(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】イミド結合及び重合性不飽和結合含有環状オルガノシロキサン、及びそれを含む硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C07F 7/21 20060101AFI20250304BHJP
C08G 73/00 20060101ALI20250304BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20250304BHJP
【FI】
C07F7/21 CSP
C08G73/00
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2021190701
(22)【出願日】2021-11-25
【審査請求日】2023-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】藤田 将史
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-173700(JP,A)
【文献】特開2014-098147(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0205399(US,A1)
【文献】特開2012-188549(JP,A)
【文献】特開2019-127506(JP,A)
【文献】特開2019-011426(JP,A)
【文献】特開2018-154745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G73
C08G77
C07F7
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される、イミド結合及び重合性不飽和結合含有環状オルガノシロキサン。
【化1】
(式中、R
1は、それぞれ独立して、酸素、窒素、硫黄及びリン原子から選ばれる少なくとも1種が介在してもよい1価の炭化水素基または水素原子を表し、Zは
、下記式(4)で表される基であり、nは、2~6の整数であり、mは、0~4の整数であり、かつn+mの合計は4~6である。括弧内のシロキサン単位の配列は任意であってよい。)
【化2】
(式中、アスタリスク*は、ケイ素原子との結合を表す。)
【請求項2】
前記R
1が、炭素数1~3のアルキル基であり、前記nが2であり、前記mが2である請求項
1記載のイミド結合及び重合性不飽和結合含有環状オルガノシロキサン。
【請求項3】
(A)請求項
1又は2記載のイミド結合及び重合性不飽和結合含有環状オルガノシロキサン、及び
(B)シアン酸エステル化合物
を含む硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
さらに(C)成分として、(A)成分以外のマレイミド化合物を含む請求項
3記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
さらに(D)硬化触媒を含む請求項
3又は4記載の硬化性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はイミド結合及び重合性不飽和結合含有環状オルガノシロキサン、及びそれを含む硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の封止材、プリプレグ、金属箔張積層板、プリント配線板、及び半導体パッケージ等に用いられる材料は、優れた機械的特性(硬度、耐クラック性、耐折り曲げ性等)が要求される。
【0003】
下記の特許文献1及び特許文献2では、両末端にマレイミド結合を有する直鎖状ジメチルポリシロキサンと、シアン酸エステル化合物とを含む硬化性樹脂組成物が報告されている。これらは、材料中にジメチルポリシロキサン構造を導入することにより、熱膨張率、硬さ及び曲げ強さを両立する硬化物を得ることを狙ったものであるが、その性能については改良の余地が残るものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2019/39135号
【文献】国際公開第2019/230944号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、硬度及び耐折り曲げ性に優れる硬化物を与える、イミド結合及び重合性不飽和結合含有環状オルガノシロキサン、及びそれを含む硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、イミド結合及び重合性不飽和結合含有環状オルガノシロキサンを含む硬化性樹脂組成物が、硬度、耐クラック性及び耐折り曲げ性を両立できることを見出し、本発明を完成させるに至ったものである。
【0007】
すなわち本発明は、下記のイミド結合及び重合性不飽和結合含有環状オルガノシロキサン、及びそれを含む硬化性樹脂組成物を提供する。
1.下記一般式(1)で表される、イミド結合及び重合性不飽和結合含有環状オルガノシロキサン。
【化1】
(式中、R
1は、それぞれ独立して、酸素、窒素、硫黄及びリン原子から選ばれる少なくとも1種が介在してもよい1価の炭化水素基または水素原子を表し、Zは
、下記式(4)で表される基であり、nは、2~6の整数であり、mは、0~4の整数であり、かつn+mの合計は4~6である。括弧内のシロキサン単位の配列は任意であってよい。)
【化2】
(式中、アスタリスク*は、ケイ素原子との結合を表す。)
2.前記R
1が、炭素数1~3のアルキル基であり、前記nが2であり、前記mが2である上記
1記載のイミド結合及び重合性不飽和結合含有環状オルガノシロキサン。
3.(A)上記
1又は2記載のイミド結合及び重合性不飽和結合含有環状オルガノシロキサン、及び
(B)シアン酸エステル化合物
を含む硬化性樹脂組成物。
4.さらに(C)成分として、(A)成分以外のマレイミド化合物を含む上記
3記載の硬化性樹脂組成物。
5.さらに(D)硬化触媒を含む上記
3又は4記載の硬化性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明のイミド結合及び重合性不飽和結合含有環状オルガノシロキサンを硬化マトリクスに組み込むことにより、硬度、耐クラック性および耐折り曲げ性を両立可能な硬化物を与えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明に係るイミド結合含有環状オルガノシロキサンは下記式(1)で表される。
【0010】
【化4】
(式中、R
1は、それぞれ独立して、酸素、窒素、硫黄及びリン原子から選ばれる少なくとも1種が介在してもよい1価の炭化水素基または水素原子を表し、Zは、それぞれ独立して、酸素、窒素、硫黄及びリン原子から選ばれる少なくとも1種が介在してもよく、イミド結合及び重合性不飽和結合を有する1価有機基であり、nは、2~6の整数であり、mは、0~4の整数であり、かつn+mの合計は4~6である。括弧内のシロキサン単位の配列は任意であってよい。)
【0011】
R1の1価の炭化水素基の具体例としては、直鎖、分岐、環状のいずれでもよいが、炭素数1~20のものが好ましく、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル基等のアルキル基;ビニル、アリル、ブテニル基等のアルケニル基;フェニル、トリル、キシリル、ナフチル基等のアリール基;ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル基等のアラルキル基などが挙げられる。これらの中でも、使用する原料の市場流通性の観点から、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましい。
【0012】
Zのイミド結合及び重合性不飽和結合を有する1価有機基の好ましい具体例としては、下記式(2)で表される基が挙げられる。
【0013】
【化5】
(式中、アスタリスク*は、ケイ素原子との結合を表し、R
2、R
3は、それぞれ独立して、酸素、窒素、硫黄及びリン原子から選ばれる少なくとも1種が介在してもよい1価の炭化水素基、または水素原子を表し、R
2とR
3とが連結して環構造を形成してもよい。aは3~8、bは0~2の整数である。)
【0014】
このようなイミド結合及び重合性不飽和結合を有する1価有機基のより具体的な構造としては、下記の式(3)、(4)で表される基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0015】
【化6】
(式中、アスタリスク*は、ケイ素原子との結合を表す。)
【0016】
上記式(1)において、好ましくはnが2~4であり、さらに好ましくはnが2である。一方、上記式(1)において、mは0~2が好ましく、さらに好ましくはmが2である。これらの値は、原料となる一級アミノ基含有の環状オルガノシロキサン材料の市場流通性に基づくほか、nが6よりも大きい場合は重合性官能基が一分子中に過多な構造となり、硬化性樹脂組成物に応用した場合に架橋密度が高くなりすぎてしまい、得られる硬化物の耐クラック性および耐折り曲げ性が低下する場合がある。
【0017】
本発明のイミド結合及び重合性不飽和結合含有環状オルガノシロキサンは、例えば、下記式(5)で表される一級アミノ基含有環状オルガノシロキサンと、環状カルボン酸無水物基及び重合性炭素-炭素二重結合を同一分子中に有する化合物とをイミド化反応させることにより得られる。
【0018】
【0019】
上記式(5)においてR1、n、mは上記と同義であり、括弧内のシロキサン単位の配列は任意であってよい。Aは、酸素、窒素、硫黄及びリン原子から選ばれる少なくとも1種が介在してもよい、一級アミノ基を有する1価有機基であり、Aの具体例としては、3-アミノプロピル基、6-アミノヘキシル基、8-アミノオクチル基等が挙げられる。
【0020】
上記の一級アミノ基含有環状オルガノシロキサンは、例えば、環状オルガノハイドロジェンシロキサンのSi-H基に、重合性炭素-炭素二重結合を有するアミンを反応させてヒドロシリル化により得ることができる。
【0021】
上記環状オルガノハイドロジェンシロキサンとしては、例えば、下記式(5´)で表されるものが挙げられる。
【化8】
【0022】
上記式(5´)においてR1、n、mは上記と同義であり、括弧内のシロキサン単位の配列は任意であってよい。
【0023】
このような環状オルガノハイドロジェンシロキサンの具体例としては、1,3,5,7-テトラメチル-1,3-ジプロピルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,5-ジプロピルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。
【0024】
上記重合性炭素-炭素二重結合を有するアミンの具体例としては、アリルアミン、5-ヘキセニルアミン、7-オクテニルアミン等が挙げられ、これらの炭化水素部位に酸素、窒素、硫黄及びリン原子から選ばれる少なくとも1種が介在してもよい。
【0025】
上記ヒドロシリル化は、通常、触媒の存在下で行われる。該触媒としては、公知の白金族金属系触媒、例えば白金系、パラジウム系およびロジウム系のものが挙げられ、白金系のものが好適である。白金系金属触媒としては、白金黒;アルミナ、シリカ等の担体に固体白金を担持させたもの;塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸とオレフィンとの錯体;白金とビニルシロキサンとの錯体等が挙げられる。
【0026】
上記ヒドロシリル化反応の温度は、通常、室温~200℃の温度でよく、好ましくは30~120℃の範囲である。反応時間は、製造規模および反応温度に応じて適宜決めることができる。上記反応において、溶媒を使用しなくてもよく、また、必要に応じて、反応に悪影響を与えない範囲で溶媒を使用してもよい。
【0027】
一方、環状カルボン酸無水物基及び重合性炭素-炭素二重結合を同一分子中に有する化合物については、特に制限されないが、市場流通性の観点から、好ましくは無水マレイン酸、1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物が挙げられる。
【0028】
基質の反応比については、一級アミノ基含有環状オルガノシロキサン中の一級アミノ基1モルに対して、環状カルボン酸無水物基及び重合性炭素-炭素二重結合を同一分子中に有する化合物中の酸無水物基が0.8~1.5モルであることが生産性の観点から好ましい。
【0029】
上記のイミド化反応の反応時間は、反応の進行により原料が十分に消費されるような時間であればよく、生産効率の観点から好ましくは10分~24時間、より好ましくは1~10時間、さらに好ましくは2~7時間である。また、反応温度は、所望の反応が進行し且つ生産性を損なわない限り、低温にて行うことが好ましい。
【0030】
上記イミド化の反応過程において、必要に応じて有機溶剤、触媒や脱水剤を用いてもよい。
【0031】
有機溶剤としては、原料と反応することなく、十分に溶解させることができる有機溶剤であれば特に限定されないが、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、1,3-ジメチル2-イミダゾリジノン、N-メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶剤;テトラメチレンスルホン等のスルホン類;テトラヒドロフラン、4-メチルテトラヒドロピラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤が挙げられる。これらの中でも、反応性及び溶解性の点から、エーテル系溶媒、非プロトン性極性溶剤が好ましい。有機溶剤は、1種単独で又は2種以上を適宜混合して用いることができる。
【0032】
触媒としては、特に限定されないが、オクチル酸スズ、オクチル酸亜鉛、ジブチルスズジマレエート、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オレイン酸スズ等の有機金属塩;塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化スズ等の金属塩化物、三級アミン化合物が挙げられる。これらの中でも、反応性の点から脱水剤を用いない熱イミド化の際はナフテン酸コバルトが好ましく、後述する脱水剤を併用する化学イミド化の際は三級アミンの併用が好ましい。触媒は、1種単独で又は2種以上を適宜混合して用いることができる。
【0033】
脱水剤を用いる化学イミド化では、熱イミド化に比べてイミド化反応の反応温度を下げることができるといった利点が挙げられる。脱水剤としては、カルボン酸無水物が挙げられ、具体的には無水酢酸、無水プロピオン酸、無水コハク酸などが例示されるがこれらに限らない。また、カルボン酸無水物を用いる場合、該カルボン酸無水物と等モル量の三級アミンを併用することが好ましい。三級アミンは特に限定されないが、市場流通性があり、且つ後工程での除去の容易さの観点から、トリエチルアミンが好ましい。
【0034】
化学イミド化における脱水剤の使用量については、生産性の観点から、一級アミノ基含有環状オルガノシロキサン中の一級アミノ基1モルに対して、1~2モルの使用が好ましく、より好ましくは1.2~1.6モルの範囲である。
【0035】
本発明のイミド結合及び重合性不飽和結合含有環状オルガノシロキサンの重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、当該化合物を含む硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物に、十分な硬度、耐屈曲性を付与することを考慮すると、重量平均分子量500~5,000が好ましく、600~3,000がより好ましい。なお、本発明における重量平均分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を展開溶媒に用いて測定したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めた標準ポリスチレン換算値である。
【0036】
本発明のイミド結合及び重合性不飽和結合含有環状オルガノシロキサンの重合性不飽和結合含有基の官能基当量は、特に限定されるものではないが、当該化合物を含む硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物に、十分な硬度、耐屈曲性を付与することを考慮すると、200~500g/molが好ましい。
【0037】
本発明の硬化性樹脂組成物は、下記の(A)及び(B)成分、
(A)イミド結合及び重合性不飽和結合含有環状オルガノシロキサン、及び
(B)シアン酸エステル化合物
を含むものである。
【0038】
本発明の硬化性樹脂組成物に含まれる(A)イミド結合及び重合性不飽和結合含有環状オルガノシロキサンは、上述したイミド結合及び重合性不飽和結合含有環状オルガノシロキサンの内容と同様である。上記(A)成分のイミド結合及び重合性不飽和結合含有環状オルガノシロキサンの含有量は、所望する特性に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、曲げ強さ、耐熱性及び誘電特性の物性バランスをより向上させる観点から、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、1~25質量部が好ましく、より好ましくは2~20質量部であり、更に好ましくは5~15質量部である。
【0039】
本発明の硬化性樹脂組成物に含まれる(B)シアン酸エステル化合物としては、少なくとも1個のシアナト基(シアン酸エステル基)を有する化合物であれば特に限定されないが、芳香族シアン酸エステル化合物が好ましい。本発明のように、シアン酸エステル化合物を用いた硬化性樹脂組成物は、硬化物とした際に、耐熱性、低熱膨張性等に優れた特性を有する。
【0040】
芳香族シアン酸エステル化合物の具体例としては、シアナトベンゼン、1-シアナト-2-、1-シアナト-3-,又は1-シアナト-4-メチルベンゼン、1-シアナト-2-,1-シアナト-3-,又は1-シアナト-4-メトキシベンゼン、1-シアナト-2,3-,1-シアナト-2,4-,1-シアナト-2,5-,1-シアナト-2,6-,1-シアナト-3,4-又は1-シアナト-3,5-ジメチルベンゼン、シアナトエチルベンゼン、シアナトブチルベンゼン、シアナトオクチルベンゼン、シアナトノニルベンゼン、2-(4-シアナフェニル)-2-フェニルプロパン(4-α-クミルフェノールのシアネート)、1-シアナト-4-シクロヘキシルベンゼン、1-シアナト-4-ビニルベンゼン、1-シアナト-2-又は1-シアナト-3-クロロベンゼン、1-シアナト-2,6-ジクロロベンゼン、1-シアナト-2-メチル-3-クロロベンゼン、シアナトニトロベンゼン、1-シアナト-4-ニトロ-2-エチルベンゼン、1-シアナト-2-メトキシ-4-アリルベンゼン(オイゲノールのシアネート)、メチル(4-シアナトフェニル)スルフィド、1-シアナト-3-トリフルオロメチルベンゼン、4-シアナトビフェニル、1-シアナト-2-又は1-シアナト-4-アセチルベンゼン、4-シアナトベンズアルデヒド、4-シアナト安息香酸メチルエステル、4-シアナト安息香酸フェニルエステル、1-シアナト-4-アセトアミノベンゼン、4-シアナトベンゾフェノン、1-シアナト-2,6-ジ-tert-ブチルベンゼン、1,2-ジシアナトベンゼン、1,3-ジシアナトベンゼン、1,4-ジシアナトベンゼン、1,4-ジシアナト-2-tert-ブチルベンゼン、1,4-ジシアナト-2,4-ジメチルベンゼン、1,4-ジシアナト-2,3,4-ジメチルベンゼン、1,3-ジシアナト-2,4,6-トリメチルベンゼン、1,3-ジシアナト-5-メチルベンゼン、1-シアナト又は2-シアナトナフタレン、1-シアナト4-メトキシナフタレン、2-シアナト-6-メチルナフタレン、2-シアナト-7-メトキシナフタレン、2,2’-ジシアナト-1,1’-ビナフチル、1,3-、1,4-、1,5-、1,6-、1,7-、2,3-、2,6-又は2,7-ジシアナトシナフタレン、2,2’-又は4,4’-ジシアナトビフェニル、4,4’-ジシアナトオクタフルオロビフェニル、2,4’-又は4,4’-ジシアナトジフェニルメタン、ビス(4-シアナト-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)エタン、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-シアナト-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(2-シアナト-5-ビフェニルイル)プロパン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-シアナト-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)ブタン、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)イソブタン、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)ペンタン、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)-3-メチルブタン、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)-2-メチルブタン、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)-2,2-ジメチルプロパン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)ペンタン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)ヘキサン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)-3-メチルブタン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)-4-メチルペンタン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)-3,3-ジメチルブタン、3,3-ビス(4-シアナトフェニル)ヘキサン、3,3-ビス(4-シアナトフェニル)ヘプタン、3,3-ビス(4-シアナトフェニル)オクタン、3,3-ビス(4-シアナトフェニル)-2-メチルペンタン、3,3-ビス(4-シアナトフェニル)-2-メチルヘキサン、3,3-ビス(4-シアナトフェニル)-2,2-ジメチルペンタン、4,4-ビス(4-シアナトフェニル)-3-メチルヘプタン、3,3-ビス(4-シアナトフェニル)-2-メチルヘプタン、3,3-ビス(4-シアナトフェニル)-2,2-ジメチルヘキサン、3,3-ビス(4-シアナトフェニル)-2,4-ジメチルヘキサン、3,3-ビス(4-シアナトフェニル)-2,2,4-トリメチルペンタン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-シアナトフェニル)フェニルメタン、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)-1-フェニルエタン、ビス(4-シアナトフェニル)ビフェニルメタン、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)シクロヘキサン、2,2-ビス(4-シアナト-3-イソプロピルフェニル)プロパン、1,1-ビス(3-シクロヘキシル-4-シアナトフェニル)シクロヘキサン、ビス(4-シアナトフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4-シアナトフェニル)-2,2-ジクロロエチレン、1,3-ビス[2-(4-シアナトフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、1,4-ビス[2-(4-シアナトフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、4-[ビス(4-シアナトフェニル)メチル]ビフェニル、4,4-ジシアナトベンゾフェノン、1,3-ビス(4-シアナトフェニル)-2-プロペン-1-オン、ビス(4-シアナトフェニル)エーテル、ビス(4-シアナトフェニル)スルフィド、ビス(4-シアナトフェニル)スルホン、4-シアナト安息香酸-4-シアナトフェニルエステル(4-シアナトフェニル-4-シアナトベンゾエート)、ビス-(4-シアナトフェニル)カーボネート、1,3-ビス(4-シアナトフェニル)アダマンタン、1,3-ビス(4-シアナトフェニル)-5,7-ジメチルアダマンタン、3,3-ビス(4-シアナトフェニル)イソベンゾフラン-1(3H)-オン(フェノールフタレインのシアネート)、3,3-ビス(4-シアナト-3-メチルフェニル)イソベンゾフラン-1(3H)-オン(o-クレゾールフタレインのシアネート)、9,9’-ビス(4-シアナトフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-シアナト-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(2-シアナト-5-ビフェニルイル)フルオレン、トリス(4-シアナトフェニル)メタン、1,1,1-トリス(4-シアナトフェニル)エタン、1,1,3-トリス(4-シアナトフェニル)プロパン、α,α,α’-トリス(4-シアナトフェニル)-1-エチル-4-イソプロピルベンゼン、1,1,2,2-テトラキス(4-シアナトフェニル)エタン、テトラキス(4-シアナトフェニル)メタン、2,4,6-トリス(N-メチル-4-シアナトアニリノ)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(N-メチル-4-シアナトアニリノ)-6-(N-メチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、ビス(N-4-シアナト-2-メチルフェニル)-4,4’-オキシジフタルイミド、ビス(N-3-シアナト-4-メチルフェニル)-4,4’-オキシジフタルイミド、ビス(N-4-シアナトフェニル)-4,4’-オキシジフタルイミド、ビス(N-4-シアナト-2-メチルフェニル)-4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタルイミド、トリス(3,5-ジメチル-4-シアナトベンジル)イソシアヌレート、2-フェニル-3,3-ビス(4-シアナトフェニル)フタルイミジン、2-(4-メチルフェニル)-3,3-ビス(4-シアナトフェニル)フタルイミジン、2-フェニル-3,3-ビス(4-シアナト-3-メチルフェニル)フタルイミジン、1-メチル-3,3-ビス(4-シアナトフェニル)インドリン-2-オン、及び、2-フェニル-3,3-ビス(4-シアナトフェニル)インドリン-2-オンが挙げられる。
【0041】
上記(B)成分のシアン酸エステル化合物の含有量は、所望する特性に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、曲げ強さ、誘電特性、耐熱性、熱膨張率及び熱伝導率の物性バランスをより向上させる観点から、樹脂組成物中の固形分100質量部に対し、1~99質量部が好ましく、より好ましくは10~80質量部であり、更に好ましくは25~70質量部である。
【0042】
本発明の硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、さらに(C)成分として(A)成分以外のマレイミド化合物や、(D)成分として硬化触媒を含んでもよい。
【0043】
上記(C)成分のマレイミド化合物としては、一般にビスマレイミド樹脂として流通している分子内に2個以上のマレイミド結合を有する化合物が挙げられる。例えばビスマレイミドとアルデヒド化合物との共縮合物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。上記ビスマレイミドとしては、例えば4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’-エチレンビスマレイミド、N,N’-ヘキサメチレンビスマレイミド、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、N,N’-p-フェニレンビスマレイミド、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、N,N’-p,p’-ジフェニルジメチルシリルビスマレイミド、N,N’-4,4’-ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’-メチレンビス(3-クロロ-p-フェニレン)ビスマレイミド、N,N’-4,4’-ジフェニルスルホンビスマレイミド、N,N’-4,4’-ジシクロヘキシルメタンビスマレイミド、N,N’-ジメチレンシクロヘキサンビスマレイミド、N,N’-m-キシレンビスマレイミド、N,N’-4,4’-ジフェニルシクロヘキサンビスマレイミド、N-フェニルマレイミド等が挙げられる。
上記アルデヒド化合物としては、例えばホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヒドロキシフェニルアルデヒド等が挙げられる。
【0044】
上記(D)成分の硬化触媒としては、例えば2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物;トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、α-メチルベンジルジメチルアミン、1,8-ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン-7等の第3級アミン化合物;トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p-メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリフェニルホスフィン・トリフェニルボレート、テトラフェニルホスフィン・テトラフェニルボレート、トリブチルヘキサデシルホスホニウムブロマイド、トリス(ジメトキシフェニル)ホスフィン等の有機リン化合物;トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p-メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリス(ジメトキシフェニル)ホスフィン等の有機リン化合物とハロゲン化水素又はハロゲン化アルキル等との反応によって得られるホスホニウム塩;アルミニウムやジルコニウム等の有機金属化合物;等の他、異環型アミン化合物、ホウ素錯化合物、有機アンモニウム塩、有機スルホニウム塩、有機過酸化物が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。この中でも硬化がより一層促進される観点から、テトラフェニルホスホニウム・テトラ-p-トリルボレートが好ましい。
【0045】
上記(D)成分の硬化触媒の含有量は、所望の硬化速度、硬化物性、組成物の適切な可使時間を満たす限りはその配合量に制約はないが、一般的には樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、0.1~5質量部であることが好ましい。
【0046】
本発明の硬化性樹脂組成物は、必要に応じて有機溶剤を含むことができる。この場合、前記した各種樹脂成分の少なくとも一部、好ましくは全部が有機溶剤に溶解又は相溶した態様(溶液又はワニス)として用いることができる。有機溶剤は1種単独で又は2種以上を適宜混合して用いることができる。
【0047】
有機溶剤としては、前記した各種樹脂成分の少なくとも一部、好ましくは全部を溶解又は相溶可能なものであれば公知のものを適宜用いることができ、その種類は特に限定されない。有機溶剤の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のセロソルブ系溶媒;乳酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステル系溶媒;N-メチルピロリジノン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド類等の極性溶剤類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等の無極性溶剤が挙げられる。この中でも、溶解力観点からはN-メチルピロリジノン、乾燥性とのバランスからはメチルエチルケトン等が好ましい。
【0048】
[硬化性樹脂組成物の製造方法]
本発明の硬化性樹脂組成物は、常法に従って適宜調製することができ、前記の(A)イミド結合及び重合性不飽和結合含有環状オルガノシロキサン、(B)シアン酸エステル化合物、及び前記したその他の成分を均一に含む硬化性樹脂組成物が得られる方法であれば、その調製方法は特に限定されない。例えば、前記の(A)成分、(B)成分及びその他の成分を有機溶剤に順次配合し、十分に撹拌することで本実施形態の硬化性樹脂組成物を容易に調製することができる。
【0049】
本発明の硬化性樹脂組成物を加熱硬化させるための設定温度については、所望の硬化物の物性が発現し得る限り特に限定されないが、有機溶剤の揮発性や生産効率の観点から、好ましくは100~250℃であり、より好ましくは150~200℃である。硬化時間については適宜設定することができる。
【0050】
本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物を作成する方法としては、特に制限はなく公知の作成方法を採用することができる。例えば、金型を用いた方法や、予め離型層を備えたフィルムの上に塗工、硬化させて得るキャスティング法によるフィルム成膜方法などが挙げられるが、これらに限らない。
【0051】
上記金型の材質は、硬化後に得られる硬化物との離型性が確保されていれば特に限定されない。例えば、金属、ガラス、プラスチック、シリコーン等のいずれであってもよいが、テフロン(登録商標)加工された金型を使用することが好ましい。このようなテフロン(登録商標)加工された金型は優れた離型性を有し、この金型を使用することにより本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物を取り出す際に硬化物破損の発生を抑制することができる。
【0052】
本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物は、特に、電子部品の封止材、プリプレグ、金属箔張積層板、プリント配線板、及び半導体パッケージの構成材料として好適に用いることができる。例えば、本発明の硬化性樹脂組成物を基材に含浸又は塗布し乾燥することでプリプレグを得ることができる。ここで、乾燥条件は、例えば20~150の温度で1~90分間とすることができる。
また、基材として剥離可能なプラスチックフィルムを用い、本発明の硬化性樹脂組成物を該プラスチックフィルムに塗布し乾燥することにより、ビルドアップ用フィルム又はドライフィルムソルダーレジストを得ることができる。
更に、本発明の硬化性樹脂組成物は、有機溶剤を乾燥しただけの未硬化の状態で使用することもでき、または、必要に応じて半硬化(Bステージ化)の状態にして使用することもできる。
【実施例】
【0053】
以下、合成例、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、下記の例において、特に断らない限り、「部」および「%」はそれぞれ「質量部」および「質量%」を意味する。また、粘度は、回転粘度計を用いた25℃の値であり、動粘度は、キャノン・フェンスケ型粘度計を用いた25℃の値である。GPC測定およびプロトン核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトル測定の条件は以下のとおりである。
【0054】
(1)GPC測定条件
装置:東ソー(株)製HLC-8320GPC
展開溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流量:0.6mL/min
検出器:示差屈折率検出器(RI)
カラム:TSK Guardcolumn SuperH-H
TSKgel SuperHM-N(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH2500(6.0mmI.D.×15cm×1)
(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:50μL(濃度2.0質量%のTHF溶液)
標準:単分散ポリスチレン
【0055】
(2)プロトン核磁気共鳴スペクトル(1H-NMR)測定条件
装置:BURKER社製AVANCE III400
溶媒:CDCl3
内部標準:テトラメチルシラン(TMS)
【0056】
[1]一級アミノ基含有環状オルガノシロキサンの合成
[合成例1]
撹拌装置、冷却管、滴下ロート及び温度計を備えた2Lの3つ口フラスコにアリルアミン240g(4.2モル)を加え、オイルバスを用いて80℃に加熱した。これに白金錯体(Pt(0)の1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体)のトルエン溶液を、滴下する環状オルガノハイドロジェンシロキサンのSi-H基1モルに対し、白金錯体が0.0001モルに相当する量を納め撹拌混合した。この中に滴下する環状オルガノハイドロジェンシロキサンとして、1,3,5,7-テトラメチル-1,3-ジプロピルシクロテトラシロキサン及び1,3,5,7-テトラメチル-1,5-ジプロピルシクロテトラシロキサンの混合物650g(2.01モル)を滴下した。滴下反応により反応液温度が上昇し、空冷ないし水冷にて内温が80~90℃の範囲で反応が進むように温度管理を行った。滴下終了後、80℃、4時間で加熱撹拌し、ガスクロマトグラフィーで反応原料の消失と、目的とするアミノ基含有の環状オルガノシロキサンの生成を確認した。その後、室温まで冷却し、未反応残のアリルアミン、白金触媒由来のトルエンを減圧留去して、黄色透明な液体(A1)を得た。A1の25℃における動粘度は33mm2/sであり、一級アミノ基の官能基量は253g/モルであった。
1H-NMR及びGPC分析により、上記A1は、下記式(6)で表される化合物と下記式(7)で示される化合物との混合物あることが確認された。
【0057】
【0058】
[合成例2]
上記合成例1において、1,3,5,7-テトラメチル-1,3-ジプロピルシクロテトラシロキサン及び1,3,5,7-テトラメチル-1,5-ジプロピルシクロテトラシロキサンの混合物を、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン(1.0モル)に変更した以外は同様の操作を行い、褐色透明な液体(A2)を得た。A2の25℃における動粘度は41mm2/sであり、一級アミノ基の官能基量は125g/モルであった。
1H-NMR及びGPC分析により、上記A2は、下記式(8)で表される化合物であることが確認された。
【0059】
【0060】
[2]イミド結合及び重合性不飽和結合含有環状オルガノシロキサン化合物の合成
[実施例1]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、無水マレイン酸98.1質量部(1モル)、テトラヒドロフラン300質量部、重合禁止剤のビス-t-ブチルフェノール0.4質量部を納め撹拌混合した。各成分の均一溶解後、上記アミノ基含有環状オルガノシロキサン(A1)253質量部(アミノ基として1モル)を滴下した。滴下反応により発熱が生じ、水浴を用いて反応液の温度が50℃を超えないように温度管理した。滴下終了後、室温で1時間攪拌を継続し、GPCにより反応原料の消失を確認した。続いて、この中に無水酢酸150質量部(1.5モル)を投入、攪拌し、その後にトリエチルアミン150質量部(1.5モル)を滴下した。滴下に伴い、僅かな発熱と、外観が橙色から濃赤色に変化した。滴下終了後、内温50℃で3時間反応を行い、GPCにて中間に生成したアミック酸構造成分に由来するピークの消失と、新たにイミド結合含有の環状オルガノシロキサンに相当するピークとを確認した。最後に未反応残の酸無水物、アミン、テトラヒドロフランを減圧留去して黒色油状化合物(M1)を得た。この化合物の25℃における粘度は、10,320mPa・sであった。
1H-NMR及びGPC分析により、M1は下記式(9)で表される化合物と下記式(10)で表される化合物との混合物であることが確認された。
【0061】
【0062】
[実施例2]
上記実施例1において、A1をA2(アミノ基として1モル)に変更した以外は同様の操作を行い、黒色油状化合物(M2)を得た。この化合物の25℃における粘度は105,000mPa・sであった。1H-NMR及びGPC分析により、M2は下記式(11)で表される化合物であることが確認された。
【0063】
【0064】
[実施例3]
上記実施例1において、無水マレイン酸を、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(1モル)に変更した以外は同様の操作を行い、黒色油状化合物(M3)を得た。この化合物の25℃における粘度は52,000mPa・sであった。1H-NMR及びGPC分析により、M3は下記式(12)で表される化合物と下記式(13)で表される化合物との混合物であることが確認された。
【0065】
【0066】
[比較合成例1]
上記実施例1において、A1を一級アミノ基量270g/モルの両末端アミノプロピルジメチルシリル構造のポリジメチルシロキサン(アミノ基として1モル)に変更した以外は同様の操作を行い、黒色油状化合物(MR-1)を得た。MR-1の25℃における粘度は6,320mPa・sであった。1H-NMR及びGPC分析により、MR-1は下記式(14)で表されるポリシロキサンの混合物であることが確認された。
【0067】
【0068】
[比較合成例2]
上記実施例1において、A1を一級アミノ基量430g/モルの両末端アミノプロピルジメチルシリル構造のポリジメチルシロキサン(アミノ基として1モル)に変更した以外は同様の操作を行い、黒色油状化合物(MR-2)を得た。MR-2の25℃における粘度は2,100mPa・sであった。1H-NMR及びGPC分析により、MR-2は下記式(15)で表されるポリシロキサンの混合物であることが確認された。
【0069】
【0070】
[比較合成例3]
上記実施例1において、A1を一級アミノ基量780g/モルの両末端アミノプロピルジメチルシリル構造のポリジメチルシロキサン(アミノ基として1モル)に変更した以外は同様の操作を行い、黒色油状化合物(MR-3)を得た。MR-3の25℃における粘度は1,000mPa・sであった。1H-NMR及びGPC分析により、MR-3は下記式(16)で表されるポリシロキサンの混合物であることが確認された。
【0071】
【0072】
[比較合成例4]
上記実施例1において、A1を一級アミノ基量2,130g/モルの両末端アミノプロピルジメチルシリル構造のポリジメチルシロキサン(アミノ基として1モル)に変更した以外は同様の操作を行い、黒色油状化合物(MR-4)を得た。MR-4の25℃における粘度は150mPa・sであった。1H-NMR及びGPC分析により、MR-4は下記式(17)で表されるポリシロキサンの混合物であることが確認された。
【0073】
【0074】
[3]硬化性樹脂組成物の製造
[実施例4~5、比較例1~7]
下記の表1に示すように、イミド結合とシアネート基とのモル比が1:3であり、且つ、イミド結合と硬化触媒とのモル比が1:0.03である配合比(質量比)にて各成分を混合し、各成分の合計が組成物全体の35質量%となるように、N-メチルピロリジノン(NMP)で希釈して、熱硬化樹脂性組成物を調製した。
【0075】
【0076】
表1中の略号は以下のとおりである。
「MR-0」:国際公開第2019/39135号に記載の「合成例2」に準拠し合成した、下記式で示されるマレイミド結合を2個有するジシロキサン。
「BMI-70」:下記式で表されるマレイミド結合を2個有する芳香族化合物(ケイ・アイ化成(株)製、商品名「BMI-70」)
「LECY」:下記式で表される2,2-ビス(4-シアナトフェニル)エタン(ロンザジャパン社製、商品名「Primaset(登録商標)LECy」)
「硬化触媒」:テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート(北興化学工業(株)製、「TPP-K」)
【0077】
【0078】
表1の熱硬化性樹脂組成物をテフロン(登録商標)加工された金型(深さ0.3mm×長さ15cm×幅10cm)に流し込んだ後、200℃に熱したホットプレート上に金型を静置し、200℃90分間かけて有機溶剤のN-メチルピロリジノン(NMP)を揮発させた。その後、該金型を150℃の乾燥機にて60分間加熱し、更に200℃の乾燥機で60分間加熱して硬化を完結させ、シート成形物を得た。
【0079】
上記実施例4~8及び比較例1~7で得られたシート成形物に関して下記の評価を行った。その結果を表2に示す。
(1)外観
上記にて得られたシート成形物(試験片)を目視で観察し、異常の有無を判定した。
○:異常なし
×:タック、斑、クラック等の異常あり
(2)成形性
金型から取り出す際に自立性のあるシートとなるか観察し、以下の通り判断した。
〇:異常なくシートとして取り出すことが可能である。
×:脆いまたは柔らかく、シートとして取り出すことが不可能である。
(3)耐折り曲げ性
上記にて得られた試験片を1cm幅に裁断し、長さ10cm、幅1cm、厚みが0.3mmの短冊状とし両短辺部位をピンセットで摘み、90°に折り曲げた際のシートの状態を観察し、以下の通り判断した。
〇:破断なく折り曲げ可能である。
△:一部亀裂が入るが破断せず。
×:完全に破断し、折り曲げ不可能である。
(4)貯蔵弾性率、Tanδ(max)
上記にて得られた試験片を1cm幅に裁断し、長さ10cm、幅1cm、厚みが0.3mmの短冊状とし、(株)日立ハイテクサイエンス製の粘弾性測定装置DMA7100を用いて、空気雰囲気にて-50℃から300℃まで10℃/minの昇温速度で昇温させていき、引張測定のモードにて測定した。
(5)デュロメータ硬度
JIS K7215に準拠し、TECLOCK社製硬度計タイプD圧子を用いて測定した。
【0080】
【0081】
表2に示されるように、実施例4~8で得られたシートは、成形性、耐折り曲げ性、貯蔵弾性率及びデュロメータ硬度に優れるものであった。
【0082】
一方、比較例1の樹脂組成物には、シロキサン系マレイミドを含まず、シートの架橋密度が高いことから得られた試験片の耐折り曲げ性が不足した。比較例2の樹脂組成物は、シロキサン構造がジシロキサンであり、期待するような耐折り曲げ性向上には寄与せず、その結果として比較例1と同水準の耐折り曲げ性に留まった。比較例3の樹脂組成物は、直鎖状のジメチルポリシロキサン構造に由来する耐折り曲げ性は発現したものの、硬度の低下が生じてしまった。その比較例3に関連して比較例7の樹脂組成物は芳香族マレイミドを併用するものであるが、成形時に有機溶剤の揮発に伴い、シロキサン成分と芳香族成分との相溶性不足に起因する試験片の不均一性が確認され、その結果、外観及び耐折り曲げ性の悪化を伴うものであった。比較例4~6の樹脂組成物では、配合したポリシロキサン成分とシアネート成分との相溶性が悪く、均一なシート成形物を得るに至らず、硬化した成分もタックの残存する品質であった。
【0083】
表2に示されるように、本発明のイミド結合及び重合性不飽和結合含有環状オルガノシロキサンを用いた硬化物は、所望の硬度及び優れた耐折り曲げ性を両立するものであり、電子部品の封止材、プリプレグ、金属箔張積層板、プリント配線板、及び半導体パッケージの構成材料等に好適に利用可能である。
【0084】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態はあくまでも例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含されるものである。