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特許7647877情報処理システム、伝搬環境データの処理方法、及びプログラム
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  • 特許-情報処理システム、伝搬環境データの処理方法、及びプログラム 図1
  • 特許-情報処理システム、伝搬環境データの処理方法、及びプログラム 図2A
  • 特許-情報処理システム、伝搬環境データの処理方法、及びプログラム 図2B
  • 特許-情報処理システム、伝搬環境データの処理方法、及びプログラム 図3
  • 特許-情報処理システム、伝搬環境データの処理方法、及びプログラム 図4
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  • 特許-情報処理システム、伝搬環境データの処理方法、及びプログラム 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】情報処理システム、伝搬環境データの処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 24/06 20090101AFI20250311BHJP
   H04W 16/18 20090101ALI20250311BHJP
   H04W 16/20 20090101ALI20250311BHJP
【FI】
H04W24/06
H04W16/18 110
H04W16/20
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023512526
(86)(22)【出願日】2021-04-05
(86)【国際出願番号】 JP2021014537
(87)【国際公開番号】W WO2022215136
(87)【国際公開日】2022-10-13
【審査請求日】2023-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004381
【氏名又は名称】弁理士法人ITOH
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124844
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 隆治
(72)【発明者】
【氏名】猪又 稔
(72)【発明者】
【氏名】山田 渉
(72)【発明者】
【氏名】久野 伸晃
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 元晴
【審査官】横田 有光
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-329850(JP,A)
【文献】特開2019-128260(JP,A)
【文献】特開2020-113826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内の対象エリアを所定のサイズの複数のメッシュに分割する分割部と、
前記対象エリアにある物体と前記建物の内側との位置及び形状を表す環境データを用いて、前記複数のメッシュの各々の高さ情報を抽出する抽出部と、
前記複数のメッシュの各々の前記高さ情報を表す第1のメッシュデータ、及び前記複数のメッシュの各々の天井高を表す、前記第1のメッシュデータと同じフォーマットの第2のメッシュデータを作成する作成部と、
前記第1のメッシュデータと前記第2のメッシュデータとを用いて、前記建物内の電波伝搬シミュレーションを行うシミュレーション部と、
を有する、情報処理システム。
【請求項2】
前記メッシュデータは、GPUで読込可能なデータ形式を有する、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記分割部は、前記対象エリアを、緯度及び経度に基づく複数の地域メッシュに分割する、請求項1又は2のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記分割部は、前記対象エリアを、前記環境データに含まれる3次元データの相対座標に基づいて、前記所定のサイズの複数のメッシュに分割する、請求項1又は2に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記環境データは、前記対象エリアにある構造物の位置、及び形状を表す3次元のCADデータを含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記環境データは、前記対象エリアにある構造物の位置、及び形状を表す3次元の点群情報を含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【請求項7】
前記環境データは、前記対象エリアにある建物位置、及び形状を表す建物データベースを含む、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【請求項8】
前記メッシュデータは、画像データの形式を有し、
前記シミュレーション部は、前記メッシュデータをGPUで読込し、前記電波伝搬シミュレーションを行う請求項に記載の情報処理システム。
【請求項9】
情報処理システムが、
建物内の対象エリアを所定のサイズの複数のメッシュに分割する処理と、
前記対象エリアにある物体と前記建物の内側との位置及び形状を表す環境データを用いて、前記複数のメッシュの各々の高さ情報を抽出する処理と、
前記複数のメッシュの各々の前記高さ情報を表す第1のメッシュデータ、及び前記複数のメッシュの各々の天井高を表す、前記第1のメッシュデータと同じフォーマットの第2のメッシュデータを作成する処理と、
前記第1のメッシュデータと前記第2のメッシュデータとを用いて、前記建物内の電波伝搬シミュレーションを行う処理と、
を実行する、伝搬環境データの処理方法。
【請求項10】
情報処理システムに、
建物内の対象エリアを所定のサイズの複数のメッシュに分割する処理と、
前記対象エリアにある物体と前記建物の内側との位置及び形状を表す環境データを用いて、前記複数のメッシュの各々の高さ情報を抽出する処理と、
前記複数のメッシュの各々の前記高さ情報を表す第1のメッシュデータ、及び前記複数のメッシュの各々の天井高を表す、前記第1のメッシュデータと同じフォーマットの第2のメッシュデータを作成する処理と、
前記第1のメッシュデータと前記第2のメッシュデータとを用いて、前記建物内の電波伝搬シミュレーションを行う処理と、
を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム、伝搬環境データの処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムのエリア評価等に用いられる電波伝搬シミュレーションを行う方法として、レイトレース(又はレイトレーシング)がある。レイトレースでは、送信点から送信した電波(レイ)が、途中にある構造物で反射、又は回折して受信点に到達する様子を各レイの軌跡として追跡(トレース)し、受信点に到達した全てのレイの電力を加算することにより、受信点における電波の強度を推定する。
【0003】
また、レイトレースを用いて、無線基地局と端末局との間の伝播伝搬特性のシミュレーションを行い、シミュレーション結果に基づいて、電磁干渉を低減する屋内無線通信システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-168812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、レイトレース等により電波伝搬をシミュレーションする場合、シミュレーションの対象となるエリア内にある、構造物、又は建物等の形状を表す伝搬環境データ(以下、環境データと呼ぶ)が必要になる。この環境データには、例えば、3次元CAD(Computer Aided Design)のCADデータ、LIDAR(Light Detection and Ranging)で取得した点群データ、又は建物データベース等の様々な形式のデータを利用できることが望ましい。
【0006】
しかし、これらの環境データは、膨大な3次元のデータとなるため、従来の技術では、環境データの読み込みに時間を要し、電波伝搬シミュレーションの高速化の妨げとなっていた。
【0007】
本発明の実施形態は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、電波伝搬のシミュレーションで用いる環境データの読み込み時間を短縮する情報処理システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の実施形態に係る情報処理システムは、建物内の対象エリアを所定のサイズの複数のメッシュに分割する分割部と、前記対象エリアにある物体と前記建物の内側との位置及び形状を表す環境データを用いて、前記複数のメッシュの各々の高さ情報を抽出する抽出部と、前記複数のメッシュの各々の前記高さ情報を表す第1のメッシュデータ、及び前記複数のメッシュの各々の天井高を表す、前記第1のメッシュデータと同じフォーマットの第2のメッシュデータを作成する作成部と、前記第1のメッシュデータと前記第2のメッシュデータとを用いて、前記建物内の電波伝搬シミュレーションを行うシミュレーション部と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、電波伝搬のシミュレーションで用いる環境データの読み込み時間を短縮する情報処理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る情報処理システムの構成例を示す図である。
図2A】本実施形態に係るデータ処理の概要について説明するための図(1)である。
図2B】本実施形態に係るデータ処理の概要について説明するための図(2)である。
図3】地域メッシュの区分方法を示す図である。
図4】実施例1に係るデータ処理の例を示すフローチャートである。
図5】実施例2に係るデータ処理の例を示すフローチャートである。
図6】コンピュータのハードウェア構成の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態(本実施形態)を説明する。以下で説明する実施形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施形態は、以下の実施形態に限られるわけではない。
【0012】
<システム構成>
図1は、本実施形態に係る情報処理システムの構成例を示す図である。情報処理システム1は、例えば、情報処理システム1が備えるコンピュータが所定のプログラムを実行することにより、データ処理部10、記憶部20、シミュレーション部30、及びインタフェース部40等を実現している。なお、上記の各機能構成は、物理マシン(コンピュータ)に限られず、例えば、クラウド上の仮想マシンが実行するプログラムにより実現されるものであっても良い。また、上記の各機能構成は、別々の物理マシン、又は仮想マシンに分散して配置されていても良い。
【0013】
記憶部20は、電波伝搬シミュレーションの対象となる対象エリアの環境データ22を予め記憶している。環境データ22には、例えば、CAD(Computer Aided Design)データ101、建物データ102、及び点群データ103等が含まれ得る。
【0014】
CADデータ101は、例えば、対象エリア内にある物体(構造物、建物等)の各面の幅、高さ、形状、及び位置等を示すデータと、各面における電波の反射率等の情報とを含む3次元のCADデータである。CADデータ101は、例えば、オペレータ等が、3次元CAD等にデータを入力したものであっても良いし、LIDAR(Light Detection and Ranging)等で取得した点群データに基づいて生成したデータ等であっても良い。
【0015】
建物データ102は、対象エリア内にある建物の各面の幅、高さ、形状、及び位置等を示すデータと、各面における電波の反射率等の情報とを含むデータベース(建物データベース)である。好ましくは、建物データ102には、建物の内側の壁、床、天井、及び柱等の各面の情報が含まれる。
【0016】
点群データ103は、例えば、LIDAR等を用いて取得した、対象エリア内に物体の各面までの距離等を表す3次元の点群データである。或いは、点群データ103は、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術を用いて、3次元の点群情報に基づいて作成した3次元の環境地図データ等であっても良い。
【0017】
なお、記憶部20は、例えば、情報処理システム1の外部のストレージサーバ、又はクラウドサービス等であっても良い。
【0018】
データ処理部10は、例えば、CADデータ101、建物データ102、又は点群データ103等の環境データ22を用いて、シミュレーション部30が電波伝搬シミュレーションを行う所定のエリアのメッシュデータを作成する。データ処理部10は、例えば、分割部11、抽出部12、及び作成部13等を有している。
【0019】
分割部11は、電波伝搬シミュレーションの対象となる対象エリアを複数のメッシュに分割する。例えば、分割部11は、図2Aに示すように、対象エリア200を所定のサイズの複数のメッシュ201に分割する。一例として、分割部11は、緯度及び経度に基づき地域を網の目(メッシュ)の区域に分割した地域メッシュに基づいて、対象エリアを複数のメッシュ201に分割する。
【0020】
図3は、総務省統計局のホームページ(https://www.stat.go.jp/data/mesh/m_tuite.html)に掲載されている地域メッシュの区分方法を示している。分割部11は、一例として、図3の地域メッシュの区分方法に従って、対象エリア200を複数のメッシュ201に分割する。なお、図3に示す地域メッシュの区分方法では、4分の1地域メッシュまでしか規定されていないが、分割部11は、所定のサイズに応じて図3の地域メッシュの区分方法を、例えば、8分の1地域メッシュ、16分の1地域メッシュ、・・・等のように拡張しても良い。
【0021】
別の一例として、分割部11は、例えば、シミュレーション部30が屋内の電波伝搬シミュレーションを行うとき等、緯度及び経度情報が必要ない場合、CADデータ101等の相対座標に基づいて、対象エリア200を複数のメッシュ201に分割しても良い。
【0022】
ここで、図1に戻り、データ処理部10の機能構成の説明を続ける。抽出部12は、環境データ22から、例えば、図2Aに示すような複数のメッシュ201の各々の高さ情報を抽出する。例えば、抽出部12は、CADデータ101を解析して、メッシュ201内に高さ3mの構造物がある場合、当該メッシュ201の高さ情報を3mとする。なお、抽出部12は、メッシュ201の高さ情報が得られない場合、例えば、建物データ102、又は点群データ103等の他の環境データ22を解析して、当該メッシュ201の高さ情報を抽出しても良い。また、抽出部12は、環境データ22を解析して、メッシュ201の高さ情報が得られない場合、当該メッシュ201の高さ情報を0とする。
【0023】
作成部13は、抽出部12が抽出した各メッシュの211の高さ情報を用いて、例えば、図2Bに示すようなメッシュデータ21を作成する。図2Bに示すメッシュデータ21において、x、y方向は、各メッシュ201の位置(例えば、緯度、経度、又は行、列等)に対応しており、各データの値は、各メッシュ201の高さ情報を示している。従って、例えば、メッシュデータ21において、高さ情報が「3」のエリア202には、例えば、高さが3mの構造物があり、高さ情報が「6」のエリア203には、例えば、高さが6mの構造物があることを示している。また、高さ情報が「0」のエリアには、例えば、構造物がないことを示している。
【0024】
これにより、データ処理部10は、記憶部20に記憶されている環境データ22のうち、対象エリア内にある物体(構造物、建物等)の各面の幅、高さ、形状、及び位置等を示すデータを、図2Bに示すような、2次元のメッシュデータ21に変換することができる。また、このメッシュデータ21は、画像データの形式を有しているため、GPU(Graphicss Processing Unit)を用いて、高速に読込、及び処理が可能であるという特徴を有している。
【0025】
シミュレーション部30は、データ処理部10が作成したメッシュデータ21と、環境データ22に含まれる各面における電波の反射率等の情報とを、記憶部20等から読み出して、対象エリアの電波伝搬シミュレーションを行う。好ましくは、シミュレーション部30は、コンピュータが備えるGPUを用いて、画像データの形式を有するメッシュデータ21を高速に読み取る。
【0026】
例えば、シミュレーション部30は、読み取ったメッシュデータ21と、各面における電波の反射率等の情報とを用いて、レイトレースによる電波伝搬シミュレーションを行う。レイトレースでは、送信点から送信した電波(レイ)が、途中にある構造物で反射、回折、又は透過して受信点に到達する様子を各レイの軌跡として追跡(トレース)し、受信点に到達した全てのレイの電力を加算して、受信点における電波の強度を推定する。ただし、シミュレーション部30が実行する電波伝搬シミュレーションは、レイトレース以外の方法を用いても良い。
【0027】
なお、メッシュデータ21は再利用が可能なので、シミュレーション部30が、対象エリアで、2回目以降の電波伝搬シミュレーションを行う場合、データ処理部10は、メッシュデータ21の作成処理を省略することができる。
【0028】
このように、本実施形態によれば、電波伝搬のシミュレーションで用いる環境データの読み込み時間を短縮する情報処理システムを提供することができる。
【0029】
インタフェース部40は、他のシステムから、情報処理システム1が提供する様々な機能を利用するためのAPI(Application Programming Interface)、又はユーザが、当該機能を利用するためのUI(User Interface)等を提供する。例えば、ユーザ(又は他のシステム)は、インタフェース部40を利用して、データ処理部10によるメッシュデータ21の作成、又は電波伝搬シミュレーションの実行等を要求することができる。また、ユーザ(又は他のシステム)は、インタフェース部40を利用して、電波伝搬シミュレーションに必要なパラメータ(例えば、送信点の位置、受信点の位置、周波数、送信出力等)の設定、又は記憶部20への環境データ22の登録等を行うことができる。
【0030】
<処理の流れ>
続いて、本実施形態に係る伝搬環境データの処理方法の処理の流れについて説明する。
【0031】
[実施例1]
図4は、実施例1に係るデータ処理の例を示すフローチャートである。この処理は、データ処理部10が、環境データ22を用いて、メッシュデータ21を作成するデータ処理の一例を示している。
【0032】
ステップS401において、データ処理部10の分割部11は、例えば、図3に示すような地域メッシュ、又は拡張した地域メッシュ(例えば、8分の1地域メッシュ、16分の1地域メッシュ、・・・等)から、所定のサイズ以下となる地域メッシュを選定する。ここで、所定のサイズは、例えば、シミュレーション部30を介して、ユーザ、又は他のシステム等から設定されるものであっても良いし、データ処理部10に予め設定されているものであっても良い。
【0033】
ステップS402において、分割部11は、処理対象となる対象エリアを地域メッシュのサイズの複数のメッシュに分割する。例えば、分割部11は、図2Aに示すように、対象エリア200を、ステップS401で選定した地域メッシュのサイズの複数のメッシュ201に分割する。
【0034】
ステップS403において、データ処理部10の抽出部12は、例えば、記憶部20から、対象エリアの環境データ22を取得する。なお、環境データ22が、緯度、経度ではなく、相対座標を用いている場合、環境データ22のいずれかの点の緯度、経度情報を予め取得しておき、例えば、環境データ22内に記憶しておくと良い。これにより、データ処理部10は、環境データ22の相対座標と、緯度、経度とを対応付けることができる。
【0035】
ステップS404において、データ処理部10は、複数のメッシュ201の各々に対して、ステップS405~S408の処理を実行する。
【0036】
ステップS405において、データ処理部10の抽出部12は、複数のメッシュ201のうち、処理対象となるメッシュ201の高さ情報を、環境データ22から抽出する。なお、環境データ22が、例えば、CADデータ101、建物データ102、及び点群データ103等のように複数ある場合、各データの優先度を予め定めておくと良い。この場合、抽出部12は、優先度のより高いデータから高さ情報の取得を試行し、最初に取得できた高さ情報を抽出しても良い。
【0037】
ステップS405において、データ処理部10の作成部13は、環境データ22に、処理対象となるメッシュ201の高さ情報があるか否かを判断する。例えば、作成部13は、抽出部12が、環境データ22から高さ情報を取得できた場合、高さ情報があると判断する。一方、作成部13は、抽出部12が、環境データ22から高さ情報を取得できない場合、高さ情報がないと判断する。高さ情報がある場合、作成部13は、処理をステップS407に移行させる。一方、高さ情報がない場合、作成部13は、処理をステップS408に移行させる。
【0038】
ステップS407に移行すると、作成部13は、処理対象となるメッシュ201のメッシュデータに、抽出部12が抽出した高さ情報を入力する。一方、ステップS408に移行すると、作成部13は、処理対象となるメッシュ201のメッシュデータに、0を入力する。
【0039】
データ処理部10は、複数のメッシュ201の各々に対して、上記のステップS405~S408の処理を実行することにより、例えば、図2Bに示すようなメッシュデータ21を作成することができる。
【0040】
[実施例2]
実施例1では、データ処理部10が、対象エリアを、例えば、図3に示すような地域メッシュに分割する場合の例について説明した。ただし、これに限られず、データ処理部10は、例えば、環境データ22(例えば、CADデータ101等)の相対座標に基づいて、対象エリアを所定のサイズの複数のメッシュに分割しても良い。
【0041】
例えば、建物内等の屋内の電波伝搬シミュレーションを行う場合、緯度、経度情報は必要ない場合が多い。また、屋内の構造物は、例えば、建物の壁面、又は柱等に沿って配置されていることが多いため、環境データ22の相対座標に基づいて、対象エリアを所定のサイズに分割した方が良い場合もある。
【0042】
そこで、実施例2では、データ処理部10は、例えば、環境データ22の相対座標に基づいて、対象エリアを所定のサイズの複数のメッシュに分割する場合の処理の例について説明する。
【0043】
図5は、実施例2に係るデータ処理の例を示すフローチャートである。この処理は、データ処理部10が、環境データ22を用いて、メッシュデータ21を作成するデータ処理の別の一例を示している。なお、図5に示す処理のうち、ステップS404~S408の処理は、図4で説明した実施例1の処理と同様なので、ここでは、実施例1の処理との相違点を中心に説明を行う。
【0044】
ステップS501において、データ処理部10の分割部11は、例えば、記憶部20から、対象エリアの環境データ22を取得する。例えば、建物内のあるフロアで電波伝搬シミュレーションを行う場合、分割部11は、当該フロアの環境データ22を取得する。
【0045】
ステップS502において、分割部11は、対象エリアを所定のサイズの複数のメッシュに分割する。例えば、分割部11は、取得した環境データ22の相対座標に基づいて、図2Aに示すように、対象エリア200を、所定のサイズの複数のメッシュ201に分割する。
【0046】
ステップS404において、データ処理部10は、複数のメッシュ201の各々に対して、実施例1と同様に、ステップS405~S408の処理を実行する。これにより、データ処理部10は、例えば、図2Bに示すようなメッシュデータ21を作成することができる。
【0047】
ただし、屋内の電波伝搬シミュレーションを行う場合、天井のデータが必要になる。この場合、シミュレーション部30は、一例として、記憶部20から、メッシュデータ21と建物データ102とを取得して、建物データ102から天井のデータを取得しても良い。この場合でも、建物データ102は、CADデータ101、又は点群データ103等と比べてデータ量が少ないので、電波伝搬のシミュレーションで用いる環境データの読み込み時間を短縮する効果が期待できる。
【0048】
別の一例として、データ処理部10は、図5のステップS404~S408において、図2Bに示すようなメッシュデータ21に加えて、同様のフォーマットで、各メッシュの天井高を表す別のメッシュデータを作成しても良い。この場合、シミュレーション部30は、記憶部20から、メッシュデータ21と、天井高を表す別のメッシュデータとを取得して、電波伝搬シミュレーションを行う。この場合、メッシュデータ21、及び天井高を表す別のメッシュデータは、いずれも画像データ形式を有しているので、シミュレーション部30は、GPUを用いて高速にデータを読み込むことができる。
【0049】
(ハードウェア構成例)
本実施形態に係る情報処理システム1は、例えば、コンピュータに、本実施形態で説明する処理内容を記述したプログラムを実行させることにより実現することができる。
【0050】
上記プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体(可搬メモリ等)に記録して、保存したり、配布したりすることが可能である。また、上記プログラムをインターネットや電子メール等、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0051】
図6は、上記コンピュータのハードウェア構成例を示す図である。図6のコンピュータ600は、それぞれバスBで相互に接続されているドライブ装置1000、補助記憶装置1002、メモリ装置1003、CPU1004、インタフェース装置1005、表示装置1006、入力装置1007、出力装置1008、及びGPU1009等を有する。
【0052】
コンピュータ600での処理を実現するプログラムは、例えば、CD-ROM又はメモリカード等の記録媒体1001によって提供される。プログラムを記憶した記録媒体1001がドライブ装置1000にセットされると、プログラムが記録媒体1001からドライブ装置1000を介して補助記憶装置1002にインストールされる。但し、プログラムのインストールは必ずしも記録媒体1001より行う必要はなく、ネットワークを介して他のコンピュータよりダウンロードするようにしても良い。補助記憶装置1002は、インストールされたプログラムを格納すると共に、必要なファイルやデータ等を格納する。
【0053】
メモリ装置1003は、プログラムの起動指示があった場合に、補助記憶装置1002からプログラムを読み出して格納する。CPU1004は、メモリ装置1003に格納されたプログラムに従って、本実施形態で説明した各部に係る機能を実現する。インタフェース装置1005は、ネットワークに接続するためのインタフェースとして用いられる。表示装置1006はプログラムによるGUI等を表示する。入力装置1007はキーボード及びマウス、ボタン、又はタッチパネル等で構成され、様々な操作指示を入力させるために用いられる。出力装置1008は演算結果を出力する。なお、情報処理システム1において、表示装置1006、入力装置1007のいずれか又は両方を備えないこととしても良い。GPU1009は、主に画像処理(特に3Dグラフィックス処理)に関連する様々な処理を、CPU1004より高速に実行するプロセッサである。
【0054】
(実施形態の効果)
本実施形態に係る技術によれば、電波伝搬のシミュレーションで用いる環境データの読み込み時間を短縮する情報処理システム1を提供することができる。
【0055】
(実施形態のまとめ)
本明細書には、少なくとも下記各項の情報処理システム、伝搬環境データの処理方法、及びプログラムが開示されている。
(第1項)
対象エリアを所定のサイズの複数のメッシュに分割する分割部と、
前記対象エリアにある物体の位置及び形状を表す環境データを用いて、前記複数のメッシュの各々の高さ情報を抽出する抽出部と、
前記複数のメッシュの各々の前記高さ情報を表すメッシュデータを作成する作成部と、
を有する、情報処理システム。
(第2項)
前記メッシュデータは、GPUで読込可能なデータ形式を有する、第1項に記載の情報処理システム。
(第3項)
前記分割部は、前記対象エリアを、緯度及び経度に基づく複数の地域メッシュに分割する、第1項又は第2項のいずれか一項に記載の情報処理システム。
(第4項)
前記分割部は、前記対象エリアを、前記環境データに含まれる3次元データの相対座標に基づいて、前記所定のサイズの複数のメッシュに分割する、第1項又は第2項に記載の情報処理システム。
(第5項)
前記環境データは、前記対象エリアにある構造物の位置、及び形状を表す3次元のCADデータを含む、第1項乃至第4項のいずれか一項に記載の情報処理システム。
(第6項)
前記環境データは、前記対象エリアにある構造物の位置、及び形状を表す3次元の点群情報を含む、第1項乃至第5項のいずれか一項に記載の情報処理システム。
(第7項)
前記環境データは、前記対象エリアにある建物の外側、又は内側の位置、及び形状を表す建物データベースを含む、第1項乃至第6項のいずれか一項に記載の情報処理システム。
(第8項)
前記メッシュデータをGPUで読込し、電波伝搬シミュレーションを行うシミュレーション部を有する、第2項に記載の情報処理システム。
(第9項)
情報処理システムが、
対象エリアを所定のサイズの複数のメッシュに分割する処理と、
前記対象エリアにある物体の位置及び形状を表す環境データを用いて、前記複数のメッシュの各々の高さ情報を抽出する処理と、
前記複数のメッシュの各々の前記高さ情報を表すメッシュデータを作成する処理と、
を実行する、伝搬環境データの処理方法。
(第10項)
情報処理システムに、
対象エリアを所定のサイズの複数のメッシュに分割する処理と、
前記対象エリアにある物体の位置及び形状を表す環境データを用いて、前記複数のメッシュの各々の高さ情報を抽出する処理と、
前記複数のメッシュの各々の前記高さ情報を表すメッシュデータを作成する処理と、
を実行させる、プログラム。
【0056】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 情報処理システム
11 分割部
12 抽出部
13 作成部
21 メッシュデータ
22 環境データ
30 シミュレーション部
101 CADデータ
102 建物データ
103 点群データ
1000 ドライブ装置
1001 記録媒体
1002 補助記憶装置
1003 メモリ装置
1004 CPU
1005 インタフェース装置
1006 表示装置
1007 入力装置
1008 出力装置
1009 GPU
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6