(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-28
(45)【発行日】2025-03-10
(54)【発明の名称】医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 36/906 20060101AFI20250303BHJP
A61K 36/634 20060101ALI20250303BHJP
A61K 36/346 20060101ALI20250303BHJP
A61K 36/484 20060101ALI20250303BHJP
A61K 36/234 20060101ALI20250303BHJP
A61K 36/49 20060101ALI20250303BHJP
A61K 36/74 20060101ALI20250303BHJP
A61K 36/534 20060101ALI20250303BHJP
A61K 36/708 20060101ALI20250303BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20250303BHJP
A61P 11/04 20060101ALI20250303BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20250303BHJP
【FI】
A61K36/906
A61K36/634
A61K36/346
A61K36/484
A61K36/234
A61K36/49
A61K36/74
A61K36/534
A61K36/708
A61K47/10
A61P11/04
A61K9/14
(21)【出願番号】P 2023096275
(22)【出願日】2023-06-12
(62)【分割の表示】P 2018114928の分割
【原出願日】2018-06-15
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】戸田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】工藤 洋造
【審査官】西村 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-007578(JP,A)
【文献】特開平05-070359(JP,A)
【文献】特開2009-185082(JP,A)
【文献】特開2008-106048(JP,A)
【文献】特開2000-159691(JP,A)
【文献】ワクナガ漢方 響声破笛丸(きょうせいはてきがん)トローチ,[online], きょうとwel.com,[令和6年6月17日検索],2015年10月08日,インターネット <URL:https://web.archive.org/web/20151008025356/http://www.kyoto-wel.com/item/IS81023N00124.html>
【文献】エスエス製薬株式会社,エスエス胃腸顆粒 添付文書,2018年05月31日
【文献】小林製薬株式会社,ギャクリア 添付文書,2018年02月14日
【文献】小林製薬株式会社,ダスモックb 添付文書,2017年08月23日
【文献】響声破笛丸料エキス顆粒KM添付文書,2014年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)響声破笛丸料エキスと、(B)メントールとを含み、前記(B)成分を0.1~0.75重量%含
み、トローチ剤である、医薬組成物。
【請求項2】
(A)響声破笛丸料エキスと、(B)メントールと、多価アルコールとを含み、前記(B)成分を0.1~0.75重量%含む、医薬組成物。
【請求項3】
(A)響声破笛丸料エキスと、(B)メントールとを含み、前記(B)成分を0.1~0.75重量%含む、医薬組成物(但し、乳糖、白糖、ステアリン酸マグネシウム、及びケイヒ油を含むものを除く)。
【請求項4】
前記(A)成分100重量部当たり前記(B)成分を0.15~2重量部含む、請求項1
~3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項5】
さらに多価アルコールを含む、請求項1
、3及び4のいずれかに記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、響声破笛丸を含み且つ清涼感及び収斂感が増強された医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
嗄れ声や咽喉不快の改善に、響声破笛丸、駆風解毒湯、補肺湯、半夏厚朴湯などの漢方処方を適用することが知られている。この中でも、響声破笛丸は特に汎用されている漢方処方である。
【0003】
一方、漢方処方の医薬品には、生薬が配合されていることから、独特の苦み、渋みがあって服用しづらいという問題点があり、響声破笛丸を含む医薬品についても例外ではない。したがって、漢方処方の医薬品の味覚における改善処方が種々検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、適宜の香料を加えることで、味覚が改善された漢方内服液剤が開示されている。また、特許文献2には、ゼラチン含有顆粒を配合することで響声破笛丸料エキスの不快刺激性をマスキングしたトローチ剤が開示されている。さらに特許文献3には、大量のステビアを配合することで響声破笛丸料エキスの不快刺激感を改良したトローチ剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-193827号公報
【文献】特開平05-070359号公報
【文献】特開平10-007578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、響声破笛丸に対して服用容易性を増強させる製剤技術はいずれも、清涼感及び収斂感を増強させることはできなかった。本発明は、響声破笛丸を含む医薬組成物であって、清涼感及び収斂感が増強された医薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、響声破笛丸と共に所定量のメントールを配合することで、響声破笛丸を含む医薬組成物の清涼感及び収斂感の両方を増強させ得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)響声破笛丸料エキスと、(B)メントールとを含み、前記(B)成分を0.1~0.75重量%含む、医薬組成物。
項2. (C)高甘味度甘味料をさらに含む、項1に記載の医薬組成物。
項3. 前記(A)成分100重量部当たり前記(B)成分を0.15~2重量部含む、項1又は2に記載の医薬組成物。
項4. 前記(C)成分を0.1~0.5重量%含む、項1~3のいずれかに記載の医薬組成物。
項5. 前記(B)成分1重量部当たり前記(C)成分を0.2~1重量部含む、項1~4のいずれかに記載の医薬組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の医薬組成物によれば、響声破笛丸を含む医薬組成物の清涼感及び収斂感の両方を増強させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.医薬組成物
本発明の医薬組成物は、(A)響声破笛丸料エキス(以下、(A)成分と記載することもある)と、(B)メントール(以下、(B)成分と記載することもある)とを含むことを特徴とする。また、本発明の医薬組成物は、(C)高甘味度甘味料を(以下、(C)成分と記載することもある)さらに含むこともできる。以下、本発明の医薬組成物について詳述する。
【0011】
(A)響声破笛丸料エキス
本発明の医薬組成物は、(A)成分として響声破笛丸料エキスを含む。響声破笛丸を構成する生薬は、レンギョウ、キキョウ、カンゾウ、シュクシャ、センキュウ、カシ、アセンヤク、ハッカヨウ、及びダイオウである。また、響声破笛丸を構成する生薬は、ダイオウを含まない、レンギョウ、キキョウ、カンゾウ、シュクシャ、センキュウ、カシ、アセンヤク、及びハッカヨウであってもよい。本発明で使用される響声破笛丸料エキスは、これらのいずれの響声破笛丸から得られるものであってもよい。
【0012】
また、響声破笛丸を構成する各生薬の分量としては、レンギョウ2.5重量部、キキョウ2.5重量部、カンゾウ2.5重量部、シュクシャ1.0重量部、センキュウ1.0重量部、カシ1.0重量部、アセンヤク2.0重量部、ハッカヨウ4.0重量部、ダイオウ1.0重量部が挙げられる。
【0013】
本発明で使用される響声破笛丸料エキスは、前記生薬調合物を公知の手法で抽出することによって得ることができる。前記生薬調合物を抽出する方法については、従来の響声破笛丸料エキスの抽出法と同様の方法で行えばよく、例えば、前記生薬調合物に対して、約10~30倍量の水を加え、80~100℃程度で1~3時間程度撹拌して抽出する方法が挙げられる。抽出後に、遠心分離、濾過等の固液分離に供して固形分を除去し、必要に応じて、濃縮処理や乾燥処理に供することによって響声破笛丸料エキスが得られる。
【0014】
響声破笛丸料エキスをエキス末として得るには、固形分を除去した抽出液を、必要に応じて濃縮した後に、スプレードライ、減圧濃縮乾燥、凍結乾燥等の乾燥処理に供すればよい。また、乾燥処理(特に、スプレードライによる乾燥処理)に供する際に、必要に応じて抽出液に、賦形剤を添加してもよい。このように賦形剤を添加することにより、乾燥時間を短縮することが可能になる。添加される賦形剤の種類や添加量については、一般的な漢方エキス末を製造する場合と同様である。
【0015】
また、響声破笛丸料エキスを軟エキスとして得るには、固形分を除去した抽出液を、減圧濃縮等によって濃縮すればよい。また、軟エキスに、適当な吸着剤(例えば無水ケイ酸、デンプン等)を加えて吸着末としてもよい。
【0016】
本発明で使用される響声破笛丸料エキスは、エキス末又は軟エキスのいずれであってもよい。
【0017】
本発明の医薬組成物における(A)成分の含有量については、特に制限されず、発揮させるべき効能等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、固形分量として、30~80重量%が挙げられる。また、本発明の医薬組成物は清涼感及び収斂感の増強により服用感が増強しているため、(A)成分が比較的多く含まれている場合であっても効果的に清涼感及び収斂感を増強させて良好な服用感を得ることができる。このような観点から、本発明の医薬組成物における(A)成分の含有量としては、固形分量として、より好ましくは40~80重量%、さらに好ましくは45~80重量%、一層に好ましくは50~80重量%、特に好ましくは55~75重量%が挙げられる。
【0018】
(B)メントール
本発明の医薬組成物は、(B)成分としてメントールを含む。メントールは、清涼化剤として公知の成分である。
【0019】
メントールとしては、d体、l体、dl体のいずれであってもよいが、好ましくはl体、dl体が挙げられ、より好ましくはl体が挙げられる。また、メントールとして、メントールを含む精油を使用してもよい。
【0020】
本発明の医薬組成物における(B)成分の含有量は、0.1~0.75重量%である。(A)成分を含まない医薬組成物に当該量でメントールを含有させた場合、清涼感は増強されても収斂感を増強させることはできないが、本発明の医薬組成物は(A)成分を含むことで、メントールの含有量を0.1~0.75重量%含有させた場合に、清涼感だけでなく収斂感も増強させることができる。(B)成分の含有量が0.1重量%を下回ると、清涼感及び収斂感の両方について増強効果を得ることはできない。また、(B)成分の含有量が0.75重量%を上回ると、(B)成分自体の苦みにより服用感が妨げられる。清涼感及び収斂感をより一層増強させる観点から、(B)成分の含有量としては、更に好ましくは0.2~0.75重量%、一層好ましくは0.25~0.75重量%が挙げられる。さらに、(B)成分自体の苦みをより一層抑制する観点から、(B)成分の含有量としては、特に好ましくは0.25~0.5重量%、最も好ましくは0.25~0.3重量%が挙げられる。
【0021】
本発明の医薬組成物において、(A)成分と(B)成分との比率については、特に制限されないが、清涼感及び収斂感を増強させ、(B)成分自体の苦みも抑制する観点から、例えば、(A)成分100重量部当たり(B)成分が0.15~2重量部、好ましくは0.3~1.5重量部、より好ましくは0.35~1.5重量部、更に好ましくは0.35~0.7重量部、特に好ましくは0.35~0.5重量部が挙げられる。
【0022】
なお、ここで示す(B)成分の配合比率は、(B)成分としてメントールを含む精油を使用する場合には、メントール量に換算した値である。
【0023】
(C)高甘味度甘味料
本発明の医薬組成物は、(C)成分として、更に高甘味度甘味料を含んでもよい。これによって、(B)成分によって増強させた清涼感及び収斂感を損なうことなく、苦みのみを緩和することができる。
【0024】
高甘味度甘味料としては、天然由来であっても、人工的に合成されたものであってもよい。天然由来の高甘味度甘味料としては、例えば、ステビア、羅漢果、クズウコン科の植物Thaumatococcus daniellii等の植物抽出物、これらに含まれる甘味成分等が挙げられる。ステビア抽出物に含まれる甘味成分としては、具体的には、ステビオシド、レバウディオサイドA等が挙げられる。羅漢果抽出物に含まれる甘味成分としては、具体的には、モグロシドV等が挙げられる。Thaumatococcus daniellii抽出物に含まれる甘味成分として
は、具体的には、ソーマチンが挙げられる。また、人工の高甘味度甘味料としては、例えば、アスパルテーム、アセスルファムK、スクラロース(登録商標)、サッカリン、ネオテーム等が挙げられ、好ましくはスクラロース(登録商標)が挙げられる。これらの高甘味度甘味料は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
本発明の医薬組成物における(C)成分の含有量については、特に制限されず、付与させるべき矯味等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.1~0.5重量%が挙げられる。(B)成分による苦みをより良好に緩和する観点から、高甘味度甘味料の含有量としては、好ましくは0.15~0.4重量%、より好ましくは0.2~0.3重量%が挙げられる。
【0026】
本発明の医薬組成物における、(B)成分と(C)成分との比率については、特に制限されないが、(B)成分による苦みをより良好に緩和する観点から、例えば、(B)成分1重量部当たり(C)成分が0.2~1重量部、好ましくは0.4~0.9重量部、より好ましくは0.5~0.9重量部、更に好ましくは0.6~0.8重量部が挙げられる。
【0027】
セルロース及び/又はその誘導体
本発明の医薬組成物は、セルロース及び/又はその誘導体を含んでもよい。響声破笛丸料エキスとともに乳糖を含む医薬組成物は、本来的に成型性が悪く、乾式造粒によって造粒することができないが、本発明の医薬組成物は、固形医薬組成物として調製される場合、セルロース及び/又はその誘導体を配合することによって、響声破笛丸料エキスとともに乳糖を含みながらも、優れた成型性を備えることができる。セルロース及びその誘導体の中でも、安定性、汎用性、経済性の点から、セルロースであることが好ましい。
【0028】
本発明で使用されるセルロースとしては、可食性のもの又は薬学的に許容されるものであることを限度として、特に制限されないが、具体的には、結晶セルロースが好ましく挙げられる。セルロース誘導体は、セルロースの水酸基の水素原子の一部を、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシプロピル基、カルボキシメチル基等の置換基で置換した高分子である。本発明で使用されるセルロース誘導体としては、可食性のもの又は薬学的に許容されるものであることを限度として、特に制限されないが、具体的には、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、カルボキシメチルセルロース、及びこれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩等)の等が挙げられる。これらのセルロース誘導体は単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。セルロース誘導体の中でも、本発明の医薬組成物が固形医薬組成物として調製される場合に成型性をより良好に得る観点から、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びこれらの塩が好ましく、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースがより好ましい。
【0029】
本発明の医薬組成物がセルロース及び/又はその誘導体を含む場合、セルロース及び/又はその誘導体の含有量については、特に制限されないが、例えば3~40重量部が挙げられる。本発明の医薬組成物が固形医薬組成物として調製される場合に成型性をより良好に得る観点から、本発明の医薬組成物におけるセルロース及び/又はその誘導体の含有量としては、好ましくは5~30重量部、より好ましくは8~15重量部が挙げられる。
【0030】
本発明の医薬組成物がセルロース及び/又はその誘導体を含む場合、(A)成分とセルロース及び/又はその誘導体との比率については、特に制限されないが、例えば、(A)成分1重量部当たりセルロース及び/又はその誘導体が0.06~1重量部が挙げられる。本発明の医薬組成物が固形医薬組成物として調製される場合に成型性をより良好に得る観点から、(A)成分1重量部当たりセルロース及び/又はその誘導体が好ましくは0.08~0.8重量部、より好ましくは0.1~0.5重量部が挙げられる。
【0031】
本発明の医薬組成物がセルロース及び/又はその誘導体と後述の乳糖とを含む場合、において、乳糖とセルロース及び/又はその誘導体との比率については、特に制限されないが、例えば、乳糖1重量部当たりセルロース及び/又はその誘導体が0.05~2重量部が挙げられる。本発明の医薬組成物が固形医薬組成物として調製される場合に成型性をより良好に得る観点から、乳糖1重量部当たりセルロース及び/又はその誘導体が好ましくは0.1~1重量部、より好ましくは0.2~0.5重量部が挙げられる。
【0032】
乳糖
本発明の医薬組成物は、乳糖を含んでもよい。響声破笛丸料エキスとともに乳糖を含む医薬組成物は、本来的に成型性が悪く、乾式造粒によって造粒することができないが、本発明の医薬組成物は、固形医薬組成物として調製される場合、乳糖とともにセルロース及び/又はその誘導体を配合することによって、響声破笛丸料エキスとともに乳糖を含みながらも、優れた成型性を備えることができる。
【0033】
乳糖は、賦形剤、矯味剤、崩壊剤等として有用な成分である。乳糖としては、乳糖水和物及び無水乳糖が挙げられ、好ましくは乳糖水和物が挙げられる。
【0034】
本発明の医薬組成物が乳糖を含む場合、乳糖の含有量については、特に制限されないが、例えば20~60重量部、好ましくは30~60重量部が挙げられる。
【0035】
本発明の医薬組成物が乳糖を含む場合、(A)成分と乳糖との比率については、特に制限されないが、例えば、(A)成分1重量部当たり乳糖が0.3~1.5重量部が挙げられる。本発明の医薬組成物が固形医薬組成物として調製される場合における成型性をより良好に得る観点から、(A)成分1重量部当たり乳糖が好ましくは0.3~1.4重量部、より好ましくは0.4~1.4重量部、さらに好ましくは0.5~1.0重量が挙げられる。
【0036】
その他の成分
本発明の医薬組成物は、上述の(A)成分、及び(B)成分、必要に応じて配合される(C)成分、並びに必要に応じて配合されるセルロース及び/又はその誘導体及び乳糖の他に、製剤形態に応じた添加剤や基剤をさらに含んでいてもよい。添加剤及び基剤としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、滑沢剤、可塑剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、等張化剤、分散剤、乳化剤、溶解補助剤、湿潤化剤、安定化剤、懸濁化剤、粘着剤、コーティング剤、光沢化剤、水、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、高級アルコール類、エステル類、水溶性高分子、界面活性剤、金属石鹸、低級アルコール類、多価アルコール、pH調整剤、緩衝剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、防腐剤、矯味剤、香料、粉体、増粘剤、色素、キレート剤等が挙げられる。これらの添加剤及び基剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの添加剤及び基剤の含有量については、製剤形態、使用する添加剤及び基剤の種類等に応じて適宜設定される。
【0037】
滑沢剤としては、例えば、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、タルク、コロイドシリカ、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム、及び無水リン酸水素カルシウム等が挙げられ、好ましくは軽質無水ケイ酸挙げられる。これらの滑沢剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。本発明の医薬組成物が滑沢剤を含む場合、滑沢剤の含有量としては、例えば0.1~1重量%、好ましくは0.3~0.7重量%が挙げられる。
【0038】
可塑剤としては、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、グリセリントリアセテート、フタル酸ジエチル、クエン酸トリエチル、ラウリル酸、ショ糖、デキストロース、ソルビトール、トリアセチン、アセチルトリエチルチトレート、トリエチルチトレート、トリブチルチトレート、アセチルトリブチルチトレート等が挙げられ、好ましくはプロピレングリコールが挙げられる。これらの可塑剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。本発明の医薬組成物が可塑剤を含む場合、可塑剤の含有量としては、例えば0.15~0.4重量%、より好ましくは0.2~0.3重量%が挙げられる。
【0039】
また、本発明の医薬組成物は、必要に応じて、さらに(A)成分以外の他の栄養成分や薬理成分を含有していてもよい。このような栄養成分や薬理成分としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、制酸剤、健胃剤、消化剤、整腸剤、鎮痙剤、粘膜修復剤、抗炎症剤、鎮吐剤、鎮咳剤、去痰剤、消炎酵素剤、鎮静催眠剤、抗ヒスタミン剤、カフェイン類、強心利尿剤、抗菌剤、血管収縮剤、血管拡張剤、局所麻酔剤、生薬エキス、ビタミン類等が挙げられる。これらの栄養成分や薬理成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの成分の含有量については、使用する成分の種類等に応じて適宜設定される。
【0040】
製剤形態
本発明の医薬組成物の製剤形態については、経口投与が可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、散剤、細粒剤、顆粒剤(ドライシロップを含む)、錠剤、トローチ剤、チュアブル剤、丸剤、カプセル剤(軟カプセル剤、硬カプセル剤)等の固形状製剤;ゼリー剤等の半固形状製剤;液剤、懸濁剤、シロップ剤等の液状製剤が挙げられる。これらの製剤形態の中でも、含有成分の安定性や携帯性等の観点から、好ましくは固形状製剤が挙げられる。
【0041】
本発明の医薬組成物が乳糖及びセルロース及び/又はその誘導体を含む場合は、顆粒剤又は錠剤として成型されることが好ましい。また、本発明の医薬組成物は、清涼感及び収斂感が増強されているため、比較的口腔内での滞留時間が短い顆粒剤又は錠剤として成型された場合であっても、効果的に清涼感及び収斂感の増強効果を得ることができる。顆粒剤の形状は不定形であり、平均粒径としては、20~100メッシュ(20メッシュの篩を通過し100メッシュの篩を通過しない)、好ましくは20~50メッシュが挙げられる。錠剤は、顆粒剤(打錠用顆粒)の打錠成型物であり、その形状及び大きさ等は特に限定されない。錠剤形状としては、丸型、楕円型、三角型、四角型等が挙げられる。丸型錠の場合にあっては、直径6~12mm、好ましくは8~10mmが挙げられる。錠剤の厚みとしては、3~8mm、好ましくは4~7mmが挙げられる。一錠当たりの重量としては、200~800mg、好ましくは300~600mgが挙げられる。
【0042】
2.医薬組成物の製造方法
本発明の医薬組成物の製造方法は、(A)響声破笛丸料エキスと、(B)メントールと、必要に応じて配合される(C)高甘味度甘味料と、必要に応じて配合されるセルロース及び/又はその誘導体並びに乳糖と、必要に応じて配合されるその他の成分を用いて、医薬分野で採用されている通常の製剤化手法に従って製剤化すればよい。
【0043】
特に、本発明の医薬組成物が乳糖及びセルロース及び/又はその誘導体を含む場合において、顆粒剤又は錠剤として成型される場合、(A)響声破笛丸料エキスと、(B)メントールと;必要に応じて配合される(C)高甘味度甘味料と;セルロース及び/又はその誘導体並びに乳糖とを含む医薬組成物を圧縮成型し、スラッグを得る工程1と;前記スラッグを破砕して顆粒を得る工程2と、を含む製造方法により製剤化される。この場合、(A)成分と共にセルロース及び/又はその誘導体並びに乳糖を含むことで成型性が向上しているため、乾式造粒法によって造粒することが可能になる。
【0044】
工程1においては、上述の(A)成分、及び(B)成分と;必要に応じて配合される(C)成分と;セルロース及び/又はその誘導体並びに乳糖と;必要に応じて配合されるその他の成分とを含む医薬組成物を圧縮成型し、スラッグを得る。圧縮成型にはスラッグマシンを用いてもよいし、ローラーコンパクターを用いて二つのローラーの間に混合物を供給して,板状あるいは波板状に成型してもよい。圧縮成形時の圧力としては、例えば5~30MPaが挙げられる。
【0045】
工程2では、スラッグを破砕することで造粒する。造粒物は篩で仕分けられ、所定の平均粒径の顆粒が選別される。例えば、20~100メッシュの平均粒径の顆粒を選別する場合、20メッシュの篩で仕分けて通過した造粒物を得て、さらに100メッシュの篩で仕分けて通過しなかった造粒物を得ることで選別することができる。
【0046】
上述の製造方法においては、顆粒を打錠して錠剤を得る工程3をさらに含んでもよい。工程3では、上述の顆粒を打錠用顆粒として使用し、当該打錠用顆粒を打錠する。打錠圧としては、例えば200~800mg/錠の錠剤を製造する場合、例えば4~20kNが挙げられる。
【0047】
用途
本発明の医薬組成物は、響声破笛丸料エキスの効能が期待される用途であればどのような用途で用いられてもよい。例えば、長期間にわたって声帯を酷使した人、無理な発声などによって声がれや失声が生じた人、平素のどが弱くて、すぐ声のかれる傾向のある人に適用することができる。
【0048】
用量・用法
本発明の医薬組成物は、経口投与によって使用される。本発明の医薬組成物の用量については、投与目的、投与対象者の年齢、性別、体質、症状の程度等に応じて適宜設定されるが、例えば、ヒト1人に対して1日当たり、響声破笛丸料エキスの固形分量で3~7g、好ましくは3.5~6gとなる量で、1日1~3回、好ましくは2又は3回の頻度で服用すればよい。服用タイミングについては、特に制限されず、食前、食後、又は食間のいずれであってもよい。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0050】
響声破笛丸料エキスの製造
レンギョウ2.5重量部、キキョウ2.5重量部、カンゾウ2.5重量部、シュクシャ1.0重量部、センキュウ1.0重量部、カシ1.0重量部、アセンヤク2.0重量部、ハッカヨウ4.0重量部、ダイオウ1.0重量部を含む生薬調合物に重量比で20倍量の水を加えて、約100℃で1時間撹拌しながら抽出を行った。その後、遠心分離にて抽出液を回収し、減圧濃縮した後に、スプレードライヤーを用いて乾燥させ、響声破笛丸料エキス末を得た。
【0051】
[試験例]
医薬組成物の製造
表1及び表2に記載の組成の医薬組成物を調製した。具体的には、表中に記載の成分を表中に記載の配合比率で混合することで、粉末状の医薬組成物を調製した。調製された医薬組成物の清涼感、収斂感、及び苦みの程度を、以下の基準に基づいて評価した。なお、収斂感とは、口腔内や咽頭部の組織をしめつけるような感覚を指す一方、苦みとは口腔内特に舌で感じる苦味を指し、本試験例では、それぞれ異なる服用感を評価している。
【0052】
(清涼感及び収斂感の評価)
++++:非常に強く感じる
+++:強く感じる
++:感じる
+:非常に弱く感じる
-:感じない
【0053】
(苦みの評価)
+++++:非常に強く感じる
++++:強く感じる
+++:感じる
++:弱く感じる
+:非常に弱く感じる
-:感じない
【0054】
結果を表1及び表2に示す。表1から明らかなとおり、響声破笛丸料エキスのみを含む場合(比較例1)と比較すると響声破笛丸料エキスにl-メントールを0.1重量%未満で含む場合(比較例2)では、清涼感も収斂感も増強されなかったが、響声破笛丸料エキスにl-メントールを0.1重量%以上で含む場合(実施例1~9)では、清涼感と収斂感との両方が増強され、良好な服用感が得られた。さらに、響声破笛丸料エキス及びl-メントールと共にスクラロースを含む場合(実施例6~9)では、増強された清涼感及び収斂感のいずれも損なうことなく、苦みのみが低減され、一層良好な服用感が得られた。一方、表2から明らかなとおり、響声破笛丸料エキス以外の生薬を含む場合(参考例1-2~1-6)は、l-メントールを0.1重量%以上で含ませても、清涼感は増強されたものの、収斂感は増強されなかった。つまり、l-メントールを0.1重量%以上含ませることで清涼感だけでなく収斂感も増強される効果は、響声破笛丸料エキスを含む医薬組成物に特有の効果であることが示された。
【0055】
【0056】
【0057】
[参考試験例]
医薬組成物の製造
響声破笛丸料エキス末と、セルロース及び/又はその誘導体と、乳糖水和物と、を混合した。ローラーコンパクターを用いて二つのローラーの間に混合物を供給して、10MPaで板状のスラッグに圧縮成型した。破砕装置を用いてスラッグを破砕することで造粒した。造粒物を、14メッシュ篩による仕分け及び42メッシュ篩による仕分けを行い、平均粒径355~1180μmの画分を選別した。なお、結晶セルロースとしては、旭化成ケミカルズ社製セオラスKG-802を用い、ヒドロキシプロピルセルロースとしては、日本曹達製HPC-L(Fine Powder)を用い、ヒドロキシプロピルメチルセルロースとしては信越化学製TC-5を用い、乳糖水和物としては、DFE Pharma製Phamatose 200Mを使用した。
【0058】
表3及び表4に示す組成の医薬組成物を調製した。より具体的には、実施例の医薬組成物は上述の方法で製造し、比較例の医薬組成物は、セルロース及び/又はその誘導体を用いないことを除いて実施例と同様に製造し、参考例の医薬組成物は、響声破笛丸料エキス末の代わりに表4に示す生薬エキス末を用いたことを除いて実施例と同様に製造した。得られた医薬組成物の成形性を、以下の基準に基づいて評価した。
【0059】
×:スラッグが形成されない
△:スラッグは形成されるが、粉砕によって粉末化する
〇:スラッグが形成され、且つ粉砕によって造粒できる
【0060】
結果を表3及び表4に示す。表3から明らかなように、響声破笛丸料エキスとともに乳糖を含む医薬組成物(参考比較例1~3)は、圧縮成型してもスラッグが形成されないか、形成されたとしても粉砕によって粉末化したため、造粒物を取得することはできなかった。なお、表4から明らかなように、響声破笛丸料エキス以外の生薬エキスとともに乳糖を含む医薬組成物(参考例2-1~2-3)は、造粒物の取得が可能であったため、成型性に問題が無かった。つまり、乳糖で造粒物の取得ができない課題は、響声破笛丸料エキスを含む医薬組成物に特有の課題であることが示された。これに対し、表3から明らかなように、響声破笛丸料エキス及び乳糖に加えてセルロース及び/又はその誘導体を含む医薬組成物(参考実施例1~6)は、造粒物の取得が可能であり優れた成型性を備えていた。
【0061】
【0062】
【0063】
なお、前述の試験例の実施例1~9において、さらに参考実施例1~6のようにセルロース及び/又はその誘導体を表3の比率で配合した場合は、清涼感及び収斂感の増強に加えて、参考実施例1~6と同様に、造粒物の取得が可能で優れた成型性も得られた。