(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】室温硬化型シリコーンゴム組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 83/07 20060101AFI20250304BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20250304BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
(21)【出願番号】P 2022022608
(22)【出願日】2022-02-17
【審査請求日】2024-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小材 利之
(72)【発明者】
【氏名】菅原 秀樹
【審査官】大塚 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-001257(JP,A)
【文献】特開2020-070402(JP,A)
【文献】特開2020-189908(JP,A)
【文献】特開2014-019798(JP,A)
【文献】特開2022-020215(JP,A)
【文献】特開2021-161362(JP,A)
【文献】特開2014-051606(JP,A)
【文献】特開2016-124967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/07
C08L 83/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記平均式(1)で表されるオルガノポリシロキサン、
[Vi
(3-a)R
1
aSiO
1/2]
2[R
1
2SiO
2/2]
m (1)
(式中、R
1は、それぞれ独立して、アルケニル基を含まない非置換または置換の1価炭化水素基を表し、Viは、ビニル基を表し、mは、13~400の数を表し、aは、0~2の数を表す。)
(B)構成単位比が下記式(2)で表され、23℃で固体のオルガノポリシロキサン、
[R
1
3SiO
1/2]
p[Vi
(3-b)R
1
bSiO
1/2]
q[SiO
4/2]
r (2)
(式中、R
1およびViは、前記と同じ意味を表し、p、qおよびrは、それぞれp>0、q>0、r>0、かつ、p+q+r=1を満たす数を表し、bは、0~2の数を表す。)
(C)構成単位比が下記式(3)で表され、23℃で液体のオルガノポリシロキサン、
[Vi
(3-c)R
1
cSiO
1/2]
s[R
1
SiO
3/2]
t (3)
(式中、R
1およびViは、前記と同じ意味を表し、sおよびtは、それぞれs>0、t>0、かつ、s+t=1を満たす数を表し、cは、0~2の数を表す。)
(D)下記平均式(4)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
[R
2R
1
2SiO
1/2]
2[HR
1SiO
2/2]
u[R
1
2SiO
2/2]
v (4)
(式中、R
1は、前記と同じ意味を表し、R
2は、水素原子またはメチル基を表し、uおよびvは、それぞれu≧2、v≧2、かつ、10≦u+v≦100を満たす数を表す。)
および
(E)ヒドロシリル化反応触媒
を含有し、
(A)、(B)および(C)成分中のビニル基の合計個数に対する(D)成分中のSiH基の個数が0.7~3.0倍であり、かつ(E)成分のヒドロシリル化反応触媒に由来する金属原子の含有量が、(A)~(D)成分の合計量に対して20質量ppm以下である室温硬化型シリコーンゴム組成物。
【請求項2】
前記式(1)におけるR
1のうち1~10モル%がフェニル基である請求項1記載の室温硬化型シリコーンゴム組成物。
【請求項3】
前記式(4)におけるR
2が、水素原子であり、u、vが、それぞれu≧2、v≧2、10≦u+v≦50、かつ、0.05≦u/(u+v)≦0.5を満たす数である請求項1または2記載の室温硬化型シリコーンゴム組成物。
【請求項4】
(A)、(B)および(C)成分中のビニル基の合計個数に対する(D)成分中のSiH基の個数が、1.0~2.5倍である請求項1~3のいずれか1項記載の室温硬化型シリコーンゴム組成物。
【請求項5】
23℃における粘度が1,000mPa・s以下である請求項1~4のいずれか1項記載の室温硬化型シリコーンゴム組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項記載の室温硬化型シリコーンゴム組成物を硬化させてなるシリコーンゴム。
【請求項7】
23℃、24時間の条件で硬化させた硬化物のデュロメータA硬度と、23℃、72時間の条件で硬化させた硬化物のデュロメータA硬度との差が1以下である請求項6記載のシリコーンゴム。
【請求項8】
厚さ2mmにおける波長400nm光の透過率が、90%以上である請求項6または7記載のシリコーンゴム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室温で硬化し、高透明および高強度な硬化物を与える付加硬化型シリコーンゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
高透明なシリコーンゴム材料は、光デバイス材料、3Dプリンター用材料、ナノインプリント材料等、多岐にわたる材料に使用されている。
また、シリコーン材料は、耐久性に優れることから、ドライフラワーや立体模型などをシリコーンゲルやシリコーンゴム内に封入した観賞用の成型物が提案されている(特許文献1,2)。このようなポッティングに用いられるシリコーンゴムは、硬化前は液状であり、硬化剤と混合することにより、常温または加熱下で簡単に硬化し、高透明なゴム材料となる。
【0003】
しかし、シリコーンゴム材料は、硬化剤との混合時やポッティング時に発生した巻きこみ泡が硬化後に残ったり、硬化後の収縮によりシリコーンゴムと容器または封入物との界面に剥離が生じたり、長期間経過後に金属触媒に起因する着色により材料が黄変したりする等の問題がある。
これらの問題に対し、黄変や泡の巻きこみが低減され、硬さ変化の小さい硬化物を与える室温硬化型シリコーンゴム組成物が提案されている(特許文献3)が、硬化物が脆いため枠から脱型する際にひび割れが生じ易いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-92002号公報
【文献】特開2000-336269号公報
【文献】特開2021-1257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、黄変や泡の巻きこみが大きく低減され、高透明、かつ高強度な硬化物を与える室温硬化型シリコーンゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、下記の特定の付加硬化型シリコーンゴム組成物が、混合時における泡の巻きこみの発生を低減し、高透明かつ高強度なシリコーンゴムを与えることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、
1. (A)下記平均式(1)で表されるオルガノポリシロキサン、
[Vi(3-a)R1
aSiO1/2]2[R1
2SiO2/2]m (1)
(式中、R1は、それぞれ独立して、アルケニル基を含まない非置換または置換の1価炭化水素基を表し、Viは、ビニル基を表し、mは、13~400の数を表し、aは、0~2の数を表す。)
(B)構成単位比が下記式(2)で表され、23℃で固体のオルガノポリシロキサン、
[R1
3SiO1/2]p[Vi(3-b)R1
bSiO1/2]q[SiO4/2]r (2)
(式中、R1およびViは、前記と同じ意味を表し、p、qおよびrは、それぞれp>0、q>0、r>0、かつ、p+q+r=1を満たす数を表し、bは、0~2の数を表す。)
(C)構成単位比が下記式(3)で表され、23℃で液体のオルガノポリシロキサン、
[Vi(3-c)R1
cSiO1/2]s[R
1
SiO3/2]t (3)
(式中、R1およびViは、前記と同じ意味を表し、sおよびtは、それぞれs>0、t>0、かつ、s+t=1を満たす数を表し、cは、0~2の数を表す。)
(D)下記平均式(4)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
[R2R1
2SiO1/2]2[HR1SiO2/2]u[R1
2SiO2/2]v (4)
(式中、R1は、前記と同じ意味を表し、R2は、水素原子またはメチル基を表し、uおよびvは、それぞれu≧2、v≧2、かつ、10≦u+v≦100を満たす数を表す。)
および
(E)ヒドロシリル化反応触媒
を含有し、
(A)、(B)および(C)成分中のビニル基の合計個数に対する(D)成分中のSiH基の個数が0.7~3.0倍であり、かつ(E)成分のヒドロシリル化反応触媒に由来する金属原子の含有量が、(A)~(D)成分の合計量に対して20質量ppm以下である室温硬化型シリコーンゴム組成物、
2. 前記式(1)におけるR1のうち1~10モル%がフェニル基である1の室温硬化型シリコーンゴム組成物、
3. 前記式(4)におけるR2が、水素原子であり、u、vが、それぞれu≧2、v≧2、10≦u+v≦50、かつ、0.05≦u/(u+v)≦0.5を満たす数である1または2の室温硬化型シリコーンゴム組成物、
4. (A)、(B)および(C)成分中のビニル基の合計個数に対する(D)成分中のSiH基の個数が、1.0~2.5倍である1~3のいずれかの室温硬化型シリコーンゴム組成物、
5. 23℃における粘度が1,000mPa・s以下である1~4のいずれかの室温硬化型シリコーンゴム組成物、
6. 1~5のいずれかの室温硬化型シリコーンゴム組成物を硬化させてなるシリコーンゴム、
7. 23℃、24時間の条件で硬化させた硬化物のデュロメータA硬度と、23℃、72時間の条件で硬化させた硬化物のデュロメータA硬度との差が1以下である6のシリコーンゴム、
8. 厚さ2mmにおける波長400nm光の透過率が、90%以上である6または7のシリコーンゴム
を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の室温硬化型シリコーンゴム組成物は、泡抜け性に優れ、高透明、高強度かつ硬さ変化の小さいシリコーンゴムを与えるため、ハーバリウム等の標本、立体模型、装飾品等の封止用途に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の室温硬化型シリコーンゴム組成物は、下記(A)~(E)成分を含有する。
(A)分子鎖両末端ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン
(B)23℃において固体のビニル基含有分岐状オルガノポリシロキサン
(C)23℃において液体のビニル基含有分岐状オルガノポリシロキサン
(D)直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン
(E)ヒドロシリル化反応触媒
【0010】
[1](A)成分
(A)成分は、下記平均式(1)で表される、分子鎖両末端にビニル基を有する直鎖状オルガノポリシロキサンである。
[Vi(3-a)R1
aSiO1/2]2[R1
2SiO2/2]m (1)
【0011】
平均式(1)において、R1は、それぞれ独立して、アルケニル基を含まない非置換または置換の1価炭化水素基を表し、Viは、ビニル基を表す(以下同じ)。
R1としては、アルケニル基を有しないものであれば特に限定はなく、直鎖、分岐、環状のいずれでもよいが、炭素原子数1~20の1価炭化水素基が好ましく、炭素原子数1~10の1価炭化水素基がより好ましく、炭素原子数1~5の1価炭化水素基がより一層好ましい。
その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、n-ヘキシル基等の直鎖または分岐のアルキル基;シクロヘキシル基等の環状アルキル基;フェニル、トリル基等のアリール基;ベンジル、フェニルエチル基等のアラルキル基などが挙げられる。
また、これらの1価炭化水素基の水素原子の一部または全部が、F、Cl、Br等のハロゲン原子、シアノ基等で置換されていてもよく、そのような基の具体例としては、3,3,3-トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換炭化水素基;2-シアノエチル基等のシアノ置換炭化水素基等が挙げられる。
これらの中でもメチル基、フェニル基が好ましく、R1のうち1~10モル%がフェニル基であることがより好ましい。
【0012】
また、平均式(1)において、aは、0~2の数である。
mは、13~400の数であり、好ましくは30~350の数であり、より好ましくは100~300の数である。mが13より小さいと硬化時に揮発してしまい、400より大きいと組成物の混合時の泡抜けが悪くなり、また、作業性が悪化する。
【0013】
(A)成分は、組成物を混合する際に生じる泡が抜けやすい点、および液状の組成物を与え、硬化してゴム状弾性体になるという点から、23℃での粘度が10~2,000mPa・sが好ましく、20~1,500mPa・sがより好ましい。なお、本発明における粘度は、回転粘度計を用いた測定値である。
【0014】
このような(A)成分としては、例えば、下記平均式で示されるオルガノポリシロキサン等が挙げられる。(A)成分は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0015】
【化1】
(式中、括弧内のシロキサン単位の配列順は任意である。)
【0016】
[2](B)成分
(B)成分は、下記式(2)で表される構成単位比を有し、23℃において固体のビニル基含有分岐状オルガノポリシロキサンであり、ヒドロシリル化に伴う架橋により組成物に補強効果をもたらす成分である。
[R1
3SiO1/2]p[Vi(3-b)R1
bSiO1/2]q[SiO4/2]r (2)
【0017】
式(2)において、R1は上記と同じ意味を表し、具体的には、上記平均式(1)において例示されたアルケニル基以外の非置換または置換の1価炭化水素基と同様のものが挙げられ、中でもメチル基が好ましい。
p、qおよびrは、それぞれp>0、q>0、r>0、かつ、p+q+r=1を満たす数であるが、得られる硬化物の力学特性の点から、(B)成分のオルガノポリシロキサンにおいて、Q単位に対するM単位の比率(p+q)/rは、0.3~2.0が好ましく、0.4~1.0がより好ましい。
bは、0~2の数である。
【0018】
(B)成分の分子量は、特に限定されるものではないが、その他の成分に対する相溶性および得られる硬化物の力学特性の点から、1,000~50,000が好ましく、2,000~10,000がより好ましい。なお、分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)における標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0019】
(B)成分の具体例としては、下記式で表されるオルガノポリシロキサン等が挙げられる。
(Me3SiO1/2)0.4(ViMe2SiO1/2)0.05(SiO4/2)0.55
(Me3SiO1/2)0.1(Vi3SiO1/2)0.2(SiO4/2)0.7
(Me3SiO1/2)0.35(ViMe2SiO1/2)0.2(Vi3SiO1/2)0.1(SiO4/2)0.35
【0020】
(B)成分の配合量は、組成物の粘度および得られる硬化物の力学特性の点から、(A)成分100質量部に対して2~20質量部が好ましく、3~7質量部がより好ましい。 なお、(B)成分は、上記(A)成分に溶解させて用いてもよい。
また、(B)成分は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0021】
[3](C)成分
(C)成分は、下記式(3)で表される構成単位比を有し、23℃において液体のビニル基含有分岐状オルガノポリシロキサンであり、ケイ素原子に結合したビニル基を有するモノシロキシ単位とトリシロキシ単位とからなり、ヒドロシリル化による架橋を促進させる成分である。
[Vi(3-c)R1
cSiO1/2]s[R
1
SiO3/2]t (3)
【0022】
式(3)において、R1は上記と同じ意味を表し、具体的には、上記平均式(1)において例示されたアルケニル基以外の非置換または置換の1価炭化水素基と同様のものが挙げられ、中でもメチル基が好ましい。
s、tは、それぞれs>0、t>0、かつ、s+t=1を満たす数であり、cは、0~2の数である。本成分に流動性を持たせ、揮発性を抑える点から、0.4<s<0.7が好ましく、0.45<s<0.6がより好ましい。
【0023】
(C)成分の動粘度は、特に限定されるものではないが、その他の成分に対する相溶性および得られる硬化物の力学特性の点から、1~500mm2/sであることが好ましく、10~100mm2/sであることがより好ましい。なお、動粘度はキャノン・フェンスケ粘度計により測定した23℃における値である。
【0024】
(C)成分の具体例としては、下記式で表される構成単位比を有するオルガノポリシロキサン等が挙げられる。
(ViMe2SiO1/2)0.5(R
1
SiO3/2)0.5
(ViMe2SiO1/2)0.55(R
1
SiO3/2)0.45
(ViMe2SiO1/2)0.6(R
1
SiO3/2)0.4
【0025】
(C)成分の配合量は、組成物の粘度および得られる硬化物の力学特性の点から、(A)成分100質量部に対して2~20質量部が好ましく、3~10質量部がより好ましい。
なお(C)成分は1種単独で用いても、2種以上を併用してよい。
【0026】
[4](D)成分
(D)成分は、下記平均式(4)で表される、ケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)を有する直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、(A)~(C)成分中のビニル基と本成分中のSiH基とがヒドロシリル化反応することにより架橋剤として作用する。
[R2R1
2SiO1/2]2[HR1SiO2/2]u[R1
2SiO2/2]v (4)
【0027】
平均式(4)において、R1は上記と同じ意味を表し、具体的には、上記平均式(1)において例示されたアルケニル基以外の非置換または置換の1価炭化水素基と同様のものが挙げられ、中でもメチル基が好ましい。
R2は、水素原子またはメチル基であり、中でも水素原子が好ましい。
【0028】
u、vは、それぞれu≧2、v≧2、かつ、10≦u+v≦100を満たす数である。
uは、u≧5が好ましく、u≧10がより好ましく、vは、v≦70が好ましく、よりv≦50がより好ましい。また、0.05≦u/(u+v)≦0.5を満たす数が好ましい。
u+vが10未満であると、硬化時に揮発してしまい、100を超えると、組成物の粘度が高くなることにより泡が抜けにくくなり、また、作業性が悪化する。
【0029】
(D)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの具体例としては、下記平均式で表される分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン等が挙げられる。
なお、(D)成分は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0030】
【化2】
(式中、シロキサン単位の配列は任意である。)
【0031】
(D)成分の配合量は、(A)、(B)および(C)成分中のビニル基の合計個数に対する(D)成分中のSiH基の個数が0.7~3.0倍となる量であり、好ましくは1.0~2.5倍となる量である。SiH基の個数が0.7倍未満の場合は、架橋が不十分なものとなり、3.0倍を超える場合、硬化の際に水素ガスの発生による発泡が起こりやすく、硬化物内部の空隙の発生により透明性やゴム強度が低下する。
【0032】
[5](E)成分
(E)成分は、(A)~(C)成分中のビニル基と(D)成分中のSiH基とのヒドロシリル化反応を促進するためのヒドロシリル化反応触媒である。
(E)成分のヒドロシリル化反応触媒としては、白金族金属触媒が好ましく、その具体例としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と1価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテートなどの白金系触媒、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム等のパラジウム系触媒、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等のロジウム系触媒などが挙げられる。
【0033】
(E)成分の配合量は、(A)~(D)成分の合計に対して、本成分中の白金族金属原子の質量換算で20ppm以下であり、15ppm以下が好ましい。また、その下限は、1ppm以上が好ましく、3ppm以上がより好ましい。この範囲であれば、付加反応の反応速度が適切なものとなり、触媒由来の金属原子による硬化物の着色を抑制できる。
【0034】
[6](F)成分
本発明の室温硬化型シリコーンゴム組成物には、組成物を調製する際や加熱硬化前に増粘やゲル化を起こさないようにヒドロシリル化反応触媒の反応性を制御する目的で、必要に応じて(F)反応制御剤を添加してもよい。
【0035】
反応制御剤の具体例としては、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、1-エチニルシクロヘキサノール、エチニルメチルデシルカルビノール、3-メチル-3-トリメチルシロキシ-1-ブチン、3-メチル-3-トリメチルシロキシ-1-ペンチン、3,5-ジメチル-3-トリメチルシロキシ-1-ヘキシン、1-エチニル-1-トリメチルシロキシシクロヘキサン、ビス(2,2-ジメチル-3-ブチノキシ)ジメチルシラン、1,3,5-トリメチル-1,3,5-トリビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジビニルジシロキサン等が挙げられ、これらは1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサンが好ましい。
【0036】
(F)成分を用いる場合、その添加量は、(A)~(D)成分の合計100質量部に対して0.001~2質量部が好ましく、0.006~1.5質量部がより好ましい。このような範囲であれば反応制御の効果が十分発揮される。
【0037】
[7]その他の成分
本発明の室温硬化型シリコーンゴム組成物には、上記(A)~(F)成分以外にも、本発明の目的を損なわない限り、以下に例示するその他の成分を配合してもよい。
その他の成分としては、ヒュームドシリカ、結晶性シリカ(石英粉)、沈降性シリカ、これらの表面を疎水化処理したシリカ等の充填剤、酸化鉄、カーボンブラック、導電性亜鉛華、金属粉等の導電剤;酸化チタン、酸化セリウム等の耐熱剤;ジメチルシリコーンオイル等の内部離型剤;接着性付与剤;チクソ性付与剤;着色剤等が挙げられる。
【0038】
本発明の室温硬化型シリコーンゴム組成物は、上記の(A)~(E)成分、必要に応じて用いられる(F)成分、およびその他の成分をニーダー、プラネタリーミキサー等を用いた公知の方法で混合して調製することができる。
本発明の室温硬化型シリコーンゴム組成物は、(A)成分、(E)成分、および必要に応じてその他の成分からなる第一剤と、(A)~(D)成分、(F)成分、および必要に応じてその他の成分からなる第二剤を別々に調製し、使用前に第一剤と第二剤を混合する二剤型の組成物としてもよい。なお、第一剤および第二剤で共通に使用される成分があってもよい。組成物をこのような二剤型とすることによりさらに保存安定性が確保できる。
【0039】
本発明の室温硬化型シリコーンゴム組成物の硬化は、公知の硬化方法および条件を採用することができる。一例としては10~40℃において24時間以上静置することにより硬化させることができる。
【0040】
本発明の室温硬化型シリコーンゴム組成物を23℃、24時間の条件で硬化させた硬化物のデュロメータA硬度と、23℃、72時間の条件で硬化させた硬化物のデュロメータA硬度との差が1以下であることが好ましい。
また、本発明の室温硬化型シリコーンゴム組成物を23℃、24時間の条件で硬化させた硬化物は、厚さ2mmにおける波長400nm光の透過率が90%以上であることが好ましい。
【実施例】
【0041】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0042】
[実施例1-1~1-4、比較例1-1~1-4]
下記成分を表1に示される配合比(質量部)で混合し、シリコーンゴム組成物を調製した。なお、平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)における標準ポリスチレン換算の重量平均分子量であり、粘度はB型回転粘度計で測定した23℃における値であり、動粘度はキャノン・フェンスケ粘度計で測定した23℃における値である。
【0043】
(A)成分:
(A-1)下記平均式で表されるオルガノポリシロキサン(粘度:1,000mPa・s、ビニル価:0.013モル/100g)
【化3】
【0044】
(A-2)下記平均式で表されるオルガノポリシロキサン(粘度:1,500mPa・s、ビニル価:0.02モル/100g)
【化4】
【0045】
(A-3)下記平均式で表されるオルガノポリシロキサン(粘度:1,000mPa・s、ビニル価:0.013モル/100g)
【化5】
【0046】
(A-4:比較成分)下記平均式で表されるオルガノポリシロキサン(粘度:5,000mPa・s、ビニル価:0.006モル/100g)
【化6】
【0047】
(B)成分:
(B-1)下記式で表される構成単位比を有し、23℃において固体のオルガノポリシロキサン(平均分子量:4,000、ビニル価:0.08モル/100g)
(Me3SiO1/2)0.4(ViMe2SiO1/2)0.05(SiO4/2)0.55
【0048】
(C)成分:
(C-1)下記式で表される構成単位比を有するオルガノポリシロキサン(動粘度32mm2/s、ビニル価:0.52モル/100g)
(ViMe2SiO1/2)0.5(MeSiO3/2)0.5
【0049】
(D)成分:
(D-1)下記平均式で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン(SiH基量:0.55モル/100g)
【化7】
(式中、シロキサン単位の配列はランダムまたはブロックである。)
【0050】
(E)成分:
(E-1)塩化白金酸-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(白金濃度1質量%)
【0051】
【表1】
H/Vi:(A)、(B)および(C)成分中のビニル基の合計個数に対する(D)成分中のSiH基の個数の比
【0052】
[実施例2-1~2-4、比較例2-1~2-4]
実施例1-1~1-4および比較例1-1~1-4で調製したシリコーンゴム組成物を用い、下記の各特性を評価した。それらの結果を表2および表3に示す。
[泡抜け性]
内径40mm高さ60mmのガラス瓶に高さが50mmになるまで混合した直後の組成物を流し込み、23℃、10時間の条件で硬化させた。硬化物を目視で観察し、泡が抜けていれば〇、泡が残っていれば×として評価した。
[光透過率]
組成物を厚さ2mmになるよう型に流し込み、23℃、24時間の条件で硬化させたシートについて、波長400nmの光透過率を分光光度計U-3900((株)日立ハイテクサイエンス製)にて測定した。
[引張強さ、切断時伸び]
組成物を2mm厚になるよう型に流し込み、23℃、24時間の条件で硬化させた2号ダンベル試験片について、JIS K 6249:2003に準拠し、引張強さ(MPa)および切断時伸び(%)をそれぞれ測定した。
[硬さ]
組成物を2mm厚になるよう型に流し込み、23℃、24時間の条件で硬化させた硬化物の硬度(デュロメータA)をJIS K 6253-3:2012に準拠して測定した。また、23℃、72時間の条件で硬化させた硬化物の硬度についても同様に測定を行った。
【0053】
【0054】
【0055】
表2および表3に示されるように、実施例1-1~1-4で調製した室温硬化型シリコーンゴム組成物は、泡抜け性や硬化後の物性に優れ、硬さ変化の小さい高透明な硬化物を与えることがわかる。
一方、(A)成分に代えて高粘度(mが400超)のビニル基含有オルガノポリシロキサンを使用した比較例2-1では泡抜け性に劣ることがわかる。
(C)成分を除いた比較例2-2では、泡抜け性および力学特性に劣り、(B)成分を除いた比較例2-3では、光透過性および力学特性に劣ることがわかる。
また、H/Vi値が本発明の範囲を超える比較例2-4の硬化物は、切断時伸びに劣り、硬さ変化が大きいことがわかる。