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  • 特許-語音聴力改善剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-28
(45)【発行日】2025-03-10
(54)【発明の名称】語音聴力改善剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/352 20060101AFI20250303BHJP
   A61P 27/16 20060101ALI20250303BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20250303BHJP
【FI】
A61K31/352
A61P27/16
A23L33/105
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021089575
(22)【出願日】2021-05-27
(65)【公開番号】P2022182178
(43)【公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智久
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-37738(JP,A)
【文献】君付隆 他,語音明瞭度と純音聴力検査閾値の比較,耳鼻,2011年,Vol.57,pp.158-163
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/33-33/44
A61P 1/00-43/00
A23L 33/105
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルテオリンを含有する、語音聴力改善剤。
【請求項2】
中高年者又は高齢者の語音聴力の改善に使用される、請求項1に記載の語音聴力改善剤。
【請求項3】
騒音中での語音聴力の改善に使用される、請求項1又は2に記載の語音聴力改善剤。
【請求項4】
食品である、請求項1~3のいずれかに記載の語音聴力改善剤。
【請求項5】
加齢に伴って低下する語音聴力を改善するために使用される、請求項1~4に記載の語音聴力改善剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、語音聴力低下の予防又は低下した語音聴力の改善に使用される、語音聴力改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
聴覚障害は、加齢と共に有病率が高くなり、超高齢化社会を迎えている昨今では、聴覚障害を改善することは緊要な課題になっている。聴覚障害には、純音聴力が低下している場合と、語音聴力が低下している場合がある。純音聴力とは特定の周波数の音がどの程度の音量で聞き取り可能であるかを示す聴覚機能であり、語音聴力とは、語音を正しく識別して聞き取る聴覚能力である。純音聴力と語音聴力は、それぞれ独立しており、純音聴力が正常であっても、語音聴力が低下している場合がある。
【0003】
純音聴力の低下している場合には補聴器の装用によって改善できるが、語音聴力が低下している場合には補聴器を装用しても改善が図れないことがある(例えば、非特許文献1)。そのため、日常生活において、語音聴力の低下を予防又は改善することが緊要な課題になっている。
【0004】
従来、活性型ビタミンDを語音聴力改善剤の有効成分として使用できることが知られている(特許文献1)。しかしながら、飲食品等として日常的に摂取可能で、語音聴力の低下を予防又は改善できる成分については、活性型ビタミンD以外では殆ど報告されていない。
【0005】
一方、ルテオリンには、純音聴力を改善する作用があることが報告されている(特許文献2)。しかしながら、語音聴力は、純音聴力とは異なる聴覚能力であり、純音聴力を改善できても語音聴力は改善できないことが周知である(非特許文献2及び特許文献2)。そのため、従来技術からは、ルテオリンが語音聴力に及ぼす影響については類推すらできないのが現状である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】増田 正次、高齢者の難聴、日本老年医学会雑誌、51巻1号(51:1-51:10) 2014
【文献】佐藤 美奈子、聴覚障害の臨床、IRZYO Vol.58 No.9 (515-521) 2004
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平2-275822号公報
【文献】特開2011-37738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、新たな語音聴力改善剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、ルテオリンを摂取することにより、語音聴力を改善できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0010】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. ルテオリンを含有する、語音聴力改善剤。
項2. 中高年者又は高齢者の語音聴力の改善に使用される、項1に記載の語音聴力改善剤。
項3. 騒音中での語音聴力の改善に使用される、項1又は2に記載の語音聴力改善剤。
項4. 食品である、項1~3のいずれかに記載の語音聴力改善剤。
項5. 加齢に伴って低下する語音聴力を改善するために使用される、項1~4のいずれかに記載の語音聴力改善剤。
項6. 語音聴力改善剤の製造のための、ルテオリンの使用。
項7. 語音聴力の改善が求められる者に、ルテオリンを投与又は摂取させる、語音聴力の改善方法。
項8. 語音聴力の改善のための処置に使用される、ルテオリン。
【発明の効果】
【0011】
本発明の語音聴力改善剤によれば、ルテオリンを使用することにより、語音聴力の低下を予防したり、低下した語音聴力を改善したりすることができる。ルテオリンは、長年の食経験がある天然由来成分であり安全性が高いため、本発明の一実施形態では、ルテオリンを含む飲食品の摂取という日常的で簡易な手法で、語音聴力を改善することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】語音聴力の低下を自覚する被験者(50歳代男性)に、ルテオリンを4か月間摂取させた後、摂取前及び摂取期間終了後に、語音認識検査を行い、聴取率(母音と子音の双方を含めた聴取率)、子音の聴取率、及び母音の聴取率を求めた結果である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の語音聴力改善剤は、ルテオリンを有効成分として含むことを特徴とする。以下、本発明の語音聴力改善剤について詳述する。
【0014】
[定義]
本明細書において、「語音聴力」とは、語音を正しく識別して聞き取る聴覚能力を指す。即ち、語音聴力は、特定の周波数の音がどの程度の音量で聞き取り可能であるかを示す純音聴力とは異なる聴覚能力である。
【0015】
本明細書において「語音聴力改善剤」とは、語音聴力が低下するのを抑制、語音聴力の低下進行の軽減、低下した語音聴力を改善するために使用される剤を指す。また、「語音聴力改善剤」は、ことばの聞き取りづらさを改善することができる剤でもある。
【0016】
[ルテオリン]
本発明の語音聴力改善剤は、有効成分としてルテオリンを使用する。ルテオリンは、抗肥満、抗酸化、抗炎症、抗糖尿病等の生理活性を有する公知のフラボノイドである。
【0017】
ルテオリンは、菊花、落花生の殻、シソの実、エゴマ、春菊、ミント、ローズマリー、ピーマン、パセリ、セロリ、リンゴ、カモミール等の植物に存在するフラボノイドである。本発明で使用されるルテオリンは、天然由来のものであってもよく、また微生物工学的手法又は化学合成により製造されたものであってもよい。また、本発明で使用されるルテオリンは、精製品、粗精製品、又は未精製品のいずれであってもよい。また、発明で使用されるルテオリンは、ルテオリンを含む植物の抽出物又は加工物の状態であってもよい。ルテオリンを含む植物の抽出物は、ルテオリンを含む植物を抽出原料として、ルテオリンを抽出可能な溶媒で抽出処理することにより得ることができる。また、ルテオリンを含む植物の加工物は、ルテオリンを含む植物部位を乾燥、破砕等の処理により得ることができる。
【0018】
[エンドセリンB発現上昇物質]
本発明の語音聴力改善剤は、ルテオリンに加えて、必要に応じて、エンドセリンBの発現を上昇させる物質を更に含有してもよい。このように、エンドセリンBの発現を上昇させる物質を含有させることにより、語音聴力の改善効果だけでなく純音聴力の改善効果も付与することが可能になる。エンドセリンBは、Gタンパク質受容体の一つであり、腸管神経節や色素細胞に発現している分子である。内耳には色素細胞である中間細胞が存在しており、内リンパ液の高K+濃度を維持して、有毛細胞にK+が取り込まれて蝸牛マイクロフォン電位を増幅し、聴力、特に、伝音聴力の正常化のために重要な役割を担っている。
【0019】
エンドセリンBの発現を上昇させる物質としては、例えば、アボガドエキス、アマチャエキス、アルニカエキス、アセンヤクエキス、エンメイソウエキス、オウゴンエキス、オレンジエキス、海藻エキス、カッコンエキス、カミツレエキス、クララエキス、クロレラエキス、ゲンチアナエキス、コンフリーエキス、サクラエキス、サンザシエキス、セイヨウニワトコエキス、セイヨウノコギリソウエキス、ゼニアオイエキス、ダイズエキス、タイムエキス、ウーロン茶エキス、トウヒエキス、ニームエキス、オタネニンジンエキス、ヒオウギエキス、ビルベリーエキス、ビワエキス、ブドウエキス、ペパーミントエキス、ボタンピエキス、メリッサエキス、ヤグルマギクエキス、ユズエキス、ルイボスエキス、レモングラスエキス、レンゲソウエキス、ローズマリーエキス、ローマカミツレエキス、ワイルドタイムエキス、サルビアエキス、バラエキス、ラベンダーエキス、キトサンエキス、絹エキス、牛乳エキス、グルタミン酸エキス、酵母エキス、豚血液エキス、豚胎盤エキス、豚皮膚エキス、ローヤルゼリーエキス、シソの実エキス、ツキミソウエキス、ハマナスエキス、オウバクエキス、バオバブエキス、オクラエキス、キャンドルツリーエキス、ホウセンカエキス、アーモンドエキス及びライチエキス等が挙げられる。これらの物質は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
[剤型・形態]
本発明の語音聴力改善剤の剤型については、特に限定されず、固体状、半固体状、又は液体状のいずれであってもよい。
【0021】
本発明の語音聴力改善剤は、経口摂取又は経口投与される形態であることが好ましいが、経腸投与又は注射投与される形態のものであってもよい。
【0022】
本発明の語音聴力改善剤の形態として、具体的には、食品及び内服用医薬品(内服用の医薬部外品を含む)が挙げられる。
【0023】
本発明の語音聴力改善剤を食品の形態にする場合(即ち、語音聴力改善用の食品として提供する場合)、前記有効成分を、そのまま又は他の食品素材や添加成分と組み合わせて所望の形態に調製すればよい。このような食品としては、一般の飲食品の他、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、サプリメント等を含む)、病者用食品等の食品等が挙げられる。これらの食品の形態として、特に限定されないが、具体的には、カプセル剤(ソフトカプセル剤、ハードカプセル剤)、錠剤、顆粒剤、粉剤、ゼリー剤、リポソーム製剤等のサプリメント;グミ、キャンディー、ゼリー等の嗜好品;茶飲料、栄養ドリンク、果汁飲料、炭酸飲料、乳酸飲料等の飲料;等が挙げられる。これらの食品の中でも、好ましくはサプリメントが挙げられる。
【0024】
本発明の語音聴力改善剤を食品の形態にする場合、食品におけるルテオリンの含有量は、食品の種類、対象者の体格、年齢、症状等を勘案して、1日当たりの摂取・投与量を踏まえて適宜設定すればよいが、例えば、1~40重量%、好ましくは5~30重量%、より好ましくは10~20重量%が挙げられる。ここで、ルテオリンの含有量は、ルテオリンの抽出物又は加工物を使用する場合であれば、当該抽出物又は加工物中のルテオリン量に換算した値である。
【0025】
本発明の語音聴力改善剤を内服用医薬品(内服用の医薬部外品を含む)の製剤形態にする場合、前記有効成分を、そのまま又は他の添加剤等と組み合わせて所望の形態に調製すればよい。このような内服用医薬品としては、具体的には、ドリンク剤、錠剤、丸剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤(ハードカプセル及びソフトカプセルを含む)、トローチ剤、チュアブル剤、エキス剤(軟エキス剤、乾燥エキス剤等を含む)、ゼリー剤、シロップ剤、酒精剤、エリキシル剤、リポソーム製剤等が挙げられる。
【0026】
本発明の語音聴力改善剤を内服用医薬品の形態にする場合、内服用医薬品におけるルテオリンの含有量は、内服用医薬品の種類、対象者の体格、年齢、症状等を勘案して、1日当たりの摂取・投与量を踏まえて適宜設定すればよいが、例えば、1~40重量%、好ましくは5~30重量%、より好ましくは10~20重量%が挙げられる。ここで、ルテオリンの含有量は、ルテオリンの抽出物又は加工物を使用する場合であれば、当該抽出物又は加工物中のルテオリン量に換算した値である。
【0027】
[用途・用量]
本発明の語音聴力改善剤は、語音聴力の低下するのを抑制したり、低下した語音聴力を改善したりする作用があるので、語音聴力の低下の抑制が求められる者、語音聴力が低下している者に対して使用される。
【0028】
本発明の語音聴力改善剤は、加齢(例えば、40歳以上)に伴って低下する語音聴力を改善できるので、本発明の語音聴力改善剤の一実施態様では、中高年者(40歳以上65歳未満の者)又は高齢者(65歳以上の者)の語音聴力の改善用途に好適に使用される。
【0029】
また、本発明の語音聴力改善剤は、環境音(多人数の会話音を含む)の騒音中で語音を正しく識別できなくなる語音聴力の低下に対する改善効果を示すので、本発明の語音聴力改善剤の一実施態様では、騒音中での語音聴力の改善用途に好適に使用できる。
【0030】
更に、雑音下での語音聴力の低下は難聴症例だけではなく、加齢そのものにより語音聴力は低下し、生活環境における様々な騒音により、音声の聞き取りにくいことが生活上の支障となっていることが報告されている(亀井 昌代ら、Audiology Japan Vol.49 No.5 (509-510) 2006)。これに対して、本発明の語音聴力改善剤の一実施態様では、雑音下での語音聴力の低下を効果的に改善できるので、雑音下での語音聴力の低下によって、言葉を聞き取りづらくなることや言葉を聞き直すことが億劫になるのが不安な者の聞き取りづらさを改善する目的でも好適に使用される。
【0031】
また、本発明の語音聴力改善剤は、後迷路性難による語音聴力の低下の改善にも使用することができる。
【0032】
本発明の語音聴力改善剤の一実施形態では、両耳による普通話声の最良の語音明瞭度が80%以下の者の語音聴力の改善用途に使用することができる。とりわけ、本発明の語音聴力改善剤の一実施形態では、両耳による普通話声の最良の語音明瞭度が20~80%の者、好ましくは40~80%の者、より好ましくは60%~80%の者の語音聴力の改善に好適に使用される。ここで、「両耳による普通話声の最良の語音明瞭度」は、身体障害者障害程度等級表(身体障害者福祉法施行規則別表第5号)に定められている4級の認定基準で使用される「両耳による普通話声の最良の語音明瞭度」と同じ方法で検査することにより得られる値である。
【0033】
本発明の語音聴力改善剤の一実施形態では、語音の聴取率が80%以下の者の語音聴力の改善用途に使用することができる。とりわけ、本発明の語音聴力改善剤の一実施形態では、語音の聴取率が20~80%の者、好ましくは40~80%の者、より好ましくは60%~80%の者の語音聴力の改善に好適に使用される。ここで、「語音の聴取率」は、「みんなの聴悩力Rチェック」(ユニバーサル・サウンドデザイン株式会社)を使用して単音(50音)を提示し、全単音の中で正しく聴取できた単音の割合を求めることにより算出される値である。
【0034】
また、本発明の語音聴力改善剤の一実施形態では、脳梗塞、ウイルス感染、投薬の副作用など様々な原因で低下した語音聴力を改善することができる。とりわけ、本発明の語音聴力改善剤の一実施形態では、脳梗塞又はウイルス感染が原因で低下した語音聴力の改善に好適に使用できる。
【0035】
本発明の語音聴力改善剤の適用対象者は、ヒトを含む哺乳動物であればよいが、好ましくはヒトが挙げられる。
【0036】
本発明の語音聴力改善剤の摂取・投与量としては、例えば、1日当たり、ルテオリン量が、1~100mg程度、好ましくは5~50mg程度、より好ましくは10~40mg程度が挙げられる。ここで、ルテオリン量の1日当たりの摂取・投与量は、ルテオリン量の抽出物又は加工物を使用する場合であれば、当該抽出物又は加工物中のルテオリン量に換算した値である。本発明の語音聴力改善剤は、1日当たり1回、又は1日当たり複数回に分けて摂取又は投与すればよいが、好ましくは、1日当たり1~5回である。
【実施例
【0037】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
実施例1
40~50歳代の17名の男女を被験者として、カプセル剤4錠(ルテオリン、デキストリン、ゼラチン及び着色料を含有;4錠に含まれるルテオリン量は40mg)を1日1回の頻度、もしくは、半量ずつ2回に分けて1~4か月間摂取させた。なお、被験者は、語音聴力の低下を自覚していて、かつ、株式会社オトデザイナーズが提供している「40歳からの加齢性難聴セルフチェック」(https://www.otodesigners.com/selfcheck/)において加齢性難聴が始まっている兆候が認められた者17名である。17名の被験者の内、3名は前記カプセル剤の摂取は1カ月間、7名は前記カプセル剤の摂取は2カ月間、7名は前記カプセル剤の摂取は4カ月間行った。
【0039】
カプセル剤の摂取前及び摂取期間終了後に、各被験者に対して、一般社団法人聴覚医学会 補聴器適合検査の指針(2010)に従って、検査用音源CDを使用して、SN比+10dB、+5dB、+0dBの条件の単音(50音)を提示し、騒音中の語音識別能を検査した。騒音中の語音識別能は、提示した50音の中で正しく聴取できた単音の数をカウントし、正しく聴取できた単音の1個につき2点としてスコア化(満点は100点)した。即ち、騒音中の語音識別能のスコアは、例えば、50音の全てを正しく聴取できた場合は100点、25音を正しく聴取できた場合は50点になる。なお、前記補聴器適合検査の指針(2010)の検査用音源CDには加重不規則雑音により雑音が負荷されており(橋本 誠ら、Audiology Japan Vol.54 No.5 (557-558) 2011)、また、加重不規則雑音は、実音環境下でのことばの聞き取りと同等であることが報告されている(亀井 昌代ら、Audiology Japan Vol.49 No.5 (509-510) 2006)。
【0040】
また、被験者の内、語音聴力の低下に関する自覚が最も深刻であった者(50歳代男性)については、カプセル剤の摂取前及び摂取期間終了後に、「みんなの聴悩力Rチェック」(ユニバーサル・サウンドデザイン株式会社)によって語音認識検査を行った。語音認識検査の結果から、全単音の中で正しく聴取できた単音の割合(聴取率)、全母音の中で正しく聴取できた母音の割合(母音の聴取率)、及び全子音の中で正しく聴取できた母音の割合(子音の聴取率)を求めた。
【0041】
また、カプセル剤の摂取前及び摂取期間終了後に、各被験者に対して、語音聴力に関する以下のアンケート1~3を実施した。
・アンケート1:質問項目「誰かの声や物音を聞く時、かなり集中する必要がある」について、「かなり集中が必要」を0点、「集中しなくても大丈夫」を10点として、0~10点の11段階でスコア化した。
・アンケート2:質問項目「人ごみの中での会話が聞き取れる」について、
「いつも聞き取れる」を1点、「聞き取れることが多い」を2点として、「半々くらい」を3点、「聞き取れないことが多い」を4点、「いつも聞き取れない」を5点として、1~5点の5段階でスコア化した。
・アンケート3:質問項目「5人の集まりで、話が聞き取れる」について、「いつも聞き取れる」を1点、「聞き取れることが多い」を2点として、「半々くらい」を3点、「聞き取れないことが多い」を4点、「いつも聞き取れない」を5点として、1~5点の5段階でスコア化した。
【0042】
結果を表2に示す。この結果、ルテオリンを摂取することにより、語音の識別能力の向上が見られ、語音聴力の低下を予防又は改善できることが明らかとなった。
【0043】
【表1】
【0044】
また、被験者の内、語音聴力の低下に関する自覚が最も深刻であった者(50歳代男性、ルテオリンを4か月間摂取)について、語音認識検査を行った結果を図1に示す。この結果からも、ルテオリンには、語音聴力の低下を予防又は改善する作用があることが確認された。
図1