(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】撮像素子、及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
H10F 39/12 20250101AFI20250304BHJP
H10F 39/18 20250101ALI20250304BHJP
H04N 25/702 20230101ALI20250304BHJP
H04N 25/703 20230101ALI20250304BHJP
H04N 25/704 20230101ALI20250304BHJP
H04N 25/70 20230101ALI20250304BHJP
【FI】
H10F39/12 D
H10F39/18 E
H04N25/702
H04N25/703
H04N25/704
H04N25/70
(21)【出願番号】P 2023078342
(22)【出願日】2023-05-11
(62)【分割の表示】P 2018248623の分割
【原出願日】2018-12-28
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智
(72)【発明者】
【氏名】中山 史人
【審査官】柴山 将隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-109779(JP,A)
【文献】特開2014-067948(JP,A)
【文献】国際公開第2017/130725(WO,A1)
【文献】特開2016-051746(JP,A)
【文献】特開2011-216826(JP,A)
【文献】特開2014-082310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10F 39/12
H10F 39/18
H04N 25/702
H04N 25/703
H04N 25/704
H04N 25/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に向かう第1の光と第2の方向に向かう第2の光とを透過する第1マイクロレンズと、
前記第1の方向に向かう第3の光と前記第2の方向に向かう第4の光とを透過する第2マイクロレンズと、
前記第1マイクロレンズを透過した前記第1の光を電荷に変換する第1光電変換部と、
前記第2マイクロレンズを透過した前記第4の光を電荷に変換する第2光電変換部と、
前記第1光電変換部で変換された電荷に基づく信号を出力するための第1電極と、
前記第2光電変換部で変換された電荷に基づく信号を出力するための第2電極と、
前記第1マイクロレンズを透過した前記第2の光を遮る遮光部であって、前記第1マイクロレンズと前記第1電極との間に設けられる有機材料の第1遮光部と
、
前記第2マイクロレンズを透過した前記第3の光を遮る遮光部であって、前記第2マイクロレンズと前記第2電極との間に設けられる有機材料の第2遮光部と
を備える撮像素子。
【請求項2】
請求項
1に記載の撮像素子において、
前記第1マイクロレンズは、光学系の第1領域を透過した前記第1の光と、前記第1領域とは異なる第2領域を透過した前記第2の光
とを透過し、
前記第2マイクロレンズは、前記第1領域を透過した前記第3の光と、前記第2領域を透過した前記第4の光とを透過する撮像素子。
【請求項3】
請求項
1または請求項
2に記載の撮像素子において、
前記第1光電変換部は、前記第1マイクロレンズを透過した前記第1の光と、前記第1マイクロレンズと前記第1遮光部とを透過した光と、を電荷に変換し、
前記第2光電変換部は、前記第2マイクロレンズを透過した前記第4の光と、前記第2マイクロレンズと前記第2遮光部とを透過した光と、を電荷に変換する撮像素子。
【請求項4】
請求項
1から請求項
3のいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記第1マイクロレンズを透過した光が入射する方向と交差する方向において、前記第1遮光部の長さは、前記第1光電変換部側よりも前記第1マイクロレンズ側の方が短く、
前記第2マイクロレンズを透過した光が入射する方向と交差する方向において、前記第2遮光部の長さは、前記第2光電変換部側よりも前記第2マイクロレンズ側の方が短い撮像素子。
【請求項5】
請求項
1から請求項
3のいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記第1マイクロレンズを透過した光が入射する方向と交差する方向において、前記第1遮光部の面積は、前記第1光電変換部側よりも前記第1マイクロレンズ側の方が小さく、
前記第2マイクロレンズを透過した光が入射する方向と交差する方向において、前記第2遮光部の面積は、前記第2光電変換部側よりも前記第2マイクロレンズ側の方が小さい撮像素子。
【請求項6】
請求項
1から請求項
3のいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記第1マイクロレンズを透過した光が入射する方向と交差する方向において、前記第1遮光部の長さは、前記第1光電変換部側よりも前記第1マイクロレンズ側の方が長く、
前記第2マイクロレンズを透過した光が入射する方向と交差する方向において、前記第2遮光部の長さは、前記第2光電変換部側よりも前記第2マイクロレンズ側の方が長い撮像素子。
【請求項7】
請求項
1から請求項
3のいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記第1マイクロレンズを透過した光が入射する方向と交差する方向において、前記第1遮光部の面積は、前記第1光電変換部側よりも前記第1マイクロレンズ側の方が大きく、
前記第2マイクロレンズを透過した光が入射する方向と交差する方向において、前記第2遮光部の面積は、前記第2光電変換部側よりも前記第2マイクロレンズ側の方が大きい撮像素子。
【請求項8】
請求項
1から請求項
7のいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記第1遮光部と、前記第1光電変換部との間に設けられる平坦化層または保護層を備え
、
前記第1光電変換部は、第1分光特性を有する第1フィルタを透過した前記第1の光を電荷に変換し、
前記第2光電変換部は、前記第1分光特性を有する第2フィルタを透過した前記第4の光を電荷に変換し、
前記第2光電変換部は、行方向において前記第1光電変換部と並んで配置される撮像素子。
【請求項9】
請求項
1から請求項
8のいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記第2遮光部と、前記第2光電変換部との間に設けられる平坦化層または保護層を備える撮像素子。
【請求項10】
請求項
1から請求項
9のいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記第1遮光部は、前記第2の光を吸収し、
前記第2遮光部は、前記第3の光を吸収する撮像素子。
【請求項11】
請求項
1から請求項
10のいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記第1遮光部は、黒フィルタであり、
前記第2遮光部は、黒フィルタである撮像素子。
【請求項12】
請求項
1から請求項
11のいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記第1光電変換部は、有機材料の光電変換部であり、
前記第2光電変換部は、有機材料の光電変換部である撮像素子。
【請求項13】
請求項
1から請求項
12のいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記第1光電変換部で変換された電荷に基づく信号を出力するための第3電極と、
前記第2光電変換部で変換された電荷に基づく信号を出力するための第4電極と
を備え、
前記第1光電変換部は、前記第1電極と前記第3電極の間に設けられ、
前記第2光電変換部は、前記第2電極と前記第4電極の間に設けられる撮像素子。
【請求項14】
請求項
1から請求項
13のいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記第1光電変換部で変換された電荷に基づく信号であって、焦点検出に用いられる第1信号を出力する第1出力部と、
前記第2光電変換部で変換された電荷に基づく信号であって、焦点検出に用いられる第2信号を出力する第2出力部とを備える撮像素子。
【請求項15】
請求項
14に記載の撮像素子と、
前記第1信号と前記第2信号とに基づいて、光学系の焦点検出を行う検出部とを備える撮像装置。
【請求項16】
請求項1から請求項
14のいずれか一項に記載の撮像素子を備える撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子、及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属材料からなる遮光層が形成された撮像装置が知られている(特許文献1)。従来から焦点検出精度の向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
発明の第1の態様によると、撮像素子は、第1の方向に向かう第1の光と第2の方向に向かう第2の光とを透過する第1マイクロレンズと、前記第1の方向に向かう第3の光と前記第2の方向に向かう第4の光とを透過する第2マイクロレンズと、前記第1マイクロレンズを透過した前記第1の光を電荷に変換する第1光電変換部と、前記第2マイクロレンズを透過した前記第4の光を電荷に変換する第2光電変換部と、前記第1光電変換部で変換された電荷に基づく信号を出力するための第1電極と、前記第2光電変換部で変換された電荷に基づく信号を出力するための第2電極と、前記第1マイクロレンズを透過した前記第2の光を遮る遮光部であって、前記第1マイクロレンズと前記第1電極との間に設けられる有機材料の第1遮光部と、前記第2マイクロレンズを透過した前記第3の光を遮る遮光部であって、前記第2マイクロレンズと前記第2電極との間に設けられる有機材料の第2遮光部とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】第1の実施の形態に係る撮像装置の構成例を示す図である。
【
図2】第1の実施の形態に係る撮像素子の画素の配置例を示す図である。
【
図3】第1の実施の形態に係る撮像素子の画素の構成例を示す図である。
【
図4】変形例1に係る撮像素子の画素の構成例を示す図である。
【
図5】変形例2に係る撮像素子の画素の構成例を示す図である。
【
図6】変形例2に係る撮像素子のAF画素の特性を説明するための図である。
【
図7】変形例2に係る撮像素子の画素の構成例を示す図である。
【
図8】変形例2に係る撮像素子の画素の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る撮像装置の一例であるカメラ1の構成例を示す図である。カメラ1は、カメラボディ2と、カメラボディ2に取り付け可能なアクセサリである交換レンズ3とにより構成される。交換レンズ3は、不図示のマウント部により、カメラボディ2に着脱可能に装着される。カメラボディ2に交換レンズ3が装着されると、ボディ側接続部202に設けられた端子とレンズ側接続部302に設けられた端子とが電気的に接続される。これにより、カメラボディ2から交換レンズ3への電力供給や、カメラボディ2及び交換レンズ3間の通信が可能となる。
【0007】
被写体からの光は、
図1のZ軸プラス方向に向かって入射する。また、
図1の座標軸に示すように、Z軸に直交する紙面手前方向をX軸プラス方向、Z軸及びX軸に直交する紙面下方向をY軸プラス方向とする。以降の図においては、
図1の座標軸を基準として、それぞれの図の向きが分かるように座標軸を表示する場合もある。
【0008】
交換レンズ3は、撮影光学系(結像光学系)31と、レンズ制御部32と、レンズメモリ33とを備える。撮影光学系31は、フォーカスレンズ(焦点調節レンズ)を含む複数のレンズと絞りとを含み、カメラボディ2の撮像素子22の撮像面22aに被写体像を形成する。なお、撮像素子22の撮像面22aは、例えば、後述する光電変換部が配置される面、またはマイクロレンズが配置される面である。
【0009】
レンズ制御部32は、CPUやFPGA、ASIC等のプロセッサ、及びROMやRAM等のメモリにより構成され、制御プログラムに基づいて交換レンズ3の各部を制御する。レンズ制御部32は、ボディ制御部21からフォーカスレンズの移動方向や移動量などを示す信号が入力されると、その信号に基づいてフォーカスレンズを光軸L1方向に進退移動させて撮影光学系31の焦点位置を調節する。また、レンズ制御部32は、ボディ制御部21から出力される信号に基づき、絞りの開口径を制御する。
【0010】
レンズメモリ33は、不揮発性の記憶媒体等により構成される。レンズメモリ33には、交換レンズ3に関連する情報が記憶される。レンズメモリ33には、フォーカスレンズの無限遠位置や至近位置に関するデータや、交換レンズ3の最短焦点距離と最長焦点距離に関するデータ、F値(絞りの絞り値)に関するデータ等が記憶される。レンズメモリ33へのデータの書き込みや、レンズメモリ33からのデータの読み出しは、レンズ制御部32によって制御される。
【0011】
次に、カメラボディ2の構成について説明する。カメラボディ2は、ボディ制御部21と、撮像素子22と、メモリ23と、表示部24と、操作部25とを備える。撮像素子22は、CMOSイメージセンサやCCDイメージセンサである。撮像素子22は、撮影光学系31により形成される被写体像を撮像する。撮像素子22は、光電変換部を有する複数の画素が二次元状(行方向及び列方向)に配置される。撮像素子22は、受光した光を光電変換部で光電変換して信号を生成し、生成した信号をボディ制御部21に出力する。
【0012】
撮像素子22は、後述するように、画像生成に用いる信号を出力する撮像画素と、焦点検出に用いる信号を出力するAF画素(焦点検出画素)とを有する。撮像画素は、ベイヤー配列に従って配置されている。AF画素は、撮像画素の一部に置換して配置され、撮像素子22の撮像面22aのほぼ全面に分散して配置される。
【0013】
メモリ23は、不揮発性の記憶媒体等により構成される。メモリ23には、画像データや制御プログラム等が記録される。メモリ23へのデータの書き込みや、メモリ23からのデータの読み出しは、ボディ制御部21によって制御される。表示部24は、画像データに基づく画像、AF枠などの焦点検出領域(AFエリア)を示す画像、シャッター速度やF値等の撮影に関する情報、及びメニュー画面等を表示する。操作部25は、レリーズボタン、電源スイッチ、各種モードを切り替えるためのスイッチなどの各種設定スイッチ等を含み、それぞれの操作に基づく信号をボディ制御部21へ出力する。
【0014】
ボディ制御部21は、CPUやFPGA、ASIC等のプロセッサ、及びROMやRAM等のメモリにより構成され、制御プログラムに基づきカメラ1の各部を制御する。ボディ制御部21は、画像データ生成部21aと焦点検出部21bとを有する。画像データ生成部21aは、撮像素子22の撮像画素から出力される信号に各種の画像処理を行って画像データを生成する。なお、画像データ生成部21aは、撮像素子22のAF画素から出力される信号も用いて画像データを生成してもよい。画像処理には、階調変換処理や色補間処理等の画像処理が含まれる。
【0015】
焦点検出部21bは、撮影光学系31の自動焦点調節(AF)に必要な焦点検出処理を行う。焦点検出部21bは、撮影光学系31による像が撮像素子22の撮像面22a上に合焦(結像)するためのフォーカスレンズの合焦位置(合焦位置までのフォーカスレンズの移動量)を検出する。焦点検出部21bは、撮像素子22の一対のAF画素(AF画素対)から出力される第1及び第2の信号を用いて、位相差検出方式によりデフォーカス量を算出する。
【0016】
焦点検出部21bは、撮影光学系31の射出瞳の第1の瞳領域を通過した第1の光束による像を撮像して生成した信号と第2の瞳領域を通過した第2の光束による像を撮像して生成した信号とを相関演算して、像ズレ量を算出する。焦点検出部21bは、この像ズレ量を所定の換算式に基づきデフォーカス量に換算する。焦点検出部21bは、算出したデフォーカス量に基づいて、合焦位置までのフォーカスレンズの移動量を算出する。
【0017】
焦点検出部21bは、デフォーカス量が許容値以内か否かを判定する。焦点検出部21bは、デフォーカス量が許容値以内であれば合焦していると判断する。一方、焦点検出部21bは、デフォーカス量が許容値を超えている場合は合焦していないと判断し、交換レンズ3のレンズ制御部32へフォーカスレンズの移動量とレンズ移動を指示する信号を送信する。レンズ制御部32が、移動量に応じてフォーカスレンズを移動することにより、焦点調節が自動で行われる。
以下では、本実施の形態による撮像素子22の構成について説明する。特に、
図2~
図3を用いて、吸収部43の働きを説明する。
【0018】
撮像素子22の概要を説明すると以下の通りである。
図2を参照すると、撮像素子22は、複数の第1画素11および複数の第2画素13を有する。第1画素11と第2画素13は、AF用画素である。第1画素11と第2画素13が一対となって焦点調節状態を示す信号を生成する。
図3を参照すると、第1画素11は、光学系を透過した第1の光61及び第2の光62が入射する第1のマイクロレンズ44と、光を光電変換して電荷を生成する第1の光電変換部42と、第1のマイクロレンズ44と第1の光電変換部42との間に配置された第1の吸収部43とを有する。第1の吸収部43は、第1のマイクロレンズ44を透過した第2の光62の一部を吸収する。第2画素13は、光学系を透過した第1の光61及び第2の光62が入射する第2のマイクロレンズ44と、光を光電変換して電荷を生成する第2の光電変換部42と、第2のマイクロレンズ41と第2の光電変換部42との間に第2の吸収部43を有する。第2の吸収部43は、第2のマイクロレンズ41を透過した第1の光61の一部を吸収する。
【0019】
図2は、第1の実施の形態に係る撮像素子22の画素の配置例を示す図である。撮像素子22では、画素が二次元状(行方向(±X方向)及び列方向(±Y方向))に配置される。
図2に示す例は、8行8列の計64個の画素を図示している。なお、撮像素子22に配置される画素の数及び配置は、図示した例に限られない。
【0020】
撮像素子22は、複数の撮像画素12とAF画素11、13とを有する。撮像画素12には、赤(R)、緑(G)、青(B)の異なる分光特性を有する3つのカラーフィルタ(色フィルタ)51のいずれかが設けられる。撮像画素12には、入射した光のうち第1の波長域の光(赤(R)の光)を分光する分光特性を有するカラーフィルタ51を有する画素(以下、R画素と称する)と、入射した光のうち第2の波長域の光(緑(G)の光)を分光する分光特性を有するカラーフィルタ51を有する画素(以下、G画素と称する)と、入射した光のうち第3の波長域の光(青(B)の光)を分光する分光特性を有するカラーフィルタ51を有する画素(以下、B画素と称する)とが含まれる。R画素12rと、G画素12gと、B画素12bとは、ベイヤー配列に従って配置されている。
【0021】
AF画素11、13は、上述のようにベイヤー配列されたR、G、Bの撮像画素12の一部に置換して配置される。AF画素11及びAF画素13には、入射した光のうち第2の波長域の光(緑(G)の光)を分光する分光特性を有するカラーフィルタ51が配置される。なお、AF画素11とAF画素13の各々が有するカラーフィルタは、第1の波長域の光(赤(R)の光)または第3の波長域の光(青(B)の光)を分光する分光特性を有するカラーフィルタであってもよい。また、AF画素11とAF画素13は、入射した光のうち第1及び第2及び第3波長域の光を分光する分光特性を有するフィルタを有していてもよい。あるいは、AF画素11及びAF画素13には、カラーフィルタ51を配置しなくてもよい。
【0022】
本実施の形態に係るAF画素11、13には、入射した光を吸収する吸収部43が設けられる。AF画素11とAF画素13とは、その吸収部43の位置が異なる。AF画素11及びAF画素13の各々の吸収部43は、撮影光学系31の射出瞳の互いに異なる領域を通過した光が光電変換部42に入射するように配置される。後述するが、AF画素11、13の各々の吸収部43は、撮影光学系31の射出瞳の互いに異なる領域を通過した光61、62の一部を吸収する。AF画素11、13の各々の光電変換部42は、マイクロレンズ44及びカラーフィルタ51を透過した光のうち、吸収部43で吸収されなかった光を光電変換する。
【0023】
撮像素子22は、
図2に示すように、R画素12rとG画素12gとが±X方向、即ち行方向に交互に配置された第1の画素群401と、G画素12gとB画素12bとが行方向に交互に配置された第2の画素群402とを有する。また、撮像素子22は、G画素12gとAF画素11、13とが行方向に配置された第3の画素群403を有する。
図2に示す例では、AF画素11とAF画素13とは、両者の間にG画素12gを挟んで、交互に配置されている。
【0024】
第3の画素群403は、AF画素11、13の両方を有していなくてもよい。第2の画素群402がG画素12g及びAF画素11を有し、第3の画素群403がG画素12g及びAF画素13を有していてもよい。また、第3の画素群403は、第2の画素群402のB画素12bが配置される複数の列にAF画素11、13を有しているが、第2の画素群402のB画素12bが配置される複数の列の一部にAF画素11、13を有していてもよい。
図3の2つの画素11のいずれか一方、また、2つの画素13のいずれか一方を省略してもよい。第3の画素群403は、AF画素11、13の少なくとも一方とG画素12gとB画素12bとを有していてもよい。
【0025】
図3は、第1の実施の形態に係る撮像素子22の撮像画素及びAF画素の構成例を示す図である。
図3は、撮像素子22に設けられた画素のうち、1つの撮像画素12と、1つのAF画素11と、1つのAF画素13とを示している。上述したように、撮影光学系31を通過した光は、主にZ軸プラス方向へ向かって撮像素子22に入射する。撮影光学系31の射出瞳を略2等分した一方の第1の瞳領域を通過した光束を第1の光束61として実線矢印で示し、略2等分した他方の第2の瞳領域を通過した光束を第2の光束62として破線矢印で示す。
【0026】
撮像素子22は、基板110と、基板110に積層して設けられる配線層111とを備える。基板110は、シリコン等の半導体基板により構成される。配線層111は、導体膜(金属膜)及び絶縁膜を含む配線層であり、複数の配線やビアなどが配置される。導体膜には、銅、アルミニウム、タングステン等が用いられる。絶縁膜は、酸化膜や窒化膜などで構成される。
【0027】
AF画素11、撮像画素12、及びAF画素13には、それぞれ、マイクロレンズ44と、第1の平坦化層81と、カラーフィルタ51と、第2の平坦化層82と、保護層83と、第1の電極45aと、光電変換部42と、第2の電極45bと、配線53を介して第2の電極45bに接続された蓄積部54とが設けられる。マイクロレンズ44は、
図3において上方から撮影光学系31を介して入射された光を集光する。
図3に示す例では、AF画素11、13と撮像画素12には、それぞれ、Gのカラーフィルタ51が配置されている。
図3は、
図2の画素群403の±X方向に延びる切断線で切断した縦断面図である。
【0028】
第1の平坦化層(平坦化膜)81は、樹脂等の有機材料により構成され、マイクロレンズ44とカラーフィルタ51との間に設けられる。第2の平坦化層(平坦化膜)82は、樹脂等の有機材料により構成され、カラーフィルタ51と光電変換部42との間に設けられる。また、第2の平坦化層82の一部は、カラーフィルタ51と吸収部43との間に設けられ、第2の平坦化層82の他の一部は、吸収部43と第1の電極45aとの間に設けられる。保護層(保護膜)83は、例えば有機材料により構成され、吸収部43と光電変換部42との間に設けられる。保護層83は、第1の電極45aや光電変換部42を保護する。なお、光が入射する方向において、吸収部43は、第2の平坦化層82の上に設けられてもよいし、第2の平坦化層82の下に設けられてもよい。吸収部43は、保護層83の上に設けられてもよいし、保護層83の下に設けられてもよい。また、吸収部43は、保護層83内に設けられてもよい。吸収部43は、第2の平坦化層82や保護層83と同一部材であってもよい。
【0029】
光電変換部42は、有機材料からなる光電変換膜によって構成される。光電変換部42は、入射した光を電荷に変換する。第1の電極45aは、透明な電極であり、ITO(酸化インジウムスズ)、酸化チタン、酸化亜鉛などにより形成される。第2の電極45bは、アルミニウムやタングステン等の金属材料により構成される。
【0030】
第1の電極45aは、
図3に示すように、複数の画素の光電変換部42に共通の電極であり、光電変換部42の一方の面側に配置される。第2の電極45bは、画素毎に、光電変換部42の他方の面側に配置される。このように、第1の電極45a及び第2の電極45bは、光電変換部42を挟んで配置される。第1の電極45aは、光電変換部42の上部の電極であり、第2の電極45bは、光電変換部42の下部の電極である。第2の電極45bは、配線層111に設けられた配線53を介して、蓄積部54に電気的に接続されている。
【0031】
AF画素11、13は、それぞれ、マイクロレンズ44及びカラーフィルタ51を透過(通過)した光束の一部を吸収する吸収部43を有する。吸収部43は、カラーフィルタ51と光電変換部42との間に位置し、光電変換部42の第1の電極45aの上方に設けられる。本実施の形態では、吸収部43は、第2の平坦化層82内に設けられる。
図3に示す例では、第2の平坦化層82の一部の領域に、吸収部43が設けられている。
【0032】
吸収部43は、顔料等の有機材料により構成され、可視光の波長域の光を吸収する特性を有するフィルタ(黒フィルタ)である。吸収部43の波長530nmの入射光に対する消衰係数をkとすると、k=0.15~0.20程度となる。なお、吸収部43は、消衰係数k=0.1~0.30程度となるように形成してもよい。
【0033】
AF画素11の吸収部43は、光電変換部42のほぼ左半分(光電変換部42の-X方向側)の領域に対応して配置される。AF画素11の吸収部43は、光が入射する方向(Z軸方向)と交差する面(XY平面)において、AF画素11の光電変換部42の中心よりも-X方向側の領域に少なくとも一部が配置される。AF画素11の領域46は、光電変換部42のほぼ右半分(光電変換部42の+X方向側)の領域に対応した領域である。AF画素11の領域46は、光が入射する方向(Z軸方向)と交差する面(XY平面)において、AF画素11の光電変換部42の中心よりも+X方向側の領域に少なくとも一部が配置される領域である。
【0034】
他方、AF画素13の吸収部43は、光電変換部42のほぼ右半分(光電変換部42の+X方向側)の領域に対応して配置される。AF画素13の吸収部43は、光が入射する方向(Z軸方向)と交差する面(XY平面)において、AF画素13の光電変換部42の中心よりも+X方向側の領域に少なくとも一部が配置される。AF画素13の領域46は、光電変換部42のほぼ左半分(光電変換部42の-X方向側)の領域に対応した領域である。AF画素13の領域46は、光が入射する方向(Z軸方向)と交差する面(XY平面)において、AF画素13の光電変換部42の中心よりも-X方向側の領域に少なくとも一部が配置される領域である。
【0035】
AF画素11では、マイクロレンズ44及びカラーフィルタ51を透過した光束のうちの第2の光束62の一部は、吸収部43で吸収される。また、AF画素11では、マイクロレンズ44及びカラーフィルタ51を透過した光束のうちの第1の光束61は、領域46を透過して光電変換部42に入射する。AF画素11の領域46は、マイクロレンズ44及びカラーフィルタ51を通過した第1の光束61が光電変換部42に入射することを許容する開口として作用する。
【0036】
AF画素11の光電変換部42は、第1の光束61を受光し、第1の光束61を光電変換して電荷を生成する。なお、吸収部43を透過した光の一部も、光電変換部42に入射する。AF画素11の光電変換部42は、吸収部43を透過した光の一部を光電変換して電荷を生成する。
【0037】
他方、AF画素13では、マイクロレンズ44及びカラーフィルタ51を透過した光束のうちの第1の光束61の一部は、吸収部43で遮光される。また、AF画素13では、マイクロレンズ44及びカラーフィルタ51を透過した光束のうちの第2の光束62は、領域46を透過して光電変換部42に入射する。AF画素13の領域46は、マイクロレンズ44及びカラーフィルタ51を通過した第2の光束62が光電変換部42に入射することを許容する開口として作用する。
【0038】
AF画素13の光電変換部42は、第2の光束62を受光し、第2の光束62を光電変換して電荷を生成する。なお、吸収部43を透過した光の一部も、光電変換部42に入射する。AF画素13の光電変換部42は、吸収部43を透過した光の一部を光電変換して電荷を生成する。
【0039】
撮像画素12では、撮影光学系31の射出瞳の第1及び第2の瞳領域をそれぞれ通過した第1及び第2の光束61、62が、マイクロレンズ44及びカラーフィルタ51を介して光電変換部42に入射する。撮像画素12の光電変換部42は、第1及び第2の光束61、62を光電変換して電荷を生成する。
【0040】
各画素の光電変換部42で光電変換された電荷は、その画素の第1の電極45a及び第2の電極45bによって、配線53を介して蓄積部54に転送される。蓄積部54は、蓄積部54に転送された電荷を蓄積(保持)する。各画素は、不図示の増幅トランジスタを有し、蓄積部54に蓄積された電荷に基づく信号を出力する。第1の電極45a及び第2の電極45bは、光電変換部42で生成された電荷に基づく信号を出力する出力部の一部を構成する。
【0041】
AF画素11は、第1の瞳領域を通過した第1の光束61を光電変換して蓄積された電荷に基づく第1の信号Sig1を出力する。AF画素13は、第2の瞳領域を通過した第2の光束62を光電変換して蓄積された電荷に基づく第2の信号Sig2を出力する。撮像画素12は、第1の光束61及び第2の光束62を光電変換して蓄積された電荷に基づく信号を出力する。
【0042】
各画素から出力された信号は、基板110に配置された不図示の信号処理部に入力されて信号処理が施された後に、カメラ1のボディ制御部21に出力される。この信号処理部には、画素から出力された信号をデジタル信号に変換するアナログ/デジタル変換部(AD変換部)が含まれる。
【0043】
なお、
図2及び
図3においては、AF画素11、13は、行方向(±X方向)に配置されたが、列方向(±Y方向)に配置されてもよい。AF画素11、13が列方向に配置された場合には、AF画素11の吸収部43が光電変換部42のほぼ上半分と下半分の一方の領域に対応して配置され、AF画素13の吸収部43が光電変換部42のほぼ上半分と下半分の他方の領域に対応して配置される。例えば、AF画素11の吸収部43は、AF画素11の光電変換部42の中心よりも+Y方向側の領域に少なくとも一部が配置される。AF画素13の吸収部43は、AF画素13の光電変換部42の中心よりも-Y方向側の領域に少なくとも一部が配置される。
【0044】
上述したように、AF画素11及びAF画素13では、光が入射する方向と交差する方向において互いに異なる位置に吸収部43が設けられる。AF画素11の吸収部43は第2の光束62の一部を吸収し、AF画素13の吸収部43は第1の光束61の一部を吸収する。これにより、AF画素11の光電変換部42は、第1の光束61を主に受光し、AF画素13の光電変換部42は、第2の光束62を主に受光する。AF画素11から出力される第1の信号Sig1は、第1の瞳領域を通過する光による信号成分が多く、AF画素13から出力される第2の信号Sig2は、第2の瞳領域を通過する光による信号成分が多い。このため、AF画素11から出力される第1の信号Sig1及びAF画素13から出力される第2の信号Sig2を用いることで、被写体像の位相差の情報を得ることができ、デフォーカス量を算出することができる。
【0045】
また、本実施の形態では、吸収部43は、可視光をほとんど反射せずに吸収する材料により構成される。このため、反射による迷光を低減することができ、各画素で生成される信号などに影響を与えることを回避することができる。更に、吸収部43と第1の電極45aの間に、第2の平坦化層(平坦化膜)82の一部が配置される。これにより、吸収部43の平坦性を向上させることができ、各画素の吸収部43の特性にバラツキが生じることを抑制できる。なお、第2の平坦化層82を設けずに、光電変換部42の第1の電極45aの上に吸収部43を配置するようにしてもよい。
【0046】
位相差検出のための金属材料からなる遮光膜(金属遮光膜)を、有機材料からなる光電変換膜が配置された撮像素子に形成しようとすると、金属遮光膜を所定のパターン状に形成するためのエッチングを行う必要があり、光電変換膜や透明電極などの他の層(膜)にダメージを与えるおそれがある。この場合、光電変換膜や透明電極の特性が悪化し、暗電流が増加することや、画素の信号の品質低下が生じて焦点検出精度が低下することが考えられる。また、光電変換膜の直上部に金属遮光膜を配置すると、金属遮光膜と光電変換膜との間や、金属遮光膜と画素を制御するための信号線との間に負荷容量(寄生容量)が生じてしまい、画素を高速に駆動できなくなり、撮像素子22の高速な動作ができないおそれがある。
【0047】
また、一般的に、有機膜中に金属膜を形成することは困難であり、有機材料からなる平坦化膜中に金属遮光膜を配置することは困難となる。このため、金属遮光膜を配置した場合に、画素間の段差が生じて、各画素の特性にバラツキが生じるおそれがある。そもそも、有機材料からなる光電変換膜の上部に、金属遮光膜が形成できないことも考えられる。
【0048】
一方、本実施の形態では、撮像素子22には有機材料からなる遮光膜が設けられる。有機材料からなる遮光膜を形成する場合は、金属遮光膜用のエッチング液を用いる必要はなく、フォトレジスト(例えばネガレジスト)用の現像液を用いて、有機材料からなる遮光膜がパターン状に形成される。このため、他の層にダメージを与えることを抑制し、画素の特性が悪化することを防ぐことができる。また、上述のような負荷容量が生じることを防ぐことができ、処理速度の低下が生じることを回避することができる。
【0049】
次に、本実施の形態に係るカメラ1の動作例について説明する。カメラ1は、操作部25の電源スイッチが操作されると、撮像素子22からAF画素11の第1の信号Sig1、AF画素13の第2の信号Sig2、及び撮像画素12の信号が、順次出力される。ボディ制御部21の焦点検出部21bは、撮像素子22のAF画素11、13から出力される第1の信号Sig1及び第2の信号Sigを用いて、位相差検出方式によりデフォーカス量を算出する。レンズ制御部32は、焦点検出部21bにより算出されたデフォーカス量に基づき、撮影光学系31のフォーカスレンズを合焦位置に移動して焦点調節する。なお、フォーカスレンズを移動する代わりに、撮像素子22を撮影光学系31の光軸L1方向に移動するようにしてもよい。
【0050】
ボディ制御部21の画像データ生成部21aは、撮像素子22の撮像画素12から出力される信号に基づき、画像データを生成する。画像データ生成部21aは、被写体のスルー画像(ライブビュー画像)用の画像データや、記録用の画像データを生成する。表示部24は、スルー画像用の画像データに基づいて画像を表示する。記録用の画像データは、メモリ23に記録される。
【0051】
上述した実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)撮像素子22は、光学系を透過した第1の光61及び第2の光61が入射する第1のマイクロレンズ44と、光を光電変換して電荷を生成する第1の光電変換部42と、第1のマイクロレンズ44及び第1の光電変換部42の間に設けられ、第1のマイクロレンズ44を透過した第2の光62の一部を吸収する第1の吸収部43とを有する第1画素11と、第1の光61及び第2の光62が入射する第2のマイクロレンズ44と、光を光電変換して電荷を生成する第2の光電変換部42と、第2のマイクロレンズ44及び第2の光電変換部42の間に設けられ、第2のマイクロレンズ44を透過した第1の光61の一部を吸収する第2の吸収部43とを有する第2画素13と、を備える。本実施の形態では、撮像素子22には、第2の光束62の一部を吸収する吸収部43を有するAF画素11と、第1の光束61の一部を吸収する吸収部43を有するAF画素13とが配置される。このため、AF画素11およびAF画素13から出力された信号を用いることで、被写体像の位相差の情報を得ることができる。AF画素11およびAF画素13から出力された信号を用いて像ズレ量を算出し、デフォーカス量を算出することが可能となる。
【0052】
(2)撮像装置1は、撮像素子22と、第1信号Sig1と第2信号Sig2とに基づいて、光学系の焦点検出を行う検出部(焦点検出部21b)と、を備える。本実施の形態では、撮像素子22は、第1の光束61を光電変換した電荷に基づく第1の信号Sig1と、第2の光束62を光電変換した電荷に基づく第2の信号Sig2とを、ボディ制御部21に出力する。このため、ボディ制御部21の焦点検出部21bは、第1の信号Sig1及び第2の信号Sig2を用いてデフォーカス量を算出することができる。カメラ1は、焦点検出部21bにより算出されたデフォーカス量に基づいて、焦点調節を行うことができる。
【0053】
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。
【0054】
(変形例1)
図4は、変形例1に係る撮像素子の画素の構成例を示す図である。本変形例に係る撮像素子22は、隣り合う画素の間に設けられる吸収部47を有する。
図4に示す例では、吸収部47は、第2の平坦化層82内であって、隣り合う画素の境界部に設けられる。カメラ1では、撮影光学系31を通過した光がカメラボディ2の筐体内や撮像素子22のマイクロレンズ44で反射されること等に起因して、異常光(ゴースト光)が生じ、各画素のマイクロレンズ44には入射角が大きな光が入射する場合がある。
【0055】
本変形例では、マイクロレンズ44及びカラーフィルタ51を透過したゴースト光の一部は、吸収部47に入射し、吸収部47によって吸収される。これにより、或る画素からその隣の画素の光電変換部42へ漏れる光を低減することができる。このため、画素により生成される信号に、隣接する画素から漏れた光による信号成分が混入することを抑制することができる。AF画素11、13から出力される信号を用いて算出されるデフォーカス量の精度が低下することや、撮像画素12から出力される信号を用いて生成される画像の画質が低下することを防ぐことができる。なお、上記の説明は、入射角の大きい種々の入射光の影響に当てはまるものである。
【0056】
(変形例2)
吸収部を、吸収部の上部と下部とで互いに異なる幅となるように形成してもよい。
図5は、変形例2に係る撮像素子の画素の構成例を示す図である。
図5に示すように、吸収部43の幅を、上方向(-Z方向側)へ行くほど、小さくしてもよい。吸収部43の上部の幅をWt1、吸収部43の下部の幅をWb1とすると、Wb1>Wt1となるように、吸収部43を形成する。この場合、吸収部43のエッジ部には、傾斜面48が形成される。吸収部43の上部の面積は、吸収部43の下部の面積よりも小さくなる。
【0057】
吸収部43の形状によって吸収部43の透過率が変わり、光電変換部42の受光量が変わる。このため、吸収部43に傾斜面48が無い場合(
図3)と、吸収部43に傾斜面48がある場合(
図5)とでは、AF画素に入射する光の入射角とAF画素から出力される信号の信号レベルとの関係が変化する。
【0058】
図6は、入射角とAF画素の出力信号との関係を示す図である。
図6において、縦軸はAF画素から出力される信号の信号レベルを示し、横軸はAF画素に入射する光の入射角を示す。波形61aは、傾斜面48が無い場合のAF画素11の出力信号の信号レベルを示し、波形61bは、傾斜面48がある場合のAF画素11の出力信号の信号レベルを示している。また、波形62aは、傾斜面48が無い場合のAF画素13の出力信号の信号レベルを示し、波形62bは、傾斜面48がある場合のAF画素13の出力信号の信号レベルを示している。これらの波形は、AF画素による瞳分割の性能を表し、AF性能に影響するパラメータとなる。
【0059】
傾斜面48がない場合の波形(61a、62a)と、傾斜面48がある場合の波形(61b、62b)とを比較すると、傾斜面48がある場合の方が、波形の傾きが緩くなる。傾斜面48がある場合、入射角が小さくなる(0に近づく)につれて、入射光が吸収部43により徐々に吸収されていくので、波形(61b、62b)の傾きが緩くなる。このように、吸収部43の端部に傾斜面48を設けることで、AF画素の瞳分割特性を変更することができる。
【0060】
吸収部43の端部の断面形状を直線的に変化するものでなく、
図7(a)、(b)に示すように曲線等にしてもよい。また、
図8に示すように、吸収部43の幅を、上方向(-Z方向側)へ行くほど、大きくしてもよい。吸収部43の上部の幅をWt2、吸収部43の下部の幅をWb2とすると、Wb2<Wt2となるように、吸収部43が形成される。吸収部43の上部の面積は、吸収部43の下部の面積よりも大きくなる。このように、吸収部43の形状を調整することにより、AF画素の瞳分割特性を調整することができる。また、傾斜面48の傾きが互いに異なる複数種類のAF画素対(AF画素11、AF画素13)を配置するようにしてもよい。この場合、カメラ1は、複数種類のAF画素対のうちから、焦点検出に用いるAF画素対を選択するようにしてもよい。
【0061】
(変形例3)
一般に、撮像素子22の撮像面22aの中央部には、撮影光学系31の射出瞳を通過した光がほぼ垂直に入射するのに対し、中央部より外側に位置する周辺部、即ち撮像面22aの中央から離れた領域には、光が斜めに入射する。このため、各画素の吸収部43の面積や位置を、撮像素子22における画素の位置(例えば像高)によって異なるように構成してもよい。また、撮像素子22の撮像面22aの中央部と周辺部とでは、撮影光学系31の射出瞳の位置や射出瞳距離が異なる。このため、各画素の吸収部43の面積や位置を射出瞳の位置や射出瞳距離によって異なるように構成してもよい。これにより、撮影光学系31を介して光電変換部に入射する光量を多くすることや、光が斜めに入射する場合でもその状態において瞳分割を適切に行うことができる。
【0062】
(変形例4)
上述した実施の形態では、光電変換部として光電変換膜を用いる例について説明した。しかし、光電変換部42を、無機材料からなる光電変換膜により構成するようにしてもよい。光電変換部としてフォトダイオードを用いるようにしてもよい。
【0063】
(変形例5)
上述した実施の形態では、撮像素子22に、原色系(RGB)のカラーフィルタを用いる場合について説明したが、補色系(CMY)のカラーフィルタを用いるようにしてもよい。
【0064】
(変形例6)
上述の実施の形態及び変形例で説明した撮像素子及び撮像装置は、カメラ、スマートフォン、タブレット、PCに内蔵のカメラ、車載カメラ、無人航空機(ドローン、ラジコン機等)に搭載されるカメラ等に適用されてもよい。
また、上述した吸収部を、可視光を遮光して赤外光を透過するフィルタ(バンドパスフィルタ)として用いてもよい。この場合、光電変換部が赤外光を効率よく受光して、赤外光を用いた焦点検出が可能となるため、本発明を、赤外光による画像が用いられるカメラ(例えば車載カメラや医療用のカメラ)にも適用することができる。
【0065】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
1…撮像装置、2…カメラボディ、3…交換レンズ、21…ボディ制御部、21a…画像データ生成部、21b…焦点検出部、22…撮像素子、31…撮影光学系、42…光電変換部、44…マイクロレンズ、43…吸収部、45a…第1の電極、45b…第2の電極、51…カラーフィルタ、81…第1の平坦化層、82…第2の平坦化層、110…基板