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<図1>
  • 特許-荷電粒子線装置 図1
  • 特許-荷電粒子線装置 図2
  • 特許-荷電粒子線装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-06
(45)【発行日】2025-03-14
(54)【発明の名称】荷電粒子線装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/20 20060101AFI20250307BHJP
【FI】
H01J37/20 A
H01J37/20 C
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023570565
(86)(22)【出願日】2021-12-28
(86)【国際出願番号】 JP2021048759
(87)【国際公開番号】W WO2023127083
(87)【国際公開日】2023-07-06
【審査請求日】2024-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榎本 裕久
(72)【発明者】
【氏名】西中 健一
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-220057(JP,A)
【文献】特開平7-262955(JP,A)
【文献】特開昭50-14268(JP,A)
【文献】実開昭61-116062(JP,U)
【文献】実開昭53-113057(JP,U)
【文献】中国実用新案第204558415(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/20
H01L 21/67-68
G01N 23/20025
G01N 23/2204
G01Q 30/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
‐駆動力を発生させる傾斜機構駆動部と、
‐前記駆動力を伝達する傾斜駆動力伝達部と、
‐傾斜動作を行う傾斜機構部と、
を備える、荷電粒子線装置であって、
前記傾斜機構部は、
‐前記傾斜駆動力伝達部からの荷重を伝達する、第1荷重伝達部および第2荷重伝達部と、
‐荷重により弾性変形する、第1変形部、第2変形部、第3変形部および第4変形部と、
‐試料を保持し、傾斜可能な試料保持部と、
を備え、
前記第2荷重伝達部には、前記第1変形部、前記第2変形部および前記第3変形部が取り付けられ、
前記第3変形部は、
‐前記第1変形部および前記第4変形部より上方にあり、
‐前記第2変形部より下方にあり、
‐前記第1変形部より前方にあり、
‐前記第4変形部より後方にあり、
前記第1荷重伝達部は、前記傾斜駆動力伝達部からの荷重により荷重方向に移動し、前記第1変形部に荷重を伝え、
前記第2荷重伝達部は、前記第1変形部の変形によって発生したトルクにより、前記第2変形部を支点に回転して前記第3変形部に荷重を伝え、
前記試料保持部は、前記第3変形部の変形によって発生したトルクにより、前記第4変形部を支点に、前記第2荷重伝達部とは逆方向に回転する、
荷電粒子線装置。
【請求項2】
前記荷電粒子線装置は、挿入部を有する試料ステージを備え、
前記挿入部は、前記傾斜機構部を前記荷電粒子線装置の内部へ挿入するよう動作する、
請求項1に記載の荷電粒子線装置。
【請求項3】
前記荷電粒子線装置は、前記傾斜機構部を制御する制御信号を送信する制御部を備える、請求項1に記載の荷電粒子線装置。
【請求項4】
前記第2荷重伝達部は三角形状であり、前記第1変形部、前記第2変形部および前記第3変形部はそれぞれ前記第2荷重伝達部の異なる頂点に取り付けられる、請求項1に記載の荷電粒子線装置。
【請求項5】
前記荷電粒子線装置は、前記傾斜駆動力伝達部の移動をガイドするガイド部を備える、請求項1に記載の荷電粒子線装置。
【請求項6】
前記ガイド部は中空筒状であり、前記ガイド部の中空部に前記傾斜駆動力伝達部が挿通される、請求項5に記載の荷電粒子線装置。
【請求項7】
前記第1変形部は、前記第1荷重伝達部および前記第2荷重伝達部に接続される、請求項1に記載の荷電粒子線装置。
【請求項8】
前記第2変形部は、前記ガイド部および前記第2荷重伝達部に接続される、請求項5に記載の荷電粒子線装置。
【請求項9】
前記第3変形部は、前記第2荷重伝達部および前記試料保持部に接続される、請求項1に記載の荷電粒子線装置。
【請求項10】
前記第4変形部は、前記ガイド部および前記試料保持部に接続される、請求項5に記載の荷電粒子線装置。
【請求項11】
‐駆動力を発生させる傾斜機構駆動部と、
‐前記駆動力を伝達する傾斜駆動力伝達部と、
‐傾斜動作を行う傾斜機構部と、
を備える、試料ホルダであって、
前記傾斜機構部は、
‐前記傾斜駆動力伝達部からの荷重を伝達する、第1荷重伝達部および第2荷重伝達部と、
‐荷重により弾性変形する、第1変形部、第2変形部、第3変形部および第4変形部と、
‐試料を保持し、傾斜可能な試料保持部と、
を備え、
前記第2荷重伝達部には、前記第1変形部、前記第2変形部および前記第3変形部が取り付けられ、
前記第3変形部は、
‐前記第1変形部および前記第4変形部より上方にあり、
‐前記第2変形部より下方にあり、
‐前記第1変形部より前方にあり、
‐前記第4変形部より後方にあり、
前記第1荷重伝達部は、前記傾斜駆動力伝達部からの荷重により荷重方向に移動し、前記第1変形部に荷重を伝え、
前記第2荷重伝達部は、前記第1変形部の変形によって発生したトルクにより、前記第2変形部を支点に回転して前記第3変形部に荷重を伝え、
前記試料保持部は、前記第3変形部の変形によって発生したトルクにより、前記第4変形部を支点に、前記第2荷重伝達部とは逆方向に回転する、
試料ホルダ。
【請求項12】
試料ホルダおよび試料ステージを備える試料挿入構造であって、
前記試料ホルダは、
‐駆動力を発生させる傾斜機構駆動部と、
‐前記駆動力を伝達する傾斜駆動力伝達部と、
‐傾斜動作を行う傾斜機構部と、
を備え、
前記試料ホルダは、前記試料ステージに挿入できるようになっており、
前記傾斜機構部は、
‐前記傾斜駆動力伝達部からの荷重を伝達する、第1荷重伝達部および第2荷重伝達部と、
‐荷重により弾性変形する、第1変形部、第2変形部、第3変形部および第4変形部と、
‐試料を保持し、傾斜可能な試料保持部と、
を備え、
前記第2荷重伝達部には、前記第1変形部、前記第2変形部および前記第3変形部が取り付けられ、
前記第3変形部は、
‐前記第1変形部および前記第4変形部より上方にあり、
‐前記第2変形部より下方にあり、
‐前記第1変形部より前方にあり、
‐前記第4変形部より後方にあり、
前記第1荷重伝達部は、前記傾斜駆動力伝達部からの荷重により荷重方向に移動し、前記第1変形部に荷重を伝え、
前記第2荷重伝達部は、前記第1変形部の変形によって発生したトルクにより、前記第2変形部を支点に回転して前記第3変形部に荷重を伝え、
前記試料保持部は、前記第3変形部の変形によって発生したトルクにより、前記第4変形部を支点に、前記第2荷重伝達部とは逆方向に回転する、
試料挿入構造。
【請求項13】
試料ホルダを用いて試料の位置を制御する方法であって、
前記試料ホルダは、
‐駆動力を発生させる傾斜機構駆動部と、
‐前記駆動力を伝達する傾斜駆動力伝達部と、
‐傾斜動作を行う傾斜機構部と、
を備え、
前記傾斜機構部は、
‐前記傾斜駆動力伝達部からの荷重を伝達する、第1荷重伝達部および第2荷重伝達部と、
‐荷重により弾性変形する、第1変形部、第2変形部、第3変形部および第4変形部と、
‐試料を保持し、傾斜可能な試料保持部と、
を備え、
前記第2荷重伝達部には、前記第1変形部、前記第2変形部および前記第3変形部が取り付けられ、
前記第3変形部は、
‐前記第1変形部および前記第4変形部より上方にあり、
‐前記第2変形部より下方にあり、
‐前記第1変形部より前方にあり、
‐前記第4変形部より後方にあり、
前記方法は、
前記第1荷重伝達部が、前記傾斜駆動力伝達部からの荷重により荷重方向に移動し、前記第1変形部に荷重を伝えるステップと、
前記第2荷重伝達部が、前記第1変形部の変形によって発生したトルクにより、前記第2変形部を支点に回転して前記第3変形部に荷重を伝えるステップと、
前記試料保持部が、前記第3変形部の変形によって発生したトルクにより、前記第4変形部を支点に、前記第2荷重伝達部とは逆方向に回転するステップと、
を備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は荷電粒子線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
試料ホルダの挿入方向を前後方向としたときに、観察試料を前後方向に傾斜させる傾斜機構を備えた荷電粒子線装置が特許文献1に記載されている。
この特許文献1には、「ピボット4に設けられた加熱ホルダ側の回転ねじ16によって、熱膨張を加味した緩い締め付けを行う。ピボット4の締め付け時に、アーム3先端の絶縁体と加熱ステージ1の凹面との接触部の位置を合わせる。導線ワイヤ34はアーム3に付属している回転ねじ36を用いて一端を固定する。さらに、もう一端を加熱ステージ1の回転ねじ17を用いて固定する。アーム3は図に示すようにまんじの片方の字のように屈曲している。アーム3の回転によってピボット4を軸に前後に回転する。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-63463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、試料を傾斜させる機構において、位置決め精度に非線形特性が影響するという課題があった。
【0005】
特許文献1には、加熱ステージに試料を搭載して傾斜する機構を備えた荷電粒子線装置が記載されている。しかしながら、特許文献1に記載された試料の傾斜機構は、2つの異なる部材に相対変位が生じることで回転動作するため、可動する2つの部材間において生じる機構の非線形特性(非線形ゲインや、バックラッシュ、摩擦力)が、位置決め精度を低下させる。
【0006】
本発明の目的は、試料を傾斜させる機構において、回転軸の摺動部(ピボット等)をなくすことにより、位置決め精度に影響する非線形特性がない傾斜動作を可能にする、荷電粒子線装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る荷電粒子線装置の一例は、
‐駆動力を発生させる傾斜機構駆動部と、
‐前記駆動力を伝達する傾斜駆動力伝達部と、
‐傾斜動作を行う傾斜機構部と、
を備える、荷電粒子線装置であって、
前記傾斜機構部は、
‐前記傾斜駆動力伝達部からの荷重を伝達する、第1荷重伝達部および第2荷重伝達部と、
‐荷重により弾性変形する、第1変形部、第2変形部、第3変形部および第4変形部と、
‐試料を保持し、傾斜可能な試料保持部と、
を備え、
前記第2荷重伝達部には、前記第1変形部、前記第2変形部および前記第3変形部が取り付けられ、
前記第3変形部は、
‐前記第1変形部および前記第4変形部より上方にあり、
‐前記第2変形部より下方にあり、
‐前記第1変形部より前方にあり、
‐前記第4変形部より後方にあり、
前記第1荷重伝達部は、前記傾斜駆動力伝達部からの荷重により荷重方向に移動し、前記第1変形部に荷重を伝え、
前記第2荷重伝達部は、前記第1変形部の変形によって発生したトルクにより、前記第2変形部を支点に回転して前記第3変形部に荷重を伝え、
前記試料保持部は、前記第3変形部の変形によって発生したトルクにより、前記第4変形部を支点に、前記第2荷重伝達部とは逆方向に回転する。
【0008】
本発明に係る試料ホルダの一例は、
‐駆動力を発生させる傾斜機構駆動部と、
‐前記駆動力を伝達する傾斜駆動力伝達部と、
‐傾斜動作を行う傾斜機構部と、
を備える、試料ホルダであって、
前記傾斜機構部は、
‐前記傾斜駆動力伝達部からの荷重を伝達する、第1荷重伝達部および第2荷重伝達部と、
‐荷重により弾性変形する、第1変形部、第2変形部、第3変形部および第4変形部と、
‐試料を保持し、傾斜可能な試料保持部と、
を備え、
前記第2荷重伝達部には、前記第1変形部、前記第2変形部および前記第3変形部が取り付けられ、
前記第3変形部は、
‐前記第1変形部および前記第4変形部より上方にあり、
‐前記第2変形部より下方にあり、
‐前記第1変形部より前方にあり、
‐前記第4変形部より後方にあり、
前記第1荷重伝達部は、前記傾斜駆動力伝達部からの荷重により荷重方向に移動し、前記第1変形部に荷重を伝え、
前記第2荷重伝達部は、前記第1変形部の変形によって発生したトルクにより、前記第2変形部を支点に回転して前記第3変形部に荷重を伝え、
前記試料保持部は、前記第3変形部の変形によって発生したトルクにより、前記第4変形部を支点に、前記第2荷重伝達部とは逆方向に回転する。
【0009】
本発明に係る試料挿入構造の一例は、
試料ホルダおよび試料ステージを備える試料挿入構造であって、
前記試料ホルダは、
‐駆動力を発生させる傾斜機構駆動部と、
‐前記駆動力を伝達する傾斜駆動力伝達部と、
‐傾斜動作を行う傾斜機構部と、
を備え、
前記試料ホルダは、前記試料ステージに挿入できるようになっており、
前記傾斜機構部は、
‐前記傾斜駆動力伝達部からの荷重を伝達する、第1荷重伝達部および第2荷重伝達部と、
‐荷重により弾性変形する、第1変形部、第2変形部、第3変形部および第4変形部と、
‐試料を保持し、傾斜可能な試料保持部と、
を備え、
前記第2荷重伝達部には、前記第1変形部、前記第2変形部および前記第3変形部が取り付けられ、
前記第3変形部は、
‐前記第1変形部および前記第4変形部より上方にあり、
‐前記第2変形部より下方にあり、
‐前記第1変形部より前方にあり、
‐前記第4変形部より後方にあり、
前記第1荷重伝達部は、前記傾斜駆動力伝達部からの荷重により荷重方向に移動し、前記第1変形部に荷重を伝え、
前記第2荷重伝達部は、前記第1変形部の変形によって発生したトルクにより、前記第2変形部を支点に回転して前記第3変形部に荷重を伝え、
前記試料保持部は、前記第3変形部の変形によって発生したトルクにより、前記第4変形部を支点に、前記第2荷重伝達部とは逆方向に回転する。
【0010】
本発明に係る、試料ホルダを用いて試料の位置を制御する方法の一例において、
前記試料ホルダは、
‐駆動力を発生させる傾斜機構駆動部と、
‐前記駆動力を伝達する傾斜駆動力伝達部と、
‐傾斜動作を行う傾斜機構部と、
を備え、
前記傾斜機構部は、
‐前記傾斜駆動力伝達部からの荷重を伝達する、第1荷重伝達部および第2荷重伝達部と、
‐荷重により弾性変形する、第1変形部、第2変形部、第3変形部および第4変形部と、
‐試料を保持し、傾斜可能な試料保持部と、
を備え、
前記第2荷重伝達部には、前記第1変形部、前記第2変形部および前記第3変形部が取り付けられ、
前記第3変形部は、
‐前記第1変形部および前記第4変形部より上方にあり、
‐前記第2変形部より下方にあり、
‐前記第1変形部より前方にあり、
‐前記第4変形部より後方にあり、
前記方法は、
前記第1荷重伝達部が、前記傾斜駆動力伝達部からの荷重により荷重方向に移動し、前記第1変形部に荷重を伝えるステップと、
前記第2荷重伝達部が、前記第1変形部の変形によって発生したトルクにより、前記第2変形部を支点に回転して前記第3変形部に荷重を伝えるステップと、
前記試料保持部が、前記第3変形部の変形によって発生したトルクにより、前記第4変形部を支点に、前記第2荷重伝達部とは逆方向に回転するステップと、
を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、傾斜機構は回転軸の摺動部を有しないので、荷電粒子線装置における試料の傾斜動作において非線形特性が低減される。
【0012】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例1に係る荷電粒子線装置の試料ホルダ及び試料の傾斜機構部の側面図。
図2】実施例1に係る荷電粒子線装置の全体構成例を示す概略側面図。
図3】実施例1に係る試料ステージの概略側面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施例を図面を用いて説明する。
[実施例1]
以下、本発明の実施例1を図1図3に沿って説明する。
【0015】
図2は、実施例1に係る荷電粒子線装置の全体構成例を示す概略側面図である。実施例1では、荷電粒子線装置のうち、透過型電子顕微鏡を例に説明する。
【0016】
図2の荷電粒子線装置1は、鉛直方向において上から順に、電子銃10、鏡体11、架台17を備える。鏡体11には、鉛直方向において上から順に、照射系レンズ12、対物レンズ13、結像系レンズ14、検出器15が内蔵される。
【0017】
鏡体11の側面の対物レンズ13と同じ高さに、試料ステージ16が設置される。荷電粒子線装置1は、試料102を載置するための試料ホルダ100を備える。試料ステージ16は、試料ホルダ100を挿入するための挿入部101を有し、試料ホルダ100が試料ステージ16に挿入できるようになっている。これにより、試料ホルダ100に設置される試料102が、対物レンズ13内に挿入できる。試料ホルダ100および試料ステージ16は、試料挿入構造を構成する。また、試料ホルダ100は、本明細書に記載の方法によって、試料の位置を制御するために用いられる。
【0018】
また、鏡体11の下方にある架台17が、鏡体11を含む荷電粒子線装置1の全体を支えている。
【0019】
さらに、荷電粒子線装置1は、荷電粒子線装置1の全体を制御する主制御ユニット18と、試料ステージ16を制御するステージコントローラー19(制御部)とを備えている。
【0020】
試料102の観察像を得るため、電子銃10から加速された電子ビーム20が、鏡体11に向かって照射され、さらに、照射系レンズ12及び対物レンズ13により集束されながら、試料ホルダ100上の試料102に照射される。試料102を透過した電子ビーム20は、結像系レンズ14により拡大された後、検出器15によって検出される。そして、検出器15からの電気信号が主制御ユニット18に取り込まれ、画像化される。
【0021】
試料ホルダ100が、試料ステージ16の挿入部101から、鏡体11の内部に挿入される。試料ホルダ100は、設置された試料102を移動させる。なお、試料ホルダ100には後述の傾斜機構部130(図1参照)が設けられており、挿入部101は、この傾斜機構部130を荷電粒子線装置1の内部(たとえば鏡体11の内部)へ挿入するよう動作する。このような構成により、試料102を適切な位置に挿入することができる。
【0022】
ステージコントローラー19は、傾斜機構部130を制御する制御信号を送信する。また、ステージコントローラー19からの制御信号により、試料ホルダ100の位置が制御される。これによって試料102が所望の位置に移動することで、試料102に対する電子ビーム20の照射位置を移動することができる。
【0023】
図示しないが、試料ステージ16への試料ホルダ100の挿入操作は、手動に限らず、自動搬送装置などを用いてもよい。
【0024】
また、試料ホルダ100挿入後の試料位置を、鏡体11内の適切な位置に移動できるのであれば、挿入部101は、試料ステージ16内とする必要はなく、鏡体11内の試料ステージ16以外の位置としてもよい。
【0025】
なお、荷電粒子線装置の構成は上記の限りではない。
【0026】
図3は、本発明の試料ステージ16の概略側面図である。本実施例では、座標系は、試料ホルダの挿入方向をX軸(前後)とし、これと直交する水平軸をY軸(左右)とし、垂直軸をZ軸(上下)とするが、座標系の向きは任意にとることができる。
【0027】
図3の試料ステージ16は、試料ステージ全体を支えるベース30と、X軸周りに回転するX軸回転機構40と、略Z軸方向に動作するZ方向動作機構50と、図示しないが略Y軸方向に動作するY方向動作機構と、X軸方向に直動するX軸直動機構70とを備える。これに、試料102が設置された試料ホルダ100が差し込まれる。
【0028】
なお、本明細書においては座標原点を特定しておらず、「X軸周りに回転する」という表現は、任意の点を中心とするYZ平面内での回転を表し得る。また、「略Z軸方向に動作する」という表現は、Z軸方向の厳密に直線的な動作に限らず、部材の一端が大まかに直線で近似できる程度の曲線的な軌跡を移動するような動作を含み、たとえばXZ平面内での回転動作を含む。「略Y軸方向に動作する」という表現についても同様である。
【0029】
ベース30は略円筒形状であり、鏡体11側面に試料ステージ16を固定する。
【0030】
X軸回転機構40は、可動部、駆動部、動作案内部、駆動力伝達部、位置計測部を備え、ベース30上に設置される。
【0031】
X軸回転機構40は、回転動作する円筒状の回転筒41(可動部)と、回転駆動力を発生させるX軸回転駆動部42(駆動部)と、回転動作を案内するベアリング43(動作案内部)と、回転駆動力を可動部に伝達するギア44(駆動力伝達部)と、エンコーダ(図示しない。位置計測部)とを備える。
【0032】
回転筒41はベース30内部に内蔵され、X軸回転駆動部42はベース30上に固定され、ベアリング43はベース30と回転筒41の間に設置され、ギア44は回転筒41(たとえばその後端近傍)に設置される。
【0033】
X軸回転機構の動作を示す。まず、ステージコントローラー19からの駆動信号により、モーターなどのX軸回転駆動部42が回転し、この回転力が回転筒後端のギア44に伝達され、ベアリング43を回転案内として回転筒41がX軸周りに回転する。これにより、回転筒41の一部と連結する外筒51に支持されている試料ホルダ100と、この先端にある試料102もX軸周りに回転する。
【0034】
Z方向動作機構50は、可動部、駆動部、動作案内部、位置計測部、真空封止部を備え、回転筒上に設置される。
【0035】
Z方向動作機構50は、略Z軸方向に動作する外筒51(可動部)と、略Z軸方向の動作駆動力を発生させるZ軸動作駆動部52と、駆動力の反力を変形時に発生させる対抗ばね53(駆動部)と、略Z軸方向の動作を案内する球面受け54および球形支点55(動作案内部)と、球形支点用Oリング56(真空封止部)と、エンコーダ(図示しない。位置計測部)とを備える。駆動部が直接可動部に作用するので伝達部は存在しない。
【0036】
なお、Z方向動作機構50は、厳密には外筒51をY軸周りに回転させるものであるが、その回転範囲が狭い場合には、実質的には試料102をZ軸方向に直動させるものと解釈することもできる。
【0037】
外筒51は回転筒41内部に内蔵され、Z軸動作駆動部52と対抗ばね53は回転筒41上に固定され、球形支点55は外筒51の前端(鏡体内部側)に設置され、球面受け54は鏡体11側に設置される。
【0038】
以下にZ方向動作機構50の動作を示す。ステージコントローラー19からの駆動信号により、Z軸動作駆動部52が伸縮する。Z軸動作駆動部52そのものは直動するものであってもよく、たとえばリニアアクチュエータであってもよい。Z軸動作駆動部52の伸縮時の直動力が、直接的に外筒51後端(外側)を押すことで、ここがてこの力点となり、球形支点55と球面受け54を支点に外筒51がY軸周りに傾斜する。これにより、外筒51の内側で支持されている試料ホルダ100とこの先端にある試料102が略Z軸方向に動作する。
【0039】
また、対抗ばね53の圧縮変形により、駆動力と対抗する力が発生することで、Z軸動作駆動部52が縮小動作する際にも外筒51がその動作に追従して移動できるようになる。
【0040】
また、略Z軸方向動作時に外筒51からのリークを防ぐため、球形支点用Oリング56で真空封止すると好適である。
【0041】
Y方向動作機構は、可動部と駆動部、動作案内部、位置計測部、真空封止部を備え、回転筒上に設置される。Y方向動作機構は、Z方向動作機構をX軸周りに90°回転させた構成とすることができる。
【0042】
略Y軸方向に動作する外筒51(可動部)と、略Y軸方向の動作駆動力を発生させるY軸動作駆動部(図示しない)と、駆動力の反力を発生させる対抗ばね(図示しない。駆動部)と、略Y軸方向の動作を案内する球面受け54および球形支点55(動作案内部)と、球形支点用Oリング56(真空封止部)と、エンコーダ(図示しない。位置計測部)とを備える。駆動部が直接可動部に作用するので伝達部は不要である。
【0043】
略Y軸方向に動作するため、Y軸動作駆動部と対抗ばねは回転筒41上に固定される。他の構成部品については、Z軸動作駆動部と同じである。
【0044】
以下にY方向動作機構60の動作を示す。ステージコントローラー19からの駆動信号により、Y軸動作駆動部が伸縮する。Y軸動作駆動部そのものは直動するものであってもよく、たとえばリニアアクチュエータであってもよい。他の動作はZ方向動作機構と同じである。これにより、外筒51の内側で支持されている試料ホルダ100とこの先端にある試料102が略Y軸方向に動作する。また、対抗ばねの圧縮変形により、駆動力と対抗する力が発生することで、Y軸動作駆動部が縮小動作する際にも外筒51がその動作に追従して移動できるようになる。
【0045】
外筒51は、球面受け54および球形支点55にて案内されているため、略Z軸方向の動作(またはY軸周りの回転)、略Y軸方向の動作(またはZ軸周りの回転)の何れにも対応できる。
【0046】
X軸方向へ直動するため、X軸直動機構70は、可動部、駆動部、動作案内部、駆動力伝達部、位置計測部、真空封止部を備え、回転筒41上に設置される。
【0047】
X軸直動機構70は、X軸方向に直動するスライド筒72と、ホルダ突き当て部73(可動部)と、X軸方向の直動駆動力を発生させるX軸直動駆動部74(駆動部)と、X軸直動動作を案内するガイドピン75およびホルダガイド溝76(動作案内部)と、てこ77(駆動力伝達部)、ホルダ用Oリング78および内筒・外筒間Oリング79(真空封止部)と、エンコーダ(図示しない。位置計測部)と、内筒71を備える。内筒71は、たとえば2つの円筒状部材を一部嵌合させ固定することで形成される。
【0048】
内筒71は外筒51の内側に配置され、スライド筒72は内筒71の内側に配置される。さらに、スライド筒72はベローズ80を介して、内筒71と接続される。ホルダ突き当て部73は内筒71の内側に配置される。ホルダ突き当て部73はベローズ81を介して、スライド筒72と接続される。ガイドピン75は試料ホルダ100に結合している。てこ77は、回転筒41に設置されている。また、ホルダ用Oリング78は試料ホルダ100とスライド筒72との間に設置され、内筒・外筒間Oリング79は外筒51と内筒71との間に設置される。
【0049】
以下にX軸直動機構70の動作を示す。ステージコントローラー19からの駆動信号により、リニアアクチュエータなどのX軸直動駆動部74が伸縮し、この伸縮時の直動力が、てこを押すことで、ここがてこ77の力点となる。そして、てこ77の作用点となる点が、スライド筒72のつばを押すことで、スライド筒72がX軸方向後方に直動する。これにより、外筒51の内側で支持されている試料ホルダ100と、この先端にある試料102とが、X軸方向に直動する。X軸方向前方に直動する場合には、真空負圧を利用することができる。
【0050】
また、X軸直動動作時に、試料ホルダ100およびスライド筒72間や、外筒51と内筒71との間からのリークを防ぐため、ホルダ用Oリング78や内筒・外筒間Oリング79で真空封止すると好適である。
【0051】
本実施例では、試料ステージ16が、試料ステージ全体を支えるベース30と、X軸周りに回転するX軸回転機構40と、略Z軸方向に動作するZ方向動作機構50と、略Y軸方向に動作するY方向動作機構と、X軸に直動するX軸直動機構70とを備えるが、試料ステージ16の構成はこの限りではない。
【0052】
図1は、本実施例の傾斜機構部を備えた試料ホルダの断面側面図である。図1(a)は試料ホルダ100の全体を示し、図1(b)は試料ホルダ100の先端近傍の拡大図を示す。座標系は、図3と同じである。試料ホルダ100は、挿入部101より挿入された状態で使用する。
【0053】
試料ホルダ100の先端に、試料を前後方向に傾斜させるために傾斜動作を行う傾斜機構部130が設置される。なお、「前後方向に傾斜」とは、たとえば前後上下平面内での回転(Y軸周りの回転)をいう。
【0054】
試料ホルダ100は、傾斜機構駆動部110(試料ホルダ100後端に設置され、傾斜機構部130の傾斜動作に必要な駆動力を発生させる)と、傾斜駆動力伝達部120(ロッドまたはネジ形状の部材を備え、試料ホルダ100の先端に駆動力を伝達する)と、傾斜機構部130(試料ホルダ100先端に設置され、試料を前後方向に傾斜せる機構をもつ)とを備える。
【0055】
荷電粒子線装置1は、傾斜駆動力伝達部120の移動をガイドするガイド部121を備える。ガイド部121は中空筒状であり、ガイド部121の中空部に傾斜駆動力伝達部120が挿通される。このような構造によって傾斜駆動力伝達部120の移動方向が適切に制御される。
【0056】
傾斜機構部130は、傾斜駆動力伝達部120からの駆動力を伝達する荷重伝達部140と、駆動力により弾性変形する4つの変形部150と、試料102を保持し傾斜可能な試料保持部160とを備える。
【0057】
荷重伝達部140は、傾斜駆動力伝達部120からの駆動力を伝達する第1荷重伝達部141および第2荷重伝達部142を備える。第2荷重伝達部142は、たとえば三角形状または三角柱状に形成することができる。第2荷重伝達部142は、たとえば当該三角形の各頂点またはその近傍において変形部150により支持することができる。第2荷重伝達部142は、たとえば剛性の高い構造とすることができる。
【0058】
変形部150は、図で円形状にて簡略表現しているが、弾性変形できる形状であれば何でもよい。例えば板バネを用いてもよい。また、板バネを折り返した構造にして、より変形しやすい形状にしてもよい。変形部150の具体的な形状および/または構造は、当業者が適宜設計可能である。
【0059】
試料保持部160は、図示しないが試料を保持する部位を備える。また、試料を固定するための板バネなどを備えてもよい。
【0060】
変形部150は、荷重により弾性変形する変形部であり、第1変形部151と、第2変形部152と、第3変形部153と、第4変形部154とを備える。
【0061】
第2荷重伝達部142が三角形状である場合には、第1変形部151、第2変形部152および第3変形部153は、それぞれ第2荷重伝達部142の異なる頂点に取り付けることができる。このようにすると、第2荷重伝達部142は、簡素な形状で各変形部を適切に支持することができる。
【0062】
第1荷重伝達部141は、傾斜駆動力伝達部120および第1変形部151と接続される。第2荷重伝達部142は、第1変形部151、第2変形部152および第3変形部153と接続される。たとえば、第2荷重伝達部142に、第1変形部151と、第2変形部152と、第3変形部153とが取り付けられる。試料保持部160は、第3変形部153および第4変形部154と接続される。
【0063】
第1変形部151は、第1荷重伝達部141および第2荷重伝達部142に接続される。これによって第1荷重伝達部141および第2荷重伝達部142の間で駆動力が確実に伝達される。
【0064】
第2変形部152は、ガイド部121および第2荷重伝達部142に接続される。これによって第2荷重伝達部142が回転する際の支点が固定される。
【0065】
第3変形部153は、第2荷重伝達部142および試料保持部160に接続される。これによって第2荷重伝達部142および試料保持部160の間で駆動力が確実に伝達される。
【0066】
第4変形部154は、ガイド部121および試料保持部160に接続される。これによって試料保持部160が回転する際の支点が固定される。
【0067】
第1変形部151と第2変形部152は、第3変形部153より後方に配置される。第4変形部154は、第3変形部153より前方に配置される。第1変形部151および第4変形部154は、いずれも第2変形部152および第3変形部153より下方に配置される。
【0068】
第3変形部153は、第1変形部151および第4変形部154より上方にあり、第2変形部152より下方にあり、第1変形部151より前方にあり、第4変形部154より後方にある。
【0069】
以上のような構成の傾斜機構の動作を示す。モーターなどを用いた傾斜機構駆動部110が回転力や直動駆動力を発生し、この力が傾斜駆動力伝達部120に伝わり、これが前後に直接直動するか、回転しながら前後に直動することで、傾斜機構部130に駆動力を伝える。
【0070】
傾斜機構部130では、まず第1荷重伝達部141が直動力を受ける。第1荷重伝達部141は、傾斜駆動力伝達部120からの荷重により荷重方向に移動し、たとえばガイド部121の案内により前進する。これによって、第1荷重伝達部141は、第1変形部151に荷重を伝える。第1変形部151は、第1荷重伝達部141からの荷重により変形する。
【0071】
第1変形部151の変形によって生じた力が、てこの力点において第2荷重伝達部142に作用する。第2荷重伝達部142は、第1変形部151の変形によって発生したトルクにより、第2変形部152を支点に回転して第3変形部153に荷重を伝える。このときの第2荷重伝達部142の作用力が、第3変形部153に伝わり、第3変形部153が変形する。
【0072】
第3変形部153が変形によって生じた力が、てこの力点において試料保持部160に作用する。試料保持部160は、第3変形部153の変形によって発生したトルクにより、第4変形部154を支点に、第2荷重伝達部142とは逆方向に(図1(b)の例では反時計回りに)に回転する。
【0073】
試料保持部160を、図1(b)とは反対方向に回転させる場合には、モーターの回転方向を反対にすればよい。
【0074】
以上の構成によれば、荷電粒子線装置1は回転軸の摺動部を有しないので、荷電粒子線装置1における試料の傾斜動作において非線形特性が低減される。たとえば、弾性変形のみで試料の傾斜動作が可能になる。
【0075】
また、摺動部をなくすことで、機構の非線形特性(位置決め精度に影響する)のない傾斜動作が可能になる。また、第2荷重伝達部142を三角形構造としているため、平行リンク構造と比べて剛性が高くなり、耐振動性の高い構造となる。
【符号の説明】
【0076】
1…荷電粒子線装置
16…試料ステージ(試料挿入構造)
19…ステージコントローラー(制御部)
100…試料ホルダ(試料挿入構造)
101…挿入部
102…試料
110…傾斜機構駆動部
120…傾斜駆動力伝達部
121…ガイド部
130…傾斜機構部
140…荷重伝達部
141…第1荷重伝達部
142…第2荷重伝達部
150…変形部
151…第1変形部
152…第2変形部
153…第3変形部
154…第4変形部
160…試料保持部
図1
図2
図3