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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-28
(45)【発行日】2025-03-10
(54)【発明の名称】発電装置、送信装置及び発電方法
(51)【国際特許分類】
   H02N 2/18 20060101AFI20250303BHJP
【FI】
H02N2/18
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021112743
(22)【出願日】2021-07-07
(65)【公開番号】P2023009446
(43)【公開日】2023-01-20
【審査請求日】2024-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(73)【特許権者】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(73)【特許権者】
【識別番号】517132810
【氏名又は名称】地方独立行政法人大阪産業技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】巳波 敏生
(72)【発明者】
【氏名】上野 雄也
(72)【発明者】
【氏名】吉村 武
(72)【発明者】
【氏名】村上 修一
【審査官】永田 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-022366(JP,A)
【文献】国際公開第2011/012143(WO,A1)
【文献】特開2019-068663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石と、
交流が流れる複数の導線を有するケーブルに対して前記永久磁石を変位可能に固定する固定部と、
前記複数の導線の周囲に形成される交流磁界によって前記永久磁石が振動した場合、該永久磁石の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する変換部と、
該変換部にて変換された電気エネルギーを出力する出力部と
を備える発電装置であって、
前記ケーブルは並走する2本の前記導線を有し、
前記永久磁石は、前記ケーブルから、前記導線の対向方向及び前記導線の走行方向それぞれに略直交する方向に離隔し、前記対向方向に並ぶS極及びN極を有し、
前記永久磁石と前記導線との離隔距離は、前記2本の導線の間隔の0.5倍以上、1.69倍以下である
発電装置
【請求項2】
前記永久磁石の前記対向方向における幅は、前記導線の中心と前記永久磁石との距離の2倍程度である請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
前記永久磁石の前記対向方向及び離隔方向における幅は、前記2本の導線の中心間の距離以下である
請求項1又は請求項2に記載の発電装置。
【請求項4】
永久磁石と、
交流が流れる複数の導線を有するケーブルに対して前記永久磁石を変位可能に固定する固定部と、
前記複数の導線の周囲に形成される交流磁界によって前記永久磁石が振動した場合、該永久磁石の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する変換部と、
該変換部にて変換された電気エネルギーを出力する出力部と
を備える発電装置であって、
前記ケーブルは並走する3本の前記導線を有し、
前記永久磁石は、
前記ケーブルの周方向における所定位置から0度及び±略120度の位置に前記3本の導線が配されている場合、前記所定位置から±略30度の角度範囲内に配される
電装置。
【請求項5】
前記永久磁石は複数であり、
複数の前記永久磁石は、
前記所定位置を基準として略0度、±略70度又は±略135度の位置に配されている
請求項4に記載の発電装置。
【請求項6】
永久磁石と、
交流が流れる複数の導線を有するケーブルに対して前記永久磁石を変位可能に固定する固定部と、
前記複数の導線の周囲に形成される交流磁界によって前記永久磁石が振動した場合、該永久磁石の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する変換部と、
該変換部にて変換された電気エネルギーを出力する出力部と
を備える発電装置であって、
前記ケーブルは並走する3本の前記導線及びグランド線を有し、
前記永久磁石は、
前記ケーブルの周方向における所定位置から0度及び±略90度の位置に前記3本の導線が配され、略180度の位置に前記グランド線が配されている場合、前記所定位置から±略30度の角度範囲内に配される
電装置。
【請求項7】
前記永久磁石は複数であり、
複数の前記永久磁石は、前記所定位置を基準として略0度、±略60度又は±略125度の位置に配されている
請求項6に記載の発電装置。
【請求項8】
請求項1~請求項7までのいずれか一項に記載の発電装置と、
信号を送信する送信部と
を備え、
前記送信部は、
前記発電装置から出力される電圧にて駆動する送信装置。
【請求項9】
交流が流れる複数の導線を有するケーブルに対して変位可能な永久磁石を用意し、
前記導線の周囲に形成される交流磁界によって前記永久磁石を振動させ、
前記永久磁石の運動エネルギーを電気エネルギーに変換し、
前記永久磁石の振動によって変換された電気エネルギーを出力させる
発電方法であって、
前記ケーブルは並走する2本の前記導線を有し、
前記永久磁石は、前記ケーブルから、前記導線の対向方向及び前記導線の走行方向それぞれに略直交する方向に離隔し、前記対向方向に並ぶS極及びN極を有し、
前記永久磁石と前記導線との離隔距離は、前記2本の導線の間隔の0.5倍以上、1.69倍以下である
発電方法
【請求項10】
交流が流れる複数の導線を有するケーブルに対して変位可能な永久磁石を用意し、
前記導線の周囲に形成される交流磁界によって前記永久磁石を振動させ、
前記永久磁石の運動エネルギーを電気エネルギーに変換し、
前記永久磁石の振動によって変換された電気エネルギーを出力させる
発電方法であって、
前記ケーブルは並走する3本の前記導線を有し、
前記永久磁石は、
前記ケーブルの周方向における所定位置から0度及び±略120度の位置に前記3本の導線が配されている場合、前記所定位置から±略30度の角度範囲内に配される
発電方法。
【請求項11】
交流が流れる複数の導線を有するケーブルに対して変位可能な永久磁石を用意し、
前記導線の周囲に形成される交流磁界によって前記永久磁石を振動させ、
前記永久磁石の運動エネルギーを電気エネルギーに変換し、
前記永久磁石の振動によって変換された電気エネルギーを出力させる
発電方法であって、
前記ケーブルは並走する3本の前記導線及びグランド線を有し、
前記永久磁石は、
前記ケーブルの周方向における所定位置から0度及び±略90度の位置に前記3本の導線が配され、略180度の位置に前記グランド線が配されている場合、前記所定位置から±略30度の角度範囲内に配される
発電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流磁界を永久磁石の運動エネルギーに変換し、当該運動エネルギーを電力に変換する発電装置、送信装置及び発電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び2には、導線の周囲に形成される交流磁界を永久磁石の運動エネルギーに変換し、当該運動エネルギーを電力に変換する発電装置及び発電方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-022366号公報
【文献】特開2020-114136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2に開示の発電装置及び発電方法は、単線から電力を取り出す技術のみを対象としていた。複数線の場合、外部に形成される磁界は打ち消され、効率的に発電できないと考えられる。実際、CT(カレントトランス)等を用いる方式では、複数線の場合、磁界が打ち消されるため、電力を取り出すことができない。
【0005】
本開示の目的は、交流を送電する2相線、3相線等、複数線のケーブルの周囲に形成される交流磁界をエネルギー源として発電することができる発電装置及び発電方法を提供することにある。本発明に係る発電装置及び発電方法はCT方式の弱点を補う、新しい技術である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る発電装置は、永久磁石と、交流が流れる複数の導線を有するケーブルに対して前記永久磁石を変位可能に固定する固定部と、前記複数の導線の周囲に形成される交流磁界によって前記永久磁石が振動した場合、該永久磁石の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する変換部と、該変換部にて変換された電気エネルギーを出力する出力部とを備える。
【0007】
本態様によれば、永久磁石は、複数の導線の周囲に形成される交流磁界によって振動する。複数の導線に交流が流れる場合、当該複数の導線の周囲に形成される磁界は打ち消しあうように思われるが、複数の導線の位置がわずかにずれているため、磁界はゼロにはならず、むしろ磁界が強め合う領域が存在することを発見した。変換部は、永久磁石の運動エネルギーを電気エネルギーに変換し、変換部によって変換された電気エネルギーは出力部から出力される。以上の通り、複数線のケーブルの周囲に形成される交流磁界からエネルギーを取り出し、発電することができる。
また、本態様に係る発電装置は、交流磁界の周波数が十Hzオーダの低周波数であっても、当該交流磁界をエネルギー源として発電することが可能である。
なお、永久磁石の振動周波数、即ち共振周波数は、交流磁界の周波数に略一致させる構成が好ましい。例えば、交流磁界の周波数が50Hzである場合、永久磁石の振動周波数を50Hzとし、交流磁界の周波数が60Hzである場合、永久磁石の振動周波数を60Hzとする構成が望ましい。但し、所要の電力が得られる範囲で永久磁石の振動周波数を交流磁界の周波数からずらした構成も本発明に含まれる。
【0008】
本態様に係る発電装置は、前記ケーブルは並走する2本の前記導線を有し、前記永久磁石は、前記ケーブルから、前記導線の対向方向及び前記導線の走行方向それぞれに略直交する方向に離隔し、前記対向方向に並ぶS極及びN極を有し、前記永久磁石と前記導線との離隔距離は、前記2本の導線の間隔の0.5倍以上、1.69倍以下である構成が好ましい。
【0009】
本態様によれば、単線のケーブルを用いる場合に比べてより大きな力が永久磁石に働くため(図6参照)、より効率的に発電することができる。
【0010】
本態様に係る発電装置は、前記永久磁石の前記対向方向における幅は、前記2本の導線の中心間の距離以下である構成が好ましい。
【0011】
本態様によれば、永久磁石の前記対向方向における幅に相当する領域、つまり、2本の導線の中心間の距離以下の領域においては、その外側の領域に比べて大きな力が働くため(図7参照)、より効率的に発電することができる。
【0012】
本態様に係る発電装置は、前記永久磁石の前記対向方向における幅は、前記2本の導線の中心間の距離の略80%以下である構成が好ましい。
【0013】
本態様によれば、永久磁石の各部に同一方向の力が働くため、効率的に発電することができる。
【0014】
本態様に係る発電装置は、前記永久磁石の前記対向方向及び前記離隔方向における幅は、前記2本の導線の中心間の距離以下である構成が好ましい。
【0015】
本態様によれば、2本の導線に対して上記した位置に配した永久磁石の寸法を、2本の導線の中心間の距離以下にした場合、単線ケーブルを用いる場合に比べて、より大きな発電電力を得ることができる(図9参照)。
【0016】
本態様に係る発電装置は、前記ケーブルは並走する3本の前記導線を有し、前記永久磁石は、前記ケーブルの周方向における所定位置から0度及び±略120度の位置に前記3本の導線が配されている場合、前記所定位置から±略30度の角度範囲内に配される構成が好ましい(図21参照)。
【0017】
本態様によれば、3本の導線の周囲に形成される交流磁界によって、永久磁石を振動させることができる。前記所定位置から±略30度の角度範囲は、複数の導線が形成する磁界によって同一方向の力が永久磁石に働く領域であり、効率的に永久磁石を振動させ、発電することができる。
なお、永久磁石は±略20度の角度範囲内に配される構成がより好ましい。単線のケーブルを用いる場合に比べて大きな力が永久磁石3に働く領域であり、より効率的にケーブルから電力を取り出すことができる。
【0018】
本態様に係る発電装置は、前記永久磁石は複数であり、複数の前記永久磁石は、前記所定位置を基準として略0度、±略70度又は±略135度の位置に配されている構成が好ましい。
【0019】
本態様によれば、3本の導線の周囲に形成される交流磁界によって、複数の永久磁石を振動させることができる。また、略0度、±略70度又は±略135度の位置は、単線のケーブルを用いる場合に比べて大きな力が永久磁石3に働く。従って、より効率的にケーブルから電力を取り出すことができる。
【0020】
本態様に係る発電装置は、前記ケーブルは並走する3本の前記導線及びグランド線を有し、前記永久磁石は、前記ケーブルの周方向における所定位置から0度及び±略90度の位置に前記3本の導線が配され、略180度の位置に前記グランド線が配されている場合、前記所定位置から±略30度の角度範囲内に配される構成が好ましい。
【0021】
本態様によれば、3本の導線及びグランド線の周囲に形成される交流磁界によって、永久磁石を振動させることができる。前記所定位置から±略30度の角度範囲は、複数の導線が形成する磁界によって同一方向の力が永久磁石に働く領域であり、効率的に永久磁石を振動させ、発電することができる(図22参照)。
なお、永久磁石は±略20度の角度範囲内に配される構成がより好ましい。単線のケーブルを用いる場合に比べて大きな力が永久磁石3に働く領域であり、より効率的にケーブルから電力を取り出すことができる。
【0022】
本態様に係る発電装置は、前記永久磁石は複数であり、複数の前記永久磁石は、前記所定位置を基準として略0度、±略60度又は±略125度の位置に配されている構成が好ましい。
【0023】
本態様によれば、3本の導線及びグランド線の周囲に形成される交流磁界によって、複数の永久磁石を振動させることができる。また、略0度、±略60度又は±略125度の位置は、単線のケーブルを用いる場合に比べて大きな力が永久磁石3に働く。従って、より効率的にケーブルから電力を取り出すことができる。
【0024】
本態様の一態様に係る送信装置は、上述のいずれか一つの発電装置と、信号を送信する送信部とを備え、前記送信部は、前記発電装置から出力される電圧にて駆動する。
【0025】
本態様によれば、発電装置が出力する電力を用いて送信部を駆動することができる。従って、電源を用意することができない環境であっても、送信部から信号を送信させることが可能である。
【0026】
本発明の一態様に係る発電方法は、交流が流れる複数の導線を有するケーブルに対して変位可能な永久磁石を用意し、前記導線の周囲に形成される交流磁界によって前記永久磁石を振動させ、前記永久磁石の運動エネルギーを電気エネルギーに変換し、前記永久磁石の振動によって変換された電気エネルギーを出力させる。
【0027】
本態様によれば、上記の通り、複数線のケーブルの周囲に形成される交流磁界からエネルギーを取り出し、発電することができる。
【発明の効果】
【0028】
本態様によれば、交流を送電する2相線、3相線等、複数線のケーブルの周囲に形成される交流磁界をエネルギー源として発電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施形態1に係る発電装置の斜視図である。
図2】実施形態1に係る発電装置の側面図である。
図3】導線及び永久磁石の位置関係及び寸法を示す説明図である。
図4】1本の導線に対する微小な永久磁石の位置と、当該永久磁石に働く力との関係を示すベクトル図である。
図5】2本の導線に対する微小な永久磁石の位置と、当該永久磁石に働く力との関係を示すベクトル図である。
図6】導線と微小な永久磁石との距離と、当該磁石に働く力との関係を示すグラフである。
図7】導線中心間距離が異なる3種類の平行線に対して、図3のように微小な永久磁石(ネオジム磁石)を配置したときにy軸負方向に働く力を示した説明図である。
図8】磁石の幅(厚み)と、発電電力との関係を示すグラフである。
図9】同一条件で単線の場合に得られる電力を100%として、永久磁石の寸法と発電電力との関係を示すコンター図である。
図10】最大発電電力を100%として、永久磁石の寸法と発電電力との関係を示すコンター図である。
図11】交流の周波数及び電流と発電電力との関係を示すグラフである。
図12】永久磁石の振動方向における位置と、永久磁石に働く力との関係を示すグラフである。
図13】永久磁石の振動方向における位置と、永久磁石に働く力との関係を示すグラフである。
図14】実施形態1に係る発電特性評価の実験結果を示すグラフである。
図15】本発明の実施形態2に係る発電装置の斜視図である。
図16】実施形態2に係る発電装置の正面図である。
図17】三相線に対する永久磁石の位置と、当該永久磁石に働く力との関係を示すベクトル図である。
図18】三相線と永久磁石の位置関係を示す説明図である。
図19】3本の導線に流れる電流の時間変化を示すグラフである。
図20】永久磁石に働く力の時間変化を示すグラフである(実線は円周方向、点線は径方向に働く力を示している。)。
図21】3心タイプのケーブルの周方向における永久磁石の角度位置と、当該永久磁石に働く力との関係を示すグラフである。
図22】4心タイプのケーブルの周方向における永久磁石の角度位置と、当該永久磁石に働く力との関係を示すグラフである。
図23】最大発電電力を100%として、永久磁石の寸法と発電電力との関係を示すコンター図である。
図24】交流の周波数及び電流と発電電力との関係を示すグラフである。
図25】実施形態2に係る発電特性評価の実験結果を示すグラフである。
図26】本発明の実施形態3に係る発電装置の正面図である。
図27】本発明の本実施形態4に係る電圧調整装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施形態に係る発電装置、送信装置及び発電方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0031】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る発電装置100の斜視図、図2は、実施形態1に係る発電装置100の側面図である。本発明の実施形態1に係る発電装置100は、圧電部材12を有する弾性体としてのカンチレバー1と、カンチレバー1の固定端1aを、十Hzオーダの低周波数の交流が流れる2本の導線6a(以下、適宜、平行線と呼ぶ)を有するケーブル6に対して固定する固定部2と、カンチレバー1の自由端1bに設けられた永久磁石3と、カンチレバー1の圧電部材12に発生した電圧を出力する出力部4とを備える。本実施形態1においては、導線6aは、電流を通ずることが可能な断面略円形の材料で形成された線状の部材であり、2本の導線6aは50Hz又は60Hzの交流電源に接続されているものとする。2本の導線6aには逆向きの電流が流れている。発電装置100は、2本の導線6aの周囲に形成される交流磁界を永久磁石3の運動エネルギーに変換し、永久磁石3の運動エネルギーを圧電部材12によって電力に変換することによって、発電するものである。発電装置100は、本発明に係る発電方法を実施ないし実現する装置である。
【0032】
カンチレバー1は、バイモルフ型圧電素子を用いてなる発電部材である。カンチレバー1は、外力によって弾性変形が可能な導電部材からなる長板部11と、厚み方向に分極した2枚の板状ないしシート状の圧電部材12とを備え、2枚の圧電部材12が長板部11を挟み込むように当該長板部11の両面に貼り合わされている。圧電部材12の長手方向の長さは、長板部11の固定部2からの突出部分の長さの2/3程度で十分である。また、2枚の圧電部材12には、それぞれシート状の電極13が設けられている。長板部11を構成する部材は、例えばステンレス等の金属である。圧電部材12は、例えば圧電セラミックスである。長板部11の長手方向一端部は固定部2に固定される固定端1aであり、長板部11の長手方向他端部は外力によって変位可能な自由端1bである。自由端1bが変位した場合、2枚の圧電部材12はそれぞれ伸張及び伸縮し、電極13及び長板部11間に電圧が発生する。
なお、ここではバイモルフ型圧電素子を説明したが、片面のみに圧電部材12を張り付けたユニモルフ構造であっても良い。圧電部材12は、導線6aの周囲に形成される交流磁界によって振動する永久磁石3の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する変換部の一例である。
【0033】
固定部2は、カンチレバー1の固定端1aを導線6a又はケーブル6に対して固定する部材である。固定部2は、例えば、略直方体形状をなし、ケーブル6が挿通する貫通孔21を有する。貫通孔21は、中心部を貫通する正面視円形状である。貫通孔21が形成された固定部2の一面側の角部にカンチレバー1の固定端1aが固定され、カンチレバー1を保持している。より詳細には、固定部2は、カンチレバー1の自由端1bに固定される永久磁石3が、2本の導線6aの対向方向及び導線6aの走行方向(導線6aの中心線方向)それぞれに略直交する方向に離隔し、カンチレバー1の自由端1bが、2本の導線6aの対向方向に変位又は振動するように、カンチレバー1を保持している。
固定部2は、例えばクランプ機構を有し、ケーブル6に固定される。固定部2は、ケーブル6の周方向における永久磁石3の位置、つまり2本の導線6aに対する永久磁石3の位置関係が変化しないように、ケーブル6を挟持する挾持部を有する。挾持部は、例えば、ケーブル6を挟み囲む第1固定部半体と、第2固定部半体とを有する。なお、ケーブル6の円周方向における永久磁石3の位置、つまり導線6aと永久磁石3との位置関係を調整するため、挾持部がケーブル6を挟持する力を弱める挟持力調整機構を備えるとよい。挟持力調整機構は例えば、ねじ機構を有する。
【0034】
永久磁石3は、矩形板状をなし、厚み方向がケーブル6の径方向を向く姿勢でカンチレバー1の自由端1bに固定されている。厚み方向とは、永久磁石3の縦寸法、横寸法及び高さ寸法の内、最も長さが短い方向を意味する。永久磁石3は、2本の導線6aの対向方向に並ぶ単一対のS極3b及びN極3aを有する。言い換えると、永久磁石3は、カンチレバー1の自由端1bに固定された永久磁石3の振動方向に並ぶ単一対のS極3b及びN極3aを有する。
カンチレバー1に設けられた永久磁石3の振動周波数は、導線6aの周囲に形成される交流磁界の周波数に略一致するように構成されている。例えば、交流磁界の周波数が50Hzである場合、永久磁石3の振動周波数を50Hzとし、交流磁界の周波数が60Hzである場合、永久磁石3の振動周波数を60Hzとする。なお、振動周波数が交流磁界の周波数に略一致するとは、所要の電力が得られる範囲で、振動周波数を交流磁界の周波数からずれた構成も本実施形態1に係る発電装置100に含まれることを意味する。
【0035】
出力部4は、カンチレバー1の電極13と、長板部11とに接続されており、永久磁石3の振動により伸縮した圧電部材12に発生した電圧を出力する回路である。出力部4は、例えば整流回路及び平滑コンデンサを備える。整流回路は、例えばダイオードブリッジ回路である。整流回路の入力端子は圧電部材12及び長板部11に接続されており、整流回路の出力端子対には平滑コンデンサの各端子が接続されている。整流回路は、圧電部材12に発生した交流を全波整流し、平滑コンデンサにて平滑化された直流の電圧を負荷Rへ出力する。
【0036】
以下、平行線を用いた効率的な発電を可能にする2本の導線6aと、永久磁石3との位置関係、永久磁石3の寸法について説明する。
【0037】
図3は、導線6a及び永久磁石3の位置関係及び寸法を示す説明図である。図3は、ケーブル6又は導線6aの中心線に垂直なxy平面を示している。ケーブル6の中心をxy平面の原点とし、2本の導線6aの対向方向をy軸、当該対向方向及び導線6aの走行方向に直交する方向をx軸としている。第1の導線6aの中心はxy平面における(0,d/2)に位置し、第2の導線6aの中心はxy平面における(-d/2,0)に位置している。dは、導線6aの中心間の距離(以下、導線中心間距離と呼ぶ)を示している。Lは、ケーブル6又は導線6aの中心と、永久磁石3の端面(ケーブル6側の端面)との距離、すなわちケーブル6又は導線6aの中心と、永久磁石3の端面(ケーブル6側の端面)とのx軸方向の距離を示している。以下、距離Lを、適宜、導線6aの中心と永久磁石3との距離、又はケーブル6の中心と永久磁石3の端面との距離という。Dは永久磁石3のx軸方向の幅(厚み)、Wは永久磁石3のy軸方向の幅を示している。
【0038】
<永久磁石3の配置>
図4は、1本の導線6aに対する微小な永久磁石3の位置と、当該永久磁石3に働く力との関係を示すベクトル図、図5は、2本の導線6aに対する微小な永久磁石3の位置と、当該永久磁石3に働く力との関係を示すベクトル図である。ここでは永久磁石3の寸法は導線中心間距離dよりも十分に小さいものとする。微小な永久磁石3とは、導線中心間距離dよりも十分に小さい磁石を意味するものとする。1本の導線6a(以下、適宜、単線と呼ぶ)を原点とし、導線6aに垂直なxy平面上で永久磁石3に働く力を考える。電流の方向はxy平面に対して奥方向とする。永久磁石3の磁気モーメントの向きはy軸正方向とする。この時、(x、y)の位置にある永久磁石3に働くx方向、y方向の力は次式(1)、(2)で与えられる。
【0039】
【数1】
【0040】
この原理を平行線に発展させると以下のようになる。2本の導線6aの間隔をdとし、xy平面に対して奥方向及び手前方向に電流が流れる導線6aが、それぞれ(0,d/2)、(-d/2,0)の位置にあるとする。この時、(x、y)の位置にある永久磁石3に働くx方向、y方向の力は次式(3)、(4)で与えられる。
【0041】
【数2】
【0042】
図4及び図5は、電流の大きさを10Aとし、単線である1本の導線6a及び平行線である2本の導線6aの近くに置いた微小な永久磁石3(ネオジム磁石、磁気モーメントの大きさは1.24T)に働く力を計算した結果を示している。2本の導線6aの間隔dは2.7mmである。単線と平行線の結果を比較すると、ベクトル図の形状は異なるが、同じ程度の大きさの力が永久磁石3に働くことがわかる。平行線の場合、常に反対方向に電流が流れているので、外部に形成される磁界は打ち消しあうように思われるが、数mmでも位置がずれていることによりゼロにはならない。むしろ逆方向に流れる電流によってx軸上では磁界が強め合う領域も存在する。また平行線の場合ではy軸方向に力がかかる領域がx軸付近に現れており、これが単線との大きな違いである。
【0043】
単線での発電の際には、電流が流れる方向及び永久磁石3の離隔方向と永久磁石3に働く力が直交する位置に永久磁石3を配置することで、導線6aと衝突しない方向に永久磁石3を振動させることが大きな電力を得るのに有効であった。平行線ではそのような位置関係がx軸上とy軸上の両方で得られる。x軸上とy軸上に微小な永久磁石3を配置した場合に、永久磁石3に働く力の大きさはそれぞれ次式(5)、(6)で与えられる。
【0044】
【数3】
【0045】
図6は、導線6aと微小な永久磁石3との距離と、当該磁石に働く力との関係を示すグラフである。横軸は、導線中心間距離dで規格化された、ケーブル6の中心と永久磁石3の端面との距離a(a=L/d)を示し、縦軸は、単線の場合に永久磁石3に働く力で規格化された、永久磁石3に働く力の大きさを示しており、式(5)及び(6)を計算した結果を表している。図6から分かるように、y軸上では単線の場合よりも大きな力が働く領域は存在しないが、x軸上では0.5≦a≦1.69の条件で単線以上の力が得られる。また永久磁石3に働く力の大きさは、式(5)よりa=√3/2の時に最大値1.3となる。
【0046】
この結果を図3に示すレイアウトに当てはめて考えると、永久磁石3は、ケーブル6の中心と永久磁石3の端面との距離Lが、導線中心間距離dの0.5倍より大きく1.69倍より小さい領域に配置する構成が好ましく、単線よりも大きな力が得られる。また、永久磁石3は、導線6aの中心からx軸方向に、導線中心間距離dの√3/2倍の距離だけ離して配置する構成がより望ましい。永久磁石3に働く力が最も大きくなり、その大きさは単線比で1.3倍となる。
【0047】
<永久磁石3の寸法>
まず、y軸方向(導線6aの対向方向)における永久磁石3の幅Wについて説明する。平行線には多くの種類があるが、汎用的には導線6aの断面積が0.5mm2 、0.75mm2 、1.25mm2 の製品が広く利用されている。2本の導線6aの導線中心間距離dはそれぞれ約2.5mm、2.7mm、3.1mmである。
【0048】
図7は、導線中心間距離dが異なる3種類の平行線に対して、図3のように微小な永久磁石3(ネオジム磁石)を配置したときにy軸負方向に働く力を示した説明図である。図7は、図6の結果を参考にして、単線よりも大きな力働く領域を中心に示している。図7に図示した数値「0」、「25」、「50」は微小な永久磁石3に働く単位体積あたりの力(N/mm3 )の大きさを示している。この結果から、導線6aに近い場所では、永久磁石3に力が働く領域は導線中心間距離dにほぼ一致していることがわかる。導線6aからx軸方向に離れるにつれて、力が働く領域は徐々にy軸方向に広がっていくが、その広がった領域での力はあまり大きくない。以上のことから、図7に示すように、ケーブル6の中心位置(y=0)から、y軸方向±d/2にわたる領域Zにおいては、微小な永久磁石3は、x軸方向における位置にかかわらず、振動方向の力を受けることが分かる。領域Zは、直線y=+d/2と、直線y=-d/2との間の領域である。図7より、永久磁石3のy軸方向の寸法を導線中心間距離dより大きくした場合、永久磁石3のy軸方向における端部が、領域Zの外側にはみ出してしまい、特に永久磁石3を導線6aの近くに配置すると、当該端部にy軸方向の力が永久磁石3に働かなくなることがある。つまり、永久磁石3のy軸方向の寸法を導線中心間距離dより大きくして、導線6aの近傍に永久磁石3を配置した場合、永久磁石3の質量が増大するばかりで、永久磁石3の当該端部には振動に寄与する力が働かないことが分かる。従って、平行線では永久磁石3のy軸方向の幅Wは、導線中心間距離dよりも小さい構成が望ましい。
【0049】
次に、x軸方向(導線6aの対向方向に直交する方向)における永久磁石3の幅Dについて説明する。
【0050】
図8は、磁石の幅D(厚み)と、発電電力との関係を示すグラフである。ここでは、永久磁石3の振動振幅は微小とし、上記式(3)(4)と、振動発電の原理(永久磁石3に働く力と発電電力との関係を記述した式)とを組み合わせて発電電力の計算を行った。また導線中心間距離d及び永久磁石3のy軸方向の幅はともに2.7mmとしている。この結果より、最大の発電電力が得られる永久磁石3の幅Dは、ケーブル6の中心と永久磁石3の端面との距離L、即ち導線6aの中心と永久磁石3の端面との距離Lを用いて、次式(7)で与えられることが分かった。
D=0.48L+0.618…(7)
【0051】
汎用の平行線の直径、即ち導線6aの直径が約2mm~3mmであることを考えると、ケーブル6の中心と永久磁石3の端面との距離Lも2mm~3mmとなることが想定される。そこで、最適な永久磁石3の寸法についてさらに詳しく調べるために、ケーブル6の中心と永久磁石3の端面との距離Lが2mmと3mmの場合における永久磁石3の寸法と発電電力の関係を計算した。
【0052】
図9は、同一条件で単線の場合に得られる電力を100%として、永久磁石3の寸法と発電電力との関係を示すコンター図、図10は、最大発電電力を100%として、永久磁石の寸法と発電電力との関係を示すコンター図である。図9及び図10は、ケーブル6の中心と永久磁石3の端面との距離Lを2mm又は3mmとし、導線中心間距離dを2.5mm、2.7mm又は3.1mmとした時の発電電力に係る計算結果を示したものである。各コンター図の横軸は永久磁石3の厚みD(mm)、縦軸は永久磁石3の幅W(mm)を示している。図9においては、発電電力を単線における同一条件での値で規格化している。図9に示す結果より、単線の場合よりも大きな電力が得られる領域は、導線中心間距離dが大きくなるほど広がることがわかる。また導線6aの中心と永久磁石3の端面までの距離Lが短い方が平行線の優位性が高くなることも示されている。
【0053】
図10は、図9と同じ計算結果であるが発電電力の最大値で規格化している。上述したように、永久磁石3の幅Wが導線中心間距離dに、また永久磁石3の厚みDが式(7)で与えられる値におおよそ一致しているときに最大発電電力が得られている。単線との比較の場合とは異なり、導線中心間距離dの影響は顕著でない。図9及び図10の結果を合わせると、2本の導線6aからなる平行線を用いて発電するのに適した永久磁石3は幅W、厚みDは共に5mm以下であると言える。また、永久磁石3は幅W及び厚みDの双方を、導線中心間距離d以下にすると、単線の場合よりも大きな電力が得られるため、より好ましい。
永久磁石3の幅Wの下限は特に限定されるものでは無いが、例えば1mm以上であればよい。永久磁石3の厚みDの下限も特に限定されるものでは無いが、図8に示すグラフから分かるように、1mm以上が望ましい。
【0054】
<発電電力の周波数及び電流依存性>
図11は、交流の周波数及び電流と発電電力との関係を示すグラフである。図11は、導線中心間距離dを2.5mm、2.7mm又は3.1mm、ケーブル6の中心と永久磁石3の端面との距離を2mm又は3mmとした時の発電電力の周波数及び電流量依存性を計算した結果を示したものである。各グラフの横軸は周波数(Hz)、縦軸は発電電力(W)を示している。永久磁石3(ネオジム磁石)の大きさは幅2mm、厚み2mm、奥行き10mmとした。圧電素子の静電容量、電気機械結合係数(K2 )、ばね定数、Q値はそれぞれ1μF、1%、31.4N/m、100である。3.2kΩの負荷抵抗を接続したときに、消費される平均電力を発電電力としている。比較のため同一条件で計算した単線での結果も点線で示している。電流量が3A程度までは、いずれの条件においても平行線の場合の方が単線の場合よりも発電電力が大きくなっている。電流量が10Aになると共振周波数である50Hzでの発電電力は、いずれの条件でも単線よりも平行線の方が発電電力が小さくなっている。これは永久磁石3が大きく振動することにより適正領域から逸脱するためである。
【0055】
図12及び図13は、永久磁石3の振動方向における位置と、永久磁石3に働く力との関係を示すグラフである。横軸は永久磁石3の振動方向における位置を示し、縦軸は永久磁石3に働く力を示している。
特に図12は、図11で説明した計算条件と同一条件で、永久磁石3がx=2mm、y=0mmの位置を中心にy軸方向に振動しているときに、永久磁石3の位置と働く力の大きさを示している。導線6aの中心と永久磁石3との距離は2mmである。詳細には、導線6aの中心と永久磁石3の端面(ケーブル6側の端面)との距離、言い換えると、ケーブル6の中心と、永久磁石3の端面との距離は2mmである。
図13は、図11で説明した計算条件と同一条件で、永久磁石3をx=3mm、y=0mmの位置を中心にy軸方向に振動しているときに、永久磁石3の位置と働く力の大きさを示している。導線6aの中心と永久磁石3との距離は3mmである。詳細には導線6aの中心と永久磁石3の端面(ケーブル6側の端面)との距離、言い換えると、ケーブル6の中心と、永久磁石3の端面との距離は3mmである。
比較のため同一条件で計算した単線での結果も点線で示している。
【0056】
図12及び図13に示す結果から、平行線では中心位置付近では単線よりも大きな力が働いているが、中心からはずれると急激に減少し、導線6aの中心と永久磁石3との距離と同程度離れると永久磁石3の振動を抑制する方向に力が働くことがわかる。詳細には、図12に示すように、導線6aの中心と永久磁石3の端面との距離が2mmの場合、永久磁石3の位置が中心位置より約2.2mm以上離れると、永久磁石3の振動を抑制する方向に力が働く。つまり、導線6aの中心と永久磁石3の端面との距離が2mmの場合、永久磁石3の振動方向において、永久磁石3が振動中心を基準とし、導線6aの中心と永久磁石3の端面との距離の110%以下の領域にあるとき、永久磁石3の振動を抑制する方向の力は働かない。図12中、太矢印は、永久磁石3の振動方向正側における110%以下の領域を示している。
また図13に示すように、導線6aの中心と永久磁石3の端面との距離が3mmの場合、永久磁石3の位置が中心位置より約2.6mm以上離れると、永久磁石3の振動を抑制する方向に力が働く。つまり、導線6aの中心と永久磁石3の端面との距離が3mmの場合、永久磁石3の振動方向において、永久磁石3が振動中心を基準とし、導線6aの中心と永久磁石3の端面との距離の86%以下の領域にあるとき、永久磁石3の振動を抑制する方向の力は働かない。図13中、太矢印は、永久磁石3の振動方向正側における86%以下の領域を示している。
従って、導線6aの中心と永久磁石3の端面との距離が2mm以上の場合、少なくとも導線6aの中心と永久磁石3の端面との距離が2mm以上3mm以下の場合、永久磁石3の振動方向において、永久磁石3は振動中心を基準とし、導線6aの中心と永久磁石3の端面との距離の86%以下の領域、より好ましくは80%以下の領域に収まるようにする構成が望ましい。
図11において大電流時に発電電力が低下したのは、振動中心から、導線6aの中心と永久磁石3との距離よりも永久磁石3が大きく振動したためである。従って、永久磁石3の幅W(振動方向における幅)は、導線6aの中心と永久磁石3との距離の2倍程度の領域に収まるようにする構成が望ましい。好ましくは、永久磁石3の幅Wは、導線6aの中心と永久磁石3との距離の86%×2=172%以下、より好ましくは80%×2=160%以下の領域に収まるようにする構成が望ましい。
【0057】
<実際の発電特性>
図14は、実施形態1に係る発電特性評価の実験結果を示すグラフである。4×10×40mmのネオジム磁石(x方向の厚み4mm、y方向の幅10mm、奥行き方向の幅40mm)を用いて、単線及び平行線から電力を取り出せることについて実験での確認を行った。図14は1.5Aの電流が流れる単線及び平行線に発電素子を取り付け、交流電流の周波数を変化させながら発電電力を測定した結果である。導線中心間距離dは3.8mmである。発電装置100が50Hzに共振周波数を持つように圧電部材12のばね定数を調整している。
図14Aは、単線(1本の導線6a)を用いた実験結果であり、図14Bは、平行線(2本の導線6a)を用いた実験結果である。横軸は周波数、縦軸は発電電力(W)を示している。図14A及び図14Bに示すように、単線及び複数線のいずれにおいても圧電素子とインピーダンス整合する、負荷抵抗が100kΩの時に最大の発電電力が得られている。
【0058】
このように平行線からでも磁界振動発電の技術を用いて電力を取り出せることを実験でも確認できた。
【0059】
以上の通り、本実施形態1に係る発電装置100及び発電方法によれば、平行線、すなわち2本の導線6aの周囲に形成される交流磁界をエネルギー源として発電を行うことができる。
【0060】
本態様によれば、ケーブル6の中心と永久磁石3の端面との距離、すなわち導線6aの中心と、永久磁石3の端面との距離を、導線中心間距離dの0.5倍以上、1.69倍以下に構成することによって、単線のケーブルを用いる場合に比べてより大きな力が永久磁石3に働き(図6参照)、より効率的に発電することができる。
【0061】
更に、永久磁石3の幅W(導線6aの対向方向における幅)を導線中心間距離d以下にすることによって、永久磁石3の各部にy軸方向の力が働くようにすることができ、より効率的に発電することができる(図7参照)。永久磁石3の幅Wを導線中心間距離d以上にしても永久磁石3に大きな力は働かず、質量が増加するだけ発電効率が低下する。
【0062】
更にまた、永久磁石3の幅W(導線6aの対向方向における幅)を導線6aの中心と永久磁石3の端面との距離2倍程度、好ましくは172%以下、より好ましくは160%以下に構成することによって、永久磁石3の各部に同一方向の力が働き、効率的に発電することができる(図12及び図13参照)。
【0063】
更にまた、永久磁石3の幅W及び厚みDを導線中心間距離d以下にすることによって、単線ケーブルを用いる場合に比べて、より大きな発電電力を得ることができる(図9参照)。
【0064】
なお、本実施形態1では、断面円形の直線状の導線6aであることを前提に説明したが、上記導線6aの構成は一例であり、永久磁石3を振動させる交流磁界を形成可能な電流が流れる構成であれば、その形状は特に限定されるものでは無く、レール状の導通部材、バスバー、角柱状の導体、長手方向を有する板状の導体であっても良い。また、導線6aは、部分的に方形板状のような非線状部分を有していても良く、全体として所定方向に交流電流が流れるような形状であれば良い。当該非線状部分に発電装置100を固定する構成も本願発明に含まれる。更に、導線6aは、必ずしも直線状である必要は無く、部分的に湾曲していても良い。以下、本実施形態1では、導線6aが直線状の部材であるものとして説明する。
【0065】
更に、永久磁石3を変位可能に支持する構成としてカンチレバー1を例示したが、振動磁界によって永久磁石3が移動できる構成であれば、支持機構は特にカンチレバー1に限定されるものでは無い。
【0066】
(実施形態2)
実施形態2に係る発電装置200は、3本の導線6aを有するケーブル6を用いて発電する点が実施形態1と異なるため、以下では主に上記相違点を説明する。その他の構成及び作用効果は実施形態1と同様であるため、対応する箇所には同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0067】
図15は、本発明の実施形態2に係る発電装置200の斜視図、図16は、実施形態2に係る発電装置200の正面図である。なお、図16では、説明の便宜上、永久磁石3が上側に位置するように図示している。また、永久磁石3の位置関係を示す説明の便宜上、x軸及びy軸を図示した。実施形態2に係る発電装置200は、実施形態1と同様、カンチレバー1と、固定部2と、永久磁石3と、出力部4とを備える。実施形態2に係る固定部2は、図16Aに示すように、3本の導線6a(以下、適宜三相線と呼ぶ)を有するケーブル6に永久磁石3を変位可能に固定する。3本の導線6aは、所定位置、例えばy軸正方向の角度位置を0度とした場合、0度、±120度の位置に配されている。3本の導線6aには3相交流の電流が流れている。
また、固定部2は、図16Bに示すように3本の導線6a及びグランド線6bを有するケーブル6に永久磁石3を変位可能に固定することもできる。3本の導線6aは、所定位置、例えばy軸正方向の角度位置を0度とした場合、0度、±90度の位置に配され、グランド線6bは180度の位置に配されている。3本の導線6aには3相交流の電流が流れている。
【0068】
<導線6aに対する永久磁石3の位置>
図17は、三相線に対する永久磁石3の位置と、当該永久磁石3に働く力との関係を示すベクトル図である。図17に示すベクトル図は、実施形態1と同様、ケーブル6の中心をxy平面の原点とし、ケーブル6の中心線に垂直なxy平面を考え、各座標位置における永久磁石3に働く力の向きを示している。ここでは永久磁石3の寸法は導線中心間距離dよりも十分に小さい。図17に示す6つのグラフは、複数の異なる時点において永久磁石3に働く力の様子を示している。
平行線の時と同じ方法で、三相線の近くに永久磁石3を置いた時に永久磁石3に働く力を計算した。電源周波数は50Hzとし、三相線の導線6aの導線中心間距離dは3mmとした。電流の大きさは10A、永久磁石3の大きさは1mm×1mm×1mm、磁気モーメントの向きはy軸正方向である。その結果を図17に示す。三相線では単線及び平行線の場合とは大きく異なり、一方向に永久磁石3に力が働く場所は存在せず、すべての領域で電流の波形に合わせて回転するように力が働くことが分かった。
【0069】
図18は、三相線と永久磁石3の位置関係を示す説明図である。図中、「1」、「2」、「3」の符号を付した小円は3本の導線6aを示し、「a」、「b」、「c」、「d」、「e」、「f」、「g」、「h」は、ケーブル6の周方向における永久磁石3の位置を示している。
【0070】
図19は、3本の導線6aに流れる電流の時間変化を示すグラフである。横軸は時間(ms)、縦軸は電流(A)を示している。図19中、「1」、「2」、「3」の符号が付された曲線は、図18中「1」、「2」、「3」の符号で示した各導線6aに流れる電流の時間変化を示している。
【0071】
図20は永久磁石3に働く力の時間変化を示すグラフである。8つのグラフ「a」、「b」、「c」、「d」、「e」、「f」、「g」、「h」(各グラフの左上隅に記した記号)は、図18に示した角度位置「a」、「b」、「c」、「d」、「e」、「f」、「g」、「h」に永久磁石3を置いた場合に、当該永久磁石3に働く力の時間変化を示している。実線は円周方向、点線は径方向に働く力を示している。
【0072】
図17で説明した同じ条件で、三相線の中心から6mmの位置にある永久磁石3に働く力の時間変化を示したのが図20である。三相線のそれぞれに流れる電流の時間変化も比較のために図19に示している。単に回転しながら力が働くのではなく、力の大きさも時間変化していることがわかる。
【0073】
汎用的な3相用のケーブル6としては、導線6aの断面積が0.75mm2 、1.25mm2 、2.5mm2 、3.5mm2 のものがあり、導線6aの中心間距離は3~4mmとなっている。またケーブル6の外径は10~14mm程度である。
【0074】
そこで、導線中心間距離と、ケーブル6の中心から永久磁石3の端面までの距離が、それぞれ3mm、6mmとした場合と、4mm、8mmとした場合について、永久磁石3に働く力を調べることにする。またケーブル6には3心のタイプとグランド線6bも入れた4心のタイプがあるため、3心タイプ及び4心タイプの双方について、永久磁石3に働く力を調べることにする。
【0075】
図21は、3心タイプのケーブル6の周方向における永久磁石3の角度位置と、当該永久磁石3に働く力との関係を示すグラフである。発電に適した永久磁石3の位置を調べるために、原点から反時計回りの角度位置に配された永久磁石3に働く円周方向の力の時間依存性を示したのが図21である。図21に示すグラフの横軸は、xy平面におけるy軸正方向を0度とし、永久磁石3の反時計回りの角度位置を示している。縦軸は、永久磁石3に働く、円周方向の力である。ここでは導線6aの中心間距離を3mm、心数を3とし、図17のx=0mm、y=6mmの位置を基準とした。永久磁石3の軸モーメントの方向は常にy軸正方向である。また、原点に単線がある場合に永久磁石3に働く力の大きさで規格化している。図21に示す計算結果から、0度の位置で最も大きな力が永久磁石3に働き、次に大きな力が永久磁石3に働くのは-135度、-70度、70度、135度の位置であることがわかる。また同一符号の力が得られる領域は、上記の位置を中心に60度の幅(±30度の領域)である。従って三相線の場合では、上記の0度の位置で原点から60度の範囲に収まる永久磁石3を配置することで、効率的な発電が可能になる。なお、上記の位置を中心に40度の領域(±20度の領域)においては、単線のケーブルを用いる場合に比べてより大きな力が永久磁石3に働く領域であり、当該領域に永久磁石3を配置することによって、より効率的に発電を行うことができる。
また、導線6aの中心間距離が4mmでx=0mm、y=8mmの位置を基準とし同様の計算を行ったとところ全く同じ結果となった。従って上記の関係は、ケーブル6の太さに依存せずに成立するといえる。
【0076】
図22は、4心タイプのケーブル6の周方向における永久磁石3の角度位置と、当該永久磁石3に働く力との関係を示すグラフである。心数を4として、図21と同じ条件で計算した結果を図22に示す。図22に示す計算結果から、-60度、0度、60度の位置で最も大きな力が永久磁石に働き、同一符号の力が得られる領域はその位置を中心に60度の幅(±30度の領域)であることがわかる。2番目に大きな力が永久磁石3に働く位置は-125度と125度の位置である。
なお、3心タイプの場合と同様、上記の位置を中心に40度の領域(±20度の領域)においては、単線のケーブルを用いる場合に比べてより大きな力が永久磁石3に働く領域であり、当該領域に永久磁石3を配置することによって、より効率的に発電を行うことができる。
また、導線6aの中心間距離を4mmとしても上記の結果に変化はなかった。従って上記の関係は、4心タイプの場合もケーブル6の太さに依存せずに成立するといえる。
【0077】
<永久磁石3の寸法>
そこで永久磁石3に最も大きな力が働く0度の位置に永久磁石3を配置したときに、大きな発電電力が得られる永久磁石3の寸法について検討した。隣接する導線6aの中心間距離を3mm及び4mmとし、その時のケーブル6中心から永久磁石3の端面までの距離はそれぞれ6mm、8mmとしている。また、ケーブル6は3心と4芯の場合の両方について調べた。
【0078】
図23は、最大発電電力を100%として、永久磁石3の寸法と発電電力との関係を示すコンター図である。図10と同様、永久磁石3の幅W及び厚みDを変化させた時の発電電力を示している。図23中、上側2つのコンター図は3心タイプのケーブル6を用いた場合の計算結果、下側2つのコンター図は4心タイプのケーブル6を用いた場合の計算結果を示している。左側の2つのコンター図は隣接する導線6aの中心間距離が3mm、ケーブル6中心から永久磁石3の端面までの距離が6mmのときの計算結果を示している。右側の2つのコンター図は隣接する導線6aの中心間距離が4mm、ケーブル6中心から永久磁石3の端面までの距離が8mmのときの計算結果を示している。また計算結果は、それぞれの条件での最大の発電電力で規格化している。
【0079】
最大の電力が得られるのは、永久磁石3の厚みDが導線中心間距離と同程度の時、永久磁石3の幅Wは導線中心間距離の3倍程度の時であることがわかる。また永久磁石3に最も大きな力が働く0度の位置に永久磁石3を配置したときに、最大発電電力の80%程度以上の特性が得られるのは、永久磁石3の厚みDが導線中心間距離の半分程度から2.5倍程度の間にある時である。また、永久磁石3の幅Wは導線中心間距離の同程度から6倍程度の間にある時である。
【0080】
図24は、交流の周波数及び電流と発電電力との関係を示すグラフである。図24左図は、隣接する導線6aの中心間距離を3mm、ケーブル6の中心から永久磁石3の端面までの距離を6mmとした場合の発電電力の周波数及び電流量依存性を計算した結果を示している。図24右図は、隣接する導線6aの中心間距離を4mm、ケーブル6の中心から永久磁石3の端面までの距離を8mmとした場合の発電電力の周波数及び電流量依存性を計算した結果を示している。設定した発電装置200の特性は、実施形態1の図11で説明したものと同じである。また永久磁石3とケーブル6の配置は、図23右に示したような0度の位置とした。3心、4心の結果に加えて比較のためにケーブル6の中心に単線があるとした時の結果も示している。電流量が3A及びそれ以下の場合では、発電電力は単線、3心、4心の順に大きくなっており、3相線からの発電が有効であることが確認できた。10Aでの共振周波数(50Hz)では単線が最も大きな発電量を示しているのは、平行線の時と同様に永久磁石3の振幅が同一方向に力が働く領域から逸脱するためである。
【0081】
<実際の発電特性>
図25は、実施形態2に係る発電特性評価の実験結果を示すグラフである。図25は、実施形態1の図14で説明したものと同様の特性を有する発電装置200を用いて、三相線から発電をおこなった結果を示している。横軸は、ケーブル6の回転角度(deg.)を示し、縦軸は発電電力(μW)を示している。電源周波数は60Hz、導線6aを流れる電流は2.1Aである。ここでは発電装置200に対してケーブル6を回転させて実験を行っている。図25より、三相線のケーブル6を用いても発電可能であることが分かる。また、図21及び図22に示した計算結果と同じような傾向で、永久磁石3と三相線との位置関係によって発電電力の大きさが変化することが確認できる。
【0082】
このように三相線のケーブル6からでも磁界振動発電の技術を用いて電力を取り出せることを実験でも確認できた。
【0083】
実施形態2に係る発電装置200及び発電方法によれば、三相線、すなわち3本の導線6aを有するケーブル6の周囲に形成される交流磁界をエネルギー源として発電を行うことができる。特に、上記所定位置(y軸正方向の角度位置)は、単線のケーブル6を用いる場合に比べて大きな力が永久磁石3に働くため、効率的に発電を行うことができる。また、永久磁石3を、上記所定位置から±略30度の角度範囲に配置することによって、効率的に永久磁石3を振動させ、発電することができる。±略30度の角度範囲は、複数の導線6aが形成する磁界によって同一方向の力が永久磁石3に働く領域であるためである(図21参照)。
【0084】
また、4心、すなわち3本の導線6a及びグランド線6bを有するケーブル6の周囲に形成される交流磁界をエネルギー源として発電を行うことができる。特に、上記所定位置(y軸正方向の角度位置)は、単線のケーブル6を用いる場合に比べて大きな力が永久磁石3に働くため、効率的に発電を行うことができる。また、永久磁石3を、上記所定位置から±略30度の角度範囲に配置することによって、効率的に永久磁石3を振動させ、発電することができる。±略30度の角度範囲は、複数の導線6aが形成する磁界によって同一方向の力が永久磁石3に働く領域であるためである(図22参照)。
【0085】
(実施形態3)
実施形態3に係る発電装置300は、複数の永久磁石3を備え、3本の導線6aを有するケーブル6を用いて発電する点が実施形態2と異なるため、以下では主に上記相違点を説明する。その他の構成及び作用効果は実施形態1と同様であるため、対応する箇所には同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0086】
図26は、本発明の実施形態3に係る発電装置300の正面図である。実施形態3に係る発電装置300は、実施形態2と同様、カンチレバー1と、固定部2と、永久磁石3と、出力部4とを備える。ただし、実施形態3に係る発電装置300は、複数の永久磁石3と、複数の永久磁石3をそれぞれ変位可能に指示する複数のカンチレバー1を備える。複数のカンチレバー1の圧電部材12は出力部4に接続されており、出力部4は、各圧電部材12から得られた電力を出力する。
3本の導線6aは、実施形態2と同様、ケーブル6の周方向における所定位置を0度とした場合、0度、±120度の位置に配されている。3本の導線6aには3相交流の電流が流れている。この場合、複数の永久磁石3は、ケーブル6の円周方向における所定位置を基準として略0度、±略70度又は±略135度の位置に配されている。
【0087】
実施形態3に係る発電装置300及び発電方法によれば、複数の永久磁石3を用いて、より効率的に発電を行うことができる。
【0088】
なお、図26には、5つの永久磁石3を備えた発電装置300を例示しているが、2~4つの永久磁石3を備え、ケーブル6の円周方向における所定位置を基準として略0度、±略70度又は±略135度のいずれかの角度位置に永久磁石3を配置するように構成してもよい。略0度、±略70度又は±略135度の位置は、単線のケーブル6を用いる場合に比べて大きな力が永久磁石3に働く。従って、より効率的にケーブル6から電力を取り出すことができる。
【0089】
また、3本の導線6a及びグランド線6bを有する4心タイプのケーブル6を用いて発電する場合にも本実施形態3を適用することができる。実施形態2同様、3本の導線6aは、所定位置を0度とした場合、0度、±90度の位置に配され、グランド線6bは180度の位置に配されている。3本の導線6aには3相交流の電流が流れている。この場合、発電装置300は、5つの永久磁石3がケーブル6の円周方向における所定位置を基準として略0度、±略60度又は±略125度のいずれかの角度位置に位置するように構成するとよい。
【0090】
3心タイプと同様、複数の永久磁石3を用いて、より効率的に発電を行うことができる。
【0091】
2~4つの永久磁石3を備える発電装置300の場合、ケーブル6の円周方向における所定位置を基準として略0度、±略60度又は±略125度のいずれかの角度位置に永久磁石3を配置するように構成するとよい。略0度、±略60度又は±略125度の位置は、単線のケーブル6を用いる場合に比べて大きな力が永久磁石3に働く。従って、より効率的にケーブル6から電力を取り出すことができる。
【0092】
なお、導線6aの走行方向における複数の永久磁石3の位置は特に限定されるものでは無いが、複数の永久磁石3が互いに磁力の影響を受けないよう、導線6aの走行方向の異なる位置に永久磁石3を設けるとよい。例えば、複数の永久磁石3が互いに磁力の影響を受けないよう、固定部2は、導線6aの走行方向の一方の側に第1の永久磁石3を支持し、導線6aの走行方向の他方の側に第2の永久磁石3を支持するように構成してもよい。つまり、固定部2からみて、導線6aの走行方向逆側に第1の永久磁石と、第2の永久磁石とを配置するように構成してもよい。
【0093】
(実施形態4)
図27は、本発明の本実施形態4に係る電圧調整装置を示すブロック図である。実施形態4に係る電圧調整装置は、送配電網に接続された複数の導線6aの電圧を調整するための電圧調整機706と、電圧調整機706の状態を検出する検出装置707と、当該検出装置707にて検出された検出情報を外部へ無線送信する送信装置708とを備える。電圧調整機706は、例えば、SVR(Step Voltage Regulator)、SVC(static var compensator)等であり、検出情報は、電圧調整機706の上流側及び下流側の電圧、電流、電圧調整内容等である。
【0094】
実施形態4に係る送信装置708は、実施形態1に係る発電装置100と、当該発電装置100が出力する電力にて駆動し、検出装置707によって検出された検出情報に係る信号を無線送信する送信部781とを備える。発電装置100は、複数の導線6aの周囲に形成される交流磁界に基づいて発電し、電圧を送信部781へ出力し、送信部781は、発電装置100から出力される電力にて駆動する。
【0095】
実施形態4に係る電圧調整装置によれば、発電装置100が出力する電力を用いて送信部781を駆動することができる。従って、電源を用意することができない環境、例えば、送電線の途中に設けられた電圧調整機706の側に発電装置100及び送信部781を配し、電圧調整機706に係る情報を外部へ無線送信することができる。
【0096】
なお、実施形態4では、実施形態1に係る発電装置100を備える例を説明したが、言うまでも無く、実施形態2~実施形態3に係る発電装置200,300を用いて、実施形態4に係る電圧調整装置を構成しても良い。
また、発電装置100が電力を供給する対象として、電圧調整装置が備える送信装置708を例示したが、電力供給先の装置は特に電圧調整装置及び送信装置708に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0097】
100 発電装置、1 カンチレバー、2 固定部、3 永久磁石、4 出力部、6ケーブル、6a 導線
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