_1~10_9を撮像する撮像工程を行った。その後、画像処理装置40を利用して、色判定処理、コロニー検出処理、透明度変化検出処理及び異物検出処理を行った。また、評価プレート10_1~10_9の目視による色判定も行った。
【0223】
本実験例1における撮像工程を説明する。本実験例1では、2つの撮像工程(以下、「第1撮像工程」と「第2撮像工程」と称す)を行った。
【0224】
第1撮像工程は、評価プレート10_1~10_9のすべてに対して行った。評価プレート10_1~10_9に対する第1撮像工程は同じであるため、代表して評価プレート10_1に対する第1撮像工程を説明する。
【0225】
第1撮像工程では、図3に示した観察装置30を使用した。観察装置30が有する照明装置32には可視光を出力するLED照明を使用した。撮像部33の集光部及び撮像器33aには、それぞれレンズ及びラインセンサ(CCDカメラ)を使用した。
【0226】
本実験例1では、撮像器33aの撮像範囲が評価プレート10_1の大きさより小さかったことから、ステージ31によって評価プレート10_1を一方向に搬送しながら撮像器33a(及びそれに対応する集光部33b)を用いて、評価プレート10_1の半分の領域を撮像した。その後、評価プレートを搬送方向と直交する方向に半分ずらした後、再度評価プレート10_1を一方向に移動させながら評価プレート10_1の残りの領域を撮像した。
【0227】
本実験例1では、N枚の評価プレート10_1に対して上記第1撮像工程を行った。
【0228】
第2撮像工程は、同様に評価プレート10_1及び10_4に対して行った。評価プレート10_1及び10_4に対する第2撮像工程は同じであるため、代表して評価プレート10_1に対する第2撮像工程を説明する。
【0229】
第2撮像工程では、図3に示した観察装置30において、評価プレート10_1に対する照明装置32及び撮像部33の位置を反転させた状態(すなわち、図3において、撮像部33をプレート上に配置し、照明装置32をステージ31の下側に配置した状態)で、第1撮像工程と同様にして、評価プレート10_1の撮像も行った。
【0230】
本実験例1では、N枚の評価プレート10_1に対して上記第2撮像工程を行った。
【0231】
次に、本実験例1では、撮像工程で取得した画像に対して、画像処理装置40を用いて色判定処理を実施した。色判定処理では、第1撮像工程で取得した画像を用いた。また、評価プレート10_1に対して異物検出処理を行った。更に、評価プレート10_4に対してコロニー検出処理を行った。コロニー検出処理及び異物検出処理は、後述するように、第1撮像工程で取得した画像に対して実施するとともに、第2撮像工程で取得した画像に対しても実施した。
【0232】
[色判定処理]
色判定処理は、評価プレート10_1~10_9の全てに対して行った。評価プレート10_1~10_9に対する色判定の方法は同じであった。よって、代表して評価プレート10_1に対して行った色判定処理を説明する。
【0233】
色判定処理は、画像処理装置40を用いて、図11に示した色判定処理(第1色判定処理)のフローチャートに従って行った。第1判定工程S14では、算出した類似度分布を、図8に示したようなグラフにして評価者に提示し、評価者が紫色と黄色とを分ける閾値を設定した。第2判定工程S16及び第3判定工程S18においても同様に閾値を設定した。
【0234】
色判定処理の結果は、図26図29に示した図表のとおりであった。図26図29には、色判定結果である検出結果の他、カラーカメラ画像、HSV画像及び目視判定結果も示している。
【0235】
図26図29におけるNo.1~No.9は、評価プレート10_1~10_9に対応する。図26のNo.1の結果は、N枚の評価プレート10_1のうちの一つの結果である。図26図29のNo.2~No.9の結果についても同様である。
【0236】
図26図29中の「カラーカメラ画像」は、図11に示したプレート画像作成工程S11で作成されたプレート画像P1である。図26図29中の「HSV画像」は、図11に示したHSV画像作成工程S12で作成されたHSV画像P2である。図26図29中の「目視判定結果」は、評価プレート10_1~10_9を評価者が目視判定した結果を、画像処理装置40に入力し、紫色及び黄色に手動で色分けした結果を画像表示した結果である。図26図29中の「画像処理結果」は、画像処理装置40の色判定処理(第1の色判定処理)の結果を示した図である。
【0237】
図26図29に示された各画像の周囲に付された「A~P」及び「1~24」は、図1の「A~P」及び「1~24」に対応する。
【0238】
目視判定結果及び画像処理結果の画像において、色の薄いウェル画像13pは黄色を示し、色の濃いウェル画像13pは紫色を示している。また、その中間の色のウェル画像13pは中間色を示している。評価プレート10_1~10_9の目視判定結果において、「m」が付されているウェル画像13pは、紫色及び黄色の中間色であったことを示している。
【0239】
図26図29に示した結果より、画像処理装置40を用いた色判定処理によって、目視判定と実質的に同様の結果が得られていることが理解され得る。実際、評価プレート10_1,10_2,10_5,10_6に対して画像処理装置40を用いた検出結果が目視判定結果と異なる割合(以下、「相違率」)は、それぞれ0.0%、0.2%、0.1%及び0.0%であった。上記評価プレート10_1の相違率は、同一条件の3つの評価プレート10_1の画像処理装置40による検出結果において、目視判定結果と異なるウェル13の数の合計を、全体のウェル13の数(384×N)で割った値(%)であり、評価プレート10_2,10_5,10_6の相違率も同様の方法で算出した値であった。
【0240】
[コロニー検出処理]
コロニー検出処理は、評価プレート10_4に対して行った。前述したように、第1撮像工程及び第2撮像工程それぞれによって取得された画像に対してコロニー検出処理を実施した。
【0241】
まず、第1撮像工程で取得した画像を用いたコロニー検出処理を説明する。
【0242】
コロニー検出処理は、画像処理装置40を用いて、図18に示したコロニー検出処理のフローチャートに従って行った。ウェル画像特定工程S31では、ウェル13に何も入っていない状態のプレート11を撮影してマスク画像とし、対応するウェル領域をROIとして設定した。更に、第1コロニー検出工程S34及び第2コロニー検出工程S36では、それぞれの工程で使用する輝度閾値を評価者が指定した。同様に、コロニー検出のための形状及びサイズも評価者が指定した。
【0243】
コロニー検出工程の結果は、図30に示した図表のとおりであった。図30中のNo.1~No.7は、それぞれ評価プレート10_4に対応するプレート画像P1内の複数のウェル画像13p(図30における「元画像」)の一部を抜粋したものであり、それぞれに対応するコロニー検出結果を示している。検出結果において、一点鎖線で囲んだ領域がコロニーとして検出された領域である。No.2は、元画像に示すようにコロニーが発生していないウェル画像13pを示している。この場合、画像処理装置40によるコロニー検出処理ではコロニーは検出されなかった。したがって、No.2の検出結果の表記は省略している。
【0244】
図30における元画像と、検出結果とを比較すると、画像処理装置40でのコロニー検出処理によって、適切にコロニーが検出されていることがわかる。更に、画像処理装置40を用いたコロニー検出処理では、ウェル画像13pでは判別しにくい小さいコロニーも確実に検出できていることが理解される。上記No.2のように、ウェル画像13pにおいてコロニーが存在しない場合、画像処理装置40によるコロニー検出処理でもコロニーは検出されなかった。すなわち、誤検知も生じていないことが理解され得る。
【0245】
次に、第2撮像工程で取得した画像を用いたコロニー検出処理を説明する。この場合、第1撮像工程の代わりに第2撮像工程で取得した評価プレート10_4の画像を用いた点以外は、第1撮像工程で取得した画像を用いた場合と同様にして、コロニーを検出した。
【0246】
コロニー検出工程の結果は、図31に示した図表のとおりであった。図31中のNo.1~No.7は、それぞれ評価プレート10_4に対応するプレート画像P1内の複数のウェル画像13p(図31における「元画像」)の一部を抜粋したものであり、それぞれに対応するコロニー検出結果を示している。図31のウェル画像13pは、図30のウェル画像13pの場合と同じウェル13に対する画像であった。検出結果において、一点鎖線で囲んだ領域がコロニーとして検出された領域である。No.2、No.3及びNo.5における検出結果を省略している理由は、図30のNo.2の場合と同様である。すなわち、元画像において、コロニーが存在しないため、画像処理装置40を用いた結果でもコロニーは検出されなかった。
【0247】
図31における元画像と、検出結果とを比較すると、画像処理装置40でのコロニー検出処理によって、一部のコロニーは適切に検出されていることがわかる。
【0248】
前述したように、図30及び図31は、同じウェル13に対応するウェル画像13pに対する結果であった。図30及び図31の結果を比較すると、第1撮像工程によって10_4の画像を取得する場合(すなわち、ウェル13の底部13a側から10_4を撮像する場合)の方が、第2撮像工程によって10_4の画像を取得する場合(すなわち、ウェル13の底部13aと反対側から10_4を撮像する場合)より、コロニーを明確に検出できていることが理解される(例えば、図30及び図31におけるNo.3,5の結果を参照)。これは、コロニーが、通常、ウェル13の底部13a側に沈むためと考えられる。
【0249】
[異物検出処理]
異物検出処理は、評価プレート10_1に対して行った。ここでは、コロニー検出処理で説明した第1撮像工程及び第2撮像工程それぞれによって取得された画像を利用して異物検出を行った。
【0250】
まず、第1撮像工程で取得した画像を用いた異物検出を説明する。
【0251】
異物検出処理では、画像処理装置40を用いて、図24に示した異物検出処理のフローチャートに従って行った。ウェル画像特定工程S31では、コロニー検出処理の場合と同様に、ウェル13に何も入っていない状態のプレート11を撮影してマスク画像とし、対応するウェル領域をROIとして設定した。異物検出処理において、第1異物検出工程S51及び第2異物検出工程S53では、第1輝度閾値及び第2輝度閾値を評価者が指定した。同様に、異物検出のための形状及びサイズも評価者が指定した。
【0252】
異物検出工程の結果は、図32に示した図表のとおりであった。図32中のNo.1~No.7は、それぞれ評価プレート10_1に対応するプレート画像P1内の複数のウェル画像13p(図32における「元画像」)の一部を抜粋したものであり、それに対応する検出結果を示している。検出結果において、一点鎖線で囲んだ領域が異物として検出された領域である。
【0253】
図32における元画像と、検出結果とを比較すると、画像処理装置40を用いた異物検出処理によって、適切に異物が検出されていることがわかる。更に、画像処理装置40を用いた異物検出処理では、元画像では判別しにくい小さい異物も確実に検出できていることが理解される。
【0254】
次に、第2撮像工程で取得した画像を用いた異物検出処理を説明する。この場合、第1撮像工程の代わりに第2撮像工程で取得した評価プレート10_1の画像を用いた点以外は、第1撮像工程で取得した画像を用いた場合と同様にして、異物を検出した。
【0255】
異物検出工程の結果は、図33に示した図表のとおりであった。図33中のNo.1~No.7は、それぞれ評価プレート10_1に対応するプレート画像P1内の複数のウェル画像13p(図33における「元画像」)の一部を抜粋したものであり、それに対応する検出結果を示している。図33のウェル画像13pは、図32のウェル画像13pの場合と同じウェル13に対する画像であった。検出結果において、一点鎖線で囲んだ領域が異物として検出された領域である。No.1及びNo.2における検出結果を省略している理由は、図30のNo.2の場合と同様である。すなわち、元画像において、異物が存在しないため、画像処理装置40を用いた結果でも異物は検出されなかった。
【0256】
図33における元画像と、検出結果とを比較すると、画像処理装置40による異物検出処理によって、一部の異物は適切に異物検出されていることがわかる。
【0257】
前述したように、図32及び図33は、同じウェル13に対応するウェル画像13pに対する結果であった。図32及び図33の結果を比較すると、第1撮像工程によって評価プレート10_1の画像を取得する場合(すなわち、ウェル13の底部13a側から評価プレート10_1を撮像する場合)の方が、第2撮像工程によって評価プレート10_1の画像を取得する場合(すなわち、ウェル13の底部13aと反対側から評価プレート10_1を撮像する場合)より、異物を明確に検出できていることが理解される(例えば、図32及び図33におけるNo.1,2の結果を参照)。これは、異物が、通常、ウェル13の底部13a側に沈むためと考えられる。
【0258】
次に、上記実施形態の変形例を説明する。
【0259】
(変形例1)
変形例1では、上記評価プレート10の画像を撮像する場合における照射工程では、評価プレートに波長範囲430nm~460nmおよび波長範囲520nm~620nmの少なくとも一方の波長範囲内の波長の光Lを評価プレートに照射する。
【0260】
上記照射工程は、たとえば、図3に示した照明装置32として、波長範囲430nm~460nm内の波長の光を出力するLEDおよび波長範囲520nm~620nm波長の光を出力するLEDの少なくとも一方を含むLED照明を採用することで実施され得る。或いは、上記照射工程は、照明装置32から出力された光を、波長範囲430nm~460nm内の波長の光を出力するLEDおよび波長範囲520nm~620nm内の波長の光を出力するLEDの少なくとも一方を選択的に通す波長フィルタを介して、評価プレート10に照射してもよい。このような波長フィルタは、照明装置32内に組み込まれていてもよい。
【0261】
上記照射工程では、波長範囲430nm~460nmから選択された第1波長および波長範囲520nm~620nmから選択された第2波長を有する光L、すなわち、第1波長の光と第2波長の光の混合光を評価プレート10に照射してもよい。第1波長および第2波長の組み合わせの一例としては、第1波長が440nmであり、第2波長が590nmである。
【0262】
照射する光Lの波長が上記条件を有する点以外は、上記実施形態と同様である。したがって、変形例1は、実施形態と同様の作用効果を有する。
【0263】
上記波長範囲内の光Lを使用することで、評価対象14の状態などの異なるウェル13間(たとえば、区画Se1~Se8間)の輝度差が大きくなることから、たとえば、色の違いがより明確になる。その結果、安全性評価をより正確に実施できる。
【0264】
たとえば、pH指示薬の色の変化などでウェル13の色(評価対象14の色)が変化している場合、評価プレート10には、波長範囲430nm~460nm内の波長で表される色に近い色のウェル13もあれば、波長範囲520nm~620nm内の波長で表される色に近い色のウェル13も存在する。光Lが上記第1波長および第2波長を有する場合、波長範囲430nm~460nm側の色および波長範囲520nm~620nm側の色の両方に対してウェル13の輝度を確保し易い。この場合、評価対象14の状態などの異なるウェル13間(たとえば、区画Se1~Se8間)の色の違いがより明確になる。その結果、安全性評価をより正確に実施できる。
【0265】
波長範囲430nm~460nmおよび波長範囲520nm~620nmの少なくとも一方の波長範囲内の波長の光Lを評価プレートに照射することで、区画Se1~Se8間の色の違いがより明確になる点に関する検証実験を実験例2として説明する。
【0266】
実験例2では、色判定する状態の評価プレート10、すなわち、上記Ames試験の手順(第1A工程から第14A工程)のうち第11A工程が終了して得られた評価プレート10のモデルとして、以下のようにして5つのサンプルNo.1~サンプルNo.5の評価プレートを準備した。サンプルNo.1~サンプルNo.5は、実際のAmes試験の評価プレートで起こりうる色調の範囲を模したものである。説明の便宜の為、実験例2で準備したサンプルNo.1~サンプルNo.5の評価プレートも評価プレート10と称す。
【0267】
(サンプルNo.1)
図1に示したプレート11が有する384個のウェル13にブロモクレゾールパープル(pH指示薬)を注入した。プロモクレゾールパープルは、pH5.2(黄色)からph6.8(紫色)に変化し得るpH指示薬であった。プレート11の長辺の長さは127mmであり短辺の長さは87mmであった。区画Se1~区画Se8に異なる量の塩酸を更に添加して、評価プレート10の色評価における評価結果の一例を模した状態(色の状態)になるように、区画Se1~区画Se8のウェル13の色(pH指示薬)の色を調整した。サンプルNo.1の区画Se1~区画Se8における塩酸添加量、pHおよび目視した場合の色の判定は表1のとおりであった。表1中の中間色は、紫色と黄色との間の色である。色は、区画Se1(陰性対照区画)のウェル13の色を紫色とみなし、および区画Se8(陽性対照区画)のウェル13の色を黄色とみなし、区画Se1のウェル13の色および区画Se8のウェル13の色を基準として判定した。
【表1】
【0268】
(サンプルNo.2~サンプルNo.5)
サンプルNo.2~サンプルNo.5が、評価プレート10の色評価において互いに異なる評価結果を模した状態(色の状態)になるように、サンプルNo.2~サンプルNo.5それぞれの区画Se1~区画Se8のウェル13の色(pH指示薬)の色を、塩酸の添加によって調整した。サンプルNo.2~No.5の区画Se1~区画Se8における塩酸添加量、pHおよび目視した場合の色の判定は、表2、表3、表4および表5のとおりであった。表2及び表3中の中間色は、紫色と黄色との間の色である。サンプルNo.2~サンプルNo.3における色の判定では、サンプルNo.1の場合と同様に、各サンプルNo.2~No.3において、区画Se1のウェル13の色および区画Se8のウェル13の色を基準とした。サンプルNo.4~サンプルNo.5における色の判定では、各サンプルNo.4~No.5において、区画Se1(陰性対照区画)のウェル13の色を紫色とみなし、区画Se1のウェル13の色を基準として判定した。
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【0269】
その後、図34に示した照明装置321と、照明装置321と対向して配置された撮像部331を含む観察装置を用いて、サンプルNo.1の評価プレート10を撮像した。具体的には、照明装置321を点灯し、サンプルNo.1の評価プレート10を照明装置321の上に配置し共に搬送しながら、撮像部331で評価プレート10を撮像した。
【0270】
照明装置321はLEDを用いた面光源装置であって、波長400~700nmの光Lを出力する面光源装置(KOS21製のKDB-100)であった。撮像部331は、撮像器331aと、撮像器331aに取り付けられた集光部331bを有していた。撮像器331aは、ハイパースペクトルカメラ(Resonon製のPika―L)であった。撮像器331aのフレームレートは249.2Hzであり、露光時間は3.93msであった。集光部331bには、Shneider社製のXenoplan1.4/23-0902(絞り:F5.6)を使用した。評価プレート10の搬送速度は、22mm/sであった。
【0271】
図35は、サンプルNo.1の評価プレート10の撮像結果に基づく区画別スペクトル分布を示した図面である。図35では撮像器331a(ハイパースペクトルカメラ)で得られたスペクトルを、区画Se1~区画Se8毎に平均した平均スペクトルを示している。図35において、横軸は波長であり、縦軸は、輝度値である。「1」~「8」で表された濃さの異なるラインは、区画Se1~区画Se8に対応する平均スペクトルのラインを表しており、「1」~「8」はそれぞれ区画Se1~区画Se8に対応している。すなわち、区画Se1、区画Se2、・・・、区画Se8の順に平均スペクトルを示すラインの色が薄くなっている。
【0272】
撮像する評価プレート10を、サンプルNo.2~サンプルNo.5の評価プレート10に変更した点以外は、サンプルNo.1の評価プレート10の場合と同様にして、サンプルNo.2~サンプルNo.5の評価プレート10を撮像した。
【0273】
図36は、サンプルNo.2の評価プレート10の撮像結果に基づく区画別スペクトル分布を示した図面である。図37は、サンプルNo.3の評価プレート10の撮像結果に基づく区画別スペクトル分布を示した図面である。図38は、サンプルNo.4の評価プレート10の撮像結果に基づく区画別スペクトル分布を示した図面である。図39は、サンプルNo.5の評価プレート10の撮像結果に基づく区画別スペクトル分布を示した図面である。図36図39における横軸、縦軸および、区画Se1~区画Se8に対応する平均スペクトルを示すラインの表し方は図35の場合と同様である。
【0274】
図40は、波長毎の区画間の輝度差を示したグラフである。具体的には、図35図39それぞれの結果において、各波長において、区画間の輝度差のうち最大値をプロットしたものである。図40に示したサンプルNo.1~サンプルNo.5の結果を示すラインの違いは濃淡で表しており、サンプルNo.4、サンプルNo.5、サンプルNo.2、サンプルNo.3およびサンプルNo.1の順にラインの色が濃くなっている。
【0275】
図40に示したように、波長範囲430nm~460nmおよび波長範囲520nm~620nmそれぞれでは、サンプルNo.1~サンプルNo.5すべてにおいて、区画間の輝度差が大きくなっている。
【0276】
そのため、評価プレートに波長範囲430nm~460nmおよび波長範囲520nm~620nmの少なくとも一方の波長範囲内の波長の光Lを評価プレートに照射することによって、区画間の色の変化を明確に区別しやすい。その結果、安全性評価をより正確に実施できる。
【0277】
(変形例2)
変形例2における上記評価プレート10の画像を撮像する場合における照射工程では、評価プレートに波長520nm以上の光Lを評価プレートに照射する。この点以外は、上記実施形態と同様である。したがって、変形例1は、実施形態と同様の作用効果を有する。
【0278】
変形例1で説明した実験例2の結果である図40より、光Lが波長520nm以上を有することで、区画間の輝度差を大きくできる。そのため、光Lが波長520nm以上を有することによって、評価対象14の状態などの異なるウェル13間(たとえば、区画Se1~Se8間)の色の違いがより明確になる。その結果、安全性評価をより正確に実施できる。
【0279】
(変形例3)
変形例3では、評価プレートを撮像する撮像工程において、波長範囲430nm~460nmおよび波長範囲520nm~620nmの少なくとも一方の波長範囲内の波長の光を選択的に受光する。こ点以外は、上記実施形態と同様である。したがって、変形例1は、実施形態と同様の作用効果を有する。
【0280】
このような撮像工程は、図3に示した観察装置30において、評価プレート10からの光を波長範囲430nm~460nmおよび波長範囲520nm~620nmの少なくとも一方の波長範囲内の波長の光を選択的に通すフィルタを介して撮像部33で受光することで実施され得る。
【0281】
変形例3では、波長範囲430nm~460nmおよび波長範囲520nm~620nmの少なくとも一方の波長範囲内の波長の光を選択的に受光する。この場合、受光側で波長を選択している点以外は、実質的に変形例1と同様である。そのため、変形例3は、変形例1と同様の作用効果を有する。
【0282】
(変形例4)
プレート11は、以下のプレート判定方法で適正と判定されたプレートであってよい。プレート判定方法で、図1に示したプレート11を判定する場合を例にしてプレート判定方法を説明する。変形例4で後述する異物は、上記実施形態で説明した、細胞が死滅して生じる物質(または構造物)である。
【0283】
(プレート判定方法)
評価すべきプレート11が有する複数のウェル(判定方法における評価されるべきウェル(評価ウェル)に相当)13に、上記異物が生じるように選択され且つ調整された試験体および検体を含む評価サンプルを注入してから一定時間経過した後、異物を保持しているウェル13が少なくとも1つある場合に、プレートを適正と判定する。
【0284】
上記一定時間後に計数するタイミング(以下、「計数タイミング」と称す)は、異物が確実に生じていることが確保し得る時間であり、たとえば、Ames試験において異物の有無などを評価する場合には、その評価を実施するタイミングでよい。上記計数タイミングは、たとえば試験に応じて異なってもよい。たとえば、計数タイミングは、ある試験において第1計数タイミングであり、他の試験では、上記第1計数タイミングから所定時間経過した第2計数タイミングでもよい。
【0285】
上記第1計数タイミングの例は、上記第11A工程のようにプレート11に検体および試験体を注入し、48時間培養した後である。たとえば、上記計数タイミングは、複数のウェル13に評価サンプルを注入したのち48時間の培養終了後から12時間以内であり、3時間以内が好ましい。第2計数タイミングは、たとえば、上記第11A工程のようにプレート11に検体および試験体を注入した後、一定温度(たとえば、10℃以下)で保存し、所定時間経過した後のタイミングでよい。所定時間は、たとえば、保存開始から1日後、2日後、3日後、4日後または5日後である。
【0286】
上記プレート判定方法において、試験体は細胞である。上記評価サンプルは、異物が生じることが予め判明している細胞および検体の組み合わせであって、検体濃度が上記異物を生じる濃度であるサンプルである。
【0287】
評価サンプルに採用する細胞の例は細菌である。評価サンプルに採用する細菌としては、大腸菌(たとえば、大腸菌WP2uvrA株)またはネズミチフス菌(たとえば、ネズミチフス菌TA100株)が挙げられ得る。評価サンプルに採用する検体の例は、tert-butylhydroquinone、1-decanol、2-ethoxynaphthalene、4-(1,1,3,3-tetramethylbutyl)phenol、diethyl chlorothiophosphate、または4-chlorobenzyl chlorideである。たとえば、検体は、濃度が62.5μg/mL以上である1-decanol、または、濃度が667μg/mL以上であるtert-butylhydroquinoneであってもよい。
【0288】
評価サンプルの具体例としては、次の第1評価サンプル~第4評価サンプルが挙げられる。
(第1評価サンプル)
大腸菌WP2uvrA株を上記細胞として採用し、濃度が62.5μg/mLである1-decanolを上記検体として採用した評価サンプルである。
(第2評価サンプル)
大腸菌WP2uvrA株を上記細胞として採用し、濃度が125μg/mLである1-decanolを上記検体として採用した評価サンプルである。
(第3評価サンプル)
ネズミチフス菌TA100株を上記細胞として採用し、濃度が667μg/mLである1-decanolを上記検体として採用した評価サンプルである。
(第4評価サンプル)
ネズミチフス菌TA100株を上記細胞とし、濃度が2000μg/mLである1-decanolを上記記検体として採用した評価サンプル。
【0289】
上記プレート判定方法において、評価サンプルの培養は、たとえば、37℃で48時間行う。
【0290】
プレート判定方法において、プレートを適切に判定するため、評価サンプルを注入するウェル13の数は、少なくとも12個であることが好ましく、48個であることがより望ましい。
【0291】
上記プレート判定方法の具体的な手順の一例を説明する。
(第1B工程)
使用する試験体として、プレート11の評価サンプルに使用する細胞を用いる点以外は、第2A工程と同様の工程を実施する。具体的には、評価サンプル用の細胞を、60mLのニュートリエントブロス培地に植菌し37℃で9~10時間振とう培養して増殖させる。
【0292】
(第2B工程)
使用する検体として、プレート11の評価サンプルに使用する検体を用いる点以外は、第1B工程と同様の工程を実施する。具体的には、評価サンプル用の検体を必要量はかりとる。
【0293】
(第3B工程)
第2B工程の検体を適当な媒体に溶解または懸濁し、検体が細胞毒性を及ぼす濃度の25倍となるように検体液を調製する。
【0294】
(第4B工程)
第3B工程で得た検体液を10μLずつ、24ウェルプレートのウェルに入れる。
【0295】
(第5B工程)
第6A工程と同様に、代謝活性化非存在下条件の調製菌液を作成する。具体的には、0.175~0.7mLの細胞の培養液(通常1×10細胞/mLを超える濃度)と、6.83~6.3mLの培地(炭素源が添加され且つアミノ酸が不足した最小培地)を混合し、代謝活性化非存在下条件の調製菌液を作成する。
【0296】
(第6B工程)
検体液等10μLを入れた24ウェルプレートに、第5B工程で作成した代謝活性化非存在下条件の調製菌液240μLを添加する。
【0297】
(第7B工程)
第6B工程で準備した混合液の入った24ウェルプレートを、37℃、250rpmで90分間振とうする(プレインキュベーション)。
【0298】
(第8B工程)
プレインキュベーション終了後の24ウェルプレートの各ウェル(250μL)に指示培地(pH指示薬と炭素源を含み、アミノ酸が不足した最小培地)を2.6mL添加する。
【0299】
(第9B工程)
第8B工程で得られた混合液を、50μLずつ384ウェルプレート(プレート11)の48ウェル(1区画分)に移す。
【0300】
(第10B工程)
384ウェルプレート(プレート11)を37℃で48時間培養する。
【0301】
(第11B工程)
培養終了したプレート11において第9B工程で混合液を注入した48個のウェル13における異物の有無を観察し、異物が存在するウェル13の数を計数し、異物が存在するウェル13が少なくとも1つ存在するか否かを確認する。
【0302】
上記プレートの判定方法を実施し、適正と評価されたプレート11では、上記一定時間経過後における上記計数タイミングまで異物を保持可能である。そのため、適正と評価されたプレート11を用いて、上述したAmes試験における評価方法を実施した場合、上記一定時間経過後における上記計数タイミングで評価プレート10を評価することによって、正確に検体の細胞に対する毒性を評価できる。
【0303】
次に、変形例3に関する実験例3~実験例8を説明する。実験例3~実験例8では、次の6つのプレートA~プレートHを上記プレート判定方法で評価した。プレートA~プレートHは、以下に示す材質およびコーティング状態の点以外は同じ構成を有し、図1に示したプレート11と同様に、384個のウェルを有していた。
【0304】
(プレートA)
プレートAの材質は、ポリスチレンであった。プレートAは表面(ウェル13の内面および底面含む)にTC(組織培養)処理が施されていた。
【0305】
(プレートB)
プレートBの材質は、ポリスチレンであった。プレートBには表面コーティングが施されていなかった。すなわち、プレートBは、表面コーティングが施されていないポリスチレン製プレートであった。
【0306】
(プレートC)
プレートCは、ガラス板を有し、ガラス板上に、384個のウェル13を有する構造体が接合されることで構成されていた。上記構造体の材質は環状オレフィンコポリマー(COC)であった。したがって、プレートCが有する各ウェル13の底面の材質はガラスであり、壁面の材質はCOCであった。プレートCでは、ウェル13の底面にフィブロネクチンがコーティングされていた。
【0307】
(プレートD)
プレートDの材質は、ポリスチレンであった。プレートDは表面にPoly-D-Lysineがコーティングされていた。
【0308】
(プレートE)
プレートEは、ガラス板を有し、ガラス板上に、384個のウェル13を有する構造体が接合されることで構成されていた。上記構造体の材質はCOCであった。したがって、プレートEが有する各ウェル13の底面の材質はガラスであり、壁面の材質はCOCであった。プレートEには表面コーティングが施されていなかった。
【0309】
(プレートF)
プレートFの材質は、シクロオレフィンポリマーであった。プレートFには表面コーティングが施されていなかった。すなわち、プレートFは、表面コーティングが施されていないシクロオレフィンポリマー製プレートであった。
【0310】
(プレートG)
プレートGは、ガラス板を有し、ガラス板上に、384個のウェル13を有する構造体が接合されることで構成されていた。上記構造体の材質はポリスチレンであった。したがって、プレートGが有する各ウェル13の底面の材質はガラスであり、壁面の材質はポリスチレンであった。プレートGには表面コーティングが施されていなかった。
【0311】
(プレートH)
プレートHの材質は、COCであった。プレートHは表面にTC(組織培養)処理が施されていた。
【0312】
実験例3~実験例8で使用した細胞は、国立医薬品食品衛生研究所、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンター、American Type Culture Collection、Xenometrix社製のAmes試験キット(「Ames MPFTM Penta I Microplate Format Mutagenicity Assay」)などから入手可能なものであった。実験例3~実験例8で使用した検体は、東京化成工業製であった。
【0313】
(実験例3)
実験例3では、評価サンプル用の細胞および検体として次のものを用いて、上記第1B工程から第8B工程を実施した。その後、第9B工程において、第8B工程で準備した混合液を、プレートA,プレートBおよびプレートCにそれぞれ第9B工程で説明したように移した後、第10B工程から第11Bを実施した。
【0314】
<実験例3の評価サンプル用の細胞および検体>
細胞:大腸菌WP2uvrA株
検体 :1-decanol
【0315】
実験例3の第3B工程で使用した媒体は、DMSOであった。第5B工程においては、0.7mLの細胞を6.3mLの培地に混合した。第6B工程における濃度は62.5μg/mLであった。
【0316】
実験例3では、第11B工程で各ウェル13における異物の有無を目視観察して、異物が存在するウェル数を計数した後、プレート11を4℃で保存し、1日後、2日後、3日後、4日後および5日後それぞれにおいて各ウェル13における異物の有無を目視観察して、異物が存在するウェル数を計数した。実験例3の結果は、表6のとおりであった。表6における「培養終了直後」は、48時間の培養が終了した時点で異物の目視観察を行った意味である。
【表6】
【0317】
(実験例4)
実験例4では、評価サンプル用の細胞および検体として次のものを用いて、上記第1B工程から第8B工程を実施した。その後、第9B工程において、第8B工程で準備した混合液を、プレートA,プレートBおよびプレートCにそれぞれ第9B工程で説明したように移した後、第10B工程から第11B工程を実施した。
【0318】
<実験例4の評価サンプル用の細胞および検体>
細胞:大腸菌WP2uvrA株
検体 :1-decanol
【0319】
実験例4の第3B工程で使用した媒体は、DMSOであった。第5B工程においては、0.7mLの細胞を6.3mLの培地に混合した。第6B工程における濃度は125μg/mLであった。
【0320】
実験例4では、第11B工程で各ウェル13における異物の有無を目視観察して、異物が存在するウェル数を計数した後、プレート11を4℃で保存し、1日後、2日後、3日後、4日後および5日後それぞれにおいて各ウェル13における異物の有無を目視観察して、異物が存在するウェル数を計数した。実験例4の結果は、表7のとおりであった。表7における「培養終了直後」の意味は、表6の場合と同様であった。
【表7】
【0321】
(実験例5)
実験例5では、評価サンプル用の細胞および検体として次のものを用いて、上記第1B工程から第8B工程を実施した。その後、第9B工程において、第8B工程で準備した混合液を、プレートA,プレートBおよびプレートCにそれぞれ第9B工程で説明したように移した後、第10B工程から第11B工程を実施した。
【0322】
<実験例5の評価サンプル用の細胞および検体>
細胞:ネズミチフス菌TA100株
検体 :1-decanol
【0323】
実験例5の第3B工程で使用した媒体は、DMSOであった。第5B工程においては、0.35mLの細胞を6.65mLの培地に混合した。第6B工程における濃度は667μg/mLであった。
【0324】
実験例5では、第11B工程で各ウェル13における異物の有無を目視観察して、異物が存在するウェル数を計数した後、プレート11を4℃で保存し、1日後、2日後、3日後、4日後および5日後それぞれにおいて各ウェル13における異物の有無を目視観察して、異物が存在するウェル数を計数した。実験例5の結果は、表8のとおりであった。表8における「培養終了直後」の意味は、表6の場合と同様であった。
【表8】
【0325】
(実験例6)
実験例6では、評価サンプル用の細胞および検体として次のものを用いて、上記第1B工程から第8B工程を実施した。その後、第9B工程において、第8B工程で準備した混合液を、プレートA,プレートBおよびプレートCにそれぞれ第9B工程で説明したように移した後、第10B工程から第11B工程を実施した。
【0326】
<実験例6の評価サンプル用の細胞および検体>
細胞:ネズミチフス菌TA100株
検体 :1-decanol
【0327】
実験例6の第3B工程で使用した媒体は、DMSOであった。第5B工程においては、0.35mLの細胞を6.65mLの培地に混合した。第6B工程における濃度は、2000μg/mLであった。
【0328】
実験例6では、第11B工程で各ウェル13における異物の有無を目視観察して、異物が存在するウェル数を計数した後、プレート11を4℃で保存し、1日後、2日後、3日後、4日後および5日後それぞれにおいて各ウェル13における異物の有無を目視観察して、異物が存在するウェル数を計数した。実験例6の結果は、表9のとおりであった。表9における「培養終了直後」の意味は、表6の場合と同様であった。
【表9】
【0329】
(実験例7)
実験例7では、評価サンプル用の細胞および検体として次のものを用いて、上記第1B工程から第8B工程を実施した。その後、第9B工程において、第8B工程で準備した混合液を、プレートA,プレートDおよびプレートEにそれぞれ第9B工程で説明したように移した後、第10B工程から第11B工程を実施した。
【0330】
<実験例7の評価サンプル用の細胞および検体>
細胞:ネズミチフス菌TA98株
検体 :tert-butylhydroquinone
【0331】
実験例7の第3B工程で使用した媒体は、DMSOであった。さらに、第3B工程における濃度は2500μg/mLであった。第5B工程においては、0.7mLの細胞を6.3mLの培地に混合した。第6B工程における濃度は2500μg/mLであった。
【0332】
実験例7では、第11B工程で各ウェル13における異物の有無を目視観察して、異物が存在するウェル数を計数した。実験例7の結果は、表10のとおりであった。表10では、48個のウェル13において、異物が確認できたウェルの数を示している。表10における「培養終了直後」の意味は、表6の場合と同様であった。
【表10】
【0333】
(実験例8)
実験例8では、評価サンプル用の細胞および検体として次のものを用いて、上記第1B工程から第8B工程を実施した。その後、第9B工程において、第8B工程で準備した混合液を、プレートA,プレートF,プレートGおよびプレートHにそれぞれ第9B工程で説明したように移した後、第10B工程から第11B工程を実施した。
【0334】
<実験例8の評価サンプル用の細胞および検体>
細胞:大腸菌WP2uvrA株
検体 :1-decanol
【0335】
実験例8の第3B工程で使用した媒体は、DMSOであった。第5B工程においては、0.7mLの細胞を6.3mLの培地に混合した。第6B工程における濃度は125μg/mLであった。
【0336】
実験例8では、第11B工程で各ウェル13における異物の有無を目視観察して、異物が存在するウェル数を計数した。実験例8の結果は、表11のとおりであった。表11では、48個のウェル13において、異物が確認できたウェルの数を示している。表11における「培養終了直後」の意味は、表6の場合と同様であった。
【表11】
【0337】
(実験例3~実験例8の評価)
実験例3~実験例8では、培養終了直後に計数した場合、プレートB、プレートC、プレートD、プレートE、プレートF、プレートGおよびプレートHにおいて、異物を保持したウェルが存在している。よって、実験例3~実験例8で使用した細胞および検体の組み合わせおよび検体の濃度は、異物を生じさせる条件であり、かつ、プレートB、プレートC、プレートD、プレートE、プレートF、プレートGおよびプレートHは、培養終了直後において、異物を保持可能なプレートであることがわかる。一方、プレートAは、実験例3~実験例8の培養終了直後において、異物を保持したウェル13は存在しなかった。したがって、プレートAは、異物を保持できないプレートである。
【0338】
そのため、培養直後に異物の有無を判定する細胞毒性評価試験に対して、プレートB~プレートHは適正なプレート(すなわち、異物の有無を適正に評価可能なプレート)である一方、プレートAは、異物の有無を適正に評価できないプレートと評価し得る。
【0339】
実験例3~実験例6における1日後、2日後、3日後、4日後および5日後の計数結果より、培養直後の場合と同様に、1日後、2日後、3日後、4日後および5日後それぞれにおいて、異物の有無を判定する細胞毒性評価試験に対して、プレートCは適正、すなわち、異物の有無を適正に評価可能なプレートである。一方、プレートAおよびプレートBは、1日後以降、異物を保持するウェル13が存在しなかった。そのため、プレートAおよびプレートBは、1日後以降に異物の有無を評価する場合には、異物の有無を適正に評価できないプレートと評価し得る。
【0340】
培養直後の結果において、実験例3~実験例8は同様の結果が得られている。したがって、たとえば、実験例3の評価サンプル(実験例3で採用した細胞、検体および検体濃度)をプレート評価のための基準サンプルとした場合、その基準サンプルを用いることで、実験例4~実験例8のように、他の細胞、検体および検体濃度の組み合わせの場合においてもプレートを適切に評価できていることがわかる。
【0341】
実験例4~実験例8それぞれの評価サンプル(実験例4~実験例8で採用した細胞、検体および検体濃度)をプレート評価のための基準サンプルとした場合についても同様である。すなわち、実験例4~実験例8それぞれの評価サンプルを基準サンプルとした場合、基準サンプルで適正と評価されたプレートは、実験例3~実験例8のうち基準サンプルを採用した実験例以外の実験例で採用した細胞、検体および検体濃度の組み合わせの場合においてもプレートを適切に評価できていることがわかる。
【0342】
したがって、実験例3~実験例8で採用した評価サンプルは、培養直後にプレートを評価するための評価サンプルとして使用可能であることが検証された。
【0343】
計数タイミングが1日後、2日後、3日後、4日後および5日後の場合においても同様である。すなわち、実験例3~実験例6それぞれで採用した評価サンプルは、1日後、2日後、3日後、4日後および5日後それぞれが計数タイミングである場合において、プレートを評価するための評価サンプルとして使用可能であることが検証された。
【0344】
以上、本発明の種々の実施形態及び変形例とともに実験例を説明した。しかしながら、本発明は、例示した種々の実施形態、変形例及び実験例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される範囲が含まれるとともに、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0345】
例えば、図11に示したフローチャートでは、色判定を3回繰り返したが、色判定は、少なくとも1回実施されればよい。例えば、図11に示したフローチャートにおける第1判定工程の結果を、最終判定としてもよい。図11に示したフローチャートで示された第1基準作成工程で作成された紫色及び黄色それぞれに対する第1基準統計情報(例えば度数分布)と、プレート画像の全てのウェル画像の統計情報(例えば度数分布)との類似度に基づいて、全てのウェル画像の色(ウェルの色に相当)を最終判定してもよい。
【0346】
色判定などで使用する色候補は、紫色及び黄色に限定されない。他の2色でもよいし、試験内容によっては、3色以上を色候補として採用してもよい。また、評価プレートの例えばウェルの色(又は評価対象の色)が目視において無色であったとしても、撮像部で取得された画像内の色特徴量(例えば色相と彩度)が変化するものであれば、本発明は適用可能である。例えば、可視光または可視光以外の波長を照射することによって、撮像部で取得された画像内の色特徴量(例えば色相と彩度)が変化するものであれば、撮像部で取得された画像内で仮に割り当てたフォールスカラーから色候補を選択してもよい。この場合、フォールスカラーが割り当てられて得られる評価プレートに対応する画像が、プレート画像として機能する。
【0347】
色判定では使用する少なくとも1つの色特徴量として、色相及び彩度以外に明度、輝度、階調値などを単独または組み合わせて用いてもよい。また、RGB画像におけるRの階調値、Gの階調値、Bの階調値をそれぞれ別の色特徴量と扱ってもよい。さらに、使用する色特徴量は2つではなく上記から3つ以上を選択して使用しても良い。
【0348】
色判定で使用する統計情報は少なくとも1種の統計量を含む。統計量は、度数分布以外に評価領域全体の色特徴量の平均値、中央値などを用いても良い。また、統計量は、評価領域における色特徴量の最大値、最小値、偏差(たとえば標準偏差)等であってもよい。
【0349】
たとえば、色特徴量として階調値を採用し、統計情報として平均値および標準偏差(2種の統計量)を採用することができる。
【0350】
この場合の色判定方法の一例を説明する。まず、複数のウェル画像(評価領域)それぞれに含まれる全ての画素のRGBの各階調値の平均値と標準偏差を取得する。これにより、複数のウェル画像それぞれに対して、統計情報として、平均値と標準偏差の組が取得される。このように取得された複数のウェル画像それぞれに対する統計情報(平均値と標準偏差の組)を、度数分布の代わりに使用し、度数分布を利用した場合と同様にして色判定を実施すればよい。たとえば、複数のウェル画像に対する統計情報と、黄色および紫色の基準統計情報との類似度を算出する。算出された類似度に基づいて複数のウェルの色を判定する。黄色および紫色の基準統計情報は、上記度数分布を用いた第2の色判定方法に関して説明した第3基準度数分布を作成する場合と同様に取得され得る。たとえば、目視で黄色に判定された全てのウェルに対応する全てのウェル画像に含まれる全画素のRGBの各階調値の平均値と標準偏差を黄色の基準統計情報とすればよい。紫色の基準統計情報も同様である。ここでは、統計情報が2つの統計量(平均値と標準偏差)を含む場合を説明したが、たとえば、統計情報として、平均値及び標準偏差の一方を使用してもよい。上記説明では、階調値の平均値、標準偏差を採用したが、たとえば、階調値の代わりに、色相、彩度等の他の色特徴量も採用できる。
【0351】
コロニー検出処理及び異物検出処理では、平滑化工程を実施しなくてもよい。コロニー検出処理及び異物検出処理では、検出結果作成工程は、実施されなくてもよい。或いは、コロニー検出処理では、図18に示した第2コロニー検出工程において、検出結果作成工程で行う処理を実施(例えば、第2コロニー検出部が実施)してもよい。同様に、異物検出処理では、図24に示した第2異物検出工程において、検出結果作成工程で行う処理を実施(例えば、第2異物検出部が実施)してもよい。
【0352】
異物検出処理では、図24に示した外部領域設定工程及び第2異物検出工程を実施しなくてもよい。ただし、前述したように、外部領域設定工程及び第2異物検出工程を実施することで、外部領域における異物をより確実に検出可能である。
【0353】
統計情報(例えば度数分布)を利用する色判定処理及び透明度検出処理では、例えば、各ウェルに対応するウェル画像を評価領域として、複数のウェル画像(複数の評価領域)それぞれに対して統計情報を取得した。しかしながら、評価領域は、少なくとも1つのウェル画像を有すればよい。従って、複数のウェル画像を含むウェル画像群を評価領域として、上記ウェル画像群に対して統計情報を取得してもよい。例えば、図1に示した各区画Se1~Se8では、区画Se1~Se8それぞれにおける評価対象の条件は同じである。よって、各区画Se1~Se8に対応する区画画像Se1p~Se8pを評価領域として一つの統計情報を作成し、複数の区画画像に対する統計情報間の類似度を用いて色判定処理及び透明度検出処理を行ってもよい。
【0354】
透明度変化検出処理では、溶媒対照区画に対応する区画画像(溶媒対照領域)の統計情報(たとえば区画度数分布)を基準として、透明度変化を検出した。しかしながら、透明度に対する基準の統計情報(たとえば度数分布)を用いて、透明度変化を検出してもよい。複数のウェルが少なくとも1つの溶媒対照ウェルを含む場合、溶媒対照領域は、上記少なくとも1つの溶媒対照ウェルの画像に対応する少なくとも1つの溶媒対照ウェル画像を含む領域である。
【0355】
試験体は、細胞に限定されない。検体は化学物質に限定されない。試験体及び検体は、それらの組み合わせで、少なくとも色の変化(指示薬を使用した場合の色の変化を含む)が生じるような組み合わせであればよい。試験体の他の例は、抗体であり、検体の他の例は、抗原である。
【0356】
上記実施形態では、評価対象の試験体の形状変化としてコロニーを検出したが、評価対象が試験結果によって形状変化する場合には、コロニーに限定されない。異物は、試験体の形状変化とは異なる構造物であり、例えば、当初含まれていなかった物質(または構造物)であって、例えば輪郭と内部の境が明確なものであり得る。例えば、異物の周囲と屈折率が異なる界面で区切られた物質(または構造物)である。異物の例としては、油塊、気泡などが挙げられる。
【0357】
これまでの説明では、評価方法は、少なくとも色判定処理を実施する。しかしながら、本発明は、少なくとも透明度変化検出処理を実施する評価方法にも係る。この場合においても、透明度変化検出を行う場合、透明度に対する基準の統計情報(例えば度数分布)を用いて、透明度変化を検出してもよい。
【0358】
本開示は、複数のウェル内の異物の有無を検出する工程を備える評価方法(以下、説明の便宜のため、「異物検出に基づく評価方法」と称す)を含み得る。この異物検出に基づく評価方法では色判定処理は行わなくてもよい。上記異物検出に基づく評価方法の上記「複数のウェル内の異物の有無を検出する工程」では、目視により異物の有無を検出してもよいし、上記実施形態で説明したように、ウェル画像に基づいて検出してもよい。
【0359】
ウェル画像に基づいて、複数のウェル内の異物の有無を検出する場合、異物検出に基づく評価方法は、
ウェル画像に基づいて、複数のウェル内の異物の有無を検出する工程を有し、
複数のウェル内の異物の有無を検出する工程は、
複数のウェル画像それぞれに設定した第1輝度閾値に基づいて、前記異物の有無を検出する工程と、
前記複数のウェル画像それぞれにおいて、前記ウェルの深さ方向からみた場合における前記ウェルの底部の領域に対応する内部領域を囲う外部領域において設定された第2輝度閾値に基づいて、前記外部領域内の前記異物の有無を検出する工程と、
を有し、
前記第1輝度閾値と前記第2輝度閾値とは異なり、
前記複数のウェルそれぞれにおいて、前記底部の面積は、前記底部と反対側の開口の面積より小さい、
評価方法である。
【0360】
上記ウェル画像に基づいて複数のウェル内の異物の有無を検出する工程を有する、異物検出に基づく評価方法の一形態としては、上記実施形態において、評価プレートを撮像して得られた画像に対して実施する異物検出処理およびその処理結果に基づいて評価対象を評価する形態が挙げられる。この異物検出に基づく評価方法では色判定処理は行わなくてもよい。また、ウェル画像に基づいて複数のウェル内の異物の有無を検出する場合、ウェル画像(評価プレートを撮像して得られた画像)を目視して異物の有無を検出してもよい。
【0361】
プレートは、ウェルの底面と壁面とが同じ材料で構成されたプレートでもよいし、ウェルの底面と壁面とが異なる材料で構成されたプレートでもよい。
【0362】
上記異物検出に基づく評価方法では変形例4で説明したプレート判定方法で適正と判定されたプレートを使用することが好ましい。これにより、異物をより正確に検出できる。
【0363】
プレート判定方法で適正と判定されるプレートとしては、Poly-D-Lysineが表面コーティングされたポリスチレン製プレート、表面にTC(組織培養)処理が施された環状オレフィンコポリマー製のプレート、表面コーティングが施されていないシクロオレフィンポリマー製プレート等が挙げられる。
【0364】
プレート判定方法で適正と判定されるプレートは、図41で示したプレート11Aでもよい。プレート11Aは、ガラス板111と、ガラス板111の表面111a上に設けられた樹脂層112とを有する。樹脂層112には、複数のウェル13に対応する複数の貫通孔113が形成されている。ガラス板111のうち貫通孔113から露出した領域と、貫通孔113によってウェル13が形成されている。樹脂層112は、環状オレフィンコポリマーまたはポリスチレンである。プレート11Aでは、少なくともウェル13の底面に相当する領域(ガラス板111のうち貫通孔113から露出した領域)にコーティング層114が形成されている。コーティング層114の材料は、フィブロネクチンである。図41に示したプレート11Aは、変形例4で説明した実験例で使用したプレートCに相当する。そのため、プレート11Aは上記異物検出に基づく評価方法に適したプレートである。コーティング層114の材料は、フィブロネクチン、コラーゲン、ラミニン等であってもよい。図41では、コーティング層114を有するプレートの例を示している。しかしながら、プレート11Aは、ガラス板111のうち貫通孔113で露出している領域には、コーティングが施されていなくてもよい。
【0365】
これまでの説明では、Ames試験を利用して説明したが、本発明は、他の生物学的な安全性評価にも適用可能である。例えば、安全性試験で、評価対象の色(透明度変化も含む)の変化や評価対象の試験体の形状変化が生じる場合に好適に適用できる。評価対象の色の変化は、前述したように、評価プレートを撮像するための照明光などの影響によって撮像部での画像において変化が生じる場合の色の変化も含む。
【0366】
例示した実施形態及び変形例などは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜組み合わされてもよい。
【符号の説明】
【0367】
10…評価プレート、20…評価システム、13…ウェル、13a…底部、14,14a~14h…評価対象、33…撮像部、40…画像処理装置、IA…内部領域、OA…外部領域、P1…プレート画像、13p…ウェル画像、Se1~Se8…区画(第1~第Nの区画)、Se1p…区画画像(溶媒対照領域)。



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