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特許7643791ポリウレタンフォーム組成物およびその硬化物を含むポリウレタンフォーム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】ポリウレタンフォーム組成物およびその硬化物を含むポリウレタンフォーム
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20250304BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20250304BHJP
   C08G 18/12 20060101ALI20250304BHJP
   C08G 18/40 20060101ALI20250304BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20250304BHJP
【FI】
C08G18/00 F
C08G18/00 K
C08G18/08 038
C08G18/12
C08G18/40 009
C08G101:00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022581007
(86)(22)【出願日】2021-08-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-26
(86)【国際出願番号】 KR2021011295
(87)【国際公開番号】W WO2022055152
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2022-12-27
(31)【優先権主張番号】10-2020-0115233
(32)【優先日】2020-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】イン・スク・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ウ・キム
(72)【発明者】
【氏名】サン・フン・チェ
【審査官】大塚 龍平
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2018-0103263(KR,A)
【文献】特開2003-137958(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0027691(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0027690(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00
C08G 18/08
C08G 18/12
C08G 18/40
C08G 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエーテル系ポリオールでありガラス転移温度が-50℃以下の第1ポリオール系化合物;イソシアネート基と反応する官能基を少なくとも3個含み、重量平均分子量が5,000g/mol以上30,000g/mol以下の第2ポリオール系化合物;および熱放出容量が500J/g・K以下のポリオールおよび多官能イソシアネート系化合物を含む第3混合物の重合体である第3ポリオール系化合物;を含むポリオール混合物;
イソシアネート系硬化剤;ならびに
フィラーを含み、
前記フィラーは、前記ポリオール混合物100重量部に対して、10重量部以上20重量部以下で含まれ、
第2ポリオール系化合物は、ポリエーテル系ポリオール;多官能イソシアネート系化合物;およびイソシアネート基と反応する官能基を3以上含む鎖延長剤;を含む第2の混合物の重合体であり、
前記第2の混合物において前記ポリエーテル系ポリオールと前記多官能イソシアネート系化合物とのモル比は、1:0.5以上1:0.95以下であり、
前記第2の混合物において前記ポリエーテル系ポリオールと前記鎖延長剤とのモル比が1:0.1以上1:0.45以下であり、
前記第3混合物において前記熱放出容量が500J/g・K以下のポリオールと前記多官能イソシアネート系化合物とのモル比が1:0.05以上1:0.25以下であるポリウレタンフォーム組成物。
【請求項2】
前記フィラーは、二酸化ケイ素、シリカ、ATH、および炭酸カルシウムのうちの1種以上を含むものである、請求項1に記載のポリウレタンフォーム組成物。
【請求項3】
前記第1ポリオール系化合物の含有量は、前記ポリオール混合物100重量部に対して、60重量部以上75重量部以下である、請求項1または2に記載のポリウレタンフォーム組成物。
【請求項4】
前記第2ポリオール系化合物の含有量は、前記ポリオール混合物100重量部に対して、5重量部以上20重量部以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載のポリウレタンフォーム組成物。
【請求項5】
前記第3ポリオール系化合物の含有量は、前記ポリオール混合物100重量部に対して、15重量部以上50重量部以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載のポリウレタンフォーム組成物。
【請求項6】
難燃剤、触媒、架橋剤、および染料のうちの1種以上を含む添加剤をさらに含むものである、請求項1から5のいずれか一項に記載のポリウレタンフォーム組成物。
【請求項7】
前記難燃剤の含有量は、前記ポリオール混合物100重量部に対して、20重量部以上50重量部以下である、請求項6に記載のポリウレタンフォーム組成物。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のポリウレタンフォーム組成物の硬化物を含むポリウレタンフォーム。
【請求項9】
吸着圧力が50kPa以上である、請求項8に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項10】
密度が0.1g/cm以上0.5g/cm以下である、請求項8または9に記載のポリウレタンフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2020年9月9日付で韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2020-0115233号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本発明に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ポリウレタンフォーム組成物およびその硬化物を含むポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0003】
ポリウレタンフォームは、比較的安価で成形が容易であり、高い弾性を有しているので、自動車部品をはじめとする生活用品全般にわたって広く使用されている。しかし、電子製品などにポリウレタンフォームが使用される場合、短絡などによって、可燃性であるポリウレタンフォームが一旦発火すれば制御不能の燃焼をして、小さくは製品の損傷、大きくは火災や爆発などが発生する問題があった。
【0004】
このような問題点を解消するために、ポリウレタンフォームの一面に難燃性を有するシートまたはパネルを積層して難燃性を付与する方法が主に使用されたが、これは根本的にポリウレタンフォームに難燃性を付与するのではないため、難燃効果が制限的であり、製造工程が複雑で製造費用を増加させる問題点があった。また、ポリウレタンフォーム自体に難燃性を付与するために、臭素化合物や塩素化合物などのハロゲン化合物で構成される難燃剤の添加が行われているが、これは、燃焼時、有毒ガスによって人体および環境問題をもたらすことがある。
【0005】
一方、バッテリセルの充放電による体積変化を緩衝するための緩衝材としてポリウレタンフォームが使用されている。一般的に、バッテリセルは、充電時に体積が増加する態様で使用されている。この場合、バッテリの体積膨張を緩和して爆発などの問題を防止するために、バッテリセルを製造する場合、ポリウレタンフォームをバッテリセル間のシーリング剤として使用している。
【0006】
バッテリパックを組立てる自動化工程において、ウレタンフォームは、自動化工程における真空吸着板との吸着が行われなければならない。しかし、吸着圧力が低すぎる場合、ポリウレタンフォームが真空吸着板と必要な水準まで吸着されず、製品を移せない問題が発生して、自動化工程に適用されない。そして、低すぎる場合、テープをラミネートする過程で吸着板とポリウレタンフォームとが分離される現象が発生することもある。
【0007】
このような吸着圧力を上昇させるために、ポリウレタンフォームの密度を高めて吸着力を高めようとする試みがあったが、費用および吸着後の工程上の問題も併せて生じた。
【0008】
上記の問題点を解決するために、難燃性に優れ、密度が低いながらも吸着力に優れたフォームの開発が必要なのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本明細書は、ポリウレタンフォーム組成物およびその硬化物を含むポリウレタンフォームを提供しようとする。
【0010】
ただし、本発明が解決しようとする課題は上記の言及した課題に制限されず、言及されていないさらに他の課題は下記の記載から当業者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施態様は、ガラス転移温度が-50℃以下の第1ポリオール系化合物;イソシアネート基と反応する官能基を少なくとも3個含み、重量平均分子量が5,000g/mol以上30,000g/mol以下の第2ポリオール系化合物;および熱放出容量が500J/g・K以下の第3ポリオール系化合物;を含むポリオール混合物;イソシアネート系硬化剤;ならびにフィラーを含み、前記フィラーは、前記ポリオール混合物100重量部に対して、10重量部以上20重量部以下で含まれるポリウレタンフォーム組成物を提供する。
【0012】
また、本発明の一実施態様は、前記ポリウレタンフォーム組成物の硬化物を含むポリウレタンフォームを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一実施態様に係るポリウレタンフォーム組成物は、低密度でかつ、同時に吸着力に優れたポリウレタンフォームを提供することができる。
【0014】
本発明の一実施態様に係るポリウレタンフォームは、吸着力に優れているので、自動化工程中、真空吸着板を用いてテープラミネート作業性に優れることができ、ポリウレタンフォームの移動作業性が便利であり得る。
【0015】
本発明の一実施態様に係るポリウレタンフォームは、バッテリセルの間に適用する場合、セルの体積変化に対する寸法安定性(dimensional stability)、振動および衝撃に対する優れた応力吸収性、優れた復元力および高い耐火性を実現することができる。
【0016】
本発明の効果は上述した効果に限定されるものではなく、言及されていない効果は本願明細書および添付した図面から当業者に明確に理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに包含できることを意味する。
【0018】
本願明細書全体において、単位「重量部」は、各成分間の重量の比率を意味することができる。
【0019】
本願明細書全体において、「Aおよび/またはB」は、「AおよびB、またはAまたはB」を意味する。
【0020】
本願明細書全体において、ある化合物の「重量平均分子量」および「数平均分子量」は、その化合物の分子量と分子量分布を利用して計算される。具体的には、1mLのガラス瓶にテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)と化合物を入れて、化合物の濃度が1wt%のサンプル試料を用意し、標準試料(ポリスチレン、polystyrene)とサンプル試料をフィルタ(ポアサイズが0.45mm)を通して濾過させた後、GPCインジェクタ(injector)に注入して、サンプル試料の溶離(elution)時間を標準試料のキャリブレーション(calibration)曲線と比較して化合物の分子量および分子量分布を得ることができる。この時、測定機器としてInfinity II 1260(Agilient社)を用いることができ、流速は1.00mL/min、カラム温度は40.0℃に設定することができる。
【0021】
本願明細書全体において、「ガラス転移温度(Glass Temperature、Tg)」は、示差走査熱計量法(Differnetial Scanning Analysis)を用いて測定することができ、具体的には、DSC(Differential Scanning Calorimeter、DSC-STAR3、METTLER TOLEDO社)を用いて、試料を-60℃~150℃の温度範囲で加熱速度5℃/minで昇温し、前記区間で2回(cycle)の実験を進行させて、熱変化量がある地点で作成されたDSC曲線の中間点を測定して、ガラス転移温度を求めることができる。
【0022】
本願明細書全体において、化合物の粘度は、25℃の温度でブルックフィールド粘度計で測定した値であってもよい。
【0023】
以下、本明細書についてさらに詳細に説明する。
本発明の一実施態様は、ガラス転移温度が-50℃以下の第1ポリオール系化合物;イソシアネート基と反応する官能基を少なくとも3個含み、重量平均分子量が5,000g/mol以上30,000g/mol以下の第2ポリオール系化合物;および熱放出容量が500J/g・K以下の第3ポリオール系化合物;を含むポリオール混合物;イソシアネート系硬化剤;ならびにフィラーを含み、前記フィラーは、前記ポリオール混合物100重量部に対して、10重量部以上20重量部以下で含まれるポリウレタンフォーム組成物を提供する。
【0024】
本発明の一実施態様に係るポリウレタンフォーム組成物は、吸着特性に優れたポリウレタンフォームを提供することができる。
【0025】
以下、本発明の一実施態様に係るポリウレタンフォーム組成物の成分についてそれぞれ詳しく説明する。
【0026】
(1)第1ポリオール系化合物
本発明の一実施態様によれば、前記第1ポリオール系化合物は、-50℃以下のガラス転移温度を有することができる。具体的には、前記第1ポリオール系化合物のガラス転移温度は、-80℃以上-50℃以下、または-75℃以上-60℃以下であってもよい。前記第1ポリオール系化合物のガラス転移温度が前述した範囲内の場合、前記ポリウレタンフォーム組成物の硬化物を含む前記ポリウレタンフォームは、高い反発特性および圧縮復元特性を有することができる。
【0027】
また、前記第1ポリオール系化合物は、25℃での粘度が2,000mPa・s以下であってもよい。具体的には、25℃での前記第1ポリオール系化合物の粘度は、200mPa・s以上2,000mPa・s以下であってもよい。前記第1ポリオール系化合物の粘度を前述した範囲に調節することにより、前記ポリウレタンフォームの製造時、原料の分散性および作業性を高められるというメリットがある。
【0028】
本発明の一実施態様によれば、前記第1ポリオール系化合物は、ガラス転移温度が-50℃以下であり、ポリアルキレンオキシド単位を有するポリエーテル系ポリオールであって、25℃での粘度が2,000mPa・s以下であってもよい。
【0029】
また、前記第1ポリオール系化合物は、イソシアネート基と反応する官能基を少なくとも2個含むことができる。前記イソシアネート基と反応する官能基は、イソシアネート基とウレタン結合をする官能基を意味することができる。具体的には、前記イソシアネート基と反応する官能基は、ヒドロキシ基、アミン基、チオール基、またはカルボキシ基であってもよい。より具体的には、前記第1ポリオール系化合物は、主鎖の両末端にヒドロキシ基が結合しており、ヒドロキシ基、アミン基、チオール基、およびカルボキシ基の少なくとも1つ以上が前記第1ポリオール系化合物の側鎖に含まれる。
【0030】
本発明の一実施態様によれば、前記第1ポリオール系化合物は、エーテル系ポリオール、エステル系ポリオール、および鎖延長剤のうちの1種以上を含む第1混合物の重合体であってもよい。
【0031】
エーテル系ポリオール、エステル系ポリオール、および鎖延長剤は、当該技術分野にて用いられるものを使用することができ、例えば、エーテル系ポリオールとしては、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどを使用することができ、エステル系ポリオールとしては、ポリカプロラクトンポリオールなどを使用することができ、鎖延長剤としては、ブタンジオールなどを使用することができる。
【0032】
本発明の一実施態様によれば、前記第1ポリオール系化合物の含有量は、前記ポリオール混合物100重量部に対して、60重量部以上75重量部以下であってもよい。具体的には、前記第1ポリオール系化合物の含有量は、前記ポリオール混合物100重量部に対して、62.5重量部以上72.5重量部以下、65重量部以上70重量部以下、または67重量部以上73重量部以下であってもよい。前記第1ポリオール系化合物の含有量を前述した範囲に調節することにより、ポリウレタンフォーム組成物の硬化物を含むポリウレタンフォームの圧縮復元特性を向上させることができる。
【0033】
本明細書において、ポリオール混合物は、前記第1ポリオール系化合物、前記第2ポリオール系化合物、および前記第3ポリオール系化合物を含むポリオール系物質全体を意味することができる。また、ポリオール混合物は、前記第1ポリオール系化合物、前記第2ポリオール系化合物、および前記第3ポリオール系化合物からなるものを意味することができる。
【0034】
(2)第2ポリオール系化合物
本発明の一実施態様によれば、前記第2ポリオール系化合物は、イソシアネート基と反応する官能基を少なくとも3個含むことができる。前記イソシアネート基と反応する官能基は、イソシアネート基とウレタン結合をする官能基を意味することができる。具体的には、前記イソシアネート基と反応する官能基は、ヒドロキシ基、アミン基、チオール基、またはカルボキシ基であってもよい。
【0035】
本発明の一実施態様によれば、前記第2ポリオール系化合物は、分枝鎖構造であってもよい。具体的には、前記第2ポリオール系化合物は、両末端にヒドロキシ基が結合し、イソシアネート基と反応する1以上の官能基が主鎖に結合して側鎖を形成したものであってもよい。具体的には、前記第2ポリオール系化合物は、イソシアネート基と反応する官能基を3個以上含むことにより、両末端にのみヒドロキシ基が結合した線状構造のポリオールに比べて、ウレタン重合時により緻密な構造のネットワーク構造を形成することができる。
【0036】
本発明の一実施態様によれば、前記第2ポリオール系化合物の重量平均分子量は、5,000g/mol以上30,000g/mol以下であってもよい。具体的には、前記第2ポリオール系化合物の重量平均分子量は、7,000g/mol以上28,000g/mol以下、10,000g/mol以上25,000g/mol以下、12,000g/mol以上20,000g/mol以下、または15,000g/mol以上18,000g/mol以下であってもよい。前記第2ポリオール系化合物は、前記ポリウレタンフォームの骨格の役割を果たし、前記第2ポリオール系化合物の重量平均分子量が前述した範囲内の場合、前記ポリウレタンフォームの圧縮復元能力が効果的に向上できる。
【0037】
本発明の一実施態様によれば、前記第2ポリオール系化合物は、25℃での粘度が20,000mPa・s以上200,000mPa・s以下であってもよい。具体的には、25℃での前記第2ポリオール系化合物の粘度は、30,000mPa・s以上180,000mPa・s以下、35,000mPa・s以上150,000mPa・s以下、50,000mPa・s以上120,000mPa・s以下、60,000mPa・s以上100,000mPa・s以下、または35,000mPa・s以上70,000mPa・s以下であってもよい。前記第2ポリオール系化合物の粘度が前述した範囲内の場合、前記ポリウレタン組成物中における他の物質との均一な分散が可能で、均一な品質のポリウレタンフォームを製造することができる。
【0038】
本発明の一実施態様によれば、前記第2ポリオール系化合物は、イソシアネート基と反応する官能基を少なくとも3個含み、重量平均分子量が5,000g/mol以上30,000g/mol以下であり、25℃での粘度が20,000mPa・s以上200,000mPa・s以下のポリエーテル系ポリオールであってもよい。
【0039】
本発明の一実施態様によれば、前記第2ポリオール系化合物は、ポリエーテル系ポリオール;多官能イソシアネート系化合物;およびイソシアネート基と反応する官能基を3以上含む鎖延長剤;を含む第2混合物の重合体であってもよい。
【0040】
本発明の一実施態様によれば、前記第2混合物における前記ポリエーテル系ポリオールは、ポリアルキレンオキシドに由来したものであってもよい。具体的には、前記第2混合物における前記ポリエーテル系ポリオールは、ポリエチレングリコール(PEG:polyethylene glycol);ポリプロピレングリコール(PPG:polypropylene glycol);PEG-PPG共重合体(polyethylene glycol-polypropylene glycol copolymer);およびポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール(PTMG:Poly(tetramethylene ether)glycol)の少なくとも1つを含むことができる。
【0041】
本発明の一実施態様によれば、前記第2混合物は、前記ポリエーテル系ポリオールと前記多官能イソシアネート系化合物とのモル比が1:0.5以上1:1以下であってもよい。具体的には、前記第2混合物における前記ポリエーテル系ポリオールと前記多官能イソシアネート系化合物とのモル比は、1:0.6以上1:0.95以下、または1:0.65以上1:0.9以下であってもよい。
【0042】
前記第2混合物における前記多官能イソシアネート系化合物の含有量が前記範囲内の場合、第2ポリオール系化合物の製造時、粘度を過度に高くならないようにして他の組成との配合性を良くすることができ、ゲル化を防止することができる。
【0043】
本発明の一実施態様によれば、前記第2混合物における前記多官能イソシアネート系化合物は、イソシアネート基を2個含むことができる。また、前記第2混合物における前記多官能イソシアネート系化合物は、芳香族系多官能イソシアネート化合物、脂環式系多官能イソシアネート化合物、および脂肪族系多官能イソシアネート化合物の少なくとも1つを含むことができる。
【0044】
具体的には、前記芳香族系多官能イソシアネート化合物は、2,4-トリレンジイソシアネート(TDI:tolylene diisocyanate)、2,6-トリレンジイソシアネート(TDI:tolylene diisocyanate)、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI:Methylene diphenyl diisocyanate)、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI:Methylene diphenyl diisocyanate)、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI:Methylene diphenyl diisocyanate)、キシリレンジイソシアネート(XDI:xylylene diisocyanate)、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、および3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネートの少なくとも1つを含むことができる。
【0045】
また、前記脂環式系多官能イソシアネート化合物は、4,4’-メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート(H12-MDI:4,4’-Methylene dicyclohexyl diisocyanate)、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI:isophorone diisocyanate)、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、および水和キシリレンジイソシアネート(H6-XDI:Hydrogenated xylylene diisocyanate)、およびメチルシクロヘキサンジイソシアネートの少なくとも1つを含むことができる。
【0046】
また、前記脂肪族系多官能イソシアネート化合物は、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI:hexamethylene diisocyanate)、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、およびリジンイソシアネートの少なくとも1つを含むことができる。
【0047】
本発明の一実施態様によれば、前記第2混合物は、前記ポリエーテル系ポリオールと前記鎖延長剤とのモル比が1:0.1以上1:0.45以下であってもよい。
【0048】
具体的には、前記ポリエーテル系ポリオールと前記鎖延長剤とのモル比は、1:0.2以上1:0.4以下、または1:0.25以上1:0.35以下、より具体的には1:0.3であってもよい。
【0049】
前記第2混合物における前記鎖延長剤の含有量が前記範囲内の場合、前記ポリウレタンフォーム内で適切な架橋を形成して、優れた圧縮復元性能を実現できるというメリットがある。
【0050】
本発明の一実施態様によれば、前記第2混合物における前記鎖延長剤は、イソシアネート基と反応する官能基を3個以上含む化合物であってもよい。また、前記鎖延長剤に含まれる前記官能基の数は、3個以上10個以下、または3個以上5個以下であってもよい。
【0051】
本発明の一実施態様によれば、前記第2混合物における前記鎖延長剤は、下記の化合物のうちの1以上を含むことができる。
【化1】
【0052】
本発明の一実施態様によれば、前記第2ポリオール系化合物の含有量は、前記ポリオール混合物100重量部に対して、5重量部以上20重量部以下であってもよい。具体的には、前記第2ポリオール系化合物の含有量は、前記ポリオール混合物100重量部に対して、5重量部以上15重量部以下であってもよい。
【0053】
前記第2ポリオール系化合物の含有量が前述した範囲内の場合、前記ポリウレタンフォーム組成物を用いて形成されるポリウレタンフォームの軟質特性を維持し、優れた反発特性を実現することができる。また、前記第2ポリオール系化合物の含有量を前記範囲に調節することにより、圧縮復元力の損失を最小化して前記ポリウレタンフォームの耐久性を確保することができる。
【0054】
(3)第3ポリオール系化合物
本発明の一実施態様によれば、前記第3ポリオール系化合物は、熱放出容量が500J/g・K以下のポリオール;または熱放出容量が500J/g・K以下のポリオールおよび多官能イソシアネート系化合物を含む第3混合物の重合体;であってもよい。
【0055】
本発明の一実施態様によれば、第3ポリオール系化合物自体として難燃特性を保有することができ、これにより、前記ポリウレタンフォームの難燃性能を向上させることができる。
【0056】
本発明の一実施態様によれば、前記第3ポリオール系化合物は、熱放出容量(heat release capacity)が500J/g・K以下のポリカーボネートジオール(poly carbonate diol)および熱放出容量(heat release capacity)が500J/g・K以下のポリジメチルシロキサンジオール(poly dimethyl siloxane diol)の少なくとも1つを含むことができる。
【0057】
本発明の一実施態様によれば、前記熱放出容量(heat release capacity)が500J/g・K以下のポリオールは、限界酸素指数(limiting oxygen index)値が21%以上のポリオールであってもよい。
【0058】
本発明の一実施態様によれば、前記第3ポリオール系化合物は、熱放出容量が500J/g・K以下のポリオールおよび多官能イソシアネート系化合物を含む第3混合物を用いて形成された重合体であってもよい。すなわち、前記重合体は、熱放出容量が500J/g・K以下であってもよい。また、前記第3ポリオール系化合物は、熱放出容量が500J/g・K以下かつ、限界酸素指数が21%以上のポリオール、および多官能イソシアネート系化合物を含む第3混合物を用いて形成された重合体であってもよい。すなわち、前記第3混合物を用いて形成された重合体は、熱放出容量が500J/g・K以下かつ、限界酸素指数が21%以上であってもよい。
【0059】
本発明の一実施態様によれば、第3ポリオール系化合物は、熱放出容量が500J/g・K以下を満足するか、または熱放出容量が500J/g・K以下かつ、限界酸素指数値が21%以上の値を満足することで、第3ポリオール系化合物自体として難燃特性を保有することができ、これにより、前記ポリウレタンフォームの難燃性能を向上させることができる。
【0060】
本発明の一実施態様によれば、前記第3混合物における前記多官能イソシアネート系化合物は、前記第3ポリオール系化合物の他の組成との相溶性を向上させる役割を果たすことができる。また、前記第3混合物における前記多官能イソシアネート系化合物は、前記第2混合物における前記多官能イソシアネート系化合物と同一の物質であってもよい。
【0061】
本発明の一実施態様によれば、前記第3混合物は、前記熱放出容量が500J/g・K以下のポリオールと前記多官能イソシアネート系化合物とのモル比が1:0.05以上1:0.25以下であってもよい。具体的には、前記熱放出容量が500J/g・K以下のポリオールと前記多官能イソシアネート系化合物とのモル比は、1:0.05以上1:0.15以下、または1:0.07以上0.12以下、より具体的には1:0.1であってもよい。
【0062】
前記第3混合物における前記多官能イソシアネート系化合物の含有量が前記範囲内の場合、前記第3混合物を用いて形成された重合体は、他の組成との相溶性が向上できる。
【0063】
本発明の一実施態様によれば、前記第3ポリオール系化合物の含有量は、前記ポリオール混合物100重量部に対して、15重量部以上50重量部以下であってもよい。具体的には、前記第3ポリオール系化合物の含有量は、前記ポリオール混合物100重量部に対して、25重量部以上40重量部以下、または25重量部以上35重量部であってもよい。
【0064】
前記第3ポリオール系化合物の含有量を前述した範囲に調節することにより、前記ポリウレタンフォーム組成物中における他の材料との相溶性を確保することができる。また、前記第3ポリオール系化合物の含有量が前記範囲内の場合、前記ポリウレタンフォームのUL-94垂直難燃テストの結果、V-0等級の難燃特性を実現できるようにし、前記ポリウレタンフォームの硬質化を最小化できるというメリットがある。
【0065】
本発明の一実施態様によれば、前記第3ポリオール系化合物の粘度は、1,000mPa・s以上7,000mPa・s以下、または1,500mPa・s以上5,000mPa・s以下であってもよい。前記第3ポリオール系化合物の粘度が前記範囲内の場合、前記ポリウレタンフォーム組成物中の他の成分との相溶性を確保できるというメリットがある。
【0066】
本発明の一実施態様によれば、前記第2ポリオール系化合物と前記第3ポリオール系化合物との総含有量は、前記ポリオール混合物100重量部に対して、30重量部以上60重量部以下であってもよい。具体的には、前記第2ポリオール系化合物と前記第3ポリオール系化合物との総含有量は、前記ポリオール混合物100重量部に対して、30重量部以上50重量部以下、または30重量部以上45重量部以下、または30重量部以上40重量部以下であってもよい。
【0067】
前記第2ポリオール系化合物と前記第3ポリオール系化合物との総含有量を前述した範囲内に調節することにより、前記ポリウレタンフォーム組成物の硬化物を含むポリウレタンフォームの難燃特性および圧縮特性を効果的に向上させることができる。
【0068】
(4)フィラー
本発明の一実施態様に係るポリウレタンフォーム組成物は、フィラーを含む。フィラーは、ポリウレタンフォーム組成物に含まれることにより、ポリウレタンフォームの硬度および吸着圧力を向上させることができ、CFDを適正水準に維持することができる。
【0069】
本発明の一実施態様によれば、前記フィラーは、二酸化ケイ素、シリカ、ATH、および炭酸カルシウムのうちの1種以上を含むことができ、特に炭酸カルシウムを含むことが好ましいが、これに限定されない。
【0070】
本発明の一実施態様によれば、前記フィラーは、前記ポリオール混合物100重量部に対して、10重量部以上20重量部以下、具体的には12重量部以上18重量部以下で含まれる。フィラーを前記範囲内の含有量で含むことにより、製品の適正硬度を維持しながらも真空吸着圧力が高くて自動化工程作業性に優れ、永久圧縮変形率が減少し、表面が滑らかで外観に優れていながらも適正な水準のCFDを達成することができる。
【0071】
CFD(Compression Force Deformation)とは、測定対象を圧縮させた時の反発力を意味するパラメータである。具体的には、CFDは、ポリウレタンフォームを5cm×5cmの規格に裁断し、UTMのような機器を用いて圧縮させた時の反発力を測定して、これをCFDで評価することができ、約0.05~0.18kg/cmの場合、適正な値である。CFDが適正水準の値を有する場合、ポリウレタンフォームがバッテリセルに適用された時、バッテリ膨張による体積変化を緩衝して体積を一定に維持することにより、製品安定性を向上させることができる。
【0072】
(5)整泡剤および造泡用気体供給源
本発明の一実施態様に係るポリウレタンフォーム組成物は、整泡剤を含むことができる。フォーム形状を製造するために添加されるものであって、前記整泡剤は、一般的に、ウレタンフォームの製造時に使用されるものであれば適用可能である。具体的には、前記整泡剤は、シリコーン系整泡剤、有機ケイ素系整泡剤、フッ素系整泡剤、イオン系界面活性剤、および非イオン系界面活性剤の少なくとも1つを含むことができる。より具体的には、前記整泡剤は、ポリアルキルオキシドが置換されたポリジメチルシロキサンを含むことができる。ただし、前記整泡剤はこれに限定されるものではなく、当業界にて一般的に使用される整泡剤を用いることができる。前記整泡剤を用いることにより、造泡用気体がポリウレタンフォームに適した泡構造を形成し、前記ポリウレタンフォームへの硬化時、気体の安定した分散性を維持して均一な大きさと分布の気孔を形成することができる。
【0073】
本発明の一実施態様によれば、前記整泡剤の含有量は、前記ポリオール混合物100重量部に対して、0.5重量部以上10重量部以下、1重量部以上5重量部以下、または2重量部以上4重量部以下であってもよい。
【0074】
本発明の一実施態様に係るポリウレタンフォーム組成物は、造泡用気体供給源を含むことができる。造泡用気体供給源は、整泡剤と相互作用して発泡することにより、ポリウレタンフォームの気孔を形成することができる。
【0075】
前記造泡用気体は、ポリオール系化合物とイソシアネートとの反応に悪影響を与えない気体であって、乾燥空気および/または窒素ガスのような不活性ガスを用いることができるが、前記に限定されず、前記造泡用気体組成物は、液状ガスであってもよく、例えば、液体窒素を使用することができる。
【0076】
造泡用気体供給源は、目的とするポリウレタンフォームの密度に応じて含有量を異ならせて含まれてもよい。
【0077】
(6)イソシアネート系硬化剤
本発明の一実施態様によれば、前記イソシアネート系硬化剤は、前記第1ポリオール系化合物~第3ポリオール系化合物とウレタン結合を形成し、ポリウレタンネットワークを形成するものであってもよい。
【0078】
本発明の一実施態様によれば、前記イソシアネート系硬化剤は、2個または3個以上のイソシアネート基を含む化合物であって、芳香族系イソシアネート化合物、脂環式系イソシアネート化合物、および脂肪族系イソシアネート化合物の少なくとも1つを含むことができる。前記イソシアネート系硬化剤としての芳香族系イソシアネート化合物、脂環式系イソシアネート化合物、および脂肪族系イソシアネート化合物は、それぞれ前述した第2混合物における芳香族系イソシアネート化合物、脂環式系イソシアネート化合物、および脂肪族系イソシアネート化合物と同一の物質を使用することができる。
【0079】
本発明の一実施態様によれば、前記イソシアネート系硬化剤の含有量は、前記ポリオール混合物100重量部に対して、20重量部以上35重量部以下であってもよい。具体的には、前記イソシアネート系硬化剤の含有量は、前記ポリオール混合物100重量部に対して、25重量部以上32.5重量部以下、27.5重量部以上30重量部以下、または28重量部以上32重量部以下であってもよい。前記イソシアネート系硬化剤の含有量を前述した範囲に調節することにより、前記ポリオール混合物に含まれる第1ポリオール系化合物~第3ポリオール系化合物とのウレタン結合反応が効果的に行われる。
【0080】
(7)その他の添加剤
本発明の一実施態様によれば、前記ポリウレタンフォーム組成物は、難燃剤、触媒、架橋剤、および染料のうちの1種以上を含む添加剤をさらに含むことができる。
【0081】
本発明の一実施態様によれば、前記難燃剤は、非ハロゲン型難燃剤を含むことができる。具体的には、前記難燃剤は、固体状または液状の非ハロゲン型リン系難燃剤を含むことができる。具体的には、本発明の一実施態様によれば、前記難燃剤は、ホスフェート(phosphate);ホスホネート(phosphonate);ホスフィネート(phosphinate);ホスフィンオキシド(phosphine oxide);およびホスファゼン(phosphazene)からなる群より選択される1種以上を含むことができる。具体的には、前記難燃剤は、アルミニウムホスフェートであってもよい。ただし、これに限定されるものではなく、当業界にて一般的に用いられるリン系難燃剤を使用することができる。
【0082】
前記非ハロゲン型リン系難燃剤は、可燃性物質と反応して高分子表面に炭化膜を形成し、これは燃焼に必要な酸素を遮断して前記ポリウレタンフォームの難燃性を高めることができる。また、前記非ハロゲン型リン系難燃剤は、高分子内の酸素元素と反応して脱水炭化作用をし、リン酸の分解によって生成されたラジカルは、燃焼によって発生する活性ラジカルである-OHおよび-Hを安定化させる役割を果たすことができる。
【0083】
本発明の一実施態様によれば、前記難燃剤は、前記リン系難燃剤と難燃メラミンパウダーとを混合したものを含むことができる。具体的には、前記難燃メラミンパウダーは、MCA(melamine cyanurate)であってもよい。
【0084】
本発明の一実施態様によれば、前記難燃剤の含有量は、前記ポリオール混合物100重量部に対して、20重量部以上50重量部以下であってもよい。具体的には、前記難燃剤の含有量は、前記ポリオール混合物100重量部に対して、20重量部以上40重量部以下、21重量部以上30重量部以下、または25重量部以上30重量部以下であってもよい。
【0085】
前記難燃剤の含有量が前記範囲内の場合、前記ポリウレタンフォーム組成物中のポリオール系化合物の熱放出容量を低下させ、限界酸素指数を高める効果を得ることができる。また、前記難燃剤の含有量が前記範囲内の場合、燃焼時、ポリウレタンフォームの高分子を炭化物(char)に形成するのに役立つことができ、燃焼時に発生するラジカルを効果的に除去することができる。さらに、前記難燃剤の含有量が前記範囲内の場合、前記ポリウレタンフォームの圧縮復元性能の低下を最小化し、難燃性を確保させることができる。
【0086】
本発明の一実施態様によれば、ポリウレタンフォームの難燃性をより向上させるために、膨張黒鉛を含むことができる。
【0087】
本発明の一実施態様によれば、前記膨張黒鉛の大きさは、150μm以上300μm以下であってもよい。具体的には、前記膨張黒鉛の大きさは、165μm以上300μm以下、180μm以上300μm以下、または200μm以上300μm以下であってもよい。前記膨張黒鉛は、層状の結晶構造を有しており、加熱すれば本来の大きさより20倍以上400倍以下まで膨張して、燃焼時に多孔性炭化物の形成を誘導することができる。前記膨張黒鉛の大きさを前述した範囲に調節することにより、前記ポリウレタンフォームの難燃特性を効果的に向上させることができる。具体的には、前記膨張黒鉛の大きさが前述した範囲内の場合、前記ポリウレタンフォームは、UL-94垂直難燃テストの結果、V-0等級の難燃特性を有することができる。より具体的には、前記ポリウレタンフォームは、UL-94垂直難燃テストの結果、V-0等級の難燃特性を満足すると同時に、UL-94垂直難燃テストの時、5つの試験片に対する1次接炎後の残炎時間の総計が2秒未満であってもよい。すなわち、前記ポリウレタンフォームは、UL-94垂直難燃テストの結果、V-0等級の中でも、優れた難燃特性を有するというメリットがある。
【0088】
本発明の一実施態様によれば、前記膨張黒鉛の大きさは、膨張黒鉛の一端から他端までの長さのうち最も長い長さを意味することができる。また、前記膨張黒鉛は、複数の膨張黒鉛粒子を含むことができ、前記膨張黒鉛の大きさは、前記複数の膨張黒鉛粒子の大きさの平均値であってもよい。
【0089】
本発明の一実施態様によれば、前記膨張黒鉛の大きさは、当業界にて粒子の大きさを測定する方法を制限なく採用して、測定することができる。例えば、電子顕微鏡(scanning electron microscope、SEM)を用いて前記膨張黒鉛を撮影し、撮影されたイメージを用いて前記膨張黒鉛の大きさを測定することができる。
【0090】
本発明の一実施態様によれば、前記膨張黒鉛の含有量は、前記ポリオール混合物100重量部に対して、0重量部超過50重量部以下であってもよい。具体的には、前記膨張黒鉛の含有量は、前記ポリオール混合物100重量部に対して、21重量部以上40重量部以下、または21重量部以上30重量部以下であってもよい。前記膨張黒鉛の含有量を前記範囲内に調節する場合、前記ポリウレタンフォームの圧縮復元力を低下させることなく難燃性を向上させることができる。
【0091】
本発明の一実施態様によれば、前記難燃剤と前記膨張黒鉛との重量比は、1:0.8以上1:1.2以下であってもよい。具体的には、前記難燃剤と前記膨張黒鉛との重量比は、1:0.9以上1:1.1以下であってもよく、より具体的には1:1であってもよい。
【0092】
前記難燃剤および前記膨張黒鉛の含有量を前記範囲内に調節する場合、前記ポリウレタンフォーム組成物を用いて形成されるポリウレタンフォームの難燃特性をV-0等級で実現することができる。また、前記ポリウレタンフォームは、V-0等級の難燃特性の中でも優れた難燃物性を有することができる。
【0093】
本発明の一実施態様によれば、前記触媒は、アミン系触媒および/または金属触媒であってもよい。具体的には、前記アミン系触媒は、モノアミン化合物、ジアミン化合物、トリアミン化合物、ポリアミン化合物、環状アミン化合物、アルコールアミン化合物、およびエーテルアミン化合物の少なくとも1つを含むことができる。また、前記金属触媒は、ニッケル系化合物、有機スズ化合物、有機ビスマス化合物、有機鉛化合物、有機ニッケル化合物、および有機亜鉛化合物の少なくとも1つを含むことができる。具体的には、本発明の一実施態様によれば、前記触媒は、ジブチルスズジラウレート(Dibutyltin dilaurate)であってもよい。
【0094】
本発明の一実施態様によれば、前記触媒の含有量は、前記ポリオール混合物100重量部に対して、0.5重量部以上10重量部以下、1重量部以上10重量部以下、または1重量部以上5重量部以下であってもよい。
【0095】
本発明の一実施態様によれば、前記架橋剤は、イソシアネート基と反応可能な活性水素含有基を2個以上4個以下で有し、数平均分子量が50g/mol以上800g/mol以下の低分子化合物であってもよい。具体的には、前記架橋剤は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、およびペンタエリスリトールの少なくとも1つを含むことができる。
【0096】
本発明の一実施態様によれば、前記架橋剤の含有量は、前記ポリオール混合物100重量部に対して、1重量部以上20重量部以下、または5重量部以上15重量部以下であってもよい。
【0097】
本発明の一実施態様によれば、前記染料は、前記ポリウレタンフォーム組成物の硬化物を含むポリウレタンフォームの色相を発現させることができる。前記染料として、当業界にて染料として用いられるものを制限なく使用可能であり、例えば、カーボンブラックを使用することができる。
【0098】
前記染料の含有量は、前記ポリオール混合物100重量部に対して、1重量部以上3重量部以下であってもよい。前記染料の含有量を前述した範囲に調節することにより、前記ポリウレタンフォームの物性に影響を及ぼさず、ポリウレタンフォームに色相を実現することができる。
【0099】
本発明の一実施態様は、前記ポリウレタンフォーム組成物の硬化物を含むポリウレタンフォームを提供する。
【0100】
本発明の一実施態様は、前記ポリウレタンフォーム組成物を用いて形成されたポリウレタンフォームを提供する。前記ポリウレタンフォーム組成物を用いてポリウレタンフォームを製造する方法は、一般的に知られたポリウレタンフォームの製造方法を利用することができる。
【0101】
本発明の一実施態様は、吸着圧力が50kPa以上、50kPa以上95kPa以下、または60kPa以上95kPa以下のポリウレタンフォームを提供する。前記範囲内の吸着圧力を有する場合、自動化工程作業性に優れることができ、バッテリパックを組立てる工程での適正圧力に相当することができる。
【0102】
本発明の一実施態様によれば、前記ポリウレタンフォームは、UL-94垂直難燃テストの結果、V-0等級の難燃特性を有することができる。したがって、本発明の一実施態様に係る難燃性ポリウレタンフォームは、難燃特性に優れるというメリットがある。
【0103】
UL-94垂直難燃テストは、横が125±25mm、縦が13.0±0.5mm、厚さが2.0mmのサンプルを製造する。このように製造されたサンプル2つが1つのセットである試験片を5つ用意し、23±2℃、50±5%湿度で保管後、37MJ/mの熱量のメタンガスの青い炎(炎高さ20mm、試験片の下部分とバーナ端との間の距離9.5mm)を用いてそれぞれの試験片を10秒間2回燃焼させ、2回目10秒間火炎燃焼後に炎が消える時間(t2)と無炎燃焼が持続する時間(t3)を測定して、下記表1のような基準により等級を付与する。
【0104】
【表1】
【0105】
本発明の一実施態様によれば、前記ポリウレタンフォームは、UL-94垂直難燃テストの時、5つの試験片に対する1次接炎後の残炎時間の総計が2秒未満であってもよい。具体的には、前記UL-94垂直難燃テストの実行時、5つの試験片に対して10秒間燃焼させた後、5つの試験片に残留する残炎時間の総計が2秒未満であってもよい。本発明の一実施態様によれば、前記ポリウレタンフォームは、UL-94垂直難燃テストの時、5つの試験片に対する2次接炎後の残炎時間の総計が5秒未満であってもよい。具体的には、前記UL-94垂直難燃テストの実行時、5つの試験片に対して10秒間2回燃焼させた後、2回目燃焼後の5つの試験片に残留する残炎時間の総計が5秒未満であってもよい。
【0106】
したがって、本発明の一実施態様に係るポリウレタンフォームは、UL-94垂直難燃テストの結果、V-0等級の中でも、優れた難燃特性を有するというメリットがある。
【0107】
本発明の一実施態様によれば、前記ポリウレタンフォームの密度は、0.1g/cm以上0.5g/cm以下、0.1g/cm以上0.3g/cm以下、または0.1g/cm以上0.2g/cm以下であってもよい。前記ポリウレタンフォームの密度を前記範囲に調節する場合、機器への適用時、密着性および優れた反発特性によって効果的な吸着特性を実現できながらも費用を節減可能で経済的であり、バッテリを軽量化することができる。
【0108】
本発明の一実施態様によれば、前記ポリウレタンフォームのCFDは、0.05~0.18kg/cmであってもよい。前記ポリウレタンフォームのCFDが前記範囲内の場合、バッテリセルに適用された時、バッテリの膨張による体積変化を緩衝して体積を一定に維持することにより、製品安定性を向上させることができる。
【0109】
本発明の一実施態様によれば、前記ポリウレタンフォームの厚さは、0.1mm以上10mm以下であってもよい。具体的には、前記ポリウレタンフォームの厚さは、0.1mm以上5mm以下であってもよい。前記ポリウレタンフォームの厚さを前記範囲に調節する場合、機器への適用時、密着性および衝撃吸収を容易にできる。
【0110】
本発明の一実施態様によれば、前記ポリウレタンフォームは、パッキング材であってもよい。また、本発明の一実施態様によれば、前記ポリウレタンフォームは、自動車バッテリのセル間のシーリング材であってもよい。
【0111】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明による実施例は種々の異なる形態に変形可能であり、本発明の範囲が以下に述べる実施例に限定されると解釈されない。本明細書の実施例は当業界における平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【実施例
【0112】
ポリオール系化合物の製造
製造例1:第1ポリオール系化合物の製造
数平均分子量が4,000g/molであり、粘度が1,300mPa・sであり、熱放出容量が553J/g・Kであるポリプロピレングリコール50重量部;および数平均分子量が2,000g/molであり、粘度が300mPa・sであり、熱放出容量が553J/g・Kであるポリプロピレングリコール50重量部を含む混合物を用意した後、これを重合して、粘度が730mPa・sかつ、ガラス転移温度が-71℃の第1ポリオール系化合物を製造した。
【0113】
製造例2:第2ポリオール系化合物の製造
窒素が還流する反応器に、数平均分子量が2,000g/molのPEG-PPG共重合体(SC2204;KPX chemical)10kgにH12-MDI(Evonik)とグリセロールそれぞれを、下記表2によってSC2204に対するモル比で反応器に投入した。そして、60℃に昇温して、40ppmの触媒(ジブチルスズジラウレートDibutyltin dilaurate)を投入し、4時間撹拌後、FT-IRによりイソシアネートピークが消えることを確認し、反応を終了して、下記表2のように第2ポリオール系化合物を製造した。
【0114】
【表2】
【0115】
前記表2中、H12-MDIとグリセロールとのモル比は、SC2204の1モルに対するものである。前記表2から分かるように、製造例2-3の場合、3以上の官能基を有する鎖延長剤(グリセロール)を使用せず、線状構造のポリオールが形成されることが分かる。また、製造例2-4の場合、多官能イソシアネート系化合物(H12-MDI)の含有量および3以上の官能基を有する鎖延長剤(グリセロール)の含有量が過度に高く、ゲル化現象が発生して、ポリオール系化合物を形成できなかった。さらに、製造例2-5の場合、多官能イソシアネート系化合物(H12-MDI)の含有量が高く、粘度が大きく上昇して、他の組成との配合が困難なポリオールが形成された。
【0116】
製造例3:第3ポリオール系化合物の製造
窒素が還流する反応器に、数平均分子量が500g/molのポリカーボネートジオール(T5650E;Aksai Kasai chemical)10kgにXDI(Takenate 600、Mitsui Chemical)を、下記表3のように、T5650Eに対するモル比で反応器に投入した。そして、60℃に昇温して、40ppmの触媒(ジブチルスズジラウレート、Dibutyltin dilaurate)を投入し、4時間撹拌後、FT-IRによりイソシアネートピークが消えることを確認し、反応を終了して、下記表3のように、熱放出容量が400J/g・Kの第3ポリオール系化合物を製造した。
【0117】
【表3】
【0118】
前記表3中、XDIのモル比は、T5650Eの1モルに対するものである。前記表3から分かるように、製造例3-1は、多官能イソシアネート系化合物(XDI)の含有量が過度に高く、過度に高い粘度でポリオールが製造され、これは他の成分との相溶性が不良で、相分離現象が発生して、難燃性ポリウレタンフォームの製造が困難であった。また、製造例3-1は、内部の水素結合が過度に強く、自己凝集力が高くて、第1ポリオール系化合物および第2ポリオール系化合物との混合がよく行われない問題点があった。
【0119】
実施例1:ポリウレタンフォームの製造
第1ポリオール系化合物として前記製造例1で製造されたものを用意し、第2ポリオール系化合物として前記製造例2で製造されたものを用意し、第3ポリオール系化合物として前記製造例3で製造されたものを用意した。
【0120】
また、難燃剤としてアルミニウムホスフェート(Al phosphate)と難燃メラミンパウダー(メラミンシアヌレート、melamine cyanurate;MCA)とが混合されたものを用意し、染料としてカーボンブラックを用意し、整泡剤としてポリアルキルオキシドが置換されたポリジメチルシロキサンであるL-626(モメンティブ社)を用意し、触媒としてニッケル系触媒であるLC5615(モメンティブ社)を用意し、イソシアネート系硬化剤としてH12-MDI(錦湖三井化学社)を用意した。
【0121】
以後、第1ポリオール系化合物70重量部、第2ポリオール系化合物10重量部、および第3ポリオール系化合物20重量部を混合してポリオール混合物を製造し、2000rpmまで高速撹拌可能な撹拌装置を装着したステンレススチール材質の配合槽にポリオール混合物を投入し、常温で均一に撹拌した。そして、ポリオール混合物100重量部に対して、難燃剤25重量部、カーボンブラック2重量部、および炭酸カルシウム15重量部を添加してよく分散させた後、ポリオール混合物100重量部に対して、整泡剤2重量部、触媒2重量部を投入し、約1時間以上高速で撹拌して均一な組成物を製造した。この時、水分の流入はウレタン反応を阻害するので、最大限に抑制した。
【0122】
さらに、前記製造された組成物、イソシアネート系硬化剤、および液体窒素を、定量ポンプを用いて、製造された組成物とイソシアネート系硬化剤との総重量に対する液体窒素の体積比率を4:1として、高速ミキシングヘッドに同時に供給した。この時、イソシアネート系硬化剤は、ポリオール混合物100重量部に対して28重量部を添加し、窒素ガスは密度と硬度を合わせながら供給した。3つの成分を均一にミキシングしてポリウレタンフォーム組成物を製造した。
【0123】
以後、製造されたポリウレタンフォーム組成物をポリエステルフィルム上にコーティングした後、反応硬化器で約120~150℃の範囲の高温で硬化させて、密度が0.2g/cm、厚さが3.0mmのポリウレタンフォームシートを製造した。
【0124】
実施例2~3および比較例1
下記表4のように、カーボンブラック、炭酸カルシウム、整泡剤、および触媒の含有量を調節してポリウレタンフォーム組成物を製造したことを除けば、前記実施例1と同様の方法でポリウレタンフォームシートを製造した。
【0125】
実施例4
製造された組成物とイソシアネート系硬化剤との総重量に対する窒素ガスの体積比率を2:1として、高速ミキシングヘッドに同時に供給することにより、ポリウレタンフォーム組成物を製造したことを除けば、実施例3と同様の方法でポリウレタンフォームシートを製造した。
【0126】
吸着圧力の測定
自動化設備(LG Chem社)のカートリッジに実施例1~4および比較例1で製造したポリウレタンフォームシートを裁断して装着し、真空吸着パッドに真空を加えてポリウレタンフォームと真空パッドが吸着された時の吸着力を測定して、下記表4に示した。
【0127】
【表4】
【0128】
前記表4中、難燃剤、カーボンブラック、炭酸カルシウム、整泡剤、触媒、およびイソシアネート系硬化剤の含有量は、ポリオール混合物100重量部に対するもの(重量部)である。前記表4を参照すれば、炭酸カルシウムが15重量部または20重量部含まれたポリウレタンフォーム組成物で製造された実施例1~実施例4で製造されたポリウレタンフォームシートは、吸着圧力が高く、真空吸着特性に優れた効果があることを確認することができる。
【0129】
これに対し、炭酸カルシウムが30重量部で過剰含有されたポリウレタンフォーム組成物で製造された比較例1で製造されたポリウレタンフォームシートは、吸着圧力が45kPaに過ぎず、バッテリパック組立工程で吸着がまともになされず、製品不良の問題が発生することがある。
【0130】
したがって、本発明の一実施態様に係るポリウレタンフォーム組成物は、吸着特性に優れたポリウレタンフォームを提供できることが分かる。特に、前記ポリウレタンフォームは、吸着圧力が約53kPa以上と高く、優れた吸着特性を有することが分かる。