IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 信越化学工業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】水性組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/10 20060101AFI20250304BHJP
   C09K 3/18 20060101ALI20250304BHJP
【FI】
C07F7/10 T
C09K3/18 104
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023529684
(86)(22)【出願日】2022-05-13
(86)【国際出願番号】 JP2022020188
(87)【国際公開番号】W WO2022270172
(87)【国際公開日】2022-12-29
【審査請求日】2023-11-28
(31)【優先権主張番号】P 2021104787
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】入學 武
【審査官】向井 佑
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03209053(US,A)
【文献】特開2008-111023(JP,A)
【文献】特開2008-143852(JP,A)
【文献】特開2013-116872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
C08G
C09K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】
(式中、R1は、ハロゲン原子またはメチル基を表し、R2は、非置換の炭素数1~8の2価炭化水素基を表し、nは、0または1の整数を表す。)
で示されるイミダゾリジノン基を有するシラノール化合物および前記シラノール化合物の縮合物を含む水性組成物であって、
アルコールの含有量が、前記シラノール化合物および前記シラノール化合物の縮合物に対して5質量%未満である、無色透明な水性組成物。
【請求項2】
下記一般式(2)
【化2】
(式中、R1、R2およびnは、前記と同じ意味を表し、R3は、置換または非置換の炭素数1~10の1価炭化水素基を表す。)
で示されるイミダゾリジノンシラン化合物を水の存在下で加水分解し、発生するアルコールを除去する工程を含む請求項1記載の水性組成物の製造方法。
【請求項3】
前記イミダゾリジノンシラン化合物のケイ素原子1モルに対して、前記水が3~100,000モルである請求項2記載の水性組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性組成物およびその製造方法に関し、さらに詳述すると、シラノール化合物およびシラノール化合物の縮合物を含む水性組成物並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加水分解性シリル基と有機基とを有する有機ケイ素化合物は、加水分解性シリル基の加水分解によって生成するシラノール基が、無機材料表面の水酸基と共有結合を形成し、さらに有機基が有機材料と反応するため、通常では結びつきにくい有機材料と無機材料とを結びつけることを可能にする。これにより、有機無機複合材料に、耐熱性、耐水性、耐候性、機械的強度の向上、密着性、分散性、疎水性、防錆性等の特性を付与することができる。
これらの特性を利用し、上記有機ケイ素化合物は、シランカップリング剤、樹脂添加剤、表面処理剤、繊維処理剤、接着剤、塗料添加剤、高分子変性剤等の幅広い分野および用途に用いられる。
【0003】
上記有機ケイ素化合物の中でも、イミダゾリジノン基を有する有機ケイ素化合物であるイミダゾリジノンシラン化合物は、イミダゾリジノン基が種々の有機材料および無機材料に対して高い相溶性を示すことから、有機無機複合材料の密着性を高めることができる。
このようなイミダゾリジノンシラン化合物としては、例えば、1-〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジメトキシメチルシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノン(特許文献1)等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第3209053号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1記載のアルコキシシリル基を有するイミダゾリジノンシラン化合物は、アルコキシシリル基の加水分解によって相当量のアルコールが発生する。近年、地球温暖化や健康問題等に関係の深い環境問題において、揮発性有機化合物(VOC)の削減が大きなテーマとして挙げられており、上記イミダゾリジノンシラン化合物は、アルコールの発生量が多く、環境への負荷が懸念される。
また、加水分解によって発生したアルコールは、イミダゾリジノンシラン化合物と種々の有機材料または無機材料との相溶性を低下させる場合があり、イミダゾリジノン基に由来する所望の効果が十分に発揮されない可能性がある。
【0006】
アルコキシシリル基を有する有機ケイ素化合物であるアルコキシシラン化合物のアルコールの発生量を削減する方法の一つとして、アルコキシシラン化合物を加水分解してシラノール基を有する有機ケイ素化合物であるシラノール化合物を生成させた後、発生したアルコールを除去して、シラノール化合物、そのシラノール化合物の縮合物および水を含む水性組成物を調製する方法が挙げられる。
【0007】
しかし、アルキル基、アリール基、アルケニル基、エポキシ基、メルカプト基、(メタ)アクリル基等の有機基;アリールアミノ基等の二級または三級アミノ基;イソシアヌレート環、グリコールウリル環等の尿素骨格を有するアルコキシシラン化合物の場合、加水分解反応後にシラノール基同士が不可逆的に縮合するため、水溶液が経時変化に伴い高分子量化して、均一な水性組成物の状態を維持できなくなる。すなわち、上記有機基、二級もしくは三級アミノ基または尿素骨格を有するトリアルコキシシラン化合物またはジアルコキシシラン化合物の加水分解反応では、トリシラノール化合物またはジシラノール化合物が生成する。これらのシラノール化合物は、シラノール基同士が縮合することにより、直鎖状、分枝鎖状、環状、三次元網目状構造のシラノール縮合物を生成する。さらに、これらのシラノール縮合物は縮合が進行することにより、水溶液に対する相溶性の低い固体(ゲル状物)または液体(オイル状物)の高分子量体に成長するため、水溶液が化学的に安定な状態(均一な状態)を維持することができなくなる。
また、加水分解によって発生するアルコールは、シラノール化合物と反応してアルコキシシラン化合物が再生するため、水溶液が経時変化に伴い高分子量化することを一時的に抑制する役割を担うが、水溶液からアルコールを除去する場合、シラノール基同士の縮合が加速するため、上記高分子量体が著しく増加する。
【0008】
この点、アミノ基やアルキレンジアミノ基等の一級アミノ基を有するアルコキシシラン化合物の加水分解では、シラノール基同士の縮合が平衡に到達するため、生成するシラノール縮合物は、水溶液に対する相溶性の低い高分子量体に成長しない。これにより、水溶液が化学的に安定な状態を維持することができる。さらに、水溶液からアルコールを除去することが可能になるため、アルコキシシラン化合物のアルコールの発生量を削減する方法の一つとして有用である。
【0009】
しかし、一級アミノ基を有するアルコキシシラン化合物は、水溶液に対する相溶性の低い高分子量体が生成しない化学的に安定な状態の水溶液を調製することができるものの、経時で水溶液の外観が黄変するため、無色透明性を必要とする用途において適用できないものであった。
【0010】
したがって、アルコールの発生を抑えつつ、シラノール化合物の過度の縮合を抑えて、経時変化に伴う高分子量化を防いだ無色透明の水性組成物の開発が望まれていた。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、アルコールの発生を抑えつつ、かつシラノール化合物の過度の縮合を抑えて、経時変化に伴う高分子量化を防ぎ、無色透明な水溶液が調製可能な水性組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は上記課題を達成するため鋭意検討を重ねた結果、イミダゾリジノン基を有するシラノール化合物および当該シラノール化合物の縮合物を含む水性組成物が、アルコールの発生を抑えつつ、シラノール化合物の過度の縮合を抑えて、経時変化に伴う高分子量化を防ぎ、無色透明な水溶液が調製可能な水性組成物であることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明は、
1. 下記一般式(1)
【化1】
(式中、R1は、ハロゲン原子またはメチル基を表し、R2は、非置換の炭素数1~8の2価炭化水素基を表し、nは、0~2の整数を表す。)
で示されるイミダゾリジノン基を有するシラノール化合物および前記シラノール化合物の縮合物を含む水性組成物であって、
アルコールの含有量が、前記シラノール化合物および前記シラノール化合物の縮合物に対して5質量%未満である水性組成物、
2. 下記一般式(2)
【化2】
(式中、R1、R2およびnは、前記と同じ意味を表し、R3は、置換または非置換の炭素数1~10の1価炭化水素基を表す。)
で示されるイミダゾリジノンシラン化合物を水の存在下で加水分解し、発生するアルコールを除去する工程を含む1の水性組成物の製造方法、
3. 前記イミダゾリジノンシラン化合物のケイ素原子1モルに対して、前記水が3~100,000モルである2の水性組成物の製造方法
を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の水性組成物は、アルコールが発生せず、かつ、シラノール化合物の過度の縮合を抑えて、経時変化に伴う高分子量化を防ぎ、化学的に安定な状態を維持することができる。
また、本発明の水性組成物により調製される水溶液は、外観が透明で経時黄変しないため、無色透明性を必要とする用途に適用することができる。
さらに、本発明の水性組成物は、イミダゾリジノン基が種々の有機材料および無機材料に対して高い相溶性を示すため、シランカップリング剤や表面処理剤等として用いた場合、有機無機複合材料の密着性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の水性組成物は、イミダゾリジノン基を有するシラノール化合物およびその縮合物を含む。
【0016】
本発明の水性組成物において、上記イミダゾリジノン基を有するシラノール化合物は、下記一般式(1)で示されるイミダゾリジノン基を有するシラノール化合物(以下、「化合物(1)」という。)である。
【0017】
【化3】
【0018】
一般式(1)において、R1は、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子等のハロゲン原子またはメチル基を表すが、特に入手容易性の観点から、メチル基が好ましい。
2は、炭素数1~8、好ましくは炭素数1~6、より好ましくは炭素数1~5、より一層好ましくは炭素数1~4の非置換の2価炭化水素基を表す。
2価炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状または環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン基等の直鎖状アルキレン基;sec-プロピレン、sec-ブチレン、tert-ブチレン、sec-ペンチレン、tert-ペンチレン、sec-ヘキシレン、tert-ヘキシレン、sec-ヘプチレン、tert-ヘプチレン、sec-オクチレン、tert-オクチレン基等の分岐鎖状アルキレン基;シクロプロピレン、シクロペンチレン、シクロヘキシレン基等の環状アルキレン基が挙げられる。
これらの中でも、R2としては、非置換の炭素数1~5の直鎖状アルキレン基が好ましく、特に入手容易性の観点から、メチレン基、エチレン基等の非置換の炭素数1~4の直鎖状アルキレン基がより好ましい。
【0019】
また、nは、0~2の整数であるが、特にシランカップリング剤や表面処理剤等として用いる場合、基材表面の複数の水酸基と反応して密着性を高める観点から、0または1が好ましい。
【0020】
上記化合物(1)の具体例としては、1-〔3-(トリヒドロキシシリル)メチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジヒドロキシメチルシリル)メチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ヒドロキシジメチルシリル)メチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリヒドロキシシリル)エチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジヒドロキシメチルシリル)エチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ヒドロキシジメチルシリル)エチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリヒドロキシシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジヒドロキシメチルシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ヒドロキシジメチルシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリヒドロキシシリル)ブチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジヒドロキシメチルシリル)ブチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ヒドロキシジメチルシリル)ブチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリヒドロキシシリル)ペンチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジヒドロキシメチルシリル)ペンチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ヒドロキシジメチルシリル)ペンチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリヒドロキシシリル)ヘキシル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジヒドロキシメチルシリル)ヘキシル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ヒドロキシジメチルシリル)ヘキシル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリヒドロキシシリル)ヘプチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジヒドロキシメチルシリル)ヘプチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ヒドロキシジメチルシリル)ヘプチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリヒドロキシシリル)オクチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジヒドロキシメチルシリル)オクチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ヒドロキシジメチルシリル)オクチル〕-2-イミダゾリジノン等のシラノール化合物;1-〔3-(フルオロジヒドロキシシリル)メチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジフルオロヒドロキシシリル)メチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(フルオロヒドロキシメチルシリル)メチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(フルオロジヒドロキシシリル)エチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジフルオロヒドロキシシリル)エチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(フルオロヒドロキシメチルシリル)エチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(フルオロジヒドロキシシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジフルオロヒドロキシシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(フルオロヒドロキシメチルシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(フルオロジヒドロキシシリル)ブチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジフルオロヒドロキシシリル)ブチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(フルオロヒドロキシメチルシリル)ブチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(フルオロジヒドロキシシリル)ペンチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジフルオロヒドロキシシリル)ペンチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(フルオロヒドロキシメチルシリル)ペンチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(フルオロジヒドロキシシリル)ヘキシル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジフルオロヒドロキシシリル)ヘキシル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(フルオロヒドロキシメチルシリル)ヘキシル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(フルオロジヒドロキシシリル)ヘプチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジフルオロヒドロキシシリル)ヘプチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(フルオロヒドロキシメチルシリル)ヘプチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(フルオロジヒドロキシシリル)オクチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジフルオロヒドロキシシリル)オクチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(フルオロヒドロキシメチルシリル)オクチル〕-2-イミダゾリジノン等のフルオロシラノール化合物;1-〔3-(クロロジヒドロキシシリル)メチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジクロロヒドロキシシリル)メチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(クロロヒドロキシメチルシリル)メチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(クロロジヒドロキシシリル)エチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジクロロヒドロキシシリル)エチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(クロロヒドロキシメチルシリル)エチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(クロロジヒドロキシシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジクロロヒドロキシシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(クロロヒドロキシメチルシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(クロロジヒドロキシシリル)ブチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジクロロヒドロキシシリル)ブチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(クロロヒドロキシメチルシリル)ブチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(クロロジヒドロキシシリル)ペンチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジクロロヒドロキシシリル)ペンチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(クロロヒドロキシメチルシリル)ペンチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(クロロジヒドロキシシリル)ヘキシル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジクロロヒドロキシシリル)ヘキシル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(クロロヒドロキシメチルシリル)ヘキシル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(クロロジヒドロキシシリル)ヘプチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジクロロヒドロキシシリル)ヘプチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(クロロヒドロキシメチルシリル)ヘプチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(クロロジヒドロキシシリル)オクチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジクロロヒドロキシシリル)オクチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(クロロヒドロキシメチルシリル)オクチル〕-2-イミダゾリジノン等のクロロシラノール化合物;1-〔3-(ブロモジヒドロキシシリル)メチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジブロモヒドロキシシリル)メチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ブロモヒドロキシメチルシリル)メチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ブロモジヒドロキシシリル)エチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジブロモヒドロキシシリル)エチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ブロモヒドロキシメチルシリル)エチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ブロモジヒドロキシシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジブロモヒドロキシシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ブロモヒドロキシメチルシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ブロモジヒドロキシシリル)ブチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジブロモヒドロキシシリル)ブチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ブロモヒドロキシメチルシリル)ブチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ブロモジヒドロキシシリル)ペンチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジブロモヒドロキシシリル)ペンチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ブロモヒドロキシメチルシリル)ペンチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ブロモジヒドロキシシリル)ヘキシル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジブロモヒドロキシシリル)ヘキシル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ブロモヒドロキシメチルシリル)ヘキシル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ブロモジヒドロキシシリル)ヘプチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジブロモヒドロキシシリル)ヘプチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ブロモヒドロキシメチルシリル)ヘプチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ブロモジヒドロキシシリル)オクチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジブロモヒドロキシシリル)オクチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ブロモヒドロキシメチルシリル)オクチル〕-2-イミダゾリジノン等のブロモシラノール化合物;1-〔3-(ヨードジヒドロキシシリル)メチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジヨードヒドロキシシリル)メチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ヨードヒドロキシメチルシリル)メチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ヨードジヒドロキシシリル)エチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジヨードヒドロキシシリル)エチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ヨードヒドロキシメチルシリル)エチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ヨードジヒドロキシシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジヨードヒドロキシシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ヨードヒドロキシメチルシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ヨードジヒドロキシシリル)ブチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジヨードヒドロキシシリル)ブチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ヨードヒドロキシメチルシリル)ブチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ヨードジヒドロキシシリル)ペンチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジヨードヒドロキシシリル)ペンチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ヨードヒドロキシメチルシリル)ペンチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ヨードジヒドロキシシリル)ヘキシル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジヨードヒドロキシシリル)ヘキシル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ヨードヒドロキシメチルシリル)ヘキシル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ヨードジヒドロキシシリル)ヘプチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジヨードヒドロキシシリル)ヘプチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ヨードヒドロキシメチルシリル)ヘプチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ヨードジヒドロキシシリル)オクチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジヨードヒドロキシシリル)オクチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ヨードヒドロキシメチルシリル)オクチル〕-2-イミダゾリジノン等のヨードシラノール化合物等が挙げられる。
【0021】
これらの中でも、特にシランカップリング剤や表面処理剤等として用いる場合、基材表面の複数の水酸基と反応して密着性を高める観点から、1-〔3-(トリヒドロキシシリル)メチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジヒドロキシメチルシリル)メチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリヒドロキシシリル)エチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジヒドロキシメチルシリル)エチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリヒドロキシシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジヒドロキシメチルシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリヒドロキシシリル)ブチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジヒドロキシメチルシリル)ブチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリヒドロキシシリル)ペンチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジヒドロキシメチルシリル)ペンチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリヒドロキシシリル)ヘキシル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジヒドロキシメチルシリル)ヘキシル〕-2-イミダゾリジノンが好ましく、1-〔3-(トリヒドロキシシリル)メチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリヒドロキシシリル)エチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリヒドロキシシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリヒドロキシシリル)ブチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリヒドロキシシリル)ペンチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリヒドロキシシリル)ヘキシル〕-2-イミダゾリジノンが特に好ましい。
【0022】
水性組成物中における化合物(1)の含有量は、シランカップリング剤や表面処理剤等として用いる場合、基材表面の複数の水酸基と反応して密着性を高める量であれば特に限定されないが、生産性の観点から、水性組成物に対して、好ましくは0.0001~99質量%、より好ましくは0.01~99質量%、より一層好ましくは1~99質量%の範囲である。
【0023】
水性組成物中における化合物(1)の縮合物は、上記化合物(1)の分子間で水酸基が脱水縮合した化合物である。
化合物(1)の縮合物の具体例としては、ジシロキサン、トリシロキサン、テトラシロキサン、ペンタシロキサン、ヘキサシロキサン、ヘプタシロキサン、オクタシロキサン、ノナシロキサン、デカシロキサン等の直鎖状、分枝鎖状、環状、三次元網目状のポリシロキサンが挙げられる。
【0024】
ポリシロキサンの具体例としては、1,1,3,3-テトラヒドロキシ-1,3-ビス〔3-(2-イミダゾリジノ)メチル〕-ジシロキサン、1,3-ジヒドロキシ-1,3-ビス〔3-(2-イミダゾリジノ)メチル〕-1,3-ジメチルジシロキサン、1,1,3,3-テトラヒドロキシ-1,3-ビス〔3-(2-イミダゾリジノ)エチル〕-ジシロキサン、1,3-ジヒドロキシ-1,3-ビス〔3-(2-イミダゾリジノ)エチル〕-1,3-ジメチルジシロキサン、1,1,3,3-テトラヒドロキシ-1,3-ビス〔3-(2-イミダゾリジノ)プロピル〕-ジシロキサン、1,3-ジヒドロキシ-1,3-ビス〔3-(2-イミダゾリジノ)プロピル〕-1,3-ジメチルジシロキサン、1,1,3,3-テトラヒドロキシ-1,3-ビス〔3-(2-イミダゾリジノ)ブチル〕-ジシロキサン、1,3-ジヒドロキシ-1,3-ビス〔3-(2-イミダゾリジノ)ブチル〕-1,3-ジメチルジシロキサン、1,1,3,3-テトラヒドロキシ-1,3-ビス〔3-(2-イミダゾリジノ)ペンチル〕-ジシロキサン、1,3-ジヒドロキシ-1,3-ビス〔3-(2-イミダゾリジノ)ペンチル〕-1,3-ジメチルジシロキサン、1,1,3,3-テトラヒドロキシ-1,3-ビス〔3-(2-イミダゾリジノ)ヘキシル〕-ジシロキサン、1,3-ジヒドロキシ-1,3-ビス〔3-(2-イミダゾリジノ)ヘキシル〕-1,3-ジメチルジシロキサン、1,1,3,3-テトラヒドロキシ-1,3-ビス〔3-(2-イミダゾリジノ)ヘプチル〕-ジシロキサン、1,3-ジヒドロキシ-1,3-ビス〔3-(2-イミダゾリジノ)ヘプチル〕-1,3-ジメチルジシロキサン、1,1,3,3-テトラヒドロキシ-1,3-ビス〔3-(2-イミダゾリジノ)オクチル〕-ジシロキサン、1,3-ジヒドロキシ-1,3-ビス〔3-(2-イミダゾリジノ)オクチル〕-1,3-ジメチルジシロキサン等のジシロキサン;1,1,3,5,5-ペンタヒドロキシ-1,3,5-トリス〔3-(2-イミダゾリジノ)メチル〕-トリシロキサン、1,3,5-トリヒドロキシ-1,3,5-トリス〔3-(2-イミダゾリジノ)メチル〕-1,3,5-トリメチルトリシロキサン、1,1,3,5,5-ペンタヒドロキシ-1,3,5-トリス〔3-(2-イミダゾリジノ)エチル〕-トリシロキサン、1,3,5-トリヒドロキシ-1,3,5-トリス〔3-(2-イミダゾリジノ)エチル〕-1,3,5-トリメチルトリシロキサン、1,1,3,5,5-ペンタヒドロキシ-1,3,5-トリス〔3-(2-イミダゾリジノ)プロピル〕-トリシロキサン、1,3,5-トリヒドロキシ-1,3,5-トリス〔3-(2-イミダゾリジノ)プロピル〕-1,3,5-トリメチルトリシロキサン、1,1,3,5,5-ペンタヒドロキシ-1,3,5-トリス〔3-(2-イミダゾリジノ)ブチル〕-トリシロキサン、1,3,5-トリヒドロキシ-1,3,5-トリス〔3-(2-イミダゾリジノ)ブチル〕-1,3,5-トリメチルトリシロキサン、1,1,3,5,5-ペンタヒドロキシ-1,3,5-トリス〔3-(2-イミダゾリジノ)ペンチル〕-トリシロキサン、1,3,5-トリヒドロキシ-1,3,5-トリス〔3-(2-イミダゾリジノ)ペンチル〕-1,3,5-トリメチルトリシロキサン、1,1,3,5,5-ペンタヒドロキシ-1,3,5-トリス〔3-(2-イミダゾリジノ)ヘキシル〕-トリシロキサン、1,3,5-トリヒドロキシ-1,3,5-トリス〔3-(2-イミダゾリジノ)ヘキシル〕-1,3,5-トリメチルトリシロキサン、1,1,3,5,5-ペンタヒドロキシ-1,3,5-トリス〔3-(2-イミダゾリジノ)ヘプチル〕-トリシロキサン、1,3,5-トリヒドロキシ-1,3,5-トリス〔3-(2-イミダゾリジノ)ヘプチル〕-1,3,5-トリメチルトリシロキサン、1,1,3,5,5-ペンタヒドロキシ-1,3,5-トリス〔3-(2-イミダゾリジノ)オクチル〕-トリシロキサン、1,3,5-トリヒドロキシ-1,3,5-トリス〔3-(2-イミダゾリジノ)オクチル〕-1,3,5-トリメチルトリシロキサン、1,3,5-トリヒドロキシ-1,3,5-トリス〔3-(2-イミダゾリジノ)メチル〕-シクロトリシロキサン、1,3,5-トリヒドロキシ-1,3,5-トリス〔3-(2-イミダゾリジノ)エチル〕-シクロトリシロキサン、1,3,5-トリヒドロキシ-1,3,5-トリス〔3-(2-イミダゾリジノ)プロピル〕-シクロトリシロキサン、1,3,5-トリヒドロキシ-1,3,5-トリス〔3-(2-イミダゾリジノ)ブチル〕-シクロトリシロキサン、1,3,5-トリヒドロキシ-1,3,5-トリス〔3-(2-イミダゾリジノ)ペンチル〕-シクロトリシロキサン、1,3,5-トリヒドロキシ-1,3,5-トリス〔3-(2-イミダゾリジノ)ヘキシル〕-シクロトリシロキサン、1,3,5-トリヒドロキシ-1,3,5-トリス〔3-(2-イミダゾリジノ)ヘプチル〕-シクロトリシロキサン、1,3,5-トリヒドロキシ-1,3,5-トリス〔3-(2-イミダゾリジノ)オクチル〕-シクロトリシロキサン、1,3,5-トリメチル-1,3,5-トリス〔3-(2-イミダゾリジノ)メチル〕-シクロトリシロキサン、1,3,5-トリメチル-1,3,5-トリス〔3-(2-イミダゾリジノ)エチル〕-シクロトリシロキサン、1,3,5-トリメチル-1,3,5-トリス〔3-(2-イミダゾリジノ)プロピル〕-シクロトリシロキサン、1,3,5-トリメチル-1,3,5-トリス〔3-(2-イミダゾリジノ)ブチル〕-シクロトリシロキサン、1,3,5-トリメチル-1,3,5-トリス〔3-(2-イミダゾリジノ)ペンチル〕-シクロトリシロキサン、1,3,5-トリメチル-1,3,5-トリス〔3-(2-イミダゾリジノ)ヘキシル〕-シクロトリシロキサン、1,3,5-トリメチル-1,3,5-トリス〔3-(2-イミダゾリジノ)ヘプチル〕-シクロトリシロキサン、1,3,5-トリメチル-1,3,5-トリス〔3-(2-イミダゾリジノ)オクチル〕-シクロトリシロキサン等のトリシロキサン;1,3,5,7-テトラヒドロキシ-1,3,5,7-テトラ〔3-(2-イミダゾリジノ)メチル〕-シクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラヒドロキシ-1,3,5,7-テトラ〔3-(2-イミダゾリジノ)エチル〕-シクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラヒドロキシ-1,3,5,7-テトラ〔3-(2-イミダゾリジノ)プロピル〕-シクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラヒドロキシ-1,3,5,7-テトラ〔3-(2-イミダゾリジノ)ブチル〕-シクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラヒドロキシ-1,3,5,7-テトラ〔3-(2-イミダゾリジノ)ペンチル〕-シクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラヒドロキシ-1,3,5,7-テトラ〔3-(2-イミダゾリジノ)ヘキシル〕-シクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラヒドロキシ-1,3,5,7-テトラ〔3-(2-イミダゾリジノ)ヘプチル〕-シクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラヒドロキシ-1,3,5,7-テトラ〔3-(2-イミダゾリジノ)オクチル〕-シクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラ〔3-(2-イミダゾリジノ)メチル〕-シクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラ〔3-(2-イミダゾリジノ)エチル〕-シクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラ〔3-(2-イミダゾリジノ)プロピル〕-シクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラ〔3-(2-イミダゾリジノ)ブチル〕-シクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラ〔3-(2-イミダゾリジノ)ペンチル〕-シクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラ〔3-(2-イミダゾリジノ)ヘキシル〕-シクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラ〔3-(2-イミダゾリジノ)ヘプチル〕-シクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラ〔3-(2-イミダゾリジノ)オクチル〕-シクロテトラシロキサン等のテトラシロキサン;1,1,3,5,7,9,9-ヘプタヒドロキシ-1,3,5,7,9-ペンタキス〔3-(2-イミダゾリジノ)メチル〕-ペンタシロキサン;1,1,3,5,7,9,11,11-オクタヒドロキシ-1,3,5,7,9,11-ヘキサキス〔3-(2-イミダゾリジノ)メチル〕-ヘキサシロキサン;1,1,3,5,7,9,11,13,13-ノナヒドロキシ-1,3,5,7,9,11,13-ヘプタキス〔3-(2-イミダゾリジノ)メチル〕-ヘプタシロキサン;1,1,3,5,7,9,11,13,15,15-デカヒドロキシ-1,3,5,7,9,11,13,15-オクタキス〔3-(2-イミダゾリジノ)メチル〕-オクタシロキサン;1,1,3,5,7,9,11,13,15,17,17-ウンデカヒドロキシ-1,3,5,7,9,11,13,15,17-ノナキス〔3-(2-イミダゾリジノ)メチル〕-ノナシロキサン;1,1,3,5,7,9,11,13,15,17,19,19-ドデカヒドロキシ-1,3,5,7,9,11,13,15,17,19-デカキス〔3-(2-イミダゾリジノ)メチル〕-デカシロキサン;〔3-(2-イミダゾリジノ)メチル〕-ポリシロキサン、〔3-(2-イミダゾリジノ)メチル〕-ポリシクロシロキサン等が挙げられる。
【0025】
また、水性組成物中における化合物(1)の縮合物の含有量は、シランカップリング剤や表面処理剤等として用いる場合、基材表面の複数の水酸基と反応して密着性を高める量であれば特に限定されないが、生産性の観点から、水性組成物に対して、好ましくは0.0001~99質量%、より好ましくは0.01~99質量%、より一層好ましくは1~99質量%の範囲である。
【0026】
本発明の水性組成物中には、後述の水性組成物の製造において用いられる水の添加量によって、水を含む場合がある。具体的には、一般式(2)で示されるイミダゾリジノンシラン化合物(以下、「化合物(2)」という。)のアルコキシ基と当量の水が反応することから、当量を超える水が含まれる。
【0027】
また、水性組成物中には、加水分解反応において化合物(2)のアルコキシ基に対応して発生するアルコールが不可避的に含まれる。
アルコールの具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、sec-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、フェノール、ベンジルアルコール等の一価アルコール;1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール等の二価アルコール等が挙げられる。
【0028】
水性組成物中に含まれるアルコールの含有量は、環境への負荷の観点から、化合物(1)およびその縮合物に対して、5質量%未満、好ましくは0.0001~2.5質量%、より好ましくは0.0001~1.5質量%、より一層好ましくは0.0001~1.0質量%の範囲である。
【0029】
水性組成物中における化合物(1)およびその縮合物並びにアルコールの含有量の測定方法としては、特に制限はなく、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、核磁気共鳴分光法(NMR)、赤外分光法(IR)、近赤外分光法(NIR)等の分析手段を採用することができる。
【0030】
本発明の水性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、溶媒で希釈して用いることもできる。
溶媒の具体例としては、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられ、これらの溶媒は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。また、pH調整剤として、酸または塩基を用いてもよい。
【0031】
本発明の水性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、抽出、分液、濾過、再結晶、蒸留、昇華、クロマトグラフィー、固体吸着等から選択される方法によって、精製して用いることもできる。
【0032】
本発明の水性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、顔料、消泡剤、潤滑剤、防腐剤、pH調節剤、フィルム形成剤、帯電防止剤、抗菌剤、界面活性剤、染料等から選択されるその他の添加剤の1種以上を含む組成物として用いることもできる。
【0033】
次に、本発明の水性組成物の製造方法について、説明する。
本発明では、化合物(2)と水による加水分解反応を行い、発生するアルコールを除去して、化合物(1)およびその縮合物を含む水性組成物を製造する。
【0034】
【化4】
(式中、R1、R2およびnは、上記と同じ意味を表す。)
【0035】
一般式(2)において、R3は、炭素数1~10、好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数1~3、より一層好ましくは炭素数1~2の置換または非置換の1価炭化水素基を表す。
1価炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状または環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル基等の直鎖状アルキル基;sec-プロピル、sec-ブチル、tert-ブチル、sec-ペンチル、tert-ペンチル、sec-ヘキシル、tert-ヘキシル、sec-ヘプチル、tert-ヘプチル、sec-オクチル、tert-オクチル、sec-ノニル、tert-ノニル、sec-デシル、tert-デシル基等の分岐鎖状のアルキル基;シクロペンチル、シクロヘキシル基等の環状のアルキル基;ビニル、アリル、ブテニル、メタリル基等のアルケニル基;フェニル、トリル、キシリル基等のアリール基;ベンジル、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
これらの中でも、R3としては、非置換の炭素数1~6の直鎖状アルキル基が好ましく、特に入手容易性の観点から、メチル基またはエチル基がより好ましい。
【0036】
なお、これらの1価炭化水素基の水素原子の一部または全部は、その他の置換基で置換されていてもよく、この置換基の具体例としては、メトキシ、エトキシ、(イソ)プロポキシ基等の炭素数1~3のアルコキシ基;フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子;フェニル基等の芳香族炭化水素基;シアノ基、アミノ基、エステル基、エーテル基、カルボニル基、アシル基、スルフィド基等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることもできる。これらの置換基の置換位置は特に限定されず、置換基数も限定されない。
【0037】
上記化合物(2)の具体例としては、1-〔3-(トリメトキシシリル)メチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジメトキシメチルシリル)メチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(メトキシジメチルシリル)メチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリメトキシシリル)エチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジメトキシメチルシリル)エチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(メトキシジメチルシリル)エチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジメトキシメチルシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(メトキシジメチルシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリメトキシシリル)ブチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジメトキシメチルシリル)ブチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(メトキシジメチルシリル)ブチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリメトキシシリル)ペンチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジメトキシメチルシリル)ペンチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(メトキシジメチルシリル)ペンチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリメトキシシリル)ヘキシル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジメトキシメチルシリル)ヘキシル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(メトキシジメチルシリル)ヘキシル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリメトキシシリル)ヘプチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジメトキシメチルシリル)ヘプチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(メトキシジメチルシリル)ヘプチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリメトキシシリル)オクチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジメトキシメチルシリル)オクチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(メトキシジメチルシリル)オクチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリエトキシシリル)メチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジエトキシメチルシリル)メチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(エトキシジメチルシリル)メチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリエトキシシリル)エチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジエトキシメチルシリル)エチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(エトキシジメチルシリル)エチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリエトキシシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジエトキシメチルシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(エトキシジメチルシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリエトキシシリル)ブチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジエトキシメチルシリル)ブチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(エトキシジメチルシリル)ブチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリエトキシシリル)ペンチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジエトキシメチルシリル)ペンチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(エトキシジメチルシリル)ペンチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリエトキシシリル)ヘキシル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジエトキシメチルシリル)ヘキシル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(エトキシジメチルシリル)ヘキシル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリエトキシシリル)ヘプチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジエトキシメチルシリル)ヘプチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(エトキシジメチルシリル)ヘプチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリエトキシシリル)オクチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジエトキシメチルシリル)オクチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(エトキシジメチルシリル)オクチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリプロポキシシリル)メチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジプロポキシメチルシリル)メチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(プロポキシジメチルシリル)メチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリプロポキシシリル)エチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジプロポキシメチルシリル)エチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(プロポキシジメチルシリル)エチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリプロポキシシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジプロポキシメチルシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(プロポキシジメチルシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリプロポキシシリル)ブチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジプロポキシメチルシリル)ブチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(プロポキシジメチルシリル)ブチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリプロポキシシリル)ペンチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジプロポキシメチルシリル)ペンチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(プロポキシジメチルシリル)ペンチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリプロポキシシリル)ヘキシル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジプロポキシメチルシリル)ヘキシル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(プロポキシジメチルシリル)ヘキシル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリプロポキシシリル)ヘプチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジプロポキシメチルシリル)ヘプチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(プロポキシジメチルシリル)ヘプチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリプロポキシシリル)オクチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジプロポキシメチルシリル)オクチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(プロポキシジメチルシリル)オクチル〕-2-イミダゾリジノン等が挙げられる。
【0038】
これらの中でも、特に入手容易性の観点から、1-〔3-(トリメトキシシリル)メチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジメトキシメチルシリル)メチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリメトキシシリル)エチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジメトキシメチルシリル)エチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジメトキシメチルシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリメトキシシリル)ブチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジメトキシメチルシリル)ブチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリメトキシシリル)ペンチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジメトキシメチルシリル)ペンチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリメトキシシリル)ヘキシル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジメトキシメチルシリル)ヘキシル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリエトキシシリル)メチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジエトキシメチルシリル)メチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリエトキシシリル)エチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジエトキシメチルシリル)エチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリエトキシシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジエトキシメチルシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリエトキシシリル)ブチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジエトキシメチルシリル)ブチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリエトキシシリル)ペンチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジエトキシメチルシリル)ペンチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリエトキシシリル)ヘキシル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(ジエトキシメチルシリル)ヘキシル〕-2-イミダゾリジノンが好ましく、1-〔3-(トリメトキシシリル)メチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリメトキシシリル)エチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリメトキシシリル)ブチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリメトキシシリル)ペンチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリメトキシシリル)ヘキシル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリエトキシシリル)メチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリエトキシシリル)エチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリエトキシシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリエトキシシリル)ブチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリエトキシシリル)ペンチル〕-2-イミダゾリジノン、1-〔3-(トリエトキシシリル)ヘキシル〕-2-イミダゾリジノンが特に好ましい。
【0039】
加水分解反応に用いる水は、シランカップリング剤や表面処理剤等として用いる場合に使用可能な水であれば特に制限はなく、水道水、地下水、河川水、雨水、天然水、農業用水、工業用水、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水等を使用することができる。これらの中でも、水としては、不純物が少ないという観点から、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水等が好ましい。
加水分解反応に用いる水の量は、加水分解反応が進行する量であれば特に制限されないが、反応性、生産性の観点から、化合物(2)のケイ素原子1モルに対して、好ましくは3~100,000モル、より好ましく3~1,000モル、より一層好ましくは3~100モルである。
【0040】
加水分解反応は、化合物(2)と水が混合可能であれば特に制限はなく、化合物(2)を水中に添加する方法、化合物(2)に水を添加する方法のいずれでも良いが、加水分解反応を円滑に進める生産性の観点から、化合物(2)を水中に添加する方法が好ましい。また、化合物(2)を水中に添加する方法としては、化合物(2)を水中に添加する方法、水面に滴下する方法が挙げられ、添加や滴下の方法も、連続的または断続的のいずれの方法でもよい。
【0041】
加水分解反応における温度は、反応性、生産性の観点から、好ましくは0~100℃、より好ましく5~100℃、より一層好ましくは10~100℃の範囲である。
加水分解反応における時間は、反応性、生産性の観点から、好ましくは0.1~30時間、より好ましく0.5~20時間、より一層好ましくは1~10時間の範囲である。
加水分解反応における圧力は、反応性、生産性の観点から、好ましくは0.01~101.3kPa、より好ましく0.1~101.3kPa、より一層好ましくは1~101.3kPaの範囲である。
【0042】
なお、加水分解反応は、無溶媒でも進行するが、溶媒を用いることもできる。溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒;アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;メチルアルコール、エチルアルコール等のアルコール系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素系溶媒等が挙げられ、これらの溶媒は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。また、pH調整剤として、酸または塩基を用いてもよい。
これらの中でも、化合物(2)との相溶性の観点から、特にアルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、非プロトン性極性溶媒が好ましい。
【0043】
化合物(2)と水との加水分解反応により、加水分解が進行し、化合物(1)とその縮合物が生成すると同時に、アルコールが発生する。
本発明では、加水分解反応によって発生するアルコールは、化合物(2)と水が混合している間または混合後に除去することができる。
アルコールを除去する方法としては、特に制限はなく、抽出、分液、濾過、再結晶、蒸留、昇華、クロマトグラフィー、化学変換等が挙げられるが、これらの中でも、生産性の観点から、蒸留が好ましい。
【0044】
アルコールを蒸留によって除去する際の条件は、揮発性アルコールが気化する条件であれば特に制限されない。
蒸留温度は、生産性の観点から、好ましくは0~300℃、より好ましく5~280℃、より一層好ましくは10~260℃の範囲である。
蒸留時間は、生産性の観点から、好ましくは1~50時間、より好ましく1~30時間、より一層好ましくは1~10時間の範囲である。
蒸留圧力は、生産性の観点から、好ましくは0.01~101.3kPa、より好ましく0.1~101.3kPa、より一層好ましくは1~101.3kPaの範囲である。
【0045】
本発明の製法では、発生したアルコールを、化合物(1)およびその縮合物に対する含有量が5質量%未満になるまで除去することができるため、得られた水性組成物をシランカップリング剤や表面処理剤等として用いた場合の環境への負荷を著しく低減することができる。
【0046】
本発明の水性組成物を用いて基材のシランカップリング処理または表面処理を行うことにより、処理後の有機無機複合材料の密着性を向上することができる。以下に、本発明の水性組成物を用いた基材の処理方法について説明する。
本発明の水性組成物を用いて基材の処理を行う方法としては、特に制限はなく、基材に水性組成物を塗布する方法、不活性ガスにて水性組成物を同伴させ、この同伴ガスに基材を接触させる方法、基材と共に水性組成物を直接ミキサーやミルで混合する方法等が挙げられる。これらの中でも、簡便性の観点から、水性組成物を塗布する方法が好ましい。
水性組成物を塗布する方法としては、例えば、刷毛塗り法、スプレーコーティング法、ワイヤーバー法、ブレード法、ロールコーティング法、ディッピング法等が挙げられる。
【0047】
本発明の水性組成物を、基材に塗布、接触または混合して処理する際の条件は、シラノール基が基材表面の水酸基と反応する条件であれば特に制限されない。
処理温度は、生産性の観点から、好ましくは0~100℃、より好ましくは10~50℃、より一層好ましくは20~30℃の範囲である。
処理時間は、生産性の観点から、好ましくは1分~10時間、より好ましくは1分~5時間、より一層好ましくは1分~2時間の範囲であるが、上記処理温度との関係において、適宜設定すればよい。
【0048】
処理が施される基材は、無機材料と有機材料のどちらでもよい。
無機材料としては、ガラス板、ガラス繊維、珪藻土、珪酸カルシウム、シリカ、シリコン、タルク、マイカ等のケイ素化合物;酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化鉄、酸化マグネシウム等の金属酸化物;塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化スズ、塩化チタン、塩化鉄、塩化マグネシウム等の金属塩化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物;炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム等の炭酸塩等が挙げられる。これらの中でも、イミダゾリジノンシラン化合物のシラノール基との反応性の観点から、特にケイ素化合物、金属酸化物が好ましい。
有機材料としては、ゴム、紙、セルロース等の天然高分子;アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の合成高分子;油脂、界面活性剤、液晶等が挙げられる。これらの中でも、イミダゾリジノンシラン化合物のイミダゾリジノン基との反応性の観点から、特に天然高分子、合成高分子が好ましい。
【0049】
本発明の水性組成物を用いて基材の処理を行った後は、洗浄、乾燥等により余剰の水性組成物を除去する。なお、洗浄と乾燥による後処理は、単独で行っても、組み合わせて行ってもよい。
洗浄溶媒としては、特に制限はないが、水または前述の水性組成物を希釈する溶媒で例示した溶媒と同じものを用いることができる。
洗浄方法としては、特に制限はないが、処理後の基材に対して、洗浄溶媒中に浸漬する方法、洗浄溶媒をスプレーする方法等を採用することができる。
洗浄、乾燥の条件は、処理後の基材に悪影響を与えない限り特に限定されない。
洗浄温度は、生産性の観点から、好ましくは0~300℃、より好ましくは0~200℃、より一層好ましくは0~100℃の範囲である。
洗浄時間は、生産性の観点から、好ましくは1分~10時間、より好ましくは1分~5時間、より一層好ましくは1分~2時間の範囲であるが、上記洗浄温度との関係において、適宜設定すればよい。
乾燥温度は、生産性の観点から、好ましくは0~300℃、より好ましくは0~200℃、より一層好ましくは0~100℃の範囲である。
乾燥時間は、生産性の観点から、好ましくは1分~10時間、より好ましくは1分~5時間、より一層好ましくは1分~2時間の範囲であるが、上記乾燥温度との関係において、適宜設定すればよい。
【実施例
【0050】
以下、実施例、比較例および応用例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
なお、残留アルコールの含有量は、以下の条件によるガスクロマトグラフィー測定により測定した。また、不揮発分はアルミシャーレ上において、105℃、3時間加熱乾燥後の加熱残量法による測定値である。
[ガスクロマトグラフィー測定条件]
ガスクロマトグラフ:GC-2014((株)島津製作所製)
パックドカラム:SiliconeSE-30(ジーエルサイエンス(株)製)
検出器:TCD
検出器温度:300℃
注入口温度:300℃
昇温プログラム:70℃(0分)→10℃/分→300℃(10分)
キャリアガス:ヘリウム(50ml/分)
注入量:1μl
【0051】
[1]化合物(1)およびその縮合物を含む水性組成物の調製
[実施例1]1-〔3-(トリヒドロキシシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノンおよびその縮合物を含む水性組成物の調製
撹拌機、還流器、ディーンスターク、滴下ロートおよび温度計を備えたフラスコに、室温下、純水54.0g(3.000モル)を仕込み、60℃まで加熱した。内温が安定した後、1-〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノン24.8g(0.100モル)を5時間かけて滴下した。常圧下、60℃で1時間攪拌した後、加熱しながら発生したメタノールを抜き出し、塔頂温度が100℃に到達したところで加熱を止めた。室温に冷却した後、不揮発分が25~26質量%になるように純水を加え、無色透明な水性組成物を調製した。
調製した水性組成物をガスクロマトグラフィー(内部標準法)にて分析したところ、残留メタノールとシラノール化合物(1-〔3-(トリヒドロキシシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノンとそのシラノール縮合物の合計)の面積%の比は、0.3:99.7であることが確認された。また、熱風オーブン中、105℃で3時間加熱乾固したところ、不揮発分は25質量%であった。
【0052】
室温にて1ヶ月以上この水性組成物を放置しても更なるメタノールは発生せず、不溶性の高分子量体等も発生せず、無色透明なままであり、化学的に安定な状態で保存することができた。また、純水で25倍に希釈しても更なるメタノールは発生することはなかった。希釈後の水性組成物も1ヶ月以上化学的に安定な状態で保存することができた。
【0053】
[実施例2]1-〔3-(トリヒドロキシシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノンおよびその縮合物を含む水性組成物の調製
純水の使用量を540.0g(30.000モル)に変更した以外は、実施例1と同様にして加水分解反応を行い、次いで、メタノールを抜き出した。室温に冷却した後、不揮発分が1~2質量%になるように純水を加え、無色透明な水性組成物を調製した。
調製した水性組成物をガスクロマトグラフィー(内部標準法)にて分析したところ、残留メタノールとシラノール化合物(1-〔3-(トリヒドロキシシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノンとそのシラノール縮合物の合計)の面積%の比は、0.2:99.8であることが確認された。また、熱風オーブン中、105℃で3時間加熱乾固したところ、不揮発分は1質量%であった。
【0054】
室温にて1ヶ月以上この水性組成物を放置しても、更なるメタノールは発生せず、不溶性の高分子量体等も発生せず、無色透明なままであり、化学的に安定な状態で保存することができた。
また、純水で25倍に希釈しても更なるメタノールは発生することはなかった。希釈後の水性組成物も1ヶ月以上化学的に安定な状態で保存することができた。
【0055】
[実施例3]1-〔3-(トリヒドロキシシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノンおよびその縮合物を含む水性組成物の調製
実施例1の1-〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノンを1-〔3-(トリエトキシシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノン29.0g(0.100モル)に変更した以外は、実施例1と同様にして加水分解反応を行い、次いで、エタノールを抜き出した。室温に冷却した後、不揮発分が25~26質量%になるように純水を加え、無色透明な水性組成物を調製した。
調製した水性組成物をガスクロマトグラフィー(内部標準法)にて分析したところ、残留エタノールとシラノール化合物(1-〔3-(トリヒドロキシシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノンとそのシラノール縮合物の合計)の面積%の比は、0.4:99.6であることが確認された。また、熱風オーブン中、105℃で3時間加熱乾固したところ、不揮発分は25質量%であった。
【0056】
室温にて1ヶ月以上この水性組成物を放置しても、更なるエタノールは発生せず、不溶性の高分子量体等も発生せず、無色透明なままであり、化学的に安定な状態で保存できた。また、純水で25倍に希釈しても更なるエタノールは発生することはなかった。希釈後の水性組成物も1ヶ月以上化学的に安定な状態で保存することができた。
【0057】
[実施例4]1-〔3-(ジヒドロキシメチルシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノンおよびその縮合物を含む水性組成物の調製
実施例1の1-〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノンを1-〔3-(ジメトキシメチルシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノン23.2g(0.100モル)に変更した以外は、実施例1と同様にして加水分解反応を行い、次いで、メタノールを抜き出した。室温に冷却した後、不揮発分が25~26質量%になるように純水を加え、無色透明な水性組成物を調製した。
調製した水性組成物をガスクロマトグラフィー(内部標準法)にて分析したところ、残留メタノールとシラノール化合物(1-〔3-(ジヒドロキシメチルシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノンとそのシラノール縮合物の合計)の面積%の比は、0.3:99.7であることが確認された。また、熱風オーブン中、105℃で3時間加熱乾固したところ、不揮発分は25質量%であった。
【0058】
室温にて1ヶ月以上この水性組成物を放置しても更なるメタノールは発生せず、不溶性の高分子量体等も発生せず、無色透明なままであり、化学的に安定な状態で保存することができた。また、純水で25倍に希釈しても更なるメタノールは発生することはなかった。希釈後の水性組成物も1ヶ月以上化学的に安定な状態で保存することができた。
【0059】
[2]イミダゾリジノン基以外の有機基を有するシラノール化合物およびシラノール縮合物を含む水性組成物の調製
[比較例1]3-(トリヒドロキシシリル)プロピルアミンおよびその縮合物を含む水性組成物の調製
実施例1の1-〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノンを3-(トリメトキシシリル)プロピルアミン17.9g(1.000モル)に変更した以外は、実施例1と同様にして加水分解し、次いで、メタノールを抜き出した。メタノールの抜き出し中、水性組成物の外観が黄変した。
【0060】
[比較例2]3-(トリヒドロキシシリル)プロピルエチレンジアミンおよびその縮合物を含む水性組成物の調製
実施例1の1-〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノンを3-(トリメトキシシリル)プロピルエチレンジアミン22.2g(0.100モル)に変更した以外は、実施例1と同様にして加水分解し、次いで、メタノールを抜き出した。メタノールの抜き出し中、水性組成物の外観が黄変した。
【0061】
[比較例3]3-(トリヒドロキシシリル)プロピルフェニルアミンおよびその縮合物を含む水性組成物の調製
実施例1の1-〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノンを3-(トリメトキシシリル)プロピルフェニルアミン25.5g(0.100モル)に変更した以外は、実施例1と同様にして加水分解し、次いで、メタノールを抜き出した。メタノールの抜き出し中、水性組成物に相溶性の低い固体の高分子量体が生成した。
【0062】
[比較例4]3-(トリヒドロキシシリル)プロパンおよびその縮合物を含む水性組成物の調製
実施例1の1-〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノンを3-(トリメトキシシリル)プロパン16.4g(0.100モル)に変更し、溶媒としてTHFを用いた以外は、実施例1と同様にして加水分解し、次いで、メタノールを抜き出した。メタノールの抜き出し中、水性組成物に相溶性の低い固体の高分子量体が生成した。
【0063】
[比較例5]3-(トリヒドロキシシリル)プロピルメタクリレートおよびその縮合物を含む水性組成物の調製
実施例1の1-〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノンを3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート24.8g(0.100モル)に変更し、溶媒としてTHFを用いた以外は、実施例1と同様にして加水分解し、次いで、メタノールを抜き出した。メタノールの抜き出し中、水性組成物に相溶性の低い固体の高分子量体が生成した。
【0064】
[3]化合物(1)およびその縮合物含有水性組成物による基材の処理
[応用例1]1-〔3-(トリヒドロキシシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノンおよびその縮合物を含む水性組成物による基材の処理
実施例1で得られた1-〔3-(トリヒドロキシシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノンおよびその縮合物を含む水性組成物に不揮発分が1質量%になるように純水を加え、濃度を調整した。1質量%に調整した水性組成物100mLに、予めUVオゾン洗浄したガラス板(松浪硝子工業(株)製;スライドグラス、白緑磨フロストNo.1、サイズ76mm×26mm、厚み0.8~1.0mm、フロスト巾15mm×26mm)を25℃で1時間浸漬して処理した。ガラス板を水性組成物から引き揚げ、アセトン100mLに浸漬して超音波洗浄機(本多電子(株)製;W-221)にて、25℃にて1時間超音波洗浄した後、50℃にて1時間乾燥した。
【0065】
乾燥後のガラス板に対して、協和界面科学(株)製接触角計(DMs-401、解析ソフトウェアFAMAS)を用いて、25℃、50%RHの条件にて、処理表面の任意の10箇所に対する純水の接触角(1μL)を測定したところ、接触角は平均32°であり、標準偏差は1.8°未満だった。
このことから、シラノール基がガラス板表面の水酸基と共有結合を形成し、イミダゾリジノン基の導入により、処理表面が親水性を示すことが分かった。
【0066】
[応用例2]1-〔3-(ジヒドロキシメチルシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノンおよびその縮合物を含む水性組成物による基材の処理
実施例4で得られた1-〔3-(ジヒドロキシメチルシリル)プロピル〕-2-イミダゾリジノンおよびその縮合物を含む水性組成物に変更した以外は、応用例1と同様にしてガラス板を処理した。
乾燥後のガラス板に対して、応用例1と同様に接触角を測定したところ、接触角は平均32°であり、標準偏差は1.8°未満だった。
このことから、シラノール基がガラス板表面の水酸基と共有結合を形成し、イミダゾリジノン基が導入される結果、処理表面が親水性を示すことがわかった。