(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-06
(45)【発行日】2025-03-14
(54)【発明の名称】半導体光デバイスおよび半導体光デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01S 5/026 20060101AFI20250307BHJP
G02B 6/43 20060101ALI20250307BHJP
【FI】
H01S5/026 618
G02B6/43
(21)【出願番号】P 2022500407
(86)(22)【出願日】2021-02-08
(86)【国際出願番号】 JP2021004669
(87)【国際公開番号】W WO2021161971
(87)【国際公開日】2021-08-19
【審査請求日】2023-12-21
(32)【優先日】2020-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松原 礼高
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 淳一
(72)【発明者】
【氏名】片山 悦治
(72)【発明者】
【氏名】黒部 立郎
【審査官】百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0051872(US,A1)
【文献】特開2008-241732(JP,A)
【文献】特開平11-337775(JP,A)
【文献】国際公開第2015/111600(WO,A1)
【文献】特開2009-086238(JP,A)
【文献】特開2019-040040(JP,A)
【文献】特開平10-296741(JP,A)
【文献】特開平08-078657(JP,A)
【文献】特表2019-509635(JP,A)
【文献】特表2019-507374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
G02B 6/12-6/14
G02B 6/26-6/27
G02B 6/30-6/34
G02B 6/42-6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一方向と交差したベースと、
前記ベースから前記第一方向に突出し、コア層と前記コア層を取り囲むクラッド層とを備える平面光波回路を有した第一突出部と、
前記ベースから前記第一方向に突出し、前記第一方向と交差した第二方向に前記第一突出部と並び、前記ベースからの前記第一方向での高さが前記第一突出部よりも低い第二突出部と、
前記第二突出部の前記第一方向の端面上に載置され、前記コア層と光学的に接続された光半導体素子と、
前記端面上に露出するように前記第二突出部に設けられ、前記コア層と同じ材料で作られたマーカと、
を備え
、
前記第二突出部として、二つの第二突出部を備え、
前記光半導体素子は、当該光半導体素子の前記第一方向の反対方向の端面に設けられ前記二つの第二突出部の間に位置した第一電極を有し、
前記二つの第二突出部の間に位置し前記第一電極と電気的に接続された導体を備え、
前記導体は、導電性ペーストであり、
前記ベースの前記第一方向の端面の、前記二つの第二突出部の間となる位置に、前記導電性ペーストと接し、他の部位よりも面粗度が大きい粗面が設けられ、
前記光半導体素子で生じた熱が前記第一電極、前記導電性ペースト、および前記粗面を介して前記ベースへ逃げるよう構成された、半導体光デバイス。
【請求項2】
前記コア層の前記第一方向の反対方向の端部の前記ベースからの前記第一方向での高さと、前記マーカの前記第一方向の反対方向の端部の前記ベースからの前記第一方向での高さとが、同じである、請求項1に記載の半導体光デバイス。
【請求項3】
前記マーカとして、前記第一方向の反対方向に見た場合に前記光半導体素子のエッジと隙間をあけて隣り合う第一マーカを備えた、請求項1または2に記載の半導体光デバイス。
【請求項4】
前記マーカとして、二つの第二マーカを備え、
前記第一方向の反対方向に見た場合に、前記光半導体素子が、前記二つの第二マーカの間に位置された、請求項1~3のうちいずれか一つに記載の半導体光デバイス。
【請求項5】
前記光半導体素子は、前記第一方向の反対方向に見た場合に四角形状の形状を有し、
前記マーカとして、前記第一方向の反対方向に見た場合に前記光半導体素子の角部と隣り合う第三マーカを備えた、請求項1~4のうちいずれか一つに記載の半導体光デバイス。
【請求項6】
前記ベースの前記第一方向の端面の前記二つの第二突出部の間となる位置に設けられ、前記導体と電気的に接続された第二電極を備えた、請求項
1~
5のうちいずれか一つに記載の半導体光デバイス。
【請求項7】
前記ベースの前記二つの第二突出部の間となる位置から前記第一方向に突出し、前記ベースからの前記第一方向での高さが前記二つの第二突出部よりも低い第三突出部と、
前記第三突出部の前記第一方向の端面に設けられ、前記導体と電気的に接続された第三電極と、
を備えた、請求項
1~
6のうちいずれか一つに記載の半導体光デバイス。
【請求項8】
前記二つの
第二突出部は、前記第二方向に離間し、
前記二つの第二突出部のうち前記第一突出部からより遠くに位置した第二突出部と前記第三突出部とが一体化された、請求項
7に記載の半導体光デバイス。
【請求項9】
前記第三突出部と一体化された前記第二突出部に対して当該第三突出部とは反対側で前記ベースから前記第一方向に突出し、当該ベースからの前記第一方向での高さが前記二つの第二突出部よりも高い第四突出部を備え、
前記第四突出部の前記第一方向の端面には、前記第三電極と電気的に接続された第四電極が設けられた、請求項
7または
8に記載の半導体光デバイス。
【請求項10】
前記第三突出部の前記第一方向の端面と、当該第三突出部と一体化された前記第二突出部の前記第一方向の端面と、前記第四突出部の前記第一方向の端面と、に渡って設けられ、前記第三電極と前記第四電極とを電気的に接続する配線パターンを備えた、請求項
9に記載の半導体光デバイス。
【請求項11】
前記第三突出部と当該第三突出部と一体化された前記第二突出部との間に、前記第二方向の反対方向に向かうにつれて前記第一方向へ向かう第一傾斜面を備え、
前記配線パターンが、前記第一傾斜面に沿って延びた部分を有した、請求項
10に記載の半導体光デバイス。
【請求項12】
前記第三突出部と一体化された前記第二突出部と前記第四突出部との間に、前記第二方向の反対方向に向かうにつれて前記第一方向へ向かう第二傾斜面を備え、
前記配線パターンが、前記第二傾斜面に沿って延びた部分を有した、請求項
10または
11に記載の半導体光デバイス。
【請求項13】
前記コア層の中心軸が、前記光半導体素子の活性層の中心軸に対して、前記第一方向の反対方向にずれた、請求項1~
12のうちいずれか一つに記載の半導体光デバイス。
【請求項14】
前記光半導体素子の前記第二方向の端部と、前記第一突出部の前記第二方向の反対方向の端面とが当接した、請求項1~
13のうちいずれか一つに記載の半導体光デバイス。
【請求項15】
前記第一突出部の前記第二方向の反対方向の端面は、前記第一方向に向かうにつれて前記第二方向に向かうように傾斜し、前記光半導体素子の前記第二方向の端部と当接した、請求項
14に記載の半導体光デバイス。
【請求項16】
前記第一突出部と前記第二突出部との間に前記第一方向の反対方向に凹む凹部が設けられた、請求項
14または
15に記載の半導体光デバイス。
【請求項17】
前記第一突出部の前記第二方向の反対方向の端面は、
前記コア層から前記第一方向および前記第二方向と交差した第三方向にずれて位置し、前記光半導体素子の前記第二方向の端部と当接した第一面と、
前記第一面に対して前記第三方向の反対方向に隣接し、前記コア層が前記光半導体素子の前記第二方向の端部と隙間をあけて前記第二方向の反対方向に露出し、前記第三方向の反対方向に向かうにつれて第二方向に向かうように前記第一面に対して傾斜した第二面と、
を有した、請求項
14に記載の半導体光デバイス。
【請求項18】
前記第二面の法線方向と前記コア層の光軸方向とが、斜めに交差した、請求項
17に記載の半導体光デバイス。
【請求項19】
それぞれ前記第二突出部に載置される底面と活性層が露出した前記第二方向の端面とを有するとともにそれぞれ前記第一方向における前記底面と前記活性層との間の距離が異なる、前記光半導体素子としての複数の光半導体素子と、
それぞれ前記第一方向における前記ベースからの高さが異なるとともにそれぞれ別の光半導体素子を載置する、前記第二突出部としての複数の第二突出部と、
それぞれ別の光半導体素子が出力した光が結合される前記コア層としての複数のコア層と、
を備え、
前記第一方向における前記複数のコア層の前記ベースからの距離が同じであり、
前記第二突出部と、当該第二突出部上に載置された前記光半導体素子と、の複数の組み合わせについて、前記第一方向における前記ベースから前記活性層までの距離が同じであり、それぞれの前記光半導体素子が出力した光が、当該光半導体素子と前記第二方向に並ぶ前記コア層に結合される、請求項1~
18のうちいずれか一つに記載の半導体光デバイス。
【請求項20】
第一方向と交差したベース上に前記第一方向に積層され平面光波回路のクラッド層の一部となる部位を含む第一層を形成する工程と、
前記第一層上に前記第一方向に積層され前記平面光波回路のコア層となる部位を含む第二層を形成する工程と、
前記第二層の積層体を選択的に除去することにより前記コア層およびマーカを形成する工程と、
前記第一層上に前記コア層と前記マーカとが形成された積層体上に前記クラッド層の一部となる第三層を形成する工程と、
前記第一層、前記コア層、前記マーカ、および前記第三層の積層体を選択的に除去することにより、少なくとも前記平面光波回路を含み前記ベースから前記第一方向に突出した第一突出部と、前記ベースから前記第一方向に前記第一突出部よりも低い高さで突出し前記第一方向の端面に前記マーカが露出した
二つの第二突出部と、を形成する工程と、
前記ベース上の前記二つの第二突出部の間に導体を設ける工程と、
前記導体が設けられた状態で前記
二つの第二突出部上に前記マーカに対して位置決めした光半導体素子を載置する工程と、
を備え
、
前記光半導体素子は、当該光半導体素子の前記第一方向の反対方向の端面に設けられ前記二つの第二突出部の間に位置した第一電極を有し、
前記導体は前記第一電極と電気的に接続される導電性ペーストであり、
前記ベースの前記第一方向の端面の、前記二つの第二突出部の間となる位置には、前記導電性ペーストと接し、他の部位よりも面粗度が大きい粗面が設けられており、
前記光半導体素子で生じた熱が前記第一電極、前記導電性ペースト、および前記粗面を介して前記ベースへ逃げるよう構成された、半導体光デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体光デバイスおよび半導体光デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコン基板上に平面光波回路を形成するとともに、当該シリコン基板と平面光波回路とを含むサブマウントの所定位置にレーザ素子を取り付けた半導体光デバイスが知られている(特許文献1)。特許文献1では、サブマウントとレーザ素子との位置決めのため、当該サブマウント上にアライメントマーカが形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、このようなアライメントマーカは、サブマウントの表面に金属層を形成し、この金属層をアライメントマーカの形状が残るように除去することで形成される場合が多い。その場合、平面光波回路のコア層に対するアライメントマーカの位置精度が低いと、レーザ素子と平面光波回路との位置精度が低くなってしまう。
【0005】
そこで、本発明の課題の一つは、例えば、光半導体素子の位置決め精度をより高めることを可能とするような、改善された新規な構成を有した半導体光デバイスおよび当該半導体光デバイスの製造方法を得ること、である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の半導体光デバイスは、例えば、第一方向と交差したベースと、前記ベースから前記第一方向に突出し、コア層と前記コア層を取り囲むクラッド層とを備える平面光波回路を有した第一突出部と、前記ベースから前記第一方向に突出し、前記第一方向と交差した第二方向に前記第一突出部と並び、前記ベースからの前記第一方向での高さが前記第一突出部よりも低い第二突出部と、前記第二突出部の前記第一方向の端面上に載置され、前記コア層と光学的に接続された光半導体素子と、前記端面上に露出するように前記第二突出部に設けられ、前記コア層と同じ材料で作られたマーカと、を備える。
【0007】
前記半導体光デバイスにあっては、前記コア層の前記第一方向の反対方向の端部の前記ベースからの前記第一方向での高さと、前記マーカの前記第一方向の反対方向の端部の前記ベースからの前記第一方向での高さとが、同じであってもよい。
【0008】
前記半導体光デバイスは、前記マーカとして、前記第一方向の反対方向に見た場合に前記光半導体素子のエッジと隙間をあけて隣り合う第一マーカを備えてもよい。
【0009】
前記半導体光デバイスは、前記マーカとして、二つの第二マーカを備え、前記第一方向の反対方向に見た場合に、前記光半導体素子が、前記二つの第二マーカの間に位置されてもよい。
【0010】
前記半導体光デバイスにあっては、前記光半導体素子は、前記第一方向の反対方向に見た場合に四角形状の形状を有し、前記半導体光デバイスは、前記マーカとして、前記第一方向の反対方向に見た場合に前記光半導体素子の角部と隣り合う第三マーカを備えてもよい。
【0011】
前記半導体光デバイスは、前記第二突出部として、二つの第二突出部を備え、前記光半導体素子は、当該光半導体素子の前記第一方向の反対方向の端面に設けられ前記二つの第二突出部の間に位置した第一電極を有してもよい。
【0012】
前記半導体光デバイスは、前記二つの第二突出部の間に位置し前記第一電極と電気的に接続された導体を備えてもよい。
【0013】
前記半導体光デバイスにあっては、前記導体は、導電性ペーストであってもよい。
【0014】
前記半導体光デバイスにあっては、前記ベースの前記第一方向の端面の、前記二つの第二突出部の間となる位置に、前記導電性ペーストと接し、他の部位よりも面粗度が大きい粗面が設けられてもよい。
【0015】
前記半導体光デバイスは、前記ベースの前記第一方向の端面の前記二つの第二突出部の間となる位置に設けられ、前記導体と電気的に接続された第二電極を備えてもよい。
【0016】
前記半導体光デバイスは、前記ベースの前記二つの第二突出部の間となる位置から前記第一方向に突出し、前記ベースからの前記第一方向での高さが前記二つの第二突出部よりも低い第三突出部と、前記第三突出部の前記第一方向の端面に設けられ、前記導体と電気的に接続された第三電極と、を備えてもよい。
【0017】
前記半導体光デバイスにあっては、前記二つの突出部は、前記第二方向に離間し、前記二つの第二突出部のうち前記第一突出部からより遠くに位置した第二突出部と前記第三突出部とが一体化されてもよい。
【0018】
前記半導体光デバイスは、前記第三突出部と一体化された前記第二突出部に対して当該第三突出部とは反対側で前記ベースから前記第一方向に突出し、当該ベースからの前記第一方向での高さが前記二つの第二突出部よりも高い第四突出部を備え、前記第四突出部の前記第一方向の端面には、前記第三電極と電気的に接続された第四電極が設けられてもよい。
【0019】
前記半導体光デバイスは、前記第三突出部の前記第一方向の端面と、当該第三突出部と一体化された前記第二突出部の前記第一方向の端面と、前記第四突出部の前記第一方向の端面と、に渡って設けられ、前記第三電極と前記第四電極とを電気的に接続する配線パターンを備えてもよい。
【0020】
前記半導体光デバイスは、前記第三突出部と当該第三突出部と一体化された前記第二突出部との間に、前記第二方向の反対方向に向かうにつれて前記第一方向へ向かう第一傾斜面を備え、前記配線パターンが、前記第一傾斜面に沿って延びた部分を有してもよい。
【0021】
前記半導体光デバイスは、前記第三突出部と一体化された前記第二突出部と前記第四突出部との間に、前記第二方向の反対方向に向かうにつれて前記第一方向へ向かう第二傾斜面を備え、前記配線パターンが、前記第二傾斜面に沿って延びた部分を有してもよい。
【0022】
前記半導体光デバイスにあっては、前記コア層の中心軸が、前記光半導体素子の活性層の中心軸に対して、前記第一方向の反対方向にずれてもよい。
【0023】
前記半導体光デバイスにあっては、前記光半導体素子の前記第二方向の端部と、前記第一突出部の前記第二方向の反対方向の端面とが当接してもよい。
【0024】
前記半導体光デバイスにあっては、前記第一突出部の前記第二方向の反対方向の端面は、前記第一方向に向かうにつれて前記第二方向に向かうように傾斜し、前記光半導体素子の前記第二方向の端部と当接してもよい。
【0025】
前記半導体光デバイスにあっては、前記第一突出部と前記第二突出部との間に前記第一方向の反対方向に凹む凹部が設けられてもよい。
【0026】
前記半導体光デバイスにあっては、前記第一突出部の前記第二方向の反対方向の端面は、前記コア層から前記第一方向および前記第二方向と交差した第三方向にずれて位置し、前記光半導体素子の前記第二方向の端部と当接した第一面と、前記第一面に対して前記第三方向の反対方向に隣接し、前記コア層が前記光半導体素子の前記第二方向の端部と隙間をあけて前記第二方向の反対方向に露出し、前記第三方向の反対方向に向かうにつれて第二方向に向かうように前記第一面に対して傾斜した第二面と、を有してもよい。
【0027】
前記半導体光デバイスにあっては、前記第二面の法線方向と前記コア層の光軸方向とが、斜めに交差してもよい。
【0028】
前記半導体光デバイスは、それぞれ前記第二突出部に載置される底面と活性層が露出した前記第二方向の端面とを有するとともにそれぞれ前記第一方向における前記底面と前記活性層との間の距離が異なる、前記光半導体素子としての複数の光半導体素子と、それぞれ前記第一方向における前記ベースからの高さが異なるとともにそれぞれ別の光半導体素子を載置する、前記第二突出部としての複数の第二突出部と、それぞれ別の光半導体素子が出力した光が結合される前記コア層としての複数のコア層と、を備え、前記第一方向における前記複数のコア層の前記ベースからの距離が同じであり、前記第二突出部と、当該第二突出部上に載置された前記光半導体素子と、の複数の組み合わせについて、前記第一方向における前記ベースから前記活性層までの距離が同じであり、それぞれの前記光半導体素子が出力した光が、当該光半導体素子と前記第二方向に並ぶ前記コア層に結合されてもよい。
【0029】
本発明の半導体光デバイスの製造方法は、例えば、第一方向と交差したベース上に前記第一方向に積層され平面光波回路のクラッド層の一部となる部位を含む第一層を形成する工程と、前記第一層上に前記第一方向に積層され前記平面光波回路のコア層となる部位を含む第二層を形成する工程と、前記第二層の積層体を選択的に除去することにより前記コア層およびマーカを形成する工程と、前記第一層上に前記コア層と前記マーカとが形成された積層体上に前記クラッド層の一部となる第三層を形成する工程と、前記第一層、前記コア層、前記マーカ、および前記第三層の積層体を選択的に除去することにより、少なくとも前記平面光波回路を含み前記ベースから前記第一方向に突出した第一突出部と、前記ベースから前記第一方向に前記第一突出部よりも低い高さで突出し前記第一方向の端面に前記マーカが露出した第二突出部と、を形成する工程と、前記第二突出部上に前記マーカに対して位置決めした光半導体素子を載置する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、例えば、改善された新規な構成を有した半導体光デバイスおよび当該半導体光デバイスの製造方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、第1実施形態の半導体光デバイスの例示的かつ模式的な斜視図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の半導体光デバイスの例示的かつ模式的な側面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の半導体光デバイスの例示的かつ模式的な平面図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の半導体光デバイスのうち発光素子を除いた部位の例示的かつ模式的な平面図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の半導体光デバイスの製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、第2実施形態の半導体光デバイスの
図4と同等部位の例示的かつ模式的な側面図である。
【
図8】
図8は、第3実施形態の半導体光デバイスの一部の例示的かつ模式的な側面図である。
【
図9】
図9は、第4実施形態の半導体光デバイスの例示的かつ模式的な側面図である。
【
図10】
図10は、第5実施形態の半導体光デバイスの一部の例示的かつ模式的な側面図である。
【
図11】
図11は、第6実施形態の半導体光デバイスの例示的かつ模式的な平面図である。
【
図12】
図12は、第7実施形態の半導体光デバイスの例示的かつ模式的な平面図である。
【
図14】
図14は、第8実施形態の半導体光デバイスの一部の例示的かつ模式的な平面図である。
【
図15】
図15は、第9実施形態の半導体光デバイスの一部の例示的かつ模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0033】
以下に示される複数の実施形態は、同様の構成を備えている。よって、各実施形態の構成によれば、当該同様の構成に基づく同様の作用および効果が得られる。また、以下では、それら同様の構成には同様の符号が付与されるとともに、重複する説明が省略される場合がある。
【0034】
本明細書において、序数は、部位や、方向等を区別するために便宜上付与されており、優先順位や順番を示すものではない。
【0035】
また、各図において、X方向を矢印Xで表し、Y方向を矢印Yで表し、Z方向を矢印Zで表す。X方向、Y方向、およびZ方向は、互いに交差するとともに互いに直交している。
【0036】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の半導体光デバイス100Aの斜視図、
図2は、半導体光デバイス100Aの側面図、また、
図3は、半導体光デバイス100Aの平面図である。
【0037】
半導体光デバイス100Aは、ベース10と、第一突出部11と、二つの第二突出部12(12-1,12-2)と、第三突出部13と、第四突出部14と、発光素子20と、を備えている。
【0038】
ベース10は、シリコン基板によって作られている。ベース10は、Z方向と交差するとともに直交し、X方向およびY方向に延びている。ベース10は、表面10aと裏面10bとを有している。表面10aは、Z方向の端面である。表面10aは、Z方向を向き、Z方向と交差するとともに直交し、X方向およびY方向に延びている。裏面10bは、Z方向において表面10aとは反対側に位置されており、Z方向の反対方向の端面である。裏面10bは、Z方向の反対方向を向き、Z方向と交差するとともに直交し、X方向およびY方向に延びている。Z方向は、第一方向の一例である。
【0039】
第一突出部11は、ベース10の表面10aからZ方向に突出している。
図1,2に示されるように、第一突出部11は、Z方向において、第一クラッド層11a、コア層11b、および第二クラッド層11cがこの順に積層された平面光波回路(planar lightwave circuit:PLC)を構成している。コア層11bは、Z方向に略一定の高さ、およびY方向に略一定の幅で、X方向に延びている。コア層11bのX方向と交差する断面の形状は、四角形状である。コア層11bは、導波路層とも称されうる。第一クラッド層11aはコア層11bのY方向およびその反対方向の両側部を埋め込み、第二クラッド層11cとともにクラッド層としてコア層11bを取り囲んでいる。
【0040】
第一クラッド層11aおよび第二クラッド層11cは、例えば、石英系ガラス材料で作られている。コア層11bは、例えば、第一クラッド層11aおよび第二クラッド層11cの屈折率よりも高い屈折率を有した石英系ガラス材料で作られている。コア層11bは、例えば、屈折率を高めるドーパントとしてゲルマニア(GeO2)やジルコニア(ZrO2)を含む石英ガラスで作られてもよい。また、コア層11bと、第一クラッド層11aおよび第二クラッド層11cとの比屈折率差は、0.1~10[%]の範囲で適宜に設定することができ、コア層11bのY方向の幅は、0.5~5[μm]、Z方向の高さは、0.5~5[μm]に設定することができる。一例として、比屈折率差を0.45[%]とした場合、コア層11bの断面のY方向およびZ方向のサイズは3[μm]×3[μm]であるのが好ましい。
【0041】
二つの第二突出部12(12-1,12-2)は、それぞれ、ベース10の表面10aからZ方向に突出している。二つの第二突出部12のベース10の表面10aからのZ方向における高さは、同じであり、第一突出部11のZ方向における突出高さよりも低い。
【0042】
二つの第二突出部12-1,12-2は、互いにX方向に離間している。第二突出部12-1は、第二突出部12-2に対して第一突出部11とは反対側に位置されている。また、二つの第二突出部12-1,12-2は、X方向において第一突出部11と並んでいる。
【0043】
第二突出部12は、発光素子20を載せる台座として機能する。第二突出部12のZ方向の反対方向の端面12aは、Z方向を向き、Z方向と交差するとともに直交し、X方向およびY方向に延びている。第二突出部12は、支持部の一例であり、載置部とも称されうる。また、端面12aは、発光素子20の支持面あるいは載置面とも称されうる。
【0044】
二つの第二突出部12-1,12-2は、発光素子20のX方向の中央に対するX方向の前後両側を支持している。第二突出部12-1は、発光素子20のX方向の反対方向の端部を支持し、第二突出部12-2は、発光素子20のX方向の端部を支持している。
【0045】
第二突出部12-1,12-2は、それぞれ、Y方向に延びており、発光素子20のY方向の中央に対するY方向の前後両側を支持している。ただし、これには限定されず、第二突出部12は、Y方向に分離され、当該Y方向に分離された第二突出部12が発光素子20を支持してもよい。
【0046】
また、二つの第二突出部12のうち第一突出部11により近い第二突出部12-2と当該第一突出部11との間には、Z方向の反対方向に凹む凹部11eが設けられている。凹部11eの底面は、ベース10の表面10aからZ方向に離れてもよいし、ベース10の表面10aであってもよい。
【0047】
第三突出部13は、ベース10の表面10aからZ方向に突出している。第三突出部13のベース10の表面10aからのZ方向における高さは、第二突出部12の高さよりも低い。
【0048】
第三突出部13は、二つの第二突出部12-1,12-2の間に位置され、第一突出部11および二つの第二突出部12-1,12-2とX方向に並んでいる。また、第三突出部13は、二つの第二突出部12のうち第一突出部11からより遠くに位置した第二突出部12-1に対して、X方向に隣接しており、当該第二突出部12-1と一体化されている。第三突出部13は、第二突出部12-1とともに、X方向に向かうにつれてZ方向の高さが低くなる段差を構成している。
【0049】
第三突出部13のZ方向の端面13aは、Z方向を向き、Z方向と交差するとともに直交し、X方向およびY方向に延びている。端面13a上には、膜状の薄い電極10dが設けられている。電極10dは、例えば、金のような、導電性の高い材料で作られている。電極10dは、第三電極の一例である。
【0050】
第四突出部14は、ベース10の表面10aからZ方向に突出している。第四突出部14のベース10の表面10aからの高さは、二つの第二突出部12の高さおよび第三突出部13の高さよりも高く、第一突出部11の高さと略同等である。
【0051】
第四突出部14は、X方向において、第一突出部11、二つの第二突出部12、および第三突出部13と並んでいる。第四突出部14は、第三突出部13に対して第二突出部12-1とは反対側に位置されるとともに、発光素子20に対して第一突出部11とは反対側に位置されている。すなわち、発光素子20は、X方向において、第一突出部11と第四突出部14との間に位置されている。
【0052】
第四突出部14は、第二突出部12-1に対してX方向の反対方向に隣接しており、当該第二突出部12-1と一体化されている。第四突出部14は、第二突出部12-1および第三突出部13とともに、X方向に向かうにつれてZ方向の高さが低くなる段差を構成している。
【0053】
第四突出部14のZ方向の端面14aは、Z方向を向き、Z方向と交差するとともに直交し、X方向およびY方向に延びている。端面14a上には、膜状の薄い電極10e,10fが設けられている。電極10e,10fは、例えば、金のような、導電性の高い材料で作られている。電極10e,10fは、例えば、外部配線(不図示)と電気的に接続される部位であり、その場合、電極10e,10fは、外部電極とも称されうる。電極10fは、第四電極の一例である。
【0054】
二つの第二突出部12、第三突出部13、および第四突出部14は、第一クラッド層11aおよび第二クラッド層11cと同じ材料で作られている。
【0055】
ベース10の表面10a上には、二つの第二突出部12の間であって、第二突出部12-2と第三突出部13との間となる位置に、膜状の薄い電極10cが設けられている。電極10cは、例えば、金のような、導電性の高い材料で作られている。電極10cは、第二電極の一例である。
【0056】
発光素子20は、例えば、レーザダイオードである。発光素子20は、略直方体状の形状を有している。すなわち、発光素子20は、およびZ方向の反対方向に見た場合に、略四角形状の形状を有している。
【0057】
発光素子20は、コア層11bと光学的に接続された光半導体素子の一例である。コア層11bと光学的に接続された光半導体素子は、発光素子20には限定されず、受光素子や光変調素子であってもよい。光変調素子は、光を空間変調したり、位相変調したり、または強度変調したりするなど、光の何らかの特性を変えるものである。また、光半導体素子は、発光素子、受光素子、および光変調素子から選択された2以上の素子が集積されたものであってもよい。
【0058】
発光素子20は、Z方向の端面20aと、Z方向の反対方向の端面20bと、X方向の端面20cと、X方向の反対方向の端面20dと、を有している。端面20a,20bは、Z方向と交差するとともに直交し、X方向およびY方向に延びている。また、端面20c,20dは、X方向と交差するとともに直交し、Y方向およびZ方向に延びている。
【0059】
発光素子20は、
図2に示されるように、クラッド層21と、活性層22とを有している。活性層22のX方向の端部は、第一突出部11のコア層11bと面している。活性層22からX方向に出力された光は、コア層11bに結合される。X方向は、第二方向の一例である。
【0060】
活性層22は、
図3に示されるように、Y方向の中央位置において、Y方向の一定の幅でX方向に延びている。また、活性層22は、
図2に示されるように、本実施形態では、端面20aよりも端面20bの近くに位置されている。ただし、これは一例であって、活性層22のZ方向の位置は、適宜に変更されうる。活性層22のZ方向の位置は、当該活性層22がX方向にコア層11bと面し、活性層22から出力された光がコア層11bと結合されるよう、設定されている。
【0061】
発光素子20のZ方向の反対方向の端面20bには、膜状の薄い電極23が設けられている。他方、発光素子20のZ方向の端面20aには、膜状の薄い電極24が設けられている。電極23,24は、いずれも、金のような、導電性の高い材料で作られている。一例として、電極24は、カソードであり、電極23は、アノードである。
【0062】
電極24は、第四突出部14上の電極10eと、ボンディングワイヤ(不図示)等の導体配線を介して、電気的に接続されている。
【0063】
図4は、
図2の一部の拡大図である。
図4に示されるように、電極23と、ベース10の表面10a上の電極10cとの間には、導電性ペースト40が介在している。電極23と電極10cとは、導電性ペースト40を介して電気的に接続されている。導電性ペースト40は、電極23と電極10cとの間に、例えば、圧縮変形された状態で介在し、当該電極23,10cの双方と密着した状態で接触している。電極10cは、電極10fと、例えば、ボンディングワイヤ(不図示)等の導体配線を介して、電気的に接続されている。したがって、電極23は、第四突出部14上の電極10fと、導電性ペースト40、電極10c、および導体配線を介して、電気的に接続されている。このような導電性ペースト40を有した構成により、例えば、発光素子20のベース10側の端面20bに設けられた電極23と電極10fとの間の導体配線を、比較的容易に構成することができる、という利点が得られる。導電性ペースト40は、導体の一例である。電極23は、第一電極の一例である。なお、電極10cと電極10fとが、電極10dを中継したボンディングワイヤ(不図示)等の導体配線を介して電気的に接続されてもよい。この場合、導体配線がより短くて済むため、例えば、配線の作業性が向上したり、導体配線が損傷し難くなったり、といった利点が得られる。
【0064】
導電性ペースト40は、熱伝導性フィラーを含有してもよい。この場合、導電性ペースト40は、伝熱部材としても機能する。熱伝導性フィラーは、例えば、金や、銀系金属のような、導電性を有するとともに熱伝導性の高い金属材料で作られた、粒子や、粉、ナノ粒子等である。銀系金属は、銀や、銀合金である。導電性ペースト40は、例えば、熱伝導性フィラーとして銀粒子を含む銀ペーストであってもよい。このような構成により、例えば、発光素子20で生じた熱を導電性ペースト40を介してベース10へ逃がすことができ、ひいては発光素子20の過度な温度上昇を抑制しやすい、という利点が得られる。
【0065】
また、
図4に示されるように、ベース10の表面10aの、電極10cから外れた領域には、表面10aの他の部位よりも面粗度が大きい粗面10gが設けられており、導電性ペースト40は、部分的に、粗面10gとも接している。粗面10gは、表面10aの他の部位よりも表面積が大きいため、導電性ペースト40が当該他の部位と接する場合よりも、ベース10(粗面10g、表面10a)と導電性ペースト40との間の接触面積を大きくすることができ、その分、導電性ペースト40からベース10への伝熱量をより大きくすることができる。したがって、このような構成によれば、発光素子20で生じた熱の導電性ペースト40を介したベース10の伝熱量をより大きくすることができ、ひいては発光素子20の過度な温度上昇をさらに抑制しやすい、という利点が得られる。
【0066】
図5は、半導体光デバイス100Aの発光素子20を除いた部位の平面図である。当該部位は、サブマウントSとも称されうる。
【0067】
図5に示されるように、二つの第二突出部12の端面12a上には、四つのマーカ30が、当該端面12a上に、少なくとも部分的に露出するように設けられている。マーカ30は、作業員あるいはロボットが当該端面12a上に発光素子20を載置する際に、作業員による視覚的な載置位置の確認、あるいはカメラによる撮影画像の画像処理に基づくロボットによる載置位置の決定において、目標や、基準となる。マーカ30は、アライメントマーカとも称される。
【0068】
図5に示されるように、本実施形態では、端面12a上には、複数のマーカ30、本実施形態では一例として四つのマーカ30が設けられており、発光素子20は、これら四つのマーカ30を基準として、第二突出部12上に位置決めされる。具体的には、Z方向の反対方向に見た場合に、発光素子20のY方向またはY方向の反対方向の端面20eがマーカ30と隣り合う位置となるよう、載置される。端面20eは、エッジの一例である。
【0069】
また、本実施形態では、Z方向の反対方向に見た場合、発光素子20の所定の載置位置において、第二突出部12-1上でY方向に並ぶ二つのマーカ30と発光素子20の端面20eとの間には、略同じ距離の隙間ができ、発光素子20がこれら二つのマーカ30の間の中央に位置している。また、当該所定の載置位置において、第二突出部12-2上でY方向に並ぶ二つのマーカ30と発光素子20の端面20eとの間には、略同じ距離の隙間ができ、発光素子20がこれら二つのマーカ30の間の中央に位置している。すなわち、本実施形態では、Z方向の反対方向に見た場合に、マーカ30は発光素子20の端面20eと隙間をあけて隣り合っている。マーカ30は、第一マーカの一例であり、かつ第二マーカの一例でもある。
【0070】
なお、Z方向の反対方向に見た場合に、所定の載置位置においてマーカ30と端面20eとの間に隙間が設けられることは必須ではなく、例えば、マーカ30のエッジと端面20eとが丁度重なってもよいし、マーカ30の一部と発光素子20とが重なってもよい。これらの場合にあっても、Z方向の反対方向に見た場合には、マーカ30の一部と端面20eとが隣り合うことになる。なお、マーカ30の一部上に発光素子20が重なる構成である場合、マーカ30に目盛りのような目印が設けられてもよい。
【0071】
また、本実施形態では、マーカ30は、コア層11bと同じ材料で作られている。次に、このようなマーカ30を含む半導体光デバイス100Aの製造方法について説明する。
【0072】
[半導体光デバイスの製造プロセス]
図6は、半導体光デバイス100Aの製造方法を示すフローチャートである。
図6に示されるように、まずは、例えば、FHD法( FHD:flame hydrolysis deposition)法により、ベース10上に石英系ガラスの微粒子をZ方向に堆積し、これを加熱してガラス微粒子を透明ガラス化して、第一クラッド層11aとなる部位を含む第一層を形成する(S1)。
【0073】
次に、第一層上に、例えば、スパッタ法により、石英系ガラス微粒子層をZ方向に堆積し、コア層11bおよびマーカ30となる部位を含む第二層を形成する(S2)。このS2においては、例えば、コア層11bの屈折率が第一クラッド層11aの屈折率よりも高く、かつ比屈折率差が0.45[%]となるよう、SiO2にZrO2を添加する。
【0074】
次に、第二層上に、フォトリソグラフィにより、コア層11bのパターンとマーカ30のパターンとを含むエッチングマスクを形成し、当該エッチングマスクが形成された第二層に対して、例えばフッ素系ガスのようなエッチングガスを用いたドライエッチングを行う(S3)。このS3において、エッチングマスクから露出した領域が除去され、これにより、第二層のうち、エッチングマスクで覆われて除去されなかった部位として、コア層11bとマーカ30とが形成される。よって、コア層11bおよびマーカ30は、第二層を構成する同じ材料で作られる。また、コア層11bのZ方向の反対方向の端部と、マーカ30のZ方向の反対方向の端部とは、いずれも第一層と第二層との境界であり、
図2中に一点鎖線Lで示されるように、Z方向においてベース10の表面10aから同じ高さに位置している。したがって、マーカ30は、端面12a上に露出するとともに端面12aからZ方向とは反対向きに所定の長さ(深さ)を有するように設けられている。
【0075】
次に、第一層上にコア層11bとマーカ30とが形成された積層体上に、例えば、FHD法により、石英系ガラスの微粒子を堆積し、これを加熱してガラス微粒子を透明ガラス化し、第二クラッド層11cとなる部位を含む第三層を形成する(S4)。
【0076】
次に、第一層、コア層11b、マーカ30、および第三層を含む積層体に対して、例えば、エッチングマスクの形成およびドライエッチングによる選択的な除去を行うことにより、第一突出部11、第二突出部12、第三突出部13、第四突出部14、および凹部11eを含むサブマウントSを形成する(S5)。このS5では、第二突出部12において、マーカ30を残す。
【0077】
次に、例えば、スパッタリングおよびフォトリソグラフィにより、サブマウントS上に電極10c,10d,10e,10fを形成する(S6)。
【0078】
次に、Z方向の反対方向にマーカ30を視認あるいは撮影しながら、マーカ30を基準として、第二突出部12のマーカ30に対応した所定位置に発光素子20を載置し、当該サブマウントSに、例えば接着等により、実装する(S7)。導電性ペースト40を用いる場合には、発光素子20を載置する前に、サブマウントS上の発光素子20によって覆われる位置に、予め導電性ペースト40を載置しておく。
【0079】
以上、説明したように、本実施形態によれば、第二突出部12上には、端面12a上に露出し、コア層11bと同じ材料で作られたマーカ30が設けられている。
【0080】
従来のように、フォトリソグラフィによりマーカが金属層で作られる場合、コア層11bの位置とマーカの位置とがそれぞれ別のマスクパターンによって定まることになるため、コア層11bとマーカとの位置精度が低下する。この点、本実施形態によれば、コア層11bとマーカ30とが同じ材料で作られているため、一つのマスクパターンにおいて、コア層11bとマーカ30との相対的な位置関係を決定することができる。よって、本実施形態によれば、コア層11bとマーカ30との位置精度を高めることができ、ひいてはコア層11bと発光素子20との位置精度を高めることができる。
【0081】
また、本実施形態では、コア層11bのZ方向の反対方向の端部の、ベース10の表面10aからのZ方向(第一方向)における高さと、マーカ30のZ方向の反対方向の端部の、ベース10の表面10aからのZ方向における高さとが、同じである。
【0082】
このような特徴は、上述した工程S2および工程S3のように第一層上に形成された同じ第二層からコア層11bとマーカ30とが作成されたことの証拠となる。また、本実施形態によれば、例えば、マーカが金属層で作られた場合に比べて、マーカ30のZ方向の位置や厚さの個体差ばらつきを低減することができるため、エッチング工程においてマーカ30をより確実に残すことができる、という利点が得られる。
【0083】
また、本実施形態のように、Z方向の反対方向に見た場合に、マーカ30(第一マーカ)と発光素子20の端面20e(エッジ)とが隙間をあけて隣り合ってもよいし、発光素子20が二つのマーカ30(第二マーカ)の間に位置されてもよい。
【0084】
このような構成によれば、マーカ30を比較的簡素な構成によって実現することができる。
【0085】
[第2実施形態]
図7は、第2実施形態の半導体光デバイス100Bの、
図4と同等部位の側面図である。
【0086】
図7に示されるように、本実施形態では、導電性ペースト40は、ベース10の表面10a上の粗面10g、当該表面10a上の電極10c、および第三突出部13の端面13a上の電極10dと、発光素子20の端面20b上の電極23と、の間に介在している。このように、導電性ペースト40は、電極23と、電極10c,10dの双方とを、電気的に接続してもよい。第1実施形態のような形態(
図4)とするか、本実施形態のような形態とするかは、適宜に選択可能である。また、
図7に示される構成において、電極10dと電極10fとが、ボンディングワイヤ(不図示)等の導体配線を介して電気的に接続されてもよい。この場合、導体配線がより短くかつ少なくて済むため、例えば、配線の作業性がさらに向上したり、導体配線がさらに損傷し難くなったり、といった利点が得られる。
【0087】
[第3実施形態]
図8は、第3実施形態の半導体光デバイス100Cの一部の側面図である。
図8に示されるように、本実施形態では、第四突出部14と第二突出部12-1との間のX方向を向いた側面15a、第二突出部12-1と第三突出部13との間のX方向を向いた側面15b、第三突出部13とベース10との間のX方向を向いた側面15cが、いずれもX方向の反対方向に向かうにつれてZ方向に向かう傾斜面として構成されている。このような側面15a~15cを含む段差構造は、マーカ30に対してY方向にずれた位置に設けられ、例えば、Z方向の反対方向に見た場合に、Y方向またはY方向の反対方向においてマーカ30に対して発光素子20とは反対側にずれた位置に、設けられる。側面15bは、第一傾斜面の一例であり、側面15aは、第二傾斜面の一例である。
【0088】
そして、端面14aと、側面15aと、端面12aと、側面15bと、端面13aと、側面15cと、表面10aとの間に渡って、Y方向における略一定の幅でこれら複数の面に沿って延びる配線パターン16が設けられている。配線パターン16により、電極10f、電極10d、および電極10cが、電気的に接続されている。配線パターン16は、例えば、電極10c,10d,10fと同様に、金のような、導電性の高い材料で作られている。
【0089】
このような構成によれば、ワイヤボンディングによらず、サブマウントS上に形成した配線パターン16によって、複数の電極10c,10d,10fを電気的に接続することができる。また、当該配線パターン16と導電性ペースト40とによって、発光素子20のアノードとしての電極23と外部電極としての電極10fとを電気的に接続する配線を、比較的簡素な構成によって実現することができる。また、側面15a,15b,15cがX方向の反対方向に向かうにつれてZ方向に向かう傾斜面であることにより、側面15a,15b,15cがZ方向に延び当該Z方向に対して傾斜していない構成に比べて、例えば、配線パターン16をより形成しやすくなったり、配線パターン16をより短くして電気抵抗をより小さくできたり、といった利点が得られる。
【0090】
[第4実施形態]
図9は、第4実施形態の半導体光デバイス100Dの側面図である。
図9に示されるように、本実施形態では、コア層11bのZ方向の高さがより高く、これにより、マーカ30のZ方向の深さがより深くなっている。この場合、コア層11bの中心軸Axcは、第二突出部12の端面12a上に載置された発光素子20の活性層22の中心軸Axlに対して、Z方向の反対方向にずれている。すなわち、このようなずれが生じるよう、マーカ30、第二突出部12、およびコア層11bを形成することにより、マーカ30の端面12aからの深さをより深くすることができ、例えば、マーカ30をより確実に形成することができたり、マーカ30の視認性やカメラによる識別性をより高めることができたり、といった利点が得られる。
【0091】
[第5実施形態]
図10は、第5実施形態の半導体光デバイス100Eの一部の側面図である。
図10に示されるように、本実施形態では、発光素子20のX方向の端面20cと、第一突出部11のX方向の反対方向の端面11fとが当接し、当該当接により、発光素子20がX方向に位置決めされている。このような構成によれば、発光素子20を、X方向に、より容易に位置決めすることができる。
【0092】
また、第1実施形態と同様に、第一突出部11と第二突出部12-2との間には、Z方向の反対方向に凹む凹部11eが設けられている。端面11fのZ方向の反対方向の端部には、凹曲面(隅R形状)が生じる場合がある。このような凹曲面は、個体差ばらつきが生じ易く、端面20cと端面11fとが当接する構成において、端面20cと凹曲面とが当接した場合、発光素子20のX方向の位置の個体差ばらつきの一因となる虞がある。この点、本実施形態では、凹部11eを設けることにより、端面11fのZ方向の反対方向の端部に生じる凹曲面を、発光素子20に対してZ方向の反対方向にずらすことができる。よって、本実施形態によれば、例えば、端面20cと凹曲面とが当接することにより発光素子20のX方向の位置の個体差ばらつきが生じるのを回避することができる、という利点が得られる。
【0093】
また、第一突出部11の端面11fは、Z方向に向かうにつれてX方向に向かうようにZ方向に対する角度αで傾斜しており、当該端面11fには、発光素子20の端面20cのうち、Z方向の反対方向の端部に位置する角部20c1が、当接している。発光素子20の活性層22はクラッド層21等と比べて脆いため、発光素子20と第一突出部11とがX方向に当接する構成において、活性層22が第一突出部11と当接するのは好ましくない。この点、本実施形態では、端面11fがZ方向に向かうにつれてX方向に向かうように傾斜しているため、当該端面11fには発光素子20の端面20cのうち活性層22からZ方向の反対方向にずれた角部20c1が当接し、当該活性層22と端面11fとの間には隙間gが生じる。活性層22と端面11fとの間隔は、例えば、1[μm]以下である。よって、本実施形態によれば、例えば、活性層22が第一突出部11と当接することにより損傷するのを抑制することができる、という利点が得られる。発光素子20の端面20cおよび角部20c1は、発光素子20のX方向の端部の一例である。
【0094】
[第6実施形態]
図11は、第6実施形態の半導体光デバイス100Fの平面図である。
図11に示されるように、本実施形態でも、上記第5実施形態と同様に、発光素子20のX方向の端面20cと、第一突出部11のX方向の反対方向の端面11fとが当接し、当該当接により、発光素子20がX方向に位置決めされている。
【0095】
ただし、本実施形態では、第一突出部11の端面11fは、第一面11f1と、第二面11f2と、を有している。第一面11f1は、コア層11bからY方向にずれて位置し、発光素子20の端面20cと当接している。また、第二面11f2は、第一面11f1に対して、Y方向の反対方向に隣接して位置するとともに、コア層11bが端面20cと隙間gをあけてX方向の反対方向に露出しかつY方向の反対方向にむかうにつれてX方向に向かうように、Y方向の反対方向に対して角度βで傾斜している。角度βは、例えば、1[deg]以上かつ7[deg]以下である。このような構成によっても、活性層22と第一突出部11との間に隙間gを確保することができる。よって、本実施形態によっても、例えば、活性層22が第一突出部11と当接することにより損傷するのを抑制することができる、という利点が得られる。Y方向は、第三方向の一例である。
【0096】
また、本実施形態では、第二面11f2の法線N(法線方向)と、コア層11bの中心軸Axc(光軸方向)とが、角度γで斜めに交差している。角度γは、例えば、5[deg]以上11[deg]以下である。本実施形態によれば、例えば、コア層11bにおいて発光素子20側に伝搬した戻り光が、第二面11f2によって反射し、コア層11bとは結合しない方向に伝搬して拡散するので、戻り光による悪影響を抑制できる、という利点が得られる。
【0097】
[第7実施形態]
図12は、第7実施形態の半導体光デバイス100Gの平面図であり、
図13は、
図12のXIII-XIII断面図である。
【0098】
図12,13に示されるように、本実施形態では、異なる波長のレーザ光を出力する三つの発光素子20を備えている。
【0099】
三つの発光素子20は、半導体レーザ素子であって、例えば、赤色光源、青色光源、および緑色光源である。赤色光源は、例えば、620~750[nm]の波長の赤色の可視光を出力する。青色光源は、例えば、450~495[nm]の波長の青色の可視光を出力する。また、緑色光源は、例えば、495~570[nm]の緑色の可視光を出力する。
【0100】
三つの発光素子20は、Y方向に並んでいる。また、
図13に示されるように、第二突出部12-2の端面12aが、Y方向に向かうにつれてZ方向に向かう段差を有している。すなわち、発光素子20-2が載置される端面12aは、発光素子20-1が載置される端面12aからZ方向にずれるとともに、発光素子20-3が載置される端面12aは、発光素子20-2が載置される端面12aからZ方向にずれている。これに伴って、発光素子20-2の端面20bは、発光素子20-1の端面20bからZ方向にずれるとともに、発光素子20-3の端面20bは、発光素子20-2の端面20bからZ方向にずれている。端面20bは、端面12a上に載置される底面の一例である。
【0101】
さらに、
図13に示されるように、本実施形態では、発光素子20-2の端面20bと活性層22との間のZ方向の距離は、発光素子20-3の端面20bと活性層22との間のZ方向の距離よりも長く、かつ、発光素子20-1の端面20bと活性層22との間のZ方向の距離は、発光素子20-2の端面20bと活性層22との間のZ方向の距離よりも長い。このような構成により、
図13に示されるように、これら三つの発光素子20-1~20-3について、表面10aと活性層22との間のZ方向の距離が、略同じである。
【0102】
図12に示されるように、第一突出部11には、発光素子20-1~20-3に対応して、発光素子20-1~20-3から出力された光が結合される三つのコア層11bが設けられている。ここで、上述したように、本実施形態の半導体光デバイス100Gは、これら三つの発光素子20-1~20-3について、表面10aと活性層22との間のZ方向の距離が、略同じになるよう、構成されている。したがって、複数のコア層11bについて、Z方向における表面10aとコア層11bとの間の距離を同じにすることができる。よって、本実施形態によれば、例えば、Z方向における表面10aとコア層11bとの間の距離が異なる複数のコア層11bを設ける場合に比べて、コア層11b、すなわち第一突出部11、ひいては半導体光デバイス100Gの製造の手間およびコストを低減することができる、という利点が得られる。
【0103】
[第8実施形態]
図14は、第8実施形態の半導体光デバイス100Hの平面図である。
図14に示されるように、本実施形態では、マーカ30は、発光素子20のZ方向の反対方向に見た場合の角部20fに対して隙間をあけて隣り合うように設けられている。また、マーカ30は、L字状に形成され、端面20dに対してX方向に隙間をあけて面する部位と、端面20eに対してY方向に隙間をあけて面する部位と、を有している。本実施形態によれば、例えば、マーカ30を発光素子20のX方向の位置決めおよびY方向の位置決めの両方に利用することができるという利点が得られる。本実施形態のマーカ30は、第三マーカの一例である。
【0104】
[第9実施形態]
図15は、第9実施形態の半導体光デバイス100Iの一部の平面図であり、
図16は、
図15のXVI-XVI断面図である。
図15,16に示されるように、本実施形態では、マーカ30の周囲に沿って、一定の幅で凹む凹溝31が設けられている。これにより、マーカ30の周縁30aに、角部が形成される。本実施形態によれば、例えば、マーカ30の周縁30aに角部が設けられることにより、凹溝31が設けられず周縁30aに角部が設けられない構成に比べて、作業員あるいはロボットが当該端面12a上に発光素子20を載置する際に、作業員がマーカ30を視認しやすくなったり、カメラによる撮影画像の画像処理においてマーカ30の識別性が向上したり、といった利点が得られる。
【0105】
以上、本発明の実施形態および変形例が例示されたが、上記実施形態および変形例は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、型式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明は、半導体光デバイスおよび半導体光デバイスの製造方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0107】
10…ベース
10a…表面
10b…裏面
10c…電極(第二電極)
10d…電極(第三電極)
10e…電極
10f…電極(第四電極)
10g…粗面
11…第一突出部
11a…第一クラッド層(クラッド層)
11b…コア層
11c…第二クラッド層(クラッド層)
11e…凹部
11f…端面
11f1…第一面
11f2…第二面
12,12-1,12-2…第二突出部
12a…端面
13…第三突出部
13a…端面
14…第四突出部
14a…端面
15a…側面(第二傾斜面)
15b…側面(第一傾斜面)
15c…側面
16…配線パターン
20,20-1,20-2,20-3…発光素子(光半導体素子)
20a…端面
20b…端面(底面)
20c…端面(端部)
20c1…角部(端部)
20d…端面
20e…端面
20f…角部
21…クラッド層
22…活性層
23…電極(第一電極)
24…電極
30…マーカ(第一マーカ、第二マーカ、第三マーカ)
30a…周縁
31…凹溝
40…導電性ペースト(導体)
100A~100I…半導体光デバイス
Axc…(コア層の)中心軸
Axl…(活性層の)中心軸
g…隙間
L…一点鎖線
N…法線
S…サブマウント
X…方向
Y…方向
Z…方向(第一方向)
α…角度
β…角度
γ…角度