IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人大阪大学の特許一覧

特許7646242創傷治療装置及びこれに用いる創部被覆体
<図1>
  • 特許-創傷治療装置及びこれに用いる創部被覆体 図1
  • 特許-創傷治療装置及びこれに用いる創部被覆体 図2
  • 特許-創傷治療装置及びこれに用いる創部被覆体 図3
  • 特許-創傷治療装置及びこれに用いる創部被覆体 図4
  • 特許-創傷治療装置及びこれに用いる創部被覆体 図5
  • 特許-創傷治療装置及びこれに用いる創部被覆体 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-07
(45)【発行日】2025-03-17
(54)【発明の名称】創傷治療装置及びこれに用いる創部被覆体
(51)【国際特許分類】
   A61M 27/00 20060101AFI20250310BHJP
【FI】
A61M27/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023537651
(86)(22)【出願日】2023-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2023011470
(87)【国際公開番号】W WO2023182417
(87)【国際公開日】2023-09-28
【審査請求日】2024-06-25
(31)【優先権主張番号】P 2022050527
(32)【優先日】2022-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001885
【氏名又は名称】弁理士法人IPRコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】八木 雅和
(72)【発明者】
【氏名】澤 芳樹
(72)【発明者】
【氏名】宮川 繁
(72)【発明者】
【氏名】山田 翔平
(72)【発明者】
【氏名】桝田 浩禎
(72)【発明者】
【氏名】三宅 啓介
(72)【発明者】
【氏名】越原 崇行
【審査官】鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-504460(JP,A)
【文献】特表2019-500141(JP,A)
【文献】特開2018-83099(JP,A)
【文献】国際公開第2016/035342(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0121649(US,A1)
【文献】国際公開第01/85228(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 27/00
A61F 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性部材及び前記多孔性部材に積層された水密性カバー部材を含む可撓性の積層体で構成された創部被覆体と、
前記多孔性部材側に陰圧を供給する陰圧供給ポンプと、
前記多孔性部材側に洗浄流体を供給し前記多孔性部材側から前記洗浄流体を排出するための洗浄流体用ポンプと、
排出された前記洗浄流体を取り込むキャニスターと、
前記陰圧供給ポンプ及び前記洗浄流体用ポンプを制御する制御部と、
を具備し、
前記創部被覆体が前記多孔性部材側で覆われる創部に対して陰圧閉鎖療法又は洗浄を施す際に、前記創部被覆体に所定の圧力がかかり上方に凸(略ドーム状)又は下方に凹(略皿状)に撓んで変形すること、
を特徴とする創傷治療装置。
【請求項2】
前記多孔性部材が、前記カバー部材とは反対側の面に多数の凸状部分を有すること、
を特徴とする請求項1に記載の創傷治療装置。
【請求項3】
前記創部被覆体が、パッド状、略円筒状、略袋状又は略靴状であること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の創傷治療装置。
【請求項4】
前記洗浄流体が液体又は気体であること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の創傷治療装置。
【請求項5】
前記液体が過硝酸水溶液を含むこと、
を特徴とする請求項4に記載の創傷治療装置。
【請求項6】
前記キャニスターが、前記洗浄流体中の細菌数を計測する検知部を具備すること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の創傷治療装置。
【請求項7】
前記制御部が、前記細菌数に応じて前記洗浄回数を調節可能であること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の創傷治療装置。
【請求項8】
前記陰圧供給ポンプ又は前記洗浄流体用ポンプが、前記創傷治療装置から分離可能であること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の創傷治療装置。
【請求項9】
多孔性部材と、前記多孔性部材に積層された水密性カバー部材と、を含む可撓性の積層体で構成される創部被覆体であって
前記多孔性部材側で覆われる創部に対して陰圧閉鎖療法又は洗浄を施すために用いられ、前記陰圧閉鎖療法又は前記洗浄を施す際に、前記創部被覆体に所定の圧力がかかり上方に凸(略ドーム状)又は下方に凹(略皿状)に撓んで変形すること、
を特徴とする創部被覆体。
【請求項10】
前記多孔性部材が、前記カバー部材とは反対側の面に多数の凸状部分を有すること、
を特徴とする請求項9に記載の創部被覆体。
【請求項11】
パッド状、略円筒状、略袋状又は略靴状であること、
を特徴とする請求項9又は10に記載の創部被覆体。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、創傷を治療するための創傷治療装置及びこれに用いる創部被覆体に関する。
【背景技術】
【0002】
世界的な糖尿病及び閉塞性動脈硬化症の蔓延に伴い、特に足部潰瘍が増加している。足部潰瘍は、外圧や摩擦に暴露され易く、治癒が困難である。また、感染を伴った潰瘍は極めて難治性であり、骨等の深部へ波及し易く、下肢大切断に繋がるとともに患者の生命を脅かしている。
【0003】
上記のような潰瘍等の創傷の治療には、陰圧閉鎖療法が用いられており、まず医療提供者がハサミ等でフォーム(スポンジ様部材)を創傷の部分(創部)の形状に合わせた形状及び寸法に裁断して調節し、切断したフォームを創部に埋め、その上部からフィルムを貼り、一ヵ所に穴を開けて陰圧をかけて創傷治癒を促進する。そして、創部において感染を増大させないように間欠的に生理食塩水等で満たし、洗浄が行われる。
【0004】
ここで、上記の陰圧閉鎖療法には以下の(1)~(3)のようなデメリットがある。
(1)フォームを創部に埋め込むため密閉空間ができて感染増大のおそれがあり、フォーム交換時に肉芽が入り込んで治癒を妨げるおそれがある(フォーム埋込・交換の問題)。
(2)創部に限定した保護になっており、創部以外の周辺部分は特に外圧や摩擦から保護されておらず、新たな創傷ができるおそれがある(創部周辺保護の問題)。
(3)創部の形状に合わせてフォームをカットし調節するために、熟練が必要であり、また、一処置あたり30~50分間もの時間を要してしまう(熟練及び時間の問題)。
【0005】
これに対し、例えば特許文献1(特表2017-527336号公報)においては、陰圧閉鎖療法に用いられる装置として、種々の流体点滴注入及び陰圧の組み合わせドレッシングが開示及び提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2017-527336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載の陰圧閉鎖療法に用いられる装置である流体点滴注入及び陰圧の組み合わせドレッシングは、構造が煩雑であり、これを用いても上記の問題点(1)~(3)は十分には改善できず、また、洗浄液に周辺に散逸して感染増大のおそれも依然としてある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、フォームの調節、埋込及び交換や洗浄液の漏れ等に起因する感染増大及び治癒の遅れがなく、創部周辺も有効に保護でき、熟練を要せず簡易に取り扱うことのできる創傷治療装置及びこれに用いる創部被覆体を提供することにあり、本発明者らは試作を繰り返して鋭意検討を行った結果、ようやく本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明は、
多孔性部材及び前記多孔性部材に積層された水密性カバー部材を含む可撓性の積層体で構成された創部被覆体と、
前記多孔性部材側に陰圧を供給する陰圧供給ポンプと、
前記多孔性部材側に洗浄流体を供給し前記多孔性部材側から前記洗浄流体を排出するための洗浄流体用ポンプと、
排出された前記洗浄流体を取り込むキャニスターと、
前記陰圧供給ポンプ及び前記洗浄流体用ポンプを制御する制御部と、
を具備し、
前記創部被覆体によって前記多孔性部材側で覆われる創部に対して陰圧閉鎖療法及び洗浄を施すこと、
を特徴とする創傷治療装置、
を提供する。
【0010】
上記の本発明の創傷治療装置においては、
前記多孔性部材が、前記カバー部材とは反対側の面に多数の凸状部分を有すること、
が好ましい。
【0011】
また、上記の本発明の創傷治療装置においては、
前記創部被覆体が、パッド状、略円筒状、略袋状又は略靴状であること、
が好ましい。
【0012】
また、上記の本発明の創傷治療装置において、前記洗浄流体は、創部を洗浄、殺菌等することのできるものであればよく、例えば洗浄液等の液体でもよく、また、例えば殺菌性又は治癒促進性の気体でもよい。前記洗浄流体は、液体の洗浄液の場合、過硝酸水溶液を含むこと、が好ましい。
【0013】
また、上記の本発明の創傷治療装置においては、
前記キャニスターが、前記洗浄流体中の細菌数を計測する検知部を具備すること、
が好ましい。
【0014】
また、上記の本発明の創傷治療装置においては、
前記制御部が、前記細菌数に応じて前記洗浄回数を調節可能であること、
が好ましい。
【0015】
更に、本発明は、上記の本発明の創傷治療装置に好適に用いられる創部被覆体も提供する。当該本発明に係る創部被覆体は、
多孔性部材と、前記多孔性部材に積層された水密性カバー部材と、を含む可撓性の積層体で構成され、
前記多孔性部材側で覆われる創部に対して陰圧閉鎖療法及び洗浄を施すために用いられること、
を特徴とするものである。
【0016】
上記の本発明の創部被覆体においては、
前記多孔性部材が、前記カバー部材とは反対側の面に多数の凸状部分を有すること、
が好ましい。
【0017】
上記の本発明の創部被覆体においては、
パッド状、略円筒状、略袋状又は略靴状であること、
が好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、フォームの調節、埋込及び交換や洗浄液の漏れ等に起因する感染増大及び治癒の遅れがなく、創部周辺も有効に保護できて合併症を抑制でき、熟練を要せず簡易に取り扱うことのできる創傷治療装置及びこれに用いる創部被覆体が得られる。即ち、本発明に係る創傷治療装置及びこれに用いる創部被覆体によれば、従来の創傷治療では困難であった感染制御、早期治癒、合併症抑制、短時間化及び簡易化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る創傷治療装置1の構成を概念的に示す概略模式図である。
図2図1に示す創傷治療装置1における創部被覆体の機能を説明するための概略模式図である。
図3図1に示す創傷治療装置1における創部被覆体の機能を説明するための別の概略模式図である。
図4】本発明の変形例に係る創傷治療装置1Aを概念的に示す概略模式図である。
図5図4に示す創傷治療装置1Aを概念的に示す別の概略模式図である。
図6】本発明の別の変形例に係る創傷治療装置1Bを概念的に示す概略模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の代表的な実施形態に係る装置について、図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。但し、図面は、本発明を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために寸法、比又は数を誇張又は簡略化して表している場合がある。
【0021】
<創傷治療装置の構成>
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る創傷治療装置1は、創部被覆体2と、陰圧供給ポンプ4と、洗浄液用ポンプ6と、キャニスター8と、制御部10と、を具備し、創部被覆体2によって創部に対して陰圧閉鎖療法及び洗浄を施すことができるものである。本実施形態においては、洗浄流体として洗浄液を用いており、したがって、洗浄流体用ポンプとして洗浄液用ポンプを用いている。
【0022】
本実施形態の創部被覆体2は、創傷及びその周辺を含む創部を覆うパッド状のものであり、多孔性部材2aに積層された水密性カバー部材2bを含む可撓性の積層体で構成されている。ここでいう「可撓性」とは、所定の圧力がかかった場合に、上方に凸(略ドーム状)又は下方に凹(略皿状)に撓んで変形し得ることをいう。
【0023】
多孔性部材2aは、立体網目状構造を有する所謂スポンジ状のフォーム(発泡体)であり、創部積層体2に可撓性を付与することができれば種々の材料を用いることができ、例えばポリウレタン、ポリエステル、メラミン等の樹脂等の材料で構成することができる。また、多孔性部材2aは、ある程度の吸水性を有していてもよいが、創部からの余剰浸出液や洗浄液を保持して取扱性が低下しないように疎水性を有していてもよい。
【0024】
多孔性部材2aを構成する発泡体は、図1においては示していないが、創部W側の面(即ち、カバー部材2bとは反対側の面)に複数の凸状部分(山状の突起等)を有するのが好ましい。このような凸状部分があると、多孔性部材2aが創部の創傷により確実に接して覆うことができ、早期治癒に資するためである。なかでも、この凸状部分は、複数個が規則的に整列されて設けられているのが好ましい。
【0025】
なお、創部被覆体2はパッド状であれば種々の形状を取ることができ、例えば略矩形や略円形であってもよい。また、多孔性部材2aの厚みは、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択することができ、例えば創部の箇所や程度等によって適宜調整すればよいが、凸状部分の高さは例えば0.2mm~4cm程度であればよい。
【0026】
次に、カバー部材2bは、多孔性部材2aに接着剤又は熱融着等による接着して積層されるものであり、いわゆる裏当て層とも言うことができ、水密性を有するとともに、創部積層体2に可撓性を付与するためにある程度の伸縮性を有するものである。かかるカバー部材2bとしては、創部積層体2に可撓性及び水密性を付与することができれば種々の材料を用いることができ、例えばポリウレタン、ラテックス、ニトリル、シリコーン樹脂、種々の熱可塑性樹脂等の材料で構成することができる。また、フィルム状であってもシート状であってもよい。
【0027】
陰圧供給ポンプ4は、陰圧供給管4a及び管12を経て、創部被覆体2のうちの多孔性部材2a側に陰圧を供給するものである。これにより、図2を用いて後述するように、創部被覆体2と創部Wとの間に陰圧を供給し、創部被覆体2を多孔性部材2a側にて創部Wに密着させることができる。
【0028】
このような陰圧供給ポンプ4としては、本発明の効果を損なわない範囲で、従来公知のものを使用することができる。
【0029】
また、洗浄液用ポンプ6は、洗浄液用管6a及び管12を経て、創部被覆体2のうちの多孔性部材2a側に生理食塩水や過硝酸水溶液等の洗浄液を供給し、多孔性部材2aと創部Wとの間に洗浄液を充満させて、液体浸漬により創部Wの面の細菌を除去する洗浄(感染治療)を行う。換言すると、創部被覆体2と創部Wとの間に陽圧を供給するものである。また、洗浄液用ポンプ6は、多孔性部材2aと創部Wとの間の洗浄液を、創部被覆体2の外部に排出する。
【0030】
このような洗浄液用ポンプ6としても、本発明の効果を損なわない範囲で、従来公知のものを使用することができる。なお、図示していないが、洗浄液は別途の洗浄液パック等を洗浄液用ポンプ6に接続する等して供給すればよい。
【0031】
キャニスター8は、創部Wを洗浄した後に排出された洗浄液を取り込む容器である。かかるキャニスターとしては、本発明の効果を損なわない範囲で、従来公知のものを使用することができる。例えば、排出された洗浄液が散逸しないように固化するためのゲル化剤を内蔵し得るキャニスターを用いることもできる。
【0032】
また、キャニスター8は、排出した洗浄液中の細菌数を計測する検知部8aを具備することが好ましく、更には、後述する制御部10によって、計測した細菌数に応じて洗浄液用ポンプ6を用いた洗浄回数を調節可能であることが好ましい。かかる機能を有するキャニスターとしては、従来公知のものを用いればよい。
【0033】
上記の陰圧供給ポンプ4、洗浄液用ポンプ6及び検知部8aを有するキャニスター8は、制御部10によって制御することができる。この制御部10は、液晶表示部やLED表示部を備えており、ボタン式であってもタッチパネル式であってもよく、従来公知の技術により実現することができる。
【0034】
<創傷治療装置の使用方法>
次に、本実施形態に係る創傷治療装置1の使用方法について簡単に説明すると、まず、図1に示すように、創部Wをパッド状の創部被覆体2とカバー部材等が接着された機構で覆う。場合によっては、図示しないが、パッド状の創部被覆体2とカバー部材は、使用前は分離されており、被覆時に周辺ごと接着して固定する構成を取ることも可能である。このとき、創部被覆体2の多孔性部材2aと創部Wとの間には空間が存在する。
【0035】
次に、制御部10により、電源をONにすると陰圧治療モードが自動的又はマニュアルで選択され、陰圧供給ポンプ4が作動して、図2に示すように、創部被覆体2と創部Wとの間に陰圧X1を供給し、Y1の方向に空気を排出することにより、創部被覆体2は下方に凹(略皿状)に撓んで変形し、多孔性部材2aを創部Wに密着させる。このとき、図1の空間Sは図2においてS1で示すように多孔性部材2aによって埋められた状態となる。これにより、微小循環改善、余剰浸出液除去、組織浮腫改善及び創部W収縮効果を伴う陰圧治療を実施することができる。
【0036】
次に、制御部10によって、洗浄液用ポンプ6を作動させ、図3に示すように、創部被覆体2と創部Wとの間に洗浄液Y2が供給され、創部被覆体2は上方に凸(略ドーム状)に撓んで変形し、創部被覆体2と創部Wとの間に洗浄液を充満させる。このとき、図1の空間Sは図3においてS2で示すように洗浄液で満たされ、多孔性部材2aにも洗浄液が浸漬して、創部被覆体2にはX2の方向に陽圧がかかった状態となる。これにより、液体浸漬により創部Wの面の細菌を除去する洗浄(感染治療)を実施することができる。
【0037】
また、制御部10によって所定の時間保持されたS2の洗浄液は、洗浄液用ポンプ6によって排出されて、キャニスター8に排液として取り込まれる。このとき、キャニスター8が具備する検知部8aによって、排液中の細菌数が計測されることより、計測された細菌数に応じて洗浄液用ポンプ6を用いた洗浄回数を調節可能となる。洗浄液の供給及び排出並びにそれらの回数は、自動的に実施されるように制御部10によって設定できる構成としてもよく、それぞれマニュアル式で都度操作してもよい。
【0038】
<変形例1>
次に、変形例2に係る創傷治療装置について説明する。図4は、上記実施形態に係る創傷治療装置1の変形例に係る創傷治療装置1Aを概念的に示す概略模式図である。また、図5は、図4に示す創傷治療装置1Aのうちの創部被覆体2Aが開いた状態を示す概略模式図である。
【0039】
本変形例に係る創傷治療装置1Aでは、足のうちの足首より下の部分を覆うことのできる略靴状(フットカバー型)の形状を有する創部被覆体2Aを具備する点に特徴を有し、その他の構成については上記実施形態に係る創傷治療装置1と同様である。
【0040】
創部被覆体2Aは、水密性及び気密性を有する開閉機構16で開閉できる開口を有しており、閉じた状態では、図4に示すように、足首側部分を水密性及び気密性を有する防水テープ(又はバンド)14で取り付ける。このような開閉機構16としては、例えば防水ファスナーやジップロック(登録商標)等が挙げられる。
【0041】
また、図5における開いた状態に示されるように、本変形例においては、カバー部材2bに積層された内側の多孔性部材2aが規則的に配列された複数の凸状部分(突起)2b1を有している。これにより、足の甲、足裏、前部、及び側底等のいずれの部分に創傷があっても、創部に多孔性部材2aが入り込むことができ、陰圧閉鎖療法をより確実に施すことができる。
【0042】
<変形例2>
更に、別の変形例に係る創傷治療装置について説明する。図6は、上記実施形態に係る創傷治療装置1の変形例2に係る創傷治療装置1Bを概念的に示す概略模式図である。
【0043】
本変形例に係る創傷治療装置1Bでは、前腕部(二の腕)の周辺全体を覆うことのできる略円筒状の形状を有する創部被覆体2Bを具備する点に特徴を有するとともに、2箇所に防水テープ(又はバンド)14a,14bを用いており、その他の構成については上記実施形態に係る創傷治療装置1と同様である。
【0044】
以上、本発明の代表的な実施形態及び変形例について説明したが、更に種々の設計変更が可能であり、かかる設計変更した態様も全て本発明の技術的範囲に含まれる。例えば、陰圧供給ポンプ及び洗浄液用ポンプのポンプ能については、創傷治療装置を用いる創傷の箇所によって適宜選択すればよく、また、創部被覆体の形状や寸法についても、創部の形状や寸法に応じて適宜選択すればよい。したがって、創部は、例えば足の甲、足裏、前部、及び側底、脹脛部、大腿部、胴部、前腕部(二の腕)、手の甲、背中、腰部、腹部等々、立体的な部分でも平面的な部分でもよい。
【0045】
更に、上記の実施形態及び変形例においては、創部被覆体2が上方に凸(略ドーム状)に撓んで変形し、創部被覆体2と創部Wとの間に洗浄液を充満させる場合について説明したが、本発明の効果が得られる範囲であれば、創部被覆体2はある程度創部に密着していてもよい。
【0046】
上記の実施形態及び変形例においては、創傷治療装置には陰圧供給ポンプ及び洗浄液用ポンプが含まれているが、これら陰圧供給ポンプ又は洗浄液用ポンプは、創傷治療装置に組み込まれて一体化されていてもよい。また、上記陰圧供給ポンプ又は洗浄液用ポンプは、創傷治療装置から物理的に分離可能な構造を有するか又は創傷治療装置から物理的に分離しており(別々となっており)、創傷治療装置の使用時には組み込まれて一体化されるか又は管等で接続される構造を有していてもよい。このように、創傷治療装置の構造については、例えばコスト、サイズ及びユーザビリティ等の観点から種々の設計変更が可能であり、これら設計変更も全て本発明の技術的範囲に含まれる。
【0047】
以上のような本発明に係る創傷治療装置によれば、フォームの調節、埋込及び交換や洗浄液の漏れ等に起因する感染増大及び治癒の遅れがなく、創部周辺も有効に保護できて合併症を抑制でき、熟練を要せず簡易に取り扱うことのできる創傷治療装置及びこれに用いる創部被覆体が得られる。即ち、本発明に係る創傷治療装置及びこれに用いる創部被覆体によれば、従来の創傷治療では困難であった感染制御、早期治癒、合併症抑制、短時間化及び簡易化を実現することができる。
【符号の説明】
【0048】
1,1A,1B 創傷治療装置
2,2A,2B 創部被覆体
2a 多孔性部材
2b カバー部材
4 陰圧供給ポンプ
4a 陰圧供給管
6 洗浄液用ポンプ
6a 洗浄液用管
8 キャニスター
8a 検知部
10 制御部
12 管
12a 管接続部
14,14a,14b 防水テープ


図1
図2
図3
図4
図5
図6