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  • 特許-半導体装置密着層形成用樹脂組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-04
(45)【発行日】2025-03-12
(54)【発明の名称】半導体装置密着層形成用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/10 20060101AFI20250305BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20250305BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20250305BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20250305BHJP
【FI】
C08G73/10
H01L23/30 R
H05K3/28 G
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021002317
(22)【出願日】2021-01-08
(65)【公開番号】P2022107393
(43)【公開日】2022-07-21
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 哲也
(72)【発明者】
【氏名】小出 泰之
(72)【発明者】
【氏名】上田 祐揮
【審査官】藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/022215(WO,A1)
【文献】特開平07-228839(JP,A)
【文献】特開2018-197863(JP,A)
【文献】特開2019-011452(JP,A)
【文献】特開平09-302225(JP,A)
【文献】特開2015-120904(JP,A)
【文献】特開2003-048980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/10
H01L 23/29
H05K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置密着層を形成するための樹脂組成物であって、下記式(1)で表されるジアミン化合物と、下記式(2)で表されるジアミン化合物と、テトラカルボン酸二無水物との反応で得られるポリアミック酸を含み、前記ポリアミック酸に含まれる式(1)で表されるジアミン化合物酸由来の構造の含有量が、前記ポリアミック酸に含まれるジアミン化合物由来の構造の合計100mol%に対して、全体の10~95mol%であり、
該半導体装置密着層が、封止樹脂硬化物と、基板及び/又はリード電極との界面の一部のプライマー層である、
半導体装置密着層形成用樹脂組成物。
【化1】
(式中、A及びAは夫々独立して、はベンジルオキシカルボニル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基及びtert-ブトキシカルボニル基からなる群から選択される有機酸基を表し、Xは単結合又は2価の炭素原子数1~20の飽和炭化水素基、2価の炭素原子数2~20の不飽和炭化水素基、2価の炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基又は2価の複素環を表し、Yは単結合、-O-、-CONH-、-NHCO-、-OCO-、-COO-、-NH-CO-NH-、-NHCOO-又は-OCONH-を表す。)
【化2】
(式中、mは1~4の整数である。)
【請求項2】
及びAがtert-ブトキシカルボニル基である、請求項1に記載の半導体装置密着層形成用樹脂組成物。
【請求項3】
Yが-CONH-である、請求項1又は請求項2に記載の半導体装置密着層形成用樹脂組成物。
【請求項4】
Xが2価の炭素原子数1~18の飽和炭化水素基、2価の炭素原子数2~18の不飽和炭化水素基、2価の炭素原子数6~18の芳香族炭化水素基又は2価の複素環である、請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の半導体装置密着層形成用樹脂組成物。
【請求項5】
式(1)で表されるジアミン化合物が、下記式(3)で表されるジアミン化合物である、請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の半導体装置密着層形成用樹脂組成物。
【化3】
【請求項6】
式(2)で表されるジアミン化合物が下記式(2a)~(2d)で表されるジアミン化合物からなる群から選択される少なくとも一種のジアミン化合物である、請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の半導体装置密着層形成用樹脂組成物。
【化4】
【請求項7】
前記テトラカルボン酸二無水物が下記式(4)で表されるテトラカルボン酸二無水物である、請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載の半導体装置密着層形成用樹脂組成物。
【化5】
(式中、Zは芳香族炭化水素基を有する炭素原子数6~13の4価の有機基を表す。)
【請求項8】
Zが下記式(5a)~(5k)で表される構造を有する4価の有機基からなる群から選択される、請求項7に記載の半導体装置密着層形成用樹脂組成物。
【化6】
(式中、*は結合手を表す。)
【請求項9】
請求項1乃至請求項8の何れか一項に記載の半導体装置密着層形成用樹脂組成物の硬化物である半導体装置密着層。
【請求項10】
前記ポリアミック酸のイミド化率が、80%乃至100%である、請求項9に記載の半導体装置密着層。
【請求項11】
前記密着層を設けた金属材料、セラミック又は封止樹脂硬化物を、175℃で6時間加熱し、そして175℃で測定した、該密着層と金属材料、セラミック又は封止樹脂硬化物との密着力Aが15MPa以上であり、かつ、該密着層を設けた金属材料、セラミック又は封止樹脂硬化物を、85℃85%RH条件下で168時間暴露し、そして175℃で測定した、該密着層と金属材料、セラミック又は封止樹脂硬化物との密着力Bが密着力Aの70%以上であることを特徴とする、請求項9又は請求項10に記載の半導体装置密着層。
【請求項12】
請求項9乃至請求項11の何れか一項に記載の半導体装置密着層を有する、半導体装置。
【請求項13】
半導体素子、半導体素子を搭載した基板及び/又は半導体素子と接合したリード電極の少なくとも一部に、請求項1乃至請求項8のうち何れか一項に記載の半導体装置密着層形成用樹脂組成物を塗布し塗膜を得る工程、及び
該塗膜を加熱して密着層を形成する工程
を含む半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記密着層の形成後、該密着層上に封止樹脂硬化物を形成する工程、をさらに含む、請求項13に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置密着層形成用樹脂組成物、該組成物から形成される密着層、及び該組成物を用いた半導体装置の製造方法に関するものである。より詳しくはポリアミック酸を含む半導体装置密着層形成用樹脂組成物、及び該ポリアミック酸をイミド化して得られるポリイミド樹脂を含む密着層、及び該組成物を用いた半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日に於いて、半導体デバイスは様々な電子機器に使用され、機器の作動に必要な電流や信号の制御を担っている。半導体デバイスは、一般に、半導体素子、接合材、金属電極、絶縁基板などの各部材が積層され構成されている。これら各部材は、一般に異なる熱膨張係数を有するため、加熱・冷却に伴い素子の内部に応力が発生し得、部材間、特にハンダなどの接合材を起点とした剥離を引き起こす虞がある、こうした部材間の剥離は、素子内の正常な電流制御に支障をきたし、素子の動作不良に繋がることとなる。
この部材間の剥離を抑制するべく、半導体素子を基板やリードフレームに搭載し電気的な接続を行った後に、弾性率の高い封止樹脂で封止することで、半導体素子を外部からの化学的、電気的、物理的な刺激から保護するとともに、積層された各層の熱変形を束縛する設計がなされている。この際、半導体装置を構成する各部材と封止樹脂の熱膨張率の差に伴う剥離を抑制することも、上記部材間の剥離を抑制する上で重要な要素となる。
【0003】
一方、近年では、制御する電流・信号の高電圧化や高周波化に伴い、従来のシリコン半導体に代わるものとして、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)といったバンドギャップの広い半導体素子の開発が進んでいる。このようなワイドバンドギャップな半導体素子を搭載した半導体装置は、従来よりも高温で作動する設計がなされているため、上記剥離の問題が更に顕著な課題となっている。
このような課題を解決するため、封止樹脂へフィラーを添加することで熱膨張係数(CTE)を低下させ、封止樹脂と周辺部材とのCTE差を小さくする対策がなされている。しかし、CTEを十分に低下させるには多量のフィラーを添加する必要があり、その場合には基板表面との接着を担う樹脂成分の表面積が減少するため、本質的な基材への密着性が低下する。このため、一定以上の密着性を担保するのは困難である。
【0004】
このような状況の中、熱膨張率の異なる部材間に、応力緩和を担うポリイミド樹脂からなる中間層を設け、密着性を改善する方法が開示されている(特許文献1)。また、加熱により脱離する官能基で保護されたアミノ基を有するモノマーを使用して得られるポリイミド樹脂は、エポキシ化合物などと反応することで、液晶配向膜とシール剤との密着性を改善できることが報告されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6168005号公報
【文献】国際公開第2017/164181号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体装置において、部材間で剥離が生じてしまうと、絶縁性が担保されずリーク電流が発生して誤作動を起こしてしまうことや、外部からの化学的、物理的刺激により半導体チップが損傷してしまうことが問題となる。
そのため半導体装置においては、動作信頼性を担保するために、昇温と降温を繰り返すサーマルサイクル試験(TCT)や、作動のオン・オフを繰り返すパワーサイクル試験(PCT)、高温高湿環境への暴露試験を行った後においても、部材間の剥離を起こさないことが望まれる。
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、冷熱サイクルにおける耐久性のみの評価に留まり、特許文献1に記載のポリイミド樹脂が高温高湿環境での動作信頼性を示すのか開示されておらず予測することは困難である。また、特許文献2に記載の方法では、液晶デバイス中の液晶配向膜とシール剤との室温での密着強度に言及されているが、金属材料やセラミックス(ガラスを除く)等の半導体周辺部材に対する密着性については何ら開示されていない。
【0007】
そこで、本発明は、金属材料及びセラミック、並びに封止樹脂硬化物に対して、高温下で高い密着性を示し、且つ、高温高湿環境への暴露試験後でも耐久性を有する、即ち高い密着力の維持率を有する層、及びそれを形成するための半導体装置密着層形成用樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決するべく鋭意検討を行なった結果、特定のジアミン成分及びテトラカルボン酸から得られる特定の構造単位を有するポリアミック酸を含む樹脂組成物から形成した密着層が、金属材料及びセラミックス、並びに封止樹脂に対して高い密着性を有し、高温下及び高温高湿環境への暴露試験後においても高い耐久性を有し、半導体装置用密着層として優れていることを見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち本発明は、第一観点として、半導体装置密着層を形成するための樹脂組成物であって、下記式(1)で表されるジアミン化合物と、下記式(2)で表されるジアミン化合物と、テトラカルボン酸二無水物との反応で得られるポリアミック酸を含み、前記ポリアミック酸に含まれる式(1)で表されるジアミン化合物由来の構造の含有量が、前記ポリアミック酸に含まれるジアミン化合物由来の構造の合計100mol%に対して、全体の10~95mol%である、半導体装置密着層形成用樹脂組成物に関する。
【化1】
(式中、A及びAは夫々独立して、ベンジルオキシカルボニル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基及びtert-ブトキシカルボニル基からなる群から選択される有機酸基を表し、Xは単結合又は2価の炭素原子数1~20の飽和炭化水素基、2価の炭素原子数2~20の不飽和炭化水素基、2価の炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基又は2価の複素環を表し、Yは単結合、-O-、-CONH-、-NHCO-、-OCO-、-COO-、-NH-CO―NH-、-NHCOO-又は-OCONH-を表す。)
【化2】
(式中、mは1~4の整数である。)
第2観点として、A及びAがtert-ブトキシカルボニル基である、第1観点に記載の半導体装置密着層形成用樹脂組成物に関する。
第3観点として、Yが-CONH-である、第1観点又は第2観点に記載の半導体装置密着層形成用樹脂組成物に関する。
第4観点として、Xが2価の炭素原子数1~18の飽和炭化水素基、2価の炭素原子数2~18の不飽和炭化水素基、2価の炭素原子数6~18の芳香族炭化水素基又は2価の複素環である、第1観点乃至第3観点の何れか一つに記載の半導体装置密着層形成用樹脂組成物に関する。
第5観点として、式(1)で表されるジアミン化合物が、下記式(3)で表されるジアミン化合物である、第1観点乃至第4観点の何れか一つに記載の半導体装置密着層形成用樹脂組成物に関する。
【化3】
第6観点として、式(2)で表されるジアミン化合物が下記式(2a)~(2d)で表されるジアミン化合物からなる群から選択される少なくとも一種のジアミン化合物である、第1観点乃至第5観点の何れか一つに記載の半導体装置密着層形成用樹脂組成物に関する。
【化4】
第7観点として、前記テトラカルボン酸二無水物が下記式(4)で表されるテトラカルボン酸二無水物である、第1観点乃至第6観点の何れか一つに記載の半導体装置密着層形成用樹脂組成物に関する。
【化5】
(式中、Zは芳香族炭化水素基を有する炭素原子数6~13の4価の有機基を表す。)
第8観点として、Zが下記式(5a)~(5k)で表される構造を有する4価の有機基からなる群から選択される、第7観点に記載の半導体装置密着層形成用樹脂組成物に関する。
【化6】
(式中、*は結合手を表す。)
第9観点として、第1観点乃至第8観点の何れか一つに記載の半導体装置密着層形成用樹脂組成物の硬化物である半導体装置密着層に関する。
第10観点として、前記ポリアミック酸のイミド化率が、80%乃至100%である、第9観点に記載の半導体装置密着層に関する。
第11観点として、前記密着層を設けた金属材料、セラミック又は封止樹脂硬化物を、175℃で6時間加熱し、そして175℃で測定した、該密着層と金属材料、セラミック又は封止樹脂硬化物との密着力Aが15MPa以上であり、かつ、該密着層を設けた金属材料、セラミック又は封止樹脂硬化物を、85℃85%RH条件下で168時間暴露し、そして175℃で測定した、該密着層と金属材料、セラミック又は封止樹脂硬化物との密着力Bが密着力Aの70%以上であることを特徴とする、第9観点又は第10観点に記載の半導体装置密着層に関する。
第12観点として、第9観点乃至第11観点の何れか一つに記載の半導体装置密着層を有する、半導体装置に関する。
第13観点として、半導体素子、半導体素子を搭載した基板及び/又は半導体素子と接合したリード電極の少なくとも一部に、第1観点乃至第8観点のうち何れか一つに記載の半導体装置密着層形成用樹脂組成物を塗布し塗膜を得る工程、及び該塗膜を加熱して密着層を形成する工程を含む半導体装置の製造方法に関する。
第14観点として、前記密着層の形成後、該密着層上に封止樹脂硬化物を形成する工程、をさらに含む、第13観点に記載の半導体装置の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の樹脂組成物は、金属材料及びセラミック、並びに封止樹脂に対して、高温下でも高い密着性を有し、且つ、高温高湿環境への暴露試験後でも高い耐久力、即ち高い密着力の維持率を有する層を形成することができる。
すなわち、本発明によれば、高温下及び高温高湿環境暴露後でも、密着性に優れる半導体装置密着層、及び該半導体装置密着層形成用の樹脂組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、高温下及び高温高湿環境下で動作する半導体装置でも、半導体装置を構成する各部材からの封止樹脂硬化物の剥離を防止できる、半導体密着層を有する
半導体装置、及びその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】半導体装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、半導体装置において、封止樹脂硬化物と、基板及び/又はリード電極との界面の少なくとも一部、すなわち、前記封止樹脂硬化物と前記基板との間の少なくとも一部、及び/又は、前記封止樹脂硬化物と前記リード電極との間の少なくとも一部に有する密着層(いわば半導体封止材(封止樹脂硬化物)のプライマー層)を形成するために用いられる樹脂組成物であって、下記式(1)で表されるジアミン化合物と、下記式(2)で表されるジアミン化合物と、テトラカルボン酸二無水物化合物との反応で得られるポリアミック酸を含み、前記ポリアミック酸に含まれる式(1)で表されるジアミン化合物由来の構造の含有量が、前記ポリアミック酸に含まれるジアミン化合物由来の構造の合計100mol%に対して、全体の10~95mol%である、半導体装置密着層形成用樹脂組成物である。
【0013】
[式(1)で表されるジアミン化合物]
【化7】
式(1)中、A及びAは、夫々独立して、150℃以上の加熱によって脱離し得る有機酸基(保護基)であればよく、好ましくはベンジルオキシカルボニル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基及びtert-ブトキシカルボニル基からなる群から選択される有機酸基であり、より好ましくはtert-ブトキシカルボニル基である。
式(1)で表されるジアミン化合物において、A又はAで保護されたアミノ基は反応性が低いが、150度以上の加熱によりA及びAが脱離してアミノ基となる。例えば、Aで保護されたアミノ基は加熱によりAが脱離し、次いでオルト位の-NHC(O)-部位と反応して複素環を形成できる。
【0014】
式(1)中、Yは単結合、-O-、-CONH-、-NHCO-、-OCO-、-COO-、-NH-CO―NH-、-NHCOO-又は-OCONH-を表し、好ましくは-CONH-である。
【0015】
式(1)中、Xは単結合又は2価の炭素原子数1~20の飽和炭化水素基、2価の炭素原子数2~20の不飽和炭化水素基、2価の炭素原子数2~20の不飽和炭化水素基芳香族炭化水素基又は2価の複素環を表す。
【0016】
2価の炭素原子数1~20の飽和炭化水素基としては、直鎖又は分岐状のアルキレン基が挙げられ、例えば、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、
n-ブチレン基、s-ブチレン基、n-ペンチレン基、1-メチルブチレン基、2-メチルブチレン基、3-メチルブチレン基、n-ペンチレン基、1,1-ジメチルプロピレン基、1,2-ジメチルプロピレン基、2,2-ジメチルプロピレン基、1,3-ジメチルプロピレン基、n-ヘキシレン基、1-メチルヘプチレン基、2-メチルヘプチレン基、3-メチルヘプチレン基、1,1-ジメチルブチレン基、1,2-ジメチルブチレン基、1,3-ジメチルブチレン基、2,2-ジメチルブチレン基、2,3-ジメチルブチレン基、3,3-ジメチルブチレン基、3,3-ジメチルブタン-2-イレン基、2,3-ジメチルブタン-2-イレン基、3-ヘキシレン基、2-エチルペンチレン基、2-メチルペンタン-3-イレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基、ノナデシレン基、イコシレン基等が挙げられる。本発明においては、炭素原子数1~18のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1~6のアルキレン基がより好ましい。
【0017】
2価の炭素原子数2~20の不飽和炭化水素基としては、エテニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、ペンテニレン基、へキセニレン基、ヘプテニレン基、オクテニレン基、ノネニレン基、デセニレン基、ウンデセニレン基、ドデセニレン基、トリデセニレン基、テトラデセニレン基、ペンタデセニレン基、ヘキサデセニレン基、ヘプタデセニレン基、オクタデセニレン基、ノナデセニレン基及びエイコセニレン基が挙げられる。本発明においては、炭素原子数2~18の不飽和炭化水素基が好ましい。
【0018】
2価の炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、フェナントレニレン基等が挙げられる。本発明においては、炭素原子数6~18の不飽和炭化水素基が好ましい。
【0019】
2価の複素環としては、例えば、キノリン、チアゾール、ベンゾチアゾール、チエノチアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、オキサゾール及びベンゾオキサゾールから2個の水素原子を除いた基が挙げられる。
【0020】
好ましくは、下記式(3)で表されるジアミン化合物である。
【化8】
【0021】
また、式(1)で表されるジアミン化合物は、単独で又は2種類以上を組み合わせてを用いることができる。
【0022】
[式(2)で表されるジアミン化合物]
本発明で用いるポリアミック酸の原料の1種は、下記式(2)で表されるジアミン化合物である。
【化9】
式(2)中、mは1乃至4の整数である。
好ましくは、下記式(2a)~(2d)で表されるジアミン化合物からなる群から選択される少なくとも一種のジアミン化合物である。
【化10】
式(2)で表されるジアミン化合物は、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
[テトラカルボン酸二無水物]
テトラカルボン酸二無水物としては、分子内に2つのジカルボン酸無水物部位を有するものであればよく、市販の又は公知のジカルボン酸無水物を使用できる。
カルボン酸の具体例としては、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-テトラメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,4,5-テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,4-ジカルボキシ-1-シクロヘキシルコハク酸二無水物、3,4-ジカルボキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンコハク酸二無水物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[3.3.0]オクタン-2,4,6,8-テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、シス-3,7-ジブチルシクロオクタ-1,5-ジエン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、トリシクロ[4.2.1.02,5]ノナン-3,4,7,8-テトラカルボン酸-3,4:7,8-二無水物、ヘキサシクロ[6.6.0.12,7.03,6.19,14.010,13]ヘキサデカン-4,5,11,12-テトラカルボン酸-4,5:11,12-二無水物、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物、ピロメリット酸二無水物、ベンゼン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,6,7-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,7,8-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル-2,2’,3,3’-テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル-2,3,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、アントラセン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、アントラセン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、アン
トラセン-1,2,6,7-テトラカルボン酸二無水物、アントラセン-1,2,7,8-テトラカルボン酸二無水物、アントラセン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン-1,2,6,7-テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン-1,2,7,8-テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン-1,2,9,10-テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン-2,3,9,10-テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン-3,4,5,6-テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸二無水物等を挙げることができるが、これらに限定されない。これらは単独でも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0024】
なかでも、得られる膜の密着力、及び高温高湿環境への暴露後の密着力の維持率を向上させる観点から、ベンゼン核を1つ以上有する芳香族カルボン酸二無水物が好ましい。例えば、下記式(4)で表されるテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【化11】
式(4)中、Zは芳香族炭化水素基を有する炭素原子数6~13の4価の有機基を表す。好ましくは、Zはベンゼン核を1又は2つ有する炭素原子数6~13の4価の有機基を表す。
Zの具体例としては、限定されるものではないが、下記式(5a)~(5k)で表される構造が挙げられ、好ましくは、式(5a)、(5g)及び(5i)で表される構造が挙げられる。
【化12】
式(5a)~(5k)中、*は結合手を表す。
テトラカルボン酸二無水物は、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
[ポリアミック酸]
本発明に用いられるポリアミック酸は、上記式(1)で表されるジアミン化合物及び式(2)で表されるジアミン化合物の混合物と、テトラカルボン酸二無水物とを反応させることにより製造することができる。ジアミン化合物の混合物、及びテトラカルボン酸二無水物は、それぞれ溶媒に溶解又は分散した状態で混合し反応させることができる。
【0026】
ジアミン化合物の混合物としては、所期の効果を損なわない範囲で、式(1)又は式(2)で表されるジアミン化合物以外のジアミン化合物を含んでもよい。
本発明において、ジアミン化合物の混合物中に含まれる式(1)で表されるジアミン化合物の量は、10~95mol%であり、好ましくは10~50mol%であり、より好ましくは10~30mol%である。
これにより、本発明のポリアミック酸は、式(1)で表されるジアミン化合物由来の構造の含有量が、ポリアミック酸に含まれるジアミン化合物由来の構造の合計100mol%に対して、10~95mol%、好ましくは10~50mol%であり、より好ましくは10~30mol%である。
式(1)で表されるジアミン化合物由来の構造がこの範囲を超えると、脱離反応により生成するガス成分により膜中に気泡が発生し、金属材料、セラミック及び封止樹脂硬化物に対する密着性の低下させてしまう虞が生じる。
【0027】
式(4)で表されるテトラカルボン酸二無水物を使用する場合、その使用量は、反応に使用するテトラカルボン酸二無水物成分中に、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、より一層好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上、最も好ましくは100モル%である。このような使用量を採用することで、金属材料及びセラミック、並びに封止樹脂硬化物との優れた密着性、及び高温高湿条件暴露に対して高い耐久性を有する密着層を得ることができる。
【0028】
ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分の仕込み比は、目的とする分子量や分子量分布、ジアミンの種類やテトラカルボン酸二無水物の種類等を考慮して適宜決定されるため一概に規定できないが、テトラカルボン酸二無水物成分1に対して、ジアミン成分0.7~1.3程度、好ましくは0.8~1.2程度、更に好ましくは0.9~1.1程度である。
【0029】
ポリアミック酸の合成に用いる有機溶媒は、反応に悪影響を及ぼさない限り特に限定されるものではないが、その具体例としては例えば、m-クレゾール、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA)、γ-ブチロラクトンなどが挙げられる。これらは、単独で使用しても、混合して使用してもよい。さらに、ポリアミック酸を溶解しない溶媒であっても、均一な溶液が得られる範囲内で上記溶媒に加えて使用してもよい。
なお、有機溶媒は1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
反応温度は、得られたポリアミック酸がイミド化してポリイミドにならずに反応を進行できる温度であればよく、例えばー20℃~100℃、又は-20℃~50℃、或いは0℃~30℃、例えば室温(23℃)など、任意の温度を選択することができる。
ただし、本発明の樹脂組成物は、基板及び電極へ均一に塗布でき、所期の効果を損なわない範囲であれば、アミック酸部位の一部がイミド化されたポリアミック酸を含むことができる。
【0031】
反応時間は、反応温度や原料物質の反応性に依存するため一概に規定できないが、通常1~100時間程度である。
【0032】
このようにして得られるポリアミック酸の重量平均分子量は、通常5,000~500,000程度であるが、得られる膜の密着層としての機能を向上させる観点から、好ましくは10,000~300,000程度、より好ましくは50,000~250,000程度である。なお、本発明において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるポリスチレン換算値である。
【0033】
反応により得られたポリアミック酸は、そのまま、或いは希釈又は濃縮した後、樹脂組成物として使用することもできる。
また該ポリアミック酸含有溶液に、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどの貧溶媒を加えてポリアミック酸を沈殿させて単離し、その単離したポリアミック酸を適当な溶媒に再溶解させてポリアミック酸含有溶液とし、これを本発明の樹脂組成物として使用することもできる。
ポリアミック酸の希釈用溶媒並びに単離したポリアミック酸の再溶解用溶媒は、得られたポリアミック酸を溶解させるものであれば特に限定されるものではなく、後述する[溶媒]に挙げる種々の溶媒を用いることができる。また、単独ではポリアミック酸を溶解しない溶媒であっても、ポリアミック酸が析出しない範囲であれば上記溶媒に加えて使用してもよい。
【0034】
[溶媒]
本発明の樹脂組成物に使用する溶媒としては、前記ポリアミック酸を溶解するものであって、また後述するエポキシ樹脂等のその他の任意の成分を溶解又は分散できればよく、特に限定されない。
溶媒としては、例えば、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、γ-ブチロラクトン(GBL)等のエステル類;ヒドロキシ酢酸メチル、ヒドロキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸プロピル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、3-ヒドロキシプロピオン酸メチル、3-ヒドロキシプロピオン酸エチル、3-ヒドロキシプロピオン酸プロピル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル等のヒドロキシエステル類;メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸プロピル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸プロピル、プロポキシ酢酸メチル、プロポキシ酢酸エチル、プロポキシ酢酸プロピル、2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸プロピル、2-エトキシプロピオン酸メチル、2-エトキシプロピオン酸エチル、2-エトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸プロピル、3-プロポキシプロピオン酸メチル、3-プロポキシプロピオン酸エチル、3-プロポキシプロピオン酸プロピル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルプロピオネート等のエーテルエステル類;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等のアミド類;メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、シクロペンタノン(CPN)、シクロヘキサノン等のケトン類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のアルコール類;テトラヒドロフラン(THF)、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等のエーテル類など、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0035】
これらの中でも、標準沸点(1気圧のときの沸点)が150℃以下の溶媒であると、後
述するポリアミック酸のイミド化の際、同時に溶媒を除去することができる利点を有するため好ましい。該溶媒の標準沸点の下限値は特に限定されないが、樹脂組成物の保管や基板等への操作性を考慮すると、例えば70℃以上とすることができる。
このような溶媒としては、例えば上記のアミック酸の合成に使用した溶媒が挙げられ、好ましくはN-メチル-2-ピロリドンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
[エポキシ樹脂]
本発明の樹脂組成物は、所期の効果を損なわない範囲でエポキシ樹脂を含んでいてもよい。
前記樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂は、一般に分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物を指し、本発明においては特に限定されることなく市販品を含め種々のエポキシ樹脂を使用可能である。
【0037】
このようなエポキシ樹脂としては、例えば、1,2,7,8-ジエポキシオクタン、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-へキサンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ジメチロールパーフルオロヘキサンジグリシジルエーテル、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、2,6-ジグリシジルフェニル=グリシジル=エーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ビス(2,7-ジグリシジルオキシナフタレン-1-イル)メタン、1,1,2,2-テトラキス(4-グリシジルオキシフェニル)エタン、1,1,3-トリス(4-グリシジルオキシフェニル)プロパン、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールヘキサフルオロアセトンジグリシジルエーテル、ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル、1,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメトキシ)エタン、エチレングリコールビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、3,4-エポキシシクロヘキサンカルボン酸(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル、4,5-エポキシ-2-メチルシクロヘキサンカルボン酸4,5-エポキシ-2-メチルシクロヘキシルメチル、アジピン酸ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)、1,2-エポキシ-4-(エポキシエチル)シクロヘキサン、4-(スピロ[3,4-エポキシシクロヘキサン-1,5’-[1,3]ジオキサン]-2’-イル)-1,2-エポキシシクロヘキサン、アジピン酸ジグリシジル、フタル酸ジグリシジル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジル、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジル、トリグリシジルイソシアヌレート、トリス(3,4-エポキシブチル)イソシアヌレート、トリス(4,5-エポキシペンチル)イソシアヌレート、トリス(5,6-エポキシヘキシル)イソシアヌレート、トリス(6,7-エポキシヘプチル)イソシアヌレート、トリス(7,8-エポキシオクチル)イソシアヌレート、トリス(8,9-エポキシノニル)イソシアヌレート、トリス(2-グリシジルオキシエチル)イソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、N,N’-ジグリシジルN’’-(2,3-ジプロピオニルオキシプロピル)イソシアヌレート、N,N’-ビス(2,3-ジプロピオニルオキシプロピル)N’’-グリシジルイソシアヌレート、1,3,5-トリス(2-(2,2-ビス(グリシジルオキシメチル)ブトキシカルボニル)エチル)イソシアヌレート、トリス(2,2-ビス(グリシジルオキシメチル)ブチル)3,3’,3’’-(2,4,6-トリオキソ-1,3,5-トリアジン-
1,3,5-トリイル)トリプロパノエート、N,N-ジグリシジル-4-グリシジルオキシアニリン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(N,N-ジグリシジルアニリン)、2-(4,4-ジメチルペンタン-2-イル)-5,7,7-トリメチルオクチル=グリシジル=エーテル、2-(4,4-ジメチルペンタン-2-イル)-5,7,7-トリメチルオクタン酸グリシジル、2-(4,4-ジメチルペンタン-2-イル)-5,7,7-トリメチルオクタン酸2,2-ビス(グリシジルオキシメチル)ブチル、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンノボラック型エポキシ樹脂、アントラセンノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニレンノボラック型エポキシ樹脂、キシリレンノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールメタンノボラック型エポキシ樹脂、テトラキスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また上記エポキシ樹脂は、市販品を好適に使用することができ、例えば、TEPIC(登録商標)-G、同S、同SS、同SP、同L、同HP、同VL、同FL、同PAS B22、同PAS B26、同PAS B26L、同UC、FOLDI(登録商標)-E101、同E201[何れも日産化学(株)製]、jER(登録商標)828、同807、同YX8000、同157S70[何れも三菱ケミカル(株)製]、リカレジン(登録商標)DME100[新日本理化(株)製]、セロキサイド2021P[(株)ダイセル製]、EPICLON(登録商標)HP-4700、同HP-4710、同HP-7200L[何れもDIC(株)製]、AVライト(登録商標)TEP-G[旭有機材(株)製]等が挙げられる。
これらのエポキシ樹脂は、単独で又は二種以上の混合物として使用することができる。
【0038】
本発明の樹脂組成物がエポキシ樹脂を含む場合、その配合量は、前記ポリアミック酸100質量部に対して1~30質量部、例えば5~20質量部とすることができる。
【0039】
[その他成分]
また、本発明の樹脂組成物は、必要に応じて慣用の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、界面活性剤、密着促進剤、増粘剤、増感剤、消泡剤、レベリング剤、塗布性改良剤、潤滑剤、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、耐光安定剤など)、可塑剤、溶解促進剤、充填材(シリカなど)、帯電防止剤などが挙げられる。これらの添加剤は単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
【0040】
本発明の樹脂組成物には、塗布性を向上させる目的で界面活性剤を添加してもよい。このような界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。前記界面活性剤は、単独で又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。
これらの界面活性剤の中で、塗布性改善効果の高さからフッ素系界面活性剤が好ましい。フッ素系界面活性剤の具体例としては、例えば、エフトップ(登録商標)EF-301、同EF-303、同EF-352[何れも三菱マテリアル電子化成(株)製]、メガファック(登録商標)F-171、同F-173、同F-482、同R-08、同R-30、同R-90、同BL-20[何れもDIC(株)製]、フロラードFC-430、同FC-431[何れもスリーエムジャパン(株)製]、アサヒガード(登録商標)AG-710[旭硝子(株)製]、サーフロンS-382、同SC-101、同SC-102、同SC-103、同SC-104、同SC-105、同SC-106[何れもAGCセイミケミカル(株)製]等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の樹脂組成物が界面活性剤を含む場合、その配合量は、樹脂組成物の固形分の含有量に基づいて、0.01~5質量%、好ましくは0.01~3質量%、より好ましくは0.01~2質量%である。
【0041】
本発明の樹脂組成物には、その塗布膜の平坦性を向上させる目的でシリカ等の無機微粒子を添加してもよい。このような無機微粒子としては市販品を好適に使用することができ、例えば、スノーテックス(登録商標)シリーズ、オルガノシリカゾルシリーズ[何れも日産化学(株)製]等が挙げられる。前記無機微粒子は、単独で又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の樹脂組成物が無機微粒子を含む場合、その配合量は、樹脂組成物の固形分の含有量に基づいて、0.1~20質量%、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは1~10質量%である。
【0042】
本発明の樹脂組成物には、封止樹脂硬化物、基板及び/又はリード電極との密着性を向上させる目的で、さらに密着促進剤を添加することができる。これらの密着促進剤としては、例えば、クロロトリメチルシラン、トリクロロ(ビニル)シラン、クロロ(ジメチル)(ビニル)シラン、クロロ(メチル)(ジフェニル)シラン、クロロ(クロロメチル)(ジメチル)シラン等のクロロシラン類;メトキシトリメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、エトキシ(ジメチル)(ビニル)シラン、ジメトキシジフェニルシラン、トリエトキシ(フェニル)シラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、トリメトキシ(3-(N-ピペリジニル)プロピル)シラン等のアルコキシシラン類;ヘキサメチルジシラザン、N,N’-ビス(トリメチルシリル)ウレア、ジメチル(トリメチルシリル)アミン、トリメチルシリルイミダゾール等のシラザン類;イミダゾール、インダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、メルカプトイミダゾール、メルカプトピリミジン、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、ウラゾール、チオウラシル等の含窒素ヘテロ環化合物;1,1-ジメチルウレア、1,3-ジメチルウレア等の尿素類又はチオ尿素類などを挙げることができる。これら密着促進剤は、単独で又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の樹脂組成物が密着促進剤を含む場合、その配合量は、樹脂組成物の固形分の含有量に基づいて、通常20質量%以下、好ましくは0.01~10質量%、より好ましくは0.05~5質量%である。
【0043】
[樹脂組成物の調製方法]
本発明の樹脂組成物は、上記式(1)で表されるジアミン化合物と、上記式(2)で表されるジアミン化合物と、テトラカルボン酸二無水物との反応で得られるポリアミック酸と、必要に応じて溶媒、その他の成分とを混合することにより得られる。
これら混合は、均一に混合できれば特に限定されるものではないが、例えば反応フラスコと撹拌羽根又はミキサー等を用いて行うことができる。
混合は粘度を考慮して必要に応じて加熱下で行われ、10~100℃の温度で0.5~1時間行われる。
【0044】
本発明の樹脂組成物における固形分濃度は、例えば、0.1~100質量%、又は1~80質量%、又は10~80質量%、又は10~60質量%などとすることができる。ここで固形分とは、樹脂組成物中の溶媒以外の全成分を指し、液状成分であっても固形分に含めるものとする。
本発明の樹脂組成物は、任意の粘度に調整が可能であり、半導体装置密着層形成用の樹脂組成物として用いるための適切な粘度を有する。例えば、後述する0.1~30μm程度の厚さの膜を再現性よく得ること目的とする場合、通常、25℃で500~50,000mPa・s程度、好ましくは1,000~20,000mPa・s程度である。
本発明の樹脂組成物の固形分濃度や粘度は、成膜効率や、塗膜の表面均一性を考慮して
適宜選択すればよい。
【0045】
<半導体装置>
本発明の半導体装置は、半導体素子、半導体素子を搭載する基板及び/又は半導体素子と接合するリード電極、並びにこれらを封止する封止樹脂硬化物を備えてなる半導体装置であって、前記封止樹脂硬化物と、前記基板及び/又は前記リード電極との間の少なくとも一部に、すなわち、前記封止樹脂硬化物と前記基板との間の少なくとも一部、及び/又は、前記封止樹脂硬化物と前記リード電極との接触部の少なくとも一部に、上記樹脂組成物のイミド化物からなる密着層を有する。
【0046】
本発明の半導体装置は、半導体素子を搭載した基板及び/又は半導体素子と接合したリード電極の少なくとも一部に本発明に係る樹脂組成物を塗布し塗膜を得る工程、前記塗布した樹脂組成物の塗膜をイミド化して密着層を形成する工程を含む製造方法により、得ることができる。また前記半導体装置の製造方法には、密着層形成後に、該密着層上に封止樹脂硬化物を形成する工程をさらに含むことができる。
例えば、半導体装置1及びその製造方法の例を図1に基いて説明するが、本願発明はこれによって限定されるものではない。
半導体装置1は、半導体素子3、銅基板を接触配置してなるセラミック基板6、半導体素子3にボンディングワイヤー8を介して接合したリード電極を含むリードフレーム7、並びにこれらを封止する封止樹脂硬化物2を備えてなる半導体装置1であって、封止樹脂硬化物2と、銅基板5、セラミック基板6、ボンディングワイヤー8及びリードフレーム7との間に上記樹脂組成物から形成される半導体装置密着層9を有する。
半導体装置1の製造方法は、セラミック基板6に銅基板5を接触配置した半導体素子を搭載する基板に、はんだ4を用いて半導体素子3を搭載し、半導体素子3とリード電極を含むリードフレーム7とをボンディングワイヤーを用いてワイヤーボンディングしたものを準備し、そして半導体素子3を搭載した基板(銅基板5及びセラミック基板6)及び半導体素子3とボンディングワイヤー8を介して接合したリードフレーム7の少なくとも一部に、上記樹脂組成物を塗布し塗膜を得る工程、該塗布した樹脂組成物の塗膜をイミド化して半導体装置密着層9を形成する工程を含む。また半導体装置1の製造方法には、半導体密着層9の形成後に、該密着層9上に封止樹脂硬化物2を形成する工程をさらに含むことができる。
【0047】
半導体素子を搭載した基板、及び半導体素子と接合したリード電極としては、公知の基板及びリード電極を使用できる。
基板又は電極に使用される金属材料としては、例えばクロム、タングステン、モリブデン、マンガン、銅、銀、パラジウム、金、白金、ニッケル、コバルトまたはこれらの合金等が挙げられ、好ましくは銅、ニッケル、銀又はそれらの二種以上合金が挙げられる。また、酸化銀や、酸化銅、酸化パラジウム、酸化スズなどの金属酸化物も使用できる。
基板に使用されるセラミックとしては、ガラスを除くセラミックが挙げられ、例えば、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、酸化アルミニウム(アルミナ)などのセラミックが挙げられる。
【0048】
半導体素子を搭載した基板及び/又は半導体素子と接合したリード電極の少なくとも一部に本発明に係樹脂組成物を塗布する工程において、該樹脂組成物を塗布する方法は特に限定されないが、例えば、フローコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法、キャスト法、バーコーティング法、カーテンコーティング法、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、ディッピング法、スリット法、ディスペンス法などを挙げることができる。
本発明の樹脂組成物を塗布するのは、基板の全面であってもよいし、封止樹脂硬化物と接触する基板及び/又はリード電極の全面又はその一部であってもよい。封止樹脂硬化物
と接触する基板及び/又はリード電極の全面に塗布することが好ましい。
【0049】
塗布した樹脂組成物の塗膜をイミド化し密着層を形成する工程において、樹脂組成物の塗膜をイミド化する方法は特に限定されない。塗膜のイミド化の条件としては、アミック酸中の式(1)で表される化合物由来の構造から、保護基A及びAが脱離すること、及びジアミンと酸二無水物末端が脱水閉環してイミド結合を形成する温度・時間条件であればよく、例えば100~350℃、あるいは150~250℃にて、通常、30分間~3時間程度、例えば30分間~2時間程度とすることができる。上記温度・時間条件とすることで、溶媒除去と同時にポリアミック酸をポリイミドにイミド化させることができる。
本発明における密着層のイミド化率は、50%以上であり、80%以上が好ましくは、95%以上がより好ましく、100%がなお一層好ましい。
イミド化に用いる器具は、例えばホットプレート、オーブン等が挙げられる。イミド化させるときの雰囲気は、空気下であっても不活性ガス下であってもよく、また、常圧下であっても減圧下であってもよい。
【0050】
本発明の樹脂組成物から形成される塗膜の厚みは、イミド化物の用途に応じて、0.01μm~10mm程度の範囲から選択でき、例えば、半導体装置の密着層に用いる場合は、例えば0.1~30μm、例えば0.2~20μm、例えば0.3~20μm、例えば0.5~20μm程度とすることができる。密着層として用いる場合、上記数値範囲に厚さを調整することで、基板及び/又はリード電極との接着を維持する効果を十分に担保する密着力を得ることができ、また溶媒の乾燥を容易とし、密着層中の溶媒の残留を極力防ぐことができ、それにより十分な密着性の実現に寄与することができる。
【0051】
本発明の密着層は金属材料及びセラミック、並びに封止樹脂硬化物に対して、高温下でも高い密着性を有し、且つ、高温高湿環境への暴露試験後でも高い耐久性を有する、即ち高い密着力の維持率を有する密着層を形成することができる。
本発明において、半導体装置密着層の密着力及び維持率は以下の方法により測定した。
金属材料又はセラミック製の基板(40mm×10mm)の上面に、本発明の樹脂組成物を塗布し、加熱硬化して10~25μmの密着層を形成する。密着層上に、半導体封止用樹脂組成物を用いたトランスファー成形により上底直径(Φ)2.90mm、下底直径(Φ)3.57mm、高さ4.00mmの円錐台形状の半導体封止樹脂硬化物を形成する。
形成した基板を、175℃で6時間加熱し、そして放冷後175℃に加熱したステージ上で測定した密着力を密着力Aとした。
また、形成した基板を、85℃85%RH条件下で168時間暴露し、そして放冷後175℃に加熱したステージ上で測定した密着力を密着力Bとした。
密着力は、Nordson DEGA社の4000 万能型ボンドテスターを用いて、基板上面から100μmのせん断高さ、せん断速度100μm/秒でせん断試験を行い、測定された破断荷重である。
本発明において、密着層は、15MPa以上の密着力Aを有し、且つ、密着力Bが密着力Aの70%以上であることが好ましい。
また、本発明の密着層は、基板によって異なるが、金属材料又はセラミック製の基板の上面に、密着層を設けずに封止樹脂硬化物を形成した被着体の密着力をブランクの密着力とした場合、密着力Aがブランクの密着力の3.0倍以上、例えば3.7倍以上、好ましくは4.0倍以上であることが好ましい。
【0052】
本発明の密着層上に封止樹脂硬化物を形成する工程において、使用される封止樹脂及び封止樹脂硬化物を形成する方法は、特に限定されず、公知の封止樹脂及びその硬化物形成方法を使用できる。
【実施例
【0053】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例において、資料の調整及び物性の分析に用いた装置及び条件は以下のとおりである。
(1)H-NMR
装置:BRUKER ADVANCE III-500MHz
測定溶媒:DMSO-d
基準物質:テトラメチルシラン(TMS)(δ0.0 ppm for H)
(2)ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)
装置:東ソー(株)製 HLC-8320GPC
カラム:昭和電工(株)製 Shodex(登録商標)GPC KD-805、同KD-803
カラム温度:50℃
溶媒:DMF(99体積%)、THF(1体積%)、臭化リチウム一水和物(30mmol/L)、リン酸無水物(30mmol/L)
(3)オーブン
装置:ヤマト科学(株)製 送風定温恒温器DNF4000
(4)窒素下焼成用オーブン
装置:EYELA社 VACUUMOVEN VOS-201SD
(5)高温高湿オーブン
装置:ESPEC社 小型環境試験機SH-262
(6)トランスファー成形
装置:メイホー(株)製、ハンドモールド用小型トランスファー成形機AMD-5
成形圧力:9.8MPa
圧入時間:100秒
金型温度:175℃
(7)接合強度試験
装置;Nordson DAGE社 万能ボンドテスター シリーズ4000
せん断高さ:基板上面から100μm
せん断速度:100μm/秒
測定温度:175℃
(8)膜厚測定
装置:(株)小坂研究所 微細形状測定機ET4000A
測定力:100μN
送り速さ:0.05mm/s
(9)赤外吸収スペクトル
装置:Thermo Scientific社 Nicolet iS50 FT-IR
測定法:全反射測定法(ATR法)
雰囲気:窒素下
温度:室温
【0054】
以下、本発明に使用した試料の略記号の意味、調整方法、及び入手手段を示す。
CA-1:ピロメリット酸無水物[東京化成工業(株)製]
CA-2:4,4’-オキシジフタル酸無水物[東京化成工業(株)製]
CA-3:4,4’-ビフタル酸無水物[東京化成工業(株)製]
DA-1:1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン[東京化成工業(株)製]
DA-2:1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン[セイカ(株)製 TPE-
R]
DA-3:1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン[東京化成工業(株)製]
DA-4:4,4’-ジアミノジフェニルエーテル[東京化成工業(株)製]
DA-5:1,6-ビス(4-アミノフェノキシ)ヘキサン[セイカ(株)製 DA-6MG].
DA-6:下記モノマーの合成例1記載の方法にて合成したものを使用した。
DA-7:特許第6447815号記載の方法にて合成したものを使用した。
NMP:N-メチル-2-ピロリドン[純正化学(株)製]
THF:テトラヒドロフラン[純正化学(株)製]
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド[純正化学(株)製]
EtOAc:酢酸エチル[純正化学(株)製]
【化13】
【0055】
(モノマーDA-6の合成例1)
【化14】
<化合物[1]の合成>
4-ニトロアニリン(30g、0.217mol)、THF(120g)、及びピリジン(19g、0.240mol)を、氷浴にて0℃まで冷却し撹拌した。ここに、塩化ア
ジポイル(19g、0.104mol)のTHF(10g)溶液を滴下し、滴下終了後室温(25℃)まで昇温し、18時間撹拌した。反応終了後、HO(純水、390g)に流し込み水割り晶析し、濾過し、濾物をメタノール(130g)で3回ケーキ洗浄した。得られた結晶を乾燥させ、化合物[1]を得た(収量40g,0.104mol,収率98%)。
【0056】
<DA-6の合成>
窒素雰囲気下、化合物[1](40g、0.104mol)を溶解させたDMF(400g)に、5%Pd-C(含水品、3.2g)を加え60℃で6時間撹拌した。次いで、メンブレンフィルターによりろ過を行いPd-Cを除去した後、オートクレーブへ移し、DMF溶媒にて0.4MPa-H、60℃で4時間撹拌し反応を完結させた。得られた溶液を再度メンブレンフィルターによりろ過を行いPd-Cを除去後、EtOAc(400g)/HO(200g)混合溶媒中で撹拌したところ結晶が析出した(結晶1)。これを濾過して回収し、濾液を分液したところ、分液中に結晶が析出したため、再度濾過し、結晶を回収した(結晶2)。回収した結晶1及び結晶2をまとめて乾燥し、DA-6を得た(収量14g、0.0429mol、収率41%)。
H-NMR(DMSO-d、δppm):9.41(s,2H),7.20(d,J=9.0Hz,4H),6.48(d,J=8.5Hz,4H),4.80(s,4H),2.23(m,4H),1.60(m,4H).
【0057】
(合成例1)
撹拌装置付きの300mLの四つ口フラスコに、DA-1を5.81g(19.9mmol)、DA-7を2.77g(4.97mmol)量り取り、NMPを104g加え、窒素を送りながら撹拌して溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながら、CA-3を7.13g(24.2mmol)添加し、20時間室温で撹拌してポリアミック酸溶液(PAA-1)を得た。
得られたポリマーの重量平均分子量(Mw)は190,000、分散度(Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量))は1.9であった。
【0058】
(合成例2)
50mLのスクリュー管に、DA-1を1.04g(3.56mmol)、DA-6を0.290g(0.890mmol)量り取り、NMPを17.4g加え、撹拌して溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながら、CA-3を1.27g(4.31mmol)添加し、15時間室温で撹拌してポリアミック酸溶液(PAA-2)を得た。
得られたポリマーのMwは150,000、Mw/Mnは1.9であった。
【0059】
(合成例3)
50mLのスクリュー管に、DA-1を1.05g(3.59mmol)、DA-5を0.270g(0.900mmol)量り取り、NMPを17.4g加え、撹拌して溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながら、CA-3を1.28g(4.35mmol)添加し、15時間室温で撹拌してポリアミック酸溶液(PAA-3)を得た。
得られたポリマーのMwは110,000、Mw/Mnは1.8であった。
【0060】
(合成例4)
50mLのスクリュー管に、DA-1を1.57g(5.37mmol)、DA-7を0.527g(0.950mmol)量り取り、NMPを26.1g加え、撹拌して溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながら、CA-3を1.80g(6.13mmol)添加し、15時間室温で撹拌してポリアミック酸溶液(PAA-4)を得た。
得られたポリマーのMwは160,000、Mw/Mnは1.8であった。
【0061】
(合成例5)
50mLのスクリュー管に、DA-1を1.13g(3.87mmol)、DA-7を0.240g(0.430mmol)量り取り、NMPを17.4g加え、撹拌して溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながら、CA-3を1.23g(4.17mmol)添加し、15時間室温で撹拌してポリアミック酸溶液(PAA-5)を得た。
得られたポリマーのMwは160,000、Mw/Mnは1.8であった。
【0062】
(合成例6)
50mLのスクリュー管に、DA-1を1.22g(4.18mmol)、DA-7を0.122g(0.220mmol)量り取り、NMPを17.4g加え、撹拌して溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながら、CA-3を1.26g(4.27mmol)添加し、15時間室温で撹拌してポリアミック酸溶液(PAA-6)を得た。
得られたポリマーのMwは140,000、Mw/Mnは1.8であった。
【0063】
(合成例7)
50mLのスクリュー管に、DA-2を0.964g(3.30mmol)、DA-7を0.459g(0.820mmol)量り取り、NMPを17.4g加え、撹拌して溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながら、CA-3を1.18g(4.00mmol)添加し、15時間室温で撹拌してポリアミック酸溶液(PAA-7)を得た。
得られたポリマーのMwは150,000、Mw/Mnは1.9であった。
【0064】
(合成例8)
50mLのスクリュー管に、DA-3を0.964g(3.30mmol)、DA-7を0.459g(0.820mmol)量り取り、NMPを17.4g加え、撹拌して溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながら、CA-3を1.18g(4.00mmol)添加し、15時間室温で撹拌してポリアミック酸溶液(PAA-8)を得た。
得られたポリマーのMwは190,000、Mw/Mnは2.0であった。
【0065】
(合成例9)
50mLのスクリュー管に、DA-4を0.748g(3.73mmol)、DA-7を0.520g(0.930mmol)量り取り、NMPを17.4g加え、撹拌して溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながら、CA-3を1.33g(4.53mmol)添加し、15時間室温で撹拌してポリアミック酸溶液(PAA-9)を得た。
得られたポリマーのMwは130,000、Mw/Mnは1.8であった。
【0066】
(合成例10)
50mLのスクリュー管に、DA-1を0.941g(3.22mmol)、DA-7を0.448g(0.800mmol)量り取り、NMPを17.4g加え、撹拌して溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながら、CA-2を1.21g(3.90mmol)添加し、15時間室温で撹拌してポリアミック酸溶液(PAA-10)を得た。
得られたポリマーのMwは130,000、Mw/Mnは1.8であった。
【0067】
(合成例11)
50mLのスクリュー管に、DA-1を1.09g(3.74mmol)、DA-7を0.520g(0.930mmol)量り取り、NMPを17.4g加え、撹拌して溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながら、CA-1を0.988g(4.53mmol)添加し、15時間室温で撹拌してポリアミック酸溶液(PAA-11)を得た。
得られたポリマーのMwは210,000、Mw/Mnは2.0であった。
【0068】
(合成例12)
50mLのスクリュー管に、DA-1を1.32g(4.50mmol)、量り取り、NMPを17.4g加え、撹拌して溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながら、CA-1を1.28g(4.37mmol)添加し、15時間室温で撹拌してポリアミック酸溶液(PAA-11)を得た。
得られたポリマーのMwは120,000、Mw/Mnは1.8であった。
【0069】
(実施例1)
合成例1で合成したポリアミック酸溶液(PAA-1)を、銅(Cu)基板(長さ40mm×幅10mm)にキャスティング塗布した。この塗膜を、窒素雰囲気下のオーブンにて110℃で10分間、続けて210℃で50分間加熱することで、溶媒を除去するとともにポリアミック酸から保護基を脱離させ、ポリイミドへイミド化させて密着層を形成した。密着層の膜厚を表1に示す。
この基板上に形成された密着層上に、トランスファー成形により、半導体封止用エポキシ樹脂(住友ベークライト(株)製 スミコン(登録商標)EME-G720A)を上底Φ2.90mm、下底Φ3.57mm、高さ4.00mmの円錐台形状に成形した。
この成形体を、基板ごと175℃のオーブンで6時間ポストキュアした。
成形体をオーブンから取り出して放冷し、175℃に加熱したステージ上で密着力Aを測定した。また、成形体を高温高湿オーブン(85℃85%RH)に168時間暴露した後(湿熱試験)に、成形体をオーブンから取り出して放冷し、175℃に加熱したステージ上で密着力Bを測定した。
測定した密着力A及び密着力Bから下記に定義した維持率を算出し、密着層の評価を行った。密着力A、密着力B、ブランク比、維持率及び評価を表1に示す。
【0070】
(実施例2)
ポリアミック酸溶液をPAA-4にした以外、実施例1記載と同様の方法で成形体作成と評価を行った。
(実施例3)
ポリアミック酸溶液をPAA-5にした以外、実施例1記載と同様の方法で成形体作成と評価を行った。
(実施例4)
ポリアミック酸溶液をPAA-7にした以外、実施例1記載と同様の方法で成形体作成と評価を行った。
(実施例5)
ポリアミック酸溶液をPAA-8にした以外、実施例1記載と同様の方法で成形体作成と評価を行った。
(実施例6)
ポリアミック酸溶液をPAA-9にした以外、実施例1記載と同様の方法で成形体作成と評価を行った。
(実施例7)
ポリアミック酸溶液をPAA-10にした以外、実施例1記載と同様の方法で成形体作成と評価を行った。
(実施例8)
ポリアミック酸溶液をPAA-11にした以外、実施例1記載と同様の方法で成形体作成と評価を行った。
(実施例9)
基板をニッケルめっき銅(Ni)基板(長さ40mm×幅10mm)にした以外、実施例1記載と同様の方法で成形体作成と評価を行った。
(実施例10)
基板を窒化アルミ(AlN)基板(長さ40mm×幅10mm)にした以外、実施例1記載と同様の方法で成形体作成と評価を行った。
(実施例11)
塗膜の焼成条件を110℃で10分間、180℃で50分間加熱にした以外、実施例1記載と同様の方法で成形体作成と評価を行った。
【0071】
(比較例1)
ポリアミック酸溶液をキャスティング塗布せず、実施例1記載と同様の方法で成形体作成と評価を行った。
(比較例2)
ポリアミック酸溶液をキャスティング塗布せず、実施例9記載と同様の方法で成形体作成と評価を行った。
(比較例3)
ポリアミック酸溶液をキャスティング塗布せず、実施例10記載と同様の方法で成形体作成と評価を行った。
(比較例4)
ポリアミック酸溶液をPAA-2にした以外、実施例1記載と同様の方法で成形体作成と評価を行った。
(比較例5)
ポリアミック酸溶液をPAA-3にした以外、実施例1記載と同様の方法で成形体作成と評価を行った。
(比較例6)
ポリアミック酸溶液をPAA-6にした以外、実施例1記載と同様の方法で成形体作成と評価を行った。
(比較例7)
ポリアミック酸溶液をPAA-12にした以外、実施例1記載と同様の方法で成形体作成と評価を行った。
【0072】
ここでの維持率は以下のように定義した
維持率(%)=[85℃85%RH環境に168時間暴露した後の密着力B/湿熱試験前の密着力A]×100
【0073】
(評価)
密着力Aが15MPa以上を有し、かつ85℃85%RH環境に168時間暴露した前後での密着力の維持率が70%以上を有するものの評価をAとし、それ以外の密着力Aが15MPa未満のもの、または維持率が70%未満のものをCとした。
(イミド化率)
赤外吸収スペクトル測定を行い、まず芳香環由来のピーク(~1500cm-1)に対するイミド基由来のピーク(~1720cm-1)強度比を算出した。これに110℃で10分間、300℃で50分間加熱処理したサンプルをイミド化率100%の基準とし、上記ピーク強度比の相対値からイミド化率を算出した。
【0074】
表1中のブランク比=[密着層を形成した成形体の密着力A/密着層を形成しない成形体(ブランク)の密着力A]で算出される数値を表す。
表1中の「Cu」は銅基板を表し、「Ni」はニッケルめっき銅基板を表し、「AiN」は窒化アルミ基板を表す。
【0075】
【表1】
【表2】
【0076】
表1に示すように、本発明の樹脂組成物より形成された密着層を有する実施例1乃至10の成形体は、銅基板、ニッケルめっき銅基板及び窒化アルミ基板、並びに封止材樹脂硬化物に対して、15MPa以上の高い接合強度(密着力A)を示し、85℃85%RH環境に168時間暴露した後の密着力Bは、密着力Aに対して70%以上の維持率を示した。一方、比較例4乃至比較例7の成形体は、いずれも、銅基板に対して15MPa未満の接合強度(密着力A)あるいは60%以下の低い維持率を示すものではなく、本発明の密着層形成用樹脂組成物として不適であることが確認された。
今回の結果より、本発明の樹脂組成物から形成された密着層はジアミン骨格中に熱で脱離する官能基で保護されたアミノ基、及びアミド結合を有することにより、密着層と、基板及び封止材樹脂硬化物との界面で相互作用を起こしたためであると推測される。
また表2に示すように、本発明の樹脂組成物より形成された密着層は、焼成により80%以上のイミド化率を達することで、良好な密着性能を有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0077】
2種の特定構造のジアミン化合物と、テトラカルボン酸二無水物との反応で得られるポリアミック酸を含む本発明の樹脂組成物は、熱硬化により層形成性を有し、半導体装置、例えば、半導体素子、金属電極、及び/又は基板と、半導体基板の封止樹脂硬化物との密着層などの電子材料分野において幅広く利用できる。特に、素子温度が高温となる次世代パワー半導体装置などにおいて、好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0078】
1.半導体装置 2.封止樹脂硬化物 3.半導体素子
4.はんだ 5.銅基板 6.セラミック基板 7.リードフレーム
8.ボンディングワイヤー 9.半導体装置密着層
図1