(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】神経細胞の解析方法、神経細胞の解析装置およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/02 20060101AFI20250311BHJP
C12Q 1/6897 20180101ALI20250311BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20250311BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20250311BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20250311BHJP
【FI】
C12Q1/02
C12Q1/6897 Z
C12M1/34 B
C07K19/00
C12N15/62 Z
(21)【出願番号】P 2022578267
(86)(22)【出願日】2022-01-18
(86)【国際出願番号】 JP2022001618
(87)【国際公開番号】W WO2022163438
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-07-12
(31)【優先権主張番号】P 2021010409
(32)【優先日】2021-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市橋 徹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】信田 萌伽
【審査官】野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-518154(JP,A)
【文献】特開2006-314214(JP,A)
【文献】特開2014-103900(JP,A)
【文献】特開2012-163538(JP,A)
【文献】特開2014-085949(JP,A)
【文献】国際公開第2018/066039(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/177138(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00- 3/00
C12M 1/00- 3/10
C12N 15/00-15/90
C12N 1/00- 7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経細胞を時系列に撮像した時系列画像を取得する画像取得工程と、
前記時系列画像に基づいて、前記神経細胞の神経突起の領域あるいは細胞体の領域を識別する細胞領域識別工程と、
前記神経細胞内で発現する特定タンパク質にタグ付けされた第1蛍光タンパク質を時系列で撮像した前記時系列画像に基づいて、前記細胞領域識別工程で識別された前記神経突起の領域あるいは前記細胞体の領域に凝集した前記特定タンパク質の凝集物の有無を、前記時系列画像に含まれる前記第1蛍光タンパク質の輝度を基準にして検出する凝集物検出工程と、
前記細胞領域識別工程で識別した前記細胞体の領域と前記神経突起の領域との対応付けをする対応付け工程と、
前記凝集物検出工程の検出結果に基づいて前記神経細胞を複数の群に分類
する分類工程と、
を備え、
前記特定タンパク質は、前記神経細胞内で凝集性を示すタンパク質であり、
前記複数の群は、
前記細胞体の領域と前記神経突起の領域との対応付けができるか否かと、前記細胞体の領域に凝集した前記特定タンパク質の凝集物の有無とに基づいて分類される、
神経細胞の解析方法。
【請求項2】
前記群ごとに前記神経細胞の生存状態を解析する解析工程を備え、
前記神経細胞の生存状態は前記神経細胞の生存時間と生存率と生死との少なくとも一つを含む、
請求項1に記載の神経細胞の解析方法。
【請求項3】
前記解析工程は、前記複数の群と、前記複数の群の生存状態との関係を、前記群ごとに表示する、
請求項2に記載の神経細胞の解析方法。
【請求項4】
前記解析工程は、
(i)前記細胞体と前記神経突起との対応付けがされており、前記細胞体の領域に前記凝集物が存在する細胞群と、
(ii)前記細胞体と前記神経突起との対応付けがされておらず、前記細胞体の領域に前記凝集物が存在する細胞群と、
(iii)前記細胞体と前記神経突起との対応付けがされており、前記細胞体内に前記凝集物が存在しない細胞群と、
(iv)前記細胞体と前記神経突起との対応付けがされておらず、前記細胞体の領域に前記凝集物が存在しない細胞群とに分類分けを行う、
請求項2に記載の神経細胞の解析方法。
【請求項5】
前記対応付け工程は、前記細胞体の領域と前記神経突起の領域との距離に基づいて対応関係を判断する、
請求項1または2に記載の神経細胞の解析方法。
【請求項6】
前記対応付け工程は、前記神経突起と前記神経突起の端点における接線の延長方向にある前記細胞体の領域とを対応関係にあるとする、
請求項1または2に記載の神経細胞の解析方法。
【請求項7】
前記時系列画像は、位相差画像のデータ、前記第1蛍光タンパク質の輝度を含む蛍光画像のデータ、および動画像ファイルを含むデータの少なくとも1つを有する、
請求項
3に記載の神経細胞の解析方法。
【請求項8】
前記細胞領域識別工程は、
前記画像取得工程にて前記神経細胞内で発現する特定タンパク質にタグ付けされた第1蛍光タンパク質を時系列で撮像し、前記時系列画像の前記第1蛍光タンパク質の輝度が第一輝度閾値を超えた領域を前記神経細胞の神経突起の領域として識別することを含む、
請求項2に記載の神経細胞の解析方法。
【請求項9】
前記細胞領域識別工程は、
前記時系列画像の前記第1蛍光タンパク質の輝度が前記第一輝度閾値を超えた領域の中で、所定のサイズ閾値を超えた領域を前記神経細胞の神経突起または細胞体の領域として識別し、
さらに、識別された同一の前記神経突起および同一の前記細胞体を、それぞれ時系列に追跡して、前記生存状態に関係する生存時間を算出する、
請求項
8に記載の神経細胞の解析方法。
【請求項10】
前記
凝集物検出工程は、前記時系列画像の前記第1蛍光タンパク質の輝度が、前記第一輝度閾値と異なる第二輝度閾値を超えた領域を前記神経細胞の細胞体の
内部に凝集物が存在する領域として
検出する、
請求項
8に記載の神経細胞の解析方法。
【請求項11】
前記細胞領域識別工程は、前記神経細胞内で発現する前記第1蛍光タンパク質とは異なる第2蛍光タンパク質を時系列で撮像した前記時系列画像に基づいて、さらに、前記神経細胞の細胞体または神経突起の領域を識別し、
前記凝集物検出工程は、前記第1蛍光タンパク質および前記第2蛍光タンパク質に基づき、識別された前記神経突起内の凝集物が軸索の内部に存在するか、または樹状突起の内部に存在するか否かを検出し、
前記解析工程は、前記凝集物検出工程の検出結果に基づき、前記神経突起内の凝集物が前記細胞体に近い側に存在する細胞群と、前記神経突起の末端に近い側に存在する細胞群とに分類し、前記細胞群ごとに前記神経細胞の生存状態を解析する、
請求項
2に記載の神経細胞の解析方法。
【請求項12】
神経細胞を時系列に撮像した時系列画像を取得する撮像部と、
前記時系列画像に基づいて、前記神経細胞の神経突起の領域あるいは細胞体の領域を識別する識別部と、
前記神経細胞内で発現する特定タンパク質にタグ付けされた第1蛍光タンパク質を時系列で撮像した前記時系列画像に基づいて、前記識別部で識別された前記神経細胞の前記神経突起の領域あるいは前記細胞体の領域に凝集した前記特定タンパク質の凝集物の有無を、前記時系列画像に含まれる前記第1蛍光タンパク質の輝度を基準にして検出する検出部と、
前記識別部で識別した前記細胞体の領域と前記神経突起の領域との対応付けをする対応付け部と、
前記検出部の検出結果に基づいて前記神経細胞を複数の群に分類
する分類部と、
を備え、
前記特定タンパク質は、前記神経細胞内で凝集性を示すタンパク質であり、
前記複数の群は、
前記細胞体の領域と前記神経突起の領域との対応付けができるか否かと、前記細胞体の領域に凝集した前記特定タンパク質の凝集物の有無とに基づいて分類される、
神経細胞の解析装置。
【請求項13】
前記群ごとに前記神経細胞の生存状態を解析する解析部を備え、
前記神経細胞の生存状態は前記神経細胞の生存時間と生存率と生死との少なくとも一つを含む、
請求項12に記載の神経細胞の解析装置。
【請求項14】
前記解析部は、前記複数の群と、前記複数の群の生存状態との関係を、前記群ごとに表示する、
請求項13に記載の神経細胞の解析装置。
【請求項15】
前記解析部は、
(i)前記細胞体と前記神経突起との対応付けがされており、前記細胞体の領域に前記凝集物が存在する細胞群と、
(ii)前記細胞体と前記神経突起との対応付けがされておらず、前記細胞体の領域に前記凝集物が存在する細胞群と、
(iii)前記細胞体と前記神経突起との対応付けがされており、前記細胞体内に前記凝集物が存在しない細胞群と、
(iv)前記細胞体と前記神経突起との対応付けがされておらず、前記細胞体の領域に前記凝集物が存在しない細胞群とに分類分けを行う、
請求項14に記載の神経細胞の解析装置。
【請求項16】
前記対応付け部は、前記細胞体の領域と前記神経突起の領域との距離に基づいて対応づけるか、前記神経突起と前記神経突起の端点における接線の延長方向にある前記細胞体の領域とを対応づけるか、のうち少なくとも一つを含む、
請求項12または13に記載の神経細胞の解析装置。
【請求項17】
前記識別部は、
前記撮像部にて前記神経細胞内で発現する特定タンパク質にタグ付けされた第1蛍光タンパク質を時系列で撮像し、前記時系列画像の前記第1蛍光タンパク質の輝度が第一輝度閾値を超えた領域を前記神経細胞の神経突起の領域として識別する、
請求項1
2または13に記載の神経細胞の解析装置。
【請求項18】
前記識別部は、
前記時系列画像の前記第1蛍光タンパク質の輝度が前記第一輝度閾値を超えた領域の中で、所定のサイズ閾値を超えた領域を前記神経細胞の神経突起または細胞体の領域として識別し、
さらに、識別された同一の前記神経突起および同一の前記細胞体を、それぞれ時系列に追跡して、前記
神経細胞の生存状態に関係する生存時間を算出する、
請求項1
7に記載の神経細胞の解析装置。
【請求項19】
前記
検出部は、前記時系列画像の前記第1蛍光タンパク質の輝度が前記第一輝度閾値と異なる第二輝度閾値を超えた領域を前記神経細胞の細胞体の
内部に凝集物が存在する領域として
検出する、
請求項
17に記載の神経細胞の解析装置。
【請求項20】
命令を内部に有するコンピュータ可読記憶媒体を含むコンピュータプログラムであって、
前記命令は、プロセッサまたはプログラム可能回路に実行されると、前記プロセッサまたは前記プログラム可能回路に、
請求項1から
11のいずれか一項に記載の神経細胞の解析方法を含む動作を実行させる、
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経細胞の解析方法、神経細胞の解析装置およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
生きた細胞に蛍光タンパク質をコードする遺伝子を導入することにより、細胞の蛍光観察を行うことが行われている。蛍光タンパク質として、緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescent Protein:GFP)や、赤色蛍光タンパク質(Red Fluorescent Protein:RFP)などが用いられている。これらの蛍光タンパク質は、細胞内における遺伝子、および細胞内のタンパク質の局在を示すマーカーとして用いられている。
【0003】
特許文献1には、複数の細胞に蛍光タンパク質をコードする遺伝子を導入して、細胞から発せられる蛍光を指標に、細胞周期を同期化する方法が記載されている。蛍光タンパク質を利用して細胞の解析を行う新たな手法が求められている。
[特許文献1]特開2009-072155号公報
【一般的開示】
【0004】
本発明の第1の態様においては、神経細胞の解析方法を提供する。前記神経細胞の解析方法は、神経細胞を時系列に撮像した時系列画像を取得する画像取得工程を備えてよい。前記神経細胞の解析方法は、前記時系列画像に基づいて、前記神経細胞の神経突起の領域あるいは細胞体の領域を識別する細胞領域識別工程を備えてよい。前記神経細胞の解析方法は、前記神経細胞内で発現する特定タンパク質にタグ付けされた第1蛍光タンパク質を時系列で撮像した前記時系列画像に基づいて、前記細胞領域識別工程で識別された前記神経突起の領域あるいは前記細胞体の領域に凝集した前記特定タンパク質の凝集物の有無を、前記時系列画像に含まれる前記第1蛍光タンパク質の輝度を基準にして検出する凝集物検出工程を備えてよい。前記神経細胞の解析方法は、前記細胞領域識別工程で識別した前記細胞体の領域と前記神経突起の領域との対応付けをする対応付け工程を備えてよい。前記神経細胞の解析方法は、前記凝集物検出工程の検出結果に基づいて前記神経細胞を複数の群に分類する分類工程を備えてよい。前記特定タンパク質は、前記神経細胞内で凝集性を示すタンパク質であり、前記複数の群は、前記細胞体の領域と前記神経突起の領域との対応付けができるか否かと、前記細胞体の領域に凝集した前記特定タンパク質の凝集物の有無とに基づいて分類してよい。
【0005】
本発明の第2の態様においては、神経細胞の解析方法を提供する。前記神経細胞の解析方法は、前記群ごとに前記神経細胞の生存状態を解析する解析工程を備えてよい。前記神経細胞の生存状態は前記神経細胞の生存時間と生存率と生死との少なくとも一つを含んでよい。
【0006】
本発明の第3の態様においては、前記解析工程は、前記複数の群と、前記複数の群の生存状態との関係を、前記群ごとに表示してもよい。
【0007】
本発明の第4の態様においては、前記解析工程は、(i)前記細胞体と前記神経突起との対応付けがされており、前記細胞体の領域に前記凝集物が存在する細胞群と、(ii)前記細胞体と前記神経突起との対応付けがされておらず、前記細胞体の領域に前記凝集物が存在する細胞群と、(iii)前記細胞体と前記神経突起との対応付けがされており、前記細胞体内に前記凝集物が存在しない細胞群と、(iv)前記細胞体と前記神経突起との対応付けがされておらず、前記細胞体の領域に前記凝集物が存在しない細胞群とに分類分けを行ってもよい。
【0008】
本発明の第5の態様においては、前記対応付け工程は、前記細胞体の領域と前記神経突起の領域との距離に基づいて対応関係を判断してもよい。
【0009】
本発明の第6の態様においては、前記対応付け工程は、前記神経突起と前記神経突起の端点における接線の延長方向にある前記細胞体の領域とを対応関係にあるとしてもよい。
【0010】
本発明の第7の態様においては、前記時系列画像は、位相差画像のデータ、前記第1蛍光タンパク質の輝度を含む蛍光画像のデータ、および動画像ファイルを含むデータの少なくとも1つを有してもよい。
【0011】
本発明の第8の態様においては、前記細胞領域識別工程は、前記画像取得工程にて前記神経細胞内で発現する特定タンパク質にタグ付けされた第1蛍光タンパク質を時系列で撮像し、前記時系列画像の前記第1蛍光タンパク質の輝度が第一輝度閾値を超えた領域を前記神経細胞の神経突起の領域として識別することを含んでもよい。
【0012】
本発明の第9の態様においては、前記細胞領域識別工程は、前記時系列画像の前記第1蛍光タンパク質の輝度が前記第一輝度閾値を超えた領域の中で、所定のサイズ閾値を超えた領域を前記神経細胞の神経突起または細胞体の領域として識別し、さらに、識別された同一の前記神経突起および同一の前記細胞体を、それぞれ時系列に追跡して、前記生存状態に関係する生存時間を算出してもよい。
【0013】
本発明の第10の態様においては、前記凝集物検出工程は、前記時系列画像の前記第1蛍光タンパク質の輝度が、前記第一輝度閾値と異なる第二輝度閾値を超えた領域を前記神経細胞の細胞体の内部に凝集物が存在する領域として検出してもよい。
【0014】
本発明の第11の態様においては、前記細胞領域識別工程は、前記神経細胞内で発現する前記第1蛍光タンパク質とは異なる第2蛍光タンパク質を時系列で撮像した前記時系列画像に基づいて、さらに、前記神経細胞の細胞体または神経突起の領域を識別してもよい。前記凝集物検出工程は、前記第1蛍光タンパク質および前記第2蛍光タンパク質に基づき、識別された前記神経突起内の凝集物が軸索の内部に存在するか、または樹状突起の内部に存在するか否かを検出してもよい。前記解析工程は、前記凝集物検出工程の検出結果に基づき、前記神経突起内の凝集物が前記細胞体に近い側に存在する細胞群と、前記神経突起の末端に近い側に存在する細胞群とに分類し、前記細胞群ごとに前記神経細胞の生存状態を解析してもよい。
【0015】
本発明の第12の態様においては、神経細胞の解析装置を提供する。前記神経細胞の解析装置は、神経細胞を時系列に撮像した時系列画像を取得する撮像部を備えてよい。前記時系列画像に基づいて、前記神経細胞の神経突起の領域あるいは細胞体の領域を識別する識別部を備えてよい。前記神経細胞内で発現する特定タンパク質にタグ付けされた第1蛍光タンパク質を時系列で撮像した前記時系列画像に基づいて、前記識別部で識別された前記神経細胞の前記神経突起の領域あるいは前記細胞体の領域に凝集した前記特定タンパク質の凝集物の有無を、前記時系列画像に含まれる前記第1蛍光タンパク質の輝度を基準にして検出する検出部を備えてよい。前記識別部で識別した前記細胞体の領域と前記神経突起の領域との対応付けをする対応付け部を備えてよい。前記検出部の検出結果に基づいて前記神経細胞を複数の群に分類する分類部を備えてよい。前記特定タンパク質は、前記神経細胞内で凝集性を示すタンパク質であり、前記複数の群は、前記細胞体の領域と前記神経突起の領域との対応付けができるか否かと、前記細胞体の領域に凝集した前記特定タンパク質の凝集物の有無とに基づいて分類すれてよい。
【0016】
本発明の第13の態様においては、前記群ごとに前記神経細胞の生存状態を解析する解析部を備えてよい。前記神経細胞の生存状態は前記神経細胞の生存時間と生存率と生死との少なくとも一つを含んでよい。
【0017】
本発明の第14の態様においては、前記解析部は、前記複数の群と、前記複数の群の生存状態との関係を、前記群ごとに表示してよい。
【0018】
本発明の第15の態様においては、前記解析部は、(i)前記細胞体と前記神経突起との対応付けがされており、前記細胞体の領域に前記凝集物が存在する細胞群と、(ii)前記細胞体と前記神経突起との対応付けがされておらず、前記細胞体の領域に前記凝集物が存在する細胞群と、(iii)前記細胞体と前記神経突起との対応付けがされており、前記細胞体内に前記凝集物が存在しない細胞群と、(iv)前記細胞体と前記神経突起との対応付けがされておらず、前記細胞体の領域に前記凝集物が存在しない細胞群とに分類分けを行ってもよい。
【0019】
本発明の第16の態様においては、前記対応付け部は、前記細胞体の領域と前記神経突起の領域との距離に基づいて対応づけるか、前記神経突起と前記神経突起の端点における接線の延長方向にある前記細胞体の領域とを対応づけるか、のうち少なくとも一つを含んでよい。
【0020】
本発明の第17の態様においては、前記識別部は、前記撮像部にて前記神経細胞内で発現する特定タンパク質にタグ付けされた第1蛍光タンパク質を時系列で撮像し、前記時系列画像の前記第1蛍光タンパク質の輝度が第一輝度閾値を超えた領域を前記神経細胞の神経突起の領域として識別してよい。
【0021】
本発明の第18の態様においては、前記識別部は、前記時系列画像の前記第1蛍光タンパク質の輝度が前記第一輝度閾値を超えた領域の中で、所定のサイズ閾値を超えた領域を前記神経細胞の神経突起または細胞体の領域として識別し、さらに、識別された同一の前記神経突起および同一の前記細胞体を、それぞれ時系列に追跡して、前記生存状態に関係する生存時間を算出してよい。
【0022】
本発明の第19の態様においては、前記検出部は、前記時系列画像の前記第1蛍光タンパク質の輝度が前記第一輝度閾値と異なる第二輝度閾値を超えた領域を前記神経細胞の細胞体の内部に凝集物が存在する領域として検出してよい。
【0023】
本発明の第20の態様においては、コンピュータプログラムを提供する。前記コンピュータプログラムは、命令を内部に有するコンピュータ可読記憶媒体を含んでよい。前記命令は、プロセッサまたはプログラム可能回路に実行されると、前記プロセッサまたは前記プログラム可能回路に、前記神経細胞の解析方法を含む動作を実行させてよい。
【0024】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴のすべてを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本実施形態における、神経細胞の解析装置の装置構成の一例を示す。
【
図2】本実施形態における、神経細胞の解析装置の具体的な構成の一例を示す。
【
図3】本実施形態の神経細胞解析方法のフローの一例を示す。
【
図4】本実施形態における、S200の神経細胞を撮像するフローの一例を示す。
【
図5A】本実施形態における、S210の細胞体の領域を検出するフローの一例を示す。
【
図5B】本実施形態における、S212の輝度閾値を超えた領域(細胞領域)を抽出するフローの一例を示す。
【
図5C】本実施形態における、S213の収縮および膨張処理の一例を示す。
【
図5D】本実施形態における、S214のサイズ閾値を超えた領域を抽出するフローの一例を示す。
【
図5E】本実施形態における、S210の細胞体の領域を検出するフローで、神経細胞の解析装置の出力部に表示される画面の一例を示す。
【
図6A】本実施形態における、S230の細胞体を追跡するフローの一例を示す。
【
図6B】本実施形態における、S231の前後のフレーム間の領域の追跡を行う一例を示す。
【
図7A】本実施形態における、S250の神経突起の領域を検出するフローの一例を示す。
【
図7B】本実施形態における、S250の神経突起の領域を検出するフローの一例を示す。
【
図7C】本実施形態における、S250の神経突起の領域を検出するフローで、神経細胞の解析装置の出力部に表示される画面の一例を示す。
【
図8A】本実施形態における、S270の神経突起を追跡するフローの一例を示す。
【
図8B】本実施形態における、S271の前後のフレーム間の領域の追跡を行うフローの一例を示す。
【
図8C】本実施形態における、S273の距離閾値よりも近接する複数の神経突起の領域を1つの神経突起の領域として認識するフローの一例である。
【
図9】本実施形態における、S290の神経突起と細胞体との対応付けを行うフローで、神経細胞の解析装置の出力部に表示される画面の一例を示す。
【
図10A】本実施形態における、S310の神経細胞の生存時間を解析するフローで、神経細胞の解析装置の出力部に表示される画面の一例を示す。
【
図10B】本実施形態における、S310の神経細胞の生存時間を解析するフローで、神経細胞の解析装置の出力部に表示される神経突起内凝集物存続グラフの一例を示す。
【
図10C】本実施形態における、S310の神経細胞の生存時間を解析するフローで、神経細胞の解析装置の出力部に表示される細胞生存率グラフの一例を示す。
【
図11】第一変形例のS280およびS281のフローを示す。
【
図12】コンピュータのハードウェア構成の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせのすべてが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0027】
図1は、本実施形態における、神経細胞の解析装置の装置構成の一例を示す。本願発明に係る神経細胞の解析装置1は、神経細胞の神経突起および/または細胞体の領域における凝集物の有無と、神経細胞の生死、生存時間、および生存率などの神経細胞の状態との関係を解析する。具体的には、細胞体内凝集物検出工程の結果と神経突起内凝集物検出工程の結果に基づいて神経細胞を複数の細胞群に分類し(例えば、後述するように4つの細胞群に分類してよい)、その細胞群ごとに神経細胞の状態を解析してよい。神経細胞の解析装置1は、神経細胞を培養する環境下に置かれてよい。例えば、神経細胞の解析装置1は、温度、湿度および炭酸ガス濃度を調整されたCO
2インキュベータに備えられてよい。神経細胞の解析装置1は、撮像装置10と、出力部160と、演算装置170と、入力部180とを備える。
【0028】
撮像装置10は、神経細胞を撮像することで神経細胞の、画像を生成する装置である。撮像装置10は、神経細胞の観察画像を時系列で複数回撮像して、複数の画像を生成する。撮像装置10は、光ファイバ7と、透過照明部40と、励起用光源70と、顕微鏡部150と、カメラ300とを備えてよい。
【0029】
光ファイバ7は、励起用光源70から射出した光を顕微鏡部150に導入する部品である。
【0030】
透過照明部40は、神経細胞を位相差観察する場合に用いる光源ユニットである。透過照明部40は、フィールドレンズ44と、偏光ミラー45と、透過照明用光源47とを備える。透過照明部40は、神経細胞を透過する光を当てる。
【0031】
励起用光源70は、神経細胞を蛍光観察する場合に用いる光源である。励起用光源70は、光ファイバ7および顕微鏡部150を介して、神経細胞に反射させる光を当てる。
【0032】
顕微鏡部150は、顕微鏡を用いて、神経細胞を拡大して観察するための装置である。神経細胞は、特に限定されないが、N1E-115細胞(マウス神経芽細胞腫)やPC-12細胞(ラット褐色細胞腫)などのような株化細胞であっても、マウスやラットなどの脳神経組織から採取した初代培養細胞であっても、胚性幹細胞(embryonic stem cell:ES細胞)や人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell:iPS細胞)などから分化させた神経細胞であってもよい。例えば、神経細胞は、神経変性疾患の患者由来のiPS細胞から分化させた神経細胞であってよい。顕微鏡部150には、ステージ23と、対物レンズ部27と、蛍光フィルタ部34と、結像レンズ部38と、コレクタレンズ41と、フィールドレンズ411と、偏光ミラー452とを備えてよい。
【0033】
ステージ23には、チャンバ100が載置される。チャンバ100は透明な培養容器20を有する。培養容器20には培地が満たされており、培地中に神経細胞が培養されている。蛍光画像を観察するために、神経細胞は、1種類または2種類以上の蛍光物質(例えば、蛍光タンパク質)で標識されていてよい。チャンバ100の底面の一部aと、チャンバ100の上面の一部bとはそれぞれ透明になっていてよい。チャンバ100の上面は開放されていてもよいし、透明なふたで覆われていてもよい。チャンバ100の上面または底面が透明であったり、チャンバ100の上面が開放されるか、透明なふたで覆われたりすることで、神経細胞を観察するのに適した培養環境を提供することができる。
【0034】
チャンバ100には、シリコンチューブを介して加湿器(図示せず)が接続されてよい。加湿器が接続されることにより、後述する演算装置170は、チャンバ100の内部の湿度および炭酸ガス濃度を、神経細胞の培養に適した値の近傍に制御することができる。また、チャンバ100には、加熱器または冷却器などの温度調整機器(図示せず)が備えられてよい。例えば、温度調整機器は、電熱器またはペルチェ式冷却器であってよい。チャンバ100に温度調整機器が備えられることで、チャンバ100の内部の温度を、神経細胞の培養に適した値の近傍に制御することができる。さらに、チャンバ100には、炭酸ガスボンベが接続されてよい。炭酸ガスボンベが接続されることにより、神経細胞が培養されている培地のpHを、神経細胞の培養に適した値の近傍に制御することができる。チャンバ100の内部の湿度、炭酸ガス濃度、および温度は、センサ(図示せず)により測定される。測定結果は演算装置170に送られる。
【0035】
対物レンズ部27は、
図1のx軸方向(紙面に垂直な方向)に複数の対物レンズを備える。対物レンズ部27をx軸方向に動かすことにより、撮像装置10の光路に配置される対物レンズが切り替えられる。これにより、対物レンズの種類および倍率を切り替えることができる。
【0036】
蛍光フィルタ部34は、
図1のx軸方向に複数の種類のフィルタブロックを備える。蛍光フィルタ部34をx軸方向に動かすことにより、撮像装置10の光路に配置されるフィルタブロックが切り替えられる。
【0037】
カメラ300は、撮像センサー(図示せず)を有する。カメラ300は、冷却カメラであってよい。冷却カメラは、撮像センサーを冷却することによって、熱によって発生するノイズを抑えることができるカメラである。撮像センサーは、CMOSイメージセンサー(Complementary Metal Oxide Semiconductor)またはCCDイメージセンサー(Charge Coupled Device)であってよい。また、カメラ300による撮像のフォーカスを合わせる場合、ステージ23のx座標およびy座標、ならびに対物レンズ部27のz座標は演算装置170によって制御されてよい。カメラ300は、撮像装置10とは異なる筐体に収められてもよい。
【0038】
出力部160は、演算装置170の処理結果を出力する。例えば、出力部160は、解析結果である神経細胞の生存率曲線などを出力してよい。例えば、出力部160は、演算装置170に接続されたモニターであってよい。出力部160を、表示部ということがある。
【0039】
演算装置170は、撮像装置10と接続され、撮像装置10を制御する。具体的には、演算装置170は、撮像装置10の光路に配置される対物レンズ部27の対物レンズの種類および/または蛍光フィルタ部34のフィルタブロックの種類との組み合わせを切り替える。例えば、位相差観察と蛍光観察は、光路に配置されるフィルタブロックの種類と対物レンズの種類の双方が異なる。また、2種対の蛍光観察は、光路に配置されるフィルタブロックの種類のみが異なる。また、位相差観察と蛍光観察は、使用する光源(透過照明部40および励起用光源70)も異なる。このため、演算装置170の内部(例えば、後述する撮像装置制御部171)は、位相差観察および蛍光観察のいずれの観察を行うかに応じて、フィルタブロック、対物レンズ、および光源の1つ以上を切り替えるものであってよい。
【0040】
位相差観察を行う場合、演算装置170は、透過照明部40の光路を有効にするために、透過照明用光源47をオンにし、励起用光源70をオフにする。位相差観察を行う場合、透過照明用光源47から射出した光は、フィールドレンズ44、偏光ミラー45、およびチャンバ100の上部bを介して、培養容器20の観察位置cを照明する。観察位置cを透過した光は、培養容器20の底面、チャンバ100の底部a、対物レンズ部27、蛍光フィルタ部34、および結像レンズ部38を介して、カメラ300の受光面に達する。このとき、培養容器20の観察位置cにおける位相差像がカメラ300に形成される。カメラ300は位相差像を撮像し、画像を生成する。生成された画像のデータは、演算装置170の内部(例えば、後述する記録部190)に記録され、および/または、出力部160に出力されてよい。
【0041】
蛍光観察を行う場合、演算装置170は、励起用光源70の光路を有効にするために、励起用光源70をオンにし、透過照明用光源47をオフにする。蛍光観察を行う場合、励起用光源70から射出した光は、光ファイバ7、コレクタレンズ41、フィールドレンズ411、偏光ミラー452、蛍光フィルタ部34、対物レンズ部27、チャンバ100の底部a、および培養容器20の底面を介して、培養容器20の観察位置cを照明する。培養容器20で培養されている神経細胞が蛍光標識されている場合、観察位置cにある神経細胞の蛍光物質は励起され、蛍光を発する。神経細胞から発せられた蛍光は、培養容器20の底面、チャンバ100の底部a、対物レンズ部27、蛍光フィルタ部34、および結像レンズ部38を介して、カメラ300の受光面に達する。このとき、培養容器20の観察位置cにおける蛍光像がカメラ300に形成される。カメラ300は蛍光像を撮像し、画像を生成する。生成された画像のデータは、演算装置170の内部(例えば、後述する記録部190)に記録され、および/または、出力部160に出力されてよい。
【0042】
また、演算装置170は、撮像装置10の制御に加えて、撮像装置10が撮像した神経細胞の複数の画像を撮像装置10から受信し、複数の画像に基づいて、神経細胞の神経突起および/または細胞体の領域における凝集物の有無と、神経細胞の生死、生存時間、および生存率などの神経細胞の状態との関係を解析する。演算装置170の構成については後述する。
【0043】
入力部180は、観察者からの指示やデータなどを演算装置170に入力する。例えば、入力部180は、神経細胞を撮像する条件、および神経細胞を培養する条件(温度、湿度、炭酸ガス濃度など)に関する観察者の指示を演算装置170に入力してよい。また、入力部180は、蛍光の輝度閾値や神経細胞の解析の条件に関する観察者の指示を演算装置170に入力してよい。例えば、入力部180は、演算装置170に接続されたキーボードまたはマウスであってよい。
【0044】
図2は、本実施形態における、演算装置170の具体的な構成の一例を示す。演算装置170は、撮像装置制御部171と、記録部190と、識別部350と、検出部400と、対応付け部550と、解析部600とを有する。
【0045】
撮像装置制御部171は、撮像装置10の制御を行う。例えば、撮像装置制御部171は、
図1において説明した対物レンズ部27、蛍光フィルタ部34、透過照明部40、励起用光源70、およびカメラ300などの制御を行う。一例として、観察者により神経細胞の撮像条件が入力部180に入力されると、撮像装置制御部171は、入力された撮像条件にしたがって、顕微鏡部150にある対物レンズ部27の対物レンズの種類の切り替え、透過照明用光源47と励起用光源70との切り替え、蛍光フィルタ部34の蛍光フィルタの種類の切り替え、ステージ23の位置および対物レンズ部27の対物レンズの高さのうち、必要な調整を行う。撮像装置制御部171が必要な調整を行った後で、カメラ300は神経細胞の撮像を行い、画像を生成する。カメラ300は、生成した画像のデータを、撮像装置制御部171に送る。また、生成された画像のデータは、記録部190に記録され、および/または、出力部160に出力されてよい。
【0046】
記録部190は、神経細胞の解析装置1の動作に必要な命令および/またはデータを格納する。例えば、記録部190は、メモリ、内蔵ハードディスクドライブ、または外部の記録媒体であってよいが、これらに限らない。演算装置170は、中央演算処理装置(CPU)を有し、当該CPUが記録部190に記録されたコンピュータプログラムを実行することにより撮像装置制御部171などを実現する。
【0047】
識別部350は、撮像装置10が撮像した画像において、神経細胞の神経突起の領域および/または細胞体の領域を識別する。識別部350が神経細胞の神経突起および/または細胞体の領域を識別する方法の詳細については後述する。
【0048】
検出部400は、識別部350が識別した神経突起の領域および/または細胞体の領域に凝集したタンパク質の凝集物の有無を検出する。検出部400が神経突起の領域および/または細胞体の領域に凝集したタンパク質の凝集物の有無を検出する方法の詳細については後述する。なお、検出部400は設けられなくてもよい。この場合、識別部350が、神経突起の領域および/または細胞体の領域に凝集したタンパク質の凝集物の有無を検出する。
【0049】
なお、神経細胞の神経突起には、軸索および樹状突起の2種類があることが知られている。軸索は、神経細胞の細胞体から伸長する1本の細長い突起状の構造であり、神経細胞において信号の出力を担う。樹状突起は、神経細胞の細胞体から伸長する複数の枝分かれに富む突起状の構造であり、神経細胞において信号の入力を担う。本明細書では、軸索と樹状突起とを総称して神経突起と記載する。また、神経細胞の細胞体では、核やリボゾームなどの細胞内小器官が存在し、軸索と樹状突起とが会合する。
【0050】
対応付け部550は、神経細胞を構成する細胞体と神経突起との対応付けを特定する。神経細胞の細胞体と神経突起との対応付けを特定する方法の詳細については後述する。
【0051】
解析部600は、検出部400による凝集物の有無を判断した結果と、神経細胞の状態との関係を解析する。例えば、神経細胞の状態は、神経細胞の生死であってよい。例えば、解析部600は、神経細胞の神経突起および/または細胞体における凝集物の有無と、神経細胞の生死との関係を解析してよい。例えば、解析部600は、神経細胞の神経突起および/または細胞体における凝集物の有無と、神経細胞の生存期間、神経細胞内における凝集物の存続パターン、神経細胞の生存率、神経細胞の平均生存期間のうちの少なくとも1つを解析してよい。解析部600は、解析の結果を、記録部190に記録し、および/または、出力部160に出力してよい。
【0052】
図3は、本実施形態における、神経細胞解析方法のフローの一例である。本実施形態の神経細胞の状態は、
図3のS200~S310の処理を行うことによって解析することができる。なお、説明の便宜上、S200~S310の処理を順番に説明するが、これらの処理は少なくとも一部が並列に実行されるものであってもよいし、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各ステップを入れ替えて実行されるものであってもよい。
【0053】
まず、S200において、撮像装置10は、神経細胞を撮像して、複数の画像を生成する
(S200のステップを、「画像取得工程」ということがある)。S200において、神経細胞を撮像して複数の画像を生成するステップは、
図4に示すように、S201からS206のステップを含む。
【0054】
図4は、フローにおけるS200を示す。まず、S201において、神経細胞が培養された培養容器20がチャンバ100に設置される。培養容器20のチャンバ100への設置は、撮像装置制御部171の指示を受けた、撮像装置10に備えられる多関節アームを有するロボット(図示せず)により自動的に行われてよいし、観察者の手により行われてもよい。次に、撮像装置制御部171は観察方法を低倍率の位相差観察に設定し、撮像装置制御部171の指示により、撮像装置10が培養容器20で培養されている神経細胞を撮像する。低倍率の位相差観察は、透過照明用光源47をオンにし、励起用光源70をオフにし、対物レンズ部27をx軸方向に動かして、撮像装置10の光路に低倍率の対物レンズを設置することにより行われてよい。これにより、撮像装置10が比較的広い領域の画像であるバードビュー画像を取得する。
【0055】
または、低倍率の観察に代えて、撮像装置制御部171が培養容器20の観察位置cをxy平面内で移動させながら、撮像装置10が位相差観察した複数の画像(タイル画像)を取得し、これらを1枚の画像(合成画像)になるように合成することで、バードビュー画像を取得してもよい。撮像装置10は、取得したバードビュー画像のデータを、記録部190に保存し、および/または、出力部160に出力してよい。バードビュー画像を取得した後で、撮像装置制御部171は処理をS202に進める。
【0056】
次に、S202において、撮像装置制御部171は、入力部180を介して、観察者からタイムラプス撮像の条件に関する入力を受けたか否か判断する。タイムラプス撮像の条件は、出力部160に出力されたバードビュー画像に基づいて観察者により決定されてよい。タイムラプス撮像の条件は、インターバル、ラウンド数、観察位置、および観察方法(位相差観察または蛍光観察)のうちの1つまたは複数であってよく、さらに撮像中の神経細胞の培養に関する条件(例えば、培地の組成、温度、炭酸ガス濃度、湿度など)を含んでよいが、これらに限らない。例えば、観察方法が3種類(例えば、位相差観察、緑色の蛍光観察、および赤色の蛍光観察)である場合、撮像装置制御部171は、照明、フィルタブロック、および対物レンズを適切に切り替えながら、3種類の画像を連続的に取得してよい。タイムラプス撮像の条件に関する入力を受けた場合、撮像装置制御部171は、処理をS203に進めてよい。タイムラプス撮像の条件に関する入力を受けなかった場合、撮像装置制御部171は再度処理をS202に戻して、出力部160を介して、観察者にタイムラプス撮像の条件を入力するように要求し、入力があるまで待機してよい。
【0057】
次に、S203において、撮像装置制御部171は、入力されたタイムラプス撮像の条件を含むレシピを生成してよい。撮像装置制御部171は、生成したレシピを、記録部190に記録し、および/または、出力部160に出力してよい。レシピを生成した後で、撮像装置制御部171は処理をS204に進める。
【0058】
次に、S204において、撮像装置制御部171は、入力部180を介して、観察者からタイムラプス撮像の開始の指示を受けたか否か判断する。タイムラプス撮像の開始の指示を受けた場合、撮像装置制御部171は、処理をS205に進めてよい。タイムラプス撮像の開始の指示を受けなかった場合は、撮像装置制御部171は再度処理をS204に戻して、出力部160を介して、観察者にタイムラプス撮像の開始を指示するように要求し、指示があるまで待機してもよい。または、タイムラプス撮像の開始の指示を受けなかった場合は、撮像装置制御部171は再度処理をS204に戻して、出力部160を介して、観察者に、前回入力した条件とは異なるタイムラプス撮像の条件を入力するように要求し、入力があるまで待機してもよい。
【0059】
次に、S205において、撮像装置制御部171は、神経細胞のタイムラプス撮像を開始するよう、カメラ300に指示する。タイムラプス撮像は、S203で生成されたレシピにしたがって行われる。撮像装置制御部171は、レシピに記載された観察位置に、培養容器20の観察位置cの位置が一致するように、ステージ23および/または対物レンズ部27の対物レンズの位置を調節する。次に、カメラ300が神経細胞を撮像し、画像を取得して、第1ラウンドの撮像が終了する。
【0060】
次に、撮像装置制御部171は、生成されたレシピにしたがって、第1ラウンドの撮像開始時刻から、レシピに記載されたインターバルだけ待機し、その後第1ラウンドの撮像と同様に第2ラウンドの撮像を行うよう、カメラ300に指示する。このように、レシピに記載されたラウンド数に達するまで、カメラ300は上記の撮像を繰り返す。
【0061】
次に、S206において、タイムラプス撮像が、レシピに記載されたラウンド数に達した場合は、撮像装置制御部171は撮像を終了するよう、カメラ300に指示する。タイムラプス撮像が、レシピに記載されたラウンド数に達しない場合は、指定されたラウンド数に達するまで、撮像装置制御部171は、カメラ300による上記の撮像を繰り返す。
【0062】
タイムラプス撮像の間、撮像装置制御部171は、撮像装置10が撮像した画像のデータを実施経過ファイルに蓄積する。撮像装置制御部171は、実施経過ファイルを、記録部190に記録する。また、撮像装置制御部171は、タイムラプス撮像の撮像中または撮像後に、観察者から入力部180を介して実施経過確認の指示が入力されると、入力時点における実施経過ファイルの内容を参照し、実施経過確認用画面を出力部160に出力してよい。
【0063】
また、撮像装置制御部171は、タイムラプス撮像した各ラウンドでの画像を観察方法ごとに時系列で連結した時系列画像を動画像ファイルとして生成してよい。例えば、撮像装置制御部171は、複数の位相差画像を時系列で連結した位相差画像の動画像ファイルを生成し、および/または、複数の蛍光画像を時系列で連結した蛍光画像の動画像ファイルを生成してよい。これに加えて/代えて、撮像装置制御部171は、位相差画像および蛍光画像をフレームごとに合成し、合成後の各フレームを時系列に連結した合成画像の動画像ファイルを生成してよい。撮像装置制御部171は、撮像装置10が撮像した時系列の位相差画像(位相差時系列画像)のデータ、時系列の蛍光画像(蛍光時系列画像)のデータ、および/または生成した動画像ファイルを含むデータを、出力部160に表示し、および/または記録部190に記録してよい。タイムラプス撮像を終了した後で、撮像装置制御部171は処理をS210、および/またはS250に進める。なお、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、S201からS206のステップの一部を省略してもよい。
【0064】
ここで、神経細胞から発せられる蛍光は、神経細胞にあらかじめ導入された第1蛍光タンパク質に由来するものであってよい。第1蛍光タンパク質は、神経細胞内(神経突起および/または細胞体)で発現するタンパク質に、タグ付け(蛍光タグ付け)されたものであってよい。神経細胞内で発現するタンパク質は、神経細胞内で凝集性を示すタンパク質であってよい。
【0065】
神経細胞内で凝集性を示すタンパク質は、α-シヌクレインタンパク質、タウタンパク質、プリオンタンパク質、TDP-43タンパク質、またはハンチンティンタンパク質などであってよいが、これらに限らない。ここで、神経細胞内で凝集性を示すタンパク質を、「特定タンパク質」という場合がある。
【0066】
α-シヌクレインタンパク質は、神経細胞の軸索末端に局在する、アミノ酸140残基からなるタンパク質である。α-シヌクレインタンパク質の生理的な機能については不詳であるが、パーキンソン病やレビー小体型認知症の患者において、神経細胞中にα-シヌクレインタンパク質の凝集物が認められることから、α-シヌクレインタンパク質の凝集により病態が引き起こされる可能性が示唆される。
【0067】
タウタンパク質は、神経細胞の軸索に局在する、微小管の安定に寄与するタンパク質である。アルツハイマー病の患者において、神経細胞中に過剰にリン酸化されたタウタンパク質の凝集物が認められることから、タウタンパク質の凝集により病態が引き起こされる可能性が示唆される。
【0068】
プリオンタンパク質は、神経系組織のみならず、普遍的に存在するタンパク質であるが、その生理的な機能については不詳である。クロイツフェルト・ヤコプ病の患者において、中枢神経系にプリオンタンパク質の凝集物が認められることから、プリオンタンパク質の凝集により病態が引き起こされる可能性が示唆される。
【0069】
TDP-43タンパク質は、神経系のみならず、普遍的に存在する核タンパク質であり、転写およびスプライシングに関与していることが知られている。筋萎縮性側索硬化症の患者において、中枢神経系にTDP-43タンパク質の凝集物が認められることから、TDP-43タンパク質の凝集により病態が引き起こされる可能性が示唆される。
【0070】
ハンチンティンタンパク質は、神経系組織のみならず、普遍的に存在するアミノ酸3145残基からなるタンパク質である。ハンチンティンタンパク質の生理的な機能については不詳であるが、ハンチントン病の患者において、線条体の神経細胞に、異常にポリグルタミンが付加されたハンチンティンタンパク質の凝集物が認められることから、ハンチンティンタンパク質の凝集により病態が引き起こされる可能性が示唆される。
【0071】
上記に挙げたように、神経細胞において凝集性を示すタンパク質は、疾患を治療するターゲットとなるものである。本発明では、このようなタンパク質に蛍光タグを付加した第1蛍光タンパク質を神経細胞に発現させることで、凝集物の有無と、神経細胞の状態(例えば、神経細胞の生死、生存時間、および生存率など)との関係を解析することができる。ここで、神経細胞の状態のことを、「神経細胞の生存状態」という場合がある。
【0072】
蛍光タグは、GFP、またはRFPなどであってよいが、これらに限らない。神経細胞への第1蛍光タンパク質の導入は、第1蛍光タンパク質をコードするプラスミドベクターまたはウイルスベクター(例えば、アデノウイルスなど)を神経細胞に導入することで行われてよい。
【0073】
次に、S210において、識別部350は、取得した複数の蛍光時系列画像に基づいて、
所定の輝度閾値およびサイズ閾値を超えた領域を細胞体の領域として抽出する。S210において、複数の画像に基づいて、
所定の輝度閾値およびサイズ閾値を超えた領域を細胞体の領域として抽出するステップは、
図5Aに示すように、S211からS215のステップを含む。
【0074】
図5Aは、フローにおけるS210を示す。まず、S211において、撮像装置制御部171が撮像した複数の画像のデータを識別部350に送信することにより、識別部350が複数の画像のデータを取得する。ここで、複数の画像は、タイムラプス撮像の蛍光時系列画像であってよい。識別部350が複数の画像を取得した後で、識別部350は処理をS212に進める。
【0075】
次に、S212において、識別部350は、蛍光の輝度閾値により画像を2値化して、輝度閾値を超えた領域を抽出する。輝度閾値は、観察者により指定されてよい。識別部350は、入力部180を介して、観察者により、輝度閾値に関する入力を受けてよい。または、輝度閾値は、識別部350が、取得した複数の画像に基づいて指定してもよい。
【0076】
例えば、
図5Bにおいて、画像211aは、撮像装置10が撮像した画像の一例である。蛍光の輝度を、グレーの濃淡で示す。このとき、識別部350は、輝度閾値以上の輝度を有する領域だけを抽出する。具体的には、画像中の画素の輝度が輝度閾値を超えた場合は、当該画素に、あらかじめ定められた輝度(例えば、輝度1)を与え、画素の輝度が輝度閾値以下であった場合は、当該画素に輝度0を与えてよい。このようにして、画像212aのように2値化した画像を取得することができる。識別部350が画像中の輝度閾値を超えた領域を抽出した後で、識別部350は処理をS213に進める。
【0077】
次に、S213において、識別部350は2値化した画像に収縮処理(エロージョン)および膨張処理(ダイレーション)を行う。収縮処理および膨張処理は、収縮処理と膨張処理とを同じ回数だけ行うオープニング処理であってよい。具体的には、識別部350は、まず2値化した画像に対して収縮処理を行う。次に、識別部350は、収縮処理を行った画像に対して、収縮処理を行った回数と同じ回数の膨張処理を行う。収縮および膨張処理は、特開2018-198605号公報に記載の方法により行われてよい。収縮処理および膨張処理を行うことで、小さなノイズを除去したり、2つの領域が連結した箇所を分離したりすることができる。
【0078】
例えば、
図5Cにおいて、識別部350は、2値化した画像212aに収縮および膨張処理を行うことで、画像213aのように、小さなノイズを除去した画像を取得することができる。識別部350が収縮および膨張処理を行った後で、識別部350は処理をS214に進める。なお、S213のステップは省略してもよく、その場合は、識別部350はS212から直接S214に進めてよい。
【0079】
次に、S214において、識別部350は収縮および膨張処理を行った画像から、サイズ閾値を超えた領域を、神経細胞の細胞体の領域として抽出する。サイズ閾値は、画像中の領域に外接する四角形の縦および/または横の長さで表されてよい。サイズ閾値は、画像中の領域に外接する四角形の縦または横の長さのうちの長いほうで表されてもよいし、短いほうで表されてもよい。サイズ閾値は、画像中の領域に外接する四角形の面積の大きさで表されてもよい。サイズ閾値は、観察者により指定されてよい。この場合、識別部350は、入力部180を介して、観察者により、サイズ閾値に関する入力を受けてよい。または、サイズ閾値は、識別部350が、取得した複数の画像に基づいて指定してもよい。また、外接する四角形以外に、外接する任意の多角形や外接円などの長さや面積でサイズ閾値を規定してもよい。
【0080】
例えば、
図5Dにおいて、識別部350は、収縮および膨張処理を行った画像213aに、縦および横の長さが指定した長さ以上のサイズを有する領域を抽出することで、画像214aのように、サイズ閾値を超えた領域のみを抽出することができる。
【0081】
なお、サイズ閾値は、下限値だけでなく上限値を含んでもよい。サイズ閾値が上限値および下限値を有することにより、識別部350は、細胞体としては大きすぎるものや小さすぎるものを排除し、特定の大きさの範囲の領域のみを細胞体として抽出できる。例えば、2つ以上の神経細胞の細胞体が重なり合った場所は、解析に適さないとして、解析の対象から除去したい場合、サイズ閾値に上限値を設けることによって、2つの神経細胞の細胞体が重なり合ってサイズが大きくなった領域を除去することができる。識別部350がサイズ閾値を超えた領域を抽出した後で、識別部350は処理をS215に進める。
【0082】
なお、時間経過とともに、蛍光の輝度が増加する傾向がある場合は、前の時刻で撮像された画像の輝度閾値および/またはサイズ閾値を、後の時刻で撮像された画像の輝度閾値および/またはサイズ閾値より小さい値に設定してもよい。このように設定することで、より低い輝度および/またはサイズを有する領域も解析対象に含めることができる。
【0083】
次に、S215において、識別部350は、サイズ閾値を超えた領域を抽出した画像を記録部190に保存し、および/または、出力部160に出力してよい。また、識別部350は、サイズ閾値を超えた領域を抽出した画像を対応付け部550、および解析部600に出力してよい。
【0084】
図5Eは、輝度閾値および/またはサイズ閾値を観察者に指定させるために、識別部350が出力部160に表示する画面の一例である。識別部350は、S212および/またはS214において、撮像された画像ファイルまたは動画像ファイルを同時並列的に読み出し、画像を出力部160に表示するための画像信号を生成し、生成順に画像信号を出力部160に送出して、画像を表示領域103に表示してよい。識別部350が行う、この画像ファイルの読み出し、画像信号の生成、画像信号の送出の一連の処理を、「動画像ファイルの再生」とも記載する。
【0085】
再生コントロール部105は、動画像ファイルの再生に関する指示を、観察者が入力するために用いるGUI(Graphic User Interface)画像である。再生コントロール部105には、タイムライン50、停止ボタン52、早戻しボタン53、再生ボタン54、早送りボタン55が配置されてよい。
【0086】
再生ボタン54が入力部180を介して観察者によって選択されると、動画像ファイルの再生が開始され、表示領域103において、動画像の表示が開始されてよい。停止ボタン52が観察者によって選択されると、動画像ファイルの再生が停止する。動画像ファイルにおける再生箇所は、タイムライン50に反映される。タイムライン50の左端は動画像ファイルの先頭、つまり、タイムラプス撮像の開始時点を示し、タイムライン50の右端は動画像ファイルの後尾、つまり、タイムラプス撮像の終了時点を示す。タイムラプス撮像が終了していない場合には、タイムラインの右端は現時点を示す。
【0087】
タイムライン50にはスラーダーバー60が配置される。スラーダーバー60は、動画像ファイルにおける再生箇所をリアルタイムで示すものであってよい。スラーダーバー60の左右方向の位置は、観察者が自由に移動できるものであってよい。スラーダーバー60の左右方向の位置が観察者によって移動されると、動画像ファイルの再生箇所が変化する。
【0088】
適切な輝度閾値および/またはサイズ閾値が、観察者により入力部180を介して指定されてよい。輝度閾値および/またはサイズ閾値が観察者により指定されると、表示領域104は、指定された輝度閾値および/またはサイズ閾値を表示する。次に、識別部350は、指定された輝度閾値および/またはサイズ閾値に基づいて、S212からS215の一連の処理を行い、処理した画像を表示領域103に表示してよい。表示領域103に表示された処理後の画像から、さらに新たな輝度閾値および/またはサイズ閾値が、観察者によって指定されてよい。所望の画像が得られるまで、輝度閾値および/またはサイズ閾値が何度でも観察者によって指定されてよい。
【0089】
なお、上記の例では、第1蛍光タンパク質に由来する蛍光に基づいて、細胞体の領域を特定する場合について記載したが、蛍光に加えて/代えて、位相差観察により得られた画像に基づいて、細胞体の領域を特定してもよい。
【0090】
識別部350が、サイズ閾値を超えた領域を抽出した画像を対応付け部550、および解析部600に出力した後で、識別部350は処理をS230に進める。
【0091】
次に、S230において、識別部350は、細胞体を追跡(トラッキング)する。S230において、細胞体を追跡するステップは、
図6Aに示すように、S231からS236のステップを含む。
【0092】
図6Aは、フローにおけるS230を示す。まず、S231において、識別部350は、複数の時系列画像について、前後のフレーム間の領域の追跡を行う。
【0093】
図6Bは、取得した時系列画像について、前後のフレーム間の領域の追跡を行う一例である。神経細胞の撮像において、時刻Tのラウンドにおいて撮像した画像を画像231a、時刻Tの直後の時刻T+1のラウンドで撮像した画像を画像231bとする。画像231aにおいて、輝度閾値を超えた領域(「細胞領域」という場合がある。)を領域2311、領域2312、および領域2313とし、画像231bにおいて、細胞領域を領域2314、領域2315、および領域2316とする。このとき、識別部350は、画像231bのうち、画像231aの領域2311に対応する領域の周囲に探索範囲を設定し、画像231bに領域2311と対応する領域(つまり、細胞領域)があるかどうかを探索してよい。ここで、探索領域としては、細胞領域に外接する四角形(例えば、長方形)を考え、縦および横の長さを端点からそれぞれ少しずつ(例えば、縦および横の長さの5%、10%、または20%など)大きくした四角形を探索領域と定めてよい。また、四角形以外に、任意の多角形や円などを探索領域として定めてもよい。
【0094】
例えば、識別部350は、画像231bにおいて、探索領域としてあらかじめ設定した距離閾値よりも近接する細胞領域2314を、画像231aの領域2311に対応する細胞領域であると認識してよい。つまり、識別部350は、領域2311および領域2314が同一の細胞体であると認識して追跡を行ってよい。同様に、識別部350は、画像231aの領域2312および領域2313についても、画像231bに設定された探索範囲の中に細胞領域があるかどうかを探索して追跡を行ってよい。
【0095】
例えば、識別部350は、画像231bの探索範囲において、細胞領域が複数ある場合には、画像231aの探索元の領域に最も近接する細胞領域を、対応する細胞体の領域であると認識して画像231aの探索元の領域と追跡してよい。識別部350が、前後のフレーム間の領域の追跡を全部または一部のフレームについて行った後で、識別部350は処理をS232に進める。
【0096】
次に、S232において、識別部350は、取得した時系列のフレーム間で、途中のフレームで細胞体が検出されていない場合の細胞領域の追跡を行う。
図6Bの例では、連続する2フレーム(例えば、時刻Tと時刻T+1)の間の追跡を行う一例を示したが、追跡を行う前後のフレームは、連続する2フレームに限らず、あらかじめ定めた時間以内の離れた時点のフレームの間で追跡を行ってよい。識別部350は、S231およびS232の処理を全てのラウンドについて実行する。例えば、識別部350は、最初のラウンド(つまり、時刻Tが1)から、最後のラウンド(つまり、時刻Tが撮像するラウンドの数であるN)まで上記の追跡を繰り返し実行する。
【0097】
神経細胞の撮像において、時刻Tのラウンドにおいて検出された細胞領域と対応する細胞領域が、時刻T+1のラウンドに存在しない場合があり得る。この場合、識別部350は、さらにその直後の時刻T+2のラウンドの画像中で、時刻Tのラウンドで検出された細胞領域の周囲に探索領域を設定してよい。つまり、時刻T+1の直後の時刻T+2のラウンドで撮像した画像中に、探索領域としてあらかじめ設定された距離閾値よりも近接する細胞領域を、同一の細胞体であると認識して追跡を行ってよい。細胞領域が探索領域の中に複数存在する場合は、探索元の領域に最も近接するものを、同一の細胞体であると認識して追跡を行ってよい。識別部350が、途中のフレームで細胞体が検出されていない場合の細胞領域の追跡を行った後で、識別部350は処理をS2320に進める。S232による細胞体ごとの追跡の結果を以下では「追跡結果」ともいう。なお、上記の例では、時刻Tのラウンドにおいて検出された細胞領域と、時刻T+2のラウンドで撮像した画像中の細胞領域とを追跡する例について記載したが、時刻T+2のラウンドに限らず、例えば、時刻T+3、または時刻T+4などのラウンドで撮像した画像中の細胞領域を時刻Tのラウンドにおいて検出された細胞領域と追跡してもよい。
【0098】
次に、S2320において、識別部350は、細胞体の追跡を開始した時刻、および追跡を終了した時刻を検出する。例えば、識別部350は、細胞体の追跡結果ごとに、それぞれの細胞体の追跡を開始した時刻(「追跡開始時刻」ともいう)、および追跡を終了した時刻(「追跡終了時刻」ともいう)を解析部600に出力し、記録部190に保存し、および/または、出力部160に出力してよい。ここで、細胞体の追跡を開始した時刻は、撮像した画像において細胞体が最初に閾値以上の輝度の蛍光を発したフレームの時刻であってよく、追跡の終了時刻は、撮像した画像において細胞体の輝度が、輝度閾値未満となった時のフレームの時刻であってよい。追跡終了時刻は、神経細胞の細胞死が起きたタイミングであると識別部350に判断されてよい。識別部350が細胞体の追跡の開始および終了時刻を検出した後で、識別部350は処理をS233に進める。
【0099】
次に、S233において、検出部400は、識別部350が行ったS232の追跡の結果、閾値以上の距離を移動したことが判明した細胞体の追跡結果を削除する。検出部400は、閾値以上の距離を移動したか否かの判定を、あらかじめ定めた時間以内の離れた時点のフレーム間で行ってよい。この処理により、検出部400は、想定される距離以上に移動した細胞体を、追跡に失敗したものとして排除することができる。
【0100】
例えば、検出部400は、細胞領域の移動距離の基準として、細胞領域の重心、中心、または、端部などを用いてよい。例えば、検出部400は、細胞領域をxy座標平面におき、x軸方向およびy軸方向ごとに、細胞領域に含まれる全画素の座標値の平均xmeanおよびymeanを算出し、得られた点(xmean,ymean)を重心と定義してよい。例えば、検出部400は、細胞領域をxy座標平面におき、細胞領域のx軸の最小値と最大値の平均値であるxaveを算出し、同様にして、細胞領域のy軸の最小値と最大値の平均値であるyaveを算出し、得られた点(xave,yave)を中心と定義してよい。例えば、検出部400は、細胞領域をxy座標平面におき、細胞領域の外周上の点のうち、x軸上またはy軸上であらかじめ定められた方向(+方向または-方向)において端に位置する点を端部と定義してよい。
【0101】
例えば、検出部400は、連続する2フレーム(例えば、時刻Tと時刻T+1)の間の時間で、細胞領域の移動距離がS214で用いたサイズ閾値の2倍の長さ以上の場合は、当該細胞領域に含まれる細胞体の追跡が失敗したと判断して、その2フレームを含む当該細胞体の追跡結果を削除してよい。また、上記の例では、移動距離がサイズ閾値の2倍の長さを例示したが、サイズ閾値の3倍の長さや0.5倍の長さであってもよく、これらに限定されない。これにより、当該細胞領域は、後述する解析部600の解析対象から除外される。観察対象となる神経細胞が移動性に乏しい細胞の場合、S233のステップを行うことで、アーティファクトを除外することができる。
【0102】
例えば、
図5Eの画面において、検出部400は、出力部160に移動距離の閾値を入力させるための表示領域104を表示し、移動距離の閾値を入力するよう観察者に要求してよい。適切な移動距離の閾値が、観察者により入力部180を介して指定されてよい。検出部400は、指定された移動距離の閾値に基づいて、閾値以上の距離を移動したことが判明した細胞体の追跡結果を削除してよい。検出部400が、閾値以上の移動距離を有する細胞体の追跡結果を削除した後で、検出部400は処理をS234に進める。
【0103】
次に、S234において、検出部400は、生存時間が閾値以下の追跡結果を削除する。検出部400は、S232の追跡の結果、閾値以下の生存時間であることが判明した細胞体識別部の追跡結果を削除する。ここで、生存時間とは、細胞体の追跡を開始した時刻、および追跡を終了した時刻の間の時間であってよい。
【0104】
例えば、
図5Eの画面において、検出部400は、出力部160に生存時間の閾値を入力させるための表示領域104を表示し、生存時間の閾値を入力するよう観察者に要求してよい。適切な生存時間の閾値が、観察者により入力部180を介して指定されてよい。検出部400は、指定された生存時間の閾値に基づいて、閾値以下の生存時間を有する細胞体の追跡結果を削除してよい。検出部400が、閾値以下の生存時間を有する細胞体の追跡結果を削除した後で、検出部400は処理をS235に進める。
【0105】
次に、S235において、検出部400は、S215で取得した画像において、細胞体の追跡結果にIDを採番して出力する。検出部400は、取得した時系列のフレーム間で追跡を行った細胞体のそれぞれの追跡結果に、一意のID(細胞体ID)を採番する。つまり、同じ細胞体IDを採番された追跡結果は、同一の細胞体を表している。例えば、
図6Bにおいて、検出部400は、領域2311および領域2314は同一の細胞体を有するとして、同一の細胞体IDを採番してよい。検出部400は、細胞体IDを画像とともに対応付け部550に出力する。また、検出部400は、細胞体IDを記録部190に保存し、および/または、出力部160に出力してよい。検出部400が、細胞体の追跡結果にIDを採番して出力した後で、検出部400は処理をS236に進める。
【0106】
S236において、検出部400は、S231からS235のステップで抽出された領域を細胞体の領域であると判断する。次に、検出部400は、S212のステップで用いられた輝度閾値とは異なる輝度閾値を用いて、当該輝度閾値を超えた領域を、凝集物の存在する領域、つまり、細胞体の内部に凝集物が存在する領域(「細胞体内凝集物領域」という場合がある。)であると判断して抽出するステップを行ってよい。具体的には、S212で用いた細胞体の領域を抽出する輝度閾値よりも、S236で用いる細胞体内凝集物領域を抽出する輝度閾値は、大きい値であってよい。上記の検出部400が行うS236のステップを、第2凝集物検出工程(ステップ)、つまり、細胞体の内部に存在する凝集物を検出するステップと呼んでよい。
【0107】
上記のS211からS236のステップを行うことで、検出部400は、細胞体の領域、および細胞体内凝集物領域を判断してよい(検出部400のこれらの判断を、それぞれ、「細胞領域識別工程」、および「凝集物検出工程」ということがある)。
【0108】
なお、上記の例では、検出部400が、輝度閾値およびサイズ閾値を超えた細胞領域を抽出しているが、検出部400は、輝度閾値だけを用いて、領域を抽出してよい。
【0109】
S250において、識別部350は、取得した複数の蛍光時系列画像に基づいて、
所定の輝度閾値およびサイズ閾値を超えた領域を神経突起の領域として抽出する。S250において、複数の画像に基づいて、輝度閾値およびサイズ閾値を超えた領域を神経突起の領域として抽出するステップは、
図7Aに示すように、S251からS255のステップを含む。なお、「抽出」のことを、「識別」という場合がある。
【0110】
図7Aは、フローにおけるS250を示す。まず、S251において、撮像装置制御部171が撮像した複数の画像のデータを識別部350に送信することにより、識別部350が複数の画像のデータを取得する。ここで、複数の画像は、タイムラプス撮像の蛍光時系列画像であってよい。なお、S251のステップの前にS211が行われた場合は、S251のステップを省略してよい。識別部350が複数の画像を取得した後で、識別部350は処理をS252に進める。
【0111】
次に、S252において、識別部350は、蛍光の輝度閾値により画像を2値化して、細胞領域を抽出する。輝度閾値は、観察者により指定されてよい。識別部350は、入力部180を介して、観察者により、輝度閾値に関する入力を受けてよい。または、輝度閾値は、識別部350が、取得した複数の画像に基づいて指定してもよい。識別部350が処理するS212の輝度閾値と、S252の輝度閾値とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。この場合、S212とS252の輝度閾値が同じである場合は、S252のステップを省略してもよい。
【0112】
例えば、
図7Bにおいて、画像251aは、撮像装置10が撮像した画像であるとする。蛍光の輝度を、グレーの濃淡で示す。このとき、識別部350は、輝度閾値以上の輝度を有する領域(細胞領域)だけを抽出する。具体的には、画像中の画素の輝度が輝度閾値を超えた場合は、当該画素に、あらかじめ定められた輝度(例えば、輝度1)を与え、画素の輝度が輝度閾値以下であった場合は、当該画素に輝度0を与えてよい。このようにして、画像252aのように、輝度を2値化した画像を取得することができる。識別部350が画像中の細胞領域を抽出した後で、識別部350は処理をS253に進める。
【0113】
次に、S253において、識別部350は2値化した画像において、神経突起以外の細胞領域(例えば、細胞体およびノイズ)を除去する。例えば、第一の除去方法としては、細胞体を除去することで神経突起以外の細胞領域を除去する。すなわち、神経突起の細胞領域のみを検出するには、輝度閾値150で2値化した画像から、細胞体画像(例えば、輝度閾値60、サイズ閾値10ピクセル)を除外することで、細胞体などの細胞領域を除去してよい。
【0114】
また、第二の除去方法として、2値化した画像において、神経突起以外の細胞領域を除去する方法は、特開2004-163201号公報に記載の方法により行われてよい。具体的には、識別部350は、S210で検出した細胞体の領域を抽出し、抽出された細胞体の領域をもとの2値化画像から除去し、細線化処理およびノイズ除去処理を経ることにより、神経突起の領域を抽出する。具体的には、画像から神経突起の領域のみを抽出する細胞突起抽出方法において、取得した画像に対して2値化処理を行って2値化画像を取得し、当該2値化画像をウェーブレット変換処理することにより得られた圧縮画像(DC成分)から細胞体の領域を抽出する。そして、抽出された細胞体の領域を2値化画像から除去して、主に線要素を含む画像を取得する。細胞体の領域が除去された画像に対して細線化処理を行って、線要素の線幅が1画素の細線化画像を得た後、ノイズ除去処理を行って神経突起の領域のみの画像を得てよい。
【0115】
ここで、細線化処理は、線要素の線幅が1画素の細線化画像を得る処理である。ノイズ除去処理は、ノイズに相当する小さな面積の領域を除去する処理である。識別部350が神経突起以外の領域を除去した後で、識別部350は処理をS254に進める。なお、S253のステップは省略してもよく、その場合は、識別部350はS252から直接S254に進めてよい。
【0116】
次に、S254において、識別部350は神経突起以外の細胞領域を除去した画像から、サイズ閾値を超えた領域を、神経細胞の神経突起の領域として抽出する。サイズ閾値は、画像中の細胞領域に外接する四角形の縦および/または横の長さで表されてよい。サイズ閾値は、画像中の領域に外接する四角形の縦または横の長さのうちの長いほうで表されてもよいし、短いほうで表されてもよい。サイズ閾値は、画像中の細胞領域に外接する四角形の面積の大きさで表されてもよい。サイズ閾値は、観察者により指定されてよい。この場合、識別部350は、入力部180を介して、観察者により、細胞領域のサイズ閾値に関する入力を受けてよい。または、サイズ閾値は、識別部350が、取得した複数の画像に基づいて指定してもよい。識別部350が処理するS214のサイズ閾値と、S254のサイズ閾値は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、外接する四角形以外に、外接する任意の多角形や外接円などの長さや面積でサイズ閾値を規定してもよい。
【0117】
なお、サイズ閾値は、下限値だけでなく、上限値を含んでもよい。サイズ閾値が上限値および下限値を有することにより、識別部350は、神経突起としては大きすぎるものや小さすぎるものを排除し、特定の大きさの範囲の細胞領域のみを神経突起として抽出できる。例えば、2つの神経細胞の神経突起が重なり合った場所は、解析に適さないとして、解析の対象から除去したい場合、サイズ閾値に上限を設けることによって、2つの神経細胞の神経突起が重なり合って大きくなった箇所を除去することができる。識別部350がサイズ閾値を超えた領域を抽出した後で、識別部350は処理をS255に進める。
【0118】
なお、突起識別の際に、識別部350は、画像内の位置によって異なる輝度閾値および/またはサイズ閾値を設定してもよい。例えば、ある時刻Tのラウンドで撮像された画像において、その直前の時刻T-1のラウンドで撮像された画像で抽出された領域に対応する位置では閾値Aを利用し、抽出された領域に対応しない位置では閾値Bを利用することができる。ここで、閾値Aは閾値Bよりも小さい値として設定されてよい。前の時刻で神経突起が存在していた場合は、後の時刻でも同じ位置に神経突起がある可能性が高いため、このように設定することで、その位置のみ検出の基準を緩めて、より低い輝度および/またはサイズを有する細胞領域も解析対象に含めることができる。
【0119】
次に、S255において、識別部350は、サイズ閾値を超えた領域を抽出した画像を記録部190に保存し、および/または、出力部160に出力してよい。また、識別部350は、サイズ閾値を超えた細胞領域を抽出した画像を対応付け部550、および解析部600に出力してよい。
【0120】
図7Cは、撮像画像から所定の領域(「ROI(Region оf interest)領域」という場合がある。)を指定して表示領域103に拡大表示された画面の一例である。識別部350は、S252および/またはS254において、取得した動画像ファイルを再生して、表示領域103に表示してよい。また、識別部350は、観察者が表示するROI領域を選択することを可能としてよい。
【0121】
適切な輝度閾値および/またはサイズ閾値が、観察者により入力部180を介して指定されてよい。輝度閾値および/またはサイズ閾値が観察者により指定されると、表示領域107は、指定された輝度閾値および/またはサイズ閾値を表示する。これらの閾値は、表示領域107の数字表記ボックスに、観察者が任意に数値を入力することで、変更することができてよい。次に、識別部350は、指定された輝度閾値および/またはサイズ閾値に基づいて、S252からS255の一連の処理を行い、処理した画像を表示領域103に表示してよい。表示領域103に表示された処理後の画像から、さらに新たな輝度閾値および/またはサイズ閾値が、観察者によって指定されてよい。所望の画像が得られるまで、輝度閾値および/またはサイズ閾値が何度でも観察者によって指定されてよい。
【0122】
なお、上記の例では、第1蛍光タンパク質に由来する蛍光に基づいて、神経突起の領域を特定する場合について記載したが、蛍光に加えて/代えて、位相差観察により得られた画像に基づいて、神経突起の領域を特定してもよい。
【0123】
識別部350が、サイズ閾値を超えた領域を抽出した画像を対応付け部550、および解析部600に出力した後で、識別部350は処理をS270に進める。
【0124】
次に、S270において、識別部350は、神経突起を追跡(トラッキング)する。S270において、神経突起を追跡するステップは、
図8Aに示すように、S271からS275のステップを含む。
【0125】
図8Aは、フローにおけるS270を示す。まず、S271において、識別部350は、複数の時系列画像について、前後のフレーム間の領域の追跡を行う。
【0126】
図8Bは、突起検出結果(S252からS255の一連の処理を行い、処理した画像)画像中の各連結領域について、前後フレーム間の領域の追跡を行う一例である。例えば、神経細胞の追跡処理に使う画像は、時刻Tのラウンドにおいて撮像した、時系列画像中の細胞領域を含む画像271aと、時刻Tの直後の時刻T+1のラウンドで撮像した、時系列画像中の細胞領域を含む画像271bであってよい。画像271aにおいて、細胞領域を2711とし、画像271bにおいて、細胞領域を領域2712、および領域2713とする。このとき、識別部350は、画像271aの領域2711の周囲に探索範囲2710aを設定し、画像271bに探索範囲2710aと対応する領域である探索範囲2710bを設定して、探索範囲2710bに細胞領域があるかどうかを探索してよい。ここで、探索領域2710aとしては、細胞領域2711に外接する四角形(例えば、長方形)を考え、縦および横の長さを端点からそれぞれ少しずつ(例えば、縦および横の長さの5%、10%、または20%など)大きくした四角形を探索領域と定めてよい。また、四角形以外に、任意の多角形や円などを探索領域として定めてもよい。
【0127】
例えば、識別部350は、画像271bの探索範囲2710bにおいて、細胞領域が複数ある場合(例えば、領域2712および領域2713)には、探索範囲2710b内で最も重なりが大きい領域(重なる面積が最大の領域)である領域2712を、同一の神経突起であると認識して追跡を行ってよい。識別部350が、前後のフレーム間の領域の追跡を全部または一部のフレームについて行った後で、識別部350は処理をS272に進める。
【0128】
次に、S272において、識別部350は、取得した時系列のフレーム間で、途中のフレームで神経突起が検出されていない場合の細胞領域の追跡を行う。
図8Bの例では、連続する2フレーム間の追跡を行う一例を示したが、追跡を行う前後のフレームは、連続する2フレームに限らず、あらかじめ定めた時間以内の離れた時点のフレームの間で追跡を行ってよい。識別部350は、S271およびS272の処理をすべてのラウンドについて実行する。例えば、識別部350は、最初のラウンド(つまり、Tが1)から、最後のラウンド(つまり、Tが撮像するラウンドの数であるN)まで上記の追跡を繰り返し実行する。
【0129】
例えば、神経細胞の撮像において、時刻Tのラウンドにおいて撮像した画像の細胞領域について探索領域を設定したが、時刻T+1のラウンドで撮像した画像中の探索領域に、対応する細胞領域がない場合があり得る。この場合、識別部350は、さらにその直後の時刻T+2のラウンドで撮像した画像で、時刻Tのラウンドで設定した探索領域に対応する領域の周囲に探索領域を設定して、細胞領域の追跡を行ってよい。つまり、時刻T+1のラウンドで撮像した画像中に、対応する細胞領域が検出できなかったとしても、その直後の時刻T+2のラウンドで撮像した画像中に、上記の探索領域を設定して探索して、細胞領域のうち、探索元の領域と最も重なりが大きい細胞領域(重なる面積が最大の領域)を、同一の神経突起であると認識して追跡を行ってよい。識別部350が、途中のフレームで神経突起が検出されていない場合の細胞領域の追跡を行った後で、識別部350は処理をS2720に進める。S272による神経突起ごとの追跡の結果を以下では「追跡結果」ともいう。なお、上記の例では、時刻Tのラウンドにおいて検出された細胞領域と、時刻T+2のラウンドで撮像した画像中の細胞領域とを追跡する例について記載したが、時刻T+2のラウンドに限らず、例えば、時刻T+3、または時刻T+4などのラウンドで撮像した画像中の細胞領域を時刻Tのラウンドにおいて検出された細胞領域と追跡してもよい。
【0130】
次に、S2720において、識別部350は、神経突起の追跡を開始した時刻、および追跡を終了した時刻を検出する。例えば、識別部350は、神経突起の追跡結果ごとに、それぞれの神経突起の追跡を開始した時刻、および追跡終了時刻を解析部600に出力し、記録部190に保存し、および/または、出力部160に出力してよい。ここで、神経突起の追跡開始時刻は、撮像した画像において神経突起が最初に閾値を超えた輝度の蛍光を発したフレームの時刻であってよく、追跡の終了時刻は、撮像した画像において神経突起の輝度が、閾値以下となった時のフレームの時刻であってよい。識別部350が神経突起の追跡の開始および終了時刻を検出した後で、識別部は処理をS273に進める。
【0131】
次に、S273において、検出部400は、距離閾値よりも近接する複数の神経突起の領域を1つの神経突起の領域として認識する。
【0132】
図8Cは、距離閾値よりも近接する複数の神経突起の領域を1つの神経突起の領域として認識する一例である。時刻Tのラウンドにおいて撮像した画像273a、時刻Tの直後の時刻T+1のラウンドで撮像した画像を273bとする。画像273aにおいて、細胞領域を領域2731とし、画像273bにおいて、細胞領域を領域2732、および領域2733とする。
図8Cのように、領域2731と、領域2732および領域2733は、同一の神経突起に凝集する第1蛍光タンパク質由来の蛍光を撮像したものであると考えられる。しかし、撮像の条件などにより、時刻T+1のラウンドで撮像した画像273bにおいて、神経突起部分が領域2732および領域2733に途切れてしまっている。
【0133】
このような場合、領域2732および領域2733が途切れてしまっていても、領域2732および領域2733の間の距離(例えば、領域2732の領域2733に近い側の端点と、領域2733の領域2732に近い側の端点との距離)があらかじめ定めた距離閾値よりも近接していれば、検出部400は、これらの領域(領域2732および領域2733)に含まれる神経突起を同一の神経突起として認識し、当該神経突起の追跡結果に後述する同一の突起IDを採番してよい。S273のステップを行うことで、より正確に神経突起を特定し、追跡することができる。なお、距離閾値は、適切な値が観察者により入力部180を介して指定されてよいし、識別部350が取得した複数の画像に基づいて指定してもよい。また、距離閾値は、S232の距離閾値と同じであってもよいし、異なる値であってもよい。
【0134】
また、距離閾値に加えて/代えて、検出部400は細胞領域内に含まれる神経突起の直線または接線の方向を指標にして、複数の領域に含まれる神経突起を同一の神経突起として認識してもよい。例えば、
図8Cの画像273bにおいて、領域2732の領域2733に近い側の端点における接線と、領域2733の領域2732に近い側の端点における接線とが一致、あるいは同一の傾きを有していれば、検出部400は、これらの領域2732および領域2733に含まれる神経突起を同一の神経突起として認識してもよい。検出部400が、距離閾値よりも近接する複数の神経突起の領域を1つの神経突起の領域であると認識した後で、検出部400は処理をS274に進める。
【0135】
次に、S274において、検出部400は、S272の追跡の結果、閾値以下の生存時間であることが判明した神経突起の追跡結果を削除する。検出部400が追跡を行った細胞領域の中にある神経突起で、閾値以下の生存時間の神経突起を有する神経細胞である場合は、検出部400は当該神経突起の追跡結果を削除する。ここで、生存時間とは、神経突起の追跡を開始した時刻、および追跡を終了した時刻の間の時間であってよい。
【0136】
例えば、
図7Cの画面において、検出部400は、出力部160に生存時間の閾値を入力させるための表示領域107を表示し、生存時間の閾値を入力するよう観察者に要求してよい。適切な生存時間の閾値が、観察者により入力部180を介して指定されてよい。検出部400は、指定された生存時間の閾値に基づいて、閾値以下の生存時間を有する神経突起の追跡結果を削除してよい。検出部400が、閾値以下の生存時間を有する神経突起の追跡結果を削除した後で、検出部400は処理をS275に進める。
【0137】
次に、S275において、検出部400は、S255で取得した画像において、神経突起の追跡結果にIDを採番して出力する。検出部400は、取得した時系列のフレーム間で追跡を行った神経突起のそれぞれの追跡結果に、一意のID(神経突起ID)を採番する。つまり、同じ神経突起IDを採番された神経突起は、同一の神経突起を表している。
【0138】
例えば、
図8Bにおいて、検出部400は、領域2711およびS2712は同一の神経突起を有する領域であるとして、同一の神経突起IDを採番してよい。検出部400は、神経突起IDを画像とともに対応付け部550に出力する。また、検出部400は、神経突起IDを記録部190に保存し、および/または、出力部160に出力してよい。
【0139】
上記のS251からS275の全部または一部のステップを行い、後述する神経突起と細胞体との対応付けを行うことで、輝度閾値およびサイズ閾値を超えた神経突起を有する細胞は、検出部400によって、神経突起の内部に凝集物が存在する神経細胞であると判断されてよい。この場合、検出部400は、神経突起を抽出した細胞領域が、凝集物が存在する領域であると判断している。なお、上記の例では、検出部400が、輝度閾値およびサイズ閾値を超えた細胞領域を抽出しているが、検出部400は、輝度閾値だけを用いて、細胞領域を抽出してよい。このようにして、検出部400は、神経突起の内部に存在する凝集物の有無を検出することができる。上記の検出部400が行うS273からS275のステップを、第1凝集物検出工程(ステップ)、つまり、神経突起の内部に存在する凝集物を検出するステップと呼んでよい。なお、「第1凝集物検出工程」および「第2凝集物検出工程」を、単に、「凝集物検出工程」という場合がある。
【0140】
また、上記の例では、輝度閾値を設定して細胞体の内部に存在する凝集物(細胞体内凝集物)および神経突起の内部に存在する凝集物(神経突起内凝集物)の有無を判断する場合について記載したが、輝度閾値には、輝度の平均値(m)および/または分散値(σ)を含んでよい。例えば、検出部400が、時系列の各画像において、細胞体の領域および/または神経突起の領域の輝度の平均値(m)および分散値(σ)を算出し、m+σ、m+2σ、またはm+3σ以上の輝度を有する領域を、凝集物が存在する領域であると判断してもよい。
【0141】
また、上記の例では、神経細胞に蛍光タンパク質として第1蛍光タンパク質のみを発現させた場合について説明したが、例えば、第1蛍光タンパク質に加えて、神経細胞にさらに第1蛍光タンパク質とは異なる第2蛍光タンパク質を発現させて、第1蛍光タンパク質に加えて第2蛍光タンパク質に対してもS200からS275までの全部または一部のステップを行ってよい。ここで、第2蛍光タンパク質は、神経細胞内(神経突起および/または細胞体)で凝集性を示すタンパク質に蛍光タグを付加したものであってよいし、神経細胞内で凝集性を示さないタンパク質であってもよい。第2蛍光タンパク質の蛍光タグは、第1蛍光タンパク質の蛍光タグと、互いに蛍光の波長(色調)が異なるものが、観察や解析の都合上好ましい。例えば、第1蛍光タンパク質の蛍光タグがGFP(緑色)の場合、第2蛍光タンパク質の蛍光タグはRFP(赤色)であってよい。
【0142】
例えば、第2蛍光タンパク質は、GFPまたはRFPのような、蛍光タグタンパク質そのものであってもよい。GFPやRFPそのものは、神経細胞に導入されると、細胞体および神経突起に普遍的に発現することが知られている。そのため、第2蛍光タンパク質として、GFPやRFPといった蛍光タグタンパク質そのものを神経細胞に発現させることで、例えば蛍光タグタンパク質が発する蛍光輝度が輝度閾値未満の状態が、あらかじめ定めた時間以上継続する場合に、当該神経細胞が死んだことを容易に判断できる。
【0143】
例えば、第2蛍光タンパク質は、神経細胞の軸索に局在するマーカータンパク質、または樹状突起に局在するマーカータンパク質に蛍光タグを付加したものであってよい。「局在」は、「凝集」に含まれる概念であってよい。神経細胞の培養においては、多数の神経細胞の神経突起が重なり合うため、軸索と樹状突起とを区別して観察することが難しい。そのため、上記の例では、軸索および樹状突起を区別せずに、神経突起として扱っていた。そこで、神経細胞内で凝集性を示す第1蛍光タンパク質に加えて、軸索マーカータンパク質、または樹状突起マーカータンパク質に蛍光タグを付加した第2蛍光タンパク質を発現することによって、神経突起内凝集物が軸索の内部に存在するのか、あるいは樹状突起の内部に存在するのかが明確に判断できる。例えば、軸索のマーカータンパク質として、シナプシン1タンパク質やシナプトフィジンタンパク質などが、樹状突起のマーカータンパク質として、PSD-95タンパク質などが挙げられる。第1蛍光タンパク質に加えて、第2蛍光タンパク質についても、以下のS290およびS310のステップを行ってよい。
【0144】
S290において、対応付け部550は、識別部350から取得した神経突起IDおよび細胞体ID、ならびに複数の画像に基づいて、神経突起および細胞体の対応付けを特定する。
【0145】
図9は、S290で、神経細胞の解析装置の出力部160に表示される画面の一例である。対応付け部550は、
図9に示す画面を出力部160に出力してよい。表示領域103aには細胞体IDが採番された画像が、表示領域103bには神経突起IDが採番された画像が表示されている。ここで、表示領域103aに表示される画像、および表示領域103bに表示される画像は、撮像装置制御部171から送られたS206で取得された画像であってよいし、S215およびS255のステップでそれぞれ出力された画像であってもよい。
【0146】
表示領域108には、細胞体IDと神経突起IDとの対応付けの候補がいくつか表示されている。対応付け部550は細胞体ID「1293」と神経突起ID「40」とを対応付け、また細胞体ID「1294」と神経突起ID「103」とを対応付けの候補として判断している。細胞体IDと神経突起IDとの対応付けの候補は、対応付け部550が細胞体の領域および神経突起の領域との距離に基づいて抽出し、対応付け部550は対応関係にある確率が高いものから順番に表示領域108に表示してよい。例えば、対応付け部550は、細胞体の領域および神経突起の領域との距離が近いものほど、対応関係にある確率が高いと判断してよい。また、細胞体の領域および神経突起の領域との距離に加えて/代えて、対応付け部550は、神経突起の領域にある神経突起の端点における接線の延長方向にある細胞体の領域を、対応関係にある確率が高いものとして判断してよい。
【0147】
上記の細胞体IDと神経突起IDとの対応付けの候補の中から、適切な対応付けが、観察者によって選択されてよい。観察者は表示された画面を見た結果から、入力部180を介して、適切な対応付けを選択すべく、
図9の「削除」ボタンおよび「追加」ボタンにより、不適切な対応付けの候補を削除し、適切と考えられる対応付けを追加してよい。適切な対応付けは、対応付け部550のみにより行われてよいし、観察者の指定のみにより行われてもよい。
【0148】
また、解析部600は、神経細胞のうち、細胞体IDと神経突起IDとの対応付けが可能な細胞群であって、細胞体内部に凝集物が存在する細胞群を、「細胞体内凝集物および神経突起内凝集物が存在する細胞群」に分類してよい。解析部600は、神経細胞のうち、細胞体IDは採番されているが、対応する神経突起IDが採番されていない細胞群であって、細胞体内部に凝集物が存在する細胞群を、「細胞体内凝集物が存在するが、神経突起内凝集物は存在しない細胞群」に分類してよい。解析部600は、神経細胞のうち、細胞体IDと神経突起IDとの対応付けが可能な細胞群であって、細胞体内部に凝集物が存在しない細胞群を、「神経突起内凝集物が存在するが、細胞体内凝集物は存在しない細胞群」に分類してよい。解析部600は、神経細胞のうち、細胞体IDは採番されているが、対応する神経突起IDが採番されていない細胞群であって、細胞体内部に凝集物が存在しない細胞群を、「細胞体内凝集物および神経突起内凝集物が存在しない細胞群」に分類してよい。解析部600は上記4つの分類分けを行い、以下に説明する各種の解析を行う。
【0149】
対応付け部550により細胞体IDと突起IDとの適切な対応付けが行われた後で、解析部600は上述の通り4つの分類を実施し、処理をS310に進める。
【0150】
次に、S310において、解析部600は、対応付け部550から細胞体IDと神経突起IDとの対応付けを取得し、対応付けがされた神経細胞の生存時間を解析する。例えば、解析部600は、神経突起内凝集物を有する神経細胞と、神経突起内凝集物を有さない神経細胞とで、生死の割合および/または生存時間をそれぞれ解析して算出してよい。ここで、細胞の生死については、神経突起または細胞体の輝度が、輝度閾値未満の場合に、前記神経細胞が死であると定義してよい。なお、このS310のステップを、「解析工程」ということがある。
【0151】
例えば、解析部600は、「細胞体内凝集物が存在するが、神経突起内凝集物が存在しない細胞群」に分類した細胞群について、撮像したフレームの途中で細胞体が検出されなくなった状態、つまり、S2320において追跡終了時刻が記録された場合に、当該細胞体を有する細胞が死んだと判断してよい。また、識別部350は、画像において細胞体が最後のフレームまで閾値を超えた輝度の蛍光を発した場合、つまり、S2320において追跡終了時刻が記録されない場合に、当該細胞体を有する細胞を、生きていると判断してよい。
【0152】
例えば、神経細胞の生死の割合や生存時間の算出は次の通り実施してよい。解析部600は、生きていると判断した細胞体IDの数と、死んだと判断した細胞体IDの数を計算し、生きていると判断した細胞体IDの数を、生きていると判断した細胞体IDの数と死んだと判断した細胞体IDの数の和で割った値を、生死の割合として算出してよい。また、解析部600は、細胞体が連続して検出されるフレームの、一番前の時刻と一番後との時刻との時間を、生存時間として算出してよい。
【0153】
例えば、解析部600は、「神経突起内凝集物が存在するが、細胞体内凝集物が存在しない細胞群」に分類した細胞群について、神経突起内凝集物が存在する神経突起IDに対応する細胞体IDを有する細胞体の領域について、S2320において追跡終了時刻が記録されたか否かに基づいて、神経突起内凝集物が存在する細胞群の生死を判断してよい。これに代えて、解析部600は、神経細胞に第2蛍光タンパク質を発現させた場合、神経突起内凝集物が存在する細胞群について、第2蛍光タンパク質の発する蛍光輝度を指標にして、神経突起内凝集物が存在する細胞群の生死を判断してよい。一例として、第2蛍光タンパク質の発する輝度が輝度閾値未満の状態が、撮像終了時まで継続する場合に、当該神経突起内凝集物が存在する細胞群が死んだと判断してよい。
【0154】
解析部600は、「細胞体内凝集物および神経突起内凝集物が存在する細胞群」に分類した細胞群の生死については、上記の、細胞体内凝集物が存在するが、神経突起内凝集物が存在しない細胞群についての判断と同様の判断を行ってもよいし、神経突起内凝集物が存在するが、細胞体内凝集物が存在しない細胞群についての判断と同様の判断を行ってもよい。解析部600は、撮像したフレームの途中で細胞体が検出されなくなった時刻(つまり細胞体の追跡終了時刻)に、当該細胞体を有する細胞が死んだと判断してもよい。細胞体が検出されなくなった時刻と、神経突起が検出されなくなった時刻とが異なる場合は、解析部600は、より早い時刻を、細胞が死んだ時刻であると判断してもよいし、より遅い時刻を、細胞が死んだ時刻であると判断してもよい。
【0155】
解析部600は、「細胞体内凝集物および神経突起内凝集物が存在しない細胞群」に分類した細胞群について、他の群と同様に、撮像したフレームの途中で細胞体が検出されなくなった状態、つまり、S2320において追跡終了時刻が記録された場合に、当該細胞体を有する細胞が死んだと判断してよい。
【0156】
例えば、解析部600は、細胞体内凝集物を有する神経細胞と、細胞体内凝集物を有さない神経細胞とで、生死の割合および/または生存時間をそれぞれ解析して算出してよい。例えば、解析部600は、上述した「神経突起内凝集物の有無、および細胞体内凝集物の有無で分けた4つの細胞群」について、生死の割合および/または生存時間をそれぞれ解析して算出してよい。
【0157】
これらの解析条件は、あらかじめ解析部600に設定されていてもよく、その場合は
図9の表示領域108で、解析部600が観察者に入力部180を介して指定できるように、出力部160に出力してよい。例えば、
図9の表示領域108で、観察者により条件1が選択されると、解析部600は入力を受けて、神経突起内凝集物が存在する神経細胞と、神経突起内凝集物が存在しない神経細胞とで、生存時間をそれぞれ解析して算出してよい。例えば、
図9の表示領域108で、観察者により条件2が選択されると、解析部600は入力を受けて、神経突起内凝集物の有無、および細胞体内凝集物の有無で分けた4つの細胞群について、生存時間をそれぞれ解析して算出してよい。
【0158】
図10Aは、S310で、出力部160に表示される画面の一例である。解析部600は、解析の結果を表示領域103に表示してよい。例えば、観察者によって表示領域109の「神経突起内凝集物表示」が選択された場合、解析部600は、時系列の蛍光画像または位相差画像に、神経突起内凝集物をマスキングしたものを重ね合わせた画像を、表示領域103に表示してよい。例えば、観察者によって表示領域109の「細胞体内凝集物表示」が選択された場合、解析部600は、時系列の蛍光画像または位相差画像に、細胞体内凝集物をマスキングしたものを重ね合わせた画像を、表示領域103に表示してよい。
【0159】
また、観察者によって表示領域109の「細胞選択」が選択された場合、解析部600は選択された細胞の周辺のみの画像または動画像や、選択された細胞の解析データを、表示領域103に表示してよい。例えば、細胞の解析データは、細胞体にある凝集物の細胞体に占める面積の割合、神経突起内凝集物の面積、または神経突起内凝集物が存在する時間などのデータであってよい。ここで、神経突起内凝集物の面積は、神経突起内凝集物が存在する領域に含まれるすべての画素の総和であってよく、面積は平方ピクセル、または平方マイクロメートルに換算した値で表してよい。
【0160】
例えば、観察者によって、表示領域109の「神経突起内凝集物存続グラフ表示」が選択された場合、解析部600は、時系列画像において、神経突起内凝集物がいつ出現し、いつ消滅したかを、それぞれの神経突起IDについてグラフ化して、表示領域103に表示してよい。
【0161】
図10Bは、出力部160に表示される、神経突起内凝集物存続グラフの一例である。
図10Bの神経突起内凝集物存続グラフ103aにおいて、縦軸は神経突起IDを、横軸は、それぞれの神経突起IDの領域において、神経突起内凝集物が存在する時間を、タイムラプス撮像のフレーム番号で表したものである。グラフの左右方向にのびた直線で、神経突起内凝集物が存在した時間を表示している。ここで、グラフの直線の左端は、神経突起内凝集物が初めて検出された時刻であってよく、グラフの直線の右端は、神経突起内凝集物が検出されなくなった時刻、または、細胞が死んだと判断された時刻であってよい。例えば、グラフ中の直線が観察者によってクリックされると、解析部600は当該神経突起IDに対応する神経突起内凝集物が存在するフレームの動画像を出力部160に表示してよい。また、グラフ中の直線が観察者によってクリックされると、解析部600は、当該神経突起IDに対応する細胞体IDの細胞体内凝集物の存続グラフを並べて表示してよい。さらに、解析部600は、細胞群を細胞体内凝集物の有無で場合分けして、それぞれの細胞群において神経突起内凝集物存続グラフを表示してよい。
【0162】
また、観察者によって、表示領域109の「細胞生存率グラフ」が選択された場合、解析部600は、時系列画像において、神経細胞の時刻ごとの生存率を算出し、グラフ化して、表示領域103に表示してよい。
【0163】
図10Cは、神経細胞の解析装置1の出力部160に表示される、細胞生存率グラフの一例である。
図10Cの細胞生存率グラフ103bにおいて、横軸は時刻を、縦軸は生存率を表し、開始時刻における細胞群の生存率を100%に換算して表している。例えば、曲線103cは、細胞体内凝集物が存在するが、神経突起内凝集物は存在しない細胞群の生存率曲線であってよく、曲線103dは、神経突起内凝集物が存在するが、細胞体内凝集物は存在しない細胞群の生存率曲線であってよく、曲線103eは、細胞体内凝集物および神経突起内凝集物の両方が存在する細胞群の生存率曲線であってよい。解析部600は、分類した細胞群のそれぞれについて、撮像したフレームごとに、どれだけの数の細胞が生存しているかをカウントし、それぞれのフレームごとに、最初のフレームでカウントした生存している細胞の数で割った値を算出することで、生存率曲線を算出することができる。
【0164】
図10Cにおいて、解析部600は、複数のグラフの交点の座標、つまり、細胞群の生存率が逆転する時刻および当該時刻での生存率を出力部160に表示してよい。また、
図10Cにおいて、解析部600は、曲線のある時刻における傾きが大きく変化する点の座標を出力部160に表示してよい。ある時刻において、傾きの勾配が急に大きくなる時刻は、多数の細胞が一気に死ぬ時刻を表している。また、傾きの勾配が水平になる時刻は、細胞の生存率が一定になる時刻を表している。これらの点の座標を解析部600が出力部160に表示することで、神経細胞の動態解析を行うことが容易になる。
【0165】
なお、
図10Cは、神経突起内凝集物の有無、および細胞体内凝集物の有無で分けた細胞群についての生存率曲線の例について記載したが、細胞群のグループ分けはこれに限らない。例えば、解析部600は、撮像開始時点から凝集物が存在する細胞群と、撮像時間の途中から凝集物が出現する細胞群と、撮像時間内に凝集物が存在しなかった細胞群とでグループ分けして、これらの細胞群の生存率曲線をそれぞれ出力部160に表示してよい。
【0166】
また、例えば、解析部600は、相対的に凝集物の多い(または、細胞領域が多い)細胞群と、相対的に凝集物の少ない(または、細胞領域が少ない)細胞群とでグループ分けをして、これらの細胞群の生存率曲線をそれぞれ出力部160に表示してよい。また、例えば、解析部600は、神経突起の細胞体に近い側に凝集物のある細胞群と、神経突起の末端に近い側に凝集物のある細胞群とでグループ分けをして、これらの細胞群の生存率曲線をそれぞれ出力部160に表示してよい。
【0167】
上記に挙げた以外にも、解析部600は、神経突起内凝集物の挙動をタイムラプス画像として出力部160に表示してよい。例えば、α-シヌクレインタンパク質は、生理的な状態では軸索の末端に局在することが知られている。α-シヌクレインタンパク質の凝集物が、神経突起内で、末端側から細胞体側へ移動する様子や、いつ移動を開始するかなどを解析部600が出力部160に表示することで、神経細胞の動態解析を行うことが容易になる。
【0168】
このように、本発明の神経細胞の解析装置1を用いることで、例えば、神経細胞にさまざまな薬物の候補(例えば、化合物、タンパク質やその変異タンパク質、またはこれらの低分子干渉RNA(siRNA)など)を投与した後に、神経突起および/または細胞体の内部に凝集物が形成されるか、凝集物が移動するか、神経細胞の生存率に変化があるかどうかを容易に解析することができる。
【0169】
次に、本実施形態の変形例を示す。以下に示す変形例どうしを複数組み合わせて、神経細胞を解析してよい。
【0170】
[第一変形例]
図11は、神経突起の領域における凝集物を判断する変形例である。
図8Aなどで説明した本実施形態では、検出部400は、輝度閾値およびサイズ閾値を超えた領域を抽出して神経突起の領域と認識(識別)し、さらに当該領域を、神経突起内に凝集物が存在する領域(「神経突起内凝集物領域」という場合がある。)であると判断している。第一変形例では、検出部400がS275の後、S290に処理を進める前に、S280へと処理を進める。
【0171】
S280において、検出部400は、S271からS275のステップで抽出した細胞領域を、神経突起の領域と認識する。次に、識別部350は、S252のステップで用いた輝度閾値とは異なる輝度閾値を用いて、当該輝度閾値を超えた領域を、神経突起内凝集物領域であると判断して抽出してよい。具体的には、S252で用いた神経突起の領域を抽出する輝度閾値よりも、S280で用いる神経突起内凝集物領域を抽出する輝度閾値は、大きい値であってよい。S280のステップの後で、検出部400は処理をS281に進める。
【0172】
S281において、検出部400は、S275で採番した神経突起IDに、神経突起内凝集物領域が存在するかどうかの情報を追加する。具体的には、検出部400は、S280で抽出した凝集物が存在する神経突起の神経突起IDに対して、神経突起内凝集物領域が存在する旨の情報を追加する。検出部400は、神経突起内凝集物領域が存在する旨の情報を追加した神経突起IDを解析部600に出力してよい。このように、S252で用いた神経突起の領域を抽出する輝度閾値とは異なる輝度閾値を用いて神経突起内凝集物領域を特定することで、各フレームでの神経突起の領域内での凝集物が存在する位置(例えば、凝集物が神経突起の細胞体側にあるか、あるいは末端側にあるかなど)を解析することができるため、よりきめ細やかな解析を行うことができる。
【0173】
[第二変形例]
本実施形態では、識別部350は、細胞体を抽出した領域のうち、さらにより大きな輝度を有する領域を、凝集物が存在する領域(細胞体内凝集物領域)であると判断していた。第二変形例では、識別部350は、細胞領域をあらかじめ定めた割合(例えば、細胞体全体の面積に占める細胞領域の面積の割合など)で有する細胞を、細胞体内凝集物領域を有する細胞であると判断してよい。ここで、「神経突起内凝集物領域」および「細胞体内凝集物領域」を、単に、「凝集物領域」という場合がある。
【0174】
具体的には、検出部400がS235のステップを終えた後で、検出部400は、細胞体の領域および細胞領域の面積をそれぞれ算出する。ここで、細胞体全体の面積、および細胞領域の面積は、細胞体を抽出した領域に含まれるすべての画素の総和、および細胞領域に含まれるすべての画素の総和であってよく、面積は平方ピクセル、または平方マイクロメートルに換算した値で表してよい。次に、検出部400は、細胞領域の面積を細胞体の領域の面積で割った値を算出してよい。検出部400は、細胞体全体の面積に占める細胞領域の面積の割合を、あらかじめ定めた値以上で有する細胞を、細胞体内凝集物領域を有する細胞であると判断してよい。あらかじめ定めた値は、3%でもよいし、5%でもよいし、10%でもよいが、これらに限らない。
【0175】
また、上記で、神経細胞にさらに第2蛍光タンパク質を発現させた場合には、検出部400は、第2蛍光タンパク質が閾値以上の輝度を有する領域を、細胞体の領域と判断して、細胞体の領域の面積を算出してもよい。次に、上記のように細胞領域の面積を算出した後で、細胞領域の面積を細胞体の領域の面積で割った値を算出してよい。
【0176】
図12は、演算装置170として機能するコンピュータ1900のハードウェア構成の一例を示す。本実施形態に係るコンピュータ1900は、ホスト・コントローラ2082により相互に接続されるCPU2000、RAM2020、グラフィック・コントローラ2075、および表示装置2080を有するCPU周辺部と、入出力コントローラ2084によりホスト・コントローラ2082に接続される通信インターフェイス2030、ハードディスクドライブ2040、およびCD-ROMドライブ2060を有する入出力部と、入出力コントローラ2084に接続されるROM2010、フレキシブルディスク・ドライブ2050、および入出力チップ2070を有するレガシー入出力部を備える。
【0177】
ホスト・コントローラ2082は、RAM2020と、高い転送レートでRAM2020をアクセスするCPU2000およびグラフィック・コントローラ2075とを接続する。CPU2000は、ROM2010およびRAM2020に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。グラフィック・コントローラ2075は、CPU2000等がRAM2020内に設けたフレーム・バッファ上に生成する画像データを取得し、表示装置2080上に表示させる。これに代えて、グラフィック・コントローラ2075は、CPU2000等が生成する画像データを格納するフレーム・バッファを、内部に含んでもよい。表示装置2080には、演算装置170の内部で生成される様々な情報(例えば、動画像、解析結果など)を、表示することができる。
【0178】
入出力コントローラ2084は、ホスト・コントローラ2082と、比較的高速な入出力装置である通信インターフェイス2030、ハードディスクドライブ2040、CD-ROMドライブ2060を接続する。通信インターフェイス2030は、有線または無線によりネットワークを介して他の装置と通信する。また、通信インターフェイスは、通信を行うハードウェアとして機能する。ハードディスクドライブ2040は、コンピュータ1900内のCPU2000が使用するプログラムおよびデータを格納する。CD-ROMドライブ2060は、CD-ROM2095からプログラムまたはデータを読み取り、RAM2020を介してハードディスクドライブ2040に提供する。
【0179】
また、入出力コントローラ2084には、ROM2010と、フレキシブルディスク・ドライブ2050、および入出力チップ2070の比較的低速な入出力装置とが接続される。ROM2010は、コンピュータ1900が起動時に実行するブート・プログラム、および/または、コンピュータ1900のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。フレキシブルディスク・ドライブ2050は、フレキシブルディスク2090からプログラムまたはデータを読み取り、RAM2020を介してハードディスクドライブ2040に提供する。入出力チップ2070は、フレキシブルディスク・ドライブ2050を入出力コントローラ2084へと接続するとともに、例えばパラレル・ポート、シリアル・ポート、キーボード・ポート、マウス・ポート等を介して各種の入出力装置を入出力コントローラ2084へと接続する。
【0180】
RAM2020を介してハードディスクドライブ2040に提供されるプログラムは、フレキシブルディスク2090、CD-ROM2095、またはICカード等の記録媒体に格納されて利用者によって提供される。プログラムは、記録媒体から読み出され、RAM2020を介してコンピュータ1900内のハードディスクドライブ2040にインストールされ、CPU2000において実行される。
【0181】
コンピュータ1900にインストールされ、コンピュータ1900を演算装置170として機能させるプログラムは、撮像装置制御モジュールと、検出モジュールと、対応付けモジュールと、解析モジュールとを備える。これらのプログラムまたはモジュールは、CPU2000等に働きかけて、コンピュータ1900を、撮像装置制御部171、記録部190、識別部350、検出部400、対応付け部550、解析部600としてそれぞれ機能させてよい。
【0182】
これらのプログラムに記述された情報処理は、コンピュータ1900に読込まれることにより、ソフトウェアと上述した各種のハードウェア資源とが協働した具体的手段である撮像装置制御部171、記録部190、識別部350、検出部400、対応付け部550、解析部600として機能する。そして、これらの具体的手段によって、本実施形態におけるコンピュータ1900の使用目的に応じた情報の演算または加工を実現することにより、使用目的に応じた特有の演算装置170が構築される。
【0183】
一例として、コンピュータ1900と外部の装置等との間で通信を行う場合には、CPU2000は、RAM2020上にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理内容に基づいて、通信インターフェイス2030に対して通信処理を指示する。通信インターフェイス2030は、CPU2000の制御を受けて、RAM2020、ハードディスクドライブ2040、フレキシブルディスク2090、またはCD-ROM2095等の記憶装置上に設けた送信バッファ領域等に記憶された送信データを読み出してネットワークへと送信し、もしくは、ネットワークから受信した受信データを記憶装置上に設けた受信バッファ領域等へと書き込む。このように、通信インターフェイス2030は、DMA(ダイレクト・メモリ・アクセス)方式により記憶装置との間で送受信データを転送してもよく、これに代えて、CPU2000が転送元の記憶装置または通信インターフェイス2030からデータを読み出し、転送先の通信インターフェイス2030または記憶装置へとデータを書き込むことにより送受信データを転送してもよい。
【0184】
また、CPU2000は、ハードディスクドライブ2040、CD-ROMドライブ2060(CD-ROM2095)、フレキシブルディスク・ドライブ2050(フレキシブルディスク2090)等の外部記憶装置に格納されたファイルまたはデータベース等の中から、全部または必要な部分をDMA転送等によりRAM2020へと読み込ませ、RAM2020上のデータに対して各種の処理を行う。そして、CPU2000は、処理を終えたデータを、DMA転送等により外部記憶装置へと書き戻す。このような処理において、RAM2020は、外部記憶装置の内容を一時的に保持するものとみなせるから、本実施形態においてはRAM2020および外部記憶装置等をメモリ、記録部、または記憶装置等と総称する。
【0185】
ここで、記憶装置等は、演算装置170の情報処理に必要な情報、例えば、動画像データなどを必要に応じて記憶し、演算装置170の各コンポーネントに必要に応じて供給する。
【0186】
本実施形態における各種のプログラム、データ、テーブル、データベース等の各種の情報は、このような記憶装置上に格納されて、情報処理の対象となる。なお、CPU2000は、RAM2020の一部をキャッシュメモリに保持し、キャッシュメモリ上で読み書きを行うこともできる。このような形態においても、キャッシュメモリはRAM2020の機能の一部を担うから、本実施形態においては、区別して示す場合を除き、キャッシュメモリもRAM2020、メモリ、および/または記憶装置に含まれるものとする。
【0187】
また、CPU2000は、RAM2020から読み出したデータに対して、プログラムの命令列により指定された、本実施形態中に記載した各種の演算、情報の加工、条件判断、情報の検索・置換等を含む各種の処理を行い、RAM2020へと書き戻す。例えば、CPU2000は、条件判断を行う場合においては、本実施形態において示した各種の変数が、他の変数または定数と比較して、大きい、小さい、以上、以下、等しい等の条件を満たすか否かを判断し、条件が成立した場合(または不成立であった場合)に、異なる命令列へと分岐し、またはサブルーチンを呼び出す。
【0188】
また、CPU2000は、記憶装置内のファイルまたはデータベース等に格納された情報を検索することができる。例えば、第1属性の属性値に対し第2属性の属性値がそれぞれ対応付けられた複数のエントリが記憶装置に格納されている場合において、CPU2000は、記憶装置に格納されている複数のエントリの中から第1属性の属性値が指定された条件と一致するエントリを検索し、そのエントリに格納されている第2属性の属性値を読み出すことにより、所定の条件を満たす第1属性に対応付けられた第2属性の属性値を得ることができる。
【0189】
以上に示したプログラムまたはモジュールは、外部の記録媒体に格納されてもよい。記録媒体としては、フレキシブルディスク2090、CD-ROM2095の他に、DVDまたはCD等の光学記録媒体、MO等の光磁気記録媒体、テープ媒体、ICカード等の半導体メモリ等を用いることができる。また、専用通信ネットワークまたはインターネットに接続されたサーバシステムに設けたハードディスクまたはRAM等の記憶装置を記録媒体として使用し、ネットワークを介してプログラムをコンピュータ1900に提供してもよい。
【0190】
本開示において、演算装置170が、プロセッサとしてCPU2000を有する構成を示したがプロセッサの種類は特に限定されない。例えば、プロセッサとして、GPU、ASIA,FPGA等を適宜使用することができる。また、本開示において、演算装置170が、補助記憶装置としてハードディスクドライブ2040を有する構成を示したが、補助記憶装置の種類は特に限定されない。例えば、ハードディスクドライブ2040に代えて、または、ハードディスクドライブ2040とともに、ソリッドステートドライブ等の他の記憶装置を用いてもよい。
【0191】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。
【0192】
請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先だって」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0193】
1 神経細胞の解析装置
7 光ファイバ
10 撮像装置
20 培養容器
23 ステージ
27 対物レンズ部
34 蛍光フィルタ部
38 結像レンズ部
40 透過照明部
41 コレクタレンズ
44 フィールドレンズ
45 偏光ミラー
47 透過照明用光源
50 タイムライン
52 停止ボタン
53 早戻しボタン
54 再生ボタン
55 早送りボタン
60 スラーダーバー
70 励起用光源
100 チャンバ
103 表示領域
104 表示領域
105 再生コントロール部
107 表示領域
108 表示領域
109 表示領域
150 顕微鏡部
160 出力部
170 演算装置
171 撮像装置制御部
180 入力部
190 記録部
300 カメラ
350 識別部
400 検出部
411 フィールドレンズ
452 偏光ミラー
550 対応付け部
600 解析部
1900 コンピュータ
2000 CPU
2010 ROM
2020 RAM
2030 通信インターフェイス
2040 ハードディスクドライブ
2050 フレキシブルディスク・ドライブ
2060 CD-ROMドライブ
2070 入出力チップ
2075 グラフィック・コントローラ
2080 表示装置
2082 ホスト・コントローラ
2084 入出力コントローラ
2090 フレキシブルディスク
2095 CD-ROM