(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】液晶配向剤、液晶配向膜、及び液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1337 20060101AFI20250304BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20250304BHJP
【FI】
G02F1/1337 525
C08G73/10
(21)【出願番号】P 2022511931
(86)(22)【出願日】2021-03-19
(86)【国際出願番号】 JP2021011521
(87)【国際公開番号】W WO2021200291
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2024-01-10
(31)【優先権主張番号】P 2020060306
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000095
【氏名又は名称】弁理士法人T.S.パートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100082887
【氏名又は名称】小川 利春
(74)【代理人】
【識別番号】100181331
【氏名又は名称】金 鎭文
(74)【代理人】
【識別番号】100183597
【氏名又は名称】比企野 健
(74)【代理人】
【識別番号】100161997
【氏名又は名称】横井 大一郎
(72)【発明者】
【氏名】豊田 美希
(72)【発明者】
【氏名】軍司 里枝
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-175684(JP,A)
【文献】特開2014-199446(JP,A)
【文献】国際公開第2016/047771(WO,A1)
【文献】特開2016-186568(JP,A)
【文献】特開2004-117634(JP,A)
【文献】特表2020-509426(JP,A)
【文献】特開2011-095696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
C08G 73/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1-a)で表される繰り返し単位及び下記式(1-i)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる第1の繰り返し単位(a1)と、
下記式(2-a)で表される繰り返し単位及び下記式(2-i)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる第2の繰り返し単位(a2)と、を有する重合体成分を含有する液晶配向剤。
【化1】
【化2】
(X
1、X
2は4価の有機基を表す。Y
1は下記式(S1-1)~(S1-7)で表される構造のいずれかである。Y
2は下記式(2c)で表される2価の有機基を表す。2個のR
1、R
2は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基を表す。2個のZ
1、Z
2は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基を表す。)
【化3】
(R
1は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、又は炭素数2~20のアルコキシアルキル基を表す。X
pは、-(CH
2)
a-(aは
2~15の整数である)、-CONH-、-NHCO-、-CO-N(CH
3)-、-NH-、-O-、-CH
2O-、-CH
2-OCO-、-COO-、又は-OCO-を表す。A
1は、酸素原子又は-COO-*(但し、「*」を付した結合手が(CH
2)
a2と結合する)、A
2は、酸素原子又は*-COO-(但し、「*」を付した結合手が(CH
2)
a2と結合する)を表し、a
1、a
3は、それぞれ独立して、0又は1の整数であり、a
2は1~10の整数であり、Cyは1,4-シクロへキシレン基又は1,4-フェニレン基を表す。)
【化4】
(Rは水素原子又は1価の有機基を表す。*は結合手を表す。)
【請求項2】
前記重合体成分が、前記繰り返し単位(a1)と前記繰り返し単位(a2)とを同一の分子内に有するポリイミド前駆体及びそのイミド化重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体を含有する、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項3】
前記重合体成分が、前記繰り返し単位(a1)を有するポリイミド前駆体及びそのイミド化重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体(P-a1)と、前記繰り返し単位(a2)を有するポリイミド前駆体及びそのイミド化重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体(P-a2)との混合物を含有する、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項4】
前記式(2c)において、Rが、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、アルコキシアルキル基、またはフェニル基を表す、請求項1~3のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【請求項5】
前記式(2-a)及び前記式(2-i)において、Y
2が、3,6-ジアミノカルバゾール、9-メチル-3,6-ジアミノカルバゾール、9-エチル-3,6-ジアミノカルバゾール、及び9-フェニル-3,6-ジアミノカルバゾールからなる群から選ばれるカルバゾールから2つのアミノ基を除いた基である、請求項1~4のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【請求項6】
前記重合体成分が、下記式(3-a)で表される繰り返し単位及び下記式(3-i)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる第3の繰り返し単位(a3)をさらに有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【化5】
(X
3は4価の有機基を表す。Y
3は、前記式(S1-1)~(S1-7)で表される構造のいずれかである。2つのR
3、2つのZ
3は、それぞれ式(1-a)のR
1、Z
1と同義である。)
【請求項7】
前記重合体成分が、前記第1の繰り返し単位(a1)と前記第2の繰り返し単位(a2)とを同一の分子内に有するポリイミド前駆体及びそのイミド化重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体(P-a1+a2)と、前記第1の繰り返し単位(a1)と前記第3の繰り返し単位(a3)とを同一の分子内に有するポリイミド前駆体及びそのイミド化重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体(P-a1+a3)との混合物を含有する、請求項6に記載の液晶配向剤。
【請求項8】
前記重合体成分が、下記式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体を含有するテトラカルボン酸成分を用いて得られるポリイミド前駆体及びそのイミド化重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体で構成される、請求項1~7のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【化6】
(Xは、下記(x-1)~(x-13)からなる群から選ばれる構造を表す。)
【化7】
(R
1~R
4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数2~6のアルキニル基、フッ素原子を含有する炭素数1~6の1価の有機基、又はフェニル基を表す。R
5及びR
6は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す。j及びkは、0又は1の整数であり、A
1及びA
2は、それぞれ独立して、単結合、-O-、-CO-、-COO-、フェニレン、スルホニル基、又はアミド基を表す。*1は一方の酸無水物基に結合する結合手であり、*2は他方の酸無水物基に結合する結合手である。前記式(x-13)において、2個のA
2は、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項9】
前記液晶配向剤が、イソシアネート基、若しくはシクロカーボネート基を有する化合物、低級アルコキシアルキル基を有する化合物、及びブロックイソシアネート基を有する化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の架橋性化合物をさらに含有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【請求項10】
前記重合体(P-a1)の含有量に対する前記重合体(P-a2)の含有量の質量比率が5/95~95/5である、請求項3に記載の液晶配向剤。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の液晶配向剤を用いて形成される液晶配向膜。
【請求項12】
請求項11に記載の液晶配向膜を具備する液晶表示素子。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の液晶配向剤を、導電膜を有する一対の基板上に塗布して塗膜を形成し、液晶分子の層を介して前記塗膜が相対するように対向配置して液晶セルを形成し、前記一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で前記液晶セルに光照射する液晶表示素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向剤、該液晶配向剤から得られる液晶配向膜、及び該液晶配向膜を有する液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示素子としては、電極構造や使用する液晶分子の物性等が異なる種々の駆動方式が開発されており、例えばTN(Twisted Nematic)型やSTN(Super Twisted Nematic)型、VA(Vertical Alignment)型、IPS型(In Plane Switching)、FFS(Fringe Field Switching)型等の各種表示素子が知られている。これら液晶表示素子は、液晶分子を配向させるための液晶配向膜を有する。液晶配向膜の材料としては、例えばポリアミック酸やポリアミック酸エステル、ポリイミド、ポリアミドなどが知られている。
液晶表示素子の駆動方式の一つであるVA型の液晶表示素子では、予め液晶組成物中に光重合性化合物を添加し、かつポリイミド系などの垂直配向膜を用い、液晶セルに電圧を印加しながら紫外線を照射することで、液晶の応答速度を速くする技術(PSA(Polymer Sustained Alignment)方式素子)(例えば、特許文献1及び非特許文献1参照。)が知られている。
【0003】
一方、この種の液晶表示素子では、静電気が液晶セル内に蓄積されたり、また、駆動によって生じる正負非対称電圧の印加によって液晶セル内に電荷が蓄積されたりすると、これらの蓄積された電荷が液晶配向の乱れや残像として表示に影響を与え、液晶素子の表示品位を著しく低下させる。このような課題を解決する液晶配向膜として、特許文献2にはピロール構造を有するポリイミド系液晶配向膜が提案されている。
また近年では、大画面で高精細の液晶テレビが広く実用化されており、このような用途における液晶表示素子では、それまでの文字や静止画を主として表示するディスプレイ用途と比較して、残像に対する要求はより厳しくなり、かつ過酷な使用環境での長期使用に耐えうる特性が要求されている。従って、そこに使用される液晶配向膜は従来よりも信頼性の高いものが必要となってきており、液晶配向膜の電気特性に関しても、初期特性が良好なだけでなく、例えば、高温高湿下に長時間曝された後であっても、良好な特性を維持することが求められている。このような課題を解決する液晶配向膜として、特許文献3にはジフェニルアミン構造を有するポリイミド系液晶配向膜が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本特開2003-307720号公報
【文献】国際公開2019/013339号公報
【文献】国際公開2009/093709号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】K.Hanaoka,SID 04 DIGEST、P1200-1202
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、4Kや8Kといった超高精細な液晶表示素子では、ブラックマトリクス(BM)やTFTなどの占有率が大きくなり、パネルの開口率が低下してしまうため、表示部の透過率向上が重要視されている。
【0007】
本発明の目的は、上記の事情を鑑み、高温高湿下に長時間曝された後であっても電圧保持率が高く、また、蓄積された電荷の緩和が早く、残像特性に優れる液晶配向膜を得ることができる液晶配向剤、該液晶配向剤から得られる液晶配向膜及びそれを用いた液晶表示素子を提供することにある。
更には、高い光透過率を有する液晶配向膜を得ることができる液晶配向剤、該液晶配向剤から得られる液晶配向膜及びそれを用いた液晶表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を達成するために鋭意研究を行った結果、特定の成分を含有する液晶配向剤が、上記の目的を達成するために有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、かかる知見に基づくものであり、下記を要旨とするものである。
下記式(1-a)で表される繰り返し単位及び下記式(1-i)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる第1の繰り返し単位(a1)と、
下記式(2-a)で表される繰り返し単位及び下記式(2-i)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる第2の繰り返し単位(a2)と、を有する重合体成分を含有する液晶配向剤。
【化1】
【化2】
(X
1、X
2は4価の有機基を表す。Y
1は下記式(S1)~(S3)で表される構造のいずれかを有する2価の有機基を表す。Y
2は下記式(2c)で表される2価の有機基を表す。2個のR
1、R
2は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基を表す。2個のZ
1、Z
2は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基を表す。)
【化3】
(X
1及びX
2は、それぞれ独立して、単結合、-(CH
2)
a-(aは1~15の整数である。)、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH
3)-、-NH-、-O-、-COO-、-OCO-又は-((CH
2)
a1-A
1)
m1-を表す。このうち、a1は1~15の整数であり、A
1は、-O-又は-COO-を表し、m
1は1~2の整数である。G
1及びG
2は、それぞれ独立して、炭素数6~12の2価の芳香族基及び炭素数3~8の2価の脂環式基からなる群から選ばれる2価の環状基を表す。上記環状基上の任意の水素原子は、置換されていてもよい。m及びnはそれぞれ独立して0~3の整数であって、m+nは1~6、好ましくは1~4である。R
1は炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基又は炭素数2~20のアルコキシアルキル基を表し、R
1を形成する任意の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。X
1、X
2、G
1、G
2、a1、m
1およびA
1が複数存在する場合、複数存在するX
1、X
2、G
1、G
2、a1、m
1およびA
1は、それぞれ独立して上記定義を有する。)
【化4】
(X
3は、単結合、-CONH-、-NHCO-、-CO-N(CH
3)-、-NH-、-O-、-CH
2O-、-COO-又は-OCO-を表す。R
2は炭素数1~20のアルキル基又は炭素数2~20のアルコキシアルキル基を表し、R
2を形成する任意の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。)
【化5】
(X
4は-CONH-、-NHCO-、-O-、-CH
2O-、-COO-又は-OCO-を表す。R
3はステロイド骨格を有する構造を表す。)
【化6】
(Rは水素原子又は1価の有機基を表す。*は結合手を表す。)
【0010】
なお、本明細書において、*は、いずれの場合も、結合手を表す。Bocは、tert-ブトキシカルボニル基を表す。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。カルバメート系保護基としては、tert-ブトキシカルボニル基、9-フルオレニルメトキシカルボニル基が挙げられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の液晶配向剤によれば、高温高湿下に長時間曝された後であっても電圧保持率が高く、また、蓄積された電荷の緩和が早く、残像特性に優れる液晶配向膜を得ることができる。
更には、本発明の液晶配向剤によれば、高い光透過率を有する液晶配向膜を得ることができる。
本発明の上記効果が得られるメカニズムは必ずしも明らかではないが、以下に述べることが一因と考えられる。すなわち、上記重合体を含む液晶配向剤を用いることで、高温高湿下でも重合体の加水分解が起きにくいため、電圧保持率が高い液晶配向膜が得られると考えられる。また、光透過率の低下要因の一つである重合体の酸化体を、モデル化合物として可視領域における吸光度を求めたところ、上記重合体からなる酸化体の吸光度は極めて小さいことから、高い光透過率を有する液晶配向膜が得られると考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本開示の液晶配向剤に含まれる各成分、及び必要に応じて任意に配合されるその他の成分について説明する。
<重合体成分>
本発明の液晶配向剤は、上記式(1-a)で表される繰り返し単位及び上記式(1-i)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる第1の繰り返し単位(a1)と、
上記式(2-a)で表される繰り返し単位及び上記式(2-i)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる第2の繰り返し単位(a2)と、を有する重合体成分を含有する。
【0013】
上記重合体成分の具体的な態様としては、(i)上記第1の繰り返し単位(a1)と、上記第2の繰り返し単位(a2)とを同一の分子内に有するポリイミド前駆体及びそのイミド化重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体(P-a1+a2)(以下、共重合体ともいう。)、(ii)上記第1の繰り返し単位(a1)を有するポリイミド前駆体及びそのイミド化重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体(P-a1)と、上記第2の繰り返し単位(a2)を有するポリイミド前駆体及びそのイミド化重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体(P-a2)との混合物(以下、重合体ブレンドともいう。)を挙げることができる。上記共重合体または上記重合体ブレンドは単独で使用してもよく、組み合わせて使用してもよい。
なお、上記重合体成分は、第1の繰り返し単位(a1)および第2の繰り返し単位(a2)のいずれも有さない、ポリイミド前駆体及びそのイミド化重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体をさらに含有していてもよい。
【0014】
上記重合体成分が上記共重合体である場合、上記第1の繰り返し単位(a1)及び上記第2の繰り返し単位(a2)の合計は、上記共重合体を構成する繰り返し単位全体の5~100モル%が好ましく、10~100モル%がより好ましい。
また、上記繰り返し単位(a1)の含有割合は、上記共重合体を構成する繰り返し単位全体の1~90モル%が好ましく、1~85モル%がより好ましい。
【0015】
上記重合体成分が上記重合体ブレンドである場合、上記繰り返し単位(a1)の含有割合は、液晶配向性を高める点で、上記重合体(P-a1)を構成する繰り返し単位全体の、1モル%以上99モル%以下が好ましく、2モル%以上95モル%以下がより好ましく、5モル%以上90モル%以下が更に好ましい。
また、上記繰り返し単位(a2)の含有割合は、本発明の効果を効率的に得る観点で、上記重合体(P-a2)を構成する繰り返し単位全体の、5モル%以上90モル%以下が好ましく、10モル%以上80モル%以下がより好ましい。
【0016】
また、上記重合体(P-a1)の含有量に対する上記重合体(P-a2)の含有量の質量比率は、5/95~95/5であることが好ましく、より好ましくは10/90~90/10である。
【0017】
(第1の繰り返し単位(a1))
上記式(1-a)及び上記式(1-i)において、Y1は上記式(S1)~(S3)で表される構造を有する2価の有機基を表す。Y1は、好ましくは、上記式(S1)~(S3)で表される構造を有するジアミンに由来する2価の有機基である。
上記式(S1)~(S3)で表される構造を有する2価の有機基の具体例としては、上記式(S1)~(S3)で表される構造を側鎖に有する芳香族ジアミン(d)に由来する2価の有機基が挙げられる。上記式(S1)~(S3)で表される構造を有する2価の有機基は、好ましくは、上記芳香族ジアミン(d)から2つのアミノ基を除いた基である。
【0018】
上記式(S1)のG
1及びG
2において、上記環状基上の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ハロゲン原子含有アルキル基、ハロゲン原子含有アルコキシ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアルケニル基、並びに上記ハロゲン原子含有アルキル基、ハロゲン原子含有アルコキシ基、アルキル基、アルコキシ基、及びアルケニル基の任意のメチレン基が有する炭素-炭素結合が酸素原子で中断されているヘテロ原子含有基からなる群から選ばれる置換基が挙げられる。
上記式(S1)で表される構造の好ましい具体例としては、下記式(S1-1)~(S1-7)で表される構造が挙げられる。上記式(S3)で表される構造の好ましい具体例としては、(S3-a)で表される構造が挙げられる。なお、式(S3-a)中、Xは、式(X1)、式(X2)、又は-CH
2O-を表し、Colは、式(Col-1)、式(Col-2)又は式(Col-3)を表し、Gは、式(G1)、式(G2)、式(G3)又は式(G4)を表す。
【化7】
【0019】
上記式中、R
1は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、又は炭素数2~20のアルコキシアルキル基を表す。X
pは、-(CH
2)
a-(aは1~15の整数である)、-CONH-、-NHCO-、-CO-N(CH
3)-、-NH-、-O-、-CH
2O-、-CH
2-OCO-、-COO-、又は-OCO-を表す。A
1は、酸素原子又は-COO-*(但し、「*」を付した結合手が(CH
2)
a2と結合する)、A
2は、酸素原子又は*-COO-(但し、「*」を付した結合手が(CH
2)
a2と結合する)を表し、a
1、a
3は、それぞれ独立して、0又は1の整数であり、a
2は1~10の整数であり、Cyは1,4-シクロへキシレン基又は1,4-フェニレン基を表す。
【化8】
【0020】
上記式(S2)において、X3は、液晶配向性を高める観点から、-CONH-、-NHCO-、-O-、-CH2O-、-COO-または-OCO-が好ましい。
R2は液晶配向性の観点から、炭素数3~20のアルキル基または炭素数2~20のアルコキシアルキル基が好ましい。R2を形成する任意の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。
【0021】
上記芳香族ジアミン(d)は、少なくとも一つのベンゼン環を有することが好ましい。
芳香族ジアミン(d)の具体例として、下記式(d1)又は式(d2)で表されるジアミンが挙げられる。
【化9】
(Xは、単結合、-O-、-C(CH
3)
2-、-NH-、-CO-、-(CH
2)
m-、-SO
2-、-O-(CH
2)
m-O-、-O-C(CH
3)
2-、-CO-(CH
2)
m-、-NH-(CH
2)
m-、-SO
2-(CH
2)
m-、-CONH-(CH
2)
m-、-CONH-(CH
2)
m-NHCO-、又は-COO-(CH
2)
m-OCO-の2価の有機基を表す。mは1~8の整数である。Yは、上記式(S1)~(S3)のいずれかの構造を表す。上記式(d2)において、2個のYは、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【0022】
上記式(d1)で表されるジアミンの好ましい例としては、下記式(d1-1)~(d1-7)が挙げられる。上記式(d2)で表されるジアミンの好ましい例としては、下記式(d2-1)~(d2-6)が挙げられる。
【化10】
【化11】
(X
v1~X
v4、X
p1~X
p8は、それぞれ独立に、-(CH
2)
a-(aは1~15の整数である)、-CONH-、-NHCO-、-CO-N(CH
3)-、-NH-、-O-、-CH
2O-、-CH
2-OCO-、-COO-、又は-OCO-を表し、X
V5~X
V6、X
s1~X
s4は、それぞれ独立に、-O-、-CH
2O-、-COO-又は-OCO-を表す。X
v7は、単結合、-CONH-、-NHCO-、-CO-N(CH
3)-、-NH-、-O-、-CH
2O-、-COO-又は-OCO-を表す。X
a~X
fは、単結合、-O-、-NH-、又は-O-(CH
2)
m-O-(mは1~8の整数を表す。)を表し、R
v1~R
v4、R
1a~R
1hはそれぞれ独立に、-C
nH
2n+1(nは1~20の整数を表す。)、又は-O-C
nH
2n+1(nは2~20の整数を表す。)を表す。)
【0023】
上記式(1-a)及び上記式(1-i)において、X
1は4価の有機基を表す。X
1は、好ましくは、テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体に由来する4価の有機基を表す。該4価の有機基としては、非環式脂肪族テトカルボン酸二無水物又はその誘導体に由来する4価の有機基、脂環式テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体に由来する4価の有機基又は芳香族テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体に由来する4価の有機基が挙げられ、好ましくは、下記式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体に由来する4価の有機基である。
【化12】
(Xは、下記式(x-1)~(x-13)のいずれかから選ばれる構造を表す。)
【化13】
(R
1~R
4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数2~6のアルキニル基、フッ素原子を含有する炭素数1~6の1価の有機基、又はフェニル基を表す。R
5及びR
6は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す。j及びkは、0又は1の整数であり、A
1及びA
2は、それぞれ独立して、単結合、-O-、-CO-、-COO-、フェニレン、スルホニル基、又はアミド基を表す。*1は一方の酸無水物基に結合する結合手であり、*2は他方の酸無水物基に結合する結合手である。上記式(x-13)において、2個のA
2は、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【0024】
上記式(x-1)のより好ましい具体例として、下記式(X1-1)~(X1-6)が挙げられる。
【0025】
【0026】
上記式(x-12)、(x-13)の好ましい具体例としては、下記式(x-14)~(x-29)が挙げられる。
【化15】
【化16】
【0027】
上記式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体の好ましい例としては、Xが上記式(x-1)~(x-7)、(x-11)~(x-13)である式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体が挙げられる。
【0028】
上記式(1-a)において、2個のR1は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基を表す。該1価の有機基の例として、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基が挙げられる。2個のR1は、それぞれ独立して、好ましくは、水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表す。
上記式(1-a)において、2個のZ1は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基を表す。該1価の有機基の例として、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2~10のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2~10のアルキニル基、tert-ブトキシカルボニル基、又は9-フルオレニルメトキシカルボニル基が挙げられる。上記置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、ニトリル基等が挙げられる。2個のZ1は、それぞれ独立して、好ましくは、水素原子またはメチル基を表す。
上記式(1-a)及び上記式(1-i)において、X1、Y1、R1、Z1は、それぞれ1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
【0029】
(第2の繰り返し単位(a2))
上記式(2-a)及び上記式(2-i)において、Y2は下記式(2c)で表される2価の有機基を表す。
【0030】
【化17】
(Rは水素原子又は1価の有機基を表す。)
【0031】
上記式(2c)におけるRの1価の有機基としては、例えば炭素数1~12のアルキル基、アルコキシアルキル基、フェニル基などが挙げられる。炭素数1~12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。
【0032】
上記式(2c)において、Rは、本発明の効果を好適に得る観点から、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、アルコキシアルキル基、またはフェニル基が好ましい。
【0033】
上記Y2のより好ましい具体例としては、3,6-ジアミノカルバゾール、9-メチル-3,6-ジアミノカルバゾール、9-エチル-3,6-ジアミノカルバゾール、及び9-フェニル-3,6-ジアミノカルバゾールからなる群から選ばれるカルバゾールから2つのアミノ基を除いた基を挙げることができる。
【0034】
上記式(2-a)及び上記式(2-i)におけるX2は、上記式(1-a)及び上記式(1-i)におけるX1と同じものが挙げられる。
上記式(2-a)におけるR2は、上記式(1-a)におけるR1と同じものが挙げられる。
上記式(2-a)におけるZ2は、上記式(1-a)におけるZ1と同じものが挙げられる。
上記式(2-a)及び上記式(2-i)において、X2、Y2、R2、Z2は、それぞれ1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
【0035】
(第3の繰り返し単位)
上記重合体成分は、下記式(3-a)で表される繰り返し単位及び下記式(3-i)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる第3の繰り返し単位(a3)をさらに有してもよい。
【化18】
(X
3は4価の有機基を表す。Y
3は2価の有機基を表し、上記式(S1)~(S3)で表される構造を有する2価の有機基及び上記式(2c)で表される2価の有機基以外の2価の有機基を表す。2つのR
3、2つのZ
3は、それぞれ式(1-a)のR
1、Z
1と同義である。)
【0036】
上記第3の繰り返し単位(a3)をさらに有する重合体成分の具体的な態様としては、共重合体、重合体ブレンドの態様を挙げることができる。
上記共重合体の例としては、上記第1の繰り返し単位(a1)と、上記第2の繰り返し単位(a2)と、上記第3の繰り返し単位(a3)とを同一の分子内に有するポリイミド前駆体及びそのイミド化重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体が挙げられることができる。
上記重合体ブレンドの例としては、上記第1の繰り返し単位(a1)と上記第2の繰り返し単位(a2)とを同一の分子内に有するポリイミド前駆体及びそのイミド化重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体(P-a1+a2)と、上記第1の繰り返し単位(a1)と上記第3の繰り返し単位(a3)とを同一の分子内に有するポリイミド前駆体及びそのイミド化重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体(P-a1+a3)との混合物を挙げることができる。上記重合体(P-a1+a3)は、上記第2の繰り返し単位(a2)を有さなくてもよい。 上記共重合体または上記重合体ブレンドは単独で使用してもよく、組み合わせて使用してもよい。
【0037】
重合体成分が上記共重合体の場合、上記繰り返し単位(a3)の含有割合は、上記共重合体を構成する繰り返し単位全体の5~90モル%が好ましく、10~80モル%がより好ましい。
この場合、上記第1の繰り返し単位(a1)及び上記第2の繰り返し単位(a2)の合計は、上記共重合体を構成する繰り返し単位全体の10~95モル%が好ましく、20~90モル%がより好ましい。
【0038】
重合体成分が上記重合体ブレンドの場合、上記重合体(P-a1+a2)の含有量に対する上記重合体(P-a1+a3)の含有量の質量比率は、5/95~95/5であることが好ましく、より好ましくは10/90~90/10である。
【0039】
Y
3は、好ましくは、ジアミンに由来する2価の有機基を表す。Y
3の2価の有機基の具体例としては、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4-(2-(メチルアミノ)エチル)アニリン、2,4-ジアミノ安息香酸、2,5-ジアミノ安息香酸、3,5-ジアミノ安息香酸、及び下記式(3b-1)~式(3b-4)で示されるジアミン化合物などのカルボキシ基を有するジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、1,2-ビス(4-アミノフェニル)エタン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ブタン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,2-ビス(4-アミノフェノキシ)エタン、1,2-ビス(4-アミノ-2-メチルフェノキシ)エタン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)プロパン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ブタン、1,5-ビス(4-アミノフェノキシ)ペンタン、1,6-ビス(4-アミノフェノキシ)へキサン、4-(2-(4-アミノフェノキシ)エトキシ)-3-フルオロアニリン、ジ(2-(4-アミノフェノキシ)エチル)エーテル、4-アミノ-4’-(2-(4-アミノフェノキシ)エトキシ)ビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、1,4-ジアミノナフタレン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、2,7-ジアミノナフタレン、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2’-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、1,3-ビス(4-アミノフェネチル)ウレアなどのウレア結合を有するジアミン、メタクリル酸2-(2,4-ジアミノフェノキシ)エチル、2,4-ジアミノ-N,N-ジアリルアニリンなどの光重合性基を末端に有するジアミン、下記式(R1)~(R5)などのラジカル開始機能を有するジアミン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレンなどの光照射により増感作用を示す光増感機能を有するジアミン、2,6-ジアミノピリジン、3,4-ジアミノピリジン、2,4-ジアミノピリミジン、下記式(z-1)~(z-18)などの複素環を有するジアミン、下記式(Dp-1)~(Dp-9)などのジフェニルアミン骨格を有するジアミン、下記式(5-1)~(5-10)などの基「-N(D)-」(Dは加熱によって脱離し水素原子に置き換わる保護基を表し、好ましくはtert-ブトキシカルボニル基である。)を有するジアミン、下記式(Ox-1)~(Ox-2)などのオキサゾリン構造を有するジアミン等のジアミン(以下、その他のジアミンともいう。)から2つのアミノ基を除いた有機基が挙げられるが、これらに限定されない。
【化19】
(式(3b-1)中、A
1は単結合、-CH
2-、-C
2H
4-、-C(CH
3)
2-、-CF
2-、-C(CF
3)
2-、-O-、-CO-、-NH-、-N(CH
3)-、-CONH-、-NHCO-、-CH
2O-、-OCH
2-、-COO-、-OCO-、-CON(CH
3)-又は-N(CH
3)CO-を示し、m1及びm2はそれぞれ独立して、0~4の整数を示し、かつm1+m2は1~4の整数を示す。式(3b-2)中、m3及びm4はそれぞれ独立して、1~5の整数を示す。式(3b-3)中、A
2は炭素数1~5の直鎖又は分岐アルキル基を示し、m5は1~5の整数を示す。式(3b-4)中、A
3及びA
4はそれぞれ独立して、単結合、-CH
2-、-C
2H
4-、-C(CH
3)
2-、-CF
2-、-C(CF
3)
2-、-O-、-CO-、-NH-、-N(CH
3)-、-CONH-、-NHCO-、-CH
2O-、-OCH
2-、-COO-、-OCO-、-CO-N(CH
3)-又は-N(CH
3)CO-を示し、m6は1~4の整数を示す。)
【化20】
【化21】
【化22】
(式(R3)~(R5)において、nは1~6の整数である。)
【化23】
【化24】
【化25】
【0040】
上記4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、光重合性基を末端に有するジアミン、上記式(R1)~(R5)で表されるジアミン、上記式(z-1)~(z-18)で表されるジアミンは、PSA方式やSC-PVAモードを用いる液晶表示素子の応答速度を速める点から、上記重合体成分を製造する場合に1種若しくは2種以上用いてもよい。
【0041】
その他のジアミンとしては、上記のなかでも、本発明の効果を好適に得る観点から,p-フェニレンジアミン、3,5-ジアミノ安息香酸、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、メタクリル酸2-(2,4-ジアミノフェノキシ)エチル、2,4-ジアミノ-N,N-ジアリルアニリン、上記式(R1)~(R5)で表されるジアミン、上記式(z-1)~(z-18)で表されるジアミン、上記式(Dp-1)~(Dp-9)で表されるジアミン、上記式(Ox-1)~(Ox-2)で表されるジアミンが好ましい。
【0042】
上記式(3-a)及び上記式(3-i)におけるX3は、上記式(1-a)及び上記式(1-i)におけるX1と同じものが挙げられる。
上記式(3-a)におけるR3は、上記式(1-a)におけるR1と同じものが挙げられる。
上記式(3-a)におけるZ3は、上記式(1-a)におけるZ1と同じものが挙げられる。
上記式(3-a)及び上記式(3-i)において、X3、Y3、R3、Z3は、それぞれ1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
【0043】
<重合体の製造方法>
本発明に用いられるポリイミド前駆体は、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル等が挙げられる。本発明に用いられるポリイミド前駆体は、例えば、国際公開公報WO2013/157586に記載されるような公知の方法で合成出来る。
具体的には、ジアミン成分と、テトラカルボン酸誘導体成分と、を溶媒中で(縮重合)反応させることにより合成される。上記テトラカルボン酸誘導体成分としては、テトラカルボン酸二無水物若しくはその誘導体(テトラカルボン酸ジハロゲン化物、テトラカルボン酸ジエステル、又はテトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物)が挙げられる。重合体の一部にアミック酸構造を含む場合、例えば、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とを反応させることにより、アミック酸構造を有する重合体(ポリアミック酸)が得られる。溶媒としては、生成した重合体が溶解するものであれば特に限定されない。
例えば、R
1が水素原子である上記式(1-a)で表される繰り返し単位を有する重合体を得る場合には、ジアミン成分としては、-N(Z
1)-Y
1-N(Z
1)-の構造(Y
1、Z
1の定義は上記式(1-a)と同じである。)を有するジアミンが使用され、また、テトラカルボン酸誘導体成分としては、下記式の構造を有するテトラカルボン酸誘導体が使用される。
【化26】
(X
1の定義は上記式(1-a)と同じである。)
【0044】
また、上記ポリイミド前駆体を閉環(イミド化)させることによりポリイミドを得ることができる。なお、本明細書でいうイミド化率とは、テトラカルボン酸二無水物またはその誘導体由来のイミド基とカルボキシ基(またはその誘導体)との合計量に占めるイミド基の割合のことである。ポリイミドにおいては、イミド化率は必ずしも100%である必要はなく、用途や目的に応じて任意に調整できる。
本発明の液晶配向剤に含有されるポリイミドのイミド化率は、溶解性を担保する観点から、10~95%であり、好ましくは20~95%、より好ましくは30~90%である。
【0045】
ポリイミド前駆体をイミド化させる方法としては、ポリイミド前駆体の溶液をそのまま加熱する熱イミド化又はポリイミド前駆体の溶液に触媒を添加する触媒イミド化が挙げられる。
【0046】
ポリイミド前駆体を溶液中で熱イミド化させる場合の温度は、100~400℃、好ましくは120~250℃であり、イミド化反応により生成する水を系外に除きながら行う方が好ましい。
【0047】
ポリイミド前駆体の触媒イミド化は、ポリイミド前駆体の溶液に、塩基性触媒と酸無水物とを添加し、-20~250℃、好ましくは0~180℃で撹拌することにより行うことができる。塩基性触媒の量はアミック酸基の0.5~30モル倍、好ましくは2~20モル倍であり、酸無水物の量はアミック酸基の1~50モル倍、好ましくは3~30モル倍である。塩基性触媒としてはピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン又はトリオクチルアミンなどを挙げることができ、中でもピリジンは反応を進行させるのに適度な塩基性を持つので好ましい。酸無水物としては、無水酢酸、無水トリメリット酸又は無水ピロメリット酸などを挙げることができ、中でも無水酢酸を用いると反応終了後の精製が容易となるので好ましい。触媒イミド化によるイミド化率は、触媒量と反応温度、反応時間を調節することにより制御することができる。
【0048】
ポリイミド前駆体又はポリイミドの反応溶液から、生成したポリイミド前駆体又はポリイミドを回収する場合には、反応溶液を溶媒に投入して沈殿させればよい。沈殿に用いる溶媒としてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、ヘキサン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、ベンゼン、水などを挙げることができる。溶媒に投入して沈殿させた重合体は濾過して回収した後、常圧あるいは減圧下で、常温あるいは加熱して乾燥することができる。また、沈殿回収した重合体を、有機溶媒に再溶解させ、再沈殿回収する操作を2~10回繰り返すと、重合体中の不純物を少なくすることができる。この際の溶媒として、例えば、アルコール類、ケトン類又は炭化水素などが挙げられ、これらの内から選ばれる3種類以上の溶媒を用いると、より一層精製の効率が上がるので好ましい。
【0049】
本発明で使用する重合体の分子量は、そこから得られる液晶配向膜の強度、膜形成時の作業性及び塗膜性を考慮した場合、GPC(Gel Permeation Chromatography)法で測定した重量平均分子量で5,000~1,000,000とするのが好ましく、より好ましくは、10,000~150,000である。
【0050】
本発明の液晶配向膜の製造方法で使用する重合体成分の配合割合は特に限定されないが、例えば、液晶配向剤に含まれる重合体成分の総量が、0.1~30質量%、好ましくは、3~10質量%である。
また、例えば、液晶配向剤に含まれる上記共重合体(重合体(P-a1+a2))の含有量は、1.5~9質量%、好ましくは、2.5~9質量%である。
さらに、例えば、液晶配向剤に含まれる上記重合体ブレンド(重合体(P-a1)と重合体(P-a2)との混合物)の合計含有量は、1.5~9質量%、好ましくは、2.5~9質量%である。
【0051】
また、液晶配向膜の製造に使用する液晶配向剤には、上記共重合体および上記重合体ブレンド以外のその他の重合体が混合されていても良い。その際、その他の重合体の含有量は、重合体成分全量の0.5質量%~15質量%、好ましくは1質量%~10質量%である。その他の重合体としては、上記共重合体および上記重合体ブレンド以外のポリイミド前駆体又はそのイミド化重合体、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、ポリスチレン、ポリアミド又はポリシロキサンなどが挙げられる。
【0052】
液晶配向剤が含有する溶媒は、重合体を溶解することができるものであれば、特に限定はされず、例えば、γ-バレロラクトン、γ-ブチロラクトンなどのラクトン溶媒;γ-ブチロラクタム、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-(n-プロピル)-2-ピロリドン、N-イソプロピル-2-ピロリドン、N-(n-ブチル)-2-ピロリドン、N-(tert-ブチル)-2-ピロリドン、N-(n-ペンチル)-2-ピロリドン、N-メトキシプロピル-2-ピロリドン、N-エトキシエチル-2-ピロリドン、N-メトキシブチル-2-ピロリドン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドンなどのラクタム溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルラクトアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、などのアミド溶媒;4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、2,6-ジメチル-4-ヘプタノン(ジイソブチルケトン)、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n-プロピル、乳酸n-ブチル、乳酸イソアミル、酢酸n-ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メチルメトキシプロピオネート、エチルエトキシプロピオネート、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコール-n-ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソプロピルエーテル、ジイソペンチルエーテル;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート溶媒、1-ヘキサノール、シクロヘキサノール、1,2-エタンジオール、2,6-ジメチル-4-ヘプタノール(ジイソブチルカルビノール)、等を挙げることができる。これらは、単独で又は2種以上を混合して使用できる。
【0053】
好ましい溶媒の組み合わせとしては、N-メチル-2-ピロリドンとエチレングリコールモノブチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとエチレングリコールモノブチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとプロピレングリコールモノブチルエーテル、N-エチル-2-ピロリドンとプロピレングリコールモノブチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンとジエチレングリコールジエチルエーテル、N-エチル-2-ピロリドンとN-メチル-2-ピロリドンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、N-メチル-2-ピロリドンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンとジイソブチルケトン、N-メチル-2-ピロリドンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンとジプロピレングリコールモノメチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンとプロピレングリコールモノブチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンとプロピレングリコールジアセテート、γ-ブチロラクトンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンとジイソブチルケトン、γ-ブチロラクトンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンとプロピレングリコールジアセテート、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとプロピレングリコールモノブチルエーテルとジイソブチルケトン、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとプロピレングリコールモノブチルエーテルとジイソプロピルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとプロピレングリコールモノブチルエーテルとジイソブチルカルビノール、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとジプロピレングリコールジメチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンとプロピレングリコールモノブチルエーテルとジプロピレングリコールジメチルエーテル、などを挙げることができる。このような溶媒の種類及び含有量は、液晶配向剤の塗布装置、塗布条件、塗布環境などに応じて適宜選択される。
【0054】
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤は、必要に応じて上記以外のその他の成分、例えば架橋性化合物、官能性シラン化合物、界面活性剤、光重合性基を有する化合物等を添加してもよい。
【0055】
架橋性化合物は、液晶配向膜の強度を高めることを目的として使用できる。かかる架橋性化合物としては、国際公開公報WO2016/047771の段落[0109]~[0113]に記載の、イソシアネート基、若しくはシクロカーボネート基を有する化合物、又は、低級アルコキシアルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を有する化合物の他、ブロックイソシアネート基を有する化合物等が挙げられる。
【0056】
ブロックイソシアネート化合物は、市販品として入手可能であり、例えば、コロネートAPステーブルM、コロネート2503、2515、2507、2513、2555、ミリオネートMS-50(以上、東ソー社製)、タケネートB-830、B-815N、B-820NSU、B-842N、B-846N、B-870N、B-874N、B-882N(以上、三井化学社製)等を好ましく使用できる。
【0057】
好ましい架橋性化合物の具体例としては、下記式(CL-1)~(CL-11)で示される化合物が挙げられる。
【化27】
【0058】
上記は架橋性化合物の一例であり、これらに限定されない。また、本発明の液晶配向剤に用いる架橋性化合物は、1種類でも、2種類以上組み合わせても良い。
【0059】
本発明の液晶配向剤における、その他の架橋性化合物の含有量は、全ての重合体成分100質量部に対して、0.1~150質量部、又は0.1~100質量部、又は1~50質量部である。
【0060】
官能性シラン化合物は、液晶配向膜と下地基板との密着性を向上することを目的として使用できる。具体例としては、国際公開公報2014/119682の段落[0019]に記載のシラン化合物を挙げることができる。官能性シラン化合物の含有量は、全ての重合体成分100質量部に対して、好ましくは0.1~30質量部、より好ましくは0.5~20質量部である。
【0061】
界面活性剤は、液晶配向膜の膜厚の均一性や表面平滑性を向上させることを目的として使用できる。上記化合物としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノ二オン系界面活性剤などが挙げられる。これらの具体例は、国際公開公報WO2016/047771の段落[0117]に記載の界面活性剤が挙げられる。界面活性剤の使用量は、液晶配向剤に含有される全ての重合体成分100質量部に対して、好ましくは0.01~2質量部、より好ましくは0.01~1質量部である。
【0062】
光重合性基を有する化合物は、アクリレート基やメタクリレート基などの重合性不飽和基を分子内に1個以上有する化合物、例えば下記式(M-1)~(M-7)で表されるような化合物を挙げることができる。
【0063】
【0064】
更に、本発明の液晶配向剤には、液晶配向膜中の電荷移動を促進して素子の電荷抜けを促進させる化合物として、国際公開公報WO2011/132751号(2011.10.27公開)の段落[0194]~[0200]に掲載される、式[M1]~式[M156]で示される窒素原子含有複素環アミン化合物、より好ましくは3-ピコリルアミン、4-ピコリルアミンを添加できる。このアミン化合物は、液晶配向剤に直接添加しても構わないが、濃度0.1~10質量%、好ましくは1~7質量%の溶液にしてから添加することが好ましい。この溶媒は、上記重合体を溶解させるならば特に限定されない。
【0065】
本発明の液晶配向剤には、塗膜を焼成する際に加熱によるイミド化を効率よく進行させる目的でイミド化促進剤等を添加しても良い。
【0066】
液晶配向剤における固形分濃度(液晶配向剤の溶媒以外の成分の合計質量が液晶配向剤の全質量に占める割合)は、粘性、揮発性などを考慮して適宜に選択されるが、好ましくは0.5~15質量%、より好ましくは1~10質量%の範囲である。
特に好ましい固形分濃度の範囲は、基板に液晶配向剤を塗布する際に用いる方法によって異なる。例えばスピンコート法による場合、固形分濃度は1.5~4.5質量%の範囲が特に好ましい。印刷法による場合には、固形分濃度を3~9質量%の範囲とし、それにより溶液粘度を12~50mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。インクジェット法による場合には、固形分濃度を1~5質量%の範囲とし、それにより、溶液粘度を3~15mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。
【0067】
<液晶配向膜・液晶表示素子>
本発明の液晶配向膜は、上記液晶配向剤から得られる。本発明の液晶配向膜は、水平配向型若しくは垂直配向型の液晶配向膜に用いることができるが、中でもVA方式又はPSAモード等の垂直配向型の液晶表示素子に好適な液晶配向膜である。本発明の液晶表示素子は、上記液晶配向膜を具備するものである。本発明の液晶表示素子は、例えば以下の工程(1)~(3)又は工程(1)~(4)を含む方法により製造することができる。また、本発明の液晶配向膜は、導電膜を有する一対の基板上に塗布して塗膜を形成し、液晶分子の層を介して上記塗膜が相対するように対向配置して液晶セルを形成し、上記一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で前記液晶セルに光照射する液晶表示素子の製造方法により得られる、液晶表示素子に好ましく用いることができる。より具体的には、後述するPSA型液晶表示素子やSC-PVAモード用液晶表示素子である。
(1)液晶配向剤を基板上に塗布する工程
パターニングされた透明導電膜が設けられている基板の一面に、本発明の液晶配向剤を、例えばロールコーター法、スピンコート法、印刷法、インクジェット法などの適宜の塗布方法により塗布する。ここで基板としては、透明性の高い基板であれば特に限定されず、ガラス基板、窒化珪素基板とともに、アクリル基板やポリカーボネート基板等のプラスチック基板等を用いることもできる。また、反射型の液晶表示素子では、片側の基板のみにならば、シリコンウエハー等の不透明な物でも使用でき、この場合の電極にはアルミニウム等の光を反射する材料も使用できる。
(2)塗膜を焼成する工程
液晶配向剤塗布後、塗布した配向剤の液垂れ防止等の目的で、好ましくは先ず予備加熱(プレベーク)が実施される。プレベーク温度は、好ましくは30~200℃であり、より好ましくは40~150℃であり、特に好ましくは40~100℃である。プレベーク時間は好ましくは0.25~10分であり、より好ましくは0.5~5分である。そして、さらに加熱(ポストベーク)工程が実施されることが好ましい。このポストベーク温度は好ましくは80~300℃であり、より好ましくは120~250℃である。ポストベーク時間は好ましくは5~200分であり、より好ましくは10~100分である。このようにして形成される膜の膜厚は、5~300nmが好ましく、10~200nmがより好ましい。
【0068】
上記工程(1)で形成した塗膜をそのまま液晶配向膜として使用することができるが、該塗膜に対し配向能付与処理を施してもよい。配向能付与処理としては、塗膜を例えばナイロン、レーヨン、コットンなどの繊維からなる布を巻き付けたロールで一定方向に擦るラビング処理、塗膜に対して偏光又は非偏光の放射線を照射する光配向処理などが挙げられる。
【0069】
光配向処理において、塗膜に照射する放射線としては、例えば150~800nmの波長の光を含む紫外線及び可視光線を用いることができる。放射線が偏光である場合、直線偏光であっても部分偏光であってもよい。また、用いる放射線が直線偏光又は部分偏光である場合には、照射は基板面に垂直の方向から行ってもよく、斜め方向から行ってもよく、又はこれらを組み合わせて行ってもよい。非偏光の放射線を照射する場合には、照射の方向は斜め方向とする。
(3)液晶層を形成する工程
(3-1)VA型液晶表示素子の場合
上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚準備し、対向配置した2枚の基板間に液晶を配置する。具体的には以下の2つの方法が挙げられる。第一の方法は、従来から知られている方法である。先ず、それぞれの液晶配向膜が対向するように間隙(セルギャップ)を介して2枚の基板を対向配置する。次いで、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面及びシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶組成物を注入充填して膜面に接触した後、注入孔を封止する。
【0070】
また、第二の方法は、ODF(One Drop Fill)方式と呼ばれる手法である。液晶配向膜を形成した2枚の基板のうちの一方の基板上の所定の場所に、例えば紫外光硬化性のシール剤を塗布し、更に液晶配向膜面上の所定の数箇所に液晶組成物を滴下する。その後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせて液晶組成物を基板の全面に押し広げて膜面に接触させる。次いで、基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化する。いずれの方法による場合でも、更に、用いた液晶組成物が等方相をとる温度まで加熱した後、室温まで徐冷することにより、液晶充填時の流動配向を除去することが望ましい。
【0071】
(3-2)PSA型液晶表示素子を製造する場合
重合性化合物を含有する液晶組成物を注入又は滴下する点以外は上記(3-1)と同様にする。重合性化合物としては、例えば上記式(M-1)~(M-7)で表されるような重合性化合物を挙げることができる。
(3-3)重合性基を有する化合物を含む液晶配向剤を用いて基板上に塗膜を形成した場合
上記(3-1)と同様にした後、後述する紫外線を照射する工程を経て液晶表示素子を製造する方法を採用してもよい。この方法によれば、上記PSA型液晶表示素子を製造する場合と同様に、少ない光照射量で応答速度に優れた液晶表示素子を得ることができる。重合性基を有する化合物は、上記式(M-1)~(M-7)で表されるようなアクリレート基やメタクリレート基などの重合性不飽和基を分子内に1個以上有する化合物であってもよく、その含有量は、全ての重合体成分100質量部に対して0.1~30質量部であることが好ましく、より好ましくは1~20質量部である。また、上記重合性基は液晶配向剤に用いる重合体が有していてもよく、このような重合体としては、例えば上記光重合性基を末端に有するジアミンを含むジアミン成分を反応に用いて得られる重合体が挙げられる。
【0072】
(4)紫外線を照射する工程
上記(3-2)又は(3-3)で得られた一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で液晶セルに光照射する。ここで印加する電圧は、例えば5~50Vの直流又は交流とすることができる。また、照射する光としては、例えば150~800nmの波長の光を含む紫外線及び可視光線を用いることができるが、300~400nmの波長の光を含む紫外線が好ましい。照射光の光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマレーザーなどを使用することができる。光の照射量としては、好ましくは1,000~200,000J/m2であり、より好ましくは1,000~100,000J/m2である。
【0073】
そして、液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせることにより液晶表示素子を得ることができる。液晶セルの外表面に貼り合わされる偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と称される偏光フィルムを酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板又はH膜そのものからなる偏光板を挙げることができる。
【0074】
本発明の液晶表示素子は、種々の装置に有効に適用することができ、例えば、時計、携帯型ゲーム、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、PDA、デジタルカメラ、携帯電話、スマートフォン、各種モニター、液晶テレビ、インフォメーションディスプレイなどの各種表示装置に用いることができる。
【実施例】
【0075】
以下、実施例に基づいてさらに詳述するが、本発明はこの実施例により何ら限定されるものではない。
<液晶配向剤の合成>
下記液晶配向剤の調製で用いた略号は以下のとおりである。
(酸二無水物)
BODA:ビシクロ[3,3,0]オクタン-2,4,6,8-テトラカルボン酸二無水物
CBDA:1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
TCA:2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物
(ジアミン)
DA-1~DA-11:それぞれ、下記式(DA-1)~(DA-11)で表される化合物
【化29】
【化30】
【化31】
(添加剤)
AD-1:下記式(AD-1)で表される化合物
【化32】
(溶媒)
NMP:N-メチル-2-ピロリドン、BCS:ブチルセロソルブ
<分子量測定>
測定装置:センシュー科学社製 常温ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(SSC-7200)、カラム:Shodex社製カラム(KD-803、KD-805の直列)、カラム温度:50℃、溶離液:N,N-ジメチルホルムアミド(添加剤として、臭化リチウム一水和物(LiBr・H2O)が30mmol/L、リン酸・無水結晶(o-リン酸)が30mmol/L、テトラヒドロフラン(THF)が10mL/L)、流速:1.0mL/分、検量線作成用標準サンプル:東ソー社製 TSK 標準ポリエチレンオキサイド(分子量約900,000、150,000、100,000、30,000)、及び、ポリマーラボラトリー社製 ポリエチレングリコール(分子量 約12,000、4,000、1,000)。
【0076】
<イミド化率の測定>
ポリイミド粉末20mgをNMRサンプル管(草野科学社製 NMRサンプリングチューブスタンダード φ5)に入れ、重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d6、0.05%TMS混合品)1.0mLを添加し、超音波をかけて完全に溶解させた。この溶液を日本電子データム社製NMR測定器(JNW-ECA500)にて500MHzのプロトンNMRを測定した。
化学イミド化率は、イミド化前後で変化しない構造に由来するプロトンを基準プロトンとして決め、このプロトンのピーク積算値と、9.5~10.0ppm付近に現れるアミック酸のNH基に由来するプロトンピーク積算値とを用い以下の式によって求めた。なお、式中、xはアミック酸のNH基由来のプロトンピーク積算値であり、yは基準プロトンのピーク積算値であり、αはポリアミック酸(イミド化率が0%)の場合におけるアミック酸のNH基のプロトン1個に対する基準プロトンの個数割合である。
イミド化率(%)=(1-α・x/y)×100
【0077】
<合成例1>
BODA(2.50g,10.0mmol)、DA-1(2.76g,14.0mmol)、及びDA-8(2.28g,6.0mmol)をNMP(30.2g)中で溶解し、60℃で3時間反応させたのち、CBDA(1.92g,9.8mmol)及びNMP(7.7g)を加え、40℃で4時間反応させポリアミック酸溶液(1)を得た。このポリアミック酸の数平均分子量Mnは、10,360、重量平均分子量Mwは30,350であった。
【0078】
<合成例2>
BODA(2.50g,10.0mmol)、DA-2(2.96g,14.0mmol)、及びDA-8(2.28g,6.0mmol)をNMP(31.0g)中で溶解し、60℃で3時間反応させたのち、CBDA(1.92g,9.8mmol)及びNMP(7.7g)を加え、40℃で4時間反応させポリアミック酸溶液(2)を得た。このポリアミック酸のMnは12,140、Mwは37,600であった。
【0079】
<合成例3>
BODA(2.50g,10.0mmol)、DA-4(2.79g,14.0mmol)、及びDA-8(2.28g,6.0mmol)をNMP(30.3g)中で溶解し、60℃で3時間反応させたのち、CBDA(1.92g,9.8mmol)及びNMP(7.7g)を加え、40℃で4時間反応させポリアミック酸溶液(3)を得た。このポリアミック酸のMnは12,630、Mwは36,540であった。
【0080】
<合成例4>
BODA(2.50g,10.0mmol)、DA-3(5.90g,14.0mmol)、及びDA-8(2.28g,6.0mmol)をNMP(38.3g)中で混合し、60℃で3時間反応させた後、CBDA(1.81g,9.2mmol)及びNMP(7.8g)を加え、40℃で3時間反応させポリアミック酸溶液(4)を得た。このポリアミック酸のMnは12,340、Mwは46,260であった。
【0081】
<合成例5>
BODA(2.50g,10.0mmol)、DA-1(1.58g,8.0mmol)、DA-6(1.94g,8.0mmol)及びDA-9(1.58g,4.0mmol)をNMP(30.4g)中で混合し、60℃で3時間反応させた後、CBDA(1.94g,9.9mmol)及びNMP(7.7g)を加え、40℃で3時間反応させポリアミック酸溶液(5-a)を得た。このポリアミック酸のMnは11,450、Mwは37,590であった。得られたポリアミック酸溶液(5-a)(6.0g)にNMP(6.0g)及びBCS(8.0g)を加え室温で2時間撹拌することにより、ポリアミック酸溶液(5)を得た。
【0082】
<合成例6>
合成例5で得られたポリアミック酸溶液(5-a)(20.0g)に、NMPを加え6.5質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(4.27g)及びピリジン(1.33g)を加え、50℃で3時間反応させた。この反応溶液をメタノール(270mL)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、60℃で減圧乾燥しポリイミド粉末を得た。このポリイミド粉末のイミド化率は37%であり、Mnは10,980、Mwは34,300であった。得られたポリイミド粉末(3.0g)にNMP(22.0g)を加え、70℃で12時間撹拌して溶解させ、ポリイミド溶液(1)を得た。
【0083】
<合成例7>
BODA(2.50g,10.0mmol)、DA-2(1.69g,8.0mmol)、DA-6(1.94g,8.0mmol)及びDA-9(1.58g,4.0mmol)をNMP(30.8g)中で混合し、60℃で3時間反応させた後、CBDA(1.94g,9.9mmol)及びNMP(7.8g)を加え、40℃で3時間反応させポリアミック酸溶液(6-a)を得た。このポリアミック酸のMnは10,860、Mwは36,010であった。得られたポリアミック酸溶液(6-a)(6.0g)にNMP(6.0g)及びBCS(8.0g)を加え室温で2時間撹拌することにより、ポリアミック酸溶液(6)を得た。
【0084】
<合成例8>
合成例7で得られたポリアミック酸溶液(6-a)(20.0g)に、NMPを加え6.5質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(4.23g)及びピリジン(1.31g)を加え、50℃で3時間反応させた。この反応溶液をメタノール(270mL)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、60℃で減圧乾燥しポリイミド粉末を得た。このポリイミド粉末のイミド化率は53%であり、Mnは9,920、Mwは32,300であった。得られたポリイミド粉末(3.0g)にNMP(22.0g)を加え、70℃で12時間撹拌して溶解させ、ポリイミド溶液(2)を得た。
【0085】
<合成例9>
BODA(2.50g,10.0mmol)、DA-4(1.59g,8.0mmol)、DA-6(1.94g,8.0mmol)及びDA-9(1.58g,4.0mmol)をNMP(30.4g)中で混合し、60℃で3時間反応させた後、CBDA(1.92g,9.8mmol)及びNMP(7.7g)を加え、40℃で3時間反応させポリアミック酸溶液(7-a)を得た。このポリアミック酸のMnは11,030、Mwは33,050であった。得られたポリアミック酸溶液(7-a)(6.0g)にNMP(6.0g)及びBCS(8.0g)を加え室温で2時間撹拌することにより、ポリアミック酸溶液(7)を得た。
【0086】
<合成例10>
合成例9で得られたポリアミック酸溶液(7-a)(20.0g)に、NMPを加え6.5質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(4.27g)及びピリジン(1.32g)を加え、50℃で3時間反応させた。この反応溶液をメタノール(270mL)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、60℃で減圧乾燥しポリイミド粉末を得た。このポリイミド粉末のイミド化率は58%であり、Mnは10,490、Mwは31,280であった。得られたポリイミド粉末(3.0g)にNMP(22.0g)を加え、70℃で12時間撹拌して溶解させ、ポリイミド溶液(3)を得た。
【0087】
<合成例11>
BODA(2.50g,10.0mmol)、DA-3(3.37g,8.0mmol)、DA-7(1.42g,6.0mmol)及びDA-8(2.28g,6.0mmol)をNMP(38.3g)中で混合し、60℃で3時間反応させた後、CBDA(1.95g,9.9mmol)及びNMP(7.8g)を加え、40℃で3時間反応させ、ポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸のMnは9,100、Mwは24,540であった。得られたポリアミック酸溶液(20.0g)に、NMPを加え6.5質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(3.54g)及びピリジン(1.10g)を加え、80℃で3時間反応させた。この反応溶液をメタノール(230mL)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、60℃で減圧乾燥しポリイミド粉末を得た。このポリイミド粉末のイミド化率は78%であり、Mnは9,040、Mwは21,020であった。得られたポリイミド粉末(3.0g)にNMP(22.0g)を加え、70℃で12時間撹拌して溶解させ、ポリイミド溶液(4)を得た。
【0088】
<合成例12>
TCA(4.37g,19.5mmol)、DA-1(1.58g,8.0mmol)、DA-6(1.94g,8.0mmol)及びDA-9(1.58g,4.0mmol)をNMP(37.9g)中で混合し、60℃で6時間反応させポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸のMnは、11,860、Mwは45,870であった。得られたポリアミック酸溶液(20.0g)に、NMPを加え6.5質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(8.53g)及びピリジン(1.32g)を加え、80℃で4時間反応させた。この反応溶液をメタノール(285mL)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、60℃で減圧乾燥しポリイミド粉末を得た。このポリイミド粉末のイミド化率は66%であり、Mnは10,500、Mwは41,300であった。得られたポリイミド粉末(3.0g)にNMP(22.0g)を加え、70℃で12時間撹拌して溶解させ、ポリイミド溶液(5)を得た。
【0089】
<合成例13>
TCA(4.46g,19.9mmol)、DA-4(1.59g,8.0mmol)、DA-6(1.45g,6.0mmol)及びDA-8(2.28g,6.0mmol)をNMP(39.1g)中で混合し、60℃で6時間反応させポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸のMnは11,900、Mwは44,800であった。得られたポリアミック酸溶液(20.0g)に、NMPを加え6.5質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(6.66g)及びピリジン(1.29g)を加え、100℃で2時間反応させた。この反応溶液をメタノール(243mL)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、60℃で減圧乾燥しポリイミド粉末を得た。このポリイミド粉末のイミド化率は73%であり、Mnは10,500、Mwは40,300であった。得られたポリイミド粉末(3.0g)にNMP(22.0g)を加え、70℃で12時間撹拌して溶解させ、ポリイミド溶液(6)を得た。
【0090】
<合成例14>
TCA(4.42g,19.7mmol)、DA-3(3.37g,8.0mmol)、DA-8(2.28g,6.0mmol)及びDA-7(1.42g,6.0mmol)をNMP(46.0g)中で混合し、60℃で6時間反応させ、ポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸のMnは11,750、Mwは54,510であった。得られたポリアミック酸溶液(20.0g)に、NMPを加え6.5質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(5.65g)及びピリジン(1.09g)を加え、80℃で2時間反応させた。この反応溶液をメタノール(239mL)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、60℃で減圧乾燥しポリイミド粉末を得た。このポリイミド粉末のイミド化率は71%であり、Mnは10,700、Mwは48,300であった。得られたポリイミド粉末(3.0g)にNMP(22.0g)を加え、70℃で12時間撹拌して溶解させ、ポリイミド溶液(7)を得た。
【0091】
<合成例15>
BODA(2.50g,10.0mmol)、DA-5(0.99g,5.0mmol)、DA-10(0.66g,2.0mmol)、DA-7(1.43g,6.0mmol)及びDA-9(2.76g,7.0mmol)をNMP(33.4g)中で混合し、60℃で3時間反応させた後、CBDA(1.93g,9.8mmol)及びNMP(7.7g)を加え、40℃で3時間反応させ、ポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸のMnは11,900、Mwは44,800であった。得られたポリアミック酸溶液(20.0g)に、NMPを加え6.5質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(3.96g)及びピリジン(1.23g)を加え、50℃で3時間反応させた。この反応溶液をメタノール(270mL)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、60℃で減圧乾燥しポリイミド粉末を得た。このポリイミド粉末のイミド化率は59%であり、Mnは9,260、Mwは23,400であった。得られたポリイミド粉末(3.0g)にNMP(22.0g)を加え、70℃で12時間撹拌して溶解させた後、NMP(5.0g)とBCS(20.0g)を加え室温で2時間撹拌することによりポリイミド溶液(8)を得た。
【0092】
<合成例16>
TCA(4.45g,19.8mmol)、DA-5(1.39g,7.0mmol)、DA-10(1.65g,5.0mmol)、DA-7(0.94g,4.0mmol)及びDA-11(3.03g,4.0mmol)をNMP(45.9g)中で混合し、60℃で6時間反応させポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸のMnは10,360、Mwは27,730であった。得られたポリアミック酸溶液(20.0g)に、NMPを加え6.5質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(7.10g)及びピリジン(1.10g)を加え、80℃で4時間反応させた。この反応溶液をメタノール(240mL)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、60℃で減圧乾燥しポリイミド粉末を得た。このポリイミドのイミド化率は68%であり、Mnは10,210、Mwは23,320であった。得られたポリイミド粉末(3.0g)にNMP(22.0g)を加え、70℃で12時間撹拌して溶解させた後、NMP(5.0g)とBCS(20.0g)を加え室温で2時間撹拌することによりポリイミド溶液(9)を得た。
【0093】
上記合成例で得られる各重合体の仕様は、下記の表1に示すとおりである。
【表1】
【0094】
<液晶配向剤の調製>
【0095】
[実施例1]
合成例1で得られたポリアミック酸溶液(1)(6.0g)にNMP(6.0g)及びBCS(8.0g)を加え室温で2時間撹拌することにより液晶配向剤(A-1)を得た。
【0096】
[実施例2、比較例1、2]
ポリアミック酸溶液(1)の代わりにそれぞれポリアミック酸溶液(2)、(3)、(4)を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2、比較例1、2の液晶配向剤(A-2)、(B-1)、(B-2)を得た。
【0097】
[実施例3]
合成例6で得られたポリイミド溶液(1)(10.0g)にNMP(2.0g)及びBCS(8.0g)を加え室温で2時間撹拌することにより液晶配向剤(A-3)を得た。
【0098】
[実施例4、5、比較例3~6]
ポリイミド溶液(1)の代わりにそれぞれポリイミド溶液(2)、(5)、(3)、(4)、(6)、(7)を用いた以外は、実施例3と同様にして、実施例4、5、比較例3~6の液晶配向剤(A-4)、(A-5)、(B-3)~(B-6)を得た。
【0099】
[実施例6]
合成例5で得られたポリアミック酸溶液(5)(7.0g)、合成例15で得られたポリイミド溶液(8)(3.0g)及びAD-1(0.06g)を混合し、液晶配向剤(C-1)を得た。
【0100】
[実施例7、比較例7]
ポリアミック酸溶液(5)の代わりにそれぞれポリミック酸溶液(6)、(7)を用いた以外は、実施例6と同様にして、実施例7、比較例7の液晶配向剤(C-2)、(C-3)を得た。
【0101】
[比較例8]
比較例4で得られた液晶配向剤(B-4)(7.0g)、合成例16で得られたポリイミド溶液(9)(3.0g)及びAD-1(0.06g)を混合し、液晶配向剤(C-4)を得た。
【0102】
【0103】
上記の通り得られた液晶配向剤(A-1)~(A-5)、(B-1)~(B-6)、(C-1)~(C-4)には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。得られた液晶配向剤を用いて、透過率の評価、液晶セルの作製、電圧保持率の評価、残留DC電圧、残像特性の評価を行った。
【0104】
[透過率の評価]
実施例及び比較例で得られた液晶配向剤(A-1)~(A-4)、(B-1)~(B-3)、(C-1)~(C-4)を石英基板にスピンコートし、70℃のホットプレート上で90秒間乾燥させた。その後、230℃のIR(赤外線)式オーブンで20分間焼成を行い、膜厚100nmの塗膜を形成させて、液晶配向膜付き基板を得た。この液晶配向膜付き基板を内側にし、もう一枚石英基板を用いて光の干渉を防ぐ目的で屈折液(島津デバイス製造社製 接触液)を挟んだ。透過率の評価には、測定装置にUV-3600(島津製作所社製)を用い、温度25℃、スキャン波長を380~800nmで測定した。その際、リファレンスには塗膜していない2枚の石英基板で屈折液を挟んだものを用いた。評価は、550nmの波長の透過率を基準とし、その値を下記の表3に示す。
【0105】
[電圧保持率及び残留DC特性評価用液晶表示素子の作製]
実施例及び比較例で得られた液晶配向剤(A-1)~(A-5)、(B-1)~(B-6)、(C-1)~(C-4)を用いて下記に示すような手順で液晶セルの作製を行った。液晶配向剤をITO電極付きガラス基板にスピンコートし、70℃のホットプレート上で90秒間乾燥した後、230℃のIR式オーブンで20分間焼成を行い、膜厚100nmの液晶配向膜を形成した。この液晶配向膜付き基板を2枚用意し、その1枚の液晶配向膜上に直径4μmのビーズスペーサー(日揮触媒化成社製、真絲球、SW-D1)を塗布し、熱硬化性シール剤(三井化学社製 XN-1500T)を印刷した。次いで、もう一方の基板の液晶配向膜が形成された側の面を内側にして、先の基板と貼り合せた後、シール剤を硬化させて空セルを作製した。この空セルに液晶MLC-3023(メルク社製)を減圧注入法によって注入し、液晶セルを作製した。次に、この液晶セルに15VのDC電圧を印加した状態で、液晶セルの外側から325nm以下カットフィルターを通したUVを10J/cm2照射した。なお、UVの照度は、ORC社製UV-MO3Aを用いて測定した。その後、液晶セル中に残存している未反応の重合性化合物を失活させる目的で、電圧を印加していない状態で東芝ライテック社製UV-FL照射装置を用いてUV(UVランプ:FLR40SUV32/A-1)を30分間照射した。
【0106】
[残像特性評価用液晶表示素子の作製]
実施例及び比較例で得られた液晶配向剤(A-1)~(A-5)、(B-1)~(B-5)、(C-1)~(C-4)を用いて下記に示すような手順で液晶セルの作製を行った。液晶配向剤を画素サイズが200μm×600μmでライン/スペースがそれぞれ3μmのITO電極パターンが形成されているITO電極基板(縦:35mm、横:30mm、厚さ:0.7mm)と、高さ3.2μmのフォトスペーサーがパターニングされているITO電極付きガラス基板(縦:35mm、横:30mm、厚さ:0.7mm)のITO面上にそれぞれスピンコートし、ホットプレート上にて70℃で90秒間乾燥した後、230℃のIR式オーブンで20分間焼成を行い、膜厚100nmの液晶配向膜を形成した。なお、このITO電極パターンが形成されているITO電極基板は、クロスチェッカー(市松)模様に4分割されており4つのエリアごとで別々に駆動ができるようになっている。
次に、シール剤(三井化学社製 XN-1500T)を印刷した。次いで、もう一方の基板の液晶配向膜が形成された側の面を内側にして、先の基板と張り合わせた後、シール剤を硬化させて空セルを作成した。この空セルに液晶MLC-3023(メルク社製)を減圧注入法によって注入し、液晶セルを作成した。この液晶セルに15VのDC電圧を印加した状態で、この液晶セルの外側から325nm以下カットフィルターを通したUVを10J/cm2照射した。なお、UVの照度は、ORC社製UV-MO3Aを用いて測定した。その後、液晶セル中に残存している未反応の重合性化合物を失活させる目的で、電圧を印加していない状態で東芝ライテック社製UV-FL照射装置を用いてUV(UVランプ:FLR40SUV32/A-1)を30分間照射した。
【0107】
[電圧保持率の評価]
UV照射後の電圧保持率評価用の液晶セルを用いて電圧保持率を測定した。60℃の熱風循環オーブン中で1Vの電圧を60μs間印加し、その後16.67msec後の電圧を測定し、電圧がどのくらい保持できているかを電圧保持率として計算した。電圧保持率の測定には、東陽テクニカ社製のVHR-1を使用した。その値を下記の表3に示す。値が高いほど良好である。
【0108】
[エージング]
PSA処理後の液晶セルを85℃、湿度85%に設定した高温高湿オーブンに3~7日間放置して、高温高湿条件下でエージングした。この際、初期、PSA処理後、およびエージング後の電圧保持率を測定した。また、エージングによる電圧保持率の低下値(Δ(PSA処理後-エージング後))を算定した。それぞれの結果を、下記の表3に示す。
【0109】
[残留DC電圧の評価]
上記で作製した電圧保持率評価用の液晶セルに対し、直流2Vを重畳した30Hz、7.8Vppの矩形波を25℃で100時間印加し、直流電圧を切って1時間後の液晶セル内に残留した電圧(残留DC電圧)をフリッカー消去法により求めた。この値はDC蓄積により発生する残像の指標となり、この値が50mV以下であるとき、残像特性に優れている、即ち「良好」とし、50mVよりも大きい場合は「不良」とした。結果を下記の表3に示す。
【0110】
[残像特性]
上記で作製した残像特性評価用の液晶セルを用いて、4つの画素エリアのうち対角線の2つのエリアに60Hz、20Vp-pの交流電圧を印加し、25℃の温度下で168時間駆動させた。その後、4つの画素エリアすべてを5Vp-pの交流電圧で駆動させ、画素の輝度差を目視で観察した。輝度差がほぼ確認できない状態を「良好」とし、輝度差が確認できる状態を「不良」とした。評価結果を表3に示す。
【表3】
*1)エージング3日、*2)エージング7日
【0111】
表3に示されるように、式(S1)で表される構造を有するジアミンおよび式(2c)で表される構造を有するジアミンを用いて得られたポリアミック酸またはポリイミドを含有する実施例1~4、6、7の液晶配向剤(A-1)~(A-4)、(C-1)、(C-2)を用いて得られる液晶配向膜は、対応する比較例1~3、7、8の液晶配向剤(B-1)~(B-3)、(C-3)、(C-4)を用いて得られる液晶配向膜と比較し、高い透過率が得られた。なお、透過率における1%の差は当技術分野においては顕著な差である。
また、実施例で得られる液晶配向剤を用いると、電圧保持率及びエージングの評価においても高い電圧保持率を有する液晶配向膜が得られることが分かる。また、残留DC電圧の評価及び残像特性評価においても、良好な特性を示す液晶配向膜が得られることが分かる。
【0112】
なお、2020年3月30日に出願された日本特許出願2020-060306号の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。