(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】排ガス処理方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/40 20060101AFI20250311BHJP
B01D 53/83 20060101ALI20250311BHJP
【FI】
B01D53/40 ZAB
B01D53/83
(21)【出願番号】P 2021554353
(86)(22)【出願日】2020-10-15
(86)【国際出願番号】 JP2020038972
(87)【国際公開番号】W WO2021079824
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2023-08-07
(31)【優先権主張番号】P 2019193439
(32)【優先日】2019-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片山 肇
(72)【発明者】
【氏名】桜井 茂
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-056495(JP,A)
【文献】特開2008-068251(JP,A)
【文献】特開2006-110423(JP,A)
【文献】特開2007-302885(JP,A)
【文献】特開2017-080696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34-53/73
B01D 53/74-53/85
B01D 53/92
B01D 53/96
B09B 1/00- 5/00
B09C 1/00- 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性成分を含む排ガスを乾式で中和処理する排ガス処理方法であって、
炭酸水素ナトリウムを含む中和剤と前記排ガスとを接触させ、
前記中和剤と前記排ガスとを接触させて得られたガス成分及び飛灰成分からなる混合物を、乾式フィルターにより、ガス成分と飛灰成分とに分離し、
前記飛灰成分に含まれるヒ素、セレン及びこれらの化合物を、炭酸カルシウム存在下で不溶化処理
し、
前記飛灰成分に含まれるヒ素、セレン及びこれらの化合物を、炭酸カルシウム存在下で不溶化処理する際のカルシウム濃度が、飛灰成分と炭酸カルシウムとの合計質量の5~20質量%である、排ガス処理方法。
【請求項2】
前記ガス成分と前記飛灰成分とに分離した後、前記飛灰成分と炭酸カルシウムとを混合する、請求項1に記載の排ガス処理方法。
【請求項3】
前記中和剤と前記排ガスとを接触させて得られたガス成分及び飛灰成分を含む混合物と炭酸カルシウムとを接触させる、請求項1に記載の排ガス処理方法。
【請求項4】
前記中和剤と前記排ガスとを接触させる前に、前記排ガスと炭酸カルシウムとを接触させる、請求項1に記載の排ガス処理方法。
【請求項5】
前記中和剤と前記排ガスとを接触させる際に、前記中和剤及び炭酸カルシウムを含む混合物と前記排ガスとを接触させる、請求項1に記載の排ガス処理方法。
【請求項6】
前記中和剤が、炭酸水素ナトリウムを含む粒子である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の排ガス処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排ガス処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
都市ごみ廃棄物焼却炉、産業廃棄物焼却炉、発電ボイラ、炭化炉又は民間工場等の燃焼施設において捕集した飛灰には、水銀、鉛、ヒ素、セレン又はこれらの化合物等の有害物質が含まれる場合がある。これらの有害物質が飛灰から溶出しないように、不溶化処理が行われている。
【0003】
特許文献1には、炭酸含有アルカリ化合物を噴霧した燃焼排ガスから捕集された飛灰からの重金属溶出を防止する方法において、飛灰に対しカルシウム溶出性のカルシウム化合物を添加すると共に、環境庁告示13号試験(L/S=10)で示される溶出液のpHを8.0~11に調整し、かつ該溶出液中のカルシウムイオン濃度を50mg/L以上に調整することを特徴とする重金属の溶出防止方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された重金属の溶出防止方法では、ヒ素、セレン及びこれらの化合物の不溶化についての検討は無く、有害物質の不溶化が十分でない場合がある。
【0006】
本発明は、飛灰からのヒ素、セレン及びこれらの化合物の溶出を抑制可能な排ガス処理方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1] 酸性成分を含む排ガスを乾式で中和処理する排ガス処理方法であって、
炭酸水素ナトリウムを含む中和剤と前記排ガスとを接触させ、
前記中和剤と前記排ガスとを接触させて得られたガス成分及び飛灰成分を含む混合物を、乾式フィルターにより、ガス成分と飛灰成分とに分離し、
前記飛灰成分に含まれるヒ素、セレン及びこれらの化合物を、炭酸カルシウム存在下で不溶化処理する、排ガス処理方法。
[2] 前記ガス成分と前記飛灰成分とに分離した後、前記飛灰成分と炭酸カルシウムとを混合する、[1]に記載の排ガス処理方法。
[3] 前記中和剤と前記排ガスとを接触させて得られたガス成分及び飛灰成分を含む混合物と炭酸カルシウムとを接触させる、[1]に記載の排ガス処理方法。
[4] 前記中和剤と前記排ガスとを接触させる前に、前記排ガスと炭酸カルシウムとを接触させる、[1]に記載の排ガス処理方法。
[5] 前記中和剤と前記排ガスとを接触させる際に、前記中和剤及び炭酸カルシウムを含む混合物と前記排ガスとを接触させる、[1]に記載の排ガス処理方法。
[6] 前記飛灰成分に含まれるヒ素、セレン及びこれらの化合物を、炭酸カルシウム存在下で不溶化処理する際のカルシウム濃度が、飛灰成分と炭酸カルシウムとの合計質量の3~20質量%である、[1]~[5]のいずれか1つに記載の排ガス処理方法。
[7] 前記中和剤が、炭酸水素ナトリウムを含む粒子である、[1]~[6]のいずれか1つに記載の排ガス処理方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、飛灰からのヒ素、セレン及びこれらの化合物の溶出を抑制可能な排ガス処理方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の排ガス処理方法の第一の実施形態を実施するための排ガス処理設備の概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の排ガス処理方法の第二の実施形態を実施するための排ガス処理設備の概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の排ガス処理方法の第三の実施形態を実施するための排ガス処理設備の概略図である。
【
図4】
図4は、本発明の排ガス処理方法の第四の実施形態を実施するための排ガス処理設備の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、本発明を実施するための形態を説明するが、本発明は後述する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない限り、種々の変更が可能である。
【0011】
「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の両側の数値を含むものとする。
「ヒ素、セレン及びこれらの化合物」は、ヒ素の単体及び化合物、並びにセレンの単体及び化合物を意味する。
「水銀、鉛、ヒ素、セレン及びこれらの化合物」は、水銀の単体及び化合物、鉛の単体及び化合物、ヒ素の単体及び化合物、並びにセレンの単体及び化合物を意味する。
飛灰中の水銀、鉛、ヒ素、セレン及びこれらの化合物の溶出量の測定方法は、「産業廃棄物に含まれる金属等の検定方法」(1973年2月17日に公布された日本国環境庁告示13号、以下「環告13号」と略記する場合がある。)によるものとする。
【0012】
[第一の実施形態]
<排ガス処理設備>
本発明の排ガス処理方法の第一の実施形態を実施するための、
図1に示す排ガス処理設備1の構成について説明する。
排ガス処理設備1は、排ガス供給管101と、排ガス供給管101の途中に接続された中和剤供給装置20と、排ガス供給管101の排ガス供給管出口101bに接続されたバグフィルター32と、バグフィルター32の下端部に配置されたダスト排出装置33に接続された飛灰成分供給管103と、飛灰成分供給管103が接続された不溶化処理槽41と、不溶化処理槽41に接続された、炭酸カルシウム供給装置10、キレート剤供給装置50、加湿用水供給管42及び不溶化処理後ダスト排出管104と、を備える。
【0013】
排ガス供給管101は、排ガス供給管入口101aと排ガス供給管出口101bとを接続する。
排ガス供給管入口101aから、排ガス処理設備1に排ガスを供給する。
排ガス供給管出口101bから、バグフィルター32の内部にガス成分及び飛灰成分からなる混合物を供給する。
【0014】
中和剤供給装置20は、本体である中和剤サイロ22、中和剤サイロ22の下端部に配置された定量フィーダー23、定量フィーダー23と排ガス供給管101を接続する中和剤供給管24、及び中和剤サイロ22内部に収容された中和剤21から構成される。
中和剤供給装置20は、排ガス供給管101の内部に中和剤を供給(噴出)する。
【0015】
バグフィルター32は、内部に濾布31を備えている。濾布31は、排ガス供給管出口101bからバグフィルター32の内部に供給された、ガス成分及び飛灰成分からなる混合物を、ガス成分及び飛灰成分に分離する。
分離されたガス成分は、バグフィルター32に接続されたガス成分排出管102から、排ガス処理設備1の外に排出される。
分離された飛灰成分は、ダスト排出装置33により、飛灰成分供給管103を通じて、不溶化処理槽41に供給される。
【0016】
不溶化処理槽41は、バグフィルター32で分離された飛灰成分に含まれるヒ素、セレン及びこれらの化合物を不溶化処理する装置である。
不溶化処理槽41には、キレート剤供給装置50、炭酸カルシウム供給装置10、加湿用水供給管42、及び不溶化処理後ダスト排出管104が接続されている。
不溶化処理槽41は飛灰成分にキレート剤、炭酸カルシウム、水を混合する混合機である。混合機としては、リボン形、スクリュー形、パドル形の水平軸回転方式の混合機が使用される例が多いが、前述のような粉体と液体を混合することがでるものであれば方式、規模等は問わない。
【0017】
キレート剤供給装置50は、不溶化処理槽41に一端が接続されたキレート剤供給管54、キレート剤供給管54の途中に配置された定量ポンプ53、キレート剤供給管54の他端が接続されたキレート剤貯蔵槽52、及びキレート剤貯蔵槽52に収容されたキレート剤51から構成される。
キレート剤供給装置50は、不溶化処理槽41の内部にキレート剤を供給する。
【0018】
炭酸カルシウム供給装置10は、本体である炭酸カルシウムホッパ12、炭酸カルシウムホッパ12の下端部に配置された定量フィーダー13、定量フィーダー13に一端が接続され、他端が不溶化処理槽41に接続された炭酸カルシウム供給管15、及び炭酸カルシウムホッパ12に収容された炭酸カルシウム粒子11から構成される。
炭酸カルシウム供給装置10は、不溶化処理槽41の内部に炭酸カルシウム粒子を供給する。
【0019】
加湿用水供給管42は、加湿用水を不溶化処理槽41の内部に供給するための管である。
不溶化処理後ダスト排出管104は、不溶化処理後の飛灰(不溶化処理後ダスト)を排ガス処理設備1の外に排出するための管である。
【0020】
続いて、本発明の排ガス処理方法の第一の実施形態を、
図1を適宜参照しながら説明する。
【0021】
<排ガス処理方法>
本発明の排ガス処理方法は、酸性成分を含む排ガスを乾式で中和処理する排ガス処理方法である。
本実施形態の排ガス処理方法は、以下のステップ1~3を含む。
【0022】
《ステップ1》
ステップ1は、炭酸水素ナトリウムを含む中和剤と前記排ガスとを接触させるステップである。
中和剤供給装置20は、中和剤サイロ22の内部に収容された中和剤21を、定量フィーダー23及び中和剤供給管24を通じて、排ガス供給管101の内部に供給する。
中和剤21を排ガス供給管101の内部に供給する際には、中和剤21を排ガス供給管101の内部に噴出することが好ましい。中和剤21を排ガス供給管101の内部に噴出することにより、中和剤21の粒子が排ガス供給管101の内部に拡散しやすくなり、中和剤21の粒子と排ガスとの接触機会が増大する。
【0023】
中和剤21は、炭酸水素ナトリウムを含む粒子である。
中和剤21に含まれる炭酸水素ナトリウム以外の成分は、例えば、粉体の固結防止剤、流動化剤として使用される親水性ヒュームドシリカである。
中和剤21が炭酸水素ナトリウム及び親水性ヒュームドシリカを含む場合、炭酸水素ナトリウムからなる粒子の表面に、親水性ヒュームドシリカの多くが一次粒子の状態で均一に分散されていることがより好ましい。親水性ヒュームドシリカの多くが一次粒子の状態で分散していることで、親水性ヒュームドシリカが二次粒子の状態で存在する場合に比べて、中和剤の流動性を、さらに適度なものとすることができ、凝集による塊状化を防止することができる。
なお、粉体の固結防止剤、流動化剤としてはヒュームドシリカ以外に限定されない。例として、沈降性シリカ、ステアリン酸等脂肪酸の塩、ゼオライト、珪藻土、ケイ酸塩、タルク等が挙げられる。
【0024】
中和剤21の平均粒径は、3~20μmが好ましく、5~10μmがより好ましい。平均粒径がこの範囲内であると、乾式フィルター(バグフィルター)のフィルター布表面で適度に担持、ろ過層が形成され、乾式フィルター(バグフィルター)を通過して、ガス成分中に中和剤が含まれるおそれやフィルター布の目が詰まることが低減される。また、より良好な流動性や分散性も得られ、排ガス中の酸性成分をより効率よく除去できる。
【0025】
なお、中和剤21の平均粒径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を使用し、エタノールを媒体として測定した体積基準での平均粒径の数値である。本明細書では、平均粒径は日機装株式会社製、商品名:マイクロトラックFRA9220を用いて測定している。
【0026】
親水性ヒュームドシリカの一次粒子の平均粒径は、5~50nmが好ましい。親水性ヒュームドシリカの一次粒子の平均粒径がこの範囲内であると、中和剤21中への分散が容易である。ここで、親水性ヒュームドシリカの一次粒子とは、SEM(走査型電子顕微鏡)観察像の目視により判断される構成粒子の最小単位である。
【0027】
なお、前記親水性ヒュームドシリカの一次粒子の平均粒径は、SEM(走査型電子顕微鏡)によって実測したものであり、具体的には100個の一次粒子についてその粒径を計測し、計測値を算術平均したものである。
【0028】
排ガスは、都市ごみ廃棄物焼却炉、産業廃棄物焼却炉、石炭や重油、残渣油、バイオマス等を燃料とした発電ボイラ、炭化炉、民間工場等の燃焼施設において発生する燃焼排ガスが好ましい。
前記排ガスが含む酸性成分としては、硫黄酸化物(SOx)、塩化水素(HCl)等が挙げられる。
【0029】
中和剤21を排ガスと接触させると、高温の排ガスによって、中和剤21に含まれる炭酸水素ナトリウムが熱分解して二酸化炭素と水を放出し、広い表面積を有する多孔質粒子となる。理想的な状態では、2モルの炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)から、1モルの二酸化炭素(CO2)と、1モルの炭酸ナトリウム(Na2CO3)と、1モルの水(H2O)とが生じる。排ガス中の酸性成分は、主に、炭酸ナトリウムによって中和される。
【0030】
《ステップ2》
ステップ2は、中和剤21と排ガスとを接触させて得られたガス成分及び飛灰成分からなる混合物を、乾式フィルター(バグフィルター32)により、ガス成分と飛灰成分とに分離するステップである。
【0031】
本実施形態では、乾式フィルターとしてバグフィルター32を用いる。バグフィルターは、内部に濾布31が配置されており、濾布31を通過するガス成分と、濾布を通過できない飛灰成分とに分離する。
【0032】
前記ガス成分は、バグフィルター32の上端部付近に設置されたガス成分排出管102から、排ガス処理設備1の外に排出される。
前記ガス成分は、中和剤21と前記排ガスとを接触させることにより、SOx、HCl等の酸性成分が中和されたガスであり、環境中に排出しても問題が生じない。
【0033】
前記飛灰成分は、バグフィルター32の下端部に設置されたダスト排出装置33によって、飛灰成分供給管103を通じて、不溶化処理槽41に供給される。
前記飛灰成分は、ヒ素、セレン及びこれらの化合物を含む場合があることから、これらの成分の不溶化処理を行う。
【0034】
《ステップ3》
ステップ3は、前記飛灰成分に含まれるヒ素、セレン及びこれらの化合物を、炭酸カルシウム存在下で不溶化処理するステップである。
【0035】
前記飛灰成分は、不溶化処理槽41の内部に供給された後、キレート剤供給装置50から不溶化処理槽41の内部に供給されるキレート剤51、炭酸カルシウム供給装置10から不溶化処理槽41の内部に供給される炭酸カルシウム粒子11、及び加湿用水供給管42を通じて不溶化処理槽41の内部に供給される加湿用水と混合されて、ヒ素、セレン及びこれらの化合物の不溶化処理が行われる。
【0036】
キレート剤51は、前記飛灰成分に含まれる可能性がある、環告13号に掲げられた金属等のうち少なくとも1種を不溶化できるものが好ましく、水銀、鉛、ヒ素及びセレンのうち少なくとも1種を不溶化できるものがより好ましく、ヒ素及びセレンを不溶化できるものがさらに好ましい。
キレート剤51の例は、ピペラジンジチオカルバミン酸、ジエチルジチオカルバミン酸、ジメチルジチオカルバミン酸、ジブチルジチオカルバミン酸、ポリアミン系ジチオカルバミン酸、テトラエチレンペンタミン及びこれらの塩である。前記塩は、ナトリウム塩又はカリウム塩が好ましい。ただし、キレート剤51はこれらの有機キレート化合物及びその塩に限定されず、また、鉄の塩類等、無機化合物の不溶化剤の適用も差し障りない。
【0037】
炭酸カルシウム粒子11は、炭酸カルシウムを含む粒子であり、炭酸カルシウム粒子11中の炭酸カルシウム含有量は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、99質量%以上がさらに好ましい。
前記炭酸カルシウムは、石灰石を粉砕及び分級して製造される重質炭酸カルシム及び炭酸ガス反応法又は可溶性塩反応法で化学的に合成される軽質炭酸カルシウムのいずれも使用できるが、品質の安定性及び不純物の少なさから、軽質炭酸カルシウムが好ましい。
【0038】
炭酸カルシウム粒子11は、炭酸カルシウムの二次粒子が好ましく、前記二次粒子の平均粒径は、1~10μmが好ましく、1~5μmがより好ましい。
炭酸カルシウムの二次粒子の平均粒径がこの範囲内であると、凝集性が高くなりすぎず、粒子同士が付着しにくい。また、不溶化処理の際に、飛灰成分に均一に分散されやすい。
なお、炭酸カルシウム粒子11の二次粒子としての平均粒径は、レーザー回折散乱方式の測定装置によって測定した体積基準における平均粒径(MV)である。
【0039】
ステップ3の不溶化処理の際のカルシウム濃度は、飛灰成分と炭酸カルシウムとの合計質量の3~20質量%が好ましく、5~17質量%がより好ましく、7~12質量%がさらに好ましい。カルシウム濃度がこの範囲内であると、ヒ素、セレン及びこれらの混合物の不溶化処理効果がより向上する。炭酸カルシウム粒子の添加量が多すぎると飛灰成分と炭酸カルシウムの合計質量が増加し、埋立処分などの後処理に要するコストが上昇する可能性がある。カルシウム濃度の把握には、JIS K0102(2019)-50.3の分析方法の準用が挙げられる。
炭酸カルシウムは水酸化カルシウムのように強アルカリを示す化合物ではないため、非常に安全に取り扱うことができる。また、塩化カルシウムのように鉄系素材に対する強い腐食性が無いため、不溶化処理槽41以降の工程に配設される鉄系素材で構成される装置にとって好ましい。
【0040】
加湿用水供給管42から不溶化処理槽41の内部に供給される加湿用水は、水道水、脱イオン水、蒸留水等が用いられる。不溶化処理槽41の内部に加湿用水を供給すると、飛灰成分の周囲への飛散が抑制されるとともに、飛灰成分と、炭酸カルシウム粒子11及びキレート剤51とが混合しやすくなり、不溶化処理の効率が向上する。
【0041】
不溶化処理後の飛灰成分は、ヒ素、セレン及びこれらの混合物が不溶化されており、ヒ素、セレン及びこれらの化合物の溶出量が、環告13号の試験方法で、下記基準値以下である。
ヒ素 ・・・0.3mg/L
セレン・・・0.3mg/L
【0042】
不溶化処理後の飛灰成分は、不溶化処理後のダストとして、不溶化処理後ダスト排出管104から排ガス処理設備1の外に排出する。
【0043】
[第二の実施形態]
<排ガス処理設備>
図2に示す排ガス処理設備2は、本発明の排ガス処理方法の第二の実施形態を実施するための排ガス処理設備である。
図1に示す排ガス処理設備1との相違は、不溶化処理槽41に接続された炭酸カルシウム供給装置10の代わりに、排ガス供給管101の中和剤供給装置20が接続された位置とバグフィルター32との間に接続された炭酸カルシウム供給装置10’が用いられる点にある。
【0044】
炭酸カルシウム供給装置10’は、本体である炭酸カルシウムホッパ12、炭酸カルシウムホッパ12の下端部に配置された定量フィーダー13、定量フィーダー13に一端が接続され、他端が排ガス供給管101に接続された炭酸カルシウム供給管14、及び炭酸カルシウムホッパ12に収容された炭酸カルシウム粒子11から構成される。
炭酸カルシウム供給装置10’は、排ガス供給管101の、中和剤供給装置20が接続された部分と排ガス供給管出口101bとの間に、炭酸カルシウム供給管14が接続されている。
炭酸カルシウム供給装置10’から、排ガス供給管101の内部に炭酸カルシウム粒子11が供給(噴出)され、中和剤21と排ガスとを接触させた後の混合物と、炭酸カルシウム粒子11とを接触させる。
【0045】
その他の点は、
図1に示す排ガス処理設備1と同様である。
【0046】
<排ガス処理方法>
本実施形態の排ガス処理方法は、以下のステップ1a~4aを含む。
【0047】
《ステップ1a》
ステップ1aは、炭酸水素ナトリウムを含む中和剤21を、排ガス供給管101の内部に供給し、中和剤21と排ガスとを接触させるステップである。
【0048】
ステップ1aは、本発明の排ガス処理方法の第一の実施形態のステップ1と同様であり、説明を省略する。
【0049】
《ステップ2a》
ステップ2aは、ステップ1aで得られた中和剤と排ガスとを接触させて得られた混合物と、炭酸カルシウム供給装置10’から排ガス供給管101の内部に供給(噴出)した炭酸カルシウム粒子とを接触させるステップである。
【0050】
炭酸カルシウム供給装置10’は炭酸カルシウム供給装置10と同様の構成である。
炭酸カルシウム供給装置10’から供給された炭酸カルシウム粒子11と、ステップ1aで得られた中和剤と排ガスとを接触させて得られた混合物とは、混合して、ガス成分及び飛灰成分からなる混合物となる。
【0051】
《ステップ3a》
ステップ3aは、ステップ2aで得られたガス成分及び飛灰成分からなる混合物を、乾式フィルター(バグフィルター32)により、ガス成分と飛灰成分とに分離するステップである。
【0052】
ステップ3aは、ステップ3aで得られる飛灰成分には、既に炭酸カルシウム粒子11が混合されている点を除けば、本発明の排ガス処理方法の第一の実施形態のステップ2と同様であり、さらなる説明を省略する。
【0053】
《ステップ4a》
ステップ4aは、前記飛灰成分に含まれるヒ素、セレン及びこれらの化合物を、炭酸カルシウム存在下で不溶化処理するステップである。
【0054】
ステップ3aで得られ、不溶化処理槽41の内部に供給された飛灰成分には、既に炭酸カルシウム粒子11が混合されていることから、ステップ4aにおいて、前記飛灰成分にさらに炭酸カルシウム粒子11を加えなくてよい。
この点を除いて、ステップ4aは、本発明の排ガス処理方法の第一の実施形態のステップ3と同様であり、さらなる説明を省略する。
【0055】
[第三の実施形態]
<排ガス処理設備>
図3に示す排ガス処理設備3は、本発明の排ガス処理方法の第三の実施形態を実施するための排ガス処理設備である。
図2に示す排ガス処理設備2との相違は、炭酸カルシウム供給装置10’が、排ガス供給管101の排ガス供給管入口101aと中和剤供給装置20が排ガス供給管101に接続されている箇所の間に接続されている点にある。
その他の点は
図2に示す排ガス処理設備2と同様である。
【0056】
<排ガス処理方法>
本実施形態の排ガス処理方法は、以下のステップ1b~4bを含む。
【0057】
《ステップ1b》
ステップ1bは、炭酸カルシウム粒子11を、炭酸カルシウム供給装置10’から排ガス供給管101の内部に供給(噴出)し、炭酸カルシウム粒子11と排ガスとを接触させるステップである。
【0058】
炭酸カルシウム供給装置10’は炭酸カルシウム供給装置10と同様の構成である。
排ガス供給管101の内部に炭酸カルシウム粒子11を供給(噴出)すると、炭酸カルシウム粒子11及び排ガスからなる混合物が得られる。
【0059】
《ステップ2b》
ステップ2bは、ステップ1bで得られた炭酸カルシウム粒子11及び排ガスからなる混合物と、中和剤供給装置20から排ガス供給管101の内部に供給(噴出)した中和剤21とを接触させるステップである。
ステップ1bで得られた炭酸カルシウム粒子11及び排ガスからなる混合物と、中和剤21とは、混合して、ガス成分及び飛灰成分からなる混合物となる。
【0060】
《ステップ3b》
ステップ3bは、ステップ2bで得られたガス成分及び飛灰成分からなる混合物を、乾式フィルター(バグフィルター32)により、ガス成分と飛灰成分とに分離するステップである。
【0061】
ステップ3bは、本発明の排ガス処理方法の第二の実施形態のステップ3aと同様であり、さらなる説明を省略する。
【0062】
《ステップ4b》
ステップ4bは、前記飛灰成分に含まれるヒ素、セレン及びこれらの化合物を、炭酸カルシウム存在下で不溶化処理するステップである。
【0063】
ステップ4bは、本発明の排ガス処理方法の第二の実施形態のステップ4aと同様であり、さらなる説明を省略する。
【0064】
[第四の実施形態]
<排ガス処理設備>
図4に示す排ガス処理設備4は、本発明の排ガス処理方法の第四の実施形態を実施するための排ガス処理設備である。
図1に示す排ガス処理設備1との相違は、中和剤及び炭酸カルシウム粒子の供給が、排ガス供給管101の途中に接続された中和剤・炭酸カルシウム混合物供給装置60を用いて行われる点にある。
【0065】
中和剤・炭酸カルシウム混合物供給装置60は、本体である中和剤・炭酸カルシウム混合物サイロ62、中和剤・炭酸カルシウム混合物サイロ62の下端部に設置された定量フィーダー63、定量フィーダー63と排ガス供給管101とを接続する中和剤・炭酸カルシウム混合物供給管64、並びに中和剤・炭酸カルシウム混合物サイロ62に収容された中和剤及び炭酸カルシウム粒子を含む混合物61から構成される。
【0066】
中和剤・炭酸カルシウム混合物供給装置60から、排ガス供給管101の内部に中和剤及び炭酸カルシウム粒子を含む混合物61が供給(噴出)され、中和剤及び炭酸カルシウム粒子を含む混合物61と、排ガスとを接触させる。
【0067】
<排ガス処理方法>
本実施形態の排ガス処理方法は、以下のステップ1c~3cを含む。
【0068】
《ステップ1c》
ステップ1cは、中和剤及び炭酸カルシウム粒子を含む混合物61を、排ガス供給管101の内部に供給し、中和剤及び炭酸カルシウム粒子と排ガスとを接触させるステップである。
【0069】
前記中和剤は、上述した中和剤21と同様である。
前記炭酸カルシウム粒子は、上述した炭酸カルシウム粒子11と同様である。
中和剤及び炭酸カルシウム粒子を含む混合物61中の前記中和剤及び前記炭酸カルシウム粒子の含有量は、中和剤100質量部に対して、炭酸カルシウム粒子が1~10質量部が好ましく、2~7質量部がより好ましく、2~5質量部がさらに好ましい。
【0070】
ステップ1cでは、中和剤及び炭酸カルシウム粒子を含む混合物61と排ガスとを接触させることにより、ガス成分及び飛灰成分からなる混合物が得られる。
【0071】
《ステップ2c》
ステップ2cは、ステップ1cで得られたガス成分及び飛灰成分からなる混合物、乾式フィルター(バグフィルター32)により、ガス成分と飛灰成分とに分離するステップである。
【0072】
ステップ2cは、本発明の排ガス処理方法の第二の実施形態のステップ3aと同様であり、さらなる説明を省略する。
【0073】
《ステップ3c》
ステップ3cは、前記飛灰成分に含まれるヒ素、セレン及びこれらの化合物を、炭酸カルシウム存在下で不溶化処理するステップである。
【0074】
ステップ3cは、本発明の排ガス処理方法の第二の実施形態のステップ4aと同様であり、さらなる説明を省略する。
【実施例】
【0075】
以下では、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明は後述する実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない限り、種々の変形が可能である。
なお、例1は比較例に相当し、例2~例4は実施例に相当する。
【0076】
[例1]
中和剤(アクレシア(登録商標)、AGC社製;炭酸水素ナトリウムの粒子、平均粒径9μm)を一般廃棄物(都市ごみ)焼却炉からの排ガスに噴出した後、バグフィルターで飛灰成分とガス成分とに分離した。飛灰成分の0~6質量%のキレート剤(アルサイトL-105、不二サッシ社製)を添加した。処理後のダストの100gを用いて、環告13号に準拠した検定方法で、ヒ素、セレン、水銀、鉛及びこれらの化合物の溶出量を測定した。測定結果を表1に示す。
【0077】
処理後のダストからのヒ素、セレン、水銀、鉛及びこれらの化合物の溶出量は、いずれも基準値を超えていなかったが、溶出しやすい傾向にあった。
【0078】
[例2]
中和剤(アクレシア(登録商標)、AGC社製;炭酸水素ナトリウムの粒子、平均粒径9μm)を一般廃棄物(都市ごみ)焼却炉からの排ガスに噴出した後、さらに、炭酸カルシウムの粒子(平均粒径2μm)を排ガスに噴出して、バグフィルターで飛灰成分とガス成分とに分離した。飛灰成分の0~6質量%のキレート剤(アルサイトL-105、不二サッシ社製)を添加した。不溶化処理後のダストにおけるカルシウムの濃度は、10.4質量%であった。処理後のダストの100gを用いて、環告13号に準拠した検定方法で、ヒ素、セレン、水銀、鉛及びこれらの化合物の溶出量を測定した。測定結果を表1に示す。
【0079】
処理後のダストからのヒ素、セレン、水銀、鉛及びこれらの化合物の溶出量は、いずれも基準値を超えておらず、例1と比べて、溶出しやすさが抑えられていた。
【0080】
[例3]
中和剤(アクレシア(登録商標)、AGC社製;炭酸水素ナトリウムの粒子、平均粒径9μm)を一般廃棄物(都市ごみ)焼却炉からの排ガスに噴出した後、バグフィルターで飛灰成分とガス成分とに分離した。飛灰成分の0~6質量%のキレート剤(アルサイトL-105、不二サッシ社製)を添加した。また、飛灰成分に炭酸カルシウムの粒子(平均粒径2μm)を添加した。不溶化処理後のダストにおけるカルシウムの含有率は7.2質量%であった。処理後のダストの100gを用いて、環告13号に準拠した検定方法で、ヒ素、セレン、水銀、鉛及びこれらの化合物の溶出量を測定した。測定結果を表1に示す。
【0081】
[例4]
中和剤(アクレシア(登録商標)、AGC社製;炭酸水素ナトリウムの粒子、平均粒径9μm)を一般廃棄物(都市ごみ)焼却炉からの排ガスに噴出した後、バグフィルターで飛灰成分とガス成分とに分離した。飛灰成分の0~6質量%のキレート剤(アルサイトL-105、不二サッシ社製)を添加した。また、飛灰成分に炭酸カルシウムの粒子(平均粒径2μm)を添加した。不溶化処理後のダストにおけるカルシウムの含有率は18.6質量%であった。処理後のダストの100gを用いて、環告13号に準拠した検定方法で、ヒ素、セレン、水銀、鉛及びこれらの化合物の溶出量を測定した。測定結果を表1に示す。
【0082】
処理後のダストからのヒ素、セレン、水銀、鉛及びこれらの化合物の溶出量は、いずれも基準値を超えておらず、例1と比べ溶出のしやすさが抑えられていた。
【0083】
【0084】
なお、ヒ素、セレン、水銀、鉛の欄の含有量及び溶出量は、それぞれの元素の化合物を含む値である。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の排ガス処理方法は、従来の排ガス処理設備に小規模の変更を施すだけで実施でき、簡便な操作で、飛灰からのヒ素、セレン及びこれらの化合物の溶出を抑制できるため、都市ごみ廃棄物焼却炉、産業廃棄物焼却炉、発電ボイラ、炭化炉又は民間工場等の燃焼施設において捕集した飛灰の処理に適している。
なお、2019年10月24日に出願された日本特許出願2019-193439号の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
【符号の説明】
【0086】
1,2,3,4 排ガス処理設備
10,10’ 炭酸カルシウム供給装置
11 炭酸カルシウム粒子
12 炭酸カルシウムホッパ
13 定量フィーダー
14,15 炭酸カルシウム供給管
20 中和剤供給装置
21 中和剤
22 中和剤サイロ
23 定量フィーダー
24 中和剤供給管
31 濾布
32 バグフィルター
33 ダスト排出装置
41 不溶化処理槽
42 加湿用水供給管
50 キレート剤供給装置
51 キレート剤
52 キレート剤貯蔵槽
53 定量ポンプ
54 キレート剤供給管
60 中和剤・炭酸カルシウム混合物供給装置
61 中和剤及び炭酸カルシウム粒子を含む混合物
62 中和剤・炭酸カルシウム混合物サイロ
63 定量フィーダー
64 中和剤・炭酸カルシウム混合物供給管
101 排ガス供給管
101a 排ガス供給管入口
101b 排ガス供給管出口
102 ガス成分排出管
102a ガス成分排出管入口
102b ガス成分排出管出口
103 飛灰成分供給管
104 不溶化処理後ダスト排出管
A 排ガス
B ガス成分
C 飛灰成分
D 不溶化処理後ダスト
E 加湿用水