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特許7644123アジン化合物、該アジン化合物を含む有機電界発光素子用材料および有機電界発光素子
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  • 特許-アジン化合物、該アジン化合物を含む有機電界発光素子用材料および有機電界発光素子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】アジン化合物、該アジン化合物を含む有機電界発光素子用材料および有機電界発光素子
(51)【国際特許分類】
   C07D 251/24 20060101AFI20250304BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20250304BHJP
   H10K 50/16 20230101ALI20250304BHJP
【FI】
C07D251/24 CSP
H05B33/14 A
H05B33/22 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022539543
(86)(22)【出願日】2021-07-28
(86)【国際出願番号】 JP2021027977
(87)【国際公開番号】W WO2022025142
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2024-04-16
(31)【優先権主張番号】P 2020129833
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000173762
【氏名又は名称】公益財団法人相模中央化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100203312
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 敬孝
(72)【発明者】
【氏名】上原 史成
(72)【発明者】
【氏名】山縣 拓也
(72)【発明者】
【氏名】西浦 利紀
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 宏亮
(72)【発明者】
【氏名】相原 秀典
(72)【発明者】
【氏名】荘野 智宏
(72)【発明者】
【氏名】小野 洋平
(72)【発明者】
【氏名】高橋 泰裕
【審査官】向井 佑
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-116428(JP,A)
【文献】国際公開第2020/111225(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0022546(KR,A)
【文献】特開2020-094031(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0089599(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるアジン化合物:
【化1】
式中、
Ar、フェニル基又はビフェニリル基を表す;
Ar、ビフェニリル基を表す;
Ar は、フェニル基、ビフェニリル基、又はナフチル基である;
Ar は、フェニル基、ビフェニリル基、又はナフチル基である:
は、1又は2である
【請求項2】
Ar及びArが、ともにフェニル基である、請求項1に記載のアジン化合物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアジン化合物を含む有機電界発光素子用材料。
【請求項4】
請求項に記載の有機電界発光素子用材料を含む有機電界発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アジン化合物、該アジン化合物を含む有機電界発光素子用材料及び有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子は、小型モバイル用途を中心に実用化が始まっている。しかしながら、更なる用途拡大には性能向上が必須であり、低駆動電圧、高い発光効率特性、長寿命特性を有する材料が求められている。
【0003】
特許文献1は、高効率で駆動電圧を低減できる有機電界発光素子用の材料であるアジン化合物を開示している。
特許文献2は、高い耐熱性及び高い電子輸送能を有するアジン化合物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2007/023840号
【文献】特開2012-82136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
用途の拡大、使用可能な環境の拡大に対する市場からの要求は非常に強く、駆動電圧、発光効率、寿命特性の3つの特性に関して、特許文献1又は特許文献2にかかるアジン化合物はこれらを十分に満たしているとはいえず、前記3つの特性を更なる高次元で達成したものが求められている。
【0006】
そこで、本開示の一態様は、優れた駆動電圧特性、発光効率特性及び寿命特性を発揮し得る有機電界発光素子の作製に資するアジン化合物、及び該アジン化合物を含む有機電界発光素子用材料を提供することに向けられている。
【0007】
さらに、本開示の他の態様は、駆動電圧特性、発光効率特性及び寿命特性を高次元に達成し得る有機電界発光素子を提供することに向けられている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様によれば、式(1)で表されるアジン化合物が提供される:
【0009】
【化1】
【0010】
式中、
Arは、フッ素原子、メチル基及びシアノ基からなる群から選択される1つ以上の置換基によって置換されていてもよい、フェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、フェニルナフチル基又はナフチルフェニル基を表す;
Arは、フッ素原子、メチル基及びシアノ基からなる群から選択される1つ以上の置換基によって置換されていてもよい、ビフェニリル基、ナフチル基、フェニルナフチル基又はナフチルフェニル基を表す;
Ar及びArは、各々独立に、以下の(a)及び(b)から選択される芳香族基を表す:
(a)フッ素原子、炭素数1~4のアルキル基及びフェニル基からなる群から選択される1つ以上の置換基によって置換されていてもよい、単環式、二環式若しくは三環式の炭素数6~18の炭化水素系芳香族基、
(b)フッ素原子、炭素数1~4のアルキル基及びフェニル基からなる群から選択される1つ以上の置換基によって置換されていてもよい、水素原子、炭素原子、酸素原子及び2価の硫黄原子からなる原子群から選択される原子で構成されている炭素数4~18のヘテロ芳香族基;
は、1、2又は3の整数を表す。
【0011】
本開示の他の態様によれば、上記アジン化合物を含む有機電界発光素子用材料が提供される。
本開示の他の態様によれば、上記有機電界発光素子用材料を含む有機電界発光素子が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本開示の一態様によれば、優れた駆動電圧特性、発光効率特性及び寿命特性を発揮し得る有機電界発光素子の作製に資するアジン化合物、及び該アジン化合物を含む有機電界発光素子用材料を提供することができる。
【0013】
また、本開示の他の態様によれば、駆動電圧特性、発光効率特性及び寿命特性を高次元に達成し得る有機電界発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の一態様にかかる有機電界発光素子の積層構成の一例を示す概略断面図である。
図2】本開示の一態様にかかる有機電界発光素子の他の積層構成の例(素子実施例-1の構成)を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の一態様にかかるアジン化合物について詳細に説明する。
【0016】
<アジン化合物>
本開示の一態様にかかるアジン化合物は、式(1)で表されるアジン化合物である:
【0017】
【化2】
【0018】
式中、
Arは、フッ素原子、メチル基及びシアノ基からなる群から選択される1つ以上の置換基によって置換されていてもよい、フェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、フェニルナフチル基又はナフチルフェニル基を表す;
Arは、フッ素原子、メチル基及びシアノ基からなる群から選択される1つ以上の置換基によって置換されていてもよい、ビフェニリル基、ナフチル基、フェニルナフチル基又はナフチルフェニル基を表す;
Ar及びArは、各々独立に、以下の(a)及び(b)から選択される芳香族基を表す:
(a)フッ素原子、炭素数1~4のアルキル基及びフェニル基からなる群から選択される1つ以上の置換基によって置換されていてもよい、単環式、二環式若しくは三環式の炭素数6~18の炭化水素系芳香族基、
(b)フッ素原子、炭素数1~4のアルキル基及びフェニル基からなる群から選択される1つ以上の置換基によって置換されていてもよい、水素原子、炭素原子、酸素原子及び2価の硫黄原子からなる原子群から選択される原子で構成されている炭素数4~18のヘテロ芳香族基;
は、1、2又は3の整数を表す。
【0019】
以下、式(1)で示されるアジン化合物を、アジン化合物(1)と称することもある。
アジン化合物(1)における置換基の定義及びその好ましい具体例は、それぞれ以下のとおりであるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0020】
[Arについて]
Arは、フッ素原子、メチル基及びシアノ基からなる群から選択される1つ以上の基で置換されていてもよい、フェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、フェニルナフチル基又はナフチルフェニル基を表す。アジン化合物(1)の合成が容易な点で、Arは、フェニル基又はビフェニリル基であることが好ましい。
【0021】
[Arについて]
Arは、フッ素原子、メチル基及びシアノ基からなる群から選択される1つ以上の基で置換されていてもよい、ビフェニリル基、ナフチル基、フェニルナフチル基又はナフチルフェニル基を表す。アジン化合物(1)の合成が容易な点で、Arは、ビフェニリル基であることが好ましい。
【0022】
[Ar及びArについて]
Ar及びArは、各々独立に、以下の(a)及び(b)から選択される芳香族基を表す。
(a)フッ素原子、炭素数1~4のアルキル基及びフェニル基からなる群から選択される1つ以上の置換基によって置換されていてもよい、単環式、二環式若しくは三環式の炭素数6~18の炭化水素系芳香族基。
(b)フッ素原子、炭素数1~4のアルキル基及びフェニル基からなる群から選択される1つ以上の置換基によって置換されていてもよい、水素原子、炭素原子、酸素原子及び2価の硫黄原子からなる原子群から選択される原子で構成されている炭素数4~18のヘテロ芳香族基。
【0023】
Ar及びArが、各々独立に、以下の(a’)及び(b’)から選択される芳香族基であることが好ましい。
(a’)メチル基及びフェニル基からなる群から選択される1つ以上の基で置換されていてもよい、単環、二環式若しくは三環式の炭素数6~18の炭化水素系芳香族基。
(b’)メチル基及びフェニル基からなる群から選択される1つ以上の基で置換されていてもよい、水素原子、炭素原子、酸素原子及び2価の硫黄原子からなる原子群から選択される原子で構成される炭素数4~18のヘテロ芳香族基。
【0024】
Arで表される芳香族基としては、アジン化合物(1)の合成が容易な点で、フッ素原子、炭素数1~4のアルキル基及びフェニル基からなる群から選択される1つ以上の置換基によって置換されていてもよい、
フェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、アントリル基及びフェナントレニル基等の炭化水素系芳香族基;並びに、
ベンゾチオフェニル基、ベンゾフラニル基、チエノ[3,2-b]チオフェニル基、フロ[3,2-b]フラニル基、ジベンゾフラニル基及びジベンゾチオフェニル基等のヘテロ芳香族基;が挙げられる。
【0025】
アジン化合物(1)の合成が容易な点で、Arは、フェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、フルオレニル基、アントリル基、フェナントレニル基、ジベンゾフラニル基又はジベンゾチオフェニル基であることが好ましく、フェニル基又はビフェニリル基であることがさらに好ましい。
【0026】
Arで表される芳香族基としては、フッ素原子、炭素数1~4のアルキル基及びフェニル基からなる群から選択される1つ以上の置換基によって置換されていてもよい、
フェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、アントリル基及びフェナントレニル基等の炭化水素系芳香族基;並びに、
ベンゾチオフェニル基、ベンゾフラニル基、チエノ[3,2-b]チオフェニル基、フロ[3,2-b]フラニル基、ジベンゾフラニル基及びジベンゾチオフェニル基等のヘテロ芳香族基;が挙げられる。
【0027】
アジン化合物(1)の合成が容易な点で、Arは、フェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、アントリル基、フェナントレニル基、ジベンゾフラニル基又はジベンゾチオフェニル基であることが好ましく、フェニル基又はナフチル基であることがさらに好ましい。
【0028】
Ar及びArが、ともにフェニル基であることがさらに好ましい。
【0029】
は、1、2又は3の整数を表す。アジン化合物(1)の合成が容易な点で、nが、1又は2であることが好ましい。
【0030】
アジン化合物(1)の具体例を以下に例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
【化3】
【0032】
【化4】
【0033】
【化5】
【0034】
【化6】
【0035】
【化7】
【0036】
【化8】
【0037】
アジン化合物(1)は、芳香族化合物の合成方法として当業者が通常用いる公知の反応(鈴木-宮浦クロスカップリング反応等)を適宜組み合わせることによって製造することができ、例えば以下の合成経路(i)~(iv)に示される方法で製造可能である。
【0038】
【化9】
【0039】
【化10】
【0040】
【化11】
【0041】
【化12】
【0042】
式中、Ar、Ar、Ar、Ar及びnは、それぞれ、前述したアジン化合物(1)のAr、Ar、Ar、Ar及びnと同義である。X、X、X、X及びXは、各々独立に、ハロゲン原子又はトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表す。Rは、水素原子、炭素数1~4のアルキル基又はフェニル基を表す。B(ORの2つのRは、同一又は異なってもよい。又、2つのRは一体となって酸素原子及びホウ素原子を含んで環を形成してもよい。
【0043】
、X、X、X及びXで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を例示することができ、トリアジン化合物(1)の原料が安価な点で、塩素原子又は臭素原子が好ましい。
【0044】
式(3)、(4)、(8)及び(10)で表されるホウ素化合物におけるB(ORとしては、特に限定されるものではないが、例えば、B(OH)、B(OMe)、B(OPr)、B(OBu)、B(OPh)等を例示することができる。なお、Meはメチル基、Prはイソプロピル基、Buはブチル基、Phはフェニル基を示す。また、2つのRが一体となって酸素原子及びホウ素原子を含んで環を形成した場合のB(ORの例としては、特に限定されるものではないが、例えば、次の(I)から(VI)で示される基が例示でき、収率がよい点で(II)で示される基が好ましい。
【0045】
【化13】
【0046】
合成経路(i)から(iv)におけるカップリング反応は、式(2)、(5)、(6)、(7)、(9)、(11)又は(12)で表されるハロゲン化アリール化合物と、式(3)、(4)、(8)又は(10)で表されるホウ素化合物とをパラジウム触媒及び塩基存在下に反応させる方法であり、一般的な鈴木-宮浦反応の反応条件を適用することができる。
【0047】
カップリング反応に用いられるトリアジン化合物(2)は、例えば特開2019/131500号又は特開2008/130840号に開示されている方法に従い製造することができる。
カップリング反応に用いられるトリアジン化合物(4)は、例えば国際公開第2014/208829号又は国際公開第2014/171541号に開示されている方法に従い製造することができる。
【0048】
カップリング反応に用いられるホウ素化合物は、例えばThe Journal of Organic Chemistry,60巻,7508頁,1995年又はThe Journal of Organic Chemistry,65巻,164頁,2000年に開示されている方法に従い製造することができる。また市販品を用いてもよい。
【0049】
カップリング反応に用いられるハロゲン化アリールは、例えばJournal of the American Chemical Society,74巻,6289頁,1952年またはSynlett,808頁,2002年に従い、製造することができる。また、市販品を用いてもよい。用いるハロゲン化アリールのモル当量に特に制限は無いが、反応収率がよい点で、ホウ素化合物に対して0.5~3.0モル当量を用いることが好ましい。
【0050】
前述のカップリング反応に用いるパラジウム触媒としては、特に限定されるものではないが、具体的には、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジウム、硝酸パラジウム等のパラジウム塩を例示することができる。さらに、π-アリルパラジウムクロリドダイマ-、パラジウムアセチルアセトナト、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム等の錯化合物、及びジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロ(1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)パラジウム、ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム等の第三級ホスフィンを配位子として有するパラジウム錯体を例示することができ、これらはパラジウム塩又は錯化合物に第三級ホスフィンを添加し、反応系中で調製することもできる。この際用いることのできる第三級ホスフィンとしては、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(tert-ブチル)ホスフィン、トリシクロへキシルホスフィン、tert-ブチルジフェニルホスフィン、9,9-ジメチル-4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)キサンテン、2-(ジフェニルホスフィノ)-2’-(N,N-ジメチルアミノ)ビフェニル、2-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)ビフェニル、2-(ジシクロへキシルホスフィノ)ビフェニル、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、トリ(2-フリル)ホスフィン、トリ(o-トリル)ホスフィン、トリス(2,5-キシリル)ホスフィン、(±)-2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル、2-ジシクロへキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル等が例示できる。
【0051】
中でも、第三級ホスフィンを配位子として有するパラジウム錯体が収率がよい点で好ましく、2-ジシクロへキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニルを配位子として有するパラジウム錯体がさらに好ましい。第三級ホスフィンとパラジウム塩又は錯化合物とのモル比は1:10~10:1の範囲にあることが好ましく、収率がよい点で1:2~3:1の範囲にあることがさらに好ましい。前述のカップリング反応で用いるパラジウム触媒の量に制限はないが、収率がよい点で、パラジウム触媒のモル当量はホウ素化合物に対して0.005~0.5モル当量の範囲にあることが好ましい。
【0052】
前述のカップリング反応に用いる塩基としては、特に限定されるものではないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム等の金属炭酸塩、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム等の金属酢酸塩、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等の金属リン酸塩、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム等の金属フッ化物塩、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムイソプロピルオキシド、カリウムtert-ブトキシド等の金属アルコキシド等を挙げることができる。中でも反応収率がよい点で、金属炭酸塩及び金属リン酸塩が好ましく、炭酸カリウム又はリン酸カリウムがさらに好ましい。用いる塩基の量に特に制限は無いが、反応収率がよい点で、塩基とホウ素化合物とのモル比は、1:2~10:1の範囲にあることが好ましく、1:1~4:1の範囲にあることがさらに好ましい。
【0053】
前述のカップリング反応は溶媒中で実施することができる。
前述のカップリング反応に用いることのできる溶媒としては、水、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン等の芳香族炭化水素、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、4-フルオロエチレンカーボネート等の炭酸エステル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、γ-ラクトン等のエステル、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)等のアミド、N,N,N’,N’-テトラメチルウレア(TMU)、N,N’-ジメチルプロピレンウレア(DMPU)等のウレア又はジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、オクタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、2,2,2-トリフルオロエタノール等のアルコール等を例示することができ、これらを任意の比で混合して用いてもよい。溶媒の使用量に特に制限はない。これらのうち、反応収率がよい点で水、エーテル、アミド、アルコール、またはこれらの混合溶媒が好ましく、THFと水の混合溶媒がさらに好ましい。
【0054】
前述のカップリング反応は、0℃~200℃から適宜選択された温度にて実施することができ、反応収率がよい点で100℃~160℃から適宜選択された温度にて実施することが好ましい。
【0055】
アジン化合物(1)は、前述のカップリング反応の終了後に通常の処理をすることで得られる。必要に応じて、再結晶、カラムクロマトグラフィー、昇華又は分取HPLC等で精製してもよい。
【0056】
<有機電界発光素子用材料>
アジン化合物(1)は、有機電界発光素子用材料として有用である。アジン化合物(1)は、例えば、有機電界発光素子用電子輸送材料として用いることができる。アジン化合物(1)を含む有機電界発光素子用材料を用いることにより、高い発光効率及び長寿命特性を発揮し、種々の用途又は様々な環境下で利用可能な有機電界発光素子を作製することができる。
【0057】
<有機電界発光素子>
以下、アジン化合物(1)を含む有機電界発光素子(以下、単に有機電界発光素子と称することがある)について説明する。
【0058】
本発明の一態様にかかる有機電界発光素子は、アジン化合物(1)を含有する。
【0059】
有機電界発光素子の構成については特に限定されるものではないが、例えば、以下に示す(i)~(v)の構成が挙げられる。
(i):陽極/発光層/陰極
(ii):陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
(iii):陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(iv):陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(v):陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
【0060】
アジン化合物(1)は、上記のいずれの層に含まれていてもよいが、有機電界発光素子の発光特性に優れる点で、発光層、及び該発光層と陰極との間の層からなる群より選ばれる1層以上に含まれることが好ましい。
【0061】
したがって、上記(i)~(v)に示された構成の場合、アジン化合物(1)が、発光層、電子輸送層及び電子注入層からなる群より選ばれる1層以上に含まれることが好ましい。
【0062】
以下、本発明の一態様にかかる有機電界発光素子を、上記(v)の構成を例に挙げて、図1を参照しながらより詳細に説明する。
【0063】
なお、図1に示す有機電界発光素子100は、いわゆるボトムエミッション型の素子構成を有するものであるが、本発明の一態様にかかる有機電界発光素子はボトムエミッション型の素子構成に限定されるものではない。すなわち、本発明の一態様にかかる有機電界発光素子は、トップエミッション型など、他の公知の素子構成であってもよい。
【0064】
図1は、本発明の一態様にかかるアジン化合物を含む有機電界発光素子の積層構成の一例を示す概略断面図である。
【0065】
有機電界発光素子100は、基板1、陽極2、正孔注入層3、正孔輸送層4、発光層5、電子輸送層6、電子注入層7及び陰極8をこの順で備える。ただし、これらの層のうちの一部の層が省略されていてもよく、また逆に他の層が追加されていてもよい。例えば、発光層5と電子輸送層6との間に正孔阻止層が設けられていてもよく、正孔注入層3が省略され、陽極2上に正孔輸送層4が直接設けられていてもよい。
【0066】
また、例えば電子注入層の機能と電子輸送層の機能とを単一の層で併せ持つ電子注入・輸送層のような、複数の層が有する機能を併せ持った単一の層を、当該複数の層の代わりに備えた構成であってもよい。さらに、例えば単層の正孔輸送層4、単層の電子輸送層6が、それぞれ複数層からなっていてもよい。
<<アジン化合物(1)を含有する層>>
【0067】
図1に示される構成例において有機電界発光素子100は、発光層5、電子輸送層6及び電子注入層7からなる群より選ばれる1層以上にアジン化合物(1)を含む。電子輸送層6がアジン化合物(1)を含むことが好ましい。なお、アジン化合物(1)は、有機電界発光素子が備える複数の層に含まれていてもよい。
【0068】
以下、電子輸送層6がアジン化合物(1)を含む有機電界発光素子100について説明する。
【0069】
[基板1]
基板1としては、通常用いられる基板であれば特に限定はなく、例えば、ガラス板、石英板、プラスチック板、プラスチックフィルムなどが挙げられる。これらの中でも、ガラス板、石英板、光透過性プラスチックフィルムが好ましい。
【0070】
光透過性プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルムが挙げられる。
【0071】
なお、基板1側から発光が取り出される構成の場合、基板1は当該発光の波長に対して透明である。
【0072】
[陽極2]
基板1上(正孔注入層3側)には陽極2が設けられている。
【0073】
陽極の材料としては、仕事関数の大きい(例えば4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物が挙げられる。陽極の材料の具体例としては、Auなどの金属;CuI、酸化インジウム-スズ(ITO;Indium Tin Oxide)、SnO、ZnOなどの導電性透明材料が挙げられる。
【0074】
発光が陽極を通過して取り出される構成の有機電界発光素子の場合、陽極は当該発光を通すか又は実質的に通す導電性透明材料で形成される。
【0075】
[正孔注入層3、正孔輸送層4]
陽極2と発光層5との間には、陽極2側から、正孔注入層3、正孔輸送層4がこの順で設けられている。
【0076】
正孔注入層3、正孔輸送層4は、陽極より注入された正孔を発光層に伝達する機能を有し、この正孔注入層3、正孔輸送層4を陽極2と発光層5の間に介在させることによって、より低い電界で多くの正孔が発光層5に注入される。
【0077】
また、正孔注入層3、正孔輸送層4は、電子障壁性の層としても機能する。すなわち、陰極8から注入され、電子注入層7及び/又は電子輸送層6より発光層5に輸送された電子は、発光層5と正孔注入層3及び/又は正孔輸送層4との界面に存在する電子の障壁により、正孔注入層3及び/又は正孔輸送層4に漏れることが抑制される。その結果、該電子が発光層5内の界面に累積され、発光効率が向上する等の効果をもたらし、発光性能の優れた有機電界発光素子が得られる。
【0078】
正孔注入層3、正孔輸送層4の材料としては、正孔注入性、正孔輸送性、電子障壁性の少なくとも1つを有するものである。正孔注入層3、正孔輸送層4の材料は、有機化合物、無機物のいずれであってもよい。
【0079】
正孔注入層3、正孔輸送層4の材料の具体例としては、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、導電性高分子オリゴマー(特にチオフェンオリゴマー)、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物などが挙げられる。
【0080】
これらの中でも、有機電界発光素子の性能がよい点で、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物が好ましく、特に芳香族第三級アミン化合物が好ましい。
【0081】
芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の具体例としては、N,N,N’,N’-テトラフェニル-4,4’-ジアミノフェニル、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(m-トリル)-〔1,1’-ビフェニル〕-4,4’-ジアミン(TPD)、2,2-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラ-p-トリル-4,4’-ジアミノビフェニル、1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)-4-フェニルシクロヘキサン、ビス(4-ジメチルアミノ-2-メチルフェニル)フェニルメタン、ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)フェニルメタン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(4-メトキシフェニル)-4,4’-ジアミノビフェニル、N,N,N’,N’-テトラフェニル-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル、N,N,N-トリ(p-トリル)アミン、4-(ジ-p-トリルアミノ)-4’-〔4-(ジ-p-トリルアミノ)スチリル〕スチルベン、4-N,N-ジフェニルアミノ-(2-ジフェニルビニル)ベンゼン、3-メトキシ-4’-N,N-ジフェニルアミノスチルベンゼン、N-フェニルカルバゾール、4,4’-ビス〔N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、4,4’,4’’-トリス〔N-(m-トリル)-N-フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)などが挙げられる。
【0082】
また、p型-Si、p型-SiCなどの無機化合物も正孔注入層3の材料、正孔輸送層4の材料の一例として挙げることができる。
【0083】
正孔注入層3、正孔輸送層4は、一種又は二種以上の材料からなる単構造であってもよく、同一組成又は異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0084】
[発光層5]
正孔輸送層4と電子輸送層6との間には、発光層5が設けられている。
【0085】
発光層5の材料、すなわち発光材料としては、燐光発光材料、蛍光発光材料、熱活性化遅延蛍光発光材料が挙げられる。発光層5では電子・正孔対が再結合し、その結果として発光が生じる。
【0086】
発光層5は、単一の低分子材料又は単一のポリマー材料からなっていてもよいが、より一般的には、ゲスト化合物でドーピングされたホスト材料からなっている。発光は主としてドーパントから生じ、任意の色を有することができる。
【0087】
ホスト材料としては、例えば、ビフェニリル基、フルオレニル基、トリフェニルシリル基、カルバゾール基、ピレニル基、アントリル基を有する化合物が挙げられる。より具体的には、DPVBi(4,4’-ビス(2,2-ジフェニルビニル)-1,1’-ビフェニル)、BCzVBi(4,4’-ビス(9-エチル-3-カルバゾビニレン)1,1’-ビフェニル)、TBADN(2-ターシャリーブチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン)、ADN(9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン)、CBP(4,4’-ビス(カルバゾール-9-イル)ビフェニル)、CDBP(4,4’-ビス(カルバゾール-9-イル)-2,2’-ジメチルビフェニル)、2-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-9-[4-(4-フェニルフェニルキナゾリン-2-イル)カルバゾール、9,10-ビス(ビフェニル)アントラセン等が挙げられる。
【0088】
蛍光ドーパントとしては、例えば、アントラセン、ピレン、テトラセン、キサンテン、ペリレン、ルブレン、クマリン、ローダミン、キナクリドン、ジシアノメチレンピラン化合物、チオピラン化合物、ポリメチン化合物、ピリリウム、チアピリリウム化合物、フルオレン誘導体、ペリフランテン誘導体、インデノペリレン誘導体、ビス(アジニル)アミンホウ素化合物、ビス(アジニル)メタン化合物、カルボスチリル化合物、ホウ素化合物、環状アミン化合物等が挙げられる。蛍光ドーパントはこれらから選ばれる2種以上を組み合わせたものであってもよい。
【0089】
燐光ドーパントとしては、例えば、イリジウム、白金、パラジウム、オスミウム等の金属錯体が挙げられる。
【0090】
蛍光ドーパント、燐光ドーパントの具体例としては、Alq3(トリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム)、DPAVBi(4,4’-ビス[4-(ジ-p-トリルアミノ)スチリル]ビフェニル)、ペリレン、ビス[2-(4-n-ヘキシルフェニル)キノリン](アセチルアセトナート)イリジウム(III)、Ir(PPy)3(トリス(2-フェニルピリジン)イリジウム(III))、FIrPic(ビス(3,5-ジフルオロ-2-(2-ピリジル)フェニル-(2-カルボキシピリジル)イリジウム(III)))等が挙げられる。
【0091】
また、上記発光材料は発光層5のみに含有されることに限定されるものではない。例えば、上記発光材料は、発光層5に隣接した層(正孔輸送層4、又は電子輸送層6)が含有していてもよい。これによってさらに有機電界発光素子100の発光効率を高めることができる。
【0092】
発光層は5、一種又は二種以上の材料からなる単層構造であってもよく、同一組成又は異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0093】
[電子輸送層6]
発光層5と電子注入層7との間には、電子輸送層6が設けられている。
【0094】
電子輸送層6は、陰極8より注入された電子を発光層に伝達する機能を有する。電子輸送層7を陰極8と発光層5との間に介在させることによって、電子がより低い電界で発光層5に注入される。
【0095】
電子輸送層6は、前述したとおり、アジン化合物(1)を含むことが好ましい。また、電子輸送層6は、アジン化合物(1)に加えてさらに従来公知の電子輸送材料から選ばれる1種以上を含んでいてもよい。
【0096】
なお、アジン化合物(1)が電子輸送層6に含まれず、他の層に含まれる場合は、従来公知の電子輸送材料から選ばれる1種以上を、電子輸送層6を構成する電子輸送材料として用いることができる。
【0097】
従来公知の電子輸送性材料としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、遷移金属化合物、亜鉛族元素化合物、土類金属化合物等が挙げられる。アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、遷移金属化合物、亜鉛族元素化合物、土類金属化合物等としては、例えば、8-ヒドロキシキノリナートリチウム(Liq)、ビス(8-ヒドロキシキノリナート)亜鉛、ビス(8-ヒドロキシキノリナート)銅、ビス(8-ヒドロキシキノリナート)マンガン、トリス(8-ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(2-メチル-8-ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(8-ヒドロキシキノリナート)ガリウム、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)ベリリウム、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)亜鉛、ビス(2-メチル-8-キノリナート)クロロガリウム、ビス(2-メチル-8-キノリナート)(o-クレゾラート)ガリウム、ビス(2-メチル-8-キノリナート)-1-ナフトラートアルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリナート)-2-ナフトラートガリウム等のキレート型アリールオキシド等が挙げられる。
【0098】
電子輸送層6は、一種又は二種以上の材料からなる単層構造であってもよく、同一組成又は異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0099】
有機電界発光素子100においては、電子注入性を向上させ、素子特性(例えば、発光効率、低電圧駆動、又は高耐久性)を向上させる目的で、電子注入層7を設けてもよい。
【0100】
[電子注入層7]
電子輸送層6と陰極8との間には、電子注入層7が設けられている。電子注入層7は、陰極より注入された電子を発光層5に伝達する機能を有する。電子注入層を陰極8と発光層5との間に介在させることによって、電子がより低い電界で発光層5に注入される。
【0101】
電子注入層7の材料としては、フルオレノン、アントラキノジメタン、ジフェノキノン、チオピランジオキシド、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、ペリレンテトラカルボン酸、フレオレニリデンメタン、アントラキノジメタン、アントロン等の有機化合物が挙げられる。
【0102】
また、電子注入層7の材料としては、SiO、AlO、SiN、SiON、AlON、GeO、LiO、LiON、TiO、TiON、TaO、TaON、TaN、LiF、C、Ybなどの各種酸化物、フッ化物、窒化物、酸化窒化物等の無機化合物も挙げられる。
【0103】
[陰極8]
電子注入層7上には陰極8が設けられている。陽極8を通過した発光のみが取り出される構成の有機エレクトロルミネッセンス素子の場合、陰極8は任意の導電性材料から形成することができる。
【0104】
陰極8の材料としては、例えば、仕事関数の小さい金属(以下、電子注入性金属とも称する)、合金、電気伝導性化合物、及びこれらの混合物が挙げられる。ここで、仕事関数の小さい金属とは、例えば、4eV以下の金属である。
【0105】
陰極8の材料の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム-カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属などが挙げられる。
【0106】
これらの中で、電子注入性及び酸化などに対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えばマグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物などが好ましい。
【0107】
[各層の形成方法]
以上説明した、電極(陽極、陰極)を除く各層は、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB(Langmuir-Blodgett method)法などの公知の方法によって薄膜化することにより、形成することができる。各層の材料は、それ単独で用いてもよく、必要に応じて結着樹脂などの材料、溶剤と共に用いてもよい。
【0108】
このようにして形成された各層の膜厚については特に制限はなく、状況に応じて適宜選択することができるが、通常は5nm~5μmの範囲である。
【0109】
陽極1及び陰極8は、電極材料を蒸着やスパッタリングなどの方法によって薄膜化することにより、形成することができる。蒸着やスパッタリングの際に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよく、蒸着やスパッタリングなどによって薄膜を形成した後、フォトリソグラフィー等で所望の形状のパターンを形成してもよい。
【0110】
陽極1及び陰極8の膜厚は、1μm以下であることが好ましく、10nm以上200nm以下であることがより好ましい。
【0111】
なお、アジン化合物(1)を含む層を形成するは、上記の従来公知の電子輸送性材料と併用してもよい。したがって、例えば、アジン化合物(1)と従来公知の電子輸送性材料とを共蒸着してもよく、アジン化合物(1)の層に従来公知の電子輸送性材料の層を積層してもよい。
【0112】
本発明の一態様にかかる有機電界発光素子は、照明用や露光光源のような一種のランプとして使用してもよいし、画像をスクリーン等に投影するタイプのプロジェクション装置や、静止画像や動画像を直接視認するタイプの表示装置(ディスプレイ)として使用してもよい。
【0113】
動画再生用の表示装置として本発明の一態様にかかる有機電界発光素を使用する場合、駆動方式としては、単純マトリクス(パッシブマトリクス)方式であってもよく、アクティブマトリクス方式であってもよい。また、異なる発光色を有する有機電界発光素子を2種以上使用することにより、フルカラー表示装置を作製することが可能である。
【0114】
アジン化合物(1)は、電子輸送層として用いた際に従来公知のアジン化合物に比べて、駆動電圧及び発光効率が顕著に優れる有機電界発光素子を提供することができる。
【0115】
このため有機電界発光素子の駆動安定性の向上や、発光効率の向上等の効果が期待される。なおかつ、アジン化合物(1)は、その特徴的な骨格から、化学的安定性が高く、有機電界発光素子の長寿命化に寄与することが可能である。
【0116】
アジン化合物(1)は、有機電界発光素子の電子輸送層として用いることで素子の低電圧駆動、高効率化及び長寿命化のいずれも高次元に達成可能なアジン化合物を提供することができる。さらに、アジン化合物(1)を用いた、低電圧駆動、高効率化及び長寿命化を発揮し得る有機電界発光素子を提供することができる。
【実施例
【0117】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定して解釈されるものではない。
【0118】
H-NMR測定]
H-NMRスペクトルの測定には、Bruker ASCEND 400(400MHz;BR UKER製)を用いた。H-NMRスペクトルは、重クロロホルム(CDCl)を測定溶媒とし、内部標準物質としてテトラメチルシラン(TMS)を用いて測定した。また、試薬類は市販品を用いた。
【0119】
[DSC測定(ガラス転移温度、結晶化温度、融点)]
ガラス転移温度、結晶化温度及び融点の測定は、DSC7020(日立ハイテクサイエンス社製、製品名)を用いて行った。
【0120】
DSCの測定条件は以下のとおりである。なお、測定は、窒素雰囲気下(流量50ml/min)にて行った。また、ファーストヒーティング、ファーストクーリング、セカンドヒーティングの順に行い、セカンドヒーティングの際のガラス転移温度、結晶化温度及び融点を、それぞれ試料のガラス転移温度、結晶化温度及び融点とした。
試料量 :5~10mg
測定条件:
<ファーストヒーティング>
昇温速度:15℃/min
測定温度範囲:30℃~360℃
<ファーストクーリング>
ドライアイスによる急冷
<セカンドヒーティング>
昇温速度:5℃/min
測定温度範囲:30℃~360℃
【0121】
[発光特性測定]
有機電界発光素子の発光特性は、25℃環境下、作製した素子に直流電流を印加し、輝度計BM-9(製品名、トプコンテクノハウス社製)を用いて評価した。
【0122】
(合成例-1)
【化14】
【0123】
アルゴン雰囲気下で、2,4-ビス(4-ビフェニリル)-6-[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-フェニル]-1,3,5-トリアジン(12.0g,21mmol)、1-ブロモ-3,4-ジクロロベンゼン(5.63g,25mmol)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(2.37g,2.1mmol)をTHF(200mL)中に懸濁させた。この懸濁液に2M-炭酸カリウム水溶液(38mL,76mmol)を加え、80℃で25時間撹拌した。室温まで放冷後、水及びメタノールを加え、析出物をろ取した。ろ取物をトルエン中(700mL)に懸濁させ、110℃まで加熱してから活性炭を加えて撹拌した後、セライトろ過を行った。ろ液を濃縮後、トルエンによる再結晶にて精製することで2,4-ビス(4-ビフェニリル)-6-(3’,4’-ジクロロビフェニル-4-イル)-1,3,5-トリアジンを得た(9.90g,収率80%)。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):8.87(d,J=8.6Hz,2H),8.86(d,J=8.5Hz,4H),7.83(brd,J=8.5Hz,4H),7.79(d,J=1.9Hz,1H),7.76(brd,J=8.5Hz,2H),7.73(brd,J=8.5Hz,4H),7.58-7.50(m,6H),7.43(brt,J=7.3Hz,2H).
【0124】
(合成実施例-1:1-1の合成)
【化15】
【0125】
アルゴン雰囲気下で、2,4-ビス(4-ビフェニリル)-6-[3’,4’-ジクロロビフェニル-4-イル]-1,3,5-トリアジン(9.90g,16mmol)、フェニルボロン酸(7.98g,65mmol)、酢酸パラジウム(373mg,1.7mmol)及び2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(1.56g,3.3mmol)をTHF(200mL)中に懸濁させた。この懸濁液に2M-リン酸カリウム水溶液(38mL,76mmol)を加え、80℃で18.5時間撹拌した。室温まで放冷後、水及びメタノールを加え、析出した固体をろ取した。ろ取物をトルエン中(400mL)に懸濁させ、110℃まで加熱してから活性炭を加えて撹拌した後、セライトろ過を行った。ろ液を濃縮後、トルエンによる再結晶にて精製することで2,4-ビス(4-ビフェニリル)-6-[4’-フェニル-(1,1’:3’,1’’-ターフェニル-4-イル)]-1,3,5-トリアジン(1-1)を得た(7.10g,収率63%)。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):8.87(d,J=8.3Hz,2H),8.88(d,J=8.3Hz,4H),7.90(d,J=8.3Hz,2H),7.83(d,J=8.3Hz,4H),7.81-7.76(m,2H),7.73(brd,J=7.7Hz,4H),7.58(d,J=7.7Hz,1H),7.51(brdd,J=7.7,7.5Hz,4H),7.41(brt,J=7.5Hz,2H),7.32-7.18(m,10H).
【0126】
化合物1-1の構造は、H-NMRスペクトルによって同定し、ガラス転移温度は、120℃であった。
【0127】
(合成例-2)
【化16】
【0128】
アルゴン雰囲気下で、2,4-ビス(4-ビフェニリル)-6-[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-フェニル]-1,3,5-トリアジン(5.05g,8.6mmol)、1-ブロモ-2,4-ジクロロベンゼン(2.38g,11mmol)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(505mg,0.44mmol)をTHF(85mL)中に懸濁させた。この懸濁液に2M-炭酸カリウム水溶液(16mL,32mmol)を加え、80℃で22時間撹拌した。室温まで放冷後、水及びメタノールを加え、析出した固体をろ取した。ろ取物をトルエン中(180mL)に懸濁させ、110℃まで加熱して撹拌した。室温まで放冷後、析出した固体をろ取することで2,4-ビス(4-ビフェニリル)-6-(2’,4’-ジクロロビフェニル-4-イル)-1,3,5-トリアジンを得た(4.5g,収率86%)。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):8.88(d,J=8.6Hz,4H),8.88(d,J=8.5Hz,2H),7.83(ddd,J=8.6,1.88,1.84Hz,4H),7.73(brd,J=8.4Hz,4H),7.65(ddd,J=8.5,1.84,1.76Hz,2H),7.56-7.55(m,1H),7.52(dd,J=7.8,7.2Hz,4H),7.42(brt,J=7.3Hz,2H),7.40-7.35(m,2H).
【0129】
(合成実施例-2:1-25の合成)
【化17】
【0130】
アルゴン雰囲気下で、2,4-ビス(4-ビフェニリル)-6-(2’,4’-ジクロロビフェニル-4-イル)-1,3,5-トリアジン(4.49g,7.4mmol)、フェニルボロン酸(3.63g,30mmol)、酢酸パラジウム(86.9mg,0.39mmol)及び2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(0.36g,0.76mmol)をTHF(150mL)中に懸濁させた。この懸濁液に2M-リン酸カリウム水溶液(45mL,90mmol)を加え、80℃で15時間撹拌した。室温まで放冷後、室温まで放冷後、水及びメタノールを加え、析出した固体をろ取した。ろ取物をトルエン中(300mL)に懸濁させ、110℃まで加熱してから活性炭を加えて撹拌した後、セライトろ過を行った。ろ液を濃縮後、トルエンによる再結晶にて精製することで2,4-ビス(4-ビフェニリル)-6-[4’-フェニル-(1,1’:2’,1’’-ターフェニル-4-イル)]-1,3,5-トリアジン(1-25)を得た(3.1g,収率60%)。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):8.84(brd,J=8.5Hz,4H),8.69(brd,J=8.4Hz,2H),7.81(brd,J=8.5Hz,4H),7.73-7.71(m,8H),7.61(dd,J=8.4,1.1Hz,1H),7.52-7.47(m,6H),7.44-7.38(m,5H),7.29-7.27(m,5H).
【0131】
化合物1-25の構造は、H-NMRスペクトルによって同定し、ガラス転移温度は、129℃であった。
【0132】
(合成実施例-3:1-37の合成)
【化18】
【0133】
アルゴン雰囲気下、2-(ビフェニル-4-イル)-4-フェニル-6-[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]-1,3,5-トリアジン(2.80g,5.7mmol)、3-(ナフタレン-1-イル)-4-(ビフェニル-4-イル)トリフルオロメタンスルホン酸(2.58g,6.0mmol)、酢酸パラジウム(61mg,0.29mmol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(261mg,0.58mmol)をTHF(55mL)中に懸濁した。この懸濁液に2M-炭酸カリウム水溶液(8.5mL)を加えた後、24時間加熱還流した。放冷後、反応混合液に水及びメタノールを加えた。生じた固体をろ取し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/ヘキサン)により精製することで、目的の2-(ビフェニル-4-イル)-4-[2’-(ナフタレン-1-イル)-(1,1’:4’,1’’-テルフェニル)-4-イル]-6-フェニル-1,3,5-トリアジンを得た。(2.1g,収率57%)。
H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):7.29(dd,J=7.3,1.4Hz,1H),7.33(d,J=8.7Hz,2H),7.35-7.43(m,4H),7.49-7.62(m,8H),7.67-7.76(m,7H),7.79-7.87(m,5H),8.49(ddd,J=8.5,1.7,1.3Hz,2H),8.72(ddd,J=8.3,1.4,1.2Hz,2H),8.77(ddd,J=8.4,1.9,1.5Hz,2H).
【0134】
(合成実施例-4:1-81の合成)
【化19】
【0135】
アルゴン雰囲気下、2-(ビフェニル-4-イル)-4-フェニル-6-[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]-1,3,5-トリアジン(3.07g,6.0mmol)、[(1,1’:2’,1’’:3’’,1’’’-クアテルフェニル)-4’’-イル]トリフルオロメタンスルホン酸(3.0g,6.6mmol)、酢酸パラジウム(67mg,0.30mmol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(286mg,0.60mmol)をTHF(60mL)中に懸濁した。この懸濁液に2M-炭酸カリウム水溶液(8.8mL)を加えた後、24時間加熱還流した。放冷後、反応混合液に水及びメタノールを加えた。生じた固体をろ取し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/ヘキサン)により精製することで、目的の2-(ビフェニル-4-イル)-4-フェニル-6-[3’’-フェニル-(1,1’:2’,1’’:4’’,1’’’-クアテルフェニル)-4’’’-イル]-1,3,5-トリアジンを得た。(3.2g,収率78%)。
H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):6.92(dd,J=6.6,1.2Hz,2H),7.13-7.20(m,3H),7.21(d,J=1.8Hz,1H),7.25-7.30(m,3H),7.31-7.38(m,5H),7.38-7.54(m,7H),7.55-7.65(m,4H),7.70(ddd,J=7.3,1.9,1.3Hz,2H),7.79(ddd,J=8.6,2.0,1.7Hz,2H),8.63(ddd,J=8.4,1.8,1.5,2H),8.77(ddd,J=6.8,2.0,1.3,2H),8.82(ddd,J=8.4,1.9,1.6,2H).
【0136】
(合成比較例-1)
また、特許文献2に記載されている下記ETL-1を、特許文献2に記載の方法に従って合成した。各合成例で得られたアジン化合物(1)は、ETL-1と比較すると、低い結晶化温度を有していることがわかる。
【0137】
【化20】
【0138】
(合成比較例-2:ETL-2の合成)
また、下記ETL-2を、下記合成経路に従って合成した。合成条件は合成実施例-1又は2と同様な方法で合成した。得られた化合物ETL-2のFD-MS測定結果は538であった。
【0139】
【化21】
【0140】
以下に、各合成例で作製したアジン化合物(1)及びETL-1の結晶化温度の測定データを記す。
【0141】
【表1】
【0142】
<有機電界素子の作製>
ついで、得られたアジン化合物(1)、ETL-1及はETL-2をそれぞれ用いて素子評価を実施した。
【0143】
≪素子実施例-1(図2参照)≫
(基板101、陽極102の用意)
陽極をその表面に備えた基板として、2mm幅の酸化インジウム-スズ(ITO)膜(膜厚110nm)がストライプ状にパターンされたITO透明電極付きガラス基板を用意した。ついで、この基板をイソプロピルアルコールで洗浄した後、オゾン紫外線洗浄にて表面処理を行った。
【0144】
(真空蒸着の準備)
洗浄後の表面処理が施された基板上に、真空蒸着法で各層の真空蒸着を行い、各層を積層形成した。
【0145】
まず、真空蒸着槽内に前記ガラス基板を導入し、1.0×10-4Paまで減圧した。そして、以下の順で、各層の成膜条件に従ってそれぞれ形成した。
【0146】
(正孔注入層103の作製)
昇華精製したN-[1,1’-ビフェニル]-4-イル-9,9-ジメチル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9H-フルオレン-2-アミンと1,2,3-トリス[(4-シアノ-2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)メチレン]シクロプロパンを0.15nm/秒の速度で55nm成膜し、正孔注入層を形成した。
【0147】
(第一正孔輸送層1051の作製)
N-[1,1’-ビフェニル]-4-イル-9,9-ジメチル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9H-フルオレン-2-アミンを0.15nm/秒の速度で10nm成膜し、第一正孔輸送層を形成した。
【0148】
(第二正孔輸送層1052の作製)
N-フェニル-N-(9,9-ジフェニルフルオレン-2-イル)-N-(1,1’-ビフェニル-4-イル)アミンを0.15nm/秒の速度で10nm成膜し、第二正孔輸送層を形成した。
【0149】
(発光層106の作製)
3-(10-フェニル-9-アントリル)-ジベンゾフランと2,7-ビス[N,N-ジ-(4-tertブチルフェニル)]アミノ-ビスベンゾフラノ-9,9’-スピロフルオレンを95:5(質量比)の割合で25nm成膜し、発光層を形成した。成膜速度は0.18nm/秒であった。
【0150】
(第一電子輸送層1071の作製)
昇華精製した2-[3’-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)[1,1’-ビフェニル]-3-イル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジンを0.15nm/秒の速度で5nm成膜し、第一電子輸送層を形成した。
【0151】
(第二電子輸送層1072の作製)
合成例-1で合成した2,4-ジ(4-ビフェニリル)-6-[4’-フェニル-(1,1’:3’,1’’-ターフェニル)-4-イル]-1,3,5-トリアジン(化合物1-1)及び8-ヒドロキシキノリノラートリチウム(以下、Liq)を50:50(質量比)の割合で25nm成膜し、第二電子輸送層を形成した。成膜速度は0.15nm/秒であった。
【0152】
(陰極108の作製)
最後に、基板上のITOストライプと直行するようにメタルマスクを配し、陰極108を成膜した。陰極は、銀/マグネシウム(質量比1/10)と銀とを、この順番で、それぞれ80nmと20nmとで成膜し、2層構造とした。銀/マグネシウムの成膜速度は0.5nm/秒、銀の成膜速度は成膜速度0.2nm/秒であった。
【0153】
以上により、図2に示すような発光面積4mm有機電界発光素子100を作製した。なお、それぞれの膜厚は、触針式膜厚測定計(DEKTAK、Bruker社製)で測定した。
【0154】
さらに、この素子を酸素及び水分濃度1ppm以下の窒素雰囲気グローブボックス内で封止した。封止は、ガラス製の封止キャップと成膜基板(素子)とを、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(ナガセケムテックス社製)を用いて行った。
【0155】
上記の手順に従い作製した有機電界発光素子に直流電流を印加し、輝度計(製品名:BM-9、トプコンテクノハウス社製)を用いて発光特性を評価した。発光特性として、電流密度10mA/cmを流した時の電流効率(cd/A)を測定し、連続点灯時の素子寿命(h)を測定した。なお、表3の素子寿命(h)は、作製した素子を初期輝度1000cd/mで駆動したときの連続点灯時の輝度減衰時間を測定し、輝度(cd/m)が5%減じるまでに要した時間を測定した。
【0156】
なお、電圧、電流効率及び素子寿命は、素子比較例1における結果を基準値(100)とした相対値である。得られた測定結果を表2に示す。
【0157】
≪素子実施例-2≫
素子実施例-1において、化合物(1-1)の代わりに、合成例-2で合成した化合物(1-25)を用いた以外は、素子実施例-1と同じ方法で有機電界発光素子を作製し、評価した。得られた測定結果を表2に示す。
≪素子比較例-1≫
素子実施例-1において、化合物(1-1)の代わりに、ETL-1を用いた以外は、素子実施例-1と同じ方法で有機電界発光素子を作製し、評価した。得られた測定結果を表2に示す。
≪素子比較例-2≫
素子実施例-1において、化合物(1-1)の代わりに、ETL-2を用いた以外は、素子実施例-1と同じ方法で有機電界発光素子を作製し、評価した。得られた測定結果を表2に示す。
【0158】
【表2】
【0159】
本発明の一態様にかかるアジン化合物は、該化合物を用いることによって駆動電圧、発光効率及び寿命特性に優れる有機電界発光素子を提供することができる。
【0160】
また、本発明の一態様にかかるアジン化合物は、低駆動電圧、発光効率及び寿命に優れる有機電界発光素子の作製に資する有機電界発光素子用電子輸送材料に利用できる。さらに、本発明の一態様にかかるアジン化合物によれば、低消費電力、高発光効率及び長寿命の有機電界発光素子を提供することができる。
【0161】
本発明を詳細に、また特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の本質と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
【0162】
なお、2020年7月31日に出願された日本国特許出願2020-129833号の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
【符号の説明】
【0163】
100. 有機電界発光素子
1. 基板
2. 陽極
3. 正孔注入層
4. 正孔輸送層
5. 発光層
6. 電子輸送層
7. 電子注入層
8. 陰極
101. 基板
102. 陽極
103. 正孔注入層
1051. 第一正孔輸送層
1052. 第二正孔輸送層
106. 発光層
1071. 第一電子輸送層
1072. 第二電子輸送層
108. 陰極
図1
図2