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特許7645181リチウムイオン二次電池用正極活物質およびリチウムイオン二次電池
<図1>
  • 特許-リチウムイオン二次電池用正極活物質およびリチウムイオン二次電池 図1
  • 特許-リチウムイオン二次電池用正極活物質およびリチウムイオン二次電池 図2
  • 特許-リチウムイオン二次電池用正極活物質およびリチウムイオン二次電池 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-05
(45)【発行日】2025-03-13
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池用正極活物質およびリチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20250306BHJP
   C01G 53/506 20250101ALI20250306BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20250306BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20250306BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20250306BHJP
【FI】
H01M4/525
C01G53/506
H01M4/36 A
H01M4/505
H01M10/052
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021530630
(86)(22)【出願日】2020-06-30
(86)【国際出願番号】 JP2020025723
(87)【国際公開番号】W WO2021006125
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2023-06-12
(31)【優先権主張番号】P 2019127263
(32)【優先日】2019-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100185018
【弁理士】
【氏名又は名称】宇佐美 亜矢
(74)【代理人】
【識別番号】100134441
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 由利
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100185018
【弁理士】
【氏名又は名称】宇佐美 亜矢
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(72)【発明者】
【氏名】小鹿 裕希
(72)【発明者】
【氏名】金田 治輝
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 翔
(72)【発明者】
【氏名】神 貴志
(72)【発明者】
【氏名】新名 史治
【審査官】鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-139583(JP,A)
【文献】特開2002-151071(JP,A)
【文献】特許第3088716(JP,B2)
【文献】特開2018-018789(JP,A)
【文献】特開2017-188428(JP,A)
【文献】特開2009-140787(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105870402(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0077496(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/525
C01G 53/82
H01M 4/36
H01M 4/505
H01M 10/052
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
六方晶系の層状構造を有し、複数の一次粒子が凝集した二次粒子で構成されたリチウムニッケルマンガン複合酸化物を含む、リチウムイオン二次電池用正極活物質であって、
前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物を構成する金属元素は、リチウム(Li)と、ニッケル(Ni)と、マンガン(Mn)と、コバルト(Co)と、チタン(Ti)と、ニオブ(Nb)と、任意にジルコニウム(Zr)とからなり、
前記金属元素の物質量の比がLi:Ni:Mn:Co:Zr:Ti:Nb=a:b:c:d:e:f:g(ただし、0.97≦a≦1.10、0.80≦b≦0.88、0.04≦c≦0.12、0.04≦d≦0.10、0≦e≦0.004、0.003<f≦0.030、0.001<g≦0.006、b+c+d+e+f+g=1)で表され、
前記物質量の比において、(f+g)≦0.030、かつ、f>gを満たし、
前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物の一次粒子間の粒界に、ニオブが偏析し、
圧粉抵抗測定により求められる、4.0g/cmに圧縮した時の体積抵抗率が5.0×10Ω・cm以上1.0×10Ω・cm以下である、
リチウムイオン二次電池用正極活物質。
【請求項2】
前記金属元素の物質量の比がLi:Ni:Mn:Co:Zr:Ti:Nb=a:b:c:d:e:f:g(ただし、0.97≦a≦1.10、0.80≦b≦0.88、0.04≦c≦0.12、0.04≦d≦0.10、0≦e≦0.004、0.003<f≦0.030、0.003≦g≦0.006、b+c+d+e+f+g=1)で表される、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
【請求項3】
STEM-EDXを用いた点分析により求められる、前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物の一次粒子内部のニオブ濃度に対する、前記一次粒子間の粒界のニオブ濃度が1.3倍以上である、請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
【請求項4】
STEM-EDXを用いた点分析により求められる、前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物の前記一次粒子内部のチタン濃度に対する、前記一次粒子間の粒界のチタン濃度が1.3倍未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
【請求項5】
レーザー回折散乱法による粒度分布におけるD90及びD10と、体積平均粒径(Mv)とによって算出される粒径のばらつき指数を示す[(D90-D10)/Mv]が、0.80以上1.20以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
【請求項6】
体積平均粒径Mvが8μm以上20μm以下である請求項1~5のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
【請求項7】
正極、負極、及び、非水系電解質を備え、正極は、請求項1~6のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質を含む、リチウムイオン二次電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池用正極活物質およびリチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話端末やノート型パソコンなどの携帯電子機器の普及に伴い、高いエネルギー密度や耐久性を有する小型で軽量な非水系電解質二次電池の開発が強く望まれている。また、電動工具やハイブリット自動車をはじめとする電気自動車用電池として、高出力の二次電池の開発が強く望まれている。
【0003】
このような要求を満たす二次電池として、リチウムイオン二次電池などの非水系電解質二次電池がある。正極活物質として、層状又はスピネル型の結晶構造を有するリチウム金属複合酸化物を用いたリチウムイオン二次電池は、4V級の高い電圧が得られるため、高いエネルギー密度を有する電池として実用化が進んでいる。
【0004】
リチウム金属複合酸化物としては、合成が比較的容易なリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO)や、コバルトよりも安価なニッケルを用いたリチウムニッケル複合酸化物(LiNiO)、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi1/3Co1/3Mn1/3)、マンガンを用いたリチウムマンガン複合酸化物(LiMn)、リチウムニッケルマンガン複合酸化物(LiNi0.5Mn0.5)などが提案されている。
【0005】
ところで、リチウムイオン二次電池は、電池材料として非水系電解質を用いる場合、高い熱安定性が求められている。例えば、リチウムイオン二次電池の内部で短絡した場合、急激な電流による発熱が生じることから、より高い熱安定性が要求される。
【0006】
そこで、熱安定性に優れるリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物や、リチウムニッケルマンガン複合酸化物などが注目されている。リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物は、リチウムコバルト複合酸化物やリチウムニッケル複合酸化物などと同じく層状化合物であり、遷移金属サイトにおけるニッケルと、コバルトと、マンガンの組成比が1:1:1の割合であるものを三元系正極活物質という。
【0007】
特に、近年、高容量化を狙いとして三元系正極活物質や、リチウムニッケルマンガン複合酸化物のニッケル比率を増加させた、ニッケル比率の高い正極活物質(Hi-Ni正極材)が注目されている。しかしながら、ニッケル比率による電池容量増加は、熱安定性の低下とのトレードオフが生じるため、リチウムイオン二次電池として高い性能(高サイクル特性、高容量、高出力)と耐短絡性や熱安定性とを両立した正極活物質が求められている。
【0008】
熱安定性を向上させることを目的として、リチウム金属複合酸化物にニオブを添加する技術がいくつか提案されている。例えば、特許文献1には、一般式:LiNi1-x-y-zCoNb(但し、MはMn、FeおよびAlよりなる群から選ばれる一種以上の元素、1≦a≦1.1、0.1≦x≦0.3、0≦y≦0.1、0.01≦z≦0.05、2≦b≦2.2)で示されるリチウムとニッケルとコバルトと元素Mとニオブと酸素からなる少なくとも一種以上の化合物で構成される組成物からなる非水系二次電池用正極活物質が提案されている。特許文献1によれば、粒子の表面近傍または内部に存在するLi-Nb-O系化合物が高い熱安定性を有していることから、高い熱安定性と大きな放電容量を有する正極活物質が得られるとされている。
【0009】
また、特許文献2には、一般式(1):LiNi1-a-b-cMnNb2+γ(前記一般式(1)中、Mは、Co、W、Mo、V、Mg、Ca、Al、Ti、Cr、Zr及びTaから選択される少なくとも1種の元素であり、0.05≦a≦0.60、0≦b≦0.60、0.0003≦c≦0.03、0.95≦d≦1.20、0≦γ≦0.5である。)で表されるリチウムニッケルマンガン複合酸化物からなり、リチウムニッケルマンガン複合酸化物中のニオブの少なくとも一部が、一次粒子に固溶する、非水系電解質二次電池用正極活物質が提案されている。特許文献2によれば、高いエネルギー密度及び優れた出力特性と、導電性の低下による短絡時の熱安定性とを高次元で両立した非水系二次電池が得られるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2002-151071号公報
【文献】国際公開2018/043669号公報
【文献】特開2008-017729号公報
【文献】特許第4807467号
【文献】特開2006-147499号公報
【文献】特開2007-265784号公報
【文献】特開2008-257902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献1、2に記載される正極活物質は、ニオブを特定の形態で含むことにより熱安定性を向上することが記載されているが、高いニッケル比率を有するリチウムニッケルマンガン複合酸化物において、さらなる熱安定性の向上が求められている。また、ニオブは高価であるため、高い熱安定性をより低コストで実現できる正極活物質が求められている。
【0012】
本発明は、これらの事情を鑑みてなされたものであり、高いニッケル比率を有するリチウムニッケルマンガン複合酸化物を含有する正極活物質において、より高い熱安定性を低コストで実現することを目的とするものである。また、本発明は、このような正極活物質を、工業規模の生産において容易に製造することができる方法を提供することを目的とする。
【0013】
ところで、高い電池特性を有する正極活物質を得ることを目的として、例えば、リチウム金属複合酸化物にチタンを添加する技術がいくつか提案されている。特許文献3~7によれば、リチウムニッケルコバルトチタン複合酸化物からなる正極活物質は、熱安定性が良好で、高い電池容量を有するとされている。
【0014】
また、リチウムイオン二次電池の内部で短絡した場合、短絡による急激な電流を抑制する方法の一つとして、例えば、上記特許文献2に記載されるように、正極に圧縮されて存在する状態における正極活物質の導電性を低くする、又は、体積抵抗率を高くすることが有効であると考えられる。
【0015】
しかしながら、上記特許文献1~7には、リチウムニッケルマンガン複合酸化物において、異種元素として、ニオブ及びチタンを組み合わせて含有することによる効果は一切記載されていない。また、上記特許文献1、3~7には、正極に圧縮されて存在する状態における正極活物質の導電率、又は、体積抵抗率についても一切記載されていない。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の態様では、六方晶系の層状構造を有し、複数の一次粒子が凝集した二次粒子で構成されたリチウムニッケルマンガン複合酸化物を含む、リチウムイオン二次電池用正極活物質であって、リチウムニッケルマンガン複合酸化物を構成する金属元素は、リチウム(Li)と、ニッケル(Ni)と、マンガン(Mn)と、コバルト(Co)と、チタン(Ti)と、ニオブ(Nb)と、任意にジルコニウム(Zr)とからなり、金属元素の物質量の比がLi:Ni:Mn:Co:Zr:Ti:Nb=a:b:c:d:e:f:g(ただし、0.97≦a≦1.10、0.80≦b≦0.88、0.04≦c≦0.12、0.04≦d≦0.10、0≦e≦0.004、0.003<f≦0.030、0.001<g≦0.006、b+c+d+e+f+g=1)で表され、物質量の比において、(f+g)≦0.030、かつ、f>gを満たし、リチウムニッケルマンガン複合酸化物の一次粒子間の粒界に、ニオブが偏析し、圧粉抵抗測定により求められる、4.0g/cmに圧縮した時の体積抵抗率が5.0×10Ω・cm以上1.0×10Ω・cm以下である、リチウムイオン二次電池用正極活物質が提供される。
【0017】
また、金属元素の物質量の比がLi:Ni:Mn:Co:Zr:Ti:Nb=a:b:c:d:e:f:g(ただし、0.97≦a≦1.10、0.80≦b≦0.88、0.04≦c≦0.12、0.04≦d≦0.10、0≦e≦0.004、0.003<f≦0.030、0.003≦g≦0.006、b+c+d+e+f+g=1)で表されてもよい。また、STEM-EDXを用いた点分析により求められる、リチウムニッケルマンガン複合酸化物の一次粒子内部のニオブ濃度に対する、一次粒子間の粒界のニオブ濃度が1.3倍以上であることが好ましい。また、STEM-EDXを用いた点分析により求められる、リチウムニッケルマンガン複合酸化物の一次粒子内部のチタン濃度に対する、一次粒子間の粒界のチタン濃度が1.3倍未満であることが好ましい。また、レーザー回折散乱法による粒度分布におけるD90及びD10と、体積平均粒径(Mv)とによって算出される粒径のばらつき指数を示す[(D90-D10)/Mv]が、0.80以上1.20以下であることが好ましい。また、体積平均粒径Mvが8μm以上20μm以下であることが好ましい。
【0018】
本発明の第2の態様では、正極、負極、及び、非水系電解質を備え、正極は、上記のリチウムイオン二次電池用正極活物質を含む、リチウムイオン二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、非常に高い熱安定性を低コストで実現できる正極活物質を提供することができる。また、本発明は、このような正極活物質を、工業規模の生産において容易に製造することが可能であり、工業的価値は極めて大きいものといえる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本実施形態に係る正極活物質の製造方法の一例を示す図である。
図2図2(A)及び図2(B)は、本実施形態に係るニッケルマンガン複合化合物の製造方法の一例を示す図である。
図3図3は、電池評価に使用したコイン型電池の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本実施形態について、リチウムイオン二次電池用正極活物質とその製造方法、さらに正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池について説明する。
【0022】
1.リチウムイオン二次電池用正極活物質
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池用正極活物質(以下、「正極活物質」ともいう。)は、六方晶系の層状構造を有し、複数の一次粒子が凝集した二次粒子で構成されたリチウムニッケルマンガン複合酸化物を含む。リチウムニッケルマンガン複合酸化物を構成する金属元素は、リチウム(Li)と、ニッケル(Ni)と、マンガン(Mn)と、チタン(Ti)と、ニオブ(Nb)と、任意にジルコニウム(Zr)とからなる。
【0023】
リチウムイオン二次電池は、特に、リチウムイオン二次電池の構成材料として可燃性の非水系電解質を用いる場合、高い熱安定性が要求される。また、リチウムイオン二次電池において、充電状態で正極及び負極間が短絡した場合、急激に電流が流れて大きな発熱が生じることにより、正極活物質が分解して、さらに発熱するという連鎖が生じることがある。そこで、正極中の圧縮された条件下で、高い体積抵抗率を有する正極活物質を用いることにより、短絡によって生じる急激な電流の上昇を抑制して、短絡時の熱安定性をより向上させることができる。
【0024】
本発明者らは、鋭意検討した結果、正極活物質に用いられるリチウムニッケルマンガン複合酸化物において、特に、特定量のチタン(Ti)及びニオブ(Nb)を組み合わせて、特定の分布で含有することにより、正極活物質が非常に高い体積抵抗率を有し、かつ、過充電時の酸素放出の抑制による高い熱安定性を実現できることを見出し、本発明を完成させたものである。以下、本実施形態に係る正極活物質の構成について、詳細を説明する。
【0025】
[リチウムニッケルマンガン複合酸化物]
正極活物質に含有されるリチウムニッケルマンガン複合酸化物は、複数の一次粒子が凝集した二次粒子で構成される。また、リチウムニッケルマンガン複合酸化物は、六方晶系の層状構造を有する。
【0026】
リチウムニッケルマンガン複合酸化物を構成する金属元素は、リチウム(Li)と、ニッケル(Ni)と、マンガン(Mn)と、コバルト(Co)と、チタン(Ti)と、ニオブ(Nb)と、任意にジルコニウム(Zr)とからなる。
【0027】
リチウムニッケルマンガン複合酸化物を構成する金属元素の物質量の比(モル比)は、Li:Ni:Mn:Co:Zr:Ti:Nb=a:b:c:d:e:f:g(ただし、0.97≦a≦1.10、0.80≦b≦0.88、0.04≦c≦0.12、0.04≦d≦0.10、0≦e≦0.004、0.003<f≦0.030、0.001<g≦0.006、b+c+d+e+f+g=1)で表される。また、上記物質量の比において、チタン(Ti)の物質量比を示すfと、ニオブ(Nb)の物質量比を示すgとは、(f+g)≦0.030、かつ、f>gの関係を満たす。以下、各金属元素の組成について説明する。
【0028】
(リチウム)
上記物質量の比において、Liの物質量の比を示すaは、Liと、リチウム以外の上記金属元素Me(すなわち、Ni、Mn、Co、Zr、Ti、及び、Nb)との物質量比(Li/Me)に対応する。また、aの範囲は、0.97≦a≦1.10であり、好ましくは1.00≦a≦1.05である。aの値が上記範囲である場合、正極の反応抵抗が低下して、電池の出力を向上することができる。また、aの範囲は、1.00≦a≦1.03であってもよい。
【0029】
(ニッケル)
上記物質量の比において、Niの物質量の比を示すbの範囲は、0.80≦b≦0.88であり、好ましくは0.80≦b≦0.85であり、より好ましくは0.81≦b≦0.84である。bの値が上記範囲である場合、高い電池容量および高い熱安定性を有することができる。一方、bの値が0.80未満である場合、レドックス可能な遷移金属量が減少するため、電池容量が低下する。また、bの値が0.88を超える場合、熱安定性が低下することがある。
【0030】
(マンガン)
上記物質量の比において、Mnの物質量の比を示すcの範囲は、0.04≦c≦0.12であり、好ましくは0.06≦c≦0.12、より好ましくは0.07≦c≦0.11である。cの値が上記範囲である場合、高い電池容量および高い熱安定性を有することができる。一方、cの値が0.04未満である場合、熱安定性の改善効果が得られないことがある。また、cの値が0.12を超える場合、電池容量が低下する。また、マンガンを上記範囲で含むことにより、後述する焼成工程(S20)において、焼成温度を高くすることができ、チタン等の分散を促進することができる。
【0031】
(コバルト)
上記物質量の比において、Coの物質量の比を示すdの範囲は、0.04≦d≦0.10であり、好ましくは0.04≦d≦0.08、より好ましくは0.04≦d≦0.07である。dの値が上記範囲である場合、高い熱安定性や出力特性を有することができる。一方、dの値が0.04未満である場合、熱安定性や出力特性の改善効果が得られないことがある。また、dの値が0.10を超える場合、相対的にNiやMnの比率が低下することで電池容量が低下する。
【0032】
(ジルコニウム)
上記物質量の比において、Zrの物質量の比を示すeの範囲は、0≦e≦0.004であり、好ましくは0≦e≦0.0038、より好ましくは0≦e≦0.0035である。eの値は0であってもよく、0を超えてもよい。eの値が0を超える場合、出力特性や耐久性を改善することができる。一方、eの値が0.004を超える場合、相対的にNiやMnの比率が低下することで電池容量が低下する。
【0033】
(チタン)
上記物質量の比において、Tiの物質量の比を示すfの範囲は、0.003<f≦0.030であり、好ましくは0.010≦f≦0.030であり、さらに好ましくは0.020≦f≦0.030である。ニオブとあわせて、チタンを上記範囲で含む場合、それぞれの元素を単独で含む場合と比較して、リチウムニッケルマンガン複合酸化物の圧縮時の体積抵抗率を非常に増加させることができ、かつ、二次電池の正極に用いた際に酸素放出を抑制し、高い熱安定性を得ることができる。一方、fの値が0.003以下である場合、熱安定性の改善効果が十分でない。また、fの値が0.030を超える場合、相対的にNiやMnの比率が低下したり、結晶構造が安定せず、カチオンミキシングが生じたりしやすくなるため、電池容量が大幅に低下する。
【0034】
(ニオブ)
上記物質量の比において、Nbの物質量の比を示すgの範囲は、0.001<g≦0.006であり、より好ましくは0.003≦g≦0.006であり、0.003≦g≦0.005であってもよい。チタンとあわせて、ニオブを上記範囲で含むことにより、少ないニオブの含有量であっても、リチウムニッケルマンガン複合酸化物の圧縮時の体積抵抗率を非常に増加させることができ、かつ、二次電池の正極に用いた際に酸素放出を抑制し、高い熱安定性を有することができる。
【0035】
また、上記物質量比において、チタンの物質量の比(f)とニオブの物質量の比(g)との合計(f+g)は、0.030以下である。f+gが上記範囲である場合、高い熱安定性を有しつつ、より高い電池容量を得ることが可能となる。
【0036】
また、上記物質量比において、チタンの物質量の比(f)よりも、ニオブの物質量の比(g)の方が小さく(f>g)、好ましくはf≧2gであり、より好ましくはf≧3gであり、さらに好ましくはf≧4gである。ニオブは、チタンと比べて高価な元素であるため、チタンよりも含有量を少なくすることにより、製造コストを低減することができ、かつ、チタンと組み合わせることにより、高い熱安定性を有することができる。
【0037】
なお、リチウムニッケルマンガン複合酸化物の組成は、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析法による定量分析により測定することができる。
【0038】
(ニオブの分布)
本実施形態に係るリチウムニッケルマンガン複合酸化物に含まれるニオブ(Nb)は、一次粒子間の粒界に偏析することが好ましい。ニオブの偏析は、例えば、走査型透過電子顕微鏡のエネルギー分散型X線分光法(STEM-EDX)により、一次粒子断面の組成を面分析/線分析して、一次粒子間の粒界でのニオブの濃縮を検出することにより確認できる。なお、ニオブの一部は、一次粒子の内部に存在してもよい。
【0039】
また、STEM-EDXにより求められる、一次粒子内部のニオブ濃度に対する、一次粒子間の粒界のニオブ濃度が1.3倍以上であることが好ましく、1.5倍以上であることがより好ましい。なお、ニオブ濃度の上限は、特に限定されず、例えば、5倍以下である。
【0040】
なお、一次粒子の内部、又は、粒界におけるニオブの濃度は、STEM-EDX測定により、複数の二次粒子の断面の組成を面分析/線分析/点分析することにより確認することができる。
【0041】
例えば、一次粒子間の粒界のニオブ濃度は、複数の二次粒子の断面から、一次粒子間の粒界を含む領域(例えば、130nm×130nmの測定領域)を無作為に20個選択し、それぞれの領域の組成を点分析により確認し、その平均値を算出して得ることができる。また、一次粒子内のニオブ濃度は測定する場合は、同様に、一次粒内の内部の領域を無作為に20個選択し、それぞれの領域の組成を点分析により確認し、その平均値を算出して得ることができる。
【0042】
(チタンの分布)
本実施形態に係るリチウムニッケルマンガン複合酸化物に含まれるチタン(Ti)の分布は、特に限定されず、一次粒子の内部及び粒界の少なくとも一方に存在してもよく、一次粒子の内部に固溶してもよいが、二次電池における電池容量を向上させるという観点から、固溶することが好ましい。ここで、チタンが固溶するとは、例えば、STEM-EDXを用いた二次粒子断面の面分析により、一次粒子の内部にチタンが検出され、かつ、チタンの一次粒子の界面への濃縮が確認されない状態をいう。また、チタンは、一次粒子の内部の全面にわたって検出されることが好ましい。
【0043】
例えば、STEM-EDXによって求められる、一次粒子内部のチタン濃度に対する、一次粒子間の粒界のチタン濃度は、1.3倍未満であることが好ましく、、1.2倍以下であってもよく、1.0倍以下であってもよい。また、一次粒子内部のチタン濃度に対する、一次粒子間の粒界におけるチタン濃度は、0.8倍以上1.2倍以下であってもよく、0.9以上1.1倍以下であってもよい。なお、チタン濃度は、上述した、ニオブ濃度と同様に、STEM-EDXの面分析等により測定することができる。
【0044】
なお、本実施形態に係るリチウムニッケルマンガン複合酸化物において、上記のニオブ(Nb)、及び、チタン(Ti)以外の金属元素の分布は、特に限定されないが、例えば、Ni、Mn、及び、Coは、二次粒子を構成する複数の一次粒子の内部の全面にわたって検出されることが好ましい。
【0045】
[体積平均粒径(Mv)]
本実施形態に係る正極活物質の体積平均粒径(Mv)は、8μm以上20μm以下であることが好ましく、10μm以上17μm以下であることがより好ましい。体積平均粒径Mvが上記範囲である場合、正極活物質を二次電池の正極に用いた際、高い出力特性および電池容量と、正極への高い充填性とを両立させることができる。
【0046】
一方、体積平均粒径(Mv)が8μm未満である場合、正極への高い充填性が得られないことがある。また、体積平均粒径(Mv)が20μmを超える場合、高い出力特性や電池容量が得られないことがある。なお、平均粒径は、例えば、レーザー光回折散乱式粒度分布計により測定される体積積算値から求めることができる。
【0047】
[(D90-D10)/Mv](ばらつき指数)
本実施形態に係る正極活物質は、レーザー回折散乱法による粒度分布におけるD90及びD10と、体積平均粒径(Mv)とによって算出される[(D90-D10)/Mv]が、0.80以上1.20以下であることが好ましい。また、[(D90-D10)/Mv]は、正極活物質を構成する粒子の粒径のばらつき指数を示す。なお、D90、D10及びMvは、それぞれ粒度分布曲線における粒子量の体積積算で90%での粒径(D90)、10%での粒径(D10)、及び、体積平均粒径(Mv)を意味する。
【0048】
正極活物質を構成する粒子の粒度分布が広い範囲になっている場合、体積平均粒径(Mv)に対して粒径が小さい微粒子や、平均粒径に対して粒径の大きい粗大粒子が多く存在することになる。よって、ばらつき指数が上記範囲である場合、微粒子や粗大粒子が混在して、充填密度が高くなり、体積当たりのエネルギー密度を高めることができる。上記のばらつき指数を有する正極活物質の製造方法は限定されることはないが、例えば、後述する混合工程(S10)において用いるニッケルマンガン複合化合物を連続晶析法で作製することにより得ることができる。
【0049】
一方、正極活物質のばらつき指数が0.80未満である場合、体積エネルギー密度が低下することがある。ばらつき指数の上限は、特に限定されないが、例えば、1.20程度である。なお、後述する焼成工程(S20)において、焼成温度が1000℃を超えると粒径のばらつき指数が1.20を超えることがある。この場合、正極活物質を形成したときに比表面積が低下して正極の抵抗が上昇して電池容量が低下することがある。
【0050】
[4.0g/cmに圧縮時の体積抵抗率]
本実施形態に係る正極活物質は、圧粉抵抗測定により求められる、4.0g/cmに圧縮した時の体積抵抗率が5.0×10Ω・cm以上1.0×10Ω・cm以下であり、好ましくは1.0×10Ω・cm以上1.0×10Ω・cm以下であり、より好ましくは2.0×10Ω・cm以上1.0×10Ω・cm以下である。正極活物質の体積抵抗率が上記範囲である場合、短絡時の高い熱安定性を得ることができる。通常、正極活物質の導電率が高いほど、電気化学反応における抵抗が低い優れた活物質と考えられるが、短絡時の熱安定性を考慮した場合、適度に体積抵抗率が高いことにより、短絡時の急激な電流の発生を抑制することができる。
【0051】
なお、体積抵抗率は、例えば、正極活物質を4.5g以上5.5g以下の範囲内に秤量し、直径20mmの円柱状に4.0g/cmとなるように加圧成型した後、加圧した状態でJIS K 7194:1994に準拠した4探針法による抵抗率試験方法により測定して求めることができる。
【0052】
[最大酸素発生ピーク温度]
本実施形態に係る正極活物質は、過充電状態における、昇温時の最大酸素発生ピーク温度が250℃以上であることが好ましく、260℃以上であることがより好ましい。昇温時の最大酸素発生ピーク温度の上限は特に限定されないが、300℃以下程度である。なお、最大酸素発生ピーク温度は、実施例に記載の方法で測定することができる。また、最大酸素発生ピーク温度とは、昇温時に発生した酸素が極大かつ最大となるピークの温度をいう。
【0053】
[最大酸素放出速度]
本実施形態に係る正極活物質は、過充電状態における、昇温時の最大酸素放出速度が低いことが望ましい。最大酸素放出速度は、チタン、ニオブを添加せず、組成に応じて調整された焼成温度とした以外は、同様の条件で製造された正極活物質を100%とした場合、60%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましい。昇温時の最大酸素放出速度の下限は特に限定されないが、0.1%以上程度である。なお、最大酸素放出速度は、実施例に記載の方法で測定することができる。また、最大酸素放出速度とは、昇温時の重量減少を時間で微分した値の絶対値が最も大きな時間における、重量減少速度をいう。なお、組成に応じて調整された焼成温度とは、その組成において、放電容量が最も高くなる温度範囲(すなわち、結晶性が十分に高くなる温度範囲)をいい、通常、添加元素の量が多いほど、高くなる傾向がある。
【0054】
[熱暴走温度]
本実施形態に係る正極活物質を用いたリチウムイオン電池は、充電状態における、ARC(Accelerated rate calorimeter)測定での熱暴走温度が高いことが望ましい。熱暴走温度は、チタン、ニオブを添加せず、組成に応じて調整された焼成温度とした以外は、同様の条件で製造された正極活物質の熱暴走開始温度を基準とした場合、+8℃以上であることが好ましく、+10℃以上であることがより好ましい。熱暴走温度の上限は特に限定されない。なお、熱暴走温度は、実施例に記載の方法で測定することができる。また、熱暴走温度とは、ARC測定において発熱速度が10℃/minを超えたときの温度をいう。
【0055】
2.リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法
図1、2(A)、2(B)は、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法(以下、「正極活物質の製造方法」ともいう。)の一例を示す図である。得られた正極活物質は、複数の一次粒子が凝集した二次粒子で構成されたリチウムニッケルマンガン複合酸化物を含む。また、この製造方法により、上述したリチウムニッケルマンガン複合酸化物を含む正極活物質を工業的規模で容易に得ることができる。なお、以下の説明は、本実施形態に係る製造方法の一例であって、製造方法を限定するものではない。
【0056】
図1に示すように、本実施形態に係る製造方法は、少なくとも、ニッケルマンガン複合化合物と、チタン化合物と、ニオブ化合物と、リチウム化合物とを混合して、混合物を得る、混合工程(S10)と、混合物を焼成してリチウムニッケルマンガン複合酸化物を得る、焼成工程(S20)と、を備える。
【0057】
また、混合工程(S10)に用いられるニッケルマンガン複合化合物は、例えば、図2(A)及び図2(B)に示すように、晶析工程(S1)、及び/又は、熱処理工程(S2)を備える方法により得られてもよい。以下、工程ごとに詳細に説明する。
【0058】
[混合工程(S10)]
図1に示すように、混合工程(S10)は、ニッケルマンガン複合化合物と、チタン化合物と、ニオブ化合物と、リチウム化合物とを混合し、混合物を得る工程である。また必要に応じてジルコニウム化合物も混合させる。チタン化合物と、ニオブ化合物と、リチウム化合物と、必要に応じジルコニウム化合物とは、例えば、粉末(固相)で添加し、混合することができる。以下、各材料について説明する。
【0059】
(ニッケルマンガン複合化合物)
混合工程(S10)で用いられるニッケルマンガン複合化合物は、公知の方法で得ることができる。ニッケルマンガン複合化合物中の金属(Ni、Mn、Co等)の含有量(組成)は、リチウムニッケルマンガン複合酸化物粒子中でもほぼ維持されるため、各金属の含有量は、上述のリチウムニッケルマンガン複合酸化物中の含有量と同様の範囲であることが好ましい。なお、本実施形態で用いられるニッケルマンガン複合化合物は、上述した金属元素(Ni、Mn、Co等)、水素及び酸素以外の元素を、本発明の効果を阻害しない範囲で少量含んでもよい。
【0060】
ニッケルマンガン複合化合物は、水酸化物であってもよく、酸化物であってもよい。ニッケルマンガン複合水酸化物の製造方法としては、例えば、金属塩の水溶液とアルカリ溶液を用いて中和晶析する方法が挙げられる。また、ニッケルマンガン複合化合物を熱処理して、ニッケルマンガン複合化合物の水分を除去したり、ニッケルマンガン複合化合物の一部あるいは全てをニッケルマンガン複合酸化物としたりしてもよい。これらの製造方法は、例えば、特許文献2等に記載の方法を参照して得ることができる。
【0061】
(チタン化合物)
チタン化合物としては、チタンを含む公知の化合物を用いることができる。なお、チタン化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0062】
これらの中でも、入手のしやすさや、リチウムニッケルマンガン複合酸化物中への不純物の混入を避けるという観点から、チタンと酸素を含む化合物が好ましい。なお、リチウムニッケルマンガン複合酸化物中に不純物が混入した場合、得られる二次電池の熱安定性や電池容量、サイクル特性の低下を招くことがある。
【0063】
(ニオブ化合物)
ニオブ化合物としては、ニオブを含む公知の化合物を用いることができる。これらの中でも、ニオブ化合物は、入手のしやすさや、リチウムニッケルマンガン複合酸化物中への不純物の混入を避けるという観点から、ニオブと酸素を含む化合物が好ましい。なお、リチウムニッケルマンガン合酸化物中に不純物が混入した場合、得られる二次電池の熱安定性や電池容量、サイクル特性の低下を招くことがある。
【0064】
(リチウム化合物)
リチウム化合物は、特に限定されず、リチウムを含む公知の化合物を用いることができ、例えば、炭酸リチウム、水酸化リチウム、硝酸リチウム、又は、これらの混合物などが用いられる。これらの中でも、残留不純物の影響が少なく、焼成温度で溶解するという観点から、炭酸リチウム、水酸化リチウム、又は、これらの混合物が好ましい。
【0065】
(混合方法)
ニッケルマンガン複合化合物とリチウム化合物とチタン化合物とニオブ化合物と、必要に応じてジルコニウム化合物との混合方法は、特に限定されず、これらの粒子の形骸が破壊されない程度で、これらの粒子が十分に混合されればよい。混合方法としては、例えば、一般的な混合機を使用して混合することができ、例えばシェーカーミキサーやレーディゲミキサー、ジュリアミキサー、Vブレンダーなどを用いて混合することができる。なお、チタン混合物は、後述する焼成工程の前に十分混合しておくことが好ましい。混合が十分でない場合、正極活物質の個々の粒子間でLiとLi以外の金属元素Me(本実施形態ではMe=Ni+Mn+元素M+Ti+Nb)との原子%比(Li/Me、物質量の比におけるaに相当)がばらつき、十分な電池特性が得られない等の問題が生じることがある。
【0066】
リチウム化合物は、混合物中のLi/Meが、0.97以上1.10以下となるように、混合される。つまり、混合物におけるLi/Meが、得られる正極活物質におけるLi/Meと同じになるように混合される。これは、焼成工程(S20)前後で、Li/Me及び各金属元素のモル比は変化しないので、この混合工程(S10)における、混合物のLi/Meが、正極活物質のLi/Meとなるからである。
【0067】
なお、混合物中のニオブ(Nb)及びチタン(Ti)の含有量(比率)は、リチウムニッケルマンガン複合酸化物中でもほぼ維持されるため、ニオブ化合物及びチタン化合物の混合量は、上述のリチウムニッケルマンガン複合酸化物中のニオブ及びチタンの含有量と同様の範囲であることが好ましい。
【0068】
[焼成工程(S20)]
焼成工程(S20)は、混合工程(S10)で得られた混合物を焼成してリチウムニッケルマンガン複合酸化物を得る工程である。
【0069】
混合物を焼成すると、ニッケルマンガン複合化合物にリチウム化合物中のリチウムが拡散するので、多結晶構造の粒子からなるリチウムニッケルマンガン複合酸化物が形成される。リチウム化合物は、焼成時の温度で溶融し、ニッケルマンガン複合化合物内に浸透してリチウムニッケルマンガン複合酸化物を形成する。リチウム化合物は、焼成時の温度で溶融し、ニッケルマンガン複合化合物内に浸透して、リチウムニッケルマンガン複合酸化物を形成する。この際、リチウム混合物中に含まれるニオブ、チタンも、溶融したリチウム化合物とともに、二次粒子内部まで浸透し、一次粒子においても結晶粒界などがあれば浸透すると考えられる。以下、焼成条件を詳しく説明するが、リチウムニッケルマンガン複合酸化物に含有される金属元素の物質量の比に応じて、電池特性が最適化されるように、以下に説明する各焼成条件の範囲内で調整される。
【0070】
焼成雰囲気は、酸化雰囲気とするのが好ましく、酸素濃度を大気よりも高めるのがより好ましい。酸化雰囲気とすることで、高い電池容量を維持しつつ熱安定性を向上し、電池特性と熱安定性を両立した正極活物質を得ることができる。
【0071】
焼成温度は、酸化雰囲気中760℃以上1000℃以下であり、好ましくは760℃以上950℃以下である。上記温度で焼成する場合、リチウム化合物の溶融が生じ、チタンの浸透と拡散が促進される。また、混合物は、マンガンを含むことにより、焼成温度を高くすることができる。焼成温度を高くすることで、チタン、及び、ニオブの拡散が促進される。さらに、リチウムニッケルマンガン複合酸化物の結晶性が高くなり、電池容量をより向上させることができる。
【0072】
一方、焼成温度が760℃未満である場合、ニッケルマンガン複合化合物中へのリチウム、チタン、マンガンの拡散が十分に行われなくなり、余剰のリチウムや未反応の粒子が残ったり、結晶構造が十分整わなくなったりして、十分な電池特性が得られないという問題が生じる。また、焼成温度が1000℃を超える場合、形成されたリチウムニッケルマンガン複合酸化物の粒子間で激しく焼結が生じるとともに、異常粒成長を生じる可能性がある。異常粒成長が生じると、焼成後の粒子が粗大となってしまい、正極活物質を形成したときに充填性が低下するほか、結晶構造の乱れにより反応抵抗が増加し、放電容量が低下するという問題が生じる。
【0073】
焼成時間は、少なくとも3時間以上とすることが好ましく、より好ましくは、6時間以上24時間以下である。焼成時間が3時間未満である場合、リチウムニッケルマンガン複合酸化物の生成が十分に行われないことがある。また、焼成に用いられる炉は、特に限定されず、酸素気流中で混合物を焼成できるものであればよいが、ガス発生がない電気炉を用いることが好ましく、バッチ式又は連続式の炉のいずれも用いることができる。
【0074】
3.リチウムイオン二次電池
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池(以下、「二次電池」ともいう。)は、上述した正極活物質を含む正極と、負極と、非水系電解質とを備える。二次電池は、例えば、正極、負極、及び非水系電解液を備える。また、二次電池は、例えば、正極、負極、及び固体電解質を備えてもよい。また、二次電池は、リチウムイオンの脱離及び挿入により、充放電を行う二次電池であればよく、例えば、非水系電解液二次電池であってもよく、全固体リチウム二次電池であってもよい。なお、以下に説明する実施形態は例示にすぎず、本実施形態に係る二次電池は、本明細書に記載されている実施形態を基づいて、種々の変更、改良を施した形態に適用してもよい。
【0075】
本実施形態に係る二次電池は、高い熱安定性を低コストで実現できる。また、二次電池に用いられる正極活物質は、上述した工業的な製造方法で得ることができる。また、二次電池は、常に高容量を要求される小型携帯電子機器(ノート型パーソナルコンピュータや携帯電話端末など)の電源に好適である。また、二次電池は、従来のリチウムコバルト系酸化物あるいはリチウムニッケル系酸化物の正極活物質を用いた電池との比較においても、容量のみならず、耐久性及び過充電時の熱安定性に優れている。そのため、小型化、高容量化が可能であることから、搭載スペースに制約を受ける電気自動車用電源として好適である。なお、二次電池は、純粋に電気エネルギーで駆動する電気自動車用の電源のみならず、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの燃焼機関と併用するいわゆるハイブリット車用の電源としても用いることができる。
【実施例
【0076】
以下に、本発明の実施例及び比較例によって、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例における正極活物質に含有される金属の分析方法及び正極活物質の各種評価方法は、以下の通りである。
【0077】
(1)組成の分析:ICP発光分析法で測定した。
【0078】
(2)体積平均粒径Mv、および粒径のばらつき指数〔(D90-D10)/平均体積粒径〕:レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(日機装株式会社製、マイクロトラックHRA)により、体積基準で行なった。
【0079】
(3)各元素の濃度
正極活物質をS-TEMによる一次粒子の断面分析が可能となるように加工した。正極活物質に含まれる複数の二次粒子から任意に20個の一次粒子を選択し、個々の一次粒子断面の内部及び粒界を含む領域をS-TEMのEDXにより組成を点分析した。
【0080】
(4)体積抵抗率:正極活物質5gを直径20mmの円柱状に4.0g/cmとなるように加圧成型した後、加圧した状態でJIS K 7194:1994に準拠した4探針法による抵抗率試験方法により測定して求めた。
【0081】
(5)初期放電容量:
初期充電容量及び初期放電容量は、以下の方法で、図3に示すコイン型電池CBAを作製してから24時間程度放置し、開回路電圧OCV(open circuit voltage)が安定した後、正極に対する電流密度を0.1mA/cmとしてカットオフ電圧4.3Vまで充電して初期充電容量とし、1時間の休止後、カットオフ電圧3.0Vまで放電したときの容量を初期放電容量とした。放電容量の測定には,マルチチャンネル電圧/電流発生器(株式会社アドバンテスト製、R6741A)を用いた。
【0082】
(コイン型電池の作製)
得られた正極活物質52.5mg、アセチレンブラック15mg、およびポリテトラフッ化エチレン樹脂(PTFE)7.5mgを混合し、100MPaの圧力で直径11mm、厚さ100μmにプレス成形し、図3に示す正極(評価用電極)PEを作製した。作製した正極PEを真空乾燥機中120℃で12時間乾燥した後、この正極PEを用いて2032型コイン型電池CBAを、露点が-80℃に管理されたAr雰囲気のグローブボックス内で作製した。負極NEには、直径17mm厚さ1mmのリチウム(Li)金属を用い、電解液には、1MのLiClOを支持電解質とするエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の等量混合液(富山薬品工業株式会社製)を用いた。セパレータSEには膜厚25μmのポリエチレン多孔膜を用いた。また、コイン型電池CBAは、ガスケットGAとウェーブワッシャーWWを配置し、正極缶PCと負極缶NCとでコイン型の電池に組み立てた。得られた正極活物質の初期充放電容量および正極抵抗値の測定結果を表1に示す。
【0083】
(6)最大酸素発生ピークの温度
正極の熱安定性評価は、正極活物質を過充電状態とし、加熱することで放出される酸素量の定量により行った。(E)と同様にコイン型電池を作製し、カットオフ電圧4.3Vまで0.05CレートでCC充電(定電流―定電圧充電)した。その後、コイン電池を解体し、短絡しないよう慎重に正極のみ取り出して、DMC(ジメチルカーボネート)で洗浄し、乾燥した。乾燥後の正極をおよそ2mg量りとり、ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS、島津製作所、QP-2010plus)を用いて、昇温速度10℃/minで室温から450℃まで昇温した。キャリアガスにはヘリウムを用いた。加熱時に発生した酸素(m/z=32)の発生挙動を測定し、最大酸素発生ピーク温度を得た。
【0084】
(8)最大酸素放出速度
最大酸素放出速度は、正極活物質を過充電状態とし、加熱することで減少する重量変化から算出した。(E)と同様にコイン型電池を作製し、カットオフ電圧4.3Vまで0.05CレートでCC充電(定電流―定電圧充電)した。その後、コイン電池を解体し、短絡しないよう慎重に正極のみ取り出して、DMC(ジメチルカーボネート)で洗浄し、乾燥した。乾燥後の正極をおよそ10mg量りとり、熱重量分析装置(TG、リガク製、Thermo plus II)を用いて、昇温速度10℃/minで室温から450℃まで昇温した。測定雰囲気は窒素で行った。加熱時の重量減少を微分し、最も大きな値を最大酸素放出速度とした。本実施形態では比較例1を100%とした相対値を算出した。
【0085】
(9)熱暴走温度
電池としての安全性評価を実施するため、黒鉛を負極活物質とする負極を用いた電池を作製し、ARC(Accelerated rate calorimeter)測定試験を実施した。以下にARC測定試験用電池の作製方法を示す。正極活物質を95質量部、導電材としてアセチレンブラックを3質量部、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを2質量部の割合で混合した。当該混合物を混練機(T.K.ハイビスミックス、プライミクス株式会社製)を用いて混練し、正極合材スラリーを調製した。次いで、正極合材スラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔に塗布し、塗膜を乾燥してアルミニウム箔に正極活物質層を形成した。これを所定の大きさに切り出し正極とした。作製した正極と、黒鉛を負極活物質とする負極とを、セパレータを介して互いに対向するように積層し、電極体を作製した。次いで、1.2Mの六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を支持塩とする、エチレンカーボネート(EC)と、メチルエチルカーボネート(MEC)と、ジメチルカーボネート(DMC)を3:3:4の体積比で混合した非水電解質と電極体とをアルミニウム製の外装体に挿入し、ARC測定試験用電池を作製した。作製した電池をARC(Accelerated rate calorimeter、Thermal Hazard Technology社製)を用いて、以下に示す条件で熱暴走温度を測定した。
測定開始温度:130℃
保持温度:20min
発熱検出温度:0.02℃/min
昇温幅:5℃
電池電圧:4.2V充電状態
発熱速度が10℃/minを超えたときの温度を熱暴走温度とした。本実施形態では比較例1の熱暴走温度を基準とし、比較例1の熱暴走温度との差を求め、熱暴走温度変化量として示す。
【0086】
(実施例1)
[混合工程]
公知の方法で得られたニッケルマンガンコバルト複合水酸化物の粒子(ニッケル:マンガン:コバルトのモル比が85:10:5)と、水酸化リチウムと、酸化チタンと、ニオブ酸とを、リチウム:(ニッケル+マンガン+コバルト):チタン:ニオブの物質量の比が1.01:0.973:0.022:0.005になるように秤量した後、シェーカーミキサー装置(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製TURBULA TypeT2C)を用いて十分に混合し、リチウム混合物を得た。
【0087】
[焼成工程]
得られたリチウム混合物を酸素気流中にて870℃で10時間保持して焼成し、その後、解砕してリチウムニッケルマンガンコバルトチタン複合酸化物の粒子を得た。
【0088】
[評価]
得られた正極活物質の評価結果を表1に示す。また、正極活物質における、一次粒子内部のチタン濃度に対する、一次粒子間の粒界のチタン濃度の比(粒界/粒内)は、0.9であり、一次粒子間の粒界でのチタンの濃縮は観察されなかった。なお、一部の実施例および比較例において、最大酸素放出速度および/又は熱暴走温度の評価を行い、その評価結果については、表2に示す。
【0089】
(実施例2)
混合工程で、得られたニッケルマンガンコバルト複合水酸化物の粒子と、水酸化リチウムと、酸化チタンと、ニオブ酸とを、リチウム:(ニッケル+マンガン+コバルト):チタン:ニオブの物質量の比が1.02:0.975:0.022:0.003になるように秤量したこと以外は実施例1と同様に正極活物質を得るとともに評価した。正極活物質の製造条件及び評価結果を表1に示す。
【0090】
(実施例3)
混合工程で、得られたニッケルマンガンコバルト複合水酸化物の粒子と、水酸化リチウムと、酸化チタンと、ニオブ酸とを、リチウム:(ニッケル+マンガン+コバルト):ジルコニウム:チタン:ニオブの物質量の比が1.01:0.972:0.025:0.003になるように秤量したこと以外は実施例1と同様に正極活物質を得るとともに評価した。正極活物質の製造条件及び評価結果を表1に示す。
【0091】
(実施例4)
混合工程で、得られたニッケルマンガンコバルト複合水酸化物の粒子と、水酸化リチウムと、酸化ジルコニウムと、酸化チタンと、ニオブ酸とを、リチウム:(ニッケル+マンガン+コバルト):ジルコニウム:チタン:ニオブの物質量の比が1.03:0.970:0.003:0.022:0.005になるように秤量し、焼成工程で、焼成温度を860℃としたこと以外は実施例1と同様に正極活物質を得るとともに評価した。正極活物質の製造条件及び評価結果を表1、2に示す。
【0092】
(実施例5)
混合工程で、得られたニッケルマンガンコバルト複合水酸化物の粒子と、水酸化リチウムと、酸化ジルコニウムと、酸化チタンと、ニオブ酸とを、リチウム:(ニッケル+マンガン+コバルト):ジルコニウム:チタン:ニオブの物質量の比が1.07:0.970:0.003:0.022:0.005になるように秤量し、焼成工程で、焼成温度を830℃としたこと以外は実施例1と同様に正極活物質を得るとともに評価した。正極活物質の製造条件及び評価結果を表1に示す。
【0093】
(実施例6)
混合工程で、得られたニッケルマンガンコバルト複合水酸化物の粒子と、水酸化リチウムと、酸化チタンと、ニオブ酸とを、リチウム:(ニッケル+マンガン+コバルト):チタン:ニオブの物質量の比が1.00:0.973:0.022:0.005になるように秤量したこと以外は実施例1と同様に正極活物質を得るとともに評価した。正極活物質の製造条件及び評価結果を表1、2に示す。
【0094】
(比較例1)
混合工程で、チタン化合物、及び、ニオブ化合物を準備せず、得られたニッケルマンガンコバルト複合水酸化物の粒子と、水酸化リチウムと、をリチウム:ニッケル:マンガン:コバルトの物質量の比が1.02:0.85:0.10:0.05になるように秤量し、焼成工程で、焼成温度を800℃としたこと以外は実施例1と同様に正極活物質を得るとともに評価した。正極活物質の製造条件及び評価結果を表1、2に示す。
【0095】
(比較例2)
混合工程で、チタン化合物を準備せず、得られたニッケルマンガンコバルト複合水酸化物の粒子と、水酸化リチウムと、ニオブ酸と、を、リチウム:(ニッケル+マンガン+コバルト):ニオブの物質量の比が1.00:0.990:0.010になるように秤量し、焼成工程で、焼成温度を850℃としたこと以外は実施例1と同様に正極活物質を得るとともに評価した。正極活物質の製造条件及び評価結果を表1、2に示す。
【0096】
(比較例3)
混合工程で、得られたニッケルマンガンコバルト複合水酸化物の粒子と、水酸化リチウムと、酸化チタンと、ニオブ酸とを、リチウム:(ニッケル+マンガン+コバルト):チタン:ニオブの物質量の比が1.01:0.977:0.022:0.001になるように秤量し、焼成工程で、焼成温度を840℃としたこと以外は実施例1と同様に正極活物質を得るとともに評価した。正極活物質の製造条件及び評価結果を表1に示す。
【0097】
【表1】
【0098】
【表2】
【0099】
(評価結果)
表1に示されるように、実施例で得られた正極活物質は、圧縮時の体積抵抗率が5×10Ω・cm以上、かつ、最大酸素発生ピーク温度が250℃以上であり、高い熱安定性を有し、過充電時の酸素放出が抑制されることが明らかである。また、実施例の正極活物質における、一次粒子内部のチタン濃度に対する、一次粒子間の粒界のチタン濃度の比(粒界/粒内)は、0.8以上1.1以下であり、一次粒子間の粒界でのチタンの濃縮は観察されなかった。
【0100】
また、表2に示されるように、チタンおよびニオブを含まない比較例1に対して、実施例で得られた正極活物質は、最大酸素放出速度が60%以下であり、熱暴走温度も+8℃以上であった。この結果からも、実施例の正極活物質では、過充電時での酸素放出が抑制され、自己発熱開始温度がより高く、熱安定性が向上していることが示された。
【0101】
一方で、チタンおよびニオブを添加していない比較例1では、最大酸素発生ピーク温度が250℃未満であり、実施例に対し熱安定性が低かった。また、チタンのみを添加した比較例2や、ニオブ添加量の少ない比較例3についても、同様に最大酸素発生ピーク温度が250℃未満であり、実施例に対し熱安定性が低かった。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本実施形態では、高い熱安定性と優れた電池特性と有するリチウムイオン二次電池用正極活物質を工業的な製造方法で得ることができる。このリチウムイオン二次電池は、常に高容量を要求される小型携帯電子機器(ノート型パーソナルコンピュータや携帯電話端末など)の電源に好適である。
【0103】
また、本実施形態に係る正極活物質を用いた二次電池は、従来のリチウムニッケル系酸化物の正極活物質を用いた電池との比較においても、熱安定性に優れており、さらに容量の点で優れている。そのため、小型化が可能であることから、搭載スペースに制約を受ける電気自動車用電源として好適である。
【0104】
また、本実施形態に係る正極活物質を用いた二次電池は、純粋に電気エネルギーで駆動する電気自動車用の電源のみならず、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの燃焼機関と併用するいわゆるハイブリット車用の電源や定置型蓄電池としても用いることができる。
【0105】
なお、本発明の技術範囲は、上述の実施形態などで説明した態様に限定されるものではない。上述の実施形態などで説明した要件の1つ以上は、省略されることがある。また、上述の実施形態などで説明した要件は、適宜組み合わせることができる。また、法令で許容される限りにおいて、日本特許出願である特願2019-127263、及び、本明細書で引用した全ての文献の内容を援用して本文の記載の一部とする。
【符号の説明】
【0106】
CBA…コイン型電池(評価用)
PE…正極(評価用電極)
NE…負極
SE…セパレータ
GA…ガスケット
WW…ウェーブワッシャー
PC…正極缶
NC…負極缶
G…空隙
図1
図2
図3