(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】軟質ポリウレタンフォーム
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20250311BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20250311BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20250311BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20250311BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20250311BHJP
【FI】
C08G18/00 F
C08G18/10
C08G18/48 033
C08G18/76 057
C08G101:00
(21)【出願番号】P 2020169514
(22)【出願日】2020-10-07
【審査請求日】2023-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 純也
(72)【発明者】
【氏名】小柳 哲平
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-060895(JP,A)
【文献】特開2016-060896(JP,A)
【文献】特開2016-033213(JP,A)
【文献】特開2008-179831(JP,A)
【文献】特開2019-014848(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレア凝集体を含む軟質ポリウレタンフォームであって、
該ウレア凝集体の体積平均粒子径が0.32~0.72μmであり、
該軟質ポリウレタンフォーム断面の単位面積あたりのウレア凝集体の面積比率が6%~15%であ
り、
ジフェニルメタンジイソシアネート(A)と、オキシエチレンユニットを30質量%以上含むポリオール成分(B)との反応生成物、およびポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネートを含む変性ポリイソシアネート(C)をイソシアネート成分として用い、
変性ポリイソシアネート(C)のイソシアネート含有量が28.1~32.4質量%であり、
見掛け密度が50kg/m
3
未満であり、スキン付きフォーム試験片の25%圧縮硬さが100~400N/314cm
2
であり、反発弾性率が70%以下であり、ヒステリシスロス率が30%以下であり、乾熱圧縮残留歪が4%以下であり、且つ湿熱圧縮残留歪が8%以下であることを特徴とする軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項2】
ポリオール成分(B)の数平均分子量が500~10000であることを特徴とする、
請求項1に記載の軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項3】
ポリオール成分(B)の平均官能基数が1.7~4.3であることを特徴とする、
請求項1、または2に記載の軟質ポリウレタンフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質ポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来自動車のシートクッション用軟質ポリウレタンフォーム(以下、軟質フォームとも言う。)は、安全性の観点から長時間の乗車でも厚み減少による運転者の視点変化が少なくなるよう高い耐久性が要求されている。一方で、昨今のシートクッションでは、路面から伝わる振動を軽減するため、フォームの反発弾性率を低く抑え、また、コスト低減の観点からフォーム密度を可能な限り低くすることが求められている。しかしながら、これら低反発化、低密度化は、フォーム耐久性を著しく悪化させることが知られており、耐久性と乗り心地性、経済性を両立させる技術の確立が求められてきた。
【0003】
これらを解決する手段として特許文献1には、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIとも言う。)含有率81~100%、ジフェニルメタンジイソシアネート中の2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート及び2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート40~60%を含む変性されていないMDIと平均公称ヒドロキシル官能価2~6、平均当量200~600のオキシエチレン基を少なくとも60質量%含有するポリエーテルポリオールを含むポリオール組成物とを反応させる方法が開示されている。しかしながら、この方法では、水を含む他の活性水素基含有化合物と当該オキシエチレンユニットを有するポリオールが競合してイソシアネートと反応するため、結果として当該オキシエチレンユニットを有するポリオールの末端水酸基の反応は完結せず、軟質ポリウレタンフォーム中のウレア凝集体が適切に存在しないことにより十分なヒステリシスロス率低減の効果が得られないと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、50kg/m3以下の低密度領域においても高振動吸収性、高耐久性を有する軟質フォームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前述の課題を解決するために鋭意検討した結果、見出されたものである。
【0007】
すなわち本発明は、以下の(1)~(5)の実施形態を含むものである。
【0008】
(1)ウレア凝集体を含む軟質ポリウレタンフォームであって、該ウレア凝集体の体積平均粒子径が0.32~0.72μmであり、該軟質ポリウレタンフォーム断面の単位面積あたりのウレア凝集体の面積比率が6%~15%であることを特徴とする軟質ポリウレタンフォーム。
【0009】
(2)ジフェニルメタンジイソシアネート(A)と、オキシエチレンユニットを30質量%以上含むポリオール成分(以下、ポリオール成分とも言う。)(B)との反応生成物、およびポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート(以下、ポリメリックMDIとも言う。)を含む変性ポリイソシアネート(C)をイソシアネート成分として用いることを特徴とする、上記(1)に記載の軟質ポリウレタンフォーム。
【0010】
(3)前記ポリオール成分(B)の数平均分子量が500~10000であることを特徴とする、上記(2)に記載の軟質ポリウレタンフォーム。
【0011】
(4)前記ポリオール成分(B)の平均官能基数が1.7~4.3であることを特徴とする、上記(2)、または(3)に記載の軟質ポリウレタンフォーム。
【0012】
(5)前記変性ポリイソシアネート(C)のイソシアネート含有量が28.1~32.4質量%であることを特徴とする、上記(2)乃至(4)のいずれかに記載の軟質ポリウレタンフォーム。
【0013】
(6)軟質ポリウレタンフォームの見掛け密度が50kg/m3未満であり、スキン付きフォーム試験片の25%圧縮硬さが100~400N/314cm2の範囲であり、反発弾性率が70%以下であり、ヒステリシスロス率が30%以下であり、乾熱圧縮残留歪が4%以下であり、且つ湿熱圧縮残留歪が8%以下であることを特徴とする、上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の軟質ポリウレタンフォーム。
【発明の効果】
【0014】
本発明の軟質ポリウレタンフォームは、50kg/m3未満の低密度領域においても高振動吸収性、高耐久性を有する軟質ポリウレタンフォームを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例4にて得られたサンプルを走査型プローブ顕微鏡により撮影した20μm四方の画像である。
【
図2】比較例4にて得られたサンプルを走査型プローブ顕微鏡により撮影した20μm四方の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の軟質ポリウレタンフォームは、ウレア凝集体を含み、該ウレア凝集体の体積平均粒子径が0.32~0.72μmであり、該軟質ポリウレタンフォーム断面の単位面積あたりのウレア凝集体の面積比率が6%~15%であることを特徴とする。
【0017】
はじめに、本発明における軟質ポリウレタンフォームに含まれるウレア凝集体について説明する。ウレア凝集体は、主にイソシアネート基と水との反応により生成するウレア基が凝集しているものと考えられる。変性ポリイソシアネート(C)に含まれるポリオール成分(B)由来のポリオキシエチレンユニットを、イソシアネート基近傍に常に適量存在させることで好適な親水性を有し、ウレア凝集体がバランスよく生成すると考えられる。
【0018】
このバランスは、後記する各原料を用いることにより良好なものとすることができる。
【0019】
本発明におけるウレア凝集体の体積平均粒子径は、0.32~0.72μmであり、0.32~0.64μmであることが好ましく、0.32~0.52μmであることがより好ましい。フォーム断面の単位面積あたりのウレア凝集体の面積比率は6%~15%であり、7%~11%であることが好ましい。ウレア凝集体の体積平均粒子径、および面積比率を前記範囲とすることで、良好なヒステリシスロス率、反発弾性率、および耐久性を有する軟質ポリウレタンフォームを得ることができる。
【0020】
次に、前記ウレア凝集体を得るための好ましい実施形態について説明する。
【0021】
本発明のMDI(A)は、変性ポリイソシアネート(C)を得るためのイソシアネート成分の一つであり、ベンゼン環とイソシアネート基を2つずつ含むものである。
【0022】
MDIには、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、2,2’-MDI)、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、2,4’-MDI)、および4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、4,4’-MDI)が含まれ、MDI総質量に対する2,2’-MDIと2,4’-MDIの合計質量をアイソマー含有率と言う。
【0023】
本発明においては、変性ポリイソシアネート(C)におけるMDI含有率や、アイソマー含有率を目標に、MDI(A)の配合量、アイソマー含有率を決定する。
【0024】
ポリオール成分(B)は、ポリオキシエチレンユニットを30質量%以上含むことが好ましく、45質量%以上含むことがより好ましい。
【0025】
ポリオール成分(B)としては、前記条件を満たせば公知のものが使用でき、例えば、数平均分子量700未満の低分子量ポリオール類、低分子量ポリアミン類、低分子量アミノアルコール類等を開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドや、テトラヒドロフラン等の環状エーテルを付加させて得られるものが挙げられる。前記開始剤としては、例えば水、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-n-ヘキサデカン-1,2-エチレングリコール、2-n-エイコサン-1,2-エチレングリコール、2-n-オクタコサン-1,2-エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物、水素添加ビスフェノールA、3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロピル-3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロピオネート、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の低分子量ポリオール類;アニリン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トルエンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、キシリレンジアミン等の低分子量アミン類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン等の低分子量アミノアルコール類等が挙げられる。
【0026】
このような、ポリオール成分(B)の平均官能基数は、1.7~4.3であることが好ましく、1.7~3.3であることがより好ましい。
【0027】
また、ポリオール成分(B)の数平均分子量は500~10000であることが好ましく、500~8500であることがより好ましい。
【0028】
変性ポリイソシアネート(C)は、上記したMDI(A)とポリオール成分(B)との反応生成物、およびポリメリックMDIを含むものである。
【0029】
変性ポリイソシアネート(C)を得るにあたっては、MDI、ポリメリックMDI、およびポリオール成分(B)を、MDI含有率、アイソマー含有率、およびNCO含有量の設定値になるように、各成分の比率を決定することができる。各設定値が下記範囲内にあれば、各成分比に特に制限はない。
【0030】
MDI含有率は、ポリオール成分(B)との反応前のMDI(A)のMDI含有率と、ポリメリックMDIのMDI含有率との合計において、65~90質量%が好ましく、70~85質量%がより好ましい。
【0031】
アイソマー含有率は、ポリオール成分(B)との反応前のMDI(A)のアイソマー含有率と、ポリメリックMDIのアイソマー含有率との合計において10~50質量%であることが好ましく、20~45質量%であることがより好ましい。
【0032】
変性ポリイソシアネート(C)のイソシアネート含有量は、28.1~32.4質量%であることが好ましく、28.3~32.0質量%であることがより好ましい。前記MDI含有率、アイソマー含有率、およびイソシアネート含有量を前記範囲内とすることで、各特性を満たすためのウレア凝集体を好適に得ることができる。
【0033】
なお、変性ポリイソシアネート(C)を得るにあたっての合成方法は特に制限されるものではなく、全量のMDI(A)にポリオール成分(B)を反応させる方法、MDI(A)の一部とポリオール成分(B)を反応させてからMDI(A)の残分、およびポリメリックMDIを混合する方法等が適用できる。
【0034】
次に、軟質ポリウレタンフォームを得るために、変性ポリイソシアネート(C)と反応させるポリオール(D)について説明する。
【0035】
ポリオール(D)としては、特に限定されるものではなく、軟質ポリウレタンフォームの成形に用いる公知のポリオールを特に制限なく用いることができるが、水酸基価20~40mgKOH/g、及び平均官能基数が2~4のポリエーテルポリオールを主体とするものが好ましい。
【0036】
このようなポリオール(D)としては、例えば、前記ポリオール成分(B)として挙げたものを用いることができる。なかでもポリオキシプロピレン構造を主鎖とし、その分子末端にエチレンオキシドを付加したものが好ましい。
【0037】
また、得られる軟質ポリウレタンフォームの硬さ調整を目的として、ポリオール中でビニル系モノマーを通常の方法で重合して製造したポリマーポリオールを併用することができる。このようなポリマーポリオールとしては、ポリオール(D)と同様のポリエーテルポリオール中、ラジカル開始剤の存在下でビニル系モノマーを重合させ、安定分散させたものが挙げられる。また、ビニル系モノマーとしては、例えばアクリロニトリル、スチレン、塩化ビニリデン、ヒドロキシアルキル、メタアクリレート、アルキルメタアクリレートが挙げられ、中でもアクリロニトリル、スチレンが好ましい。このようなポリマーポリオールの具体例としては、AGC社製のEL-910、EL-923、三洋化成工業社製のFA-728R等が挙げられる。
【0038】
本発明の軟質ポリウレタンフォームを得るにあたって、触媒、架橋剤、整泡剤、発泡剤等を適宜用いることができる。
【0039】
触媒としては、公知の各種ウレタン化触媒や三量化触媒を用いることができる。代表例としてはトリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、ジメチルベンジルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン、トリエチレンジアミン、ビス-(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、1,8-ジアザ-ビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7等の三級アミン、ジメチルエタノールアミン、N-トリオキシエチレン-N,N-ジメチルアミン、N,N-ジメチル-N-ヘキサノールアミン等の反応型三級アミン又はこれらの有機酸塩、1-メチイミダゾール、2-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、1-ブチル-2-メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、スタナスオクトエート、ジブチルチンジラウレート、ナフテン酸亜鉛等の有機金属化合物、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジアルキルアミノアルキル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン、酢酸カリウム、2-エチルヘキサン酸カリウム等が挙げられる。触媒の種類と量は、適切なフォームセルの独泡率、生産サイクルを実現できるものであれば良く、特に規定する必要は無いが、フォーム臭気等の点から好ましい添加量はポリオールに対し0.1~5質量部である。
【0040】
本発明には成形安定性の向上やフォーム硬さの調整を目的としてジエタノールアミンやトリエタノールアミン等のアルカノールアミン系等の架橋剤を添加することができる。架橋剤の添加量はポリオール(D)100質量部に対し5質量部以下であることが好ましい。必要以上に架橋剤を添加することにより強い独泡性を生じるおそれや、架橋密度増大により機械的強度が悪化するおそれがある。
【0041】
整泡剤としては、公知の有機珪素系界面活性剤等を用いることができ、例えば、東レ・ダウコーニング社製のSZ-1327、SZ-1325、SZ-1336、SZ-3601、モメンティブ社製のY-10366、L-5309、L-3639LF2、エボニック社製B-8724LF2、B-8715LF2、信越化学社製のF-122等が挙げられる。これら整泡剤の添加量はポリオール(G)100質量部に対し0.1~3質量部が好ましい。
【0042】
発泡剤としては、水が好ましく、市水を用いることができる。水を用いることにより、イソシアネート基と水との反応で炭酸ガスが発生し、発泡させることができる。水の添加量はポリオール(D)100質量部に対し2~10質量部が好ましい。なお、水に加え、液化炭酸ガスを併用することも可能である。
【0043】
上記の他、難燃剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、各種充填剤、内部離型剤、その他の加工助剤を適宜使用することができる。なお、これらの助剤の中でイソシアネートと反応しうる活性水素基を有しないものについては、イソシアネート成分に予め混合して使用することもできる。
【0044】
本発明のポリイソシアネート成分中の全イソシアネート基と水を含むイソシアネート反応性化合物中の全イソシアネート反応性基との、混合発泡時におけるモル比(NCO基/NCO反応性基)としては0.7~1.4(イソシアネートインデックス(NCOINDEX)=70~140)であることが好ましく、フォームの耐久性や成形サイクルの良好な範囲として0.7~1.2(イソシアネートインデックス(NCOINDEX)=70~120)がより好ましい。
【0045】
次に、本発明の軟質ポリウレタンフォームの製造方法について説明する。
【0046】
本発明の軟質ポリウレタンフォームの製造方法は、前記変性ポリイソシアネート(C)、ポリオール(D)、触媒、架橋剤、発泡剤、及び整泡剤の混合液の発泡原液を金型内に注入し、その後発泡硬化させることを特徴とする軟質ポリウレタンモールドフォーム(以下、軟質モールドフォーム)の製造方法が使用できる。
【0047】
上記発泡原液を金型内に注入する際の金型温度としては、通常30~80℃、好ましくは45~65℃である。上記発泡原液を金型内に注入する際の金型温度が30℃未満であると、反応速度低下による生産サイクルの延長につながり、一方、80℃より高いと、ポリオールとイソシアネートの反応に対し、水とイソシアネートとの反応が過度に促進されることにより、発泡途中においてフォーム崩壊、耐久性の悪化、フォーム触感に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0048】
上記発泡原液を発泡硬化させる際の硬化時間としては、一般的な車両用シートパッド、サドル等の生産サイクルを考慮すると10分以下、好ましくは7分以下である。
【0049】
本発明の軟質モールドフォームを製造する場合、通常の軟質モールドフォームの場合と同様、高圧発泡機や低圧発泡機等を用いて、上記各成分を混合することができる。
【0050】
ポリイソシアネート成分とポリオール成分とは、発泡直前で混合することが好ましい。その他の成分は、原料の貯蔵安定性や反応性の経時変化に影響を与えない範囲でポリイソシアネート成分またはポリオール成分と予め混合することができる。それら混合物は混合後直ちに使用しても、貯留した後、必要量を適宜使用してもよい。混合部に2成分を超える成分を同時に導入可能な構造を有する発泡装置の場合、ポリオール、発泡剤、ポリイソシアネート、触媒、整泡剤、添加剤等を個別に混合部に導入することもできる。
【0051】
また、混合方法は発泡機のマシンヘッド混合室内で混合を行うダイナミックミキシング、送液配管内で混合を行うスタティックミキシングの何れでも良く、また両者を併用してもよい。物理発泡剤等のガス状成分と液状成分との混合はスタティックミキシングで、液体として安定に貯留可能な成分同士の混合はダイナミックミキシングで実施される場合が多い。本発明に使用される発泡装置は、混合部の溶剤洗浄が必要のない高圧発泡装置であることが好ましい。
【0052】
このような混合により得られた混合液を金型(モールド)内に吐出し、発泡硬化させ、その後脱型が行われる。
【0053】
上記脱型を円滑に行うため、金型に予め離型剤を塗布しておくことも好適である。使用
する離型剤としては、成形加工分野で通常用いられる離型剤を用いることができる。
【0054】
脱型後の製品はそのままでも使用できるが、従来公知の方法で圧縮下又は、減圧下でフォームのセル膜を破壊し、以降の製品外観、寸法を安定化させることが好ましい。
【0055】
以上により、JIS K6400の方法による見掛け密度が50kg/m3未満、JIS K6400記載のB法によるスキン付きフォーム試験片の25%圧縮硬さが100~400N/314cm2、JIS K6400記載の方法による反発弾性率が70%以下、JIS K6400記載のB法によるヒステリシスロス率が30%未満、乾熱圧縮残留歪が4%以下、および湿熱圧縮残留歪が8%以下の軟質ポリウレタンフォームを得ることができる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は質量基準である。
【0057】
<変性ポリイソシアネートの合成(I-1~I-9)>
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管のついた容量1Lの反応器に、2,2’-MDIと2,4’-MDIの合計含有率が55.7%のMDIを651.7g仕込み、75℃まで昇温した後、ポリオール成分B-1(平均官能基数2 数平均分子量2,000、エチレンオキサイドユニット含有量100%、三洋化成工業社製PEG-2000(商品名))を28.1g仕込み、温度を維持したまま攪拌羽根で均一に混合しながら2時間ウレタン化反応を行った。続いて、2,2’-MDIと2,4’-MDIの合計含有率が3.2%のMDIを39%含むポリメリックMDIを320.2g仕込み、30分間攪拌後、室温まで冷却してイソシアネート基末端プレポリマー「I-1」(NCO含量31.7%)を得た。その他の変性ポリイソシアネート(I-2~I-9)もI-1と同様に調製した。
【0058】
なお、各実施例において、ポリオール成分(B)との反応前に仕込んだMDI(A)と、反応後に仕込んだポリメリックMDIとを合算した組成は、MDI含有率80%、MDI中の2,2’-MDIと2,4’-MDIの合計含有率は、38.4%であった。
【0059】
<未変性ポリイソシアネートの合成(I-11、I-12)>
攪拌機及び窒素ガス導入管のついた容量1Lの反応器に、2,2’-MDIと2,4’-MDIの合計含有率が55.7%のMDIを588.1g、続いて、2,2’-MDIと2,4’-MDIの合計含有率が3.2%のMDIを39%含むポリメリックMDIを411.9g仕込み、30分間攪拌後、未変性ポリイソシアネート「I-11」(NCO含量32.5%)を得た。その他の未変性ポリイソシアネート(I-12)もI-11と同様に調製した。
【0060】
<ポリオールプレミックスの調製>
攪拌機を備えた容量100Lの混合機に、各原料をそれぞれ、表1、2に記載の原単位で仕込み、均一に混合した。
【0061】
【0062】
【0063】
<使用原料>
・ポリオール成分B-2:平均官能基数=4、水酸基価=28(mgKOH/g)のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール、東邦化学工業社製QB8000(商品名)
・ポリオール成分B-3:平均官能基数2 数平均分子量1,000、エチレンオキサイドユニット含有量0%、三洋化成工業社製PP-1000(商品名)
・ポリオール成分B-4:平均官能基数2 数平均分子量1,000、エチレンオキサイドユニット含有量100%、三洋化成工業社製PEG-1000(商品名)
・ポリオール成分B-5:平均官能基数3 数平均分子量7,000、エチレンオキサイドユニット含有量70%、三洋化成工業社製FA-159(商品名)
・ポリオール成分B-6:平均官能基数3 数平均分子量3,360、エチレンオキサイドユニット含有量70%、三洋化成工業社製FA-103(商品名)
・ポリオール1:重合開始剤平均官能基数=3、水酸基価=24(mgKOH/g)のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール、AGC社製 エクセノール 851(商品名)
・ポリオール2:平均官能基数=4、水酸基価=28(mgKOH/g)のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール、東邦化学工業社製QB8000(商品名)
・架橋剤:ジエタノールアミン(三井化学社製)
・触媒1:トリエチレンジアミンの33%ジプロピレングリコール溶液、東ソー社製TEDA-L33(商品名)
・触媒2:ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテルの70%ジプロピレングリコール溶液、東ソー社製TOYOCAT-ET(商品名)
・整泡剤:シリコーン系整泡剤(エボニック社製、商品名:B-8715LF2)
・発泡剤:市水。
【0064】
<フォーム成型>
[発泡条件]
・金型温度:55~60℃
・金型形状:100×300×300mm
・金型材質:アルミニウム
・キュアー条件:55~60℃×5分。
【0065】
ポリオールプレミックスとポリイソシアネートI-1~I-9、I-11を液温25±1℃に調整した。ポリオールプレミックスにポリイソシアネートI-1~I-9、I-11を表1、2に示すイソシアネートインデックスとなる割合で混合し、ミキサー(毎分7000回転)で7秒間混合し金型内に注入し軟質フォームを発泡させた後、金型より取出して、ローラークラッシングによる破泡後、得られた軟質フォームの物性を測定した。
【0066】
<ポリウレタンフォームの物性測定>
見掛け密度、反発弾性率、乾熱および湿熱圧縮残留歪は、JIS K6400記載の方法で、スキン付き試験片フォームの25%圧縮硬さ(25%ILD)は、JIS K6400記載のB法で、ヒステリシスロス率はJIS K6400記載のB法で測定した。
【0067】
<ヒステリシスロス率>
30%以下であれば良好と言える。
【0068】
<反発弾性率>
70%以下であれば良好と言える。
【0069】
<乾熱圧縮残留歪>
4%以下であれば良好と言える。
【0070】
<湿熱圧縮残留歪>
8%以下であれば良好と言える。
【0071】
<フォーム成型性>
発泡後陥没等せず、形状が維持できれば良好と言える。(評価:○)。
【0072】
<ウレア凝集体の面積比率、平均粒子径の算出方法>
本発明におけるウレア凝集体の面積比率、平均粒子径の測定用評価サンプルは、100×300×300mmでモールド成型された軟質ポリウレタンフォーム(上型側が下面、下型側が上面)の中心部分30×50×50mmとする。前記した評価サンプルの上面側から3mm角程度を切り出し、エポキシ樹脂により包埋した後、クライオミクロトームにて切削し、薄肉化したものを走査型プローブ顕微鏡(島津製作所製、SPM-9600)により測定(視野:20μm×20μm)。測定した位相像から、各ウレア凝集体の面積を粒子解析ソフト(島津製作所製、SPM用解析ソフト)により算出した。
ウレア凝集体の面積比率は下記式から算出した。
・ウレア凝集体の面積比率=各ウレア凝集体の面積の合計値μm2/(断面積:400μm2)×100 ・・・(式)
ウレア凝集体の平均粒子径は下記式から算出した。
・ウレア凝集体の平均粒子径=(ウレア凝集体の平均面積/π)1/2×2 ・・・(式)
※ウレア凝集体の平均面積=ウレア凝集体の面積比率/ウレア凝集体の個数
【符号の説明】
【0073】
1.ウレア凝集体