(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-04
(45)【発行日】2025-03-12
(54)【発明の名称】トランスファー成型用硬化性シリコーン組成物、その硬化物、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 83/04 20060101AFI20250305BHJP
B29C 45/02 20060101ALI20250305BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20250305BHJP
C08L 83/07 20060101ALI20250305BHJP
H01L 21/56 20060101ALI20250305BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20250305BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20250305BHJP
【FI】
C08L83/04
B29C45/02
C08K3/013
C08L83/07
H01L21/56 J
H01L21/56 T
H01L23/30 F
H01L23/30 R
(21)【出願番号】P 2020562491
(86)(22)【出願日】2019-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2019051394
(87)【国際公開番号】W WO2020138411
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-12-09
(31)【優先権主張番号】P 2018245661
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】719000328
【氏名又は名称】ダウ・東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山崎 亮介
【審査官】大塚 龍平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/030286(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/030287(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/030288(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/136243(WO,A1)
【文献】特開2006-335857(JP,A)
【文献】特開2006-117845(JP,A)
【文献】特開2005-008657(JP,A)
【文献】特開2015-129213(JP,A)
【文献】特開2005-183788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/04
B29C 45/02
C08K 3/013
C08L 83/07
H01L 21/56
H01L 23/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスファー成型用硬化性シリコーン組成物であって、
(A)硬化反応性のオルガノポリシロキサン、
(B)フィラー、および
(C)硬化剤を含有してなり、
(A)成分の50質量%以上が、(A1)分子内に少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有し、かつ、RSiO
3/2
(式中、Rは一価有機基)で表されるシロキサン単位およびSiO
4/2
で表されるシロキサン単位から選ばれるシロキサン単位を、全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有するオルガノポリシロキサンであり、
(B)成分の含有量が組成物全体の40体積%以下であり、
室温から200℃までの成型温度におけるMDR(Moving Die Rheom eter)により測定される(1)最大トルク値が50dN・m未満であり、(2)最大トルク値に到達したときに、貯蔵トルク値/損失トルク値の比で表される損失正接(tanδ)の値が0.2未満である、トランスファー成型用硬化性シリコーン組成物。
【請求項2】
組成物全体として、ホットメルト性を有する、
請求項1に記載のトランスファー成型用硬化性シリコーン組成物。
【請求項3】
(A)成分が、(A1-1)ヒドロシリル化反応性基および/またはラジカル反応性基を有するホットメルト性オルガノポリシロキサン微粒子である、請求項
1または請求項
2に記載のトランスファー成型用硬化性シリコーン組成物。
【請求項4】
(A)成分が、(A
1)樹脂状オルガノポリシロキサン、(A
2)少なくとも1種のオルガノポリシロキサンを部分架橋してなるオルガノポリシロキサン架橋物、(A
3)樹脂状オルガノシロキサンブロックと鎖状オルガノシロキサンブロックからなるブロックコポリマー、またはこれらの少なくとも2種の混合物からなるオルガノポリシロキサン微粒子である、請求項
1または請求項
2に記載のトランスファー成型用硬化性シリコーン組成物。
【請求項5】
(A)成分が、R
ASiO
3/2(式中、R
Aは炭素原子数6~20のアリール基)で表されるシロキサン単位を含有するオルガノポリシロキサン微粒子である、請求項
1~4のいずれか1項に記載のトランスファー成型用硬化性シリコーン組成物。
【請求項6】
(B)成分が補強性フィラー、白色顔料、熱伝導性フィラー
又は導電性フィラ
ーから選ばれる1種類以上である、請求項1に記載のトランスファー成型用硬化性シリコーン組成物。
【請求項7】
ペレット状である、請求項1~
6のいずれか1項に記載のトランスファー成型用硬化性シリコーン組成物。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか1項に記載のトランスファー成型用硬化性シリコーン組成物を硬化させてなる、硬化物。
【請求項9】
請求項
8に記載の硬化物の半導体装置用部材としての使用。
【請求項10】
請求項
8に記載の硬化物を有する半導体装置。
【請求項11】
パワー半導体装置、光半導体装置、およびフレキシブル回路基盤上に実装された半導体装置から選ばれる、請求項
10の半導体装置。
【請求項12】
硬化性シリコーン組成物を構成する各成分のみを、50℃を超えない温度条件下で混合することにより粒状化することを特徴とする、請求項1~請求項
7のいずれか1項に記載のトランスファー成型用硬化性シリコーン組成物の製造方法。
【請求項13】
下記工程(I)~(III)から少なくともなる硬化物の成型方法。
(I)請求項1~
7のいずれか1項に記載のトランスファー成型用硬化性シリコーン組成物を50℃以上に加熱して、溶融する工程;
(II)前記工程(I)で得られた液状の硬化性シリコーン組成物を金型に注入する工程 又は 型締めにより金型に前記工程(I)で得られた硬化性シリコーン組成物を行き渡らせる工程;および
(III)前記工程(II)で注入した硬化性シリコーン組成物を硬化する工程
【請求項14】
請求項1~
7のいずれか1項に記載のトランスファー成型用硬化性シリコーン組成物を硬化させてなる硬化物により、半導体素子のオーバーモールド成型及びアンダーフィルを一度に行う被覆工程を含む、請求項
13の硬化物の成型方法。
【請求項15】
請求項1~
7のいずれか1項に記載のトランスファー成型用硬化性シリコーン組成物を硬化させてなる硬化物により、単独又は複数の半導体素子を搭載した半導体ウエハ基板の表面を覆い、かつ、半導体素子の間隙が当該硬化物により充填されるようにオーバーモールド成型する被覆工程を含む、請求項
13の硬化物の成型方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡便な製造方法で得ることができ、成型した硬化物が高温でも低モジュラスかつ柔軟で、応力緩和特性に優れ、かつ、当該組成物を用いるトランスファー成型性および脱型性に優れたトランスファー成型用硬化性シリコーン組成物、その成型物(ペレット等)およびその硬化物に関する。また、本発明は、当該組成物の硬化物およびその用途(特に、半導体用部材)、当該組成物の製造方法および硬化物の成型方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
硬化性シリコーン組成物は、硬化して、優れた耐熱性、耐寒性、電気絶縁性、耐候性、撥水性、透明性を有する硬化物を形成することから、幅広い産業分野で利用されている。こうした硬化性シリコーン組成物の硬化物は、一般に、他の有機材料と比較し変色しにくく、また、物理的物性の低下が小さいため、光学材料および半導体装置の封止剤としても適している。
【0003】
本出願人は、特許文献1および特許文献2において、成型用のホットメルト性の硬化性粒状シリコーン組成物および反応性シリコーン組成物を提案している。これらのシリコーン組成物はいわゆるフェニルシリコーン樹脂からなり、メチルシリコーン樹脂と比較するとホットメルト性に優れ、かつ、硬化物の硬さや強度に優れるという利点を有するものである。
【0004】
一方、近年では光半導体装置等の小型化および高出力化が進んでおり、これらのホットメルト性の硬化性粒状シリコーン組成物等を適用した場合、特に、200℃以上の高温下においてフェニルシリコーン樹脂に由来する着色が生じる場合があり、特に反射材の分野において光反射率が低下する場合がある。このため、ホットメルト性および成型後の硬化物の機械的強度を実現しつつ、より高い耐熱性および耐着色性の要求を満たすシリコーン組成物が強く求められている。
【0005】
ここで、特許文献3において、メチルシリコーン樹脂を用いたホットメルト性の硬化性シリコーンシートが開示されているが、本発明において粒状組成物は記載も示唆もされていない。さらに、当該組成物の混錬工程において、有機溶媒が不可欠であり、かつ、成型材料に適した機能性フィラー類(特に白色顔料)を大量に含む組成物や粒状組成物はなんら記載も示唆もされていない。さらに、当該組成物はシート作成の工程において、有機溶媒を除去する必要があり、溶媒の残存を避けるためには薄膜のシートしか作成できないため、成型用の組成物としての使用が困難である。また、溶媒を除去する工程において熱が掛かるため成型工程において必要とされる速い硬化性/即硬化性を達成するのが困難である。このため、特許文献3に開示された組成物は、上記課題の解決に適用することは困難であった。
【0006】
さらに、特許文献4には、メチルシリコーン樹脂を用いた成型用の硬化性シリコーンペレットが開示されているが、本組成物の生産には高温での溶融混錬が必要となるため、組成物の硬化性の制御が難しく、低温での短時間成型が困難である。
【0007】
一方、本件出願人らは、特許文献5~7において、粗大粒子を含まない無機フィラーを硬化性粒状シリコーン組成物に使用することで、特に高温における強靭性や耐久性、溶融時のギャップフィル性、光反射率等を改善できることを提案している。また、特許文献8において、ステアリン酸金属塩等のホットメルト成分を併用により、ホットメルト性を有し、加熱溶融時の十分な流動性およびギャップフィル性を実現可能であって、かつ、取扱い作業性および硬化物の接着性に優れ、室温から150℃程度の高温における柔軟性および強靭性に優れた硬化物を与える硬化性シリコーン組成物を提案している。
【0008】
しかしながら、近年、様々な半導体用途への適用が求められるにあたり、これらの硬化性シリコーン組成物は、未だ、その特性において改良の余地を残している。特に、トランスファー成型において、脱型性と硬化物の応力緩和特性には、一般的に、トレードオフが生じるため、これらの特性を両立させることが困難であり、近年の金型構造の微細化は脱型性をより困難にする傾向がある。
【0009】
すなわち、特許文献4のように線膨張係数を低減した成型用のホットメルト性のシリコーン組成物では、トランスファー成型時に、得られる硬化物が硬いために基材との少しの線膨張係数のずれにより反りや欠陥を生じやすい。一方、既に提案済みの、高温軟化性に優れるホットメルト性の硬化性粒状シリコーン組成物をトランスファー成型に用いる場合、硬化物が高温で柔軟な性質を有するので、硬化後に金型から離れづらく、微細な構造を持った金型からの脱型性が十分でないでない場合がある。このため、硬化物の応力緩和特性に優れ、反りや欠陥を生じず、かつ、脱型性に優れる硬化性シリコーン組成物が強く望まれている。
【0010】
他方、本件出願人は、圧縮成型により半導体素子を封止するための熱硬化性フィルム状シリコーン封止材において、室温から200℃までの成型温度におけるMDRにより測定される初期トルク値が15dN・m未満であるシリコーン封止材を提案している(特許文献9)。当該封止材は、LED等の半導体封止を目的とする成型性に優れ、金型からのオーバーフロー等の問題を生じることなく、ボイド等の欠陥を有しない点で有用であるが、トランスファー成型時の脱型性と硬化物の応力緩和特性、特に、成型物の反りの防止と脱型性を両立するには至らず、未だその性能に改善の余地を残していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開第2016/136243号パンフレット
【文献】特開2014-009322号公報
【文献】特表2017-512224号公報
【文献】特開2009-155415号公報
【文献】国際公開第2018/030286号パンフレット
【文献】国際公開第2018/030287号パンフレット
【文献】国際公開第2018/030288号パンフレット
【文献】国際特許出願PCT/JP2018/19574号
【文献】特開2013-232580号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、トランスファー成型における取扱い作業性および硬化特性に優れると共に、成型した硬化物が高温でも低モジュラスかつ柔軟で、応力緩和特性に優れるため、基材との一体成型時に成型物の反りや欠陥を生じにくく、かつ、トランスファー成型後の当該硬化物の脱型性に優れた硬化性シリコーン組成物を提供することにある。さらに、本発明は、当該硬化性シリコーン組成物を用いる成型物(特に、ペレットを含む)およびその硬化物を提供することを目的とする。また、本発明は、当該組成物の硬化物およびその用途(特に、半導体用部材および当該硬化物を有するパワー半導体等を含む)、当該組成物の製造方法および硬化物の成型方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
鋭意検討の結果、本発明者らは、室温から200℃までの成型温度におけるMDR(Moving Die Rheometer)により測定される(1)最大トルク値が50dN・m未満であり、(2)最大トルク値に到達したときに、貯蔵トルク値/損失トルク値の比で表される損失正接(tanδ)の値が0.2未満であるトランスファー成型用硬化性シリコーン組成物、特に、(A)硬化反応性のオルガノポリシロキサン、(B)機能性フィラー、および(C)硬化剤を含有してなり、(A)成分の50質量%以上が、(A1)分子内に少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有し、かつ、RSiO3/2(式中、Rは一価有機基)で表されるシロキサン単位およびSiO4/2で表されるシロキサン単位から選ばれるシロキサン単位を、全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有するオルガノポリシロキサンであり、(B)成分の含有量が組成物全体の40体積%以下である、トランスファー成型用硬化性シリコーン組成物により上記課題を解決できる事を見出し、本発明に到達した。ここで、上記のトランスファー成型用硬化性シリコーン組成物はペースト状であってもよいが、組成物全体として、ホットメルト性であることが好ましい。また、上記の硬化性シリコーン組成物は、ペレット状であることが好ましい。
【0014】
さらに、本発明者らは、上記のトランスファー成型用硬化性シリコーン組成物の硬化物、特に、当該硬化物の半導体装置用部材としての使用、および当該硬化物を有する半導体装置(パワー半導体装置、光半導体装置、およびフレキシブル回路基盤上に実装された半導体装置から選ばれる1種以上を含む)により上記課題を解決できる事を見出し、本発明に到達した。
【0015】
同様に、本発明者らは、上記の硬化性シリコーン組成物を構成する特定の成分のみを、50℃を超えない温度条件下で混合することにより粒状化することを特徴とする製造方法および、上記の硬化性粒状シリコーン組成物を用いた硬化物の成型方法により上記課題を解決できる事を見出し、本発明に到達した。
【0016】
なお、本発明の硬化性シリコーン組成物は成型性および脱型性に優れ、トランスファー成型用材料として好適に用いられる。さらに、本発明の硬化性シリコーン組成物は、硬化物により、半導体素子または半導体回路基盤がオーバーモールド成型により被覆する工程である、いわゆるオーバーモールド方式の成型用材料として、好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のトランスファー成型用硬化性シリコーン組成物は、トランスファー成型における取扱い作業性および硬化特性に優れると共に、成型した硬化物が高温で低モジュラスかつ柔軟で、応力緩和特性に優れるため、基材との一体成型時に成型物の反りや欠陥を生じにく、かつ、成型後の当該硬化物の脱型性に優れる。また、このようなトランスファー成型用硬化性シリコーン組成物は、簡便な混合工程のみで生産することができ、効率よく製造することができる。さらに、本発明により、上記のトランスファー成型用硬化性シリコーン組成物を用いる成型物(ペレットを特に含む)およびその硬化物を提供することができる。さらに、本発明により、上記組成物の硬化物からなる半導体装置用部材、当該硬化物を有する半導体装置、および、硬化物の成型方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[トランスファー成型用硬化性シリコーン組成物の硬化挙動]
本発明の硬化性シリコーン組成物は、トランスファー成型用の硬化性シリコーン組成物であり、組成物全体として、ペースト状であってもよく、ホットメルト性のペレット等の成型物であってもよい。このような組成物は、本来トレードオフの関係にある、トランスファー成型における脱型性と硬化物の応力緩和特性を両立するために、室温から200℃までの成型温度におけるMDR(Moving Die Rheom eter)により測定される(1)最大トルク値が50dN・m未満であり、(2)最大トルク値に到達したときに、貯蔵トルク値/損失トルク値の比で表される損失正接(tanδ)の値が0.2未満であることが必要である。特に、一般的な成型温度である150℃に設定したMDRにより測定される(1)最大トルク値が50dN・m未満であり、(2)最大トルク値に到達したときに、貯蔵トルク値/損失トルク値の比で表される損失正接(tanδ)の値が0.2未満であることが特に好ましい。なお、上記の硬化挙動を充足し、特定の温度(例えば、150℃)におけるMDRの物性値を充足する限り、本発明のトランスファー成型用の硬化性シリコーン組成物は、室温から200℃までの所望の成型温度(例えば、150℃以外の成型温度)を所望により選択することができ、使用することができることは言うまでもない。
【0019】
上記の最大トルク値について説明する。本発明において、トルク値とは本組成物を硬化(=加硫)してなる硬化物につて、JIS K 6300-2「未加硫ゴム-物理特性-第2部:振動式加硫試験機による加硫特性の求め方」に準拠したMDRによる測定で得られるトルク値であり、最大トルク値とは、成型温度、好適には150℃における加硫後の600秒間に測定されるトルク値の最大値である。ここで、硬化物の成型温度における最大トルク値が50dN・m未満であるとは、成型後の硬化物が高温でも柔らかいこと、すなわち、硬化物が低モジュラスかつ柔軟であって、弾性率が低く、応力緩和特性に優れることを意味するものであり、本発明において、硬化物の成型温度における最大トルク値は、40dN・m未満であってよく、35dN・m未満であることが好ましく、5~30dN・mの範囲であることが特に好ましい。当該範囲であると、硬化物の十分な応力緩和特性が実現でき、かつ、後述する損失正接(tanδ)と両立させることが可能であるためである。一方、硬化物の成型温度における最大トルク値が上記上限を超えると、硬化物が過度に硬質で、応力緩和性が実現できないため、特に基材との一体成型時に成型物の反りや欠陥を生じる場合がある。
【0020】
次に、本発明における組成物の損失正接(tanδ)の条件について説明する。損失正接(tanδ)は、上記のMDRを用いる測定により、最大トルク値に到達した際に、貯蔵トルク値/損失トルク値の比で表される損失正接(tanδ)の値を読み取ることで、測定される値である。ここで、組成物の損失正接(tanδ)が、0.2未満であるとは、組成物を硬化してなる硬化物のゴム弾性が低く、その表面が適度に硬質であることを意味するものであり、当該硬化物は成型工程における離型時に金型に硬化物が付着/吸着しにくく、脱型性に優れる。脱型性の見地から、最大トルク値に到達した際の、硬化物の損失正接(tanδ)が0.01~0.19の範囲であることが好ましく、0.03~0.18の範囲であることが特に好ましい。一方、組成物の損失正接(tanδ)が0.2を超えると、得られる硬化物のゴム弾性が高くなり、その表面が粘着性を帯びてくるので、離型時に金型に硬化物が付着/吸着しやすくなり、スムーズに金型から分離しにくく、脱型性が不十分となる場合がある。
【0021】
硬化物につて、上記の(1)最大トルク値の条件および(2)最大トルク値に到達したときに、貯蔵トルク値/損失トルク値の比で表される損失正接(tanδ)の値の条件を共に充足することで、本発明のトランスファー成型用硬化性シリコーン組成物は、硬化物の応力緩和特性に優れ、硬化物の反りや欠陥を生じにくく、かつ、良好な脱型性を実現するものである。
【0022】
[トランスファー成型用硬化性シリコーン組成物の組成]
本発明のトランスファー成型用硬化性シリコーン組成物は、さらに、
(A)硬化反応性のオルガノポリシロキサン、
(B)機能性フィラー、および
(C)硬化剤を含有してなり、
(A)成分の50質量%以上が、(A1)分子内に少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有し、かつ、RSiO3/2(式中、Rは一価有機基)で表されるシロキサン単位およびSiO4/2で表されるシロキサン単位から選ばれるシロキサン単位を、全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有するオルガノポリシロキサンであり、(B)成分の含有量が組成物全体の40体積%以下であることが特に好ましい。また、(A1)成分の含有量が、組成物全体の20~80質量%の範囲であることが好ましい。以下、組成物の各成分および任意成分について説明する。なお、本発明において、「平均粒子径」とは別に定義しない限り、粒子の一次平均粒子径を意味するものとする。
【0023】
[主として(A1)成分を含む(A)成分]
(A)成分は、本組成物の主剤の一つであり、分子内に硬化反応性基を有する1種類以上の硬化反応性のオルガノポリシロキサンであって、その少なくとも50質量%は、
(A1)RSiO3/2(式中、Rは一価有機基)で表されるシロキサン単位およびSiO4/2で表されるシロキサン単位から選ばれるシロキサン単位を、全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有し、かつ、分子内に炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有するオルガノポリシロキサンである。(A)成分は、1種類以上の(A1)成分のみからなるものであってもよく、(A1)成分以外の硬化反応性のオルガノポリシロキサンを含む混合物であってもよい。
【0024】
本組成物は、(A1)成分を組成物全体の20~80質量%の範囲で含有することが好ましく、30~75質量%の範囲で含有することがより好ましい。このような(A1)成分は、室温で蝋状又は固体状であることが好ましく、ペースト状の組成物を生産する時は(A1)成分以外の室温で液状の(A)成分に溶解させて、粘調な液体として使用してよい。また、ホットメルト性の組成物を生産する時は単独又は他の成分(例えば、硬化剤である(C)成分の一部)とともに微粒子の形態にして使用することが好ましく、平均一次粒子径が1~20μmの真球状のシリコーン微粒子であることが特に好ましい。
【0025】
(A1)成分は、分子内に炭素-炭素二重結合を有する硬化反応性基を有することが必要である、このような硬化反応性基は、ヒドロシリル化反応性または有機過酸化物硬化性の官能基であり、他の成分との架橋反応によって、硬化物を形成する。このような硬化反応性基は、アルケニル基またはアクリル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基などの炭素数2~10のアルケニル基;3-メタクリロキシプロピル基、3-アクリロキシプロピル基等のアクリル基含有一価有機基が挙げられ、特にビニル基またはヘキセニル基であることが好ましい。
【0026】
(A1)成分中のヒドロシリル化反応性基以外のケイ素原子に結合する基としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のハロゲン置換アルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のハロゲン置換アリール基、炭素数7~20のアラルキル基、アルコキシ基、および水酸基が例示される。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基等のアリール基;フェネチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;およびこれらの基に結合している水素原子の一部または全部を塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基が例示される。特に、フェニル基、水酸基が好ましい。特に、(A1)成分は、分子中の全有機基の10モル%以上がアリール基、特に、フェニル基であることが好ましい。
【0027】
(A1)成分は、本組成物の硬化挙動を決める主要な成分である。本発明の組成物は室温から200℃までの成型温度におけるMDR(Moving Die Rheom eter)により測定される(1)最大トルク値が50dN・m未満であり、(2)最大トルク値に到達したときに、貯蔵トルク値/損失トルク値の比で表される損失正接(tanδ)の値が0.2未満であるが、最大トルク値を50dN・m未満とするためには(A1)成分のガラス転移温度が前述の成型温度以下である事が好ましい。また、成型温度での前記tanδの値が0.2未満とするためには(A1)成分のガラス転移温度は成型温度からある程度離れていることが好ましいが、ガラス転移点が室温を大きく下回る場合、得られる硬化物の室温での強度が低くなる傾向にあるため、実質的には(A1)成分のガラス転移点は室温~成型温度の範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは室温~100℃の範囲である。得られる硬化物の室温での強度が良くなるという観点からはガラス転移温度は室温以上である事が好ましい。つまり、(A1)成分はホットメルト性であることが好ましく、具体的には、(A1)成分は、25℃において非流動性であり、100℃の溶融粘度が8000Pa・s以下であることが好ましい。非流動性とは、無負荷の状態で流動しないことを意味し、例えば、JIS K 6863-1994「ホットメルト接着剤の軟化点試験方法」で規定されるホットメルト接着剤の環球法による軟化点試験方法で測定される軟化点未満での状態を示す。すなわち、25℃において非流動性であるためには、軟化点が25℃よりも高い必要がある。
【0028】
(A1)成分は、100℃の溶融粘度が8000Pa・s以下、5000Pa・s以下、あるいは10~3000Pa・sの範囲内であることが好ましい。100℃の溶融粘度が上記の範囲内であると、ホットメルト後、25℃に冷却した後の密着性が良好である。
【0029】
本発明の組成物にホットメルト性を付与したい場合、(A1)成分、それを含む(A)成分全体が微粒子状であることが好ましい。その粒子径は限定されないが、平均一次粒子径は1~5000μmの範囲内、1~500μmの範囲内、1~100μmの範囲内、1~20μmの範囲内、あるいは1~10μmの範囲内であることが好ましい。この平均一次粒子径は、例えば、光学顕微鏡またはSEMで観察することにより求めることができる。(A1)成分または(A)成分全体の形状は限定されず、球状、紡錘状、板状、針状、不定形状が例示され、均一に溶融することから、球状あるいは真球状であることが好ましい。特に(A)成分全体を1~10μmの真球状とすることで本配合物の溶融特性及び硬化後の機械的物性を良好に改善できる。
【0030】
(A1)成分は、
(A1)樹脂状オルガノポリシロキサン、
(A2)少なくとも1種のオルガノポリシロキサンを架橋してなるオルガノポリシロキサン架橋物、
(A3)樹脂状オルガノシロキサンブロックと鎖状オルガノシロキサンブロックからなるブロックコポリマー、
またはこれらの少なくとも2種の混合物
からなるシリコーン微粒子が好ましい。
【0031】
(A1)成分はヒドロシリル化反応性基および/またはラジカル反応性基を有する樹脂状オルガノポリシロキサンであり、T単位又はQ単位を多く有し、アリール基を有するホットメルト性の樹脂状オルガノポリシロキサンであることが好ましい。このような(A1)成分としては、トリオルガノシロキシ単位(M単位)(オルガノ基はメチル基のみ、メチル基とビニル基またはフェニル基である。)、ジオルガノシロキシ単位(D単位)(オルガノ基はメチル基のみ、メチル基とビニル基またはフェニル基である。)、モノオルガノシロキシ単位(T単位)(オルガノ基はメチル基、ビニル基、またはフェニル基である。)及びシロキシ単位(Q単位)の任意の組み合わせからなるMQ樹脂、MDQ樹脂、MTQ樹脂、MDTQ樹脂、TD樹脂、TQ樹脂、TDQ樹脂が例示される。なお、(A1)成分は、分子中に少なくとも2個のヒドロシリル化反応性基および/またはラジカル反応性基を有し、分子中の全有機基の10モル%以上がアリール基、特に、フェニル基であることが好ましい。
【0032】
また、(A2)成分は、少なくとも1種のオルガノポリシロキサンを架橋してなるので、(C)硬化剤により硬化する際にクラックが発生しにくく、硬化収縮を小さくすることができる。ここで、「架橋」とは、原料であるオルガノポリシロキサンをヒドロシリル化反応、縮合反応、ラジカル反応、高エネルギー線反応等により、前記オルガノポリシロキサンを連結することである。このヒドロシリル化反応性基やラジカル反応性基(高エネルギー線反応性基を含む)としては、前記と同様の基が例示され、縮合反応性基としては、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アシルオキシ基が例示される。
【0033】
(A2)成分を構成する単位は限定されず、シロキサン単位、シルアルキレン基含有シロキサン単位が例示され、また、得られる硬化物に十分な硬度と機械的強度を付与することから、同一分子内に樹脂状ポリシロキサン単位と鎖状ポリシロキサン単位を有することが好ましい。すなわち、(A2)成分は、樹脂状(レジン状)オルガノポリシロキサンと鎖状(直鎖状または分岐鎖状を含む)オルガノポリシロキサンとの架橋物であることが好ましい。(A2)成分中に、樹脂状オルガノポリシロキサン構造-鎖状オルガノポリシロキサン構造を導入することで、(A2)成分は良好なホットメルト性を示すと共に、(C)硬化剤により、良好な硬化性を示す。
【0034】
(A2)成分は、
(1)一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと一分子中にケイ素原子結合水素原子を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンのヒドロシリル化反応を経て、分子中に樹脂状オルガノポリシロキサン構造-鎖状オルガノポリシロキサン構造をアルキレン結合により連結したもの
(2)一分子中に少なくとも2個のラジカル反応性基を有する少なくとも2種のオルガノポリシロキサンの有機過酸化物によるラジカル反応を経て、分子中に樹脂状オルガノポリシロキサン構造-鎖状オルガノポリシロキサン構造をシロキサン結合またはアルキレン結合により連結したもの
(3)少なくとも2種のオルガノポリシロキサンの縮合反応を経て、分子中に樹脂状オルガノポリシロキサン構造-鎖状オルガノポリシロキサン構造をシロキサン(-Si-O-Si-)結合により連結したもの
のいずれかである。このような(A2)成分は、樹脂構造-鎖状構造のオルガノポリシロキサン部分がアルキレン基または新たなシロキサン結合により連結された構造を有するので、ホットメルト性が著しく改善される。
【0035】
上記(1)および(2)において、(A2)成分中に含まれるアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基等の炭素数2~20のアルケニル基が例示され、これらは直鎖状でも分岐鎖状でもよく、好ましくは、エチレン基、ヘキシレン基である。
【0036】
樹脂状オルガノポリシロキサンと鎖状(直鎖状または分岐鎖状を含む)オルガノポリシロキサンの架橋物は、例えば、以下のシロキサン単位およびシルアルキレン基含有シロキサン単位により構成される。
M単位:R1R2
2SiO1/2で表されるシロキサン単位、
D単位:R1R2SiO2/2で表されるシロキサン単位、
R3M/R3D単位:R3
1/2R2
2SiO1/2で表されるシルアルキレン基含有シロキサン単位およびR3
1/2R2SiO2/2で表されるシルアルキレン基含有シロキサン単位から選ばれる少なくとも1種のシロキサン単位、ならびに
T/Q単位:R2SiO3/2で表されるシロキサン単位およびSiO4/2で表されるシロキサン単位から選ばれる少なくとも1種のシロキサン単位
【0037】
式中、R1は、各々独立に、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のハロゲン置換アルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のハロゲン置換アリール基、または炭素数7~20のアラルキル基であり、前記と同様の基が例示される。R1は、メチル基、ビニル基、フェニル基が好ましい。ただし、全シロキサン単位のうち、少なくとも2個のR1はアルケニル基であることが好ましい。
【0038】
また、式中、R2は、各々独立に、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のハロゲン置換アルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のハロゲン置換アリール基、または炭素数7~20のアラルキル基であり、前記R1と同様の基が例示される。R2は、メチル基、フェニル基が好ましい。
【0039】
また、式中、R3は他のシロキサン単位中のケイ素原子に結合した、直鎖状または分岐鎖状の炭素数2~20のアルキレン基である。アルキレン基としては、前記と同様の基が例示され、エチレン基、ヘキシレン基が好ましい。
【0040】
M単位は(A2)成分の末端を構成するシロキサン単位であり、D単位は直鎖状のポリシロキサン構造を構成するシロキサン単位である。なお、これらのM単位またはD単位、特に、M単位上にアルケニル基があることが好ましい。一方、R3M単位およびR3D単位はシルアルキレン結合を介して他のシロキサン単位中のケイ素原子に結合し、かつ、酸素原子を介して他のシロキサン単位中のケイ素原子に結合するシロキサン単位である。T/Q単位はポリシロキサンに樹脂状の構造を与える分岐のシロキサン単位であり、(A2)成分がR2SiO3/2で表されるシロキサン単位および/またはSiO4/2で表されるシロキサン単位を含むことが好ましい。特に、(A2)成分のホットメルト性を向上させ、(A2)成分中のアリール基の含有量を調整することから、(A2)成分はR2SiO3/2で表されるシロキサン単位を含むことが好ましく、特に、R2がフェニル基であるシロキサン単位を含むことが好ましい。
【0041】
R3M/R3D単位は、(A2)成分の特徴的な構造の1つであり、R3のアルキレン基を介して、ケイ素原子間が架橋された構造を表す。具体的には、R3
1/2R2
2SiO1/2で表されるアルキレン基含有シロキサン単位およびR3
1/2R2SiO2/2で表されるアルキレン基含有シロキサン単位から選ばれる少なくとも1種のシロキサン単位であり、(A2)成分を構成する全シロキサン単位の少なくとも二つはこれらのアルキレン基含有シロキサン単位であることが好ましい。R3のアルキレン基を有するシロキサン単位間の好適な結合形態は前記の通りであり、二つのアルキレン基含有シロキサン単位間のR3の数は、M単位における酸素等と同様に結合価「1/2」として表現している。仮にR3の数を1とすれば、[O1/2R2
2SiR3SiR2
2O1/2]、[O1/2R2
2SiR3SiR2O2/2]および[O2/2R2SiR3SiR2O2/2]で表されるシロキサンの構造単位から選ばれる少なくとも1以上が(A2)成分中に含まれ、各酸素原子(O)は、前記のM,D,T/Q単位に含まれるケイ素原子に結合する。かかる構造を有することで、(A2)成分は、D単位からなる鎖状ポリシロキサン構造、T/Q単位を含む樹脂状ポリシロキサン構造を分子内に有する構造を比較的容易に設計可能であり、その物理的物性において著しく優れたものである。
【0042】
上記(1)において、一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと一分子中にケイ素原子結合水素原子を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンとを、[アルケニル基のモル数]/[ケイ素原子結合水素原子のモル数]>1となる反応比でヒドロシリル化反応させることにより得ることができる。
【0043】
上記(2)において、一分子中に少なくとも2個のラジカル反応性基を有する少なくとも2種のオルガノポリシロキサンを、系中の全てのラジカル反応性基が反応するには足りない量の有機過酸化物によるラジカル反応させることにより得ることができる。
【0044】
上記(1)および(2)において、(A2)成分は、樹脂状シロキサン構造を有するオルガノポリシロキサンと、鎖状シロキサン構造を有するオルガノポリシロキサンをヒドロシリル化反応またはラジカル反応したものである。
【0045】
例えば、(A2)成分は、
(AR)分子中にR2SiO3/2(式中、R2は、前記と同様の基である。)で表されるシロキサン単位および/またはSiO4/2で表されるシロキサン単位を含有し、かつ、炭素数2~20のアルケニル基またはケイ素原子結合水素原子あるいはラジカル反応性の基を有する、少なくとも1種の樹脂状オルガノポリシロキサン、および
(AL)分子中にR2
2SiO2/2で表されるシロキサン単位(式中、R2は、前記と同様の基である。)を含有し、かつ、前記の(AR)成分とヒドロシリル化反応またはラジカル反応可能な基であって、炭素数2~20のアルケニル基またはケイ素原子結合水素原子を有する少なくとも1種の鎖状オルガノポリシロキサンを、
(AR)成分または(AL)成分中のヒドロシリル化反応性基および/またはラジカル反応性基が反応後に残存するように設計された比率で反応させて得たオルガノポリシロキサンである。
【0046】
上記(1)において、(AR)成分の少なくとも一部が、炭素数2~20のアルケニル基を有する樹脂状オルガノポリシロキサンである場合、(AL)成分の少なくとも一部はケイ素原子結合水素原子を有する鎖状オルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0047】
同様に、(AR)成分の少なくとも一部が、ケイ素原子結合水素原子を有する樹脂状オルガノポリシロキサンである場合、(AL)成分の少なくとも一部は炭素数2~20のアルケニル基を有する鎖状オルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0048】
このような(A2)成分は、
(a1)成分:下記(a1-1)成分および/または下記(a1-2)成分からなる分子中に炭素数2~20のアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンを有機過酸化物でラジカル反応させたもの、または
(a1)成分と、
(a2)オルガノハイドロジェンポリシロキサンを、
ヒドロシリル化反応用触媒の存在下において、上記(a1)成分に含まれる炭素原子数2~20のアルケニル基に対して、上記(a2)成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.2~0.7モルとなる量でヒドロシリル化反応させたものが好ましい。
【0049】
(a1-1)成分は、分岐単位の量が比較的多いポリシロキサンであり、平均単位式:
(R4
3SiO1/2)a(R4
2SiO2/2)b(R4SiO3/2)c(SiO4/2)d(R5O1/2)e
で表される一分子中にアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンである。式中、R4は、各々独立に、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のハロゲン置換アルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のハロゲン置換アリール基、または炭素数7~20のアラルキル基であり、前記R1と同様の基が例示される。R4は、メチル基、ビニル基、またはフェニル基であることが好ましい。ただし、R4の少なくとも2個はアルケニル基である。また、ホットメルト性が良好であることから、全R4の10モル%以上、あるいは20モル%以上がフェニル基であることが好ましい。また、式中、R5は水素原子または炭素数1~6のアルキル基であり、前記と同様のアルキル基が例示される。
【0050】
また、式中、aは0~0.7の範囲内の数、bは0~0.7の範囲内の数、cは0~0.9の範囲内の数、dは0~0.7の範囲内の数、eは0~0.1の範囲内の数、かつ、c+dは0.3~0.9の範囲内の数、a+b+c+dは1であり、好ましくは、aは0~0.6の範囲内の数、bは0~0.6の範囲内の数、cは0~0.9の範囲内の数、dは0~0.5の範囲内の数、eは0~0.05の範囲内の数、かつ、c+dは0.4~0.9の範囲内の数、a+b+c+dは1である。これは、a、b、およびc+dがそれぞれ上記範囲内の数であると、得られる硬化物の硬度や機械的強度が優れたものとなるからである。
【0051】
このような(a1-1)成分としては、次のオルガノポリシロキサンが例示される。式中、Me、Ph、Viはそれぞれメチル基、フェニル基、ビニル基を表す。
(ViMe2SiO1/2)0.25(PhSiO3/2)0.75(HO1/2)0.02
(ViMe2SiO1/2)0.25(PhSiO3/2)0.75
(ViMe2SiO1/2)0.20(PhSiO3/2)0.80
(ViMe2SiO1/2)0.15(Me3SiO1/2)0.38(SiO4/2)0.47(HO1/2)0.01
(ViMe2SiO1/2)0.13(Me3SiO1/2)0.45(SiO4/2)0.42(HO1/2)0.01
(ViMe2SiO1/2)0.15(PhSiO3/2)0.85(HO1/2)0.01
(Me2SiO2/2)0.15(MeViSiO2/2)0.10(PhSiO3/2)0.75(HO1/2)0.04
(MeViPhSiO1/2)0.20(PhSiO3/2)0.80(HO1/2)0.05
(ViMe2SiO1/2)0.15(PhSiO3/2)0.75(SiO4/2)0.10(HO1/2)0.02
(Ph2SiO2/2)0.25(MeViSiO2/2)0.30(PhSiO3/2)0.45(HO1/2)0.04
(Me3SiO1/2)0.20(ViMePhSiO1/2)0.40(SiO4/2)0.40(HO1/2)0.08
【0052】
(a1-2)成分は、鎖状シロキサン単位の量が比較的多いポリシロキサンであり、平均単位式:
(R4
3SiO1/2)a'(R4
2SiO2/2)b'(R4SiO3/2)c'(SiO4/2)d'(R5O1/2)e'
で表される、一分子中に炭素数2~20のアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンである。式中、R4およびR5は前記と同様の基である。
【0053】
また、式中、a'は0.01~0.3の範囲内の数、b'は0.4~0.99の範囲内の数、c'は0~0.2の範囲内の数、d'は0~0.2の範囲内の数、e'は0~0.1の範囲内の数、かつ、c'+d'は0~0.2の範囲内の数、a'+b'+c'+d'は1であり、好ましくは、a'は0.02~0.20の範囲内の数、b'は0.6~0.99の範囲内の数、c'は0~0.1の範囲内の数、d'は0~0.1の範囲内の数、j'は0~0.05の範囲内の数、かつ、c'+d'は0~0.1の範囲内の数、a'+b'+c'+d'は1である。これは、a'、b'、c'、d'がそれぞれ上記範囲内の数であると、得られる硬化物に強靭性を付与できるからである。
【0054】
このような(a1-2)成分としては、次のオルガノポリシロキサンが例示される。式中、Me、Ph、Viはそれぞれメチル基、フェニル基、ビニル基を表す。
ViMe2SiO(MePhSiO)18SiMe2Vi、すなわち、(ViMe2SiO1/2)0.10(MePhSiO2/2)0.90
ViMe2SiO(MePhSiO)30SiMe2Vi、すなわち、(ViMe2SiO1/2)0.063(MePhSiO2/2)0.937
ViMe2SiO(MePhSiO)150SiMe2Vi、すなわち、(ViMe2SiO1/2)0.013(MePhSiO2/2)0.987
ViMe2SiO(Me2SiO)18SiMe2Vi、すなわち、(ViMe2SiO1/2)0.10(Me2SiO2/2)0.90
ViMe2SiO(Me2SiO)30SiMe2Vi、すなわち、(ViMe2SiO1/2)0.063(Me2SiO2/2)0.937
ViMe2SiO(Me2SiO)35(MePhSiO)13SiMe2Vi、すなわち、(ViMe2SiO1/2)0.04(Me2SiO2/2)0.70(MePhSiO2/2)0.26
ViMe2SiO(Me2SiO)10SiMe2Vi、すなわち、(ViMe2SiO1/2)0.17(Me2SiO2/2)0.83
(ViMe2SiO1/2)0.10(MePhSiO2/2)0.80(PhSiO3/2)0.10(HO1/2)0.02
(ViMe2SiO1/2)0.20(MePhSiO2/2)0.70(SiO4/2)0.10(HO1/2)0.01
HOMe2SiO(MeViSiO)20SiMe2OH
Me2ViSiO(MePhSiO)30SiMe2Vi
Me2ViSiO(Me2SiO)150SiMe2Vi
【0055】
(a1-1)成分は得られる硬化物に硬度と機械的強度を付与するという観点から好ましく用いられる。(a1-2)成分は得られる硬化物に強靭性を付与できるという観点から任意成分として添加できるが、以下の(a2)成分で鎖状シロキサン単位を多く有する架橋剤を用いる場合はそちらで代用してもよい。いずれの場合においても、分岐状シロキサン単位を多く有する成分と鎖状シロキサン単位を多く有する成分の質量比が50:50~100:0の範囲内、あるいは60:40~100:0の範囲内であることが好ましい。これは、分岐状シロキサン単位を多く有する成分と鎖状シロキサン単位を多く有する成分との質量比が上記範囲内の値であると、得られる硬化物の硬度ならびに機械的強度が良好となるからである。
【0056】
なお、(a1)成分を、有機過酸化物によるラジカル反応する場合、(a1-1)成分と(a1-2)成分を10:90~90:10の範囲内で反応させ、(a2)成分を用いなくてもよい。
【0057】
(a2)成分は、ヒドロシリル化反応において、(a1-1)成分および/または(a1-2)成分を架橋するための成分であり、一分子中にケイ素原子結合水素原子を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサンである。(a2)成分中の水素原子以外のケイ素原子に結合する基としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のハロゲン置換アルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のハロゲン置換アリール基、炭素数7~20のアラルキル基、アルコキシ基、エポキシ基含有基、または水酸基が例示され、前記と同様の基が例示される。
【0058】
このような(a2)成分は限定されないが、好ましくは、平均組成式:
R6
kHmSiO(4-k-m)/2
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。式中、R6は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のハロゲン置換アルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のハロゲン置換アリール基、または炭素数7~20のアラルキル基であり、前記R1と同様の基が例示され、好ましくは、メチル基、またはフェニル基である。
【0059】
また、式中、kは1.0~2.5の範囲の数、好ましくは、1.2~2.3の範囲の数であり、mは0.01~0.9の範囲の数、好ましくは、0.05~0.8の範囲の数であり、かつ、k+mは1.5~3.0の範囲の数、好ましくは、2.0~2.7の範囲の数である。
【0060】
(a2)成分は、分岐状シロキサン単位を多く有する樹脂状オルガノハイドロジェンポリシロキサンであってもよく、鎖状シロキサン単位を多く有する鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンであってもよい。具体的には、(a2)成分は、下記(a2-1)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、下記(a2-2)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、またはこれらの混合物が例示される。
【0061】
(a2-1)成分は、平均単位式:
[R7
3SiO1/2]f[R7
2SiO2/2]g[R7SiO3/2]h[SiO4/2]i(R5O1/2)j
で表されるケイ素原子結合水素原子を有する樹脂状オルガノハイドロジェンポリシロキサンである。式中、R7は、各々独立に、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のハロゲン置換アルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のハロゲン置換アリール基、炭素数7~20のアラルキル基、または水素原子であり、前記R1と同様の基が例示される。また、式中、R5は水素原子または炭素数1~6のアルキル基であり、前記と同様の基が例示される。
【0062】
また、式中、fは0~0.7の範囲内の数、gは0~0.7の範囲内の数、hは0~0.9の範囲内の数、iは0~0.7の範囲内の数、jは0~0.1の範囲内の数、かつ、h+iは0.3~0.9の範囲内の数、f+g+h+iは1であり、好ましくは、fは0~0.6の範囲内の数、gは0~0.6の範囲内の数、hは0~0.9の範囲内の数、iは0~0.5の範囲内の数、jは0~0.05の範囲内の数、かつ、h+iは0.4~0.9の範囲内の数、f+g+h+iは1である。
【0063】
(a2-2)成分は、平均単位式:
(R7
3SiO1/2)f'(R7
2SiO2/2)g'(R7SiO3/2)h'(SiO4/2)i'(R5O1/2)j'
で表される、一分子中にケイ素原子結合水素原子を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンである。式中、R7およびR5は前記と同様の基である。
【0064】
また、式中、f'は0.01~0.3の範囲内の数、g'は0.4~0.99の範囲内の数、h'は0~0.2の範囲内の数、i'は0~0.2の範囲内の数、j'は0~0.1の範囲内の数、かつ、h'+i'は0~0.2の範囲内の数、f'+g'+h'+i'は1であり、好ましくは、f'は0.02~0.20の範囲内の数、g'は0.6~0.99の範囲内の数、h'は0~0.1の範囲内の数、i'は0~0.1の範囲内の数、j'は0~0.05の範囲内の数、かつ、h'+i'は0~0.1の範囲内の数、f'+g'+h'+i'は1である。
【0065】
上記のとおり、(a2)成分において、分岐状シロキサン単位を多く有するレジン状のオルガノポリシロキサンは、硬化物に硬度と機械的強度を付与し、鎖状シロキサン単位を多く有する得られるオルガノポリシロキサンは、硬化物に強靭性を付与するものであるので、(a2)成分として(a2-1)成分と(a2-2)成分を適宜用いることが好ましい。具体的には、(a1)成分中に分岐状シロキサン単位が少ない場合には、(a2)成分として(a2-1)成分を主に用いることが好ましく、(a1)成分中に鎖状シロキサン単位が少ない場合には、(a2-2)成分を主に用いることが好ましい。(a2)成分は、(a2-1)成分と(a2-2)成分の質量比が50:50~100:0の範囲内、あるいは60:40~100:0の範囲内であることが好ましい。
【0066】
このような(a2)成分としては、次のオルガノポリシロキサンが例示される。式中、Me、Phはそれぞれメチル基、フェニル基を表す。
Ph2Si(OSiMe2H)2、すなわち、Ph0.67Me1.33H0.67SiO0.67
HMe2SiO(Me2SiO)20SiMe2H、すなわち、Me2.00H0.09SiO0.95
HMe2SiO(Me2SiO)55SiMe2H、すなわち、Me2.00H0.04SiO0.98
PhSi(OSiMe2H)3、すなわち、Ph0.25Me1.50H0.75SiO0.75
(HMe2SiO1/2)0.6(PhSiO3/2)0.4、すなわち、Ph0.40Me1.20H0.60SiO0.90
【0067】
(a2)成分の添加量は、(a1)成分中のアルケニル基に対して、(a2)成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.2~0.7となる量であり、好ましくは、0.3~0.6となる量である。これは、(a2)成分の添加量が上記範囲内であると、得られる硬化物の初期の硬度および機械的強度が良好となるためである。
【0068】
(a1)成分をラジカル反応するために用いる有機過酸化物は限定されず、下記(C)成分で例示する有機過酸化物を用いることができる。ラジカル反応する際、(a1)成分は、(a1-1)成分と(a1-2)成分の質量比が10:90~90:10の範囲内の混合物であることが好ましい。なお、有機過酸化物の添加量は限定されないが、(a1)成分100質量部に対して、0.1~5質量部の範囲内、0.2~3質量部の範囲内、あるいは0.2~1.5質量部の範囲内であることが好ましい。
【0069】
また、(a1)成分と(a2)成分とをヒドロシリル化反応するために用いるヒドロシリル化反応用触媒は限定されず、下記(C)成分で例示するヒドロシリル化反応用触媒を用いることができる。なお、ヒドロシリル化反応用触媒の添加量は、(a1)成分と(a2)成分の合計量に対して、ヒドロシリル化反応用触媒中の白金系金属原子が質量単位で、0.01~500ppmの範囲内、0.01~100ppmの範囲内、あるいは0.01~50ppmの範囲内となる量であることが好ましい。
【0070】
上記(A3)成分は、下記(a3)成分および下記(a4)成分を、縮合反応用触媒により縮合反応させたものである。
【0071】
(a3)成分は、平均単位式:
(R8
3SiO1/2)p(R8
2SiO2/2)q(R8SiO3/2)r(SiO4/2)s(R9O1/2)t
で表される縮合反応性のオルガノポリシロキサンである。式中、R8は、各々独立に、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のハロゲン置換アルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のハロゲン置換アリール基、または炭素数7~20のアラルキル基であり、前記と同様の基が例示される。また、式中のR9は水素原子、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数2~5のアシル基であり、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;アシルオキシ基が例示される。(a3)成分は、一分子中に少なくとも1個のケイ素原子結合水酸基、ケイ素原子結合アルコキシ基、またはケイ素原子結合アシロキシ基を有する。また、一分子中、少なくとも2個のR8はアルケニル基であり、全R8の10モル%以上、または20モル%以上がフェニル基であることが好ましい。
【0072】
式中、pは0~0.7の範囲内の数、qは0~0.7の範囲内の数、rは0~0.9の範囲内の数、sは0~0.7の範囲内の数、tは0.01~0.10の範囲内の数、かつ、r+sは0.3~0.9の範囲内の数、p+q+r+sは1であり、好ましくは、pは0~0.6の範囲内の数、qは0~0.6の範囲内の数、rは0~0.9の範囲内の数、sは0~0.5の範囲内の数、tは0.01~0.05の範囲内の数、かつ、r+sは0.4~0.9の範囲内の数である。これは、p、q、およびr+sがそれぞれ上記範囲内の数であると、25℃において柔軟性を持ちつつも、非流動性で、表面粘着性が低く、高温での溶融粘度が十分に低いホットメルト性のシリコーンが得られるからである。
【0073】
(a4)成分は、平均単位式:
(R8
3SiO1/2)p'(R8
2SiO2/2)q'(R8SiO3/2)r'(SiO4/2)s'(R9O1/2)t'
で表される縮合反応性のオルガノポリシロキサンである。式中、R8およびR9は前記と同様の基である。(a4)成分は、一分子中に少なくとも1個のケイ素原子結合水酸基、ケイ素原子結合アルコキシ基、またはケイ素原子結合アシロキシ基を有する。また、式中、p'は0.01~0.3の範囲内の数、q'は0.4~0.99の範囲内の数、r'は0~0.2の範囲内の数、s'は0~0.2の範囲内の数、t'は0~0.1の範囲内の数、かつ、r'+s'は0~0.2の範囲内の数、p'+q'+r'+s'は1であり、好ましくは、p'は0.02~0.20の範囲内の数、q'は0.6~0.99の範囲内の数、r'は0~0.1の範囲内の数、s'は0~0.1の範囲内の数、t'は0~0.05の範囲内の数、かつ、r'+s'は0~0.1の範囲内の数である。これは、p'、q'、r'、s'がそれぞれ上記範囲内の数であると、25℃において柔軟性を持ちつつも、非流動性で、表面粘着性が低く、高温での溶融粘度が十分に低いホットメルト性のシリコーンが得られるからである。
【0074】
(a3)成分と(a4)成分を縮合反応するための縮合反応用触媒は限定されず、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、オクテン酸錫、ジブチル錫ジオクテート、ラウリン酸錫等の有機錫化合物;テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート、ジブトキシビス(エチルアセトアセテート)等の有機チタン化合物;その他、塩酸、硫酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等の酸性化合物;アンモニア、水酸化ナトリウム等のアルカリ性化合物;1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン(DBU)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)等のアミン系化合物が例示され、好ましくは、有機錫化合物、有機チタン化合物である。
【0075】
また、(A3)成分は、樹脂状オルガノシロキサンブロックと鎖状オルガノシロキサンブロックからなるブロックコポリマーである。このような(A3)成分は、好ましくは、40~90モル%の式[R1
2SiO2/2]のジシロキシ単位、10~60モル%の式[R1SiO3/2]のトリシロキシ単位からなり、0.5~35モル%のシラノール基[≡SiOH]を含むことが好ましい。ここで、R1は、各々独立に、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のハロゲン置換アルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のハロゲン置換アリール基、または炭素数7~20のアラルキル基であり、前記と同様の基が例示される。一分子中、少なくとも2個のR1はアルケニル基である。また、前記ジシロキシ単位[R1
2SiO2/2]は、1つの直鎖ブロック当たりに平均して100~300個のジシロキシ単位を有する直鎖ブロックを形成し、前記トリシロキシ単位[R1SiO3/2]は、少なくとも500g/モルの分子量を有する非直鎖ブロックを形成し、少なくとも30%の非直鎖ブロックが互いに結合しており、各直鎖ブロックは、少なくとも1つの非直鎖ブロックと-Si-O-Si-結合を介して結合しており、少なくとも20000g/モルの質量平均分子量を有し、0.5~4.5モル%の少なくとも1つのアルケニル基を含む、樹脂状オルガノシロキサンブロック共重合体である。
【0076】
(A3)成分は、(a5)樹脂状オルガノシロキサンまたは樹脂状オルガノシロキサンブロック共重合体と、(a6)鎖状オルガノシロキサン、さらに必要に応じて(a7)シロキサン化合物を縮合反応して調製される。
【0077】
(a5)成分は、平均単位式:
[R1
2R2SiO1/2]i[R1R2SiO2/2]ii[R1SiO3/2]iii[R2SiO3/2]iv[SiO4/2]v
で表される樹脂状オルガノシロキサンである。式中、R1は、各々独立に、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のハロゲン置換アルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のハロゲン置換アリール基、または炭素数7~20のアラルキル基であり、前記と同様の基が例示される。また、式中、R2は、各々独立に、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のハロゲン置換アルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のハロゲン置換アリール基、または炭素数7~20のアラルキル基であり、前記R1と同様の基が例示される。
【0078】
また、式中、i、ii、iii、iv、およびvは、各シロキシ単位のモル分率を表し、iは0~0.6の数であり、iiは0~0.6の数であり、iiiは0~1の数であり、ivは0~1の数であり、vは0~0.6の数であり、ただし、ii+iii+iv+v>0であり、かつ、i+ii+iii+iv+v≦1である。また、(a5)成分は、一分子中に0~35モル%のシラノール基[≡SiOH]を含むことが好ましい。
【0079】
(a6)成分は、一般式:
R1
3-α(X)αSiO(R1
2SiO)βSi(X)αR1
3-α
で表される直鎖状のオルガノシロキサンである。式中、R1は前記と同じであり、前記と同様の基が例示される。また、式中、Xは、-OR5、F、Cl、Br、I、-OC(O)R5、-N(R5)2、または-ON=CR5
2(ここで、R5は水素原子または炭素数1~6のアルキル基である。)から選択される加水分解性基である。また、式中、αは、各々独立して、1、2、または3であり、βは50~300の整数である。
【0080】
(a7)成分は、一般式:
R1R2
2SiX
で表されるシロキサン化合物である。式中、R1、R2、およびXは前記と同様の基である。
【0081】
(a5)成分と(a6)成分および/または(a7)成分を縮合反応するための縮合反応用触媒は限定されず、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、オクテン酸錫、ジブチル錫ジオクテート、ラウリン酸錫等の有機錫化合物;テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート、ジブトキシビス(エチルアセトアセテート)等の有機チタン化合物;その他、塩酸、硫酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等の酸性化合物;アンモニア、水酸化ナトリウム等のアルカリ性化合物;1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン(DBU)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)等のアミン系化合物が例示される。
【0082】
本発明において、特に好適な(A1)成分は、(A3)樹脂状オルガノシロキサンブロックと鎖状オルガノシロキサンブロックからなるブロックコポリマーであって、分子内のRSiO3/2(式中、Rは一価有機基)で表されるシロキサン単位およびSiO4/2で表されるシロキサン単位から選ばれるシロキサン単位が全シロキサン単位の25~75モル%の範囲であり、かつ、分子内にRASiO3/2(式中、RAは炭素原子数6~20のアリール基)で表されるシロキサン単位を有するものである。
【0083】
特に好適には、(A1)成分は、分子内の全有機基の10モル%以上、好適には15~50モル%がアリール基、特に、フェニル基であり、ホットメルト性を有するオルガノポリシロキサン微粒子の形態である。一方、本発明において、(A1)成分が上記の構造を充足する限り制限なく使用できるが、(A1)成分の構造は、組成物全体の硬化挙動に大きく影響するため、(A1)成分全体の融点が200℃以下であることが好ましい。一方、R’3SiO1/2で表されるシロキサン単位(M単位、R’はアリール基以外の有機基)およびSiO4/2で表されるシロキサン単位(Q単位)からなる、所謂MQレジンは一般に200℃を超える融点を有する場合が多いため、分子内の全有機基に占めるアリール基、特に、フェニル基の含有量が高く、融点が200℃未満である他の(A1)成分と適当な比率で混合することにより、混合物である(A1)成分の融点を200℃以下、好適には25℃~200℃の範囲に設計する事が好ましい。高融点のMQレジン成分が多くなると、本発明の組成物の硬化挙動をMDRにより測定した場合、その損失正接(tanδ)が高くなる傾向があり、本発明の課題解決手段として不適当になる場合がある。
【0084】
本発明の組成物にホットメルト性を付与したい場合、(A1)成分は、微粒子状のオルガノポリシロキサン樹脂とすることが好ましく、好適には、レーザー回折・散乱法等を用いて測定される平均一次粒子径が1~20μmの真球状のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子である。かかる微粒子成分を用いることで、本組成物を取り扱い作業性およびホットメルト性に優れたホットメルト性の硬化性組成物として調製ないし生産することができる。当該製造方法は、(A)成分を単に微粒子化する方法、あるいは少なくとも2種類のオルガノポリシロキサンを架橋させる工程と、その反応物を微粒子化する工程を同時にまたは別々に行う方法が挙げられる。
【0085】
微粒子状の(A1)成分を製造する方法は、例えば、上記のオルガノポリシロキサン樹脂を、粉砕機を用いて粉砕する方法や、溶剤存在下において直接微粒子化する方法が挙げられる。粉砕機は限定されないが、例えば、ロールミル、ボールミル、ジェットミル、ターボミル、遊星ミルが挙げられる。また、前記オルガノポリシロキサン樹脂を溶剤存在下において直接微粒子化する方法としては、例えば、スプレードライヤーによるスプレー、あるいは2軸混練機やベルトドライヤーによる微粒子化が挙げられる。なお、微粒子状のポリオルガノシロキサンを得る際に、構造の異なる(A1)成分、その他のオルガノポリシロキサン成分、並びに後述の硬化触媒、例えば、ヒドロシリル化反応触媒等を一緒に微粒子化しても良いが、得られる組成物の保存安定性の観点から、熱により硬化可能な混合物を微粒子化するのは避けた方が良い。具体的には(A1)成分、その他の(A)成分、及び(C)成分の一部を微粒子し、残りの成分は後述の方法で組成物を得る際に添加することが好ましい。本発明においては、スプレードライヤーによるスプレーにより得られた真球状のホットメルト性シリコーン微粒子を用いることが、粒状配合物の溶融特性、硬化物の柔軟性、(B)成分の配合量、製造時の効率および組成物の取扱い作業性の見地から特に好ましい。
【0086】
スプレードライヤー等の使用により、真球状で、かつ、平均一次粒子径が1~500μmである(A)成分または(A1)成分を製造することができる。なお、スプレードライヤーの加熱・乾燥温度は、シリコーン微粒子の耐熱性等に基づいて適宜設定する必要がある。なお、シリコーン微粒子の二次凝集を防止するため、シリコーン微粒子の温度をそのガラス転移温度以下に制御することが好ましい。このようにして得られたシリコーン微粒子は、サイクロン、バッグフィルター等で回収できる。
【0087】
均一な(A)成分または(A1)成分を得る目的で、上記工程において、硬化反応を阻害しない範囲内で溶剤を用いてもよい。溶剤は限定されないが、n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン、ジプロピルエーテル等のエーテル類;ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン等のシリコーン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類が例示される。
【0088】
(A)成分は、上記の(A1)成分以外の硬化反応性オルガノポリシロキサンを含んでもよい。例えば、RSiO3/2(式中、Rは一価有機基)で表されるシロキサン単位およびSiO4/2で表されるシロキサン単位の含有量が20モル%未満であり、分子内に分子内に少なくとも1個、好適には2個以上の炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有する、直鎖状または分岐鎖状のオルガノポリシロキサンが例示できる。硬化反応性の官能基の種類は前記同様の基が例示できるが、ヒドロシリル化反応性または有機過酸化物硬化性の官能基であって、特にビニル基またはヘキセニル基であることが好ましい。また、硬化反応性の官能基の結合部位は分子鎖末端であってもよく、シロキサン分子鎖の側鎖(ペンダント部位)であってもよい。また、炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基以外の官能基は特に制限されるものではないが、ハロゲン原子で置換されてもよいアルキル基、アリール基、水酸基またはアルコキシ基であってよい。
【0089】
[(B)成分]
本発明の(B)成分である機能性フィラーは、硬化物の機械的特性やその他の特性を付与する成分であり、加熱溶融(ホットメルト)後の高温下において硬化した場合、硬化物に所望の機能を有し、(B)成分の選択および配合量に応じて、室温から高温で硬質性および強靭性に優れた硬化物を与えることができる。(B)成分として、無機フィラー、有機フィラー、およびこれらの混合物が例示される。この無機フィラーとしては、補強性フィラー、白色顔料、熱伝導性フィラー、導電性フィラー、蛍光体、およびこれらの少なくとも2種の混合物が例示され、有機フィラーとしては、シリコーン樹脂系フィラー、フッ素樹脂系フィラー、ポリブタジエン樹脂系フィラーが例示される。なお、これらのフィラーの形状は特に制限されるものではなく、球状、紡錘状、扁平状、針状、不定形等であってよい。
【0090】
本組成物を封止剤、保護剤、接着剤、光反射材等の用途で使用する場合には、硬化物の機械的強度、保護性および接着性の改善の見地から、(B)成分の少なくとも一部に、補強性フィラーを含むことが好ましい。
【0091】
補強性フィラーは硬化物の機械的強度を向上させ、保護性および接着性を改善させるほか、硬化前の硬化性粒状シリコーン組成物のバインダーフィラーとして固体粒子状を維持する目的で添加しても良い。このような補強性フィラーとしては、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、溶融シリカ、焼成シリカ、ヒュームド二酸化チタン、石英、炭酸カルシウム、ケイ藻土、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸亜鉛が例示される。また、これらの補強性フィラーを、メチルトリメトキシシラン等のオルガノアルコキシシラン;トリメチルクロロシラン等のオルガノハロシラン;ヘキサメチルジシラザン等のオルガノシラザン;α,ω-シラノール基封鎖ジメチルシロキサンオリゴマー、α,ω-シラノール基封鎖メチルフェニルシロキサンオリゴマー、α,ω-シラノール基封鎖メチルビニルシロキサンオリゴマー等のシロキサンオリゴマー等により表面処理してもよい。この補強性フィラーの粒子径は限定されないが、レーザー回折散乱式粒度分布測定によるメジアン径が1nm~500μmの範囲内であることが好ましい。さらに、補強性フィラーとして、メタケイ酸カルシウム、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、セピオライト、ゾノライト、ホウ酸アルミニウム、ロックウール、ガラスファイバー等の繊維状フィラーを用いてもよい。
【0092】
ここで、(B)成分は、平均粒子径10.0μm以上の粗大粒子を実質的に含まない無機フィラーであることが好ましく、特に本発明のトランスファー成型用硬化性シリコーン組成物がホットメルト性である場合、溶融時のギャップフィル性に優れ、硬化して室温から高温で柔軟な硬化物を与える硬化性シリコーン組成物を提供することができる。ここで、平均粒子径10.0μm以上または5.0μm以上の粗大粒子を実質的に含まないとは、電子顕微鏡等で(B)成分を観察した場合に粒子の長径において平均粒子径10.0μm以上または5.0μm以上の粗大粒子が観察されないか、レーザー回折散乱式粒度分布測定等により(B)成分の粒子径分布を測定した場合に平均粒子径10.0μm以上または5.0μm以上の粗大粒子の体積比率が1%未満であることをいう。
【0093】
また、本発明のトランスファー成型用硬化性シリコーン組成物がホットメルト性である場合、溶融時の良好なギャップフィル性を付与し、硬化物の室温~高温における柔軟性を付与する見地から、(B)成分は、(b1)平均粒子径0.1μm以下の無機フィラー、好適には補強性フィラーと(b2)平均粒子径0.1~5.0μmのの無機フィラー、好適には補強性フィラーの混合物であることが好ましい。両者の配合比は任意であるが、1/99~20/80、1/99~50/50、または5/95~40/60の質量比であってよい。特に、(b1-1)平均粒子径0.1μm以下、好適には0.05μm以下のフュームドシリカと(b2-1)平均粒子径0.1~5.0μm、好適には0.15~4.0μmの溶融シリカを、1/99~20/80で含有するものでよく、好適には、1/99~50/50、より好適には、5/95~40/60の質量比で含有することが好ましい。特に、かかる無機フィラーの混合物の粒子が、(A)成分であるホットメルト性オルガノポリシロキサン微粒子の粒子径と同じ又は小さいサイズとなる場合、溶融時に良好なシリコーンーフィラーマトリックスを形成できる。これにより硬化物の柔軟性及び機械的強度が改善される。また、実質的に粗大粒子を含有しないため、良好なギャップフィル性も達成できる。
【0094】
さらに、本組成物を用いて得る硬化物に他の機能を付与する目的で、白色顔料、熱伝導性フィラー、導電性フィラー、または蛍光体を配合しても良い。また、硬化物の応力緩和特性の改善等の目的でシリコーンエラストマー微粒子等の有機フィラーを配合しても良い。
【0095】
白色顔料は硬化物に白色度を付与し、光反射性を向上させること成分であり、当該成分の配合により本組成物を硬化させてなる硬化物を発光/光学デバイス用の光反射材として利用することができる。この白色顔料としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等の金属酸化物;ガラスバルーン、ガラスビーズ等の中空フィラー;その他、硫酸バリウム、硫酸亜鉛、チタン酸バリウム、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド、酸化アンチモンが例示される。光反射率と隠蔽性が高いことから、酸化チタンが好ましい。また、UV領域の光反射率が高いことから、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、チタン酸バリウムが好ましい。この白色顔料の平均粒径や形状は限定されないが、平均粒径は0.05~10.0μmの範囲内、あるいは0.1~5.0μmの範囲内であることが好ましい。また、この白色顔料をシランカップリング剤、シリカ、酸化アルミニウム等で表面処理してもよい。
【0096】
熱伝導性フィラーまたは導電性フィラーは、硬化物に熱伝導性/導電性(電気伝導性)を付与する目的で添加され、具体的には、金、銀、ニッケル、銅、アルミニウム等の金属微粉末;セラミック、ガラス、石英、有機樹脂等の微粉末表面に金、銀、ニッケル、銅等の金属を蒸着またはメッキした微粉末;酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛等の金属化合物;グラファイト、およびこれらの2種以上の混合物が例示される。本組成物に電気絶縁性が求められる場合には、金属酸化物系粉末、または金属窒化物系粉末が好ましく、特に、酸化アルミニウム粉末、酸化亜鉛粉末、または窒化アルミニウム粉末が好ましく、これらを熱伝導性/導電性の要求に応じて種類、粒子径、粒子形状等を組み合わせて用いても良い。
【0097】
蛍光体は、硬化物を波長変換材料に用いる場合に、光源(光半導体素子)からの発光波長を変換するために配合される成分である。この蛍光体としては、特に制限はなく、発光ダイオード(LED)に広く利用されている、酸化物系蛍光体、酸窒化物系蛍光体、窒化物系蛍光体、硫化物系蛍光体、酸硫化物系蛍光体等からなる黄色、赤色、緑色、および青色発光蛍光体が例示される。
【0098】
シリコーン微粒子は、非反応性のシリコーンレジン微粒子およびシリコーンエラストマー微粒子が挙げられるが、硬化物の柔軟性または応力緩和特性の改善の見地から、シリコーンエラストマー微粒子が好適に例示される。
【0099】
シリコーンエラストマー微粒子は、主としてジオルガノシロキシ単位(D単位)からなる直鎖状ジオルガノポリシロキサンの架橋物である。シリコーンエラストマー微粒子は、ヒドロシリル化反応やシラノール基の縮合反応等によるジオルガノポリシロキサンの架橋反応により調製することができ、中でも、側鎖又は末端に珪素結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと側鎖又は末端にアルケニル基等の不飽和炭化水素基を有するジオルガノポリシロキサンを、ヒドロシリル化反応触媒下で架橋反応させることによって好適に得ることができる。シリコーンエラストマー微粒子は、球状、扁平状、及び不定形状等種々の形状を取りうるが、分散性の点から球状であることが好ましく、中でも真球状であることがより好ましい。こうしたシリコーンエラストマー微粒子の市販品としては、例えば、東レ・ダウコーニング社製の「トレフィルEシリーズ」、「EPパウダーシリーズ」、信越化学工業社製の「KMPシリーズ」等を挙げることができる。
【0100】
以上のような機能性フィラーを本組成物中に安定的に配合する目的等で、特定の表面処理剤を(B)成分全体の質量に対して、0.1~2.0質量%、0.1~1.0質量%、0.2~0.8質量%の範囲で用いて、フィラー表面処理がなされていても良い。これらの表面処理剤の例としては、例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、シリコーンレジン、金属石鹸、シランカップリング剤、パーフルオロアルキルシラン、及びパーフルオロアルキルリン酸エステル塩等のフッ素化合物等であってよい。
【0101】
(B)成分の含有量は限定されないが、得られる硬化物の硬さや機械的強度が優れることから、本発明の組成物において、(B)成分の含有量は組成物全体の10~40体積%の範囲内であることが好ましく、より好適には10~30体積%の範囲である。(B)成分の含有量が前記上限以上になると得られる硬化物が硬くなる傾向にあり、当該組成物のMDRの測定により得られる最大トルク値が高くなる傾向があり、本発明の課題解決について不適当になる場合がある。
【0102】
[(C)成分]
(C)成分は、(A)成分を硬化するための硬化剤であり、(A)成分を硬化できるものであれば限定されないが、以下の(c1)または(c2)から選ばれる1種類以上の硬化剤であることが好ましい。なお、これらの硬化剤は2種類以上を併用してもよく、たとえば、(c1)成分と(c2)成分を共に含む硬化系であってもよい。
(c1)有機過酸化物
(c2)分子内に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンおよびヒドロシリル化反応触媒
【0103】
(c1)有機過酸化物は加熱により、上記の(A)成分を硬化させる成分であり、過酸化アルキル類、過酸化ジアシル類、過酸化エステル類、および過酸化カーボネート類が例示される。
【0104】
過酸化アルキル類としては、ジクミルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、tert-ブチルクミル、1,3-ビス(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリパーオキソナンが例示される。
【0105】
過酸化ジアシル類としては、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイドが例示される。
【0106】
過酸化エステル類としては、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、α-クミルパーオキシネオデカノエート、tert-ブチルパーオキシネオデカノエート、tert-ブチルパーオキシネオヘプタノエート、tert-ブチルパーオキシピバレート、tert-ヘキシルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-アミルパーオキシル-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシイソブチレート、ジ-tert-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、tert-アミルパーオキシ-3,5,5―トリメチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシ-3,5,5―トリメチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシアセテート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-ブチルパーオキシトリメチルアディペートが例示される。
【0107】
過酸化カーボネート類としては、ジ-3-メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、tert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジセチルパーオキシジカーボネート、ジミリスチルパーオキシジカーボネートが例示される。
【0108】
この有機過酸化物は、その半減期が10時間である温度が90℃以上、あるいは95℃以上であるものが好ましい。このような有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3-ビス(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ-(2-t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリパーオキソナンが例示される。
【0109】
(c1)有機過酸化物の含有量は限定されないが、(A)100質量部に対して、0.05~10質量部の範囲内、あるいは0.10~5.0質量部の範囲内であることが好ましい。
【0110】
(c2)分子内に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンおよびヒドロシリル化反応触媒は、架橋剤であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンがヒドロシリル化反応触媒の存在下、(A)成分中の炭素-炭素二重結合と付加反応(ヒドロシリル化反応)することにより、組成物を硬化させる成分である。
【0111】
このような(c2)成分の一部であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、その分子構造において得に限定されず、前記の(a2)成分、特に(a2-1)成分として例示した鎖状のオルガノハイドロジェンポリシロキサン、および(a2-2)成分として例示したオルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂、またはこれらの混合物から選ばれる1種類以上であってよい。特に、少なくとも分子鎖両末端にケイ素原子結合水素原子を有する、シロキサン重合度2~200、好適には3~100の直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンが好ましく、その好適な例は以下のとおりである。式中、Me、Phはそれぞれメチル基、フェニル基を表す。
Ph2Si(OSiMe2H)2、すなわち、Ph0.67Me1.33H0.67SiO0.67
HMe2SiO(Me2SiO)20SiMe2H、すなわち、Me2.00H0.09SiO0.95
HMe2SiO(Me2SiO)55SiMe2H、すなわち、Me2.00H0.04SiO0.98
PhSi(OSiMe2H)3、すなわち、Ph0.25Me1.50H0.75SiO0.75
(HMe2SiO1/2)0.6(PhSiO3/2)0.4、すなわち、Ph0.40Me1.20H0.60SiO0.90
【0112】
(c2)成分の一部であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンの含有量は、本発明の硬化性粒状シリコーン組成物を硬化させるのに十分な量であり、(A)成分中の炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基(例えば、ビニル基等のアルケニル基)に対し、オルガノハイドロジェンポリシロキサン中の珪素原子結合水素原子のモル比が0.5以上となる量であり、0.5~20の範囲となる量が好ましい。特に(c2)成分が上記のオルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂を含む場合、(A)成分中の炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基に対する、当該オルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂中の珪素原子結合水素原子のモル比が0.5~20の範囲となる量、あるいは1.0~10の範囲となる量であることが好ましい。
【0113】
(c2)成分の一部であるヒドロシリル化反応用触媒としては、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒が例示され、本組成物の硬化を著しく促進できることから白金系触媒が好ましい。この白金系触媒としては、白金微粉末、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金-アルケニルシロキサン錯体、白金-オレフィン錯体、白金-カルボニル錯体、およびこれらの白金系触媒を、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂で分散あるいはカプセル化した触媒が例示され、特に、白金-アルケニルシロキサン錯体が好ましい。このアルケニルシロキサンとしては、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのメチル基の一部をエチル基、フェニル基等で置換したアルケニルシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのビニル基をアリル基、ヘキセニル基等で置換したアルケニルシロキサンが例示される。特に、この白金-アルケニルシロキサン錯体の安定性が良好であることから、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンであることが好ましく、当該錯体のアルケニルシロキサン溶液の形態で添加することが好ましい。加えて、取扱作業性および組成物のポットライフの改善の見地から、熱可塑性樹脂で分散あるいはカプセル化した微粒子状の白金含有ヒドロシリル化反応触媒を用いてもよい。なお、ヒドロシリル化反応を促進する触媒としては、鉄、ルテニウム、鉄/コバルトなどの非白金系金属触媒を用いてもよい。
【0114】
(c2)成分の一部であるヒドロシリル化反応用触媒の添加量は、組成物全体に対して、金属原子が質量単位で0.01~500ppmの範囲内となる量、0.01~100ppmの範囲内となる量、あるいは、0.01~50ppmの範囲内となる量であることが好ましい。
【0115】
特に好適な(c2)成分は、
(c2-1)分子鎖両末端にケイ素原子結合水素原子を有するジメチルオルガノポリシロキサンおよびヒドロシリル化反応触媒を少なくとも含むものである。
【0116】
本発明の硬化性粒状シリコーン組成物は上記の(A)~(C)成分を含有してなるものであるが、その溶融特性をさらに改善する見地から、(D)滴点が50℃以上であり、150℃での回転粘度計により測定される溶融粘度が10Pas以下であるホットメルト性の粒子を添加してもよく、かつ、好ましい。
【0117】
上記の滴点の条件及び150℃における溶融時の動粘度の条件を満たす限り、(D)成分の種類は特に制限されるものではなく、各種のホットメルト性の合成樹脂、ワックス類、脂肪酸金属塩等から選ばれる1種類以上が使用できる。当該(D)成分は、高温(150℃)において低い動粘度を呈し、流動性に優れた溶融物を形成する。さらに上記の(A)~(C)成分を併用することにより、本組成物からなる溶融物内の(D)成分は、高温下で組成物全体に速やかに広がることにより、溶融した組成物が適用された基材面と組成物全体の粘度を低下させると共に、基材および溶融組成物の表面摩擦を急激に低下させ、組成物全体の流動性を大幅に上昇させる効果を呈する。このため、他の成分の総量に対して、ごく少量添加するだけで、溶融組成物の粘度および流動性を大きく改善することができる。
【0118】
(D)成分は、上記の滴点及び溶融時の動粘度の条件を満たす限り、パラフィン等の石油系ワックス類であってもよいが、本発明の技術的効果の見地から、脂肪酸金属塩からなるホットメルト成分であることが好ましく、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、イソノナン酸等の高級脂肪酸の金属塩が特に好ましい。ここで、上記の脂肪酸金属塩の種類も特に制限されるものではないが、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;マグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属塩;または亜鉛塩が好適に例示される。
【0119】
(D)成分として、特に好適には、(D0)遊離脂肪酸量が5.0%以下の脂肪酸金属塩であり、4.0%以下であり、0.05~3.5%の脂肪酸金属塩がより好ましい。このような(D0)成分として、例えば、少なくとも1種以上のステアリン酸金属塩が例示される。本発明の技術的効果の見地から、(D0)成分は、実質的に1種以上のステアリン酸金属塩のみからなることが好ましく、ステアリン酸カルシウム(融点150℃)、ステアリン酸亜鉛(融点120℃)、およびステアリン酸マグネシウム(融点130℃)から選ばれる、融点が150℃以下のホットメルト成分の使用が最も好ましい。
【0120】
(D)成分の使用量は、組成物全体を100質量部とした場合、(D0)成分の含有量が0.01~5.0質量部の範囲であり、0.01~3.5質量部、0.01~3.0質量部であってよい。(D)成分の使用量が前記の上限を超えると、本発明のトランスファー成型用硬化性シリコーン組成物から得られる硬化物の接着性および機械的強度が不十分となる場合がある。また、(D)成分の使用量が前記の下限未満では、加熱溶融時の十分な流動性が実現できない場合がある。
【0121】
また、本組成物には、本発明の目的を損なわない限り、その他任意の成分として、硬化遅延剤や接着付与剤を含有してもよい。
【0122】
硬化遅延剤としては、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、2-フェニル-3-ブチン-2-オール、1-エチニル-1-シクロヘキサノール等のアルキンアルコール;3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン等のエンイン化合物;テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラヘキセニルシクロテトラシロキサン等のアルケニル基含有低分子量シロキサン;メチル-トリス(1,1-ジメチルプロピニルオキシ)シラン、ビニル-トリス(1,1-ジメチルプロピニルオキシ)シラン等のアルキニルオキシシランが例示される。この硬化遅延剤の含有量は限定されないが、本組成物に対して、質量単位で、10~10000ppmの範囲内であることが好ましい。
【0123】
接着付与剤としては、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を一分子中に少なくとも1個有する有機ケイ素化合物が好ましい。このアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基が例示され、特に、メトキシ基が好ましい。また、有機ケイ素化合物中のアルコキシ基以外のケイ素原子に結合する基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル基等のハロゲン置換もしくは非置換の一価炭化水素基;3-グリシドキシプロピル基、4-グリシドキシブチル基等のグリシドキシアルキル基;2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピル基等のエポキシシクロヘキシルアルキル基;3,4-エポキシブチル基、7,8-エポキシオクチル基等のエポキシアルキル基;3-メタクリロキシプロピル基等のアクリル基含有一価有機基;水素原子が例示される。この有機ケイ素化合物は本組成物中のアルケニル基またはケイ素原子結合水素原子と反応し得る基を有することが好ましく、具体的には、ケイ素原子結合水素原子またはアルケニル基を有することが好ましい。また、各種の基材に対して良好な接着性を付与できることから、この有機ケイ素化合物は一分子中に少なくとも1個のエポキシ基含有一価有機基を有するものであることが好ましい。こうした有機ケイ素化合物としては、オルガノシラン化合物、オルガノシロキサンオリゴマー、アルキルシリケートが例示される。このオルガノシロキサンオリゴマーあるいはアルキルシリケートの分子構造としては、直鎖状、一部分枝を有する直鎖状、分枝鎖状、環状、網状が例示され、特に、直鎖状、分枝鎖状、網状であることが好ましい。有機ケイ素化合物としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン化合物;一分子中にケイ素原子結合アルケニル基もしくはケイ素原子結合水素原子、およびケイ素原子結合アルコキシ基をそれぞれ少なくとも1個ずつ有するシロキサン化合物、ケイ素原子結合アルコキシ基を少なくとも1個有するシラン化合物またはシロキサン化合物と一分子中にケイ素原子結合ヒドロキシ基とケイ素原子結合アルケニル基をそれぞれ少なくとも1個ずつ有するシロキサン化合物との混合物、アミノ基含有オルガノアルコキシシランとエポキシ基含有オルガノアルコキシシランとの反応混合物、一分子中に少なくとも二つのアルコキシシリル基を有し,かつそれらのシリル基の間にケイ素-酸素結合以外の結合が含まれている有機化合物、一般式: Ra
nSi(ORb)4-n
(式中、Raは一価のエポキシ基含有有機基であり、Rbは炭素原子数1~6のアルキル基または水素原子である。nは1~3の範囲の数である)
で表されるエポキシ基含有シランまたはその部分加水分解縮合物、ビニル基含有シロキサンオリゴマー(鎖状または環状構造のものを含む)とエポキシ基含有トリアルコキシシランとの反応混合物、メチルポリシリケート、エチルポリシリケート、エポキシ基含有エチルポリシリケートが例示される。この接着付与剤は低粘度液状であることが好ましく、その粘度は限定されないが、25℃において1~500mPa・sの範囲内であることが好ましい。また、この接着付与剤の含有量は限定されないが、本組成物の合計100質量部に対して0.01~10質量部の範囲内であることが好ましい。
【0124】
さらに、本組成物には、本発明の目的を損なわない限り、その他任意の成分として、酸化鉄(ベンガラ)、酸化セリウム、セリウムジメチルシラノレート、脂肪酸セリウム塩、水酸化セリウム、ジルコニウム化合物等の耐熱剤;その他、染料、白色以外の顔料、難燃性付与剤等を含有してもよい。
【0125】
[組成物の形態]
本発明にかかるトランスファー成型用硬化性シリコーン組成物は、25℃において非流動性の固体であってよく、また、ペースト状乃至半固体状であってもよい。当該硬化性シリコーン組成物は、トランスファー成型用途に用いることから、特に100℃以下の軟化点を有し、加熱溶融性を有する固体であることが好ましいものである。一方、本組成物は、ペースト状乃至半固体状であってもよく、加熱により流動性が増加し、粘度が急激に低下する性質を備えることが好ましい。
【0126】
本組成物をホットメルト性の硬化性シリコーン組成物として使用する場合、25℃において非流動性であり、加熱溶融性を有する固体であることが好ましく、粒状又はペレット状に成型して使用してよい。粒状組成物は、硬化性シリコーン組成物を構成する各成分のみを、50℃を超えない温度条件下で混合することにより粒状化することにより容易に得ることができ、粒状の硬化性シリコーン組成物ををさらに、ペレット状に成型して使用することが好ましい。なお、ペレット状にする際には、シート状の成型体を型抜きまたは切断して成型してもよい。
【0127】
ペレット状とは、本組成物を打錠成型して得られるものであり、取扱い作業性および硬化性が優れる。なお、「ペレット」は、「タブレット」とも言うことがある。ペレットの形状は限定されないが、通常、球状、楕円球状あるいは円柱状である。また、ペレットの大きさは限定されないが、例えば、500μm以上の平均粒子径または円相当径を有する。
【0128】
本組成物は、室温においてペレットの形態で取り扱うことができ、25℃において非流動性の固体であることが好ましい。ここで、非流動性とは、無負荷の状態で変形・流動しないことを意味し、好適には、ペレットまたはタブレット等に成型した場合に、25℃かつ無負荷の状態で変形・流動しないものである。このような非流動性は、例えば、25℃のホットプレート上に成型した本組成物を置き、無負荷または一定の加重をかけても、実質的に変形・流動しないことにより評価可能である。25℃において非流動性であると、該温度での形状保持性が良好で、表面粘着性が低いからである。
【0129】
本組成物の軟化点は100℃以下であることが好ましい。このような軟化点は、ホットプレート上で、100グラム重の荷重で上から10秒間押し続け、荷重を取り除いた後、組成物の変形量を測定した場合、高さ方向の変形量が1mm以上となる温度を意味する。
【0130】
本組成物は高温・高圧下で(すなわち成型工程において)急激に粘度が低下する傾向があり、有用な溶融粘度の値としては同様の高温・高圧下で測定した値を用いることが好ましい。従って、本組成物の溶融粘度はレオメーターなどの回転粘度計で測定するよりも高化式フローテスター(島津製作所(株)製)を用いて高圧下測定することが好ましい。具体的には本組成物は、150℃の溶融粘度が200Pa・s以下、より好ましくは150以下であることが好ましい。これは、本組成物をホットメルト後、25℃に冷却した後の基材への密着性が良好であるからである。
【0131】
本組成物がホットメルト性の組成物または粒状組成物である場合、(A)成分~(C)成分、さらにその他任意の成分を、50℃未満の温度で粉体混合することにより製造することができる。本製造方法で用いる粉体混合機は限定されず、一軸または二軸の連続混合機、二本ロール、ロスミキサー、ホバートミキサー、デンタルミキサー、プラネタリミキサー、ニーダーミキサー、ラボミルサー、小型粉砕機、ヘンシェルミキサーが例示され、好ましくは、ラボミルサー、ヘンシェルミキサーである。
【0132】
本発明にかかるトランスファー成型用硬化性シリコーン組成物は、ペースト状乃至半固体状であってよく、流動性に乏しいペースト状乃至半固体状組成物であることも好ましい。当該組成物は、上記の混合機のうち、ロスミキサー、ホバートミキサー等の機械式ミキサーを用いて、(A)成分~(C)成分、さらにその他任意の成分を均一に混合することで得ることができる。
【0133】
本組成物が25℃においてペースト状である場合、25℃における粘度は特に限定されないが、好ましくは5~200Pa・sの範囲内であり、さらに好ましくは5~120Pa・sの範囲内であり、特に好ましくは10~80Pa・sの範囲内である。これは、粘度が上記範囲の下限以上であると、得られる組成物の成形時にバリの発生が抑制され、一方、上記範囲の上限以下であると、得られる組成物の取扱作業性が良好であるからである。
【0134】
[硬化物の成型方法]
本組成物は、次の工程(I)~(III)から少なくともなる方法により硬化することができる。
(I)本組成物を100℃以上に加熱して、溶融する工程;
(II)前記工程(I)で得られた硬化性シリコーン組成物を金型に注入する工程、又は型締めにより金型に前記工程(I)で得られた硬化性シリコーン組成物を行き渡らせる工程;および
(III)前記工程(II)で注入した硬化性シリコーン組成物を硬化する工程
【0135】
上記工程は、トランスファー成型機、コンプレッション成型機、インジェクション成型機、補助ラム式成型機、スライド式成型器、二重ラム式成型機、または低圧封入用成型機等の一般的な成型機に適用される工程であるが、本発明組成物は、トランスファー成型により硬化物を得る目的で好適に利用できる。
【0136】
最後に、工程(III)において、工程(II)で注入(適用)した硬化性シリコーン組成物を硬化する。なお、(C)成分として(c1)有機過酸化物を用いる場合には、加熱温度は150℃以上、あるいは170℃以上であることが好ましく、(c2)分子内に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンおよびヒドロシリル化反応触媒を用いる場合、100℃以上、あるいは130℃以上の加熱温度であることが好ましい。
【0137】
発光/光学デバイス用の光反射材あるいは半導体等の保護部材として好適であることから、本組成物を硬化して得られる硬化物の25℃におけるタイプDデュロメータ硬さが20以上であることが好ましい。なお、このタイプDデュロメータ硬さは、JIS K 6253-1997「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴムの硬さ試験方法」に準じてタイプDデュロメータによって求められる。
【0138】
[組成物の用途]
本組成物は、トランスファー成型用の材料であり、特に、成型時に基材と硬化物を一体化するオーバーモールド成型法を用いる半導体等の封止材料として好適である。すなわち、本発明のトランスファー成型用硬化性シリコーン組成物は、好適にはホットメルト性を有し、溶融(ホットメルト)時の取扱い作業性および硬化性に優れ、トランスファー成型により成型した硬化物が高温でも低モジュラスかつ柔軟で、応力緩和特性に優れるため、一体成型時の成型物の反りや欠陥を生じにくく、かつ、トランスファー成型後の当該硬化物の脱型性に優れることから、発光/光学デバイス用の光反射材等の半導体用部材および当該硬化物を有する光半導体に有用に用いられる。さらに、当該硬化物は機械的特性に優れているので、半導体用の封止剤;SiC、GaN等のパワー半導体用の封止剤;電気・電子用の接着剤、ポッティング剤、保護剤、コーティング剤として好適である。特に、成型時にオーバーモールド成型法を用いる半導体用の封止剤として用いることが好適である。
【0139】
[硬化物の用途]
本発明の硬化物の用途はトランスファー成型により得られたものであれば、特に制限されるものではないが、トランスファー成型により成型した硬化物が高温でも低モジュラスかつ柔軟で、応力緩和特性に優れるため、成型物の反りや欠陥を生じにくいものである。このため、本組成物を硬化してなる硬化物は、半導体装置用部材として好適に利用することができ、半導体素子やICチップ等の封止材、導体装置の接着剤・結合部材として好適に用いることができる。
【0140】
本発明の硬化物からな部材を備えた半導体装置は特に制限されるものではないが、特に、発光/光学デバイスである発光半導体装置であることが好ましい。
【実施例】
【0141】
本発明のホットメルト性の硬化性シリコーン組成物およびその製造方法を実施例と比較例により詳細に説明する。なお、式中、Me、Ph、Viは、それぞれメチル基、フェニル基、ビニル基を表す。また、各実施例、比較例の硬化性シリコーン組成物について、その軟化点、硬化挙動、成型性、及び成形物の反りを以下の方法で測定した。結果を表1に示した。
【0142】
[硬化性粒状シリコーン組成物の軟化点]
硬化性粒状シリコーン組成物をφ14mm×22mmの円柱状のペレットに成型した。このペレットを25℃~100℃に設定したホットプレート上に置き、100グラム重の荷重で上から10秒間押し続け、荷重を取り除いた後、該ペレットの変形量を測定した。高さ方向の変形量が1mm以上となった温度を軟化点とした。
【0143】
[硬化性シリコーン組成物の硬化挙動]
硬化性シリコーン組成物を、JIS K 6300-2:2001「未加硫ゴム-物理特性-第2部:振動式加硫試験機による加硫特性の求め方」で規定される方法に従い、キュラストメーター(アルファテクノロジーズ社製のPREMIERMDR)を用いて、成型温度(150℃)において600秒間加硫して測定した。なお、測定は、硬化性シリコーン組成物がホットメルトの場合、円柱状のペレットに成形してから、約7gを、液状の場合そのまま約7gを下側ダイスに載せ、上側ダイスが閉まった時点を測定開始とした。なお、ゴム用R型ダイスを用い、振幅角度は0.53°、振動数は100回/分、トルクレンジを最大の230kgf・cmにして測定した。測定結果として貯蔵トルクと損失トルクが得られ、その比率(貯蔵トルク/損失トルク)を硬化時のtanδとして読み取った。
【0144】
[硬化性シリコーン組成物の成型性]
硬化性シリコーン組成物を、トランスファー成形機を用いて銀めっきが施された銅製のリードフレームと一体成型し、縦35mm×横25mm×高さ1mmの成形物を作製した。成型条件は、金型温度を150℃、型締め時間を120秒とし、成形機の上型、下型には離型剤などを塗布せずに成形性を確認した。成形サイクル終了後、一体成型物が金型からスムーズに脱型できた場合はOK,金型にへばり付いて、脱型できなかった場合をNGとして結果を確認した。被着体を難接着材料の銀とする事で厳しい条件下で脱型性を評価している。
【0145】
[成型物の反り]
60mm×60mm×0.4mmのサイズのアルミ板の上に硬化性シリコーン組成物を60mm×60mm×0.6mmのサイズにて熱プレスにより150℃で2時間加熱して一体成型を行った。得られた成型物の片側をテープで水平な机に固定し、もう片側の机からの浮き上がり距離を定規を用いて測定し、成型物の反り値とした。
【0146】
以下、参考例1~6に示す方法で、ヒドロシリル化反応触媒を含むオルガノポリシロキサン樹脂またはオルガノポリシロキサン架橋物を調製し、そのホットメルト性の有無を軟化点/溶融粘度の有無により評価した。また、参考例3~6に示す方法で当該オルガノポリシロキサン樹脂微粒子を調製した。なお、参考例において、ヒドロシリル化反応触媒である白金錯体に用いる1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジビニルジシロキサンは、「1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン」と記述する。
【0147】
[参考例1]
1Lのフラスコに、25℃において白色固体状で、平均単位式:
(PhSiO3/2)0.80(Me2ViSiO1/2)0.20
で表される樹脂状オルガノポリシロキサンの55質量%-トルエン溶液 270.5g、式:
HMe2SiO(Ph2SiO)SiMe2H
で表される、粘度5mPa・sの分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジフェニルシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.6質量%) 21.3g(前記樹脂状オルガノポリシロキサン中のビニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.5モルとなる量)、および白金の1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液(白金金属の含有量=約4000ppm) 0.43g(本液状混合物に対して白金金属が質量単位で10ppmとなる量)を投入し、室温で均一に攪拌した。その後、オイルバスにてフラスコ内の温度を100℃まで上げて、トルエン還流下、2時間攪拌して、上記樹脂状オルガノポリシロキサンに由来する樹脂状オルガノシロキサンと上記ジフェニルシロキサンに由来する鎖状オルガノシロキサンからなり、上記反応に関与しなかったビニル基を有するオルガノシロキサン架橋物(1)のトルエン溶液を調製した。なお、このオルガノシロキサン架橋物(1)を、FT-IRにて分析したところ、ケイ素原子結合水素原子のピークは観測されなかった。また、このオルガノシロキサン架橋物(1)の軟化点は75℃であり、その100℃での溶融粘度は700Pa・sであった。
【0148】
[参考例2]
1Lのフラスコに、25℃において白色固体状で、平均単位式:
(Me2ViSiO1/2)0.05(Me3SiO1/2)0.39(SiO4/2)0.56(HO1/2)0.02
で表されるオルガノポリシロキサン樹脂の55質量%-キシレン溶液 270.5g、および白金の1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液(白金金属の含有量=約4000ppm) 0.375gを投入し、室温(25℃)で均一に攪拌して、白金金属として質量単位で10ppm含有するオルガノポリシロキサン樹脂(2)のキシレン溶液を調製した。また、このオルガノポリシロキサン樹脂(2)は200℃まで加熱しても軟化/溶融せず、ホットメルト性を有していなかった。
【0149】
[参考例3]
1Lのフラスコに、25℃において白色固体状で、平均単位式:
(Me3SiO1/2)0.44(SiO4/2)0.56(HO1/2)0.02
で表されるオルガノポリシロキサン樹脂の55質量%-キシレン溶液 270.5g、および白金の1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液(白金金属の含有量=約4000ppm) 0.375gを投入し、室温(25℃)で均一に攪拌して、白金金属として質量単位で10ppm含有するオルガノポリシロキサン樹脂(3)のキシレン溶液を調製した。また、このオルガノポリシロキサン樹脂(3)は200℃まで加熱しても軟化/溶融せず、ホットメルト性を有していなかった。
【0150】
[参考例4:ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子(1)]
参考例1で調製したオルガノシロキサン架橋物(1)のトルエン溶液を40℃のスプレードライによりトルエンを除去しながら微粒子化して、真球状のホットメルト性シリコーン微粒子(1)を調製した。この微粒子を光学顕微鏡で観測したところ、粒子径が5~10μmであり、平均粒子径は7.5μmであった。
【0151】
[参考例5:非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子(2)]
参考例1で調製したオルガノポリシロキサン樹脂(2)のキシレン溶液を50℃においてスプレードライヤーを用いたスプレー法によりキシレンを除去しながら粒子化し、真球状の非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子(2)を調製した。この微粒子を光学顕微鏡で観測したところ、粒子径が5~10μmであり、平均粒子径は6.9μmであった。
【0152】
[参考例6:非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子(3)]
参考例2で調製したオルガノポリシロキサン樹脂(3)のキシレン溶液を50℃においてスプレードライヤーを用いたスプレー法によりキシレンを除去しながら粒子化し、真球状の非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子(3)を調製した。この微粒子を光学顕微鏡で観測したところ、粒子径が5~10μmであり、平均粒子径は7.4μmであった。
【0153】
[実施例1]
ホットメルト性シリコーン微粒子(1) 73.1g、式:
HMe2SiO(Ph2SiO)SiMe2H
で表される、粘度5mPa・sの分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジフェニルシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.6質量%) 9.5g、粘度1,000mPa・sであり、
平均式 Me2ViSiO(MePhSiO)17.5SiMe2Vi
で表される分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン(ビニル基の含有量=2.1質量%) 17.4g
{シリコーン微粒子(1)と分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン中のビニル基1.0モルに対して、上記ジフェニルシロキサン中のケイ素原子結合水素原子が0.9モルとなる量}、1-エチニル-1-シクロヘキサノール(本組成物に対して質量単位で300ppmとなる量)、平均粒子径2.5μmの溶融シリカ(新日鉄マテリアルズ マイクロン社製のSP60)24.0g、および平均粒子径0.04μmのフュームドシリカ(日本アエロジル社のAEROSIL50)30.0gを小型粉砕機に一括投入し、室温(25℃)で1分間攪拌を行い、均一な硬化性粒状シリコーン組成物を調製した。また、この組成物の軟化点等の測定結果を表1に示す。
【0154】
[実施例2]
ホットメルト性シリコーン微粒子(1) 89.3g、式:
HMe2SiO(Ph2SiO)SiMe2H
で表される、粘度5mPa・sの分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジフェニルシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.6質量%) 10.7g、
{シリコーン微粒子(1)中のビニル基1.0モルに対して、上記ジフェニルシロキサン中のケイ素原子結合水素原子が0.9モルとなる量}、1-エチニル-1-シクロヘキサノール(本組成物に対して質量単位で300ppmとなる量)、平均粒子径0.5μmの酸化チタン(堺化学工業製のSX-3103)98.0g、平均粒子径0.04μmのフュームドシリカ(日本アエロジル社のAEROSIL50)4.0g、を小型粉砕機に一括投入し、室温(25℃)で1分間攪拌を行い、均一な硬化性粒状シリコーン組成物を調製した。また、この組成物の軟化点等の測定結果を表1に示す。
【0155】
[実施例3]
平均単位式:
(MeViSiO2/2)0.25(PhSiO3/2)0.75
で表されるメチルビニルフェニルポリシロキサン 64.1g、
粘度1,000mPa・sであり、
平均式 Me2ViSiO(MePhSiO)17.5SiMe2Vi
で表される分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン(ビニル基の含有量=2.1質量%) 10.5g
(MeViSiO)4
で表される1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン 1.0g、
式:(HMe2SiO)2SiPh2
で表される1,1,5,5-テトラメチル-3,3-ジフェニルトリシロキサン 22.2g
(Me2HSiO1/2)0.6(PhSiO3/2)0.4
で表されるケイ素原子結合水素原子含有メチルフェニルポリシロキサン 2.3g
{上記のビニル基含有ポリシロキサン中のビニル基の合計1モルに対して、ケイ素原子結合水素原子含有ポリシロキサン中のSiH基が0.93モルとなる量}
白金の1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン溶液(本組成物に対して白金金属が質量単位で3.5ppmとなる量)、1-エチニル-1-シクロヘキサノール(本組成物に対して質量単位で200ppmとなる量)、平均一次粒子径0.2μmの酸化チタン(堺化学工業製のSX-3103) 25g
を、機械力(ホバートミキサー)により均一に混合して、室温でペースト状である硬化性シリコーン組成物を調製した。この組成物の特性値の測定結果を表1に示す。なお、本組成物はペースト状であるので、軟化点は測定していない(N/A)。
【0156】
[実施例4]
平均単位式:
(MeViSiO2/2)0.25(PhSiO3/2)0.75
で表されるメチルビニルフェニルポリシロキサン 57.3g、
平均単位式:
(MeViSiO2/2)0.68(PhSiO3/2)0.32
で表されるメチルビニルフェニルポリシロキサン 5.0g、
粘度1,000mPa・sであり、
平均式 Me2ViSiO(MePhSiO)17.5SiMe2Vi
で表される分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン(ビニル基の含有量=2.1質量%) 9.0g
(MeViSiO)4
で表される1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン 1.1g、
式:(HMe2SiO)2SiPh2
で表される1,1,5,5-テトラメチル-3,3-ジフェニルトリシロキサン 24.4g
(Me2HSiO1/2)0.6(PhSiO3/2)0.4
で表されるケイ素原子結合水素原子含有メチルフェニルポリシロキサン 3.2g
{上記のビニル基含有ポリシロキサン中のビニル基の合計1モルに対して、ケイ素原子結合水素原子含有ポリシロキサン中のSiH基が0.97モルとなる量}
白金の1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン溶液(本組成物に対して白金金属が質量単位で3.5ppmとなる量)、1-エチニル-1-シクロヘキサノール(本組成物に対して質量単位で200ppmとなる量)、平均一次粒子径0.2μmの酸化チタン(堺化学工業製のSX-3103) 43g
を、機械力(ホバートミキサー)により均一に混合して、室温でペースト状である硬化性シリコーン組成物を調製した。この組成物の特性値の測定結果を表1に示す。なお、本組成物はペースト状であるので、軟化点は測定していない(N/A)。
【0157】
[比較例1]
(a+c(pt)) 非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子(3)(ビニル基含有量=0質量%) 55.3g、
(a+c(pt)) 非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子(2)(ビニル基含有量=1.91質量%) 13.8g、
(b1)式:
ViMe2SiO(Me2SiO)800SiViMe2
で表される、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基の含有量=0.09質量%) 29.6g、
(c2(SiH))式:
(HMe2SiO1/2)0.67(SiO4/2)0.33
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンレジン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.95質量%) 1.1g
{オルガノポリシロキサン樹脂微粒子粒子(2)および分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン中のビニル基1モルに対して、上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンレジン中のケイ素原子結合水素原子が1.1モルとなる量}、
(d1)平均粒子径0.44μmのアルミナ(住友化学製のAES-12)232.6g、
1-エチニル-1-シクロヘキサノール(本組成物に対して質量単位1000ppmとなる量を小型粉砕機に一括投入し、室温(25℃)で1分間攪拌を行い、均一な硬化性粒状シリコーン組成物を調製した。また、この組成物の軟化点等の測定結果を表1に示す。
【0158】
[比較例2]
ホットメルト性シリコーン微粒子(1) 89.3g、式:
HMe2SiO(Ph2SiO)SiMe2H
で表される、粘度5mPa・sの分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジフェニルシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.6質量%) 10.7g、
{シリコーン微粒子(1)中のビニル基1.0モルに対して、上記ジフェニルシロキサン中のケイ素原子結合水素原子が0.9モルとなる量}、1-エチニル-1-シクロヘキサノール(本組成物に対して質量単位で300ppmとなる量)、平均粒子径0.5μmの酸化チタン(堺化学工業製のSX-3103)298.5g、平均粒子径0.04μmのフュームドシリカ(日本アエロジル社のAEROSIL50)1.5g、を小型粉砕機に一括投入し、室温(25℃)で1分間攪拌を行い、均一な硬化性粒状シリコーン組成物を調製した。また、この組成物の軟化点等の測定結果を表1に示す。
【0159】
[比較例3]
ホットメルト性シリコーン微粒子(1) 45.0g、
粘度20,000mPa・sであり、
平均式 Me2ViSiO(MePhSiO)92SiMe2Vi
で表される分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン(ビニル基の含有量=0.63質量%) 47.6g
式:
HMe2SiO(Ph2SiO)SiMe2H
で表される、粘度5mPa・sの分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジフェニルシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.6質量%) 1.0g、平均単位式:
(PhSiO3/2)0.4(HMe2SiO1/2)0.6
で表される、一分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する、粘度25mPa・sの分岐鎖状オルガノポリシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.65質量%) 6.3g
{シリコーン微粒子(1)中のビニル基1.0モルに対して、上記ジフェニルシロキサン中及び分岐鎖状オルガノポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子が1.0モルとなる量}、1-エチニル-1-シクロヘキサノール(本組成物に対して質量単位で300ppmとなる量)、平均粒子径0.5μmの酸化チタン(堺化学工業製のSX-3103)98.0g、平均粒子径0.04μmのフュームドシリカ(日本アエロジル社のAEROSIL50)4.0g、を小型粉砕機に一括投入し、室温(25℃)で1分間攪拌を行い、均一な硬化性粒状シリコーン組成物を調製した。また、この組成物の軟化点等の測定結果を表1に示す。
【0160】
[比較例4]
(a+c(pt)) 非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子(2)(ビニル基含有量=0質量%) 34.1g、
(a+c(pt)) 非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子(1)(ビニル基含有量=1.91質量%) 34.1g、
(b2)式:
ViMe2SiO(Me2SiO)140SiViMe2
で表される、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基の含有量=0.44質量%) 14.5g、
(b3)式:
ViMe2SiO(Me2SiO)300SiViMe2
で表される、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基の含有量=0.21質量%) 14.5g、
(c2(SiH))式:
(HMe2SiO1/2)0.67(SiO4/2)0.33
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンレジン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.95質量%) 2.85g
{オルガノポリシロキサン樹脂微粒子粒子(1)および分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン中のビニル基1モルに対して、上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンレジン中のケイ素原子結合水素原子が1.1モルとなる量}、
(d2)平均粒子径0.5μmの酸化チタン(堺化学工業製のSX-3103)142.6g、(d3)平均粒子径0.04μmのフュームドシリカ(日本アエロジル社のAEROSIL50)10.3g、1-エチニル-1-シクロヘキサノール(本組成物に対して質量単位1000ppmとなる量を小型粉砕機に一括投入し、室温(25℃)で1分間攪拌を行い、均一な硬化性粒状シリコーン組成物を調製した。また、この組成物の軟化点等の測定結果を表1に示す。
【0161】
[比較例5]
(a+c(pt)) 非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子(2)(ビニル基含有量=0質量%) 41.3g、
(a+c(pt)) 非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子(1)(ビニル基含有量=1.91質量%) 27.5g、
(b4)式:
ViMe2SiO(Me2SiO)45SiViMe2
で表される、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基の含有量=1.53質量%) 27.5g、
(c2(SiH))式:
(HMe2SiO1/2)0.67(SiO4/2)0.33
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンレジン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.95質量%) 3.68g
{オルガノポリシロキサン樹脂微粒子粒子(1)および分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン中のビニル基1モルに対して、上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンレジン中のケイ素原子結合水素原子が1.0モルとなる量}、
(d2)平均粒子径0.5μmの酸化チタン(堺化学工業製のSX-3103)299.0g、(d3)平均粒子径0.04μmのフュームドシリカ(日本アエロジル社のAEROSIL50)1.5g、1-エチニル-1-シクロヘキサノール(本組成物に対して質量単位1000ppmとなる量を小型粉砕機に一括投入し、室温(25℃)で1分間攪拌を行い、均一な硬化性粒状シリコーン組成物を調製した。また、この組成物の軟化点等の測定結果を表1に示す。
【0162】
[比較例6]
平均単位式:
(MeViSiO2/2)0.15(Me2SiO2/2)0.15(Ph2SiO2/2)0.30(PhSiO3/2)0.40(HO1/2)0.04
で表されるメチルビニルフェニルポリシロキサン 55.2g、式:
(MeViSiO)4
で表される1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン 13.8g、式:
(HMe2SiO)2SiPh2
で表される1,1,5,5-テトラメチル-3,3-ジフェニルトリシロキサン 30.9g
(上記のメチルビニルフェニルポリシロキサンおよび1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン中のビニル基の合計1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.9モルとなる量)、白金の1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン溶液(本組成物に対して白金金属が質量単位で3.5ppmとなる量)、1-エチニル-1-シクロヘキサノール(本組成物に対して質量単位で200ppmとなる量)、平均一次粒子径0.2μmの酸化チタン(堺化学工業製のSX-3103) 55.2g、平均粒子径5μmの破砕石英粉末(龍森製のクリスタライトVX-52) 74.6g、および平均粒子径15μmの球状シリカ(新日鉄マテリアルズ マイクロン社製のHS-202) 60.8gを混合して、ペースト状の硬化性シリコーン組成物を調製した。また、この組成物の軟化点等の測定結果を表1に示す。
【0163】
[比較例7]
ホットメルト性シリコーン微粒子(1) 89.3g、式:
HMe2SiO(Ph2SiO)SiMe2H
で表される、粘度5mPa・sの分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジフェニルシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.6質量%) 5.35g、平均単位式:
(PhSiO3/2)0.4(HMe2SiO1/2)0.6
で表される、一分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する、粘度25mPa・sの分岐鎖状オルガノポリシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.65質量%) 5.35g{シリコーン微粒子(1)中のビニル基1モルに対して、上記ジフェニルシロキサンと上記分岐鎖状オルガノポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子が1.0モルとなる量}、1-エチニル-1-シクロヘキサノール(本組成物に対して質量単位で300ppmとなる量)、および平均粒子径15μmの球状シリカ(新日鉄マテリアルズ マイクロン社製のHS-202) 402gを小型粉砕機に一括投入し、室温(25℃)で1分間攪拌を行い、均一な硬化性粒状シリコーン組成物を調製した。また、この組成物の軟化点等の測定結果を表1に示す。
【0164】
【0165】
[総括]
本発明にかかる実施例1~4の硬化性シリコーン組成物(ホットメルト性の実施例1,2、ペースト状の実施例3,4)は、本発明に規定するMDRにより測定される硬化挙動(最大トルク値および損失正接(tanδ)の値)を充足するものであるが、成形性が良好で成型物をスムーズに金型から分離でき、かつ、成型物の反りが生じないことから、応力緩和特性に優れることが確認できた。
【0166】
一方、比較例1~7は、本発明に規定するMDRにより測定される硬化挙動を充足しないものであり、成形性と成型物の反りの抑制(=低反り)との間にトレードオフの関係があり、これらを両立することができないものであった。